モバP「友紀と飛鳥のプロ野球談議」 (81)
モバマスとプロ野球の合わせ技
ユッキと飛鳥と野球のダイレクトマーケティングです
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428210138
友紀「ゴーゴーキャッツ! かっとばせー!」
P「友紀。事務所で野球観戦するのは止めないが、もう少し静かに応援してくれ」
友紀「あ、はーい。ごめんなさ……おー! いきなり先頭打者出塁だ!」ワイワイ
P「……まったく。この後レッスンがあるんだから忘れないようにな」
友紀「わかってるって」
P「頼んだぞ。じゃあ俺は営業行ってくるから」バタン
友紀「よしっ、坂本盗塁成功! 先制タイムリー頼むよ、長野!」
??「ふむ、野球か」
友紀「わっ!? ……なんだ、飛鳥ちゃんかあ。いきなり後ろから声かけられたからびっくりしたよ」
飛鳥「あぁ、それはすまない。試合に熱中しているところを邪魔してしまったね」
友紀「別にいいんだけどね。それより飛鳥ちゃんも野球見ない? 面白いよ~」
飛鳥「そうだね。時間もあるし少しだけ」
※キャッツ=巨人の呼び名のひとつという設定でお願いします。12球団すべて現実世界に準拠しています
1回裏 キャッツ3番長野、先制タイムリーヒット
友紀「やった、先制だ! さすが長野だね!」タオルマワシ
飛鳥「長野の右方向への打球は本当によく伸びるね。流し打ちとは思えないくらいだ」
友紀「そうなんだよね、今のももう少しでホームランだったし。というか飛鳥ちゃん、実は野球詳しい?」
飛鳥「見る専門だけどね。プロの試合はテレビ中継をよく見るし、たまに球場に足を運んだりもするよ。友紀さんほどの頻度ではないけれど」
友紀「そうなんだ! まさかこんな近くにあたしと同じ野球ファンがいるなんて! それならそうと早く教えてくれたらよかったのに」
飛鳥「聞かれなかったからね」
友紀「そりゃー、飛鳥ちゃんみたいな子ってあんまり野球に興味なさそうだし」
飛鳥「その意見はもっともだけど……まあ、人は見かけによらないということだ」
飛鳥「世の中、決して数字がすべてではない。けれどナンバーワンを賭けて必死に争うことにも確かな意義がある。スポーツを見ているとそれをまざまざと感じさせられる」
友紀「そっかそっかー。ねえねえ、ところで飛鳥ちゃんはどこファン? やっぱ強豪キャッツ?」
飛鳥「残念だけど、今はキャッツファンではないよ」
友紀「ええー……って、今は? じゃあ昔はキャッツファンだったの? なんで止めちゃったの」
飛鳥「ボクは友紀さんみたいに特定のチーム一筋で応援するタイプではないんだ。毎年セリーグとパリーグで贔屓にする球団をひとつずつ決めて、その年はそこを応援している」
友紀「へえ。今年はどこなの?」
飛鳥「セリーグは横浜、パリーグはロッテ」
友紀「……なんか微妙なチョイスだね」
飛鳥「確かに優勝候補と言われるようなチームではないけれど、それらに引けをとらない魅力を持ったチームだとボクは思うよ」
友紀「なるほど~。……そうだ。せっかくだからその2つのチームのこと教えてくれないかな」
飛鳥「ボクがかい? 筋金入りの野球ファンに説明できるほど詳しい自信はないんだけど」
友紀「確かにあたしは筋金入りのキャッツファンだけど、他球団の選手についてはあんまり知らないんだ。だから大丈夫だよ」
飛鳥「それなら、一応やるだけやってみようか。誰かに語ることで、自分自身も新しく何かを見つけられるかもしれないから」
友紀「わーい、やったー!」
飛鳥「まずはどっちの球団から」
友紀「あ、でも説明するのはまた後でね。今はキャッツの試合に集中したいから」
飛鳥「……自由だね、友紀さんは」
その日の夕方、レッスンを終えて
友紀「それじゃ、まずはスターの球団について教えてほしいな。キャッツと同じリーグのライバルだし」
飛鳥「理解(わか)った。ではまず、去年の横浜の成績だ」
横浜DeNAベイスターズ 2014年度成績
67勝75敗2分 勝率.472 5位
チーム打率 .253(リーグ6位)
チーム防御率 3.76(リーグ3位)
飛鳥「あまりプロ野球に詳しくない人にも、横浜というチームが弱いということは結構知れ渡っている……それほど近年のチーム状態は悪かった。その中で、昨年は実に7年ぶりに借金(負け越し)を一桁の8に留めることに成功。順位も5位とブービーではあるけど、上昇の兆しが数多く見られたシーズンでもあった」
友紀「5年前とかは今とは比較にならないレベルで負けてたもんね」
飛鳥「借金30越えが普通になってしまっていたからね。昔ほどチームごとの戦力差が出にくい現代野球では異常なほど弱かった。2012年に親会社が変更になってから、3年でよくここまで建て直したものだよ」
友紀「親会社はあたし達とも馴染み深いあそこだね」
