女「加護?」神「そうです」(72)

前作完結したので新作あげます。

いつもどおり遅筆上等なので我慢してね。

注意

地の文有りだからほぼ小説のような感じです。
書き溜めなしです。
俺tueeeです。
タイトル詐欺だと思います。
一章完結式です。
続編有りの作品ですが第一部完結時しばらく書きません。
きっと長いです。
エロは……たぶんないんじゃないかな?

それでもよければ今晩からあげます。

―前述―

 四月の始め、私は女の子を拾った。

 正確にはすでに家にいたので拾ったというわけではないのだけれど、数日面倒を見ることになった。

 彼の者、名を神という。

 ふざけた名だけれど気にせずにいたら怒られたので殴り倒しておく。

 数日後、私は見知らぬ土地に立たされていた。


女「加護?」神「そうです」

プロローグ

「ただいま」

「あ、お帰りなさーい」

「……」

 おかしい。まごうことなき一人暮らしの私にとって来客以外でこの部屋に立ち入る者はいない。それもこちらが許可した場合に限る。

 不審者、という言葉が浮かび、消えない。

 不審者、だろう。違いない。が、こちらに危害を加える気がないのなら放っておいて問題ないだろう。

>>2
vipから来たんなら自分のレスの異臭にちょっとくらい気づけよ

 靴を脱ぎ、数歩行く。それだけで部屋の中まで行ける狭いワンルーム。それが私の牙城だがそこに見慣れない物が一つある。

 イコール、不審者である。
 
 白いワンピースに黒の長髪のミニマムな女の子が床に寝ころんでいた。
 
「名前は?」

「え? 冷静すぎじゃない?」

「不必要な会話はいらん」

 驚いているというよりは楽しんでいるという顔が少し気に障るが、それだけだ。問題というほど問題じゃない。
 
「人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗るのが礼儀なんじゃないの?」

 不審者なのに面白いことを言う。

>>5

まぁくせぇな。だけどアクション要素入るとこう書くのが一番なんだ。
がたがた言ってくれてもいいがとりあえず書くからがたがた言い続けてくれ。
「」前に名前がないのは面倒だから。あと書かなくてもわかるから。
というわけで続ける。消されない限りな

