前スレ:【デレマス×デジモン】二宮飛鳥「小さな冒険」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432429881/)
─346カフェ─
幸子「そういえば飛鳥さんって、デジタルワールドにはまだ一度しか行った事がないんですよね?」
飛鳥「……(モグモグ」
飛鳥「……(ゴクン」
飛鳥「ああ。この間、クダモンを迎えに行った時が最初で最後だね」
飛鳥「出来ればもう一度、今度は付き添いなしで行きたいと思ってるんだけど……残念な事に、せめてクダモンが成熟期に進化出来るようになるまではって事で、プロデューサーに止められているんだ」
光「まぁ、それは仕方がないさ。デジタルワールドも昔と比べれば大分平和になったみたいだけど、今でも凶暴な野生のデジモンは結構ウジャウジャいるからな」
光「でも、アタシ達は今度デジタルワールドでガッツリ仕事をする訳だし、飛鳥を今の内にデジタルワールド慣れさせておいた方がいい気はするね」
幸子「そうですね……あの世界ではこっちの常識が全く通用しないということは、デジモンアドベンチャーを愛読していらっしゃる飛鳥さんならよくご存知かもしれませんが……」
幸子「知識と経験……咄嗟の場面で役に立つのがどちらなのか、言うまでもありませんよね?」
飛鳥「ふむ……」
光「でまぁ、アタシ達って今日は三人揃ってオフだろ? ちょうどいい機会だから、後で一度皆でデジタルワールドに行って、その辺を軽く散策したりした方がいいんじゃないかって思うんだけど……二人はどうだ?」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432728215
幸子「ボクは賛成ですね。光さんが言うようにデジタルワールドには今でも危険でいっぱいですし……」
幸子「少しキツイことを言うようで申し訳ありませんけど、最低限の身の振り方は覚えていただけないと、飛鳥さんは勿論旅の仲間であるボク達の身まで危なくなりますからね」
飛鳥「…………」
飛鳥「……そうだね。確かに、幸子の言う通りだ」
飛鳥「うん。ボクも異論はない……むしろ、こっちからお願いしたいくらいだよ」
飛鳥「まだまだデジタルワールドについては知らない事が沢山あるから、色々と迷惑を掛けるかもしれないけれど……出来ればフォローして貰えると助かるな」
光「おう、任せとけっ!」
幸子「このボクが手を貸してあげるんですから、飛鳥さんは大船に乗ったつもりでいてくれて構いませんよ!」
飛鳥「ふふ……頼りにしてるよ。二人とも」
光「それじゃあ、これを食べ終わったらアタシの部屋に行こう。パソコンは勿論、冒険に必要な道具もしっかり揃えてあるからなっ!」
飛鳥「ああ」
幸子「はい!」
─346プロ・噴水前広場─
クダモン「へぇー……じゃああんたは、まだ光が小さい頃にこっちに来たんだね」
「ああ。確か、今年でかれこれもう十年になるかな……あの頃の光は今よりもずっと小さくて、可愛らしくて……性格、というか行動パターンは今もあんまり変わってないけどね」
クダモン「うー……羨ましい。あーぁ、私も子供の頃の飛鳥に会ってみたかったなー」
「まあ、それは今更言っても仕方がないさ」
「……あとまぁ、子供の相手をするのは実際の所かなり大変だぞ? 口で言っても解ってくれないし、だからといって力づくで言うことを聞かせる訳にもいかないし……」
「……この二本の触覚を引っこ抜かれそうになった時は、本当に死を覚悟したよ」
クダモン「…………あんたも色々と苦労してるのねぇ、ドクネモン」
ドクネモン「……まあ、ね」
ドクネモン
世代:成長期
型:幼虫型
属性:ウィルス種
その小さな身体に猛毒を秘めた、幼虫型デジモン。
