俺が功国の新王に!? (15)

尚隆「あなたが新しい功国の王でありますか?」
延麒「まったく功燐は今まで何してたんだぁ?」
身の丈が180はあろうかという男と小学生高学年くらいの少年が大層な衣装を纏い気安く話しかけてきた。
もちろん気安く話しかけられて不愉快な気持ちになるほど自分は大層な人間ではない。
しかし、ここ数週間はそれこそ王になった様な対応しかされない。
皆頭を深く下げ目線を合わせない。文化が違うのであれば致し方ないことと功燐はさもあっさりと言いのけた。
だから本当に久しぶりに丁寧な言葉ではなく軽口に近いような口調を自分に向けて言い放つ二人に驚きを隠せなかった。


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初SSです。
十二国記がだいすきで作りました。
稚拙な文章と漢字間違ってても勘弁してくださいね

尚隆「ん? なんだ。功の新たな王は口がきけぬとみえる」
延麒「あほぅ!いきなり来ておいてなんて言い方だ。驚いているんだろ」
尚隆「それは俺のせいなのか? 隣国であり、ましては胎果の王であるからと聞けば何も分からず王にされてしまったことを哀れんできてやったのに」
延麒「お前はそうだったかもしれないがこいつは違うかもしれないだろ。でもまぁしっかりした顔もしているし民を喜ぶだろ!陽子のときも言ったが美女と美男子はそれだけでもしものこときには役に立つ」
自分抜きでこそこそと話している。若干の気まずさを感じてきたとき金髪の少年がこちらに笑顔を向けてきた。

尚隆「ほう、もしもがあるかわからんが俺ももしもの時はこの男前が役に立つかもしれんな」
延麒「鏡に映った自分をよく見てから出直してこい」
また言い合いが始まりそう。ほって置いたら永遠と言い合いになりそうだ。
俺「あの……すいません。お二方は雁の大使でありますか?それならばわざわざ来ていただいてありがとうございます」
延麒「あぁ、いや俺たちは涎の…」
尚隆「そうです! 本日登極なされた功王に是非ともお祝いの言葉お送りしたいと主上よりの文を持参いたしました」
延麒「おいっ!」
俺「あぁやっぱり!遠くからありがとうございます」
頭を下げ、礼を述べると金髪の少年が訝しそうに男の方を見ている。

俺「今、誰か人を呼んできますね。少しお待ちください」
席を外すし隣の部屋へ人を呼びに行く。世話係の人には「その場で呼んでくれればすぐにでも向かので」と言われていたがなんだか悪い気がしていつも足を運んでしまう。
延麒「どういうつもりだ?」
尚隆「戯れだ。それにお前も気になるだろ。隣国の王がどのような人物か。なるほど確かに陽子は良き王になるだろう。慶の民は幸運だ。だが、俺と同じ胎果だから等とも噂されているのも耳にする。それだけで国を治められるのであれば皆王は胎果にしてしまえば良い」
延麒「だがそうではないのもまた天帝の思うところなんだろ?」

尚隆「だからこそ、陽子の時ほど安心して構えていられないのだ。胎果だから安政をしくとは限らんのだから。慶はこの百二十年で大国へとなった。雁がなり、慶がなりとくれば民はどうしても胎果の功の新王にも期待する。民だけならむしろ好都合かもしれぬ。しかし、官吏達も過度な期待をするであろう。功は長命の王に恵まれておらぬ。やっと自分たちの国も順番が回ってきたと」
延麒「期待が不安へと変わり、諦めそして失望に変わる……か」
尚隆「そもそも胎果が安政をしくと誰が決めた。俺が言うのも可笑しな話だが、胎果だからというのはそもそも気に食わんな。功王もおそらく同じ気持ちであろう。今は良い。官吏がそれこそ阿呆というくらいに期待しているからな。だが、失望へ変わったときにそのまま倒れてもらっては困る。故にどのような人物か計りたいと考えている」
延麒「言いたいことはわかるがさ、少し心配しすぎじゃないか? 陽子だって少なからずそういった状況になったと思うぜ?それでも立派にやっている」
尚隆「陽子が登極した当時もやはり気にしていた。しかし杞憂であったな。陽子は強い。あいつの言葉を借りてしまうが自分が自分自信の唯一無二の王なのであろう。六百年生きたがこれほど違和感なく体を通り抜けた言葉はない気がする。存外それこそが長命な王の秘訣なのかもしれぬな」
延麒「俺は尚隆が自分自信の王とはまったく思えないけどな」

尚隆「功王がその器かどうか気になる」

延麒「随分な言い方だな。天帝にでもなったつもりか?」

尚隆「何を言っている。俺は雁国の王だ。功が荒れれば雁にも少なからず負担が出る。もちろん慶にもだ。俺からすれば陽子がここにいないことの方が理解できないがな」

なにか難しい話をしているようだ。どうしようか。世話人を呼んできたはいいが入りづらい雰囲気がにじみ出ている。こんなこともすぐに決められないなんて王として失格なのではと思った。しかし、もう少し待ってみようかと考えていたところ部屋の中から声がかけられる。