地の文がどうのとかそういう事じゃねえよww

「言いたくないなら好きにしろ。不審者から格上げしたいなら名乗ることをお勧めする」

「あらーそう思われてたの。ショックだわ」

 不審者が肩をすくめて落ち込んでいるというアピールするのを見て、私は部屋を出た。
 
 玄関すぐには冷蔵庫があり、そこからいくつか食材を取り出す。
 
 その様子に不満なのか、不審者は、

「おい、無視すんな」

 立ちあがって寄ってきた。
 
 包丁を取り出し、調理を開始しだす。とりあえず全て小さく刻んでから何を作るか考えよう。

>>8
そうか、困ったなぁ。どうしよう。
変なのはわかるんだけどその張本人は普通どこが変かわからないものだしな。
書くのをやめろっていうなら言ってくれ。書くけど

「あのさぁ、無視すんなって言ってるでしょ!」

「……なんで?」

「私が話してるから」

 知らんと一言短く告げ、手元に集中する。
 
 次々とみじん切りにされていく野菜を見て、ふと思う。
 
「お前……の分はない」

「……」

 沈黙は了承でいいだろう。
 
 くだらないことで止めてしまった手を動かし始めると視界の端でちらつくものが見えた。

>>10

馬鹿にもわかる解説助かる。次から控えよう。今回は我慢してくれ。やっちまったんだ。

では書く。

 こぶしが握られ、振りかぶられる。
 
 子供らしいゆっくりとしたパンチを軽く振り払う。
 
「あ」

 振り払った、間違いなく。利き手で。
 
 包丁を持ったままの利き手で。
 
 少しの抵抗を感じ手を引くと、赤い、赤い血が尾を引くように噴出しあふれてきた。
 
「……」

「……」

「……いった!?」

 不審者は自分の腕を眺め、目を丸くして驚く、それだけだった。
 
 何度も甲を返してはあふれ続ける血と腕を見続け、しまいにはこぼれる血を勿体ないとでもいうようになめとりだす。
 
 これは、料理してる場合ではないな。
 
 ざっくりいったというのにひどく落ち着いてる不審者は本人的に大事ではなさそうなのでまず包丁を浚う。
 
 洗剤をつかいほぼ完全に血糊を浚うと元の、刃こぼれ一つない刀身が現れ、ひとまず胸のつかえがとれた。
 
「大丈夫か?」

「え……うわーいたいよー、死んじゃうよー」

「……」

「ちょ、もう一撃はシャレにならないから! これ以上のスプラッターは色々シャレにならないから!」

 冗談だ、と刃を引くと不審者はため息をついて傷ついた手の血を振り払った。

 ひどく汚らしい音を立て床を汚すと、彼女は台所で手を濯ぐ。
 
 血は、もう流れていなかった。
 
「……」

「はっはっは。びっくりしたかい? こんな傷、傷とも思わないのさ。だからもう一撃加えようとしないでくださいお願いします」

 三秒ほどにらみあい、包丁はまな板の上に置いた。
 
 明らかにしっかりと警戒のまなざしを説いた彼女は、
 
「そういえば言ってなかったよね。私の名前は神。まんま君たちのいう神様なんですよ」

 言った。たわごとを。

今日はここで終了です。なんか微妙な感じですね、感想。
