大量の植物に覆われた音ノ木坂。
そこにはかつての人々が愛した景色は残っていない。
至る所に町の景観を無視した天まで届きそうな木が生え、舗装されていた道路は異質な草に覆われ、 タンポポが咲いていそうな道端には日本ではまず見られない花が咲いていた
そこには音ノ木坂の面影、人間の世界の面影は微塵も残っていなかった
その生き地獄と化した街を歩く一人の少女がいた
少女の名前は西木野真姫
彼女はかつてこの音ノ木坂を象徴した高校、音ノ木坂学院を廃校の危機から救うために結成されたスクールアイドル、μ'sのメンバーであった少女だ
彼女は蔦に覆われた空き家に忍び込み、缶詰めや飲料水の入ったペットボトルをかき集めていた
真姫「……ここのは結構残っているわね」
真姫「あら?トマトの缶詰めもあるじゃない、これは帰りが楽しみになるわね」
缶詰めと水をバッグに詰め、家を出た彼女に訪問者が現れる
それは人ではなく、灰色の甲殻に覆われた化け物……彼女はインベスと呼んでいた
インベス「キィアアアア」
真姫「まったく、なんでいつも何事もなく帰れないのかしら」バサッ
バッグを投げ捨てるように放り投げ、彼女は着ていたコートのボタンを外す
彼女の腰にはベルトが巻かれており、彼女の手には錠前が握られていた
― バナナ!!―
錠前が開くと声が流れ、真姫の頭上にバナナの彫刻が浮かび上がる
― ROCK ON ―
ベルトからファンファーレが流れ、少女の目が変わる
「……変身」
シャキイン
―Come on! バナナ・アームズ!―
―Knight of Spear! ―
彫刻は彼女の頭を覆い、彼女の身を守る甲冑へと形を変えていく
そこに可憐な少女の姿はなく、槍を構え、白銀と黄金に輝く鎧に身を包んだ赤い騎士に姿を変えた
真姫「はああああ!!」
騎士は怪物の集団へ臆する事無く突っ込んでいった
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第1話
にこはいつも通り、HRを終えて部室に来ていた
ラブライブへの出場を決意し、皆で一致団結してから、毎日ここへと通っている
にこ「にっこにこにー!皆いるー?」
真姫「あら、やっと誰か来たわね」
にこ「あれ?真姫ちゃんだけ? 他の皆は?」
真姫「穂乃果と海未とことりは今度のライブのための買い出しでアキバの電気街に行ってて、希と絵里は生徒会の仕事ね」
にこ「花陽と凛は?」
真姫「日直だって」
にこ「なーんだ、じゃあしばらくは真姫ちゃんとふたりっきりか」
真姫「嫌?」
にこ「相変わらず素っ気ないっていうか…あんた、もう少し素直に、キャッ!?」
地震、それも尋常では無い震度の地震だった
棚は大きく揺れ、ぎゅうぎゅう詰めにされていたにこのアイドルコレクションが少しずつ前に押され、最後には棚のほとんどの物が落ちていく。
ロッカーは扉が何度も開いては閉じ、中の物をばら撒く
揺れはすぐに収まったが、部室は荒れに荒れた
二人も大きな怪我をすることが無かったのは不幸中の幸いだろう
真姫「……大丈夫、にこちゃん?」
にこ「う、うん」
真姫「そう、良かっ……ッ!? 何アレ!?」
ふと見た窓の外の光景はにわかには信じられない物だった
生えてきた植物が音ノ木坂を埋め尽くされていく光景
まるで部室の窓がテレビの画面で、そこに映るのはただのCGであることを錯覚するような、非現実的な光景だった
にこ「とにかく外に出なくちゃ……」
真姫「なんなのこれ…」
真姫「そ、そうだ、皆に連絡しなきゃ……」
にこ「真姫ちゃん! いつ余震がくるかもわからないし、私達も早く外に出ないと」
真姫「でも……」
にこ「皆も無事なら後でわかるわよ!それよりもまずは私達の安全を確保しなきゃ」
真姫「わ、わかったわよ」
校庭は学校に残っていた生徒と教師で溢れており、部活動のユニフォームや制服が入り乱れていた
教師の注意喚起と生徒の動揺した声が溢れ、μ'sの仲間を探すのは困難を極めている
真姫「と、とにかく皆と合流しなくちゃ……とにかく連絡を……」
にこ「そんな……携帯もアンテナが立ってない」
騒然とした声をかき消すようにキャアアアアという悲鳴が上がり、真姫とにこを始めとした多くの者は反射的に校舎へ振り向く
自分達がいつも通っていた校舎が、自分たちが踏んでいる大地が植物に覆われていた
そして、音ノ木坂学院の全てが植物に覆われる
その場にいた全員が状況を理解できず一瞬の静寂が校庭を包む
一瞬の間を置いた後、多くの者はパニックに陥り、校舎とは反対側へ走りだす
教師の中には彼らを誘導しようと試みた者もいたが、悲鳴にかき消され人の波に飲み込まれていく
その中、真姫とにこは茫然と校舎の中を眺めていた
二人とも、無意識に言葉が零れる
「何あれ」
視線の先にあったのは校舎の壁にとり付けられている巨大なジッパー
ジッパーはゆっくりと開き、その中の森の風景を映し出し、異形の来訪者を招きいれる
???「ウギャアア」
???「ウォォォォ」
それは地球上に存在しないはずの化け物だった
音ノ木坂の校舎の窓を割り、怪物の群れが飛び立っていく
ある怪物は逃げる生徒を捕まえ、ある怪物は誘導をしていた教師を捕まえ、ある怪物は眼もくれずに秋葉の街へと飛び立っていった
