【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開4回目】 (1000)

このスレは安価で結城友奈は勇者である。を遊ぶゲーム形式なスレです


目的
全バーテックスの殲滅
生き残る


安価
コンマと自由安価を含む選択肢制

日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2


能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中 
この9個の能力でステータスを設定

HP:体力。0になると死亡。1/10以下で瀕死状態になり、全ステータスが1/3減少
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
SP:特殊な攻撃をするために必要なポイント 満開とはまた別
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%



wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/

前スレ

【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開0回目】
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【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開1回目】
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【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開3回目】
【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開3回目】 - SSまとめ速報
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1423492200



ポットでの再開予告。今から
>>1001は見事に天さんですね
もしかしたら、あんなEDがあるのかもしれません


√ 5月11日目 夜


コンマ判定表

01~10 夏凜
11~20 
21~30 死神
31~40 友奈
41~50 兄
51~60 
61~70 姉
71~80 
81~90 沙織
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月11日目 夜



「ちょっといいか?」

こんこんっとノックが聞こえ

兄の声が続いて届く

ダメと言ったところで結局入ってくる兄に対しての返事はせず、

天乃は布団をかぶって目を瞑る

「お邪魔しまーす」

天乃「……………」

ドアノブを回してドアを開け、

身体を滑り込ませて……ゆっくりとドアを閉める

ドアノブは手放すのではなく

ゆっくりと、慎重に、一ミリ単位で戻し音は決して鳴らさないのがコツだ。と

兄は成功したことに安堵して、妹のベッドを見つめた


「夏凜ちゃんと何かあったんだろ」

天乃「………………」

「……心配すんな。夏凜ちゃんには何も言ってない。聞かなくても解るだけだ」

一人で勝手に話す兄に見向きもせず

天乃は黙り込み

寝たふりを決め込みながら、言葉だけは……聞き取る

「お前はどう思ってるんだ? 夏凜ちゃんの事」

天乃「…………………」

「俺は好きだ……大好きだ。大切な義妹だからな。結婚だって出来ちゃうし」

天乃「…………………」

「……お前が気持ち伝えないなら、そう、俺が言っちまうぞ? 良いのか?」


1、勝手にすればいいでしょ
2、お兄ちゃんは私のもの。とでも言われたいわけ?
3、止めてよ、気持ち悪い
4、私とお兄ちゃん。思ってることは全然違う
5、私にとって夏凜は……ただの友達よ
6、夏凜は……仲間よ


↓2


天乃「止めてよ、気持ち悪い」

「なんだ……起きてたのか」

天乃「解ってたくせに」

「解ってはない。知ってただけだ」

くくくっと茶化すように笑った兄は

ベッドに座るや否や

妹に蹴落とされ、膝を打つ

天乃「勝手に座らないで」

「壁際に滑り込まれるのと、ベッドに座られるの。どっちがいいか選ばせてやろう」

天乃「私が部屋から出てく」

「それは無しだ」

ベッドから抜け出そうとした天乃の体をベッドに押し戻し、

馬乗りのような状態になった兄は不敵な笑みを浮かべる

「さて、じゃぁお前が嫌がるからこのままで続けさせてもらうぞ」

天乃「……変態」

「天才はいつだって変態だ。つまり、変態っていう言葉はさげすむものではなく、褒め称える言葉だ。だから、嬉しいだけだな」


天乃「どいて」

「嫌なら退かせばいい。寝技だって多少の心得はあるだろ?」

天乃「それを教えた人何を言ってるのよ……これじゃ、起こすための力も、蹴り飛ばすための力も出ないわよ」

付け根や膝など

関節のあたりを押さえつけられているため

腕を曲げることが出来ても

殴ることが出来ても

まったくと言っていいほど、相手には響かない

「なら大人しくしてろ。すぐに済む」

天乃「……話は良い。けど、胸に触ったら二度と腕をつかえなくするからね?」

「俺がそんなことする奴に見えるか?」

天乃「見えなくても確信はしてる」

「お前はお兄ちゃんの事を良く判ってくれてるってわけだ」


「でも。俺はお前以上に俺を知ってる……当たり前だな。本人なんだから」

天乃「何が言いたいの?」

「俺はお前の事を隅々まで知ってる……が、骨の髄までは知らない」

天乃「……だから?」

「俺はお前の心を、夏凜ちゃんに代弁は出来ない。俺だけでなく、お前以外の誰にも。だ」

妹を押し倒している状況ながら

兄は至極真面目に言葉を紡ぐ

そんな兄を見るしかない天乃は、目を瞑ってため息をつく

天乃「夏凜に頼まれたわけでもないのに、なんで余計な干渉するの?」

「お前たちが俺の妹だからだ。それ以外に、理由は必要あるか?」

天乃「それが理由になるとでも?」

「じゃぁ。お前たちを愛してるからだ。その2人が不仲だなんて、見ていたくないんだよ」

不純で不真面目そんな風にもとれる

むしろ、そんな風にしか取れないようなことを、兄はまじめに告げた


1、……じゃぁ、私と結婚してくれる?
2、私も愛してるよ……お兄ちゃんの事。でも、だからこそ。こんな風にされるの、嫌かな……
3、だからって干渉しないで。私達には、私達の問題があるの
4、夏凜は友達……よ。きっと。そう。友達以上には思いたくない
5、沈黙


↓2


天乃「……じゃぁ、私と結婚してくれる?」

「………お前」

天乃「お前なんて、言わないでよ……」

強く瞑られていた天乃の目が開き、

見えた天乃の瞳は有り余る水分によって潤っていて

それは涙として、零れていく

天乃「お兄ちゃんには名前で呼んでほしい。それで、抱きしめて欲しい」

「な、何言ってんだおま」

天乃「お兄ちゃんこそ何言ってるの!?」

「っ」

天乃「あれだけ……あれだけ私の事、好きだって。愛してるって言って。いざとなったら……逃げるなんて、嫌だよ」

動かそうとした手は、兄の手によって抑えられていて動かせず、

力を抜いた天乃は……首だけを動かす

天乃「……お兄ちゃん。今までのは、全部うそだったの?」


ぽろぽろと涙を零し

段々と枕を濡らしていく天乃

それを見つめる兄は、強く唇を噛み締めて、首を振る

「……お前はまだ中学生だろ」

天乃「結婚は……出来ない。でも、婚約は出来る」

「……………………」

天乃「嘘じゃないって誓えるなら。私の気持ち、抱きしめてくれる気があるのなら」

天乃は言いながら目を閉じて

そして……願う

天乃「私の男の人とのファーストキス、奪って」

「……本当に良いのか?」

天乃「……ここまで言わせて、ここまでさせて。まだ。何か言わないとダメなの?」

「…………………そう。だな」

兄の腕から、足から

力が段々と抜けていき、天乃の体への重みが消える

その瞬間

天乃「せいやぁッ!」

「ッ!?」

兄の押さえつける足から僅かにずれた天乃の左足

それはまるで吸い込まれるように、兄の股座へと――めり込む


「うぉぉあああああああああっ!」

天乃「ったく……」

股を抑えて床をのたうち回る兄を見下しながら

天乃は額を抑えながら、首を振る

もちろん、結婚する気は毛頭ない



好きか嫌いかと言えば、別に嫌いではない

こんなしょうもない鉄くずのような人間だけれど

優しくて、良いお兄ちゃんだし

天乃「馬鹿じゃないの?」

「お、乙女の純情を弄びやがって!」

天乃「誰が乙女なのよ……」

「本当にキスできるかもって思ったんだぞ!」

天乃「私が本気だとしても止めるべき立場……じゃないの?」

「妹が望むなら……俺は構わん」

天乃あと何回蹴れば、そういう考え方出来なくなる?」

「……たとえ何百回蹴られようと。俺はお前が好きだーっ!」


痛みを堪えながら

兄は声を高らかに、天乃へと飛びつこうとして

天乃「せいっ!」

「うおっ」

天乃はどれだけきついお仕置きを執行するとしても

基本的には温情をかけてくる

たとえば、股座のアレが取り払わなければいけないようなことになったり

床に頭をぶつけて、大けがをしたり

そういう危険度の高いことには手を抜く

ゆえに、蹴り飛ばされたのはベッドの上だった

「っ……どうした。あと100まですら99回残ってるぞ」

天乃「私、明日も学校だから余計につかれたくないのよ」

「学校か……噂によれば、学校では夏凜ちゃんとべったりだそうだな」

天乃「だから?」

「……お前、まさか夏凜ちゃんとキスしたりしてないよな?」


天乃「なんでそうなるの?」

「いや、ほら。さっきお前。男子とのって限定してただろ?」

天乃「あぁ……」

残念なのかどうかはともかく

天乃がキスをしたのは夏凜ではない

それどころか、人間ですらない

なんてことを言えるはずもない天乃は

困ったように頬を掻いて、苦笑する

天乃「違うよ」

「そっか……俺はてっきり強引にキスして泣いたお前を見た夏凜ちゃんが罪悪感から暗くなってるんだと思っていたんだが」

天乃「違うわよ」

「じゃぁ、あの勇者部の誰かとキスしてるのを見――」

天乃「キスから離れてよ!」

「……相当、嫌な奪われ方。したんだな」

天乃「だから違うってば!」


「んじゃぁ、真面目な話。お前……夏凜ちゃんの事、どう思ってるんだ?」

天乃「………………」

たった一声で和やかだった空気を消し去って

シンと静まり返ったほの暗い雰囲気を、兄は作り出す

緩やかな曲線を持たない兄の鋭い瞳は天乃を見つめ

捉えて離さず、逃げることを許さない

だから、天乃は唇をかんで、俯く

わざと変な空気にした

わざと話題を変えさせようとした

そう、全部わざとだ

自分から別の話題にしてと言わせることで

次の話題に答えなければいけないような、流れへと運んだ

運ばれたのだ、天乃は

「別に告げ口とかしないからさ。言ってみろよ」



1、沈黙
2、友達よ
3、仲間よ
4、……解らない
5、友達以上……なのかもしれないわ
6、恋人よ



↓2


天乃「恋人よ」

「え?」

天乃「そう答えれば満足?」

「お前……」

天乃「答えたんだからもう、部屋に戻って」

天乃の冷たい物言いに

兄は困ったような表情を浮かべて、首を振る

「……解った。そこまで言えないのなら、言わなくていい。悪かったな」

天乃「……………」

ポンポンっと天乃の頭を叩いた兄は

振り返ることなく部屋を出ていく

残された天乃はしばらく扉を見て目ていたが

不意にため息をついて、ベッドへと座り込む

天乃「……私にとって夏凜は」

恋人ではないが

友達以上に近いものであり

だからこそ天乃は、嫌だ。と拒絶する

認めたくない。そんなことはない。と

天乃は自分に、言い聞かせていた

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流無()
・  結城友奈:交流有(カラオケ、理解)
・  東郷美森:交流有(関わらない)
・  三好夏凜:交流有(答えない)
・伊集院沙織:交流無()

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流無()
・     神樹:交流無()


5月の10日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 12(普通)
  犬吠埼樹との絆 16(中々良い)
  結城友奈との絆 19(中々良い)
  東郷三森との絆 10(普通)
  三好夏凜との絆 28(少し高い)
伊集院沙織との絆  54(かなり高い)
  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 28(少し高い)
      神樹との絆 1(絶望的に低い)

大赦・神樹による、久遠天乃の警戒レベル○△□%程度?(検閲済み)
犬吠埼風より、情報提供:大赦は久遠を味方だとは思っていない


出はここまでとさせていただきます
明日は可能であれば、お昼からやりたいと思っています


天乃は冗談に身を包んだ女の子なのかもしれませんね


少ししたら再開する予定です


>>53のまとめですが、正しくは11日目でした



√ 5月12日目 朝


コンマ判定表

01~10 兄
11~20 
21~30 死神
31~40 
41~50 友奈
51~60 
61~70 夏凜
71~80 
81~90 風
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし




√ 5月12日目 朝


今日は朝から、雨だった

足元ではパシャパシャと水が跳ねて

上からは、傘が受ける雨音が激しく続く

だから話していても声は聞き辛く、伝え辛い

だから、黙り込んでいるのは互いに仕方がないのだと

半歩先を歩く夏凜の背中を見つめながら、天乃は思い、

友達だ。とでも言っておけば

仲間だ。とでも言っておけば

そう後悔しそうな心を引き上げて、天乃は首を振る

言わなかったのは自分だ

言ったから言ってくれると思った夏凜も夏凜だが

別に、言えないことでもないはずのことを言わなかった天乃が、原因

それを認めることが出来るからこそ

そのことをしっかりと納得し、少しばかりは罪悪感も感じているからこそ

天乃は、声をかけるべきかどうか、躊躇ってしまっていた


立ち止まることなく学校へとたどり着ければ

この気まずい空気ともすぐに別れられる

そう、思ったからだろうか

信号機はここぞとばかりに、足を止めさせた

夏凜「………………」

天乃「………………」

2人が並んで、傘がぶつかり合って

雨粒がはねて、落ちる

それに合わせるように、夏凜は口を開く

夏凜「……私は」

天乃「…………」

夏凜「私はあんたがどう思っていようと、あんたの事を監視するだけ」

夏凜は瞳を向けることなく告げて

顔が見えないように傘を下げると、続けた

夏凜「あんたが何かやらかそうとしたら、武力行使で止める。そう、元々、あんたと無駄な関係になる意味なんてないのよ」



1、……昨日は友達だって、言ったのに?
2、……そう
3、……気づくのが遅いのよ
4、……私の頭はともかく。私の心は貴女の事、親友だと思ってるわよ
5、上手く言葉にできないのよ。中途半端だから


↓2


天乃「……私の頭はともかく。私の心は貴女の事、親友だと思ってるわよ」

夏凜「………………」

天乃「でも。それを認めたら。それを貴女との繋がりにしたら。どちらかが消えた時、悲しいじゃない」

夏凜「天乃……あんたは」

夏凜が言い終える前に信号は青になって、周りが動き出して

天乃もまた、足を出す

先へ先へと行ってしまいそうな

本当に、消えてしまいそうな天乃の背中を追う夏凜は

待ちなさい。と、天乃の肩を掴む

夏凜「あんたは人をからかってばかりだから、何が本当の言葉なのか、さっぱり解らない」

天乃「………………」

夏凜「でも。あんたが真面目なのかどうかは空気で大体解る……つもりよ」

天乃「だから?」

夏凜「だから、私は昨日。あんたが何も言わなかったのはその程度だと思っているからだと、思った。けど、違ったって、ことね」


夏凜はなんていうべきかと考えようとして

でも、それではあまりにも時間がかかると判断して、

夏凜は軽く首を振って、息を吐く

夏凜「……あんたはただの、臆病者」

天乃「良く聞こえなかったわ」

夏凜「臆病者って言ったのよ――天乃!」

手に持っていた傘を投げ捨てて

空いた右手で天乃の胸元のリボンを鷲掴み、

夏凜は、天乃の沈んだ瞳を、睨んだ

夏凜「聞こえないのなら、聞こえないふりをするのなら、何度だって言ってやるわよ!」

天乃「………………」

夏凜「あんたは臆病者よ。信じることも、願うことも、望むことも、頼ることも、何もかも。あんたは出来ない臆病者よ!」

天乃「………………」

夏凜「少しは信じなさいよ! 決して居なくなったりはしないって! 必ず守ってくれる相手だって!」

夏凜は天乃の体を強く揺らし

耐えかねたリボンがほどけて抜けて、夏凜は代わりに胸倉をつかむ

夏凜「それが出来ない臆病者なら。そんな弱い人間なら……人の心に入ってくるんじゃないわよ!」


天乃「っ……」

夏凜「あんたのせいで、私は楽しいわよ! つまらないと思ってた毎日が。ただの役目だった毎日が!」

でもそれは。と

夏凜は続けて、首を振る

夏凜「あんたがそんな顔してたら、ダメなのよ」

天乃「………………」

夏凜「居なくなったら悲しい? だったら誓ってあげようじゃない。この私、三好夏凜は絶対に死なない!」

どれだけ強い雨が降っていようと

どれだけ大きな車が横を通り過ぎようとも

夏凜のその誓いの声は

何物にも劣らず、かき消されず

無音の中に響く、音のように鮮明に

天乃の元へと、届いた

夏凜「そのための訓練は積んできてんのよ。こっちは……だからあんたは安心して、私を信じなさいよ。有無は、言わせないわ」


夏凜にとって

天乃はただの監視対象ではない

最初は嫌だった。嫌いだった

なんでこんな面相臭いやつの相手をしないといけないのかとまで、思った

でも今は、その面倒くささが時々は欲しくて

あの笑みが、見たくて……

夏凜「あんたの事、私は友達だと思ってるって言ったわ」

天乃「……ええ」

夏凜「あんたが親友だと思ってるなら、別に。私もそっちでいいわよ」

天乃「……………」


1、……勝手にすれば、良いじゃない
2、……良いわよ
3、ダメよ。友達
4、何も言わない



↓2


天乃「……良いわよ」

夏凜「じゃぁ、そういうことね」

天乃「ええ」

夏凜「……………」

天乃の短い言葉

けれど夏凜はそれに対して何かを言うことはなかった

短い言葉の中に隠れた感情

それを完璧にわかるとまではいかないのかもしれないが

なんとなくにせよ、解ったからだ

天乃が喜んでいるのだと

嬉しく思っているのだと

だから、夏凜もまた

声には出さずに笑って――

夏凜「くしゅっ!」

天乃「……一回帰るわよ、おバカさん」

夏凜「面目ないわ……くしゅっ!」

2人して、苦笑した

√ 5月12日目 昼


コンマ判定表

01~10 勇者部
11~20 友奈
21~30 
31~40 沙織
41~50 
51~60 風
61~70 
71~80 友奈
81~90 
91~00 勇者部

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月12日目 昼


沙織「今日、遅刻してきたときは驚いちゃったよ」

天乃「そう?」

沙織「遅刻してまで来るなんてありえない。ってみんな言ってたよ?」

天乃「……なるほどね」

普通の時間に学校に来るのならわからなくもないが

遅刻確定の時間に

わざわざ学校に登校してくる。と言うのは

不登校児では中々に珍しいこと、なのだろうか?

疑問に首を傾げながらも

どうでも良いことだと切り離した天乃は苦笑して、別のクラスメイトの机を見つめる

天乃「それで来る方に賭けた女子が、昼ご飯が豪華になったわけだ」

沙織「私は参加してないけどね」

天乃「だったらなんで、くる方に賭けたのよ。女子は」

沙織「男子が絶対に来ない方に賭けたから、仕方がなく。みたいな感じだったよ」


天乃「仕方がなく……ね」

沙織「それとこれとは全く別のこと言っても良い?」

天乃「なに?」

沙織「夏凜ちゃんって子が来るのは解ってるんだけど、一緒じゃダメかな? 私も」

天乃「……無関係すぎるわね」

笑えばいいのか何なのか

中途半端な表情を浮かべた天乃は

そろそろ行くから。という

夏凜からの連絡を受けた端末を見て、軽く首を振る

夏凜が嫌がる可能性は少なからずある

かもしれないが、別に拒絶まではしない可能性が高い……とは思う



1、許可する
2、拒否する



↓2


天乃「まぁ、良いわよ」

沙織「やった。久しぶりに久遠さんと食べられるっ」

天乃「そこまで嬉しいことなの?」

沙織「嬉しいよ……だって最近、三好さんに全部とられちゃってるもん」

天乃「取られてるって……」

困ったような笑みを浮かべた天のがため息をついたのと同時に

つい二時間ほど前に別れたばかりの夏凜が

教室の出入り口に到着した

夏凜「天乃」

天乃「はーい。今日はこの子も一緒だけど、別に良いわよね?」

夏凜「一緒ってあんた……」

沙織「よろしくね。三好さん」

夏凜「……はぁ。解ったわ。さっさと行くわよ」

親友となった天乃の我儘のような唐突な言葉に反対する気力もなく

夏凜はため息をついて導いた


夏凜「……一つ」

沙織「ん?」

夏凜「一つだけ、あんたにも言うことがあったわ」

沙織「……言わなくても解るけど、一応、聞かせてくれる?」

沙織の解りきっていると言うような笑みに顔を顰めた夏凜だったが

軽く唇をかんで首を振り、ゆっくりと……言葉を紡ぐ

夏凜「あんたが言ってたこと。解ってた。でも、たぶん。私も認めたくなかったのよ」

沙織「知ってた」

夏凜「……それだけよ」

沙織「それを言うってことは、認めたんだね。なら、私が言うことはきっと。何もない」

静かな笑みを浮かべた沙織は

不可解に首を傾げる天乃を一瞥して

夏凜の方に、自分のデザートを差し出す

沙織「失ってからそうだったんだ。なんていうのは、誰にとっても良くないことだからね」

夏凜「……あんたも中々、わけわからないわよね」


沙織「私が?」

夏凜「あえて言うなら天乃に近い。色々と隠すタイプ」

沙織「どうしてそう思うの?」

夏凜「なんとなくよ。別に確証も何もないただの勘」

そう言った夏凜は

遠慮なく貰うわね。と、

差し出されたデザートを一口食べる

それを見つめる沙織は不意にクスクスと笑って

小首を振った

夏凜「……なによ」

沙織「ううん。あたしって久遠さんに似てるのかなーって思って」

天乃「似てないと思うけど」

夏凜「だからただの勘って言ったでしょう―が」


↓1

01~10 61~70  40~49


沙織がいることで、勇者としての話は一切できなかったが

それも、別に良いのかもしれない。と

思い始める自分に気づいて、苦笑する

少し前から

勇者であることに不真面目になった。と言うわけではないが

以前ほど没頭していないことには気づいていて

だから、夏凜は驚くこともなく、そのまま自分の心のうちに留める

夏凜「たまには、こういうのも悪くない」

天乃「なにが?」

夏凜「どうでも良い会話ばかりの時間よ」

天乃「……いつもの会話がどうでもよくないものだと思ってたの!?」

夏凜「真面目にふざけてるのね……あんた」

はぁ……と

大きくため息をついた夏凜

しかし、その表情は照れくささがありながらも

どこか嬉しそうなものだった

夏凜「いい加減にしなさいよ、あんた」

天乃「加減はしてるわよ。加減は」

夏凜「そういう意味じゃないっ」

何も変わらない

何の変哲もない

もしかしたら面白みもなくて

つまらないとさえ、思いかねないただの日常

その中に生きる3人は

とても幸せそうに――笑っていた


√ 5月12日目 昼 夕


コンマ判定表

01~10 勇者部
11~20 友奈
21~30 樹
31~40 沙織
41~50 
51~60 風
61~70 大赦の人
71~80 友奈
81~90 
91~00 勇者部

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月12日目 昼 夕


夏凜「雨……止んでないわね」

天乃「天気予報見てないの? 今日は一日雨。まぁ、明日もなんだけど」

夏凜「行くのも帰るのも億劫になるわね……」

いつもと打って変わり

けだるそうにつぶやいてため息をつく夏凜を

天乃は横目に見つめて、首を傾げる

天乃「貴女……具合悪かったりする?」

夏凜「何言ってんのよ。平気よ。全然」

天乃「……そう」



1、勇者部へ
2、家に直行
3、銀のお墓へ寄り道
4、本当に大丈夫?


