やってしまった…………。掲示板の仕様を見誤った…………。生存報告する意味がよくわかった…………。
すでに2015年春イベントも終わっているのに何をやっている…………。
とはいっても、建設的な内容は一切ない筆者の自己満足のための物語ですので、めげずに細々とやらせてもらいます。
でも、本当に今回の投稿で最後だっただけに歯切れが悪すぎる…………。
前スレはこちら。注意書きなどはこちらに書いてあります。
【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼンPart1.5】
【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼンPart1.5】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424821231/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432045597
ここから先はまた物語風プレゼントはまるで関係ない超番外編となります!
注意:本来のプレゼンとはまったく無関係のこの二次創作独自の世界観と筆者の趣味で交じり合った独自展開となります。
→ よって、プレゼンの提案内容や本文にのみ関心がある方には蛇足でしかないので読み飛ばしてもらってかまわない。
→ あくまでも、詳細な設定が公式でぼかされている【艦隊これくしょん】の世界観に対する素人による一意見でしかない。
→ また、『解体すれば普通の女の子になる』という説には筆者は真っ向から反対しているので“艦娘∈人間”の考え方をしている方には目の毒な内容です
超番外編はその名の通り“超番外編”であり、【艦これ】の二次創作であるこの物語風プレゼンの趣旨に反する、
この世界観独自の拡がりを描いた三次創作に近いものとなっております(二次創作の中で自ら二次創作している扱いである)。
これまでの物語風プレゼンに期待している方々は >>24 同様にスクロールバーを使って飛ばしていってください。
超番外編は次のレスからスタートし 終わったら直後に白紙を挟むので白紙を目印にスクロールをして、どうぞ。
超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢 -この命 果てても私が御守りします!- 第7章
――――――【島原】
ワーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!
――――――【島原】に響き渡る一揆軍の勝鬨!
島原城「サイアク! この私が騙されてたの!?」
島原城「くっ、【兜】の言葉を信じるなんて…………」
島原城「キィーッ、一生の不覚ですわ!」
千狐「誤解が解けてよかった、よかったの~」
千狐「原城を助けようとするなんて、島原城もいいとこあるの!」
島原城「お黙りなさい!」
島原城「勘違いしないで欲しいわ。私はただ、原城のお嬢ちゃまに貸しを作ろうと思っただけよ!」
やくも「ははっ,そんな照れんでもいいのにな~。素直になった方が楽なのに」
やくも「ね、殿さん! 殿さんもそう思う――――――って、一揆軍の人たちに捕まってるわ!」
千狐「ふふっ♪ みんなから感謝されてるの」
千狐「殿、すごく、すっごく照れてるの!」
千狐「よーし、千狐たちも行くの!」
やくも「待って~、ズルいって! うちをおいていかんで~!」
やくも「くうぅう~、負けんけんな! 捕まえちゃるわ!」
やくも「――――――って、あわわ、ととと、ぎゃん!」
千狐「はわわ、やくも!? どうしたの、転んだの?」
千狐「大変なの! 殿、早くこっちに来るの~! やくも、転んだの! ぴくぴくしてるの~!」
やくも「」ピクピク
金木「み、みんな、ちょっとぉ……(やれやれ。あの二人、また騒いでるのか……)」アハハ・・・
一揆軍「【城主】様! 【城主】様! 【城主】様!」ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!
原城「やりましたね、殿! 私たちの完全勝利です!」ニコニコ
あどけない少年「ありがとうございました、【城主】様」ニッコリ
軍神の再来「やれやれ、一番手柄を獲られてしまったな。ま、今までがんばってきたのは【城主】様だし、無事に勝利したことを祝わないとな」ニコッ
金木「あぁよかった……。終わったんだな、これで……」ホッ
――――――やりましたよ、俺。石田少将、姫様、志摩様、フランシスコ。
金木「(長かったようで短かったような――――――今までの人生の中で最高の瞬間を迎えて、)」
金木「(――――――来るんだな。すぐに)」ハハ・・・
金木「(最高の瞬間の次には下り坂が必ず待っている。それもとびっきりのが)」
金木「(……あらかじめ わかっていたことなんだ、これは)」
金木「(でも、その日を迎えるために、最高のエンディングを迎えるために今日まで頑張ってきたんだ)」
金木「(もう二度と会えなくなるとしても、俺は【この時代】で生き抜いたことを誇りにこれからも【乱世】を駆け抜けていきます)」
金木「(だから、本当にありがとうございました、石田少将……、そして、姫様…………)」ポタポタ・・・
――――――【島原】の対岸:天草領
バララララララ・・・!
ヲ級”「ヲヲ!」
飛龍”「提督、【島原】から霧島の偵察機が――――――!」
石田”「…………ああ わかっている」
石田”「この結果――――――俺たちが勝つのは必然だ」
石田”「戦いというものは戦う前から勝敗が決まっていることが大半だ」
石田”「俺たちはこの日のためにやるべきことをやってきたのだ」
石田”「だが、これで俺たちは【ここ】にいる意味が――――――」
・ ・
あさひ姫「…………提督」ギュッ ――――――天草の本城にてベッドに臥せている。
石田”「終わったぞ、全て。全てが」
石田”「だが、俺は……、俺は…………、」
――――――お前だけを犠牲にしてしまった。
石田”「完璧な作戦にはならなかった……」
あさひ姫「でも、私はこうして生きていますよ? 幽霊なんかじゃなくてちゃんと触れて温もりを感じられる実体が今も――――――」
石田”「――――――だとしてもだ!」
石田”「計算の内に入ってない奇跡など喜べるか! ……これは俺のミスだッ!」ギリリ・・・
飛龍”「……提督」
石田”「俺の驕りと軽率さから俺は自滅し、死を覚悟した――――――」
石田”「だが、その死の運命の身代わりにお前がなって、一度は死なせてしまったんだぞ……」
石田”「しかも! 不完全な復活の代償に【城娘】としての能力のほとんどを失った上に原因不明の発作に苦しんでいるではないか!」
あさひ姫「大丈夫です、提督……」← 不完全な復活の代償のためか、血色が良くないのがよくわかる。
飛龍”「…………姫様」
石田”「こんなことが…許されて…たまる…ものか……」
ヲ級”「ヲヲヲ……」ナデナデ
石田”「くぅうう…………」ググググゥウウウウウ!
飛龍”「……提督。握り拳を開いてください。でないと『めっ』ですよ?」
石田”「くっ」
石田”「俺は……、俺は…………」ウジウジ
あさひ姫「……提督」
石田”「……何だ?」
あさひ姫「ようやく【乱】が収まったことですし、これから私の話し相手になってください」ニコッ
あさひ姫「いっぱいお話しましょう。最初に会った時から私は“石田様”とはお話したかったことがたくさんありましたから」
飛龍”「…………姫様」
ヲ級”「ヲヲ……」
石田”「………………」
飛龍”「提督」
石田”「……む」
飛龍”「私たちは状況の確認を行いますので、これで失礼します」
ヲ級”「ヲヲ」ビシッ
石田”「……わかった」
石田”「それで気が済むのなら……」
あさひ姫「ありがとうございます、“石田様”」
あさひ姫「ああ よかった……。この日が来るのが待ち遠しかったです」
石田”「…………そうか」
あさひ姫「本当は“石田様”とは毎日お話がしたかったです」
あさひ姫「“石田様”は私を元の人の輪の中に連れて行ってくださいました」
あさひ姫「でも、私にとって“石田様”はそれ以上に私の全てを解き放ってくださった方なんです」
石田”「――――――あらゆる意味でな、確かに」
あさひ姫「ああ……、思い返してみれば、今日までの日々がなんと全てに意味がある一筋の物語となっていたことでしょうか」
あさひ姫「私と“石田様”との出会いは全ての始まり――――――」
あさひ姫「そして、二人にとって新たな門出となる物語だったんですね」 ――――――左手の薬指には【結婚指輪】が嵌められていた。
石田”「………………」プイッ
あさひ姫「ふふ、やっぱり“石田様”は可愛いです」ニコッ
石田”「変なことを言うな。あれは演技なんだ。今日を迎えるために必要な作戦だったのだ…………」
あさひ姫「でも、お気持ちはこの通り――――――」キラリーン! ――――――【結婚指輪】は照り輝く。
あさひ姫「嘘でも、嬉しいものは嬉しいんです。それが嘘だとわかっていたのなら私の中では本当なんです」
石田”「何なのだ、それは? 意味がわからないぞ」
あさひ姫「――――――秘密です」ニッコリ
石田”「……からかっているのか?」
あさひ姫「違います、“石田様”」
あさひ姫「あ、ほら、“石田様”。気分は晴れましたよね。いつもの調子に戻ってよかったです」
石田”「ハッ」
石田”「…………頭が上がらないな」
あさひ姫「今まで本当にありがとうございました、“石田様”。本当に今まで――――――」
あさひ姫「唐津から始まり、【島原】で決着を迎えるこの物語の行末はかくして――――――、」\大一大万大吉/
――――――“大一大万大吉”の勝利となったのです。
――――――――――――
―――――――――
――――――
―――
――――――これより語られるのは【島原】の決戦に向けた終わりへの前日譚となる。
――――――天草諸島:富岡城
志摩守「――――――なるほど、霧島連峰でそんなことが」
金木「帰りは帰りで、石田少将と姫様がやってくれなかったら船に乗り込んできた【大将兜】に皆殺しにされる寸前でした……」アハハ・・・
石田”「………………」(霧島から帰る途上で【大将兜】に負傷させられた――――――まだ完治していない。血色は良くなってきた)
あさひ姫「それで志摩様、今の御時世で太閤殿下のことをよく知っているお方は志摩様の他にはもうおりません」
あさひ姫「どうか、お知恵をお貸しいただけないでしょうか?」スッ
志摩守「これが霧島神宮の神託――――――」 ――――――“神扇”の第一の封印である包の裏面のメッセージを見る。
――――――仲睦まじき稀人3人が遥拝す、関東にあれます太閤の島に向かうべし。
志摩守「ふぅむ」
志摩守「――――――『関東にあれます太閤の島』ですか」
金木「それが何処なのか わからない、志摩様?」
志摩守「少し思いついたところはありますが――――――いや、しかし、もしそうだとするなら?」
あさひ姫「志摩様、今この時にわからなくてもいいのです。まずはおおまかな予想を立てるところが肝要かと存じます」
志摩守「そうですな。少なくとも素直に読み取ったのなら――――――、」
志摩守「少なくとも、――――――関東で名のある島は唯一つしかありません」
金木「お! それはどこなんです?」
あさひ姫「あ、待ってください……。何か思い出してきたような――――――いえ、おっしゃってください、志摩様」
志摩守「では、その島の名は――――――、」
――――――“江ノ島”です。
石田”「やはりな」
金木「…………『江ノ島』」スッ ――――――電子辞書を取り出し、検索する。
志摩守「左様。江ノ島 以外に関東で名の挙がる島はほぼないと言っていいでしょう」
金木「え? そういうもんなの?」ピタッ
石田”「金木、【俺たちの時代】で『関東』と言えば、東京――――――つまり、江戸という認識があるだろうが、」
石田”「そもそも江戸は、小田原征伐の後に徳川家康が関東に入って天下人としての国造りをした結果、“将軍のお膝元”となったものだ」
石田”「それ以前の『関東』と言えば、小田原征伐を受けた相模の後北条氏が有名だが、」
石田”「その後北条氏の本拠地である小田原は今の横浜の遥か西にある場所だ。そこが『関東』最大の戦国大名の中心地だったのだぞ」
金木「あ、そっか! 日本最大の都市――――――それどころか、当時 世界最大の人口を誇った江戸ができたのはつい最近なのか!」
志摩守「はは、そうでありましたな。――――――時が経つのは本当に疾い」
志摩守「かつての主君であった太閤殿下がお亡くなりになった後、豊臣を見限った大名たちはこぞって江戸に集まり、」
志摩守「それによって江戸は今や大坂や京都をも超える都へと発展しましたな……」
金木「なるほど。『太閤の島』ってことだから、江戸ができる以前に豊臣秀吉と縁がありそうな場所ってことで自然と限られてくるわけだ」
石田”「それと、江ノ島は小田原と鎌倉のだいたい中間にある場所だから覚えておくといい。鎌倉の近くには横須賀もあるな」
金木「ふんふんなるほどなるほどねぇ――――――って、あれ?」
金木「じゃあ、それで決まりじゃん!」
金木「江ノ島に行きましょう! ――――――もちろん、【島原の乱】をどうにかしてからね」
志摩守「………………」
石田”「………………」
金木「…………あれ?」
あさひ姫「はたして、本当に答えは『それ』で確かなのか――――――」
金木「?」
志摩守「いやですな、【城主】様?」
志摩守「確かに江ノ島 以外に候補が思いつかない――――――時の関東の支配者たちからも崇敬されてきた神聖なる場所であり、」
志摩守「江ノ島は弁天様がおわす場所ですからな」
金木「ほへぇ、…………『弁天様』ね」
金木「あ、どれどれ――――――『江ノ島神社』」ピピッ
金木「――――――宗像三女神を祀る」
金木「島の西方『奥津宮』に多紀理比賣命、中央『中津宮』に市寸島比賣命、北方『辺津宮』に田寸津比賣命をそれぞれ祀り、『江島大神』と総称する」
金木「江戸時代までは弁財天を祀っており、江島弁天・江島明神と呼ばれた」
金木「現在の祭神は明治の神仏分離の際に改められたものである。辺津宮境内の奉安殿には八臂弁財天と妙音弁財天が安置されている」
金木「――――――って、また明治政府の神仏分離令ですか。霧島神宮でもあったな」
志摩守「ほう? 弁天様の他にあれは宗像大神でもあったのですか」
金木「え? ――――――『宗像大神』って何?」
石田”「宗像大神というのは、三貴神の一人である素盞嗚命の剣から生まれた3人の女神のことだ。その総本山が九州にあるのだ」
あさひ姫「そして、宗像大神の総本山は宗像大社――――――すなわち筑紫国(=福岡県)で祀られているので、この九州に住む者なら知らぬ者はおりません」
石田”「つまり、神仏習合の時代において“宗像大神”=“弁天”という構図が成り立っていたようだな」
金木「へえ、弁天様が実は3姉妹ってことで、なんか頭がこんがらがっちゃうけど――――――、」
金木「とりあえず、あのスサノオの3姉妹たちを関東の地で祀っているわけなんだ、江ノ島ってところは」
あさひ姫「はい。江ノ島の隣に伊豆があり、相模や鎌倉も近く、源 頼朝公をはじめとして豊臣秀吉公や徳川家康公からも崇敬されてきた由緒正しき地なのです」
金木「えぇ? ますますそれで合ってるような気がするんだけどなぁ……」
金木「いったい何が気にかかるんです?」
――――――仲睦まじき稀人3人が遥拝す、関東にあれます太閤の島に向かうべし。
志摩守「本当に江ノ島で合っているのなら、わざわざ『太閤の島』という表現を使わなくてもいいような気がしてならんのだ」
志摩守「霧島神宮で受けたこの神託が本物ならば、こんな常識の範疇にあることを中途半端な暗号にして伝えるものだろうか?」
志摩守「最初から『江ノ島に向かえ』と託けしたほうがそれらしい気がするが――――――要するに、釈然としないものを感じたのだよ」
金木「????」
石田”「少なくとも、向かうべき場所が『関東』にあるのは間違いないらしい」
石田”「ただ、気になることがある」
金木「……何ですか?」
――――――このメッセージは誰に宛てたものなんだ?
金木「え、普通に石田少将に宛てたものでしょう? “神扇”を包んでいた布の裏面に書かれていたってことは」
石田”「なら、――――――これをもらった【この時代】の人間ではない俺はどう受け取ったらいい?」
金木「あ……」
石田”「俺は皇国軍人として天孫降臨から連なる皇国の血脈と歴史を否定するつもりはないが――――――、」
石田”「それでも俺は国家神道であろうと何であろうとそういったオカルト要素は極力排して現実的な考察を行うことにしている」
石田”「しかしながら、霧島神宮での出来事には怖気が走ったよ」
石田”「【艦娘】霧島――――――という名の“天女”を回復させる“妙薬”をもたらした者に“神扇”を渡せという神宮の言い伝えにはな」
あさひ姫「まるで、二人の再会が必然であったかのような――――――」
石田”「ただの偶然だと軍人としては一蹴しなければならないのだが、こうして【艦娘】霧島を無事に迎えに行くことができたのは、」
石田”「そういった不可知なるオカルトや偶然に大部分を頼る有り様だったからな…………」
石田”「正直に言えば、すぐにでも俺の常識の檻の中に逃げ帰りたい気分だ……」
金木「………………あぁ」
あさひ姫「………………」
志摩守「………………」
石田”「………………」
金木「えと、――――――つまりはこういうこと?」
――――――トンチの利いた答えを期待してるってこと?
あさひ姫「はい。有り体に言えば」
志摩守「こんな単純な答えだとは思えぬのだ。――――――長年の勘がそう告げておる」
石田”「皇国の大神というのが本当に存在するのなら、俺を納得させるだけの叡智を見せてくれるものだと確信している」
金木「…………でも、江ノ島が最有力候補なのには変わりないでしょう?」
金木「行きましょう、江ノ島! 他に思い当たる場所がないのなら」
金木「あ、そうだよ! 江ノ島神社が筑紫国の宗像大社ってところの分社だか末社に相当するものなら、そこに行けば何かあるかもよ!」
金木「そこから試しましょうよ!」
金木「それに、ヒントはまだ残されてるじゃないですか」
――――――仲睦まじき稀人3人が遥拝す、関東にあれます太閤の島に向かうべし。
金木「この『仲睦まじき稀人3人が遥拝す』って――――――」
石田”「――――――わかるのか?」
金木「……わかりません」
志摩守「そう、これが一番の謎!」
石田”「第1ヒント=『太閤の島(=それは豊臣秀吉と縁のある島です)』、第2ヒント=『関東(=それは関東にあります)』とするならば、」
石田”「これは第3ヒントに相当するものなのだが、――――――これが一番わからない!」
金木「あ、そうだ! 簡単じゃん!」
金木「江ノ島弁天は宗像大神っていうスサノオの3姉妹のことを指すから――――――」
志摩守「なぜ神が『遥拝』するのだ? 遥拝される方だろう?」
金木「……あぁ」
石田”「それに、『遥拝』というのは『遠くの場所から拝む』という意味だからな」
石田”「そうなると、『島の方を向いて『遥拝』している何かが近くに3つある』ということになるのだろう」
金木「じゃあ、江ノ島に向かって『仲睦まじき稀人3人』が揃っていることを証明できればいいんですね?」
あさひ姫「理屈としてはそうはなりますが、――――――その『仲睦まじき稀人3人』が難問です」
金木「『仲睦まじき』っていうのは、よくある あれ――――――双子岩っていうのが…どっかにあるじゃん? そういう喩えじゃない?」
石田”「確かにそういったものの比喩である可能性は高いと思うが――――――」
志摩守「江ノ島 近辺に『仲睦まじき稀人3人』を思い起こす場所など聞いたことがないな……」
金木「…………じゃあ! 『稀人』っていうのはどうなんです?」ピピッ
金木「電子辞書によれば、『稀人』っていうのは『外部からの来訪者』って意味――――――うぅん?」
金木「――――――『外部からの来訪者』ぁ?」
金木「もしかして、――――――太閤殿下や将軍様とかの江ノ島を崇敬してきた支配者たちのこと?」
金木「ほらさっき『源 頼朝も崇敬している』って――――――源 頼朝も含めての『3人』なんだよ」
志摩守「それなら『3人』に定める必要はないに等しい」
石田”「同感。もし俺がこの謎かけの出題者ならば『太閤の島』などという表現は絶対に使わないな」
あさひ姫「……冗長ですからね、言い回しが」
金木「えぇ? じゃあ どういうことなの?」
石田”「だから、答えに詰まっているのだ」
石田”「おそらくは3つの条件が全て何らかの形で一致する唯一無二の正解というものが存在するに違いない」
石田”「だが、これ以上は時間の無駄だろうな」
金木「………………すみません」
石田”「いや、責めているわけではない。むしろ、よくやってくれた」
石田”「あれこれ考えて提案してくれることで、互いにこの問題への理解が深まったはずだ」
石田”「1つ1つの意見を検証することで、正解へと一歩一歩 確実に近づいていっているのだからな」
石田”「『正解とは違う』ことが検証されるのも正解に繋がる特徴の1つであるから、よく覚えておくといい」
志摩守「うむ。若いながらよく臆せずにあれこれ意見や根拠を引き出せたものだ。その発想力は決して無駄ではないから大事にするといい」
あさひ姫「それに、今この場で正解を出さなければならないわけではありませんから」
志摩守「その通り。焦る必要はない」
志摩守「そして、儂はこの謎かけを領内や近隣諸国に触れ回って懸賞金を出して広く意見を集めてみようと思っとる」
金木「え、ちょっと待ってください、それ。――――――『太閤の島』ってところでNGなんじゃ?」
志摩守「案ずるな。これは霧島神宮からの神託――――――その辺については考えてある」
志摩守「それに、これはな。この老いぼれが【城主】様にしてやれる心ばかりの最期のお礼のつもりだ。心配無用ぞ」
志摩守「おかげで、まだ改革に乗り出して1年にもならぬが、天草の再検地も進んで少しずつだが領民から慕われ始めたからのう」
金木「そこまで言うなら……気をつけてくださいよ、ご老体」
金木「なら 俺は、関東出身の【城娘】を出来る限り【築城】して情報収集しますよ」
金木「それでいいですよね?」
石田”「ああ。助かる――――――だが 別に、俺としてはそこに行かなくてはならないという理由はない」
石田”「むしろ、【乱】を止めるためにあれこれしなくてはならないのに、」
石田”「霧島帰りに【大将兜】から受けた傷が癒えず 本調子ではないからこそ、」 ← 右腕と右肩に鋭い切創を負っている
石田”「有り余った時間でこんな宝探しに付き合わされているにすぎん」
石田”「協力には感謝するが、焦る必要はないから、資源を浪費するような愚行だけはしないでくれ」
金木「わかってますって、その辺は。――――――素寒貧でしたから」
志摩守「そうでありますか。【城主】様も若い頃は大変苦労なさっておられましたか」
金木「いえいえ、命のやりとりは確かにやって来ましたけれど、手に武器を持つものではなく、手に貨幣を掴みとる戦いの日々でしたから」
アーダノコーダノ、ワイワイ、ガヤガヤ・・・
あさひ姫「…………みなさん」ニッコリ
――――――本拠地:萬紫苑城
金木「――――――神宣に基づき、欽明天皇の勅命により、江の島の南の洞窟に宮を建てたのが始まりと伝えられる」
金木「あれ? また欽明天皇だ。――――――霧島神宮を造らせたのもこの人じゃなかったっけ、確か」
金木「いやぁ、知れば知るほど江ノ島は神聖な場所なんだな。間違いなくここであってると思うんだけどなぁ」
金木「そして、欽明天皇の都を敷島――――――磯城島金刺宮って言ったっけかな」
金木「そうそう――――――、」
敷島の やまと心を 人問はば 朝日ににほふ 山ざくら花 本居宣長
金木「この歌に由来してるんだったっけな、――――――日露戦争で活躍した敷島型戦艦の艦名」
金木「敷島型戦艦は敷島、朝日、初瀬、三笠――――――本当は『大和』を入れたかったけど、」
金木「すでに使っていたから代わりに『川:初瀬』『山:三笠』からとられた」
金木「もし、歌の順番通りに『大和』が敷島型戦艦2番艦の艦名に採用されていたら『朝日』『山ざくら花』と続いたのかなぁ?」
金木「何にせよ、霧島神宮からの神託――――――謎かけには俺なりにアプローチし続けないとな」
――――――石田少将を【元いた時代】に返すために。
金木「とにかく、こういうのは『何が正しい情報なのか』『1つ1つがどういう意味なのか』を検証していかないとな」
金木「まあ、こういった推理なら100円ショップで売ってる懸賞付き数独で慣れてることだし、」
金木「1つ1つの可能性を丁寧に見ていくのが正解への道筋――――――ってね!」
――――――仲睦まじき稀人3人が遥拝す、関東にあれます太閤の島に向かうべし。
第1ヒント:『太閤の島』=『それは豊臣秀吉と関係がある島です』
第2ヒント:『関東』=『それは関東にあります』
第3ヒント:『仲睦まじき稀人3人』=『その近くにはそんなようなものがあります』
外部情報1:霧島神宮で受け取った神託である
外部情報2:【この時代】の人間ではない『石田少将に』渡された
外部情報3:“神扇”の第一の封印である包の裏側に記されていた
金木「とにかく、特徴的なものを挙げてみたけれど、これで何かが掴めるか?」
金木「けれども、『太閤』が本当に“豊臣秀吉その人”という意味で合っているのかどうか――――――」
金木「『関東』が江戸以前の伊豆が中心だった頃を指しているのか、それとも江戸以降の関東を指しているのか――――――」
金木「最後のやつが最も難解で、『仲睦まじき』『稀人』『3人』――――――それぞれの意味を考えないとな」
金木「それに、神託を受け取った時の外部情報も忘れちゃならないか? きっととんでもないトンチが込められているに違いないから」
金木「とりあえず、一番難解な第3ヒントの中心『稀人』についてもう一度 追究してみるか」
金木「『稀人』――――――元々は『外部からやってくる神』を意味していたらしいが、」
金木「時代が降っていくと『乞食』や『芸能者』――――――大雑把に言って『旅人』や『浮浪者』を意味するようにもなったと」
金木「それらをひっくるめて『外部からの来訪者』という定義に繋がってくるのか」
金木「…………ますます わからん」
金木「『稀人』の定義が広すぎて、――――――『神』のことなのか、――――――『浮浪者』や『旅人』なのか、…………さっぱりだよ」
金木「けれど、もし江ノ島だと仮定するなら――――――やっぱり無理。こればかりは実際に行ってみないと」
金木「宗像大社への参詣は近々あることだし、そこで同じ弁天様にヒントをもらってこよう」
金木「なら、他にやれること――――――何か関係がありそうな伝承や言い伝えがある候補地を模索するしかないのか?」
金木「くそっ、思ったよりも関東――――――いや、神奈川県・静岡県出身の【城娘】が一人もいなくて調査は難航だ!」
金木「ちくしょう! 小田原城とか鎌倉府とか何か、江ノ島と縁のある【城娘】は来ないか!? ――――――江戸城や大坂城でもいい!」
金木「姫様は小田原征伐の後の生まれだから『知識として江ノ島のことを知ってはいても実態までは知らない』ってはっきり言っているしなぁ……」
金木「…………今の俺にできることはここまでか」ハア
ワーワー! ガヤガヤ! ドンドン!
金木「お、何だ? 外から――――――?(――――――祭りか? それにしてはあまりにも長閑な感じだ。いったい何事?)」バッ
金木「…………あ」
金木「――――――初雪、か」
金木青年が天守部屋の戸を開けて外を様子を見ると、冬の訪れを示す天からの贈り物が眼前に優しく舞い降りていた。
金木「そうか。冬なんだな」
金木「道理で外からの空気が冷たいと思えば――――――なんか当たり前のようなこと言ってるけど」
金木「――――――初めてだな、【乱世】で迎える冬ってのは」
――――――
千狐「殿ー! 殿ー!」
やくも「殿さん! 雪! ほら、雪ー!」
――――――
金木「ああ」ニコッ
二条城「まあ ずいぶんと冷え込んできましたわね……」フゥ
金木「あ、【探索】おつかれ」
二条城「はい。あなたのところに、戻ってきたわよ~」
二条城「ねえ、あなた?」
金木「うん?」
二条城「私のこと、優しく温めてくださらない?」ポロリ
金木「――――――!」ドクン!
二条城「いつまでもつれないから、今日は私の方から襲っちゃうわよー。今夜は寝かせないわよ~、あなた~」スリスリ
金木「ひやぁああああああああああああああああ!」
二条城「ほら、捕まえた~」ニコニコ
金木「は、放せー!」カアアアアアアアアアア!
――――――
千狐「あ、こら! 二条城!」
やくも「抜け駆けなんてずるい!」
――――――
二条城「ふふ、少し冷えますけど、ここからあなたを私のものにする瞬間を見せつけるのも乙かもね?」ニヤリ
金木「ひぃ……(やっぱ女って怖ぇええ……。今、とてつもなく悪い顔を覗かせたぞ!?)」ゾクッ
二条城「ほら、あなたも」サワサワ! モニョーン!
金木「!?!!?!」
金木「どこ触って――――――あ、あぁ、ち、力が抜けるぅ!?(やっばい! この前門の愛撫と後門の弾力の破壊力ぅうう!)」ガクガク・・・
二条城「ふふ、ほらほら~」サワサワ! モニョーン!
金木「あぁ! や、やめてぇー(ここで身体を許すようになったら、きっと俺はダメになっちまうぅうううう! 溺れるぅうううううう!)」ガクガク・・・
二条城「…………ふふ」
二条城「――――――冗談ですよ」パッ
金木「あ、あぁ…………」ゼエゼエ・・・
やくも「殿さん、大丈夫!?」バッ
千狐「こら、二条城!」
二条城「ふふふ、あなた、私はこれで」ニコニコ
スタスタ・・・・・・
金木「な、何だったんだよ、さっきのは……?(やっぱわかんねぇ。――――――女心ってやつは)」
金木「あ……」ドキッ
千狐「殿、どうしたの? 立てる?」
金木「ん? ああ、俺は大丈夫だ。今は一人にさせておいてくれ……」
やくも「殿さん?」
金木「いや、俺が【城主】始めて初めての雪だから――――――、少し寒くても見ていたいんだ」
千狐「…………わかったの」
やくも「風邪ひかんといてね、殿さん。それじゃ」
スタスタ・・・
金木「……………………ハア」
金木「…………マジで危なかった」ホッ
金木「童貞の俺にはあまりにも魅惑的で刺激が強すぎたよ、二条城(――――――少し濡れてるな、股倉の辺り)」ギンギン
金木「でも、いったいなぜ――――――?(意識するな、意識するな、意識するな、意識するな――――――他のことを、他のことを、他のことを考えるんだ、俺!)」
金木「ああ……、【城娘】や【神娘】たちが俺なんかのことを慕ってくれてるのはありがたい限りなんだけど…………、」
金木「俺のような素寒貧には不釣り合いだよ……」
金木「それとも、【城娘】たちの貞操観念が近世レベルだからこそ、俺の弱さなんていうのは許容されるもんなのかな?」
金木「何か【乱世】に来てから久々の雪に妙に感動してるのか、いろいろ思い出してきたな……」
――――――“彼女”、どうしてるんだろう?
金木「あの時と比べて、俺は“きみ”のカレシになれるだけの魅力を持てたのだろうか?」
金木「それとも、本質はそのまま――――――何も成長していないって評価を下すのかな?」
金木「やっぱりカネが無かったから――――――それ以上に、貧乏臭さが染み付いていたからフラれたのかな、俺って」ハア
金木「いや、さっきみたいに、恋人になったらすることをした時のみっともなさで切られるかもしれないな、ますます……」アハハハ・・・
金木「……………………」
金木「あ、そういえば――――――、」
金木「――――――九州って雪が降るんだ」
金木「雪が降らないのは沖縄のような常夏の島ぐらいってことだったか。これでまた1つ賢くなれたな……」ハハハ・・・
――――――あれから、ずいぶんと平和となったものである。
霧島連峰への大遠征から時が経ち、そこで迎えることができた【艦娘】霧島はまだ本調子ではないようだが萬紫苑城の住人として馴染んでいき、
今では同じインテリメガネの脇本城、海賊王を目指す能島城、石田少将に憧れる元・大宝寺城こと鶴ヶ岡城たちと仲良くやっているようだ。
封印されし禁断の【城娘】名護屋城を探し求めて唐津を襲い続けた【兜】軍団も霧島で一網打尽にし、
霧島には現れなかった残党も石田少将の捨て身の陽動と名護屋城の日本最強の武力による脅威の連携によって討ち果たされ、
【乱世】に迷い込んで以来 驚くぐらいに戦とは無縁の穏やかな日々を送れている――――――というより、本来そういった時代なのだ。
――――――【寛永時代】というのは。
そんな【寛永時代】には唯一にして江戸時代 最大の反乱である【島原の乱】が起こっており、
こちらとしてもすでに行動を起こして いくつもの成果を収めてきてはいるが、まだまだ先がどうなるかがわからないので【それ】に備える日々が続く。
それでも、今までが今までだけに驚くぐらい時間を持て余すことになり、余暇を楽しむことを段々と覚え始めるのだった。
あるいは、石田少将や志摩様に教えを請い、偉大なる師の生き様を継承していくために自分を磨くことにも力を入れていくようになった。
そこには以前のようなその時代での役割を終えることによって失われる現在への虚しさはどこにもない。晴れやかにのびのびと一日一日を楽しめている。
むしろ、そのことを受け容れたことによって一日一日を大切にするようになり、黄金のように眩い思い出の数々が生まれ始めたのである。
そして、毎日欠かさずに日記をつけていたおかげで、自分の心境の変化――――――成長が一目瞭然となり、見返す度に少しずつ自信がついていったのである。
しかしながら、いつまでも現在の時間が続かないことを受け容れたとは言え、そこには将来のことがわかってしまった哀しみというものがついてまわっていた。
結局、今回の問題の根本である【島原の乱】を平和的に解決する手段を何一つ【城主】である青年には持ち合わせていないのだ。
この頃、“五条の名君”から“島原の暴君”へと変貌した築城名人:松倉豊後守が行ってきた苛政を後押ししたのは他でもない徳川幕府であり、
たとえ悪政の証拠があったとしても、松倉豊後守の悪政も幕府への忠誠心を示すために仕方なくやっているものだと弁明されたら追及しきれない。
そして、キリシタンの拠点であるフィリピンのルソン島の攻略の最先鋒として幕命を受けてその準備にも取り掛かっているため、
下手に松倉豊後守を失脚あるいは更迭するように干渉すれば幕府への反逆とも受け取られてしまい、
いかに“天の御遣い”と崇められている【城主】でも“生まれながらの将軍様”に楯突くのは明らかに分が悪く、
これから200年以上続く泰平の世においては最大の歴史改変――――――つまりは秩序の崩壊にも繋がりかねないので それだけは絶対に避けねばならなかった。
――――――起こるべくして起きた。
それが【島原の乱】の結論であり、研究によれば松倉豊後守の悪政が深刻化したのも時の将軍によるキリシタン弾圧 強化のお触れによるものであり、
島原に入った当初の松倉豊後守も他の諸大名と同じく、それ以前から弾圧の命は降りていてもキリシタンには手心を加えた対応をしていたようである。
つまり、【島原の乱】の勃発には、キリシタンの弾圧を強めるように脅しをかけてきた幕府にも責任の一端があると言えた。
それから たがが外れてしまったのか、松倉豊後守の身の毛もよだつような恐るべき弾圧が始まるのであった。
そして、それに巻き込まれる形で、分不相応の島原城の築城から始まる島原の財政難の負担を押し付けられた百姓も更なる地獄を見ることになったのである。
こうして、悪逆非道の限りを尽くして自身が提案したルソン島への攻略を目前にして急死を遂げた後に【島原の乱】が勃発し、
その結果として、後を継いだ息子は【乱】の責任者として大罪人扱いで斬首刑に処せられ、当然 改易されてお家断絶となったのである。
元々 島原がキリシタン大名である有馬晴信の旧領であり、そこへの転封の意図を察するに 幕府への忠勤を認められる必要があったとはいえ、
誰が見ても自業自得でしかなく、お家断絶も当然の話ではあるが――――――、
――――――今一度、松倉豊後守という人物について考えてもらいたい。
一般的な世間の評価や認知としては――――――その一例として、KOEIの歴史ゲームでの数値評価においては、
【島原の乱】の元凶かつ悪政者の代表格として総合能力が下から数えた方が早いぐらいの無能者として評価されているが、実際はどうだったのだろうか?
なにせ、島原における悪政の根源である島原城が現在も観光資源として今に伝えられている点を見ても、松倉豊後守が築城名人であるのは確かであり、
武人としても生まれも悪くなく、実際に関ヶ原の役や大坂の陣で活躍が認められて加増しているのだから、一線級とは言えなくても腕が立つのは確かである。
そして、島原 以前の関ヶ原の役で得た所領:大和国 五条では“豊後様”として祭られるほど、五条を交通の要衝として栄えさせた実績すらあるのだ。
また、明らかに無謀とも言えるフィリピン:ルソン島の攻略を提言して、それを幕府から認められるほどに信頼されてもいるようなのだ。
そもそも、本当に信頼できないやつを島原という旧キリシタン大名:有馬晴信の領地に転封させられるわけがないようにも思える。
前任者であるキリシタン大名:有馬晴信と幕府の確執――――――その結末:岡本大八事件や有馬晴信の藩政を見ても生半可な人間を送り出せないはずである。
そこにどれだけの含みがあったとしても、少なくともキリシタンの排除を決めていた幕府にとって一定の働きを期待しての加増だったのは疑いようがない。
こうして見ていくと、いったい何がどうなって――――――本当に“五条の名君”と“島原の暴君”が同じ人物なのかが物凄く疑わしいレベルである。
一方で、【乱】に対する幕府の対応や【乱】の指導者になった“天草四郎”の出自や逸話についても謎が多いのが【島原の乱】であり、
おそらくは南光坊天海の正体や豊臣秀頼 生存説以上の江戸時代前期における最大の歴史的ミステリーではないだろうか?
――――――元凶についても、反乱者についても、為政者についても謎だらけなミステリーはこれぐらいであろう。
ただ単なる一藩主の悪政に対する百姓一揆にこれほどの意味付けが求められるのも――――――、
それだけ当時の日本の情勢が緊迫しており、関ヶ原の役 勃発前以上の緊張感が張り巡らされていたことを暗示するものなのであろうか?
霧島”「――――――というわけで、これで話はお終いです」
能島城「へえ! 世界を相手に――――――あたしも負けてられないぜっ!」← 瀬戸内海で勢力を誇っていた村上水軍として世界の海について興味津々
脇本城「大変勉強になりました!」← 男鹿半島で貿易も行っていた安東水軍として【艦娘】霧島に興味津々
鶴ヶ岡城「ええ~? もっと聴かせて~」← 石田司令について興味があるので その部下である【艦娘】霧島と積極的に関わりあう
石田”「見た目は変わっても本質は変わってないようだな、大宝寺城?」
鶴ヶ岡城「あ……、すないスケ様」テヘッ
石田”「よくそれで、悟りを深められたものだな」フッ
霧島”「…………司令」パァ
石田”「どうですか? 【ここ】での生活には慣れましたか?」
霧島”「はい。司令のおかげで。さすが司令、データ以上の方ですね」
石田”「それは当然ですね。【艦娘】であるあなたには生来 陸での生活知識が備わっていない――――――真新しいことだらけで大いに戸惑ったことでしょう」
霧島”「はい。最初はどうなることかと思いましたけれど、やはり司令が居てくれたからこそ 私はこうしていられます」
霧島”「その……、本当にありがとうございました、司令」ポッ
石田”「礼の必要はありません」
石田”「あなたは我が鎮守府の要――――――それをこんなところで失うわけにはいきません」
石田”「それに、あなたは国家機密である装備を守り通してくれました。勲章ものです」
霧島”「はい!」
能島城「なあなあ、スケさん?」
石田”「何ですか?」
能島城「今度、あたしと一緒に海に出てくれない? さっきの霧島の話で、今すぐにでも世界の大海原を旅してみたくなってきたからさ?」
能島城「あんたも海の男なんだろう? あたしの船頭になってくれよ」
鶴ヶ岡城「あ、ズルい! すないスケ様には出羽三山に来てもらうんです! ――――――修行に誘わなければ!」
脇本城「それなら、我が安東水軍の本拠は男鹿半島ですから出羽三山にも近いですよ」チラチラッ
能島城「うるさい! あたしが最初に話しかけたんだから割り込むなー!」ギャーギャー
石田”「私は海賊とは手を組むつもりはありません」
霧島”「あ……」アハハ・・・
能島城「なんで!? 霧島の遠征の時に一仕事しただろう!? あたしがいなかったら今頃――――――」アセアセ
石田”「私は【城主】様に協力していたのであって、あなたは【城主】様の命令に従っていたまでのこと」
石田”「どうしてもしたいのなら、海賊を廃業するか、【城主】様にお願いしてください。そうすれば、しかたなくつきあってあげましょう」
能島城「かぁー! そんなの無理に決まってるじゃん! 殿はスケさんの意見ばかり聴いてるのに――――――頭の固い人だぜ、まったく」
霧島”「あ」
霧島”「…………司令」フフッ
霧島”「(やっぱり、――――――雰囲気 変わった?)」
能島城「わかったわかった。ここは 風や潮の流れと同じく、スケさんの気が変わるのを待つとしよう」
石田”「あり得ませんがね、そんなのは」
能島城「んじゃさ? 今度は――――――」
石田”「まだあるのですか?」
能島城「それがあるんだな、これが」
――――――もっと気楽に接してくれてもいいんだぜ?