飛鳥「あぁ、あそこだ。最初はどうなることかと不安になっていたファンも多かったようだけど、今は積極的な経営方針におおむね満足してるみたいだね」
友紀「スターの球団はここ最近ずーっとお得意様だったのに、去年はうちが負け越しちゃったからなあ。今年はリベンジだよ!」
飛鳥「今友紀さんの言った通り、去年のキャッツとの対戦成績は13勝11敗で2つの勝ち越し。例年大きく負け越していた鬱憤を晴らす結果となっている。しかし一方で、阪神・広島・中日相手に大きく負け越してしまった。5位の要因はこれにあると見ていい」
友紀「キャッツはスターの球団以外には全部勝ち越したからね。これが3連覇の秘訣だよ」
飛鳥「上位に行くためには極端に苦手な相手を作ってはいけない。当然の道理だね」
飛鳥「チーム成績を見ると、打率はリーグ最下位に沈んでいる。総得点で見ても最下位(568点)で、1位のヤクルト(667点)とは100点近くの差をつけられてしまったね」
友紀「打線が弱かったんだね。一昨年はリーグ最強打線とかニュースになってた気がするけど」
飛鳥「一昨年、つまり2013年は実際に総得点ナンバーワンだったから。ただ、その時の主力の多くが怪我や不振で成績を落としてしまった。発展途上なチームなゆえに、個人成績の乱高下も激しい傾向にあるんだ」
友紀「ふうん。あ、でもリーグ1位の得点だったヤクルトは最下位だよね。やっぱり野球は打撃だけじゃなくて投手も大事ってことか」
飛鳥「ヤクルトは圧倒的な得点力を持つと同時に投手陣が崩壊していた。総得点667点は立派だけど、総失点717点は12球団ワースト。セリーグを制したキャッツ(552点)とは150点以上の差がある」
友紀「その点スターの球団は防御率3位かあ。例年結構点とられてるイメージだったけど、去年は守りのチームだったんだね」
飛鳥「……実は、その解釈には落とし穴があるんだ」
友紀「え?」
飛鳥「防御率(9回で平均何点取られるかを表した数値)で見れば横浜は確かにセリーグ3位。しかし、総失点で見るとヤクルトに次ぐワースト2位になっている」
友紀「え、嘘。なんで?」
飛鳥「防御率は自責点を計算に使うからさ。自責点にはエラーによる失点が記録されないから、エラーが多ければ多いほど防御率と失点の間に乖離が生まれてしまう」
友紀「あ、そっか。じゃあ野手のミスが多かったんだね」
飛鳥「その通り。116個でリーグ最多、唯一の三桁越えだ。ちなみにリーグ1位はキャッツで71個だね」
友紀「45個も違うんだ。ま、最近のキャッツは守りで勝ってるチームだから当然かも」
飛鳥「野球は投手、なんてよく言われるけど、正確には投手も含めた守備全体が重要というわけだよ」
友紀「ピッチャーが頑張っても、味方がポロポロこぼしてちゃ意味ないってことだね!」
飛鳥「笑顔で言われると反応に困るな。確かにキャッツはその部分において優秀ではあるけれど」
友紀「まとめると、得点力は低いけど投手はいい。ただし守備が下手……あれ、これってつまり野手のレベルが低いってことなんじゃ」
飛鳥「正しいよ。打つのも守るのも野手の仕事だから。……まあ、これはあくまで去年だけのデータだ。どのチームにおいても同じだけど、補強などを行う以上今年は違った結果が出る可能性も大いにある」
友紀「補強かあ。確か、うちと契約が切れたロペスを獲得してたよね」
飛鳥「ファーストを守っていた主砲のブランコが怪我の連続で戦力として計算しづらくなっていたからね。一発の脅威があり、守備もある程度軽快にこなせるロペスに白羽の矢が立ったというワケだ」
飛鳥「他にもドラフトでは即戦力のショートとして倉本選手を獲得。彼も守備に定評があり、早速開幕レギュラーの座をつかんでいるよ」
友紀「キャッツとの試合でダイビングキャッチしてた人だよね? あれは敵ながらあっぱれだったなあ」
飛鳥「加えてドラフト5位でも内野手である山下選手を獲得。手薄な内野陣をカバーするという球団の方針がよく伝わるドラフトだね」
友紀「野手の補強は内野が中心なんだ。じゃあ投手はどうなの?」
飛鳥「まずドラフト1位で亜細亜大出身の山﨑投手を獲得。オープン戦の結果を踏まえて抑えに大抜擢された」
友紀「新人にいきなり抑えって大変じゃないのかな」
飛鳥「それは間違いないだろうけど、横浜は昨年も当時ルーキーだった三上を抑えにしている。その三上が怪我で出遅れて、今年も同じくルーキーに賭けてみようということになったわけだね」
飛鳥「他に目立った補強としては、ソフトバンクから獲得した岡島かな。左の中継ぎエースとして期待がかかっていたけれど、残念ながら怪我で開幕には間に合わなかった」
友紀「岡島……キャッツにいた頃はまさかメジャーで活躍するなんて思いもしなかったなあ」
