冒険者「何なんだ、って何が?」
戦士「肩書き・『勇者』だけで、『その作品の主人公』と認識される……」
戦士「一体、何なんだこれは?」
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冒険者「まあ、冷静に考えたら不自然だな。『勇者』ってのはそもそも、」
冒険者「単に『勇気ある者』であり、特別な存在ではないはずだ」
戦士「そうだ。FFでは『光の戦士』、Wizでは『冒険者』、」
戦士「ディープダンジョンなら『勇剣士』と、主人公や伝説の存在にはいろいろあった」
戦士「なんで今、『勇者』だけが特別扱いを受けている? 『戦士』と何が違う?」
冒険者「確かにな。本来、『伝説の戦士』と『伝説の勇者』に全く差はない」
冒険者「だが現状、後者だけが異様に特別視されている」
冒険者「『戦士』は『伝説の』がつかない限り、ただの一般人。だが……」
戦士「そうだっっ! 『勇者』はその2文字だけで『伝説の存在』扱い! なぜだ?」
冒険者「そりゃ、お前がさっき挙げた中で、DQがズバ抜けた大ヒットだったからだろ」
冒険者「で、DQ固有の設定である『勇者』=『生まれつき特殊な生物で主人公』が世間に定着したと」
冒険者「他作品、いや他分野にまで。漫画やラノベ、そしてSSまで」
戦士「『勇者』って言葉が今のように定着したのは100%、DQのせいだ。それは解ってる」
戦士「DQ1以前の世間では、『勇者』=『特別・主人公』なんて認識は全くなかったからな」
戦士「しかしだ。そのDQ1だって、元々は……」
※DQ1取扱説明書より
(略)
竜王に戦いを挑んだ勇者たちは、誰一人として生きて帰ってきませんでした。
(略)
伝説の勇者ロトの血を引く者、それが、あなたです。
戦士「解るか? 1主人公以外にも、何十人か何百人かの勇者たちがいたんだ!」
戦士「戦士と同じく、『伝説の』がつかない限り、そこらにゴロゴロいるものだったんだ!」
戦士「同格の大勢の落伍者たちの中から、勝ち残った成功者のドキュメンタリー、それがDQ1!」
戦士「生まれつき最初から、世界唯一の特別な存在だったわけではない、選ばれし者ではない!」
冒険者「……が、今は『生まれつき特別な選ばれし者』=『勇者』になってると」
戦士「そーだ! そして問答無用で『勇者』という肩書きがあれば主人公、ヒーロー!」
戦士「その認識を逆手にとった作品もあるが、そういう作品ってのは、」
戦士「勇者なのに弱いとか、勇者だけど悪人とか、勇者でもヒロインに頭が上がらない、とか、」
戦士「結局は『勇者は強くて正義の味方で主人公』という認識を利用してる、つまり認めてる!」
戦士「そして、主人公ではない『勇者』はニセモノ扱いだったり、カマセだったり……」
冒険者「ニセ勇者と言えばダイ大を思い出すな」
戦士「そのダイ大だって、アバン先生は修行さえクリアすれば誰でも勇者認定、と」
戦士「そういうスタンスだっただろ。ダイだって、勇者の子孫だから勇者、ではなかった」
戦士「才能はあるにせよ、修行して強くなって手柄を立てて、周囲から認められたんだ」
戦士「DQ1主人公のようにな」
冒険者「そういやダイ大の連載開始って、もうかれこれ4半世紀ほど昔のことだからな」
冒険者「その当時は、『勇者』の認識が今とは違ってたってことか」
戦士「ああ。今や、『勇者魔王もの』とか括られてジャンルとして確立してるが、」
戦士「魔界・魔物の頂点、王様であるなら、魔の王で『魔王』。それは自然だ。当然だ」
戦士「だが! それに対する存在が『勇者』に限られることには、自然な根拠がない!」
冒険者「確かに、どういうわけか限られてるよなあ」
戦士「『魔法少女』と『美少女戦士』もそうだが、『戦』がないなら戦えるとは限らん!」
戦士「魔法を使う女の子といったら、パンチもキックもビームも出さず、でも魔法は使って、」
戦士「大人に変身したりして、毎回いろいろな事件を解決、人助けをする! それが常識だった!」
戦士「だから、戦う女の子として『美少女【戦士】』という呼称が、新しく登場した! その後、」
戦士「美少女戦士(戦う女の子)の一種として、魔法を使う美少女の戦士、略して魔法少女、だ!」
戦士「『戦士』こそが一番、本来、戦う者なんだ! それなのに……『勇者』なんかが……」
冒険者「『勇者』なんか、ときたか」
戦士「アニメでは『エクスカイザー』や『ラムネ』などが、『勇者=主人公』認識初期の作品だが」
戦士「これらなんか、ロボットものだぞ! そんなジャンルですら『主人公だったら勇者だろ』と、」