必殺技は、高所から敵に毒液を吹きかける『ワームベノム』。
クダモン「ところでさ」
ドクネモン「うん?」
クダモン「さっきからバクモンが一言も喋ってない気がするんだけど、ひょっとして寝てるの?」
バクモン「…………」
バクモン
世代:成長期
型:聖獣型
属性:ワクチン種
悪夢や悪質なコンピュータウイルスを取り込み浄化する力を持つ聖獣型デジモン。
必殺技は、取り込んだ悪夢を放出して相手の精神にダメージを与える『ナイトメアシンドローム』。
ドクネモン「あぁ、これ? これは別に寝てる訳じゃなくて、単にものぐさってだけさ」
ドクネモン「本人曰く、進化するのにエネルギーを大量に使うから、いざという時に備えて普段はこうやって省エネを心掛けてるって話だけど……まあぶっちゃけ、こうやって怠ける為の建前でしかないよね」
バクモン「…………あんまり人聞きの悪い事を言わないで欲しい」
クダモン「あ、喋った」
バクモン「…………進化するのに力が大量に必要なのは紛れも無く本当の話。…………天使型デジモンは総じて燃費が悪い。デジモンアドベンチャーに登場したエンジェモンだって、初めて進化した時はエネルギーを使い果たしてデジタマになってしまっていた」
ドクネモン「……あれは、あくまで相手が暗黒の力で強化されたデビモンだったから起きたケースだろ? あんな、自らの命を投げ打たねば倒せないような巨敵、今のデジタルワールドに居るとは思えないけどね」
バクモン「…………」プイッ
クダモン「あ、顔背けた」
ドクネモン「あのねぇ、バクモン。そうやって自分に都合の悪い状況になったからって逃げるのは正直どうかと思うぞ。大体君はいつもいつも──」
バクモン「…………」ツーン
ドクネモン「────(クドクド…」
クダモン(これがいわゆる、喧嘩する程仲がいいって奴……とはちょっと違うか。ヒートアップしてるのは片方だけみたいだし)
クダモン(まあ何にせよ、これだけお互いに遠慮無く振る舞えるって事は、表面上の態度はアレだけど、互いに深い信頼関係を結んでいる、ってことよね)
クダモン(私もいつか、この二人とこういう関係になれるのかしら。……いや、なってみせるわ。絶対に!)フンス
─ファイル島・森の中──
光「ファイル島についたぞっ!」
幸子「そのネタは色んな意味でアレだからやめてください」
飛鳥「なんだか急に霧が出てきたね……」
ドクネモン「……おーい。バクモン? いい加減に動けって」
バクモン「…………めんどくさーい……お願い、幸子ー……運んでー……」
幸子「またですか? まったく、しょうがないですね、バクモンは。まあ、ボクはカワイイだけでなく心も人一倍広いですからね! 快く頭の上を貸してさしあげますよ!」
バクモン「…………やっふー、幸子大好きー。日本一ー」
幸子「ふふーん!」
クダモン「幾らなんでも甘やかし過ぎじゃないのかしら、これ」
飛鳥「まあ、お互いが納得してるのなら別にいいんじゃないかい?」
ドクネモン「…………」
光「ん? どうしたんだ、ドクネモン。……あ、なるほど。お前もアタシの頭に乗りたいと思ってるんだな?」
ドクネモン「え? い、いや、そんな事は……」
光「いいから、遠慮するなって!」
ドクネモン「ちょ、ま……全く、本当に君は強引な奴だな。仕方がない、不本意だが今のところは君の頭の上に甘んじているとしよう」プイッ
バクモン「…………なんて言いながらも、実はまんざらでもないドクネモンであった」
ドクネモン「……何か言ったかい?」
バクモン「…………別に?」
クダモン「むぅ……」
クダモン「ねえねえ! 飛鳥! 私も私も!」
飛鳥「うーん。クダモンは頭に乗っけるには少し身体が大きすぎるかな」
クダモン「えっ」
飛鳥「だけど……」
クダモン「あ……」
飛鳥「こういう風に、抱きかかえる事は出来る」