にこ「に、逃げなきゃ真姫ちゃん!!」
にこの言葉に真姫もハッとする
そうだ、まずこの場から離れなくては……他の生徒より遅れて、二人は考える余裕もないほどに走り続ける
走りながら辺りを見ると、どこも学校を覆った植物だらけで安全な場所なんて何処にもない事を思い知らされる
二人は息を整えるために商店街の狭い路地へと逃げ込んだ
息を整える間、真姫は周囲を見渡す
よく見ると町を覆う植物には果実がついており、それが視界に入ると真姫は誘われるように果実を手に取る
(この果物……すごくおいしそう……)
「……ッちゃん!………真姫ちゃん!」
真姫「え!?な、なによ…にこちゃん」
にこ「なにじゃないわよ、あれを見て」
にこは大通りの方を指す
その先には先ほどの怪物の群れがいた
灰色の甲殻に身を包んだ怪物達、しかし真姫の視線を引いたのはその怪物達の進む先にいた集団だった。
黒い服に身を包んだ軍人のような男達は手に持った何かを腰に巻く、そして右手に握る何かを掲げる
すると、空中にジッパーが開いた
男達が右手に持っているらしき何かを腰のベルトに付けるとジッパーの中から松ぼっくりのような彫刻が落ちてきた
― 一撃・イン・ザ・シャドウ!! ―
男達の頭を覆った彫刻は形を変え、甲冑と変えていく
男達は戦国時代の槍兵のような戦士が現れ、怪物に戦いを挑んでいった
にこ「ね、ねえ、あの人達って私たちの事助けてくれるのかな」
真姫「そ、そんなのわかんないわよ……」
怪物たちと戦う槍兵達は自分にはヒーローに見えた
しかし、彼らが本当に助けてくれるヒーローなのかわからない
非現実的な現実を連続で体感し、真姫の頭はパンク寸前だった
(怪物の気を引いている今が逃げるチャンスなんじゃ)
(逃げる?どこへ?)
(見たはずよ、この植物が音ノ木坂全体を覆ったのが)
(いいえ、諦めちゃダメよ、どこかに安全な場所があるはず)
真姫「に、にこちゃん、逃げましょう」
にこ「え?」
真姫「今ならあの怪物たちに気付かれずに行けるわ」
にこ「う、うんそうだね」
しかし、その計画は実行する前に失敗する
槍兵「うわああああああああ」ガキィン
乱戦の中、怪物の一撃を受けた槍兵が吹き飛び、こちらに飛ばされてきた
槍兵は自分たちの目の前に落ちるとそのまま鎧が消散する
男はピクリとも動かなかった
槍兵に気を取られた怪物の一部がこちらを向く
真姫「あ……」
(見つかった)
(どうしよう、逃げなきゃ、にこちゃんを守らなきゃ)
(どうしよう…どうしよう…どうしよう)
頭が混乱する、めまいがして吐き気がする、思考がまとまらない
真姫は混乱しながら男の腰に巻かれていたベルトをはぎ取った
(そうだ、これがあればにこちゃんを守れる)
(アレを倒すのは無理でもにこちゃんを守るために足止めをするくらいなら)
先の見よう見まねでベルトだった物を腹に当てる
ドライバーからベルトが巻かれ、真姫の腰に固定される
後ろでにこが何かを叫んでいる気がするが、どういうわけか気にならない
(あ、でもこれだけじゃ……)
握っていた果実が姿を変え、錠前になる。
(そっか、これを使えばいいのね)
混乱した思考のまま、真姫は男たちの動きを真似る
錠前を開き、ドライバーに装着する。
― バナナ!―
真姫の頭上でジッパーが開き、そこからバナナの形をした物体が姿を見せる。
― ROCK ON ―
「確か…こうだったわね」シャキイン
ベルトについている刀を降ろすと、ファンファーレと共に降ってきた巨大なバナナが真姫の顔を覆う
「…え??バナナ?…バナナ……バナナ!?」
― Come on! バナナアームズ! Knight of Spear! ―
バナナが変形し、甲冑と変わる。
真姫はバナナの鎧を着た、黄と銀の鎧を纏った騎士となった。
(……え?)
(何これ…? 私なんでこんな事してるの?)
途端に冷静になる。 それでも現状は飲みこめない。
にこ「ま、真姫ちゃん……?」
真姫「に、にこちゃん……これ、どうしよう……私…」
怪物「グガァァァァ!」
にこ「あ、危ない!」
真姫「え? きゃあ!」
不思議な事だが真姫には戦い方がわかっていた。
怪物の攻撃をかわし、生まれた隙をついて攻撃する自分の姿がイメージされる
槍をどう使えば怪物にダメージを入れられるかのイメージが鮮明に頭に浮かんでいた
こちらを襲う怪物も2体3体と増えているが、その攻撃をかわし、反撃を加えて弱らせていくのは容易な事だった
真姫「えーっと……こうね!」
シャキイン
―バナナ・スカッシュ!!―
真姫「はあああああああああ!!」
槍から放たれるエネルギーがバナナの形を作り周囲の怪物を一掃する
攻撃を受けた怪物は爆発四散した
(………何なのこの力)
にこ「真姫ちゃん!!」
真姫「え!? な、何? にこちゃん」
にこ「あっちの怪物が・・・!」
にこの指す方を向くと、槍兵の男達は全員地面に倒れていた
槍兵たちを全員倒した怪物は真姫が倒した灰色の怪物と違い、緑の龍のような姿と青い虫の姿をしていた
何人もの槍兵と戦って傷一つない姿を見て真姫は直観的に理解する。
(こいつらを倒そうなんて考えちゃいけない!)
