北条加蓮「お酒が飲める歳になって」 (62)
――事務所 夜――
モバP(以下「P」)「…………」ジー
安部菜々「…………」ジー
高森藍子「…………」ジー
お酒 < ノマナイノ?
北条加蓮「えっ、えっ、何これ? なんでじいって見てるのよ……何か言ってよ。ねえ」
P「いや、その……な?」
菜々「藍子ちゃんの時は良かったんですけど、加蓮ちゃんにはー、その……」
藍子「やっ、やっぱりやめましょう! だめです! 加蓮ちゃんの身体に悪影響です!」
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――注意事項――
高森藍子「お酒が飲める歳になって」の続編です。
とはいえ、どちらもタイトル通りの世界観だというだけなので、こちらから読んで頂いても大丈夫かと。
北条加蓮→安部菜々の呼称を変更させてもらっています。
P「い、いや、それはそれで後味が悪いっていうか、加蓮が飲みたいって言うし……でも加蓮だよなぁ。……加蓮だよなぁ」
加蓮「待ってよ。私は藍子の誕生日の時からずっとずっと我慢して待ってたんだよ? どこかの誰かさんがお酒の席をすっごく楽しそーに話すから」ジロ
菜々「め、めんぼくない」
加蓮「もう毎日毎日ストレスで。なのにやっぱやめって、それってちょっと無くない?」
藍子「そう言われると……」
加蓮「大丈夫だよ。Pさんだっているんだし。ね? 私にだって、20歳の通過儀礼にに挑戦させてよ」
P「……ゴホン! いいか加蓮。くれぐれも、くれぐれも一気に飲もうとするな。まずはちょびっとだ。ちょびっとだけだ」
藍子「危ないって思ったら、すぐに吐き出してください! 雑巾、用意しましたから!」
菜々「あっ、ちょっとタンマです2人とも! 負けず嫌いの加蓮ちゃんにそんなこと言ったら――」
加蓮「ふうん、そう言われると……えいっ」グイッ
藍子「わっ――」
P「馬鹿――」
菜々「だから言ったのにー!」
加蓮「ごきゅごきゅごきゅごきゅっ! ……ふふん、どうよ。私だって20歳になったんだからこれくらい、」グラッ
加蓮「……!?」カオマッサオ
藍子「え」
加蓮「……………………!?」クチモトオサエ
加蓮「……ごめんちょっとトイレ!」
<バタン! ダダダダダ...
菜々「……へ? 嘘ですよね? い、いくらなんでも弱すぎるんじゃ……」
藍子「ちょっと私見てきます!」
<バタン! カレンチャン ダイジョウブデスカ!?
<オロロロロ
P「うっわあ……」
菜々「あちゃー…………」
加蓮「ぜーっ、ぜーっ、ひ、酷い目に遭った……」
藍子「もう……だから、ほんのちょっぴりだけってPさんが言ったのに……」サスリサスリ
加蓮「ここまで弱いとは……何年経っても私はポンコツってことかい……!」
P「し、仕切り直しだ仕切り直し! 大丈夫だ、最初は350mlを2缶でダウンしてた藍子も今や菜々と張り合えるようになったんだから!」
藍子「私は……あんまり早いペースで飲めないから、菜々さんほどは飲めませんよ?」
P「見ろ。これが大人の女性という物だ」
菜々「そうですよ加蓮ちゃん! 焦らないことこそ、大人なんです!」
加蓮「…………そうする……」グスッ
菜々「加蓮ちゃん!?」
P「な、なにも泣くことないだろ」
加蓮「だって……やっと20歳になって、Pさんとか、藍子とか、菜々と、一緒に飲めるって思ったのに……」
加蓮「こんなの酷いよ……」グスグス
藍子「加蓮ちゃん…………」ナデナデ
菜々「こ、ここで早速プレゼントコーナーといきましょうか! ねっPさん!」アセ
P「そ、そうだな! ほら加蓮、誕生日プレゼントたくさん用意してきたぞ!」アセ
加蓮「…………」グスッ
P「よーしまずは俺からだな!」
菜々「えーいきなりPさんからですかズルいですよー!」
P「こういうのはハードルが低い内に済ませる物だって加蓮が言ってたからな!」
菜々「加蓮ちゃんがですか! さすが加蓮ちゃんですね!」
P「さすが加蓮だな!」
菜々「さすが加蓮ちゃんです!」
