兄「国勢調査の調査員になったぞ」妹「は?」(47)

―8月上旬

妹「その顔で?」

兄「顔は関係ないだろ?」

妹「でもどうしてお兄ちゃんが?」

兄「町会長さんに頼まれてな。俺町会の役員だからさ」

妹「そうだったね」

兄「というわけで説明会に行ってくる」

妹「私も行く」

兄「は? お前調査員じゃないだろ?」

妹「何よ、妹同伴じゃ駄目なの?」

兄「駄目に決まってるだろ」

妹「ぶう・・・」

兄「全くガキじゃあるまいし。ちゃんと留守番してろよ」

妹「はーい」



指導員「えー各調査員さん毎に受け持つ地域が定められておきまして、最初は受け持つ地域のすべての住宅と建物を確認し・・・」

兄(こりゃ結構大変そうだな)






指導員「なお、調査地域内で巡回や訪問をする時に同行者を同行させることができますので事前に登録の上・・・」

兄(そうなのか。妹に手伝ってもらおうかな)

兄(ふう、長話だったな。さて帰るか)

妹「おかえり」

兄「あれ、待ってたの?」

妹「家にいても退屈しちゃって。どうだった?」

兄「見ろ、総務大臣から任命状をもらったぞ」

妹「わぁ凄い!」

兄「役所の代理人からだけどな・・・」

妹「なぁんだ」

兄「少し手伝ってほしいんだがな」

妹「いいよ、何すればいいの?」

兄「各家庭を訪問するときに一緒に来てほしいんだよ」

妹「お兄ちゃんと共同作業ね」

兄「アヤシイ言い方だな」

兄「いいか?」

妹「断る理由なんかないよ」

兄「ありがとな。ちゃんとお礼はするから」

妹「どんなお礼してくれるの?」

兄「そうだなぁ、チューしてあげる」

妹「////」ボッ

兄「あ、赤くなるなよ///」

妹「そっくり返すよ///」

―9月中旬

兄「妹ー、『インターネット回答の利用案内』を配りに行くぞ」

妹「はーい」


兄「チョイ待ち」

妹「何?」

兄「その服胸元開き過ぎだろ」

妹「そうかなぁ?」

兄「普段着てる服でいいから着替えておいで」

ピンポーン

『はい』

兄「国勢調査の件でお伺いしました」

カチャ

兄「こんにちは。すみませんお休みのところ」

「いえ」

兄「今回からネットやスマホでも回答できるようになりまして、この封筒の中にこちらのお宅のIDとパスワードが入っております」

兄「20日までにご回答いただければ私共がお邪魔することはありませんので」

「そんなんだ。便利になったね」

「それにしても綺麗な女性と一緒に回れるなんて羨ましいねぇ」

兄「いえ、それほどでもないですよ」

妹「///」

「20日までだね? やっとくよ」

兄「はい、よろしくお願いします」

妹「2人で歩いてるとデートしてるみたいだね」

兄「どんなデートだよ」

妹「配り終わったらレストランで食事しようよ。少しはデートっぽくなるよ」

兄「兄妹でデートか?」

妹「いいでしょ?」

兄「何だかなぁ。まぁいいか」

妹「えへへ、決まり」



兄「食事美味しかったな」

妹「ね。また行こうよ」

兄「先に風呂入ったら?」

妹「いいよ、先に入って」

兄「じゃ遠慮なく」

兄「そうだ、入ってる間にうちの答えておいてよ」

妹「了解」



妹(世帯員の数は2人、住居の種類は民営の賃貸住宅、名前は兄で性別は男、世帯主で誕生年月は・・・)

妹(私は妹、性別は女で世帯主との続き柄は兄弟姉妹っと・・・)

妹(・・・・・・)

