男「即興でSSでも書くか」 (24)

男「とりあえず>>2-6のお題を合体させたSSを書こう」

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ゴーゴン大公

男「よう、久しぶりだな」

友「おう、2年ぶりくらいか」

男「景気はどうよ?」

友「最悪だよ」

男「今はどこも不景気だもんなぁ」

友「ああ、そのおかけで俺は相変わらず就職が出来ない」

男「いやぁ、お前が就職出来ないのは不景気の問題だけじゃないと思うぞ」

友「……やっぱりお前も、そう思うか」

男「だってなぁ……」



男「お前、下半身が虎だもんなぁ」

友の下半身(虎)「がるるるる」

~公園~

友「ハンバーガーだよ、さあお食べ」

友の下半身(虎)「がうがうがう」ムシャムシャ

男「相変わらずいい食いっぷりだな」

友「おかげでいまじゃ俺の座高より大きいんだぜ」

男「座高しかないもんな、お前」

友「あはははは、いうじゃねぇか……はぁ」

男「そんなに落ち込むなよ、きっとお前を雇ってくれる会社だってあるよ」

友「ねぇよ…・・俺が今まで何社の面接に行ったと思ってるんだよ」

友「とっくに1000は超えてる。その内ギネスに乗るんじゃないかって不安になるよ」

男「……大変だな、お前も。下半身が虎なんて世界でお前だけだろうしな」

友「下半身が虎なのは生まれつきだから仕方ないって割り切ってるけどさ……だからって、そこまで差別することないと思わないか?」

男「俺は小さいころからの付き合いだからもう慣れてるけどねぇ」

友「そもそも面接を受ける前に会社に入った瞬間に警察を呼ばれたりするからな……実は本面接を受けれた回数は2回だけなんだ」

男「2回も面接をやってくれた所があるだけまだまだ世の中捨てたもんじゃないな」

友の下半身(虎)「がるるる……」

男「……よしよし、お前は悪くない」ナデナデ

男「悪いのは下半身が虎だというだけでお前たちを差別する世の中さ」

友「昔から、お前は優しいな……お前だけだよ俺とまともに付き合ってくれる奴は」

男「ははは、自分自身変な奴だって自覚はあるよ」

友「頼むからお前はそのままでいてくれよ? お前は俺の唯一の友達なんだから」

男「ああ、任せろ」

友「……いきなりだけどさ、自分が本当にこの世界で生まれたのか疑問に思ったことってあるか?」

男「なんだよ突然哲学めいたことを」

友「いやな……昔のアニメにマジンガーZってのがあってさ」

男「ああ、あの巨大ロボットの」

友「それにゴーゴン大公って奴が出てくるんだけど、そいつ下半身が虎なんだよ」

男「マジで? へぇ、お前と同じじゃん」

友「例え作り話でも、同じ境遇の奴がいると思うと嬉しくてな……」

友「それで話を戻すんだが、俺はひょっとして異世界で生まれて何らかの原因があってこの世界にやってきた存在じゃないか、って最近よく思うんだ」

男「……ふーん」

友「この世界の隣には本当にマジンガーZみたいな世界があってさ、そこにはゴーゴン大公みたいな俺の仲間がたくさんいて……」

友「……俺が仲間はずれにされない世界が、あるんじゃないかって……」ポロポロ

男「……いい大人が泣くなよ」

男「……お前みたいに深刻に思ったことはないけど、俺もあるよ」

男「俺は実はこの世界の人間じゃなくて、違う世界の人間でさ」

男「その世界には魔法だのモンスターだのがじゃんじゃんあって」

男「本当だったら俺はその世界で隠された魔法の才能を開花させて、勇者みたいになって幸せに暮らすはずだったんだ……」

友「ああ、厨二ってやつか」

男「みなまで言うなよ」

男「まあ俺のは妄想だけどさ……そういうことは誰しも思うもんじゃないか?」

男「自分には相応しい世界があるって」

友「そうなのかな……」

男「現状に満足してる奴なんてむしろ少数派だろ」

男「大勢の人間が世の中に不満を持ってるよ」

男「才能も無くて金もない、でもそれは俺が悪いんじゃない世の中が悪いんだ、世の中が間違ってるんだ」

友「……」

男「俺は何かの間違いでこんな世界に来てしまったんだ」

男「本当は俺が世界の中心になれる世界があるんだ――」

友「……」

男「皆、思ったことあるよ」

男「そう思いながら生活する内に――」

男「……それはただのくだらない妄想だって気づくんだ」

友「……男」

友の下半身(虎)「……オトガゥ」

男「そこまでいったらオトコっていえよ」

男「……けど、お前のは妄想じゃなくて本当のことかも知れないけどな」

友「ああ。この世界で俺だけ違うんだもんな……」

男「アニメみたいにさ、ある日突然目の前に異次元の扉みたいなのが開いて」

男「『見つけました、我らが王子』とかなんとか言いながら下半身が虎の人間が現れたりして」

友「ははっ。意外と売れるかもしれないな、そのアニメ」





 ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォ!