藍子「ふふっ……加蓮ちゃん。ほら、これで涙を拭いて。Pさんなら、とびっきりすてきな物を渡してくれます」スッ
加蓮「…………」フキフキ
藍子「きっと加蓮ちゃんも満足しますよ。だってPさん、私の誕生日の後の頃からもう、ずっと悩み続けていましたから♪」
P「ま、待て藍子。なぜそれを!」
菜々「そりゃーPさん、暇さえあれば机にかじりついて何にしよう何にしようって言ってたら誰でも気づきますよ。ナナですら知ってましたし」
P「ぐぬぬ」
加蓮「…………」フキフキ
加蓮「……ふふっ。逆にハードルが上がっちゃったみたいだね、Pさん」
菜々「お」
P「……はは。舐めんなよ? 俺ほどの名プロデューサーは上げたハードルを蹴飛ばすんだ」
菜々「いやそこは越えましょうよ名プロデューサーさん」
P「じゃあまず俺からのプレゼントだな。……藍子や菜々にバレてる通り死ぬほど悩んだんだが、」
菜々「前置きはいいですから、ほらほらPさん!」グイグイ
P「おわっと。まったく、こういうのは形式も大切でな」
藍子「加蓮ちゃん、わくわくして見てますよっ」
加蓮「……別に? 私だってもう20歳なんだから、わくわくなんてしてないよ。ゆっくり待てるよ」
藍子「そんなこと言って、ほらっ、顔は嘘をつけないですね♪」
加蓮「それ私が教えたセリフじゃん」
P「いや何の為に教えたんだよ」
加蓮「さあ?」
菜々「ああもう! 3人ともまどろっこしい。いいからさっさとプレゼントを渡せー!」ウガー
P「そうだな。誕生日おめでとう、加蓮。……20歳までよく元気で過ごしてくれた。それと今まで4年間、アイドルを続けてくれてありがとう」スッ
加蓮「……私こそありがと、Pさん」シュルシュル
加蓮「え……? これ……寄せ書き? が、いち、に……わ、何枚もある……!?」
藍子「ホントだ、すごい量です……。Pさん、これは?」
P「……加蓮。お前は、20年間生きて、4年間アイドルを続けてくれた。キツイ時だってあったと思うし、俺も、いつも重荷を背負わしてばかりだった」
P「もしかしたらお前は、それをなんてことはないと思うかもしれない]
P「特別なことだって言ったら、むしろ怒るのかもしれない。でも俺から見たら、やっぱり奇跡みたいな物なんだ」
P「その寄せ書きな。お前が今まで世話になった現場の人達の物なんだ」
加蓮「お世話になった、って……え、まさか、これって」
P「全員からってやれればよかったけどな、さすがにそれは無理だったよ」ハハ
P「だからその時の誰かってことにさせてもらった。最初の宣材の時のカメラマン、最初のステージの時の総監督。初めて大舞台にのぼった時の裏方さん。花嫁撮影や和服撮影の時のスタッフさん。レコーディングをした時の作曲家」
菜々「ぜ、ぜんぶ回ったんですか!?」
P「思い出巡りも兼ねてな。みんな、お前のことをしっかり覚えてたよ。お前と仕事したことも」
P「苦労混じりに語ってた人もいたなぁ。でも、みんな応援してた」
P「それってすごいことなんだ。特別なことなんだ。それを……加蓮に、分かってほしくて」
藍子「すごい……」
加蓮「………………」
P「……さ、さすがにやり過ぎたか? その、同僚に提案した時には心底呆れられたけど、これくらいしか思いつかなくて……20歳ってことで区切りになるかと思って……」
P「ああでもアイドルの方は4年っつーか3年ちょいって変な時期だし……今にしちゃなんか別のも――」
加蓮「そんなことないよ……ううんっ、Pさん、やりすぎだよ。なにこれ……こんなのっ…………」グスッ
加蓮「もうっ……私に何の恨みがあるのよ。私をそんなに泣かせたいのっ……!」
藍子「……加蓮ちゃん」ギュ
菜々「ホントですよPさん! ハードル青天井じゃないですか! 何ヶ月かけてきたんですかねコレ!? Pさんちょっと加蓮ちゃんのこと好きすぎじゃありませんか!?」
P「そ、そんなことはないぞ?」
藍子「私たちのプレゼントは、後にしちゃいましょうか。こんなに素晴らしい物の後じゃ、何をやっても霞んじゃいそうですから」
