京子「猫になっちゃった!」 (33)
<理科準備室>
京子「西垣ちゃーん」こんこん
奈々「おお歳納。終わったか?」
京子「終わりましたよー課題……大変だった?」
奈々「はっはっは、これに懲りたらもう宿題を溜めないことだな」
京子「それにしても量多すぎ……勘弁してくださいよ先生?……もうみんな帰っちゃいましたよぉ」
奈々「それは歳納の自己責任というものだろう……と言いたい所だが、確かにこんな時間になるまで済まなかったな。何か褒美でもやろうか?」
京子「わーい! 何くれるの!?」
奈々「そうだな、この部屋には何かいいものは……」
京子「あっ、これ何? この青い液が入ってる小ビン」ことん
奈々「ん? それは…………なんだっけな? 私も忘れてしまった。 “NN” って書いてあるな」
京子「どういうこと? 何かの略かな……」
奈々「ネムクナクナールとかだったかな。偶然調合が上手くいって、なかなか面白い薬ができたってのは覚えてるんだが」
京子「わー私これがいい! 久しぶりに勉強しすぎて疲れちゃたけど遊ぶ時間が欲しくてさー、これならしばらく寝なくても大丈夫なんでしょ? これ貰うねー!」ぴゅーん
奈々「あっ、おーい! …………ったく、行ってしまったか」
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?
<歳納家>
京子「えっへっへ、これ飲んでコムケの原稿がんばろ! 今回こそは早めに印刷所に持ってくぞ?♪」
京子「んっ……」くびり
京子「……ふぅ、丸々ひとビン飲んじゃったけど大丈夫だよね」
京子「よ?し、原稿原稿……」むずっ
京子「ん?」むずむず
京子「ん……ん?? な、なんだか顔がくすぐったい……」もみもみ
ぴょん
京子「ひぇっ!? な、なにこれ髪生えた! ……ってこれ髪じゃない、髭だ!///」
ぴょこん
京子「うあああ! 変な毛むくじゃらの耳生えたぁ! なんなのこれ?!?」
しゅぅぅぅぅ……
京子「うあああぁぁ?……!」
もくもく……
京子「…………」
京子「……んにゃ?」もぞもぞ
京子「んみゃおぅ……にゃあん(なんだったんだろ今の……)」
京子「……にゃ?(あれ?)」
京子「にゃ、んみゃ……?(何この手の肉球的なものは……)」
鏡ちらっ
京子(……ね、猫がいるんですけど……)
京子(…………)顔もふもふ
京子「んにゃ?????!!!///(んわぁーーーーーー!!)」
京子(ねっ、猫になっちゃってない……私……っ!?)
京子(ありえないありえないありえなーい!)ぐるぐる
京子(うぁぁ……嘘でしょ……)ぱたっ
ヴーっ ヴーっ
京子(あっ、携帯が……)
京子(もー! 肉球だからタッチパネルが反応しないのかな!?)ぺしぺし
京子(あ、できた!)
『おっ、もしもし歳納か!?』
京子「にゃにゃんにゃ……!?(その声……西垣ちゃん!?)」
奈々『んん? なんだかにゃんにゃん聞こえるが……まあいい、よく聞け? 今日お前に渡した薬の効能なんだが……どうやら不眠作用などではなかったようだ!』
京子(ま、まさか……)
奈々『あの薬の名前……NNはネムクナクナールじゃなくて、ネコニナールだったんだ!』
京子(ネコニナール!?)
奈々『あれを飲むと猫になるんだ』
京子(さらっと言うな! とんでもないことでしょ!///)
奈々『にゃんにゃん聞こえるってことはもう飲んでしまったのか……待ってろ、今猫語翻訳機を持ってくるから』
京子(そんなの持ってんのかいぃ!)
奈々『むぅ、それにしても、こうなってしまったことにはやむを得んな。今から緊急で解毒薬を作ろうと思うんだが……ちょっと問題があってな』
京子(問題??)
奈々『解毒薬を作成するための材料が手元にないんだ。それを調達するのに数日、作成するのにも数日かかるかもしれん……』
京子(数日!? そ、そんなの待てないよ……!)
奈々『そしてそんな数日を待つ間に、薬の効果の方が先に切れるだろうと予想している。ちなみに効果期間は丸1日ほどのようだ』
京子(……ってことは、明日の夜まで猫のまんまってこと!?)
奈々『うむ』
京子(うむって!! その間親とかにはなんて説明すればいいの!?)
