北条加蓮「藍子と」高森藍子「記念パーティー前の時間を」 (35)

――おしゃれなカフェ――

北条加蓮「よんしゅーねーん」

高森藍子「ですねっ。早かったような、短かったような……」

加蓮「つまりあっという間だったってこと?」

藍子「はいっ」


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――まえがき――

アイドルマスターシンデレラガールズ4周年、おめでとうございます。

レンアイカフェテラスシリーズ第17話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」

~中略~

・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「11月のカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「温泉にて」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「いつものカフェで」

……年齢とかそういうツッコミは、なしで。

藍子「これが終わったら次のこと、あれが終わったら次のこと……そんな風に、毎日が続いていって」

藍子「いつの間にか、暑くなって、寒くなって」

藍子「気がついたら、もう11月が終わって、パーティーの日が来ちゃった……そんな感じです」

加蓮「そっか。藍子らしい」

藍子「加蓮ちゃんはどうでしたか? この1年、短かったですか?」

加蓮「うん。私も、ホントにあっという間だったなぁ……ううん、分かるんだよ。どんな風に考えても、時間の流れは変わらない」

加蓮「アイドルに没頭していても、こうして藍子とだらけていても、1時間は1時間だし、1日は1日だよね」

加蓮「でも……あっ、そうだ。1日を使い続けてたって感じ」

藍子「使い続けていた……?」

加蓮「そんなイメージがぼんやり浮かんできちゃった。なんだろ? 私にも分かんないやっ」フフッ

藍子「加蓮ちゃんに分かんないのなら、私にも分かんないですよ~。加蓮ちゃん、ときどき難しいことを言っちゃうから……」

加蓮「そこを頑張って理解するのが藍子だ!」

藍子「私、そういう役なんですか?」

加蓮「いや、この前は自分の説明をしたらやたら苦労しちゃったから、今回は加蓮ちゃんマスターの藍子さんに丸投げってことで」

藍子「いつの間にそんなっ。じゃあ、もうちょっと頑張って考えてみますね……」ウーン

加蓮「……あははっ。どんな答えを出すかな? ちょっと楽しみかもっ」

藍子「うーん……」

加蓮「すみませーん。レモンティー……ううん、やっぱストレートティーで。この子には……クッキー。うんと甘くしてあげてねっ」

藍子「うーん…………」

加蓮「さてと。1時かー。お昼は簡単に済ませたし、お腹は空かせとかなきゃ。今日からパーティーだもんね、食べられるだけいっぱい――」

藍子「あ!」

加蓮「お、何か思いついた?」

藍子「はいっ。さっきのはきっと、加蓮ちゃんが毎日を大切にしてきたってことですよ」

藍子「1日1日を、大切に使い続けてきて……そうして、今日になったんですっ。………………たぶんっ」

加蓮「そういうことなのかな……うん、きっとそんな感じ。ごめんね、ホントにぼんやり浮かんだだけのイメージなの。変に悩ませちゃって」

藍子「いえいえ。加蓮ちゃんが何を考えてるのかなって想像するの、好きですから」

加蓮「そ、そう……すごい趣味だね」

加蓮「……おっ。店員さん。ふふっ、ありがと。はい藍子。疲れた頭はクッキーで癒やそう」スッ

藍子「あ、はい、ありがとうございます。あれ、いつの間に注文……?」

加蓮「さっき藍子が考えこんでる時ー」

藍子「そうだったんですか……私、すっかり夢中になってて気づきませんでしたっ。じゃあ、いただきますね」サクッ

藍子「ふうっ……ふふっ、いつもとおんなじ味。美味し……♪」

加蓮「ずず……そうだね、いつも通りの味だ」

藍子「それで、加蓮ちゃんのことなんですけれど」

加蓮「うんうん。藍子が私のことを妄想してるって話だよね」

藍子「想像です!」

加蓮「あはは」

藍子「もうっ。……趣味ってほどではありませんけれど、でも、お散歩している時でもたまに思うんです」

藍子「もし加蓮ちゃんがこの景色を見たら、このお店を見たら、どう考えるかな? どんな風に笑うのかな?」

藍子「なんて、頭の中で思い浮かべて。でも、想像の中でもやっぱり加蓮ちゃんはひねくれちゃってるんです。ああ、きっとこんな風に言うんだろうなって、自分で笑っちゃって」