P「う、なんかスマン。…………、…………お、俺のノルマは終わった! 飲む!」グイッ
菜々「ナナも付き合いますよぉ! ウラァ!」ゴクッ
藍子「じゃあ、私も……」チビチビ
P「やるな菜々! 俺は2缶目だ!」グイッ
菜々「今日こそPさんを潰してみせますからね! ウサミン星人の底力、見せつけてやります!」ゴクッ
P「地球外生命体なんぞに負けるかー!」ゴクゴク
菜々「人をエイリアンみたいに言うなーっ!」ゴクゴク
藍子「あはは……」コトツ
藍子「……加蓮ちゃん。大丈夫ですか?」
加蓮「うん……大丈夫だけど、その、プレゼントの箱、ちょっと閉めといてっ。見たらまたヤバくなる!」
藍子「はい」スッ
加蓮「ふー……目、赤くなってる?」
藍子「ちょっぴり。でも大丈夫ですよ。誰も、笑ったりしませんから」
加蓮「ん…………ありがとね、藍子」
藍子「いえいえ」
P「ぷはーっ」ゴトッ
菜々「ぷはーっ!」ゴンッ
菜々「あぁあぁ゛ぁ゛ー、Pさん、いつの間に魔法なんて覚えたんですかぁ! 3人に分身なんてやーりますねぇ……」
菜々「ぁあ! Pさんはもともと魔法使いでしたね! ナナ達に魔法をかけてくれる! ぎゃはっ☆」
藍子「え、菜々さん? Pさんが3人って……きゃっ、顔、真っ赤になってるっ」
P「菜々こそすげえなかぁ、2人に分身してるぞぉ。ウサミン星のパワーだなぁ! ぐはははは!」
藍子「Pさんまでっ。え、一気にどれだけ飲んでいるんですか!? あ、今お水を持ってきます!」
P「おぉー、頼むわ藍子ー」
菜々「うっぷナナちょっと吐き気がおrrrr」
藍子「きゃーっ!」
――たぶん30分くらい経過しました――
菜々「すみませんでした」ドゲザ
P「ご迷惑をおかけしました」ドゲザ
藍子「私は、大丈夫ですから……おふたりとも、顔を上げてください」
加蓮「まったく、Pさんも菜々も、藍子に頼りすぎだよ。藍子、いつも困ってるんだよ」
菜々「申し訳ない」ドゲネ
P「加蓮様の仰る通りでございます」ドゲネ
藍子「もうっ、加蓮ちゃん。私はぜんぜん気にしていませんから」
加蓮「そんなこと言って心の底では」
藍子「……………………」(さっきのプレゼント箱を開けようとする)
加蓮「すみませんそれは勘弁してください大泣きしちゃうからやめて」
P「菜々、菜々。なんか藍子が怖い」
菜々「4年が経って、しっかり者になっちゃいましたねぇ……」
加蓮「Pさんと菜々がしっかりしないからだよ。だから藍子がいつも、」
藍子「……………………」(プレゼント箱に手をかける)
加蓮「申し訳ございませんでした」
藍子「もうっ……。私は、ぜんぜん気にしていませんから。ね? ほら、菜々さんも、Pさんも、加蓮ちゃんも。もう1回、乾杯しましょ?」
藍子「……加蓮ちゃんは、こんなこともありそうだって予想して用意しておいたジュースで」トクトク
加蓮「はぁい……」ブスー
藍子「はい、では、改めて。加蓮ちゃんの誕生日にっ♪」
菜々・P「「カンパーイ!!」」
菜々「…………」ゴクゴクゴク
P「………………」グビグビグビ
菜々「はーっ!」
P「あ゛ーっ! 加蓮、誕生日おめでとう、マジおめでとう! おめでとおなああああああああ!」
菜々「かーっ! 加蓮ちゃん、ほんっっとおおおおに、誕生日、おめでとうございます!」
加蓮「きゃっ。もう、大げさだよPさん。菜々さんも。でもありがとっ。……あんまり無理して飲まないでよ?」
P「こんなにめでたい日に飲まずして何が男かァ!」
菜々「何がウサミン星人か!」
加蓮「いやウサミン星人は関係なくないかな……」
菜々「そういう訳で、ナナ達からのプレゼントは明日に渡すってことで。いやぁしかし、加蓮ちゃんが20歳ですか」ゴクゴク
P「加蓮が20歳、か……口に出して言うとやっぱりすげえな。迫力が違う。いや、17の時も18の時も19の時も思ったんだけどな」ゴクゴク
加蓮「吐いたのにまだ飲むんだ……それに比べてこっちは、」チラッ
藍子「はい、加蓮ちゃん。そーっとですよ、そーっと」つ350ml缶
