死神「二次元に転生できる能力だ」 (137)

―――――――――――――――――――――――――――

男(ああ!アスナたん!可愛いよ、結婚しよう)シコシコ

男(……うっ!!)ドピュッ


男(ふぅ……)

男(……キリト[ピーーー])



男(わかってる、二次元のキャラと結婚なんて出来ない。キリトに嫉妬してもしょうが無いんだ)

男「……寝るか」


死神「その夢、叶えたくないか?」

男「……う、うわああぁああああ」


死神「驚くことはない――お前の夢を叶えるために来た――」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1423986872

男「う、うわああああああああ」


死神「いつまで驚いてんだ」

男「……な、何しに来たんだよ!」

死神「お前は二次元のキャラクターに恋してるらしいな」

男「……ああ、そうだよ」

死神「二次元に行きたくないか?」

男「行けるもんなら行きたいよ、でもさ、そんなの……絶対不可能なんだよ」


死神「だから、それを叶えてやると言ってるんだ」

男「……!?」




死神「お前には二次元に転生できる能力を授ける」

男「う、嘘だろ……そんな都合のいい話あるわけねえよ」

死神「もちろん契約には対価が必要だ」

男「……等価交換ってことかよ」

死神「そうだ」


死神「俺が支払うのは……お前の魂だ……」

男「……俺は死ぬってことか」

死神「この世に存在するお前の魂は他の世界へと転送される」


男「この体の魂は無くなるってことか」

死神「無くなりはしない、この世界から消えるだけだ」


死神「お前はこの世界から消え、新しい、お前の好きな世界へと旅立てる」


男「……」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

何をやってもダメ、何をやっても失敗する

得意なことなんて一つもない

生まれつき、才能なんてなかった

気がつけばヒキニート

持ってるものもなければ、失うものもない

いつだって俺は――――その他大勢だった

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男「なあ」

死神「俺のことは死神と呼べ」

男「聞きたいんだが……好きな世界ってことは、物語の世界にも入れるんだよな」

死神「そうだ」

男「……主人公なのか?」

死神「お前が望めばな」

男「どの世界かは自由に決められるのか?」

死神「それも、お前が望めば」



男「……いいよ、契約しよう、死神」

死神「本当にいいんだな?」


男「ああ、構わない」

死神「では、契約成立だ。すぐにでも転生させよう」

男「……待て、聞きたいことが山ほどある」

死神「そうか、聞け」

男「そもそも、なんでお前は俺のところに来た」

死神「死神だからなぁ、察せよ」

男「……契約なんて嘘で俺は死ぬんじゃないのか?」

死神「まあ、信じるか信じないかはお前次第だろうよ」

男「……」


男(……どうせ、生きてても仕方がない命だ……アスナに会えるなら……)


男「…わかったよ、聞きたいことは以上だ」

死神「そうかい。じゃあ、転送するぜ?」

男「転送ってどうするんだよ」

死神「……簡単に言えばお前を[ピーーー]」

男「その、如何にも死神チックなやつでか?」

死神「そうだ、これを振り下ろす時、行きたい世界を願え」


―――――――――――――――――――――――――――


男「…準備は出来た」

死神「……行きたい世界を願え」

男(SAO……アスナ……)