藍子「前に、通りすがったおじいちゃんに笑われちゃいましたっ」

加蓮「笑われちゃったか」

藍子「あれはさすがに、ちょっぴり恥ずかしかったかも……あ、でも、その後に少しお話したんですよ。そのおじいちゃんも、お散歩が趣味だったみたいで、気があっちゃってっ」

加蓮「おー」

藍子「それに、おじいちゃんも、おんなじことを言っていました。お孫さんに見せたら喜ぶかも、って」

加蓮「散歩が好きな人はみんな想像したりするのかな?」

藍子「そうかもしれません。ふふ、楽しかったなぁ……」

藍子「あっ。その時の写真、持ってきておけばよかった」

加蓮「ドジー」

藍子「うぅ。パーティーから戻ってきたら、たぶん忘れちゃってます……だから加蓮ちゃん、その時には言ってくださいね?」

加蓮「私だって忘れてるよ。……ん、でも今の話を聞いてたらどんな写真を撮ったのか気になっちゃった。だから頑張って覚えとくね」

藍子「はいっ!」

加蓮「もし私が見たら、かぁ。……もし藍子がここにいたらって考えることは……うん、ごめん、私はあんまりないかも」

藍子「えー、そうなんですか?」

加蓮「自分のことばっかだもん、私って。そりゃ地方のロケとかLIVEツアーやった時はお土産くらい買うけど、所詮はそれくらいだよ」

加蓮「あ、モバP(以下「P」)さんのことならよく考えるかも」

藍子「むぅ。私はPさんに負けちゃってるんですね」

加蓮「勝ち負けの問題じゃなくない? っていうかアンタ、争いとか嫌いなんじゃなかったの?」

藍子「ふふ、冗談です。だってこれじゃ私の片想いみたいになってるじゃないですか~。ちょっぴり悔しくてっ」

加蓮「はいはい、ここらではっきりさせときたいんだけど、私そういうケはないからね」

藍子「私にだってないですよっ。……ないですけれど……」

加蓮「ちょい待って。ちょいタンマ。待て。なぜ今ちょっと考えこんだ? どうしてもしかしたらって顔してる? ストップ。いやホントにストップ。その話はたぶん私も藍子も得しない。やめよう」