奈々『親か……まあ、1日程度ならその辺は協力してなんとかやりすごせるだろう。船見に頼んで家に遊びに来てるとでも説明させておこうか。幸い明日から土日だしな』
京子(なんじゃそりゃ……)
奈々『とにかく1日耐えてくれ! 居場所がないなら私の家に来てもいいから』
京子(う??……)
奈々『大丈夫、歳納なら乗り切れるはずだ。私はそう信じてるぞ、じゃあな』ぷつっ
京子(こらー! 切るの早いわー!///)ぺしぺし
ぷー、ぷーっ……
京子(なんてこった……猫になっちゃうとは……)
京子(もう夜10時……親は来ないだろうけど、このまま部屋にいても仕方ないかなぁ……明日のごはんも貰えないだろうし)
京子(しょうがない、こうなったら外に出てみよう!)たっ
?
京子(割と高いところから落ちても着地できるみたい……こういうとこは便利だな)しゅたっ
京子(でもこれからどこに行こう……本当に西垣先生のところに行った方がいいかな?)
京子(あ、でも西垣先生の家なんとなくの方角しかわかんないんだった)
京子(あーもーどうしよ! 説明できないけど結衣の家に行っちゃおうかなぁ)
京子(ん……? 誰か歩いてる)ぴくっ
「…………」てくてく
京子(あの後ろ姿……千歳だ!! お?い千歳??!)
千鶴「ん?」くるっ
京子(あ、千歳じゃなくて千鶴だった)
千鶴「なっ……ね、猫……!///」どきーん
京子(こんな夜に……コンビニでも行ってたのかな? まあいいや、助けて千鶴?!)すりすり
千鶴(か、可愛い……可愛すぎる……!)なでなで
千鶴「首輪してないんだ……キミ、野良猫?」
京子(いぇーす!)
千鶴「ええと、何かあげられるようなものは買ったっけな……」ごそごそ
京子(お、何かあるの!?)
千鶴「……だめだ、アイスしか買ってなかった」
京子(アイス!? アイス超ほし……あ、だめだ、今猫だった私……)
千鶴「うちにくれば色々あるんだけど……どうしよう」
京子(お、いい流れ……! 千鶴?お願い、1日でいいから私を飼って?)すりすり
千鶴「でもこんなに綺麗な毛並みの猫……誰かの飼い猫に決まってるよね」
京子(あれ!? ちょ、やばい!)
千鶴「惜しいけど……うぅ……ば、ばいばいっ!」
京子(わー! 待って!)たたたっ
千鶴(あんまり構い過ぎると愛着が湧いちゃうから……ごめん!)たたたっ
京子(このままついていくしかないな……今は千鶴が私の命綱なの!)
?
<池田家・玄関前>
千鶴(はぁ……あの子、可愛かったな……)てくてく
京子「にゃおん」
千鶴「えっ!?///」びくっ
京子「んみゃ?♪」
千鶴「ちょ……着いてきちゃったのっ?」
京子(お願い、私を飼って!)すりすり
千鶴「うぅ、どうしよう……もう夜も遅いし、今日はとりあえずうちで預かった方がいいのかな」
京子(そうそう!)
千鶴「…………」じっ
京子(…………)じーっ
千鶴(やっぱり可愛いすぎる……!///)ぎゅっ
京子(お、おおう……?)
千鶴「……わかった。今夜はうちにおいで」くすっ
京子(やった! マジで!?///)
千鶴「さあ、どうぞ」がちゃっ
京子(うわ?い♪)とことこ
千鶴「姉さん、姉さん起きてる?」こんこん
千歳「あぁ、千鶴おかえり?」かちゃっ
千鶴「おばあちゃんは? もう寝ちゃった?」
千歳「とっくに寝ちゃってるで?。アイス買ってきたん?」
千鶴「うん、そうなんだけど……」
京子(よっ千歳!)ひょこっ
千歳「わっ……! どしたんこの子?!?///」
千鶴「帰ってくる途中でこの子に会って、懐かれちゃったみたいで……そのままうちまでついて来ちゃったんだ」
千歳「へぇ?、綺麗な猫さんやなぁ」なでなで
京子(京子ちゃんは猫になっても美少女だからね!)ふふん
千鶴「こんなに綺麗ってことは野良じゃないんだろうけど……もう夜も遅いし、うちで保護して飼い主を探してあげようと思ったんだけど……」
千歳「うん、ええんやない? うちも協力するで?♪」
千鶴「ありがと、姉さん」
京子(やったー!!)