↓2


天乃「まっすぐ家に帰りましょ」

夏凜「どこか、寄り道するつもりだったのね……あんた」

天乃「そんな気はないわよ。雨なら弱くなるまでは勇者部に立ち寄ろうとでも思っただけよ」

夏凜「体のいい休憩所ってわけね」

天乃「まぁね」

くすくすと笑いながら

天乃はちらっと夏凜を見て、軽く息を吐く

天乃「いいからさっさと帰るわよ、夏凜」

夏凜「言われなくても寄り道する気なんて、ないわよ」

天乃「そうね。雨だし」

夏凜「そうよ」

パシャパシャと

軽い音を弾かせながら

2人の少女が下校していく

それを見送る二つの光は一瞬だけ瞬いて、消えていった


「夏凜ちゃんにお荷物届いてるよ」

夏凜「やっと来たわね……」

天乃「なにが?」

夏凜「あんたも持ってるやつよ。私が今持ってるやつにはない機能がある端末」

自慢げに笑った夏凜は

部屋に戻るからとだけ告げると

荷物をもって部屋へと消える

「なんだって?」

天乃「お姉ちゃんには関係ないって」

「そう言われると気になるけど……ダメよね」

天乃「……………」

夏凜が貰ったのはおそらく、勇者用の端末

これでようやく、夏凜にも精霊が付いて、勇者になることが出来るようになる。と言うわけね……と

答えに至った天乃は「まったく」と小さく呟いて、首を振る

天乃「はしゃいじゃって」




1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織
3、夏凜の所へ
4、死神を呼ぶ
5、兄の所へ
6、姉の所へ


↓2


部屋に戻るやいなや

天乃はぱんぱんっと手を叩く

その瞬間、死神が姿を現した

死神「オヨビ?」

天乃「ええ。夏凜にも端末が来たのは解ってるわよね?」

死神「ウン」

天乃「これからほかの精霊もこの家にいるってわけだけど、貴方は平気?」

死神がその精霊と険悪なことになることはないだろう

そうは思いながらも、

天乃は少しばかり心配になって訊ねた

死神「クオンサンガイイナラ、ワタシ。キニシナイ」

天乃「貴方は何でも私なのね」

死神「クオンサン、ユウセン」

瞳がにっこりと笑ったのが見えて

天乃は困ったようにかぶりを振って、ため息をついた


天乃「貴方がそれで良いなら、良いけど……」

主人を優先すると言うのは

付き従うものならして当たり前であり

別に問題のあることではない

だが、死神に関しては

キスを要求して来たりデートを申し込んで来たり。と

いささか普通の憑き物とは違うために

少しばかり……不安があった

死神「クオンサン、ワタシニナニカ、ヨウジ?」

天乃「え?」

死神「キキタカッタ、ダケ?」

天乃「……………」



1、夏凜も勇者として戦う事になる。だから、いざと言うときは私よりも夏凜を守ってあげて欲しいの
2、……夏凜の事、親友って認めちゃった
3、何? 貴方は何か言いたいことがあるの?
4、ねぇ……あれから神樹からのコンタクトはないの?
5、最近、バーテックスが来ないけど。貴方、何か知らない?
6、そうそう。満開について聞きたいと思ったのよ



↓2


天乃「何? 貴方は何か言いたいことがあるの?」

死神「スコシサガッテ」

天乃「なんで?」

死神「サガッテクレナイト、ダメ」

天乃「なんなのよ……」

何が言いたいのか、したいのか

さっぱりだったが

天乃はとりあえず、と

躓かないように後ろを確認しながら数歩後退る

天乃「さがっ――」

死神「エイッ」

天乃「ちょっ、ちょっと!」

振り返った瞬間

突進してきた死神とぶつかった天乃は

後退った先のベッドに足をぶつけ、

そのまま、ベッドの上に倒れ込んだ


天乃「なにするのよ……」

死神「クオンサン、キノウシテタ」

天乃「あれは」

死神「ケッコンスル?」

天乃「しないわよ!」

兄のように押さえつける力のない死神が相手だったために

天乃は容易く体を起こし

死神の頭を鷲掴み、反対側の壁へと、放り投げた

天乃「そもそも貴方人間じゃないでしょう?」

死神「ニンゲンジャナキャダメ?」

天乃「ダメっていうか……」

死神「ジャァ、クオンサンガニンゲンジャナクナレバ。イイ?」

唐突に不穏なことを言い出した死神の表情は困っているようにも見えて

それが本気の言葉ではないだろうことは明白で

天乃はクスクスと、笑う

天乃「どうしたら人間じゃなくなるっていうの?」


死神「……クオンサン、ニンゲンジャナクナリタイノ?」

天乃「え?」

死神「カリンチャントカ、アノコトカ。ダレニモアエナクナルヨ?」

天乃「何よ急に……」

真剣なまなざしでの不穏な言葉の連続

以前の事もあり

死神なりの冗談だと解りにくい冗談の可能性もあり

判断しにくい天乃は、首を傾げる

天乃「まるで死ぬみたいな……」

死神「……ニンゲンハシヌ。シンダラモウ。ニンゲンジャナイ」

天乃「それはそうかもしれないけど……」

死神「デモ、アトヒトツアル。シリタイ?」

天乃「……………」


1、聞く
2、聞かないでおく


↓2


少し中断します
また少ししたら再開する予定です


天乃「……ええ、教えて頂戴」

死神「カミサマニ、ナルコト」

天乃「神様……? 人が?」

死神「ホウホウハシラナイ。デモ、クオンサントアッタ、ソノコハ、ハンブンクライ、カミサマダッタ」

天乃「……え?」

神様になれる。と言うだけで

天乃にとっては衝撃的なものだったのだが

続いた死神の言葉に……天乃は唖然として首を振る

天乃「ありえないわ」

死神「ワタシ、ウソハツイテナイ。ソノコカラシンジュノコトカンジタ」

天乃「なんで……?」

死神「ワカラナイ。デモ、ソノコハカミサマニチカカッタ」

天乃「っ……」

死神が冗談を言うことはあるが

流石に幾度と聞いても、冗談を続けることはないだろう。と

天乃は頭で解っていた

けれど、否定したい気持ちが先行して、首を振る


天乃「貴方、冗談だって言うなら今のうちよ」

死神「………………」

天乃「……そう」

死神の沈黙に

天乃は小さくそう答えて、ベッドの上で、蹲る

窓に打ち付ける五月蠅い雨音

それすらも耳に入らないほど

天乃の頭の中はめちゃくちゃで

鼓動は早く、激しく、五月蠅かった

天乃「……園子は頑張ったって、言ってた」

死神「ウン」

天乃「頑張ったから、きっとそうなった」

死神「ウン」

天乃「何を……頑張ったのよ」

その問いに死神は答えることが出来ず

天乃自身は、答えを見つけることが出来ず

騒がしく、ほの暗いその部屋には

酷く思い空気だけが……漂っていた


√ 5月12日目 夜


コンマ判定表

01~10 夏凜
11~20 
21~30 兄
31~40 
41~50 姉
51~60 
61~70 夏凜

71~80 
81~90 
91~00 死神


↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月12日目 夜




それ以上に暗く感じる天乃がベッドの上で膝を抱え

考えに耽っている中

「天乃ーッ!」

バンッと扉をあけ放ち

天乃が今は会いたくないであろう兄が駆け込んできた

天乃「帰ってよ!」

「雨の滴る女の子は可愛いが、零してるだけの女の子は……可哀想なだけだぞ」

ぽんぽんっと頭を叩いてくる兄を睨み

天乃は目元を拭う

天乃「っ……泣いてなんか」

「はいはい。そういうことにしてやるから……とりあえず、ベッドに座れ。押し倒したりなんかしないから」


「何があった」

天乃「………………」

「朝、ずぶぬれの夏凜ちゃんと帰ってきた時も。夕方、帰ってきた時も。お前は嬉しそうだった。なのに」

天乃「……………」

「俺に話せないようなこと……か」

兄は何かを悟ったような表情を浮かべ

天乃の頭を軽く……撫でる

「お前に一つだけ、教えてやるよ」

天乃「……なにを?」

「俺はお前の大嫌いな大赦の人間と、付き合いがある」

天乃「……………」

「大嫌いな奴と繋がりがある俺の事……お前は、嫌いになるか?」



1、初めから嫌いだよ……第一、あれだけエッチなことしておいて、好かれてるって思ってるの?
2、……急にそんなこと言われても、困るよ
3、誰? その……大赦の人って
4、……解んない
5、好きだよ。お兄ちゃんは、お兄ちゃんだから



↓2


天乃「好きだよ。お兄ちゃんは、お兄ちゃんだから」

「……そ、そっか。そうか……そぉ~かぁ」

天乃「な、何なのその反応」

「いや、ほら。お前……好きどころか、めったに好意的な事、言わないだろ?」

底なしに幸せそうな笑みを浮かべながら

兄はいやーあははっと頭を掻いて

冥利に尽きるってもんだな。と、苦笑する

天乃「っ……人がせっかく、言ってあげたのに!」

その仕草は天乃の羞恥心を強く刺激して

頬を紅潮させ

恥ずかしさに泣きそうになりながら

天乃は怒鳴り、バシバシと兄の腕を叩く

天乃「ぜ、前言撤回!」

「おっと、撤回したところで言ったことには変わらないぞ?」

天乃「っ!」

「照れちゃって、可愛い妹だなお前はーまったく」

天乃「からかわないでよ!」


伸びてきた兄の手を弾いて

天乃は兄の事を……強く睨んだ

天乃「私の事、馬鹿にしてるの? お兄ちゃんは落ち込んでる私の事、怒らせたいの?」

「ちょ、ちょっ……お前」

天乃「私はお兄ちゃんとじゃれ合う余裕はないの!」

「っ」

天乃「馬鹿にしたいだけなら、帰ってよ!」

突き飛ばすために伸ばされた左手

それを兄は黙って見据える

常人からしては明らかに早いその動き

けれど、兄にとっては――遅かった

「甘いんだよお前はいつも」

左手首の付け根に小指から流れるように右手を接触させ、

ぎゅっと……捕える

「このままお前を抱いてやることも。引っ叩いてやることも、キスしてやることも出来る」

天乃「………………」

「お前は昨日言ったよな? 抱いてくれって、キスしてくれって……望み通り。してやるよ。天乃」


天乃「っ……放して」

「………………」

天乃「お兄ちゃんっ!」

強く左手を引いても

男性であり、年上の兄の力にはあらがえず

左手は戻ってこなくて

右手を振り上げた天乃は……躊躇って、首を振る

右手も捕えられてしまうかもしれない

そしたら絶対に逃げられない

その恐怖が動きを、止めさせた

「……どうした。殴らないのか?」

天乃「……………」

「なら、目を瞑るんだ。ゆっくりと。鼻で呼吸せず、口で静かに、大きく呼吸するんだ」

天乃「っ…………」

「……早く」

天乃「っ」

強く腕を握られて

天乃は目を瞑り、言われた通りに、呼吸する


身体の中に大量の空気が入り込んで

体中を駆け巡って……抜けていく

何度も、何度も繰り返す

天乃「……まだ? まだ、続けないといけないの?」

「……………」

天乃「お兄ちゃん……?」

返事はなく

呼吸も聞こえず

動きも一切、感じない

ただ、握られた左手にだけ

捕える兄の右手の温かさだけを、感じた

天乃「…………………」

兄の温かさと

身体の中をめぐる新しい空気

次第にそれだけを感じるようになっていた天乃

力強く瞑っていた瞼は

眠るように優しく、柔らかく……自然なものに、変わっていた


暫くして、兄の動きを感じ

天乃の体がピクッと揺れたのを見た兄は

静かに首を振ると、口を開いた

「……どうだ。落ち着いたか?」

天乃「お兄ちゃん……」

「人間の目はな? 開いているだけで大量に情報を得る。でも、目を瞑れば途絶えさせることが出来る」

兄は声に出さずに笑みを浮かべると

空いていた左手で、天乃の頭を撫でる

「そして、俺と言う存在を感じられるものがこの右手一つになれば。お前の意識はそれに集中する」

天乃「……それを狙ってたの?」

「それとあと一つだ。今お前の頭の中には、俺に掴まれてる左手と、掴んでる俺の手があるはずだ」

天乃「うん」

「今からゆっくりと手を放すから、それと一緒に頭の中から消せ」

天乃「どうして?」

「悩むときは一度思考をリセットするんだ。全部忘れて、悩むべき問題の一番大事なことだけを思い出す。じゃなきゃ、一番大事な物を、忘れちゃうからな」


手から離れていく兄の温もり

それを感じると同時に、

頭の中で思い浮かべていた兄との繋がり方を薄めて、かき消す

真っ白ではなく

真っ暗になった頭の中

目を開こうとした天乃に「待て」と、制止した

天乃「……………」

「開いたら大好きなお兄ちゃんが見えちゃうだろ」

天乃「っ…………」

言われた頭に浮かんだ兄の姿

ふざけていたりなんだりと

不真面目な物ばかりの中

真面目で優しく、温かい兄との交流を思い出して――顔を赤くする

「だ、だから忘れろ! 頭の中を空っぽにするんだよ!」


兄の事を頭の中から消し去った天乃は

深く息を吸い、吐いて

目を瞑ったまま、兄を呼ぶ

天乃「……それで?」

「お前が今解決したい問題。その中で一番大事なことを思い出すんだ」

天乃「私が解決したいこと……」

「その問題の原因、その問題で引っかかっていること。口に出さなくていい。頭の中に出せ」

兄の言葉に従うために

真黒な頭の中を汚さないように気を付けながら

頭の中にそれを引き出そうと、顔を顰めた



1、園子
2、勇者
3、頑張った
4、神樹


↓2


天乃「……出したよ」

「そうか。なら……次に問題を出してみろ」

天乃「………………」

勇者と、神様

その二つを頭に思い浮かべた瞬間

勇者は神樹様

つまりは神様の力の上で成り立っている。と、繋がる

「問題と大事なことが繋がったら、原因を取り出すんだ」

天乃「原因……」

勇者と神様

そして、神様になると言うこと

その3つを取り出した天乃は、少しだけ顔を顰める

それを見た兄は「違う」と、止めた

「わざわざ展開するな。問題と大事なことと原因だけを、つなげろ」

天乃「……………」

勇者は神様の力の上で成り立っており、

その勇者になっていた人物は、神様になる

そう繋がって、天乃はその人物の一言を思い出す

頑張った

何を頑張ったのかは放り投げて、自分の考えに結ぶ

その結果、

勇者として頑張った人は、神様になる

というものが出来上がり、天乃は閉じていた目を開いた

「……できたな? 良いか? それがお前が悩んでいることのシンプルな答えだ」

天乃「……うん」

「骨格が解らなきゃ、肉を付けたところでそれは崩れる。問題の答えだって一緒だ。まずは単純なものでいい。答えを出せ」

ポンポンっと天乃の頭を叩いた兄は

少しだけ和らいだ妹の表情を見て、笑みを浮かべる

「そうすればあとは肉をつけるだけだ。その肉は問題や原因に関連することだ。それは情報を集めてからつければいい。後は頑張れ。天乃」

そう言った兄は

満足そうに……部屋を去って行った


出はここまでとさせていただきます

後は纏めだけなのですが
時間もないので明日の朝にでもできれば出したいと思います


いつかは兄に手を出されるかもしれません

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流無()
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流有(関係、昼食、帰宅)
・伊集院沙織:交流有(昼食)

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流有(ケッコン、ヒトジャナクナル)
・     神樹:交流無()


5月の12日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 12(普通)
  犬吠埼樹との絆 16(中々良い)
  結城友奈との絆 19(中々良い)
  東郷三森との絆 10(普通)
  三好夏凜との絆 30(少し高い)
伊集院沙織との絆  55(かなり高い)
  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 30(少し高い)
      神樹との絆 1(絶望的に低い)

大赦・神樹による、久遠天乃の警戒レベル○△□%程度?(検閲済み)
犬吠埼風より、情報提供:大赦は久遠を味方だとは思っていない


通知通り、纏めのみです

再開は5月の13日目の朝で、土曜日です
学校がありませんので、丸一日自由行動になります

関係ないけど天乃(あまの)って天乃(あめの)とも読めるんだよね
んで神様もアメノホヒとか「あめの」って始まる
ま、まさかね…


ピロリロリン
少しですが、ちょっとしたら始めます


√ 5月13日目 朝


コンマ判定表

01~10 夏凜
11~20 沙織
21~30 兄
31~40 
41~50 大赦の人
51~60 
61~70 勇者部
71~80 
81~90 友奈
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月13日目 朝


天乃「ん……今日は、土曜日だっけ」

ザーっという雨音で目を覚ました天乃は

すぐ近くの端末を明るくして、日付を確認する

せっかくの休みの日でも

これだけの雨では出かけることも出来ないんだろうな。と

他人事のように考えて、布団をかぶる

天乃「……どうしようかな」

この雨では勇者部も活動は出来ないだろうし

連絡すれば必ず出てくれるだろう

あの東郷も。だ

天乃「………………」



1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織
3、夏凜の所へ
4、死神を呼ぶ
5、兄の所へ
6、姉の所へ


↓2


することもないし。と

暇つぶしの感覚で天乃は姉の部屋を叩く

天乃「いる?」

「いるよー」

天乃「入るよ」

いるのを確認するや否や

天乃はもう一度ドアを叩いて開けることを伝えると

遠慮なく、姉の部屋に入って行った

「いらっしゃい」

天乃「……なにしてるの?」

「プラネタリウムの改修。ふたご座がつかなくなっちゃったのよ」

天乃「へぇ……」

数十か数百か

とにかくたくさんの豆電球をいじくる姉から視線を天井へと移すと

いくつかの星座を形作っていた部分が外されていて

何の星座だったのかは、解らなくなってしまっていた


天乃「星座ねぇ」

「なぁに? 貴女も星に興味が出てきた?」

天乃「そういうわけじゃないけど……」

「ないんだ……」

しょんぼりとする姉を一瞥して

天乃は今までの戦いと

その時に見たいくつかの名前を思い出す

蟹座、蠍座、乙女座、天秤座、魚座、射手座……

全部、星座

それもそう。確か……

天乃「お姉ちゃん。蟹座とか、蠍座とかってなんていうんだっけ?」

「なんてって……黄道十二星座?」

天乃「うん、そう。それ」

聞いた話ではバーテックスは全部で十二体

考えるまでもなく、星座

なぜ……星座なのだろうか?


暫く考えてみたものの

その答えには到底たどり着けそうもなくて

天乃は納得いかなそうな表情で、首を振ってため息をつく

天乃「ねぇ、星座って何なの?」

「星座は心……雲みたいなものよ。見た人によってさまざまな形にも見える」

天乃「でも、何とか座って名前がついてるよね?」

「そうね」

妹と星の話が出来ているのが嬉しくて

姉は幸せそうな笑みを浮かべながら

一旦、手を休めて天乃の方へと目を向けた

「でも……そうね。たとえるなら神様みたいなものよ。そう見える。そう思える。みたいな感じだしね」

天乃「適当なのね」

「本当はもっと色々あるけど……初めからそんな詳しく専門的な話したって、絶対に詰まらないし」

クスクスと笑った姉は、心から。嬉しそうだった


1、ねぇ……ところで。バーテックスって聞いたことある?
2、ねぇ、私が危ないことしてるって言ったらどうする?
3、ねぇ。私……お兄ちゃんと結婚がしたいの
4、ねぇ……神様の力を使って頑張った人が、神様になる。なんて、あり得ると思う?
5、ねぇ、お兄ちゃんの大赦の知り合いって誰だか知ってる?
6、今まで倒した星座以外の星座を聞く


↓2


天乃「ところで……なんだけど」

「んー?」

天乃「あのね? 言うべきかどうかすごく迷ったんだけどね?」

「なに?」

天乃「私……お兄ちゃんと結婚がしたいの」

その瞬間、時間が止まったように

姉の瞳も、声も、身体も、呼吸さえも、止まった

姉の手から豆電球が滑り落ちて、軽い音が鳴って

すぐに、雨の音によってかき消される

「…………」

キィィっと椅子が回して身体ごと天乃の方へと向き直った姉は

何度か瞬きをして

悲しいと言うよりも、困惑し、何かを心配するような表情で首を振る

「兄ちゃんに何を飲まされたの? 何を食べさせられたの?」

天乃「え?」

「おかしいわよ! あんな人と結婚だなんて……惚れ薬盛られた以外考えられない!」


天乃の体を強く揺さ振り

姉は苛立ちまじりの嗚咽を漏らす

なんてことを

酷い、最低

鬼畜、悪魔、変態……と

次から次へと尽きることなく

姉は兄への侮蔑の言葉を並べ立てていく

天乃「お兄ちゃんを悪く言わないでよ……」

「っ……惚れ薬じゃなくて洗脳……? サブリミナル効果を用いた映像を見せられたのね!?」

天乃「違うよ……本当に、私はただ。その……」

表情を悟られまいと

天乃は俯いて首を振り、服の裾をぎゅっと掴んで「好きなの……」と、呟く

「………………」

天乃「…………」

「……た、確かに真面目な時は本当にいい人だとは思う。でも、貴女の実兄だし、それに……下着を盗もうとする変態なのよ?」


天乃「……解ってる」

「なら」

天乃「でも。お兄ちゃんといるとドキドキする。何気ないことが気になって仕方が無くなる……」

「……………………」

天乃「あんなお兄ちゃんだけど……」

天乃は俯いていた顔を上げ

左手で自分の胸を抑えると「でも」と、続けて

姉の事をまっすぐ見つめて――言い放つ

天乃「……好きになっちゃったんだから仕方ないじゃない!」

「っ」

天乃「変態だと思う。実兄だと思う。エッチだなって思う。それでも……お兄ちゃんといるとドキドキするのっ!」

「貴女……」

天乃「一挙一動が気になって仕方がないの」

「うん……」

天乃「いつ私の方に手を出してくるんだろうってドキドキしちゃうの」

「うん………」

天乃「どこ触ろうとするのか、何を盗むのか、気になって仕方がない……」

「うん?」

天乃「これってこ+いってことだよね?」

「……そうね」


出はここまでとさせていただきます
このままだと無垢じゃなくなる……


ピロリロリン
少ししたら始めようと思います


天乃「そうねって……お姉ちゃん、私はまじめに言ってるんだよ?」

「そうね。真面目ね。真面目に、本気で、真剣にふざけてるでしょ?」

天乃「………………」

「こ、プラス、い。プラスは記号に直すと……」

こうだよね? と

姉は適当な神に十字のマークを書いて

天乃の目の前に差し出す

プラス=【+】

【+】=足し算として、こといを足して恋

……じゃ、ないのが天乃。と

姉は困ったようにため息をついて

十字のマークの下に一つの漢字を書き記す

「足し算であり、+でありそして……こといの間に入れられる言葉」

天乃「…………」

「和。こ・和・い。つまり、恋ではなく、怖い……貴女が言いたいのは、そういうことでしょ?」


とても簡単な推理を披露した姉の

冗談じゃないと言いたげな表情を見つめて

天乃は小さく、笑みを浮かべる

天乃「……本当にそう思う?」

「?」

天乃「私はこといを足して欲しかったのかもしれない。言い難いこの気持ちを、冗談にしたのかもしれない」

それでも。と

天乃は姉から目を逸らし、俯きがちになりながら

言葉を繋ぐ

天乃「お姉ちゃんは私がお兄ちゃんを怖がってるだけだって、思う?」

「……………………」

妹の真剣なまなざし

それを嘘だと決めつけることは姉の心が拒もうとしていた

だから、すぐには答えを返すことが出来ず

だから、姉は天乃の足元を見つめた

ちゃんとした答えを、考えるために


「……兄が好きと言うのはつまり、自己愛。ナルシストともいえる。という話を知ってる?」

天乃「え?」

「近親に安心感を覚えるのは、それが、自分に近く、自分であるとも思えるから」

天乃「……………」

「親に対する反抗期。と言うものは、実は自己嫌悪しているから。という説もある」

姉は天乃の事を見ることなく

机の方に身体を向けて、静かに語りだす

「なぜ近親がそういわれるのかは、言うまでもなく血の繋がりがあるからよ」

天乃「へぇ……」

「兄や姉なんかは特に、ともに同じDNAから生まれているからなおさら、ね」

姉はゆっくりと天乃の方へと椅子を動かし、

天乃の顔を見上げて、悲しそうに首を振る

「そして近親に恋愛感情を抱くのは、自分しか愛せない。あるいは、他人を愛する資格がない。と、心から思っている時」

天乃「……………」

「貴女のお兄ちゃんへの恋愛感情は、心が逃避したがってると言うことになるわ。他人の気持ちから逃れて、自分の中に閉じこもろうとしてるのよ」


天乃はそんな話など聞いたこともなかった

だが、姉の真剣な語り口調、瞳

場の重苦しい空気に締め付けられて

天乃は唐突な不安を感じて、首を振る

天乃「そんなことない……私は」

「自分の潜在的な意思は自分でもわからない。だから、潜む。と言う言葉が使われてるのよ」

天乃「………………」

「どこかでなにか。そう、自分は他人を愛する資格がないと思うようなこと、覚えはない?」

天乃「………………」

「もしかしたら2年前のことかもしれないわね……」

メモを取るようなことじゃない

誰かに見られてしまうようなものにはしてはいけない。と

姉は軽く首を振ると

頭の中を切り替えて、新しく書き記していく

「大切な人を失った悲しさが、もう二度と同じ経験はしたくない。誰にもさせたくない。と、抑制している可能性もあるから」


天乃「違う……違うから、本当に……」

「…………………」

天乃「私……そんなんじゃない」

自分の体を抱きしめて

ふるふると……何度も首を振る小さな妹

言い過ぎた

突き進みすぎた

ごめんね……と

姉は心の中に申し訳なさを詰め込み

天乃の小さな体を抱きしめる

「違うならいいの。違うなら……あの人と結婚なんていうのは。もちろん、認めないけどね」

天乃「…………………」

ほんの些細な推理、簡単な推理だと天乃は侮り、

結果、知られたくはないところまで一気に突き進まれ

兄を本当に愛してしまっているのではないかと

冗談が冗談ではなくなりそうに……なっていた


√ 5月13日目 昼


コンマ判定表

01~10 夏凜
11~20 
21~30 兄
31~40 夏凜
41~50 
51~60 変態
61~70 
71~80 沙織
81~90 
91~00 友奈

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月13日目 昼


天乃「私が本当にお兄ちゃんと……?」

純白のウエディングドレスを着た自分

その隣にいる、スーツを着込んだ男の人

天乃「………………」

神父に誓いのキスをと促されて

隣の男性と向き合って

身長差がありすぎて

何とか頑張って背伸びして……

ゆっくりと見上げた男性は、兄

天乃「ッ――ふざけないでよ!」

ありえない、ありえない!