死神「じゃあな、楽しめよ―――違う世界を――――」

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~
~~~



男「……ここは……」

クライン「お!起こしちまったか」

男「……ク、クライン?」

クライン「どうしたんだ?そんなビビって、寝ぼけてんのか?」

男「……俺はどうしてここに……」

クライン「今からボス攻略に行くってお前が言ったんじゃねえか」

男「…ああ、そうだったな」


男(……今、第何層なんだろう……)

クライン「早く行こうぜ!キリト!」

男「お、おう!!」


男(俺が……キリト!!!)

男(本当に転送されてる!!!)


―――――――――――――――――――――――――――
――――ダンジョン ボス入り口

クライン「遅くなってすまん、キリトが眠いって言うからよぉ」

エギル「そうか、まあいい、キリトは主戦力だからな」

男「ボスはみんなで協力しないと倒せないよ」



アスナ「さあ、揃ったところで、攻略を始めましょう!」


男(……ア……アスナ!)


男「……ア!アスナ!!!」

アスナ「……ど、どうしたの?キリトくん……?」

男「俺、会えて嬉しいよ!」

アスナ「い、今はそれどころじゃないでしょ?」

男「そ、そうだね」

アスナ「攻略が終わったら、ゆっくりお話しようね!」

男「お、おう!」



エギル「ゲートが開くぞ!」



ピコン

ボスキャラ  HP 1500000


クライン「こりゃまたえらくHPが多いな」

アスナ「来るわよ!」


俺「……ソードスキル!しねえええええ!!」


アスナ「正面から行ったらダメ!!」

男「…え?」


ブン!!

男「うわああああぁぁぁぁぁ」瀕死





クライン「キリトォ!!」

エギル「なんであいつ、正面から向かっていったんだ?」

アスナ「いつものキリトくんならあんなことしないのに……」



男「クッ……」

アスナ「これ、ポーション!」

男「あ、ありがとう」

アスナ「ダメよ、勝手に攻撃したら!」

男「す、すまない……」


クライン「俺が気を引く間に攻撃しろ!キリト!」

男「ああ、分かった」


―――――――――――――――――――――――――――

クライン「キリト!今だ!!」

男「おし!ソードスキル!!!」


ズシャ!

男「やったか!」

アスナ「キリトくん!危ない!!」


ドスン!

男「うわあぁぁああああ!」瀕死


クライン「……なんで攻撃した後気ぃ抜いてんだよ……!」

エギル「今日のアイツ、どうしたんだ……」

―――――――――――――――――――――――――――

男「……また失敗した……」

男(このままじゃHPが……0になる……)


男(HPが0になったら……死ぬんだよな?)


男「……嫌だ……せっかくこの世界に来たのに……死にたくない!」

クライン「……キリト?」

男「嫌だ!嫌だ!俺は死にたくないんだぁあああ」

クライン「おい!どうしちまったんだよ!?」

男「そうだ、逃げないと……!」

男「嫌だぁあああああ」ダッシュ


クライン「おい!キリト!!」

アスナ「キリトくん!!」


男「おい!ここから出してくれ!!!」バンバン

クライン「おい、どうしたんだよ!戦闘中は出れねえに決まってんだろうが!」

男「うわぁぁ、どうすればいいんだぁ」


エギル「クライン!そっちに攻撃行くぞ!」


クライン「キリト、しっかりしろ、このままじゃ攻撃食らっちまう」

男「……もうだめだ」


エギル「おい!攻撃翌来たぞ!!」


クライン「くそったれぇ!!」


トォ゙ン!!

クライン「うわぁぁぁぁ!!!」瀕死


クライン「……・くっそぉ……」フラフラ

男「……お、俺をかばって……」


エギル「またそっち攻撃行くぞ!!」


クライン「は……早く、回復ポーションを……」

男「ど、どうしよう……」


アスナ「キリトくん!危ない!!」



ドォォォンン!!

アスナ「きゃァァァァああああ!」瀕死




男「ア、アスナ!!!」


エギル「くそ!キリトのやつ、マジでどうしちまったんだ!」



男「アスナ!アスナ……!」


男「……俺の……俺のアスナを……!」


男「しねええええええ!!ソードスキル!!!」


エギル「おい!そのHPで突っ込んでどうすんだ!」


男「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」




ドォォォォ゛ン!

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―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――


男「……」


男「……俺は、どうなったんだ」


死神「よお」

男「……死神か」

死神「どうだったよ、SAOの世界は」

男「……何も出来なかった……」

死神「お前、ここ、どこだと思う?」

男「……?」


男(……船の上か……)

死神「そうだ。次のお前が望む世界に既に移動している」

男「!?」


男「俺は……SAOの世界で死んだってことか?」

死神「そうだ。それはもう情けない敗北っぷりだったぜ?」

男「……俺のせいでアスナが……クラインが……」

死神「お前にキリトは荷が重かったようだな?」

男「……やっとアスナに会えたのに……」



男「……待てよ、俺、死んだのに何でまだ続いてるんだよ?」

死神「誰が転生は一度って言ったよ」

男「!?」

死神「転生は何度だって続く……お前がしぬ限りなぁ?」

男「……あんな目に……何度も遭うってことかよ!」

死神「いや?そうとも限らねえよ?……お前が主人公として成功すれば、永遠にその世界で楽しく過ごせるってことよ」

男「……主人公たらなければならないってことか」

死神「そういうことだ、ははっ」


死神「さーて、次の世界はどこでしょう?」

男「……船の上、そして俺の趣味、もう決まってるよな……艦これだろ?」


死神「大正解!」


死神「じゃあ……――――――次の世界を楽しめよ?―――――」



―――――――――――――――――――――――――――
――――鎮守府

榛名「提督!出撃の時間です!」

男「……」

榛名「……提督……?」


男「……はっ!」

榛名「どうしたんですか?ボーっとして」

男(……ここは……見たところ鎮守府だろうな……)


男「いや、何でもないんだ」

榛名「そうですかっ!では、今日の概略を……」



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―――――海上

霧島「敵艦!発見しました!」

