ほむら「まどか…あなた男の子なの…?」まどか「暁美さん?」(314)

こんにちは
もともとvip+でやっていたのですが色々な事情により引っ越してまいりました

最初に簡単な説明と注意書きを

・魔法少女まどか☆マギカss
・キャラの性転換ありです。
・ほむまど(性転換物なので百合の要素はあまりありません…多分。というかほむまどになるかすら怪しくなってきた…)
・原作の設定とだいぶちがう所が沢山あります。オリキャラやオリジナルの魔女やら…
とにかく改造しまくっています(^^;)
・更新がカタツムリもびっくりの遅さ←受験のため、3月くらいまで更新は月に1、2回が限度だと思います


以上です。
誤字脱字は極力注意しますが、発見した場合お知らせください。
あまり慣れておりませんので、皆様には色々迷惑をおかけしたりするとおもいます。
その都度ご指摘を頂けると大変ありがいです。
題名でおわかりいただけると思いますが、性転換ものです。
さらに、オリジナル設定を大量に詰め込んでいます。
苦手な方は戻るボタンを押して、ここから脱出することをお勧めします。

それではよろしくお願いします。

あ、とりあえず長いですが最初から投下していきますね
それと前のスレで保守を続けて下さった皆さん、ありがとうございます!
今2chで規制くらっているので、誰かvip+板の方にリンクを貼っていただけると…嬉しいです
なんか頼んでばかりですみません…では始めます

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ほむら「」

いつもの見慣れた白い天井。
風に揺れるカーテンに、真っ白なベッド。

また失敗してしまった…

もう何度、この場面に戻ってきたかわからない。いつもこの風景を見ると、心が挫けそうになってしまう。
一体何度、この生産性のない一カ月を繰り返してきたのだろう。
もしかすると、私はこのまま…

いいえ、私はどうなってもいい。あの子とのあの約束

『キュウべぇにだまされる前のバカな私を救ってくれないかな…』

今までの時間軸で唯一まどかと親友のように、ある意味私の理想に一番近かった時間のまどかの言葉が頭にこだました。

この言葉が今の私の原動力であり、全ての支えなのだ
私の優しい友達、まどか
私はあなたにどう思われてもいい
私はあなたの命を救うまで、あきらめる事はしない

私はベットから降りると魔法で身体の強化をし、メガネを取った。
鏡の前に行き、地味な三つ編みを乱暴に解く。
あまりにも長くなった黒髪が広がり、私の体に絡みついた。

この場面に関わらず、鏡の中の私はいつも陰険な顔をしている。

そんな自分とにらめっこをしながら、大きく息を吸い込んだ。
この顔は今度のまどかにはどう映るのだろうか…

でもきっといつものように、やれるだろう
私は遠い昔の、メガネで三つ編みの頃を思い出した。

あの頃のように他人と接することはもう出来ないだろうし、戻りたいとは思わない。


私は見滝原中学校のパンフレットを横目で見た。

今まで何度もやり直してくる中で、一度も同じ展開なんてなかった。
しかしここの場面だけは今まで一度も変わったことがない。
だから、別に読もうと中身を開く事はなかった。

しかしこの時パンフレットを開いて読んでいれば
この時間軸はとんでもなくおかしい事に気がつけただろう。
パンフレットの中に挟みこまれていたとある一枚のチラシによって。

『期待度no.1の駆け出し美少年アイドル!鹿目まどかと握手が出来る!?詳しくはこちら!!』

私は今、教室の扉の前に立っている
相変わらず、担任の早乙女和子は自分と元彼の話を生徒たちにしている

この間は彼女に忘れられたまま授業が開始してしまった
今回はそんなことはないだろうが、教室へ駆け込む心構えをしていた方がよさそうだ

和子「今日は転校生を紹介しますね、どうぞ」

いつものように呼ばれ、教室へ入る

いつものように、冷静に、余裕がありそうに教室を見渡す

そしてあの子、まどかに視線をおく…

ほむら「いない…?」

和子「どうしたの?なにか、質問でもありますか?」

ほむら「あ、いえ…」

和子「そう、じゃあ皆、暁美さんと仲良くしてあげてね。
暁美さん、何かあったらここの皆に何でもきくのよ。むろん、私にも相談してね。」

ほむら「はい…」

和子「えーっと、暁美さんの席はあそこ!」

(おい、あいつのとなりだぜ!いいなー)
(くっそー俺、ここの席でこんなに後悔するとは思わなかったぜ)
(ほんと、きれいな子だなぁ)