石田”「何……?」
能島城「ほら、今は“私”として喋ってるけど、あたしは“俺”として振舞っているスケさんの方がすっげー好みだぜ」
霧島”「え」 ← “私”としての石田司令しか知らない
石田”「…………!」
能島城「というか、ここでは“俺”としてずっと振舞ってきただろう?」
能島城「それが霧島から帰ってきてからはそういった態度をするようになって、物凄い違和感があってさ」
石田”「……知りませんね、そんなことは」
鶴ヶ岡城「でも、やっぱり口調を変えても すないスケ様は“すないスケ様”のままだよ?」
石田”「大宝寺城――――――いや、鶴ヶ岡城か」
能島城「まあね」
霧島”「…………司令」
霧島”「(なんだか寂しいような気持ちでいっぱい…………)」
二条城「あら、みなさん。ごきげんよう」
鶴ヶ岡城「あ、おかえりなさい、二条城さん」
石田”「む、二条城か――――――ちょうどいい」
二条城「あら、石田少将? この私に何か御用?」
石田”「全員、武装して表に集合してください」
能島城「お! 何だ何だ? 何かするのか?」ワクワク
石田”「霧島は大丈夫ですか? 久々に『艤装』を背負うことになりますが」
霧島”「大丈夫です、司令。司令からもらった“妙薬”のおかげで回復しましたから」
石田”「よし」
――――――萬紫苑城:正面
石田”「む、外は雪が降っていたのか――――――そんな季節に移り変わっていたか」
二条城「そうなのよ~、石田少将。こんな冷え込む中、私たちを呼び止めて何をするつもりなのかしら?」 ――――――大砲:虎豹!
石田”「気になることがあってな」
鶴ヶ岡城「すないスケ様、私のこの扇を見てください」 ――――――交結搆鉄扇!
石田”「ほう。話には聞いていたが、それが旅の高僧から受け取ったという――――――」
能島城「スケさん、スケさん! いつ見ても この武吉丸は惚れ惚れするだろう?」 ――――――小型軍船:武吉丸!
石田”「…………【駆逐艦】どころか、【水上オートバイ】以下の戦力が何を言う」ボソッ
脇本城「斗星の北天として栄えた安東水軍の偉容はどうでしょうか?」 ――――――なまはげの面!
石田”「なまはげと安東水軍は関係ないと思うのだが…………」
霧島”「お、おまたせしました、司令!」 ――――――46cm三連装砲(本来は35.6cm連装砲)!
石田”「……これは驚きました。目に見えて足が速くなりましたね」
霧島”「はい。これも慣れない山道を司令の【水上オートバイ】を担いで歩き回ったおかげですね」
石田”「…………申し訳ない。本来の使命とは別のことでこんなにもあなたを苦しめてしまって」
霧島”「いえ! 司令が謝ることはありません! ――――――こんなこと、誰も予想なんてできませんから!」
石田”「元はと言えば、私が無断出撃したばかりに――――――」
二条城「これで全員集合かしら~」
霧島”「あ、それじゃ司令。お願いします」
石田”「…………」
能島城「へえ、こうして見ると、【艦娘】霧島と【城娘】の私たちっていろいろ似ているところがあるんだな~」
石田”「【艦娘】は今から300年後の【軍艦】がモデルとなったものなので、基本性能としては遥かに【城娘】よりも格上の存在なのです」
能島城「本当にそうなのか? 大砲の大きさとしては二条城の大砲よりも小さく見えるんだけど」
脇本城「しかし、大砲が4門ついていますよ、これは」
石田”「なら、試してみますか?」
石田”「今の霧島が背負っている主砲は【46cm三連装砲】――――――最大射程:40km超」
石田”「対して、“国崩し砲”と喚ばれた【フランキ砲】は口径:9cm――――――最大射程:500m未満」
石田”「差は歴然ですがね」
二条城「少し触らせてもらっていいかしら~?」
霧島”「あ、どうぞ」
二条城「へえ、ふ~ん」ジー
霧島”「す、少し恥ずかしいですね……」
二条城「………………」サワサワ
霧島”「く、くすぐったい……」ドキドキ
二条城「――――――!」ドクンッ!
石田”「どうですか?」
二条城「……これは確かに【城娘】が束になってかかっても勝てない凄まじさがありますわね」アセタラー
能島城「嘘!?」
二条城「嘘だと思うなら、あなたも触れてご覧なさい」
能島城「よし、それじゃ!」バッ
霧島”「きゃっ」
能島城「あ、これは――――――!」ドクンッ!
能島城「…………うん。もういいや」ササッ
鶴ヶ岡城「もう終わりですか?」
能島城「ああ。海賊王のあたしはすぐにわかった」アセタラー
能島城「こいつは化け物だわー。あの鉄甲船の数億倍の強さだわー」
脇本城「そ、そんなに…………!?」
霧島”「え、え……?」
石田”「これでだいたい【艦娘】霧島の強さが理解できたでしょう」
能島城「ああ。これは絶対に敵に渡してはならなかったな。迎えにいけてホント良かったよ」
石田”「ご理解していただけて幸いです」
石田”「しかしながら、【艦娘】にも弱点というものがあり――――――、」
石田”「必ずしも【城娘】が【艦娘】に劣っているというわけではないことも十分にご理解していただきたい」
二条城「あら、それはどういうことかしら? どうもあの超巨大な大砲の他にもいくつもの秘密兵器を持っているようだったけれど」
石田”「まず、私と【艦娘】たちが【外なる世界】から来ていることは説明していたはずだと思います」
能島城「うん? 【それ】って“海の向こう”ってことか? ――――――南蛮人や紅毛人の祖国とか?」
石田”「…………説明はもうしません」
二条城「それで~?」
鶴ヶ岡城「うん、それで~? すないスケ様」
石田”「【この世界】にとって【城娘】が摩訶不思議な存在として崇められているように、」
石田”「【私たちの世界】でも【艦娘】は正体不明の存在として、その発生や生態の解明が盛んに行われていました」
石田”「私も【艦娘】の研究者の一人として数々の検証と実験を踏まえて、ある程度の見解を得るに至りました」
石田”「そして、この【乱世】と呼ばれる異世界に来たことで、【艦娘】によく似た存在である【城娘】に触れることになりました――――――」
脇本城「あ、そういうことですか」
脇本城「すないスケ様は【艦娘】と【城娘】の比較研究をしたいというわけなのですね?」
石田”「はい。その通りです」
石田”「しかしながら、比較研究するにあたって【艦娘】側のサンプルが著しく不足していて、公正なデータ分析になるとは思ってはいません」
石田”「これからデータ収集の協力を申し入れる前に、1つ確認しますが――――――、」
――――――あなたたち【城娘】としては自身の発生の由来や創造主が誰だなのかは把握しているのですか?
脇本城「え」
能島城「どういうことだい、スケさん?」
石田”「つまり、『自分たちがなぜ【兜】と戦っているのかを理解しているのか』と訊いているのです」
二条城「さあ? そういうものだと思っているから考えたことがないわね~」
石田”「なるほど、やはり【城娘】もまた自分たちの出生については把握してないわけですか」
石田”「わかりました」
石田”「では、今日から研究を始めさせてもらいます。ご協力お願い申し上げます」
霧島”「わかりました、司令! 全力で参らせていただきます」
鶴ヶ岡城「はい、すないスケ様!」
能島城「いったいこれから何が始まるんだろうな? スケさんがやることだからあっと驚くものなんだろうな~」
脇本城「はい。これは興味がつきません」
二条城「あらあら」フフッ
――――――翌朝
――――――萬紫苑城 隣:仮設工廠
石田”「…………昨日のデータ収集の結果をまとめるとこうなるか」
石田”「結論から言えば、【城娘】と【艦娘】の能力の差は『史実のモデルのどこに能力を求めているか』の違いだな」
――――――言うなれば『マンパワーが主か』『マンパワーが従か』の違いだ。
石田”「…………まだ研究の初期段階でこう結論づけるのは早計かも知れないがな」
石田”「しかし、擬人化するにあたって、モデルとなるものの能力や特徴を再現するとなると、」
石田”「どうしても人体構造の観点からモデルの再現には大幅な制限がかかることになり、」
石田”「実戦においては人体構造に無理がない制限化で、モデルの力を宿した装備を活かした戦い方を強いられることになる」
石田”「これは いかなる擬人化においても必須と言える共通事項だ」
石田”「しかし、だからこそ、比較研究をする上では重要な手掛かりとなってくる」
石田”「一般的な比較研究による相対的な評価というものには、共通した絶対条件を設けなければ、その評価の定義が曖昧になるからだ」
石田”「例えばの話、戦車と戦闘機と戦艦のいずれが最強なのかを真剣に議論するのと同じぐらい不毛な話だ」
石田”「あるいは、西洋の騎士と東洋の武士の優劣を諮るのもまったくもって無駄な議論だろうな」
石田”「次元が違うものを比べ合っても的外れな結果しか得られないからこそ、条件を限定してその中での評価を1つ1つ見ていくしかないのだ」
石田”「ただ単純に最高速度だけを競う場合や燃費を踏まえた上での速力や加速性能について考えてみても次元が違うことが理解できるだろう」
石田”「そうして、データ化された1つ1つの評価を総合的に見て、最終的な評価を決めていくのが正しい比較研究の在り方なのだ」
石田”「もちろん、比較研究が最初から限定された要件を満たす評価が出れば それで研究を切ってもいいがな」
石田”「しかし この世の中、どういった状況で何が最適な手段なのかは刻一刻と移り変わっていくものだ」
石田”「状況に応じた使える手駒を1つでも多く揃えておくためにも、比較研究はできるだけ多くしておいて損するということは決してない」
石田”「データは間違いなく裏切るということはない」
石田”「裏切られるとすれば、アプローチの仕方が間違っているか、データの分母が少なすぎたというだけのこと!」
【艦娘】霧島:大和型戦艦を除くと最強クラスの【火力】を誇り、それでいて【高速戦艦】なので非常に使いやすい。
今回の比較研究における唯一の【艦娘】側のサンプル。彼女を基準にして考察が行われることになった。
【城娘】二条城:【城娘】においては最大の【範囲】を誇り、更に【平城】で【必殺技】で【範囲】拡大もされるので一方的な狙撃が可能。
陸戦用【艦娘】といった造形であり、大砲を主体にした擬人化デザインとしてはこれが黄金パターンなのだろう。
【城娘】能島城:【海城】最強クラスの性能を誇り、一部のマップにおいてはまさしくやりたい放題な活躍をしてくれる。
村上水軍の【海城】としての選出であると同時に、茶髪にしたら とある【艦娘】そっくりな点から…………
【城娘】脇本城:レアリティが低い槍タイプの【城娘】の中では断トツトップの【攻撃】が光る。
攻撃力の高いインテリメガネという点で【艦娘】霧島と非常に似通った特徴を持っている…………。
【城娘】鶴ヶ岡城:基本性能は低いものの、【必殺技】による支援能力やその他の能力で器用に戦える万能さを誇る。
【艦娘】霧島との比較には使えないが、【近代改築】で見た目や性格がガラリと変わる【城娘】の代表格として採用。
※そもそも【艦これ】がオート操作RPGで【城プロ】がタワーディフェンスゲームというジャンルの違うゲーム同士なので単純な比較は不適当
ここでは“擬人化ゲーム”というテーマ・カテゴリーでその擬人たちが持つ背景や作中での描写を基に比較させてもらっています。
比較研究:【城娘】と【艦娘】の能力の違い
0,基本性能:【城娘】≪【艦娘】
【城娘】のモデルである【城郭】が近代の産業革命 以前の建造物なので、近代化以降の産物である【軍艦】がモデルの【城娘】には根本的に敵わない。
また、【軍艦】が移動要塞――――――海上移動できる【城郭】とみなすことができれば、地の利しか活かすものがない【城郭】では機動力で圧倒される。
他にも、【城娘】の絶対数が少ないことや射程や武器性能の点でも【艦娘】から見て 完全に時代遅れなのは否めない。
ただし、一概に【城娘】が【艦娘】に完全に劣っているとはいえない部分があり、
この“基本性能”の比較研究とは【城娘】と【艦娘】を1対1で比較研究した時の――――――特に戦闘能力や出力だけを測っただけに過ぎず、
単純に言えば、同じリングで1対1で殴り合いをさせた時の数値の評価にすぎない。互いの長所や前提に基づいてはいない。
逆に言えば、【城娘】と【艦娘】が単純な殴り合いをしたら【艦娘】が圧勝することを意味している。
【軍艦】が馬力で評価されるのに対して、【城郭】の場合はそこに駐屯する兵力によって戦力が決定されるのでどうしようもない。
しかしながら、【城娘】の耐久力に関しては【轟沈】しない(=戦場でロストしない)上に、
「巨大化」の恩恵で【艦娘】の数十倍はあるので、耐久力と「巨大化」を活かした力押しが通れば逆に圧勝できる。
1,パワーソース
【城娘】:マンパワー ≧ スペック
【艦娘】:スペック ≧ マンパワー
これが【城娘】と【艦娘】の人間離れした能力の根源であり、同時に産業革命以降の近代化で大きく逆転することになった要素である。
もし、産業革命以降の近代化したハイテク要塞が【城娘】化したとするのならば この限りではないし、
木造帆船などの機械に頼らない艦船が【艦娘】化するのならば、もちろん この評価は逆転する。
つまり、どういうことなのかをかいつまんでいえば――――――、
擬人化したモデルにとっての主となる人物の性格が実際の性能よりも大きく現れている状態を指しているのが 『マンパワー ≧ スペック』という状態であり、
これまでの戦績や逸話の中で仕様能力よりも使う人間の個性や能力が占める割合が大きいことを示している。
実際に、【城娘】と【艦娘】の性格付けや能力評価の背景を比較検討すればわかると思うだろうが――――――、
【艦娘】は確かに一部においては性能以上の戦果を上げた武勲艦も存在し、不幸艦や幸運艦の差別も存在はしてはいるものの、
基本的に艦型や艦種によって能力水準が一定であり、ほとんどの【艦娘】が同型艦と能力が横並びしていることが印象的である。
また、【艦娘】の基本的な人格形成に歴代艦長の人物像や艦歴が初期段階で反映されている割合もかなり少ない(【改造】されてから反映されることがほとんど)。
これは【軍艦】が量産を前提とした一定規格で建造されていることと無関係ではないだろう。
一方で、【城娘】にはその土地その時代に合わせた築城がなされているために常にオンリーワンの存在であり、様式に共通性があっても同一性は一切存在しない。
そして、その人格形成の背景にはモデルとなった【城郭】そのものよりも、歴代城主や出身地の影響が色濃く反映されている。
そのため、【城娘】一人一人の能力は千差万別であり、完全な代用や上位互換というものが存在しない(『強い』『弱い』・『使える』『使えない』は存在する)。
また、効果は同じでも名称が唯一無二の【必殺技】の存在が特に象徴的であり、【必殺技】さえ強ければ有用な【城娘】も実際におり、
【必殺技】の種類で【本城】に適しているかの判断基準にもなっているので、性能と装備と編成が全ての【艦娘】では比較にならない部分がある。
2,知識・教養・生活能力:【城娘】≧【艦娘】
もちろん、個体によって千差万別ではあるものの、圧倒的に【城娘】の方が教養レベルは上である。
【艦娘】は鎮守府での生活や組織の運営、実際の戦闘に必要な知識しか生まれながら持ち合わせていないので、
マンパワーの比率が大きい【城娘】と比べると個性も一面的なものしかないように思われる(キャラ属性に大きく傾いて、内面の豊かさまでは描写されていない)。
ただし、個体ごとの外見や性格の違いにおいては圧倒的に【艦娘】が広がりが大きく、絶対数も【艦娘】の方が多いながら差別化が徹底されているのは圧巻。
しかしながら、広範な知識を持っているかと言えば、【艦娘】はあくまでも戦闘・戦術レベルの末端の兵でしかないので望むべくもなく、
一方で、【城娘】は戦略・戦術の要であり、領国統治の拠点でもあるので、あらゆる分野の知識をひと通り修めているのが基本となってくる。
言うなれば、領国運営にまつわる様々な分野に精通するジェネラリストが【城娘】であり、海上戦力のスペシャリストが【艦娘】ということになる。
得意分野がまったく異なるので一概に優劣はつけられないものの、人間的な生活能力を幅広く扱えるのは断然【城娘】である。
しかしながら、【城娘】が近代化以前の古風な存在なので現代の気風に馴染めない場合があり、
近代化以降の単純化された人格から【艦娘】の方が現代人にとっては取っ付き易いという特徴もある。
3,即応力・行動範囲:【城娘】≫【艦娘】
【変身】すればすぐに戦闘態勢に移れるのが【城娘】であり、【城娘】には装着の手間暇が存在している。
【変身】で「巨大化」すれば、その巨体によって移動範囲も拡大されるので足が付く範囲であれば【艦娘】よりも遥かに行動範囲が広い。
ただし、激しく動き回ると周りの土地を蹂躙することになるので、【兜】との戦いにおいてはできるだけその場を動かずに迎撃する作戦が採られている。
また、【変身】しなければ『具足』に使うエネルギーもカットされ、燃費も良好で経済的でかつ隠密性も高い。
一方、【艦娘】は水上移動が自在にできるので広い洋上での行動に適しているが、陸地での行動能力は格段に【城娘】に劣る。
洋上での機動力・主砲や艦載機の射程で【城娘】には圧勝なので、対地攻撃できれば一方的に【城娘】を倒せる。
その反面、何でもかんでも地下資源に依存しているせいで燃費は最悪であり、工業レベルが高くないと修理・補給すらままならない。
また、『艤装』が邪魔で格闘能力も高くないので、接近戦に持ち込まれたら圧倒的に不利という人体構造に由来する欠点も抱えている。
接近戦主体の【城娘】が実際に動きやすい格好をしているのとは対照的であるが、射撃主体の武器構成としてはそれで正解なので悪いとは言っていない。
二条城「あらあら。今日もお早いですこと」
石田”「む、珍しいものだな(――――――普段は【探索】以外では外に出ることも少ない)」
二条城「ごめんあそばせ、石田少将」
石田”「すまないが、まだ今日の比較研究の準備はできていないから出直してきてくれ」
二条城「今日は石田少将にお訊ねしたいことがあり、参った次第です」
石田”「?」
二条城「…………これは、石田少将だからこそお訊きしたいことなのですが、」
――――――良い君主の条件とは何だと思っておりますか?
石田”「……“二条城”らしからぬ質問だな」
二条城「答えていただけませんか?」
石田”「だが、答えて不利益になるということもあるまい」
石田”「答えてやろう。そんなのは単純明快だ」
――――――良い家臣を持つことだ。
二条城「――――――『良い家臣を持つ』、たったそれだけですか?」
石田”「当然だ。組織も社会も一人で成り立っているわけではない」
石田”「たとえ、全ての分野において第一人者の実力を持つ万能の天才がいたとしても、人間が一度にやれることには限りがある」
石田”「だからこそ、任せられる仕事を他人に任せて1つ1つの作業に専念できるように管理維持していく能力が上の人間には問われてくるのだ」
石田”「いいか、組織の長になる人間に求められているのは組織の中でも屈指の実力よりも組織の管理運営に長けた人間こそなるべきなのだ」
石田”「戦いは家臣にまかせて、大将である自身は本城でどっしりと構えて帰る場所を守り通すのも立派な役割だ」
石田”「そういう意味では“鬼島津”島津義弘の兄:島津義久は理想的な家臣を持った理想的な君主といえるな」
二条城「では、更に質問させていただきます。今度は――――――、」
――――――良い家臣の条件とは何だと思いますか?
石田”「まったく簡単だ。これも単純明快だ」
二条城「?」
石田”「答えてやろう。それは――――――、」
――――――良い君主を持つことだ。
二条城「え」
石田”「そこまでは理解できていないようだな、二条城」
石田”「一見すると矛盾しているように感じられるが、だが 矛盾はしていない」
石田”「まず君主または発起人がいて初めて全体の方向性が決まり、全体の方向性を実際にそう向けさせるのは家臣一人一人の仕事だ」
石田”「よって、良い君主だけでも、良い家臣だけでも、良い組織は生まれないというわけだ」
――――――上の者と下の者が互いに全体の一人一人のために手を取り合って初めて良い組織が誕生するというわけなのだ。
二条城「…………石田治部の旗印とまったく同じことをおっしゃるのですね」
二条城「――――――“大一大万大吉”だったかしら」ボソッ
石田”「なに?」
二条城「では、そうおっしゃるからには――――――、」
二条城「殿方からの恩寵を受けるためにはそれを受ける人間の資質も問われてくるわけなのですね?」
石田”「基本的にはそうなるだろう」
――――――与えられる人間が与え、与える人間が与えられる関係でもあることが良好な関係維持に必要不可欠なのだ。
石田”「こんなのは“御恩と奉公”で古来から明確化された実に単純明快なシステムだろうに。あれは合理性を追求した結果 成り立ったものだ」
石田”「それすら理解できないクズ共が多すぎて、俺としては実に不快な気分にさせられっぱなしだ」
二条城「……なるほど」
二条城「では、石田少将。これは男と女の関係においても通用するものなのでしょうか?」
石田”「――――――『男と女の関係』?」
石田”「知らんな、そんなことは」
石田”「だが、意思疎通が可能な相手であるというのであれば、男女の別は問わない」
二条城「では、男を立てるのはやはり女であり、それと同時に女の価値を決めるのは尽くした殿方次第というわけかしら?」
石田”「…………主君と家臣の関係にあてはめるのなら そうなるな」
石田”「――――――男を堕落させるような女は社会のゴミだ。逆に、女遊びに溺れる男もひとでなしだ」
二条城「………………」
石田”「これで満足か?」
二条城「わかりました。大変参考になりました、石田少将。ご助言、感謝いたします」
石田”「力になれたようで何より」
二条城「最後に、――――――石田少将?」
石田”「何ですか?」
二条城「……たとえ、たとえ報われない想いだと悟っても、殿方の目指すもののために側に居続けても良いものなのでしょうか?」
石田”「わからんな。俺はそういった浮ついたこととは無縁でな。大の大人ですらよりつかない はぐれものだからな、俺は」
二条城「…………嘘ばっかり」ボソッ
石田”「何か言ったか?」
二条城「いいえ」ニコッ
石田”「だが、意見を求められている以上、誠意を以って答えるならば――――――、」
石田”「その『殿方』と同じものを目指せばいいのではないか? “同志”となって同じものを見続けることが何よりの宝だと俺は思う」
二条城「…………!」
石田”「相手が見ているものと同じものが見えてこなければ、それが見えている相手に自分への理解を求める行為など成立しようがない」
石田”「だからこそ、俺にとって金木は生まれも育ちも能力も違うただの協力者ではなく、――――――対等の友人なのだよ」フッ
二条城「………………」
石田”「俺は金木と一緒に互いが持てるものを出し合って生きている この【乱世】での日々に誇りを持っている」
石田”「そして、相手への想いが本物かどうかは 相手の理想を離れ離れになっても守り通せるかで 真贋が見定められるものだと考えている」
石田”「旗色が悪くなった瞬間に主君を裏切る人間のクズなど歴史を紐解けばいくらでもいるからな」
石田”「俺は絶対に金木を裏切らないし、金木もまた俺を見捨てない――――――実に合理的で安心できる信頼関係だ」
二条城「それは、その思想は――――――」
石田”「?」
二条城「………………さすがは“石田治部の影法師”ですわね」ボソッ
石田”「さっきからブツブツと何か呟いているようだが、大丈夫なのか?」
二条城「ええ、私は大丈夫」ニッコリ
二条城「けど、少し緊張したというか、こういった相談事はこれまでなかったことだから、気恥ずかしい感じがして……」フフフ・・・
石田”「そうか」
二条城「あら。そうだわ~、石田少将」
石田”「まだ何か?」
二条城「今回、あなたの研究に付き合ったお駄賃をいただきたいのだけれど」
石田”「なに? なぜ俺が―――――― 一応、聴いておこう」コホン
二条城「ふふ、素直じゃないけれど、そういうところが素敵よね~」
二条城「それじゃ、私はこういうのが欲しいのよね~、はい」サラサラ ――――――紙にお駄賃の内容を書く。
石田”「何を言い出すのかと思えば――――――、」パシッ
―――――お駄賃:大一大万大吉の扇
石田”「!」ピクッ
二条城「ふふ」
石田”「……何のつもりだ?」
石田”「俺が“石田治部の影法師”であることのあてつけか? それでなくても、――――――このご時世、天下泰平への大逆者の旗印だというのに」ムスッ
二条城「今回の相談事の記念によ、石田少将」
二条城「お手製の扇をお作りになるのですから、これぐらいはどうということはありませんわよね?」ニッコリ
石田”「くっ」プイッ
二条城「…………そう、本当にありがとうございました、“影法師”さん」
――――――改めて、天下にとって石田治部がいかなる存在だったのか こうして時を経て 見えてまいりましたわ。
二条城「そして――――――、」チラッ
石田”「……これぐらいのことはやってやらねばならないか? しかたあるまい」ブツブツ
石田”「だが、しかし、それはいいが、よりによってこの俺があんなやつの――――――」ブツブツ・・・
石田”「確かに扇を作るのは大した問題ではないが――――――」アーダノコーダノ・・・ ――――――石田司令の腰には異様に大きいものが下げられていた。
石田”「…………これも1つの縁というやつなのか?」\ ◎ / ――――――そして、腰に下げたものを広げた。
二条城「――――――黄金の九曜紋」
――――――あれこそが石田治部の家紋。
今の石田司令は佩刀代わりに遠目から見てもわかるほどの異様な大きさの扇を腰に帯びていた。
それは石田司令が霧島神宮において受け取った秘蔵品――――――名を“志那都神扇”と言い、
打刀の刃を何枚も束ねたような重厚な扇を開けば、そこには群青に映える黄金の九曜紋が爛々と照り輝くのであった。
この黄金の九曜紋を遠目から見れば、黄金の太陽と蒼穹にも見えなくもなく――――――、
すなわち、雲一つなく太陽の威光を余すところなく地上へと伝わらせる風神:級長津彦命の神徳を表したような図案なのである。
そして、風神が仕える黄金の太陽とは、石田治部にとっての太陽とは――――――、石田少将にとっての太陽とは――――――。
関ヶ原の役(1600年)の後に次なる天下人:徳川家康の征夷大将軍就任の祝儀に合わせて竣工された二条城(1603年)はそう思うのであった。
おそらく、“石田治部の影法師”と呼ばれるのを忌み嫌う石田司令も【城主】様もご存じないのだろうが、
九州:熊本藩の細川家や奥州:仙台藩の伊達家の家紋でもある“九曜紋”は実は石田治部の家紋でもあったのだ。
一般的に、石田治部の家紋は件の“大一大万大吉”がとされてはいるものの、それは関ヶ原合戦屏風があまりにも有名なだけであり、
石田治部としても文治派として他の有名武将たちと比較して、武士らしい逸話や武勲が目立たない立場にあったことがその印象を強める結果になった。
意味合いとしても“万民が一人のため、一人が万民のために尽くせば太平の世が訪れる”と解釈すれば、
実に、豊臣家の治世の確立と存続のために身を粉にして一生涯を捧げてきた石田治部らしい生き様を綴ったものととれる。
しかしながら、出自である石田氏が使ってきた家紋の1つの中に“九曜紋”が確固として存在しており、
また、関ヶ原の役 以外において“大一大万大吉”の家紋を石田治部が使ったという記録も無いという。
故に、青天の黄金の九曜紋の神扇にはそういった意味合いもあるのではないかと【城娘】二条城はそう思ったのであった。
そして、――――――もう1つ興味深い話がある。
石田治部の家紋、あるいは石田治部の生き様や理想の象徴として“大一大万大吉”が有名ではあるものの、これ自体は彼が考案したものではない。
実は、歴史を遡って行くと過去に“大一大万大吉”を旗印にして使っていた武将の中に――――――、
――――――逆賊:木曾義仲を討ち取った“石田次郎為久”なる源氏武者の名があるのだ。
そして、現存する石田家の家系図にも、その木曾義仲を討ち取った“石田為久”の名が記されており――――――、
このことから、石田治部は天下分け目の戦いとなった関ヶ原の役に臨むにあたって、
――――――逆賊を討った先祖の名声に肖って、豊臣の天下に仇なす逆賊:徳川家康を討ち滅ぼす!
という強い意気込みで、先祖に由来する“大一大万大吉”の紋章を採用したのではないのかという推測が立つのである。
はたして、石田治部が自身の先祖に源氏出身の逆賊を討った源氏武者がいたことを認めていたのかは定かではないが、
かくして、“大一大万大吉”を掲げて逆賊討伐に打って出た彼は天下分け目の戦いに敗北し、あえなく六条河原に果てたのであった。
そして、逆賊である徳川が世を掴んでからは、彼こそが逆賊として貶められる時代が続くことになった。
それから4世紀以上の時が流れ、“大一大万大吉”の理想を掲げて六条河原に斬首される極悪人とされてきた彼が再評価される時代がやってきた。
その背景には、近年の多角的な観点からの研究の進展や、情報技術の発達による記録の保存や共有が容易になったという社会的条件の他にも、
――――――関ヶ原の決戦において石田家代々の家紋の“九曜紋”ではなく、
“大一大万大吉”という後世の人間にもわかりやすいキャッチフレーズを掲げていたことも無関係ではないのだと思う。
平家物語に現れる『諸行無常の響き』――――――この移ろいやすい泡沫の世において、
ただ純粋に主への忠誠を貫いた人生の全てが集約された その一言にこそ、時の河を越える玉のような輝きがあったからなのではないのだろうか。
――――――それから、
霧島”「――――――それでこんなようなことがありましてね?」
能島城「へえ、そいつはおもしろいや!」
脇本城「はい。面白いお話です」
鶴ヶ岡城「もっと続けてください、霧島さん」
霧島”「はい。それで――――――あ、司令!」ガバッ
能島城「え」
鶴ヶ岡城「あ」
石田”「む、霧島ですか。どうしました?」
霧島”「あ、いえ……」
霧島”「なんとなく……、なんとなくですけど、司令が来るような気がして――――――」モジモジ
能代城「なあなあ?」
脇本城「何です?」
能島城「ここ最近、スケさんの研究に付き合わされて よく一緒にいるようになったから気づいたんだけどさ」
能島城「霧島ってスケさんが来る2,3秒前には必ず反応してないか?」
能島城「少なくとも、扉が開いてスケさんの姿がわかる前から反応してるっていうかさ……?」
脇本城「そうですか? 感覚的に『この時間に来る』という予測が立っていたからでは?」
能島城「そんなわけないって。今日だって用が終わって こうやって霧島の話を聴いていたら突然スケさんが来たんだぜ?」
鶴ヶ岡城「あ、それは確かにそうかもしれませんよ」
脇本城「鶴ヶ岡城殿もそう思うのですか?」
鶴ヶ岡城「はい。ある種の直感が冴え渡っている状態にあるのかもしれません」
脇本城「……出羽三山の山伏のことはわかりませんが、確かにそういった勘が冴え渡っている人間がいることは知っています」
能島城「だよなー。船乗りにとって勘は必須だもんな。渦潮や時化に巻き込まれでもしたら大変だし」
脇本城「すると、霧島殿はすないスケ様が来ることに敏感ということなのでしょうか?」
能島城「そうとしか思えない――――――『だから何?』って話なんだけどな。ちょっと気がついたもんだから、つい」
鶴ヶ岡城「でも、そのことを思いますと、メガネが無い状態でよく霧島連峰を彷徨い続けて観音様の御堂まで辿り着けたと思いません?」
脇本城「確かに……。私もメガネが無いと辛いですから、霧島殿がどれだけ大変な思いをなさっていたかが我が事のように理解できます」
能島城「あれ? 確か、その時は第2のメガネ――――――そく…何とかで乗り切ったって言ってなかったっけ?」
石田”「――――――『測距儀』のことだな」
能島城「そうそう、『測距儀』『測距儀』――――――って、スケさん! いつになったらあたしにもその『測距儀』を作ってくれるのさ?」
石田”「一応 やってはみましたが、開発の見通しが立たず、人類科学で作ったところで実用性に乏しい――――――許せ」
能島城「ちぇっ、遠くのものがもっと見えるようになれば、遠洋航海だってもっと自由にやれるようになるんだけどなー」ブーブー
霧島”「でも、【艦娘】用の測距儀はほとんど飾りですから。だいたいの【艦娘】は人間に比べて視力が抜群に良いので測距儀は必要ないんです」
霧島”「金剛型戦艦は日本で最初の超弩級戦艦――――――つまり、旧式ということで一応ッ! 念の為にッ! 付けられているものでして、」
能島城「お、おお……」
霧島”「今回はそれに助けられました、ホントに……」ホッ
能島城「うん。そうだよな。――――――『備えあれば憂いなし』だ」
霧島”「でも、近くにあるものが本当に見えないので、結局 あるだけマシという程度で、湖に出るまで本当に大変でした……」
脇本城「不幸中の幸いでしたね、霧島殿。本当に良かったです」クイッ
石田”「…………そうやって聞かされると【艦娘】にとって測距儀は老眼鏡みたいな扱いなのだな」ボソッ
石田”「(霧島が言っている通り、【艦娘】の裸眼視力は測距儀レベル――――――それによって砲撃も瞬時に正確に行える脅威の命中率を誇る)」
石田”「(それにより、これまで測距儀カチューシャについてはただのおしゃれということで誰も研究してこなかったのだが、)」
石田”「(今回、霧島という裸眼視力が異様に低い個体が【艦娘】にとって未体験の領域において遭難したことにより、)」
石田”「(――――――あの測距儀カチューシャにも実用性があることが判明した)」
石田”「(だが、その性能を調べてみると、あくまでも臨時の補助具の域を抜け出せないことも判明する)」
脇本城「確か、測距儀というものは人間の眼が見える原理と同じでしたか?」
石田”「正確には、――――――『両眼でものを見た場合に見える原理と同じ』です」
石田”「両眼からの視線を交差させた時の距離を距離計に対応させたものが測距儀ですから、」
石田”「原理的に、対象が遠くにあればあるほど交点の距離が遠くなり、その分だけ測距儀も巨大になっていくので、」
石田”「人間が生来備えている測距儀――――――つまり、どうあがいても肉眼サイズでは到底 再現ができないものなんです」
石田”「それでも戦時中は見張員や搭乗員たちの優れた視力によって高い戦果を上げてきたんです」
石田”「これは『測距儀が無くても相手が同じ人間ならば少し視力を突出させるだけでも大きな武器になり得る』という教訓です」
石田”「ですから、私としては自身の視力を鍛えることを強くおすすめします」
能島城「それはごもっともな話なんだけどさ~」
石田”「それに、この測距儀カチューシャには他にも欠点がありましてね……」
能島城「ええ~、まだあるの~? せっかくのお宝にケチばかり……」
鶴ヶ岡城「それは何なんです?」
石田”「霧島が実際に身に着けているものを見ればわかると思いますが、」
石田”「測距儀は位置が固定されているから、頭を向けた方――――――しかも一定の高さのものにしかピントを合わせられない」
石田”「よって、使い勝手が非常に悪い。いちいち頭を正確に対象物に向けなくてはならない苦労があります」
石田”「ですので、測距儀カチューシャの件は諦めてください」
能島城「頭を正確に向ける………………それもそうか。それならしかたないさ。わかったよ、スケさん」
脇本城「メガネとはずいぶんと違うものなのですね。ようやく理解できました」
石田”「はい。測距儀は書いて字のごとく『距離を光学的に測ること』を第一としていますから、視力矯正が第一ではないですので極めて扱いづらいです」
鶴ヶ岡城「でも、すないスケ様?」
石田”「ん?」
鶴ヶ岡城「その測距儀のおかげで、霧島さんは六観音御池の御堂に辿り着くことができたのですから、そんなに悪いものでもないように思いますよ」
石田”「…………それは結果論でしかないのですがね」
霧島”「………………」
石田”「(確かに、霧島はメガネを失って盲目状態となっていたが、測距儀カチューシャのおかげで視力を辛うじて保つことに成功した)」
石田”「(だが、測距儀が視力矯正用の補助具ではないために、まだまだ未開の鬱蒼とした山道を歩き回るにはあまりにも不十分過ぎる代物であった)」
石田”「(結果として極度の遠視状態となり、そのために無意識の内に、あるいはただ単なる偶然で遠くを見渡せる開けた場所へと出ることになった)」
石田”「(それが六観音御池であり、霧島は消耗した状態で湖の上から人里でも何でもいいから落ち着ける場所がないかを見渡した)」
石田”「(すると、湖の畔に堂宇があることに気づき、極度の緊張と疲労から吸い込まれるようにそこに入り込んでいったという)」
石田”「(それが、結果として――――――)」
――――――そう、結果として全てがうまくいくことになった。
石田”「でも、そうですね。結果として全てがうまくいくことになりました」
石田”「こうして我が艦隊の要である霧島も無事に迎えることができて、協力してくれた皆には感謝してもしきれない…………」
霧島”「…………司令」
鶴ヶ岡城「はい。本当に良かったです、すないスケ様」
脇本城「いえいえ、殿の命に従ったまでのことです」
能島城「ホント、人生 塞翁が馬――――――何が吉になって何が凶になるか、わからないもんだぜ」
能島城「だからこそ、生きるのが楽しいんだけどな!」ニコッ
石田”「……それもその通りですね」フッ
能島城「ところでなんだけどさ?」
石田”「?」
能島城「霧島は戦力に数えてもいいのかな? あたしや二条城の持ってる大砲よりでっけーのを持ってるから期待したいところなんだけど」
脇本城「それは、そうでしたね。霧島遠征で【兜】を討滅して以来、今までになかった平和な日々でつい戦いのことを忘れていました」
鶴ヶ岡城「でも、それが太平の世ってことなんですけどね……」
霧島”「…………司令」
石田”「私としては、霧島には【艦娘】として戦わずに飛龍と一緒に本拠地の防衛に専念してもらいたい」
石田”「補給できる見込みもないのに緒戦で戦力を使い果たす愚を私は犯したくありませんから」
石田”「いつ投入するかは私が判断を下しますので、それまで いつでも出撃できるように準備だけは万端にしておいてください」
霧島”「わかりました、司令」
能島城「う~ん、飛龍の破魔矢の鉄の鳥はできないだろうけど、大砲の弾くらいはなんとかなるもんじゃないのか?」
石田”「なら、造ってみてください。“国崩し砲”【フランキ砲】が9cmなのに対して、それの4,5倍の大きさの弾を量産してください」
石田”「ライフリングを考慮した加農砲に対応した生産ラインに今の大筒工廠を造り直してください」
石田”「言うなれば、今から200年後の戊辰戦争で活躍した【アームストロング砲】を造れるぐらいの基礎技術力を要求しています」
能島城「うえぇ……、わかった。わかったから、もう……」
石田”「見たところ、【城娘】という存在は、モデルとなる【城郭】が織豊時代と江戸時代のものに集中している――――――」
石田”「その時代背景に由来して白兵戦能力や戦術・戦略に関しては誰一人として使えない者などはいないように見ておりますが、」
石田”「それ以降の時代の【城娘】――――――技術レベルが近世で止まって近代・現代の【城郭】がほぼ存在しないので、」
石田”「どうやっても近代の【艦娘】と装備面で対等に渡り合える【城娘】がいないのです」
石田”「それはつまり、【艦娘】の近代装備の整備や調達ができるほどの技術水準に達していないという戦略上における最大の痛手――――――」
脇本城「……そうですね。どれだけ為政者が手を尽くしても、季節の循環や人々や町並みの成長だけは時間が解決するまではどうにもできませんからね」
鶴ヶ岡城「え? 【御城】は【すないスケ様の時代】だと無いんですか!?」
石田”「ええ。航空兵器や戦略兵器の発達――――――平たく言って 飛び道具が発達したことにより、」
石田”「もはや装甲に守られた要塞と言った類のものは戦場の主役にはなり得なくなっているのです」
石田”「そして、時代は軍縮や不戦を前提にした平時の機能性と効率性が重視されていき、」
石田”「少なくとも、現代の軍事施設に豪華絢爛な造形美といった要素を求めることはできません」
鶴ヶ岡城「――――――【城娘】に喩えるなら、どんな【城娘】がいる感じですか?」
石田”「言うなれば、『佐和山城のように軍事施設としての堅い性格で、しかも頭の良さそうなちびしか存在し得ない時代』と言えば伝わりますか?」
鶴ヶ岡城「なんとなく 伝わりましたよ、すないスケ様」
脇本城「それは確かに、――――――佐和山城殿には申し訳ないですが、強そうな【城娘】が生まれてきそうな印象はありませんね」
能島城「なんか寂しくなるな~。聴かなけりゃよかったかも……」
石田”「ですが、未来では【城郭】に匹敵する規模の【軍艦】が国家間戦争の主役になってもいます」
石田”「【城郭】は廃れても、海上戦力である【軍艦】は順当な進化を重ねているわけなのです」
石田”「その叡智の結晶の1つが、今ここに立っている【艦娘】霧島として結実しているのですから」
能島城「おお! そっか、武吉丸も未来でも大活躍ってことなんだ!」
能島城「なんだ、未来ってのもそう悪いもんじゃないじゃん! やったー!」
霧島”「はは…………」← あまり話についていけず口を挟めない
石田”「…………まあ、木造の時点で現代の艦船と比べるべくもないのだがな」ボソッ
脇本城「なるほど。霧島殿のお話の数々も興味深い話ものでしたが、やはり すないスケ様のお話も大変興味深いです」
能島城「これからはもっと話を聴かせてくれよな!」
鶴ヶ岡城「では、すないスケ様?」
石田”「はい」
鶴ヶ岡城「未来の【城郭】というものは海の上に浮かぶ【軍艦】へと成長していったというわけなのですね?」
一同「!?」
石田”「……なんだと? ――――――『成長』?」
霧島”「へ」
鶴ヶ岡城「そう思いませんでした、みなさんも?」
能島城「あ、確かにそうかも!」
能島城「陸の上から【城郭】が消えた代わりに、今度は海の上に動く【城郭】を建てたって感じ」
能島城「実際の【艦娘】の起源なんてものは、それこそ【スケさんの時代】まで行ってみないとわかんないけど、」
能島城「あの大砲の大きさといい、船のくせに鉄甲船の数億倍の強さ――――――【城郭】かそれ以上のものを感じられたから」
脇本城「さながら、――――――【陸から海へと進出していった城郭の子孫】といった感じですよね」クイクイッ ――――――メガネをいじる。
石田”「なるほどな……、――――――陸を追われて海へと適応した【城郭】の成れの果てが近代化以降の【軍艦】か」
石田”「確かに――――――、鯨の仲間も かつては陸上生活をしていた哺乳類が陸を追われて広大な海へと出て進化していった結果ですからね」
能島城「え!? 鯨って陸上動物だったの!? 魚じゃなくて?!」
石田”「魚と鯨の違いは尾鰭を見ればわかると思います」
石田”「魚の尾鰭は水平ですが、鯨の仲間はみな尾鰭は水平になっています」
石田”「実際に陸上動物が海に出た時、脚がどのように尾鰭になっていくのかを想像していけば納得がいくのでは?」
能島城「…………おお!!」
脇本城「た、確かに……!」
能島城「じゃあ、イルカとサメは似ているけど実は違う生き物なんだな?!」
石田”「はい。ちなみに、クジラとイルカは生物学的には大きいものをクジラとし、小さいものをイルカとして分けています」
能島城「なるほどね~。そういった方面に関してもなんだか興味が湧いてきたぞ~!」
能島城「よし! 殿に掛けあって、あたし、ちょっくら行ってくるから待ってて! 魚と鯨の食べ比べをするぞー!」
タッタッタッタッタ・・・!