尚隆「どうぞ、お入りください。」

気を使われてしまった。官の人にはここは主上の宮と教わった。今はお客様を迎えているのだ。その方々に気を使われてしまったら宮の主人としてはやっぱり失格なのだろうと思った。

俺「お待たせいたしました。今太宰を呼びましたのでどうぞ延王様からの文はそちらへお預けくだされますように」
尚隆「ご配慮ありがたく存じます。しかし、主上からは功王様へ直接お渡しせよと言われております。慣例は重々承知しておりますがどうか非礼をお許し頂きたい」

俺「そうですか、分かりました。ですが私はこちらの字がまだ不慣れでして太宰にこの場で読んでいただくということでもよろしいかな?」

少し驚いた風な顔をしていた男だが勿論ですともと満足そうに文を直接手渡される。時を待たず太宰が部屋に入ってきた。

俺「あぁ、ご苦労様です。今、雁国の大使の方々から王の文を頂戴しました。すまないですが読み上げて頂けますか?」
太宰「かしこまりました。それでは失礼いたします」

そう言うと自分の歩幅より三歩程歩み寄り口頭しながら文を受け取る。太宰はそれを静かに読み上げ始める。ふと目線を雁国の大使へ向けると男の方と目が合う。咄嗟に逸らそうとするも男の目に吸い込まれそうな気持ちになり逸らせない。いや、逸らしたくないという気持ちだった。

太宰「主上……、主上」

太宰が読み終えた文を手に取り私を呼んでいた。いつのまにか読み終わっていたのを私が気づかずにいたと思い声をかけていた。

俺「あぁ……ありがとうございます。」

集中して聞くことはできなかったが当たり障りのない祝いの言葉が並んでいた様だ。

俺「延王にお礼を申し上げなければいけませんね。本当は文にしてお渡ししたいが先ほどの通り読み書きはまだ未熟でして、書き終わるまで大使の方達をお待たせしてしまいます。只でさえ長旅でしたのに私の未熟さで帰りが遅くなってしまうのも忍びない。失礼かとは思いますが、冢宰から返事の手紙を書かせますので少しお待ちいただけますか?」

尚隆「登極直後の時を選ばず参上した私達こそ非礼をお詫びいたします。また私どもへの配慮、ありがたく存じますが、非礼ついでに今ひとつだけお願いいたしたき事がございます」

俺「なんでしょうか?」

先程から男の表情に一切変化は無い。どこか掴みどころのない笑顔。

尚隆「主上より功王へお会いできたら尋ねてくる様命じられた事がございます。非礼の限りとはございますが、主上からの嘆願お聞き入れてくれますでしょうか?」

俺「勿論ですとも。お聞かせください」

隣国とはいえわざわざ登極のお祝いに来てくださった国を無下にできない。しかも隣の大国。文を書く為に今部屋へ入ってきた冢宰を見ると心配そうに頷いている。

尚隆「ありがとうございます。では失礼をして申し上げます。「我が国、延国は運良く大国として知られている。近国の慶も大国になろうとしている。功王は知っているかは分からないが俺も慶国女王も胎果である。民や官吏は長命の王の秘訣は胎果であると考えているものも少なくない。雁や慶でも噂になっているのであれば、功ではそれが顕著であろう。功王においてはどうお考えか?」……以上でございます。」

男は今日一番の声量で言い終えたあと少し鋭い目つきで私の答えを待っている。

俺「そうですね。まず私は冢宰から両隣国の王が胎果と聞かされておりました。胎果の意味も分からずにその時は聞き流しましたがどうやら私みたいな境遇の人の事を指すみたいですね。あぁすいません。答えになってないですね。えーと、胎果だから名君なのではないかってことですよね。」

少し申し訳なさそうに話を続ける。

俺「実際どうなのでしょうね。雁も慶も大国ですからその王が揃って胎果というのであればそうなのかもしれません。まいったな。みんなが期待しているってことになってくるんでしょうね。ただ、こうやって新参物の私が心配で……いえ私が悪政をしく王かどうか。それにより自分の国に負担が来てしまうかどうかを見定め対応できるように考えているそんな事のほうが私には胎果という肩書きより十二分に名君たる資格だと考えます。」

延麒「……。あぁ、もっともだな。尚隆もうそろそろいいだろ」

尚隆「そうだな。どんな王になるかはまったく分からんがこいつもまた、自分自信の唯一無二の王というものなのであろう。」

急に態度を改める二人。少年の方は笑顔で私に歩み寄ってくる。

延麒「いやー、悪いな。少し意地悪するつもりが尚隆が乗ってついついやりすぎたよ。俺は雁の台輔という職についている者だ。新しい王がどんな人物か気になって登極直後だったけど様子を見に来たんだ」

