俺「視界に入った人間を一人操る能力を手に入れた」(64)

不良1「おい邪魔」

俺「え?あぁ…」

不良1「…」ジロッ

俺「…」

不良2「フヒャッヒャww」

不良1「…で、その女がよぉ…」

俺「邪魔なのはお前だろ…」ボソ

不良1「!?」グワン

ビターン

不良1「痛ってぇぇぇええ!」

不良2「フヒャッヒャヒャヒャヒャwwお前それ何回目だよww」

何もないところで躓く不良1を見て陰で笑うクラスメイト達
俺も密かに笑みを浮かべ席に座った

不良1「ちっ…マジなんだよこれ」スタッ

不良2「お前最近悪霊にでも取り付かれてんじゃねぇのwwフヒャッヒャヒャヒャww」

不良1はプライドが高いが故に転んだ事をネタにもできない
最早暴力によって得た権力しかヤツ自身を保っていられない可哀想なヤツだ

友「俺大丈夫…?」

俺「大丈夫だよ」

女「ねぇ二人とも見た今の…?w」

俺「クラスの皆見てただろうな」

友「うん…悪い事する奴にはあぁいう天罰が下るんだよきっと」

女「私笑い堪えるの必死だったよw」

俺「俺も」

友と女と俺
学校や休日も大体この三人で過ごす事が多い

友「でも陰で悪口ばかり言うのもあんま良くないよ」

女「友はいっつもそんな事言って…あぁいうのは自分勝手な奴だから陰口叩かれても仕方ないのよ」

俺「それより次移動だよ、行こう」

三週間ほど前、それはキッカケと言うには乏しいが何となく寄ったファミレスで客の対応をしている若い女店員のパンツが見たい、と考えた時に起きた

視線と妄想だけで俺の思った通りの動きを女店員の近くに座っていたオッサンがやってのけた

あの時の衝撃とオッサンの振りかざした手によって綺麗な螺旋を描いて上がったスカートのヒラヒラの中に見えた水色パンツだけは忘れることがないだろう

俺はこの能力を密かに今のようなしょうもない事ばかりに使っていた
もしかしたらそれで良かったのかもしれない

ある日俺は一線を越えてしまった

女「四時間目おわった~」

友「女はいつもお昼前嬉しそうだねw」

女「あ、友今バカにしたでしょ」

友「ご、ごめんっ そんなつもりなかったよっ」

俺「友は女心を分かってないなぁ」

女「あんたもでしょっ」

俺「なんでだよ」

女「この前私が化粧してきたら笑ったじゃない」

俺「だって慣れない事するから」

女「いいじゃない女なんだからっ!」

俺「悪かったって」

ガランガランッ

滑りの悪い廊下でゴミ箱と散漫になったゴミ箱の中身が俺達の横を通り過ぎた
前に視線をやると不良1が機嫌悪そうに周りのヤツらにグチを垂らしている

不良1「…だからクソ親父が酔っ払って突っ込んできたからボコボコにしただけだよ!」

不良2「フヒャッヒャwwそりゃ当たり前だわww」

不良1「それで生徒指導ってなんだよクソがぁ!」

不良2「ひっでwwフヒャッヒャヒャヒャww」

友「相変わらずだね…」

俺「見ない方がいい」

女「…」

不良1「あーイライラするわぁ」

不良1「あのクソ親父病院じゃなくて殺しとくべきだったわマジで」

不良2「フヒャッヒャwwこえぇww」