クダモン「えへへ……ありがとう、飛鳥」
飛鳥「なに、気にすることはないさ。……ある意味ボクにとっても役得だからね、このシチュエーションは」モフモフ
クダモン「ちょ、ちょっと! だから、首筋に顔を寄せるのはやめてって……もう!」
幸子「まーたイチャコラやってますよ、あの二人」
ドクネモン「また? ということは普段からあんな調子なのか? 彼女達は」
光「事務所で一緒にいる時はいつもあんな感じだな。ま、いいじゃないか。仲が良いのは良いことだ」
バクモン「…………ここに、キマシタワーを建てよう」
幸子「一体どこで覚えてきたんですか、そんなセリフ」
光「さてと、それじゃあそろそろ行こうか。この時間だと、門限的に一箇所二箇所回るのが限界だろうけど」
幸子「そうですね。飛鳥さん、どこかファイル島の中で行ってみたい所はありますか?」
飛鳥「うん? ……ファイル島の中で、か」
飛鳥「…………(チラッ」
幸子「?」
飛鳥「……オーバーデル墓地」
幸子「!?」ビクゥッ
飛鳥「……は、冗談として」
幸子「ちょっと、飛鳥さん! ボクをからかうのはやめてくださいよ!」プンプン
飛鳥「ふふ……ごめんごめん」
クダモン「へえ、幸子ってお化けが苦手なんだ?」
バクモン「…………うん。この前、同僚の娘と一緒にホラー映画を見た時なんて、恐怖のあまり気絶しちゃったくらい…………」
幸子「バクモンも! 余計な事を言わないでください!」ペチペチ
バクモン「あう……」
光「で、結局飛鳥はどこに行きたいと思ってるんだ?」
飛鳥「ファクトリアルタウン……かな。あそこの無限分解工場が実際どういう風に動いているのか、それが昔から気になっていてね」
飛鳥「ひたすら無為に、用途の見えない機械を組み立てては、それを元の部品(パーツ)に分解(バラ)し、そしてまたそれを組み立てて、また再び分解す……」
飛鳥「そんな無意味な工程を延々と繰り返すだけの、機械仕掛けの工場」
飛鳥「話だけを聞くとまるで無駄な事をやっているようにしか思えないけれど、実際に目にしてみたら製作者の何らかの意図を感じる事が出来るかもしれない……そう思ってね」
ドクネモン「そんな高尚なものじゃないと思うけどなあ、あれは」
幸子「あんまり飛鳥さんの言うことは真に受けない方がいいですよ。正直に『ただ見てみたいだけ』っていうのが照れくさいから、ああいう風に無駄に回りっくどくてそれっぽい理由をでっち上げてるだけなんですから」
飛鳥「あのねぇ……」
幸子「違いますか?」
飛鳥「……違わないけど」
幸子「ふふーん、そうでしょう」ドヤァ
飛鳥「……むう」
光「ほらほら、二人ともじゃれ合うのはやめなって。もうあんまり時間に余裕がないんだからさ」
光「えっと、ファクトリアルタウンは……あっちだったっけ?」
幸子「ええ、確かそうだったかと。……ほら、行きましょう飛鳥さん。ボク達が先導しますから、ちゃんとはぐれないで付いて来てくださいね?」
飛鳥「やれやれ……まるで子供扱いなのは釈然としないけれど、先達者の言うことなら確りと聞かなきゃいけない、か。……まあ、理解ったよ」
─ファクトリアルタウン・無限分解工場前─
飛鳥「これが無限分解工場……小説の挿絵で何度も見たことはあるけれど、こうやって実際に見てみると、その大きさがよく理解るね」
光「門限までにこれを全部回り切るのは多分無理だろうなあ。……とりあえず、飛鳥は工場の稼働している所さえ見れればいいんだよな?」
飛鳥「うん。欲を言うなら小説に登場した所は全部見学していきたい所だけど、寮長に叱られるのは御免だからね」
光「そっか。じゃあ、決まりだな。とりあえず、今日の所はそこだけ見たらすぐに帰ろう。じっくりと見て回るのはまたの機会って事で」