ほむら(どういうことなの…どうしてまどかがいないの…今日は休み?
でも空席は無い。よく見たら美樹さやかもいない。)

ほむら(いままでで一番厄介な時間になりそうだわ。)

いつもはワルプルギスの夜の対策についてやキュウべぇの出現場所の確認、
キュウべぇとまどか達をどうやって遭わせないようにするかを考える授業時間

しかし今回は救う目的のまどか自体が自分の目の届く範囲にいない
はやく居場所を特定しないと、キュウべぇと巴マミに遭遇してしまう

遭遇して、その場で契約なんてことは絶対避けねばらない

正直、こんな授業を抜け出してしまいたい

こんな退屈なもの、やらなくてももう私には分かる

しかし、今抜け出して歩きまわったら目立って仕方がないし、時間の無駄だ

まずは休み時間に鹿目まどかがこの学校にいるかを確認してから動くのが得策だろう

もしこの学校にいなかった場合、まどかの家が見滝沢にあるか確認をして…
いなかったらどうするかは、その時また考えよう

学校にいたらどうにかして彼女の行動を探らねばならない
それこそストーカーのように

きっとこの時間のまどかはいままでと大きく違う行動をとるだろう

ほむら(…もし、まどかが最初の時間軸のようにもう契約してたら…)

この時間のまどかを見捨ててまた戻るほかないだろう

そうならないことを祈り瞳を閉じる

『ほむらちゃん!』

『あんまりだよ…』

『やめて!』

ほむら(…吐き気がする)

「ねえねえ、暁美さんて前はどこの学校にいたの?」
「部活とかやってた?」
「きれいな髪だよね、いいなぁー」

毎度のことながら質問攻めにあう

いつもならまどかをここで呼ぶのだが…まどかはいない

ほむら「ごめんなさい。緊張したせいか気分が悪いの、保健室に誰か案内してくれないかしら」

いつもはまどかと2人になるための口実、しかし今回は本当に気分がわるかった

「え!?大丈夫?」
「そういえば顔色わるいよ」
「無理しないでね。保健委員呼んでくるよ」

私の発言で周りが私の体調を心配し始めた

出来たら騒ぎが大きくなるのを避けたかった
しかし私は周りに話すことが出来ないくらい、気持ちが悪くなってきた

口を開けば吐いてしましいそうだ。見えている世界がぐるぐるし始めた
どうやらめまいもしているらしい

ほむら(私…風邪にでもなったのかしら…)
ほむら(せっかくまどかの事聞かなきゃいけなかったのに…)

私は目の前が真っ暗になり、意識が途絶えた

----鹿目まどか----

モノクロの廊下を自分は一人で走っていた

よくわからない模様が漂っている、非現実的な世界

しばらく走ると階段の前に非常口があり、自分はごく当たり前のように非常口へ向かった

一歩一歩階段を登るたび、タン、タン、と大きな音がした。
自分はこの空間にはたった一人であると自覚するには十分な音だった

非常口を力いっぱい開ける。そして目に飛び込んできた風景はあまりにも衝撃的だった

今まで見たことのないような真っ暗な空

色々な建物が吹き飛ばされ、巨大な化け物が空にまるで台風の目のようにいるのである

その巨大な化け物に、グレーと白のファンシーな服を着た黒髪の少女が突撃していった

小さな彼女にその巨大な化け物が倒せるようには到底思えなかった

実際、ビルをぶつけられ、なんとか回避したが、衝撃波を食らっている
かろうじて受け止めてはいるが、確実に押されているのが分かった
 
「ひどい…」

「仕方ないよ、彼女一人では荷が重すぎた。でも彼女も覚悟の上だろう。」

化け物はまた衝撃波を放ってきた。さっきのように受け止めきれず
まともに食らい、小柄な体は吹っ飛ばされた。彼女が木に衝突し、爆音が聞こえた


「そんなあんまりだよ、こんなのってないよ!」

思わず自分は耳をふさぎ、その場にしゃがんだ

「あきらめたらそれまでだ」
「でも君なら運命を変えられる」

白い尻尾を揺らす、無表情な顔を見つめた

「避けようのない滅びも嘆きも、全て君が覆せばいい」
「その為の力が君には備わっているのだから」

「本当なの…?」
「私なんかでも本当に何かできるの?」
「こんな結末を変えられるの?」

一歩、また一歩、声のする方へ向かう

「もちろんさ。だから僕と契約して…魔法少女になってよ!」

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目が覚めて、とんでもない夢を見た事に、俺は気がついた

まどか(何なんだよ魔法少女って…俺は男だし…とんでもなくヘンテコな夢だった…)
まどか(まだ眠い…)