石田”「あ……、行ってしまいましたね」
脇本城「しかし、先程の鯨のお話でしたが、すないスケ様?」
脇本城「【城郭】から【軍艦】へと引き継がれていく何かを感じざるを得ませんでした」
石田”「そうですね……。私もそう思います」
石田”「しかし、確かに近世からの近代・現代への軍事施設や軍事技術の推移を見ていくと――――――、」
石田”「【城娘】が【変身】して「武装化」「巨大化」して戦うという性質も当時の世相を反映したものに見えてきますね」
石田”「逆に、【艦娘】が【変身】しない、あるいはできない理由も“世相”で説明がつくような気がしてきました」
霧島”「えっと……、どういうことです、司令?(どうしよう、話についていけない…………)」
石田”「うん? そうですねぇ――――――」
鶴ヶ岡城「たぶん、たぶんですけれど――――――、すないスケ様?」
鶴ヶ岡城「【城郭】というのはすないスケ様が言うように戦の要ですけれど、」
鶴ヶ岡城「同時にその土地を治める あらゆる機能を司った場所でもありますから、」
鶴ヶ岡城「もしもの時には みんなで一丸となって戦う、その覚悟と結束――――――そんな性質が【変身】として現れているのではないか」
鶴ヶ岡城「そういうことを感じ取っていたのではないのしょうか、すないスケ様は?」
石田”「!」
石田”「概ねその通りです、鶴ヶ岡城。――――――だてに霧島で悟りを深めたというわけではないですか」
鶴ヶ岡城「はい」ニコッ
霧島”「うぅ~」
石田”「…………やはり【城娘】の方が見識が広くて反応が良いな」ボソッ
石田”「(これも【城娘】の人格形成の主要因である城主が一定水準の高い教養や思考力を磨いていたおかげなのか)」
石田”「(これぐらいの教養や思考力があるのなら、1体ぐらいは連れ帰って参謀や警備隊長として迎えたいぐらいだな)」
石田”「(そう、近世の【城郭】の特徴は、軍事施設であると同時に交通の要衝であったり、政務も生活もそこで行わたりするということ!)」
石田”「(現代の軍事施設では兵舎や寮こそあれど、そこを実家としているわけでもないし、交通や流通の中心地として栄えているわけではない!)」
石田”「(それを踏まえれば、【城娘】の『【変身】して戦う』という特徴にも納得の理由付けがなされたのではないか?)」メメタァ
石田”「(そして、「武装化」はもちろん外敵と戦う時の備え、「巨大化」は不退転の意思の顕れ――――――)」
石田”「(そう考えるならば、同時に近世の【城郭】と共に戦った武士たちと近代の【軍艦】に乗って戦う軍人たちの心情の違いについても――――――)」
石田”「(そして、軍艦マニアという人種が存在するように、城マニアという似た人種が存在してきた理由についても――――――!)」
石田”「(――――――やはり、【城郭】と【軍艦】には人を惹きつけるだけの“ロマン”と言う名の共通した何かを備えているのだ)」
石田”「(だが、【軍艦】が現代における【城郭】に当たる存在だと仮定するのならば、両者の間の共通性にも納得がいくものがあるのではないか?)」
石田”「(更に、――――――クジラの先祖が陸から海へと出て大きな進化を遂げた話にもあったが、)」
石田”「(現代では【城郭】のような要塞の有用性は、安価で効率的な迎撃手段と軍事だけにとどまらない様々な対抗措置によって戦略的に皆無だが、)」
石田”「(居場所を失った【城郭】の要塞としての役割が海に出て【軍艦】として発展していったと考えるのならば、)」
石田”「(――――――【軍艦】こそが文明開化以降の【城郭】の形ということになるのではないのだろうか?)」
石田”「(銃器マニア・軍艦マニア・戦車マニアといった人種の存在は知っているが、軍港マニアや鎮守府マニアという人種は聞いたことがない)」
石田”「(非科学的な考証だが、【軍艦】と【城郭】が現代でも精巧な模型が造られ続けている共通点を見ても、)」
石田”「(実はそういった人類の戦いの歴史と誇りを文化的遺伝子を受け継いだ血族なのではないかと、俺にはそう喩えることしかできない)」
石田”「(そして、擬人化するにあたってそれぞれが受け継いできた文化的遺伝子に起因する特徴が如実に顕れているのだ――――――!)」メメタァ
ワイワイ! ガヤガヤ! ワーワー!
あさひ姫「盛り上がっていますね、みなさま」
福居城「うむ。霧島遠征から石田少将もずいぶんと馴染んできたように感じられるな」
佐和山城「ただ単に、万全の状態ではないから“しかたなく”本城に残らざるを得ないだけなのだがな」
佐和山城「まあ、石田少将にとっては良い薬であろうな」フッ
あさひ姫「ふふっ」ニコッ
佐和山城「どうなさいました、姫様?」
あさひ姫「よく理解してますね」
佐和山城「は」
福居城「うむ。佐和山城はずいぶんと石田少将と仲が良いように見えるな」
福居城「最初の頃の互いに険悪な雰囲気はなくなって、佐和山城にしても石田少将にしても態度がずいぶんと柔らかくなった印象がある」
佐和山城「あ」
佐和山城「い、いや、私は別に二君に仕えた覚えはない……!」アセアセ
佐和山城「ただ、我が城主の“影法師”というだけあって、その良さも欠点も全てが懐かしく思えてしまって――――――」アセアセ
あさひ姫「要するに、――――――似た者同士だから、互いの考えが手に取るようにわかるということですね?」ニッコリ
福居城「ほう? ――――――『以心伝心』というやつか。そんな相手とめぐりあえて羨ましい限りだな」
佐和山城「!?」カア
佐和山城「お、お戯れを……! 私にとっての主はただ一人――――――」アセアセ
あさひ姫「恥ずかしがることないと思いますよ? ねえ?」
福居城「そうだぞ。かつて譲ってもらった この名刀:石田正宗のように誇るべきものだろうに」
福居城「私も石田少将には借りがある」
福居城「私は霧島遠征には出ていないから 実質的に天草に来てからは、実際 世の中が太平の世となって【兜】との戦いの日々も遠のいて、」
福居城「戦うことで私を拒み続けた者すべてを見返す機会が失わてしまったようで独り寂しく時代に取り残されていた感じがしていたのだが、」
福居城「今では、こんな無骨な私でも それなりに太平の世を楽しむことを覚え始めたよ」
あさひ姫「どういった感じにですか?」
福居城「ああ。石田少将の趣味の扇作りを少しな」
佐和山城「え」
あさひ姫「まあ」
福居城「最初に声を掛けられて退屈凌ぎに始めたのだが、石田少将の職人芸には目を奪われたよ」
福居城「私が扇の骨を留める要をつけるのに手間取っている間に、石田少将は同じものを3つ4つ完成させていて――――――、」
福居城「それで、できた扇のうち いくつかを『ヲシドリ』に好きに描かせて微笑んでいる様子が妙に心に残っていてな……」
佐和山城「…………そういえば、二条城のやつが“大一大万大吉”の扇を持っていたのはそういうことだったのか」
あさひ姫「そうですか」フフッ
佐和山城「どういうことだ? 石田少将のやつは、まさか自分が嫌っていた石田治部の“大一大万大吉”を広めるつもりなのではあるまいな?」
福居城「まあ、手伝っていたからわかるんだが、――――――納得がいくものができるまで作っていたようだから、かなり余っていてな?」
福居城「作り方は教わったから、後は好きに使っていいって――――――こんなにたくさんもらってな?」スッ ――――――懐から4つも扇を取り出す!
あさひ姫「ホントにたくさん――――――そして、個性があっていいですね」ニコッ
佐和山城「う、う~む……(あまり絵心があるとは言えないものだが、これはこれで見ていておもしろいが…………)」
福居城「なかなか楽しいものだぞ、扇を作るのも」
福居城「これは石田少将からもらったものなのだが、この骨の中に小筆と墨汁が入っていてその場で使える記録簿ってことでなかなか重宝している」
福居城「これは『ヲシドリ』が描いたものでな、何を描いているか まったくわからないが、見ていて和むものがある」
福居城「それから、こっちのは――――――!」ウキウキ
佐和山城「そうか。それはおもしろそうだな」
佐和山城「『余っている』といったな? 私にもよこしてくれ」
あさひ姫「私にもお願いします」
福居城「ああ。まだまだ余っているからな!」
あさひ姫「こうして、石田様の良さがみなみなに伝わっていくわけなのですね」
あさひ姫「今度はこうして一人一人の御手元に形として残っていく――――――」
佐和山城「元々 あやつが来てから、この萬紫苑城には目新しい生活品に囲まれるようになったからな」
佐和山城「殿もそれに合わせて、以前から始めていた竹細工の工芸品に磨きがかかるようになったことだし、」
佐和山城「『りぞーとまんしょん』――――――まあ、自分専用の別荘が完成したことを喜んでおられていたな、この前」
あさひ姫「そうですね。私が唐津の二里松原で最初に見た萬紫苑城とはずいぶんと変わりました」
福居城「そうだったな。まだあれから1年も経たないのに、ここまで本城の内装が様変わりしていったのには驚いたよ」
佐和山城「ああ。機能性に富んだ【未来】の生活様式を導入して、とても暮らしやすくなったものだ」
佐和山城「だが、――――――【未来】か」
あさひ姫「どうしました?」
福居城「珍しいな。そういった顔を見せるのは」
佐和山城「いや、な? 石田少将というもう1つの基準ができたことで、」
佐和山城「我らが殿のことが前よりもずっと理解できてきた気がして」
佐和山城「………………石田少将ですら孤高を貫けぬのに、それより未熟な殿はこれまでさぞ辛かったろうな」
福居城「……どういうことだ?」
佐和山城「殿は最初に過去の【関ヶ原】に来て、私は【姉川】からの付き合いで、北ノ庄城――――――福居城は【稲生】からだったな」
佐和山城「そして、姫様と石田少将は この【寛永時代】でめぐりあうことになったが…………」
佐和山城「あの石田少将ですら、【今の時代】に不満がありながらも自分にやれることを精一杯やろうとしている――――――」
佐和山城「一方で、殿はようやく得た同志を【元の時代】に送り出そうと一層 力を入れて日々を送っておられる――――――」
佐和山城「だから、いずれ石田少将はこの萬紫苑城から去っていく運命なのだろう」
福居城「それは……、そうだな。寂しいものだな」
あさひ姫「…………はい」
佐和山城「だが、それを見据えて、我々【城主】である殿の家臣たる【城娘】として、やっておかねばならぬことができた」
福居城「…………?」
あさひ姫「……そうですね。それをしないと石田少将も安心して旅立てないのではないかと思います」
福居城「…………姫様?」オロオロ
福居城「わからん…………結論を言ってくれ、佐和山城」
佐和山城「わかった。簡潔に言うならば――――――、」
佐和山城「…………私たちに石田少将の代わりが務まるのかという話だ」
福居城「あ……!」
あさひ姫「………………」
佐和山城「やはり、殿は寂しさを埋めるように今まで我々に接していたのだろうな……」
佐和山城「殿にも親や兄弟、友人が【殿の時代】にいただろうに――――――」
福居城「それは――――――確かに、そうだったのかもしれぬ」
福居城「【稲生】からの付き合いで、それ以前のことは詳しくは知らないが、【関ヶ原】の最初の頃は相当 荒んでいたらしいしな…………」
佐和山城「私も【関ヶ原】の後だったからなぁ…………」
福居城「そうか。それは確かに、正月ぐらいには親元に帰してやりたいものだ……」
あさひ姫「……そうですね」
福居城「だが、本来は家臣たる我々が殿を盛り立てていかなければならないというのに、――――――何たる体たらくか!」
佐和山城「………………」
・ ・ ・ ・
あさひ姫「――――――『体たらく』? それも良いじゃありませんか、北ノ庄城?」
福居城「!?」
佐和山城「姫様……?」
あさひ姫「私たちは現在 未だかつて経験してこなかった【兜】との戦いのない平和な日々の中で【城娘】である自分の置所を探す日々を送っています」
あさひ姫「ですが、これで私たち【城娘】にも いよいよ『太平の世で真になすべきことが見つかった』というわけです」
あさひ姫「ならば、今までの日々で『体たらく』だったことをお詫びして、これからの日々の中で『体たらく』とならぬよう 努めましょう」
福居城「あ…………」
あさひ姫「大丈夫です。少しずつ始めていけばいいと思います」
あさひ姫「石田様も【城主】様も少しずつ自分にできることを増やしていっているのですから」
あさひ姫「それに、ほら、【城娘】と極めて近い存在である【艦娘】の『ヲシドリ』ちゃんだって今日も一日がんばってるんだから、ね?」ニッコリ
福居城「そうだ、姫様の背中にいるのは――――――」
佐和山城「……姫様」ホッ
あさひ姫「武士の時代――――――【城娘】の時代は【この太平の世】で終わりを迎えます」
あさひ姫「それから 霧島さんや飛龍さんをはじめとする【艦娘】たちの時代へと移り変わっていくのです」
あさひ姫「それが石田様の言う【来るべき未来】であり、かつて“大殿”が本能寺の炎に消えて1つの時代が終わったように、」
あさひ姫「今度は私たちが【来るべき未来】のために新しい道を模索して1つの時代をこの手で終わらせる番です」
――――――創りましょう。皆が笑って暮らせる太平の世で今度は新しい【未来】を共に!
福居城「………………」ジーン
佐和山城「さすがは姫様……」ポロリ・・・
佐和山城「……うん、どうした?」
福居城「ハッ」
福居城「いや……、――――――かつての天下人の威光というものを見た」
福居城「そうか。そうだったな……、よくぞ、大殿から受け継いだ天下を太平の世に繋いでみせた…………」ポタポタ・・・
福居城「勝負は時の運ではあるが、――――――あの時 天に見放されたのも全てはこのためにあったのか」ポタポタ・・・
佐和山城「…………懐かしいな。賤ヶ岳の戦いか」
あさひ姫「はい。全てはそのためにあったのですよ」
あさひ姫「そして、天下人の落日と共に世界に冠たる日出る国が世界へと進出していくのが阻まれたのもまた 天命――――――」
佐和山城「あ……」ギョッ
福居城「………………」
あさひ姫「ですが、【未来】ではいよいよ日ノ本が世界の頂点――――――真の天下を掴む流れができていたようです」
あさひ姫「そこに石田様がいらっしゃるのです」
あさひ姫「その遙かなる時の彼方へ、栄光と勝利を願って――――――、」
――――――決して終わることがない大きな夢をまた共に描いて参りましょう。
佐和山城「ははっ!」
福居城「ああ!」
福居城「今の私は“福居城”だ。江戸城の配下ではあるが、そんなのは今はどうだっていい」
福居城「そうだな、――――――不吉な“北”の字を退けて“福が居る城”だ」
福居城「ならば、その名にふさわしい新しいものを――――――!」スッ
福居城「そうだ! この際、全員に作って渡そう! これが萬紫苑城の新たな印よ!」
佐和山城「“菊の御紋”に、“萬の紫苑”だけでは飽きたらず、今度の象徴はまさかな――――――」フフッ
あさひ姫「そう、今度は――――――!」
――――――“大一大万大吉”が石田様と【城主】様を結ぶ楔になるのです!
石田”「近代の【軍艦】が近世の【城郭】の文化的遺伝子を受け継いだ存在だとするのなら――――――」
石田”「確か、松倉豊後守は現代にも観光名所として残る島原城を築城するほどの腕前だったな」
石田”「――――――その島原城は有明海に面している」
石田”「そして今、松倉豊後守はキリシタンの拠点であるルソン島攻略のために性急な艦隊編成に追われている――――――」
石田”「…………よし」
飛龍”「何が『よし』なんですか?」
石田”「……飛龍ですか」
石田”「いえ、たいしたことじゃありません」
飛龍”「――――――本当?」ジー
石田”「む」
飛龍”「…………提督」
石田”「…………心配するようなことは何もないから安心してくれ」
石田”「俺は死なない。何があっても皇国に帰らなければならない使命がある」
石田”「それに、『ヲシドリ』を独りにさせるわけにはいかないからな」
飛龍”「そう♪ それならいいんだ」
飛龍”「でも、もう無理はしないでくださいよ、提督?」
飛龍”「約束です。もし約束を破ったら『めっ』ですよ?」
石田”「わかっている。その時は反省文を艦隊全員に宛てて書いてやろう」
飛龍”「はい。しっかり見ていますから、私」
石田”「ところで、飛龍。もうだいぶ回復してきたから、もう看護に来る必要はないぞ?」
飛龍”「それこそ『めっ』ですからね、提督。今の私は提督の秘書艦ですから」
石田”「…………そうか」
二条城「…………飛龍さん」フフッ
二条城『では、男を立てるのはやはり女であり、それと同時に女の価値を決めるのは尽くした殿方次第というわけかしら?』
石田”『――――――男を堕落させるような女は社会のゴミだ。逆に、女遊びに溺れる男もひとでなしだ』
二条城『……たとえ、たとえ報われない想いだと悟っても、殿方の目指すもののために側に居続けても良いものなのでしょうか?』
石田”『その『殿方』と同じものを目指せばいいのではないか? “同志”となって同じものを見続けることが何よりの宝だと俺は思う』
二条城「本当は私と同じで――――――でも、あなたはずっとこらえてきて、そして、これからも殿方と共にあるのですね」
二条城「私もお二人を見習って、殿にとっての宝となれるように精進していきますわ」
二条城「――――――こんなイイ女、他にはいませんからね、殿? それに石田少将?」
二条城「ふふふ」ニコニコ
金木「…………金本提督、俺、ちゃんと【乱世】で頑張って生き抜いているよ」
金木「それで ようやく得た束の間の平和ってわけなんだけど――――――、」
金木「あなたの知り合いの石田少将ともうまくやれていて、本当に生きてる充足感が凄いんだ」
金木「俺、あなたからもらったこの菊の御紋がたっぷり入った【軍刀】にふさわしい男に少しはなれたかな?」
金木「………………フゥ」
金木「ま、俺も少しは剣の心得ってやつがわかってきたけど、【これ】はこうやって天守に飾っているだけだからなぁ…………」ハハハ・・・
金木「そういえば、今にして思うと、金本提督ってどことなく俺に似ていた気がするんだよなぁ…………」
金木「――――――『世の中には同じ顔の人間が3人はいる』っては言うけど、」
金木「その偶然――――――成金のきまぐれでこんな大層なものを貰えちゃうんだから、世の中ってわかんないもんだ」
金木「あ」
金木「………………」パカッ
金木「――――――【結婚指輪】か」
金木「なんで【こんなもの】を持ち合わせてたのかはわかんないけど、これももう1つの男の勲章として大層なものをもらっていたよな」
金木「“英れた雄”と書いて“英雄”ってわけでして、一人のオトコとしての名誉も一人の漢としての栄光も掴んでいながら、」
金木「会ったばかりの人間に2つの勲章を同時に渡してくる辺り、――――――器が違うな。俺はまだまだよ」
金木「それこそ今、俺の中でトレンドになってる太閤殿下のような――――――あ」
金木「――――――姫様」
金木「…………姫様はどうするつもりなんだろう、全てが終わったら?」
金木「俺、姫様とはまだ主従の関係を結んだわけじゃないし…………」
金木「石田少将も姫様のことをどう思ってるんだろう?」
金本「………………よし」ニヤリ
――――――【城主】として、ここは1つ、腕を振るわないとな!
金木「…………金本提督、俺、ちゃんと【乱世】で頑張って生き抜いているよ」
金木「それで ようやく得た束の間の平和ってわけなんだけど――――――、」
金木「あなたの知り合いの石田少将ともうまくやれていて、本当に生きてる充足感が凄いんだ」
金木「俺、あなたからもらったこの菊の御紋がたっぷり入った【軍刀】にふさわしい男に少しはなれたかな?」
金木「………………フゥ」
金木「ま、俺も少しは剣の心得ってやつがわかってきたけど、【これ】はこうやって天守に飾っているだけだからなぁ…………」ハハハ・・・
金木「そういえば、今にして思うと、金本提督ってどことなく俺に似ていた気がするんだよなぁ…………」
金木「――――――『世の中には同じ顔の人間が3人はいる』っては言うけど、」
金木「その偶然――――――成金のきまぐれでこんな大層なものを貰えちゃうんだから、世の中ってわかんないもんだ」
金木「あ」
金木「………………」パカッ
金木「――――――【結婚指輪】か」
金木「なんで【こんなもの】を持ち合わせてたのかはわかんないけど、これももう1つの男の勲章として大層なものをもらっていたよな」
金木「“英れた雄”と書いて“英雄”ってわけでして、一人のオトコとしての名誉も一人の漢としての栄光も掴んでいながら、」
金木「会ったばかりの人間に2つの勲章を同時に渡してくる辺り、――――――器が違うな。俺はまだまだよ」
金木「それこそ今、俺の中でトレンドになってる太閤殿下のような――――――あ」
金木「――――――姫様」
金木「…………姫様はどうするつもりなんだろう、全てが終わったら?」
金木「俺、姫様とはまだ主従の関係を結んだわけじゃないし…………」
金木「石田少将も姫様のことをどう思ってるんだろう?」
金本「………………よし」ニヤリ
――――――【城主】として、ここは1つ、腕を振るわないとな!
金木「…………金本提督、俺、ちゃんと【乱世】で頑張って生き抜いているよ」
金木「それで ようやく得た束の間の平和ってわけなんだけど――――――、」
金木「あなたの知り合いの石田少将ともうまくやれていて、本当に生きてる充足感が凄いんだ」
金木「俺、あなたからもらったこの菊の御紋がたっぷり入った【軍刀】にふさわしい男に少しはなれたかな?」
金木「………………フゥ」
金木「ま、俺も少しは剣の心得ってやつがわかってきたけど、【これ】はこうやって天守に飾っているだけだからなぁ…………」ハハハ・・・
金木「そういえば、今にして思うと、金本提督ってどことなく俺に似ていた気がするんだよなぁ…………」
金木「――――――『世の中には同じ顔の人間が3人はいる』っては言うけど、」
金木「その偶然――――――成金のきまぐれでこんな大層なものを貰えちゃうんだから、世の中ってわかんないもんだ」
金木「あ」
金木「………………」パカッ
金木「――――――【結婚指輪】か」
金木「なんで【こんなもの】を持ち合わせてたのかはわかんないけど、これももう1つの男の勲章として大層なものをもらっていたよな」
金木「“英れた雄”と書いて“英雄”ってわけでして、一人のオトコとしての名誉も一人の漢としての栄光も掴んでいながら、」
金木「会ったばかりの人間に2つの勲章を同時に渡してくる辺り、――――――器が違うな。俺はまだまだよ」
金木「それこそ今、俺の中でトレンドになってる太閤殿下のような――――――あ」
金木「――――――姫様」
金木「…………姫様はどうするつもりなんだろう、全てが終わったら?」
金木「俺、姫様とはまだ主従の関係を結んだわけじゃないし…………」
金木「石田少将も姫様のことをどう思ってるんだろう?」
金本「………………よし」ニヤリ
――――――【城主】として、ここは1つ、腕を振るわないとな!
金木「…………金本提督、俺、ちゃんと【乱世】で頑張って生き抜いているよ」
金木「それで ようやく得た束の間の平和ってわけなんだけど――――――、」
金木「あなたの知り合いの石田少将ともうまくやれていて、本当に生きてる充足感が凄いんだ」
金木「俺、あなたからもらったこの菊の御紋がたっぷり入った【軍刀】にふさわしい男に少しはなれたかな?」
金木「………………フゥ」
金木「ま、俺も少しは剣の心得ってやつがわかってきたけど、【これ】はこうやって天守に飾っているだけだからなぁ…………」ハハハ・・・
金木「そういえば、今にして思うと、金本提督ってどことなく俺に似ていた気がするんだよなぁ…………」
金木「――――――『世の中には同じ顔の人間が3人はいる』っては言うけど、」
金木「その偶然――――――成金のきまぐれでこんな大層なものを貰えちゃうんだから、世の中ってわかんないもんだ」
金木「あ」
金木「………………」パカッ
金木「――――――【結婚指輪】か」
金木「なんで【こんなもの】を持ち合わせてたのかはわかんないけど、これももう1つの男の勲章として大層なものをもらっていたよな」
金木「“英れた雄”と書いて“英雄”ってわけでして、一人のオトコとしての名誉も一人の漢としての栄光も掴んでいながら、」
金木「会ったばかりの人間に2つの勲章を同時に渡してくる辺り、――――――器が違うな。俺はまだまだよ」
金木「それこそ今、俺の中でトレンドになってる太閤殿下のような――――――あ」
金木「――――――姫様」
金木「…………姫様はどうするつもりなんだろう、全てが終わったら?」
金木「俺、姫様とはまだ主従の関係を結んだわけじゃないし…………」
金木「石田少将も姫様のことをどう思ってるんだろう?」
金本「………………よし」ニヤリ
――――――【城主】として、ここは1つ、腕を振るわないとな!
いよいよ、本編の尺よりも超長かった超番外編1も終了となります。
あれもこれも欲張りすぎてだいたいのことを読者の大半が忘れていることでしょうが、
いよいよ終盤――――――【寛永時代】に起きた最大の反乱である【島原の乱】勃発となり(ただし、背景やそれに至る過程は完全に独自設定)、
最終的には石田司令はどのような運命を辿ることになるのか――――――?
元々、超番外編1は2014年12月23日 以前の某日に起きた出来事という位置づけであり、
本編:第8話 12月23日 -三笠公園にて- 以前の、第7話W 鎮守府の守護神 -侵食される鎮守府- の期間中での物語である。
伏線となるものはすでに本編の各所に配置してきており、その内容や結果については超番外編を読まずとも窺い知れることだろうが、
元々、このスレは【物語風プレゼン】であり、物語をしながらプレゼンし、プレゼンしながら物語を展開するテーマで始めた二次創作なので、
結果(=プレゼン)だけを提示して過程(=物語)を極端に省くことは嫌だったので性懲りも無く続けさせてもらっています。
いったい何度このスレで同じ警告を出してきたのか…………。
しかし、それも今回か次回の投稿で完結となります。
以降は、今後の【艦これ】の動静を見守りつつ、提案内容を吟味して【艦これ】やその他の将来を祈るのみである。
――――――――――――――――――
超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢 -この命 果ててが御守りします!- の構成について 再掲
ダラダラと続いているように感じる超番外編1は起承転結の4段落構成であり、2章 使っての前後編で1段落としている。
なぜこんなにも長いのかはクロスオーバー先のブラウザゲームのステージ構成に因むところが大きい。
序……序章:禁断の【城娘】との出会いと【乱世】の世界
起……第1章・第2章:唐津での話
承……第3章・第4章:天草での話
転……第5章・第6章:霧島での話
結……第7章・第8章:島原での話
あくまでも主人公は石田司令なのだが、同時に『【城プロ】を二次創作したらどう世界観の辻褄合わせするか?』ということもテーマにして書いているので、
彼と出会ったことで【乱世】を生き抜く更なる意志を固めることになった金木青年の成長物語の体裁をとることになった。
それによって、金木青年からの視点が多く描かれることになり、他者から見た石田司令の人物像も浮き彫りとなっていく。
また、【城主】と【提督】、【城娘】と【艦娘】という似て非なる要素の交流を経てこれまでの常識や心情が移り変わっていく様子が描かれることになった。
蛇足と言えばそれまでの超番外編だが、あらかじめ筆者自身がくどいぐらい書いているので重々承知であり、
本編:物語風プレゼンPart2で提案予定の【深海棲艦運用システム -革命編-】に必要な物語中の動機や背景として必要なのでご了承ください。
――――――――――――――――――
※プレゼンターからの提案
おそらくこれが現状の【城プロ】に対する最後の提案となると思います。
内容はズバリ――――――、
――――――最後の合戦場:【現代】
・ストーリー
数々の時代を巡り、【乱世】の果てへと辿り着いた【青年】は城娘の精鋭たちを率いて、
【現代】で本格的な略奪と破壊活動を行う 凶悪な【兜形生命体】の軍団との最終決戦に挑む!
・特徴
最終決戦だけに戦闘は敵戦力の充実もあって苛烈であり、時代の移り変わりもあって地形もかなり偏っているので配置が難しい。
獲得できる【領土】もまた特殊なものであり、北に山地形、南を海地形に挟まれた平地地形の【大都市】での攻防が繰り広げられる。
ドロップする城娘は全て現存・保存がなされている【城郭】がモデルの城娘であり、
性能そのものは【ベーシック版】として本来の戦闘拠点である【城郭】としての性能が抑え目の状態で手に入る。
※【ベーシック版】について――――――、 ※SDガンダムGジェネレーションシリーズのベーシック機に倣う
【現代】に現存する【城郭】には当然ながら【乱世】のように武装は施されておらず、中には修復が不完全な状態で保存されているものもいる。
よって、戦闘能力は旧時代の遺産として扱われているのでかなり低い――――――時代性ゆえか【耐久】【防御】だけはかなり高い。
例)大阪城の場合……従来の【近代改築】とは こう違う。
A、大阪城(ベーシック)―――【改築】――→ 大阪城(通常版)
a、石山御坊 ―――【近代改築】――→ 大坂城 ――→【近代改築】――→ 大阪城(通常版)
――――――城娘?
戦艦:三笠 属性:海
三笠公園のモニュメント。近代以降の【城郭】の代わりを務めた【軍艦】の中で【現代】に現存する唯一の個体であり、
【軍艦】なので当然ながら地形適性の面では汎用性に欠けるのだが、
その代わり【範囲】【攻撃】【防御】が既存の城娘の全てを超越しており、たいていの敵をアウトレンジから一撃で倒す破壊力を誇る。
しかしながら、ご想像の通り 運用コストが馬鹿にならず、【乱世】水準の運用ではあっという間に資源が枯渇してしまう。
それでも、最初は非武装の【ベーシック版】で手に入るので【改築】して在りし日の能力を取り戻さないとそこまでの強さは発揮できない。
宮殿:皇居 ← 江戸城
江戸城の実装が遅い理由はおそらくはこの繋がりがあるせいなのではないだろうか?
もちろん、恐れ多くて実装は夢のまた夢だろうが…………。
その他、現存する【城郭】は全てベーシック版でドロップするものとする。本来の【近代改築】に必要な練度から通常版への【改築】が可能となる。
超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢 -この命 果てても私が御守りします!- 第8章
――――――終わりなどどこからでもやってくるものだ。呆気ないぐらいに。
どれだけ栄華を極めていようが、人生が『山あり谷あり』と形容されるものである以上、
山を越えた後に待っているのは谷へと降りていく下り坂しかない。
あるいは、見渡せば、更なる高みへ至る道が用意されているのかもしれない。
しかし、それはつまり、ようやく登り切った山道もまだまだ途中に過ぎないという事実であり、
見上げれば、雲を突き抜けた先にその頂上が姿を覗かせるのだ。
それに気がついた時、ようやく辿り着いたこの場所にて決断を迫られる。
――――――ここで終わりにして降るか、更なる苦しみを背負う覚悟をして登り続けるか、だ。
なぜなら、そこにいつまでも居続けることはできないからだ。
そこは自分以外 何も存在しない山道の途上であり、雨風を凌ぐ場所もない空虚な空間だろう。
また、進退の決断が遅れれば遅れるほど、諦めて降るにしても道中で水と食糧も尽きてしまう危険性がある。
あるいは、己の限界が来て、ついには道中で力尽きて遭難してしまう可能性も十分に考えられる。
――――――祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
かつて栄華を誇っていた者たちは永遠にその権勢を保つことはなかった。
栄華への道には必ず興隆があり、躍進の後の栄華に至れば、その後には必ず衰退と滅亡への道が敷かれていた。
それは何者にも訪れるこの世の理であった。
それは国家や神話も例外ではない。永遠などどこにも存在しないのだ。
いや、――――――永遠は確かに存在する。
――――――国 破れて 山河 在り
有為転変の世の中と変わらない自然とを対比した杜甫の詩であるが、
それでも、興亡一体の泡沫の夢のようなこの世の中でも確かに永遠は存在していた。
そう、そこに永遠はあるのだ。――――――誰も気づいていないだけで。
――――――永遠は存在する。
――――――【島原の乱】勃発前の話!
――――――島原:雲仙岳
脇本城「ありえない……。【城娘】でも【兜】でもない存在に私たちが――――――」 ――――――大破!
月山富田城「うっ……、難攻不落のこの私が……」 ――――――大破!
福居城「勇猛果敢の我らが束になっても敵わないというのか……!?」 ――――――大破!
那古野城「やるときゃやる――――――それが信条だったのに、久々の戦でこれか。これじゃただのうつけだ~」 ――――――大破!
能島城「海からちょっと離れた山の中まで出張れないことをずっとかっこわるいって思ってたけど、出張ってこんなんじゃ…………」 ――――――大破!
鶴ヶ岡城「…………すないスケ様、お逃げを! あれはまさしく鬼! 悪鬼です! どうか 無事、逃げ切ってください!」 ――――――大破!
石田”「…………俺は逃げる! たとえどれだけ惨めであろうとも果たさねばならぬ使命が俺にはあるッ!」 ――――――ボロボロの虚無僧!
石田”「くっ、……すまない!」
タッタッタッタッタ・・・
脇本城「どうかご無事でいてください……」
那古野城「さて、これからどうしようか――――――?」
魔人”「あげゃげゃげゃ!」 ――――――禍々しさを放つ十文字槍を片手に狂気を放つ異形!
福居城「さすがに覚悟を決めねばなるまいな……」
鶴ヶ岡城「……はい」
月山富田城「……今度こそ真の鬼神の如し働きを見せましょう!」ギリッ
能島城「海を制する者は世界を制するんだ……! だから、海賊王は負けないんだぜ!」
魔人”「あげゃげゃげゃ! はい、残念! 鬼さん、こっち!」ヒヒヒィイン!
