村娘「とある聖剣の可笑しな話」(18)

国王「何?この世界に聖剣を召喚することに成功したが行方がわからないだと?」

魔術師「はい…地下に召喚する手はずだったのですが…」

国王「言われた通り台座も用意したというのに…これでは台無しではないか」

魔術師「すぐ探させます」

魔術師「必ずどこかに突き刺さってると思いますので…」

国王「頼んだぞ」

国王「あの聖剣を扱う事ができるのは勇者だけなのだ…」

魔術師「お任せを…」

国王「勇者は地下に収容しておるのだな?」

魔術師「はい…何分人よりサイズが大きいもので外には出せません…」

国王「聖剣が見つかるまでは出すな」

魔術師「はい」

兵士「大変です王!!報告があります!!」
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聖剣「ここはどこの森なのだろうな」

聖剣「召喚された瞬間勇者と対面する手はずと聞いたが勇者どころか人気すらないではないか」

聖剣「見かけるのはリスや熊のようなだけのもの…これでは私が召喚された意味がない」

聖剣「誰か人が通りかかってくれるとよいのだが」

マーサカリカーツイダーキンタロー

聖剣「何かマヌケな歌声が聞こえるが…」

聖剣「まさか人か?」

村娘「んー、今日もいい天気だべー!」

村娘「それじゃ日課の山菜採りを始めるべ」

村娘「あれ?」

聖剣(お、気付いたか)

村娘「こんりゃ珍しいキノコだべ!!カラフルで可愛いだー!!」

聖剣(気づいてねぇのかよ)

村娘「採っておっとーに食べさせてみるべ!きっとほっぺ落ちるだろうなー!」

聖剣「その前に命を落とすと思うぞ」

村娘「」ギョッ

村娘「今なんか声がしただ……」

村娘「も、もしかして神隠しの予兆だべか…?」ブルブル

聖剣「いや違うぞ…それに神隠しなどというものは迷信だ」

村娘「返答されただー!怖いだーーー!!」

聖剣(まずい怖がられてる。せっかく人が通りがかったと言うのに逃げられては困る)

聖剣「安心しろ。私は剣の精霊…お前に悪いことはせぬ……」

村娘「本当だべか……?オラを鉄と一緒に溶かしたりしねぇべか…?」

聖剣(こいつ精霊を妖怪か何かと勘違いしてやしないか?)

聖剣「大丈夫だ、そのような事はせぬ」

村娘「よかっただー。こんな所で死んだらおっとーが悲しむと思って心配しただよ」

聖剣「落ち着いたならば地に突き刺さっている剣の方へ顔を向けなさい」

村娘「これだべか?」ツンツン

聖剣「そう…これが私の本体」

村娘「しゃべる剣なんて初めて見ただー!街道で見る芸人さんより珍しい芸当するだ!」

聖剣(なんかちょっとズレてるけどまぁいっか…)

聖剣「お前、ここがどこだかわかるか?」

村娘「山だ!」

聖剣「そうではない……大陸で言うどこに位置するかを聞いているのだ」

村娘「大陸…?すまねぇだ、オラ遠い所って言ったら隣町ぐらいしか行ったことねぇからそこんところ疎いだ」

聖剣(この女とんでもねぇ田舎もんだな)