幸子「ええ。そうと決まれば早速……あ、そうだ。ひょっとしたら、中に野生のデジモンが紛れ込んでるかもしれませんし、一応念の為にバクモン達を進化させておきましょうか。ほら、降りて下さい」
光「ん、それもそうか。それじゃ、ドクネモンも」
ドクネモン「ああ、わかった」
バクモン「……本当に幸子はパートナー使いが荒い……でもまあ、幸子達を守る為ならしょうがない。面倒くさいけど、頑張る……」
光「よし、それじゃあ行くぞっ! ドクネモン──」
幸子「バクモン──」
「「──進化だ(です)!」」
バクモン「バクモン進化──」
ドクネモン「ドクネモン進化──」
バクモン→ダルクモン「──ダルクモン」
ドクネモン→スティングモン「──スティングモン!」
ダルクモン
世代:成熟期
型:天使型
属性:ワクチン種
「戦場の女神」の異名を持つ天使型デジモン。
必殺技は愛刀である「ラ・ピュセル」による華麗な斬撃、『バテーム・デ・アムール』。
スティングモン
世代:成熟期
型:昆虫型
属性:ウィルス種
黒緑色の堅牢な甲殻に覆われた、昆虫型デジモン。
必殺技は両腕のスパイクで敵を貫く『スパイキングフィニッシュ』。
飛鳥「……ふむ。これがドクネモン達の進化形態、か」
光「あ、そういえば飛鳥にスティングモン達を見せるのってこれが初めてだっけ」
幸子「まあ、現実世界(あちら)では成熟期に進化させる機会なんてそうそうありませんからね」
クダモン「…………むぅ」
飛鳥「……どうしたんだい、クダモン」
クダモン「……なんでもないっ」
飛鳥「…………」
飛鳥「ふふっ……」
クダモン「な、なによっ……」
飛鳥「焦ることはないさ、クダモン」ナデナデ
飛鳥「人は人、自分は自分、だ。キミはまだパートナーであるボクと出会ってから日が浅い。だから、自分一人が進化出来ないからって、何も気にすることはないんだ」
クダモン「飛鳥……」
クダモン「えへへ……そうだよね。焦ったってどうしようもないよね」
クダモン「……待っててね飛鳥! いつか絶対に、あの二人よりも格好良い進化後の姿、飛鳥に見せたげるんだから!」フンス
飛鳥「ふふ……楽しみにしているよ、クダモン」
幸子「二人ともー! 早くついてこないと置いていきますよーっ!」
飛鳥「ああ、ごめん。今行くよ!」
飛鳥「……ほら、行こう。クダモン。皆はもう先に進んでしまっているよ」
クダモン「……うんっ!」
─無限分解工場─
スティングモン「おかしいな……」
ダルクモン「……どしたの? スティングモン」
スティングモン「……工場の中に入ったっていうのに、いつもの機械音が全く聞こえない」
クダモン「言われてみれば……」
光「つまり……工場の機械が全部止まっているって事か?」
スティングモン「恐らくな」
幸子「あっ……みなさん、あれを見てください!」
光「……歯車が止まってるな」
幸子「もしかして、停電か何かでしょうか?」
飛鳥「いや……それなら、工場の機械だけでなく、電灯も消えてしまう筈だ」
飛鳥「多分、製造ラインを動かしている機械だけに何らかのトラブルが発生したと考えるのが妥当なんじゃないかな。例えば、大事な歯車が一個欠けてしまって、それで機械が動かなくなった……とか」
スティングモン「ふむ……」
光「そういうことなら、この工場を管理をしているアンドロモンに話を聞いてみよう。ひょっとしたら、アタシ達で解決出来る問題かもしれないしなっ!」
幸子「相変わらず光さんはお人好しですねぇ。ま、ボクとしても別に異論はありませんけど」
飛鳥「ああ。ボクも賛成だ。……折角ここまで来たというのに、工場が動いている所を見れないだなんて、興ざめもいいところだしね」
ダルクモン「……えー。まだ歩くのー? 面倒くさい……」