パカラパカラパカラ・・・!
福居城「なっ、馬?! 抜かれた――――――!?」
月山富田城「こんな山道で馬を走らせるだなんて!?」
能島城「ここが海の上だったらぁ――――――!」
那古野城「ええい! 硫黄の霧さえ何とかできれば「巨大化」して戦えるのに…………!」
鶴ヶ岡城「あ、待って! すないスケ様は、すないスケ様は――――――!」
タッタッタッタッタ・・・!
パカラパカラパカラ・・・!
石田”「!」
魔人”「これで鬼ごっこはおわり♪」ニッコリ
石田”「こ、これまでか……!」ゼエゼエ
魔人”「この俺に初めて『痛ぁ~い!』思いをさせてくれたお礼をしないとねぇ~?」
魔人”「それに、俺の計画をここまで邪魔してくれたのもあんたが初めてなんだ~♪」
魔人”「御首獲ったら綺麗にしてとっておかないと~♪」ニコニコ
魔人”「あげゃげゃげゃ!」
石田”「…………すまない。どういうわけか【西暦23世紀】の困った連中のしでかしたことの後始末もやらなければならなかったのだが、」
石田”「所詮、俺の器などここまでということか……」ガクッ
魔人”「お? おお~?」チョンチョン
石田”「うっ……」アセタラー ――――――首元に十文字槍が軽く触れる。
魔人”「あぁんれ? よっく見たらあんたってあの“サル”の隣にいた“キツネ”――――――」
「――――――!」シュッ
石田”「あ」
魔人”「ガハッ」ザシュ
魔人”「ぬぁにぃ……!?」
ヒヒヒィイン! ドサッ! ――――――落馬!
石田”「なにっ!?」
あさひ姫「…………一度は大陸制覇を夢見て侵略したけれども、」ゼエゼエ
魔人”「あぁれれ……? なんで死んでないんだぁ~、あんたぁ?」
あさひ姫「かつての天下人として、あなたのような鬼子を海外に解き放つにはいかない!」 ――――――背中に乗っかり、刃で魔人の背を貫く!
魔人”「ダメじゃないか、死んだ奴は死んでなくちゃ~♪」 ――――――だが、急所を貫かれてもまるで動じていない!
あさひ姫「うっ、くぅう……」ヨロッ
ゴトン!
石田”「――――――“志那都神扇”!」
あさひ姫「石田様!」
石田”「!」ダッ!
魔人”「おらよっとぉ!」ムクッ!
あさひ姫「きゃああああああああ!」ドン!
魔人”「さぁてっと! そうか、“サル”と“キツネ”がお揃いか! これはぜひとも――――――」
石田”「とどめだ、外道ぉおおおおおおお!」ブン! ――――――石田正宗を投げつける!
魔人”「っと」カン! ――――――得物の十文字槍でわけもなく弾いてしまう!
魔人”「無駄無駄~。ただの人間のあんたに俺を傷つけることは――――――あ」
石田”「皇国の神風よ! 蒙古を退けたがごとく、海外へと解き放たれようとしている この邪なる悪鬼を薙ぎ払え!」\ ◎ /
石田”「はああああああああああ! 目障りなのだよ!」 ブンブン! ――――――“神扇”を力強く扇ぐ!
ピュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!
魔人”「!?!!!?!?」
魔人”「あげゃ!? こ、今度は、か、身体が溶けていくぅうう!?」
あさひ姫「凄い…………」ドクンドクン
石田”「あぁ…………」ドクンドクン
ヒヒヒィイン!
魔人”「“百段”……、あは、あはは、あげゃげゃげゃげゃ!」
魔人”「あげゃげゃげゃげゃ! あげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃ…………」
魔人”「あげゃ」
魔人”「」
ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・・・
石田”「…………終わったのか」
あさひ姫「悪しき魂の波動はもう感じられません……」ゼエゼエ
あさひ姫「あぁ…………」クラッ
石田”「お、おい!」ギュッ
あさひ姫「あぁ……、石田様……。私は石田様をお守りできたのですね……?」ゼエゼエ
石田”「……すまなかった」ギュッ!
石田”「…………俺が愚かだった。『俺なら全てうまくやれる』と自惚れていた!」
石田”「結局 俺は自身の命さえ守ることができず、多くの犠牲を払ってしまった…………」
あさひ姫「…………誰も犠牲になってませんよ、石田様」スッ
石田”「!」
石田”「そうか、そうだった……」
――――――名護屋城 必殺技:人生如夢
石田”「その能力のおかげで、辛うじて皆の命を繋ぎ止めることができたのか」
あさひ姫「はい……」
石田”「だが、お前は麓の小浜からここまで“神扇”を届けるために――――――」
あさひ姫「………………」
石田”「なぜそこまで……。おとなしくしていれば…………」
あさひ姫「石田様に、生きていてもらいたかったから……」
石田”「…………気力だけでここまで来たのか」
石田”「わかるか? ――――――俺の手の温もりか?」
あさひ姫「はい……」
あさひ姫「わかりますか? ――――――私の手の温もりが?」
石田”「いや、全然だ。寒空の下なのか、人の生き血を吸う刃のように冷たいぞ……」
あさひ姫「はい…………」
石田”「ここは寒い。麓の温泉に戻ろう。そこで身体の芯まで温まるんだぞ」
あさひ姫「はい、石田様………………」
石田”「しっかり捕まっていろ。もう急ぐ必要は何もなくなったのだからな……」 ――――――おんぶ!
あさひ姫「ああ……、石田様の背…………」
石田”「よし、“神扇”もちゃんと――――――」キュッキュッ
石田”「…………そうだ」スッ
あさひ姫「…………?」
石田”「これを持っていろ」\勅命/
あさひ姫「あ…………」
石田”「お前が“神扇”をここまで持ってきて俺の命を繋いでくれたんだ」
石田”「なら、これまで俺の命を繋いできてくれた扇をお前に託そう……」
あさひ姫「ありがとうございます…………」パシッ
石田”「落とすなよ? ちゃんと握っているんだぞ」
あさひ姫「はい………………」ギュッ
石田”「よし。では、降りるぞ」
スタスタスタ・・・・・・
石田”「……寒いな」ハアハア・・・
あさひ姫「………………」\勅命/
石田”「寒くはないか? 寒いよな」
あさひ姫「………………」\勅命/
石田”「……急に重たくなった感じがするな。それになんだか俺の背中も冷たくなってきたな」ハアハア・・・
あさひ姫「………………」\勅命/
石田”「やれやれ。なんてことのない山道だと言うのに、氷嚢を担いで山間を歩かされている気分だ」
あさひ姫「………………」\勅命/
石田”「だが、これで【島原の乱】の元凶を絶つことができたのだ。あとは、じっくりと雲仙岳の砲撃を行えば――――――」
あさひ姫「………………」フワッ......\勅命/
石田”「む」
......\勅命/ パサァ
石田”「………………そうか」
あさひ姫「………………」
石田”「お前もまた俺の過去の中で生き続けるのだな……」
あさひ姫「………………」
石田”「俺は歩みは止めないぞ……」
あさひ姫「………………」
石田”「俺は生きる。生きて――――――」
石田”「………………………………」
石田”「…………………………」
石田”「……………………」
石田”「………………」
石田”「…………」
石田”「……」
スタスタスタ・・・・・・・・・・・・\バリィィイン/
石田”「…………」ピクッ
石田”「…………」
石田”「…………フッ」
石田”「そそっかしいのだよ、貴様は」フフッ
あさひ姫「………………」
――――――――――――
―――――――――
――――――
―――
――――――冬
――――――肥後国 天草:富岡城
志摩守「…………残念だが、これといったものは見つからなかった」
志摩守「申し訳ござらぬ、【城主】様」
金木「いやいや、志摩様。俺は気にしてませんから」
金木「俺としても、関東の城娘が全然【築城】できないでいますから…………」
――――――仲睦まじき稀人3人が遥拝す、関東にあれます太閤の島に向かうべし。
金木「しかし、“生まれながらの将軍”様の耳にも入っているらしいじゃないですか、これ」
志摩守「うむ。それで上様の上使が江ノ島に向かったようなのだが、これといったお告げは得られなかったそうだ」
金木「そうだ。今更なんですけど――――――、」
志摩守「うむ」
金木「――――――『誰が』向かうべきなんですか、これって?」
金木「やっぱり状況から考えて、石田少将に行ってもらわないと意味がないのかな?」
志摩守「それについてはそうとしか考えられないが…………」ウーム
金木「にしても、関東にある島ってそんなにないと思うんだけどな…………」
金木「まさか、沖合の離島までその候補に入っていたらどうしよう?」
志摩守「と、言いますと?」
金木「実は、江戸の真南にずっと渡っていくと小笠原諸島って島がありましてね?」
金木「もしかして、『太閤の島』っていうのは、太閤殿下が“日輪の子”として被っていた兜とかの太陽のイメージなのかな?」
金木「つまり、“太陽”の連想からまだ見ぬ南の島――――――」
志摩守「それは本当に『関東』と考えていいのか?」
金木「あ…………、そこで引っかかるのか」
金木「う~ん。一応、【俺の時代】では東京都の扱いだから関東――――――離島は離島だな」ハァ
志摩守「それに、江戸の将軍様も“東照権現”――――――同じく“太陽”が象徴ということになるぞ?」
金木「うう~ん。そうなると、それは『将軍』であって『太閤』ではなくなる…………」ムムム・・・
志摩守「江戸のご意見番たちもあれこれ知恵を絞ってくれたようだが、やはり答えは得られなかったようだ」
金木「でしょうね……」
金木「第3ヒントの『仲睦まじき稀人3人が遥拝す』ってところが一番の謎ですから」
金木「幕府お抱えの神官が『稀人』の解釈で頭を悩ませてる光景が浮かんできますよ」
志摩守「うむ。ここが一番に理解できない」
志摩守「だが、【今】より遙かなる【時の彼方】から来た【城主】様ならば理解できることがあるのではないか?」
金木「俺もこの神託についてずっと考えてはみました」
金木「でも、考えれば考える程にわからなくなる――――――考えたって無駄なんじゃないかって思うぐらいに」
金木「で、気づいたんです」
金木「結局、実際に行くしかないんですよ、これだと思ったところは全部! 虱潰しに探し回るのが一番なんです」
金木「『向かうべし』の一文のどこに『それ以外の場所に向かうな』なんて書いてありました?」
金木「あーだこーだ考えて確かめずにいる――――――それが一番の間違いなんじゃないかって俺は思ってるんです」
志摩守「なるほど。一理ある」
金木「ですから、俺はいずれ石田少将を伴って関東へ行ってみようと思ってるんです」
金木「それまではそんなことを考え続けて時間を無駄にするより、初めて迎えたこの冬をどう過ごすのかに力を入れますよ」
金木「もちろん、――――――旅立つのは【島原の乱】を解決してからなんですけどね」
志摩守「そうか。【城主】様もいずれは旅立っていくのだな……」
金木「…………志摩様」
志摩守「いや、今更 この老いぼれに気を遣う必要はない。儂は喜んで送り出すつもりだから気に病むな」
金木「はい」
志摩守「それで、そうだったな。その【島原の乱】なのだが――――――」
金木「…………!」ゴクリ
――――――肥後国 天草:萬紫苑城
金木「ああ やっと帰れたぁ…………」 ――――――天守:ペントハウスに帰還!
伊賀上野城「毎度毎度 殿を運んでいるのは拙者なのですがね」
金木「いやいや、さすがは伊賀忍だぜ! 本当に優秀で助かってるぜ!」
伊賀上野城「もったいなきお言葉……」ホッ
金木「さて、これから伊賀忍はどうするんだ? 俺はクリスマス――――――あ、いや、天皇誕生日のパーティの準備をしなくちゃな!」アセアセ
伊賀上野城「おお……、これは意外……!」
金木「意外でも何でもないって。今から200年後余りには武家社会は終わりを告げて王政復古するんだし」
金木「電子辞書と今 使われている暦の対応が間違ってなければ、12月23日は【俺の時代】の天皇陛下の誕生日だから国民として祝わないとな!」
金木「(嘘だよ! ケータイのカレンダーなんて何度もタイムスリップして合わなくなっているから、)」
金木「(――――――俺にとって『いつが12月23日か』なんてのは俺の気分で決まるんだよ!)」
金木「(それに、【この時代】で作られている暦が電子辞書のものと本当に一致しているのかもわからないし、いまいち信用してないんだよな……)」
金木「(だって、テレビなんてないし、街に行けばクリスマスセールみたいなわかりやすい季節の催しなんてないんだぜ?)」
金木「(基本的に、朝日と共に目覚めて、日が落ちるのに合わせて眠りに就く生活が【ここ】では普通なんだからさ?)」
金木「(だから、俺がクリスマスパーティしたいと思ったらその日が12月24日になるんだよ! ――――――以上!)」
金木「あ」
金木「…………いや、待てよ?」
伊賀上野城「それでは、私はこれにて」シュッ
金木「ああ。おつかれ」
金木「…………だよな? だよな?」
――――――キリシタンならクリスマスを祝わないはずはないよな?
金木「ということは、『正確な暦を知っている』ってことになるのか?」
金木「そういえば、最終的に【乱】の指導者になったのは暴動が起きた島原の人間ではなく、」
金木「――――――天草四郎時貞ってやつだったよな」
金木「確か、電子辞書によれば――――――、生まれが1621年あるいは1623年」ピピッ
金木「めちゃくちゃ若っ!? 【乱】の発生が1637年なんだから多く見積もっても20歳足らずで指導者かよ?!」
金木「何か特徴はないか――――――生まれながらのカリスマ性があり、大変聡明で、慈悲深く、容姿端麗で女が見たら一目惚れ」
金木「…………何か無性に腹立つな」ムスッ
金木「まあいい、それで? 小西行長の遺臣:益田甚兵衛の子として母の実家である天草諸島の大矢野島で生まれたとされる」
金木「――――――大矢野島か。上島の北にある天草諸島で3番目に大きい島だったな」
金木「でも? 長崎出身だったり、大矢野島に近い九州:熊本の宇土郡の出資という説もあり、出生地ははっきりしない」
金木「ううん? 何だか天草の出身って感じがしないんだけど……」
金木「けど、手掛かりは掴めたな」
金木「益田甚兵衛ってやつを探せばいいんだな? そこに天草四郎はいる――――――あれ、それじゃ“天草四郎”っていうのは通称なのか?」
金木「普通に考えて、 益田甚兵衛の子:“益田四郎時貞”という名になると思うんだけど…………よくわかんねえや」
金木「ともかく、今のうちに会っておくのがいいかもしれないな」
金木「(話には聞いてはいたけど、【乱】発生当時に20歳にもならない子が総大将にならなくちゃならないなんて――――――!)」
金木「(基本的に、こういった反乱っていうのは結束の中心となる象徴さえなくなれば自然崩壊する!)」
金木「(――――――そうだ! それがいいかもしれない!)」
金木「(信仰の自由はあって然るべきだけど、公共の福祉に悖ることだけはなんとしてでも止めさせないと!)」
金木「――――――よし!(どうせ【乱】の後だって、マリア観音様を奉る 隠れキリシタンが生き残り続けているんだからさ!)」
金木「これで行こう!(――――――救える命は救ってやるさ! 『全か無か』じゃない! 『有か無か』だ!)」
――――――戦わずして勝つ! 百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり!
――――――肥前国 島原:原城址
原城「あ」
石田”「しばらくぶりだな」(虚無僧)
原城「お待ちしておりました」
石田”「――――――会えたか?」
原城「いえ」
石田”「ルソン島への偵察部隊が派遣されるな」
石田”「(そして、ルソン島への先遣部隊が派遣された同年に小浜温泉で急死を遂げるのだったな)」
原城「はい。実質4万石の島原で独自の検地を施して10万石相当の重税を課して、もはや見るも無残な――――――」
石田”「安心しろ。【乱】の前には豊後守はこの世になく、その嗣子:勝家も【乱】の責任者として斬首される運命だ」
石田”「島原の暴君:松倉は滅亡するぞ。仇はそれで討たれる」
原城「ですが、それでは意味がありません! 【乱】が起きてしまっては――――――いえ、今も島原の民が苦しめられているのです!」
原城「信じる者は救われる――――――その一念で日々 苛政を耐え忍んでいる衆生をどうして見捨てられましょうか?」
石田”「いや、一端のキリシタンを気取るのなら、その理屈はおかしい」
原城「え」
石田”「キリシタンだから殺されるのだから、キリシタンでいることをやめればいい。――――――単純明快ではないか」
原城「それは…………」
石田”「豊後守の苛政に関しては幕命もあって干渉はできないが、やり方ならいくらでもあるぞ」
石田”「俺は【未来】の戦略戦史家として、こういった宗教絡みの反乱についてもひと通り研究してきたが、」
石田”「そこでわかったことが1つある」
石田”「天は自ら助くる者を助く――――――救われないのは確実にやり方が間違っている証拠だ」
原城「え……」
石田”「この世が“天にまします我らの主”によって創られたのなら、必ずや救われるための手段や方法というものが存在するはずなのだ」
石田”「なぜなら、『信じる者は救われる』ことを明言しているのだからな」
石田”「実際に旧約聖書を見ても――――――どう考えてもオカルトの類だし、神のほうが悪魔よりも断然 人間を殺しているのだが、」
石田”「それでも、方舟の作り方をはじめとして具体的な方法や戒めを示してユダヤ民族を繁栄に導いているのだからな」
原城「はい……」
石田”「要するに、お前たちキリシタンが苦しんでいるのは“主”が創りあげたこの世の理の追究をしないせいだ」
石田”「単純に言えば、ただ単にお前たちキリシタンが怠惰だったから“自分たちの主”によって裁かれているに過ぎん」
原城「そんな…………!」
石田”「考えてもみろ。『聖書は神そのもの』とは言うが、――――――なら聖書を使って石をパンに、水をワインに変えてみせろ」
原城「………………」
石田”「そういうことだ。あくまでも お前たちの宗教の経典なんていうのは“主”が創りあげた この世の理に関する入門書に過ぎん」
石田”「あとは、“主”がイエス・キリストなるユダヤ教徒の宗教改革者を通じて伝えたかったことを大事にして、」
石田”「この世をよりよく生き抜く知恵を身に付けて幸せになっていけばいい――――――俺はそう解釈している」
原城「………………」
石田”「だから、俺は言う」
――――――聖書が全てだと思い込んでいるのならさっさと死ね。そうすれば 今の苦しみからは解放されるぞ。
石田”「自殺はダメだが、殉教には死後に天国で名誉が与えられるそうだからな」
石田”「だったら、今の迫害の苦しみを“主”に感謝して大いに喜べ。殉教する誉れが目の前にあるんだぞ」
原城「………………」
石田”「まあ、俺は強制しないし、干渉する気はない。――――――余所者だからな」
石田”「だが、俺としては聖書の数々の故事に今の状況を打破するやり方がいくつも示されていると読み取っている」
石田”「どこまで貴様が聖書を読み込んでいるのかは知らないが――――――、」
石田”「――――――愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ」
原城「あ」
石田”「…………知らなかったばかりに救える命が救われないのは死んでも死にきれないぞ」ブルブル・・・
原城「虚無僧さん。もしかして、あなたも――――――」
石田”「俺は中世の暗黒時代を創りあげたキリスト教の大罪を許すつもりはないが、その伝統や教理には敬意を表す」
石田”「だが、現実の苦しみを救うための力など聖書の紙束にはないことは覚えておけ」
石田”「それはあくまでも先人たちの血と汗と涙の結晶――――――その貴重な体験談を無駄にしないように真にやれることがあるのではないか?」
原城「はい!」
石田”「ではな。『豊後守に会えなかった』ということを聞いた以上は長居するつもりはない」
原城「あ、待ってください!」
石田”「何ですか?」
原城「どうして……、どうして虚無僧さんはキリシタンにここまで手を差し伸べてくださるのですか?」
石田”「呆れたものだな。キリシタンであろうと、仏教徒であろうと、何教を信じていようが関係ない」
――――――お前たちが皆等しく皇国の民だからだ。
原城「…………『皇国の民』?」
石田”「それに、真の宗教者ならば、その全てが『衆生済度』に根ざしたものだと思うが、違うのか?」
原城「――――――『衆生済度』?」
石田”「『生きとし生ける全ての者たちに遍く救いをもたらそう』という志の高さだけはやり方は違っても普遍的なものだと考えているのだがな」
原城「あ、はい! 聖書にも『汝の敵を愛せよ』とあります! あります!」
石田”「だから、俺は真の宗教者たろうする者ならば何教であろうと信頼できる」
石田”「だが、武力行使だけは許さない! どんな理由があろうとも公共の福祉に悖るやり方は容認できない」ギラッ
原城「はい。私も武力行使だけは何が何でも避けたいと思います」
石田”「もういいか? 俺は行くぞ。もう二度と会うこともないだろう」
原城「あ…………」
原城「これから、どうなさるのですか?」
石田”「俺は松倉豊後守の会う必要がある」
原城「ですが! 豊後様は誰とも会わないと――――――」
石田”「やり方ならいくらでもある。それを考え抜くのだな」
――――――そう、俺は1つだけ松倉豊後守について確実に知っていることがある。【未来】から来た人間の特権でな。
――――――天草諸島:大矢野島
金木「ここが天草の玄関口:大矢野島か」
金木「天草上島との間に何やらいっぱい島があって綺麗だったな。ああいうのを風光明媚って言うんだろうな」
佐和山城「ここはかつて天草五人衆という国人衆の一角である大矢野氏の縄張りだった」
佐和山城「九州征伐の後に太閤殿下に服従した天草五人衆ではあったが、」
佐和山城「仕置き後に肥後南部を治めることになった小西行長の宇土城の城普請を拒否して反乱を起こしたのだ」
佐和山城「これが天草国人一揆と呼ばれるものだ」
金木「ええ!? 天草って【この時代】以前から反乱が起きてるの!?」
佐和山城「いや、正確には当初 肥後国に入った佐々成政の失政から起きた肥後国人一揆の余波で天草国人一揆が誘発されたといったところか」
金木「ええ!? 誘発って――――――天草ってそういう気質なのかな?」
佐和山城「さあな。で、この肥後国人一揆の後に加藤清正が肥後北部を治めることになった」
金木「ああ……、こうして小西行長と加藤清正の領国の境界線争いが起こるわけか」
金木「けれど、今や関ヶ原の戦いに散った宇土城の小西行長もいなければ、東軍に与した熊本城の加藤清正も肥後にはいない」
佐和山城「ああ。まんまと天下人に食わされたな」
金木「熊本城と宇土城は元気かな? 霧島帰りに見送ってくれたんだけど」
佐和山城「そうだな……。かつての因縁から微妙な関係が続いているな。――――――それは私もだがな」
金木「あれ?」
佐和山城「どうした、殿?」
金木「おい、あれって――――――」
M:宇土城「あ」
金木「宇土城じゃないか! どうしたんだ?」
M:宇土城「あ、これは【城主】様。ど、どうしてこちらに……?」アセタラー
金木「いやさ、大矢野島に人探しに来てるんだ」
M:宇土城「…………『人探し』ですか?」
佐和山城「うむ。どうだ、宇土城。この辺の地理には明るいだろう?」
M:宇土城「え、ええ。それはそうですが……」
金木「ねえねえ、宇土城が小西行長の城って言うんだったらさ?」
金木「――――――その遺臣:益田甚兵衛って人、知らない?」
M:宇土城「?!」ビクッ
佐和山城「知っているようだな。まあ当然か」
M:宇土城「え、えと、確かに益田甚兵衛なる者は存じておりますが、それがどうして【城主】様がお会いになろうとしているのですか?」アセタラー
金木「いやさ、――――――今、冬じゃん」
M:宇土城「ええ……。年の瀬も近いことですし、年末年始は忙しくなりそうです」
金木「だからさ、――――――クリスマスパーティ、開きたいんだけど」
M:宇土城「?!」
M:宇土城「あ」チラッ
佐和山城「………………」ジー
M:宇土城「ああ…………」コホン
M:宇土城「1つ、お訊ねしてよろしいでしょうか?」
金木「何? 参加したいの? 確か小西行長――――――っていうか、見たまんま南蛮風だし、招待するよ?」
M:宇土城「あの……、【城主】様を“天の御遣い”と見込んでお願いしたいことがあるのです」
金木「それともクリスマスプレゼントかな? いいよ、話しやすいところに移ろう」
M:宇土城「お願いします」
金木「よし、佐和山城。行くぞ」
スタスタスタ・・・・・・
佐和山城「…………この展開の良さ、さすがは殿としかいいようがないな」
スタスタスタ・・・・・・
金木「へえ、【現代】と比べたらどこも同じ田舎だと思っていたけれど、ここはここで天草上島とも下島とも違った営みなんだな」
金木「あ、それに何だか、年越しの準備なのかな? 雪が降る中でも活気が出ているな」
佐和山城「『年越し』って、ずいぶんと気が早いものだな、殿」
金木「あ……(確か和暦っていうのは1ヶ月と2週間ぐらい西暦とずれてるんだったっけ)」
M:宇土城「そうなんです。領主である志摩守が天草に入ったと聞いて最初は警戒していたのですが、」
M:宇土城「圧政を改めてくださったおかげで、今年からはいつもよりも豪勢に年が越せるということで大喜びなんです」
金木「そっか。大矢野島までは来たことなかったけど、ちゃんと志摩様の改革が行き届いたんだ」
M:宇土城「…………もしかして【城主】様が何かしてくださったのですか?」
金木「まあ、人に自慢できる話でもないんだけどね?(――――――やってくれたのはだいたい石田少将だからね)」
佐和山城「我々は志摩守の領地である唐津に滞在していたのだ」
M:宇土城「!」
M:宇土城「な、なるほど。合点がいきました(そっか。それなら――――――)」
金木「まあ、税制改正はいいんだけど、キリシタン弾圧だけは幕命だから手を緩めることができなかった。勘弁してね」
M:宇土城「……確かに主への信仰を告白できないことは悲しいことですが、それでも主は信じる者をお救いになってくださることでしょう」
M:宇土城「現に、こうやって天草に少しずつ活気が戻りつつあるのですから」
金木「“天の御遣い”とは言われてはいるけれど、それはキリスト教で言う“天使”と同じ扱いでいいのかな?」
金木「ま、マリア観音なんてあることだし、その時々によって助けてくれた人が“天使”に見えたりするって話だし、――――――別にいっか、細かいことなんて」
M:宇土城「あ、少しここでお待ちください。ここならお話ができますので」ササッ
スッ、バタン
金木「――――――この屋敷? この村の庄屋さんかな?」
佐和山城「…………すんなりここまで来れるとはな」
金木「何か言った?」
佐和山城「いや、万が一のことを考えて、殿はできるだけ私の側を離れないでいてもらいたい」スッ
金木「そう? ま、佐和山城が言うならちゃんと守ってくれよ」
佐和山城「言うようになったな」フフッ
スッ、バタン
M:宇土城「では、【城主】様。奥へお上がりください」
金木「うん。じゃあ、お邪魔します!」
佐和山城「…………いざ」
――――――屋敷
M:宇土城「近頃、島原が騒がしいことはご存知ですよね?」
金木「松倉豊後守の非人道的なキリシタンの弾圧と、それに便乗した重税に喘ぐ百姓たちへの数々の拷問ですよね……?」
M:宇土城「……やはりご存知でしたか」
金木「あ、ごめん。【城主】としての立場から言わせてもらえば――――――、」
金木「いくら“天の御遣い”と崇められていても天皇から征夷大将軍の位を与えられて政治を代行している立場の幕府に弓引く行為はできない」
金木「もし【城主】としての立場を使って無理やり島原に介入したら、幕府に不満を持つ人たちが俺を担ぎあげて反乱を起こして、また天下が乱れてしまう……」
金木「しかも 今の段階だと、キリシタンの拠点であるルソン島への出征を幕命として実行しようとしているから、」
金木「あちらとしては いくらでも幕命を盾にえげつない圧政を正当化する材料があるわけで容易に諌めることができないんです」
金木「一応、唐津と天草の領主:寺沢志摩守を通じて江戸の上様のところに正式な手続きを踏んで検めさせようとはしてはいるんですけど…………」
M:宇土城「……そうでしたか」
佐和山城「これで【城主】に思うところがあるのならば、――――――それは筋違いだからな、宇土城」
佐和山城「我々は関ヶ原で敗れたのだ。あの決戦に負けて徳川に天下を渡してしまったのだ」
佐和山城「恨むのならば、あの時の己の不甲斐なさを恨むべきだ」
金木「お、おい……?」
M:宇土城「……そこまでは言ってませんよ、佐和山城」
M:宇土城「でも、ずいぶんと変わりましたね、佐和山城」
佐和山城「む?」
M:宇土城「昔のあなただったらもっと――――――」チラッ
金木「?」
佐和山城「う、うるさい!」
佐和山城「さあ! こちらの立場は前もって伝えたのだ。それを踏まえて次の行動を考えるのだな!」フン!
金木「どうしたんだ? 話があったんだろう? 早くクリスマスパーティ――――――略してクリパやろうぜ!」ニコニコ
佐和山城「…………殿」ヤレヤレ
M:宇土城「ふふ(あの佐和山城が大坂城殿以外に『殿』と呼び慕う相手――――――)」
M:宇土城「それで、島原城と原城が騒がしいようですねえ……」
M:宇土城「巻き添えを食わぬよう気をつけたいです……」
金木「確か、原城ってすでに廃城になっているんじゃ?」
佐和山城「なら、実際の宇土城もすでに破却されているのだからこの世に存在しないぞ」
金木「あ……、それじゃ【はぐれ城娘】だったんですか」
M:宇土城「お恥ずかしながら……」
金木「でも 話は戻りますけど、それって【城娘】島原城と原城の諍いの話なんですよね?」
金木「対岸の火事みたいなもんじゃないですか。実際に対岸ですし、どうして俺にそんなことを言うんです?」
金木「(いや、宇土城がどうして対岸の島原における話を持ち出しているのかはわかっている)」
金木「(――――――【乱】の指導者が大矢野島出身の説があるからだ)」
金木「(けど、ここは宇土城のことが知りたい。それを窓口に【この時代】においてどのように一揆に繋がっていくのかを把握しないと!)」
M:宇土城「実は――――――」
少年「アウグスティヌス?」
金木「!」
佐和山城「?」
M:宇土城「フランシスコ――――――あ……、若様! どうして勝手にお部屋に入ってきたのですか!?」アセアセ
金木「なあ、佐和山城?」ヒソヒソ
佐和山城「む?」
金木「――――――あの子、佐和山城から見て 容姿端麗とか眉目秀麗でお持ち帰りしたいとか思うぐらいか?」ヒソヒソ
佐和山城「は」
金木「だから! あれが女の子だったら太閤殿下から寵愛を受けられるぐらい綺麗な顔をしているかって訊いてるんだよ!」ヒソヒソ
佐和山城「…………す、すまぬが、そういったことはわからぬ」
金木「ダメだ、使えない……」ハア
金木「ねえ、フランシスコって言ったかな?(――――――武家社会で衆道というものが流行った理由がわかった気がするな、これぇ)」
少年「はい」
M:宇土城「えと、【城主】様――――――」
金木「今度、俺の城でクリスマスパーティをやろうと思ってるんだけどさ? 一緒に楽しまない?」
少年「え、クリスマス?」パァ
金木「そうだよ。一緒に祝わない? きっと楽しいよ」ニコッ
少年「うん。連れて行って」
金木「そうか」ニッコリ
M:宇土城「…………若様」
M:宇土城「……これも主の導きなのかもしれません」
佐和山城「もしや、この子に関することで呼びつけたのか?」
M:宇土城「はい」
M:宇土城「この子は夢を見るのです」
――――――島原城と原城の諍いに巻き込まれる悲しい夢を。
こうして、金木青年と石田少将はそれぞれ独自に【島原の乱】を未然に防ぐために行動を移したのであった。
石田少将は【乱】の本質が暴政に対する百姓一揆であり、その諸悪の根源である島原の民を苦しめる暴君:松倉豊後守に対抗するために動いていた。
一方、金木青年は【乱】の指導者となった天草四郎時貞なる人物について追究していき、反逆せざるを得なかった民の実態を見つめることに努めた。
加えて、それ以前から島原から始まった【乱】の片棒を担いでいた天草領主である唐津の寺沢志摩守を懐柔して税制の見直しに成功している。
更に、【この時代】に跳梁していた【兜】の一派の掃討に成功してもいるので可能性は大きく広がっていたのである。
彼らは【未来】での知識を十二分に活かし、それぞれの立場を最大限に活かし、『人を救う』崇高なる使命のために時代を駆けたのであった。
――――――天草:萬紫苑城
金木「はい、王手」パチン
フランシスコ「あ」
フランシスコ「待って! 待ってぇ! ちょっと待ってください、【城主】様ぁ!」
金木「ダメ! 『待った』はさっきも使ったでしょう? これが実戦だったら何度 敵の虜になっていたのさ?」フフフ・・・ \大一大万大吉/
フランシスコ「うぅ…………」
石田”「そういう【城主】様は肝腎なところが抜けているな」
石田”「ほら、フランシスコ。王を獲ってしまえ」
金木「え」
フランシスコ「あ!」パチッ
フランシスコ「はい、フランシスコの勝ちです」ニッコリ
金木「あ、ああ…………?!」ガーン!
石田”「確かに将棋は、同じ駒を交互に使う以上は一手二手 先を読んで相手の行動以上に1回の行動に価値を載せる必要がある」
石田”「それ故に、いかに相手を攻めるかが肝になり、駒損してでも王手を積極的にかけていくのは理に適ってはいる」
石田”「だが、兵站を無視した戦法――――――つまり使える駒をどんどん投入して活路を開く戦法は現実では長続きしないものだ」
石田”「『攻める』とは、同時に『守りを犠牲にしている』わけでもあるのだからな」
石田”「つまり、今は守りに徹していても、必ず流れが変わる節目がやってくるものだ。逆転の好機はどこからでも舞い込んでくる」
石田”「緒戦で連勝を重ねても、決戦に負けて大将を討ち取られてしまっては元も子もない」
石田”「王手を狙うことを覚えたら、今度は『詰み』と『必至』を覚えることだ。『王手とは追う手』なのだから着実に攻めていかなければならない」
金木「うぅ、――――――『生兵法は大怪我のもと』ってことね」トホホ・・・
フランシスコ「ふふぅん」ドヤァ \大一大万大吉/
石田”「だが、俺が口を挟まなければ お前も自ら絶好の好機を逃すところでもあったのだぞ」ジロッ
フランシスコ「あ……、はい」
石田”「現実とはこんなものだ。当事者の間に第三者が割り込んでくることによって状況が大きく変容することもある」
石田”「あらゆる可能性――――――最良・最高・最悪・最低のいかなる場合にも備えられるように対策を練っておくのが肝要だ」
石田”「だが、人間というものは想定していないことに対してはとことん無力だ」
石田”「だからこそ、あらゆる状況を想定しての訓練は欠かせない」
フランシスコ「はい!」
金木「――――――『訓練は本番のつもりで』『本番は訓練の通りに』ですね」
石田”「ああ。それしか対処しようがない。後は本人の才能と運で結果が左右されるわけだ」
金木「勝てる確率は少しでも高めておかないとな。でなきゃ、後悔してもしきれないよ」
石田”「ああ。悔いは残さないように『ベストを尽くす』――――――それだけが正解に限りなく近い答えなのかもしれないな」
フランシスコ「………………」
金木「どうした、フランシスコ? 喉でも渇いた?」
フランシスコ「ううん」
フランシスコ「――――――悲しい夢の続き」
金木「…………『夢の続き』?」
石田”「………………」
フランシスコ「大きな喜びの陰に大いなる哀しみが響く」
金木「………………いったいどんな意味があるんだろう?」
石田”「ふん。それが確かだとしても5W1Hの欠いた情報など参考にしようもない。役に立たない戯言だ」
フランシスコ「え」
金木「ああ……、つまり、『いつ?』『どこで?』『誰が?』『何を?』『なぜ?』『どのように?』っていう事実関係を明らかにしないと伝わらないってことだよ」
金木「その予知夢が確かならば、それが具体的にはいつ頃の話で、誰が喜んで誰が哀しんでいるかを頑張って言わなくちゃ」
フランシスコ「…………はい」
石田”「本当にこの子が【乱】の指導者:天草四郎時貞なのか?」ヒソヒソ
金木「小西行長の遺臣:益田甚兵衛の子って情報から探したら、その小西行長の居城であった【はぐれ城娘】宇土城に託されちゃって」ヒソヒソ
石田”「だが、天草四郎が超能力者だというのは眉唾物だと思っていたのだが」ヒソヒソ
金木「そんなこと言われても、この時代はまさしく科学が未発達でオカルトが実しやかに囁かれている時代じゃないですか」ヒソヒソ
石田”「さすがにこの歳で詐術に長けているとは思えないし、まさか本物の超能力者だったというのか?」ヒソヒソ
金木「だから、宇土城が俺に託したのかもしれませんよ」ヒソヒソ
金木「だって、この歳で頭もいい感じだし、不思議パワーを使えるんですよ?」ヒソヒソ
金木「圧政に苦しむ人たちからすれば、それこそ聖書の救世主として崇めたくもなると思います」ヒソヒソ
石田”「いかにも他人任せな思考の塊なのだな。一方的に自分たちの欲望を年端も行かぬ子に押しつけて自分たちで何かをなそうとはしない!」ヒソヒソ
金木「そ、それはあまりにもかわいそうじゃないですか? 彼らだって別に怠惰な日々を過ごしているわけじゃなく毎日を必死に生きてるんですよ」ヒソヒソ
石田”「――――――『それしかできないと決め込んで次代を巻き込むな!』と言わざるを得ない」ヒソヒソ
金木「…………石田少将」
石田”「【お前の世界】では皇国は米帝に勝利しているのだろうが、【俺の世界】では米帝に皇国が敗北しているのだからな」ググ・・・
石田”「そんな境遇の違いから想像もできないだろうが――――――、」
石田”「敗戦間近の追い詰められた人間がやることと言ったら吐き気を催すようなことも平気で行っているのだぞ」
金木「え」
石田”「追い詰められた我が国は魚雷に操縦席をつけた特攻兵器に次代を担う若者を続々と載せて戦場に送り出し、無意味な死を賜っていたのだぞ……!」ギリッ
金木「…………え!?」ゾクッ
石田”「わかるか!? 文字通りの“人間魚雷”が正式配備されてアメリカの軍艦への自爆攻撃を強要されていたんだぞ」
金木「………………」アセダラダラ
石田”「たとえどんな理由があろうとも、そんなやり方で勝ちを得られても何の意味もない!」
石田”「だから、俺は――――――!」ガッ
金木「…………石田少将(そうか。石田少将は『だから』俺やこの子のために――――――)」
フランシスコ「ねえ、【城主】様? すないスケ様?」
金木「あ、何だ、フランシスコ?」
石田”「………………」
フランシスコ「………………」ガタガタ・・・
金木「お、おい!? ど、どうしたんだよ、そんなに震えて!?」
フランシスコ「……怖い」ブルブル・・・
金木「――――――『夢』の話か!? 別にいいんだぞ、無理しなくても!」
フランシスコ「で、でも! 哀しんでいるのは【城主】様やすないスケ様だったから……!」グスン
金木「そ、そうなのか……(『大きな喜び』――――――それは俺たちが取り組んでいる【島原の乱】の解決のことを指しているのだろうか?)」
金木「(そして、『大いなる哀しみ』――――――俺と石田少将が予定通りに離れ離れになることを暗示しているのだろうか?)」
石田”「………………」
石田”「…………終わりはもうすぐか」
――――――萬紫苑城
スタスタスタ・・・・・・
石田”「………………」スッ
石田”「………………」\勅命/
石田”「…………長かったようで短かったような気がするな」ボソッ
ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!