藍子「えー?」

加蓮「本格的に見方が変わる前にやめよう。……うん。それはちょっと……その、うん、ね?」

藍子「うーん……たぶん、私が考えたことって、加蓮ちゃんが想像したこととちょっと違うかも」

藍子「私がどうこうってお話ではなくて、学校の友だちのことを思い出したんです」

加蓮「……そ、それはそれで大丈夫かって聞きたいんだけど。あの、狙われたりしては……?」

藍子「あ、そうではなくて。友だちから聞いた、友だちのお話です」

加蓮「ん? 友達から聞いた友達の……んん?」

藍子「ですから、私の友だちが、その友だちのお話をしていて、それを思い出したってことです」

加蓮「んーっと……、あ、いわゆる『友達の友達の話』ってヤツかっ」

藍子「はいっ。そういうのってたいてい本人のお話だったりしますけれど、今回は本当に、友だちの友だちのお話です」

加蓮「うんうん。どんな話?」

藍子「その……友だちの友だちに、本当にそういう方がいらっしゃるみたいなんです。えっと、りょうとう? って言ってたかな……」

加蓮「男子も女子もイケるってのだったっけ」

藍子「なのかな……? その方も最初は、そういう……その、いわゆる女の子同士……っていうのはなかったみたいで」

藍子「今、お付き合いされている方からいろんなお話を聞いて、ちょっとだけ興味が、ってなっていたうちに」

藍子「ええと……すっかり、ドツボになっちゃったと言いますか」

加蓮「最初からじゃなかったっていうことだね」

藍子「そうですそうです。勇気を出して飛び込んだら、新しい扉が開けた! って力説してました」

加蓮「それって『藍子の友達が』だよね。人の話なのに力説しちゃうんだ……」

藍子「あ、それは私もよくやりますよ。と言っても未央ちゃんや茜ちゃんにですけれど……学校では、あんまりアイドルのお話とかはしていないので」

加蓮「そーなの? 私は割とする方だけどなー。あ、もちろん言っていい範囲でだけどね」

加蓮「具体的には次のLIVEは何日にあるから見に来いオラって感じに」

藍子「さすが加蓮ちゃんっ」

加蓮「伝えた相手の2割くらいしか来ないけどね!」

藍子「あはは……。お金の問題とかスケジュールの問題とかありますから」

加蓮「だねー。高校生に何度もLIVEに来いっていうのはいろいろとキツイだろうし、まあそんなもんかな? ってこの辺は割り切ってる」

加蓮「テレビで見たよー、とかはよく言ってくれるし、私は十分かな」

藍子「あ、それは私もよく言われます。……でも、テレビでもいつも通りだねって、なんだか暖かい笑顔で」

加蓮「さすが藍子」

藍子「今度、私も学校で加蓮ちゃんのお話をしてみよっかな?」

加蓮「……いやいや。学校でアイドルの話をするって言うなら私の話じゃなくて、未央や茜の話でいいでしょ」

藍子「え? どうしてですか?」

加蓮「え? いや、ほら、そっちの方が学校の友達も聞きたいんじゃないの? 藍子って言ったら未央か茜じゃん」

藍子「うーん……本当にアイドルの話はぜんぜんしないから、ちょっと分からないかもしれません」

藍子「確かに未央ちゃんや茜ちゃんとはよくLIVEをやりますし、よくラジオに来てくれますけれど、テレビとかだとそうでもなくて……ほら、どうしても未央ちゃんがニュージェネレーションの方に行っちゃうから」

加蓮「そんなもんか。あー、そんなもんかも。言われてみれば凛もそうだなー。テレビで出る時は奈緒も……いや、奈緒もいないことが多いか?」

加蓮「あ、でも私はよく凛や奈緒について聞かれたりするかも。友達の1人にすごい好きって子がいてさ……あ、別にさっき藍子が話した意味じゃなくてね? 男子女子とかじゃなくて、あくまでファンとして」

加蓮「そんなんいいから私を見ろって言ったら鼻で笑われちゃった」

藍子「えぇ……」

加蓮「あははっ」

加蓮「そういえば未央や茜に私の話をしてるって言ったよね。ね、あの2人、私のこと何か言ってた? やっぱこういうのは気になっちゃってっ」

藍子「そうですね……まず、よく言われちゃうのは」

加蓮「よく言われるのは?」

藍子「私を盗られたーっ、取り返すーっ、って……」アハハ

加蓮「うん、知ってた」

藍子「私がお話をするたびに……ううん、毎回ではないですけれど、よく燃えちゃってます……」

加蓮「なんというエネルギーの無駄遣いを」

加蓮「ってか向こうだって藍子を盗ってるじゃん。あのね、私はアンタらより藍子との付き合いが長いの。横からひょこっと出てきて盗ってたのアンタらなの。その辺分かってないみたいだね」

藍子「加蓮ちゃんまで静かに燃えちゃってる……!」

加蓮「よーし。パーティーの余興第一弾は私と未央のバトルで決まりだ」

藍子「せっかくのパーティーなのにっ。こういう時くらいみなさんで仲良くしましょうよ!」

加蓮「いやいや藍子。パーティーだからこそだよ。みんな浮かれてるからこそ、普段は言えないことが言えるの。やれないことがやれちゃうの」

藍子「だからって……」

加蓮「それにほら、パーティー始まってちょっとまったりしだした時にやれば盛り上がるじゃん」

加蓮「どうせそのうち日和って一緒に歌うってことになるだろうし。大丈夫大丈夫。マジでバトる訳なんてないじゃん。藍子の心配するようなことにはならないよ。所詮は余興。ただのゲームみたいなものだって」

藍子「…………」ジトー

加蓮「……全く信用してないんだね!?」

藍子「加蓮ちゃんが事前にネタばらしをするってことは、たいてい何か隠してるって時ですから」

藍子「これでぜんぶって安心させて、いざパーティーってなったら、またびっくりさせてくるんですよね?」

加蓮「アンタの中の私の評価はいったいどーなって……。今回はホントだよ。これ以上のことなんて考えてないって」

加蓮「こういう時でもなければLIVEバトルなんてなかなかできないしさ。ねっ、許してよ! ホントにただの余興のつもりだからっ」

加蓮「それに、私じゃなくても同じこと考えてる人はいると思うよ? 賭けてもいい、絶対パーティー会場にLIVEセットは持ち込まれるし、LIVEする舞台だって用意されるだろうし」