幸子「……別に、ここに置いていってもいいんですよ? さすがにダルクモンになった貴方を運ぶのは、幾らカワイイボクでも少し無理がありますからね」
ダルクモン「…………それは、嫌だ」
幸子「だったら文句を言わずに付いてくる! いいですね?」
ダルクモン「……はーい」
クダモン「ほんと、進化してもブレないのね、この子は」
スティングモン「全く……何でこんなダメな子が天使型デジモンに進化出来たんだか」
クダモン「ひょっとしたら、いつか堕天して怠惰の七大魔王デジモンに進化しちゃったりしてね」
スティングモン「ぷふっ……もしかしたら、本当にそうなるかもな」
ダルクモン「……聞こえてるよ、二人とも。……面倒だから否定はしないけど」
クダモン「いや、そこは否定しなさいよ……」
飛鳥「……?」
光「……どうした、飛鳥」
飛鳥「……いや。今、足音が聞こえたような」
幸子「……確かに、聞こえますね」
光「あれは……」
ダルクモン「アンドロモン……」
アンドロモン「────」
アンドロモン
世代:完全体
型:サイボーグ型
属性:ワクチン種
非常に強力な力を持つ、サイボーグ型の完全体デジモン。
必殺技は、刃状のエネルギーを敵に放つ、『スパイラルソード』。
飛鳥「ふうん……噂をすれば影が射す……って奴かな」
光「ちょうど良い所に来たな、アンドロモン! なあ、一体この工場に何があったんだ? 何かアタシ達に出来ることがあったら、遠慮なく──」
幸子「ちょっと待ってください、光さん。アンドロモンさんの様子が、何だかおかしいですよ!」
光「え?」
アンドロモン「────!」ブゥン
光「う、わぁっ!?」バックステッポォ!
光「あ、危なっ……い、いきなり何を……っ!」
飛鳥「大丈夫か、光!」
光「あ、ああ。何とか……」
アンドロモン「……修正プログラム、最終レベル──」
スティングモン「……構えろ、ダルクモン」
ダルクモン「……うん」
アンドロモン「──ターゲット確認、排除開始」ダッ
スティングモン「来るぞ!」
アンドロモン「────!」
幸子「ひっ……な、何でこっちに来るんですかーっ!」
スティングモン「させるか! スパイキング──フィニッシュ!」
ガキンッ
スティングモン「ぐ……やはり効かないか!」
アンドロモン「────!」
ドゴォッ!
スティングモン「ぐああっ!」
光「スティングモン!」
ダルクモン「……だったら、これはどう? バテーム・デ・アムール──」
アンドロモン「────」ヒョイッ
ダルクモン「……避けられた……!」
アンドロモン「────」
バキッ!
ダルクモン「うあぁっ!」
幸子「っ……ダルクモン!」
光「くそっ……負けるな、スティングモン!」
スティングモン「ぐぅ……言われなくてもぉ!」
スティングモン「てりゃあ!」
グググ……
アンドロモン「───」
スティングモン「ぐ、ぅ……」
ダルクモン「……そのまま押さえつけていて、スティングモン。その隙に私が一撃を……」
アンドロモン「────」
ブゥンッ
スティングモン「う、ああああ!」
ダルクモン「な──きゃあ!」
ズシィン……
ダルクモン「……ぐ、ぅ。まさか、体格的に二回りは大きいスティングモンを、こうも易易と投げ飛ばしてくるなんて……」
スティングモン「……悔しいが、スピードもパワーも、あちらの方が一枚上手のようだ……」
幸子「そんな……」
光「スティングモンとダルクモンが……二人がかりでも歯が立たないだなんて」
飛鳥「これが……完全体の力なのか……」
クダモン「っ! ……こうなったら、私も……!」
飛鳥「! 待て、クダモン! やめるんだ!」
クダモン「弾丸旋風っ!」
アンドロモン「────」スッ
クダモン「……うへぇっ! 今のは絶対に当たったと思ったのにー!」
飛鳥(……?)
飛鳥(……何でアンドロモンはクダモンの攻撃を回避したんだ?)