飛鳥「他にも助っ人外国人としてキューバからエレラを獲得。こちらはきちんと開幕一軍スタートで、中継ぎ陣の中心的存在になりつつある。あと、二軍スタートだけど元オリックスの東野を戦力外から拾ってきているね」
友紀「岡島に東野に、元キャッツの選手が結構いるね。中継ぎの林もそうだし、中畑監督も現役の時は巨人だったし」
飛鳥「強いチームに在籍していた選手を迎え入れることで、チーム全体の雰囲気が良い方向に変わる可能性もある。血の入れ替えというヤツさ」
友紀「スターの球団の生え抜きで優勝を経験したことあるの、三浦の番長だけだもんね……」
飛鳥「優勝どころか、Aクラス(3位以内)を経験している生え抜きもほとんどいない。悲惨な現状だけど、少しずつ前に進んでいるのは見ていて確かだよ」
友紀「いつかスターの球団がキャッツの優勝を阻む存在として立ち塞がるときが来るのかも……何年後になるかは知らないけど」
飛鳥「遠い未来でないことを、ボクも願っているよ。星が再び輝きを取り戻す日を、ね」
友紀「というか飛鳥ちゃん、自信ないとか言いながらめちゃくちゃ詳しいじゃん」
飛鳥「そこそこ凝り性だからね。調べると決めたら結構調べる」
友紀「勉強になったよ。ありがとう!」
飛鳥「礼には及ばないよ。これでキャッツが逆転負けして傷心の友紀さんの元気が戻るなら安いものさ」
友紀「わーっ! 思い出させないでよ、せっかくスターの球団の話聞いて忘れようとしてたのに!」
飛鳥「強いチームのファンも大変だね。負けになかなか慣れないから。……まあ、完全に慣れてしまっては終わりだというのも事実だけど」
書き溜めここまでなのでいったん切ります
ここから先は個別に選手をピックアップして語っていきます
一応安価を>>17でとります(横浜の現役選手限定で)が、たぶん来ないと思うのでその場合は自分で決めます
石川
では石川でいきます
語ることがめちゃくちゃ多い選手なので簡潔にまとめねば
石川「車で来ました」
???「今車の話した!?」
友紀「打った! これ詰まったけど落ちるよ……ほら落ちた! まわれまわれー! ……やった、サヨナラ勝ちだあ!!」
P「お、今日はキャッツ勝ったのか」
飛鳥「昨日は手痛い逆転負けだったから、喜びもひとしおって感じだね」
P「事務所ではしゃぐなって言っても全然聞かないしな……ビール片手に観戦してないだけマシと思えるようになってきた」
飛鳥「昼間から仕事場で飲酒か。それもそれでひとつの情趣が」
P「ないから。そういえば、飛鳥も野球好きなんだってな。友紀から聞いたんだが」
飛鳥「あぁ。そういうキミは高校野球ファンだったと記憶してるけど」
P「プロの試合もそこそこ見るけど、やっぱり俺にとっての野球シーズンといえば春と夏の甲子園だなー」
友紀「ん、なになに? 野球の話?」
P「お、匂いを嗅ぎつけて野球アイドルがやって来た」
飛鳥「Pが高校野球のファンだという話をしていたところだよ」
友紀「あ、そういえばそうだったね。あたしも甲子園見るの好きだよ。この子がキャッツに入ったらどんなプレーするんだろう、とか考えると楽しいし」
P「どこまでもキャッツ中心だな……」
友紀「いーじゃん別に。それより飛鳥ちゃん、昨日の話の続き聞きたいんだけど、ダメかな?」
飛鳥「昨日というと、横浜の話かい」
友紀「そうそう。今年のチームの行方の決める選手とか教えてもらえたら、あたしも注目しやすいしさ」
飛鳥「まあ、かまわないけど……チームの鍵を握る選手か。何人かいるけど、あえてひとり選ぶとするなら……」
P「やっぱり筒香か? 去年3割20本を達成した23歳の若き大砲」
友紀「今年はずっと4番に座ってるしね。確かうちの阿部も褒めてた気がする」
飛鳥「いや、彼に関しては活躍する前提でボクは考えているからちょっと違う」
P「そうなのか」
飛鳥「打ってもらわないと上位争いなんて不可能だからね。最初から信じるほかないのさ。筒香が4番に座って活躍したうえで、プラスαがいくつかなければAクラス入りは難しいだろう」
友紀「そのプラスαって?」
飛鳥「去年低調だった打線に関しては、やはり筒香の前後のバッターが重要になる。1番から3番が塁に出なければチャンスで4番に回ってこないし、5番や6番が打てなければ簡単に4番との勝負を避けられてしまう」
P「ひとりだけ打ってても点はとれないってことだな」
飛鳥「そういうことだね。まあ、ボクの予想では5番6番に関してはある程度やってくれるんじゃないかと思っている」
友紀「スターの球団の5番6番は、ロペスとバルディリスの外国人コンビだよね」
飛鳥「調子のいい方を5番にしたり、微調整は必要だろうけど、2人ともパワーがあるし実績もあるから」
P「じゃあ、問題は上位打線か」
飛鳥「特に1、2番だね。最初の2人が出てクリーンナップに回るかそうでないかで得点の期待値は大きく変わる。そこまで考えた上で、ボクが選ぶ野手のキーマンは彼だ」スマホポチー