寝像の悪い母親をたたき起こして、2人で他愛の無い話をする

まどか「また仁にラブレターが届いてた。これで今月に入ってから2度目だ」

詢子「あんたの方が多いでしょうが」

まどか「まあ…」

まあそうなのだ。明らかに俺の方が一カ月にもらうラブレターの数は多い

多分、学校で俺の名前を知らない生徒はほとんどいない
学校どころか、全国的に見ても、きっとほとんど知っている

タツヤ「まどか、まどかだぁ」

テレビの前に座るまだ小さな弟が俺の名前をよんでいた
どうやらcmで俺が流れたよう

俺は芸能界と呼ばれる、テレビの中の世界で活躍している

正直自分の何がどういいのか分からないが
女の子はかっこいいだの何だのいって寄ってくるのだ。悪い気はしないが…

詢子「あんた、今日学校いくのかい?昨日撮影があったばっかりだろ。」

まどか「別に疲れてない。しかも今週はまだ行ってないし。」

絢子「そう。女の子が黙っちゃいないだろうね。今日も特攻をかけてくる子は沢山いるだろうさ」

まどか「何だよ特攻って。べつに一週間に2、3回は行ってるからそんなこと無いよ。」

にやにやと面白そうに見てくる母親をキッとにらんで、顔を洗った

ごく普通とはあまり言い難いが、それでも特に悩みもなく満ち足りた生活を送っている
不足しているものは何もない
強いていえば、普通の人としての時間がもう少し欲しい、という贅沢ともとれる願い

まどか「行ってきます」

いつもの待ち合わせの場所まで俺は走って行った
すれ違う人から見られたりするのはいつものことでいまさら気にはしない…のは嘘だが…

とにかく俺の頭の中は数日ぶりに会う親友の美樹さやとと、
志筑仁の会話を非常に楽しみにしている、ということだけだ

さやと「おっす!おそいぞ~“アイドル”」

仁「お久しぶりです。」

まどか「やあ、仁、さやと、“アイドル”はやめてくれよ」

苦笑いで親友の嫌味にも似たあいさつに反論する
まあ、普通の人の評価はきっとそんなものなのだろう
“アイドル”という枠の外で自分を見てくれる人なんて、この2人と家族以外は居ないと言っても過言ではない

さやと「そういや、面白いことがあったぞ」

さやとはわくわくした顔でこちらに向き直り話しかけてきた
わざわざ歩くのを中断してまで

さやとは大体しょうもないことを言いだそうとしている時にこんな顔になる

仁「さやと君、面白いとはちょっと違うと思うよ。」

さやと「いーや!これはすごく面白いぞ!
まどか、お前が学校へ行って血祭りにあげられないように周りには秘密にしておいたんだから!感謝しろよ!」

まどか「一体何なんだよ。はやく教えろ」

仁「転校生が来たんですよ。」

まどか「はあ、そんなことかよ」

さやと「もの凄い美人だぜ」

正直、それだけなら何も不思議ではないし、面白くもなんともない
美人なんて、この仕事をやっている俺にとって、もう見なれたものだった

さやと「それだけじゃないんだって!頭も良いし、身体能力も並みじゃない。才色兼備だ!」

まどか「ふーん」

仁「でもこの間まで病気で入院していたそうですよ。確か初日体調不良で倒れまして」

そりゃ、なんとも矛盾してるような気がする
普通、入院してた子が退院して運動が出来るなんて…まあ病気にもよるだろうが
しかし転校初日に倒れるような子なら身体はそんなに強いようじゃないと推測できる
そんな面で見ると面白いのかもしれない