お兄ちゃんと結婚なんてただの冗談!

絶対にない。と、

天乃は枕を抱きしめ、激しく頭を振った


1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織
3、夏凜の所へ
4、死神を呼ぶ
5、兄の所へ
6、4ちゃんねる
7、学校裏サイト
8、NARUKO(勇者部共用連絡用掲示板)


↓2


友奈:ですね

風:というわけで、一応あたしから――おう?

東郷:久遠先輩が入室されてますね

風:おーい、久遠ー?

友奈:久遠せんぱーい

樹:久遠先輩?



天乃が参加、あるいは入室したと言うのは一目でわかるようになっており

そのためか、天乃が入った瞬間

話題は途切れ、全員の関心が天乃の方へと向いた

天乃「……不便なアプリね」

コメントを入れなくても

ただ見に来ただけで参加者に混ぜられる

これではのぞき見すら、出来はしない


天乃:お邪魔だったかしら?

友奈:そんなことないですよ

風:どうぞどうぞ、こちらへ

天乃:こちらってどちらよ

樹:久遠先輩が参加するなんて、珍しいです

友奈:久遠先輩、こんにちはー

天乃:うるさい


恐らくはそれぞれのイメージカラー

その色に縁どられた文字が次から次へと流れ込み

勇者部の面々の文字はまるで虹のように積み重なっていく

けれど、天乃のものだけは黒く

その虹を汚し、輝きを鈍らせ

光を、汚染しているようにも見えた



1、さっきまで何の話をしていたのよ
2、夏凜が端末をもらって正式に勇者になったわ
3、知り合いが兄弟と結婚したいとか言い出したのだけど……なんて返事を返せばいいの?
4、……一つだけ、言っておくわ。私が狙われるとしても。見捨てて頂戴
5、風。貴女は樹の事好き?


↓2


天乃:夏凜が端末をもらって正式に勇者になったわ

風:おー

友奈:まだ、勇者じゃなかったんですか?

樹:てっきり勇者だと思ってました

天乃:ただ端末をもらってなかっただけだと思うけど


確か、そう

調整をしているから端末はまだもらってないと言ってた。と

天乃は夏凜との会話を思い出して言葉を返す

端末の調整は本来

天乃の端末との同期をする予定だった為に遅れたのだが

天乃が端末を渡さなかったために

遅延の意味はほぼなかったと言っても良い

が、それを知らない天乃は「きっとバージョンアップされてるのよ」と

勝手に夏凜への期待を底上げした


三好夏凜という新しい勇者の加入により

メンバーの親和性は置いておくにしても

数的に見れば6人と圧倒的

だが、その分バーテックスは強く

そして、はるかに大きい

だからこそ、侮ることは出来ず

夏凜の加入があるからと言って

楽勝だ。とは

だれ一人として言葉にはしなかった

そして

そのあとの沈黙があったからこそ

参加者の一人友奈が気付く


友奈:あれ……東郷さん?

風:ん?

友奈:さっきから東郷さんの返事がないんです


東郷が現在も閲覧状態にあるのは端末の画面が示してはいるものの

確かに、東郷の返しは天乃が来た。という物以降

一度も入ってきてはいない

気になった勇者部の面々のいくつものレスが流れていくが、

それでも東郷からのものはなく

友奈は「ちょっと見てきます」と、アプリ内から消えていく

何があったのかと心配する犬吠埼姉妹

その一方で

天乃は自分が来たせいだと……察していた

突き放し、拒絶した

近づいてきたのに、帰ってと言い放ち

近づいてきたのに、無視をした

だから自分から離れたのだ……と


1、ログアウトする
2、東郷に電話
3、友奈を待つ
4、東郷が投稿しないなんて……きっと私の存在感に投降したんだわ


↓2


天乃は私も戻るわねとだけ告げると

風達の返事も待たずにログアウト

すぐに画面を切り替えて

アドレス帳から引っ張り出した東郷の電話番号をタップする

天乃「………………」

もしかしたらただ傍から離れただけかもしれない

そんな可能性も考慮しながら

準備中の機械音を聞き流す

回数は数えず秒数を数えて20秒

一瞬だけ途切れることはあったものの繋がることはなく

これはダメだろうと

通話を中断しようとした瞬間

ぶつっと切れて、沈黙が端末から漏れてきた


天乃「……東郷」

東郷「はい」

天乃「友奈はそこにいる?」

東郷「……いません。久遠先輩からのご連絡がありましたから」

そう言った東郷の声は普段よりも落ち着いている

言い換えれば、暗かった

不安が感じられて、恐れも感じられる

でも、それは決して表には出ず。潜んでいる

天乃にはそんな感じがした

東郷「お話を、したいと思っていました」

天乃「会いに来ていたものね……」

東郷「ですが、久遠先輩は私を拒絶しました。ですからもう。お話をしないようにしよう。と思っていました」

天乃「だからって急に消えたらみんな心配するわ」

東郷「……そうですね」


天乃「……話を、聞くわ」

東郷「…………………」

天乃「私は貴女を受け入れる。東郷美森。貴女の事を」

それは言葉の通りで

何の偽りも、装飾もなく

親友の親友ではなく

自分の可愛い遊び相手ではなく

自分の知らない

自分の親友どころか友人でもない

東郷美森であるとして

自分の中で、一区切り……つけたのだ

だが、やはり

そう、どうしても

東郷「……本来、話すつもりはなかったことです」

運命と言うものは

神様と言うものは

東郷「ですが、久遠先輩は私の知らない私を知っているのかもしれません。ですから……お話します」

久遠天乃と言う人間に対して

酷く冷たく、意地悪で、凶悪で

まるで苦しむ姿を愉しむ為に作り出したかのように

東郷「私は事故で記憶を失いました……だから、何も知らない。解らないんです」

天乃「………………」

東郷「教えてください、久遠先輩。貴女の知る。私の事を」

東郷美森にそう言わせた

区切りをつけようとした少女の心を握りしめて

鷲尾須美と言う、少女の事を……強引に引きずり出そうとしていた


天乃「…………………」

東郷「お願いします。久遠先輩」

声だけの願い

けれどそれは懇願に聞こえて

目の前で頭を下げる彼女の姿が見えて

天乃は小さく首を振り、

空いた手で……顔を覆う

なんで?

なぜ?

どうして?

せっかく、東郷美森として新しくしようとしたのに

天乃は困惑と悲しさの混濁した感情を胸に

言葉を紡ぐ



1、……何も知らないわ。ただの勘違いだったのよ
2、貴女の本名は鷲尾須美。銀と園子は貴女の親友だった
3、貴女の本名は鷲尾須美。銀と園子は貴女の親友だった……そして、先代勇者だったのよ
4、私の玩具だったのよ



↓2


天乃「……何も知らないわ。ただの勘違いだったのよ」

東郷「………………」

天乃「本当、何も知らない」

鷲尾須美と言う存在を消し

東郷美森と言う存在に置き換える

それはもう決めたことだった

親友の死を忘れ

親友の行方を忘れ

そんな恐怖、絶望に身を置きながら

それを忘れ、再びその中に身を投じていると言う……裏切りにも似た忘却を

東郷には味わわせたくないと言う思いで、断絶する

天乃「貴女に期待をさせて悪かったわ」

東郷「………………」

天乃「……これからよろしく頼むわね。東郷」

私が言いたかったのはそれだけだから。と

電話を切って端末を投げ出し

天乃は天井を仰ぎ見て……目を瞑る

天乃「……ごめんね。須美」

鷲尾須美との最期の別れとなった日

彼女がまたいつかと去って行った姿を思い出す

天乃「さようなら……」

その声は雨の音に紛れて――消えた


√ 5月13日目 夕


コンマ判定表

01~10 兄
11~20 
21~30 夏凜
31~40 
41~50 姉
51~60 
61~70 沙織
71~80 
81~90 大赦
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月13日目 夕


大赦より連絡


重要な連絡があります

翌日(5月14日目)正午、讃州中学校門前に来てください

これは三好夏凜にも通知済みです

久遠天乃、あなたにこれを拒否することは出来ません


天乃「……なによこれ」

ふざけるならもう少し気の利いたものにして

誰にでもなくそう呟いた天乃は

軽く頭を振ってため息をつく

親友を失い、記憶を失い

恐らくは足も不自由にしながら生き延びた東郷美森

その先代勇者を

あろうことか何も教えることなく

再び親友とともに戦いへと投じた大赦

天乃「馬鹿にしないでよ!」

彼らへの怒りを少しでも和らげようと

とっさに掴んだ枕をドアへと投げつけて、怒鳴る

天乃「馬鹿に……しないでよ……」

会って貰えると思ってるのか

会って無事で済むと思ってるのか

何もなく、ただ報告をするだけで終われると思ってるのか……と

天乃は強く拳を握りしめ

そこにはいない大赦を……睨んだ


兄に言われたように

してもらったように

目を瞑り、呼吸を一定にして

天乃は心を落ち着けて、首を振る

天乃「……………」

いまだ止まない雨

打ち付ける窓を見つめた天乃は

小さくため息をつく

天乃「せっかくの休み……」

外は大雨

姉に冗談を言えば、兄への恋心があるのかもしれないと不安になり

受け入れようと思った東郷には以前の事を聞かれ

大赦からは呼び出しのメール

精神的には全く休むことは出来てないと言っても過言ではなかった



1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織
3、夏凜の所へ
4、死神を呼ぶ
5、兄の所へ
6、姉の所へ
7、4ちゃんねる
8、学校裏サイト


↓2


ではここまでとさせて頂きます

言わない場合は通常通り、鷲尾須美を忘れて東郷美森を受け入れます


ピロリロリン
再開します


天乃「夏凜、ちょっといい?」

そう言いながらドアを叩き

返事を待つことなく、夏凜の部屋へと足を踏み入れる

天乃「夏凜……?」

朝からずっと暗い外

その影響から部屋も暗い

天乃は先制したその答えに首を振る

電気を点ければそれは問題ない

はずなのだ

はずなのに、部屋は暗かった

天乃「……………」

部屋の主がいないのならば

ベッドの上、布団の中に身を隠しているのであれば

それも問題はない

寧ろ点いている方が問題だと言えるだろう

しかし……

夏凜「……なによ」

夏凜は横になることなく

部屋から出ているわけでもなく

天乃の目の前に……いた


天乃「もう夕方よ。夏凜」

夏凜「知ってるわよ」

天乃「だったら電気くらい、つけたらどう?」

夏凜「天乃がそういうなら、つけるわよ」

パチッと音が鳴って部屋は明るくなった

けれど

明るくなったのは部屋だけで

夏凜の纏う空気は夜のように暗かった

天乃「……どうしたのよ」

夏凜「別に……と、言いたいところだけど。まぁ、あんたにも関係あることだろうし――」

天乃「明日の呼び出しの件?」

夏凜「そうよ。そうだけど……もう少し詳しいところの話よ」


夏凜は納得がいかないと言うように顔を顰める

少し前の自分なら

それを心から感謝しつつ、受けていただろう

でも

今は違う

確かに煩わしい存在だが

それでも、自分が今まで得られなかったものを与え続けてくれる存在

慣れ合うためにここにいるわけではないと

いまだどこかで思いながらも

得難かったものを得られる、与えてくれる天乃とは

平穏の中で付き合っていきたいと。そう、思っていた

だから、大赦からの指示を

夏凜は受け入れがたかった

けれど

夏凜「天乃、あんたとの生活はこれで最後よ」

夏凜はあえて、天乃にそう告げた


夏凜「まぁ、あんたみたいな危険人物に逃げられたあげく、友奈に押し付けたわけだし、妥当なところだわ」

天乃「……私のせい?」

夏凜「違うわよ」

天乃「………………」

夏凜「あんたなんて関係ない」

そう言い切って首を振る夏凜を見つめて

天乃はため息をついた

夏凜を監視に付けたかと思えば

夏凜を監視から外そうとしている

ただでさえ大嫌いな大赦の事を

より一層……嫌いになりそうだった



1、でも……良かったじゃない。貴女、嫌がってたじゃない
2、私と離れたくない?
3、……嫌よ。そんなの、嫌よ
4、じゃぁ……今日こそは一緒に寝てくれる?


↓2


天乃「じゃぁ……今日こそは一緒に寝てくれる?」

夏凜「はぁ? あんた何言ってんのよ」

天乃「……前、断られたし」

夏凜「……………」

そういえばそんなこともあった。と

数日前の記憶を掘り起し

夏凜は困ったものだと顔をそむける

前回のアレは完全な冗談だと思ってて

だから、思いっきり突き放した

その結果の悲しそうな姿を思い浮かべ、夏凜はため息をつく

夏凜「それ、冗談じゃないんでしょうね」

天乃「……嫌?」

夏凜「………冗談なら嫌に決まってるでしょうが」

夏凜はいつもの口調に似せながら

声色だけは静かに、続ける

夏凜「真面目なら、前みたいに落ち込まれても面倒くさいし。受けてあげるわよ」


それを言うのは気恥かしくて

でも、決して誤解がないように折り曲げて

夏凜は天乃を見ずに答える

天乃「……絶対だからね?」

夏凜「あんたが夜、抜け出したりしなければね」

天乃「うん、しない」

子供みたいに嬉しそうな笑顔で答えた天乃

夏凜は意図せず視界の端に映ってしまったその光景に頬を染める

夏凜「し、信用できないわよ。あんたのその言い方」

天乃「……………」

夏凜「……だからってわけじゃないけど」

天乃「?」

夏凜「今日はずっと、あんたの事監視してやるわ」

もう終わりも近い夕方

夕方が終われば夜

夜になれば、今日と言う日も終わる

にも拘らず、夏凜は照れくさそうにそう言った


√ 5月13日目 夜


コンマ判定表

01~10 兄
11~20 
21~30 変態

31~40 
41~50 
51~60 姉

61~70 
71~80 夏凜

81~90 
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月13日目 夜


天乃「さて……と」

そろそろ夏凜の部屋に行こうかとベッドから起き上がった瞬間

こんこんっとノックが聞こえて

入っても平気? と、姉の声が届く

天乃「少しなら」

「なら、少しだけね」

お風呂上がりの姉は寝間着に身を包み

隣に座るわね。と

天乃の隣に座り、身を寄せてきた

「あれからどう?」

天乃「どうって?」

「兄ちゃんのことよ。まだドキドキする?」

天乃「………………」

「そんなことないとは言われたけど。でも、やっぱり。貴女の事が心配なのよ」


ではここまでとさせて頂きます
明日もまた、可能であれば同じくらいの時間からの開始となると思います


夏凜に代わって大赦仮面(兄)が四六時中監視につきます


少ししたら再開する予定です


天乃「何でもないって言ったのに」

「貴女の言葉だもの。信じたい気持ちもある。けどね? それがもしも嘘だったらどうしようって不安もあるのよ」

天乃「………………」

「貴女の事を疑うなんて本当はしたくないんだけどね。こればかりは……見逃せなくて」

困っちゃった。と

苦笑する姉の表情にはどこか疲れが見え隠れする

朝に聞かされてからずっと

悩んで、考えて、

疑いたくはない。信じたい

そう思う心を抑えてまで真剣に悩んだのだろう

天乃「……何が心配なの?」

「貴女からあの人への好意もそうだけど、でもやっぱり一番は……貴女が他人を愛せなくなってしまっていること。かしらね」

そうは言うものの

それが2年前の事が原因であろうことは

姉は言わなくても、聞かなくても。解っていた


「私にとっては、もう2年。あるいは、いつの間にか2年」

でも

貴女にとってはきっと、まだたった2年間でしょう? と

姉は悲しげに問いて、首を振る

言いたいのはそれじゃない

聞きたいのはそれに対する答えでもない

「私にも親友はいる。大切な人がいる。その誰か一人でも失われたら……私もきっと。貴女みたいに誰も近づけたくなくなる」

天乃「失くしたことなんてないのに?」

「……今あるから明日ある。なんて、そんなのは何も知らないから言えるのよ」

そう言った姉は目を細めると

天乃の頭をそっと撫でて、微笑む

「なんてね。兄ちゃんの真似よ」

天乃「………………」



1、なにか、あったの?
2、じゃぁ、もしも私が死んだら。悲しむね
3、確かに誰も近づけたくないって思ってた……でも、今はより近くにいて欲しいと思うこともあるわ
4、そうね……確かに私は皆に離れていてほしい


↓2


天乃「何か、あったの?」

「え?」

天乃「お姉ちゃんがお兄ちゃんの真似するなんておかしいし」

いつも大嫌いだのなんだのと

姉は兄に対して冷たいし意地悪だ

だからといって仲が悪いとは言えないが

少なくとも、兄の真似をしたりはしないのだ

天乃「それに、なんか意味深だった」

「…………………」

天乃「まるで、なにかをなくしちゃった。みたいな感じ」

「……間違いじゃないのよね。改修中ということもあって、今、部屋で寝てても天井に星座がないのよ」

天乃「それだけの理由であんな切なそうな顔してたの?」

「私にとっては星を見ながら寝るというのは大事なことなのよ……」


伏し目がちに言って首を振る姉に対し

天乃は聞こえないようなため息をつく

基本的には天乃や兄とは違って

一日の中での冗談の割合は極端に少ない

解りやすく言い換えてみれば

天乃とは正反対に近いタイプである

その姉の冗談じみた仕草は

糊代からはみ出した糊のように

ほんの微細な物ではあってもベタベタと気に触れる

それはそう、つまり

姉の冗談は、嘘の塊なのだ

冗談は元々嘘だ

だが、姉の場合

嘘をつくと言う行為自体が嘘なのだと

嘘憑きの天乃は見抜いていた


だから今一度、問う

何かあったの? と

対する姉は一瞬だけ瞳を泳がせて

何もないわよ。と、嘘をつく

それを最後に2人の会話は途切れて

流れる沈黙に肌寒さを感じた天乃が身震いする

天乃「……本当に?」

「嘘じゃないわよ」

そう言いながら

姉の手は再び天乃の頭に触れて

なでなでと

何度も何度も動く

天乃「………ねぇ、お姉ちゃん」

「うん?」

天乃「夏凜から何か聞いたの?」


「ううん。なんにも」

天乃「お役目の事とか、何も聞いてないの?」

「うん。夏凜ちゃんからはなにも聞いてないわ」

そう答える姉の瞳にも、声にも

嘘も偽りもなくて

天乃はただの勘違いだったのかもしれない。と

深くため息をつく

天乃「そっか、ならいい」

「………………………」

知っている度合によっては

今の自分が置かれている状況なども話そうか。と

悩んでいた天乃は軽く苦笑して、今日は夏凜と寝るからと言って部屋を出ていく

その後姿を見送った姉はしばらくドアを見つめて

不意に……天乃ベッドに横になる

「今日は私がここで寝ちゃおうかな……」


√ 5月13日目 夜


天乃「敷布団とベッドなのね……」

夏凜「当たり前でしょ。流石に二人でベッドなんて無理よ」

天乃「それなりに大きいベッドだと思うんだけど……」

夏凜「嫌なら帰っても良いわよ。別に」

いつもは夏凜一人の客室だった部屋

箪笥やら、ベッドやら

色々な家具が置かれてはいるものの

ほぼすべてが、夏凜ではなく久遠家の所有物

夏凜「だから楽でいいわ。引っ越し」

天乃「……………」

夏凜「下手に長居させられなくてよかったわよ。ほんと。そしたら引っ越しも面倒だったわ」


ここから出ていかなければいけないと言うこと

それに対するせめてもの明るさを夏凜は引きずって、放り投げる

いろんな思いがある

天乃とは変にかかわりたくない

勇者であることにのみ心血を注ぐべきだという思い

天乃ともう少し関わっていたい

勇者であることも大事かもしれない

でも、これまで得られなかった人との関係

それを経験し、学んでいきたいという思い

本当にたくさんあって、交錯していて

でも、そんなものを踏み潰してしまう大赦からの指示

夏凜は思わず顔を顰めて、天乃を見る

夏凜「次の担当、苛めたりするんじゃないわよ?」



1、私の相手をできるのは夏凜……貴女だけよ
2、え? なに? 嫉妬してるの?
3、………? 私、誰かをいじめた記憶なんてないわ
4、沈黙
5、はいはい。解ってるわよ
6、別にお役目なくても……ここにいたっていいのよ?