友紀「あ、この人ならあたしも知ってるよ! いっぱい試合出てるもんね」
P「石川雄洋……えっと、ポジションどこだったかな。この顔と名前に見覚えはあるんだが」
飛鳥「28歳。ポジションはセカンド。おそらく年間を通して上位に座ることが多くなるであろう選手だ。去年まではチームのキャプテンを務めていた。Pには、涌井がいた頃の横浜高校のサードと言った方がわかりやすいかな」
P「……ああ! あの時の選手か! 思い出した」
友紀「なになに? 石川って甲子園出てたの?」
P「2004年だから、もう10年以上前になるんだな。ダルビッシュや涌井がいて、駒大苫小牧が夏に優勝した時の甲子園だ」
友紀「10年前かー。さすがにその頃の甲子園は覚えてないなあ」
飛鳥「ボクなんて幼稚園に通っていた頃だ。当時の映像も最近になって見直しただけだよ」
P「あの年の横浜高校はベスト8まで行ったんだよな。でも準々決勝で涌井が乱調で……石川って、最後の甲子園でかなり打ってたはずだ」
飛鳥「今調べたら14打数10安打だね。打率7割1分4厘」
友紀「すごっ!? そんなに打ってたの?」
飛鳥「その夏の活躍が決め手になったのかどうかはわからないけど、2004年のドラフトで横浜に6位指名。晴れて高卒でプロ入りすることができた」
飛鳥「1年1年語っていると時間がなくなるから、下積み時代は省略して……本格的に一軍の試合に出始めたのは4年目の2008年だね。おもにショートやサードを守って、10盗塁はチームトップの記録だった」
友紀「2008年といえば、2年目の坂本がキャッツのショートレギュラーをつかんだ年だね」
P「坂本は俺でも知ってるな。日本代表のショートもやってたし。石川の方が2年先輩なのか」
飛鳥「そうだね。でも、トントン拍子にスターへの階段を駆け上がっていった坂本とは対照的に、石川はそこから山あり谷ありの苦節の日々が続くことになる」
友紀「なんか大変そうだね……今思い出したんだけど、石川ってなんか投げ方変だよね?」
飛鳥「あぁ、送球の際にステップを多めに踏むアレのことか。送球のコントロールが安定しないのを克服するために身につけた技術らしいけど、いつ投げるかわかりづらいせいでたまに味方のファーストがつんのめったりしているね」
P「味方も惑わすステップか……でも、それって投げる前に余計な時間をかけてることになるよな。内野安打とか増えないのか」
飛鳥「まさにそこが石川の抱えている問題のひとつだった。2009年にショートのレギュラーに定着したところまでは良かったんだけど、送球難に加えてトンネルや落球も数多く経験し、終わってみれば17失策。打率もリーグワースト2位と振るわず、誇れるものといえばチームトップの19盗塁くらいだった」
友紀「うわあ……坂本はその年3割打ったのに」
P「なんでも坂本と比べるなよ」
友紀「だって、出てきた年もポジションも同じだし」
P「ポジションと言えば、石川はプロでショートを守っていたんだな。高校時代はサードだったのに」
飛鳥「当時の横浜のサードには大砲の村田修一(現キャッツ)がいたからね。彼を押しのけてまで使おうと考えられるほどの長打力を彼は持っていなかった」
P「それでいざ守らせたらエラーの嵐か」
飛鳥「もともと、高校時代にショート失格の烙印を押されていたらしいからね。そんな選手がいきなりプロで同じポジションをそつなくこなせるはずもない」
友紀「なんで無理にショートをさせようとしたの?」
飛鳥「石川を差し置いて試合に出せるほどの選手がいなかった、という理由もあるけど……当時セカンドを守っていた藤田と守備位置を入れ替えるという手段はあったように思う」
友紀「藤田って、あの楽天の藤田? 守備がすごく上手い」
飛鳥「彼はショートもきちんとこなせるからね。送球難の石川をより一塁に近いセカンドに置くのは考えられる選択肢だった」
P「でも、横浜はそうしなかったんだな」
飛鳥「あぁ。結局石川がセカンドにコンバートしたのは2012年になってから。その後2013年にショートに再コンバート、さらにその年の途中からセカンドに再々コンバートを行っている」
友紀「で、今はセカンドを守ってるんだ。確かにセカンドなら多少ステップを踏んでも内野安打になりにくいし、そっちの方がいいかも」
飛鳥「実際、セカンドなら及第点の守備はできているようにボクも思う。時折ミスをやらかして、それが致命的な失点につながることが多いせいで、印象的には微妙なんだけどね」
友紀「致命的な失点?」
飛鳥「友紀さんもよく覚えているんじゃないかと思う。2011年最終戦の横浜とキャッツの試合」
友紀「2011年の最終戦? 覚えてる覚えてる! 長野が逆転サヨナラ満塁ホームラン打って内海が最多勝に輝いた試合だよね。あたしあの時の内海の涙にもらい泣きしちゃったなあ」