さやと「で、俺保健委員じゃん?だから保健室まで連れて行ったんだよ!もちろんおんぶして」

にやにや顔のさやとは正直気持ち悪い

さやと「その途中でさ、聞いちゃったわけですわー寝言を。」

ふふんと自慢げに話すさやと。仁はあきれ返った顔でさやとを見ている

さやと「聞けよ!その転校生こう言ったんだぜ!『まどか』って!!」

まどか「だからなんだよ。」

さやと「何だとは何だ!!美少女だぞ!お前のファンだぞ!!」

大きくため息をついた
ファンがいるのは知っているが、正直なところこんな学校まで来てもらっては困る
プライベートが全くなくなってしまう
しかも、自分と決まったわけではない。まどかなんて名前は多い。しかも女にだ

まどか「それだけかよ…さっきも言ったが美人なんて結構いるもんだぞ
しかもストーカー気質の子だったらいくら美人でも困る」

さやとはありえないって顔をしてこっちを見ている。仁はやはり苦笑い

仁「まあ、きれいな女の子ではありますよ。というか、確実に僕が見てきた中では一番の美人ですね」

さやと「ほら、仁もそう言っているんだ、少しは喜べよ!」

バシ!と力加減も知らずに俺の背中をたたくさやとに若干の怒りを覚えたので、こう言ってやった

まどか「お前、上条さんに転校生が美人だって連発していたこと言うぞ」

さやと「てめっ…なにも恭子は関係ないだろ!」

後ろでギャーギャー騒ぐ俺らに仁が信じられないほどの大きなため息をついていたのに気がつくことはなかった

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「きゃーまどかくーん!」
「あ、今こっちむいた、カッコいい~」
「鹿目く~ん、応援してます~」

学校へ行くといつもこんな感じだ
応援してくれるのはうれしいけれど、もう少し落ち着いた生活を送りたいのが本音である

さやと、仁と別れて教室に入った後、さらにひどくなる

「手紙、受け取って下さい!」
「クッキー、焼いてきました!食べて下さい!」

他クラス、他学年の女子…とにかく人が猛烈な勢いでやってくるのだ
取り合えず、ありがとうと笑顔を作っておく

まどか(はぁ…どうして仁やさやとと同じクラスじゃないんだ…)

心の中でため息をつく
こんなに酷いのは朝だけとはいえこれではいつものファンサービスと何も変わらない

今は仕事の時間外だ…贅沢な考えかもしれないが、今は普通に生活したい

突然取り巻きの女子が外を見つめた。いや、クラスの皆、外を見ている

全面ガラス張りの壁の向こうに一人の女の子が静かに歩いている

真っ白な肌。涼しげな瞳。通った鼻筋。歩くたびに揺れる黒髪。

こんな普通の中学校に居るはずもない

いや芸能の世界にいる自分ですら見たことがないほどの美少女

この教室中、いや、廊下ですれ違う人皆、彼女を見つめ振り返る

しかし、その視線に気づいていないのか、無視しているのか
彼女はどこにも視線を泳がせずに歩く

漆黒なその瞳は果てしなく遠くを見つめているようで、
ひどい孤独と絶望を抱いているように感じた
要するに何か近づけない雰囲気を醸し出していた

まどか(なんか…どっかで会った気がするが…まあ同じ学校ならすれ違いでもするか
でもなぁ、普通覚えるよな、あんな美人がいたら…)

「あの子って…」
「知ってる、転校生でしょ。めちゃくちゃ美人の」
「はあ~あれが…」
「確かにすごいわ。皆見てたもん」
「もうラブレター何通も貰ってるらしいよ…」

目の前の女子の話や周りのクラスメイトの話を小耳にはさんでさやとのクラスに来た転校生だと気がついた

だったらなぜ、自分は知っているのだろう

やはりさやとの言うとおり、自分のファンで握手会やサイン会で見たのかもしれない
最前列の熱狂ファンではなくて、普通のファンとして。それならつじつまが合う
あれ程の美人だから、きっと記憶に完全に葬られていなかったのだ

まどか(でもなんであんな美人がそもそもこの学校にくるのか…)

彼女はあまりにもこの学校に不釣り合いな気がした

それは美人だからだろうか

しかし、モデルになると仮定して
彼女が今まで以上に美に気を使い始めたらどうなるだろう

彼女に美しい服を着せたら?化粧したら?今まで以上に綺麗だろう

もしかすると、彼女に釣り合う場所なんてどこにもないのかもしれない

少ないですがとりあえずここで落ちます
もう寝ないといけないのです

明日の朝、残りを一気に投下したいと思います

----暁美ほむら-----

ほむら「う…」

またしても白い天井。病院とは違うが

ほむら(えっと…私は一体…)