↓2


天乃「別にお役目なくても……ここにいたっていいのよ?」

夏凜「……………」

絶対に言われることはないだろうと思っていた言葉

しないだろうと思っていた、天乃の惜しむような表情

培った感覚はそれを冗談だ。と

警告を発したりはしなかった

でも、だからこそ夏凜は返答に困って、目を逸らす

夏凜「あ、あんたと一緒なんてもうこりごりよ」

天乃「……そう」

夏凜「でも」

天乃「?」

夏凜「どちらかと言えば、充実してたわよ。襲来もなく、平穏無事で。ずっとこうなのも良いかもって、思いそうになるくらいには」

天乃「貴女……もしかして弄られるのが好きなの……?」

夏凜「違うわよ! っていうかあんたが引くな! 原因でしょうが!」

天乃「…………………」

怒鳴る夏凜そっちのけであたりを見回した天乃は

望みのものがなくて、ため息をつく

天乃「にぼ……小道具が不足しているわ」

夏凜「にぼしは道具じゃないわよ! 完全食なんだから!」

天乃「究極食である麻婆と混ぜれば究極完全食ね」

夏凜「それはただの兵器よ!」


ではここまでとさせて頂きます
明日は早い時間からの再開となるかもしれませんので
できる場合は事前に通知します


ピロリロリン
少ししたら始めます
とりあえずは13日目を終了させ
出来れば今日中に6月1日目に入りたいです


怒鳴るように言った夏凜は

その余韻を残す静けさを吸い込んで、大きくため息をつく

夏凜「こういうやり取りもそう易々とは出来なくなるわね。清々するわ」

天乃「……そうね。学校でもわざわざ私のクラスにまで出向かなくていいし」

夏凜「周りから変な目で見られることもこれで、なくなる」

天乃「……………………」

話が、続かなかった

一緒の家で過ごすのも

一緒に登校して

一緒に下校して

朝食も、昼食も、夕食も全部一緒にするのも

全部これで最後なのに

もう少し、何か続けられる言葉は互いにあるはずなのに

これが最後。これで終わり

そう思うと、どちらも中々切り出しにくかった


夏凜「……隣、座るわよ」

天乃「私のそばに来たら、何されるかわからないわよ?」

夏凜「そうね。じゃぁ、離れるわ」

そう言い、

夏凜は天乃からほんの少しだけ離れたものの

座ったのは、同じベッドの上だった

夏凜「私はあんたのことを初めて見た時、こんなやつがなんで勇者になれるんだって、思ったわ」

天乃「あら、酷い」

夏凜「酷いのはあんたよ。病院は抜け出す。自由奔放で手が付けられない。挙句の果てに神樹様も大赦も毛嫌いしてるんだから」

天乃「………………」

夏凜「短かい間だったから、あんたのことを理解できた。なんていうのはまずあり得ない。っていうより、どれだけ時間かけても理解は出来そうにない」

だって、あんた以前に

久遠家の人間自体が、ほとんど理解不能なんだから

言葉にしなかったそれに対して

夏凜は困ったように首を振って、ため息をつく

もう、完全に夏凜の癖だ


夏凜「けど……あんたも一応は勇者なんだと、認められる気がするわ」

天乃「まだ一度も戦ってないのに?」

夏凜「神樹様だって、戦ってるあんたたちを見て勇者に選んだわけじゃないでしょ」

天乃「まぁ……確かに。樹とか、何かと格闘するようなタイプには見えないし」

夏凜「……話戻すわよ?」

脱線することを悟った夏凜は

早々に口を挟み

天乃の言葉を制して、続ける

夏凜「あんたは人を馬鹿にしたりする嫌な奴よ」

天乃「えっ?」

夏凜「誰よりも自由で、自己中心的に見える最低な奴よ」

天乃「おかしくないかしら……」

夏凜「でも、本当のあんたは違う気がする」

天乃「………………」

夏凜「今の私にはそれを断言できるほど情報はないわ。けど、あんた。結構な寂しがり屋よね」


天乃「関係ないことだと思うけど……」

夏凜「関係あるわよ。あんた、学校だとほとんどの人間突っぱねてるらしいじゃない」

天乃「………………」

夏凜「なのに、あんたは私が拒絶したりするとこっちが悪いと思うほど暗くなる」

数日前

同居が決まって不機嫌になっている時

一緒に寝ると言われ、突き放したときとか

今日、一緒に寝ようと言い出した時とか

東郷の件とか……そう

夏凜「あんたは誰よりも人といるのが好き。普段、私をからかってるあんたの忌々しいほどの笑みはそう語ってる」

天乃「そんなことないわよ。私はただ――」

夏凜「私の反応が面白いって言いたいんでしょうけど、でも。あんた自身が他人に対してそういうことするのが好きじゃなきゃ、成立しない」

天乃「……………………」

夏凜「つまり、あんたは人となれあうのが好き。だから、独りで居るのは好きじゃない。実は寂しがりやな人間……でしょ?」



1、ダメね、全然だめだわ
2、貴女に何がわかるのよ
3、貴女がそう思うのなら、そうなんでしょうね
4、……だったら? そうだったら、なんだっていうのよ


↓2


天乃「……だったら? そうだったら、なんだっていうのよ」

夏凜「天乃……」

天乃「私が寂しがり屋だって言ったら、貴女は大赦に逆らって私のそばにいてくれるとでもいうわけ?」

夏凜「………………」

自分の推測に反論を述べることなく

認め、問い返してきた天乃を夏凜はじっと見つめて、首を振る

夏凜「それは出来ないわ」

天乃「でしょうね。貴女は大赦の――」

夏凜「逆らったら、私は学校には通えないかもしれない。一人暮らしだって、勇者でいることだって、全部取り上げられるかもしれない」

天乃「……でも、勇者に代えなんて」

夏凜「私はアンタ達みたいに純粋に選ばれた勇者じゃない。ただただ鍛錬して、大赦に認めて貰って、特別な端末を与えて貰って」

それで選んでもらえた

いうなれば、裏口入学みたいなものなのよ。と

夏凜は自分自身を嘲笑するような笑みを浮かべる

夏凜「だから、私はあんた達よりは簡単に切り捨てられると思うわ」


夏凜「だから悪いけど……逆らえない」

天乃「………………」

夏凜「勇者じゃなかったら……本当にもう二度と、あんたには会えなくなるし」

ふと、時間が止まったように音が途絶える

シーンと静まり返った部屋の中で

間違えた。と夏凜は照れくさそうに頬を掻く

夏凜「こ、これまで通り学校には通う。家は違うし護衛でもない。だからもう、毎日一緒に登下校もしないしご飯も食べない」

天乃「そっか」

夏凜「でも。あんたがどうしてもっていうなら……別に。また、学校での昼くらいなら付き合ってあげるわよ」

天乃「…………」

夏凜「な、なによ」

天乃「ううん……別に」

夏凜「な、なんなのよ!」

くすくすと

馬鹿にするように笑う天乃に対し

夏凜は強く、言い放つ

天乃「……………」

そんな夏凜を横目で見て

ゆっくりと、首を回して夏凜と見つめあう

天乃「……転居先決まったら教えてね」

夏凜「はぁ?」

天乃「前言った通り、ご飯。作ってあげるから」


夏凜「い、良いわよそんなの!」

天乃「でも、心配だし」

夏凜「心配なんて……」

天乃「煮干しやら、サプリやら。栄養あるからこそ取りすぎ厳禁な生活に、夏凜。戻りそうだし」

夏凜「っ……」

そんなことありえない。と

はっきりとは言えなくて、言葉に詰まる

天乃「私の手料理が食べたかったら、呼んでくれてもいいのよ?」

夏凜「あんたの母親の方を呼ぶわよ。呼ぶくらいなら」

天乃「中華料理なら、お母さんよりもうまい自信があるんだけど」

夏凜「あんたの言葉って、8割信用ならないから怖いのよ」

天乃「2割だけ?」

夏凜「割合を上げて欲しかったら、少しは自分の言動考えなさいよ」

残念そうな天乃に対してため息をついて、夏凜は苦笑する

夏凜「次の担当はそういうの。許せない人かもしれないし」

天乃「善処するわ」

夏凜「先行き不安ね、まったく」

一緒に寝る。と、集まった2人

けれど、中々部屋の電気は消えなかった

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流有(アプリ)
・  犬吠埼樹:交流有(アプリ)
・  結城友奈:交流有(アプリ)
・  東郷美森:交流有(アプリ、勘違い、受け入れ)
・  三好夏凜:交流有(監視終了、一緒に寝る、ここにいても、寂しがりや?)
・伊集院沙織:交流無()

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流無()
・     神樹:交流無()


5月の13日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 13(普通)
  犬吠埼樹との絆 17(中々良い)
  結城友奈との絆 20(中々良い)
  東郷三森との絆 14(普通)
  三好夏凜との絆 35(少し高い)
伊集院沙織との絆  55(かなり高い)
  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 30(少し高い)
      神樹との絆 1(絶望的に低い)

大赦・神樹による、久遠天乃の警戒レベル○△□%程度?(検閲済み)
犬吠埼風より、情報提供:大赦は久遠を味方だとは思っていない


このまま続行します


√ 5月14日目 朝


コンマ判定表

01~10 夏凜
11~20 
21~30 兄

31~40 
41~50 
51~60 樹海化

61~70 
71~80 
81~90 
91~00 ってくす


↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月14日目 朝


天乃「……朝よ、夏凜」

夏凜「起きてるわよ、あんたとは違うんだから」

天乃「私も起きてるわよ。いっつも」

夏凜「知ってるわよ」

寝落ちと言うものを経験した身体は少し気怠くて

また瞑ってしまいそうな目をこすり

夏凜は光差すカーテンを見つめる

どうやら、今日は晴れるらしい

自分たちを呼び出した大赦と神樹様

雨の中来させるのも可哀想だ。と

気をかけてくれたのなら

なかなか……酷い話だ

夏凜「……結局、持ってきた敷布団は無意味だったわね」

天乃「そうね」


夏凜「……お昼、会いに行ったらそこでお別れよ」

天乃「そっか」

夏凜「まぁ、明日からまた。学校で会うけど」

昨日も言ったように

平日は夏休みとかを除けば学校で

夏凜も天乃も学生で、同じ学校で

だから、会おうと思えばいつでも会える

なのに、

まだまだ、惜しさは抜けなかった

天乃「……とりあえず、部屋に戻るわね。お昼の準備もあるでしょうし」

夏凜「ええ」

軽く手を振って

天乃は夏凜の部屋から出ていく



1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織
3 、死神を呼ぶ
4、兄の所へ
5、4ちゃんねる
6、学校裏サイト
7、NARUKO(勇者部共用連絡用掲示板)
8、姉の所へ


↓2


459ちゃんねる

通称、4ちゃんねる

ちゃんねるとは言うが、別にテレビで見るものではなく

インターネット上の交流掲示板みたいなもので

その由来は旧世紀から引っ張ってこられたものらしいのだが

神世紀に切り替わった頃

全てを一新されたために、情報は一切ない

今もなお残る噂では

現在、神樹様に守られている地域は

ウイルスに汚染される前の日本

その中の四国という場所であるらしいことから

四国=459となっているとか、なっていないとか


天乃「………………」

4ちゃんねるの掲示板一覧全体を見ながら

天乃はため息をつく

見るのはいつ以来か

思い出すのは本当、2年前、銀を失った少し後だ

神樹と大赦に対する誹謗中傷を書き込んで

30分も経たずに即、閲覧さえ出来なくされて

それ以降は見ようとすらしていなかった

天乃「相変わらず……何も知らない、バカばっかり」

大赦について

神樹様について

どれもこれも

大赦に属する人間の自演かと思うほど

持ち上げられているものばかりだった


天乃「……神樹様、神樹様って」

教育自体が大赦に介入され

もはや洗脳ともいえるほど神樹様神樹様言わせ、思わせている

だから、仕方がないのかもしれないが

天乃はあまり……好かなかった

天乃「また、神樹とかに対する誹謗中傷でも書き込もうかしら」

やっても被害を被るのは兄くらいで

自分は全く関係ないからだ

そう決めてスクロールしていくと

一つ、何か嫌な予感のするスレが視界の端に映る

天乃「妹に結婚を申し込まれたんだが、どうしたらいいと思う……?」

いや、まさか。と

天乃は首を振ってスレを流した


1、大赦についてのスレ
2、神樹様についてのスレ
3、【最後は】年上のツンツンツンなロリ巨乳先輩と付き合いたいんだが【結婚】
4、妹に結婚を申し込まれたんだが、どうしたらいいと思う?
5、【みんなを】讃州中学勇者部! 活動80日目【お助け】



↓2


名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 神樹様って凄いよな。中まで神様がたっぷりなんだぜ

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 そりゃ、神様だし

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 でも最近怖いよな。事故とか連続してたし

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 2年前みたいなこと、起きないと良いけど…心配にはなるな

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 2年前なぁ……俺もいたな。あの時
 助けてくれた人達がいたんだけど、結局その人達だけが死んじゃったんだよな……

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 人助けて死ぬってなんかそれ…… 

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 神樹様だって人間すべてを助けられるわけじゃないだろ
 神様だから万能なんて言うのは人間が勝手に決めたことで
 実は、すべてにおいて万能ってわけじゃないのかもしれない

 だからって、今生きられてるのが神樹様のおかげだってことには変わりないけど


:このレスは検閲削除されました


名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 返そうと思ったら一瞬でレスが消えてた

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 まぁ、触れちゃいけないことに触れたんでしょ

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 2年前の……確か犬吠埼夫妻。だっけ

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 そうそう
 学校に同じ苗字の姉妹がいるんだよね
 あの二人の両親なんだろうなーって思うと
 ありがたいけど申し訳ない気持ちになる

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 神樹様にもだけど
 俺はあの人たちにも拝してるよ
 あの人たちがいなきゃ、きっと死んでた 

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 だから手を出しにくいんだよなー姉の方
 なんていうか、敬う路線に入っちゃってさ、なんか畏まっちゃうんだよ

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 神樹様に関係ない話は隣のスレへ

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 大赦乙

名前:大赦に変わって神樹様がお送りしています 投稿日:300/05/??

 大赦サイバー班、ここですっ!


天乃「……犬吠埼?」

知らないなどと恍けられるほど

知らない名前ではなく

すぐに、彼らの言う同じ苗字の姉妹が天乃の脳裏に浮かぶ

犬吠埼風と、犬吠埼樹

天乃「両親がいないっていうのは、知ってたけど……」

まさか2年前の事件でとは、思わなかった

銀たちが勇者で

死んでしまったりしたのもちょうど、2年前

確か月日も……

天乃「……やっぱり」

パパッと検索して、二年前の事件を調べると

それはやっぱり、

須美と園子と最後に分かれてから数日後のものだった


勇者としての戦い、その被害は現実世界に及ぶ

2年前の犬吠埼夫妻が亡くなった事件

2年前の須美、園子達勇者が満身創痍となった時期

天乃「……つまり」

夫妻が犠牲となった事件は

勇者の戦いによる被害である。と

天乃の思考はいたって、首を振る

それが解ったところで何にもならない

勇者として頑張った結果

仲良しな部長の両親を死なせる結果になった

そんなこと言えるわけがないし

そもそも、鷲尾須美はもういないのだから……と

天乃は出来上がった疑問をゴミ箱へと投げ込む

天乃「……検閲解除、お兄ちゃんなら出来そうだけど。まぁ、どうでも良いかな」

そろそろお昼だ


√ 5月14日目 昼


コンマ判定表

01~10 樹海化
11~20 
21~30 兄
31~40 
41~50 春信
51~60 
61~70 いつかの新人ちゃん

71~80 
81~90 
91~00 s


↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月14日目 昼


天乃「着てあげたわよ」

「では、車の方にお乗りください」

天乃「堂々とした誘拐ね……なにするの?」

「それはついてからお話します」

天乃「それで、私がついて行くと?」

「着いて着て頂かなければなりません」

天乃「……………」

まるで機械のような定型文

どういってもきっと

あらかじめ用意された言葉しか言うつもりはないのだろう

男性ではなく女性でありながら

淡々としていて、落ち着いた風貌

これはあの新人のようにはいかないか……と

天乃は小さく、ため息をついた


天乃「夏凜も一緒?」

「はい。万が一の事も考え、三好様にはご同行願います」

夏凜「私のお役目はもう終わりなんじゃなかったの?」

「それは決定事項です。ですが、現在はまだ三好様は久遠様の護衛――」

天乃「監視って言いなさいよ。護衛だなんて冗談にもならないわよ」

「……あくまで、護衛とさせて頂いております」

曲げることのない女性の物言い

天乃は困った表情で首を振り

夏凜の方へと目を向ける

夏凜「いや、こっち見られても」

天乃「はぁ………」

「よろしいでしょうか? 時間もあまり用意はされておりませんので、お乗りください」

天乃「はいはい……とりあえず、行くだけは行く。何かは知らないけど、やるやらないはそこで決めるわ」

「では、お乗りください」

相も変わらずな態度の使い

ため息すらも漏れない天乃は額に手を当て、かぶりを振る

天乃「行きましょ」

夏凜「ええ」

2人は車へと乗り

誘われるままに……ある場所へと向かった


最新設備の厳重な警備

かと思えば、自然の中

草木の瑞々しい匂い

滝の打つ音、流れる川のせせらぎ

耳を澄ませることなく聞こえてくるその豊かな曲に

天乃は少しばかり、顔を顰める

天乃「何なのよここ」

「……本来は、大赦の人間でも重要な役職の者にしか立ち入りの許されない、神聖な場所です」

天乃「……神樹でも、いるのかしら?」

「………………」

天乃「ふふっ、なるほどね」

「……久遠様にはまず、して頂かなければならないことがあります」

夏凜「……天乃はそういうの、絶対しないと思う」

誘導する大赦の人間が足を止め

夏凜と天乃も足を止めた先では、滝が流れ落ちていた


天乃「……………」

滝に打たれて身を清めろ

大赦が言いたいことを察した天乃は

自分の服装を見つめて

両の手を開いて苦笑する

天乃「私、私服なのだけど?」

「お洋服は脱いで頂きます」

天乃「……どこで?」

「こちらで、です」

女性が示す先は木の影でしかなく

更衣室でもなんでもない

大自然の中だった

夏凜「……私と女の人しかいないし」

天乃「貴女、やっぱりそっち側の人間なのね」

夏凜「身を清めたらあんたが真面目な人間になってくれそうな気がするのよ」

天乃「私が追われる側だからって……」



1、断る
2、受ける
3、夏凜も一緒ならいいわよ?


↓2


天乃「……解ったわよ。受けてあげる。見たら殺すわよ」

夏凜「入水するときは裸なんだけど?」

天乃「目を瞑ってなさい」

夏凜「嫌な気持ちは解るけど、私もお役目がある以上はあんたの事見てないわけにはいかないのよ」

天乃「便利なお役目で良かったわね」

吐き捨てるように言った天乃は

示された木の陰でさっさと服を脱ぎ、

滝によって波立ち続ける滝壺へと

ゆっくりと、足を入れる

天乃「っ………」

肌を突き刺すような冷たい水

それを耐え

股の付け根のあたりまで浸かり、天乃は女性へと目を向ける

「滝に打たれなければいけません」

天乃「進め、と?」

「滝に打たれてこそ、身は清められるのです」


天乃「ったく……」

夏凜「あんた、制服着てても解ったけど……」

天乃「それ以上は言わないで」

夏凜「東郷の方が大きいわよ」

天乃「あの子と比べられても困る」

夏凜のおそらくは慰めに

天乃は苦笑してゆっくりと降り注ぐ滝の中に

身体を忍ばせる

天乃「っ!」

夏凜「………………」

天乃「なんでまじまじと見てるのよ!」

夏凜「べ、別に、胸なんか」

天乃「夏凜のエッチ!」

夏凜「なっ……違うわよ!」

「……お静かになさってください、ここは神聖な場所です」

夏凜「すみません」


苦行ともいえるような滝行を終えた天乃は

夏凜を睨んで大きく鼻を鳴らし、顔を逸らす

天乃「えっち」

夏凜「うっさい」

天乃「お兄ちゃんの魂でも刷り込まれたのなら、滝に頭から突っ込んだ方が良いわよ」

夏凜「違うわよっ」

神樹様が近いと言うこともあって

大きく言えなかった夏凜は遠慮がちに言い放つ

そんな2人を背後に感じる大赦の女性は

木々の中に溶け込みながら

決して同化はせず

纏う荘厳な雰囲気をひしひしと感じさせ

圧倒的な存在感を見せる神樹様から少し離れたところで、足を止める

「久遠様、神樹様にお手を」

天乃「……え?」


「今回、ここに来て頂いたのは神樹様に触れて頂くためです」

天乃「……どうして?」

「お話しできません」

天乃「……触れない。と、言ったら?」

「その場合、久遠様に対する処遇が通達されます。現在はお話しできません」

天乃「夏凜、貴女は知ってる?」

夏凜「知ってるなら話してるわよ」

天乃「………………」

夏凜の表情からは嘘は感じられなくて

生真面目な大赦職員は、答えてくれそうもなくて

天乃は神樹様を見つめて、首を振る

天乃「……触れろ。か」




1、触れる
2、触れない



↓2


天乃「……お断りするわ」

はっきりと

天乃は神樹様を見つめて、答える

触れたことによって

何か嫌なことが起こりそうな気がした

だから天乃は振り返り

大赦の人間を見つめる

天乃「で、私の処遇は?」

「久遠様、本当によろしいのですね?」

天乃「ええ」

「……かしこまりました。では、久遠様にはこちらの端末をお返しいたします」

天乃「こちらのって……」

端末が入っているはずのポケットを叩き

何の感触もないことに目を見開く

天乃「私にあんなことさせたのは……そのためなのね」

「身を清めて頂きたかったのは事実です。ですが、久遠様の端末を回収すると言う理由もありました」


天乃「アドレスとかは?」

「後日、データを纏めて正式な端末を送付いたします。今お渡しした物には、以前回収した際の勇者に関係しない情報を移してあります」

天乃「……私に勇者を止めろと、言うのね」

「久遠様のお力は神樹様にも悪影響を及ぼす可能性があります。よっての判断となっております」

天乃「……だから、夏凜を監視からはずすのね」

神樹に触れ、認められたのなら

もう監視をする必要はないだろうし

神樹に触れなかったのなら

勇者としての力を奪うため、気にする必要はなくなる

夏凜「……天乃の力は今後の戦いにとって、重要な鍵になるって」

「しかし、久遠様は神樹様とは交流なされませんでした。ですから、仕方がないことです」

夏凜「仕方がないって……」

天乃「良いわよ」

夏凜「天乃!」

天乃「……戦って死ぬ可能性が無くなったって、だけだから」

「出口までご案内いたします」

夏凜「……………………」

黙って女性の後を追う天乃を夏凜は暫く見つめ

ちらっと神樹を一瞥し、2人の後を追った


ではここまでとさせて頂きます



死神「ソノテイドデ、クオンサンニアエナクナルト。オモッテルノ?」


では、少しだけですが再開しようかと思います


√ 5月14日目 夕


コンマ判定表

01~10 樹海化
11~20 風
21~30 兄
31~40 
41~50 春信
51~60 死神
61~70 夏凜
71~80 
81~90 勇者部
91~00 沙織

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月14日目 夕 自宅



夏凜と別れ、自宅へと帰ってきた天乃は

自室に戻るや否や、うつぶせにベッドへと倒れ込む

戦って死んだり

神樹のお役目の中で死ぬ。なんていう不名誉なことにはならなくなったっていうのは

確かに、嬉しいしありがたい

でも……

天乃「……また、静かになっちゃった」

死神がいなくなって

夏凜もいなくなって

勇者部はきっと、また会いに来るだろうけれど

でも。それは学校でだけ

あの子も……学校でだけ

寂しいわけじゃない

夏凜が言ったように、寂しがりやなんかではない。と

天乃は強く、枕を握りしめた


天乃「……また、戻ってきたりするのかしら」

この前の病院の時みたいに

ついつい名前を呼んだら姿を現して

端末を差し出して

天乃「……なんて」

自分で思って、嘲笑して

これではまるで

本当に寂しがりやじゃないか。と

天乃は首を振る

天乃「……はぁ」

死神「シアワセ、ニゲチャウヨ?」

天乃「……………」

死神「クオンサンハ、サビシガリヤ。ネ」

目の前でクルクルと周る、居ないはずの存在

唖然とそれを眺めていた天乃に対して

それは

死神は

赤い瞳に喜びを満ちさせて、呟く

死神「ワタシハクオンサンヲヒトリニハシナイヨ。ワタシハクオンサンノコト、ダイスキダカラ」


天乃「……貴方、また」

死神「タンマツハ、ナイヨ?」

天乃「どうして?」

死神「モッテイケナイヨウニナッテタ」

残念だと身振り手振りを見せる死神は

それでも。と

天乃の体に自分の体を摺り寄せる

死神「ワタシハクオンサンニアイニクル。タンマツガナクテモ、ワタシハクオンサンニアエル」

天乃「………………」

死神「タイシャニモ、シンジュニモ。ワタシハトメラレナイヨ」

天乃「自由なのね、貴方は」

死神「クオンサンノ、セイレイダカラ。ネ」



1、抱きしめる
2、ありがと。戻ってきてくれて
3、キスする
4、……どうなっても、知らないわよ?
5、それじゃぁ、勇者として戦うことは?