男「そ、そうか……え、えと……ど、どうすればいいんだ……」

霧島「提督!指示を!」

男「えと、えっと……」


男(ゲームと全然違うんだが……なにこれ、本物に合わせてあるの!?)


男「と、とりあえず金剛と比叡は敵艦に砲撃開始!」

金剛「了解ネー!」


金剛「バーニングラーヴ!!!!」


ドゴーン!ドゴーン!!


霧島「敵艦に命中!順調です!」

男「……やった……やったぞ!!」


男(これなら、俺も主人公になれるかもしれない!!)


男「続いて榛名も攻撃に加われ!」


榛名「榛名!砲撃します!!」


ドゴーン!

霧島「命中!敵艦に順調にダメージを与えています!」

男「よっしゃ!」

金剛「私もいくネー!バーニングラァァァブ!!!」


ドゴーン!


霧島「敵艦に命中……いや、待ってください!」

男「どうした?」

霧島「敵艦が複数に隊を別れてこちらに向かってきます!」

男「作戦変更ってことか……こちらも別れてそれぞれ迎え撃つ!」


―――――――――――――――――――――――――――

榛名「それぞれに別れました!」

男「よし、攻撃だ!」


霧島「提督!大変です!」

男「……?」

霧島「分かれていた敵艦隊が戦艦金剛に向かって移動を始めました!」

男「な……なんだと……」


男「罠に掛かったってことか……!」

男「急いで比叡を金剛の元に!援護射撃だ!」


霧島「こ、このまでは……間に合いません!」

男「そ、そんなぁ……」


金剛「バーニングラーブ!!」

ドゴーン

金剛「ダメネ、敵の数が多すぎるネ……」



敵艦「総員……攻撃ィ!!」ドドドドーン


金剛「キャアアア!!!!」中破

男「金剛……!」


男「お、俺が作戦を読めていたら……」

霧島「今はそんなこといってる場合じゃありません!」

男「……ひ、比叡はまだ到着しないのか!」

霧島「……間に合いません……」


榛名「私が行きます!」

男「……榛名……」

榛名「榛名だったらこの距離なら間に合います!」

男「……でも……」

榛名「榛名は大丈夫です!!」


男「……分かった。行ってくれ……頼んだ」

榛名「榛名!出撃します!!」


金剛「……まだ戦えるネ……バァァニングゥラーーーブ!!」ドドーン


金剛(きっと提督は考えがあってこの配置にしてるネ!私は提督を信じてるネ!!)


男「榛名……間に合ってくれ……!」



敵艦隊「これで終わりだ!総員、攻撃!!!」ドドドーン!!


金剛「キャァァァァ!!!!」轟沈




霧島「……こ、金剛……轟沈しました……」


男「……間に合わなかった……だと……」





金剛『提督、どうか武運長久を…私、ヴァルハラから観ているネ……』


男「こ……金剛ぉぉぉぉ!!」


霧島「提督!榛名が到着しました!」


榛名「……金剛お姉さま……」



男「……このままじゃ……榛名が集中砲火される……」



榛名「榛名!砲撃します!!」


霧島「……次の指示を!」

男「……」

霧島「……提督!!」

男「……」


男「……死神……聞いてるか?」

霧島「……提督……?」


男「……転生は終わらないんだよな?」

霧島「……提督……なにを……」




霧島「行けません!提督!!!」


男「……ふっ!」


―――――――グサッ


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―――――――
――

――
―――――――
―――――――――――――――

男「……」

男「……あんまり痛くないんだな、自[ピーーー]るのって」


死神「おい?自分からゲームオーバーになりに行ったのかよ?」

男「……榛名は始めた時からずっと旗艦だったんだ」

男「轟沈する姿だけは……見たくなかった」

死神「だからって…大胆なことするなぁ?」


男「……金剛……すまん……」





死神「まあ、どこでゲームオーバーになるかなんて主人公の自由よ」

男「……で、次はどの世界なんだよ」

死神「ヒントは……そうだな、国民的人気RPGってところだな」

男「……FFかドラクエか?」

死神「さあ、どっちだろうね?」



死神「じゃあな、もう会わねえといいな」


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―――始まりの街


男「……ドラクエだったか」


男「装備は……初期のままだな」

男「金も無いし、とりあえずスライムでも狩って資金集めからだな」



―――草原

男「お!スライム発見……背後からだな」

男「……」ソーット


男「テヤー!!」

スライム「」シュン

男「よ、避けた……?」



男 の攻撃は外れてしまった

スライムの攻撃 ザクシュッ

男「うわぁぁぁぁ!!!!」 HP0




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―――――――――――――――――――――――――――


男「……」

男「おい」

男「まだプレイ時間5分くらいだったろ」


死神「……」


死神「スライムに負けるやつ、初めて見たぜ」

男「俺も初めてだよ!」

死神「ドラクエの勇者は基礎体力が一般人とは違ったってことかねぇ?」

男「……あいつは勇者になるべくして勇者になったってことかよ」

男「くそっ!才能の塊め……」



死神「んで、最速で新しい世界に来たわけだが?」

男「早すぎて新しい世界願う時間も無かったっての……」


死神「それでは、ヒントだな……カードゲームだ」

男「……俺はカードは遊戯王しかやらない」

死神「大正解!」


死神「じゃあな、せいぜい城之内くらいには勝ってこいよ?」クックック

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―――――――


――――
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―――デュエルシップ VS獏良戦


獏良「どうした!ドローしねぇのか?」


男「……はっ!」


男(……獏良戦か……)


獏良「俺のウィジャ盤の効果は次のターンで完成、俺の勝利が決まりってことだ!」ハハッ

男「……」


男(……原作ならばこのターンにオシリスの天空竜を召喚、逆転勝利だ


男(……デッキの並び順はもう決まってるはず!!)

男(これなら……俺でも主人公に!!)



男「俺のターン!ドロー!!」



グレムリン



男「……なんだと!」

男「どういうことだ!山札は決まってるはず……」

獏良「おい?どうした!頭でもおかしくなっちまったか?」


男「……」

