ぼく「好き?」幼馴染「嫌い」 (41)
ぼく「ひどくない?」
幼馴染「ひどくない」
ぼく「今こっち見た?」
幼馴染「見てない」
ぼく「見てた。見てたのが鏡で見えた」
幼馴染「見てない」
ぼく「でも」
幼馴染「見てないったら見てない」
ぼく「うう……」
ぼく「おいしい?」
幼馴染「おいしくない」
ぼく「ぼくが作ったのに」
幼馴染「まずい」
ぼく「嘘です。本当は姉さんが作りました」
幼馴染「おいしい」
ぼく「ひどい……」
幼馴染「ひどくない。すっごくおいしい」
ぼく「うれしい?」
幼馴染「うれしくない」
ぼく「でもにやけてる」
幼馴染「……」
ぼく「いそいで無表情になるのかわいい」
幼馴染「かわいくない」
ぼく「かわいい」
幼馴染「かわいくない」
ぼく「寒い?」
幼馴染「寒くない」
ぼく「手が冷たいよ?」
幼馴染「触らないで」
ぼく「ホッカイロあげる」
幼馴染「いらない」
ぼく「ホッカイロあげない」
幼馴染「いらない」
ぼく「うーん……」
ぼく「身体冷やすとよくないよ」
幼馴染「平気」
ぼく「でも寒いし」
幼馴染「大丈夫」
ぼく「その手で触ったらピーちゃんびっくりしするかも」
幼馴染「!」
ぼく「ホッカイロ熱いな。捨てちゃおうかな」
幼馴染「ちょうだい」
ぼく「あげない」
幼馴染「よこせ」
ぼく「ひえぇ」
ぼく「とっておいたケーキがない……食べた?」
幼馴染「食べてない」
ぼく「口の端にクリーム」
幼馴染「シュークリーム食べてた」
ぼく「そっか」
幼馴染「うん」
ぼく「シュークリーム買ってきたけどそれならいらないよね」
幼馴染「いる」
ぼく「食べ過ぎよくない」
幼馴染「よくなくない」
ぼく「ピーちゃんかわいいね」
幼馴染「うん」
ぼく「言葉しゃべるし頭もいいね」
幼馴染「うん」
ぼく「でも君の方がかわいいし頭もいい」
幼馴染「やめて」
ぼく「嫌です。なでなで」
幼馴染「やめて」
ぼく「明るいね」
幼馴染「明るくない暗い」
ぼく「起きようよ」
幼馴染「起きない。眠い」
ぼく「朝だって。日曜日だけど」
幼馴染「もっと寝る」
ぼく「ピーちゃんが寂しがってた」
幼馴染「起きる」
ぼく「散歩行こう」
幼馴染「行かない」
ぼく「雪がいっぱいできれいだよ」
幼馴染「きれいじゃない。白いだけ」
ぼく「じゃあやめよう」
幼馴染「うん」
ぼく「散歩しながら食べる肉まんはおいしかっただろうなあ」
幼馴染「コンビニ?」
ぼく「うん。途中で買う」
幼馴染「行く」
ぼく「でも行くのやめたし」
幼馴染「行くっ」
ぼく「はい」
ぼく「柴犬だ。かわいいね」
幼馴染「かわいくない」
ぼく「なんで?」
幼馴染「ピーちゃんの方がかわいい」
ぼく「そうかなあ、いい勝負じゃない?」
幼馴染「ピーちゃんの方がかわいい」
ぼく「でも柴犬も」
幼馴染「うわき者っ」
ぼく「いたっ。いたいって!」
ぼく「楽しい?」
幼馴染「楽しくない」
ぼく「でも今笑ってた」
幼馴染「……ちょっと楽しい」
ぼく「ぼくも楽しい」
幼馴染「じゃあ楽しくない」
ぼく「じゃあってなに?」
幼馴染「別に。楽しくない」
ぼく「じゃあぼくも楽しくない」
幼馴染「じゃあってなに?」
ぼく「別に。ああ楽しくないなー。ふふ」
幼馴染「むう」
ぼく「ただいま」
幼馴染「ただいま」
ぼく「部屋寒い」
幼馴染「寒くない」
ぼく「あ、こたつずるい。ぼくも入れてよ」
幼馴染「だめ。わたし専用」
ぼく「こたつ亀め。こちょこちょ」
幼馴染「わわっ」
ぼく「お鍋おいしい」
幼馴染「おいしくない」
ぼく「姉さんが作ったよ?」
幼馴染「……おいしい」
ぼく「あったまるねえ」
幼馴染「そんなことない」
ぼく「これならどう?」
幼馴染「くっつかないで」
ぼく「おっしくっらまんじゅうー」
幼馴染「不快」
ぼく「……大丈夫?」
幼馴染「大丈夫」
ぼく「そか……そうだね。ピーちゃんは強いもんね」
幼馴染「うん」
ぼく「すぐ元気になってペットの病院から帰ってくるよ」
幼馴染「分かりきったこと言わないで」
ぼく「うん、ごめん」
幼馴染「…………ピーちゃん」