石田少将はこの世の見納めのように萬紫苑城を見て回っていた。
扉の隙間から部屋を見やると、すでに【兜】との戦いは久しく、城娘たちは初めて得た長期休暇にそれぞれの楽しみを見つけて日々を満喫しようとしていた。
思えば、最初に唐津:二里松原に拠点を構えていた頃とは大きく様変わりし、いつしか【ここ】が帰るべき場所になっていた。
そして、内装や設備も手ずから充実させていき、外見通りのリゾートマンションとして完成していったのである。
【ここ】での生活はありのままの自分でいることができた。喜怒哀楽 全ての感情が【ここ】では露わとなり、
生まれも育ちも立場も違えども、志を同じくする永遠の友を得ることができたのだ。それが何にも代えがたい喜びであった。
しかし、いつまでも【ここ】には居られない――――――本当の意味で【帰るべき場所】があるのだから。
石田”「………………フッ」
飛龍”「あ、提督」
ヲ級”「ヲヲッ!」
霧島”「司令、おはようございます」
石田”「……そうだ。俺はお前たち艦娘の提督だよ。忘れるはずがない」
あさひ姫「…………石田様」
――――――そして、西暦12月24日
クリスマスパーティ
――――――天草の人たちを呼び集めての慰労祭!
金木「というわけで!」
金木「クリパ! 始まるよ~!」
「イエエエエエエエエイ!」パチパチパチ・・・!
――――――――――――
石田”「……どうしてこうなった?」ムスッ
フランシスコ「ごめんなさい、すないスケ様」
フランシスコ「『未来のことがもっと知りたい』ってお願いしたら、こうなっちゃって…………」
石田”「そんなことはどうでもいい」
石田”「問題は、なぜ俺が――――――、」
――――――なぜ俺がブライダルフェアの新郎役を演じねばならんのだ!?
フランシスコ「…………『ブライダル』? 『ブライダル』って何ですか?」
石田”「西洋式あるいは教会式の結婚式のことだ。今から300年後にはこの様式が一般的になる」
石田”「その頃には信仰の自由が保証されて、今みたいに隠れキリシタンを演じる必要はなくなっているぞ」
フランシスコ「そうなんですか。その時が楽しみです」ニッコリ
石田”「なぜ300年後の話を聴いて素直に喜べる? どう足掻いても生きているうちは禁教の時代が続くのだぞ?」
フランシスコ「だって、主の教えには迫害がつきものですから」
フランシスコ「けれども、いつかは完全に認められる時がやってくる――――――それを知れただけでも嬉しいんです」
フランシスコ「――――――希望を持ち続けることができますから」
石田”「…………そうか(そうだろうな。宗教とは心の安寧――――――つまるところ、苦しみの日々の中で希望を持たせることが大きな意義だからな)」
フランシスコ「でも、真っ白の西洋衣服がかっこいいですよ」ワクワク
石田”「…………まぁ、質は劣るが以前の舞踏会よりはずっとマシだな(なぜ俺はこういったイベントでイロモノ扱いされるのか)」
浅黒肌の戦乙女『提督よ……、今日はよろしく頼む……』モジモジ
石田”「………………」
フランシスコ「……すないスケ様?」
石田”「なあ、フランシスコよ」
石田”「俺が知っている未来においては、お前は二十歳になる前に【乱】の指導者に担ぎ上げられて打ち首になる運命だ」
石田”「俺はその運命を変えようと思っているのだが、――――――余計なお世話だったか?」
フランシスコ「いいえ、すないスケ様」
石田”「なぜそう言い切れる?」
フランシスコ「まだよくはわからないんだけど、――――――『すないスケ様だから』?」
石田”「意味がわからないぞ」
フランシスコ「ごめんなさい、すないスケ様」
フランシスコ「でも、初めて会った時から不思議と『怖い』と思わなかった」
石田”「たったそれだけか?」
フランシスコ「ううん。だって、一目見ただけでその人が怖い人かどうかわかっちゃうから」
フランシスコ「だから、一目見て怖くなかった すないスケ様は一緒にいて安心できるって感じ」
石田”「…………口が達者だが、悪い気はしない」フフッ
石田”「だが、時としてその才能が己を殺すことに繋がることを覚えておけ。いいな?」
フランシスコ「はい」
――――――――――――
金木「楽しんでる~? 天草のみんな~?」
「イエエエエエエエエイ!」
金木「志摩様も楽しめてる~?」
志摩守「あ、ああ…………」
金木「どうですか? 悪くない作戦でしょう?」ヒソヒソ
金木「税制改正をして印象を良くした後に、そのお詫びを兼ねて総出で民を労る宴をして一気に人心を鷲掴み!」ヒソヒソ
金木「これで天草は安泰だと思いますよ」ヒソヒソ
志摩守「そこまでご配慮していただけるとは、まっこと、この老骨 感謝してもしきれません」
志摩守「しかし、なにゆえ 今回の見世物にすないスケ様が――――――?」
金木「……まあ、あれですよ、あれ」
金木「恋のキューピッドが石田少将の孤独な心を癒やす手助けを――――――ってね」ニヤニヤ
金木「それに、いろんな形の結婚式を目の当たりにすれば、他の宗教に対する偏見も和らぐんじゃないかって思って」
金木「(――――――本当は俺自身が見比べてみたいってだけだったんだけどね)」ヘヘヘ
――――――第1回:神前結婚式
石田”「…………どうしてこうなった?(――――――急に『着替えろ』と言われたと思ったら、こういう手筈だったのか!)」ムスッ
霧島”「私の計算によると、戦いが終わったら、たぶん司令と私は、もしかすると、もしかすると…………」ドキドキ
霧島神宮の神官「まさかこういった御縁でまたお会いするとは思いもしませんでした」
石田”「その節はどうも」
神官「それで、例の謎は解けましたか?」
石田”「いえ。こればかりは関東に行ってみないことには何とも」
神官「そうですか」
神官「では、立ち話もこの辺にして式といたしましょうか」
石田”「いや、待った!」ガッ
神官「どうかなさいましたか?」
石田”「これはあくまでも見世物であって正式な婚姻ではないことは知っているのか!?」アセアセ
神官「はい?」
石田”「三献の儀――――――固めの盃を飲めとはまさか言うまい?」アセアセ
神官「しないんですか?」キョトーン
石田”「金木ぃいいいいいいいいいいいいい!」
霧島”「し、司令と私…………あぁ(ど、どうしよう?! たぶん、司令の眼を合わせられないかも…………)」ドクンドクン
神官「では、三献の儀を行います」
石田”「………………やらなければならんのか」アセダラダラー
霧島”「つ、ついにこ、この時が――――――」ゴクリ ← 理由をつけてメガネを外した。メガネは新郎役に渡した。
神官「それでは、このお神酒を新婦から3度口にしてから、新郎にお渡ししてください」トクトク・・・
霧島”「あ、はい!」ドクンドクン
霧島”「………………深呼吸」スゥーハァーー!
霧島”「で、では! 霧島、いきます」グイッ
霧島”「――――――」ゴクゴク・・・
石田”「む……(待て、そんな勢いで呑んでしまっては――――――)」アセタラー
霧島”「…………フゥ」プハァー
石田”「ああ……」ヤレヤレ
神官「全部 呑み干してしまいましたね……」アハハ・・・
神官「しかたがありませんから、もう2口だけお願いします」トクトク・・・
石田”「何をしているのだ? 『3度口にする』というのは『盃を3杯 飲め』という意味ではないんだぞ――――――ん?」
霧島”「…………あ、あれぇ? 司令 どこですかぁ~?」トローン
石田”「メガネがなくて近くが視えないのなら憚ることなくつければいいものを」スッ ――――――霧島から預かったメガネを取り出す。
石田”「緊張しているのはわかる。これが世のため人のため――――――ひいては皇国のためであるために時代性を考慮したのはわかる」
石田”「だが、やはり視えないのなら掛けておくのがお前にとって一番だぞ」スチャ ――――――霧島から預かったメガネを掛けてあげる。
霧島”「あ」
石田”「うん。これでいいだろう(――――――今では見慣れた緑縁のメガネか。これが決め手で迎えに行けたのだったな)」
霧島”「し、司令ぇ…………」カアアアアアアアアアアアアアアアアア!
霧島”「」バタン
石田”「――――――って、おい、大丈夫か!? なぜ急に?!」
石田”「ハッ」
石田”「イッキ飲み――――――さっきのイッキ飲みのせいじゃないか!」
石田”「待て! それ以上はいけない。酔いつぶれているだろう!?」
石田”「もういいから! 盃をよこせ」
神官「はい」
石田”「――――――」ゴクッゴクッゴクッ
石田”「これでいいだろう? 後の玉串や誓いの言葉は俺一人でやる! あとはもういいだろう!?」コトッ
神官「わかりました」ニッコリ
石田”「くっ、……不愉快だ」
金木「け、――――――傑作ぅ!」プククク・・・
志摩守「まだまだ青いのう……(――――――まあ、それもそうか。石田治部もそうであろうからな)」フクク・・・
二条城「あなた? 早く霧島さんをお運びしないと後が大変ですわよ?」
金木「わかってるって。ちょっとした事故なんです、これは(そう、これはこうなることを狙っての配役なのさ!)」ニヤニヤ
金木「(――――――冷静に考えて、重油を呑んだほうが元気な艦娘が急性アル中で死ぬわけがないだろう!)」
金木「(【この時代】の人たちに向けた結婚式(仮)とはいえ、あの石田少将が目の前に新婦に倒れこまれてどう対処するのかを見ていたけど、)」
金木「(…………やっぱり、石田少将は優しい人だったよ)」
――――――そう思うよね、みんなも。
石田”「――――――この上は夫婦の道を守り、愛情と信頼を以って苦楽を共にし、」
石田”「互いに変わること無く、明るい平和な家庭を築きあげることを謹んでお誓い申し上げます」
霧島”「…………し、しへぇ」ムニャムニャ ――――――酔い潰れたとされる新婦の赤く染まった面は新郎のお膝の上!
石田”「――――――夫:石田(某)、妻:霧島の方」
――――――第2回:仏前結婚式
石田”「神仏習合の時代に神前式と仏前式にわけてやる意味はあるのか?」
飛龍”「え、えと……、よ、よろしくね、提督?」
石田”「……わかっているだろうが、」
石田”「これは演技だ。演技なのだからな。勘違いをするな」
飛龍”「うん。わかってるよ、提督」ニッコリ
石田”「なら、いいのだが…………」ホッ
飛龍”「(ケッコンカッコカリしている武蔵さんには悪いけれど――――――)」
飛龍”「(やっぱり、私はこれがたとえ形だけの(仮)だとしても――――――)」ドクンドクン
金木「へえ。三三九度の盃を交わすところは神前式と同じなんだ――――――って、神仏習合してるんだし、似ていて当然か」
志摩守「…………なあ、【城主】様」
金木「何です、志摩様?」
志摩守「――――――あの二人の関係をどう見る?」
金木「……そうですねぇ」
金木「二人の関係は前々から知っているのでこういうのもなんですが、」
金木「長年連れ添った関係がようやく実った――――――って感じですかね」
金木「ほら、石田少将って堅物ですし、勘違いされやすい人ですから」
金木「男と女の関係が許されるのであれば、二人は自然とこういった形に行き着くんじゃないかって」
志摩守「そうじゃのう。傍から見ていても、すないスケ様とあの娘の距離感に安心というものを感じざるを得ない」
金木「あ、見て見て、志摩様」
金木「二度目だし、さすがに腹をくくったのか、ちゃんと新婦が口をつけた盃を呑んでるよ」
金木「何か見てるこっちも恥ずかしくなってくるくらい、新婦の初々しい所作と新郎のどこかぎこちない様子がたまりません!」
二条城「では、あなた? 私たちも挙式しませんこと?」
金木「あ……、俺、見るの専門なんで。――――――ごめん」アセタラー
二条城「…………もう いけず」フフッ
志摩守「……盃と聞いて、石田と聞いて、何か思い出すものがありますな」
金木「?」
志摩守「大谷刑部の顔から落ちた膿を嫌な顔せずに呑み干したという石田治部の話ですよ」
金木「ああ……、石田治部らしい逸話ですよね」
志摩守「――――――石田治部という男は実に清廉であったな」
金木「でも、…………結婚かぁ。何か想像できないなぁ」
金木「石田少将を見ていると、あの石田治部にも相手がいたなんて信じられないっていうか」
志摩守「そうでしょうな。実際に石田治部には側室はなく、正室:皎月院のことを“うた”と呼んで可愛がっていたようだ」
志摩守「しかしながら、当時の政権の中心人物であった石田治部の正室にしては甚だ存在感がなかった」
志摩守「実際 儂も治部とは長い付き合いだったが、妻のことは一切 話題に上げたことがないぐらいだったし、その存在をからかう声もあったな」
金木「家庭よりも仕事が生き甲斐の石田治部が豊臣秀頼 御落胤説の張本人なんて無理がある話だよな~」
金木「……そういえば、子はいたんですか?」
志摩守「それは当然。武士ならば嫡子を設けて家名を繋ぐこともまた使命よ」
金木「――――――『家名を繋ぐ』ねぇ」
志摩守「まあ、正室ですらあの扱いなんだから、その子にも会ったことがないので何ともいえぬのだが、」
志摩守「少なくとも関ヶ原の後で助命が許されたという話は聞いている」
志摩守「案外、すないスケ様にはその生き残りの血が入っていたりしてな」
金木「ロマンを感じますね、それ」
石田”「…………フゥ」
石田”「……やっと終わるか(次で最後――――――)」
飛龍”「はい、提督」ニコニコ
石田”「………………」ジー
飛龍”「……提督?」
石田”「…………いや、何でもない。何でもないんだ」
石田”「ただ、――――――これはただの演技ではあったが、」
石田”「これからも皇国の勝利と栄光を掴むために『愛情と信頼を以って』お前たちと共に歩ませてもらうことだけは確かだ」
石田”「ただ、それだけだ……。それだけは確かだ……」プイッ
飛龍”「はい」
石田”「…………フッ」
飛龍”「ところで、提督?」
石田”「何ですか?」
飛龍”「さっき、“誓いの詞”で私のこと なんて呼んでくれましたか?」
石田”「…………なに?」
飛龍”「もう一度 聴かせてくれませんか」ニコニコ
石田”「忘れた」
飛龍”「そんなこと言うと『めっ』ですよ、提督」デコピン!
石田”「ガッ」
飛龍”「“誓いの詞”、名前のところは何も書かれてなかったじゃないですか」
飛龍”「あれは咄嗟に思いついたものなんですか? それとも――――――」
石田”「――――――“飛龍”などという名をそのまま口にして場が白けるのを恐れただけのこと」
石田”「意味などないし、使うこともあるまい。これっきりだ。忘れろ、そんなこと」
飛龍”「もう、もったいぶってぇ。減るもんじゃないんだし、恥ずかしがらなくていいんですよ?」
石田”「嫌だ」
石田”「俺は忙しい。着替えてくる。世のためとはいえ、野暮な見世物もこれで終わりだ」スタスタスタ・・・・・・
飛龍”「あ、提督……!」
――――――“おコウの方”ってどんな意味なんですか~?
“コウ”= 功、公、鋼、高、幸、光、乞う、恋う、港、航、黄、好、皇、洸…………などなど
金木「さあさあ! みなさん、楽しんでもらえてますか?」
金木「次で最後の見世物となりますので、ごゆるりとご覧になってください!」
金木「ごちそうもまだまだありますから! ここにいるのはみんな 天草の民だよ! 今までよく頑張ったよ!」
金木「これは神仏やご先祖様たちが志摩様を通じて贈った素晴らしい夜のひとときだから感謝を絶やさないでね!」ニッコリ
金木「(そう、リゾートマンションのオーナーをやるんだったら、これぐらいのサービスをやれるぐらいの手腕があってしかるべきだよな!)」
金木「(ごちそうも今まで食べたことがないような極上の逸品で腹を満たしてやれば感動して従順にもなるって!)」
金木「(――――――ところで、どうして俺がいろんな結婚式の様式を知っているかって?)」
金木「(ちょっとした縁で、神社で行われていた結婚式の一部始終を見ることがあって、それから――――――、)」
金木「(――――――本気で“彼女”が好きになってゼクシィをよく読んで将来の参考にしたり……まあ 妄想するのに眺めていたからだ)」
金木「(……気持ち悪い? まあ、そうだろうね。――――――『結婚式は女のロマン』ってね。女の趣味の世界だし)」
金木「(男はこう…式なんかよりも もっと二人きりになった時の直接的な繋がりにロマンを感じるっていうか――――――、ね? 単純だよね)」
金木「(でも、前に霧島連峰の えびの高原に行った時に神社仏閣とかいろんなところと交流を持つことを覚えていたんだぜ?)」
金木「(その甲斐あって、さすがに設備は現代レベルには達しなかったけれど、必要な配役と素材は全て揃ったぜ!)」
スタジオ
金木「やくも! 第3聖堂、設置!」
スタジオ
金木「千狐! 第2聖堂は指定の場所に転移しておいて」
金木「さあさあ、俺はこれが見たかった!」
金木「そして――――――、」ギュッ
金木「【この時代】に何も残せない俺が人生に満足するために導き出した答えがこれだぁ!」バサァ!
――――――第3回:キリスト教式結婚式……× 「結婚式教会」による結婚式……○
金木(司祭)「祝ってやる」ニッコリ
石田”(新郎)「本当に大丈夫なのか?」
金木「大丈夫ですって。ペーパー読むだけですし」
金木「それよりも、この偽の結婚式でいろんなことが試せて一石十鳥なんじゃないんですか?」ニヤニヤ
石田”「むむ……」
石田”「確かに、【あれ】にどれだけの効力があるのか 試さずにはいられなかったが…………」
石田”「しかし、【あれ】は金本提督からお前に宛てたものなのだろう? 俺なんかに使わせてよかったのか?」
金木「ヘーキヘーキ。気前良く【あれ】を3組も渡してきたから、そのうちの1組ぐらいこっちも気前良く使わせちゃうよ?」
金木「それに、こうやって種類毎に演じる名目をつけて、練度が最大の艦娘に不用意に効果をもたらすわけにもいかなかったでしょうよ」
金木「俺は石田少将がそうであったように、最初から石田少将の味方だよ」
石田”「…………なるほど。根はそういうやつだったんだな。ようやく理解できたよ」フフッ
金木「え」
石田”「いや、この第3スタジオの造りこみがなかなかだと思ってな」
金木「あんなにも可愛いフランシスコを宇土城から託された時に、――――――閃いてね?」
金木「やっぱりさ、思うんだよね」
――――――殉教はダメだって。
金木「もちろん、誇りを抱いて死んでいくことは立派なことなんだろうけれども、」
金木「実際はそんな美談だけで片付けられるような状況じゃなくなっているのがほとんどなんですよね」
石田”「ああ。実際の【乱】では兵糧攻めに遭い、崖下の海藻だけで食い繋ぐという惨状だ」
石田”「いくら口では綺麗事を並べ立てても、それを心地良く聞き入れる耳を持たなければ、人間というものは腹の虫でいとも簡単に態度を変える」
金木「――――――食べ物の恨みは恐ろしいぃ」
金木「けれども、一般的にキリスト教が言うアレ、『人間は生まれながらに罪を背負っている』ってやつ――――――、」
金木「あれは絶対におかしいって俺は思っているから『殉教はダメだ』って言えるんです」
石田”「ほう?」
金木「だって、殉教――――――つまり死ぬのが尊いだというのならば! 存在そのものが罪だなんて! だったらさ――――――?」
――――――どうして人の誕生を祝うんですかね?
石田”「フッ」
金木「ほら、おかしいでしょう? この世が苦しみに満ちていると言うのならば――――――、」
金木「善き者が最終的に生き返って神の国に行けるのなら、さっさと死んで苦しみから解放されて復活の時を待てばいいじゃないですか」
金木「それなのに、生まれてくることや生きることを止めない――――――根本的な矛盾だと思いません?」
石田”「ああ その通り。――――――右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」
金木「ああ! やっぱりわかってくれる! 石田少将は最高だ!」
金木「だから俺は、『殉教』っていう『自殺』と同義の諦めの言葉を使わせちゃいけないと思ってるんです」
金木「どっちにしろ、この世を生き抜くことを諦めてる時にしか使わない言葉じゃないですか、こんなもの」
石田”「同感だな。使わせてはならない言葉だ」
金木「…………【乱世】に生を受けなかった若造に言えたことじゃないんだろうけど、」
金木「逆に、“平和な時代”で生まれた人間がその理想を唱えられないような価値観しか持ち合わせていなかったら、」
金木「この人たちが未来に淡い希望を抱いて必死に生き続けてきた足跡を否定するようなもんだと思います」
金木「未来には希望があるものだと、理想があるものだと、それが実現される時が来るものだと誰もが思って生きてきたはずですから」
石田”「どうした、突然? 本当の司祭のように見えてきたぞ」
金木「それだけ俺も日々の生活の中で極まっていっているってことですよ」
金木「前に石田少将が言っていたことがきっかけなんですよ?」
石田”『【お前の世界】では皇国は米帝に勝利しているのだろうが、【俺の世界】では米帝に皇国が敗北しているのだからな』ググ・・・
金木「俺は【大東亜共栄圏の未来】からやってきた【城主】様ですから」
金木「当たり前のように思えていたそんな世界と日常だったけど、【ここ】に来てからいろんな人に会って、いろんなことがあって――――――」
金木「そして、【そうならなかった未来】があることも、【そうならなかった未来】でも人は形を変えながら生きていることを知ったんです」
金木「こんな 時を越えた 有史以来 はたして何人の人間が体験してるかもわからない出会いをして悟らなかったら全て夢幻ですよ」
金木「“未来に生きる”っていうか、“未来のことがわかってあれこれ考える”っていう超人的感覚ですから」
金木「これが新郎への祝福――――――言いたくてしかたがなかったこれまでの感謝の気持ちと石田少将に出会ったおかげの成長の証です」ドヤァ
石田”「唐津で最初に会った時と比べて本当に見違えるようになったな」フッ
金木「さあ、雑談は終わりかな? ――――――合図だ」
石田”「そのようだな」
金木「ではでは――――――!」パチン!
――――――花嫁 入場!
ガチャコオオオオオオオオオオ!
閉ざされた教会の中に外の光が徐々に差し込んでいく。
第3聖堂と仰々しく名付けられた3番目の結婚式教会は厳かな鐘楼を備えた純白なる外観であり、
その白の中に吸い込まれるように伸びていく真紅のヴァージンロードの布道が【この時代】の人たちには衝撃的であった。
すでに教会内の祭壇の前で待ち合わせている司祭と新郎は、閉ざされた正面の扉が音を立てて神々しく開かれていく瞬間を待っていた。
それはキリシタン弾圧の幕命によって教会を失った者たちや珍しいもの見たさにやってきた人たちも皆一様に息を呑んで待つことになった。
明らかに第3聖堂だけ造り込みが前2つのものとは違っていたために自然と建物の壮大さに合わせて期待を大きく膨らませていったのである。
これは今回の主催者である金木青年の演出と作戦であり、また 遠大な計画のために持てる総力を投じて建てた施設でもあった。
フランシスコ「ふふ」ニコニコ
ヲ級”「ヲヲ」ニコニコ
トコトコトコ・・・
観衆「おおおお!」
金木「お静かに」シー
観衆「………………」ゴクリ
ヲ級”「ヲヲヲ!」 ――――――艦載機 発進!
観衆「!」
観衆「(て、鉄の鳥が――――――!?)」
ヲ級”「ヲヲ!」 ――――――爆弾 投下!
観衆「お、おお……!」
パラパラパラ・・・パサァ!
観衆「おお!」
観衆「……きれい」ウットリ
――――――会場内に花びらが舞った。
石田”「見事な演出だな」
金木「はい。指輪はここにね」
フランシスコ「やったね、『ヲシドリ』」 ←リングボーイ
ヲ級”「ヲヲ!」 ← フラワーガール
最初に、リングボーイ役の大矢野島の神童:フランシスコが入場した。
リングボーイとは、リングピロー(指輪置き)を祭壇へと運ぶのがお仕事のボーイのことである。
その次に、フラワーガール役の『ヲシドリ』が入場する。
フラワーガールは祭壇までの道を花びらを散らして華やかな気分に盛り上げていくガールのことである。
“天草の神童”と“敵艦隊のアイドル”の面目躍如――――――時空を超越したそのコラボレーションにより、
会場のベンチに腰を下ろした者も、立ち見している者も、男も女も、老いも若きも注目せざるを得なかった。
明らかに人とは思えない素肌の『ヲシドリ』ではあったが、主催者が作らせたローマ風の袈裟に似た服飾と化粧によって生気の無さはある程度 払拭され、
その前を、女子ならば誰もが一目惚れするぐらいの愛らしさを放つ この世のものとは思えない男子が歩いていたので釣り合いがとれていた。
そして、『ヲシドリ』から飛び立った鉄の鳥は死をもたらす爆弾ではなく、美しい花びらの爆弾を会場中に投下して華やかに彩らせていく。
やがて、リングボーイが司祭に招かれて祭壇にリングピローを置くと、フラワーガールは鉄の鳥を祭壇の前で呼び戻し、
可愛らしい二人の男の子と女の子は仲良く手を繋いで下手の扉から退場するのであった。
観衆たちはその退場までの様子を瞬きせずに見守り、その姿が扉によって見えなくなると、ホッと一息つくのであった。
そして、――――――本命の登場である。
主催者がこの日のために猛特訓させた はぐれ城娘:宇土城を中心とした聖歌隊が歌い始め、
「主は来ませり」のフレーズと共に真紅のヴァージンロード――――――厳かな紅の道を華やかな花びらで彩った興奮と感動の道に、
純白の衣に包まれた天女――――――否、純白のウェディングドレスに包まれた本日の主役が現れ出たのである。
M:宇土城「この世の闇路を 照らしたもう」
M:宇土城「妙なる光の 主は来まえり」
M:宇土城「主は来ませり 主は、主は来ませり」
志摩守「こ、この道をそのまま歩いていけばよいのだな……?」
あさひ姫「はい。このまま祭壇まで連れて行ってください、志摩様」
志摩守「…………まるで、娘を送り出す最後の親の仕事のような感じじゃのう」
志摩守「もう後先短いジジイだと言うのに……、ここまで――――――」ホロリ・・・
あさひ姫「志摩様」
志摩守「いや、案ずるでない」
志摩守「さあ、愛する娘を送り届けねばな! これが寺沢志摩守 最期の務め! 邪魔する者あらば討ち果たさん!」グワッ
あさひ姫「志摩様……」ヤレヤレ
M:宇土城「萎める心の 花を咲かせ」
M:宇土城「恵みの露 置く 主は来まえり」
M:宇土城「主は来ませり 主は、主は来ませり」
金木「うん、最高だ」
石田”「………………」
金木「どうです、感想は?」
石田”「馬鹿だな、貴様は」フッ
金木「褒め言葉と受け取りましょう」ニヤリ
金木「さ、来るよ」
石田”「ああ」
志摩守「…………姫様のこと、これからお頼み申す」
石田”「承りました」
志摩守「では」
金木「あっちの扉から出て、2階の特等席から見てね」
スタスタスタ・・・・・・
石田”「………………」
あさひ姫「どうですか、石田様?」
石田”「素直に褒めておこう」
あさひ姫「ありがとうございます」ニッコリ
金木「はい、静粛に二人共。歌が終わったら始めマ~ス」
M:宇土城「平和の君なる 御子を迎え」
M:宇土城「救いの主とぞ 誉め称えよ」
M:宇土城「誉め称えよ 誉め、誉め称えよ」
私達は、夫婦として、順境にあっても逆境にあっても、病める時も健やかなる時も、生涯 互いに愛と忠実を尽くすことを誓います。
司祭「では、その証として結婚指輪の交換を行ってください」
男女「はい」
新郎「私からやろう」
新郎「…………左手の薬指を」
新婦「はい」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! パチパチパチパチ・・・・・・
――――――第3回:「結婚式教会」による結婚式の配役
金木(司祭)
石田”(新郎)
フランシスコ(リングボーイ)
ヲ級”(フラワーガール)
志摩守(エスコート)
あさひ姫(新婦)
M:宇土城(聖歌隊)
今回のクリスマスパーティーは【島原の乱】に参加してしまう天草の民心を、忠告を聞き入れてくれた領主:志摩守に向けさせるために、
“天の御遣い”として幕府や朝廷と同等の立場を持つ【城主】の立場と【未来】の叡智を活用した懐柔策であった。
後に言う【島原の乱】の指導者が天草出身の天草四郎時貞という早熟のカリスマの存在によって長引いてしまったのなら、
最初からこちらで天草四郎を手懐けてしまえば、【天草での反乱】は絶対に起きないと踏んでの行動であった。
最悪、【島原の乱】そのものが対岸の【島原】で起きてしまっても、【天草での反乱】が起きなければ【乱】の指導者である天草四郎は存在しなくなり、
結果として統率のない素人集団の集まりでしかない一揆勢は自然崩壊し、これにより早くに【乱】が終結するだろうという論理である。
この方法では【天草での反乱】が起きる可能性は確かに低くなるのだろうが、【乱】の中心地である【島原】には直接的な影響力を持たないという欠点がある。
結果として天草は救われても、そもそもの【乱】の元凶である【島原】は救われていないのは明白であろう。
しかしながら、金木青年としてはそれで満足することにしていた。――――――“全か無か”ではなく“有か無か”である。
また、金木青年としては石田少将や志摩守が【島原】の救済のために手練手管を駆使して活動していることを知っており、
そういった政治的手腕に覚えがない金木青年としては、むしろ天草に対してだけでも救済策を講じることができただけ凄いことなのである。
志摩守の改革によって天草の民心や信頼が回復したとはいえ、それまでは不当な税制やキリシタン弾圧で不利益を被っていたのだから、
少なくとも心を入れ替えて善政を行うようになったからと言って、完全な民心の掌握には至っていないのが普通である。
しかしながら、今回のクリパはその民心掌握の強い後押しとなり、志摩守への信頼はこれで大きく回復したのである。
また、キーパーソンの確保にも成功しているので、将来的に志摩守に対する【反乱】はこれで起きる可能性は激減することだろう。
更に言えば、どうせ【乱】が終結してもマリア観音を奉って隠れキリシタンが生まれるくらいなのだから、
だったら あらかじめ弾圧対策の知恵を授けて、なおかつ幕命への恭順の意を示すようにも触れ回っていたのである。
こうして、官民一体の連携でキリシタン弾圧の幕命の不履行の回避を試みた上で天草における全体の犠牲を減らそうともしたのである。
果たして、隠れキリシタンとの共存が実現するかは後は結果に任せるしかないのだが、
少なくとも、【城主】としての立場と【未来】の叡智を使えるだけ使って人を救おうとした――――――その事実は永遠のものとなろうとしていた。
――――――それから、
――――――島原の三峰五岳:雲仙岳
――――――山麓の温泉街:小浜
石田”「太古の肥前風土記にも書かれている古湯:小浜温泉――――――雲仙岳が元々“温泉岳”と呼ばれていた所以」
石田”「雲仙岳は千々石カルデラ――――――橘湾 地下のマグマ溜まりから供給されて成立している」(虚無僧)
石田”「小浜温泉や雲仙温泉はそのマグマの成分に由来する」
石田”「そんな雲仙岳は常に水蒸気が噴出して硫黄の臭いがたちこめており、その光景が“地獄”と形容されてきた」
石田”「そんな“地獄”を実際に地獄ならしめたのが、件の島原の暴君:松倉豊後守であった」
石田”「邪知暴虐の徒となった豊後守は、キリシタンあるいは年貢を納められない農民を連行して、」
石田”「この雲仙岳の熱湯の中に釜茹での刑にするという拷問に利用した」
石田”「また、他にも“地獄”の名にふさわしい処刑場として使われたという」
石田”「しかし、かつてこの雲仙岳はかの行基が開いた霊山であり、神聖な場所でもあったのだ」
石田”「それを穢した天罰か、あるいはキリシタンの祟りか――――――、」
石田”「松倉豊後守はこの雲仙岳の麓の小浜温泉でルソン島攻略を目前にして急死したのだ」
石田”「宣教師たちからは無辜のキリシタンを惨殺してきた報いで狂死したのだと言われているが、」
石田”「肝腎の死因については史料からは探ることはできなかった……」
石田”「――――――謎の死を遂げたのである」
石田”「一説によれば、悪政を見かねた幕府による毒殺という話ではあるが、」
石田”「時の将軍がルソン島の攻略に乗り気でその許可を豊後守に出しているのだから、少なくとも将軍の意思という見方はできないだろう」
石田”「しかし、その後を継いだ嫡男:勝家はルソン島攻略を取りやめたものの、父親と同じく苛政を敷いた」
石田”「いや、若輩者で未熟だったこともあり、その苛烈さは暴君をも越え、悪天候と旱魃による凶作でも容赦なく重税を取り立てていたことがわかっている」
石田”「そして、租税だけでなく、人頭税や住宅税などのありとあらゆる税を新設して悪政を極めたことが多くの記録に残る」
石田”「それだけ、親子二代による島原での悪政は天下に響いていたことであろう」
石田”「そして、たまりかねた領民がついに武装蜂起し、【島原の乱】へと発展していき――――――、」
石田”「松倉勝家は【乱】を引き起こした大罪人として斬首され、松倉家は改易されることとなった」
石田”「因果応報と言えばそれまで――――――いや 首一つでは足りぬほどの罪業だが、」
石田”「いったい何が“五条の名君”を残虐非道に貶めたのか、俺はその真相が知りたい」
石田”「家名の低い成り上がりだったことへの劣等感から たがが外れて暴走してしまったのかはわからないが、」
石田”「明らかにその変貌振りは常軌を逸しているとしか言い様がない」
石田”「となれば、いったい何があるというのだ?」
石田”「その秘密がこの“地獄”と化した霊山にあるという話だが――――――」
石田”「――――――信じていいのだな、原城?」
原城「はい。豊後様のお姿はこの小浜温泉に建てた私邸に入ったのが最後という情報です」
原城「おそらくは、この私邸か、あるいは雲仙岳にこもっているのではないかと思います」
石田”「ここまで情報を掻き集めてきて――――――ただではすまないぞ」
原城「元より廃城となり、【はぐれ城娘】となる運命だったのです」
原城「ならば、このまま【はぐれ城娘】となるのを待つだけの未来に逆らおうと思います」
原城「私も【城娘】ですから、扉や柵を破ることくらいできますので、どうか連れて行ってください」
石田”「好きにしろ」
石田”「俺は橘湾から脱出する。貴様も逃げる宛てがないのなら一緒に来い」
原城「ありがとうございます」
石田”「よし、では 行くぞ」\勅命/
原城「はい」
――――――小浜温泉街 領主屋敷
シュッ、スタッ!
石田”「――――――よし、これで無事に抜け出せたな」
原城「はい。番兵の方たちにはよい夢を……」
原城「しかし、豊後様が居るかもしれないのに、さすがに本城とは違い、警備は手薄でしたね」
石田”「百姓を酷使して回っている豊後守の手勢をこんな屋敷1つに何十人も回せるはずがないだろう」
原城「……はい。そうでしたね」
石田”「だが、雲仙岳周辺と思われる地図に気になる印がしてあったな」ピピッ
原城「便利ですね、それ。【未来】では重要機密を直接持ち出さずに内容をそのまま持ち出せるんですね」
石田”「立派な悪用なのだがな」ピピッ
石田”「しかし、これはどういうことだ?」ピピッ
原城「どうしたんですか?」
石田”「…………平成新山にあたる場所に何かがある?」
原城「――――――『平成新山』? 初めて聞きますよ、そんな山」
石田”「今は西暦1630年頃だが、西暦1990年代には雲仙岳――――――その中でも普賢岳の火山活動とその果ての噴火によって溶岩ドームが形成されるのだ」
石田”「そして、200年ぶりの“平成の島原大変”として、地域生活や経済活動に長期にわたって多大な被害を与えることとになった」
石田”「俺はその頃に生まれた人間でな。直接 関わりあいはないがが印象に残っている」
原城「そうだったんですか。えと、1990から1630を引いて――――――360年後」
石田”「(そう、奇しくも1990年代は冷戦の終結と共に新たなる脅威の出現の時でもあった――――――)」
石田”「そういえば、江戸期には2回 噴火して多大な被害を出しているな。しかも割りと未来に1つ起こる」
原城「そ、そんな……」
石田”「今から30年後に寛文の噴火と、それから18世紀の終わり頃の寛政の噴火だな。特に後者は“島原大変 肥後迷惑”と呼ばれたほどだ」
原城「どうかお救いできないのでしょうか?」
石田”「30年後の寛文の噴火は古焼溶岩と九十九島からだから、知ってさえいれば何とかなろう」
石田”「地図上で言えば、こことここから出てこのようにマグマが流れ出たようだ」← 金木青年の電子辞書からの情報
原城「な、なるほど……」
石田”「それから18世紀終わり頃の寛政の噴火“島原大変 肥後迷惑”だが――――――、」
原城「――――――“肥後迷惑”?」
石田”「ああ。“島原大変”で流れ出たマグマが有明海の南に流れ込み、それが津波となって対岸の天草を襲ったという」
原城「!」
石田”「…………話は戻るが、この島原半島の中心となる雲仙岳の峰の1つ:普賢岳には数世紀後には新たな最高峰が起つ」
石田”「それが『平成新山』というわけなのだが――――――、」
石田”「どうもその平成新山に相当する場所に何かがあるらしい」
石田”「(だが、俺の記憶が正しければ、その近辺に有るのは“平成の島原大変”で焼かれた普賢神社という名の仏閣――――――)」
石田”「(元々、古来より行基上人が開基した山岳信仰の霊山なのだ。神仏習合真っ只中で開かれた霊山――――――)」
石田”「北寄りの普賢岳の方面だ。そこまで行けるか?」
原城「まかせてください。私は平山城ですので山道も問題ありません」
石田”「だが、原城が持ち場を離れてここにいる以上、隠密行動しなければならないな」
石田”「そして、“島原の暴君”御用達の処刑場ともなっている。誰かしら居る可能性があるからな」
石田”「人目を避けるために夜間を一挙に駆け登って行く他あるまい」
石田”「もちろん、小浜から普賢岳までは距離は相当あるから、覚悟せねばならんがな」
原城「そうですね。わかりました」
――――――深夜
――――――雲仙岳:普賢岳周辺
原城「なるべく、山肌に身を屈めて…………解除」ピカァーーーン!
