兄「妹が変身しちまった」(31)

兄「いや、それだけならまだ良いんだ」

兄「変身ネタはたくさんある、ありふれてる」

兄「カフカみたくカブトムシだかウジ虫だか分からん変な虫だったり」

兄「猫耳尻尾がついたり巨乳になったり」

兄「南くんの恋人みたく小さくなったり」

兄「それは構わない、よくあるネタさ」

兄「二次元スキーだもの、余裕ですよ」

兄「だがこれは……」

タラコ「……」

兄「予想外過ぎるだろ……」

兄「とりあえず、ラップして冷蔵庫に入れておこう」

兄「腐ったらヤバいし」

兄「じゃあ学校行ってくるから、大人しくしてろよ妹」

タラコ「……」

翌日

兄「朝起きたら冷蔵庫の中にちぎれたラップと花瓶があった」

兄「妹がタラコから変身したのか」

兄「とりあえず部屋に飾っておこう」

兄「じゃあ学校行ってくるからな」

花瓶「……」

翌日

兄「朝起きたら花瓶があった場所にiphoneがある」

兄「俺はauだからiphoneじゃない、間違いなくまた妹だ」

兄「しかしiphone、色んなアプリがあるんだよな」ピッピッ

兄「よし会話アプリ発見、これでやっと話せる」

兄「妹、大丈夫か?どっか痛くないか?」

iphone「登録サレテイマセン」

兄「ダメか…会話出来そうと思ったが……」

兄「妹の画面に電波が表示されないって事は通話は出来ないし」

兄「メモ帳やメールはどうだろうか」

兄「文字を打てば何か返事が」ピッピッピッピッ

兄「……………」

兄「ダメだ、反応が無い」

兄「妹、時間だから学校行ってくるよ」

iphone「……」

翌朝

兄「今朝はリンゴジュースか」

兄「だが困ったな、机がビショビショだ」

兄「とりあえずティッシュで拭いて全部皿に乗せといたが」

兄「そうか…液体になることもあるのか……」

兄「参ったな……」

兄「とりあえず、またラップして冷蔵庫おいとこう」

兄「今日は拭くのに時間かかったからもう行かなきゃ」

兄「じゃあ後でな妹」

リンゴジュース「……」



学校

兄「参ったなぁ」

友「どうかしたか?」

兄「いや別に」

友「嘘だな、悩みがあるなら言えよ」

兄「言っても信じないから良いよ」

友「信じるかどうかは俺が決める事だ、勝手に決めんな」

兄「絶対信じないだろうに…」

兄「いいや、じゃあ言うぞ」

兄「妹が変身した」

友「プリキュアに?」

兄「違う」

友「セーラーチビムーンに?」

兄「no」

友「分かったミュウミュウだな?」

兄「いいえ」

友「おジャ魔女?」

兄「ハズレ」

友「分かった、カードキャプターだ間違いない」

兄「お前が雪兎なわけなかろうが」

友「新撰組か?コレクターか?10歳老けたか?」

兄「ルミネタイトも無いしirも居ないし赤と青のキャンディもねぇ」

友「じゃあカブトムシかよ」

兄「カフカはもう良いよ」

友「『兄は激怒した』」

兄「腕に唸りをつけて頬を殴られたいようだなセリヌンティウス」

友「じゃあなにさ、魔界の娘とか言い始めたのかい?兄くん」

兄「何でやねん」

友「兄ちゃま、チェキチェキチェキよ!」

兄「シャラップ」

友「兄ぃあんまりだよ」

兄「そろそろキレて良いか?」

友「あ、授業始まるぞ」

兄「シット」

放課後

友「で、何に変身したよ」

兄「色んなものに」

友「日本語でおk」

兄「初日はタラコだった」

兄「後はなったりトンカチなったり延長コードになったりバナナになったり」

友「君が何を言ってるか分からないよカヲルくん」

兄「俺も夢と信じたい」

友「で、今は?」

兄「紆余曲折を経てリンゴジュース」

友「液体かよ」

兄「液体だよ」

友「まさかそれオシッ」

兄「ねぇよ」

友「だよな」

友「そんな頻繁に変身すんの?」

兄「1日1回だな、今のところ」

友「時間とか決まってんの?」

兄「日付変更の頃に」

友「頃?」

兄「俺が見てない瞬間に変わる」

友「カメラの設置とかした?」

兄「無理、通用しない」

友「なんでさ」

兄「最悪、まばたきの合間に変化する」

友「なにそれ怖い」

友「それいつから?」

兄「去年から」

友「まじかよ、親はなんも言わねえの?」

兄「行方不明で届け出は出してる」

兄「俺は妹がいなくなったショックで頭がおかしくなったと思われてる」

友「妥当だな」

兄「ほらみろ、だから言いたくなかったんだ」

友「信じる方が無理だろ、常識的に考えて」

兄「非常識が発生したから困ってんだよ」

友「そういや、生物にはならないの?」