飛鳥(……スティングモンの攻撃を食らってもノーダメージなんだ。成長期のデジモンの攻撃なんて、当たった所でどうにもならないだろうに)
飛鳥(……そういえば、さっきのダルクモンの攻撃も、何故か受け止めずに回避していた……)
飛鳥(スティングモンの攻撃は真正面から受けられるのに、あとの二体の攻撃をわざわざ回避する理由……それは一体……)
飛鳥「もしかして……」
クダモン「あ、飛鳥?」
飛鳥「……どうやら、今ので足をやられたみたいだ」
飛鳥「……頼む、クダモン。ボクの事は良い。キミだけでも、今すぐに逃げるんだ……」
クダモン「っ……馬鹿! そんなこと、できる訳ないじゃない!」
クダモン「やっと……やっと会えた、パートナーなのに!」
アンドロモン「スパイラル──」
クダモン「うおおおおお!」
飛鳥「よせっ、クダモン!」
クダモン「あんたなんかに飛鳥をやらせるもんかっ! 私が、飛鳥を守るんだーっ!」
アンドロモン「──ソード」
飛鳥「クダモォォォォォォォォン!」
~BGM:Brave heart~
クダモン「クダモン進化ぁぁぁ!」
クダモン→レッパモン「──レッパモンっ!」
投稿ミス:本来は>>19と>>20の間にこのレスが挟まります
アンドロモン「──ガトリングミサイル」ドドドドド
クダモン「うわ、うひゃあ、ちょ、待っ……!」
クダモン(あ、やば、これ、避けきれない──死──)
飛鳥「ッ……危ない、クダモンっ!」ダッ
幸子「あ、飛鳥さん!?」
光「飛鳥ーっ!」
ズドォン……
クダモン「うぅ……あれ、私、生きて……」
飛鳥「……大丈夫かい、クダモン」
クダモン「……飛鳥!? な、何で……!」
飛鳥「何でって……ボクはキミのパートナーなんだ。だから、キミが危なくなったら……助けるのは、当たり前の事、だろう……」
クダモン「飛鳥……」
アンドロモン「────」
クダモン「! 早く起きて、飛鳥! アンドロモンが、すぐ近くに……!」
飛鳥「あぁ……うぐっ!」
レッパモン
世代:成熟期
型:聖獣型
属性:ワクチン種
尻尾が鋭い刃になっている聖獣型のデジモン。
必殺技は、前転しながら尻尾の刃で相手を斬りつける『駆駆裂空斬(くるくるれっくうざん)』だ!
ガキンッ!
飛鳥「クダモンが……進化、した……?」
レッパモン「今度はこっちの番よっ! 獣牙乱撃!」
アンドロモン「! ────」バックステッポォ!
レッパモン「逃すかぁっ!」
幸子「ダルクモン! 今のうちに飛鳥さんをこっちに連れてきてください!」
光「スティングモンはクダモン……いや、レッパモンと連携して、アンドロモンを追撃するんだっ!」
ダルクモン「うんっ……!」
スティングモン「おうっ!」
ダルクモン「……大丈夫? 肩を貸すよ、飛鳥」
飛鳥「ああ……済まない」
ダルクモン「……ドントウォーリー」
飛鳥「何故英語……」
幸子「飛鳥さん!」
光「飛鳥っ!」
飛鳥「……ごめん。二人とも。心配を掛け──」
パチィン!