真姫「にこちゃん!手を出して!走るわよ!」
にこ「え?」
真姫「早く!」
にこ「う、うん」
二人は再び駆け出した。行くべき先もわからずに…
にこ「もう…大丈夫かしらね…」ハァハァ
にこ「それにしてもそれいつまで付けてるの?」
真姫「え?…ああ、そうね」
頭に変身を解く方法が浮かび、それに従う
鎧は消滅し、普段の彼女の姿が現れる
真姫「……これでいいわね」
にこ「もう、びっくりしちゃったわよ」
真姫「ゴメンね、にこちゃん」
にこ「いいのよ、それにしても真姫ちゃんって意外と度胸あるのね…」
真姫「あ、あの時は頭の中がこんがらがってただけで……」
にこ「でも、守ってくれてありがとう」
にこ「わたしにはあんな事できなかったわ」
真姫「え、えへへ……ってそんなことよりこの先どうしましょうか」
にこ「そんなことって…でもそうね。とにかくどこかに落ち着かないと」
にこ「確かこの辺りって、○○の近くよね?」
真姫「そうね……ねぇ、ならここから近いし、一旦私の家に行かない?」
にこ「え?別にいいけど…他にいい場所もないし…」
怪物「ギャアア!!」
にこ「ひっ!!」
真姫「!!」
― バナナ!―
……………
…………
………
― 西木野邸 ―
にこ「…」
真姫「……植物だらけね」
にこ「……そうね」
にこ「で、でも明かりはついてるみたいだし、だれかいるんじゃない?」
真姫「ママ、無事かな…」
ガチャ
(鍵が開いてる…あれ?家の中には植物は入っていないのね)
真姫「ママー!」
(いないのかしら?リビングは……)
真姫「……やっぱりいない」
にこ「真姫ちゃん、お母さんは?」
真姫「いないみたい」
にこ「でも家が荒れてる様子も無いし、避難したのかな?」
真姫「それだといいんだけど…」
真姫「私ちょっと上も見て来るね」
にこ「じゃあ私も……」
真姫「にこちゃんはここにいて、もし上にあの怪物がいたらにこちゃんを守れるかわかんないし・・・」
にこ「あっ……うん」
真姫「ここは中から鍵もかけられるし、出口も二つあるから」
真姫「それじゃ何かあったら叫んでね」
にこ「……ねえ、そのベルト、私に頂戴よ」
真姫「え?」
にこ「真姫ちゃんだけがそんな危ない目に遭わなきゃいけないのが気に入らないのよ」
真姫「そ、そんな事言っても…」
にこ「…じゃあ、あんたは危ない目に遭っていいの?」
にこ「そんなの間違ってるわよ!!」
にこ「大体私の方が年上なのよ…」
にこ「なのにあんたに守られてばっかりで……」ポロポロ
にこ「にこだってあんたが危ない目に遭うのなんて考えたくもない!!」
にこ「あんたが一人で苦しんでる所なんて見たくないのよ!!」
にこ「だから……だから……」
真姫「………」
真姫「ごめんね、にこちゃん」
真姫「私、にこちゃんの気持ち、ちゃんと考えてなかった」
真姫「でもね、にこちゃんと私、どっちが運動神経がいいの?」
にこ「え、そんなの今
真姫「当然この私よ。」
真姫「それだけじゃないわ」
真姫「この真姫ちゃんの方が身長も高いし、頭も良いし、私の方がこれを使うのに向いているはずよ」
真姫「それに、にこちゃんはさっき、自分で自分にはできないって言ったのよ」
にこ「なっ……あんた……」
真姫「でもね。私…これから先絶対に1人では生きられないのはわかるの」
真姫「あなたがいるから私は戦えるの」
真姫「あなたがいるから私はこんな滅茶苦茶な世界でも生きていられるの」
真姫「私はにこちゃんを絶対に1人にさせないし、私は絶対に1人にならない」
真姫「絶対にあなたの前に生きて戻ってくる。約束するわ。賭けてもいい」
にこ「……わかったわ」
にこ「でも約束しなさい……絶対よ、絶対に戻ってくるのよ」
真姫「ありがと。約束よ。」ガチャ
(ええ…絶対に戻ってくるわ)
‐2階通路‐
(…私の部屋やママの部屋に気配はしないけど)
真姫「ママーいるー?」
………
(反応なしか)
ドサッ
「!?」
(今の音は……寝室?)