男「……俺は……ターンエンドだ」


獏良「へっ!この瞬間、ウィジャ盤の効果発動!効果により、俺の勝利が決定だ」

男「……」

獏良「負けた奴には罰ゲームを喰らってもらうぜ?」


男「やめろ……やめっ うわあああああああ」



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男「……もう無理だ」

死神「どうした」

男「……やっぱ、俺なんてダメなんだ」


男「……戻りたい……」

死神「……あ?」

男「……俺、戻りてえよ!もうこんなの嫌だァ!もう嫌なんだぁあ!」

死神「……お前の魂はもう現実には存在しない。無理だ」

男「もう返してくれよぉ、こんなの夢なんだろ?だって有り得ねえだろ」

死神「一度成立した契約は破棄できん」


男「そ……そんな……」


男「……うわあああああああああああ」



死神「……」

死神「……じゃあな」


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―――部室前

男「……ここどこだ」

男「……学校の校舎……ってことは!」


男「学園モノ!?」

男「バトル物じゃないってことは、そう簡単には死なないだろ……」


?「あれ?先輩、そんなところでどうしたんですか?」

男「……あ、あずにゃん?」

梓「どうしたんですか?ボーっと突っ立って……」


男「いや、なんでもないよ」

梓「そうですか?じゃあ部室に入りましょう」

男「そ、そうだね」


律「おーっす!梓に唯!」

男「……唯?」

律「……どうしたんだよ、元気ねえなぁ」

男「俺、もしかして唯になってる?」

律「なに変なこと言ってんだよ……早くしないと唯のぶんまで食べちゃうぞー!」

男「……ちょっとまって、俺、トイレ行ってくる」ダダッ

律「分かった……って……俺?」



――――トイレ

男(……俺……女の子になってる……)

男(む……胸も……アレ?全然エロい気分にならない)

男(心も女の子ってことなのか?)


男先生「……うわ!なんだね君は!」

男「……え?」

男先生「ここは男子トイレだぞ!」

男「あっ、す、すみません……」


男(マジで女の子なんだ……)

――部室

男(唯)「お、遅くなったー!」

澪「唯、大丈夫か?」

男(唯)「え?な、なにが?」

澪「今日の唯、なんか調子悪そうだぞ?」

男(唯)「そ、そんなことないよ?」


律「それより早く食べようぜ~!」

紬「唯ちゃんの分もお茶淹れるね」

男(唯)「あ、ありがとう」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

律「それでさー!澪が何もない道路でもコケてさぁ!」

澪「そ!それは言わない約束だろ?」

律「もうホントに……って……唯?」

男(唯)「……」


律「唯!」

男(唯)「な、、、なに???」

澪「……どうしたんだよ、さっきから一言も喋ってないよな?」

男(唯)「え?い、いいいっやあああ」




男(唯)  (き……緊張して喋れないィィィ……!)



梓「体調悪いようだったら帰って寝たほうがいいんじゃないですか?」

律「そうだな……顔も赤いみたいだし……熱は……」


男(唯)  (り、りっちゃんの手が……俺のおでこに……)


律「うわ!すげえ熱いぞ!」

澪「やっぱり風邪なんじゃないか?」


男(唯)「き、今日はカエルヨー」

律「1人で大丈夫か?」

男(唯)「ダ、ダイジョウブダイジョウブ……じゃあね!!」


澪「暖かくして寝るんだぞー!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

男(唯)「はぁ~~~死ぬかと思った……」


男(唯) (リアルの女の子と話すとか何年ぶりだよ……)

男(唯) (しかも何でみんなあんなに可愛いんだよ……)


―――――――――――――――――――――――――――

――唯宅

男(唯) (なんとか道は分かった……ただいまって入るんだよな?)

ガチャ

男(唯) 「た、ただいまー」


憂「あ、お姉ちゃん!お帰り!……大丈夫?」

男(唯)「な、なにが?」

憂「何が、って、律先輩からメール来たんだよ、お姉ちゃんが体調悪いからって」

男(唯)「も、もう大丈夫だよ」

憂「ダーメーでーす!ちゃんと温めて治さないと!」


男(唯)「わ、わかったよ……部屋戻ってるね」

憂「う、うん……」



憂(いつもなら疲れた~って抱きついてくるのに……)


男(唯) (さて部屋は……ここか……)

男(唯) (女の子の部屋に入るなんて初めてだな)

ガチャ

男(唯)「おじゃましまーす」

男(唯)「う……なんでこんなに明るいの……。いい匂いするし」

男(唯)「しばらくはゲーム……いや、そんなんないな」

男(唯)「ぱ、パソコンもないのか!?……普段どんな生活してんだよ……」


死神「よお、暇か?」


男(唯)「う、うわああ」

死神「おい……俺だよ……」

男(唯)「な、なんだ、死神か……って、俺まだ死んでないよな?」

死神「死んでねえよ、風邪すら引いてねえだろ」


男(唯)「ああ……引いたことにされてるけどな。で、何の用だよ」

死神「別に用なんてねえよ。ただな……」

男(唯)「?」

死神「女の子の部屋っていいな」

男(唯)「……は?」

死神「綺麗だし、明るいし。お前の部屋は真っ暗だっただろ?」

男(唯)「……そんだけかよ……」


男(唯) (死神のくせに随分俗っぽいな……)


死神「まあ、そんなところだ……この世界は上手くやれそうか?」

男(唯)「バトル物じゃねえし、そう簡単に死なない。それだけで今までよりは格段に楽だな」

死神「まあ、そういう感想だとは思ったさ。あとは……コミュ症をどうにかしねえとな」

男(唯)「や、やかましい!」


死神「……お前、ずいぶん明るくなったな」

男(唯)「……」

死神「そんじゃ、またな」


男(唯) (……最近悲しんだり喜んだり忙しいからな、自分でもよく分かんねえよ)


憂『お姉ちゃーん!ご飯できたよー!』

男(唯)「……飯食べるか」



―――食卓

憂「ホントに大丈夫なの?」

男(唯)「あ、ああ、大丈夫だよ」


男(唯) (相手は肉親、可愛くても肉親だ!怖くない!)


男(唯)「う、憂のほうこそ、迷惑かけて悪かったな」

憂「私?私は全然いいよ!」

男(唯)「ありがとう」

憂「……今日のお姉ちゃん、いつもと違うね」

男(唯)「そ、そうか?」

憂「なんだか、お父さんみたいだよ?」

男(唯)「そんなことないよぉ?」

憂「でもお姉ちゃんが元気ならそれでいいよ!」


男(唯) (なんて出来た妹なんだ)