加蓮「…………」チビチビ
加蓮「苦……。ねえ、これじゃぜんぜん美味しくないよ。もっと一気に飲ませてよ。さっきのPさんみたいに、こう、がばーって」
藍子「だめにきまってますっ」
P「そうだぞ加蓮。一滴一滴が、重要なんだ」
菜々「お酒は天の恵みですからね、ありがたく飲まないと罰当たりですよ!」
加蓮「さっき盛大にリバースしてた人がそれ言う……?」
菜々「しっかしPさんじゃないですが、加蓮ちゃんが20歳になれたってなんだか感慨深いですねぇ」
菜々「ナナももうずっと見守ってきて。すっかりお母さん気分ですよ。ねっ、藍子ちゃん」
藍子「え? ……あはっ、それなら、私がお父さんでしょうか?」
P「おい菜々。いくらアイドルだろうとそれは許さんぞ。藍子はみんなのアイドルなんだからな」
加蓮「そこ?」
菜々「思い返してみるといろいろありましたねぇ。ユニットを組んだことがつい昨日のことみたいで」
藍子「ふふっ。いっぱい、いろんなことがありました」
菜々「加蓮ちゃんが藍子ちゃんに掴みかかってたり、ナナに掴みかかってたり…………加蓮ちゃんはどこの不良ですか!」
加蓮「……少なくとも菜々には掴みかかってないよ?」
P「藍子がCDデビューした時、マジですごかったよな……。どうして藍子が先に! って加蓮が怒鳴った時には、ホントにどうなるかって。もう息ができなかったよ」
菜々「その頃ナナは加蓮ちゃんのことも藍子ちゃんのこともほとんど知りませんでしたけど、リアルファイトしたんですって?」
加蓮「もー、またそんな昔の話ばっかり。あれはその……ついやっちゃっただけだよ」
藍子「加蓮ちゃん、きっとすごく悔しかったんだと思います。私も……あの時だけは、加蓮ちゃんが恐くて」
P「首を締めんとばかりの勢いだったからなぁ」
加蓮「行き場所がない気持ちってキツイよ。……でもあの時はごめんね? 藍子」
藍子「いえいえ。もう大丈夫だって、前にも言いました」
藍子「それに……私の方こそ、あの時、加蓮ちゃんに掴みかかられたから……加蓮ちゃんに怒られたから、自分がアイドルなんだって、人に影響を与えているんだって、自覚できるようになりましたから」
P「確かにあれ以来、自分はアイドルらしくないって弱音をあまり聞かなくなったな」
菜々「まさしく藍子ちゃんの快進撃! 不良の加蓮ちゃんも悪くないですねぇ」
加蓮「誰が不良か」
P「あれを乗り越えてからはもう大丈夫だって思えるようになったくらいだ。加蓮も藍子も」
菜々「でしょうねぇ」
P「……とは言っても、ホントは加蓮と菜々がユニットを組んだばっかりの頃もハラハラしっぱなしだったんだけどな」
菜々「ええ、最初の頃は大変でしたとも。ウサミン星人に対してあそこまでキツイリアクションをされたのは長い人生の中でも初めてで」
加蓮「いや、今でこそもう慣れたけどさ……ウサミン星人だよ? パッと見(バキューン)歳の人が17歳だよ? 頭どうかしてるって思うって」
菜々「コラーっ! その数字はウサミン星で禁止されています!」
藍子「ま、まあまあ。あ、私、少し席を外しますね……」スタッ
P「…………実は俺も、最初はほんの少しだけ」
菜々「ぴぴぴPさん!? 面白いから採用! って言ったアレは嘘だったんですか!?」
P「面白いのは面白いと思うぞ。ちょっと引いたけど」
加蓮「でも今じゃ、ホントにウサミン星ってところから来てるとしか思えなくて」
菜々「……ゴホンっ! まあナナはウサミン星出身なんですけどね。これはホントの話!」
加蓮「それに、菜々のステージってホントにすごくて。あんなにファンから声援をもらえるアイドルって、私、見たことないよ」
P「菜々のファンっていつもヘトヘトになって帰ってるよな。コールがヤバくて。でもみんないい笑顔なんだ」
菜々「もーっ! 今日は加蓮ちゃんの誕生日ですよ、ほらほら! 加蓮ちゃんの話をしましょ!」
加蓮「……お母さんっていうより、親戚のおばちゃんみたい」
菜々「なんですと!? 誰がおばちゃんだー!」ウガー!