石田”「よし」
原城「…………見つかってませんよね?」
石田”「おそらくな。さすがに冬の山のに好き好んで残る獄卒はそういないはずだ」
石田”「しかし……、やはり慣れんな。最悪の乗り心地だ」
原城「あ、すみません。これでも隠密のことを考えてできるだけ地響きを立てないように登ってきたつもりでしたが……」
石田”「気にするな。人体が馬のように乗り心地のいい身体構造じゃない以上、責めるのは筋じゃない」
石田”「さて、暗いから何とも言えないが、――――――ここが雲仙岳の最高峰:普賢岳だ」
石田”「後にその新たな最高峰となる平成新山はあの方角に昇り起つことになる」
原城「そこに何かがあるというのですね」
石田”「ああ。少なくとも山岳信仰の神社仏閣や後に温泉利用される処刑場以外には何もないはずなのだ」
石田”「(更に言えば、麓の小浜温泉以外にも山中の雲仙温泉は【乱】の後に利用が確立されているらしい)」
石田”「ともかく、暗くて足元が覚束ないだろうが、ここからはPDAを頼りに平成新山の予定地へ向かうぞ」
原城「はい。『転ばぬ先の杖』が必要となりますね」 ――――――大十字架を得意げに掲げる。
石田”「確かその大十字架は仕込み銃になっていたはずだが、そんな粗末な扱いをして大丈夫なのか……?」
テクテクテク・・・・・・
石田”「…………む?」ピタッ
原城「どうしました?」
石田”「――――――あそこ、微かにだが光が漏れていないか? あの洞穴か何か」
原城「あ、本当です。洞穴の奥に何かが光って――――――夜じゃなかったら全然見えなかったはずです」
石田”「そうだな。そういう意味ではあたりだったな」
石田”「ヒカリゴケやロウソクのような淡い光などではないぞ、あれは…………」
石田”「あれは人工の光――――――」
原城「行きます。私が洞穴に入ってみます」
石田”「頼む」
原城「主よ、我が十字架に宿りて洞穴に巣食う魔の手から我を守りたまえ…………」
テクテクテク・・・・・・
原城「…………来てください」ブルンブルン ――――――命綱のロープを揺らす。
石田”「よし」テクテクテク・・・・・・
石田”「来たぞ」
原城「では、また進んでいきますね」テクテクテク・・・・・・
石田”「ああ」
石田”「ロープはまだあるな。足りなくなれば新しいのを結んでいけばいい」
石田”「しかし、見間違いでなければいいのだが…………洞穴の外まで見えた光の元には一向に辿り着く気配がない」
石田”「そして、いったいどこまで この洞穴は続いているのだ?」
石田”「まさか、火口にまで続いているのではあるまいな…………地獄の釜まで降りていく道か」
――――――雲仙岳:平成新山 予定地(360年後) 内部
石田”「…………何だと思う、これは?」
原城「洞穴の奥に――――――いえ、雲仙岳の内部にこんな構造物が…………」
石田”「まるで、SF映画に出てくるような宇宙船のような――――――」
――――――平成新山となる場所の内部にあったのは巨大な空洞と謎の施設であった。
そこは溢れんばかりの光の白に包まれた無垢なる空間であった。山の中だと言うのに清潔感すら感じる神々しい空間であった。
見渡せば、その空間の壁や天井、床面は眼を傷めない程度の光を反射し続ける謎のコーティングがされており、テカテカと照り返し続けていた。
そして、その空間の中央には、卵のような施設――――――全面コーティングされた気球船のような巨大な何かがそこにはあったのだ。
しかし、その清潔感はどこか歪であり、白の中の白――――――混じりけのない純粋過ぎる白の空間であったのだ。
山の中あるいは冷え固まったマグマの塊の内部だと言うのに、塵一つ感じさせない場違いな清潔空間に足を踏み入れたことに罪悪感すら覚えた。
しかし それは、かつて古代に行基上人が開いたという霊山の神域に土足で入り込んでしまった というような神聖な気持ちなどではない。
その罪悪感は『非生物的で無機質で無慈悲な空間に迷い込んでしまった』という有機生命体としての本能が生理的な嫌悪感と拒否感を伝えていたのである。
機械文明に対する自然と慣れ親しんできた文化の中で育まれた生理的な何かが目の前に存在する何かに強い拒否感を植え付けていたのだ。
そして、石田少将には直感的にそれが何なのか、どういう目的でここに存在するのかも、噛みあった歯車のようにピタリと理解できたのである。
石田”「――――――後の平成新山に当たる場所になぜこんなものが存在するのか、」
石田”「そして、――――――これがなんのために存在するのか、」
石田”「……わかったような気がする」
原城「わかるんですか!?」
石田”「雲仙岳に登る前に言ったよな?」
――――――雲仙岳は歴史的な大噴火が起きるということを。
石田”「今から30年後には寛文の噴火、160年後には寛政の噴火、360年後には平成の噴火だ」
石田”「おそらく、この目の前に存在する卵のような、気球船のような何かはそれを阻止するために――――――」
原城「…………!」
石田”「あまり理解したくはないが、目の前に存在する西暦21世紀の技術を凌駕する建造物を目の当たりにしては、そう納得せざるを得ない……」ピッ
認証システム「パスワードを入力してください」
ヒント:天草四郎
原城「…………『天草四郎』?」
石田”「だと思ったよ」ピッピッピッピッ
原城「どういうことです?」
石田”「どこの誰だかは知らないが――――――、」
石田”「平成新山となる場所で、『天草四郎』に関心があり、松倉豊後守の時代にこれが存在しているということは――――――、」
認証システム「クリアー」パァーーー、ガコン!
原城「ひ、開いた……!」ビクッ
石田”「おそらく――――――、」
――――――【遠い遠い未来】、愛する島原の地で起きる惨劇を回避しようと時空を越えてきた人間が現れたのだろうな。
原城「…………【遠い遠い未来】」
石田”「ただ、どういった要因かは知らないが、松倉豊後守による悪逆非道を更生することはできなかったようだがな…………」
――――――平成新山 内部で発見した謎の施設 内部
原城「何なんでしょうか、この空間は…………落ち着きません」オドオド
石田”「さすがに時空を越えるだけあってハイテクの塊だな」
石田”「だが、それを従える主人はいったいどこにいると言うのだ?」
石田”「【未来】の技術ならば、防犯技術は遥かに向上していて 誰も入れないぐらいが当然なはずだが…………」
石田”「最初の扉のパスワードだけで防犯装置が他に働いていない この状況――――――」
石田”「そして、松倉豊後守が消息を絶っているのがこの雲仙岳――――――」
コツンコツンコツン・・・・・・
石田”「おそらく、この部屋は外見から構造を判断するに大型の倉庫かホールのような場所だろう」
石田”「よし、特に問題はないな。進入するぞ」
原城「はい」
石田”「む」ピタッ
石田”「――――――!」
原城「こ、これは――――――!?」
島原半島の中心地となる雲仙岳――――――、
その雲仙岳の中の峰の1つ:普賢岳――――――、
その普賢岳と呼ばれる領域で後の平成新山となる場所――――――、
その平成新山 予定地で見つかった洞穴を突き進んだ先の未知なる空間――――――、
その空間の中に存在する明らかに時代を間違えている謎の施設の内部を慎重に進んでいた石田少将たち。
その中を『基本的な施設の内部構造は恒久不変である』という仮定のもとにすらすら進んでいった先にあったのは――――――、
石田”「な、何かの生物兵器の培養槽か……!?」ゾクッ
そこには石田少将ならよく見慣れた巨大な培養槽が立ち並ぶ怪しげな生体プラントが機能していたのであった。
しかしながら、所々で点検を長年 放置してきたせいなのか、目に見えて故障しているだろう箇所がいくつも目についた。
そして、培養槽の故障の放置によって死に至ったと推測される何かが培養槽の中でヘドロ化しているのもはっきりわかった。
原城「こ、これは“馬”なのでしょうか?」ガタガタ・・・
原城「おぉ、神よ。このような所業が許されるものなのでしょうか……」アーメン
石田”「………………」
石田”「……む」
石田”「…………待て、あっちの集合モニターを見てみろ」
原城「『集合モニター』――――――あれのことですか」
原城「…………?」
原城「!?」
この不気味な生体プラントを恐る恐る見て回ると、石田少将は集合モニターが生きていることに気づいた。
明らかに経年劣化で内部部品が故障するほどの年月がすでに経っていることが予想されるのに未だに電力供給されていることを疑問に思っていたが、
やがて、このエネルギーの出所がこの施設を包み込んでいる謎の無限反射の光の空間と関係があるのではないかと思い至った。
つまり、“無限反射光発電システム”がこの施設を支えているのではないかという仮説に思い至ったのである。
しかし、目敏い彼は集合モニターが映し出した先にあるのが、この施設の内部だけではないことに逸早く気づいた。
原城「あぁ、ああぁ…………」ガタガタ・・・
石田”「大丈夫か」ガシッ
原城「だ、大丈夫です……」ガクガク・・・
石田”「ここから先の調査は俺一人でやる。お前はいつでも脱出できるようにしていろ。いいな」
原城「は、はい…………」ペターン
石田”「さて、俺でも使えるか? ユニバーサルデザインが浸透しているのならインターフェイスはそう変わらんはずだが……」ピピッピピッ
石田”「うぅ…………」ウゲェー
石田”「くっ!」ビシッ
石田”「やはり、松倉豊後守はすでに――――――」ギリッ
集合モニターに映し出されたものを事細かく見ていった結果――――――、
松倉豊後守の手によって“地獄”と化した雲仙岳の処刑場の様子がチャンネルの半分以上を使って接続されて見ることができた。
処刑場の光景はまさに“地獄”であり、先程 足を踏み入れた無機質な未知なるものへの恐怖を覚えていたのに対して、
今度は身の毛のよだつ生々しい死の恐怖と気持ち悪さが呑み込めないような勢いで襲いかかってきたのだ。
しかし、思わず胃の中のものを吐き出しそうになるものの、石田司令は数々の修羅場をくぐり抜けてきた卓越した精神力でなんとか持ち直す。
そして、端末を操作してそれぞれの光景と光景の関連性を探り出し、やがて 松倉豊後守の残虐非道の真実の断片に辿り着くのであった。
――――――急展開!
石田司令が初めて訪れた“地獄”雲仙岳にて辿り着いた真実とは残虐極まりないものであった。
石田”「う、うぅん……!?」ピタッ
石田”「ま、まさか、あれほどまでのキリシタンの弾圧や百姓への拷問――――――これまでの搾取は全てこのためにあったのか!?」
石田”「げ、腐れ外道がッ!」ガン!
石田”「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!」ガンガン!
石田”「うああああああっ!」ガン!
石田”「――――――万死に値する!」ゼエゼエ
石田”「松倉豊後守めぇ!」
――――――人間を資材に化け物を創りだしていたのか!?
石田司令が辿り着いた答えとはそれであった。
モニターとモニターの限られた視界から場所と場所の関連性を見出し、カメラ越しの光景の意味を考え抜いた末の結論がそれであった。
とあるモニターとモニターの光景において、ここと同じような生体プラントが作動しており、
片方の培養槽に人間らしき物体、もう片方の培養槽に人間の臓器のような禍々しい何かが入っていたのが見えた。
2つの培養槽は奥に見える一回り大きい培養槽に接続されており、邪教の館の悪魔合体のような装置ができあがっていたのである。
そして、――――――大方の予想通り、
装置が起動すると2つの培養槽の中身がミキサーに掛けられたかのようにグチャグチャに掻き回されて吸収され、
2つの培養槽を結ぶパイプを伝って合体用の培養槽に混入され、人間らしき物体と禍々しい何かが悪魔合体したのである。
しかし、具体的な形が出来上がるまでには時間がかかるらしく、悪魔合体装置は他にもいくつも存在しており、
培養槽の中で悪魔が形を得てこの世に生まれ落ちるまではそのまま放置して成熟を待つという流れになっていた。
そして、成熟してこの世に生まれ落ちる――――――培養槽から開放されると、
人間のような姿形をしたその不気味な存在はゆっくりとその場を後にしてカメラ枠の外の闇へと消えるのであった。
この怖気が走る衝撃映像を見て、石田司令は最終的な結論に至った。
それは――――――、
1,松倉豊後守なる史実の人物はすでにこの世にない
2,すでに【この時代】は【遠い遠い未来】からの侵略を受けていること
3,人々を弾圧してなお繰り出そうとするルソン島攻略の兵力は悪魔合体で賄っているということ
4,これから戦うのは人間ではない何か――――――松倉豊後守を騙る怪物を抹殺すること
5,平和的解決手段など存在しないということ
6,今すぐに雲仙岳に存在する施設を全て破壊すること。――――――あらゆる手段を以ってして!
何が何でもルソン島に悪魔の軍勢を送り出すのを阻止しなければならない!
――――――冬の遅い夜明け
石田”「くっ、すでに外は日の出を迎えていたか(…………あまりにも長話に付き合いすぎたな)」
原城「どうしますか? 小浜の橘湾まで降りるよりも――――――」
石田”「…………普賢岳の山頂から対岸の天草が見えるようだな」
原城「はい。それだけに、遠くからでも私たちの姿が見えてしまう――――――」
石田”「ということは、直接 ここを狙い撃つことができる!」
原城「え」
石田”「なら、ここに長居する必要はない。すぐにでも天草に帰還して雲仙岳に対地砲撃を仕掛ける!」
原城「え、ええ……!?」
石田”「急げ! あの【検非違使】とかいう時間犯罪者が死んだことで、これまで豊後守を騙ってきた何者かがすぐに反応を示すはずだ」
石田”「俺たちが平成新山まで来て、そこで島原にまつわる秘密の全てを知ったことを知れば――――――」
原城「!」
原城「できるだけ急いで下山します! ――――――神よ! 力を!」ピカァーーーン!
石田”「急げよ! 逆上して“島原大変”を引き起こされてしまったら、【乱】を収めるどころの騒ぎではなくなる!」
石田”「それどころか“肥後迷惑”だけじゃない! “霧島迷惑”や“桜島迷惑”――――――果ては“九州迷惑”に発展する可能性すらある!」
石田”「まったく! 雄大なる自然を制御しようという企てはいつも諸刃の剣となって人類に牙を剥くものだ!」
石田”「【西暦23世紀】から遥々故郷の人々を救おうという野心は見上げたものだが、」
石田”「とんだ爆弾と怪物を世に解き放ってくれたものだ!」
????「あげゃ? あげゃげゃげゃ!」
――――――雲仙岳 山麓:小浜温泉街
タッタッタッタッタ・・・ザッザッ!
石田”「!」
島原城「そこまでですわ、原城のお嬢ちゃま? それにあっちこっちを嗅ぎ回っている薄汚い野狐さん?」
島原兵「――――――!」ジャキ!
原城「…………読まれていましたか」ヒソヒソ
石田”「……島原城か。押さえられるか?」ヒソヒソ
原城「無理です。相手は槍に加えて鞭も持っています」ヒソヒソ
石田”「なるほど、鞭か。それなら何とかなりそうかもな(――――――程度の低い兵隊共といい、これなら効きそうだな)」ヒソヒソ
島原城「いいかげん豊後様に楯突くこの不届き者をやーっておしまい!」
島原兵「うおおおおおおおお!」
石田”「全員、これを見ろ!」\勅命/
原城「あ」
島原兵「!?」ピタッ
島原城「――――――ちょ、『勅命』!?」ビクッ
石田”「よし、行け!」ブン!
バララララララ・・・!
艦攻妖精”「ご無事で!」バララララララ・・・!
島原兵「て、鉄の鳥…………!」ザワ・・・
島原城「あ、あなた……、天皇の――――――」アワワ・・・
石田”「しかと見させてもらったぞ、松倉豊後守が行ってきた悪逆非道の数々を!」ビシッ!
石田”「世は確かに将軍の治世ではあるものの――――――、」
石田”「忘れたか! 葵の紋の上には菊の御紋があることを!」ドン!
島原城「うぅ…………」 ――――――石田司令の迫力に完全に圧されている!
原城「おお……!」
石田”「汝ら、実に罪深し! 幕命によりてキリシタン 弾圧すること 致し方なしとはいえ、」
石田”「かつて行基菩薩によって開かれたこの霊山を無辜の民の悲鳴と流れる血で穢した罪、魂魄何百回生まれ変わっても償いきれん!」
石田”「汝らに欠片の程の慈悲の心があるのならば、即刻 神仏と民にこれまでの罪業を詫び、己が主君の非を訴えよ!」ドドン!
島原兵「うぅ、ああぁ…………」
島原兵「え、ええと…………」オロオロ・・・
島原兵「ど、どうする?」
島原兵「どうするもこうするも、俺だって好きであんなことやってきたわけじゃない……!」
島原兵「お、俺だって、拷問してきたわけじゃないぞ。それは他の連中がやっているのであって、同じだって思われたくないぞ!」アセアセ
島原兵「そうだ。俺たちは逆らえないだけなんだ。“しかたなく”今まで豊後守に仕えてきただけなんだ!」
島原兵「そうだそうだ! 逆らったら、俺たちも拷問を掛けられるんだ! 鬼のフリしてやっていくしかなかったんだよ!」ザワザワ・・・
島原兵「そうだそうだ! 姫様と原城様、どっちを選ぶかと言ったら断然 原城様だ!」
島原城「な、何を言って――――――、あなたたち!?」
原城「…………みなさん」ホッ
石田”「フッ」ニヤリ
島原城「あ、あなたたち……、臣民でありながらそんなことを言ってタダですむとは――――――」
原城「……姫様」
原城「これが人の心です」
島原城「……!」
原城「たとえ、力でもって人を寄せつけたとしても、人の心がそれで寄せられることはないのです」
原城「ですから、姫様がどれだけ士や民に囲まれて愛されているように見えても心が満たされなかったのは、」
原城「あなたの心にみんなの心が寄せられていなかったからなのです」
原城「先程、裏切られたように感じられたかもしれません。しかし――――――、」
原城「厳しいことを言えば、最初からあなたや豊後様に心から忠誠を誓っている人間はいなかっただけ――――――」
原城「それにあなただけが気付かずにいただけの話なのです」
島原城「…………!」
島原城「き、気に入らない! ホントに気に入らないのよ、あなたは……!」ブルブル・・・
島原城「そうやって弱いくせにいつも強がりを言ってぇ!」ブン!
島原兵「あ!」
石田”「………………」
バチン!
原城「…………っ!」ヒリヒリ
島原兵「原城様!」
島原城「ど、どうして……?」
島原城「どうして、私の鞭をそのまま受けたのよ? 守るとか避けるとかいろいろあったじゃない…………付き合いだって長いんだし」
島原城「なのに、どうして……!?」
原城「――――――言ったはずです」
原城「たとえ、力でもって人を寄せつけたとしても、人の心がそれで寄せられることはないのです」
原城「ですが、力で以って私を傷つけた姫様ですが、そんな姫様は私のことを気遣ってくれました」
原城「それは私の無力な行いによって、姫様の心が私の心に寄せられたということに他なりません」
島原城「わ、私が……、この私が?! なに? 原城のお嬢ちゃまなんかに私が魅了されたっていうの?」
島原城「み、認めない――――――」
石田”「――――――認めろ。実際 そのとおりだ」
島原城「…………!」
石田”「貴様はすでに力の暴力に屈しない原城の心に屈しているんだ」
石田”「確かに城娘としての実力は島原城――――――貴様の方が何倍も上手なのだろうが、」
石田”「それなのに拭い切れない劣等感とは、貴様自身が――――――いや、貴様の心の奥深いところで原城に敗けを認めているから出るものだ」
石田”「それが嘘だと思うのなら、そのまま その鞭で何遍も何遍も気が済むまで叩いてみればいい。貴様は嫌でも認めざるを得なくなるだろう」
島原城「うっ…………」
石田”「本当はわかっているのではないか?」
石田”「そもそもの貴様の劣等感はいったいどこからやってくるのか――――――、」
石田”「その根本にあるものは原城からではないだろう。原城にあって自分にはないものを気にして劣等感となっているのだからな。原因は他にある」
島原城「あぁ…………」
石田”「はっきり認めてしまえ!」
――――――生みの親である松倉豊後守の悪逆非道にはもう耐えられない。
石田”「とな!」
島原城「!!?!」
原城「!」
島原兵「…………姫様」
島原城「…………い、いやぁ。いやぁ!」グスン
島原兵「え」
原城「あ……」
島原城「だってぇ、私はぁ…………」ヒッグヒッグ・・・
島原城「“五条の名君”松倉重政氏によって造られた水の都:島原にふさわしい城なのよぉ……」グスングスン
島原城「それがどうして“血と暴力の都の令嬢”ってなんて陰口叩かれなくちゃいけなくなるのよぉ…………」グスングスン
原城「…………姫様、やっぱり姫様にも愛の心はおありでしたのね」
島原城「私だっていっぱいみんなから愛される城になりたかったぁ」シクシク・・・
島原城「でも、みんなみんな 少し席を外したらみんなして悪口を言ってぇ…………」シクシク・・・
島原城「私、本物の島原城が建築されてすぐに生まれた【城娘】なのに こんなの、こんなのないよぉ…………」シクシク・・・
石田”「…………辛いな、それは(――――――因果応報とは言え、憐れな存在だ)」
島原兵「………………」
石田”「だが、わかっていて他人を傷つけるのなら尚悪い」
石田”「それでますます自己嫌悪と劣等感が悪化して人が遠ざかっていくぞ。悪循環だ」
島原城「で、でも、どうすればいいかなんてぇ…………豊後様には逆らえないし」グスン
原城「…………姫様」
石田”「……なるほどな(【城娘】にとって城主や築城者は絶対の存在なわけか。それは確かに『逆らう』という発想や勇気が湧いてこないわけだ)」
石田”「だが、どんな迷宮や自己暗示にも抜け道はある」
島原城「へ」
石田”「いいか、そういう考え方をするのではなく――――――、」
ヒヒヒィイン!
石田”「!?」
原城「しまった!」
島原城「あ…………」
島原兵「ひ、ひぃいいいいい!」
豊後守「これはどういうことかな、我が娘:島原城よ」ゴゴゴゴゴ・・・
島原城「え、あの、豊後様、これは、あの、その…………」シュン
原城「え、え? え!? 違う、前に会った時はこんなにも…………」アセダラダラ
石田”「――――――貴様が豊後守か」アセタラー
豊後守「うん?」
石田”「特と見せてもらったぞ、貴様の全てを」
豊後守「ほう?」
石田”「いいかげん“豊後守”を騙るのは止めたらどうだ?」
島原城「へ」
島原兵「!?」
原城「…………!」
豊後守「………………」
石田”「ここで出会ったが百年目! 貴様の野望はここで潰える」ジャキ! ――――――リボルバー銃!
石田”「そして、“彼”に成り代わって【島原の乱】も“島原大変”も全て解決させてもらうぞ」
島原城「え、え……?」
豊後守「…………お前に機会を与えよう、我が娘:島原城」
豊後守「今すぐ目の前にいる徳川幕府に弓引く者たちを討ち取れ」
島原城「え…………」
豊後守「――――――お前たちもだ!」ギロッ
島原兵「ひぃ」ビクッ
島原兵「し、しかたがねえんだ! しかたがねえんだ!」ジャキ!
島原兵「お、おい!? あ、うぅううう…………」ジャキ!
島原城「うぅ…………」ジャキ!
豊後守「そうだ、それでよいのだ」ニンマリ
原城「……くっ、みなさん!」
石田”「まあ、期待なんてしてなかったさ」
石田”「それよりも、さっさと脱出する手筈が、……すまない」ヒソヒソ
原城「大丈夫です。ここまで来たらもう、あなた一人を逃すぐらいなら何とかなりますから」ヒソヒソ
原城「…………覚悟はできています」
原城「大丈夫です。信じる者は救われる――――――悪が栄えた試しなし。いつの世も人の悪を挫くのは人の誠から出た行動から!」
石田”「ああ。そのとおりだ」
島原城「…………原城、あなた、まだ諦めないの?」
原城「はい。私はもうここで果ててもいいです! 自分の気持ちに嘘をつかないですむから!」
島原城「――――――!」ドクン!
豊後守「やれぇえ!」
島原兵「う、うわああああああああ!」ダダッ!
石田”「腰が引けているな。だが、来るというのなら、死ぬよりも辛い目に遭うぞ――――――」ジャキ!
原城「ああ、神よ。彼の者たちに憐れみを…………!」ジャキ!
豊後守「!?」
島原城「やあああ!」ブン!
島原兵「うわあああああああ!?」ドッゴーン!
原城「……姫様!」パァ
豊後守「血迷ったか、我が娘よ!?」
島原城「……いいかげんにしてよ、豊後様」
島原城「わけわかんないよ! 毎日毎日、何の罪もない人たちを苦しめて島原の人たちから笑顔を奪ってさ!」ブルブル・・・
島原城「だって、私を作ってくれた松倉重政氏――――――豊後様はそんな人なんかじゃない!」
島原城「“五条の名君”で関ヶ原や大坂で活躍した立派な武士!」
島原城「そんな人がどうしてこんなひどいことばかりするようになっちゃったのさ!?」グスン
豊後守「儂の禄で食っている世間知らずの娘に何がわかる!?」
原城「違います! たとえ世間知らずの娘であっても、人としての道理を弁えているからこそ、娘は父親の行いを恥じることができるのです!」
豊後守「貴様が入れ知恵したのか、旧有馬の支城めが!」ジャキ! ――――――得物の十文字槍を構える!
豊後守「死ねええええええ!」ブン!
島原城「へ」
原城「あ……(ま、間に合わない!? 槍が視界いっぱいに飛んでくる――――――!?)」
石田”「死ぬのは貴様の方だ!」バンバン!
豊後守「ふん!」カキンガキーン!
原城「え」アセダラダラ
島原城「え!? 今、槍を突き出したと思ったら、槍で弾き返していた?! 全然で目で追えなかった!?」
豊後守「こちらの動きを読んでいなければ、ボロ臭い支城など一思いに殺れたというのに…………やるな」
石田”「いいかげん正体を現したらどうだ? こっちはとっくに貴様が人間ではないことを知っているのだからな」
石田”「慣れない家族ごっこや内政でだいぶ鬱憤が溜まってるんじゃないのか、」
――――――“鬼武蔵”!
原城「え、…………“鬼武蔵”?」
島原城「え、誰それ?」
豊後守「…………ふふ、ふふふふはははははは、」
豊後守「あげゃげゃげゃげゃげゃ!」
石田”「…………!」アセタラー
島原城「あ、豊後様……!?」ゾクッ
原城「な、何……? この背筋が凍るような下品な笑い声…………」ゾクゾク・・・
石田”「む、姿が――――――!」
豊後守「あげゃげゃげゃげゃげゃ!」モクモクモク・・・・・・
島原城「そ、そんな、豊後様ぁ…………」ペターン
人間無骨”「あげゃげゃげゃ! そう、俺、“鬼武蔵”ぃ! 豊後守ぃ? 誰それぇ~? ここにいるのは現代に蘇った“鬼武蔵”で~す♪」
原城「では、本物の豊後様は――――――」
人間無骨”「あげゃげゃげゃ! ちょっと前に死んじゃった~♪」
人間無骨”「俺の言うとおりに立派なお城を建ててくれて、僕ちゃん大満足で~す♪」
人間無骨”「それからね~? おじちゃんは僕のためにたくさん贅沢させてくれたんだよ~♪ 嬉しかったな~♪」
島原城「…………え」
石田”「この外道がッ!」ギリッ、ピン!
人間無骨”「ううん。俺、“外道”じゃなくて“無骨”――――――“人間無骨”で~す♪」チッチッ
人間無骨”「それじゃ、自己紹介もこれぐらいにしてぇ~、」
人間無骨”「ここにいる人 全員 NADEGIRI だぁ~!」ヒャッハー!
人間無骨”「次いでに、小浜の人間もSATSUGAIしておこ~! あげゃげゃげゃ!」
石田”「貴様が死ね!」バンバン!
人間無骨”「ああ~、無駄無駄~――――――って、あれぇ?」
石田”「伏せろ! そして、すぐ次に備えろ!」
原城「は、はい!」
島原城「え」
石田”「燃えてしまえええええええ!(――――――とっておきの焼夷弾だ! 有機生命体なら焼き爛れて死ねぇ!)」
バキュンバキューン! モアアアアアアアアアアアアアアアアアメラララアアアアアアアアア!
人間無骨”「あ、ああああああ~! あつい、あとぅいいいいいいいいい!」ジタバタ
ヒヒヒィイン! パカラパカラパカラ・・・!
原城「あ、今です!」ジャキ!
原城「今こそ島原の民の怒りと嘆きを受けなさい!」バンバン!
人間無骨”「あぁあああああ~~~~」フラフラァ・・・ボトン! ――――――炎上しながら落馬! 馬はそのままどこかへと行ってしまう。
島原城「あ…………」
石田”「…………やったか?」アセタラー
人間無骨”「やってましぇ~ん!」バッ
石田”「なっ――――――」ドスッ
原城「そんな――――――」
人間無骨”「地獄の釜に慣らされた俺にその程度の炎なんて効きましぇ~ん」
石田”「うわぁあ……」ゴロンゴロン!
人間無骨”「?」
人間無骨”「おっかしいな。手応えなかったぞ、“人間無骨”なのになんで貫けなかったんだぁ~?」
島原城「ちょ、ちょっと、あなた、大丈夫!? 生きてるの!?」アセアセ
石田”「…………九死に一生を得たか」グワハッ
石田”「(辛うじて\勅命/に槍があたったおかげで必殺の一撃を回避することができたが、)」
石田”「(それでも槍から伝わった破壊的物理エネルギーが扇越しに俺の胸を突き飛ばしていったぁ…………)」ズキズキ・・・
原城「ああ、よかった……」バンバン!
人間無骨”「あ、やっぱ生きてる」カンカン! ――――――余所見しながら原城の放つ銃弾を軽く弾いている。
石田”「くっ、それよりもだ――――――!(馬鹿な!? やつは有機生命体ではないのか?!)」ヨロヨロ・・・
石田”「(有機生命体ならばやつの身体はすでに炭化して消し炭となっているはずだ……)」
石田”「くそっ、こんなとんでもない化け物を生み出しておきながら、作った人間は管理されるようとはな!」ゼエゼエ
石田”「貴様だけは海に解き放つわけにはいかない! ルソン島が地獄になる!」ギリッ
――――――その通りです、石田様!
石田”「!」
人間無骨”「おおぅ? 【城娘】がひぃ、ふぅ、みぃ――――――」
あさひ姫「その者だけは何が何でも排除いたします!」ジャキ!
石田”「…………来てくれたのか。早かったな」
佐和山城「当たり前だ。いったい何回こういった場面に出くわしていると思っている?」ジャキ!
伊賀上野城「さあ、ここはお引きを――――――」
石田”「ダメだ。ここまで来たのなら俺には他にやるべきことがある!」
伊賀上野城「こんな時にですか?」
人間無骨”「あぁ、これは急いで山から呼んでこないとか? まあ、ここで全員 NADEGIRI しちゃえば万事OK!」
石田”「今から俺が示すポイント全てに戦艦:霧島による対地砲撃を行わせる!」
石田”「そこにはニセ豊後守が島原の民を生贄に捧げて生み出した屍兵たちが生み出されているのだ」
石田”「“島原の暴君”が自領民をここまで酷使してなお、ルソン島への遠征に回せる兵力が生み出せた理由はこの“地獄”に存在していたのだ」
伊賀上野城「!」
石田”「すでに艦攻を飛ばしてある。後は霧島が来て、俺がポイントで発煙筒を焚いて攻撃を誘導する必要がある!」
伊賀上野城「……承知」
伊賀上野城「では、お背に。参ります――――――」
人間無骨”「おっと!」シュッ
佐和山城「なっ!?」
伊賀上野城「!?」シュッ
石田”「――――――疾い!?」
人間無骨”「ここでお前もSHINE」ブン!
伊賀上野城「ぅうう!?」 ――――――跳躍したところを思いっきり脚を槍を貫かれてしまう!
あさひ姫「伊賀忍、石田様!?」ダダッ!
伊賀上野城「きゃあああ!?」ドスン!
石田”「おわっ!?」ドスン!
石田”「ぐあ、すまない。すぐに立てるか!?」ヨロヨロ・・・
伊賀上野城「くっぅう、脚をやられました……。間一髪、肉を斬られた程度でしたが、もう一瞬 遅ければ完全に脚を――――――」ゼエゼエ
伊賀上野城「私のことは構わず、早くお逃げを!」
石田”「…………!」アセタラー
人間無骨”「これでMINAGOROSHIの準備はOK? あげゃげゃげゃ!」
石田”「貴様ごときにぃ……!」ギリリ・・・
人間無骨”「ほぉれ、ほぉら!」ブンブン!
石田”「うぉぐううううううう!?」スパスパスパ・・・
あさひ姫「石田様!?」
佐和山城「貴様、遊んでいるな!?(やつめ! こちらがすぐに手出しできないことをいいことに浅く切り刻んで遊んでいる!)」
佐和山城「くぅうう……(こちらとしては圧倒的なまでの戦力不足! すぐに駆けつけることができたのはこれしかいないとは!)」
佐和山城「(本隊と合流できれば まだ希望は見出だせるが、――――――相変わらずの無茶ぶりに味方を振り回してくれるな、石田少将!)」
石田”「あぁ…………」ボロボロ・・・
人間無骨”「あげゃげゃげゃ! とっどめぇ~♪ これでまず一人、SATSUGAI 完了っと」ニタニタ
島原城「や、やめろおおおお!」ブン!
人間無骨”「っと!」パシッ ――――――鞭を片手で受け止める!
島原城「あ」
人間無骨「ほぉら!」ブン! ――――――そして、逆に鞭を持っている島原城を投げ飛ばしてしまう!
島原城「きゃあああああ!」ドッゴーン!
原城「姫様!」
原城「石田様……石田様から離れなさい!」ギリッ
人間無骨”「効かない効かない。はい、聞かない」カンカン!
原城「くぅ……、神よ、力を…………」
人間無骨”「それじゃ、SAYONARA――――――」
石田”「…………!」ピクッ
人間無骨”「?」
あさひ姫「あ、あれは――――――!」
石田”「――――――!」\ ◎ /
人間無骨”「あ、まぶしい――――――」
バチィイイン!
石田”「…………!」ゼエゼエ
人間無骨”「………………」
人間無骨”「打ったね? 今、僕のこと、その扇で打ったね?」
人間無骨”「SHINE」ブン!
石田”「くぅううううう!」ズサーーーー!
人間無骨”「!?」
人間無骨”「おかしいな~? さっきからおかしいな~」
人間無骨”「なんでさっきから確実に一突きしたと思ったのに、攻撃が通らないんだぁ~?」
人間無骨”「…………? あれれぇ? なんか顔の辺りが痒いな、むず痒いな~、何だこれ~?」
人間無骨”「あ、ああ? ああああああああ!? あげゃげゃげゃげゃ!」ジュワーーー!
人間無骨”「何だこれ~?! 顔が、俺の顔が溶ける!? 溶けるぅうううううう!?」ジュワァーー!
石田”「な、何が起きた?」ゼエゼエ
原城「は、初めて有効打が……」
あさひ姫「あれは、あれこそが“志那都神扇”……!」
福居城「遅くなってすまなかった!」ドドン!
あさひ姫「福居城!」
佐和山城「今だ! その隙を逃すと思うか! それ かかれ! これで終わりだ!」ブン!
人間無骨”「あげゃ!?」ザシュザシュザシュ!
人間無骨”「あげゃーーーー!?」ジタバタ
福居城「両手は抑えた! 観念するのだな!」
人間無骨”「あ、あげゃ……」
島原城「…………全部 嘘だったのね」ジー
原城「……姫様」
島原城「たくさんの人を苦しめてきて――――――でも、それでも私への気持ちは嘘じゃないって信じてた」
島原城「でも、それが全部 幻だっただなんて……!」グスン
島原城「最低!」ブン!
人間無骨”「あげゃああああ…………」ザシュザシュ!
島原城「………………」
島原城「……さようなら」ポロリ
人間無骨”「」
ポタポタポタ・・・・・・ゴトン! ――――――跡形もなく消え去り、その場には得物の十文字槍だけが残された。
石田”「…………これで終わったのか?」ゼエゼエ
伊賀上野城「よ、ようやく立ち上がれました……」ヨロヨロ・・・
グラグラグラグラァ!
伊賀上野城「――――――って、きゃああ!」ドタッ
石田”「なっ、これは――――――!」ヨロヨロ・・・
原城「――――――地震!?」ヨロヨロ・・・
佐和山城「これは大きいぞ……」ヨロヨロ・・・
石田”「これはまずいか……?」
佐和山城「何が『まずい』のだ?」
石田”「今すぐに雲仙岳に設置された屍兵生産工場を破壊しなければ……!」
石田”「あの生体プラントは補助電力に“地熱発電”、メイン電力に“無限反射光発電システム”で動いているという話だから、」
石田”「霧島の主砲で山肌を大きく削ることができれば それでシステムが崩壊するはずだ……」
石田”「だが はたして、対地砲撃によって火山噴火を誘発させないですむのだろうか?」
石田”「だが しかし、今もあの悪魔合体システムが動いていることを考えると、今すぐにでも消し去ったほうが世のためだな」
佐和山城「?」
石田”「すまないが、すぐにでも雲仙岳の指定したポイントに俺を連れて行ってくれ! 一大事なんだ!」
佐和山城「それは構わぬ。私は山城だからな。山登りは問題ない」
石田”「なら、頼む!」
原城「石田様! それならば私も――――――」
石田”「ダメだ。貴様には噴火した時のことを考えて人々を安全に避難させる役割についてもらいたい」
原城「!」
石田”「そして、――――――島原城」
島原城「…………えっと、私?」
石田”「そうだ、貴様だ」
石田”「すでに豊後守は存在しないことがはっきりしたのだ」
石田”「これからしばらくは馬鹿息子が正式な棟梁になるまで、島原の安全と保全に努めろ」
石田”「原城と連携して、これから起こるだろう“島原大変”を解決していって欲しい……」
島原城「………………」
石田”「わかったな! わかったら返事をするんだ!」
島原城「わ、わかったわよ! 何様のつもり、あなた!」
島原城「ふ、ふん! 言われなくても島原の愛する臣民は私が守るのよ!」
石田”「……それでいい」ホッ
あさひ姫「石田様」フフッ
石田”「すぐに行動だ!」
福居城「私はどうすればいい?」
石田”「……一応、ついてきてくれないか。屍兵共の相手をしなければならないかもしれないからな」
福居城「――――――『屍兵』? まさか、山間で戦った“人ならざる者”たちのことか?」
石田”「!」
石田”「……すでに解き放たれていたか!」
石田”「くっ、もし仮に“鬼武蔵”が事前に解き放ったのだとしたら、これから――――――」
あさひ姫「石田様!」
石田”「何だ!?」
あさひ姫「少しお休みになっていってください」
石田”「なんだと!? 一刻を争う時なのだぞ!」
あさひ姫「『一刻を争う時』だからこそ休憩をとってください!」ドン!