↓2


天乃「死神」

死神「?」

天乃「目……瞑って」

何が起こるのかも解らないのに

自分の言葉に従い

素直に瞳を閉じた死神を、天乃は両の手で優しく包む

温かい

柔らかく感じながら、固くもあって

綿菓子みたいに、ふわふわとした死神の小さな体

天乃はその頬に当たるであろう部分に、優しく、口づけをする

端末は持ってこなかった

だが、端末がなくても会いに来た

勇者ではなくなっても、会いに来てくれた

その死神へのご褒美として、

わざとらしくチュッっと音を鳴らして離れた天乃は

ほんのりと紅潮した頬を隠すことなく

照れた笑みを浮かべる

天乃「おかえり、死神」

少女の嬉しそうな表情を受ける死神は

唐突だった感触に――放心していた


死神「ク、クオンサンガキスシテクレタ!」

天乃「これで3回目よね……」

死神「アリガト!」

天乃「言いふらしたりしないでね? 精霊とキスしてるなんて、意味わかんないから」

死神「ヒミツ!」

気を取り戻した瞬間から元気いっぱいな死神を

困ったように見つめながらも

天乃は嬉しそうに苦笑する

天乃「はしゃぎすぎよ」

死神「ウレシイ」

天乃「だとしてもよ」

死神「マダノコッテル」

天乃「何が?」

死神「クオンサンノカンショク」


恥ずかしげもなく言い出した死神に言葉を失っていた天乃は

ハッと気づいたように瞬きをして、激しく首を振る

天乃「な、何言ってるのよ!」

死神「ヤワラカクテ、アタタカカッタ」

天乃「っ……感想言わないで!」

死神「シアワセ」

天乃「もうッ!」

ほんの少し怒った天乃は枕で死神を何度もたたく

けれど、叩き落されても

ベッドの上で跳ね返っても

死神は相も変わらない幸せそうな表情だった

天乃「死神の馬鹿、えっち、お兄ちゃん!」



1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織 、夏凜
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織 、夏凜
3、姉の所へ
4、兄の所へ
5、4ちゃんねる
6、学校裏サイト
7、死神と交流する



↓2


ではここまでとさせて頂きます

早朝あたりで
ステータス更新だけでもしようかと思います

http://i.imgur.com/lkTiyJ4.png


ステータス更新
赤色は死神による補正です

http://i.imgur.com/A5aCQlB.png

>>494修正


では、再開したいと思います


4ちゃんねると言うものがネット上にあるように

学校別の非公式的なサイトもまた

旧世紀の名残として、残っている

もっとも

大赦の教育が行き届いているこの時代

非公式的なサイトと言っても

各々が後ろめたいことなどを言い合うのではなく

クラスだけでなく、学年違い

もっと言えば教師なども交えた交流場所としての意味合いが強い

ただ、

それなりの理由があるからこそ

非公式であり

裏サイトとして、扱われているのだが


天乃が裏サイトの存在を知ったのは

ほんの数か月前

その時は名前を知ったと言うくらいで

まったく興味もなかった

4ちゃんねるに手を出さなければ

そんなものを思い出すこともなかったかもしれない

そんなものを覗いてみようとも思わなかったかもしれない

天乃「………………」

讃州中学の裏サイトと言う名の交流掲示板を開き

天乃は一覧を見ていく

恋愛相談

友達相談

行事相談

期間限定で提出物相談。なんていうものもある



1、恋愛相談
2、友達相談
3、行事相談
4、部活相談


↓2


天乃「行事相談……ちょっと覗いてみようかしら」

行事相談では主に一番近い行事についての議論などが行われる

それが体育祭や文化祭等

楽しむことが出来る物なら、掲示板の中も良い意味で賑わっている

が、テストが近い……といってもあと約1ヵ月ほどあるが

そういう状況だと、律儀にテストまでの日数をカウントダウンしたり

わざわざ秒数などに代えてあくまでまだ時間はあると逃避しようとする人

そういう人を前向きにさせようとする人などが多く

無関係と言っても良い天乃には

余り見ていて楽しいものではなかった

天乃「あっ……」

そんな中、

スクロールし、流し読みしていた天乃は

気になる一文をみつけ、小さく声を漏らした


名前:讃州中学 投稿日:300/05/??

 今回は例のあの人が復帰したとかで
 テストがだいぶ厳しくなるらしい
 なんでも、授業中どれだけ当ててもことごとく正解されてるとか

名前:讃州中学 投稿日:300/05/??

 何年生の話ですか?

名前:讃州中学 投稿日:300/05/??

 たぶん3年

名前:讃州中学 投稿日:300/05/??

 やった、関係ないです

名前:讃州中学 投稿日:300/05/??

 A・Kさんか……それで恋愛相談の方が跳ね上がってんのかな

名前:讃州中学 投稿日:300/05/??

 もはやテスト(行事)の代名詞A・Kさん
 頭良いなら勉強教えてください、うどん奢るから

名前:讃州中学 投稿日:300/05/??

 一応、A・Kさん女子だよ
 うどんで釣れるのは多分、勇者部の部長さんだけだと思う

名前:讃州中学 投稿日:300/05/??

 ↑匿名性の欠片もないよー


天乃「……風、貴女。良いように言われてるわよ?」

以前、犬吠埼家に行ったときの風を思い出して

天乃はくすくすと笑う

そういえば

友奈も帰りにうどんが食べれるとかなんとか言っていたし

風の誘い文句も、うどんを奢るとかいう話だった

天乃「風はこういう話、知ってるのかしら?」

知っていたら少しは控えてるか。と

天乃は自分の言葉を否定して、首を振る

天乃「それにしても、このA・Kと言うのも、匿名性の欠片もないわよね」



1、A・Kだけど、聞きたいことはある? と、書き込む
2、馬鹿なこと言ってないで勉強しなさい。と、書き込む
3、A・KさんじゃなくてM・Kさんで2年生だよ。と、書き込む
4、A・Kさんはそんな優しい人じゃないわ。と、書き込む
5、既読スルー

↓2


天乃は少し考えて

馬鹿なこと言ってないで勉強しなさい。と、書き込む

閲覧していたおそらくは生徒の閲覧者たちは

天乃の一文に「頑張る」と答える

中には嫌々とまではいかなくても

乗り気ではない生徒はいたかもしれない

けれど

誰一人として悪い言葉は呟かなかった

それはきっと

大赦による教育のたまものなのだろう

天乃「……みんな、神樹に染まってる」

染まりきれていないのは自分だけ

そんな気がした天乃は顔を顰めて、首を振る

染まる気はない

たとえどれほどに厚く白塗りされたとしても私は。と

天乃はなお続く掲示板の中の性格の良い生徒達のつぶやきから目を逸らした


ではここまでとさせて頂きます


交流選択肢に勉強会が追加されました

今日は無しで、明日。早めに再開しようかと思います
12時ごろを目安に、軽く前後するかと思います


では再開したいと思います


√ 5月14日目 夜


コンマ判定表

01~10 風
11~20 樹海化
21~30 夏凜
31~40 
41~50 東郷
51~60 
61~70 友奈
71~80 
81~90 兄
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月14日目 夜


天乃「……ふぅ」

お風呂に入った。髪も乾かした

後は寝るだけ

そんな一日の終わりを感じて

天乃は小さく、ため息をつく

朝だったら、壁を叩けば夏凜に五月蠅いと言われる

ドアを出て、隣の部屋に行けば夏凜がいた

でも、もういない

天乃「……夏凜、夕飯はしっかりと食べたのかしら?」

最悪、

出来合いのものを買うと言っていたのだから

そこまで心配することでもないのだろう

けれど

勇者として戦いに身を投じなければいけない身であるからこそ

万全を期すために、私生活はしっかりとしておいてほしいのだ



1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織 、夏凜
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織 、夏凜
3 、死神を呼ぶ
4、兄の所へ
5、寝る:判定でのイベント。発生イベントはコンマ、発生率は100%


↓2


コンマ判定表

01~10 樹海化
11~20 夏凜
21~30 兄
31~40 銀
41~50 友奈
51~60 神樹
61~70 沙織
71~80 東郷
81~90 風
91~00 死神

↓1のコンマ   空白はなにもなし


天乃が寝ようとしたところで

急に布団が膨らみ、死神が飛び出す

死神「クオンサン」

天乃「?」

死神「クオンサンニ、キキタイコト。アル」

天乃「私に?」

死神「クオンサンハ、タタカイタイ?」

天乃「バーテックスと?」

死神「……クオンサンハ、ドチラトモ。タタカエル」

多分、そうじゃない。と

死神は自分で言葉を否定すると

赤い瞳の輝きをわずかに失わせ、天乃を見つめる

死神「クオンサンハ、ドチラトモ。タタカウコトニナル」

天乃「どちらともって、なによ」

死神「シンジュト、バーテックス。クオンサンハモウ、ユウシャデハナイカラ」


死神「クオンサンハアクマデチュウリツダカラネ、ソウイウメンモアルヨ」

天乃「神樹を許さない私は神樹側からも敵と見られて、バーテックスからは元々敵視されてる。と言うわけね」

死神のただ、言うためだけの言葉の羅列を

自分なりに整理して、口に出す

死神は「ウン」と、小さく頷く

天乃「……でも、私はどうやって戦うのよ。勇者のシステムは、手元にはないわ」

死神「クオンサンガ、タタカイタイノナラ。ワタシ。ガンバル」

天乃「頑張るって……」

死神「ワタシハシニガミダカラネ。ナセバタイテイ、ナントカナルヨ」

天乃「………………」

瞳だけでにっこりと笑う死神を見つめ、天乃は瞳を閉じる

勇者システムは神樹によるものであり、確かに神様からのもので

死神もまた、確かに神と言う名を与えられた存在ではある。が……



1、変身できるのか、試して見ましょうか
2、……なんで、そんなことを?
3、貴方一体、なんなのよ
4、一体どうやって、神樹から切り離された私に神樹による勇者システムを与えると言うの?


↓2


天乃「変身できるのか、試してみましょうか」

死神「……………」

天乃「出来ないだなんて、今更言わせないわよ?」

死神「クオンサンハガンバッタカラ。ダイジョウブ」

天乃「……待って、貴方一体何を」

使っているのを見たことはなく

ただの張りぼて、あるいはファッションの一環程度に思っていた鎌

何に使うのかも解らなかったそれを、死神は自分の背後まで引き絞って構える

死神「ウゴカナイデ、ネ?」

天乃「ッ!」

動かないでと告げた瞬間

ギラリと怪しく輝く一閃が、天乃の体を挟んで、走る

天乃「っ…………」

何かが通過した感覚はあった

何かが切り取られたような、変な違和感もあった

だけれど、天乃の体には異常も何もなかった


天乃「斬れては……ない」

右手で切られた部分を触れてみても

ズルズルと上下に分かれて滑り落ちることも

切れ目に指が抉り込むようなこともない

ただの冗談だった

そう思って死神を握りつぶそうと手を出した途端

内側からじんわりと、何かが広がっていくのを感じ取った

内臓から血があふれ出しているのかもしれない

そう思うほどにそれは熱い

けれど、決して痛みなんてなく

困惑する天乃を見つめる死神は、赤い瞳を輝かせる

死神「シンジュカラ、ウバッチャッタ」

天乃「え――」

ドンっと強い衝撃が響いてきて、言葉が止まる

今までは前触れのように警報が鳴り響いたこれは、そう

天乃「樹海化ッ!?」

すぐに気づいた天乃は

迫りくる眩い光に備えて、目を閉じた


天乃「………………」

目を開いたときにはすでに、周りの景色は私室ではなく

もう見ないと思っていた樹海の木々に囲まれていた

いつもの癖で端末をタップ

マップを表示しようとして

そんなアプリは端末には入っていないことを思い出して、首を振る

これでは敵の数も、位置も

味方の位置も何もわからない

天乃「死神――っ?」

死神なら解るかもしれない。と

探すために視線を動かした先に見えた服装

天乃はそこで止まって、目を見開く

天乃「なに……これ」

自分の服装は寝間着ではなく

それでいて今までの衣装よりもより禍々しく、黒く染まっていたのだ


↓1 回避判定  01~30 以外で回避   15~20でカウンター


神樹の力を借りていないから?

死神の力を用いたから?

思い当たる節はいくつもあった

けれど、彼らは

いや、正確に言えば、彼女たちは

そんなことを考える猶予も与えることなく

天乃の前に姿を現した

友奈「うおぉぉぉぉぉっ!」

天乃「友奈ッ!?」

爆発的なスピードで突進してくる何かを

天乃はすぐに友奈だと見抜き

見抜いてしまったからこそ、

不意に訪れた勇者の襲撃に動きを鈍らせ、躱しきれなかった

天乃「ッ!?」

天乃の十字に組んだ腕に友奈の拳がぶつかり、

お互いを認め合って、友奈が目を見開き、振りぬこうとしていた拳を慌ててひっこめた

友奈「く、久遠先輩っ!?」


友奈「ど、どうして久遠先輩がここに……?」

天乃「貴女こそ、どうして私に攻撃なんて」

友奈「久遠先輩だって解ってたら攻撃なんてしなかっ……て、ああああああッ!」

天乃「なっ」

急に大声を上げた友奈は

大きく手を振り「攻撃しちゃダメです!」と、叫び

次の瞬間には

恐らく一番早いのだろう、赤い光が2人のそばに降り立つ

夏凜「一体どういうつもりよ、友――……ぁ、あんた!」

天乃「ご機嫌麗しゅうございます」

夏凜「気持ち悪い喋り方すんな! っていうか、なんでここにいんのよ! アンノウンはどこよ!」

天乃「アンノウン?」

夏凜「マップだと詳細不明って表示が……」

天乃「?」

自分の端末を操作した夏凜は

天乃をちらっと見て、顔を顰める

夏凜「……これ、まさかあんたのことなの?」

http://i.imgur.com/3Dfbzdy.png


夏凜から端末を受け取り

懐かしいマップを確認する

勇者部と夏凜が一つのチームとして扱われており

その中にはバーテックスの名前はなく

勇者部以外では不明。という表示が一つだけ存在していた

夏凜「どう見ても、あんたのことよ」

天乃「………………」

風「友奈ー、夏凜ーっどうしたの?」

友奈「ふ、風先輩! あの、不明がその、なんていうか」

風「?」

天乃「この詳細不明は私だったってことよ」

風「久遠……?」

どうしてここにいるのか。と

言おうとしながらも飲み込んだ風は、首を振る

風「変身、どうやってしたの?」


風「久遠の端末は大赦に回収されたって、夏凜から聞いたわ」

天乃「イエス」

風「でも、久遠はここにいる。しかも……変身して」

天乃「イエス」

風「どうやって?」

天乃「気になるの?」

夏凜「当たり前でしょ! あんた、これがどういうことだか解ってるの?」

天乃「どういうこと?」

東郷「なれないはずの久遠先輩が変身して、神樹様は詳細不明としています……まるで、ウイルスのようだとは、思いませんか?」

天乃「ウイルスのせいで神樹がバグを起こしたってこと? 万能な神様も聞いてあきれるわね」

神妙な面持ちの勇者部を差し置いて

天乃は独り楽しげにクスクスと笑う


1、死神が私に力を貸してくれたのよ
2、で、どうする? 戻るには私を撃退しなきゃ
3、じゃぁ、実験も済んだし。帰るわね
4、もしかしたら、夏凜が言ったように。私はバーテックス側が生み出した人型なのかもね
5、私も良く判らないわ


↓2


天乃「もしかしたら、夏凜が言ったように。私はバーテックス側が生み出した人型なのかもね」

風「…………………」

東郷「………………」

天乃「なーんて、ね。冗談よ」

呆然とする勇者部の面々を見つめた天乃は

おもむろに笑みを浮かべて、そう呟く

夏凜「あたりまえよ」

天乃「え?」

夏凜「私も冗談で言っただけ……あんたが笑うと思ったから。でも、笑えなかった」

天乃「…………………」

夏凜「あんたがバーテックス側の人間なんて、私は思ってない」

樹「そ、そうですよ久遠先輩! 久遠先輩はすっごく優しくて良い人です!」

友奈「そうですよ、久遠先輩はちゃんとした、私達と同じ人です」

本気で、真面目な各々の言葉

天乃の思っていた以上に、それは心へと纏わりついていた


天乃「じゃぁ、神樹は人間を理解できてないってことかしら?」

風「神様だし……ありえなくはない……?」

小さく唸りながら

そう答える風を一瞥して、天乃は東郷を見つめる

愛国心が強い東郷は

その国の守護者たりえる神樹様への呼び捨てや

そういう敬いのない言動には批判的だと、思ったからだ

けれど

東郷「人が神様を理解できないように、神様である神樹様もまた……と、言うのはありえる話かもしれません」

東郷は以外にも同意して

すぐに「ですが」と、続ける

東郷「だからといって、久遠先輩が変身することが出来た答えにはなりえません」

天乃「……やっぱり、戻しちゃう?」

東郷「はい」


なぜ変身できたかと言う話題から逸らそうとした

けれど、東郷によって引き戻されて

天乃は困ったように笑う

天乃「なんで変身できたか……ね」

夏凜「どうせ解ってないんでしょ

天乃「………………」

夏凜「適当なこと言うくらいなら、言わなくていいわよ」

面倒なことになるだけだから。と

夏凜は面倒くさそうにため息をつく

話が一時的に収束し

全員が黙り込んだ沈黙の中で

音もなく、死神が姿を現した

天乃「どうかしたの?」

死神「…………………」


コンマ判定表

01~10 風
11~20 樹
21~30 夏凜
31~40 友奈
41~50 東郷
51~60 樹
61~70 友奈
71~80 風
81~90 東郷
91~00 夏凜

↓1のコンマ   空白はなにもなし


死神は天乃の問いに答えることなく

天乃に行ったように、鎌を振りかぶる

風「樹!」

樹「おね――」

嫌な予感を感じ、風が樹の名前を呼ぶ

でも、それがいけなかったのだろう

樹の視線は死神から姉へと動き

注意もまた、逸れて

ブンっと風を切る音がその速さを響かせ、走った鎌は樹の小さな体を切り裂く

東郷「!」

友奈「樹ちゃん!」

天乃「貴方、なんてこと!」

死神「クオンサンノタメニ、ヒツヨウナコト」

樹の変身が解けて、

身体は受け身もとることなく、倒れ込んだ


風「樹……? ねぇ、樹……起きなさい!」

樹「おね……え、ちゃん」

風「樹!」

抱きかかえられた樹は

泣き出しそうな風に対して、笑みを浮かべる

樹「大丈夫だよ……全然、なんともない」

樹は自分の手で体に触れて

ね? と、ただ変身が解けてしまっただけであることを示す

天乃「……本当に平気なの?」

樹「はい……変身も、またできると思います」

自分の端末を操作し、

いつものような流れを繰り返して、樹は再び勇者の衣装に身を包む

夏凜「……異常、なし?」

東郷「樹ちゃん、本当に大丈夫?」

樹「痛くもなくて……なんともないみたいです」

樹が軽く体を動かしてもなんともなく

何がしたかったのか。と夏凜達が見つめる中で

風だけはわずかな怒りを携えて、死神を見つめた


風「樹に何もないのよね? 本当に」

天乃「私に聞かれても……ないの?」

死神「イツキハユウシャ。ダカラ、タオレタダケ。モンダイナイ」

天乃「…………」

平静を保つ死神から樹へと視線を移した天乃は

見る限りでは

樹には何も異常が起きていないことを認めて、首を振る

天乃「樹にも異常はないみたいだし」

風「………………」

天乃「……本当に、大丈夫なんでしょうね?」

死神「クオンサンニハ、ウソツカナイ」

天乃「……そう」

真剣な死神の言葉を受けて

天乃は風を見つめた


1、何かあったら、責任は取るわ
2、悪かったわ。ちゃんと、しつけておく
3、じゃぁね。このままいたら、私達また余計なことになりそうだし
4、大赦への報告は控えてくれると、助かるわ


↓2


天乃「何かあったら責任は取るわ」

風「……久遠」

天乃「この子は私の精霊だわ。だから、責任は私が取る」

冗談で濁したり

笑ってごまかしたりすることのない天乃

あまりなじみのないその姿を呆然と見る風に並んで、

夏凜は「らしいわよ」と、口を開く

夏凜「天乃は99%ふざけてるけど、残り1%の本気は絶対よ」

天乃「せめて95%にしてくれない?」

夏凜「してほしいなら態度を改めなさいよ」

天乃「前金で」

夏凜「無いわよ」

バッサリと切り離す夏凜に対して冷たいわね。と、天乃は返す

そんな二人を見る風は

抱いた不安を完全には解消しきれないものの

風「解った。気になることがあったら連絡する」

そう、答えた


東郷「……しかし、いつまでこのままなのでしょうか?」

天乃「貴女達か、私が死ぬまで?」

友奈「久遠先輩と戦うなんてできません!」

天乃「真っ先に殴りに来たくせに」

友奈「ぁ、あれはそのぉ……」

天乃「ふふっ、冗談よ」

困り切ってあわあわとする友奈の頭をポンポンッと叩いて

天乃は嬉しそうな笑みを浮かべる

天乃「死神。どうにかして戻れない?」

死神「……ガンバッタホウガイイ?」

天乃「このままじゃ、樹海で生きていくことになる」

死神「ダメ?」

天乃「もう一緒に寝れなくなるわよ?」


あるのかどうか定かではないが

死神を人間の顔でみて

耳があるであろう位置に口を近づけた天乃は

天乃「布団の中で、丸まって、ぎゅーって。してあげられなくなるわよ?」

死神にだけしか聞こえないように小さく呟く

何を話しているのかと

勇者部の面々が気にする中で

死神は天乃の方へと振り返って、くるりと回る

死神「ガンバル」

天乃「ええ、頑張って」

現金な自分の精霊を微笑ましく眺めながら

天乃は、くすっと笑う

夏凜「あんた、一体何をする気?」

天乃「帰るのよ。私がいたら、いつまで経っても。このままだろうし」


どうやって帰るのかは死神任せ

どこに帰るのかも、死神任せ

全部死神任せで、天乃は対帰する

何か変な指示を出すよりは確実に戻れると思ったからだ

死神の力は、天乃にもまだまだ未知数

解っていることと言えば

神様すらも殺せるかもしれないほど、強大な力である。と言うこと

そして、樹海から移動することもできるということ

それは死神自身が、言っていたことだった

死神「クオンサンノタメニ、ガンバル」

言うや否や鎌を握りしめた死神は

天乃だけを包むように鎌を振り回して、空気を、空間を、切り裂く

それは樹海が神樹様であり、

神様の力によってできているからこその、技

夏凜「あ、天乃!?」

黒い霧にまかれるようにして見えなくなった天乃は

次の瞬間には、その場から姿を消していた

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流有(樹、襲来)
・  犬吠埼樹:交流有(襲来、攻撃)
・  結城友奈:交流有(襲来)
・  東郷美森:交流有(襲来)
・  三好夏凜:交流有(拒否、襲来)
・伊集院沙織:交流無()

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流有(変身)
・     神樹:交流有(接触拒否、襲来)


5月の14日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 15(普通)
  犬吠埼樹との絆 17(中々良い)
  結城友奈との絆 20(中々良い)
  東郷三森との絆 14(普通)
  三好夏凜との絆 36(少し高い)
伊集院沙織との絆 55(かなり高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 31(少し高い)
      神樹との絆 -1(絶望的に低い)