「ママ…いる?」
返ってくる言葉はなく、沈黙が答える。
(気のせい? いえ、そんなハズがない)
(落ち着きなさい…大丈夫、私にはできるわ)
ベルトを巻き、深呼吸を行う。彼女は覚悟を決めて扉を開く。
真姫「ママー?」ガチャ
???「グォォォォン!!」ブォン
真姫「!!」
扉を開けた瞬間に巨大な爪が眼前に迫る
真姫はとっさに避けるも、バランスを崩して転んでしまう
真姫「……やっぱりいたわね」
寝室にいたのは怪物だった。
シーサーの様な顔をした、巨大な爪と緑の陶器の様な皮膚をした怪物
怪物の感情など想像もできないが、この怪物が真姫とにこに危険を与えるのは間違いない
真姫「さて、不法侵入している怪物には出ていってもらいましょうかしら」
― バナナ!! ―
― ROCK ON ―
ベルトから流れるファンファーレはこれから戦いに臨む真姫を鼓舞しているようだった
「変身」
シャキイン
―Come on!バナナアームズ!Knight of Spear! ―
天井に開いたジッパーから降ってきた鎧を身に纏い、真姫は再び騎士へと変わる
真姫「ハァ!」
だが、真姫の放った渾身の一撃は怪物の頑強な皮膚を貫くことは出来なかった
真姫「なっ!?」
怪物は真姫の攻撃を受け止め、鉤爪によるカウンターを返す。
真姫「きゃあ!?」
その一撃は真姫の鎧を破壊するには至らなかったが、鎧越しに与える衝撃は真姫の視界を一瞬でも暗転させるのに十分な物だった
怪物は痛みに怯んだ真姫へ2撃、3撃目を容赦なく浴びせる
そのまま、怪物はされるがままの真姫を投げとばすと、飛ばされた先にの窓は開いており、真姫は宙に投げ出され落下する
真姫「きゃあああ!!」
3、4メートルはある高さから投げ飛ばされた衝撃は、鎧に身を守られていたとしても満身創痍の真姫の闘志にトドメを刺すのには充分な物であった
真姫「……あっ、ああ」
断末魔も言葉にならない、両足で立つ力も殆ど残っていない
(痛い痛い痛い痛い痛い)
(体が…動かない……)
(私……ここで死ぬのかな…)
走馬灯だろうか、様々な記憶が頭の中に浮かんでは消えている
幼い頃に夢を持って将来に憧れたこと、音ノ木坂に入った時のこと、、穂乃果に誘われた時の事、曲を作っていた時の事
μ'sに入った時のこと、 μ'sの活動、数々のライブ、様々な楽しかった思い出が頭に浮かんでは消えていった
μ'sの皆との思い出も鮮明に思い出す
にこと交わした約束も頭をよぎる
(そうだ……約束したんだ)
(私は…)
あの怪物は私にとどめを刺そうとしているのだろう
だがそうはいくものか
両手に力を込め、槍を支えに体を起こし、怪物を睨む
ヘキジャ「グッ!?」
怪物の動きが一瞬止まった
(今だ)
真姫は一瞬の好機を逃すまいとドライバーに手をかけた
シャキイン
―バナナ・スカッシュ!!―
槍から放たれた黄色い閃光が大地駆ける
怪物に大地から沸き上がったエネルギーが直撃する
真姫は槍を支えに全身の力を込め立ち上がり、怪物へ向かって一心不乱に駆けだした
真姫「うっ…………あああああああああ!!!」
シャキインシャキインシャキイン
―バナナ・スパーキング!!―
ヘキジャ「ガギィ!!」
槍は巨大な黄金のオーラを纏い、バナナを模した一撃が怪物を叩き斬る
真姫の渾身を受け、怪物は爆散した
(良かった…約束……守れた………)
糸が切れた人形のように脱力した真姫は、芝生の上に横たわる
閉じていく視界にこちらに走り寄るにこが映る
(何よ……そっちは約束……守れてないじゃない)
涙を目に溜めながら駆け寄るにこを眺めて、真姫はそんな事を思っていた。
第1話 完
『次回のラブライブ!』
「他の皆は大丈夫なのかしら……」
「もし見つけたら私が守ってあげるわよ」
「ウチが真姫ちゃんを守ってあげるから……」
「変身」
― ブドウアームズ! ―
― 龍!砲! ハッ!ハッ!ハッ! ―
希「次回、Someday Of No Return」
第2話『Someday Of No Return』
真姫はソファの上で目を覚ました。
あれは悪い夢だったのかとでも思おうとしたが、自分を心配してかけられた声でアレが現実を実感してしまう。
にこ「あっ、真姫ちゃんやっと起きたのね」
真姫「にこちゃん……私……っ!?」
体を起こそうとすると小さな痛みが走る。視線を落とすと体や腕が包帯で巻かれていた。
少し不格好だけど、それでも最低限の治療は正確にされている様だった。
真姫「これ、にこちゃんがやってくれたの?」
にこ「……心配させるんじゃないわよ!!」
真姫「あっ……ごめんね…」
真姫には、にこは少し顔が、特に目元が赤い様に見えた。
真姫「……ねえ、私ってどのくらい寝てたの?」
にこ「丸1日は寝てたわ」
にこ「ごめんなさい……私が何もできなかったせいで……」
真姫「もう、そんなことは言わないでよ」
真姫「言ったはずでしょ?私は貴方がいるから生きていけるんだって」
にこ「………そう改めて真顔で歯の浮く台詞言われると反応に困るわね」
真姫「ひどい!?」
にこ「そんな事よりも、体の調子ってどうなの?」
真姫「そんな事……少し痛みは残ってるけど大丈夫よ」
にこ「そう、よかったわ。じゃあ安静にしててね」
真姫「…ねえ、2階の寝室ってどうなってる?」
にこ「あ、うん。真姫ちゃんを運んだ後に植物が入ってこない様に閉めたわ」
真姫「そう、ありがとうね」
(あそこから入ってきたって事なのかしら……あら?)