明日は昼ころ少しあげれればいいと思ってますんでまててね

「……そうか」

「あ、信じてないでしょ。まぁいいんだよ、大体皆そんな感じだから」

 トントンとまな板を包丁が叩く音が響く。
 
 それ以外、音はない。
 
「おいっ! また無視なの!?」

「無視するも何も話は終わっただろ」

「終わってない! いい、私は本当に神なの! 神様なのよ!」

「だから?」

 いい加減やかましく感じるが、手元は安定している。いまだ何を作るかは決まっていないが困ったら肉と野菜を煮込めばいい。

 ぱっと、思いつく。煮込むならカレーがいい。トマトやらキャベツやらも入るが許容範囲内だと信じて。
 
 冷蔵庫に手を伸ばせば小分けされたひき肉の山が見え、そこから一つ、それにルーもつまみだす。
 
 それを台所のあいているところに置いて、下の戸から少し大きめの鍋を引きずりだして、コンロに置いた。
 
 そしてサラダ油に手を出した時、隣りから声がした。
 
「……信じてるの?」

「……」

 信じているか、問われた。
 
 答えるならば否。そもそも神様が何なのかわからない以上何も言えない。
 
 だから、

「神ってなんだ?」

 私は馬鹿正直に尋ねるしかできない。
 
「いや、神は神でしょ?」

「なら神は何をする?」

「よくぞ聞いてくれました!」

 彼女は急に笑顔になると大音量でこちらに話しかけてきた。
 
「実はね、私たちは人に加護を与えてるんですよ」

「加護?」

「そうです」

 だ、そうだ。もう興味はない。
 
 火をつけ、一回り油を注ぐ。温まれば肉を入れ良く混ぜればいい。
 
「ちょ、それだけですか?」

「まだ、なにかあったか?」

「いや、加護についてもうちょっと掘り下げたりとかしないんですか?」

 いや、別にと一言添え、料理に戻る。
 
 話が長くなりすぎたか、少し煙が立ち始めた鍋にひき肉を投げ入れる。手早く混ぜても少しそこにへばりついてしまったのが悲しい。
 
 油のはじける音と肉の焼ける匂いが空腹を誘う。

 それを彼女はまたさえぎった。
 
「えー聞いてくださいよ、聞いてくれなきゃ何のためにここに来たんですか?」

「知らん。というか邪魔するな。話したいなら勝手に話せ」

 薄情者、という言葉が聞こえた気がした。気のせいに違いないけれど。

「いいですよ、私は勝手に話させてもらいますから」

 そういうと彼女は会話するように一人ごとを語り出した。
 
「えーまずこの世界は結構生きにくいところでして、私たち神が守らないとすぐに死んじゃうんですよ。その守るっていうのが加護なんです」

「……」

 ひとしきり炒めた肉に絡めるようにみじん切りした野菜を混ぜ合わせる。
 
 少しだけ奇妙な、しかしちゃんと食欲をそそる香りが鼻腔に広がっていく。
 
「で、ですね。生まれ落ちた瞬間からそこらへんに漂ってる私の素晴らしい気品に満ちた気配に向かって自分のオーラ的な何かを伸ばし、絡ませるわけで。それができない子はすぐに死んでしまう、運よく生き延びても相当なハンデを負うんです」