P「加蓮の話なぁ。ほら、クリスマスの時、組んだばっかりの頃な。こんなユニットやってられるか! って、いつ加蓮が言い出すか心配で心配で」
加蓮「大げさだよ。それに今は、菜々は菜々なんだって分かってるし。解散なんてありえないよ」
菜々「いーえっ女の子は旅立つ物ですからねぇ。加蓮ちゃんがいつ手の届かないところにいってしまうか、ナナは、ナナは……ううううう~~~!」
菜々「ま、また来年も一緒にお酒飲みましょうね! 加蓮ちゃんが21歳になってもナナは17歳ですから!」ヨヨヨヨヨ
加蓮「意味が分からないから……」
P「加蓮が21歳……? え……? 加蓮、お前、21歳になるのか…………!?」
加蓮「……そりゃ、今年で20歳なんだから、来年には21歳になるんじゃない?」
P「今年で20歳…………!?」
加蓮「もーまたその反応? 私は今日から20歳です。文句あるの?」
P「……………………今からでも加蓮を永遠の17歳第2号にしよう」
加蓮「私は地球人だ!」
P「設定なんて適当でいい。ほら、菜々だってそれでやっているじゃないか」
菜々「設定言うなー! 適当とも言うなー!」
加蓮「私が20歳なのがそんなに不満?」
P「だってお前おかしいだろ! 加蓮が20歳とか……加蓮が20歳とかよ! なんだよそれ……なんなんだよそれっ……!」
加蓮「迫真の演技ありがとPさん。でもごめん、意味分かんない」
菜々「そんなんじゃこの先が大変ですよPさん。加蓮ちゃんはいずれ22歳になって、23歳になるんですから」
P「うぷっ……」クチカカエ
加蓮「気分が悪くなるほどのこと!?」
P「わ、悪い。…………加蓮」
加蓮「何?」
P「お前、まだアイドルでいてくれるよな? うちのアイドルでいてくれるよな?」
加蓮「もちろんだよ。昨日ね、お母さんとお父さんから言われたんだ。いつまでアイドルを続けるのかって話」
加蓮「……あ、悪気があってのことじゃなくてね。心配してくれてるのは分かるけど、言われて確かに、いつまで続けるのかなー、って思っちゃって」
菜々「キャハッ☆ ナナ的実話ではですねぇ、死ぬ死ぬ言ってる人ほど長く生きるんですよ!」
加蓮「待って、私別に死ぬって言ってない」
菜々「よーするに、加蓮ちゃんは大丈夫ってことです!」
菜々「それに、どうせアイドルを辞めるつもりなんてハナッから無いんでしょう?」
加蓮「……当然だよ。お母さんとお父さんにも言ってやった。私がアイドルを辞めるのは、少なくとも2人が寿命で死んだ後だよ、って」
P「また微妙に笑えないことを」
加蓮「だからそれまで、Pさんのアイドルでいてあげる。……ううん、違うね」
加蓮「私を、ずっとPさんのアイドルでいさせてください」
加蓮「……ね?」
P「……もちろんだ! 誰が別のプロデューサーなんかにやるもんか!」グビグビ
加蓮「あはは、頼れるんだか頼れないんだか」
菜々「ところで小腹空きましたね。おつまみあります?」
P「例によって用意しているぞ、じゃあちょっと――」
藍子「あっ、それなら……ちょっと簡単な物を作ってきたんですけれど、よかったらどうぞ」スッ
加蓮「藍子? そういえばどこに行ってたの」
藍子「少し、給湯室の方まで。焼き茄子とポテト、いくつか用意してきました。簡単に味付けしただけですけれど……」
菜々「…………」ムグムグ
P「…………」ムグムグ
菜々「…………」ナミダダバー
P「…………」ナミダダバー
藍子「えええ!?」
途中から菜々さん→菜々になってるのは意図して?