にこ「………」
真姫「ねえにこちゃん、何か気になることがあるの?」
にこ「え、何でも無いわよ」
彼女の表情と声色は動揺を隠せていない。
真姫「何か隠してるでしょ?」
にこ「そ、そんな事ないわよ」
真姫「嘘よ。にこちゃんって思ってる事が表情に出やすいわよ」
にこ「うっ」
真姫「例えば……そうね、家族の事じゃない?」
にこ「な、なんでそれを」
真姫「家族のこと気にするのなんて当たり前でしょ」
真姫「それに、にこちゃんの性格ならそう思うのも簡単にわかるわよ」
真姫「じゃあ……っ、行きましょうか。着替えるから少しあっちを向いててくれる?」
にこ「でも真姫ちゃん怪我が」
真姫「こんなの大したことないわよ」
真姫「それに私も今のオトノキがどうなってるのかは見ておきたいしね」
……………
…………
………
真姫「でも本当にそこらじゅう植物だらけね」
にこ「そうね」
真姫「これ、どこまで伸びてるのかしら」
にこ「そんな事わかんないわよ」
真姫「そうよね…」
にこ「……」
真姫「……」
にこ「そろそろだわ」
真姫「……ここがにこちゃんの住んでるところ?」
にこ「……うん、わかってたけど」
真姫(…植物だらけね)
真姫「……多分皆避難してるわよ」
にこ「…そうだよね」
真姫「……ねえ、中に誰か残ってるかもしれないし見にいかない?」
にこ「……うん」
にこ「ここよ」
真姫「へえ、にこちゃんこういうアパートに住んでたのね」
にこ「そんなのはどうでもいいでしょ!」
真姫「はいはい、扉も植物だらけね」
真姫「にこちゃん、ちょっと下がってて」
真姫はベルトを腰に巻き、錠前を開く。
― バナナ!!―
頭上にバナナの彫刻が浮かび上がる。
― カモン! バナナアームズ! Knight of Spear! ―
真姫は再び騎士へと変身する
真姫「よし」
真姫はひたすら扉を覆う植物を毟りり、扉が姿を見せる
真姫「これでいいわ。開けるわよ?」
にこ「……うん、覚悟はできたわ、これを使って」
真姫「……ええ、ん?」
真姫「いらないわ…カギ、開いてるみたい」
真姫「……大丈夫?ここで待ってた方が」
にこ「大丈夫よ、乙女に二言は無いわ」
いつもは頼もしく見える彼女の啖呵が今はいつになく心細く見えた。
部屋に入った二人には、部屋の中が普通に見えた。
地震で物が散らかった様子こそあるが、それ以外は何者の侵略を受けていないようで、その空間は自然と安心感を感じさせた。
真姫「気をつけてね、どこからあの化け物が出るかわからないから」
にこ「ええ」
にこ「……誰もいないわね」
にこ「こころー!ここあー!」
真姫「……本当に誰もいないのね」
真姫「それに、ここに怪物はいないのね……」
にこ「あれ?これって…」
真姫「……置き手紙?」
にこへ
あなたは無事でしょうか
にこが家に帰ってきた時を考えてこの手紙を残しておきます
ママは皆一緒にユグドラシルという団体の保護を受けています
この手紙を読んでいるという事はにこは保護を受けられていないという事でしょう
この人たちは今後もこの辺りのパトロールを続けるようなので見つけたら保護を受けてください
にこの無事を祈っています、いつでもにっこにこにー よ!
ママより
真姫「皆、無事みたいね」
真姫(でもにこちゃんって妹いたのね)
にこ「よかった……本当に……よかっ……」
真姫(ん?このユグドラシルっていう団体どこかで聞いたような…)
真姫「… ねえ、この会社……」
にこ「うっ……ママ…こころ…」
真姫「………ちょっと外の見張りをしてくるわ」
真姫「ユグドラシル……」
真姫(私、この名前聞いたことがあるのよね)
真姫(製薬企業だったと思うけど……こんな活動してるみたいだし国絡みの団体なのかしら?)
真姫「まあいいわ、ひとまずはその人達を探して、にこちゃんを保護してもらうとしましょう」
…………
………
真姫「という訳で、にこちゃんには悪いけど、しばらく待っててもらえない?」
真姫「やっぱりにこちゃんを護りながらっていうのは自信がなくて」
にこ「ええ、わかってるわ……」
にこ「でも…ほかの皆は大丈夫なのかしら」
真姫「皆ならきっと大丈夫よ、もし見つけたら私が守ってあげるわよ」
真姫「それじゃ…行くわね」
「…無事に帰ってきてね」
にこは、自分でも気づかない程に小さくつぶやいていた
真姫「……っと、出てきたわいいけどパトロールが今どこにいるかなんてわからないのよね」
周りを見てもあの植物だらけで、誰かがいる様子はない。
植物を見れば見る程、それが自分の知らない世界の物が突然音ノ木坂の街を覆ったのが不思議に思える。
真姫「この植物、一体なんなのかしら」
真姫「木の実もなってるし」
変身を解き、1つ取ってみるが、初めて見た時程の興味と食欲は湧かなかった。
真姫「こんなゲテモノを私は美味しいそうなんて思ってたのかしら」
真姫「……食べてみようかしら」
皮を剥いてみると、白くみずみずしい果肉が詰まっていた。
不思議とこう見るとそれほどゲテモノという雰囲気はなく、普通に食べる事ができそうに見えてしまう。
真姫「果肉はライチみたいね」
果肉を口へと運んでみる、味は……
「あかん!!」
真姫「!?」
「それは食べたらあかんよ!真姫ちゃん!」
真姫「……希?」
振り向いた視線の先にいたのは彼女と同じスクールアイドルμ'sのメンバーの一人、東條希だった。
……………
…………
……
希「真姫ちゃん!! 良かった、無事だったんやな」
真姫「希こそ、無事でよかったわ」「他の皆にも会えなかったし、心配したのよ」