ぼく「……」
ぼく「面白い?」
幼馴染「面白くない」
ぼく「じゃあこの顔」
幼馴染「サムい」
ぼく「むう。ならこの顔」
幼馴染「……っ」
ぼく「今笑った」
幼馴染「笑ってない」
ぼく「かわいいかわいい」
幼馴染「……ピーちゃんの方がかわいい」
ぼく「……」
ぼく「……泣いてるの?」
幼馴染「泣いてない」
ぼく「そっか」
幼馴染「うん」
ぼく「……掘れたよ」
幼馴染「……」
ぼく「さ、ピーちゃんを眠らせてあげよう?」
幼馴染「……」
ぼく「ごめん。やっぱりしばらくこうしてよっか」
幼馴染「……」
ぼく「……泣いてる?」
幼馴染「泣いてない」
ぼく「寒くない?」
幼馴染「……」
ぼく「暗いよ?」
幼馴染「……」
ぼく「電気とストーブつけるね」
幼馴染「やめて」
ぼく「……」
幼馴染「余計なことしないで」
ぼく「苦しい?」
幼馴染「苦し、くない」
ぼく「見事に風邪ひいちゃったね」
幼馴染「ゼイ……ゼイ……」
ぼく「何か欲しいものある?」
幼馴染「ない」
ぼく「そっか。ねえ、本当に苦しくない?」
幼馴染「苦しいけど、苦しくない」
ぼく「え?」
幼馴染「ピーちゃんはきっと、もっと、苦しかった」
ぼく「……」
ぼく「すこしお話をしよう」
幼馴染「しない」
ぼく「じゃあ独り言を言う」
幼馴染「聞かない」
ぼく「うん分かった、それでいいよ。さてピーちゃんはね、南の方の大きい島から来た南国の鳥なんだ」
ぼく「あったかいところが大好きで、いつも仲間と一緒にいる」
ぼく「木の実や草の実を食べながらゆったりと暮らしてるんだね」
幼馴染「……」
ぼく「ピーちゃんは多分その島を知らないし見たこともないはずだ」
ぼく「生まれる前にこっちに来たからね。でもきっと頭の奥の方ではきっとふるさとを知っているはずなんだ」
幼馴染「ピーちゃんは、帰った?」
ぼく「正解。ピーちゃんの魂は空の高いところの風を受けて南の島へと飛んでいったよ。びゅーん」
ぼく「今はあったかい日差しの中、川の水を飲んで翼を休めてるんじゃないかな。だから、安心安心」
幼馴染「……」
ぼく「信じる?」
幼馴染「信じない」
ぼく「そっか。そうだよね」
幼馴染「嘘つき」
ぼく「嫌いになった?」
幼馴染「大嫌い」
ぼく「早くよくなるといいね」
幼馴染「うん」
ぼく「寒いね」
幼馴染「寒くない」
ぼく「風邪治ってよかったね」
幼馴染「うん」
ぼく「でも本当に寒くない?」
幼馴染「寒い。でもこれならだいじょぶ」
ぼく「手、冷えてるね」
幼馴染「そっちはあったかい」
ぼく「柴犬かわいいね」
幼馴染「うん」
ぼく「ピーちゃんはもっとかわいかったね」
幼馴染「……うん」
ぼく「元気かなあピーちゃん」
幼馴染「元気じゃない。寂しがってる」
ぼく「……かもね」
幼馴染「いつか南の島にピーちゃん探しに行く」
ぼく「え?」
幼馴染「一緒に行く」
ぼく「ぼくも?」
幼馴染「嫌?」
ぼく「ええと……」
幼馴染「嫌?」
ぼく「嫌じゃないです」
幼馴染「よし」
ぼく「暑い」
幼馴染「暑くない」
ぼく「そんなにひっつかれると暑い。ちょっと離れて」
幼馴染「無理」
ぼく「君ならできる」
幼馴染「できるけど無理」
ぼく「歩きにくいから。……あと恥ずかしいし」
幼馴染「歩きにくくない。恥ずかしくもない」
ぼく「雪、だいぶとけたね」
幼馴染「うん」
ぼく「まだ寒いけど、もうすぐ春だ」
幼馴染「南はあっち?」
ぼく「その背中側」
幼馴染「むう。あっちか」
ぼく「その右手側」
幼馴染「怒るよ」
ぼく「どうぞ」
ぼく「春が来るねえ」
幼馴染「まだ来ない」
ぼく「もうすぐ来るねえ」
幼馴染「まだしばらくは来ない」
ぼく「でもいつかは来る。春は好き?」
幼馴染「嫌い」
ぼく「なんで?」
幼馴染「なんでだろ」
ぼく「ふうむ」
ぼく「夏は?」
幼馴染「嫌い」
ぼく「秋は?」
幼馴染「嫌い」
ぼく「ぼくは?」
幼馴染「え?」
ぼく「嫌い?」
幼馴染「……好き」
おわり
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