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!




男「!?」

友「!?」

友の下半身(虎)「!?」

男「な、なんだ!?」

友「そ、空に裂け目が!?」



 バリバリバリバリ!


 シュゥゥゥゥゥ――。





?「異世界を探し回ってはや18年――」

?「ようやっと、ようやっと……!」



女騎士「見つけました、我らが王子!」


男「」

友「」

友の下半身(虎)「」

男「鎧を身に纏った……」

友「下半身が虎の……」

友の下半身(虎)「女騎士……」

女騎士「王子、タイガー王子! よくぞご無事で……!」

友「た、タイガー王子……? す、すみません、全く状況がわからないのですが……」

女騎士「さあ早速我らの世界へ帰りましょう、タイガー王子ぃぃぃぃx!」

友「話を聞いてください……」



~説明中~

 
 
 
 

女騎士「――というわけなのです」

男「マジかよ……こいつは異世界で生まれた人虎族という種族の王子で」

男「王位継承権を巡る陰謀で異世界に放り出されたってのか」

友「本当に、俺が……?」

女騎士「紛れもありません。王子の下半身のご立派な虎様は、王族のみが宿すことの出来る由緒正しき虎なのです」

女騎士の下半身(虎)「ああ、王子の下半身の虎はなんと雄々しいのかっ……!」

男「やめろよなんか卑猥な風に聞こえるだろ」

友「そもそも普通に喋るなよ」

女騎士「とにかく、王子には我らと共に元の世界に帰り、王位を継いで貰わねばなりませぬ」

友「……で、でも陰謀に巻き込まれたんだろ、俺? 帰って大丈夫なのか?」

女騎士の下半身(虎)「ご安心ください、王子に仇なした不埒な輩は我らが一人残らず無残に復讐――もとい粛清いたしましたので!」

男「怖いなっ」

女騎士「どうかお願いします、王子! 我らには王子が必要なのです!」

女騎士の下半身(虎)「そのご立派な下半身の虎で、我らをお導きください!」

友「……わかった、行くよ……俺」

女騎士「あっ、ああああぁ……ありがとうございますっ、王子ぃぃぃぃ!」ポロポロ

女騎士の下半身(虎)「これで我ら人虎族も安泰だ!」ポロポロ






男「……友、行くのか」

友「……うん」

男「そうか、寂しくなるな……」

友「この世界も悪くないけど、俺には帰る場所があるみたいなんだ」

友「そこじゃ、俺みたいにみんな下半身が虎みたいだしな」

友「俺には、本当に自分がいるべき世界があるみたいだから」

男「……元気でな、友」

友「……なあ、男も一緒に来ないか?」

男「……」

友「話を聞く限りじゃ中々良い世界みたいだし、俺が王様になれるんだったらお前に不自由な暮らしはさせないぞ」

男「……いや、いい。お前がこの世界でただ唯一下半身が虎だという理由で疎外感を感じていたように」

男「俺がただ世界で1人下半身が二本足だったら、同じような気持ちになる」

男「悪いが、俺はそんな孤独に耐えられるほど強くないんだ」

男「お前みたいには、強く生きていけないよ」

友「……わかった、お別れだな」

男「ああ。またいつか会えるかな?」

友「会えるさ。女騎士さんだってワープして来たんだ。割と簡単に行き来出来るんじゃないか?」

男「ならこんなにしんみりする必要ないな」ハハハ

友「全くだ」ハハハ

友「……最後に、1つ教えてくれないか」

男「何をだよ?」

友「なんでお前は、俺に優しくしてくれたんだ?」

友「みんなが俺を奇異な目で見る中で、お前だけは優しかった」

男「――理由なんてない」

男「下半身が虎だってだけで友達になれない理由は、ない」

友「……ありがとう、お前がいたから俺はいままで生きてこれた」

友「……本当に、ありがとう……じゃあな、男。また……」

男「ああ……また……」




 そうして友は下半身が虎の女騎士と共に風のように去っていった。


 あれから数ヶ月立つが、友は一度もこっちの世界に帰って来てはいない。

 人虎族という種族の王様になるというのも大変忙しいものなのだろうか。

 向こうで元気にやっているのならばそれでいいのだが。

 それとさ。

 ……ごめんな、友。お前に優しくした理由さ、本当はあったんんだよ。

 だけどそれを告白したら、お前ともう一生会えなくなる気がして、言えなかった。

 本当はな、俺――。





 ホモでお前が好きだったんだよ。






 完

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