?
千鶴「さてと……とりあえず、今夜は私の部屋にいてね」
京子(ここが千鶴の部屋かぁ……なんで綾乃と千歳の写真貼ってあるんだろ)
千鶴「明日になったらおうちを探してあげるから。あ、そういえば明日土曜日か……」
京子(そんなことしてもらわなくてもいいんだけどなー……なんとかして伝わんないかな)
千鶴「アイスはまた今度食べよう。今日はもう寝ようかな」
京子(もう寝るみたい……確かに日付も変わる頃だしね)
千鶴「よっ、と……キミのベッドはこのマットの上でいい?」ぽんぽん
千鶴「それじゃ、おやすみ……」ぱちっ
京子(わぉ、暗くても結構見えるんだなー猫って)
千鶴「…………」もぞもぞ
京子(うーんつまんないなー、まだ眠くないのに)
京子(あ、そうだ!)ぴこん
千鶴(明日はどうしよう……飼い主を探すっていっても、一体どうすれば……)
京子「んみゃーお」もぞもぞ
千鶴「えっ!?」
京子「ごろにゃ?ん♪(一緒に寝るぞ?♪)」
千鶴「ふふっ、この子……ほんとに人懐っこいな……///」
千鶴「あったかいね……キミ……」すりすり
京子(千鶴もあったかくて気持ちいいな……)
千鶴「…………」うりうり
京子(く、くすぐったいよ……///)
千鶴「私ね……猫を飼うのがずっと夢だったの……」
京子(えっ、そうなの?)
千鶴「しばらく預かるだけかもしれないけど……夢が叶ったみたいで、嬉しいんだ」
京子(!)どきっ
千鶴「ありがとう、猫さん……」にこっ
京子(うああっ、なんだろ……この距離でこんなの恥ずかしい……///)
千鶴「ふふっ……///」きゅっ
京子(ち、千鶴ってこんな顔するんだ……初めて見た……)
京子(で、でも今の私は猫だからな……私も猫っぽくしてないとダメだよね。よし……っ)
京子(え、えーいっ!///)ぺろっ
千鶴「うふふ、くすぐったいよ……ざらざらしてる」
京子(や、やばいなこれ……ほとんどキスしてるみたいじゃん私……///)ぺろぺろ
千鶴「ふふふ、あはははっ……」くすくす
京子(……まあ、千鶴が喜んでくれるなら……いくらでもやってあげるけど……)
京子(千鶴のこんな顔……普段の私には見せてくれないもんなぁ……///)すりすり
――――――
――――
――
―
<朝>
京子(ん……)ぱちっ
京子(ふあーあ……ふぅ)
京子(……ん?)
千鶴「…………」すぅすぅ
京子(んわーっ!! び、びっくりした……そっか、私猫になって千鶴の家に来てるんだった……)
京子(すごいな千鶴、寝顔が綺麗……)じーっ
千鶴「…………」
京子(ふふ……私ももう少し寝ようかな……///)もぞもぞ
千鶴「ん……ぁ……」ぴくっ
京子(あ)
千鶴「あ……おはよ、猫さん」
京子(やべ、起こしちゃった……おはよ千鶴)
千鶴「ふふ……猫と一緒に寝ると、こんなに暖かいんだね」なでなで
京子(う……///)かああっ
千鶴「さてと、起きなきゃ」
京子(あれ……なんだろ、一晩一緒に寝たら千鶴のことが凄く近くなった気がする……)
千鶴「そうだ、キミのごはんを買いに行かないとね。急いで準備するから待ってて」たっ
京子(ごはんか……そういやお腹減ったなあ。何買ってきてくれるんだろ?)
?
千鶴「はい、どうぞ」ことん
京子(も、モンプチ!! いわゆるな猫用のごはんだ……)
千鶴「食べていいんだよ?」
京子(も、元人間なのにこんなの食べて大丈夫なのかなぁ……)かぷっ
京子(ふぉっ……!///)
京子(な、なんじゃこりゃ!? めっちゃめちゃ美味い?!!)がつがつ
千鶴「ふふふ……こんなにがっついて、よっぽどお腹減ってたんだね」
京子(良いもん食べてんだな?猫って!)ぱくぱく
千歳「あ、おはよう千鶴?」がちゃ
千鶴「姉さん。おはよう」
千歳「わ?食べとるなぁ。そんなに美味しいん?」なでなで
京子(これはうまいよ!)