真姫「それよりなんでここにいるのよ」
希「あれからエリちとあの怪物から逃げてたんやけど、どこかでエリちとはぐれっちゃったんよ」
真姫「そう…でも本当に無事でよかったわ」
真姫「でもここはあの化け物が出るし、一旦安全な所に行きましょう、私についてきて」
真姫は希に背を向け、にこの家へ向かう。
希は自分が守らなければ…今の真姫はそんな使命感に満ちていた。
希「……せやな、安全な場所に」
― ブドウ! ―
(え?この声って…)
「真姫ちゃんを連れていかんとな」
― ROCK ON ―
シャキイン
― ハィィィ! ブドウアームズ!! ―
― 龍・砲・ハッ・ハッ・ハッ! ―
真姫「のぞ、きゃあ!」
首を狙い飛んできた手刀を間一髪でかわす。
態勢を整えた真姫の視界に映ったのは、中華風の甲冑をつけ、胸に葡萄の装飾を着けた緑の銃士だった。
希「あーもう、避けたら危ないやんか」
真姫「な、なんなのよその姿」
希「答える必要はないと思うよ?」
希「真姫ちゃんもわかってるんでしょ?」
真姫「そう……希もあのベルトを拾ったのね。」
真姫「でもなんでこんな事するの!」
希「うーん、なんでって言われてもなぁ。強いて言うならエリちのため、μ'sのためやろか」
真姫「そんなハッキリしない答えなんてあなたらしくないわね、いいわよ」
― バナナ! ―
真姫「そっちの方から喋りたくなってもらうから」
― ROCK ON ―
シャキイン
― Come on!―
― バナナアームズ! Knight of Spear! ―
バナナの鎧は真姫の頭を覆い、希の放つ弾丸を弾きながら変形していく。
続いて放たれる弾丸も槍で弾きながら一気に距離を詰め槍を振るう。
だがその攻撃は希に最少の動きで避けられてしまう。
真姫「くっ、このぉ!」
希「どうしたん? それじゃあうちには当たらんよ?」
真姫「くぅ、うっ・・・!?」
反撃の銃撃を受けると、胸の傷にも痛みが走り、真姫は咄嗟に体を庇う
希「ん? 真姫ちゃん怪我してるん?」
希「じゃああまり無理させちゃいかんよね」
そう言うと希は懐から新しい錠前を取り出し、開錠する。
― キウイ! ―
希「大丈夫、ウチが守ってあげるから…」
希「ちょっと痛いの我慢してね」
― ROCK ON ―
シャキイン
―ハィィィ! キウイ・アームズ!―
希の纏っていた鎧は消滅し、キウイの形をした新たな鎧が落ちてくる。
― 撃・輪! セイ! ヤッ! ハ!―
鎧が変形し、希は新たな姿を現す。
そして希の両手には輪切りのキウイを模した巨大なチャクラムが握られていた。
真姫「なっ!? 何よそれ!?」
希「これが戦極ドライバーでの戦い方だよ」
希「それでね…こういうのは使い分けが重要なんよ!」
希は撃輪を構えると真姫との距離を詰め、武器を振るう
真姫の頭に怪物の巨大な爪が光景がよぎる
真姫「きゃぁ!」
希の攻撃を間一髪で避ける。
しかし、希は左足を軸に回転し、振るった撃輪の勢いで追撃を振るう。
真姫「……うっ、くぅ!!?」
咄嗟に槍で身を庇うが、その防御も弾かれ、衝撃で腕に激痛が走る。
バランスも崩した真姫には勢いを増す希の攻撃を受けるばかりで、反撃も許されなかった。
踊るように撃輪を振るう希とそれを避け続ける真姫、この一方的な状況が逆転する事は無い。
希「あぁもう、埒が明かんなぁ、たあ!」
希は後ろに下がると撃輪を投げる。高速で飛ぶ撃輪を真姫は避けられずに直撃してしまう。
強烈な一撃を受けた真姫は吹っ飛び、地に横たわる。
なんとか体を起こすが、真姫の体は鉛の様に重くとても戦えるような状態ではなかった。
真姫「うっ……あっ……」
希「さて、これで終わりよ」
希はドライバーの刀を叩く。
シャキイン
― キウイ・スカッシュ! ―
希の両手に戻った撃輪は緑の光を放ち、妖しく輝いた撃輪は閃光の刃になりながら真姫めがけて高速で飛行する。
『次回のラブライブ!』
「インベスを操れる……」
「これも戦極ドライバーの力の一部や」
「私はね…今のあなたには………負けたくないのよ」
「私はもう二度と、誰にも屈しない!!」
「変身」
― マンゴー・アームズ! ―
― Fight of Hammer!―
希「次回、『純愛 sniper』」
すみません
アレが残っている間はやっぱり更新しないほうが良いと思ったので、今週も休みにすると思います
第3話『純愛 sniper』
希の放った閃光は真姫に到達しなかった。
真姫と希の間に灰色の怪物が割って入り、真姫の代わりにその一撃を受けて爆散する。
希「なっ!?」
真姫「・・・え?」
『ガァァァァ!』
次の瞬間、どこからか大量の怪物が現れ、二人を襲う
希「くぅっ・・・なんでこんな時に」
(今のうちに…!)
真姫は槍を振るい周囲の怪物を追い払うと、一心不乱に駆けだした
希「真姫ちゃん!! 待って!」
希も真姫を追おうとはするが怪物が道を塞ぎ、進めない
希「あぁもう!!」
シャキイン
― キウイ・スカッシュ! ―
希は緑の光を放つ刃を振るい、周囲の怪物を薙ぎ払うが、真姫を見失ってしまっていた。
……………
…………
………
真姫「ハァ…ハァ…、これくらい逃げれば…」
真姫「ふぅ…少し傷の様子を見ておいた方が良いかしら」
真姫は変身を解き、服をめくり傷を見る
真姫「うわ、血が出てるわね」
真姫「包帯と消毒液も持ってきて良かったわ…うっ、やっぱり染みる…」
真姫「応急処置はこれぐらいでいいかしら?……これからどうしようかしら」
真姫「あの様子じゃ希とまた会ったら戦うことになりそうだし・・・」