今日はここまで
小出しですまん

―9月下旬

兄「また手伝ってくれないかな?」

妹「いいけど。今度は何するの?」

兄「ネットで回答しなかった世帯に紙の調査票を配るんだよ」

妹「待ってて、支度してくる」

女「あら、兄君」

兄「こんちは」

女「どう? はかどってる?」

兄「まぁなんとか」

女「私も同じ。お互い頑張ろうね」

兄「ですね。頑張りましょう」

妹「・・・」

妹「ちょっと、誰今の人?」ムスッ

兄「町会の婦人部の人だよ。てか、その顔怖いんだけど」

妹「何よ、鼻の下伸ばしちゃって」

兄「は?」

妹「何でもない」

兄「?」

兄「ひょっとして妬いてるのか?」

妹「妬いてないよっ///」

兄「妬いてるのなら見当違いだぞ、あの人は旦那も子供もいるんだ」

妹「どうだか」

ピンポーン


兄「・・・」

妹「・・・」


兄「留守か、いつ行ってもいないんだよなぁこの家」

妹「こういう時はどうするの?」

兄「原則は手渡しなんだけどね。しょうがない、新聞受けに入れとくか」

コンコン

『どちら様ですかー?』

兄「国勢調査の件で参りましたー」

『あ、はい。お爺ちゃーん、国勢調査の人ですよー』



ガラッ

爺「やあ、待たせてすまんね」

兄「いえ、こちらこそすみませんお休みのところ」

爺「おや、若いのにご苦労様だねぇ」

兄「封筒の中に調査票が入ってますので記入していただけますか?」

爺「ああ、わかっとる。すまんが書いたのを取りに来てくれんかの?」

兄「勿論ですよ。いつごろお伺いすればよろしいですか?」

爺「いつでもいいぞ、わしはいつもここにおるから」

兄「では頃合い見計らって伺います」

兄「もしよろしければ大きな文字の調査票があるんですけれどもお持ちしましょうか?」

爺「いや大丈夫じゃ、足腰は弱っとるが目と耳はぴんぴんしとるでの」

兄「これは失礼しました」

爺「」ニヤニヤ

兄「・・・何か?」

爺「いやぁ何でもない」

兄「では記入の方よろしくお願いします」

妹「後日私達が取りに来ますので」

爺「御苦労さま」

眠いから寝かせろください

妹「私も町会に入ろうかな」

兄「は? 俺が誘った時はあんなに嫌がってたのにどういう心境の変化だよ?」

妹「いろいろ心配でさ・・・」

兄「何が?」

妹「ううん、こっちの話」

>>6
そうなのか、ありがとう
両親とも定年退職してるんだが、うち全員福祉関連職だし引っ掛かったのかね

期待

―10月上旬

兄「調査票の回収に行ってくるよ」

妹「待って、私も行くわ」

兄「いやいいよ。あと一軒だけだから」

妹「まぁそう言わずに、ね」

妹「みんな郵送で送ってくれればいいのに」

兄「確かにそれだと楽だけどな。でもこれも調査員の仕事だから」

妹「でも取りに行く時間がバラバラだから面倒でしょ? 回収する時も一度にできたらいいのにね」

兄「そうもいかんだろ。家毎に都合ってもんがあるんだからさ」

妹「調査員の仕事も結構大変ね」

兄「大変じゃない仕事なんて無いんじゃないかな」

コンコン

『どちら様ですかー?』

兄「調査票の回収に参りましたー」

『あ、はーい。お爺ちゃん回収に来ましたよー』




ガラッ

爺「わざわざ来てもらってすまんのう」

兄「いえ」

爺「これじゃ」

兄「はい、お預かりします」

爺「」ニヤニヤ

兄「・・・何か?」

爺「お二人はいつ結婚するんじゃ?」

兄、妹「は!?」

爺「わしには生まれつき不思議な眼力があっての。結婚する男と女の小指が赤い糸で結ばれているのが見えるんじゃよ」

爺「お二人も小指と小指が赤い糸で結ばれているのが見えるぞい」

兄、妹(いやいやいや、糸なんて見えないけど)