大赦・神樹による、久遠天乃の警戒レベル○△□%程度?(検閲済み)
久遠天乃より、情報入手:樹海化し、撃退命令が下るレベル
犬吠埼風より、情報提供:大赦は久遠を味方だとは思っていない


ではこのまま続行しようかと思います


√ 6月1日目 朝


コンマ判定表

01~10 風
11~20 
21~30 友奈
31~40 
41~50 夏凜
51~60 
61~70 沙織
71~80 
81~90 勇者部
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月1日目 朝


先月、変身して以降

天乃は死神の力を使っての変身は控えていた

と言っても、バーテックスの襲来すらなかったため

変身する理由がなかった。と言うのが大きいのかもしれないが

しかし、あの一度の変身によるエラーに似た緊急事態は

大赦の中でも問題視されたのだろう

アレ以降、天乃にはプライベートはないと言っても過言ではなかった

天乃「……車で登校だなんて、私ってお金持ちよね」

「……………………………」

天乃「………………………」

「……………………………」

天乃「で、今日の私の端末担当は誰なの?」

「東郷様です」

天乃「そっ。まぁ……使わないし、別に誰でもいいけど」


あの日の翌日

天乃の元に訪れた大赦によって再び端末は没収され、

天乃には端末を与えることが禁止された

本来なら両親や兄、姉が大反対をするものなのだが

神樹様への誹謗中傷が原因と言われれば

大人しく身を引くしかなかった

変に逆らえば、面倒なことになるのが目に見えていたからだ

もちろん

身を引くのと、納得するのは別の話であるが

「久遠様、学校に着きました。放課後は勇者部の皆様とともにお待ちください」

天乃「……ねぇ、一つ聞きたいのだけど」

「はい」

天乃「備品管理からの異動、私のせい?」

「遅刻します」

天乃「はいはい」

つまらない回答を返してくる女性にため息をついて

天乃は学校へと、向かった


すみません、休憩入れます
19時か19時半には再開する予定ですが
20時になる可能性もあります


沙織「久遠さん、おはよう」

天乃「おはよう」

沙織「今日も車だったけど……やっぱり、身体の調子悪いの?」

天乃「違うわよ。過保護な誰かさんが車で送るって聞いてくれないのよ」

沙織「そっか……行くのも帰るのも車だし、確かに過保護だね」

くすくすと笑う沙織を一瞥し

天乃は冗談じゃない。と、ため息をつく

プライベートでさえ自由ではないのだから

天乃からしてみれば精神的凄いストレスだった

大赦のこの監視に

天乃を精神的に追い詰めるという裏があるのであれば

間違いなく、大成功だと言えるだろう



1、ねぇ、今日。お昼に抜け出さない?
2、テストが近いけど、勉強してる?
3、貴女、私の身代わりとかやってみない?
4、ふて寝する



↓2


天乃「テストが近いけど、勉強してる?」

沙織「テスト……う、うん。授業受けてるから」

天乃「授業以外でって話に決まってるでしょ」

この程度なら

授業をしっかりと受けていれば

8割は取れてもおかしくないだろうけど……

そう思いながら、ちらっと沙織のノート見た天乃は

取れて5割だと、直感で判断した

天乃「勉強が嫌なら、せめてノートくらい纏めたら?」

沙織「嫌ってわけじゃないんだよ? でも、なんていうか……やれないんだよね」

天乃「………………」

沙織「そんな呆れた目で見ないでよ」

照れ笑いしながら、パタパタと手を振る沙織を見つめる天乃は

やっぱり赤点かもしれない。と

ついさっきの自分の言葉を覆して、苦笑した


沙織「馬鹿にしてる?」

天乃「してないわよ」

沙織「笑ったのに?」

天乃「赤点取るんだろうなって思っただけよ。気にしないで」

ふふっと笑う天乃を訝しげに眺めていた沙織は

ハッと気づいたように目を見開いて、首を振る

沙織「あ、赤点なんて取らないよっ」

天乃「どうかしらね、貴女の今のノート見る限りでは、50点が最高点じゃないの?」

沙織「そんなひどい?」

天乃「全部まっ黒じゃない。先生が色使ったのは……まぁ、下線は引いてるみたいだけど」

沙織「だって色ペンと取り換えてるうちに先に進んじゃうんだもん」

天乃「そのあと時間取るじゃない」

沙織「頭の整理で手いっぱいだよ」

天乃「……まぁ、頑張りなさい」

沙織「っ、そ、そんなこと言わないで助けてよ」



1、甘えないの。自力で頑張りなさい。と、言いながらノートを差し出す
2、なら、勉強会でもする?
3、はいはい。甘えないの
4、ふふっ、気が向いたらね


↓2


天乃「ふふっ、気が向いたらね」

沙織「もうっ、久遠さんの意地悪」

天乃「あら、今更気づいたの?」

沙織「ずっと知ってるよっ」

ちょっとだけ怒ったように言った沙織は

出来るだけ自分で頑張るもんっと

自分の真黒なノートと向かい合う

天乃「頑張りなさい」

沙織「話しかけないで、覚えた単語が抜けちゃう」

天乃「解った」

真剣なクラスメイトを最後に一目見て

天乃はくすっと微笑んだ


√ 6月1日目 昼


コンマ判定表

01~10 東郷
11~20 沙織
21~30 夏凜
31~40 
41~50 風
51~60 
61~70 勇者部
71~80 バーテックス
81~90 友奈
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月1日目 昼


夏凜「天乃、着てあげたわよ」

天乃「出前は頼んでないので結構です」

夏凜「出前じゃないわよ」

天乃「え……? 今、煮干しの出前って」

夏凜「誰も言ってない」

大きくため息をついた夏凜は

ヤレヤレと頭を振り、沙織の方を見つめる

沙織「久遠さんと付き合い慣れてるね」

夏凜「こんなのと一緒にいたら嫌でも慣れるわよ」

天乃「こんなのはないでしょ。こんなの。は」

夏凜「それの方がよかったかしら?」

天乃「言ってくれるじゃない」

夏凜「今まで、あんたにさんざん言われた仕返しよ」


なによ。なんなのよ。と

いがみ合う二人は

唐突にぶつかり合いを中断して、ため息をつく

天乃「それで? 何の用事なの?」

夏凜「あんたが一人で寂しいんじゃないのかと思っただけよ」

天乃「私の状況知ってるなら、むしろ一人の方が良いと思わない?」

夏凜「…………………」

天乃「私の事心配するあまり、考え着かなかったのね。優しい夏凜ちゃん」

夏凜「違うわよ!」

天乃「ふふっ」

夏凜「笑うなっ!」

頬を紅潮させる夏凜の言葉は

どれだけきついものだとしても

照れ隠しのようにしか見えなくて

周りのクラスメイトは照れ隠しだと、苦笑し

沙織は「まだまだだね」と、微笑んだ



1、夏凜と勇者部部室へ
2、夏凜と屋上へ
3、夏凜、私は大丈夫よ
4、沙織、夏凜と勇者部部室へ
5、沙織、夏凜と屋上へ
6、ありがと、夏凜


↓2


天乃「ねぇ、3人で勇者部の部室行きましょ」

夏凜「はぁ?」

沙織「行っていいの?」

夏凜「どうかしらね」

勇者部部室については

一応、鍵は掛かっているのだが

保留部員あるいは幽霊部員である天乃には

予備の鍵が渡されているのだ

というのも、天乃が放課後

勇者部と一緒にいなければいけなくなり、

部室が開いていないなど言い訳を使われないように

風がカギを渡したのである

天乃「鍵がある。あとは行くだけよ」

沙織「行きたい」

夏凜「……風に文句言われても知らないわよ?」

天乃「渡した風が悪いのよ」

にやりと笑った天乃を見た夏凜は

また深々と、ため息をついた


沙織「これが勇者部の部室なんだね」

夏凜「そうよ。でも、パソコンにだけは触らない方が良いわ。はりつけにされる」

天乃「はりつけって……」

夏凜「東郷は多分、本気よ」

天乃「……秘蔵ファイルとか、見たくなるわね」

夏凜「絶対に触らないで」

天乃「振り? 振りなのね?」

夏凜「止めなさいよッ!」

そっとパソコンに触れようとした天乃の手を掴み

夏凜は強く言い放つ

夏凜「一々面倒くさくなること済んじゃないわよ。あんたは、大人しくしてて」

天乃「…………………」

夏凜「……ただでさえ、あんたは。もう、ただの人間とは、思って貰えないんだから」



1、貴女達にも?
2、……解った
3、貴女は大赦側の人間ってことね
4、今はあの子がいるわ。そういうのは無しにして
5、……貴女まで、そういうことを言うのね



↓2


天乃「貴女は大赦側の人間ってことね」

夏凜「……中立よ」

天乃「中立?」

夏凜「大赦を全面的に支持していいのかどうか、判らないのよ」

天乃の腕を放した夏凜は

困ったようにかぶりを振って、天乃を見つめる

その瞳には迷いがあって、戸惑いがあって

夏凜の中立だという言葉が事実であることを、裏付ける

夏凜「……あんたといたせいよ」

天乃「私と?」

夏凜「あんたのこと、大赦は……あまり良い扱いしないから」

天乃「私の味方で居てくれるの?」

夏凜「っ、ば、馬鹿じゃないの!? そう思いたければ勝手に思ってればいいじゃないっ」

天乃の伺い見るような姿勢に

夏凜は顔を逸らして、そう言い捨てた


√ 6月1日目 夕


コンマ判定表

01~10 友奈
11~20 風
21~30 
31~40 夏凜
41~50 ばーてっくす
51~60 樹
61~70 
71~80 沙織
81~90 兄
91~00 東郷

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月1日目 夕


天乃「……まっすぐ家に帰るなら」

「…………………」

天乃「それなら、送り迎えは勇者部でもいいじゃない」

「それは出来ません。路上では、逃げ道がたくさんありますので」

天乃「貴女達は私を何だと思ってるのよ」

「……………………」

黙り込む女性を横目で見る天乃は

クスクスと笑ったかと思えば

大きく、ため息をつく

天乃「言わないことが真面目だとでも教わった?」

「……はい?」

天乃「一つだけ教えてあげる。問いへの沈黙は肯定あるいは、答えられない」

「仰っている意味が解りません」

天乃「貴女が今黙ったことで、私は一つ分かった」

「え?」

天乃「私は貴女達にとって忌むべき存在だってことを……ね」


「久遠様、それは違います」

天乃「ならどうして、貴女は。人だと言わなかったの?」

「……それは」

天乃「別に良いわよ。組織の人間なんだから」

悟ったように言って

窓の外を眺める少女を、女性はじっと見つめて俯き

不意に、口を開く

「では久遠様。言わせていただきます」

天乃「聞かない」

「聞いてください」

天乃「なにを?」

「私は、久遠様を悪戯っ子の悪魔だと、思っています」

天乃「……大きく出たわね」

「当たり前です。端末は盗む、頼んだのに貸してもくれない……しかも、そこで会話出来た結果が、これです」

天乃「………………」

「私は久遠様への供物ですよ。言い換えれば、玩具です……つまりですね。私も、人だとは思われていないんですよ」


ではここまでとさせて頂きます

コンマで出ない場合は
6月5日目の夕方にバーテックスとの戦闘が強制的に割り込む予定です
アニメでは夏凜の初登場したあたりですね


ピロリロリン
少しだけになるとは思いますが
再開しようかと思います。大体10分後


「久遠様を鎮める為、私は久遠様に付き合い続けなければいけません」

天乃「なんだか、凄く嫌々に聞こえるのだけど?」

「喜んで久遠様に付き合う者など、大赦にはおりません」

天乃「……強気ね」

「大赦に私に関しての文句はいくらでもどうぞ。どうせ、私が外されることはありません」

天乃「私が不満を持つことを黙認するってわけ?」

「誰がやったって、結果は変わりませんから」

景色が逃げるように去っていく

そんな窓の外から女性へと、天乃が視線を移すと

彼女と目が合って、黙り込む

「久遠様は山の天気よりも変わりやすく、自然薯よりも扱い難い」

天乃「酷いたとえだわ」

「では。こういたしましょう。神様のように、理解しがたい」


「これなら、ご満足いただけますか?」

天乃「仮にも神樹信仰の大赦の人間がそんなこと言っても良いわけ?」

「久遠様のご機嫌を取るためですので」

にっこりと嫌味を呟く女性を見つめていた天乃は

不意にため息をついて女性から視線をずらす

天乃「貴女、私の事嫌いでしょ」

「大好きです」

天乃「本当は?」

「大嫌いです」

天乃「正直者ね」

「嘘つく意味もありませんからね」

クスクスと笑う女性の表情には疲れが浮き出てきていた



1、まぁ、何にしても。よろしく頼むわよ?
2、私は……好きよ
3、私も大嫌いよ
4、家、寄っていく?


↓2


天乃「私も大嫌いよ」

「……存じてます」

天乃「そう。それなら良いけれど」

一体何が良いのか

天乃自身にもそれは解らなくて

でも、言った言葉を取り消すような関係でもなくて

2人はそれぞれ別の方向を見つめて、沈黙を保つ

これからも付き合っていかなければいけない

ずっと、無期限で

それを両人ともわかっているはずなのに

いや、解っているからこそ

互いに受け入れたくはないのかもしれない

「久遠様、ご自宅です」

天乃「………………」

礼を言われる筋合いもないことは百も承知だった

けれど、嫌味も何もなく、無言のままに車を降りていく少女を見送る女性は

相手が家の中に消えるや否や、ため息をつく

そこに含まれた感情は、誰にも伝わることはなかった


1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織、新人ちゃん
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織 、新人ちゃん
3、姉の所へ
4、死神を呼ぶ
5、兄の所へ
6、4ちゃんねる
7、学校裏サイト
8、寝る:イベント率100%でのコンマ判定


↓2


√6月 1日目 自宅夕方


天乃「出ておいで」

死神「ハーイ」

天乃「……異常はなさそうね」

死神の体を目視で検査し

次に、優しく包み込むように身体に触れて

そっと撫でる

死神「クスグッタイ」

天乃「我慢しなさい」

見た目でも、触った感じ的にも

今までとは何ら変わりない死神

検査をするのはそう

あの日、死神が樹を襲ってからの習慣になっていた


当然のごとく、大赦に頼まれたわけではなく

天乃自身が、そうするように決めたのである

死神の行動は実に不可解で、理解がしがたい

それら全て自分の為にやっていることだと言われても

正直なところ、天乃は不安を抱かずにはいられないのだ

樹にも異常はない。との話だが、

本当に何の異常もないのかは解らない

天乃「……樹から神樹の力を奪ったって貴方は言ったわ」

死神「ウン」

天乃「でも、樹は勇者になることは出来る」

死神「ウン」

天乃「蛇口から流れる水を切り裂いても一時的に途絶えるだけ……それと同じような物なの?」


死神「コップノナカノミズヲノンデモ、コップニソソグコトハデキル」

天乃「……つまり?」

死神「ワタシハミズヲノンダダケ。コップニキズハ、ツケテナイ」

コップとはつまり、入れ物であり

それはおそらく樹をさしてる

そして水は……神樹の力?

考えながらに首を傾げた天乃は

小さく唸って頭を振る

天乃「じゃぁなんで、あの時樹は倒れ込んだのよ」

死神「イツキガ、ユウシャダッタカラ。ダカラ、ヘンシンガトケタ」

天乃「……信じて良いのね?」

死神「クオンサンノコトハ、ダマサナイヨ」


自信満々に告げる死神を遠目に眺める天乃は

ため息をついて、首を振る

キスしたり、一緒に寝たり

少しばかり精霊扱いできていないような気もするが

そんな、自分と死神の関係

天乃はそれを踏まえたうえで、死神をじっと見つめた

天乃「ねぇ……」

死神「ナァニ?」

天乃「……………」

死神「クオンサン?」



1、貴方は一体なんなの?
2、奪った神樹の力は、何に使うの?
3、次の樹海化の後、園子の所に行って貰っても良いかしら
4、私の事、好き?


↓2


天乃「次の樹海化の後、園子の所に行って貰っても良いかしら」

死神「ソノコ、アイタイ?」

天乃「ええ……積もる話も。ううん、しない方が良いのかもしれないわね。それは」

大赦の中でもかなり重要な部類に入るであろう園子

彼女ならば鷲尾須美の結末をすでに知っているだろう。と

天乃は彼女の心境を思い、眉を潜める

天乃「だから……大赦なんて、嫌いなのよ」

死神「ワカッタ、クオンサンノタメニガンバル」

天乃「ええ、よろしく」

変身すればまた樹海化してくれるのかもしれないが

端末無しでの変身等

面倒なことになることこの上ないことは流石の天乃にも解っており

だからか、天乃はベッドへと倒れこんで目を瞑る

死神「ネル?」

天乃「精神統一してるだけよ……寝るつもりなんて、ないわよ」

精神的な疲労はその言葉を覆し

沈黙の中で、少女は静かな寝息を立てる

傍で見守る精霊は、ゆらりと動き……傍らにその身を落ち着けた


ではここまでとさせて頂きます
再開は6月1日目の夜のコンマ判定からです

>>691
どこで言ってたっけ?

>>693
クオンサンが新たなる神樹様になれば神樹への復讐も友達を守る事も出来るよやったね(白目)

>>697
お腹を痛めて産んだっていうのは冗談だけど
4スレ目(満開3回目)の>>388
>死神「クオンサンガイルカラ、ワタシガイル。ダカラ、シンジュデハナク、クオンサンガ、ワタシのハハデ、チチ」
>死神「久遠さんがいるから、私がいる。だから、神樹ではなく、久遠さんが、私の母で父」


明日は出来そうにないので
ほんの少しですが、今日も進めておきたいと思います


√ 6月1日目 夜


コンマ判定表

01~10 ばーてっくす
11~20 死神
21~30 沙織
31~40 
41~50 夏凜
51~60 
61~70 兄
71~80 
81~90 姉
91~00 樹海化