加蓮「だから、ねっ?」

藍子「……はぁい。もー」シャクシャク

加蓮「ふふ、納得してないって顔」

藍子「…………」シャクシャク

藍子「ふうっ。ごちそうさまです」パン

藍子「でも……そういうのが加蓮ちゃんですよね。じゃあ今日の私は、お客さんとして楽しむことにしますっ」

加蓮「えー? 乱入してきてもいいんだよ?」

藍子「それだと私、未央ちゃんの方につきますよ?」

加蓮「あ、そっか。いやいやパーティーなんだよ、せっかくのパーティーなんだよ。いつもできないことをやろうよ」

藍子「……、……それもいいかも?」

加蓮「おっ、やる気になった」

藍子「じゃあ、その時の気分次第でってことで!」

加蓮「うんうん。私はいつでも待ってるぞー」

藍子「あ、あんまり期待しないでくださいっ。そもそも乱入するかもまだ決めていませんし……」

加蓮「そっかー」




<ボーン、ボーン、ボーン...

加蓮「あれ、あんな時計あったっけ?」

藍子「初めて見ますね。もしかして、新しく入れたのでしょうか」

加蓮「そうかも。前にストーブを暖炉っぽくしてたこともあったし、いろいろ試してるのかもね」

藍子「ですねっ」

藍子「って、もう3時……!?」

加蓮「集合時間は5時だったよね。余裕で間に合うとは思うけど、4時半には出よっか」

藍子「そうしましょう。加蓮ちゃん、しっかり時計を見ててくださいね。私はその……たぶん、気付けないから……」

加蓮「はーい。……前も同じことあったよね。ほら、温泉に行った時」

藍子「ありましたね」

加蓮「誰かさんが変なこと言い出すからカウントの意味なくなったけどー」ジー

藍子「…………♪」ニコニコ

加蓮「あっこの子まったく悪びれてない」

藍子「…………♪♪」ニコニコ

加蓮「あのさ、その、いつ出せば面白くなるかな? って顔するのやめよ? 私の弱味を握ったって顔やめよ?」

藍子「ごめんなさいっ。だって、あの時の加蓮ちゃんを思い出したら……その……ち、ちょっとだけ、またやってみたいかもって思っちゃって」

加蓮「ホントに弱味を握られた気分だよ、もー」

藍子「加蓮ちゃんが変なこと言った時用にとっておくことにしましたっ」

加蓮「ホントに弱味を握られてるんだね私!」

藍子「ふふっ」

藍子「……あと2時間くらいしたら、みんなでパーティーなんですよね」

加蓮「うん、そうだね」

藍子「なんだか変な感じ……なのに私は、いつものようにこうやって、いつものカフェで、加蓮ちゃんとのんびりしてて」

藍子「よく説明できないけれど、とにかく変な感じですっ」

加蓮「分かる分かる。旅行に行く前なのにぜんぜん準備してなくてさ、こんなことしてていいのかなーって感じ」

加蓮「もちろん、準備はぜんぶ完了してて、寝泊まり分の荷物も向こうに送ってるんだけどね」

藍子「はい。……ちょっぴり、そわそわしちゃってるかもっ」

加蓮「それでさっきから妙なテンションなんだ。私のことを変に困らせようとしたり」

藍子「かもしれませんね。パーティーが始まったら、もっとそわそわしちゃうかも?」

加蓮「なにその斬新な犯行予告」

藍子「犯行って何ですかー。ちょっと呼び方と話し方を変えるだけなのに」

加蓮「藍子が私を殺そうとしてるー!」

藍子「人聞きの悪いこと言わないでくださいーっ!」

加蓮「あははっ」

加蓮「…………」ゴクゴク

藍子「……そういえば」

加蓮「ん?」

藍子「いえ。そういえば加蓮ちゃんは……ほら、バーベキューとか事務所でとか、よく未央ちゃんや茜ちゃんとお話しますけれど」

藍子「私は凛ちゃんや奈緒ちゃんとはあまりお話しないなぁ、って思って」

加蓮「んー、そうだっけ?」

藍子「そうですっ」

加蓮「じゃあほら、パーティーでやりたいことリストに追加ってことで」

藍子「そうしますね。加蓮ちゃんと一緒にいたら、遠慮無く、えいっ、って飛び込んじゃいますから」

加蓮「おお、藍子らしくない大胆な発言。さすが隠れパッション」

藍子「そして……ふふっ♪」

加蓮「……あの……あ、藍子ちゃーん? 私すっごく嫌な予感がするんだけどなー……?」

藍子「凛ちゃんや奈緒ちゃんの知らない加蓮ちゃんのこと……ううん、あるのか分かりませんけれど、いっぱいお話しちゃうんですっ」

藍子「ここでのお話とか、温泉でのお話とか……。あと、加蓮ちゃんの知らない加蓮ちゃんのことも!」

加蓮「ちょ、ちょっ! いやここでの話はいいんだけど温泉での話って……それに私の知らない私のことって何!?」

藍子「え? ほら、温泉宿に泊まった日の夜、加蓮ちゃんが寝ちゃった後に寝言で――」

加蓮「やめて! あのね、っていやホントにあの時の私は何言ったの!? いい加減教えてよ! いっつも寝る前になって思い出して頭抱えてるんだけど!」

藍子「…………♪」

加蓮「その顔やめろ!」

加蓮「あのねっ、いい? そうやって凛や奈緒にまで弱味を握られたらなんて言われることか。特に奈緒! 日頃のお返しだって言っていじりまくってくるの目に見えてんの! だからやめて!」

