飛鳥「桜の下の約束」 (18)


飛鳥「……」

モバP「お、飛鳥じゃないか」

飛鳥「プロデューサー……どうしてここに?」

モバP「せっかくの花見だしどこか落ち着けるところでゆっくり桜を眺めていたいと思ってな」

飛鳥「ふうん……いいのかい、下は放っておいて」

モバP「まあ何か問題があったらちひろさんから連絡が入るだろうから……な、と」

飛鳥(隣……)

モバP「ほー……なかなか良い眺めじゃないか」

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飛鳥「……そうだね。桜が彩る風景も、その下で宴を楽しむ人々も……ここからならすべて見渡せる」

モバP「まさしく絶景、ってやつだな。飛鳥はいつからここに?」

飛鳥「ん……カラオケ対決の後くらいからかな。喧噪に少し疲れてしまってね」

飛鳥「どこか安らぎを得られる場所はないかと探していたらここに足が向いたのさ」

モバP「ははは。それじゃ俺と同じ、ってことだな」

飛鳥「フフ、そうかもしれないね。でもキミとボクとで明確に異なる点がある」

モバP「ん、何だ?」

飛鳥「自覚があるのかは知らないけど……だいぶ疲れているだろう?」


モバP「そうかね……年度初めだしこんなもんだと思ってたが」

飛鳥「今日くらいはゆっくり休むといいさ。普段キミがボク達のためにどれだけ走り回っているか。知らない人はいないからね」

モバP「それじゃお言葉に甘えて……ぐぅ」

飛鳥「落ちるから」

モバP「冗談、冗談……まあ久しぶりにゆっくりできるんだし言われるまでもなく今日はしっかり休ませてもらうよ」

飛鳥「……キミが望むなら膝でも貸そうか?」

モバP「いや、遠慮しとこう。こうも暖かいとそのまま眠ってしまいそうだからな」

飛鳥「ボクは構わないんだけど……」


モバP「俺が構うの。人に見られたら恥ずかしいだろ?」

飛鳥(……恥ずかしい、かあ……)

飛鳥「ま、別に無理強いはしないけど……確かにこの春の陽気は耐えがたいものがあるね」

モバP「なんなら飛鳥こそ寝ててもいいぞ。周りなら俺が見ておくからさ。疲れてるんだろ?」

飛鳥「……女の子に向かって堂々と寝顔観察します宣言はどうなのさ?」(ジトー

モバP「なっ、い、いや! そそそそんなつもりではなくてだな!?」

飛鳥「……」(ジトー

モバP「えーと、あの……その……」


飛鳥「……冗談、だよ」(クスクス

モバP「は……はあぁ……飛鳥……お前なあ……」

飛鳥「キミはそんなことをするようなヤツじゃあないことくらいよく理解っているよ。さて……と」

モバP「……飛鳥さん? 何をしてらっしゃるので……」

飛鳥「何って……キミが言い出したことだろう」

モバP「……本当に寝るの? マジで?」

飛鳥「この春の陽気は耐えがたい、と言ったはずだよ。嘘偽りなく本心さ……ふわぁぁ……ふう」

モバP「あー……膝でも貸すか?」


飛鳥「魅力的な提案だけど断らせてもらおうかな。ちょっと後で怖いことになりそうだし」

モバP「後で……?」

飛鳥「なんでもないよ。ただ……そうだな……一つだけ、いいかな?」

モバP「ん、なんだ?」

飛鳥「キミに差し支えない時間でいいから……その……傍に、居てくれないか……なんて」

モバP「おお、別にいいぞ」

飛鳥「フフ、ありがとう。それじゃ早速……」(ポスッ

モバP「ああああ飛鳥さん? なにを……」


飛鳥「少しだけこのままでいさせてもらえるかな……このまま眠ってしまったら壁にでもすがらせてくれればいいからさ……」

モバP「いやまあ……俺は構わんが」

飛鳥「……ねえプロデューサー」

モバP「……なんだ?」

飛鳥「こうしているとさ……まるで恋人同士みたいだね」

モバ「なっ……! おま……!」

飛鳥「なんて……ふふ……」

モバP「……飛鳥?」


飛鳥「……すー……すー……」

モバP「……もう寝たのか。本当に眠かったみたいだな……」

モバP「しっかしまあ……膝は断られたが肩を貸す羽目になるとはなあ……」

飛鳥「……すー……すー……」

モバP「……ま、いいか」


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飛鳥「ん……あ……?」

飛鳥「ここ……」

飛鳥「……そっか。眠ってしまったんだっけ……」

飛鳥(プロデューサー……は居ないか。そうだよね……)