んっ?考えがまとまらない。雁の台輔?ということは雁の麒麟。おいそれと国外に来ていい役職ではないとうる覚えのこの世界の常識の隅っこで記憶していた。

俺「延台輔とお呼びすればいいのでしょうか。流石に驚いてしまって取り乱したおります。」

延麒「六太でいいよ。あちらでは六太って名前があったんだ。そのほうが呼び慣れてるし尚隆もそう呼ぶしな」

屈託の無い笑顔で話しかけてくる。その笑顔はどんな悪戯をしても結局許されてしまう一種の免罪符の様なものに見えた。

俺「六太さん……か。苗字はなんていうんですか?」

六太「それってさ、今の日本だと当たり前の様に皆が付いてるものなの?陽子にも聞かれたことあるけどそんな大したところの出じゃないから無いって答えたら少し驚いていたなぁ」

少し怪訝そうに訪ねてくる六太さん。その横で男が笑いながら得意そうに顔を上げている。

尚隆「俺はあったぞ。性。何しろ若だったからな。小松三郎尚隆。ナオタカが本来の読み方だが皆ショウリュウと呼んでいる。さて、まずは試したような事をしてすまなかった。許すことはできなくても理解はしてもらいたい。俺も王であるからやはり自分の事が可愛い。」

国は王。自分の事を顔色変えずに国と呼ぶこの人は紛れもなく王なのであろう。

俺「なんとなくただの大使ではないのかなとは思っていました。雰囲気と太宰がそちらが持ってきた文を読み上げている時の眼力が大使の方が持つものではないような気がしましたし。」

尚隆「……ほう。そこまで見破っておりなぜ六太が麒麟とわかったときはあの様に動揺しておったのだ?強がりはよせよせ」

少しつまらなそうな顔をしてから意地悪そうに尚隆さんは私に言い放つ。

俺「あぁ、いえ尚隆さんがもしかしたら王かなとは予想していたんですけど、まさか台輔までいらっしゃるとは思いませんでしたので。というよりお二方が抜けて国は大事ないのでしょうか?」

六太「あぁ。それは大丈夫。元来抜け出し癖のある尚隆だからな。官吏が適当に頑張ってくれていると思う」

笑顔でとんでもない事を言い放つ六太さん。後ろで尚隆もうんうんと頷く。

尚隆「ところで大使ではないと思ったということだがではなぜ王ではないかと考えたんだ。俺が言うのもなんだが王が大使に扮して訪れるとは通常到底思わないことだろう」

俺「それはですね、経験です」

尚隆「と、言うと?」

俺「王並びに延台輔がお越しいただく前に別のお客様がお見えになっておりました。」

私がそこまで言うと部屋の戸が空き、静かなそれでいて力強い心地の良い声が聞こえた。

陽子「私だ」

赤く燃えるような髪の色合いが美しく、まだ乙女な外見と相まって随分と可憐な女性が入ってきた。

尚隆&六太「……」

お二人の口が大きく空いて目が開いている。すこし時が止まった様に感じた。

六太「陽子…お前は政務忙しいから行けないって」

尚隆「そ…そうだ!どうせ俺たちと行けば悪戯に付き合わされるから遠慮するって」

陽子さんは横で五月蝿く責め立てっている二人を無視してこちらを向いて一言。

陽子「こんな隣国ですまない」
本当に申し訳ない顔に見えた。不覚にも私は吹き出して笑ってしまった。不愉快に感じてしまっていたら申し訳ないと思った。

それでもこちらの世界に来て会った誰とよりも私は私自身らしい会話出来きたと思う。もちろん王としてだったが、だが人として。先ほど胎果の王は名君になるという噂があると尚隆さんは言った。

私は特別胎果を意識していない。もとより胎果であるからこそ意識などしないのであるが。肩書きとしての胎果という事実が名君になる資格なのであれば大いに使わせてもらおうとも思っていた。こんなに楽なことはない。だがどうやらこの三方を見ているとそんな便利な武器ではない様だ。

ただ、私もこの輪の中に入れるチャンスをもらえたみたいだ。それだけで胎果という肩書きは私の中では十分すぎる武器なのだろう。私は胎果という言葉を特別意識していない。くだらないとまで考えていた。

民に噂されても、官吏に祝いの席でも意識など出来用もなかった。だが今やっと意識できたようだ。

書き溜めてのを放出しました。
最初、開業

改行を忘れていました。読みにくいと思いますが、最後までよんでいただいた方は感想お願いします。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月08日 (月) 21:58:41   ID: voK-imo0

普通におもしろい。
十二国記の話からも矛盾になるようなとことかないし、ちゃんと考えて書いてるんでしょうね。
続きは書かないんですか。

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