~~~~~~~~~~~~~

男(唯)「ごちそうさま。美味しかったよ」

憂「お粗末さまでした……お茶でも飲む?」

男(唯)「ああ、頂く」

憂「なんか、ホントにお父さんみたいだね」

男(唯)「……」


―――――――――――――――――――――――――――
―――唯の部屋

男(唯)「ふう、腹いっぱいだ。こんなにちゃんと飯食ったの何年ぶりだろうな」

男(唯)「今日は唯らしく、ゴロゴロするか!」


男(唯)  ゴロゴロゴロゴロ


憂『お姉ちゃん、お風呂沸いたよ!』

男(唯)『すぐ入るよー!』

男(唯) 「……あ」


男(唯) (俺……女の子の体じゃないか!)

男(唯) (いやしかし、これからこの世界で生活していくためにはいつか覚悟を決めなくてはならん)


男(唯)「……入るか……」


――――風呂場

男(唯)「……唯ちゃん!ゴメン!」ヌギ

男(唯)「……」


男(唯)「……/////」


男(唯)「生身の女の子の体なんて初めてだ」

男(唯)「でも、エロい気分にはならないな」

男(唯)「だいたい、そんなこと考えるのは失礼だな、うん」


憂「どうかしたの?」

男(唯)「い、いや!なんでもないよ!」


チャポン

男(唯) (いい湯だな……風呂にも入ってなかったからな……)

男(唯) (この世界に来て、久しぶりのこと多すぎじゃないか……?)