飛鳥「その試合、9回に守備固めでショートに入って早々にエラー、サヨナラ負けの要因を作り出したのが石川だ」
友紀「あ、あの時ボールこぼしたの石川だったんだ。ホームランの印象が強すぎて忘れちゃってたよ」
飛鳥「この試合は親会社が変わる前の最後の一戦で、横浜ベイスターズとしての文字通り最終戦だった。そういう背景も手伝って、この時の彼のミスはいまだにネットで語り継がれるレベルになっている」
P「まさに痛恨のミスってやつか。それでも試合には出続けているんだな……守備が微妙なのはわかったけど、打撃の方はどうなんだ?」
飛鳥「うん。これに関してはまず通算成績から見てもらおう」
石川雄洋(28)
出場試合 839
通算打率 .263
本塁打 16本
打点 171
出塁率 .311
盗塁 101/141(成功率71.6パーセント)
友紀「うーん、微妙?」
P「微妙だな……でも839試合に出場してるってことは、かなり使われてはいるんだな」
飛鳥「他のチームならスタメン落ちしていそうな時期があるからね。これに関しては近年の横浜の選手層の薄さが原因だ。最近になってようやく抜け出しかけている、大暗黒時代の名残だよ」
友紀「大暗黒。暗黒を超えた何かとも呼ばれる2008~2012のスターの球団」
P「そんなにひどかったのか? 確かにニュースとか見ててもいつも順位表の一番下にいたけど」
飛鳥「まずはこれを見てほしい」
6 石川
8 早川
3 内川
5 村田
7 スレッジ
4 カスティーヨ
2 橋本
9 吉村
1 ランドルフ
ランドルフ→寺原→藤江→清水→吉見
飛鳥「これは5年前、つまり2010年の横浜の開幕オーダーと開幕当時の投手のローテーション」
友紀「石川がいるね」
飛鳥「この年は3割近い打率にリーグ2位の盗塁数を記録するなど、彼にとっては飛躍の年となった。……ところで友紀さん、この表にいる選手の中で、現在も横浜に現役として残っているのは何人だと思う」
友紀「え? そうだな~、うーん」
飛鳥「ちなみに同条件でキャッツは7人だ」
P「結構多いな。それなら横浜は5人くらいか」
友紀「いやいや、話の流れから言ってかなり少なそうだよ、これは。ずばり3人とみた!」
飛鳥「外れ。正解は……ひとりだけだ」
友紀「……ひとり? ひとりって、まさか石川だけ?」
P「5年でここにいる選手がひとりを除いてみんないなくなったのか」
飛鳥「その通り。では続いてこれを」
6石川
4渡辺
7スレッジ
5村田
3ハーパー
8森本
9吉村
2武山
1山本
飛鳥「これは2011年の開幕オーダーだけど、この中で現在も横浜でプレーしている選手は何人だと思う」
友紀「まさか、また石川しかいないの?」
飛鳥「正解」コクリ
P「Oh………」
飛鳥「補強はほぼ外れ、若手はなかなか育たず、生え抜きの主力は優勝を求めて他球団に移籍する。そんな暗黒の中の暗黒で、何年も主力を張り続けていたのが石川なんだ」
友紀「スターの球団では替えがきかない選手だったんだね」
飛鳥「だからこそ、ファンが求めるモノも自然と大きくなる」
P「ずっと試合に出ている選手だもんな。いい成績を残してほしいのは当然か」
飛鳥「そういうことだね。ここ数年で他球団のセカンドに魅力的な選手が数多く現れたことも、石川に求められるハードルを高める原因のひとつになっている」
飛鳥「ずっと見てきたことで愛着が湧いているファン。ずっと試合に出ているのになかなか成長しないことにいら立ちを覚えるファン。どちらの数もとても多いし、ボクはどちらの気持ちも理解できる」
友紀「それはわかるなあ。あたしも坂本にかける期待が年々大きくなってるし。今や日本を代表するショートにまで成長してるのに、まだまだできるでしょって文句言いたくなる時まである」
飛鳥「まあ、最近はようやく選手層がまともになりつつある。石川が不調な時に代わりを務めてくれそうな若手が出てきているからね。調子の波が激しい彼にとって、試合に出続けなくていいことは成績向上につながると思う。本人は悔しさを感じるだろうけど」
P「いい時と悪い時の差が激しいのか」
飛鳥「いい時はどんなピッチャーからでも打てるけど、悪い時はどんなピッチャーからも打てない。それを示すかのように、彼は連続マルチ安打(1試合2安打以上)の球団記録を持っているし、去年の9月のように27打数ノーヒットを達成してしまうこともある」
友紀「27打数ノーヒット。いわゆる一人ノーヒットノーランって呼ばれるやつだね」
P「3年夏の甲子園は、そのいい時の状態だったのかもしれないな」
飛鳥「例年8月に調子のピークを迎えるから、多分そうだったんじゃないかな。参考までに彼の8月の打率の推移はこんな感じだね」
2011 .322
2012 .143(怪我でほとんど出場していない)
2013 .397
2014 .306