爺「しかも随分ハッキリ見えておる。結婚は近いと思うんじゃが」

兄「あの、僕たち血の繋がった兄妹なんですよ。なので結婚はありえませんよ?」

爺「おやそうじゃったか」

爺「だがお互い好き合っていれば血の繋がりなんぞ乗り越えられると思うがのー」

兄「いやしかしですね・・・」

爺「あ、いかん。また出過ぎたまねをしてもうた。孫に怒られてしまうな」

爺「すまんが今のは老いぼれの戯言だと思っておくれ」

妹「いえ、そんな」

爺「どっちにしても兄妹が仲良くするのはいいことじゃ。世界で2人だけの兄妹じゃからの」

兄「はい、それは確かに」


兄「では調査票をお預かりしていきます」

妹「ご協力ありがとうございました」

爺「吉報を待っとるぞい」

妹「///」

兄「・・・」

妹「・・・」

妹「ねぇ、さっきのお爺さんが言っていた事どう思う?」

兄「う、うーん・・・、どうなんだろうね?」

兄、妹(何か気まずい・・・)

兄「・・・」

妹「・・・」

今日はここまで

>>21
調査員やっている親戚に聞いたとら福祉関係は同行者になれるそうだ
おそらくお父さんは同行者をつけるほどでもないと考えたんじゃないかな

―10月中旬

兄「役所へ行ってくるね」

妹「私も行くわ」

兄「悪いね、最後まで付きあってもらって」

妹「同行者だもん。キッチリ同行するわよ」

妹「役所では何するの?」

兄「調査員証や腕章を返したり預かった調査票を渡すんだよ」

兄「これで俺はお役御免となるわけだ」

妹「次も調査員やるの?」

兄「町会長さんに頼まれればな」

妹「その時も同行者にしてよね」

兄「ああ、今のまま2人暮らしだったらね」

妹「・・・」

兄「ちょっとここで待っててね」

妹「うん」

兄「こんにちは」

職員「ご足労様です」

兄「このバッグに調査票その他諸々入っていますので」

職員「ご確認させていただきます」




職員「はい、確かに一式お預かりしました」

兄「では失礼します」

職員「お疲れさまでした」

兄「お待たせ」

妹「気分はどう?」

兄「何だか妙な達成感があるな」

妹「お兄ちゃんお疲れ様」

妹「ねぇ、役所の横に公園があるじゃない、そこで一休みしない?」

兄「いいよ」

兄「はい、ジュース」

妹「あ、ありがとう」



兄「今夜は外で食事するか?」

妹「賛成!」

兄「決まりだね」



妹「ねぇ」

兄「ん?」

妹「今お兄ちゃん彼女いるの?」

兄「いないよ」

兄「お前は彼氏いるのか?」

妹「いないよ。いないけど・・・」

兄「何?」

妹「好きな人がいるんだ」

兄「ふーん」

妹「最近はずっとその人のことばっかり考えちゃってる」

兄「そんなに好きなの?」

妹「うん、まぁね」

妹「でもその人は好きになっちゃいけない人だし結婚もできないし」

兄「まさかお前不倫とかじゃ?」

妹「そんなんじゃない、その人は独身よ」

妹「すごく優しい人でね、私には滅多に怒らないのよ」

妹「国の大事な調査の仕事をした時も私を頼ってくれたの」

兄「!!」 

兄「(俺かよ・・・)

妹「その人の人生の同行者として一生涯同行できたらどんなに幸せだろうなぁって思うわ」

兄「・・・」

兄「妹、実は俺ね・・・」

妹「なに?」

兄「結婚したいと思ってる女性がいるんだよ」

妹「!?!?」ガタッ

妹「だ、誰それ!? ねぇ誰誰?」ジワッ

兄「あ、ああ、その人は俺の人生の同行者になりたいらしいから叶えてあげようと思って」

妹「え?」

兄「俺たちは結婚できないけど、そんなのA3の紙を役所に出すか出さないかだけじゃん」

兄「あのお爺さんが言ってたけど、お互い好きなら血の繋がりなんか乗り越えられと思うけど?」

妹「・・・」

妹「もうバカあっ! 地獄に突き落とされた気分だったよぉ」パシッ

兄「ごめんごめん」ナデナデ

兄「お詫びに、それと同行者のお礼にキスしてあげるから」

妹「うん、それで許してあげる」



チュッ


兄「」ニコ

妹「ふふ、末長くよろしくね。旦那さま」

兄「こちらこそよろしく。必ず幸せにするからね」


御覧下さいましてありがとうございました


調査員をやっている親戚から仕事の進め方を訊きながら書きました
実際の調査員の仕事とは異なるところがあります

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