「へぇ」

 相槌打つも興味はない。
 
 野菜にも火が通ったところでルーと少しの水を足せばもう煮込むだけで終わる。ご飯は釜に残っているはずなのでそれをよそってしまえば待ち望んだ食事の時間だ。
 
 
「そしてあなたは私の加護を受けていない!」

「……は?」

 ぴたっと手が止まる。
 
 話半分で聞いていたけれど話自体は覚えている。
 
「つまり私は問題有りなのか?」

「ええ、ええ。だから話中にご飯よそるのやめなさい!」

「それはできない」

「えー」

 ご飯にルーをかけ、居間に向かう

 後ろから不満そうな声を出しながら付いてくる神は、

「で、なんでそんなにぴんぴんしてるの?」

「……昔は病弱だったから鍛えたからかもしれん」

「いや、人の加護をそれだけで代用できたら私いらんでしょ」

「……いらんな、私にとって」

 ことっと皿を置き、いただきますと合掌する。
 
 カレーらしいカレーの香りにきっとまぁまぁな出来だろうという判断ができる。
 
 が、それが気に入らなかったらしく、

「もっと私を尊重しろー!」

 神はテーブルに両こぶしを叩きつけようとしていた。
 
 叩きつけられると確実に皿が吹き飛ぶので皿を少し持ち上げると、ひどい音とともにテーブルが砕けた。
 
「おい」

「ふっふっふ。神様あなどぶっ!?」

 右ストレート、一発。
 
 ひどい体制から伸びた腕は神の顔面真正面を捉え、吹き飛ばす。二転三転して壁にぶつかると震える手で顔を抑えていた。
 
「弁償、な」

「……う、鬼、ですか。あなた」

 ひどいこと言うなとカレーを食べる。味は、うん、まぁまぁ。すこし酸味が強い。
 
 神はよろよろと立ちあがると押さえていた手をどかした。下からは少し涙目になった、傷一つない顔がある。その回復力がうらやましい。
 
「で、加護の利かない私に何の用なんだ?」

 カレーを食べながら尋ねると、神はまだふてくされた表情のまま、
 
「いや、様子見と、出来れば願い事の一つでもかなえてあげようかと」

「いらん」

「欲ねぇな、おい」

 それより今はカレー食べたい。
 
 神は言うが、欲深いほうだ。もっと強くなりたいしもっと強さが求められる状況がほしい。
 
 気付く。この世は暇だ。
 
 日常にピリピリとした殺気はなく、町を行けば犯罪は見当たらない。武力は虐げられ常識と経済力、政治力がものをいう。
 
 暇だ。
 
「なぁ」

「何ですか?」

「暇、だなぁ」

「飯食いながら言うセリフでしょうかそれは」

 別にいいだろうと最後の一口を平らげ、合掌。
 
 すぐに流しにもっていきながら、
 
「そうだなぁ、某世紀末漫画みたいな、あれよりもっと救いのない詰んだ世界を一年で詰んでない世界にするとかだったら面白いんだろうな……」

 ぽつっといった、何も考えていない一言から話が進んでいくことを私はまだ知らない。

次回から一章スタートです。

ようやく地の文の感覚を思いだしてきたのでもう少し早く行けると思う。

では今晩また

まだ夜だ、ではスタートです

「……」

 目が、覚めた。
 
 目の前には木陰越しの太陽が覗いている。
 
 まぶしいというわけではないけれど、暑い。
 
 確か季節は春先だったというのにすでに初夏を過ぎたと思えるほどの気温の高さだ。
 
「……ベンチ、か」

 どおりで寝にくい訳だと納得して体を起こした。
 
 少し寝ぼけた眼をこすりながら見える景色は見覚えがなく、少し錆びた遊具がいくつかと囲むように立ち並ぶ新緑の木々が目に入る。

 そこは、知らない公園だった。
 
 ゆっくり立ち上がると、その高くなった視界から様々なものが見える。
 
 木々の向こうにはアスファルトがあり、さらに奥には数階建のビル群が並ぶ。
 
 公園も大して広いものではないようで子供が野球するには少し手狭に感じるだろう。
 
 目覚める前は自称神な女の子の隣で寝ていたのできっと彼女の超常的な力でどうにかされたと思う。他に寝ている私を連れ出す方法はない。
 
「……」

 しかし、だとするとすることがない。
 
 夢であろうが現実であろうが何かしらの意図があってこのような行為に及んだはずなので私が何もせずとも、例え何かしても向こうから何らかのアクションがあるはずである。ただ外に日干ししてみましたなんてことはおそらくない。
 