飛鳥「────」
幸子「…………っ!」
飛鳥「さち、こ……」
光「……馬鹿野郎ッ! なんで……なんで、あんな無茶な真似を……っ!」
飛鳥「光……」
幸子「本当ですよ! 本当に、飛鳥さんが死んじゃうかと思って……ボク、本気で心配したんですからねっ!」ギュッ
飛鳥「…………ごめん。本当にごめんね、幸子、光……っ」
光「…………ふぅ」
光「……ま、生きててくれたならそれでいいさ。とにかく今は……」
幸子「この状況を何とかして切り抜けないと、ですね……(グスン」
アンドロモン「────!」
スティングモン「よし、壁際まで追い詰めたぞ!」
レッパモン「今度こそ喰らいなさい! 駆駆裂空斬!」
ガキンッ
レッパモン「……堅ぁっ! 嘘でしょ、今のも効いてないっての!?」
スティングモン「……いや、待て。アンドロモンの様子が……」
アンドロモン「──! ────!」
光「アンドロモンが……苦しんでる?」
幸子「さっきのスティングモンの攻撃は全く効いてなかったのに、どうして……?」
飛鳥「……やっぱり、か」
光「えっ……?」
飛鳥「さっきからアンドロモンは、本来なら直撃を貰っても大したダメージにはならない筈のダルクモンやクダモン、レッパモン……つまり、『ワクチン種』のデジモンの攻撃を、一々大げさに回避していた」
飛鳥「だから、彼女達の攻撃を当てる事が出来れば、もしかしたらダメージを通せるかもしれないと踏んでいたけれど……どうやら当たりだったみたいだね」
幸子「ワクチン種の攻撃……でも確か、アンドロモンさん自身もワクチン種のデジモンでしたよね? だったら何で……」
ダルクモン「……もしかしたら、アンドロモンはコンピュータウィルスに感染してるのかもしれない」
光「コンピュータウイルス?」
ダルクモン「……ワクチン種の攻撃は、コンピュータウイルスを駆除する力が強い。……だから、コンピュータウイルスに感染したデジモンは、ワクチン種……特に、私やレッパモンみたいな聖なる力を持ったデジモンの攻撃を極端に恐れるようになる」
ダルクモン「……それに。もしそうなら、アンドロモンが突然私達に襲いかかって来た理由も、説明出来る」
幸子「要するに、コンピュータウイルスに感染したせいで、頭がおかしくなってるって事ですね?」
ダルクモン「……ん。そういう事」
ダルクモン「……とにかく、アンドロモンの動きが鈍っている今がチャンス。今の隙に私とレッパモンとで何とか蹴りを付ける」カカカカッ
ダルクモン「……二人とも、さっきの話は聞こえてた?」
レッパモン「うんっ。要するに、スティングモンの攻撃は効かないけど、私とダルクモンの攻撃は通る……って事でしょ?」
スティングモン「……残念だけど、そういう事みたいだね。でもまぁ、攻撃が通らないなら通らないなりに、自分に出来る事をやるだけさ!」
グググ…
スティングモン「……! さっきよりパワーが落ちてる! これなら……!」
ダルクモン「……今度はさっきみたいに投げ飛ばされないでよ、スティングモン。……バテーム・デ・アムール」
ガガガガガッ
アンドロモン「──! ──!」
光「よしっ、効いてるぞ!」
飛鳥「そのまま一気に畳み掛けるんだ、レッパモン!」
レッパモン「うおおおおおおおおおお! 駆駆裂空斬!」
ガキィンッ…
アンドロモン「────」
シーン…
スティングモン「アンドロモンの動きが……」
ダルクモン「……止まった……」
飛鳥「やった……のか?」
アンドロモン「…………私は、一体何を……君達は……?」
光「……よしっ! 上手くいった!」
幸子「…………よ、良かった……こ、今回ばかりは本気で死ぬかと思いました……」ヘナヘナ…
アンドロモン「…………?」
─346プロ女子寮・光の部屋─
パソコンペカー
光「……うへぇ、疲れたぁ……」
幸子「いやぁ、今日の冒険はいつになくハードでしたねぇ……」
飛鳥「いやはや全く……まさか、二度目のデジタルワールド来訪で、いきなり完全体とのバトルを経験する事になるとは、思わなかったな……」
飛鳥「……しかも、結局工場が動く所は見る事が出来なかったし」
幸子「まー、仕方がありませんよ。なんせ、アンドロモンさんだけでなく工場の制御系もウイルスに感染してたって話ですし」