女「さいてぇ…」

丁度あいつらが横をすれ違う時女が図ったように口を開いた

不良1「あ?」

友「ちょ…女!」

俺「バカ…!」

不良1「おい女…なんか言ったか…?」

女「…」

不良1「おい無視すんなカス」

俺「おい逃げるぞ」

俺「女…!」

女「あんたいっつも自分の事ばっか…聞いてるだけで耐えられないのに」

不良「…あぁ…?」

女「もう限界よ みんなそう思ってるわ」

不良1「てめぇマジでふざけてんだろ」

不良1「調子に乗んなや!」

不良1が女をひっぱたき女はバランスを崩すように倒れこんだ

俺「女!」

友「女!なにやってるの!」

友「お前もやめろよ!」

不良1「あぁ!?お前だれに口聞いてんだぁ!」

友「お前はお前だよ…!」

俺「バカ、友もやめろ!」

不良1「…殺す」

不良1が友に突進し友が倒れた上に覆い被さるように突っ込んで馬乗りになった

不良1「ぶっ殺す」

不良1が大きく振りかぶった拳を友の右頬に叩きつけた

友「オブォッ…! 」

続いて連続でヤツの右拳が友の顔面に放たれた

不良1「…ふんっ…!ふんっ…!」

ドゴォ! ドゴォ! ドゴォ!と鈍い音が廊下に響く

友はそこまで身体が強くないし口調も男っぽくなくてダメダメなヤツだけど正義感だけは誰にも負けないヤツだった

友「…っ!…っ!」

俺「お…おいやめろよ…!」

不良2「やべぇ…あいつマジで殺す気だっ!」

俺「…!」ゾワッ

その言葉を聞いた俺の全身を鳥肌が通った

騒ぎに気付いている教師もいるが誰に言うワケでも助けるワケでもなくアタフタして距離を取った場所で見ている

女「やめろよ!」

不良1「…んん…!」

不良1「邪魔だぁ!」

女「きゃぁあ!」

ドゴッ

友を助けようと不良1にタックルをした女が仰け反ることもしない不良1に張り手で壁に突き飛ばされた

その瞬間冷静でなかった俺の頭をあの能力が過ぎった

俺「…は…!」

不良1「…!」グワン

目の力を使ったが不良1の陰で隠れていた友の流血に俺は戸惑っていた

俺「うぅぅぅ…!」

不良1「…」

ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!

不良1が壁に何度も頭突きをするよう操作する

不良2「お…おい…!なにやってんだよ…!おい…!」

不良1「…」ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!

俺「は…は…は…!」

不良2「やべぇよコイツ狂っちまってる!誰か!」

誰も近寄るハズがない
俺だけが汗だくになりながら目を見開きその光景を見つめる

不良1の頭から血が流れるのを確認した時俺は床に倒れ込んだ
しかし恐怖で目の力を解くことができない

ガシャーン!

俺は不良1の頭をを外窓に叩きつけた
キャーという叫び声だけが耳に入る

不良1「…」

周りから見れば本当に不良1の気が狂ったようにしか見えなかっただろう
既に沢山の野次馬が集まっていた
その時離れた所から「やめろ!」と太い声が
生徒指導部の教師がやっと駆けつけたらしい