藍子「加蓮ちゃん」

加蓮「な、なに?」

藍子「日頃の行い、って言葉、知っていますか?」

加蓮「…………~~~~!」

藍子「ふふっ」

加蓮「……ねー、あのさー藍子。私アンタになんかした? 最近なんかすごいこう……アレじゃない? こう、アレ」

藍子「ごめんなさい。でも、たまにはいいかなって。いろいろな加蓮ちゃんも見てみたいですからっ」

加蓮「そんな私なんて見なくていーの……」

加蓮「はぁ……日頃の行いはもういいからさ、温泉の時の件だけはホントにやめてよ。あれはその……とにかく、あれだけはやめて。お願い」

藍子「分かりました。ふふ、ごめんなさい。ちょっぴり、調子に乗っちゃいましたっ」

加蓮「ホントだよー……」

加蓮「もー…………」

藍子「……♪」




藍子「あと何分くらいですか?」

加蓮「んー? ……あと1時間くらいかな」

藍子「1時間ですね。……凛ちゃんや奈緒ちゃんのお話をしてたら、早くお話したくなっちゃったっ」

加蓮「じゃあもう出ちゃう? どーせ集合時間より早く来てるでしょ。凛や奈緒がそうなのかは分かんないけど……」

藍子「うーん……でも今は、加蓮ちゃんとの時間ですから」

加蓮「そっか」

藍子「はいっ」

加蓮「……1時間経ったら、4年目なんだね」

藍子「?」

加蓮「ううん。4年目かー、って改めて思っちゃって」

藍子「……きっと、すごいことなんだと思いますよ。私たちはほら、あっという間に来ちゃった、って言いますけれど」

加蓮「だよね。きっと、すごいことなんだと思う」

加蓮「考えなおしてみると……そっか。また1年、続けられたんだね」

加蓮「こんなに長くアイドルをやっていられるなんて、思ってなかったな――」

加蓮「って毎年言ってるんだけど」

藍子「あはっ、加蓮ちゃんらしい」

加蓮「ふふっ。何年目になったら言わなくなるんだろうね?」

藍子「じゃあ、来年から言わないようにしちゃいましょうっ」

加蓮「……ん、そだね、それもいいや。今年もいっぱい頑張って……もちろん倒れない程度にね? ほどほどに、でも自分にできるだけ頑張って」

加蓮「そして、来年の今日になったら言ってやるんだ」

加蓮「え? もう1年経ったの? ま、当然でしょ。だって頑張ったもんね」

加蓮「……って、とびきり悪い顔でさ!」

藍子「……いいですね。それも、加蓮ちゃんらしいです」

加蓮「悪い顔が?」

藍子「そうじゃなくてっ。頑張ったから当然、ってあたりが……」

藍子「加蓮ちゃんは……頑張る自分をもっと信じてあげても、いいと思いますよ?」

加蓮「自分を信じる、かー……それ、私のいちばんの苦手分野だっ。藍子だって苦手なくせにー」

藍子「そ、それはその……そうですけれど……。それなら、一緒に頑張りましょう! 私といっしょに……ねっ?」

加蓮「……そして私の二番目の苦手分野が『人を信じること』なんだ」

藍子「…………むぅ」

加蓮「でも、今日はせっかくの記念日だし、あと少ししたらパーティーだからさ」

加蓮「パーティーだから、いつもは言えないこと、できないことをやっても許してくれると思うんだ。周りの人も、私自身も」

加蓮「ね。だからさ、藍子」

加蓮「来年の今日に、私と――」

加蓮「…………」

加蓮「……………………」