千歳「千鶴、おばあちゃんの許可は貰えたん?」
千鶴「うん。数日預かるくらいならいいって」
千歳「よかったなぁキミ?……でも酷やねえ」
千鶴「?」
千歳「数日預かるだけでも、どうしたって愛着は湧いてしまうものやん? 可愛がれば可愛がるほど別れは辛くなる……」
千鶴「っ……」はっ
千歳「千鶴はもともと猫好きやし、その気持ちは余計に大きくなるやろ? そしてこの猫さんもそれは同じ……すっごく懐いとるし、千鶴との別れが悲しく感じてしまうかもしれへん……」
千鶴「姉さん……」
京子(んー、ほんとは人間に戻ったらいつだって会えるんだけどな……1日で元の姿に戻れるらしいし)
千歳「でもこの子の世話を数日やりぬくって決めたんなら、それはちゃんとやらなあかんな。責任持って元のおうちに返してあげよ?」
千鶴「う、うん。ありがと……///」
京子(なんか悩ませちゃって悪いなぁ……)むしゃむしゃ
千歳「あ、そういえばこの子の名前とかってあるん?」
千鶴「いや、首輪も何もしてなくて……とりあえず猫さんとかキミって呼んでるけど」
千歳「せっかく一緒にいることになったんやし、なんでもいいからつけてあげといた方がええんやない?」
千鶴「そうかな……ええと」
千歳「ああでも、あんまりしっかり付けるとそれはそれで愛着わいちゃうかもしれんなぁ……愛着の湧かないような名前にしたらええんちゃう?」
千鶴「愛着の湧かない名前……」
千鶴「よし、今日からお前の名前は “歳納” だ」
京子(っ!?///) けふっ
千歳「ああぁ、猫さん……じゃなかった、歳納さんびっくりしちゃったみたいやなぁ」
千鶴「で、でも仕方ない……後できっぱり別れられるようにするなら、こういう名前じゃないと……」
京子(と、とんでもないネーミングセンス……! そして大正解なんだけど!)
千歳「それじゃ、これからよろしゅうな?歳納さん」
千鶴「歳納、早く元の飼い主さんを見つけてやるからな」
京子(しかもなんか千鶴の口調が強くなっちゃった……私ってどう思われてるんだ……!?)
千歳「でもこの子の世話を数日やりぬくって決めたんなら、それはちゃんとやらなあかんな。責任持って元のおうちに返してあげよ?」
千鶴「う、うん。ありがと……///」
京子(なんか悩ませちゃって悪いなぁ……)むしゃむしゃ
千歳「あ、そういえばこの子の名前とかってあるん?」
千鶴「いや、首輪も何もしてなくて……とりあえず猫さんとかキミって呼んでるけど」
千歳「せっかく一緒にいることになったんやし、なんでもいいからつけてあげといた方がええんやない?」
千鶴「そうかな……ええと」
千歳「ああでも、あんまりしっかり付けるとそれはそれで愛着わいちゃうかもしれんなぁ……愛着の湧かないような名前にしたらええんちゃう?」
千鶴「愛着の湧かない名前……」
千鶴「よし、今日からお前の名前は “歳納” だ」
京子(っ!?///) けふっ
千歳「ああぁ、猫さん……じゃなかった、歳納さんびっくりしちゃったみたいやなぁ」
千鶴「で、でも仕方ない……後できっぱり別れられるようにするなら、こういう名前じゃないと……」
京子(と、とんでもないネーミングセンス……! そして大正解なんだけど!)
千歳「それじゃ、これからよろしゅうな?歳納さん」
千鶴「歳納、早く元の飼い主さんを見つけてやるからな」
京子(しかもなんか千鶴の口調が強くなっちゃった……私ってどう思われてるんだ……!?)
?
千鶴「よし歳納、さっそく飼い主さんを探そう」
京子(ん?参ったなあ、飼い主なんていないのに)
千鶴「……って言っても、一体どうすればいいのかな……」
京子(なんとかしてやめさせてあげたいけど……むむむ)
千鶴「……とりあえず、一緒に町を歩いてみようか。迷い猫の張り紙とかを出してる人がいるかも」
京子(お、散歩かな?)
千鶴「行くぞ、歳納」
京子(おっけー!)