しかし俺の脳裏に他の人の声など聞こえていなかった
ヤツを野放しにしていいのか、このまま終わっていいのか
と心の底から声が聞こえる

やがて深く考えないウチに俺は事を起こしてしまった

女「…」

友「…」

俺「…まぁ二人ともあんまり落ち込むなよ?」

女「…」

俺「二人とも勇敢だったよ」

友「…」

俺「全部アイツが悪いんじゃんw」

女「…そうだけど」

俺「ほら友もこの前言ってたじゃん!天罰だよきっと!」

友「でも…」

俺「あんな酷い事したんだからきっと神もキレたんだよw」

友「だけどあんな状況で彼が窓から飛び降りたんだよ…?きっと僕が悪いんだよ…」

俺「だからそんなことないって…」

女「…グスッ…グスッ…」

俺「…」

俺「いやぁ…てか悪かったな…俺だけ何も出来なくって…」

俺「二人ともスゴかったわw俺なんか腰抜かしちゃってw」

女「…グスッ…俺…」

俺「いやほんと…」

女「…」

俺「…」

友「…」

俺は俺がやったことを黙っていた
何だかんだ自分が一番好きだったと気付いたが驚くこともなかった

俺自身予想していなかったのはその後の事だった

男1「なあ遊ぼうぜぇ姉ちゃん」

男2「バカwそんな誘い方するヤツ今頃いねぇよw」

OL「やめてください…」

男1「もっと声張り上げないとポリに聞こえないぞw」

男2「いいからここでやっちまおうぜw」

男1「そうだなwこの辺なんていくらでも犯罪起こってるのに誰も見向きもしないw」

OL「いや…本当にやめて…!」

男1「…!?」グワン

男2「おいどうしたよw」

男1「…」スタスタ

男2「おいまだ酔っ払ってんのかぁw」

男1「…」スタスタ

男2「おいそっち溜め池ある…っておい…マジでなにやってんだよ…!」

男1「…」スタスタ…

ボチャンッ

OL「きゃあああ!」

男1「おぶぉっ!…ふぁっ…!ふぁっ…!助けて!助けてくれぇ!」ジャボジャボジャボ

男2「た…助けてったって…おま…」

男2「…!?」グワン

男2「」スタスタ…スタスタ…

ボチャンッ

男2「…っ!」

男2「うわあああ!なんだこれ!なんだこれはよおお…!」ジャボジャボジャボ

男1「」

男2「おぶぶぶ…」スウゥ

OL「い…いやぁあああ!」

俺は事が終わったのを確認するとまた帽子を深く被り繁華街の探索を開始した
ここは地元で…いや日本の中でも静かな犯罪が絶えない街として裏では知られているらしい

端的に言えば俺は人殺しになっていた

あの夜考えた
この力を無碍にしていていいのかと
そして俺は正義の為にこの力を使うと決めた
俺にしかできないことだからだ

それから数ヶ月が経ち暗殺者の噂は忽ち広がった
影も形も分からないが犯罪を犯す者を制裁するヒーローがいると口々に言われるようになり、実際犯罪は減り始めていた

女「ゲームセンター寄ってかない?w」

俺「俺あんま好きじゃないんだよな…うるさいし」

友「僕も」

女「なんなのよあんた達!つれないのっ」

友「また今度行こうよw」

女「ふんっ」

女「あ、そう言えばあの暗殺者の話知ってる?」

友「きっともう皆知ってるよ」

俺「またやったんだってな」

女「そう!ちょっと怖くない?」

俺「まあ…」

友「僕もあんま良いと思わないな」

俺「なんでよw」

友「そりゃ犯罪犯すヤツは悪いけどみんな殺しちゃうなんてやっている事はおんなじだと思うんだけど…」

俺「じゃあ犯罪犯すヤツには悪くないヤツがいるのか?」

友「そんなことはないけど…でもそれだとその人も隠れて殺人をやっているんだからやっぱり同じだよ」

俺「実際人間か神か誰がやってるのかも分からないしどちらにしてもそいつは悪いことしてないだろ?」

友「うーん…」

女「…いやごめんてこんな話持ち込んで!」

女「せっかく三人でショッピング来たんだから楽しもうよ!」

俺「そうだな…悪い」

友「うん…僕もごめん」

女「ふふふっ」

「誰か!ひったくりです!」

大きなショッピングモール内に遠くで小さな声が聞こえた
目を向けると今座ってる中央のベンチからギリギリ見える場所で指を指す女の先に確かに女物のカバンを抱えた男が不自然に小走りしている

モール内にはたくさんの人で混雑しているのに誰も気にしないし気付いても手をかそうとしない
やはりああいう輩には制裁者が必要なのだ

服装は私服で目立ちやすい格好をしているので恐らくひったくるつもりはなかったがスリがバレて仕方なくと言ったところだろう

しかし罪に変わりはない

俺(友…お前にも意義が分かるように見せてやるよ)

女「ちょっと何あれ誰も止めないの?」

友「誰も助けに行かない…僕行こうか…!」

俺「そうだ…助けが必要だね…」

俺「…」キッ

ひったくり男の動きが止まる
そして次にさっきと逆方向に走り出しエスカレーターを登り始める

女「ちょ…あれ動きおかしくない?」

友「…うん…なにか操られてるように…」

女「まさか…!」

友「あれ…!」

俺「あぁ…きっとそうだよ…」

そしてひったくり男がカバンを床に捨て二階から一階に飛び降りるべくの透明ガラスの縁に脚をかけた

さすがにほとんどの人間がそこに注目していた
そして誰かが「危ないっ!」と叫んだ時だった

あと数センチその男が落ちるというところで近くにいた女が手を差し伸べたのだ
しかも片手で男の手首を掴み引っ張り上げた勢いで男を背負い投げしてみせた

普通ならそんなことあってもおかしくはない
しかしその女は派手な服装に細々とした体、明らかにそういった事柄に手を出すような人間ではないように見える

そして背負い投げをした女は「何事?」と言わんばかりの表情で周りを見渡している
かと思うと今度はハワイにでも行くのかと思うような半袖半ズボンのこれまた派手な男がひったくり男の腕を固めて「誰か警察を!」と声を荒げた