加蓮「……ここから先はパーティーが終わってからで!」

藍子「!?」

藍子「え……加蓮ちゃん!? そ、そこでそれはなしだと思いますっ。さすがに今のは駄目です!」

加蓮「こうしたら何があるのかって楽しみにならない?」

藍子「楽しみになりすぎて逆にパーティーが楽しめなくなっちゃいます~! だから言ってくださいよ、私と何なんですか? 来年の今日に何なんですか!?」

加蓮「ほら、藍子はパーティーが終わったら前の散歩の写真を見せてくれる、で私が前に言ってた気になることを話してくれる」

加蓮「これで平等でしょ?」

藍子「平等なんて言葉、大っ嫌いのくせに~~~!」

加蓮「あれ、よく知ってるね。さすが藍子だ」

藍子「今はそういうお話じゃありません!」

加蓮「なら知ってるでしょ? こうなったら何言っても話してくれないってこと」

藍子「もぉおおおおおお~~~~~!」

藍子「…………」ガクッ

加蓮「久々に勝った」ドヤ

藍子「……加蓮ちゃんのばかぁ……」

加蓮「ふふっ」

加蓮「……ねえ、藍子」

藍子「なんですかぁ……?」

加蓮「パーティーが終わるまで、待っててよ」

加蓮「……勢いで言えるかなって思ったけど、もうちょっとだけ勇気が足りなかったみたいだから」

加蓮「だから、パーティーが終わってから」

加蓮「約束。……約束してくれたら、きっと勇気も出せるからさ」

藍子「…………」

藍子「……分かりました。これで、2つ目の約束ですね」

加蓮「行きたいところにぜんぶ行くってヤツと、パーティーが終わってからの約束」

加蓮「うん――大丈夫」

藍子「もうっ。……絶対に、忘れないで待っていますから」

加蓮「残念。私が二番目に苦手なことは、人を信じることなんだ」

藍子「じゃあ、私が覚えていたら信じてくれますか?」

加蓮「さあね。……それは、その時の私に聞いてよ」

藍子「そうしますね」




加蓮「っと、そろそろ時間。行こっか」

藍子「はい、行きましょう! じゃあ、ひとまず、……ひとまず加蓮ちゃんのことは忘れて」

加蓮「あれ、私ごと忘れられるの!? 私の意地悪を忘れるんじゃなくて私を忘れるの!?」

藍子「それくらいひどかったってことです」

加蓮「声も顔もマジだ……」

藍子「……今、あの続きを言ってくれたら許してあげますよ?」

加蓮「やだ」

藍子「…………」ベチ

加蓮「いたっ」

藍子「じゃ、やっぱり加蓮ちゃんのことは忘れて」

加蓮「忘れんなーっ」

藍子「行きましょうか。パーティー会場へ。きっとみんな……、……何人かだけかもしれませんけれど、加蓮ちゃんのこと、待ってると思いますよ♪」

加蓮「うわぁ、藍子がだんだんダークサイドに堕ちてきてる……! こっち来んなって言ったのに……!」

藍子「落としてるの加蓮ちゃんですからね?」

加蓮「地上に帰れ」

藍子「加蓮ちゃんを連れて帰ります」

加蓮「…………。じゃ、連れてってよ。藍子の行きたい場所に」

藍子「はいっ。行きましょうっ」ギュ

加蓮「ん……手?」

藍子「連れて行ってって言ったの、加蓮ちゃんじゃないですかー」フフッ

加蓮「…………だね」ギュ



おしまい。読んでいただき、ありがとうございました。

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