 となると、
 
「……暇だな、寝るか」

 堅いベッドでも地面よりはマシだろう、そう考え寝転がる。
 
 耳には蝉の声と葉のこすれる音が。ビルが立ち並び、道路が隣にあるというのに人の気配、雑踏というものはなかった。
 
 時折吹く風が溜まる熱気をかき消し、心地よいものにしてくれる。
 
「……」

 ひどく穏やかだ。それこそ、怖いくらいに。
 
「……ん?」

 何か、到底形容しがたい何かが何かした。そうとしか言えないほど微弱な気配があるような気がする。
 
 そして、それはすぐに確信に変わった。
 
 まず、揺れ。
 
 疑惑から確信に変わったとき、叩きだされるような縦揺れが薙ぎ払うかの如く横揺れに変わる。
 
 あまりに長く大きい揺れにベンチのボルトが外れ地面に投げ出される。あぁ厄日だ、服が汚れた。
 
 いたるところから全てが終わるかのような音が響く。先ほどまで立ち並んでいたビル群は崩れていき、砂塵が襲うように舞っている。

 それを手で払いつつ見るに、ビルとは別のものがそこにそびえていた。
 
 隆起した地面は巨大な壁となり地深くまで裂く地割れは果てが見えない。
 
  地震のものである揺れは収まっても依然全壊する建造物が銅鑼よろしく地面を叩く。
 
「……おー」

 地震発生から十分に時間がたった時、まさに地獄と呼んで相違ない光景が広がっていた。
 
 いまだ立ち上がる土煙りに混じり灰煙がいたるところから立ち上る。先ほどまで一人の声もなかったというのに、奈落の底から響く怨嗟の音色が果てからも届く。
 
 服に付いた砂埃を払いながら思うのは、ここだけは異常なほど被害が少ないということ。
 
 明らかに人為的な策をもって行われたに等しいほどそこは被害がない。もともと何もなかったとはいえ隆起も地割れもない。

「……」

 見ているのだろうか。気配はないがそれくらいできそうな気がする。
 
 例えこれが神の仕業であろうと関係はない。これからどうするかのほうが大切である。
 
「しかし……」

 見事なまでに全てが崩れたそこで出来ることが特に思いつかない。私は一体何をすればいいのだろうか。
 
 長期戦を見越してなのか短期でいいのか。短期ならばその時まであるもので食いつないでいくだけなので何も苦労はないがその確証は今のところ何もない。
 
 となると長期間を想定しておくべきなんだろう。
 
 ぼろぼろに崩壊した世界、まず、公園からでようか。

「……暑い」

 日照りと火災。両方が襲いかかる。
 
 近場を歩いてみたものの生存者らしきものはなく、使えるものもない。
 
 唯一救いなのが砕け散った自販機からまだ無事な飲料水がいくつか手に入ったことだろう。
 
 思い返したかのようにたびたび起こる地震は常に地形を変化させ、悪化させていく。
 
 もともと土地勘がない上に来た道をふさがれてしまうとあいまいな方向だけが頼りになり、結果元いた公園にはすでに戻れなくなっていた。
 
 せめて一人でも生存者がいればと、切に願ってしまう。
 
 しばらく歩くとビル群を抜け、元は住宅地だっただろうところに出た。

瓦礫が幾分か少ないおかげか見通しはましというほどにはなっている。
 
 つまりここもほとんど崩壊しているということなのだが。
 
 ビル群に比べると火災がひどく、端に立っているというの熱気が頬を焼いてくる。

 それでも生存者の一人くらいは見つかるだろうと思い足を進めるしかない。

 熱気を不快に感じながら歩く。汗は不思議と出ないが皮膚表面が焦げているのではないかと思うほど熱い。

 どれだけ歩いても生存者は見当たらず、真っ黒い何かなら腐るほどあった。

 火の勢いは依然激しいものの山場は過ぎたようですでに下火になっているところも見受けられた。

そんなに時間がたった気はしていなかったけれど皆避難が終わってしまっているのかもしれない。

「……」

 ふと、そんなことを思っていたとき、ひどく微かだが声のようなものが聞こえた。

 渦巻く火炎のせいで距離まで把握できるほどしっかりは聞こえなかったが方向だけなら何とかわかる。

 が、その方向には火柱が。

「……」

 抜けよう。

半壊した建物はあちらこちらが延焼していて回りこんでも土地勘のない以上目的の方向にたどり着ける可能性が低い。なら目的地まで最短ルートを選ぶほかない。

 といってもこの炎の中を普通に進んでは焼死してしまう。

 どうしようかと考え、そして実行す。

 手にしたのは近くに落ちていた鉄筋。触れると少し熱を持っているのがわかるがやけどするほどではない。

 長さはそれほどでもないもののかなりの重量がある。それを持ち上げると近くの電柱にスイングし、砕く。

 五回目の衝突でようやく傾き始めたそれは少し斜めになったところでとまってしまう。

 そこを駆け上がる。

足場のボルトを強く踏みしめるたびに傾斜はなだらかになっていき、電柱を支えていた電線が次々に千切れていく。

 先端部分の変圧器に足をかけたときには電線がすべて千切れ、地面に倒れるだけの電柱がそこにあった。