てくてく……
千鶴(張り紙……張り紙……)きょろきょろ
京子(普通に散歩気分でいればいいよねー)とことこ
千鶴「うーん、それっぽいものはなさそう……」
京子(えへへ、千鶴と散歩なんて初めてだな?♪)すりすり
千鶴「わっ、なに? もう……///」
京子(かまってかまって?!)
千鶴「ど、どしたの急に甘えちゃって……」
「あっ、千鶴おねえちゃんなの!」
千鶴「あっ」
京子(ん?)
楓「千鶴おねえちゃん、おはようなの♪」
千鶴「うん、おはよう」
京子(あれ、この子見たことある……確か楓ちゃんだったっけ。千鶴と知り合いなんだ)
楓「わぁ、猫さん……千鶴おねえちゃんのおうちの猫さん?」
千鶴「ううん、この子はたぶん誰かの猫なんだけど……今飼い主を探してるんだ」
楓「へぇ……おなまえは?」
千鶴「歳納」
京子(間違ってないんだけどなんかなぁ……)
楓「としのーちゃん、どこから来たの? おうちは?」なでなで
京子(おうちはこの辺だよ?)ふりふり
楓「えへへ、可愛いの!」
千鶴「うん。誰にでも懐っこいみたいなんだ」
楓「じゃあ千鶴おねえちゃんと良いコンビなの♪」
千鶴(え?)
京子(ん?)
楓「としのーちゃんと一緒にいる千鶴おねえちゃんは笑顔が柔らかいの。その方が可愛いの!」
千鶴「か、可愛いなんて……///」
京子(良いこと言う?♪)すりすり
千鶴「そうだ楓ちゃん、迷い猫の張り紙とかって最近見た?」
楓「んーん、みてないの」
千鶴「そっか……ありがとう。もうちょっと色んな節を探してみる」
楓「うんっ、がんばってなの。楓も何かわかったら教えてあげるの!」
千鶴「ありがとう。それじゃ」
京子(いい子だなーこの子……千鶴の意外な友好関係を知っちゃった)
千鶴「やっぱり闇雲に歩いてもアテはなさそうだ……」てくてく
千鶴「そうだ、歳納と最初に会った場所の近くに行けば何かわかるかも」
京子(おっ、うちの近くに来るみたい)
?
千鶴「確かこの辺りだったはず……」きょろきょろ
千鶴「あっ」
京子(あ!)
綾乃「あら千鶴さん。こんにちは」
千鶴「杉浦さん……」
京子(お?綾乃だー! こんな所で何してるんだろ?)
綾乃「わぁ可愛い、千鶴さんが飼ってる猫?」
千鶴「いや、この子は昨日偶然この辺りで会った子で……たぶん飼い猫だろうから、今元の家を探してあげてるところ」
綾乃「あら偉いわね千鶴さん……私も協力しましょうか?」
千鶴「ううん、一人で大丈夫」
綾乃「こんにちは、猫さん」すっ
京子(えへへ、綾乃?だっこして?!)ぴょんっ
綾乃「きゃあっ!」こてん
千鶴「こ、こら歳納! あんまり飛びついちゃ……」
綾乃「え、歳納……??」
千鶴「あ」ぎくっ
京子(あ)
綾乃「歳納って……この子の名前……?」
千鶴「え……ああっ、違う!! この歳納ってのは緊急で付けた名前で……!///」
綾乃「ち、千鶴さん、歳納ってもしかして歳納京子のこと……!?」
千鶴「そうだけど、それは好きで付けたんじゃなくて……!」あたふた
綾乃「し、心配ご無用よ!? 千鶴さんが猫に歳納京子の名前をつけて可愛がるほどだったのは意外だったけど……大丈夫、誰にも言わないから……///」
千鶴「そうじゃなくて! 一緒にいすぎると愛着が湧いちゃうから、だからあえて歳納って名前にして……!」
綾乃「ええっ、千鶴さんそんなに歳納京子に愛着を持ってたの!?///」
千鶴「だからそうじゃなくてぇ……!///」かああっ
京子(あらら……大変なことになった)
?