何か引っかかりを覚えたが俺は自分の使命を思いだしもう一度ひったくり男を操る

しかしそれを見計らうように次から次へと周りの人間がそのひったくり男をひっとらえようとする

俺「おい…なんだよあれ…!」

女「みんなが協力的になってる…」

友「でもあれ…」

そう…あれは普通の動きじゃない

彼らは操られているんだ

この目の力を使う際二人以上の人間を操ることが出来ない
だから何人かを動かそうとしても一人ずつを操らなければいけない

それらの動きは俺が集団を動かそうとする時と全く同じリズムだった
つまり俺の他にもう一人、目の力を持った人間がいる

しかしこの人が密集するショッピングモールでそれを見つけ出すのは不可能だった
寧ろ俺はひったくり男を動かすので必死になっていた

周囲はその非人間的動きに呆気に取られていた
しかしそれは俺がひったくり男の操作を諦めた時に終了した

俺「はぁ…はぁ…」

女「なんだったんだろう今の」

友「さぁ…」

俺「…もう行こうぜ」


男は警察に捉えられた

しかしその日からそれは度々起こった
確率は少ないが明らかに俺の制裁を阻止しようとしている人間がいる

そんな俺の制裁にも終止符を打つ時が近付いていた

友「僕はナビスコが好き」

女「断然ポッキーでしょっ」

友「ポッキーは手を汚しちゃうよ」

女「なによおんなじじゃないナビスコも」

友「ナビスコはお箸で掴んで食べられるし」

女「あー、また私に反抗する気ー!」

友「えーごめんってぇ」

女「ていうか俺!話に参加しなさいよ」

俺「え?あぁ…ごめん」

女「なによ…らしくない」

俺「ええ?いつもこんな感じだけど」

友「いや確かに最近ちょっと元気ないよ」

俺「そう?」

友「というより何か考え事しているような感じで…」

女「なんかあったの?」

俺「…」

俺「お前らいつから俺を心配できるようになったんだよ!w」

女「あ、せっかく心配してんのに!」

友「あはは」

キーンコーンカーンコーン

俺「ほらお前ら席戻れ」

女「可愛くないヤツ!」

友「先生来ちゃうよ戻ろっ」

ガラガラ

担任「…」スタスタ

担任「…みんな集まってるな」

担任が何か畏まっている
というより次の授業は彼の担当ではないハズ
周りからの「先生教室間違ってるぞ~」という声に笑いが起こったが担任は表情一つ変えず何か強張った声で話し始めた

担任「みんな最近起こっている犯罪者を裁くと言われている暗殺事件のことは知っているな」

クラスが静まり返る

担任「そのことについて警察からの特殊捜査でいくつか犯行を調査したらしいのだが」

担任「お前らあの不良1の事はまだ覚えていると思うが…」

担任「あれが決定打となり…犯人は確実にこのクラスにいるという結果が出たそうだ」

クラスが大きくざわつき始めた

そんなバカな
いずれこの地域のどこかにいる人間だというのは特定されると思っていたがそこまで調査を進められてはいたなんて

ここまで追い詰められたのなら覚悟を決めるべきだと決心した

担任「先生はこのクラスが好きだ!」

担任「だから絶対そんなことをする生徒がいるとは思えない!」

担任は涙を浮かべ豪語する
それだけ何か思い詰めているのだろう

担任「でももし!本当に何か知っている人がいるのであれば…出てきてほしい…!」

担任「先生もこの話を聞いたとき…」

ガラガラ

警察「なにをやっている!」

担任「くっ…!」

ザワザワザワザワ

警察「全て話したな…?」

警察「後で一人ずつ拷問するという話で解決しただろう!」

ザワザワザワザワ

担任「…私は…私はこの生徒たちが好きなんです…!」

担任「だからそんなことする子が…いるわけないんです…!」

警察「…」

パーンッ

俺「!?」

警察が発砲した弾は担任の額に当たった
「きゃあああ!」という女子生徒の声と共にクラスメイト達が叫び声をあげたり机から転げ落ちたり、と混乱し始めた
そして誰もが目を向けた教室の入り口には数十の警備隊がシールドを持って構えていた
外には出られない