男(唯) (どんだけ不摂生な生活してたか歴然だな)



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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~
~~


―――――――――――――――――――――――――――
――――次の日 朝

チュンチュン

男(唯)「……そうか、唯ちゃんになったんだっけ」

男(唯)「学校行くか!」



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――――学校

律「唯!風邪は大丈夫なのか?」

男(唯)「お陰様で、もう……平気だよ」

律「そうか、心配してたんだぞ?」

澪「今日は昨日みたいに赤くも無いしな、ちょっと静かだけど大丈夫みたいだな」

男(唯)「心配かけてすまんかった、いや、ごめんね」


――昼

男(唯) (やっと授業終わった……こんな長かったっけ)

男(唯) (内容は知ってることばっかりだったけど、疲れた……)


澪「唯、お昼にしよう」

男(唯)「あ、うん」


~~~~~~~~~~~~~~~


紬「それでね、そこのケーキがすごく美味しかったの」

澪「それは食べてみたいな。唯もケーキ好きだもんな!」

男(唯)「う、うん」

澪「……やっぱり体調悪いのか?」

男(唯)「……」


男(唯) (……これ以上みんなに心配かけてどうするんだ……)

男(唯) (俺がコミュ症ってだけでみんなに迷惑かけてるんだよな)


男(唯)「……大丈夫だよ!」ニコッ

澪「そ、そうか?」

男(唯)「おれ、じゃなかった……私もそこのケーキ食べてみたい!」

律「じゃあ、明日休みだし、みんなで行こうぜ!」

澪「梓も誘わないとな」

男(唯)「ほ、放課後にみんなで計画しよっか!」

律「……いつも遅れてくる唯が……計画って」

澪「だんだん憂ちゃんに似てきたな」

男(唯)「そ、そうかな?あははw」


男(唯) (……話してみると意外に大丈夫なもんだな)


男(唯) (それに、みんないい子だな)

――――放課後

梓「唯先輩、大丈夫ですか?」

男(唯)「うん、大丈夫だよ!」

梓「よかった……」

律「それでさ、明日、みんなでケーキ食べに行こうって」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~
~~



―――自宅

男(唯)「た、ただいまー!」

憂「お姉ちゃん、お帰りー!」

男(唯)「もう体調は大丈夫だからな!」

憂「うん、それならよかったよ」

男(唯)「そ、それじゃあ」

憂「うん、夕飯できたら呼ぶね」


―――唯の部屋

男(唯)「はぁ~~なんとか一日終わった……」

男(唯)「さすがに、一日中女の子と普通に会話するのは疲れる……」


死神「ずいぶん慣れたようだな」


男(唯)「……死神か」

死神「今日は女の子と普通に話してたじゃないか」

男(唯)「だいぶ……慣れたってことでいいのかなぁ……」


死神「それはいいことだな……まあ、この世界がお前には一番合ってるんだろうよ」

男(唯)「多分そうだろうな。平和で、のんびりしてて」

死神「まあ、今までよりは楽しいだろう、存分に楽しめよ」

男(唯)「そうさせてももらうよ」


―――――――――――――――――――――――――――


―――夕食終了

男(唯)「ごちそうさま、今日も美味しかったよ」

憂「うん、ありがとう……お風呂沸かすね」

男(唯)「あ、俺が沸かすよ」

憂「いいよーお姉ちゃんは休んでて」

男(唯)「夕飯は毎日作ってくれてるし、それくらいやるよ」

憂「……じゃあ……今日だけお願いしようかな?」

男(唯)「おう!」

憂「……」


――風呂

男(唯)「やっぱり自分で沸かすと気分よく入れるな」

男(唯)「他のことも……手伝わないとな」

男(唯) (俺、今まで家族に何もしてこなかった)

男(唯) (食っちゃ寝のニート生活、親はもう呆れて文句も言わなかった)

男(唯) (恩返しの対象は違うかもしれないけど、憂ちゃんに何かしてあげないとな)







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―――次の日 駅前

律「おっはよー!って、もう唯がいる!?」

紬「りっちゃんが最後だよー」

澪「唯は今日、一番最初に着てたぞ」

男(唯)「えへへ」



―――喫茶店

律「噂通り美味しいなぁ!」

梓「……ホントですね」

男(唯)「美味しいね」

紬「喜んでもらえてよかったー!」


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男(唯) (その後も、服を見たり、初めてプリクラを撮ったり、とにかく楽しい時間を過ごした)

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―――夕方

澪「もうだいぶ暗くなってきちゃったな」

梓「今日はそろそろお開きですかね?」

律「そうするか!」




紬「じゃあ、また月曜日ねー」

男(唯)「うん!またね!」

律「澪は一緒に帰ろうな」

澪「そうだな」



男(唯)「みんな行っちゃったか……」


男(唯) (あれ、誰かが看板の裏からこっち見てる……)

男(唯) (誰だろう、他の子の知り合いかな?)


男(唯) (あ……いっちゃった)



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―――自宅

男(唯) 「ただいまー!」

憂「おかえり、お姉ちゃん!今日は楽しかった?」

男(唯) 「うん、楽しかったよ」

憂「それじゃあ、ご飯にするね」

男(唯) 「ありがとう」

――夕食後

男(唯)「ふぅ、いつも通り、美味しかったよ」

憂「お粗末さまでした」

男(唯)「……今日も、風呂は私が沸かすから」

憂「……」

男(唯)「……憂?」


憂「ねえ?」

男(唯)「?」


憂「あなた、ホントにお姉ちゃんなの?」





男(唯)「……えと」

憂「最近、お姉ちゃんおかしいよ……まるで、違う人みたい……」

男(唯)「……」

憂「お姉ちゃんはもっと私に甘えるし、頼りないし……こんなの、私の知ってるお姉ちゃんじゃないよ……」

男(唯)「なあ、憂」


憂「……変なこと言ってごめんね。おかしいのは私の方だね」

タタッ


男(唯) (行っちまった……)


男(唯) (やっぱ、妹にはわかるんだな……違いが)



――風呂

男(唯)「結局俺が風呂沸かしたけど、よかったのかな…」


男(唯) (この姉妹は、姉が妹に甘える縮図で動いてるんだよな)

男(唯) (憂は姉に甘えられることが嬉しいんだろうな……)


男(唯) (どうしたもんか……)



――リビング

男(唯) (憂が、座ってる)

男(唯) 「う、憂」

憂「……ごめんね、私お風呂入るから」

男(唯) 「ああ、わかったよ」

憂「……」タタッ


男(唯) 「はぁ……」


―――――――――――――――――――――――――――
――次の日 朝 リビング

男(唯)「あれ、憂がいない……置き手紙?」



今日は日直なので先に行きます
パンは焼いておいたので食べてください


男(唯)「……」




――学校

律「…ぃ」

律「お~い!しっかりしろ~唯~」

男(唯)「あ、り、りっちゃん」

律「どうした?そんなボーっとして」

男(唯)「あはは、いつものことだよ?」

律「それもそっか」


律「もう昼休みだぞ?」

男(唯)「うん、ご飯食べようね」



―――――――――――――――――――――――――――
―――放課後 帰宅路

男(唯) (憂のこと考えてたら、もう学校終わっちゃった)

男(唯) (帰ったら憂とどんな顔で会えばいいんだろうな……)


―――自宅

男(唯)「た、ただいまー」

憂「おかえり、お姉ちゃん」

男(唯)「その……昨日はごめんね」

憂「え?お姉ちゃんが謝ることないよ、おかしいのは……きっと私の方だから」

男(唯)「……」

憂「それじゃ、夕飯にするね」

男(唯)「……うん」

―――夕食 食卓

男(唯)「……」

憂「……」

男(唯)「……今日はパスタなんだね」

憂「……そうだよ」

男(唯)「今日も美味しいよ」

憂「……ありがとう」



男(唯)「憂」

憂「なに?お姉ちゃん」