 電柱自体はその家屋の方向に倒れている。が、距離が足らない。

 現在燃焼中のところに突っ込むのもあれなので飛ぶ。

 高さはビルの二階と三階の間程度。死にはしないけれど怪我はしたくない。

 仕方がないので服を汚す。着地の瞬間横に転び、そして何かにぶつかった。

「うわっ!?」

 ぶつけた衝撃で倒し、そのまま上になる。

 久々の生きた人間だ。丁重に扱わなければ。

「誰だ、お前?」

「……お、俺が聞きたいんだけど」

 しゃべりにくいのか声が小さい。首を軽く絞めているせいだからだろうけれど。

「……雑魚か」

「あの、俺何かした?」

不意をついたとしても反撃しようとする気はなく挙動も一般人のそれと大差ない。爪を隠していてもさほど鋭くはないようだ。

 馬乗りからどき、手を差し伸べる。それは素直に手をとり立ち上がった。

 男、冴えない顔の中肉中背。おおよそ私が遅れを取る相手とは思えない。

 ならば必要な情報だけ聞いて捨て置くか。

「いろいろ聞きたい。いいか?」

「あーなんていうか自己中心的な性格してるよね」

「? 言われたことはないな」

「oh……」

 付け足そう、地味に失礼な奴だ。

「とりあえずここはどこだ?」

「一発目からよくわからない質問するね。他所の人?」

「それを確かめるために聞いてるんだ」

「……はいはい。ここは渋川だよ。しかし災難だねこんな未曾有の大災害が旅行中に起きるなんて。神様にでも相当嫌われてるんだろう」

 渋川、か。

 聞きなれた名前だけに現状を理解しがたい。

「どうした? なんかまずいこと言った?」

「いや、なかなかユーモアにあふれてよかった。確かに神とやらにはずいぶん嫌われているだろうからな」

「……」

 渋川。県の中央に位置し、私の現住所。しかしあんなビル群は存在していなかったし、周囲はしっかり山で囲まれているもののそれらも奇妙な違和感を感じ得ない。

 簡単に言えばまるで別の世界に来たようだ、と。

 まだ同名の土地に来た可能性もあるが、はたしてという感じだ。

「そういえばこんなところで何している?」

「え?」

 すこしどもり、目をそらされた。

 それに思い当たる節もあり、

「火事場泥棒か」

 かすかに上がる肩に確信を得た。

「いや、そういうわけじゃないんだよ。ほら生き残った人は皆避難しちゃってるし何より情報が少ないからね。まだ壊れてないラジオでもあれば心休まる人も多いんじゃないかなぁって……」

「……」

「……はい、ごめんなさい。でも人の金銭に手を出すつもりはなかったんだよ、ここだけは信じてくれ」

 信じるも何も生きるためなら少しは仕方ないだろうと思うが言わない。

「そうだ、君の名前は? 家族とか心配してないの?」

「名前か」

 迷う。告げるべきか告げぬべきか。

 が、何をすることもできないだろうと目の前の人物を評価する。

「私は女だ」

「僕は男、よろしく」

 差し出された手を受けず、私は歩き始めた。

お久しぶりです。ここで一応1章完です

まともに話が始まるのは次の2章から。

あしたあげれればいいな

「とりあえず私の用意した世界は満足いただけたかな?」

「意味がわからん」

「おうふ」

 落胆という心情が伝わる。私が何をした。

「一応君が願ったことなんだよ?」

「……」

「……いやもういいよ。覚えてないなら。こっちはこっちで時間ないしね」

「そうか」

「興味ないんかい。自分のことだよ?」

 だから? といったつもり。

「あーあーそうだよ。そういう人だよ、あんたは。とりあえずなんていうか別世界用意してそこをぶっ潰しておいたから一年たったら迎えに来るから人民でも統治して待ってろ!」

「何怒ってるんだ?」

「怒ってないよ! なんとなくむかついてるだけ!」

 それは怒ってるんだろう。言わないけど。

 ただ私はうなずき、目を閉じることにした。

「ほんと、私の影響を受けにくい体質の子ってやだわぁ……」

「……」

 目が覚めた。

 ひどく長く胸糞悪い夢を見ていた。それをしっかりと記憶していることもまた胸糞悪い。

 夢、で片づけられることならいいのだけれど、あれの場合事実ととって相違ない気がしてならない。

 が、どちらでもいいか。

 上体を起こし見渡すにどこかの部屋のように思える。

 何もない殺風景なところだがかえってそちらのほうが落ち着ける。

「あ、起きた?」

 声に反応して動きそうになる体を押さえ顔だけ向ける。

 床に寝そべるのは昨日会った男で今日も冴えない表情でこちらを見る。

 思い出したのは昨日猛火にうんざりした旨を伝え連れてこられた地下の部屋。

 上には普通に一軒家があったのだろうが昨日のうちに倒壊していて掘り起こして出てきたのがここというわけだ。

 男曰く、作ったはいいものの必要のなかった地下室らしい。

 もともと男の祖父母宅で、その二人もなくなり、両親は他県に家を建ててしまったので売り払おうかと思っている際、大学近くということで間借りしているのが男というわけだそうだ。