友紀「うわ、一流じゃん」
P「これで通算2割6分ちょっとということは、悪い時は本当にひどいんだな」
飛鳥「打率が2割を切る月もあるからね。ただ、いい時は本当に魅力的な選手に見える」
友紀「うんうん。調子いい時の石川は相手からすると脅威だよ。粘って四球を選ぶこともあれば、初球から好球必打で鋭く振りぬいてくることもある。しかも塁に出ると厄介だし」
P「やっぱり盗塁警戒か?」
飛鳥「いや、石川は2010年に脚を怪我して以降、あまり盗塁をしなくなっている。友紀さんが言っているのは彼の走塁の上手さについてだろう」
友紀「そうそう。サードファールフライの打球で三塁からタッチアップでホームに突っこんでくるからね。あれにはやられたよ」
飛鳥「他にも、内野ゴロを処理する相手野手の一瞬のすきをついて一塁から一気に三塁まで進んだりとか。純粋な足の速さは別として、走塁技術・判断だけならチーム一と言っていいと思うよ」
P「なるほど」
飛鳥「他にいいところを挙げるとするなら、守備の中でもフライの処理だけはうまいという点もある。たまにフライを追いすぎて外野と交錯する時があるけど」
友紀「いやいや交錯しちゃ駄目でしょ」
飛鳥「あと、周囲の人間の意見によれば練習熱心らしい。曲がりなりにもドラフト6位という下位から一軍レギュラーをつかみ取った選手だ、プロの中でも根気はある方に属するんだろう」
P「やる気がある選手はいいよな。応援したくなる」
飛鳥「これは野球の実力とは直接関係ないけど、コミュニケーション能力も高いようだね。チームメイトだけでなく、他球団の選手、果ては外国人とすらなぜか打ち解けていたりする」
友紀「ふむふむ。……まとめると、すごく個性的な選手ってことでいいのかな~」
P「調子の波が激しいと応援するのも疲れそうだけど、魅力がありそうなのは伝わってきたな」
飛鳥「石川が打てば打線も活性化するとボクは予想している。いろんな意味で今季の鍵を握る選手だよ。だからこそ面白い」
友紀「なるほどー。ところで飛鳥ちゃん、ひとついい?」
飛鳥「なんだい」
友紀「やっぱり詳しすぎない?」
飛鳥「凝り性だからね」
石川雄洋編 おわり
次の話は明日以降になると思います
次に取り上げる選手は決めたのですが、おそらく明日登板するのでその試合の結果を見てから書きたいと思います
ある日の朝の事務所
友紀「あーもう、なんで昨日も一昨日もチャンスであと1本が出ないのかなー」
飛鳥「キャッツ打線は全体的に低調だね。特に村田は深刻のようだ」
友紀「いい加減二軍でリフレッシュさせてあげたほうがいいと思うんだけど……ちゃんと実力が出せればいいバッターなんだからさ」
飛鳥「かつての本塁打王の輝きを取り戻してほしいものだね」
友紀「そうだねー……って、横浜ファンの飛鳥ちゃん的には村田に復活されると困るんじゃないの?」
飛鳥「チームを応援する上では困るかもしれないけど、プロ野球の面白い要素はそれだけではないから。挫折から復活する選手の姿を見ると、人間の底力を感じさせられるようで一種の感動さえ覚えるのさ」
友紀「へえ」
飛鳥「たとえば、一昨日のヤクルト田中のサヨナラタイムリーとかね。ニュースでお立ち台の映像を見て涙腺が刺激されてしまった」
友紀「山田にセカンドのポジションを奪われて、外野に転向してつかみ取ったヒーローだもんね。確かにすごい」
友紀「すごいと言えば、いつの間にか石川の打率が3割6分まで上がってるんだけど。おかしいな、うちとの開幕カードじゃさっぱりだったのに」
飛鳥「開幕12試合ですでに猛打賞4回、ノーヒット5回。少し目を離している隙に成績ががらりと変化しているのは紛れもなくいつもの彼の姿だ」
友紀「石川、わからない男だね……」
??「おはようございます」ガチャ
友紀「あ、瞳子さんだ。おはようございまーす」
飛鳥「おはようございます」
瞳子「あら、来ているのは2人だけ?」
友紀「そうですね」
瞳子「そう……」
飛鳥「……なんだか元気がないように見えますが」
瞳子「え? そ、そんなことないわよ。うん」
瞳子「(子供って案外鋭いのね……私が最近スランプ気味で落ち込んでいるのを見抜かれるところだったわ)」
瞳子「(一度はあきらめたアイドルの道。スカウトされたことがきっかけで、もう一度挑むことにしたけれど……本当にこれでいいのかしら)」
瞳子「(下手にこの子達に気持ちを明かして、暗い雰囲気にするのも申し訳ないし……相談するのはプロデューサーさん相手だけにしましょう)」
瞳子「(早く来ないかしら、彼)」
友紀「まだ序盤とはいえ、まさか横浜中日ヤクルトが同時にAクラスにいるとは予想できなかったなあ」
飛鳥「3チームとも状態がいいからね。ボクも昨日の高崎のピッチングには思わずシビれてしまったよ」
友紀「高崎って横浜のピッチャーだよね。結構前から名前見てる気がする」