菜々「ううっ、ぐすっ、藍子ちゃんも加蓮ちゃんもどうしてそんなにいい子なんですか~~~~~!」
P「藍子ぉ、ぐすっ、加蓮んん……ずっと、ずっと俺がプロデュースするからな……! 何があっても、ずっと……!」
加蓮「こぉのアル中どもめ……」
藍子「あ、あはは、あはははは……」
藍子「加蓮ちゃん、加蓮ちゃん。私がいない間に何かあったんですか? Pさんが、なにか決意に満ちた顔をされてるから」
加蓮「ん? ううん、大したことじゃないよ。来年もこのメンバーで迎えられるといいねって話」
藍子「……いいね、じゃなくて、迎えるんです。絶対にっ」
加蓮「さすが藍子。Pさんなんかよりずっと強気だね」チラッ
P「おおおおおおおお……」ナミダジョバー
加蓮「……あーあー、もう。Pさんこそ何歳になったんだか……」
>>35 orz...申し訳ございません、ただのミスです
修正……。
>>21 4行目・加蓮のセリフ
誤:Pさん。菜々さんも。でもありがとっ
正:Pさん。菜々も。でもありがとっ
菜々「だいたいですねー、ナナはいっつも加蓮ちゃんはすごいアイドルだって何度も何度も」
P「俺なんか最初に見た時ビビッと来たな。これは稀代のだ、いずれ時代を変えるアイドルになるって」
加蓮「……お酒を飲むのはいいけど冷静になってよ。最初の頃の私がそんな風に見える訳ないじゃん」
P「なんだとぉ!」ガシ
加蓮「きゃ」
P「俺の加蓮を貶す奴は俺の加蓮であっても許さん!」
加蓮「え、え、え……今、俺のって」
P「あ、ここで言う俺のというのは俺が面倒を見ているアイドルのという意味で」
加蓮「そこだけシラフに戻るの!? それってなくない! ……もう!」
菜々「Pさんも頑固ですねぇ。あれだけ普段から加蓮ー加蓮ーって言っておきながら」
加蓮「えっ」
藍子「そうですよっ。Pさん、いつも加蓮ちゃんのことばっかり。私、ちょっぴり寂しいです」
加蓮「えっ」
P「そぉか……贔屓はよくないよなぁ……。でもな、加蓮ってほら、目を離すと何が起きるか分からなくて怖くてなぁ……」
藍子「それは……なんとなく、分かりますけれど」
菜々「はい! はい! ナナだって! ナナだって! 目を離した隙にウサミン星に帰っちゃうかもしれませんよぉ!」
P「1時間で行けるからへーきへーき」
菜々「ぎゃーっ! もっと時間がかかるってことにしとけばよかったー!」
藍子「ことにしておけばよかった、って…………ウサミン星って、そういうものなんですか?」
菜々「そういうものなんです!」
藍子「はあ……」
加蓮「……ちょっと待ってよ……もう。そういうこと…………急に言うの反則っ」
藍子「あはっ、加蓮ちゃん、顔が赤くなってます♪」
加蓮「あ、アンタだって赤いでしょ! 菜々とかPさんのペースにつられて飲むから!」
藍子「ちょっとくらい、挑戦した方が楽しいんですよ。ほらほら、加蓮ちゃんも!」グイ
加蓮「さっき飲むなって言ったよね藍子!?」
藍子「お酒に慣れる方法、私が教えてあげますね。最初はまず、何時間もかけて飲むくらいでいいんです。ちょっとずつ、ちょっとずつ、飲む間隔を短くして……」
加蓮「く、詳しいねなんか……」
藍子「はいっ。実体験ですから♪」
加蓮「納得」
P「いいかぁ加蓮、ひくっ、酒なんて飲めてもなぁ、いいことなにもねぇぞぅ?」
P「上司には付き合わにゃならん、営業先には付き合わにゃならん」
P「……お前たちの為じゃなかったら大人なんてやってられっかー! 俺だって学生やらせろー!」
加蓮「それ、お酒の飲み方じゃなくて大人の話だよ……」
菜々「ホント、大人って面倒ですよねぇ。やれ結婚式だの、同窓会だの。私、専業主婦になっちゃったのー! ……ナナに対するあてつけですかねぇ!」
加蓮「……永遠の17歳ってなんだっけなぁ……」
藍子「そうしたら最後には、どれだけ飲んでも大丈夫になるんです! ……もうっ、加蓮ちゃん、聞いてましたか! もう1回いきますね!」
加蓮「藍子もちょっと落ち着いてよ」
藍子「私はへいきですーっ。ごくごく」
加蓮「…………もうなんでもいいや」
菜々「う~~~、やっぱり納得がいきませんっ!」バン!