飛鳥「……あれ、これ……上着?」


モバP「お、起きたか」

飛鳥「プロデューサー……もしかしてずっと?」

モバP「そりゃな。一人にするわけにもいかんだろ」

飛鳥「いやそうじゃなくて……起こしてくれてもよかったんだけど」

モバP「あー……すまんな。ちょっとタイミングを逃したというか」

飛鳥「……もう日もすっかり沈んでしまったようだね。それでもまだ外が明るいのは……」

モバP「夜桜を見に来る人もいるみたいだからな。それで照明やらも準備してあるんだろ」

飛鳥「なるほどね。それならせっかくだしちょっと外を歩いてみようか」


モバP「それもいいがその前に……ほら」

飛鳥「ん……缶コーヒー? わざわざ買ってきてくれたのかい?」

モバP「まだ夜は冷えるからな」

飛鳥「……ありがとう」

モバP「どういたしまして。さて、それ飲んだら行くか」

飛鳥「そうだね」(コクコク

飛鳥「……これ、カフェオレ?」

モバP「だって飛鳥……苦いのダメだろ?」

飛鳥「……お気遣いどうも」


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飛鳥「夜桜を見るのは実は初めてなんだけど」

モバP「まああんまり見に来る機会はないよな。俺も初めてだ」

飛鳥「昼間とは違う趣があるね。月も綺麗だし、とても幻想的な雰囲気だ」

モバP「知る人ぞ知る風情、とでも言った感じか。うんうん、見に来てよかったな」

飛鳥「…はあ。やれやれ」


モバP「どうした飛鳥。なにか不満だったか?」

飛鳥「敢えて言うならキミに、かな。まあ別にいいさ」

モバP「?」

飛鳥「それより見てごらんよ。桜ももう散り始めているようだね」

モバP「そうだなあ……あともう何日か経てば全部散ってしまうんだろうな」

飛鳥「刹那の命、か。その儚さこそが桜の美しさなのかもしれないね」

モバP「桜はただそこで咲いてるだけなんだろうけどな。そこに人は魅せられてしまう、か」

飛鳥「……ねえプロデューサー」

モバP「ん?」


飛鳥「その……ありがとう」

モバP「……なんだ、急に改まって」

飛鳥「キミがボクをこのセカイに連れ出してくれたから、ボクは今ここにいるんだ」

飛鳥「そうでなければボクはきっと視野の狭い灰色のセカイを無気力に過ごすだけだっただろう」

飛鳥「冬の寒さも、春の彩りも、雨の冷たさも。そしてなによりあのステージの輝きを」

飛鳥「キミと出会わなければ何も知ることはできなかったんだ。キミが教えてくれたんだよ」

飛鳥「……この桜を見ていたら、なんだかふとそう思ってしまってね」

飛鳥「だから……ありがとう」


モバP「……だったらお礼を言われるのはまだ早いな」

飛鳥「え?」

モバP「まだまだ見たことのない景色があるだろ? それに俺だってなんでも知ってるわけじゃないんだからさ」

飛鳥「……」

モバP「もっと色んなものを飛鳥に見せてやりたいと思ってるんだ。まだまだ先は長いけどな」

モバP「そしてそれが終わったら今度は俺も知らない輝きを一緒に探しに行こう、ともな」

飛鳥「……そうだね。キミとなら、きっと」

モバP「ああ。だからまだまだお礼を言われるには早いってことだ」


飛鳥「なら……いつか訪れるそのときまでとっておこうかな。そのかわり約束してほしい」

飛鳥「もしボクが挫けたり、立ち止まってしまった時は……または間違った道を進もうとしているときは……」

飛鳥「キミがボクを導いてほしい。共に手を取り、隣で歩んでほしい」

モバP「ああ。約束だ」

飛鳥「フフ……キミならきっとそう言ってくれると……へくちっ」

モバP「お、おい大丈夫か? 風に当たりすぎたかな」

飛鳥「……どうも恰好がつかなかったな。でもいいさ。キミの言葉を得られたからボクは満足だよ」

モバP「それじゃそろそろ戻るか。風邪でも引いちゃまずいしな。ほら、上着貸すから……」


飛鳥「……それもいいけど、でも」(ギュッ

モバP「ちょ、飛鳥!? 何を……」

飛鳥「うん、やはりキミの温もりが冷えた身体には心地良いね。暖かいよ」

モバP「いや、それは……流石にちょっとな」

飛鳥「人の目があるわけでもなし、別に構わないだろう?」

モバP「いや、今は大丈夫でもそのうち人目も多くなるから……」

飛鳥「……それもそうか。分かったよ。でも……」

飛鳥「今は……もう少しだけこのままがいい、かな」







おわり


桜風リフレインの飛鳥ちゃんに早く会いたくて死ぬほど走ったドリフもすっかり過ぎ去ってしまった今日この頃
飛鳥ちゃんは小難しいようでその実真っ直ぐで可愛い女の子だということをもっと多くの人に知ってもらいたいですね
勝利報酬でお求めやすいSRですので少しでも興味を持っていただければ是非に

それではここまで読んでくださった方々ありがとうございました
二宮飛鳥ちゃんに清き一票をお願いします!

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