飛鳥「2006年のドラフトで社会人の希望枠として入団。3年目の2009年にリリーフとして活躍すると、2011年からは先発ローテーションに名を連ねるようになった」
瞳子「(……野球の話?)」ジー
友紀「瞳子さんは野球に興味ありますか?」
瞳子「え、私?」
友紀「なんか気になる感じでこっち見てたからそうなのかなーって」
瞳子「ああ、なるほど。そうね……たまにスポーツニュースで見かけるくらいで、そこまで興味があるわけでは」
友紀「じゃあ今から興味持ちましょうよ! ちょうど飛鳥ちゃんが語ってくれるみたいだし」
瞳子「は、はあ。まあ、話を聞くだけなら」
飛鳥「では続けようか。下積み時代を経て見事先発の座をつかんだ高崎健太郎。しかし、彼を待ち受けていたのは厳しい戦いの日々だった」
友紀「なんか話の入り方が石川と似てるね」
飛鳥「順風満帆に成長していれば、今頃横浜のエースになっているはずだから」
友紀「それもそうか」
瞳子「ということは、なかなか活躍できなかったということ?」
飛鳥「活躍できなかった、というと若干語弊があるような……とりあえず1年間ローテを守りきり、防御率もそれなりにまとめあげ、チーム最多勝に輝いた」
友紀「ローテ1年目でそれなら十分じゃない? 何勝したの?」
飛鳥「5勝」
友紀「え。5勝で最多なの……?」
飛鳥「しかも注目すべきは15敗していることだ。こちらは文句なしにリーグ最多だね」
瞳子「5勝15敗……そんなに勝てないのなら、普通どこかで二軍に落ちたりするんじゃないかしら」
飛鳥「普通ならそうだけど、高崎の場合は味方の援護に恵まれなかったことも原因だからです。2011年の先発の中でもっとも援護されていないというデータが出ています」
友紀「あー、まあその時の横浜ってまだ順位争いすらできない時期だったしね」
飛鳥「47勝86敗11分。その年のチーム全体の勝敗がこれだ」
瞳子「そういえば、最近になって横浜が順位表の一番下からいなくなっていたわね」
飛鳥「そして翌年。チーム最多勝に輝いた実績を考慮され、高崎は開幕投手に指名された」
友紀「実績なんだ」
飛鳥「実績だよ。そもそも前年に規定投球回に達したのが彼しかいないんだから。……ところが春先はなかなか成績が振るわず、早い回で大量点を取られてしまうこともしばしばだった」
瞳子「なかなかうまくいかないものね……プロの世界は」
飛鳥「それでも夏場以降は立て直し、長いイニングを少ない失点で切り抜けることも多かった。終わってみれば防御率3.20、24登板のうち7試合は自責点ゼロ。昨年よりも成長した姿を見せたと言える」
友紀「おお、なかなかいい感じ。もしかして2ケタ勝利しちゃったりとか」
飛鳥「7勝10敗」
友紀「……もうちょっと勝たせてあげてもいいんじゃないかな」
飛鳥「まさにそれが高崎という選手を語る上で外せない点さ」
飛鳥「はっきり言って、彼は運が悪い」
瞳子「運が悪い?」
飛鳥「好投してもなかなか援護がもらえない。それどころか味方のエラーで余計に失点を重ねることもあった。先ほど言った、7試合で自責ゼロだったという話の続きだけど……その7試合での彼の成績は1勝1敗だ」
友紀「1回しか勝ってないの!?」
瞳子「あと2つくらいは勝てていてもおかしくなさそうだけど」
飛鳥「とある阪神戦。珍しく序盤から援護点をもらった高崎は力投を続けるも、野手の相次ぐエラーによって勝ち投手の権利が消滅。中盤でマウンドを降りることになってしまう。その際、ベンチで悲壮感漂う彼は何を思ったのかロジンバッグの白い粉を壁に擦り付けた」
飛鳥「それがまるで彼の激情を絵にしたもののようだと話題になり、現在もネットではネタにされている。これがその画像だ」スマホミセツケル
友紀「……うわ、思った以上に絵だ」
瞳子「ご丁寧に解説がついたバージョンまであるのね……確かに生き物に見えるけど」
飛鳥「題名は鳳凰とされている。ネットで検索すればすぐに画像が出てくるよ」
飛鳥「彼の不運の究極形が8月の広島戦だ」
友紀「究極形って、もうそれだけで悲しい気持ちになるんだけど」
飛鳥「初回からいきなり味方のエラー2つで2失点。当然自責はゼロ」
瞳子「のっけからもうひどいわね」
飛鳥「しかし高崎はめげずに投げ続ける。2回には味方のミスを取り戻そうと必死のタイムリーヒットを放ち1点を返した」
友紀「自分で打つんだ」
飛鳥「その後も攻撃ではバントをきっちり決め、守備でも3つ目のエラーに耐えて失点せずに踏ん張る」
瞳子「さりげなくエラー増えたわね」
友紀「もうオチが見えてるんだけど」
飛鳥「8回裏まで初回の2失点だけで投げ切った高崎。……しかし、そんな彼に味方の援護はなく、完投負け。8回自責ゼロ1打点で負け投手という珍しい記録の体現者となってしまった」
友紀「ひどい」
瞳子「これ以上ないほど悲しい黒星ね」