石田”「…………!」
原城「そうです! 石田様はここまで頑張ってくださいました。ここで少し肩の力を脱いてもいいのではないでしょうか」
佐和山城「そうだな。平常運転とはいえ、さすがに今回は危なっかしい」
福居城「殿からは『何が何でも死なせてはならない』というお達しを受けている。それなのに死に急がれてはこちらが困る」
石田”「………………」
石田”「なら、どこか落ち着ける場所で今後の動きについて話し合おう。情報の共有が必要だな」
城娘たち「御意!」
カタカタカタ・・・・・・ ――――――大地に伏した魔性の十文字槍がひとりでに震えていた。
――――――数十分後、
石田”「よし、艦攻による伝令もうまくいったみたいだな。雲仙岳に十分な兵力が集中できたし、避難準備も進んでいるようだな」
石田”「そして、問題の雲仙岳にある生体プラントの破壊だが、――――――沖には霧島が配置についたようだな」
あさひ姫「はい。間を置いてみれば、状況が落ち着いて来ましたね」
石田”「…………感謝する。気持ちばかりが焦って『一度は引いてみる』というやり方を忘れてしまっていた」
石田”「そういう意味では、確かに【城娘】は【艦娘】とは違って戦場の呼吸というものをよく心得ているな」
石田”「だが、ここまで俺の無理に皆を巻き込んでしまったな……」
あさひ姫「何を今更」
石田”「?」
あさひ姫「石田様は道を切り拓ける人間なのです。その切り拓いた道を舗装する役目を担う人間がいてもいいじゃありませんか」
あさひ姫「そして、その道を舗装する人のお手伝いをする人もいていいじゃありませんか」
石田”「……なるほど。それも一理あるか」
あさひ姫「はい。一理あります」
石田”「…………ついにここまで来たのだな、俺たちは」
あさひ姫「はい」
石田”「おそらく、【乱】の元凶は全て絶たれたはずだ。これで【島原の乱】は起きなくなるだろう」
石田”「そして、その代わりに起こるだろう“島原大変”を乗り切った先に――――――」
あさひ姫「はい。現在の私たちの関係の終焉が訪れるのでしょうね」
石田”「…………そうだな」
石田”「…………そろそろ時間だ」
あさひ姫「はい」
石田”「一応、小浜にこうして仮拠点を置くことになったんだ」
石田”「火砕流がどう転ぶか天のみぞ知るが、ひとまずはここを帰る場所とする」
あさひ姫「はい」
石田”「では、行ってくる!」
――――――いってらっしゃいませ、あなた。
あさひ姫「――――――!」ビクッ
あさひ姫「ええい!」ドン!
石田”「ガッ!?」ゴテン! ――――――唐突に突き飛ばされる石田司令!
石田”「――――――!?」ブチッ、ゴトン ――――――へそのあたりに鋭いものが微かに荒く撫で、“神扇”を結ぶ紐が斬られた!
石田”「貴ぃ様ぁああああああ!(そんな馬鹿な! こんなあっさり――――――!?)」
ザクッ、ビチャアアア、ポタポタポタ・・・・・・
あさひ姫「くぅううううう…………」ポタポタ・・・・・・ ――――――腹の真ん中から激しい赤の鮮血と十文字槍!
人間無骨”「あげゃげゃげゃげゃ!」
人間無骨”「ホぉント 何なのぉ、あんたたちぃ? さっきから僕ちゃんの攻撃が外れてばかりで僕ちゃん大不満足~!」
あさひ姫「やはり、ただでは死にませんか、“鬼武蔵”ぃ!」ギリッ
人間無骨”「おぉ怖い怖い! 怖いよ~!」ピョインピョイーン!
あさひ姫「くぅ……」ヨロッ
石田”「大丈夫なのか!?(さっき突き飛ばされるのが遅かったら、俺にもあの十文字槍が――――――!)」
あさひ姫「…………大丈夫です、石田様」ゼエゼエ
あさひ姫「【城娘】はこの程度では死ぬことはありません」ニコッ
あさひ姫「――――――変身」ピカァーーーン!
石田”「…………この光(そう、この光は輝かしいはずなのに眩しくなくて暖かくて――――――)」
あさひ姫「これで少しは楽になりました……」ハアハア・・・
石田”「だが、明らかに消耗している! このまま戦っても無駄死するだけだ!」
あさひ姫「…………石田様? この場合において最悪の状況とは何ですか?」ジロッ
石田”「…………!」
あさひ姫「私がここで死ぬことですか?」
あさひ姫「――――――違いますよね?」
石田”「うっ」
あさひ姫「この場合においての最悪というのは、これから“島原大変”を収める石田様が面白おかしく命を弄ぶ外道の槍に屈することです」
あさひ姫「私はこの場において『石田様を全力で守る』――――――そのことを託されてここにいるのです」
あさひ姫「ですから、ここは私に任せてください、石田様」ニコッ
石田”「だが、迎えが――――――」
あさひ姫「伊賀忍も案外なさけない。二度 同じ相手に遅れをとるとは…………」
あさひ姫「いいでしょう、石田様! ここは私が命を懸けて送り出します!」
石田”「どうする気なのだ!? やつはすぐにそこに――――――」
あさひ姫「決まっています! ――――――こうやるんですッ!」グイッ
石田”「うおっ!」グワッ
あさひ姫「飛んでけえええええええええええええええええええええ!」ポーーーイ!
石田”「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウン!
あさひ姫「行ってください、石田様。――――――【乱世】の彼方まで」
あさひ姫「そして、役目を果たしてください。【乱世】の終焉はあともう少しで訪れます」
あさひ姫「――――――ですから!」ジャキ!
あさひ姫「てやあああああああああああ!」ブン!
人間無骨”「おおぅ!?」ガキーン!
あさひ姫「【乱世】の申し子である“鬼武蔵”――――――あなただけは【乱世】の道連れにするッ!」ゴゴゴゴゴ!
人間無骨”「っと、ぉう?! 急に強くなりやがったぁ?」
人間無骨”「でも、さっきから裏を掻かれてばっかりだなぁ、僕ちん」テヘッ
人間無骨”「さっきの…誰だっけ――――――どこかで見たことがある男の方なんて、どうせ大したことなんてできないし、」
人間無骨”「こっちの…やっぱりどこかで見たような憶えがある【城娘】の方は腹を貫かれたからどうにでもなるって思って、」
人間無骨”「面白おかしく人生最期の瞬間を見届けようとしたら――――――、」
人間無骨”「まさか、あんな方法でねぇ。――――――笑える! あげゃげゃげゃげゃ!」ブン!
あさひ姫「くっう! てぃやあ!(やはり【城娘】でも【兜】でもない――――――肉体は虚ろなもの!)」ガキンガキン!
あさひ姫「てぃ! そこっ!(となれば、本体はその魔槍にあるということ……!)」ブン!
人間無骨”「…………やる! やるねぇ!」イヒヒヒヒ・・・
人間無骨”「これならどうだぁ!?」ブン!
あさひ姫「くっ……!(でも、武器を一刀両断できない上に、強力な肉体を持っているから隙がない!)」ガキーン!
あさひ姫「くぅうううう……(いったいどうすれば この蘇った化け物に真っ向から勝てると言うの……!?)」ズキズキ・・・!
人間無骨”「へへ」ニヤリ
あさひ姫「!」ズキィイイイイン!
人間無骨”「へやあああああああああああ!」ドン!
あさひ姫「きゃあああああああああああああああ!」ズサーーーー!
あさひ姫「う、うぅううう…………(しかも、最初に受けたこの傷は…………【城娘】にこうまで深手を追わせる魔槍!)」
あさひ姫「(まるで、【乱世】の業を凝縮したような禍々しさと狂気の波動の渦を巻いていて――――――!)」
あさひ姫「(「変身」した状態なのに一向に快復の兆しが見えない…………呪文を唱えれば少しは良くなるのかしら?)」
あさひ姫「うぅうう……、あ(あ、あれは――――――!)」
――――――追い詰められた あさひ姫のすぐ目の前に見えたものとは!?
人間無骨”「これで終ぉぅわりぃ!」ブン!
あさひ姫「あ――――――」
ザシュウウウウウウウウウウウウウウウウ!
あさひ姫「あ、あぁぁぁ………… 」 ――――――胸に深々と十文字槍が突き刺さる!
あさひ姫「(………………石田様ぁ)」
――――――夏草や兵どもが夢の跡
あさひ姫「人生 夢の如し」
あさひ姫「」
人間無骨”「あげゃげゃげゃげゃ! やったぁ! やったやったぁ! ようやく倒した! 倒せたよ、僕ぅ!」
人間無骨”「今回の獲物は歯ごたえバツグンで最高!」
人間無骨”「うぅん?」チラッ
人間無骨”「あげゃ? 確かこれって、あの男が咄嗟に使った扇子――――――」
人間無骨”「んんんんんんんんん! 思い出したら腹が立ってきたぞ~!」
人間無骨”「やいやい、扇子! あんたごときがこの“鬼武蔵”を倒せるもんならやってみろ!」\ ◎ /
人間無骨”「パタパタパタパタ~。あぁ~、涼しんじゃ~、ぼけ~!」ポイッ
人間無骨”「結局、さっきのあれ、何だったんろう?」
人間無骨”「まあいいや。次なる獲物を求めて俺の裏山に集合~! あげゃげゃげゃげゃ!」
ダダダダダダ・・・!
あさひ姫「」
あさひ姫「」
あさひ姫「」
あさひ姫「」
あさひ姫「」
――――――手にむすぶ水に宿れる月影のあるかなきかの世にこそありけれ
あさひ姫「諸行無常」ガハッ
あさひ姫「あぁ……、あぁ…………」ゼエゼエ
あさひ姫「石田様、まだ私は死んではいませんよぉ……」ヨロヨロ・・・
――――――順逆二門無し。大道心源に徹す。
あさひ姫「身をも惜しまじ 名をも惜しまじ」
あさひ姫「あの【乱世】の悪鬼を鎮めるためには、全ての穢れを祓うこの“神扇”が要るから…………」\ ◎ /
あさひ姫「死にません……! これをお渡しするまでは…………!」ゼエゼエ
あさひ姫「何だろう? こんなにも苦しいというのに、こんなにも悲しいというのに…………」ゼエゼエ
あさひ姫「――――――不思議」ゼエゼエ
あさひ姫「石田様の出会いから今日までの日々がどうして昨日のことのように思い出せるんだろう?」ゼエゼエ
あさひ姫「まるで、日が昇っては沈んで、その間に月が照り、日が昇ると共にひっそりと消えていくような毎日の営み――――――」ゼエゼエ
あさひ姫「たった一瞬の出来事が全ての運命を変えることだってある」
あさひ姫「そう、全ては朝露のように生まれ落ちては消えていく――――――」
あさひ姫「でも、楽しかったな……」
あさひ姫「夢のまた夢――――――これはいい夢でした」
あさひ姫「あぁ…………」フラフラ・・・
あさひ姫「必ず……、必ず…………、」
あさひ姫「あなたの元へ参りますからね」ニコッ
――――――約束しましたから。必ずあなたの元へ。
―――
――――――
―――――――――
――――――――――――
――――――2014年12月某日前の嵐の夜
ピュウウウウウウウウ! ザァー、ザァー、ザァー! ゴロゴロ・・・ピカーーーーーン!
飛龍「あれ? ――――――真っ暗!?」
霧島「い、いきなり嵐!?」
ヲ級「ヲヲ…………」ポロポロ・・・
石田「俺は、俺は、俺はあああ!」グスン
石田「うわあああああああああああああああああああああああああああ!」
――――――2日後、
――――――趣里鎮守府:病棟
左近「殿? さすがに今回のことで俺も――――――」
石田「わかっている」
石田「すまなかった。もう二度と無断出撃はしない」
左近「…………!」
左近「そ、そうですかい、殿。それなら俺も安心です(――――――ちゃんと目を見て 言ってくれた)」
石田「今までさんざん苦労をかけたな」
左近「いえいえ、全てはこの瞬間のためにあったのですから」
石田「俺には過ぎたるものだな、本当に」
左近「ど、どうしたんですぅ? まるで人が変わったように見えますよぅ?」
石田「…………そうか。【こちら】ではたった一晩の出来事になっているのか」ボソッ
石田「いや、大事を取って1日 入院させられて いろいろなことを考えているうちにな?」
石田「――――――『俺と同じ“氏”で有名な男』のことをふと思い出していてな」
左近「――――――『同じ“氏”』?」
左近「……ああ 確かに『あの御仁』は殿に似ているのかもしれませんね」
石田「俺は昔から『そいつに似ている』とよく言われてきた」
左近「…………殿」
石田「だが、やつはただの歴史の敗者だ。俺はそんなやつのようにはならない、そいつ以上にうまくやれると思っていたのだが、」
石田「どうやら俺とやつは時代が違うだけで、もし俺がやつの時代に、やつが俺の時代に生まれていたのなら互いに同じ道を選んでいただろう」
左近「そ、それは……、何と言うか、凄いことですな……」
石田「すまない。突然の変節のようで戸惑うだろうが、」
石田「俺はもっと内を省みてこの鎮守府のみなのことを大切にすべきと思っただけだ」
石田「だからこそ、我が身をもっと大切にしておくべきなのだと、――――――そう思っただけだ」
左近「……そうですか。俺は嬉しいですよ、殿」
左近「1つ言わせてもらえば――――――、」
左近「俺はたとえ殿が『あの御仁』とどれだけ似ていようとも、今の殿なら『あの御仁』を超えていると確信していますよ」
石田「そうか。…………嬉しいものだな」テレテレ
左近「俺も嬉しいですよ、殿」ニッコリ
左近「ところで、殿?」
石田「なんだ?」
左近「どうして、殿は扇の製作なんてしているんですか? それもたくさん――――――」
石田「ああ これか」
石田「――――――俺の趣味だ」サラサラ
\ 大 /
左近「お、これは――――――――――――“大一大万大吉”」 \ 一 /
\ 大 大 /
石田「よし!」コトッ \ 万 吉 /
左近「殿。確かこれって、殿が嫌っている『あの御仁』の――――――」
石田「時同じくしていた薩摩の島津義久が自室に極悪人たちの人物画を飾って寝ていたのと同じことだ」
石田「これをみなに配ろうと思う。――――――もちろん自費で勝手にやっていることだ。配るだけ配ったら後は知らん」
左近「そうですか、それだけの意気込みでやっていたのですか!」
左近「殿、あらためてこの左近めは感服いたしました!」
石田「大袈裟だな。反面教師にしているだけだろうに」
左近「いえいえ、殿は無自覚かもしれませんが、」
左近「これは自分が嫌っているものを受け入れ、それを乗り越えようと努力しようとしていることの現れ!」
左近「なかなかできることじゃありませんよ、これは!」
左近「そして、歴史の敗者の旗印でしかなかった“大一大万大吉”を殿の手で新たな意味に塗り替えられるよう、一層 励んでいただきましょう」
石田「………………」
石田「そうか、俺は“お前”のおかげで変われたのか――――――、」
――――――あさひ姫。
――――――――――――
―――――――――
――――――
―――
――――――昨日(嵐の夜の翌日)
――――――病棟
石田「………………」
石田「………………」
石田「…………おかしい」
石田「何か……、何か大切な『何か』を忘れているような気がする……」
石田「そうでなければ、あの時の俺が意味もなく叫び続けるわけがない…………」
石田「何なのだ? 今の頭にモヤがかかったようなこの気分は…………『九日』、違う」
石田「結局、あの無断出撃で得たものは何もなく、ただ部下たちに要らぬ迷惑を掛けたというだけの話…………」
石田「もうしてはならないな、こんなことは、もう…………」
石田「………………?」
石田「なぜ今、俺はそんな当たり前のことに違和感を覚えたのだ……?」
石田「…………わからん」ハァ
石田「――――――だが、」
石田「こうやって病床から窓を見続けるしかないこの状況――――――、」
石田「どこかで覚えがあるような――――――馬鹿な、俺は今まで命の綱渡りを幾度と無くしてはきたが入院したことはないはずだ」
石田「そう――――――」
飛龍『たまには――――――そう、たまには、戦いを忘れてもいいよね?』
石田「…………なぜなのだ? 俺は少なくとも憶えている限りでは入院生活の経験がないはずだが」
石田「それとも、気が触れたのか? しかし、そうだとしても今更過ぎる話だが……」
コンコン!
石田「……入ってどうぞ」
飛龍「提督」
石田「飛龍ですか。昨日は本当に――――――」
飛龍「いえ。提督が無事で――――――」
――――――ありがとう、今までずっと。
石田「――――――あ」
飛龍「へ!?」カア
石田「…………すみません。思った以上に混乱しているようです」
飛龍「そ、そうですか…………」フゥ
石田「それで、どうしました?」
飛龍「あ、て、提督? 提督の看病をしてあげようと思って」
石田「そうですか。別にいいのですが、やりたいと言うのであれば――――――うん?」ピクッ
飛龍「あれ? どうかしましたか、提督?」
石田「……いえ」
飛龍「そう」
飛龍「でも、良かった」ニコッ
石田「?」
飛龍「提督はずっとずぅっとみんなのためを思って誰よりも頑張ってきたから」
飛龍「たまには、こういう日が来たっていいと思うな」
石田「――――――『こういう日』というのは?」
飛龍「あれですよ、あれ。――――――みんなのためにがんばってきた提督を労う日です」
石田「公人としての当然の義務を果たしたまでのこと。礼など必要ないのですがね」
飛龍「……もう!」ヤレヤレ
石田「む」
飛龍「提督? 今日だけでもいいから私やみんなの笑顔を見ていて。ずっと一人で頑張ってきた提督へのご褒美だからね」ニッコリ
石田「!?」
飛龍「提督は自分の事、過小評価しすぎです。いったいどれだけ慕われているか わかってないんです――――――」
石田「………………」ポカーン
飛龍「って、提督……? どうしたんですか?」
石田「………………」ポタポタ・・・
飛龍「提督!?」
石田「む」
石田「ハッ」
石田「くっ」バッ
石田「!?」\大一大万大吉/
石田「うおわっ!?」ビクッ
\大一大万大吉/ ボトッ
飛龍「あ、落としましたよ、提督」ヒョイ
飛龍「新しいものに変えていたんですね、提督。――――――“大一大万大吉”?」
飛龍「あ」
石田「な、なぜ、こんなものが!? “勅命”は――――――俺の扇はどこへ行った!?」アセアセ
石田「…………いや、あの嵐の夜に落としてしまったか。それも致し方ないか(お、落ち着け、落ち着くんだ……!)」ハァ
石田「飛龍、欲しいのでしたら差し上げます」
飛龍「………………」
石田「……飛龍?」
飛龍「あ」
飛龍「う、うん! 提督、私、大切に――――――って、あれ?」グスン
飛龍「あ、あれ? 私、なんでかな? どうして『提督の扇をもらえた』って思っただけでこんなに…………」ポタポタ・・・
石田「そ、そんなに嬉しかったんですか……?」
飛龍「う、うん。嬉しいんです。提督からもらえるものだったら何でも……」
石田「…………そうか。そういうものなのか」
飛龍「そうなんです」
石田「しかし、それは私が作ったものでは――――――」
石田「……いえ、そういうものが欲しいのならば、他にたくさん作ってもいいですよ」
飛龍「本当ですか、提督!?」
石田「扇を作ること自体は手慣れてますからね。問題は扇絵を同じものにするべきか――――――」
飛龍「統一しましょう、提督」
石田「え」
飛龍「だって、“大一大万大吉”って“一人がみんなのために、みんなが一人のために尽くせば、大吉になる”って意味じゃないですか」
石田「確かに、字面から見た解釈はそうととれますけれど……」
飛龍「はい、決定。提督は12月24日のクリスマスまでに頑張った子たちに私のと同じものを作って配ってください」
飛龍「できなかったら、『めっ』ですからね?」
石田「わかりました。作りましょうか。――――――退屈でしたし」ヤレヤレ
飛龍「ありがとうございます、提督」ニッコリ
飛龍「あ、必要なものや材料を言ってください。買ってきますから」
石田「では――――――(不思議だな。俺は今まで“大一大万大吉”が大嫌いだったはずなのに…………)」
石田「(そういえば、12月23日には『司令部』の会合があったな――――――『司令部』は横須賀にある)」
石田「(俺は横須賀に行かなければならない。――――――そう、横須賀に)」
石田「(なぜ今すぐにでも行きたいと思ってしまうのであろう?)」
石田「(…………そこに答えがあるのか?)」
石田「(――――――浮かんでは消えていく光景、忘れてはならない大切な何か)」
『提督、私は“ここ”でお待ちしております』
『今度は征する力ではなく護る力として、提督の部下として、【艦娘】として――――――、』
『この命 果ててても私が御守りします!』
――――――超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢 -この命 果てても私が御守りします!- 完
Next:第7話W 鎮守府の守護神 -侵食される鎮守府- に今度こそ続く!
超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢 -この命 果てても私が御守りします!- の構成
【艦これ】世界
第7話W 鎮守府の守護神 -侵食される鎮守府-
――――――2014年12月某日前の嵐の夜
↓
【城プロ】世界
――――――
序……序章:禁断の【城娘】との出会いと【乱世】の世界
起……第1章・第2章:唐津での話
承……第3章・第4章:天草での話
転……第5章・第6章:霧島での話
結……第7章・第8章:島原での話
――――――
↓
【艦これ】世界
第7話W 鎮守府の守護神 -侵食される鎮守府-
――――――2014年12月某日前の嵐の夜 以降
↓
第8話 12月23日 -三笠公園にて-
異世界漂流者
・石田司令/少将(すないスケ)
・正規空母:飛龍
・空母ヲ級(ヲシドリ)
・戦艦:霧島
これにて、超番外編1は完結となりました。はたしてどれだけの人が読んでくださったのかはわかりませんが、ご精読ありがとうございました。
やっと蛇足感のある超番外編1が終わりました。
本分であるプレゼンとしては要らない物語ですが、二次創作の物語としては石田司令の変化と彼がそこで得たアイデアが次の提案に繋がっていくので、
そこを過程だから省くのはもったいなく、同時に【城プロ】に提案内容があったので書き始めたものなのですが、
2015年春イベントが終わってからの完結になるとは………………。
本当に申し訳ありませんでした。スレも落とすとは何たる不覚か……!
【御城プロジェクト~CASTLE DEFENSE~】 -沿革-
参照:御城プロジェクト -城プロ- 攻略 Wiki*
URL:http://wikiwiki.jp/shirocolle/?%CB%DC%BF%D8%A4%AB%A4%E9%A4%CE%A4%AA%C3%CE%A4%E9%A4%BB#af06e1de
――――――2014年
07/01……………公式サイトがオープン
9月……………クローズドβテスト開始
―――――→ 11/11…… 『御城プロジェクト』と名前を改めて正式サービスが開始
11/21-11/28……正式オープン記念:経験値アップ キャンペーン!!
12/12-01/13……新イベント「初詣を護れ! 稲荷山決戦!!」開始
――――――2015年
01/16…………【近代改築】前後の城娘を同じ部隊に配置できるよう修正 = 名称の異なる城娘ならば同じ部隊に入れられるようになった
02/05-02/20……新イベント「古都のお宝を探せ!」開始 ※海外の城娘が早くも登場
03/03……………新マップ「国盗り」実装
03/28…………『運営チームにて問題点などを検討した結果、ゲーム全体の根本的な改修をともなう大幅なリニューアルを行うことを決定』したことを告知
―――――→ 04/27から今秋まで…大幅リニューアル作業の為、ゲームサービスを長期休止
――――――およそ半年間のサービス期間であった。
なお、引き継ぎ(コンバート)が決定しているものは以下の通り。
・お客様が所有されている「全城娘」
注意1:【改築】した城娘は改築状態で引き継がれますがパラメータとレベルは引き継ぎません。
例)『リニューアル前』→『坂戸城[改壱] Lv30、『リニューアル後』→『坂戸城[改壱] Lv01』
注意2:【近代改築】した城娘は近代改築状態で引き継がれますが、パラメータとレベルは引き継ぎません。
例)『リニューアル前』→『大坂城 Lv30』、『リニューアル後』→『大坂城 Lv01』
→ カードに登録されている城娘は全てコンバートするが、初期値にリセットされるぞ。
・お客様が所有されている「装備」 …………お守り、厄除け水晶を含みます。
1,お客様が所有されている下記の「道具」 → 標準要石、銀の要石、金の要石
2,高速築城ホイッスル、高速修繕ベル
3,快眠まくら、後詰要請の狼煙、免罪符
4,縄張場開放鍵、修繕場開放鍵、天守閣拡張
5,「天守閣拡張」の全拡張数
6,「縄張場」の拡張枠数
7,「修繕場」の拡張枠数
→ 課金解放した要素はみな引き継がれるぞ。レア装備も引き継ぐのでこれまでの頑張りが無駄にならない。
※引き継がない項目
・城娘」「装備」のパラメータ ※レベルや経験値を含みます。
・「引継ぎが決定している項目」に表記のない「道具」
・資源(米、木、石、鉄、金)
・所領
→ 所領や資源が無いので強力な城娘部隊によるリニューアル版開始後の序盤でスタートダッシュはほとんど期待できない。
※その他の情報
・【番付論功行賞】について、
3月戦果の報酬は4月に配布されます。 ※4月戦果の報酬は中止となります。
・新システム【増築】超成功について、
同機能の実装をリニューアル版で予定 ※3月下旬に予定していた実装は見送りとなります。
・稀少要石を用いた【近代改築】関連について、
【発掘】で入手可能な稀少要石を用いた【近代改築】で仲間にできる城娘の実装を予定しておりましたが、
該当の城娘はリニューアル版での実装予定となります。 ※3月下旬に予定していた実装は見送りとなります。
プレゼンターが【城プロ】に提案した内容のまとめ(申し訳ありませんが、だいたい前スレ参照)
→【城プロ】における筆者の認識を表した序文 >>61
提案内容その1:登場予想 ――――――前スレの内容
今後、実装するだろう【城娘】
・万里の長城
・紫禁城
・ロンドン塔
・ノイシュヴァンシュタイン城
・アテナイのアクロポリス
・テオドシウスの城壁
・サクサイワマン
・アラモ砦
・江戸城 ← 名前ならすでに出てきている
・彦根城 ← 2015/03/03 実装
・五稜郭
・伏見城
・出島
・聚楽第
・大垣城
・柳川城
・大津城
・安土城
・長篠城
・清州城
・岐阜城(←稲葉山城)
・姫路城………日本三大名城
・熊本城………日本三大名城
・上田城………真田昌幸の居城
・沼田城………真田信之の居城
・躑躅ヶ崎館…武田信玄の本拠
・伊作城………島津4兄弟生誕
・大宰府
・多賀城=鎮守府 ← 2015/02/05 実装
・大倉御所
割と早くに海外城娘:フランケンシュタイン城が出てきたわけだが、城娘が一体全体どの程度の歴史的範囲を網羅するのかがわからない。
艦娘が近代海軍でかつ第1次世界大戦以後の第二次世界大戦までの艦艇という極めて狭い歴史的範囲のために提案は簡単なのだが、
一般的には、【乱世】と呼ばれた戦国時代の城が多いことだろうが、それ以上のことははっきりとはわからない。
提案内容その2:【救出戦】…………【城プロ】初のソーシャル要素 >>62
提案内容その3:オリジナル城娘
「名護屋城」>>71 >>100 「柳川城」「宮永殿」>>212 「唐津城」「富岡城」>>213 「三笠」「皇居」>>
提案内容その4:最後の合戦場:【現代】 >>51
※【御城プロジェクト】は開発:DMMゲームです。【艦隊これくしょん】開発:角川ゲームスとはまったく関係ありません。
→ ただし、【艦これ】を雛形にして生まれたのは疑いようがないので二次創作としては楽しく使わせてもらいました。
最後に、2015年 秋からのリニューアル――――――すなわち、【城プロ】1周年記念リニューアルが成功することをお祈り申し上げます。
――――――
ブクブクブク・・・・・・
――――――
石田「…………わかるか? 俺が」
ヲ級「ヲヲヲ!」
石田「――――――そうだ。ここが【俺の居るべき世界】なんだ」
石田「お前が最期に作ってくれた、この“神遊扇”に全ての答えが込められていたな」
石田「もうすぐだな。もうすぐお前の身体が【この世界】に定着してまた一緒に居られるようになるぞ、」
――――――『No.58』。
――――――
ブクブクブク・・・・・・ ――――――石田司令と深海棲艦が見つめ続ける培養槽は絶え間なく泡を出し続けている。
――――――
飛龍「提督――――――あ」
石田「………………飛龍、か」
――――――
ブクブクブク・・・・・・
――――――
飛龍「――――――やっぱり、夢じゃなかったんですね」
石田「ああ。あれは決しては夢などではなかった…………」
飛龍「あ……」
石田「?」
飛龍「い、いえ……、何でも…………(――――――提督の私に対する口調が変わってる。夢だけど夢じゃなかった。夢は続いていた!)」
石田「………………」
ヲ級「………………」
飛龍「………………」
飛龍「…………提督。そろそろお夕飯ですよ?」
石田「ああ。わかってる」
飛龍「…………好きだったんですか? あの人のことが」
石田「……それはどういう意味だ?」
飛龍「あ……、ごめんなさい……」
石田「質問に答えるのならば、――――――そういうわけじゃない」
――――――ただ約束しただけ。
飛龍「――――――『約束』」
石田「そうだ。余計なことをしてくれたお返しをするためだ」フフッ
飛龍「――――――『お返し』」ホッ
石田「では、これぐらいにしておくか」
石田「行こうか、――――――『ヲシドリ』、――――――飛龍」クルッ
ヲ級「ヲヲヲ!」
飛龍「はい!」
スタスタスタ・・・・・・
――――――
ブクブクブクブク・・・・・・
????「――――――」ブクブク・・・!
????「――………………」パチッ
????「………………!」ジー
――――――
石田「――――――」
ヲ級「――――――」
飛龍「――――――」
――――――
????「マタ……アエタ…………提督…………」ニコッ
――――――
――――――それは“鎮守府の守護神”が目を覚ました瞬間であった。
――――――第7話W 鎮守府の守護神 -侵食される鎮守府- 完
Next:第8話 12月23日 -三笠公園にて- に続く!
番外編 2014年から2015年へ
6,2015年度への最後の展望
――――――3月26日 深夜【-艦これ-】最終回 放送
――――――拓自鎮守府
朗利「…………ハア」
朗利「俺、【アニメ】に関しては愛月提督の報告書しか見てないから――――――いや、報告書や評判だけでどの程度のものなのかはわかってはいたけど、」
朗利「実際に見るのはこれが初めてなわけだったんだ」
朗利「けど、けどぉ…………」ハア
ヒド ムゴ
朗利「こりゃまいったね…………脚本・構成の酷さじゃなくて酷さはわかってはいたけど映像作品としてのデキもこんなんじゃ」ヘナヘナ・・・
ドレッドノート「まったくもって、ジョークやユーモアのセンスの欠片も感じられないものだったよ」ヤレヤレ
朗利「【原作ゲーム】のユーザー、あるいはファンの一人として、――――――大変 遺憾でございます」メメタァ
大鳳「提督、ドレッドノート様……(どうしよう。せっかく出番が貰えたのに提督とドレッドノート様のご様子が…………)」ハラハラ
ドレッドノート「発想がデウス・エクス・マキナにすがる使い古された劇場の見世物のようで、品格や芸術性というものを感じられなかったよ」
朗利「俺は嫌だよ、こんなの。ガッカリだよ」
朗利「姿も形も見えない、明らかな作戦ミスを連発してきた“提督”がのこのこと帰還してきたことのいったいどこに感動がある?!」
朗利「“オヤシロさまの祟り”じゃないんだぞ! ミステリーじゃないんだぞ! “提督”はユーザーの分身なんだぞ! 実際に存在してるんだぞ!」
朗利「一応、大鳳を『歴史の再現』の打破とかなんたらかんたらのために裏で建造を進めていたように見えるけれど、」
朗利「明らかに説明不足だし、――――――結局【このアニメ】は悲劇を描きたかったのか、活劇を描きたかったのか、どっちなんだよ!」
朗利「死と隣り合わせの戦場の過酷さや歴史の悲劇性を語っているようで、その死の描き方に対してはずいぶんと軽いもんですよね?」
ドレッドノート「自軍の轟沈艦は今のところ如月という駆逐艦だけだったのだろう? 葬式まで行ったそうじゃないか」
ドレッドノート「その割には、敵とはいえ、あの隻眼のヲ級という明らかなキーパーソンを『轟沈しました!』だけで済ますとはな」
ドレッドノート「しかも、その後の髪飾りは――――――」
朗利「……ダメだ。最終話ぐらいは溜めていた力を解放して『終わり良ければ全て良し』なデキになると思っていたけど、」
朗利「最後まで愛月提督の報告書の通りの低クオリティですか。――――――これは凄い」
良かった所:嫁艦がアニメで動いている――――――ただそれだけ。
朗利「……やっぱり、思うんですよね、俺」ハア
――――――普通が一番じゃないかって。それで丁寧に作りこめばいいって。
朗利「ファンが求めているキャラクターもののアニメ化っていうのは、たとえ何の捻りのない王道ストーリーだったとしても、」
朗利「アニメという媒体なんだから、他で勝負できるポイントがいくつもあると思うんですよ」
朗利「ファンがアニメに期待しているのは、想像して補完するしかなかった空想のキャラクターたちの自然な仕草やアクションが大きいと思うんです」
ドレッドノート「そうさね。あれでユーモアのつもりだったのかしら?」
朗利「それが なんでいちいち立ち止まって――――――艦娘が人型だからですか? しっかりと反動制御しないといけないから止まるんですか?」
朗利「――――――そんなわけあるか!」バン!