綾乃「な、なるほどそれで歳納なのね。ようやく納得できたわ」
千鶴「まぎらわしいことしてごめんなさい……」はぁはぁ
綾乃「い、いいのよ。確かにこの子の毛色と毛並みも歳納京子の髪になんとなく似てるものね」
京子(どうやら解決できたらしい……忙しい二人だな)
千鶴「それで、歳納を元のおうちに帰してあげたくて手がかりを探してるところなんだけど……杉浦さんは何か知ってる?」
綾乃「ううん、残念ながら……力になれなくてごめんなさいね」
千鶴「いや大丈夫。それじゃ私はこれで……行くよ歳納」
京子(おうっ)
綾乃「…………」
綾乃(な、なんだか羨ましいわ……名前が同じなだけなのに、何故かしら……///)
?
<公園>
千鶴「ちょっとここらで一休みしようか」とさっ
京子(休憩かー。ずっと私を抱っこしたまま歩いてくれてるから千鶴も大変だよね……)
千鶴「それにしても……手がかりは見つからないし、知り合いには誤解されるし……」
千鶴「なぁ歳納……お前のおうちはどこなんだ?」
京子(今は千鶴が私のご主人様だよ!)にゃん
千鶴「あはは……猫が喋れたら便利なのにな」
京子(喋らなくてもコミュニケーションできてる気がするけど……)
千鶴「歳納……日なたは気持ちいい?」なでなで
京子(こりゃたまらんね?……本当に猫の気持ちがわかるよ)
千鶴「うん……今日は天気がいいからね……」
千鶴「…………」すぅ
京子(……あれ? 千鶴寝ちゃった?)
千鶴「…………」すやすや
京子(疲れちゃったのかな……そりゃそうか、昨日からずっと私のことにつきっきりだもんね)
京子(いいよ千鶴、寝てても。私がついてるから……)もふっ
?
<夕方・帰宅後>
千鶴「ちょっと遅くなっちゃってごめんね。はい」ことん
京子(モンプチ?♪)ぱくぱく
千鶴「ふふ……ほんとよく食べるなぁ」
京子(千鶴もなにか食べれば? 一緒にご飯しようよ)
千鶴「そうだ、私もアイス食べようかな」
京子(おおー! 私の心が通じたみたい!)
京子(えへへ、千鶴とごはん?♪)
千鶴「こらこら、歳納にはアイスあげられないよ」
京子(わかってるって?)
千鶴「はぁ……だめだ、歳納なんて名前つけたのにもうこんなに愛着湧いちゃってるや……///」なでなで
京子(え?)
千鶴「歳納と一緒だと……本当に、何もかもが楽しいよ……」
京子(う……っ///)どきっ
千鶴「仕方ないよね。ずっとずっと、猫を飼うのが夢だったんだから……」なでなで
京子(千鶴……)
京子(そうだ、私も今日の夜には元の姿に戻っちゃうんだから……いつまでもこの家にはいられないんだ……!)はっ
京子(あんまり長居しすぎると、逆に千鶴を悲しませちゃうかもしれない……)
千鶴「ふふっ……///」にこにこ
京子(うぅぅ、やむを得ないか……)
京子(えーいっ!)たっ
千鶴「ん、歳納? どこ行くの……トイレ?」
京子(ごめん千鶴……さよなら!)だだだっ
千鶴「あっ、えええっ!?///」びくっ
千鶴「ちょっと、歳納! 待って!?」
京子(だめなんだ……このまま一緒にいちゃだめなんだよ……!)したたた
――――――
――――
――
―
京子(……逃げてきちゃった)とぼとぼ
京子(急な別れになっちゃって申し訳ないけど……でもしょうがなかったんだよ。千鶴を悲しませるわけにはいかないもん……)
京子(人間に戻ったら、謝れるかな……でも猫になってたなんて信じてもらえないか……)はぁ
京子(さて、家に帰ってきたけど……どうやって中に入ろう?)
京子(扉も窓も全部閉まってるみたいだし……これじゃ今の時間も確認できないや)
京子(おかあさーん! 開けてー!)がりがり
がちゃっ
京子母「な、なあに? 玄関から物音が……あっ!」
京子「みゃあお!(ただいまー!)」
京子母「なあに、野良猫……? うちは飼ってあげられませんよ」
京子(えっ)
京子母「ごめんなさいね」ぱたん
京子(ああっ、ちょっ! わかってもらえないかもしれないけど京子なんだってー!)がりがり
京子母「こらっ! 玄関が傷になっちゃうでしょ!」ばんっ
京子(ひーっ!!)ささっ
京子(だ、だめだ……うちに帰れない……)
京子(わ、私はどこに行けばいいんだろ……とりあえず時間の確認できそうな公園にでも行こうかな……)とぼとぼ
?