P「おお、どうしたウサミン星人第1号。第2号に物申すか」
加蓮「ねえそれ私のことじゃないよね? 違うって言って? ねえPさん、ねえ、ちょっと」
菜々「プレゼントですよ! やっぱりナナも渡したい~っ!」
P「渡せばいいだろ。よっ、我らが事務所のトップアイドル!」
菜々「キャハッ☆ しょうがないですねぇPさんは。おだてられたら……乗るしかありませんね!」
加蓮「あー、もー……酔っぱらいってホントにめんどくさい……」
藍子「じゃあ、私が先に渡しちゃいますっ」
菜々「なんですと!?」
藍子「はい、加蓮ちゃん。その……Pさんのと比べちゃうと、どうしても地味になっちゃいますけれど……」アハハ
加蓮「しょうがないよ。Pさんがおかしすぎるんだから」
P「…………菜々ぁ……加蓮が俺のことおかしいって言うぅ……」ダキッ
菜々「ミミン!? えー、あー、よ、よーしよーし、Pさんだって甘えたい時はありますよねー」ナデリナデリ
加蓮「…………」
缶 < ガシッ ブンッ
菜々「ウサミンっ!」
加蓮「ったく」
藍子「……プレゼント、お渡ししていいですか?」
加蓮「ごめんね、今日のPさんと菜々は電波の調子が悪いみたいで」
藍子「み、みたいですね……? はい、加蓮ちゃん。お誕生日、おめでとうございますっ。あの……」
加蓮「ん?」
藍子「その……Pさんじゃ、ありませんけれど…………今まで、元気に過ごしてきてくれて、ありがとうございます」
加蓮「ふふっ、変なの。別に今から死ぬ訳じゃないんだし……でもありがとね、藍子。私の方こそ、こんな私に付き合ってくれてありがと」ガサゴソ
加蓮「これって……冬物のベスト?」
藍子「チタニウムベスト、って言うそうです。薄くて、でも、すっごく暖かいって、店員さんが……。加蓮ちゃんなら、もう持ってるかもしれないけれど」
藍子「これから、涼しくなって、寒くなっちゃいますから。オシャレもいいですけれど、暖かくして過ごしてくださいね?」
加蓮「…………(それは、知ってるし、確か持ってた筈だけど、でも……)」ジー
加蓮「ふふっ。ちょうど新調しようと思ってたとこなんだ。今年の冬は、ずっとこれを着ることにするね」
藍子「はいっ! また、写真に撮らせてくださいね!」
菜々「そしてナナのターン! ナナからのプレゼントはもちろんコレ!」スポッ
加蓮「ああ、やっぱりウサミミなんだ」
菜々「それだけじゃないですよ! 加蓮ちゃん加蓮ちゃん、根本についているイヤホンを耳につけてみてください」
加蓮「これ?」スポッ
菜々『ウサミン星からの電波です! 届いてますか? キャハッ☆』
加蓮「わっ。菜々の声が……トランシーバーみたいな物かな?」
菜々『このメッセージを受け取ったのならば、ウサミン星の合言葉を言いましょう!』
加蓮「え? 何それ、私知らないんだけど」
菜々『せーのっ、ミミミンミミミン、ウーサミンッ!』
加蓮「…………」スポッ
菜々「ああっなんで外すんですか!」
加蓮「ごめん、私、地球人としてアイドルやっていたいんだ」
菜々「せっかくウサミン星へご招待してあげたのに! ……あー、ゴホン! そんな訳で、トランシーバー内蔵型のウサミミです! 秘密基地ごっこにも最適ですよ!」
加蓮「目立ちすぎだよ。それに、この歳になって秘密基地なんて――」
菜々「まあまあ。加蓮ちゃん。加蓮ちゃんが大人の女性に憧れるのは百も承知です。というかナナ的には、加蓮ちゃんはもうとっくに、素敵な女性になってると思いますよ?」
菜々「ときどき焦ってしまうことがあるのは、それは加蓮ちゃんがそれだけ熱血だってことです! 加蓮ちゃんは否定しちゃうかもしれませんけどねっ」
菜々「でも、だからこそ! たまには童心に戻って。事務所で秘密基地ごっことか、探検ごっことか、そういうのもいいんじゃないですか?」
菜々「ほら、子供の心を持ってこそアイドル、っていうのもあると思いますよ!」
加蓮「菜々…………」
菜々「もちろん藍子ちゃんも! ねっ?」
藍子「はい! 是非、私も混ぜてください!」
P「うし、俺の水鉄砲魂が火を噴くぜ!」
加蓮「え、さすがにPさんはキツくない?」
P「えっ」
菜々「あー……Pさんの分は用意していませんでしたねぇ」
P「えっ」
藍子「わ、私は、えとっ、そのっ………………あ、あはは」
P「藍子まで!? 待ってくれよ俺だけ仲間はずれってそれ駄目だろ! 駄目だろ!」
菜々「Pさんは逆に、ちょっとだけでも親離れならぬ加蓮ちゃん離れするべきなんですよ。あんまり過保護にしてると嫌われちゃいますよ?」
P「うぬっ……し、しかし、加蓮は俺の娘みたいな存在で」
菜々「うがーっ!」
P「うわっ!」
菜々「加蓮ちゃんも20歳なんですよ、ハ・タ・チ! そろそろ親娘気分だけじゃなくてちゃんと見てあげたらどうなんですかね!」