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月1日目 夜


夜になると、孤独感がより強くなる

目を瞑っても、静かではなくて

寝ようとしても寝れなくて

暗い暗い部屋の中で、天乃は目を開く

天乃「……暇」

寝る前には毒になる端末

それが手元にはなくて

誰とも連絡を取ることなんてできず

何の情報も得ることは出来ない

天乃「……暇」


1、寝る:イベント率100%でのコンマ判定
2、兄の部屋へ
3、姉の部屋へ
4、死神を呼ぶ
5、夜遊び



↓2


天乃「………………」

兄の部屋の前

ドアをノックしようと手を上げて

叩くことなくそのまま下ろして踵を返すと

その部屋の主と、目があった

「どうした。入らないのか?」

天乃「……入る隙はあるの?」

「お兄ちゃんの隣は、お前の優先席だぞ」

天乃「意味解らない……けど、少し。一緒にいても良い?」

「丸一日だって、一緒にいてあげても良いんだが」

天乃「……考えておく。とりあえず、部屋に入って平気?」

「ああ、問題ない」

そう言ってドアを開けた兄に続いて

天乃は部屋へと、入って行った


「で……どうした」

天乃「暇つぶしだって言ったら怒る?」

「それはお前が必要としてくれてるってことだからな。怒るどころか、嬉しいよ」

天乃「……そっか、なら遠慮なく」

兄のベッドを軋ませながら

天乃はゆっくりと兄のベッドに腰を下ろす

すぐそばに人がいる

部屋が暗くない

それだけで、天乃はどこか救われているような気がして

けれど、だからこそ

天乃は表情に影を落とす

天乃「……………………」

「なんだよ。俺の事をじっと見つめて」

天乃「ううん……何でもない」


「いつもはお前の考えなんて、鏡を見るように解るんだけど……」

天乃「止めてよ。怖い」

「仮にも兄を名乗ってるんだ。必要なことを解ってやるのが、その兄の役目ってやつだろう」

天乃「下着も?」

「なくちゃ困るだろ。だから、必要」

天乃「えっち……」

「ワンモア」

天乃「言わない」

催促する兄から目を逸らして

天乃はため息をつく

解らない

自分にとっての兄の存在が

こんなにも、えっちな人なのに

迷惑ばかりかけてきて、嫌な。人なはずなのに

そんな人に救いを求めてしまっている自分の事が……解らなくなりそうだった


「……まぁ、お前にとってはつらいだろうな」

天乃「え?」

「するのではなく、させられる。当然だが、それははるかにさせられる方が苦しくて、辛い」

天乃「…………………」

「だから、母さんは勉強しろとは絶対に言わない。馬鹿みたいに自由だけど、そこら辺はしっかりと考えてるんだ」

天乃「何が言いたいの?」

「大赦は何もわかってないって言ってるんだ。バネを力尽くで抑えたって意味がないってことをまるで解っちゃいないからな」

天乃の頭をポンポンっと叩いて、

兄はくくくっと笑みを浮かべる



1、……そうだね
2、兄の手を払い除ける
3、兄の手を掴む
4、兄の方に倒れ込む
5、……寂しい
6、今日は久しぶりに、一緒に寝てあげても……良いよ


↓2


天乃「……そうだね」

「なんだ、元気がないな」

天乃「そう見える?」

「そう感じるし、聞こえるし、見える……さすがに匂いはいい匂いだから解らないが」

天乃「真面目なのか、ふざけるのか。どっちかにしてよ」

「お前はどっちが良いんだ? お前が今、ふざけて欲しいのならふざけてやるさ」

けど。と兄は続けて

天乃の体をそっと……抱き寄せる

「お前が真面目な対話を望むのなら、俺も真面目に答えてやるよ」

天乃「…………………」

「……なんて。まぁ、お前が真面目に対応してほしいっていうのは、初めから解ってた」

天乃「ならどうして、ふざけるの?」

「……あまりにも真面目すぎると、俺は多分。お前の事を口説くからな。ガス抜きが必要なんだ」


そんなことを言いながらも

声を上げて笑う兄を天乃はじっと見上げて、俯く

ダメな兄

変態な兄

押しのけるべきそんな存在を除けられず

それどころか、天乃は包まれる温かさに身を委ねていた

布団にくるまるのとは違う

そこに自分以外の人がいると言う、温かさ

それを天乃に与える兄は、軽く頭を振って呟く

「一つ、お前の事を口説いてやろう」

天乃「……妹なのに?」

「妹を女としてみない道理なんてない。良いか? 妹だから姉だから。そう言って目を逸らす兄や弟こそ、意識してるもんなんだ」

天乃「どうしてそう思うの?」

「人は何かから逃げるとき、それはそうではない。こうなんだ。と、決めつけることが多い。たとえばそう、良く言う運が悪かったってのがその典型だ」

天乃「……だからって、公言してる人が安全な理由にもならないよね?」

「まったくもってその通り。でも、お兄ちゃんは安全だぞ。妹以外の人の名前出したら病気疑われるくらいには周りに認めて貰えてるしな」

天乃「違うそうじゃない」

「なんだ。世間体の話じゃないのか」

天乃「……口説くって話からだいぶ逸れてる」


あぁ……と

思い出したように漏らした兄は

ニヤニヤと殴りたくなるような笑みを天乃へと向け、囁く

「口説いてほしいのか」

天乃「っ………」

「そうかそうか。お兄ちゃんは張り切るぞ」

天乃「そんなんじゃな――」

天乃が頭を振って否定しようとした瞬間

伸びてきた兄の手に勢いよくベッドへと押し倒され

言葉が途絶えて、ベッドが軋む

天乃「急になんなの?」

「………天乃」

天乃「な、なに?」

「たとえ世界に否定され、知り合いに侮蔑され、石を投げられても。その全てから、俺はお前を守ると誓う」

天乃「………………」

「だからお前の悲しさも、辛さも、苦しさも、寂しさも。全部、この俺に委ねてくれないか?」

天乃「っ………」

「お前が俺に委ねた全ての代わりに、俺がお前の事を――愛してやるから」


ではここまでとします
明日は宣言通りやれないと思いますが
あと安価1、2回で一日終了なので
僅かでも出来そうなら、やろうかと思っています

少ししたら少しだけやろうかと思っています
お手元にゲームがなければお付き合いください


天乃「私の事を……?」

「ああ……お前を。いや、こういう時は天乃って呼んでやるべきだよな」

愛しいものを眺めるような優しい表情で見つめて

繊細な物に触れるような優しい手つきで頬に触れながら

兄は微笑む

「天乃以外の誰を、愛せっていうんだよ」

天乃「お兄……ちゃん」

目の前にいるのは兄だと解っているのに

下着をチェックしたりする

エッチな人だと解っているのに

ドキドキとする自分に驚き、目を見開いて

また広く、深く

兄の姿が入り込んできて、天乃はふいっと顔を逸らす


「どうした」

天乃「………」

「天乃?」

このままじゃ本当に好きになってしまいそうで

いや、今も好きではあるのだけれど

それとはまた、別の

姉と話していたような好きになってしまう

それが明確なものとして

心に芽生えてしまいそうな気がして

天乃は兄に対して何も言うことは出来ず

「……天乃」

けれど

そんな心配そうな声で名前を呼ばれたせいか

天乃は何か言わないといけない。と、思考する


1、もう止めて
2、……一緒に寝よう? 今日だけ
3、突き飛ばす
4、キス、して
5、抱きしめて


↓2


天乃「キス、して」

「…………………」

天乃「前みたいに、蹴ったりしないから」

キスしてと言いながら

天乃は決して兄の方は見ずに、呟く

誰に向けても言っていない

これはただの独り言だと

自分に言い訳するように

「して、良いんだな?」

天乃「…………………」

「………………………」

天乃「っ」

兄の手によって、

逸らしていた顔を、兄へと向けさせられた天乃は

少し、ビクッとしながらも

軽く深呼吸をして、目を閉じた


「そんなに怖がるな……大丈夫。本当に軽く、終わらせてやるから」

天乃「……うん」

「…………………」

頬を染めて、目を閉じる眼下の妹

高揚しないと言えば、嘘になる

キスしたくないと言えば、大嘘になる

「…………っ」

ゆっくりと、近づいていく

優しい桃色の唇

ぷっくりとしていて、柔らかそうで

いや、きっと柔らかいのだろう

呼吸に揺れる色っぽさに

まだ子供だ。とは、言えそうもなかった

天乃「……まだ?」

「もうちょっと」


兄の呼吸を肌に受けて

兄の存在をすぐそばに感じて

接触がもう間もなくだと

早鐘を打つ心臓が、秒読みを開始する

早い鼓動は遅く

けれど、束ねたような力強さで脈を打つ

ドクン、ドクンッ……と

壁を打壊すかのような音が体の中に響く

天乃「………………」

「動くなよ?」

天乃「うん」

「目、開けるなよ?」

天乃「うん」

兄の言葉に素直に従って

コンプレックスなバストの先に兄の体が触れたのを感じて、息をひそめる


段々と胸が押し潰されていくのを感じながら

天乃は感覚を研ぎ澄ませる

耳は兄の呼吸を聞いて

肌は兄の温かさを感じて

鼻は兄の男らしさを嗅いで

天乃はごくりと、喉を鳴らす

2人のバラバラだった呼吸は次第に波長を合わせ始めて

いつしか、二人で一つの呼吸へと変わって

静まり返った部屋の中で、兄はようやく、妹へとさらに近づく

「愛してる」

天乃「……うん」

そう言いながら

兄は

天乃の唇に、人差し指を押し当てる

「残念だが体験版はここまで。あとは製品版を買ってくれ」


天乃「なに……言ってるの?」

「体験版あるあるってやつだよ。いいとこで終わるだろ?」

天乃「そうじゃ、なくて……」

意を決した言葉だった。行動だった

後が大変

相手は実兄

解っていながら、許可を出したのに

してくれと。言ったのに

天乃「……………」

「……泣くな」

天乃の零れ落ちそうな涙を指で拭って

兄は前髪を優しく払い除ける

「言った言葉に嘘はない」

天乃「だったらっ」

「でも。俺はお前の弱みに付け込んだだけだ。孤独に冷めたお前を。温めただけだ」

天乃「………………」

「寒い時に温かいものを。暑いときに、冷たいものを。俺はその当たり前を利用して、お前の気持ちを動かしただけ……だから、それはお前の本心じゃない」

首を振った兄は

やはり、優しげな表情を浮かべて

天乃の頬を撫でる

「ここで流されたら後悔するぞ。きっと……だから今日はもう寝ろ。疲れてるんだよ。お前は」




1、何も言わずに部屋に戻る
2、抱き付く
3、引っ叩く
4、……一緒に、寝たい




↓2


ゆっくりと自分の上から引いていく兄

その袖を掴もうとして、ひっこめて

言おうとした言葉も、飲み込んで

けれども歯止めの利かなかった涙だけは零れ落ちて

天乃「……………………」

「……おやすみ」

それだけしか言わない兄を睨んで

天乃は部屋を飛び出していく

それを目で追った兄は

優しげな表情から一転

切なげで、悲しそうな表情を浮かべると、首を振る

「……………………」

あと数センチ近づけば出来た

けれど、出来なかった

愛する勇気はあった

守る気持ちもあった

けれどはるか遠く、限りなく近い場所で命を懸ける妹には

自分の手は届けられるはずもなく

「……そうなると解っていながら、手を打てなかったんだ。そんな奴を、好きになんてなっちゃいけない」

そう呟いた兄は、ベッドへと倒れ込む

「天乃の匂いがする……やっぱいい匂いだよなぁ」

ふふふっと気色悪い笑みを浮かべ

兄は寝返りを打って、目を瞑る

もしも次があったのなら

こんなふざけたことをする自分を嫌わずに

今一度、求めてきてしまうことがあったら

その時はもう、覚悟を決めて受けよう。と

兄は心に決めて、眠りについた

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流無()
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流有(昼、大赦)
・伊集院沙織:交流有(勉強、昼)

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流有(会話)
・     神樹:交流無()


6月の1日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 15(中々良い)
  犬吠埼樹との絆 17(中々良い)
  結城友奈との絆 20(中々良い)
  東郷三森との絆 14(普通)
  三好夏凜との絆 37(少し高い)
伊集院沙織との絆 56(かなり高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 31(少し高い)
      神樹との絆 -1(絶望的に低い)

大赦・神樹による、久遠天乃の警戒レベル○△□%程度?(検閲済み)
久遠天乃より、情報入手:樹海化し、撃退命令が下るレベル
犬吠埼風より、情報提供:大赦は久遠を味方だとは思っていない


ではここまでとさせて頂きます


次はしますよ。兄は絶対に
何がとは言いませんが

あえて言うのであれば
悲しませない為にと人を突き放してしまうような妹の兄なんです

とりあえず、スレの内容に関してはともかく
レスに対する批判的なレスはお控え下さい
良いことはなにもないと思いますので


要望がありましたら、お昼頃に
どこかで挟む予定の兄と姉の会話を出そうかと思います

須美ません
やる余裕がなかったので天乃の介入判定だけにしておきます


01~10 
有り

11~20 
21~30 
有り

31~40 
41~50 
51~60 
有り

61~70 
71~80 
81~90 
有り

91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし。普通に進行

なしですね
予定通り、天乃抜きで2人の会話とします


ではゆっくりとですが進めて行きたいと思います


√6月2日目 朝


「最低!」

押さえ込んだ怒号に続いてバシッっと力強い音が響き

叩いた少女は怒りに荒くなった呼吸を整えようと深く息を吐く

「最低な兄だとは思ってたけどここまでだなんて思わなかった!」

「…………………」

「私は嫌だったけど、でも。今のあの子には必要だと思った……だから、話したのに」

なのに

なのにからかって、誘惑するだけして

結局なにもしてあげなかった

それどころか、傷つけた

それが許せなくて

震える拳を振り上げ、

黙り込む兄を睨んで頭を振る


「あの子は大赦に敵視されてて、端末奪われて、常に監視されて自由どころかプライベートすらない」

「………………」

「私達だけでも味方でいてあげるべきだったんじゃないの?」

「…………………」

「あの子の支えに、なってあげるべきだったんじゃないの?」

「………………………」

「なんとか、言ってよ!」

自分の事ではないのに

溢れ出してしまいそうな涙

それを抑えて怒鳴る妹を見つめて

兄はゆっくりと口を開く


「俺は天乃の嫌いな大赦側の人間で、追い詰めた張本人である組織に属する奴だ。なのに、守ってやれなかった駄目な奴だ」

「だから?」

「そんな奴を支えにしてたってあいつが知ったらそれこそ、深く傷ついて……壊れちゃうかもしれないだろ」

兄は痛む頬を気にする事なく瞬きして

どこか遠くを見るような

儚げな表情を浮かべる

「それでもいいとあいつは言うかもしれない。しがみつくかもしれないでもそれは心酔だったり陶酔でしかない」

そんな危ういものにはしたく無いんだと

兄は続けて首を振る

「これであいつはまともな相手に頼るはずだ。壊れずに済む相手と」

「兄ちゃんもあの子も本当……似た者同士だね」

「……………………」

「相手の為だとしながら、結局相手を傷つけてる。その不器用さ……瓜二つだよ」

悲しそうな妹の辛辣な返しに

兄は楽しいわけでも嬉しいわけでもない笑みを返す

「兄妹、だからな」

兄の言葉に

姉はそうだね。と、答えただけだった


「……痛かった?」

「ん?」

「頬っぺた」

「……お前は平気か? グーにすればいいものを平手にしたんだし」

「いくら最低な兄でも。グーは使わない」

妹は首を降って笑みを浮かべると

ほんのりと赤い手のひらを隠すように

左手を右手に重ねる

「痛み分けだからね。誰も、私の事を叩いてはくれないから」

「無茶すんな」

「してない。あの子に比べたらこの程度、なんともないから」

「……そうか」

ポンポンっと頭を叩いて

兄は微笑みを浮かべて溜め息をついた


ところ変わって通学の車内

天乃の沈んだ雰囲気を気にしながらも

女性は良い気味だと

自業自得だと、思わずには居られなかった

さんざん好き勝手して

神樹様を信じず、それどころか冒涜する

だからそうなったんだ。と

天乃「…………………」

「……久遠様、そろそろ着きます」

天乃「…………………」

「久遠様」



1、解ってるわよ……煩いわね
2、……行きたくない
3、なんで。なんで、私ばかりこんな思いしなくちゃいけないのよ
4、……フラれたのよ。私
5、沈黙
6、貴女、恋人はいる?

↓2


天乃「……フラれたのよ。私」

「……え?」

天乃「好きだって言わなかった。愛してるとも。言わなかった」

「それなら」

天乃「でも、キスしてって。お願いした」

「……好きと言わず、愛してるともいわず。それでキスしてと言われたら、殿方は少々、引き下がってしまわれるのでは?」

天乃「相手が口説いてきたのよ。愛してるとか、好きだって。だから、それならキスしてって言ったのよ」

平然と語っているようにも見える

でも決して平気だとは感じ取れない声


女性は車を道路わきに一時停車させて

隣に座る天乃へと、視線を動かす

「なら、良かったじゃないですか」

天乃「……良かった?」

「もし、そんな相手とキスしたり、付き合ったり。その……まぁ、先に進んでしまったりしたら。きっと、あとで後悔していたと思います」

だから

相手が断ったことを喜ぶべきだ。と

女性は続けた


天乃「……そうかしら」

「そうですよ。私も女だからなんとなく解ります。口説かれるとドキドキしちゃうんですよね」

天乃「そうなの?」

「はい。ただ驚いてるだけなのに、もしかして恋かも。なんて思って、あとはどつぼに嵌っていつの間にか恋人ですよ」

クスクスと笑う女性は

監視している立場でも

大赦に属しているのでもなく

ただ、一人の女性としての笑みを浮かべて、続ける

「でも、そういうのって段々と思い始めるんですよ。なんで付き合ってるのかな。なにが好きなのかなって」

天乃「それで?」

「好きな理由が見つけられなくて、悩んで考えて。すっと……抜けていくんです。私はこの人、別に好きじゃなかったんだ。って」

天乃「………………」

「しかも、悩めば悩むほど、付き合っていた幸せなはずの時間を後悔しだして……意味も解らず、ごめんなさいってしちゃうんです」


男の人にとっては

あまりにも唐突で、受け入れがたくて

酷いやつだなって思われちゃうかもしれないけれど

自分でもそう思ってるんですよ? と

女性はまるで自分の事のように語って、首を振る

「だから、口説かれてドキドキした。だから、なんていうのはダメです」

天乃「………」

「まずは1日でもいいから時間をもらって、考えないと」

天乃「でも、私は断られたわ」

「断るのも巧妙な手口ですよ。押し続けたものから急に手を引けば、バネみたいに向かってきちゃいますからね」

天乃「…………………」

「相手がどんな方かは知りません。だから、相手がダメな人と断言はしませんが。考える時間だけは取ることをお勧めしますよ」

じゃないと絶対に後悔しますからね。と

女性は苦笑まじりに続けて

もう一度、学校へと車を走らせた


√ 6月2日目 昼


コンマ判定表

01~10 風
11~20 ばーてっくす
21~30 
31~40 友奈
41~50 
51~60 勇者部
61~70 東郷
71~80 夏凜
81~90 
91~00 沙織

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月2日目 昼



風「久遠、ちょっといい?」

天乃「……?」

風「説明はあと。とりあえず、話。あるから」

ちょいちょいと手招きする風を訝しげに見つめながら

天乃は逆らわせては貰えないのだろう。と

席を立つ

沙織「行ってらっしゃい」

天乃「……ええ」

沙織「午後も授業あるからね? サボったらだめだよ」

天乃「解ってるわ」

嬉しそうな笑みを浮かべる沙織を一瞥して

天乃は風の元へと、向かう

天乃「どこ行くの?」

風「部室」


風に連れられて部室へと向かうと

友奈、樹、夏凜、東郷

風以外の4人がすでに部室へと集まってきていた

天乃「なによ……物騒な集まりね」

夏凜「あんたが何かしたからってわけじゃないわ。それは解ってる」

東郷「じゃぁ、どうしてみんなで集まるの?」

友奈「みんなで仲良くお昼を食べる為?」

風「残念だけど、違うわ」

風の言葉にピシッと空気が張り詰めて

各々が黙り込み、息を呑む

何が起きたのか

何が起きるのか

緊張感の漂う空気の中で

壁に寄りかかっていた夏凜が、ため息をついた


夏凜「そろそろ、バーテックスの襲来があるってお告げがあったらしいわ」

樹「また……くるんですね」

夏凜「当たり前でしょ。まだ4体もいるんだから」

風「で、それが近いから……って、わけではないけど」

天乃「なによ」

夏凜「言わなくても解るでしょうに」

困ったように微妙な笑みを浮かべた夏凜は

天乃を見つめる風の名前を呼んで、首を横に振ると

あんたの事よ。と、天乃へと言葉を向ける

夏凜「樹海化した際、あんたを一人にすることは危険だって言うのよ」

天乃「端末はなく、自由もない私が?」

夏凜「本来そんな機能のない端末で勇者になったんだから、当たり前でしょ」

天乃「…………………」

風「っていうわけで、誰かが付き合ってあげなくちゃいけないのよ。襲来が来るまでね」

天乃「人をお荷物みたいに」

風「そんなつもりはないけど………」



1、夏凜が良いわ
2、風が良いわ
3、樹が良いわ
4、友奈が良いわ
5、東郷が良いわ
6、任せるわ


↓2


天乃「それなら夏凜が良いわ」

天乃が率直に意見を述べた瞬間

天乃以外の全員の顔が夏凜へと向けられて

その夏凜は何も言わず、照れ臭そうに頬を掻く

風「ほらぁ~だから言ったじゃない。話し合う必要なんていらないって」

友奈「よく解んないけど、良かったね。夏凜ちゃん!」

夏凜「べ、別によくなんかッ」

東郷「夏凜ちゃん、嘘ついてるわね」

夏凜「ッ」

樹「あっ、太陽の正位置」

一転して狙われ始めた夏凜は

天乃を視野に収めるや否や顔を顰める

夏凜「あんたのことだから、樹とか、友奈とか。選ぶと思った」

天乃「嫌だった?」

夏凜「……別に、どうでもよかったわよ」

そう言いながら

ほんの少し嬉しそうだったのを、風は見逃さなかった

風「初々しい恋人みたいねぇ……」

樹「お姉ちゃん、恋人に詳しかったっけ」

風「ニュースとドラマでばっちり」

東郷「それは詳しいとは言えないような……」

夏凜「ツッコミどころおかしくない!?」


怒鳴るように言った夏凜に対して

ごめんごめん。と、風達は返す

風「まぁ、強請られたんだから。夏凜。頼むわよ」

夏凜「解った」

風の言葉に頷き

夏凜は天乃へと近づいて

目の前で、止まる

夏凜「放課後、また話があるわ」

天乃「うん」

夏凜「……なんか嫌に素直ね。あんた」

天乃「え?」

夏凜「良く判んないけど……あんた。いつもとちょっと違うわ」

天乃「………………」

夏凜「とりあえず、またよろしく頼むわ」

とんっと肩のあたりを叩いて隣を抜けていった夏凜を

天乃は見つめ続けて小さく、首を横に振った


ではここまでとさせて頂きます
再開は2日目の夕方からとなります


√ 6月2日目 夕


コンマ判定表

01~10 風
11~20 姉
21~30 樹
31~40 
41~50 友奈
51~60 春信
61~70 東郷
71~80 
81~90 沙織
91~00 大赦

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月2日目 夕


東郷「久遠先輩」

天乃「あら……」

東郷「少し、お話しする時間はありますか?」

天乃「いつも勇者部の部室で待てって言われるくらいには」

東郷「では、お付き合いいただけますか?」

天乃「大赦からの指示?」

東郷「いえ、私用です」

天乃「…………………」

なんなのかと顔を顰めた天乃を

ただ黙って、東郷は見つめる

その瞳には嫌な予感がして

天乃は、軽く首を振った


1、夏凜も一緒でいい?
2、解った
3、悪いけれど、それは無理



↓2


天乃「夏凜も一緒でいい?」

東郷「それは……少し困ります」

東郷らしからぬ

顔を伏せるような、不安を抱えているという仕草

大赦に属する夏凜がいては困る

でも、大赦嫌いな自分にはしても良いと言う話

大赦に関してきついことを言うのか。と

思ってすぐ、天乃は目を瞑る

違う

きっと、そうじゃないだろう

言われたわけでもないのに

天乃は気づいていた

東郷の話したいことは

天乃が話せなかったことに関してのものだと言うことに


だから天乃は

頭を振って、笑みを浮かべる

天乃「きっと、私はその質問には答えられない」

東郷「………………………」

天乃「貴女が言いたいこと、聞きたいこと、解るけど。でも、答えることは出来ないわ」

東郷「お見通しのようですね……久遠先輩」

本当に解らないのかもしれない

ただ、勘違いしただけなのかもしれない

天乃の姿勢に東郷は思いながらも

捨てきれずに、東郷は天乃を見つめる

失った記憶の断片を教えて欲しい。と

けれど、言葉はなく

どこか儚げに首を振るだけの天乃のぶれることのない姿勢に

東郷は「そうですか……」と、残念そうに零した


√ 6月2日目 夕 車内


東郷と別れたあと、夏凜と合流した天乃は

校門前でメイドのごとく主を待つ女性とも合流し

車へと、乗りこんだ

「三好様。どちらに向かえばよろしいのですか?」

夏凜「その話なんだけど、まだ決まってないわ」

「え?」

夏凜「放課後すぐ話せればよかったんだけど、こっちも立て込んでたのよ」

「解りました。では、仮でも構いませんので、久遠様」

天乃「なに?」

「久遠様が三好様と暮らすのか、三好様が久遠様のご家族の元で過ごされるのか、お選びください」

天乃「………急すぎない?」

夏凜「お告げも唐突だったんだから、仕方ないじゃない」


「三好様。それは私達に対しての――」

夏凜「違うわよ」

批判ですか? と

言われる前に夏凜は荘言い放って首を振り

その瞳を天乃へと向けた

夏凜「拘束されるのはあんただから、選ばせてあげるわ。感謝しなさいよ?」

天乃「…………」

「久遠様、間もなく信号が赤になります」

天乃「だから?」

「お決めになられないのであれば、私が何となくの気分で決めます」

夏凜「だったら私の家にして。天乃の家族は疲れるのよ」

「その割には、嬉しそうですね。三好様」

夏凜「な、何言ってんのよ」



1、みよしけ
2、くおんけ
3、ここはあえて新人ちゃんの家を選択

↓2


天乃「私の家で」

夏凜「なんでそうなるのよ……」

天乃「私が引っ越すのは面倒くさい」

夏凜「あんたが引っ越さないから私が引っ越すんだけど?」

天乃「ふぁいとだよっ、夏凜ちゃん」

夏凜「決闘ね? 受けて立ってやるわよ!」

天乃の猫なで声に

せまい車の中で膝立ちになり

夏凜は天乃を見つめて怒鳴る

天乃と暮らせなくなってからも特訓はした

むしろ、特訓にいるいないは関係なのだから

して当たり前ではあった

けれど……観客がいないのが少し寂しくて

特訓をしてもしても、満たされることなんてなくて

だから夏凜の表情は綻んでいた

夏凜「覚悟してなさい。目にものを見せてやるわ」

天乃「……うどん屋さんでラーメンを注文する人が見つかるくらいには期待しておくわね」

夏凜「限りなく低い……っていうかゼロとしか思えないんだけど」

天乃「……気づかなければ、幸せだったのに」

夏凜「なら言うな!」


後部座席で言い合う一人の勇者と一人の嫌われ者

その二人の少女をバックミラーに写し、見つめる女性は

ほんの少しだけ心地のよさそうな笑みを浮かべて、息を吐く

大赦によれば

要注意人物である久遠家の次女

けれど女性の見る限りでは

今のところは要注意など必要もない

恋をして

恋に悩んで

友達と談笑して

そんな、ごく普通の女の子にしか見えなかった

「久遠様、三好様」

天乃「?」

夏凜「なによ?」

「もう間もなく久遠様のご自宅ですよ。降りる準備。しておいてくださいね」

でも、だからこそ

あからさまではなく、爪を隠した鷹のようなものだからこそ

危険視されるのだろう。と女性は思い

考えるなと、首を横に振って思考をリセットした


ではここまでとさせて頂きます
明日は時間があれば昼過ぎから少しずつ進めたいと思います


投下に関してですが
基本的に日曜日以外はすべて22-23時のわずかな進行
日曜日のみ昼頃から。というものになると思います


少ししたら始めたいと思います


√ 6月2日目 夜


コンマ判定表

01~10 
11~20 春信
21~30 
31~40 夏凜
41~50 
51~60 兄
61~70 
71~80 姉
81~90 
91~00 ばーてっくす