<公園>
京子(よ、よし! もう10時になる……そろそろ薬の時間が切れるんだ)
京子(ううう、風が寒いなぁ……昼間の日なたが嘘みたいだよ)ぶるぶる
京子(早く人間に戻りたい……)
?10分後?
京子(あ、あれ……? そろそろ戻ってもいいはずなんだけどな、薬を飲んだ時間から丸一日過ぎたのに)
?さらに10分後?
京子(お、おかしい! 元に戻る気配がないよ……!)
京子(どういうことなの? 西垣ちゃんが効果時間を勘違いしてるのかな、それとも私が小ビン一本丸々飲んじゃったのがいけなかったのかな……)
京子(なんでこんなことに……お願いだから戻ってよ……!)きゅっ
「ばうっ!!」
京子(ひぇっ!?///)びくっ
「ウゥゥ……ばうっ!!」がーっ
京子(うわああ、野良犬だ!)だっ
「ワウッ! ワンワン!」だだだっ
京子(いやぁーーーーーー!!)したたたっ
?
京子(うぅ……どうしよう、全然元に戻れないよぉ……)とぼとぼ
京子(身体は戻らないし、家にも帰れないし、風は冷たいし、外は怖いし……)
京子(こんなの嫌だぁ……誰か助けてよぉ……!///)
とぼとぼ……
京子(ん? 誰か……誰か歩いてる……!)ぴくっ
「…………」てくてく
京子(あの後ろ姿……っ!!)はっ
京子「にゃん!」
千鶴「あっ……!?」くるっ
京子(やっぱり、千鶴……!)
千鶴「あ……歳納……っ!?///」
京子(うわぁぁん、千鶴??!)はしっ
千鶴「と、歳納! どこ行ってたの、もう……!」ぎゅっ
京子(怖かった、怖かったよぉ……!)
千鶴「良かった……急にいなくなって、心配したんだから……」
千鶴「本当に、心配したんだからね……!///」ぽろぽろ
京子(千鶴……こんな時間までずっと探してくれてたなんて……)
千鶴「さあ、うちへ帰ろう。一緒に」
京子(うん……うん!///)
?
千鶴「歳納が急に出て行ってびっくりしたけど……もしかして、元のおうちに帰ったの?」なでなで
京子(うん……でも今の姿じゃ……)
千鶴「きっと帰れない事情があったんだ……だからあんな道端を歩いてたんだよね」
京子(すごい……千鶴は何でもお見通しなんだ)
千鶴「帰る所が無くなっちゃったのなら……いつまでもここにいていいんだよ? 私がなんとかして、歳納を飼えるようにするから……」
千鶴「歳納と、ずっと一緒にいたい……もう離したくないよ……///」ぎゅっ
京子(千鶴……)
京子(千鶴と一緒にいられるなら……私もまだしばらくは、猫のままでも平気だよ……)
千鶴「歳納、もう眠い……?」
京子(ん……)
千鶴「私も……今日は疲れちゃった……」
千鶴「おやすみ、歳納……」
京子(…………)すぅ
?
ぷるるる……
千歳「はいもしもしー」ぴっ
綾乃『あ、もしもし千歳!?』
千歳「綾乃ちゃん……どしたんこんな時間に? なんや慌ててるみたいやけど」
綾乃『実は大変なことが起こってるのよ! 千鶴さんってまだ起きてる?』
千歳「千鶴? えっと、もう寝ちゃってるみたいやけど……」
綾乃「ええっそうなの? まあいいわ……あのね、さっき船見さんから連絡があって……」
千歳「ええっ? 歳納さんが猫に……?」
綾乃「これが本当らしいのよ! それではっと思ったんだけど、今日千鶴さんと一緒にいた猫!」
千歳「も、もしかしてあれが……??」
かちゃっ
千歳「千鶴ー……起きとる?」
千鶴「…………」すぅすぅ
京子(…………)すやすや
千歳「ほ、本当にこの猫が……?」
びかん!
千歳「わっ!?」
しゅぅぅぅぅ……
千歳「ね、猫の身体が……!!」
ぽんっ
京子「…………」むにゃむにゃ
千歳(ね、猫が歳納さんになってもうた……話は本当やったんや……!)