光「……門限どころか就寝時間ギリギリか。こりゃ、明日は寮監さんの雷が落っこちる事を覚悟した方がいいかもなぁ」
バクモン「あーうー……もう幸子の部屋に戻るのすら面倒くさいー……このままここで寝……る……」
幸子「ちょ、何を勝手な事を言ってるんですか、バクモン……って」
バクモン「……zzz」
幸子「もう寝てる……」
ドクネモン「……今回ばかりはバクモンの気持ちもわかるかもなぁ」
クダモン「……右に同じく。なんかもう、このまま泥のように眠りたい……」
光「まあ、今日は色々あったし仕方がないさ。どうせなら、今日はみんなもこのままアタシの部屋に泊まっていけばいいよ。三人と三匹が寝るには、ちょっと狭いかもだけどね」
幸子「……そうですね。それじゃ、お言葉に甘えるとしましょうか」
飛鳥「そうだね……」
クダモン「ねえねえ飛鳥。今日も寝るときにギュッてして欲しいなっ」
飛鳥「……ああ、理解ったよ。おいで、クダモン」
クダモン「わぁいっ」
飛鳥「ふふ……」ギューッ
クダモン「えへへ……飛鳥の腕の中……あったか……ふあぁ……」
クダモン「おやすみなさい……あす……か……」
飛鳥「……お休み、クダモン」ナデナデ
ドクネモン「……では、ぼくも今日の所はこれで寝るとしようかな」
光「おう、お休み、ドクネモン。今日はゆっくりと休んでくれよ?」
ドクネモン「……ああ。お休み、光」
ドクネモン「…………」
光「…………」
幸子「…………」
飛鳥「…………」
幸子「……ボク達も、そろそろ寝ましょうか」
飛鳥「……そうだね」
光「それじゃ、電気消すぞー」
光「……お休み、二人とも」
飛鳥「ああ、お休み。幸子、光」
幸子「おやすみなさい」
飛鳥「…………」
幸子「…………」
光「…………」
幸子「……ねえ、飛鳥さん」
飛鳥「……なんだい、幸子」
幸子「……この先、デジタルワールドを旅していれば……例えば、パートナーや旅の仲間が危険に陥る事が何度もあると思います。……だけど、もう二度と、あの時工場でやったような真似は、絶対にしないでくださいね」
光「……そうだぞ。確かに、パートナーの事を守りたいって思う気持ちはアタシにだって解るけれど……だからといって、それで自分が死んでしまったら、意味がないんだからな?」
飛鳥「…………」
飛鳥「……ああ。……二人とも、今日は本当に心配を掛けて済まなかった」
飛鳥「こんな未熟なボクだけれど……」
飛鳥「……出来ればこれからも愛想を尽かさずに付き合ってくれたら、嬉しいな」
光「……ああ、勿論さ。だってお前は……」
幸子「ボク達の、大切な仲間なんですからね」
飛鳥「…………」
飛鳥「ふふっ……仲間、か」
飛鳥「……悪くないね、こういうのも」
─???─
カタカタカタ…
「……失敗、か」
「完全体のデジモンでも問題なく暴走させられる事がわかったのは良かったけれど……まさかワクチン種……それも成熟期の攻撃を受けただけで完全に駆除されてしまうなんて、さすがに想定外だったな」
「……やっぱり、黒い歯車やイービルリングみたいに実体があった方が効果は安定しそうだね。弱点を目に見える場所に置いておくようなものだから、あれはあれで色々と心配だけど……」
「……しかし、まさかあの子達がちょうど実験をしている所に現れるなんて」
「幸いにも、飛鳥が軽い怪我をするだけで済んだみたいだけど……」
「……こうやって、間接的にとはいえ事務所の子に危害を加えてしまった以上……もう、後戻りは出来ない……か」
「……いや、更に言うなら……あの悪魔に魂を売った時点で……」
「……ごめんね、皆。だけど私は……あの二人の事を、守らなくちゃいけないんだ」
「その為なら──」
カタカタカタ…ターンッ!
「──誰であろうと、犠牲にしてみせる」
少女はこうして、戦う為の力と、かけがえのない仲間を手に入れた。
だが、デジタルワールドを……いや、この世界全てを脅かそうとする黒い影が、自分達のすぐ背後まで近づいていることを……彼女はまだ知らない。
おわり
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