加蓮「…………」
P「いや、しかし俺はプロデューサーで加蓮はアイドル――」
藍子「Pさん! それじゃ、加蓮ちゃんがかわいそうです!」
菜々「加蓮ちゃんの想い、知らない訳じゃないでしょ?」
P「ぐぐぐ……」
菜々「ほらほらっ、せっかくの場ですし! 今ならお酒の勢いも借りれます!」
藍子「後回しにしちゃうと、余計に言うのが辛くなっちゃうかもしれません。……ほんのちょっとだけ、勇気を出してみてください、Pさん」
P「ぐぐぐぐ…………」
菜々「加蓮ちゃんもですよ。さっきのは感動しましたけど、いつまでもそれでいいんですか? ずっとPさんのアイドルだけでいいんですか?」
藍子「さっきの?」
菜々「さっきそーいうことがあったんです。さ、加蓮ちゃん!」
加蓮「…………Pさん……私」
P「ダメだ!」
加蓮「!」
藍子「Pさん……?」
P「ダメだ。やめてくれ……! ……俺は、アイドルの加蓮に惚れ込んでるんだ。……正直……加蓮が20歳になったことよりも、加蓮がアイドルを4年も続けられてることの方が、よっぽど嬉しいんだ」
P「違う、違うんだ。加蓮に女性の魅力がないとかじゃない……俺は、ただ、加蓮のプロデュースがしたくて」
P「……もし、その関係が何か変わる時が来たとしても」
P「酒を借りて話すことじゃないだろう! もっと、もっと真剣に話すべきことなんだ!」
P「加蓮から堅いって馬鹿にされても、そこだけは譲らんからな!」
加蓮「…………」
藍子「…………」
菜々「…………キャハ」
加蓮「…………フラれちゃった」
P「っ」
加蓮「でも、変なの……ホッとしてる私がいるんだ。良かった、って」
加蓮「ね、Pさん。藍子も菜々も。せめて私がお酒の力を借りられるようになるまで待ってよ。頑張って慣れるから」
加蓮「何年かかるか分からないけど、ね」
藍子「加蓮ちゃん……ふふっ、そうですね。焦っちゃ駄目だっていつも言ってるのに、今日はちょっぴり焦っちゃいました」
菜々「ナナちょっと煽りすぎましたかね。ごめんなさい加蓮ちゃん」
加蓮「いいっていいって。10年後の楽しみが、できちゃったかな」
藍子「そんなにかけちゃうんですか?」
加蓮「私が10年後の約束だって。笑っちゃうな……昔は、1年先の、ううん、1日先のことも想像できなかったのに」
加蓮「今ならできるよ。10年後の想像だって。私だけじゃなくて、ここにいるみんなの想像だって」
加蓮「……うんっ……ほらほら、なーに暗い顔してるの。もっと飲もうよ。ねっ?」トクト...
藍子「いいお話にしようとしても、加蓮ちゃんはちょっとずつです」パシ
加蓮「……やっぱりダメぇ?」
藍子「だめ」
P「そうだな。誕生日なんだ、もっとパーッとやろう」
菜々「キャハッ☆ ウサミン星の誕生日では暗い話をしたら怒られるんですよ! もう、Pさんも加蓮ちゃんも駄目ですね!」
藍子「ふふっ。じゃあ、また乾杯しちゃいましょう!」
P「おし。では、加蓮の20歳を祝して……20歳……ハタチ………………はたち……………………?」
菜々「だめだこりゃ。では不肖ウサミン、Pさんの代わりに音頭を! みなさん、かんぱーい!」スッ
みんな『かんぱーい!!』チャリン
――翌日――
加蓮「おはようございま――」ガチャ
菜々「うぷっ、おはようございます加蓮ぢゃん……」
藍子「あうぅ……頭いたい……あの、その、もうちょっと声、ひかえめにでお願いします……」
P「zzzzz…………zzzzzzz…………はっ。いかんいかん、仕事せねば…………zzzzzz」
加蓮「……」ハァ
加蓮(ま、こうなるよね……あれから何時間くらい飲んでたんだっけ? 最後にはみんな――藍子も含めて――そこら辺で寝ちゃってたし)
加蓮(ううん、でも、いっか。これだって想像できたことなんだから)
加蓮(昨日の私が、今日のことを想像できた結果なんだから……ね♪)
加蓮「おはよ、Pさん。ほら、今日のお仕事は何?」
P「あぁ……加蓮か……今日は、雑誌の取材と、ボーカルレッスン…………zzzzzz…………」
加蓮「もー、シャキッとしてよ。今日からまたアイドルとして頑張るんだから」
加蓮「……ね、Pさん。また私のプロデュース、お願いね」
P「……おぉ…………zzzzzzz…………」
おしまい。クリスマスメモリーズばんざーい!
そして加蓮、誕生日おめでとう!
乙。
>>52のPの台詞は「酒を借りて」でもいい感じなんかな?
加蓮の未来、そして今が、より輝いたものである事を願ってます。
いつも勇気をくれてありがとう。
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