男(唯)「……お父さんもお母さんもあんまり家にいないけどさ、寂しくない?」

憂「……そんなことないよ。お姉ちゃんがいるから」

男(唯)「……」

憂「……お姉ちゃん……」


男(唯)「憂、私、ちょっと理由があって、前までの私とはちょっと違うかもしれない」

憂「……」

男(唯)「でも、私にとって、憂は大切な家族だから」

憂「……お姉ちゃん」

男(唯)「しばらくは迷惑掛けるかもしれないけど、頼むよ」

憂「……ねえ、お姉ちゃん?」

男(唯)「なに?」

憂「……いつもみたいにギューってしてよ」

男(唯)「……うん、わかったよ……こっちにおいで」

憂「うん」


ギュッー

男(唯)「痛くない?」

憂「ううん、大丈夫。あったかい」

男(唯)「そっか……」


憂「……ごめんね、変なこと言って」

男(唯)「大丈夫だよ」

憂「……それじゃあ、お風呂沸かしてくるね」

男(唯)「……お願い」



―――――――――――――――――――――――――――

―――唯の部屋

男(唯) (あれでよかったのかな……)

死神「あれで良かったんじゃないのか?」

男(唯)「……いつからいたのさ」

死神「ついさっきだ」

男(唯)「……やっぱり主人公になるのって難しいね」

死神「そうだろうな」

男(唯)「ただ生き延びて行くとか、死なないとか、そんな簡単なことばかりじゃないよね」

死神「……この世界もお前には合わないのか」

男(唯)「いや、そんなことはないよ。私は唯で生きていく」

死神「……私、ね。まあ、楽しみに見てるさ」


男(唯)「そういえば、この前みんなでケーキ食べに行った時、影からみてた?」

死神「そんなことしねえよ、それに消えた状態で十分見えるからな」

男(唯)「……そうだよね」

―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――


それからの日々、男は唯として順調に生活した

けいおん部の最後のライブは大成功、大学の進学も決まった


―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――


律「……ついに卒業かぁ……」

唯「そうだね、でも楽しかったね~」

紬「大学もみんな一緒にいけるなんて思わなかったよ」

澪「……」ガクガク

律「澪?」

澪「……」ガクガク

律「どうしたんだよ?」

澪「……こ、これが、今朝、ポストに……」


―――――――――――――――――――――――――――
僕だけの澪ちゃんへ

けいおん部での演奏、とてもよかったよ

今度、僕だけのための澪ちゃんの演奏が聴きたいな

いつも見てます

―――――――――――――――――――――――――――

律「……」

唯「なにこれ……」

律「気持ち悪いな」

紬「これ、警察に届け出たほうがいいんじゃないの?」

澪「……やっぱりそうだよな」ガクガク

唯「今日、帰りに警察署に寄って行こう」


――次の日

澪「……またポストに……」ガクガク

―――――――――――――――――――――――――――
僕だけの澪ちゃんへ

どうして警察なんかに行ったの?

僕のこと嫌いなの?

僕はこんなに好きなのに

どうしてわかってくれないの?

ねえ、なんで?どうして?

僕は永遠に、君を見てます

―――――――――――――――――――――――――――

律「き、気持ち悪い……」

澪「もう、怖くて怖くて……」ガタガタ

唯「今日から帰りはみんなで澪ちゃんを家まで送って行くことにしよう」

律「ああ、それがいい」


―――――――――――――――――――――――――――

それからしばらく、新しい手紙は無かった

澪ちゃんもすっかり元気になって、私達はいよいよ卒業の日を迎えた

―――――――――――――――――――――――――――


唯「もう、澪ちゃん泣きすぎだよ」

澪「だって、卒業したくないんだもん」シクシク

律「でも私達みんな大学同じだぜ?」

澪「でも、梓たちにはなかなか会えなくなるし……」

梓「大丈夫ですよ!先輩!私達遊びに行きますし、来てくださいよ」

唯「うん、またみんな会えるよ!」

紬「……最後にみんなで旅行に行かない?」

律「……い、いいね、さすがムギ、いいこと思いつくね」

唯「そうだね、それじゃあ、私が計画建てるよー」

律「それじゃあ心配……ってことももうないもんな」


澪「ははっ、そうだな、もう唯はしっかり者の唯だもんな」

唯「えへへ///」



―――自宅

唯「えへへ~旅行楽しみだなぁ~」

憂「どこに行くの?」

唯「ん?まだ決めてない~。でもね、一緒にいく人は決めてるよ!」

唯「澪ちゃんでしょ、りっちゃんでしょ、むぎちゃんにあずにゃんも!」

唯「あとはのどかちゃんでしょ、さわちゃん先生も一緒に行きたいしー純ちゃんも一緒にいきたい!」

唯「あとはねー、憂も一緒に行こうよ!」

憂「わ、私も行っていいの?」

唯「もちろんだよ~」

憂「嬉しい!じゃあ、一緒に計画しよっお姉ちゃん!」

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~~~


―――旅行当日

律「まさか北海道に行くことになるとはねぇ」

澪「唯がこんなにしっかり計画してくれて助かったよ」

梓「凄いです!先輩!」

唯「えへへ~////」

純「ホントに迷惑じゃなかったですか?」

憂「けいおん部水入らずのほうが……」

律「いいのいいの!大勢居たほうが楽しいし、何より唯が決めたことだからな」

さわこ先生「まさかあたしまで呼ばれるとはね……」


唯「それじゃあ、空港までは電車だから、行こう!」


――駅

唯「澪ちゃん、忘れ物してない?」

澪「まさか、そんなセリフ唯から言われるなんてなぁ……ダイジョブだぞ」

唯「そっか~よかった」

―――空港

律「ついたな」

唯「飛行機の時間まであと1時間あるから、何かしよっか」

澪「お土産でも見に行かないか?」

唯「いいね!」

梓「こっちのお土産みてどうするんですか……」

唯「でも楽しいじゃん~」



唯「……あれ」

律「唯?どうかしたのか?」

唯「いや、今だれかがこっち見てた気がして」

律「?気のせいじゃないのか?」

唯「そ、そうだよね!」

律「ほら、置いてくぞ!」

唯「あぁ、待ってよりっちゃ~ん」


律「そろそろ飛行機の時間だな、戻ろうぜ」

唯「そうだね」


―――空港 受付

さわこ先生「それじゃあ、私、受付してくるから、みんなは待っててね」



梓「楽しみですね、北海道」

唯「そうだね!」

梓「……あ、あの……」

唯「どうしたの?」

梓「さっきから気になってたんですけど、あそこの男の人、さっきからこっち見てませんか?」

唯「……実は私もそう思ってたんだ……」

梓「ちょっと、怖いんですけど……」

唯「……きっと気のせいだよ」

梓「……」


―――――――――――――――――――――――――――

唯「さあ、行こうか!」

澪「ああ、置いていくな」


???「ねえ」


澪「……私?」


???「そうだよ、覚えてないの?」


澪「……誰……?」


唯「どうしたの?澪ちゃん?」


???「ぼくはこんなに君のことが好きなのに」


澪「……え……?」



???「そっか、覚えてないんだ」


???「僕のことなんて、どうでもいいんだね」


???「わかったよ……」




???「君を殺して――――――僕も死ぬ――――――」



澪「え?」


???「死ねェェェェェェぇ!!!!」


唯「澪ちゃん!危ない!!!」






――――――――ザシュッ


律「……え?」

澪「……唯……?」


ポタッ……ポタッ……


唯「……くふっ……」


???「ハァハァハァハァ」



澪「ち、血が……きゃああああああああああああ」


唯「……うっ……」


???「ハァ……お前……離せ!」


唯「……は、離さない……」


澪「誰か!誰か!!!!」


律「おい!誰か!!」


唯「……絶対に離さない……」


???「ハァ……テメエなんか殺しても意味ねえんだよ!」


唯「……みんなは……私が守るんだ」


さわこ先生「誰か!!!警察と!救急車を!!」


唯「……ねえ、みんなを傷つけないで……」

???「う、うるせえ!お前に何がわかる……!」

唯「ねえ、お願い……グッ」

???「な、なんでお前、離さないなんだよ……気持ち悪いよ……」



梓「こっちです」



警察「おい、なんてことを!」