聖剣「ではお前はどこから来たのだ?」

村娘「帝国」

聖剣「えっ!?」

村娘「から徒歩で1時間ぐらい歩いた場所にある小さな村から来ただ」エヘヘ

聖剣「何だ…というかこのような世間知らずが都会住みなわけあるまいな…」

村娘「今日の分の食料を取りにきただ!ここはちけーし緑もいっぱいでウチの食糧源だ!」

聖剣「村からここまでどのくらいで着くのだ?」

村娘「10分くらいだ!!」

聖剣「とすれば帝国からここはだいぶ近いのではないか…訳の分からぬところに飛ばされたと思ったが幸い本来の目的の場所からそれほど遠くないようだ」

村娘「えーっと、精霊さんはこの山を守ってるんだべか?」

聖剣「私は守り神などではない」

村娘「じゃあなんでこんなところに突き刺さってるだ?誰かに捨てられただべか?」

村娘「可哀想だべ…蒔を割るときぐらい使えたらいいだべが…」

聖剣「真剣に悩むな、私は捨てられてなどいない」

聖剣「私は天界から召喚された聖剣。何かの手違いで召喚者とはぐれてしまったようだが…」

村娘「召喚?」

聖剣「要は必要があったから呼び出されたのだ」

村娘「聖剣さんは何のために呼び出されただ?」

聖剣「魔王を倒すためだ……」

村娘「ま、魔王だべか!?」ギョッ

村娘「魔王ってここから真下の大陸にいて妖怪みたいな顔をしてるっていうおっかねぇ奴だべか?」

聖剣「いや…素性はわからんが大まかそんな所じゃないのか」

村娘「そんなおっかねぇ奴を退治できるなんてすごいべ…」

聖剣「私だけでは無理だ。見て分かるように扱うものがいなければただの剣」

聖剣「すなわち勇者がいなければ私は無力」

村娘「それ知ってるだ!勇者様の話は童話でいくつか読んだだ!」

聖剣「存在する伝説上の者…その姿は巨人」

村娘「30分ほどで世界を横断できるって話は面白かったべ!」

聖剣「今私はその勇者と合流したいのだが…どうも連絡を取る手段がなくてな」

聖剣「本当は帝国の城で召喚されるはずだったのだが…うーん困った」

村娘「そりゃ残念だべなぁ…」

村娘「健闘を祈ってるだ!!それじゃオラ山菜取りを続けるから達者でなー」

聖剣「待て待て、何のためにお前を引き留めたと思っているのだ」

村娘「ほえ?」

聖剣「はぁ…人を呼んできて欲しいのだ」

村娘「あーそうだったべか。それならそうと早く言ってくれればよかっただ」

聖剣「うむ…それでは帝国の城に従ずる者を誰か呼んで…って何をする気だ!?」

村娘「国に持っていってあげるべ!」

聖剣「待て!普通の人間が柄を持てば焼け死…」

ガシッ

聖剣「!?」

村娘「何か言っただべか?」

聖剣(こ、この娘まさか勇者の素質があるというのか…?バカな…巨人にしか扱えぬはず)

聖剣「まさか私を持って無事でいられるとはな…」

村娘「引き抜くだ!!」ウンショ

ズルズルズル…

ズルズルズル…

ズルズルズル…

村娘「長すぎだ!!こんなの引き抜け切れねぇだ!!」ギョッ

聖剣「そりゃ巨人が扱う剣だからな…長くて当然であろう」

聖剣「だが驚いた…お前勇者の素質があるのかもしれない…」

村娘「オラが勇者!?そんな滅相もねぇだ!たまたまつかめただけだ!」

聖剣「たまたまで扱われたら聖剣の威厳などないのだが…」

戦士「おーい村娘、何やってるんだー?」

村娘「あ、戦士さんだ!今日は狩りにきただべか?」

戦士「おうそうだ」

聖剣「知り合いか?」

村娘「帝国から来てる戦士さんだ、狩りに来るらしくて森でよく会うだ」ボソボソ

戦士「聞いてくれよ村娘。今日街が騒がしくてしょうがなかったんだわ」

村娘「何かあっただべか?」

戦士「そうそう魔王が死んだらしくてよ」

聖剣「む?」

村娘「魔王が死んだだべか!?でも聖剣さんはまだ勇者様にも出会ってないのにおかしいべ!」

戦士「たしかに聖剣は召喚されたけど行方不明だったらしいな」

村娘「それで!なんで魔王は死んだだべか!?」

戦士「何でも…偵察に行った兵士が王に報告したらしいんだが、地面から突き出ている刀身に身を貫かれて死んでいたらしい」

村娘「よくわかんねぇ話だべなぁ…」

聖剣「あっ」

終わり

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