 そんな事情はどうでもいいけれど、積んであった冬物の毛布類があったのだけは行幸といえた。

「おはよう」

「……お、おはよう」

 男が少しおびえたように返事をするのが気になる。何をした、私が。

 それとは別に気にかかるところがある。

 そう、尿意が来た。

 朝だし、仕方ない。

「少し外に出てくる」

「え? あぁいってらっしゃい」

 立ち上がり、軽く体をゆすりながら出口まで行き、扉を押し上げる。

 夜にも地震は何度もあり、そのせいで扉も少しふさがれてしまったようだけれど気合いで持ち上げる。

 灰混じりの空気が顔を薙ぐ。

 全身外に出たとき、そこはあまりにも現代ではなかった。

 視界には瓦礫や灰、さすがに火の手はもう上がってはいないものの、凄惨と呼べるものはあった。

 少し見渡せば隆起した大地が壁のように広がり、山のようにそびえたつ。

 いやはや、絶景かな。

 人は、いない。男の話だと生き残った人はまだ比較的被害の少ない地域に移り救援を待っているそうだ。

 そこはかなり広い公園であるが、それでも全ての難民をかくまえるほど広くはないらしい。

 総合するに、今日明日も厳しい人が多くいるということだろう。

 そんなこんなでここらに人はいなく、朝露で少し湿った空気を堪能しながら私は用をたす。

「あ、おかえり」

「あぁ」

 帰ってきて一番にそういわれ、適当に返す。常識としてちゃんと答えてやればよかったと後悔。

「外、どうだった?」

「火はない。人もいない。生きてるやつは帰ってきてないようだな」

「うーん、無理だと思うよ? 昨日見つけたラジオはなんの反応もしてくれないから局自体がなくなってる可能性あるし、結構被害ひどいみたいだね」

「局が?」

 多少山間にあるとはいえ電波が拾えないほどではない。となると被害は全国にまで及ぶ可能性もある。

 そんな地震などありえるのだろうか。

「震源地からかなり遠いここですらこの被害だからね。正直震源地付近には行きたくないね」

「震源地からどのくらい離れてる?」

「計算したらだいたい二百ぐらいかな。でも誘発したのもあるっぽいけど、あ、体感だよ? あんまり当てにしないでね」

「いや、助かる」

「もっというならここですら震度は六強を超えてるから震源地は未曾有の大地震に襲われてる可能性あるしそこまで大きいと火山も活発に活動してないとも言い切れない。まさに地獄って感じ」