???「うわあああ離せぇえええええ」


警察「至急!女の子に手当を!」



唯「……」

憂「お姉ちゃん!!」

唯「……う、うい……」

憂「お姉ちゃん!しっかりして!!」

唯「……うい……ごめんね、ずっと変なお姉ちゃんで……」

憂「そんなことない!私のお姉ちゃんはお姉ちゃんだけだよ!」

唯「……う…い……ありがとう……」

憂「だめ、お姉ちゃん!!」

唯「……もし死んじゃったら1人になっちゃう……でも、ずっと一緒だから……」

憂「そんなこと言わないで!!ねえ!」


唯(あぁ……意識が遠のいていく……)

唯(……死ぬの嫌だ……死にたくない……)


唯(……憂を1人にはできないよ……)


澪「唯が……あたしのせいで……」

律「おい!唯!しっかりしろ!!」

紬「唯ちゃん!!」



唯(……みんな……)







―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――
―――――
――




――――
―――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――



男「……」

男「……」




男「……うっ……」


男「うわぁぁあああぁぁぁぁぁあぁ」


―――――――――――――――――――――――――――


男「……憂……」

男「みんなぁ……」

男「……」


死神「……」


男「……どうすればよかったのかな」

死神「さあな、分からんよ」

男「……」



男「……憂を、1人にしてしまった……」


男「もう、戻りたくても戻れないんだ……」


死神「そうだな」


男「俺は……死んだんだな」


死神「お前は例のごとく死んでしまった。しかし」

男「……」

死神「……お前は、立派に主人公だった」

男「……」


死神「……転生は続く、何度でもな」

男「……ああ、わかってる。ただ……」

男「出来ることなら少しばかり、このまま放っておいてくれ」


死神「わかった、1時間ほど時間をやる」


男「……うっ……」

男「う……っうう……」


―――――――――――――――――――――――――――

男は1時間、ひたすらに泣いた

幸せだった日々を思い出し

楽しかったライブを思い出し

そして―――残してしまった憂を思い出して―――


―――――――――――――――――――――――――――



死神「……気は済んだか?」

男「……ああ」

死神「……どうだ」

男「……俺は、死んだことに後悔はしてない。ただそれだけだ」

死神「ほぉ、そうかい……」

男「ああ……」


死神「転生は続く、どこまでもな」

男「次の世界はどうなんだ」

死神「そうだな……ひみつ道具ってところだろうか」

男「……そこまで言うんならもうドラえもんって言えばいいのに」


死神「それじゃあな、頑張れよ」



――
―――――――
――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
―――――
――


男「……」

死神「……えらく早いじゃないか」

男「……まあ、開始早々に死にましたから」

死神「ドラえもんで死ぬってどういうことだよ……」


男「転生してしばらくしたらアメリカでテロが起こってな」

男「どこでもドアでそこまで行って、人質100人ほど開放したんだが、撃たれて死んだ」


死神「……」

死神「……お前、死ぬために生きてないか?」


男「いや、そんなことはない。アレがひみつ道具の正しい使い道さ」

死神「……」


男「さあ、次の世界を教えてくれよ」

死神「……切り替え早いな」

男「ほれ、早く」


死神「今度はな……」



―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――


それから男は何度と無く転生を繰り返した

時には誰かをかばい、誰かを助け、人のために尽くした



―――――――――――――――――――――――――――




男「……次」

死神「ノーヒント」

男「構わん」


死神「じゃあな……」


男「……」

死神「……」


男「……世界を移してくれよ」

死神「まあ、それはそうなんだがな」

男「どうした」

死神「久しぶりに話でもしようと思ってな」

男「……なんだよ、急に改まって」


死神「……俺とお前はこれで会うのは最後かもしれない」

男「どういうことだよ」

死神「次でお前は物語の主人公になれると思うからだ」

男「なんだ?簡単な話なのか?日常もの?」

死神「ん~」

男「日常ものも何度もやったが、結局は死んだぞ?」

死神「それはお前が登場人物をかばい過ぎなんだろう」

男「……否定はしないが、次もそうなんじゃねえの?」

死神「……どうかな」

男「……はっきりしねえな」

死神「……なににせよ」


死神「今まで楽しかったぞ、男」

男「なんだよ」

死神「……お前はまるで別人だ」


男「別人って……」

死神「覚えているか、はじめのSAOの世界を」

男「……ありゃ酷かったな」

死神「そして艦これの世界」

男「……いまから考えりゃ、職務放棄だよな」

死神「そして、お前の一番の成長に繋がったであろう、けいおん!の世界」

男「……」


死神「……お前はもう、昔のヒキニートなんかじゃない。それだけは俺が保証してやるよ」

男「死神の保証ねぇ」

死神「……それじゃあ、ホントのホントにお別れだ」

男「へっ、また会うに100ドルかけてやるよ」


死神「……じゃあな」

―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――








―――――――――――――――――――――――――――



男「……ここはどこだ」

男「真っ暗で何も見えないな」

男「……電気を……」

パチッ!

男「うわ!汚ねぇ……この主人公散らかし過ぎだろ……」

男「まずは掃除からだな」


男「……掃除機ねえじゃん、どっかから調達してくるか」


ガチャ

男「あ?飯置いてある、なんで部屋の前なんかに」

男「……カレーか、あとでチンして食べるとしよう」


男「掃除機……そーじきー、お、あるじゃん」


???「あ、あんた、どうしたの?」

男「え?あ、えっと、お母さんかな?」

???「え……お母さん……?」

男「え?違った?」

母「いや、そうだけど、そ、掃除機なんてどうするのよ?」

男「……掃除するに決まってるじゃないですか」

母「……」

男「……もう行くよ?」


男「さて、部屋に戻ってきたわけだけど……」

男「こいつ、ソードアートオンライン好きすぎだろ……」

男「部屋中ポスターだらけじゃん……」

男「あの世界、今行ったら上手くやれるかもな……もう無理だけど」


掃除機「グイィィィィーン」


―――――――――――――――――――――――――――

男「だいぶ綺麗になったな」

母「……ねえ」

男「あぁ、お母さん」

母「ど、どうしちゃったの?」

男「え?掃除したんだけど……あ、あとさっきのカレー、美味かったよ」

母「……うっ……」

男「え?ど、どうしたんだよ」


男「それにしても、この人……どっかで見たことあるな……」

男「どこだっけ……もっと、ずっと前から知ってた気がする……」





男「……」




男「……はは、そういうことね」



男「……これもまた、一つの物語だって言うのなら」




――――楽しむとしようか


―――――――――物語の主人公として



おわり





以上で終了となります

それなりに長編になった気がします

sagaの存在をいまいち理解しておらず、ピーってなってますが、殺す、と自殺する、です



ほとんど自分の好きなものを書きました
楽しんでいただけていたら幸いです



PS:普段は遊戯王のSSを書いてます

第一作『城之内克也(30)「あの時の俺は輝いていた」』
第二作『海馬瀬人(30)「思い通りのカードが引けない」』

遊戯王に興味のあるかたなら楽しんでいただけるかと思います


それでは、ごきげんよう


このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年08月27日 (木) 22:22:04   ID: rwKwD-Tl

現実世界も二次元なのですね!てことは・・・!

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