飛鳥「余談だけど、そのシーズンではベンチの壁に設置されていた扇風機が突如彼目がけて落下してくるという事件もあった」
友紀「扇風機にすら牙を剥かれるんだ……」
飛鳥「……まあ、球団にはピッチング内容をきちんと評価され、来年もローテーションの一角としての活躍を期待された。それは事実だよ」
飛鳥「迎えた2013年。チームは大型補強を行ったこともあり、順位争いができるまでに強くなった。一時はAクラス圏内に入るなど、最終結果は5位ながらも大いに希望を感じさせるシーズンになった」
友紀「今度こそ2ケタ勝てたでしょ!」
飛鳥「……しかし、一軍に高崎の姿はなかった」
友紀「なんで!?」
飛鳥「チームが上り調子なのと対照的に、彼自身の成績が悪化。オールスター前に先発して炎上したのを最後に、シーズン終盤は二軍で過ごすことになってしまったのさ」
瞳子「うまくいかないものね……」
飛鳥「少しずつ一流投手への階段を昇り続けていた彼が味わった挫折。これは翌年の2014年も続く」
瞳子「挫折……」
飛鳥「オープン戦の成績も良くなく、開幕ローテーションに入れなかった高崎。中継ぎで一軍メンバーに加わるも、登板直後の初球にグランドスラムを打たれるなどピリッとしない。結局そう投げることなく再び二軍落ちになってしまう」
友紀「踏んだり蹴ったりだね……」
瞳子「………」
飛鳥「だが、彼はここで腐らなかった」
瞳子「えっ……?」
飛鳥「2014年後半。いまだにローテの6番手が埋まらない横浜先発陣。首脳陣はついに高崎の一軍昇格を決断した」
飛鳥「結果を出せなければすぐに降格。チームも3位にわずかな希望を残している時期。彼自身にとってもチームにとっても、まさしく正念場」
友紀「そ、それでどうなったの?」
飛鳥「……見事復活さ。最初の中日戦は6回2失点とまずまず。8月には、当時10試合連続2ケタ安打と手の付けられない状態だったヤクルト打線を6回2失点。この試合で先発としては1年4ヶ月ぶりに白星を手に入れた」
友紀「打たれていた頃と何が変わったの?」
飛鳥「ツーシームを覚えたのが非常に大きい。打者の手元で小さく変化するボールを投げることで、凡打を増やせるようになった。それにともなって、インコースを恐れず投げられるようになったらしい。モデルチェンジに成功したというわけさ」
瞳子「モデルチェンジ……新しい自分」
飛鳥「その後もまずまずの投球を見せた高崎。成績こそ2勝3敗だったけれど、来シーズンに期待を持てる内容だった」
友紀「そして今年、だね」
飛鳥「あぁ。オープン戦から好投を続けた高崎は、久しぶりに開幕ローテに名を連ねる」
飛鳥「先発6番手にもかかわらず、初戦の相手は球界のエース前田健太。いきなりのハードラックだけど、彼は堂々と投手戦を繰り広げ、7回1失点。勝ち星こそつかなかったものの、チームは延長の末サヨナラ勝利」
友紀「おお」
飛鳥「そして昨日の先発2戦目。再三ランナーを出しながらも7回を無失点に抑え、今シーズン初勝利。打つ方でも2安打と、鍛え上げられたバッティングを見せつけた」
飛鳥「今は野球をやっていて楽しいそうだ」
友紀「挫折からの復活だね……まあ、キャッツと当たる時は勝たせてもらうけど」
飛鳥「友紀さんならそう言うと思ったよ」
瞳子「……挫折にめげず、頑張ったのね。彼は」
飛鳥「……瞳子さん? どうかしましたか」
瞳子「いえ、なんでもないの。いい話を聞かせてもらったと思っただけ」
瞳子「(そうね、私もまだ……)」
P「おはようございまーす」ガチャ
友紀「あ、プロデューサー。おはよー」
飛鳥「おはよう、P」
P「瞳子さん。昨日の仕事のことなんですけど……」
瞳子「大丈夫よ」
P「え?」
瞳子「私、もっと頑張ってみるわ。諦めるにはまだ早いから」
P「あ……はい。その通りです」
瞳子「それじゃあ、レッスンに行ってくるわね」バタン
P「(昨日は結構落ち込んでるみたいだったけど……元気になってる?)」
友紀「ねえねえ飛鳥ちゃん。高崎で検索したら、なんか高さ危険太郎とか出てきたんだけど」
飛鳥「彼のピッチング内容と名前を掛けた呼び名だね。高めに球が行く日は危険だということさ」
友紀「なるほど。考えた人うまいね」
P「2人とも、瞳子さんに何か言ってくれたのか?」
友紀「何かって……」
飛鳥「高崎の話を長々と聞かせただけだけど」
P「高崎? 甲子園の話か?」
友紀「違う違う。健大高崎じゃなくて」
飛鳥「横浜の希望の星。壁を乗り越え、さらに輝きを増した星の話さ」
高崎健太郎編 終わり
一昨日は田中浩康に泣かされ、昨日は高崎に泣かされました
ちょっと前には中日八木にも泣かされました
とりあえずこれで高崎健太郎編は終わりです
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