大鳳「は、はい……」ハラハラ
朗利「人の形をして軍艦と同等以上の戦闘能力と作戦能力があるのが艦娘なんだぞ! 多少 人型としての制約があったとしても紛れも無い超人だぞ!」
朗利「なんでそういったことの配慮ができないのか…………公式が監修しているんだから素人の二次創作を超えるデキを期待してガッカリだよ」ハア
ドレッドノート「昔 そなたに言ってやった言葉を思い出すな」
――――――――――――
ドレッドノート「艦娘は兵器だ。それ以上でもそれ以下でもない。つまりはそれ以外のことができないのだ」
朗利「何を言って――――――だって、料理だってするし、音楽を嗜んだり、アニメだって見たりして本当に人間そのものですよ」
ドレッドノート「そんなものは士気を維持するためのもの――――――戦うために必要な手段だからこそ身につけていただけに過ぎぬ」
ドレッドノート「そうではない、そうでは! 本質的に艦娘は戦いに秀でてはいるが、人間そのものにはなれんのだ」
朗利「???」
ドレッドノート「例えば、艦娘は人型だが戦い方はまさしく艦艇だった時そのままの戦い方をしておろう」
朗利「ええ まあ……」
ドレッドノート「馬鹿な! 人間の姿形じゃないからこそ軍艦独自の戦い方が発達したというのに、」
ドレッドノート「それを引き摺るとは、いつの世も人というのものはライミーなのだな……」
――――――――――――
ドレッドノート「ははは! まさか【アニメ】では、人の形に引き摺られて、ただ単なる小娘にしかならんとは実に面白い!」ククク・・・
ドレッドノート「しかも、世界に冠たる最初の弩級戦艦たるこのドレッドノートの後に生まれし軍艦が【公式】で肉弾戦を仕掛けるとはなっ!」クスクス
ドレッドノート「それとも? 接近戦でしか敵を倒せない前弩級戦艦たちを過去にした わらわの――――――、」
ドレッドノート「“世界で唯一 潜水艦を体当たりで撃沈させた戦艦”の偉大なる功績にあやかってのことかねぇ?」
朗利「……長門のやつ、今 どういう気持ちなんだろう?」
朗利「肉弾戦するのは別にいいけど……(実際に【女王陛下のボウガン】を持たせて【ラムアタック】しまくってるスペシャルだからな、うちの長門は)」
ドレッドノート「どうやら 日出る国の軍隊は確かにモノの質はいいものの、それを扱いこなせる人材が相当 不足しているようで」
朗利「栄えある【公式アニメの第一弾】だというのに、なんでこんなデキなんだよぉ…………!」メメタァ
朗利「アニメ制作決定が伝えられてから、準備期間があれだけあったというのに! PVを見てたくさんのファンがワクワクしながら待っていたろうに!」メメタァ
朗利「羊頭狗肉じゃないか、こんなの! 火が通ってないクッキーやパンケーキを食わされた気分だよ! 焼き加減 最悪だ!」
朗利「いったいどれだけのファンをがっかりさせたと思っているんだ、おい!」メメタァ
ドレッドノート「これが劇場なら、カーテンコールの時にわらわが直々に【ボウガン】で狙い撃ったのにな? 時代に救われたな」
朗利「まったくですよ! 大本営はきっちりと後始末してくださいよ! ――――――賛否両論どころじゃなくて非難轟々なんですから!」
ドレッドノート「いや、それはないんじゃないか、最後のやつを見る限りだと」
朗利「あ」
――――――『続編制作決定!』
大鳳「……………」アセダラダラ
朗利「……うん」
朗利「いやぁ、良かったね~。まさかホワイトデーの時に呟いた言葉が現実になるなんて思いもしなかったよ」ニコニコー
朗利「まあ、固定客層の絶対数は多いわけなんだし、【艦これ】のアニメがこれ1作で終わるとは思ってはいなかったけど」
朗利『ま、俺は第2期がまっとうな王道アニメになることを期待するよ』
朗利「…………まだ続けるのか、この謎だらけのチープなデキのアニメを?」メメタァ
朗利「――――――リニューアルしろ。悪いことは言わないから」
朗利「もう日常だけを描けばよかったじゃないか! そもそも『日常7割 戦闘3割』という話はどこへいった!?」メメタァ
朗利「何もかもが定まってなくてブレすぎだよ、もう! 制作スタッフの大半がこのアニメの方向性やテーマを理解してないんじゃないの?!」メメタァ
朗利「せめて、軍オタからも支持を得てきた【原作】さながらの緻密な考証に基づいた迫力ある戦闘シーンをやってくれ、もう!」
朗利「あ、ダメじゃん。和気藹々とした日常を描くのが無難なのに、生きるか死ぬかの戦闘中心のシリアス構成なんて描けそうもないな、こりゃ!」
朗利「だいたいにして! 史実の重々しさを取り払ったライトな作風が特徴の【艦これ】じゃ絶対に合わない! 長続きしない!」メメタァ
朗利「シリアス展開は劇場版だけにするべきだな。――――――映画版ドラえもんの綺麗なジャイアンのようなメリハリを!」
ドレッドノート「時代が進んでどんどん物事が便利になっていって昔よりずっと豊かな生活ができるようになったとしても、」
ドレッドノート「人の心の豊かさばかりは時代が進んでも品質保証はしてくれないもんなんだねぇ……」
朗利「……そうですね」ハア
大鳳「………………」
朗利「あ、すまなかった、大鳳。せっかく誘ってくれたのに、こんな愚痴なんか聞かせて…………」
大鳳「あ、いえ。【アニメ】と【原作】が違うのはよく理解していますから」メメタァ
大鳳「ですから、気になさらないでください」ニコッ
朗利「すまない。そう言ってもらえて 本当に助かる」ホッ
ドレッドノート「そうさね。こんないい娘は滅多にはいないんだから大事になさい」
朗利「わかっております、女王陛下」
朗利「出番が最後だけだったようだけど、ここ一番の見せ場をもらえてよかったよ」
朗利「これからもよろしく頼むぞ、大鳳(けど、――――――ぽっと出のキャラが出番をかっさらっていくって、結局 吹雪の存在意義は何だったんだ?)」ニコッ
大鳳「はい!」ニッコリ
朗利「まあ 何にせよ、これで2014年というやつは終わりだ」
朗利「春が来て、いよいよ2015年が始まる――――――!」
朗利「そこからだ! 俺たちの夢が動き出すのは!」
ドレッドノート「フッ、言うようになったじゃないか」
大鳳「はい!」
朗利「さて、今日はこれでもう寝よう! 解散!」
ムゴ
朗利「酷いものを見せられたことなんて忘れて、明日も張り切って鎮守府ライフを送るぞ!」
ただ、【-艦これ-】がテレビアニメというメディア表現で公共の電波に載せて放送された以上は、
これをきっかけに【艦これ】に初めて興味を持ってくれた新規層と昔から支えてきてくれたファン層の【アニメ】をめぐる軋轢は消え得ぬものとなってしまった。
それが残念でしかたがない。少なくとも【艦これ】という共通のものを好きでいる者同士のはずなのに…………。
更には、これまでファンとしてコンテンツを支えてきてくれた古参提督たちの【艦これ】離れがこれで進んだことも事実のはずだ。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い――――――彼らが大切に育ててきたイメージを打ち砕いて【~艦これ~】を一斉に辞めるきっかけを提供した罪は大きい。
――――――願っているものはみんな同じはずなのに。
――――――斎庭鎮守府
剛田「……終わったな」
金本「ああ、オワッたな」
剛田「陸軍としては甚だ不快なシナリオであった」
――――――こんな海軍の無能のために我が陸軍将兵が水平線の彼方まで送り込まれて朽ち果てていったかと思うと腹が煮えくり返ってくる。
金本「ああ そう」
剛田「これから陸海合作していくというのに、わざわざ海軍――――――ひいては主力である艦娘のイメージダウンに繋がりかねない内容とはどうかしている」
剛田「もしや、我が国の国力を削ごうと画策している日本人を騙る何者かが中枢に潜り込んでいることの現れか?!」ガタッ
金本「いや、ただ単に制作会社――――――アニメ業界の体質の問題だろう」
剛田「というと?」
金本「“特撮の神様”円谷英二の『ハワイ・マレー沖海戦』の制作秘話のような丹念な考証や映像技術の工夫を怠っているからこうなったのだ」
剛田「ああ、参考資料として見たことがあるぞ、それ! あれは確かに理不尽な要求の中での汗と努力、それと仕事に対するこだわりを感じられた」
金本「つまり、まず1つとしては『制作スタッフの作品にかける情熱や愛情が偽物だった』ってことだ」
剛田「なんだと!? 冗談ではない! それが事実なら、これから【艦これ】に触れてもらう人たちに向けてなんてものを送り出したというのだ!」
金本「嘘だと思うんなら、同時期――――――2015年冬期アニメのデキをそれぞれ見比べてご覧なさいよ」メメタァ
金本「凄いぜ、俺の古巣はよ? いや、あれに関してはシリーズを通して絶対にアニメ制作の手抜きがないから本当に安心して見ていられる」ニヤリ
剛田「………………そうか、そんなに凄いのか(元“課金兵”のお前にとって心のオアシスとなってくれたか)」ホッ
剛田「つまり、制作現場の士気の低さが問題だったというのだな?」
金本「そうだろうな。これだけ売れないほうが嘘とも言える商材を使って、予算も準備期間もなかったはずがないからな」
剛田「そういえば、メガネを外しても戦える霧島は――――――」
金本「――――――言うな。そんな今更過ぎる野暮なこと」
金本「円盤はきっちりと売れたんだし、その結果『続編制作決定!』だったんだろう? いいことじゃないか」メメタァ
剛田「士気の低さだけじゃなく、制作陣の能力や人格の面でも相当 問題があるようにお見受けするが」イラッ
金本「熱心なファンがどう思うかなんかより、ちゃんと収益をあげた以上は商業的には大成功の部類といえるだろう」
剛田「――――――『商業的には成功』だと?」ピクッ
剛田「バカを言うな! あのデキで『続編制作』なんだぞ! 【艦これ】全体のイメージダウンの材料がまた増えるのだぞ!」メメタァ
剛田「――――――二・二六事件や陸軍悪玉論の前例から陸軍が未だに海軍よりも不人気なのと同じ理屈だ!」
剛田「一度 ケチが付いたらそれを取り除くのにどれだけの時間と労力がかかるか、まるでわかっちゃいないぞ!」
金本「そうだろうな。ビジネス用語で言えば、CS――――――Consumer Satisfactionを知らない前時代的な脳みそのアニメ制作なのかもな」
剛田「『Consumer Satisfaction』――――――『顧客満足』?」
金本「ああ。『顧客満足』だ。現代の企業競争は『できて当たり前』のことに『どれだけ付加価値をつけられるか』で勝負している」
金本「アニメ業界だと、監督だとか脚本っていうのは極一部の人間しかなれない――――――つまり、寡占状態ってわけだから競争がまず起こりづらい」
金本「競争がない ぬるま湯に浸かった連中がやるんでは品質向上なんて望めず、批判されたとしてもそれを真に受けることも稀だから――――――」
剛田「冗談ではないぞ! 2013年にサービスが始まったばかりだというのに、2周年を迎える直前にもう陰りが見えているではないか!」メメタァ
剛田「中長期の成長戦略としてはあまりにも迂闊な経営――――――事業拡大だったと言わざるを得ないぞ」
金本「そんなこと 言っても、サービス開始時の予想を大きく上回るアカウント数やメディアミックス展開できたんだし、著作者としても大満足でしょうよ」メメタァ
剛田「くっ」
剛田「あ」
剛田「――――――『メディアミックス』」
剛田「そうだ。そういえば、今年の8月27日に【Vita版】となる【改】が発売決定になったな、つい最近」メメタァ
剛田「あっちの方はどうなるのだ?」
金本「うん? 5月に発売じゃなかったのか? ――――――延期していたのか(この時期に再発表というのは何か胡散臭いものを感じるな)」メメタァ
剛田「確か『重巡:最上が最上改になるぐらいの変化』って感じらしいが……」メメタァ
金本「ああ。つまり、“別ゲー”ってことでしょう? まだ公式サイトに情報は載ってない?」メメタァ
剛田「あ、載ってる載ってる」ピピッ
剛田「…………どうも【オリジナル版】に比べてウォーシミュレーション要素を強化した感じっぽいな、これ」メメタァ
金本「ま、ランダム要素ありきのブラウザゲームじゃないんだし、コンシューマー版としてランダム要素よりもやりこみ要素の調整が重要だよな」メメタァ
剛田「なるほど、そうなると確かに“別ゲー”だな」メメタァ
剛田「となると、――――――課金要素も相当減るのか?」メメタァ
金本「その辺はどうだろうな? 発売してから【オリジナル版】に追加された新装艦や新装備なんかをどう取り扱うのか――――――」
剛田「本当に大丈夫なのか、これは…………(ウォーシミュレーションという敷居の高いゲームデザインで新規ユーザーを獲得できるのか?)」メメタァ
金本「何にせよ、CSの向上を図れない企業・組織は潰れていくのが社会の道理だな」
金本「ああ 良かったッ! 俺の愛する艦娘のほとんどが出演しなくてッ! もしくは物語に関わらないエキストラ扱いでッ!」アセタラー
剛田「そこな(あ、――――――せっかく【-艦これ-】とか言う謎クソアニメが終わったのに、)」
剛田「俺としてもその辺は同感だな(まさかの『続編』発表で辱めを受ける可能性が続いたことに少なからぬ恐怖を抱いてるな、これ)」
剛田「しかし、龍驤ぐらいは出番があるとは思ったんだが、本当に一般受けの良いと思われる(?)無難な人選だったな…………」
剛田「この食み出し者ばかりが集まる斎庭鎮守府での出演者は本当に少なかったな」
金本「戦闘要員ばかりが目立って、低燃費の遠征・周回要員がまったくそういった方面での活躍が描かれないとは思いもしなかったよ!」メメタァ
剛田「その最たるものとして、――――――潜水艦なんていたか? 遠征だけじゃなく戦闘の要だっていうのに」
金本「俺は他のアニメ 観るのに忙しかったからその辺のことは全然ッわかりません」プイッ
金本「目に毒が入らなくてよかった。――――――お前には悪いけど」ニッコリ
剛田「あれか? あまりにも見た目や言動があれ過ぎて――――――って、なら なんで祥鳳や島風はありなんだよ!」
剛田「にしても、如月を第3話で劇的に沈めた割には祥鳳の扱いが謎すぎて今でも物議を醸しているのだが、」
剛田「――――――島風! そういえば 島風、姿はあったけど今回セリフが1つもなかったような!? 何か言ったっけ?」
剛田「序盤でクソ生意気な印象が鼻についたのだが、何か最後ら辺は『居たの?』って感じになってたんだけど」
金本「は? ちょっと待てよ、島風は赤城や金剛に並ぶ知名度のキャラだろう? いわば【艦これ】の顔だろう?」
剛田「そうだ、陸軍でも知らぬ者がいないぐらいの顔役だ。陸軍でも非常に高い人気を誇る艦娘なのに…………」
剛田「それになんか度の過ぎたレズ描写というか――――――大井の存在感が異常!」
金本「それは俺も思った。確かに戦闘要員としては実際に欠かせないが、他にもキャラがいるのになんかやけに大井絡みのコマが長かった気がする」
剛田「おいおい、考えれば考えるほど扱いに酷い偏りがあるな! 出演できたと思ったら顔役が端役で、レズにばかりスポットライトが当たるのかよ」
剛田「登場する艦娘を厳選しておいて こんな扱い――――――!」
剛田「もう贅沢言わないから――――――見せ場を一人ひとりカッコよく見せてくれよ、おい!」
金本「そんなふうに譲歩している時点でレベルが低いな、このアニメ」
剛田「人数が多くて捌き切れないなら、いっそのこと――――――、」
剛田「プリキュアオールスターズや戦国無双のように活躍させるキャラを限定させて描写を追求していけばいいものを…………!」ギリッ
金本「言ってもしかたない。アニメ業界っていうのは株主総会で制作スタッフを更迭するって感覚が基本的に無い、」
金本「――――――湯水のごとくカネと時間と労力が流れ続ける ぬるま湯 銭湯なんだからさ」
剛田「なんだよ、それ?」
金本「ピンクゴールド鎮守府の筆頭としてどうでもいいような批判を浴びまくってる資源王の俺から言わせりゃ、」
金本「――――――アニメ業界をはじめとするメディア商売なんざ、」
金本「トップが自分の技術や能力の進歩向上研鑽努力しようとしない似非芸術家気取りの態度だけはデカイ使えない人間ばっかりの印象だよ」
金本「言うだろう? ――――――『1頭の獅子に率いられた100頭の羊の群れは、1頭の羊に率いられた100頭の獅子の群れを駆逐する』ってな」
金本「進歩向上のための競争に身を置かない人間がトップだったら、そこから全てがダメになってしまうんだよ」
金本「別な例に喩えてみるか?」
金本「末端である根や茎や葉が頑張って将来を繋ぐ主力商品である花粉や種子を生み出しても、」
金本「それをお客様に興味を持ってもらえるように美しい花びらや魅惑の香りを生み出していないっていう現状だな」
剛田「なるほど。花に喩えるといかに不自然な状況かが伝わるな。――――――果実兼備に至らぬとはな。何のために花を咲かせるんだ」
金本「今回の【アニメ】の不出来を見ればな、慢心が溢れでたような この監修の意識の低さ――――――トップの心の緩みがそのまま出ているな」
剛田「ずいぶんと超然としているもんだな。やはり勝者の余裕というやつか?(だが、続編制作の報で危機感を覚えているのは確か)」
剛田「(けど、こいつは俺と同郷だが そこでは極貧生活を送っていて、そこから這い上がって資源王にまで成り上がった男なんだ)」
剛田「(どんな人生だったのかは俺もまだ知らないが、それに至るまでに獲得してきたコネや経験の中で相当な数の人間を見てきているんだ)」
剛田「(それを思えば、今回の【アニメ】についてもその程度の感想しか持たないのだろうな。――――――『またくだらないものの相手をした』という程度)」
金本「………………あーあ」
まったく、やれやれだぜ。アンチどころかファンにまで攻撃材料を提供してどうすんだよ、これ。
俺は商売人じゃないが、資源王になるまでの極貧生活の脱出行の中でアイドルの売り込みに勤しんでいたこともあるわけだから、
営業の難しさや進歩向上研鑽努力をし続けることがいかに大切なのかが身体に染み付いている――――――。
そうなのだ。結果や成功を引き出すためには絶対にマイナスを極力 抑え、プラスを伸ばしていく地道な努力を絶えずやり続けねばならないのだ。
それを辞めた時――――――現状維持で満足しきった時、マイナス成長の転落人生はすでに始まっているのだ。
だからこそ、俺は野心にひた走っているのかもしれない。絶頂などない ひたすら高みに昇って堕ちることがないように…………。
――――――3月27日
――――――趣里鎮守府
鳥海改二「鳥海、参りました。改装していただいたお礼、夜戦などでお返しできればと思います」
石田「すばらしい! すばらしい性能だ! これからも活躍を期待する」
鳥海「司令官さん、ありがとうございます」
石田「うむ。摩耶改二とは違って【改装設計図】が必要になったのは予想外だったが、悪くない性能だな」メメタァ
左近「ですな! ちょうど摩耶改二と対照になる感じに調整されたものなんでしょうな」メメタァ
石田「【火力】が羽黒を超えて、【雷装】は妙高に次ぎ、他にも【索敵】【運】が大幅に上昇しているぞ」メメタァ
左近「ま、基本値:19の【運】じゃ【カットイン】を狙うのは少し難ありですがね」メメタァ
石田「どうしたというのだ、これはいったい?」
石田「重巡の改二がトントン拍子で埋まっていっているではないか!」
左近「確かにそうですな。妙高型は全員 改二の実装が終了しましたし、摩耶に至っては“対空番長”の面目躍如ですからな」メメタァ
石田「かつて“軽巡以下”と言われていた頃の弱さはどこにもないな、もう」メメタァ
石田「これでまたイベントにおける【夜戦マップ】の対処もこれでずいぶんとなくなるな。頼もしい限りだ」メメタァ
左近「そうですな……」
石田「ん?」
左近「いえ、ちょっとだけ不安がよぎったんですよ」
石田「何だ? 言ってみろ」
左近「では、言いますけどね?」
――――――このままじゃマズイような気がします。
左近「そろそろ、新たな燃料の投下が必要な気がします」
左近「つまり、スタートダッシュの貯金や余裕がもうなくなってきているということです」メメタァ
石田「…………そうだな」
左近「もうすでに【~艦これ~】のサービスが始まって早2周年を迎えようとしていますが、」メメタァ
左近「その最初の1年目でお気に入りの艦娘が育ちきって身を引く人が出ておりました。――――――つまり、俺みたいなやつです」メメタァ
石田「……ああ」
左近「すると、去年の2月に【ケッコンカッコカリ】が実装され、それによってレベリングのやりこみが奥深いものとなりました」メメタァ
石田「そうだな。その影響を受けて、『司令部』で【ユウジョウカッコカリ】のモニターが始まったのだ」メメタァ
左近「しかしながら、それから もう1年余りが経ち、今回のアニメ化によって世間に【艦これ】が大きく知れ渡るようになりました」メメタァ
左近「すると、キャラクターを前面に立てたメディアミックス戦略ですから、キャラクターに触れる媒体が増えていくと、」
左近「触れる媒体が別に【原作】である必要はなくなっていくんですよね。ゲームとしても高い技術力を感じられるわけじゃありませんから」メメタァ
左近「つまり、メディアミックスが進めば進むほど【原作】への客足が遠のいてしまうんですよ」メメタァ
石田「そもそも、元々が18歳未満はプレイ禁止の狭い世界の話だったのだからな」メメタァ
左近「そうです。だからこそ、それを回避するためには――――――」
石田「――――――【~艦これ~】というブラウザゲームそのものに他の媒体に負けない価値を創出し続けなくてはならないのだな」
左近「そういうことです」
左近「同じ【艦これ】というコンテンツの内でありながら――――――、」
左近「ブラウザゲームの【~艦これ~】とアニメの【-艦これ-】とで互いの足を引っ張るようなことになってますからね、今」メメタァ
石田「今回の【アニメ】におけるクズ共の喧騒のことか?」メメタァ
左近「ええ。相変わらず、我が国におけるお上というやつは戦略の何たるかを知らない志の低い者ばかりですよ」
左近「ま、そんなことはおいといて、具体的にこれからの【艦これ】の課題としましては――――――、」
左近「まず、キャラクターが出尽くした後にキャラクターを掘り下げていく努力などで『真新しさ』を常に提供し続けないといけませんね」
左近「キャラクターゲームですから当然なんですが、これがまた意外と難しいですよぅ?」
石田「余計な後付け設定が出てきて非難轟々では元も子もないからな。――――――【アニメ】のようにな」
左近「次に、ゲームの『爽快感』を追求しないといけません」
左近「今は【改修工廠】や季節ごとの催し物で『真新しさ』はそれなりに出てますが、“作業ゲー”としての作業感を払拭しないとすぐに飽きられます」
石田「そうだな。事実、二足 草鞋の“兼業提督”がどれだけ出てしまったことか…………」メメタァ
左近「そして、世代毎の『新人サポート』を充実させていく必要があります」
左近「これは、ようやく着任できた新人が少しでも早くベテランに並ぶために必要な措置です」
石田「うむ。新規開拓を進めるためにはサーバの増設も必要だが、実質プレイ人口を維持するためのスタートダッシュの補助もそろそろ必要だろう」メメタァ
左近「よって、この左近が見る限りですと『真新しさ』『爽快感』『新人サポート』――――――この3点がこれからの課題でしょう」
石田「悩ましいところだな」
石田「俺たち『司令部』が必死にやっているβテストが本当に活かされる時が来るのだろうか?」メメタァ
左近「それはわかりませんが、――――――殿は自分が間違ったことをしているとは思っていないんでしょう?」
石田「当然だ。全体の勝利――――――つまりは皇国の栄光と勝利のために必要だと思っているからこそ、俺はこの場に立っているのだ」
左近「なら、それを貫きましょう。俺は殿についていきますから、ね?」
石田「そうか」
石田「よし、なら ついてこい!」
左近「ええ。お供いたしましょう!」
――――――洞庭鎮守府
清原「なあ、“あまぎ”?」
あまぎ「はい」
清原「本当に“あまぎ”が言ったとおりになってしまったな」
――――――――――――
あまぎ「――――――提督、来年は必ず荒れます」
清原「…………!」
あまぎ「それと同時に、大躍進の時でもあるようです」
あまぎ「来年が正念場です。【艦隊これくしょん】がアニメ化やゲーム化によって一気に世間の認知度やプレイ人口が増えますが、」メメタア
あまぎ「それで1つのピークを迎えてしまう可能性が大きいです」
――――――――――――
清原「原因は言うまでもなく【アニメ】――――――だけじゃなく、制作スタッフや関係各位の問題発言と急過ぎるアニメ続編の制作発表もあるわけだが」メメタァ
あまぎ「はい」
清原「…………本当に『大躍進』できるのか?」
あまぎ「それを信じるだけです。少なくとも“私”がそう教えてくれたからには」
清原「……そうだな」
あまぎ「それに、提督?」
――――――壁を乗り越えない者が栄光を掴んだ例はございませんから。
あまぎ「生きていれば誰もが必ず壁にぶつかることでしょう」
あまぎ「しかし、それが大神がお定めになった天の理なのです」
あまぎ「なぜなら、それを乗り越える強さを得ていく過程の中でのみ魂が磨かれていくからに他ならないからです」
あまぎ「言わば、これも1つの神試しでもあり、御魂の定期的なケアリングでもあるのですよ」
清原「――――――『御魂のケアリング』?」
あまぎ「はい」
あまぎ「“磨く”ということは、ダイヤモンドの原石を輝かせたり、歯垢の溜まった歯を清潔に保たせたりすることです」
あまぎ「それと同じように、自分の中に新たな価値を見出したり、健全な精神性を維持したりするのは人生を豊かにする上で欠かせないことなのです」
あまぎ「ですから、試練に対しては前向きに誠心誠意 向きあえば、必ず大躍進に繋がります」
あまぎ「あきらめるからそれで止まってしまい、原石は輝きを放たず、口を開く度に不快なものが漂ってくるのです」
あまぎ「社会は何も変わりません。変わるのは自分の心や姿勢だけなのです」
清原「……なるほどな。例えが微妙だったが、非常に身近でわかりやすかった」
清原「そうか。発展し続けていくためには試練もまた不可欠というわけなのだな」
あまぎ「はい。大神たちが願うのは常に子孫である我々の真なる幸福と成長ですから」
りう「へえ、特型駆逐艦って本当に凄いんだね」
x:赤城α「そうですね。これは心強いですね」
x:吹雪改二「司令官、ありがとうございます!」ビシッ
りう「けど、【アニメ】と服装が違うのはどうして?」メメタァ
x:吹雪「えっ」
x:赤城α「そうですね。【この世界】の防空駆逐艦:秋月に比べたら物足りない【対空】ですが、それはそれです」
x:赤城α「【この世界】の駆逐艦の中ではとても優秀な部類ですよね」
x:赤城α「しかし、【アニメ】の放送に間に合わせる形で改二が実装されたと言うのに――――――」メメタァ
x:吹雪「そ、それは…………」オドオド
りう「ま、いいよ、そんな細かいこと」
りう「これから頑張ってね。【アニメ】以上の活躍をお願いするよ」(切実)
x:吹雪「は、はいぃいい!(ど、どうしよう!? 司令官、やっぱり【アニメ】のことでご立腹だ……)」(動揺)
りう「?」
x:赤城α「どうしたんでしょうね、彼女?」
りう「さあ?」
りう「ところで、もう1ついいかな?」
x:吹雪「あ、はい! 何でしょうか?!」アセアセ
りう「睦月って【アニメ】と違ってなんかずいぶんと明るく楽しい娘だよね」
x:吹雪「ああ…………」
りう「にゃ~ん」(口真似)
x:赤城α「そうですね――――――いえ、提督。それは酷な話かと」コホン
x;赤城α「あれはアニメ鎮守府の環境で人格が大きく変わった個体ということだと思いますよ」メメタァ
りう「あ、それもそうか。――――――艦娘にだって心があるんだもんな」
りう「ごめん。――――――【アニメ】の睦月しか知らなかった軽率な発言だったよ。反省してる」
x:吹雪「あ、いえ、何でもないです、司令官」アハハ・・・
りう「…………いろいろと得るものがあったよね、【この世界】での【公式アニメ第一弾】」
x:赤城α「……そうですね」
りう「【あれ】は如実に【オレたちの世界】に住むみんなの支離滅裂な精神状態を艦娘に仮託して見事に表現していたよね……」
りう「それにMI作戦の前後の流れや慢心のくだりなんて――――――、」
りう「オレたちが【この世界】に来た直後の空母機動部隊による洞庭鎮守府への襲撃の時と展開がそっくりでさ……」アセダラダラ
x:赤城α「けれども、そのおかげで【この世界】に来た当初のことをありありと思い出すことができましたね……」
りう「うん。【この世界】での暮らしにも慣れてきて、部隊も装備も練度も充実してきたけど、」
りう「――――――オレたちが守るべき世界は【ここ】じゃないんだよね」
x:赤城α「……はい」
りう「オレたちが戦っている相手は【アニメ】のやつよりもずっとずっと凶悪な敵なんだから」
りう「このDVD ちゃんと持ち帰らないとな。――――――教訓としてオレは何度でもこのDVDを見返して振舞いを正していくんだ」
x:赤城α「そうですね」
x:赤城α「しかし、あの【アニメ】、――――――なんで不評だったんでしょうね?」
x:赤城α「十分に楽しめるものだと思いましたが……」
りう「うん。なんでだろうね? オレは結構楽しめたよ。【この世界】の艦娘についてよくわかったし」(無知)
りう「本当に【この時代】の艦娘はイキイキとしていたよね」(切実)
りう「カッコ良かったよね! 空母機動部隊の戦闘シーンとかさ!」(純粋)
x:赤城α「そうなんですよね。私たちは他とは違って航空母艦に改装されなかったので【異世界】の『私』がどう戦うのか予想がつかなかったです」
x:赤城α「まあ、訓練の様子は今日まで何度か拝見させてもらってましたけれど、」
x:赤城α「同名の艦娘同士を組ませると指揮系統に混乱をきたすので、一度も実戦で組んだことがないんですよね」メメタァ
りう「一応、見分けはつくんだけど、命令は言葉でしなくちゃならないからね。その辺りの問題はホントどうしようもないね」
x:赤城α「――――――それで、なんででしょうね?」
x:赤城α「放送が終わった後、【ここ】のみなさん、あまり口を利いてくれなくなって困惑しましたよ」
x:赤城α「せっかく、【アニメ】完結記念パーティを開いてもっと【この世界】の艦娘たちと交流を広げたかったのに、その段取りがつかなくて…………」
りう「うん、困ったよね…………いろいろと訊いてみたいことがあったのになぁ」
赤城「やめてくださいぃいいい、それ以上はあああああああ! 私の胃がストレスでマッハですからああ!」ドドン!
りう「あれ、どうしたんですか、一航戦:赤城さん?」
x:赤城α「どうしたんでしょうね、【この世界】の『私』は? 吹雪さんの憧れとしてちゃんと活躍していたじゃないですか」
赤城「そ、それはそうですが…………うぅ」
赤城「あ、あの……、正直に言いますよ?」
赤城「【あれ】を見て、実際の私たちについて“そういうもの”だと思われたくないというのが実情でして…………」
りう「は」
赤城「ですから、【アニメ】と実際の私たちは違うんですよ! あれは【アニメ】の演出であって実際は結構違っていて――――――」アセアセ
x:赤城α「そんなの……、あたりまえだと思いますけど……」
りう「あれじゃない? 自分ならもっとカッコよく演じることができたんだけど、画面の『自分』はちょっとばかりベストを尽くせなかったって感じ?」
x:赤城α「なるほど! 確かに出演者全員にスポットライトを当てられる時間は尺の都合上 秒単位に制限されていましたからね」
x:赤城α「それは確かに、栄えある一航戦ならそう思うのも頷けますよね。公式で初めて公共の電波に載せてお見せしているわけですし」
赤城「え、それは、あの…………」
x:赤城α「それこそ、我が艦隊の艦娘は一人もテレビ出演していなかったことですし――――――」
りう「いやいや、【アニメ】を見てから“主人公”吹雪が艦隊に加わったよ」
x:赤城α「あ、それもそうでした――――――けれども、限られた中で出られた出演者としてはやはり少しでも悔いを残したくなかったのでしょう」
りう「そっか。別に気にすることないのにね」
りう「でも、そうやってわざわざみんなを代表しているからこそ、【この世界】で栄光を掴んだ一航戦ってことなんだろうね」
りう「さすが一航戦! カッコイイ!」キラキラ
x:赤城α「そうですね。【ここ】での『私』は天城姉さんを失ったことをバネにして立派にリーダーを務めてきたわけなんですね」
赤城「うぅ…………(言ってることは確かにそうなんだけれども、――――――どうしよう、私たちの今の苦悩がうまく伝えられそうにない)」
赤城「(『【あれ】を見た若様に失望されたくない』って、高雄や大和その他大勢から必死に一同を代表して弁解するよう頼み込まれて、)」
赤城「(今 必死にそれをやろうとしてはいるけれども――――――)」
りう「続編、楽しみだな~」ニコニコ
x:赤城α「はい。それをこうやって またみんなで見ることができればいいのですがね」ニコニコ
りう「…………うん。そうだね」ハハ・・・
赤城「?」
りう「そういえば、録画したDVDってどこにしまったっけ?」
赤城「ひっ」ビクッ
x:赤城α「確か、あれは私物の類でしたので天城姉さんが責任持って――――――」
赤城「これはマズイです……!(――――――聞こえてますか、みなさぁん! 急いで録画の処分を! 処分をおおおおおおおお!)」アセダラダラ
ドタバタズタバタ! ガヤガヤ、ザワザワ、ドッタンバッタン!
りう「?」
x:赤城α「何やら、外の方が騒がしくなってきましたね」
赤城「い、いったいどうしたのでしょうね、みなさん……?」アセダラダラ
りう「気になるけど――――――、」
赤城「…………!」アセタラー
りう「今日はいいや」
赤城「え」ホッ
りう「思えば、こうして一航戦:赤城さんと話したことってほとんどなかったし、――――――うん、空母に関しての話は五航戦のお姉さんたちがしてくれたし」
りう「今日は【アニメ】の主役である一航戦:赤城さんとお話したいな~」キラキラ
赤城「!」ズキューン!
赤城「わ、若様がそうおっしゃるのでしたら――――――(どうしましょう? ――――――食べてしまいたいです)」ドキドキ
x:赤城α「はい。是非とも、お願いします、一航戦の『私』。早速、録画したものを見返しながら解説してくださいね」ニッコリ
赤城「!?!?」ビクッ
りう「うん。それがいいね! いまいちわかんないところがあったんだけど、同じ一航戦:赤城さんならわかるはずだから」キラキラ
赤城「…………巡洋戦艦:赤城ぃ(――――――本来そうなるはずだった『私』ぃ! 一度ならずとも二度も同じ赤城を裏切るのですかぁああ!?)」ガタガタ
x:赤城α「?」
りう「さ、行こう。せっかく準備したお菓子がもったいないから」
赤城「お、『お菓子』……!?」ジュルリ
x:赤城α「そうですよ。清原提督から合格点をいただいた自慢の逸品の数々なんですよ」
x:赤城α「それなのに、日頃 お世話になっている清原提督の艦隊の方々に振舞う絶好の機会だと思って【アニメ】終了に合わせて準備してきたのに――――――」
赤城「一航戦:赤城! ぜひとも参らせていただきます!」ビシッ
りう「あ、やっぱりカッコイイな~」
りう「―――――― 一航戦:赤城!」ビシッ
赤城「はっ」ビシッ!
x:赤城α「はっ」ビシッ
赤城「…………え?」
x:赤城α「テヘッ」
赤城「あ」
りう「付き合ってくれてありがとうございました、一航戦:赤城さん」
りう「それじゃ行こっか。美味しいものがたくさんありますから、期待していてくださいね」
赤城「あはは……、若様」ホッ
――――――少し囚われすぎていたのかもしれません。
【アニメ】の『私』が言ったように『歴史の再現性』というものに私自身もどこか共感を覚えているところがありました。
もちろん、【アニメ】ほど露骨ではないにせよ、私には時折 考えられる上で最悪の光景が一瞬だけ、
――――――ほんの一瞬だけ、悪い予感として過去に何度か体験したことがあったのです。それは確かな既視感を伴っていたのでした。
そして、そんなデジャヴに既視感を覚えていくうちに、私は内心 その光景に怯えながら今日まで戦いの日々を送ってきたように思います。
そう、――――――最悪の光景が再現されるのを待ち続けるような日々をずっと。
そこには史実でのあの大敗北――――――暗い海の底へのどんよりとした誘惑が立ち込めているような気がしてなりませんでした。
けれども、そんな気の迷いは先程の提督にそっくりな“あの子”の呼ぶ声によって消えていったように思います。
私はついさっき、咄嗟に“あの子”の私を呼ぶ声に反応して つい反射的に返事をしていました。
私たちの提督である清原提督と瓜二つの容姿をした、大本営が用意したという影武者の“あの子”――――――若様の声に返事をしていたのです。
冷静に考えればわかると思うのですが、若様はこの鎮守府に独立した艦隊を編成しており、指揮系統も完全に独立していました。
それ故に、本来 この鎮守府司令官である提督以外の命令には応じないのが提督麾下の艦娘である私の義務だったのですが、
あの一瞬だけ、若様の声が本物の提督の声のように思えてしまったのです。
それがちょっとした驚きと発見となりました。――――――よく考えれば違うものを“そう”だと捉えていた自分に気づいたのです。
同時に、本来の『私』である巡洋戦艦:赤城が私と一緒に返事をしたことによっても何かの観念が崩壊し、一種の悟りの境地へ導かれたのです。
私たちの提督とそっくりな幼い影武者の若様と、正規空母となった私とは似て非なる巡洋戦艦のままの『私』――――――。
私は改めてその違いをはっきりと再認識することができたのです。
結論を言えば、『歴史の再現性』などといったことは気にする必要性がまったくないという当たり前のような事実に触れたのです。
それは、自分自身が『こうあるべきだ』『こうでなくちゃならない』という偏見や心の奥底にある思い込みに囚われていたことに他なりません。
つまり、若様が【あのアニメ】を見ても私たちへの尊敬の眼差しを失わずに変わらぬ愛らしさを見せ続けているのは、
やはり現実の私たちと【アニメ】の『私たち』をわけて、本質的にそれぞれ別の存在としてしっかり一人ひとりを捉えているからなのでしょう。
だからこそ、『気にする必要はない』と言ってくれたのだと、ようやく私には理解できたのです。
――――――繰り返されることを恐れてはならない。
その心の奥底に掛けられた壁を乗り越えていくことこそが深い海の底に沈んでから遙かなる時を経て、
人としての肉体を持って生まれ変わった艦娘に与えられた人生の本義なのでしょう。
清原「結局、たとえ同じものに対しても人間が抱くものは千差万別――――――人それぞれ、十人十色だ」
清原「非難轟々の【公式アニメ】ではあったものの、それでも『純粋におもしろい』と言う者がいたことを忘れてはいけないし、無下にしてはならない」
清原「そもそも、そんな何色にも染まる心があるからこそ環境に応じたそれぞれの成長や体験の物語があるわけなんだ」
清原「それは艦娘とて同じ――――――確実に違うのは提督がその艦娘にどれだけの時間と労力を割いたかだ」
あまぎ「絶対服従の因子が組み込まれた艦娘にとっては出会った提督が全てですから」
あまぎ「そして、この世は諸行無常――――――それが唯一つの真実であり、この世で一度起きたことは二度と起こり得ません」
あまぎ「再び起こるとするならば、それは自分が定義した条件の中でのみです」
清原「それを認めるかどうか、気持ちの切替を自分に有利な方向に持っていけるかどうかで人生は大きく変わってくる」
清原「だからこそ、良き出会い・良き別れが提督にとって、人生にとって、皇国にとって幸運とならんことを…………」
清原「物事を楽しくもつまらなくするのも、結局は自分の気持ち次第であるということをどうか忘れないで欲しい」
清原「つまらないことから離れて自分の気持ちを楽しい方に持っていける心の技術が何よりの宝だと言える」
あまぎ「どうか自分が好きになった時の素直な気持ちが失われることなく、末永く楽しいひとときが続いていきますよう――――――」
清原「これからもファンのみなさん、【艦これ】をよろしく」
こうして2014年度の【艦これ】関連イベントは【公式アニメ】の放送終了と『続編制作決定!』の告知をもって終わりを告げ、
4月から新年度を迎え、心機一転――――――また新たな実装を踏まえたメンテナンスが粛々と行われることとなる。
この2014年度の締めにして、2015年の最初にして最大の【艦これ】イベントであった【公式アニメ】の商業的な成功と非難轟々の嵐を踏まえて、
これからどんなメディアミックス展開が行われ、それがいかなる結果と影響をもたらすのかはまだ誰にもわからない。
しかしながら、それらはあくまでも公式であろうがなんであろうが【~艦これ~】を原作とした二次創作であるという事実を忘れてはならない。
現在の【艦これ】を形作っている影響力の1つとして、【~艦これ~】ユーザーの数少ない情報から掻き立てられた共通認識からの二次設定が中心なのだ。
そして、【~艦これ~】という作品自体の設定が深い海のどんよりとしたイメージのように明確に明かされているわけではないのだ。
はたして、これからファンと公式との間での需要と供給のキャッチボールがどれだけ滞りなく進められるかは定かではないが、
筆者としては一旦ここで筆を置き、時間に追われることなく次なる提案のプレゼンの準備のために、これからの進捗を見守ることとする。
どうか、これからも末永い鎮守府ライフをユーザーのみならず、多くの方々が夢見てくださいますよう…………
Next:第9話 海軍総隊を結成せよ! に今度こそ続く! ここまで見てくださった方々 本当にありがとう!
※【公式アニメ】に関しての意見は掲示板や他のSSでもすでにたくさん語られていることなので、ここでは別な視点で語らせていただきました。
最後に、プレゼンターがピックアップしたSSを紹介してこのスレを締めたいと思います。
重ね重ね、ご精読ありがとうございました。
本当は新鮮なネタで年度末までに締めたかったのですが、すでに2015年 春イベントまで過ぎてからの投稿で誠に申し訳ありません。
そして、すでにいろいろな予想が裏切られつつありますが、それでも!
祖国や地域の繁栄、身近な人たちの幸せ、自分が好きになったことの招福を願って、
――――――よき鎮守府ライフを!
各話リスト
第1話 ユウジョウカッコカリ
第2話 お守り
第3話 御旗と共に
第4話 愛の力
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第5話 艦娘、派遣します
↓
余談1 ある日の司令部の集い -βテスター親睦会-
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第6話X 幻の八八艦隊「天城」 -新時代の礎になった「天城」と盛衰に生きた妹たち-
第6話Y 提督、出撃す -船娘の進撃・陸軍の意地・男の浪漫-
第6話Z 海上封鎖を突破せよ -世界は1つの大洋で繋がっている-
第6話W 深海棲艦捕獲指令 -全ては暁の水平線に勝利を刻むために-
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余談2 4提督のそれぞれの戦いの形
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第7話X 孤高のビッグ3 -もう1つの“もう1つの世界”-
第7話Y 一大反攻作戦第一号・序章 -離島要塞化計画-
第7話Z 到来 -アドベント-
第7話W 鎮守府の守護神 -侵食される鎮守府-
2014年 秋イベント:【発動! 渾作戦】戦記
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↓
第8話 12月23日 -三笠公園にて- ← 前回:【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】
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番外編 2014年から2015年へ ←―――――― 今回はここまで! 番外編:【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼンPart1.5】
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第9話 海軍総隊を結成せよ! ← 次回:【艦これ】提督たち「海軍総隊を結成せよ!」【物語風プレゼンPart2】 に続く!
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第?話 大本営の野望 -艦娘 対 超艦娘-
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付録:プレゼンターが類別した【艦これ】オススメ二次創作 -二次創作の参考になるものがありますように-
……以前のまとめについては、前スレの >>22 をどうぞ。本当に申し訳ありません。
1,オリジナル設定・世界観
金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 ………偉大な先人様。【艦これ】の二次創作をやろうと思ったきっかけ。3スレにも渡る大長編。
金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382027738/)
八幡「艦娘?」 叢雲「うるさいわね」 ……………………………………怪作。艦娘に関する解釈がアルペジオのそれだが ジャンル:提督ものとしては秀逸。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408617983
深海棲艦「アナタハ、ソコニイマスカ?」総士「僕は……」 ……………蒼穹のファフナーとのクロスオーバー
深海棲艦「アナタハ、ソコニイマスカ?」総士「僕は……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400406720/) 海と馴染みが深い両作品と謎に満ちた敵勢力との親和性がいい。
2,オリジナル艦娘
【艦これ】提督「犬ですがなにか?」 ………………………………………海外艦、男の艦娘が多数登場し、――――――ついに登場、艇娘(?)! R-18注意
【艦これ】提督「犬ですがなにか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415278392/)
3,艦娘の可能性
【ザ!鉄腕!DASH!!】DASH鎮守府~TOKIOは海の平和を守れるか~【艦これ】
【ザ!鉄腕!DASH!!】DASH鎮守府~TOKIOは海の平和を守れるか~【艦これ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409752282/)
提督「駆逐艦って軍艦じゃないのな」
提督「駆逐艦って軍艦じゃないのな」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407492115/)
4,メメタァな話
【艦これ】赤城「最近全く出番がない……」 …………………………どの艦娘にも長所と短所と使い道があることを考えさせる。
【艦これ】赤城「最近全く出番がない……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425062152/l50)
5,【参考】本当はこうありたかった【物語風プレゼン】………提案に対して活発な議論が欲しかったなぁ。
提督「提督座談会」【安価】
提督「提督座談会」【安価】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424070880/)
基本的にどこもsage進行なのでコメントする時はE-mail欄に"sage"を入れてからコメントをしてください。
sageずにageてしまうと、作者の投稿が再開・一区切りついたのではないかという目安になっているために勘違いした人たちが落胆と憤りを感じてしまうので。
少し面倒ですが、sage進行を徹底しましょう。sage進行して怒られることはまずないのでとりあえずやっておくといいです。
このSSまとめへのコメント
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