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月2日目 夜


人はいつも、箱の中にいるのだと私は思う

屋内、市内、車内、国内、県内、校内

大きく言えば、地球の中

つまりいつも、みんな引きこもりなのだ

バーテックスは引きこもりな人々を連れ出そうとする、嫌な大人

天乃「……なんて」

現実味の欠片もない空想

思い浮かべては消える妄想

する意味はないし、価値もない

けれども、そう

天乃は箱の中の箱

その中の箱の中

それはそう、まるでマトリョーシカ人形のようで

天乃「私は箱入り娘ね……嫌な感じ」

つまらなそうに、呟いた


一度は出ていった夏凜を

また、家に呼び戻すことが出来たのは、嬉しい

けれど

自由なんてない窮屈な生活が、変わったわけではない

登校下校は送り迎えがあって

何をするにも、お伺いが必要で

自分はどこかの国のお姫様なのかと

少女ならば憧れるようなものに

天乃は深く、ため息をつく

天乃「……夏凜は今、宿題でもしてるのかしらね」



1、夏凜の所へ
2、死神を呼ぶ
3、兄の所へ
4、姉の所へ
5、寝る


↓2


天乃「夏凜、入るわよ?」

夏凜「好きにしなさい」

ドアを叩くや否や

夏凜の声が返ってきて

天乃は静かにドアを開け、そっと部屋の中を覗く

折りたたまれた敷布団

申し訳程度の簡易な机と椅子

壁のところには制服がかけられていて

傍には学生鞄もある

けれど、それだけだった

天乃「……前もっていたのは全部、質に入れたの?」

夏凜「殴るわよあんた」

天乃「正式な引っ越しは明日なの?」

夏凜「あんたの事だから、私の方に来ると思ったのよ。もっとも、この体制の監視再開を知ったのは昨日だからどうしようも無かったんだけど」


天乃「なんで私が貴女の家に行くのよ」

夏凜「あんたが言ったんじゃない。転居先決まったら教えてって」

天乃「あぁ……ごめん。流石に行くのは無理だった」

夏凜「解ってるわよ。勇者部じゃなく、大赦直々の送迎となったら無理に決まってる」

しょんぼりとする天乃に対して

励ますような声色ではなく、ぶっきらぼうな言い方ではあったけれど

その気持ちを受けて、優しく返す

夏凜「で」

天乃「うん?」

夏凜「何の用よ。誰かに連絡したいから端末貸してって言いに来たのかしら?」



1、うん。貸して
2、ううん、特に何の用事もない
3、実は……その、恋愛相談。なのよ
4、ねぇ、どうして私がお願いした時、嫌な顔しなかったの?
5、また来てくれて、ありがとね


↓2


天乃「実は……その、恋愛相談。なのよ」

夏凜「は、はぁッ!?」

天乃「っ」

夏凜「あ、あんたが恋愛相談……? そんな見え見えの冗談、止めてくれる!?」

言えばきっとこんな反応をするだろう

天乃のそんな予想通りの反応に

天乃はうっすらと笑みを浮かべ

すぐにでもね。と、首を横に振る

天乃「冗談じゃないのよ」

夏凜「嘘……でしょ?」

天乃「……ううん」

夏凜「………………」

天乃の切なそうな表情

普段と違って女の子らしさを感じる雰囲気に

夏凜は見開いていた瞳をゆっくりと閉じて、一息つく


夏凜「……残念だけど、私はそういうの苦手なのよ」

天乃「相談、受けてくれないの?」

夏凜「受けないわよ」

はっきりと告げて

夏凜は天乃から目を逸らし、頭を振る

恋愛相談をしたいと言うのが

本当なのか、嘘なのか

好きな人がいるのか、居ないのか

現段階では定かではないが

どちらにしても、相談には乗らない。と、夏凜は自分に言い聞かせて、天乃へと視線を戻す

天乃「今まで冗談ばかり言ってきたから? だから、疑ってるの?」

夏凜「あんたのそれが本気なら。それこそ、受けてやれないわ」

天乃「どうして?」

夏凜「私なんかじゃ、まともな話なんてできない。アドバイスなんてできない。あんたの為には、ならないからよ」

天乃「………………」

夏凜「あんたが相談しようとしたのに悪いとは思うわ。でも、あんたのそれを悪い結果にするよりは、マシでしょ」


天乃「……そっか」

夏凜「悪いわね」

天乃「ううん、夏凜は私の事を考えてくれた上でのことでしょ? なにも、悪くないわ」

温かい部屋の中

2人の少女は互いに目を合わせることもなく

沈黙し、息をつく

それぞれの胸の内には

それぞれの考えと、思いがあって

一人が、口を開く

夏凜「……ねぇ」

天乃「うん?」

夏凜「相談にも乗れないくせに、ふざけんなって思うかもしれないけど」

天乃「うん」

夏凜「……………………」

いつもとは違う、天乃の表情と、瞳

そして、纏う雰囲気は

どこかもろさを感じ、切なさを感じ

言うかどうかを躊躇った夏凜は、目を伏せる

夏凜「……誰が好きなのか、教え、てよ」


まともなアドバイスは出来ないから

まともな受け答えは出来ないから

だから、相談には乗らない

そんな気遣いは出来たのに

好きな相手を聞かないと言うことが出来なかった自分に拳を震わせて

夏凜は、首を横に振る

夏凜「今の、なし」

天乃「え?」

夏凜「相談に乗らないんだから、聞く権利なんてあるわけないじゃない」

っていうか、聞いたところでどうしようもないし

何が出来るわけでもないし

だから、やっぱり言わなくていい

というか、言わないで

夏凜はそう、弾丸のように言葉を放ち続けて、

部屋から出ようと、踵を返した



1、行かないで!
2、抱き付く
3、お兄ちゃん……よ
4、何も言わない


↓2


天乃「行かないで!」

夏凜「っ…………」

天乃「……そばに、居て」

夏凜「天乃?」

尋常じゃない声に夏凜は振り向き

敷布団の上に座り込み

顔を伏せたままの天乃を、見下ろす

夏凜「天乃……」

小さく名前を呼んで、一歩ずつ

慎重に距離を詰めていく

何があったのか

何がそうさせるのか

夏凜には何一つ、解らなかった

けれど、捨て置くことなんて出来なくて

夏凜「ちゃんと居るわよ……私はあんたの、お目付け役なんだから」

天乃の前に膝をつき

彼女との目線を合わせたうえで、夏凜はそう。答えた


天乃「……夏凜」

夏凜「なんなのよあんた、恋愛相談したいとか言ったり、指名したり、こんな」

天乃「……………」

夏凜「……いや、言わないで良い」

顔を上げた天乃を見つめて

夏凜は小首を振って、囁く

夏凜「出ていかないから、あんたは黙ってて。それが、条件」

天乃「………………」

少しだけ驚きながら天乃は頷く

聞きたくない少女と一緒にいたい少女

2人はともに望みを叶えて

静かに、優しく

ゆっくりと、滑らかに

距離を近づけて、ベッドの上へと倒れ込む


何をするわけでもない

何を言うわけでもない

何か聞こえるわけでもない

何か見えるわけでもない

何も感じない

夏凜「………………」

天乃「………………」

……嘘だ

何かをして

何かを言って

何かが聞こえて

何かが見えて

何かを感じている

けれど、2人はそれを無いものとして

沈黙を保ち、瞳を閉じて闇にまぎれていく


いつの間にか繋がった手

いつの間にか重なった呼吸

感じるぬくもりは眠りの中にまで、じんわりと広がっていく

天乃「…………………」

夏凜「…………………」

顔を見合わせようとなんて思ってはいなくて

何かを目論んだわけでもなくて

ただ、なんとなく

相手の方へと身体を傾けて

天乃「ぁ」

夏凜「っ」

視線がぶつかって、2人は苦笑する

意味はない

理由もない

ただなんとなく、2人はそのまま目を閉じる

何も言わなかった

何も聞かなかった

けれど、2人は拒否することもなく

流れていく時間を、早送りしていった

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流有(昼)
・  犬吠埼樹:交流有(昼)
・  結城友奈:交流有(昼)
・  東郷美森:交流有(昼)
・  三好夏凜:交流有(昼、選択、相談、行かないで)
・伊集院沙織:交流無()

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流無()
・     神樹:交流無()


6月の2日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 15(中々良い)
  犬吠埼樹との絆 17(中々良い)
  結城友奈との絆 20(中々良い)
  東郷三森との絆 14(普通)
  三好夏凜との絆 40(高い)
伊集院沙織との絆 56(かなり高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 31(少し高い)
      神樹との絆 -1(絶望的に低い)

大赦・神樹による、久遠天乃の警戒レベル○△□%程度?(検閲済み)
久遠天乃より、情報入手:樹海化し、撃退命令が下るレベル
犬吠埼風より、情報提供:大赦は久遠を味方だとは思っていない


√ 6月3日目 朝


コンマ判定表

01~10 
11~20 ばーてっくす
21~30 
31~40 姉
41~50 
51~60 夏凜
61~70 
71~80 兄
81~90 
91~00 沙織

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月3日目 朝


沙織「おはよう、久遠さん」

家を出た瞬間

待ち受けていた少女は天乃にそう告げて

後ろの女性はどうしたものかと、首を横に振った

天乃「貴女……わざわざ来たの?」

沙織「送り迎えで登下校難しいかなって思って。それなら、初めから一緒ならいいかなって」

夏凜「あんたの行動力……意味解らない」

沙織「また一緒にいる三好さんほどじゃないよ?」

夏凜「べ、別に一緒にいたくているわけじゃ……」

沙織「正直者だね、三好さんは」

にこっと笑った沙織は

頬を染めながらそっぽを向く夏凜の頭をよしよしと撫でる

その隣で、女性は天乃へと近づく


「久遠様、如何なされますか?」

天乃「あの子の事?」

「はい。伊集院様がご一緒したいと言われまして……」

天乃「そっち的にはどうなのよ」

「こちらとしましては、登校していただくだけですので、問題の方はございません」

天乃「じゃぁ、私が良いか悪いかって話なのね?」

「はい」

頷く女性を一瞥して

天乃は気づかれないように沙織へと視線を送る

わざわざここまで来てくれた

なのに断る。と言うのは

いささか気が引けるものだ


1、承諾
2、拒否


↓2


天乃「良いわ。一人よりはずっといい。まぁ、夏凜のおかげで3人だけど」

「私は数には含まれませんか?」

天乃「大赦だもの」

「そうですか……少し、残念です」

そう言って女性は車へと戻っていき

残された3人のうち一人

天乃が2人を呼んで、車へと乗り込む

天乃「3人だとせまくなるわね」

「せまい車ですみません」

天乃「別に貴女に文句なんて」

「これ、一応私の車なので」

天乃「………………」

沙織「大赦の人でも、お給料安いの?」

「乗せる人がいないだけです」

天乃「給料は……高いのね」

「凄く大きい、会社ですから」


天乃「会社って言えるの?」

「幅広い事業に手を出していますからね」

天乃「首を突っ込んでるんじゃなくて?」

夏凜「天乃……ちょっとは、自重しなさいよ」

天乃「大赦って聞くとついつい、悪口が出ちゃうのよ」

夏凜「重病ね……あんた」

ため息をつきながら

そうぼやいた夏凜を見つめていた沙織は

くすくすと笑って

久遠さんらしいよねと、呟く

沙織「みんなが神樹様と言う中で、たった一人。言わない久遠さん」

天乃「?」

沙織「決して他の色を現さない黒色みたい」

天乃「そうかしら」

沙織「うん、黒が似合いそう」


「だから、今日の放課後お出かけしようよ」

天乃「……脈絡、あった?」

「前にまたイネス行こうって話したし、黒が似合うから」

夏凜「それは流石に……」

夏凜は顔を顰めてため息をつき、

天乃と目が合って、肩をすくめた

どうするかは天乃が決めて構わない。と言うことには基本的になっているが

人ごみにまぎれ

見失いやすい場所への外出は

基本的には許されていないのだ

天乃「………………」

「…………………」


1、行って良いでしょ?
2、行くわ
3、悪いけど、無理よ


↓2


天乃「悪いけど……無理よ」

沙織「そっか」

天乃「理由は……聞かないの?」

沙織「なんとなく、解るから」

儚い笑みを浮かべ

沙織は仕方ないね。と、苦笑する

大赦による監視

そのせいで、自由はなくプライベートもない

行くわ。と

行きましょう。と

言いたくても、言えないその歯がゆさに

天乃は顔を伏せて首を振る

「……学校、目の前ですよ」

夏凜「天乃、降りるわよ」

天乃「うん」

不自由な暮らしを強要されている少女

その背中を遠巻きに見送る女性は

悲しそうな面持ちでメールを打ち、やっぱり。と、送らずにしまった


√ 6月3日目 昼


コンマ判定表

01~10 夏凜
11~20 
21~30 おやっ、下駄箱の様子が
31~40 
41~50 バーテックス
51~60 
61~70 友奈
71~80 
81~90 風
91~00 大赦側

↓1のコンマ   空白はなにもなし


少し休憩します
20時ころには戻る予定です


√ 6月3日目 昼


沙織「久遠さん、お疲れ?」

天乃「お疲れってほどでもないわよ。体的には」

沙織「精神的には疲れそうだね。様、様、様。神様かーっみたいな」

天乃「……そういえば、貴女も様って。呼ばれてたわね」

沙織「久遠様のお客様だからね。あたしも様なんだよ。きっと」

天乃「そう言うものかしらね」

沙織「じゃぁ、あえてそれは違うよと。否定をしてみたら」

天乃「?」

沙織「どうする?」

昼休み

喧騒響く教室の中で見つめあう二人

その時間は止まっているように見えて、動いていて

けれど、やっぱり止まっているように感じて

一人がくすくすと、笑う


沙織「実はあたしは大赦の人間。というか、大赦の家系だよ。とか」

天乃「冗談、きついわよ」

沙織「たとえば」

天乃「いい加減に」

沙織「そう。久遠さんの近くにいるのは、見張ってろと。言われたからとか」

天乃「……貴女」

沙織「もしくは。お前があいつを管理しろと言われてたから。とか」

淡々と語る少女と

言葉が見つからず、聞き手に回る少女

互いの視線は交錯せず

けれども、天乃の瞳は沙織へと向く

天乃「たとえ……よね?」

沙織「本当だよって言ったら。久遠さんは怒る?」

天乃「…………………」



1、……解らないわ
2、ええ。怒るわ
3、貴女の事を叩くかもしれない
4、笑えないから。もう止めて
5、貴女がしてくれたこと。それが全部、大赦の命令でしか、無かったのなら


↓2


天乃「貴女がしてくれたこと。それが全部、大赦の命令でしか、無かったのなら」

沙織「……本気の目だね」

天乃「当たり前じゃない」

そう呟いた親友の悲しげな瞳に捕らわれて

沙織は何も言えず、切なさを交えた表情へと変わってしまいそうな顔を留めて

目線を下へと下げる

沙織「…………………」

天乃「そうだったら……私、ただのピエロになる」

沙織「久遠さん……」

天乃「大赦に遊ばれただけの……玩具になっちゃうじゃない」

必要だからと求められ、扱われ

なのに、もしかしたら危険なものだと解った瞬間

捨てられて、腫物のように扱われるようになって

天乃「そんなの、嫌よ」

沙織「ごめんなさい久遠さん。あたしそんなつもりで言ったわけじゃ……」


演技でもなんでもなく

暗く沈んだ天乃の姿に

騒がしかったクラスメイトまでもが

言葉を失って、教室自体が静まり返り

視線は一転に集中していく

天乃「……………」

沙織「……ごめんね」

天乃へと手を伸ばして

けれど、それは触れることが出来ずに、戻っていく

ピエロになる

玩具になる

そう言った親友の姿から目を逸らすように

沙織は首を振る

沙織「あたしがしてきたことは全部、あたしのしたかったことだよ」

天乃「……………」

沙織「それは嘘じゃない」

はっきりとそう言い切った沙織を天乃は弱弱しい瞳で見上げて

信じるからね? と、答える

対する沙織の浮かべた笑みは、中途半端だった


√ 6月3日目 夕


コンマ判定表

01~10 はるのぶっ
11~20 
21~30 かりん
31~40 ばーてっくす
41~50 ゆうな
51~60 新人ちゃん
61~70 ふう
71~80 
81~90 おやっ下駄箱の様子が
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月3日目 夕



友奈「久遠せんぱーい」

天乃「……友奈」

友奈「……どうしたんですか?」

天乃「別に、何でもないわ」

目にクマはない

猫背になっているわけでもないし

覚束無い足取りでもない

けれど、友奈には疲れているようにしか見えなかった

友奈「ぼた餅……食べますか? 私が作ったやつか、東郷さんから頂いたものですけど」

天乃「貴女が?」

友奈「……その、上手くできた。と、思ってます」

天乃「調理実習?」

友奈「はいっ」


友奈「……と、東郷さんの方でも良いですよ?」

天乃「でも、それは貴女が貰ったものなんじゃないの?」

友奈「私は実習中に貰いましたし」

天乃「……………」

友奈「……………」

天乃はぼた餅を見つめ

ぼた餅を見つめる天乃を、友奈は見つめる

放課後は、グラウンドや体育館こそまだまだ活気に満ち溢れているが

校舎自体は生徒も少なく、閑散としていて

静まった中の甘い香りに包まれる友奈は、困ったように笑う

友奈「い、要らないなら。別に」



1、友奈のぼた餅を食べる
2、東郷のぼた餅を食べる
3、どちらも食べない
4、どちらも食べる
5、貴女の事を、食べちゃおうかしら



↓2


天乃「両方頂こうかしら」

友奈「えっ」

ひょいっ器ごと奪って

天乃はニヤッと含み笑いを浮かべる

天乃「貴女と東郷のどちらが美味しいか。食べ比べてあげる」

友奈「そ、それは……困るかなって」

天乃「自信ないものを人に出すの?」

友奈「あ、いや、そういうことじゃなくてですね……」

返答に困り切って

おろおろする友奈を見つめて

天乃はくすくすと笑う

天乃「困ってる友奈を見ると、楽しいわね」

友奈「わ、私で遊ばないでください」

天乃「ふふっ、無理な相談ね」

友奈「むぅ……」


天乃「どっちが友奈のかしらね、ふふっ」

友奈「知ってるのに……」

天乃「確か、美味しい方が友奈のだったわね」

友奈「それは東郷さんのですっ」

ほんの少しばかり声を張り上げる友奈を見て

天乃はくすっと笑みを浮かべる

天乃「怒った?」

友奈「怒っては……ないですけど」

天乃「でもね? 友奈。たとえもう一つの方が上だと解っていても、自分の方が上だと思う気持ちは持っていた方が良いわ」

友奈「どういうことですか?」

天乃「たとえ相手が格上でも。勝てる可能性はある……成せば大抵、なんとかなるんでしょ?」

友奈「勇者部五箇条……」

部室に来ることなんて稀の稀

重要な案件で呼び出すことくらいでしか来ない天乃が五箇条を覚えていること

その嬉しさを口にしようとしたところで

夏凜「天乃ーっ!」

天乃「あらっ」

夏凜「勝手にどっか……って、なによ。友奈と一緒だったのね」

友奈「う、うん」

夏凜「迎えが来たわよ。さっさと来なさい。余計な迷惑はかけないべきでしょ」

天乃「解ってるわよ。あ……友奈、ぼた餅はありがとう。ちゃんといただくわ」

友奈「は、はい!」

友奈の視界から、天乃は連れ出されていった


√ 6月3日目 夜


コンマ判定表

01~10 
11~20 ばーてっくす
21~30 
31~40 兄
41~50 
51~60 姉
61~70 
71~80 死神
81~90 
91~00 夏凜

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 6月3日目 夜


一日の終わり

真っ暗な夜

その黒さで思い出すのは、一日の始まりの事

黒が似合う。という沙織の言葉だった

天乃「似合うの……かしら」

変身時の衣装くらいしか

黒を身に着けた覚えはない

いや、シュシュは黒だった。と

どうでも良いことを呟いて

天乃はベッドに横になったまま、額に手の甲を落す

天乃「……端末が、あると良いのに」



1、夏凜の所へ
2、死神を呼ぶ
3、兄の所へ
4、姉の所へ
5、寝る


↓2


天乃「死神さん、来て頂戴」

死神「ナァニ?」

天乃「私って、黒似合ってる?」

死神「ウン」

天乃「そう」

自分を黒く染め上げている張本人の言葉に対して

天乃は揺れのない声で返す

それは死神が基本的に自分を褒めてばかりだと言うことを

解っているからだった

死神「クオンサン」

天乃「なに?」

死神「モウスグ、ダネ」

天乃「なにが?」

死神「フウタチ、イッテタ。バーテックスガ、クルッテ」

天乃「それ、昨日の話よ?」


死神「クオンサン、カリントハナシタリシテタカラ」

天乃「そう……だったわね」

昨日の夜は夏凜と話して

そこまでは寒くもない夜を

2人で温め合うようにして、寝てしまった

その、甘えきった姿を思い出し

天乃は少し照れくさい表情で、顔を逸らす

死神「クオンサン、カリンノコト。スキ?」

天乃「……なんで?」

死神「キノウ、イッショニイタカラ」

天乃「貴方……見てたのね」

死神「ズットミテタ。クオンサンガ、オニイチャント、シヨウトシテイタコトモ」

天乃「っ…………」

死神「ワタシデヨケレバ、キス。スルヨ?」

天乃「そう言う問題じゃないのよ。ばかっ」


ではここまでとさせて頂きます


第4話「恋する胸の痛み」 みたいなもの


目標。スレ立て
では再開したいと思います


死神「ソウ。ナノネ」

天乃「ええ、そうよ」

簡単なことじゃない

時間を空ければいいと、女性は言ったけれど

果たして、それがいい方向に進んでいるかと言えば

そうでもない

時間を置けば置くほど

距離まで置いてしまっているような気がして

天乃は、切なさを感じていた

あれだけ妹、妹だった兄が

目もくれなくなってしまったと言うことに

寂しさを、感じずにはいられなかった

それが計算の上だとしたら

なんて、酷い人なのだろう。と

天乃は思うだけに留めて、枕を抱きしめた


死神「クオンサン」

天乃「…………」

死神「クオンサン」

天乃「なぁに。死神さん」

死神「ワタシヲヨンダノハ、ナンデ?」

寂しげな天乃の事を見下ろしながら

死神は小さな声で尋ねる

理由がなくても良い

意味がなくても良い

ただ、呼んでくれただけでも良い

死神のそんな瞳を見つめて

天乃は口を開く


1、慰めて
2、特に、理由はないわ
3、一緒に寝よう?
4、キス、してくれる?
5、私……これからどうなるのかな


↓2


天乃「慰めて」

死神「………………」

自分でも、何を言っているのか解らなかった

面影なんて重なるはずはない

人と精霊なんて、似てすらいない

温かいのか冷たいのかも解らないのに

天乃「……お願い」

埋めて、欲しかった

誰でもよかったわけではない

何でもよかったわけでもない

けれど……なぜか

人ではないにも拘らず

人の心を少しずつ理解しようとしている死神には、言えてしまった


何度かの接触が原因だったのかもしれない

人と精霊

主と従者

友人

親友

仲間

一人と一体を表す言葉はひどく曖昧で

定めることすらも、難しい

仲の良さは友達で

関係は、戦友であるはずなのに

天乃「………っ」

死神「クオンサン……スキ」

その接触は

友達などではなく

戦友なんて言う勇ましいものでもなく

けれど、恋人と言うには

まだまだ未熟で

天乃「……何、してるのかな」

死神「クオンサン……」

少女の零した涙を死神は拭い、

その赤い瞳で、切なさに乾き、悲しさに満ち

儚くも美しくそして、可愛らしい表情を見つめる

月が満ち、そして欠けていくように

瞳を閉じた天乃の唇に、死神は優しく重なった


何かが――壊れていく


1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流無()
・  結城友奈:交流有(ぼた餅(両方))
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流有(登校)
・伊集院沙織:交流有(登校、本心)

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流有(慰め)
・     神樹:交流無()


6月の3日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 15(中々良い)
  犬吠埼樹との絆 17(中々良い)
  結城友奈との絆 21(中々良い)
  東郷三森との絆 14(普通)
  三好夏凜との絆 40(高い)
伊集院沙織との絆 56(かなり高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 47(高い)
      死神との絆 31(少し高い)
      神樹との絆 -1(絶望的に低い)

大赦・神樹による、久遠天乃の警戒レベル○△□%程度?(検閲済み)
久遠天乃より、情報入手:樹海化し、撃退命令が下るレベル
犬吠埼風より、情報提供:大赦は久遠を味方だとは思っていない


√ 6月4日目 朝


コンマ判定表

01~10 バーテックス
11~20 
21~30 死神
31~40 
41~50 夏凜
51~60 大赦
61~70 新人ちゃん
71~80 
81~90 友奈
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし

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