そして教卓に立つ警察の二度目の…天井への威嚇射撃による発砲と「黙れ!」という声でクラスはまた静寂に包まれるがそこかしこで女子生徒の啜り泣く声がまだ聞こえる

警察「いいか!?お前らの中にあの忌まわしい殺し屋がいるのは決まっているんだ!」

警察「次騒いだヤツは撃ち殺すぞ!」

警察「…!?」グワン

警察「あ…あ…」

警官の懐から拳銃を取り出す
そして拳銃を自らの頭に向ける
この時点で察した何人かの生徒は顔を伏せた

パーンッ

もう後戻りはできなくなった

警備隊は合図を待っているのか動かない

俺「…」

またクラスは混乱し始める
しかし一人の男子生徒が警官が落とした拳銃を拾い声を荒げる

男「み…みんな…静かにしろ!」

拳銃を震わせこちらに向ける彼はクラスでも一際意識が高く活発でムードメーカー的存在でもあった

男「なぁ…分かってんだろぉ?この事件の決定打は不良1の自殺だよ…!」

男「なら犯人はあの騒ぎに関係してたヤツ…決まってるだろ…!」

全員が友と女の方を見た

俺「なっ…!」

友「え…!」

女「そんな…!」

するとまた一人の男子生徒が「おい友と女を撃ち殺せよ…!そうしたら終わるだろ!」と声をあげた
それに合わせ「そうだそうだ」とみんなが連動し始める

俺「させるか…」キッ

男「…!」グワン

男「あ…あ…!」

まず最初に友と女を撃ち殺すよう推奨した男子生徒を撃ち殺す

パーンッ

また女子生徒が声を荒げる

操っている人間を喋らした事はないがきっとできる

男「…犯人…探…しを始めた…ヤツから…殺し…ていく…」

ザワザワザワザワ

維持でも俺の邪魔はさせない

すると男の近くにいた女子生徒がジリジリと距離を近付けていることに気付き拳銃を向けた
あちらからすれば死角でも後ろから二番目の席にいる俺にはほぼクラスの風景が見えているのだ

すると次に割と後ろの席にいる男子生徒がまた急に動きを見せたのでそちらに拳銃を向ける

ドサッ

その瞬間後ろから操作していた男をあまり目立たないハズだった女子生徒がひっとらえ拳銃を奪った
そしてその拳銃を解放していた窓に投げ捨てたのだ

俺(なっ…!)

クラスにざわめきが起きる
仮に彼女がそんな秘めた力を持っていたとして何故あんな連携が取れた…?

グワン

俺はすぐさま拳銃を投げ捨てた女子生徒を操作しこの二階の窓の外に飛び込まそうと操作を始めた

しかしすぐにその思考を読んでいたかのように女子生徒を止める男子生徒

俺(おかしい…)

俺(あれは明らかに…操られている…)

俺(それも俺の操作を止めるために…)

俺(ということはもう一人はこのクラスにいるのか…!?)

手の震えが止まらなくなったがそんなこと今となっては誰も気にとめない

俺(誰だ…)

俺は常に誰かを操作する状態に持ち込み維持でもその相手を見つけ出そうとした

クラスは一人が窓に突っ込めば一人が倒れ一人がそれを阻止すると騒然としている
そんな中教室の後ろの方に冷静にそれを見つめる人物がいた

俺「…友…!」

友は背中に女を庇うようにしながらその様子を見ていた

俺は疑いを確信にするため生徒を外に落とそうとするのをやめ友を殴らんとする操作を他の生徒にかけた
不意をついたそれは友の頬をあの時の事件のように殴りつけた

友「うっ…!」

その瞬間もう一人に操作されていた生徒が我に返った

俺「はっ…!」

俺は確信した

ショッピングモールの時も友は一緒にいた
その時も友は暗殺者の話に自分の意見を曲げることはしなかった
友は本当に勇敢な奴だ
体が小さくて弱くてただ優しいだけで、それでもアイツは強く生きていた
俺は密かにそんな彼に憧れていたのかもしれない
だからこんな真似を…

しかし今更後戻りなどするつもりはなかった

俺(友…俺の邪魔をするな…!)