戦士「まるで常識のように、当たり前のように、主人公の肩書きは『勇者』になってる! なぜだ?」
冒険者「その頃の作品なら、『魔神【英雄】伝ワタル』もあるじゃないか」
戦士「それにしたって、作中では『異世界からワタルという名の勇者が現れ~』だ!」
戦士「異世界から来る特殊な存在=勇者! 何でそうなる! 『勇気ある者』だっつってんだろーが!」
戦士「固有の作品ならともかく、どうしてみんながみんな、共通してこんな扱いをする?」
冒険者「だからDQのヒット、だろ。4は間違いなく普通の人間じゃないし、3も異世界から降り立った」
冒険者「その辺りから定着したんだ。原因は唯一、DQのみ。だがその1つがあまりにも大き過ぎた」
戦士「……さっきも言ったが、俺だって本当は解ってるよ。だから俺は望む。大逆転を」
冒険者「大逆転?」
戦士「DQという、たった1つの大ヒット作品が、無数の追随を生み、その結果として、」
戦士「『勇者=先天的に特別な存在・主人公』という認識を作り上げた。それなら、」
戦士「同じ現象が起これば、逆転もできるだろう。DQ級の大ヒット作品さえ世に出れば」
戦士「その作品の中で『戦士』が主役、『勇者』が脇役あるいはヒロインにでもなってれば、」
戦士「そしてそれが世に定着すれば、今の『勇者魔王もの』が『戦士魔王もの』に変わる……」
戦士「どうだ? 壮大な話だろう」
冒険者「実現の可能性の希薄さはともかくとして、まぁ確かに、大した大逆転話だな」
戦士「神託や血筋で選ばれた、『伝説の戦士』が、旅の中で何人もの『勇者たち』と出会う」
戦士「主人公である戦士と、脇役&ヒロインの勇者たち。言葉の定義上、何もおかしくはない」
戦士「血筋などの特殊設定は一切なし、完全な一般人の、勇気ある者、『勇者』たちだ」
(本当の「今」の話するのは野暮なんだろうな…DQXとか)
戦士「当然、『勇者』ってのは、『剣も魔法も使える万能エリート』でなくてはならんという、」
戦士「そんな縛りもないからな。剣オンリー、魔法オンリーの凡人、『勇気ある者』でいい」
戦士「実際、『ヘラクレスの栄光』の主人公は、剣オンリーの『勇者ヘラクレス』だった」
戦士「言うまでもないが、ローレシアの王子だってそうだったし」
冒険者「……ようやくわかった。つまり、そういう設定を盛り込んでるのが、」
冒険者「お前が今描いてる、その、なんだっけ、ライトノベル、だったか?」
戦士「おうよ。ゲームは一人で自由には作れないし、漫画はこの分野の成功例が乏しい」
戦士「ダイ大はあくまでDQありきのものだしな。だがラノベには、TV化も映画化も多数の、」
戦士「『スレイヤーズ』がある。初代スト2や初代ときメモ、テトリスなどに匹敵するぐらい、」
戦士「後追い作品の山を築いた、ジャンル内の新常識を創造した。そういう偉大な先例がある」
戦士「見てろよ、さっき話した『戦士』って言葉の大逆転計画、俺の作品で成し遂げてやる!」
冒険者「ん、まあ……気長に頑張れ」
戦士「ああ頑張る! 待ってろよ『勇者』! いつか追い落としてやるぞ! この俺『戦士』は、」
戦士「屍の山の中から這い上がってそこへ行く! そう、DQ1の主人公のようになっっっっ!」
とりあえずは以上です。
他のネタで続けるかは考え中です。
実は、この『勇者=主人公』以外にも、世間の認識に対して疑問を抱いて、
逆転させてやりたくなった言葉、いくつか抱えてまして。
ラノベを狙っての大逆転計画、リアルで現在進行中です。
いつの日か、大願成就の暁には、このSSを思い出して頂けると光栄です。
ちなみに当時、「スレイヤーズ」の神坂一先生は、
高額納税者番付の作家部門で、1位~8位までが全員推理作家ばかりの中で、
たった1人のラノベ作家として、5位に食い込んでいました。
つまり、西村京太郎先生や赤川次郎先生なんかと全く区別なく、
同じ土俵で競い合った上で、「日本の全ての小説家の中で五指に入る」
というところまで行ったわけです。ほぼ間違いなく、スレイヤーズ一本で。
TVシリーズが6クール製作されて、一段落したかと思ったら、
11年を経て新シリーズが始まったりもしましたし。
正に空前絶後、後にも先にも追随を許さぬ、
ラノベの歴史上、ダントツの頂点なわけですが。
だからこそ、目指してます。
>>10
もうとっくに、「DQ固有のもの」ではなくなってますからね。
今になって、本家であるDQが「勇者=特殊な生物で主人公」を完全撤廃しても、
「DQの影響でその印象が世間に定着した」という事実は消えませんから。
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