真姫 「ヘタに動いて遭遇しちゃったら今度こそやられるわね・・・」
真姫 「希…どうしたのかしら…」
真姫「……にこちゃんと約束したものね。皆も見つけて無事に帰るんだから」
真姫「希…覚えてなさいよ」
「……よし、まずは希から話を聞かなくちゃね、そのためには作戦と新しい装備が欲しいけれど」
「作戦の方はともかく、このバナナの錠前ってどうやって手に入れたんだっけ」
「……確か、この木の実が変化したんじゃなかったかしら」
「でもさっき取った時は木の実にはならなかったけど……」ブチッ
「やっぱり変わらないわね、あの時との違いって何だったのかしら……ん?」
ブロロロロロロロロロロ
「……何か聞こえるわね、エンジン音のような……」
キキィッ
希「やっと見つけたで、真姫ちゃん」
真姫「希……あなたバイクに乗れたのね、初耳だわ」
希「うーん、ついこの間まで乗れなかったんやけどね。」
希「これ身に着けてたら自然と乗り方がわかるんよ、スピリチュアルやろ?」
真姫「なんでもかんでもそれで説明できると思ったら大間違いよ」
希「でも真姫ちゃんも戦えるのはそのベルトのおかげやと思うけど?」
真姫「……やっぱり色々わかってるみたいね、じゃあアンタには一回頭を冷やしてもらうわよ」ジャキイン
真姫は再びベルトを巻き、錠前を開く
― バナナ! ―
真姫「変身」
― カモン!バナナアームズ! ―
― Knight of Spear ―
真姫は騎士に姿を変えて希へ挑む
希「真姫ちゃん、顔付き変わったね」
希「でもうちも負けられないんよ」
希もまた、両腕に撃輪を召喚し真姫を迎え討つ
希は巨大な撃輪を盾の様に扱い、真姫の攻撃を受けつつも、以前と同じ様に回転の勢いに任せて撃輪を振るう
真姫はそれをかわし、反撃の突きを繰り出す
希「きゃあ!!」
突きは希の胸をとらえ、回転のバランスを崩す
真姫「フフ、この真姫ちゃんに同じ攻撃が通じるとは思わないで欲しいわね」
真姫「そんなワンパターンな攻撃、隙を見つけて突きを入れれば余裕よ」
希「……やっぱり真姫ちゃんは凄いんやなぁ」
希「じゃあうちも奥の手を使わせてもらうわ」
希は錠前を取り出し開いた
― ブドウ! ―
空中に葡萄を模した彫刻が浮かび上がり、希はベルトの錠前を入れ替える
― ROCK ON ―
シャキイン
― ハィィィ! ―
―龍・砲!ハッ・ハッ・ハッ! ―
巨大な葡萄が希の頭部を覆い、変形する
希は紫の鎧を身に纏った銃士へと姿を変えた
真姫「あら?それが奥の手?それじゃあ私には勝てないわよ」
希「真姫ちゃんはいつも自信満々やなぁ、じゃあこれはどうかな?」
希は近くにあった木の実をもぎ取ると、それはパインの錠前へと変化した。
希「お、レアものやん、やっぱりうちはツイとるなぁ」
ガキィン
希が錠前を開くと、空中にジッパーが開き、そこからシカのような怪物が現れた
シカ「グゥゥゥゥ……」
真姫「なっ!? 希! どういう事!?」
希「フフ……インベスを操れる…」
希「これも戦極ドライバーの力の一部や」
真姫「へえ、これそういう名前なのね…やっぱり希には色々聞かなきゃね」
希「そうは上手くいかないよ?」
シカの怪物が真姫へ向かってくる
(落ち着きなさい…どんな攻撃が来るか見極めるのよ…)
だが怪物に集中していた真姫はその背後から飛んできた光弾に対応できなかった
真姫「くぁっ!! 」
希「真姫ちゃん、相手は一人や無いんよ?」
真姫「のぞ……がぁっ!?」
一瞬の隙だったが、その隙をついて怪物はその強靭な足から放つ蹴りを真姫の腹部に入れる
胃の中身が逆流しそうな鈍痛が走る、首の下までこみあげて来る吐き気に思わず口に手を添えてしまう
そんな隙を見逃さず、青い怪物は角を使って真姫を放り投げる
真姫「ぁあ!!」
空中で2転、3転した真姫はアスファルトの塀に叩きつけられる
真姫「……っあ……っう」
希「真姫ちゃん、辛いでしょ?もう降参してくれない?」
真姫「お……お断り……よ」
真姫「今のあなたには……負けたくないのよ」
希「そっか、痛い事はさせたくないんだけど、少しの我慢やからね」
(何か・・・何か逆転の方法は・・・)
希が言葉を出さずに手で合図を出すと、怪物が巨大な角をこちらに向け突っ込んでくる
だが真姫の目は怪物も希も写していなかった
その目に映っていたのはぶつかった塀に垂れ下がっている果実
(そうだ……これを使えれば)
一番近くにあった果実を手に取る
それは真姫の手の中で新しい錠前へと姿を変えた
希「!? それは」
真姫「希……私はもう二度と、誰にも屈しない!」
ガキィン
― マンゴー ―
空中にマンゴーの鎧が浮かび上がる
真姫「私は、貴方にも勝ってみせるわ!」
― ROCK ON ―
シャキイン
― マンゴー・アームズ! ―
バナナの鎧は消滅し、マンゴーが鎧へと変形する
― Fight of Hammer!―
真姫は山吹と赤の鎧に身を包んだ闘士へと姿を変えた
右手に握られた巨大なメイスを引きずり、真姫は希へ向けて一歩、また一歩と歩み寄る
それを阻もうと怪物は真姫へと突進するが、真姫は片手で怪物の角を掴み、勢いを完全に受け止める
怪物はそこから一歩も真姫を動かす事は出来なかった
真姫「……邪魔よ」
そのまま真姫は怪物の顔面へ膝蹴りを入れ、蹴り上げられた顔に裏拳を叩き込む
『グッ!? グゥオォ!!』
そのまま真姫はメイスを怪物に突き立て、怪物を放り投げる
飛んでいった怪物は塀の向こう側へと姿を消した
真姫「っと、これ良いわね、使い勝手自体はそれほど良くないけど」
真姫「……もう終わり?」
希「っ、まだよ、まだ負けんよ!!」