俺は友の周りにいた生徒を次々に操作した
友も負けじと他の生徒でそれを阻止する

俺(そういえば女は…)

無事のようだ
怯えるようにそれを見つめていた

俺(今終わらせてあげるよ…)

俺はしたくはなかったが躊躇いを消しあまりに単純な方法を使い友を消すことを決めた

俺「…」キッ

友「…!」グワン

俺「友…お前が俺を止めようとするから悪いんだ…」

友を窓の外に向け走らせる

友…お前は最後まで勇敢な奴だった

女「友ー!」


__________

何か妙な静寂

そんな中俺は目を覚ました

いや目を覚ましたのか分からないような暗闇にいた

俺(なんだここ…?)

体が怠いようだがなんとか動かしてみる
しかし金縛りのように体が動かない

「目を覚ましたようです」

どこからか声が聞こえる

「俺…!俺…!」

女の声が聞こえる
俺に語りかけるようだがどこにいるのかが分からない
しかしその時俺は今までのことを思い出した

俺「はっ…!」

そう…俺は友を殺して…その後…
その後の記憶がない

しかし俺は今自分が置かれている状況に何となく気がついた

俺は目を布で縛られ拘束されていた

「俺…!」

耳元に女の声だ

俺「おう…女…俺はどうなってる…?」

女「俺…私の質問にだけ答えて」

女「…あなたが犯人なのね?」

俺「…」

今更否定する余地などなかった

俺「あぁ」

女「…」

女「友を殺そうとしたのも…俺なの…?」

俺「…あぁ」

女「…」

女「じゃあみんなを操って…」

女の声から強張りがなくなり今にも泣き出しそうに震えた声になった

女「みんなを操って…それで…」

俺「女…」

俺「ごめん…全部俺なんだ」

…グスッ…グスッ…と啜り泣く声が聞こえる

女「私…辛かったよ?俺が悩んでいるのを見て」

俺「…」

女「でもそれだけじゃない…ずっと一人だったから」

俺「一人…?」

「悩んでいたこと…気づいてあげられなくてごめんよ」

俺「!?」

友「あの時ね…みんなを操っていたのは僕じゃないんだ」

俺「この声…友…お前…」

友「そう…僕は窓から落ちる寸前で助けられたらんだ」

友「女に」

俺「…!」

女「俺…やってたのは私なの…ショッピングモールの時も全部…」

俺「あ…あ…」

女「不良1が死んじゃった後あんなの二度と見たくないとずっと思っていたの…それがキッカケだと思う」

女「でも犯人が俺だなんて考えもしなかった…最後もずっとそれだけはないって信じてたけど」

女「友が殺されそうになって最後に思い浮かんだのが俺だった…」

俺「…」

友「俺も女もずっと一人で戦ってたんだ…えらいよ」

俺「やめろよ友…今更同情なんて」

友「ほんとさ…僕も君のことを否定したけど…俺は俺なりに貫きたい正義があったんだろう?」

俺「…」

「二人とも…死刑が執行されるので離れて」

野太い男の声が聞こえた

俺「…」

俺「…なるほどな」

また女の啜り泣く声が聞こえそれを宥める友の声も聞こえる

なんでこんな事になってしまったんだろう

俺「二人とも…聞いてなかったのか」

女が声を荒げて泣き出した
その後誰かに強引に引っ張られるように二人が場を退場する音が聞こえた

「それでは死刑執行を行います」

「何か言っておきたい事はあるか?」

俺「…友…女…聞いてるだろう」

俺「俺に同情なんてするなよ」

俺「女、俺は全く悩んでいなかったし一人で殺人してたのが楽しかったんだよ」

俺「友、お前の言ってたことなんて戯れ言だ 俺が正しかったんだよ」

俺「この世界は間違っている」

「…以上か?」

俺「あぁ」

「最後に友達の姿を見たいだろう」

「数秒だけ、ガラス越しからだが見ることが可能だ」

俺「いや…いいよ」

「…本当にいいのだな?」

俺「あぁ」

「それでは殺人罪の罪で俺罪人の処刑を開始する」

布を外せば泣いてるのがバレちまうだろ

アイツらの為に俺は最後まで悪でなければいけない

俺はそういう生き方を選んだのだから


おわり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年01月31日 (日) 13:42:29   ID: vVGBKwZ8

無駄に感動したかもしれない

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