「エイラ、何してるの?」
エイラことエイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉は自室の床にゴリゴリとチョークを使い、何かを書き込んでいる。
「ン、サーニャ。
良いところに来たナ」
エイラは床に書き上げた魔法陣を見せる。
「なに、これ?」
サーニャ、サーニャ・v・リトヴャクまたはアレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャクは床の魔法陣を見る。
ああ、また、占いのなにかねと見当を付けつつ、魔法陣の制作者を見る。
「未来に行ける魔法陣ダ」
エイラは胸を張って答えた。
エイラの脇には何やら胡散臭い本。
また、訳の分からない胡散臭い老婆にガラクタを掴まされたかと、サーニャは内心思い。
成功せずに、拗ねるエイラをどう慰めようかと算段しつつその様子を眺めることにした。
「えっ~ト、次は『魔力を注入します』カ」
エイラは目を閉じて、魔法陣の淵に手を置く。
そして、思いっきり魔力を込めてみる。
「成功しないね」
「おっかしいナ?
魔法陣は合ってるはずなんだけド……」
エイラはしばらく考え、ポンと手を打った。
「魔力が足りないんダ!」
そう言って、エイラは部屋を慌てて走り出て行った。
そして、直ぐに戻ってきたと思ったら、両脇にストライカーを抱えている。
ご丁寧にmg42まで持って。
「そ、そんなの持ってきてどうするの?」
「魔力を増強するんダ」
エイラはヘヘーンと得意げに笑うと、ストライカーを履き、再び、魔法陣に魔力を込めた。
取り敢えず、勝手にストライカーを持ってきた事を怒られなければ良いけどとサーニャは思い、ベッドの縁に腰掛ける。
そして、次の瞬間、部屋が一瞬、まるでカメラのフラッシュを焚いたかの様な光に包まれた。
「え、エイラ!?!」
サーニャは咄嗟に光の中心部に近い、エイラの名前を呼ぶ。
しかし、返答はない。
数秒後、漸く、視界が戻ってきたサーニャは息を飲むより他がなかった。
「エイラが、居なくなっちゃった……」
サーニャはエイラが先ほどまでいた場所を見るが、確かに、エイラはいない。
エイラが手を置いていたらしい場所は黒く焼け付いており、エイラの手形がついていた。
「ここ、何処ダ?」
エイラは周囲を見回した。
よくわからないが、どこか広い、闘技場のような場所に立っていたからだ。
「何者だ!?
どうやってここに入った!!」
脇に立つ、黒いスーツを着た東洋人の女性が叫ぶ。
扶桑語で叫ばれているため言葉の意味は分からないが、どうも怒っていると言う事はわかる。
「何言ってるのかわらねーかラ、ブリタニア語で喋ってくレ」
「ブリタニア?
貴様の話しているのは英語だろうが。
取り敢えず、その足に履いている機械と肩の機関銃を寄越せ。
何処から来たのか。
どうやって来たのか答えて貰うぞ」
東洋人の女はそれだけ言うと、何やら馬鹿でかい剣を構えた。
よく見れば、脇には人より2倍ほど大きいゴーレムが立っている。
白、青、黄、紫、黒、赤。
あと、形が違う黒いのが数機。
「それで、エイラさんはどうされたので?」
「あア、結局使い方が分かってモ、食べ物の事を知らなきゃ意味無いだロ?」
エイラが言うと二人が納得したように頷いた。
「エイラさんは何を食べたいので?」
「基本的に何でも食べれるゾ。
まァ、ニシンだけは勘弁だナ」
エイラが答えると、二人はどうしたのものかと顔を見合わせた。
つまり、『夕飯何が良い?』と尋ね、『なんでも良い』と答えられた様な物だ。
「取り敢えず、洋食定食にしておく?」
「そうですわね」
シャルロットが一番安く、それでいて安全パイである洋食定食をエイラに勧めた。
エイラは頷き、投入口にコインを入れ、購入。
そのままカウンターに向かった。
シャルが席を探し、セシリアがエイラの通訳の為に付いて行く。
そして、そんな二人にのほほんさんがついて行くと言う感じだった。
そして、エイラとのほほんさんが夕食を手に入れるとそのままシャル、セシリアを交えて4人で夕食。
「それで、エイラは何処から来たの~?
うぇあ~ゆ~ふろむ?」
「またその言葉カ。
なぁ、うぇあーゆーふろむって何なんダ?」
エイラが紅茶を飲んでいる二人に尋ねると二人は苦笑する。
「where are you from?と彼女は聞いているんですわ。
日本人の方々は何故か、変な発音でしか英語を喋れないんですのよ」
「は~成程。
確かニ、よく聞けバ、where are you from?って言ってるナ」
エイラが納得したように頷く。
エイラは再び自己紹介すると、シャルがそれを訳してくれた。
「へ~
フィンランドから来たの~
エアギター?」
のほほんさんがギョイーンと口で言いながらエアギターをする。
「エアギターって何ダ?」
「え~っと、ギターを弾いてるフリをするのが、フィンランドでは流行ってるんだよ」
シャルが苦笑しながら言う。
「へー
本物のギター弾けばいいのニ」
エイラの言葉にシャルとセシリアは笑うしかなかった。
「なァ、そんな事よりisって奴に付いてもっと聞かせてくれヨ」
「ええ、構いませんわ。
何を聞きたいので?」
エイラは暫く考え、口を開く。
「兵器じゃないって言ったけド、武器があるって事は、戦闘するんだロ?
何と戦うんダ?」
「isはis同士で戦うんだよ」
「何故?」
「えっと、最終的には、モンド・グロッソって言うisの世界大会があるんだ。
そこに行き着くため、って事だね」
シャルはえーっとと少し、むつかしそうに答えた。
「競技なのカ?」
「うん、まぁね」
「ふぅーン……」
エイラはしっくり来ないと言う顔で頷く。
「まぁ、実際は、お互いの開発したisを見せて『どうだ、我が国はこんなにすごいんだぞ!』って事を自慢したいんだよ」
そこに誰かが割り込んで来た。
「か、会長!?」
「誰ダ?」
そこに現れたのはセンスを持った女子生徒。
「生徒会長だよ」
「セートカイチョー?」
なんだそれはと言う顔でエイラは首を傾げる。
「ふふ、この学校で一番強い生徒だよ」
生徒会長と呼ばれた女子生徒はフフンと笑う。
バッと広げたセンスには『学園最強』と書かれているが、勿論エイラには読めない。
「私は楯無。
更識楯無だ。
以後よろしく、転校生ちゃん」
「あア。
エイラ。
エイラ・イルマタル・ユーティライネン。
スオムス空軍の中尉だ」
言うと楯無は首をかしげた。
「えっト、なんだっケ?
ふぃ、ふぃ、フィンラン?」
「フィンランドかい?」
「そウ、そこから来タ」
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