兄「一回、鉢植えの朝顔になったよ」

友「じゃあやばくね?」

兄「なにがよ」

友「いや、魚とかになったら危険じゃん」

兄「……」

兄「oh……」

友「気付かなかったのかよ」

兄「いや、鮮魚はまだ無くて…」

兄「とりあえず水槽買って帰るわ!」

友「またな―、ってか早っ」

友「……」

友「そうとうだなあいつ」

兄「水槽買って来た」

兄「ポンプも水草も砂利ある」

兄「淡水魚ならこれで良かろう」

兄「もし海水魚なら風呂場を使うべきだろうか」

兄「いやそもそも、もしマグロやクジラにになったら終わりだろ……」

兄「参ったな……」

兄「どうしょうか、妹」

リンゴジュース「……」

兄「ああ……せめて意思疎通可能なものになってくれんか……」

兄「考えてみりゃ、約365回変身して、一度も鮮魚にならなかったってすげーな」

兄「いや、そもそもオール非生物だったよな」

兄「とんでもない幸運だったわ」

兄「虫になってたりしたら……」

兄「いや、微生物とかになってたら……」

兄「考えただけでゾッとする……」

兄「妹よ、もし自分の意思で変身対象を変えられるなら」

兄「明日はゲームソフトにでもなってくれよ」

兄「じゃあ、お休み」

リンゴジュース「……」

リンゴジュース「……」

リンゴジュース「……」

兄「zzz」

「……」

カランッ

兄「zzz」

鉛筆「……」

鉛筆「……」

翌朝

兄「鉛筆か……」

兄「無駄だとは思うが、一応やってみよう」

兄「妹よ、痛みとかはないか?」

鉛筆「……」

兄「やっぱりか、なら文字にして……」

メモ『妹よ、俺が分かるか?』

鉛筆「……」

兄「当然リアクションはしないよな、鉛筆だもん……」

兄「ならばトム・リドルの日記方式で」

兄「すまん、ちょっと握るが我慢してくれ」

鉛筆「……」

兄(力を抜いて、鉛筆化した妹自身が動けるように)

兄(どうだ!?)

鉛筆「……」

兄「無理か……」

兄「そしてそろそろ時間だ」

兄「学校に連れて行きたいが…」

兄「誤って落とした結果、中の芯が折れるかもしれん」

兄「つまり背骨だよな、そりゃマズい」

兄「ごめんな、行ってくるよ」

妹「……」

兄「ただいま」

鉛筆「……」

兄「そういや…」

兄「今朝はサッサと出かけてよく考えられなかったけど」

兄「鉛筆として使えるくらいには、先が削れてるんだよな」

兄「これは寿命を表すのか……?」

兄「いや、でも……」

兄「分からないが、とりあえず空の水槽に入れておこう」

兄「明日、何になっても良いように」

兄「じゃあお休み」

鉛筆「……」

翌朝

兄「vhs……だと」

兄「未だにテレビデオを使ってる俺への当て付けか?」

兄「まあいいや、見てみよう」

ガチャッ ガガガッ ウィーン……

兄「……」

tv<ザー――――――!

兄「うおっ!ボリュームでかっ!」ポチポチポチ

tv<パッ

兄「あ、映った」

妹『……』

兄「妹……!」

妹『お兄ちゃんっ!お兄ちゃああああんっ!』

兄「ん……?なんかおかしいぞ」

妹『イックッ!イクのっ!お兄ちゃんのでイクッ!』

兄「顔は妹だが……」

兄「これ、av女優だわ、声違うし」

tv<『アンアンッ』

兄「つうか、男優も顔が妹なんだが」

兄「なにこのレベル低い合成……」

兄「早送りっと」

ガコッ グウィーン……

兄「最後までただのavだった……」

兄「つうか義兄妹モノなのに何故に輪姦……」

兄「そして全て妹の顔に合成済み」

兄「意味が分からん」

兄「さて取り出し」

ガコッ ガガガッ

兄「……えっ」ポチポチポチ

ガコッ ガガガッ ガコッ ガガガッ ガガガッ ガガガッ

兄「うそだろ……」

tv<グウィーン………バチュンッ

兄「ビデオが取り出せず、勝手に電源が切れた」

兄「……………壊れた?」

兄「どどど、どうしょう!」

兄「ああっ!しかも二時間目始まってるし!」

兄「とりあえず、病欠の電話をしといたから学校は良いや」

兄「このテレビデオ、分割するっきゃねえな」

兄「vhsのまま変身した時、この中にいちゃ死んじまうかもしれない」

兄「タイムリミットは今夜0時」

兄「12時間はある、素人の俺でも出来るだろう」









一時間後

兄「妹の救出成功」

兄「代償はテレビデオ一台…安いもんだ」

兄「……うぅ、もったいねえ………」

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