希は銃から大量の光弾を放つ
だがいくら攻撃を受けても真姫の歩みは止まらない
希「…くっ、ならこれで」
シャキイン
― ブドウ・スカッシュ! ―
銃口にブドウの実の形をしたエネルギーが集っていく
真姫「……言ったはずよ、希、私はもう屈しないって」
シャキイン
― マンゴー・スカッシュ! ―
真姫「はぁぁぁああああ!」
真姫はメイスを回し、メイスにエネルギーが蓄積されていく
希の弾丸は龍の形を作り、真姫へ向かって飛ぶ
真姫はオーラを纏ったそれを打ち返し弾丸が空へと消えていく
真姫「やぁぁぁ!」
そのまま真姫は希に向かい、思いっきりハンマーを振る
溜まったエネルギーはカットされたマンゴーの形を作り、希へと飛んでいく
希「うっ、きゃあ!?」
希はエネルギーの直撃を受け吹き飛ぶ
希「くぅっ…真姫、ちゃ……」カクッ
真姫「…私の勝ちね、希」
真姫「…全く、ここで寝られたらどうすればいいのよ…」
「……一旦にこちゃんの家で話を聞きましょうか」
「……っと希、意外と軽いのね」
「にこちゃんにはなんて説明しようかしら」
真姫が家に帰るまで、彼女の言葉には誰も応えなかった
『次回のラブライブ!』
穂乃果「きゃあああぁぁ!」
ことり「きゃあああああ!」
穂乃果「ここどこなのー!」
ことり「ごめんね、穂乃果ちゃんを危ない目に合わせられないよ」
― ドリアン! ―
ことり「変・・・身ッ!」
― ドリアンアームズ! ―
― Mr.Dangerous! ―
『次回のラブライブ!』
『Spica the wind』
だってー可能性感じたんだ
そうだ すすめー
後悔したーくない 目ーの前に
僕らの道があるー
レッツゴー!ドゥーン!アーイドゥーン! アーイ! ラブイエストゥアーイ! ドゥーン! アーイライブ!
レッツゴー! レッツゴー! ハーイ!
これが私、高坂穂乃果!高校2年!
今、私達は大ピンチなの
穂乃果「ここどこー!」
ことり「待ってよー穂乃果ちゃーん」
それはµ'sのライブのための買い出しがきっかけだった
数時間前にさかのぼって、私達はアキバの街を歩いてたんだ。
海未「っと、衣装の材料はこれで全部ですか?」
ことり「うん、これで全部だよ。じゃあ学校に帰ろ?」
穂乃果「そうだ!ねえ、皆に何か買っていかない?」
ことり「いいね!そういえばこの近くに新しいケーキ屋さんができたらしいんだ」
海未「あ、あの本場フランスで国籍を取ってまで修業したというカリスマパティシエのお店ですか?」
ことり「うんっ!、あそこのお店のケーキ、とっても美味しいってバイト先でも評判だったんだよね」
穂乃果「おぉ!じゃあさっそく買いにいこうよ!」
それから、穂乃果達はケーキを買って、街中を歩いてたんだ。
海未「結構時間をかけてしまいましたね、さすが人気店ということでしょうか」
ことり「早く戻らないとね。ごめんね、ことりがあのお店を奨めたばっかりに」
海未「いえ、どちらかというとケーキを前に悩み過ぎた人に原因がありますよ」
海未「ねえ、穂乃果?」
穂乃果「だ、だってあんなに美味しそうなケーキがいくつもあったら普通迷うよー」
穂乃果「大体海未ちゃんも穂乃果とそんなに変わらない位目を光らせて迷ってたじゃん!」
海未「そ、そんな事はありませんよ」
エーウミチャンモ マヨッテタヨー ソンナコトアリマセン!ワイワイ
ことり「二人とも元気いっぱいだねぇ、それだけ、ケーキが楽しみなのかな?」
海未「そ、そんな事ありませんよ!」
穂乃果「えー?じゃあ海未ちゃん選ぶの最後ね!」
海未「そ、そんな!ずるいです!」
穂乃果「フフ、素直になっちゃいなよ~♪」
そんな会話を繰り返しながら、穂乃果達はオトノキへ向かってたんだけど……
ことり「……あれ?」
穂乃果「あれは……」
海未「通行止めでしょうか……」
穂乃果「ええー!? じゃあ遠回りになっちゃうよぉ……」
それから穂乃果達は色んな場所を回ったんだけど……
ことり「こっちも……」
海未「通行止めですか……」
穂乃果「じゃ、じゃああっちの道は……」
どこへ行っても通行止め、まるで穂乃果達がオトノキに行くのを邪魔してるみたい。
海未「こっちも駄目ですね」
海未「なんでどこも通行止めなんでしょうか」
穂乃果「うぅ……これじゃ帰れないよー」
それから、穂乃果達は偶然近くだった神田明神で休憩しながら作戦会議したんだけど……
穂乃果「どうしよう、どこもかしこも通行止め、これじゃ家にも帰れないよ」
ことり「何があったのか聞いても答えてもらえなし……」
海未「いくつかニュースも見てみましたが特に言及がないみたいです…」
穂乃果「もーう!どうしたらいいのー?」
ギュイーン
その時、皆の耳に不思議な音を聞き取ったんだ。
まるで、何かが開かれた様な音。
でも、普段聞きなれない、不思議な音。
ことり「……ん?」
海未「今、何か……」
穂乃果「変な音が……」
海未「な、なんでしょう……」
穂乃果「………ちょっと見てくるよ!」
それで、穂乃果はその音ノした方に向かったんだけど……
穂乃果「たしかこっちの方から……」ガサガサ
穂乃果「………きゃあ!?」
そこから穂乃果はまっさかさま。
落とし穴に落ちたみたいに地面を落ちてったんだ。
ドシンって音がしそうな勢いで尻もちをついて、周りを見渡すと……
「え?どこ……ここ?」
そこは地面の中でも、神田明神の敷地でもなくて、辺り一面に見た事もない草木が生い茂った、森だったんだ。
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