 すこし悲観的な意見もおおいが男の言っていることは納得できた。まちがいなくこれ以上にひどい状況を自然的に作り上げることはかなり難しいだろう。

 なら、することは一つ。

「おい」

 声をかけた。

「何?」

「外に行くぞ。生き残るために」

「……そうだね」

「で、どうする?」

 俺の声にしばらく黙っていた女が話す。

「そうだな、問題なのはまず食料、ねぐら、あとは安全な土地だろう」

 彼女の言葉、特に最後のものが引っかかる。

「それって間違いなく人為的なもの含まれてる?」

「あぁ。どうせ警察組織などまともに機能していないだろうし人の心にそれほどの余裕があるとも思えない。いずれ血は流れるさ」

 その発言は悲観というよりか、むしろ、

「……楽しんでない?」

「心外だな、おい。人が虐げられる可能性があるのを喜んでみていられるほど人間腐ってはいないさ」

 ごめん、といいかけたとき、彼女はただ、とつづけ、

「私を殺せるような強い奴はそういったほうが生まれやすい。ただそこ一点は喜ばしいな」

 結局楽しんでんじゃん。

 彼女の後ろ姿についそういいかけるが、、いったら消されてしまいそうなのでやめておく。

 本当に、怖い。自分よりも若く、小さいのに。

 まぁ、もともと武道派じゃないんでいいんですけど。

 歩く彼女の後ろをついていくとおおよそ平常時には見られない、そして今まで嫌というほど見慣れたものが目に飛び込んでくる。

 ひしゃげた車、瓦礫と化した家屋、そして焼死体。

 吐くとかそういうのは昨日のうちに済ませておいたとはいえ見ていて気持ちのいい物じゃない。そんな中をひたすら歩み続ける彼女も同じように思ったりするのだろうか。

 しばらくすると、彼女は立ち止まり、続いてとまった俺の方を振り向いた。

「聞き忘れていたことがあった」

「何?」

 昨日少し話しただけでわかる。彼女は人と話すことが嫌いだ。必要な情報を必要なだけ得ること以外では会話というものをする気ないらしい。絶対友達はいない。

「三つ。食料を得られそうなところはどこか、生存者が避難しているところはどこか、だだっぴろい元は畑だったような場所はどこか」

「……」

 絶句。そうとしか言いようがない。

 明らかに目的があって進んでいたように見えて実はただ歩き回っていただけ。どうしてそれを最初に聞かないんだ。

 ため息が漏れたのは仕方ない。拒否権なんてないだろうし話すとする。

「食料ならスーパーでいいのかな? もしかしたら避難所に救助の人が来てたり備蓄があったりするかもだけど」

「スーパーだな。備蓄はうらやましいがそこに行くのはまだ早い」

 なにが、といいかける。聞いても答えてくれないだろう。

「あと農場はここから結構離れた場所にあるからどんな状況かわからないよ?」

「かまわん。用があるのは土地だけだ。あと種苗店があるならそこにも連れて行け」

「はいはい」

 彼女はどうやらこの荒廃した土地で本気で生きていくらしい。

「じゃ、ついてきてね」

「早く行け」

 あぁ、本当、友達いないだろこいつ。

「ふむ」

 女が納得したようにうなずくのに俺はとうとう気でもふれたかと思った。

 スーパーまで来たもののそこはすでに廃墟で、廃墟らしくガラの悪そうな人物が占拠していた。

 瓦礫の中には燃えカスも見当たるためどこかしら燃焼したのだろうけれどまだ彼らがいるということは中身はいくつか無事なんだろう。

「どうするの?」

 聞くまでもない、撤退だろう。食料は心惹かれるけれど急を要するわけでもない。最悪でも数日すれば配給もあるだろうしほかに心優しい人や避難所に行けば食には困らない。

 それにあの人数だ。どういう関係かわからないけれど十人以上いるそこに向かうだけでも無謀だ。こんな状況で気が立っていないはずがない。何されるかわかったものじゃない。

「そうだな。すこし考えるか」

「いや、あきらめようよ」

 何を考えているかまったくわからない。どうしてそこで思考する必要があるんだ。

「まずはな、あいつらは食料をどう使うかだ」

「は?」

「いや、有効に使うというならば私は譲る。が、暴飲暴食に明け暮れ略奪を繰り返そうというならすべて奪うのも世のためだろう」

「……」

 満面の笑みを浮かべる女にこいつのほうがあくどいとしか思えない。

「というわけでだ。略奪等人道から外れるような行為をしてないかなんだが……」

「……してるね、暴飲暴食。強姦をしてないのは女がいないからだろうとすら思えるよ」

 よし、というつぶやきが近く、否隣から聞こえたと思いたくない。

「……言っとくけど俺は絶対何があっても手伝わないよ」

「いや、やってもらうことがある」

「……拒否権は?」

 ない! と威勢のいい返事にため息が漏れた。

「で、なにすればいいの?」

「あぁ。簡単だ、台車がほしい」

「待て」

 その一言に女は怪訝そうに眉をひそめた。

「一人であれだけ相手するつもり?」

「別に喧嘩するつもりはない」

 あ、そうなのかと安堵。さすがに多勢に無勢だ。

「一方的な粛清だ」

「おい!」

 ついつい声が荒げてしまう。

 無理だ、無理だで聞く相手ではないことはわかっているけれどそれでも言わざるをえない。

 情が移ったんだからしょうがないじゃないか!

「無理、やめよう。絶対無理だから!」

「……」

 俺の一言、それに対して女は深くため息をついた。彼女曰く間違っているのは俺らしい。

 あのな、という前置きの後、

「私ができるといったことは必ずできる」

「根拠は?」

「私が私だからだ」

 おいおいおいおい。

「無駄話はここまでだ、行け」

 無駄呼ばわりされ、かつ手払いされる。

 もう知らん。好きにしてくれ。

 女に背を向け歩き出す。

 ……。

 台車ってスーパーの横にあるよなぁ……。

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