千鶴「…………」すぅ
京子「…………zzz」
千歳(ふふ、抱き合って仲良う寝とる……今夜はこのままにしといたげようかな)
千歳(おやすみ、お二人さん……)ぱたん
――――――
――――
――
―
<翌朝>
ちゅんちゅん……
千鶴「ん……ぁ……」ぱちっ
千鶴(もう朝か……早く起きちゃったかな)
むにゅ
千鶴「ん?」
千鶴(あれ……姉さんかな? 私のベッドに来たのかな……ええと、メガネメガネ……)ちゃっ
千鶴「え」
京子「………ん?…」むにゃむにゃ
千鶴「…………」つんつん
京子「んんぅ、やーぁ……///」
千鶴(えぇぇ……っっ!!?!?!??///)かあああっ
千鶴「うわぁぁぁーーーーー!!!」ぺちん
京子「んわっ……! あぇ、ぁにすんの……??」むにゃむにゃ
千鶴「お、お前……歳納っ……!?」
京子「……ぇ、あえっ? うそ、元に戻ってる!?」ぺたぺた
京子「おわ??戻ってる! やったーよかったー!!」
千鶴「な、何が起こってるんだ……はっ、猫は!? おいっ、ここにいた猫はどうした!!」
京子「猫の姿から人間に戻れたんだよ! 寝てる間に薬の効果時間が切れたんだ……あ?よかった?!///」ぎゅっ
千鶴「意味がわからなすぎる……!! っていうかお前はなんで裸なんだよ!!」
京子「あれ、ほんとだ……そういや猫になった時に服は脱げちゃったんだっけ」
千歳「はいはーいお二人、おはようさ?ん」がちゃっ
千鶴「ね、姉さん……!」
京子「おー千歳、おはよー」
千歳「うふふ、歳納さんの事情は色んな人から聞いたで?。でもとりあえずは一番混乱してる千鶴に説明してあげよ?」
千鶴「せ、説明ってどういう……」
京子「あーまぁ色々ややこしいんだけど……簡単に言うと、千鶴がずっと可愛がってくれたあの猫は私だったんだよ」
千鶴「…………」
千鶴「えぇぇぇ??????っ!!!///」
?
京子「……というわけ! 千鶴のおかげでなんとか乗り切れたよ?」
千歳「うふふ、偶然にも歳納なんて名前つけた千鶴は大正解だったってわけやな?」
京子「でもおかげで普段の私が見れない千鶴の顔がいっぱい見れた! 猫になってよかったなー」
千鶴「く、くそ……じゃああの猫にはもう会えないってわけか……」がくっ
京子「何言ってんの、目の前にいるじゃーん!」
千鶴「お前じゃねえ!!///」
千歳「まぁまぁ千鶴、猫の姿でも人間の姿でも歳納さんは歳納さんやで。あんなに可愛がってたんやし……もうちょっと優しくしてあげたら?」
千鶴「で、でも……私は騙されたんだ!」
京子「?」
千鶴(初めて会った時も、一緒に寝た時も、外を歩いた時も、公園で一緒に寝た時も……こいつはずっと……!///)かああっ
京子「騙したなんて言わないでよ。千鶴はずっと私を大切にしてくれてたし、私も千鶴のことを大切に思えた。これは本当のことじゃん」
千鶴「えっ……」
京子「私は前よりも千鶴のことが凄い近い存在になった。千鶴も私のことが前よりそう思えてるんじゃない?」
千鶴「そ、そんな……」
千鶴(そんな、こと……)
京子「ん?? にゃんにゃん?」つんつん
千鶴「や、やっぱり納得いかない! 早く帰れ!///」
京子「ひどいな?もう。ってか服を借りないと帰りたくても帰れないんだった」
千歳「千鶴の服なら好きなの着てっていいで?」
京子「いぇーい!」
千鶴「よくない!///」
?
<後日>
京子「あ、この公園……猫になってた時に千鶴に連れてきてもらったとこだ」てくてく
京子「懐かしいなー、確かひなたぼっこしてたっけ……」
京子「あっ!」
千鶴「…………」すぅすぅ
京子(千鶴……! またここで寝てる……)
京子「おーい、千鶴ー……?」
千鶴「…………zzz」
京子(ふふ、起きないや……ここが気持ちいいんだろうな)
千鶴「ん……としの……」むにゃ
京子「!」
千鶴「いっしょが、いいよ……」
京子(え……)
千鶴「…………」すぅ
京子(千鶴……)
京子(……私はここにいるよ、千鶴……)ぎゅっ
千鶴「ん…………」
京子(……起きるまで、一緒にいてあげようかな)くすっ
?fin?
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