混乱しているのか、非常にガンガンする頭を抱えて思い出す
確か時間を戻って…学校に来て…まどかを見つけ…

ほむら「まどか…?」

そうだ、まどかが居なかったのだ
自分がやってきたクラスに
そして私は吐き気がして倒れて…ここ、多分保健室に来たという流れか

養護教諭「あ、起きましたか?」

ほむら「…はい」

養護教諭「この間まで入院してたからね
今日はもう帰りなさい。安静にしないとだめだよ」

ほむら「はい」

今日はもう帰れる…
しかしまどかの所在を明らかにしないとこの学校を去るわけにはいかない
今この場で尋ねよう

養護教諭「そんな不安そうな顔しないで。多分軽い風邪だから」

どうやら私がしかめっ面をして、いつ尋ねようかタイミングを見計らっているのを
私が不安がっていると勘違いしたのだろうか彼女はそんなことを言ってくる

ますます会話の切れ目が見えなくなってくるじゃないか
私は一刻も早くまどかの事を聞きたい。ついでに美樹さやかについてもだ

養護教諭「あとね、鹿目まどかくんは今日は学校に来ていないわよ」

ほむら「え!?」

唐突にずっと探している我が友人の名を聞いて目を見開き飛び起きた

養護教諭「やっぱりね。彼のファンでしょ、あなた。」

ほむら「…??」

どういうことだ?
鹿目まどかという単語は聞いたが、なんだか様子が違う
この先生は女の子の名前を君付けで呼ぶのだろうか
いや、彼のファンといった所、同姓同名の違う人間のようだ

“まどか”という名の別人、しかもこっちがメジャーだとすると
これはなかなか厄介な捜索になりそうだ

ほむら「あの…この学校に女のまどかは在籍していますか?」

養護教諭「うん、だからまどか君は今日は…へ…?」

養護教諭の目が点になり、それから真剣な表情になった
ウンウン唸りながら、必死に考えている

ほむら「ピンク色の髪で、赤いリボンで二つ結びをしている小柄な子ですが」

養護教諭「うーん…私が知る限り思い出さないわ…ごめんなさい」

容貌を伝えても分からない
そんなに沢山いる容姿ではないだけにこの学校にいないのでは
そんな不安がどんどん膨れ上がってきた

ほむら「いいえ、お構いなく。他の先生方に聞きますから。」

養護教諭「ほんとごめんなさいね、大切な人なんでしょう」

どうしてこんなことを聞くのだろう、この人
正直イライラする。さっきも突然別人のまどかのファンだって抜かす
なんでまどかを探しているのを知っているの

ほむら「別に、何でもありません。私の友人です。」

彼女の顔を見ずにつぶやいた後、乱暴に扉を開けて出ていった

ほむら「そうですか…」

職員室を扉を閉めた
さっきのように乱暴に閉める元気など残されていない

ほむら(まどか…どこにいるの…)

結局職員全員に聞いたが、鹿目まどかという女子生徒はいないということだった
さらに美樹さやかもいない

一体全体、どこにいるのだろう
最初から存在していないのだろうか。いや、そんなはずはない
今日はもう家に帰れるのが幸いだ。近隣の中学を調べなければ

ほむら(そうだ…巴マミもこの学校にいるかしら…)

もし巴マミがこの学校にいれば話がはやい
どうして気がつかなかったのだろう
全ては彼女がまどか達を勧誘する所から始まる

いや、100%巴マミがまどか達を魔法少女になるよう誘い込むわけではなかったが、
それでもその確立が非常に高い
彼女の行動を把握すれば、きっとまどか達に行きつくに違いない

ほむら(確か…巴マミは3年生…だったわよね)

私は踵を返して職員室にまた戻った

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結論として、巴マミはこの学校にいた。が、しかし…

ほむら(しばらく休んでいる…?)

今週はまだ来ていないらしい
先週、先々週は一回か二回、顔を出す程度に来たそうだ

ほむら(優等生として通っているはずのマミが…やはりこの時間はおかしい。)

学校で巴マミに遭うことは不可能と考えてよい
ならば、巴マミの家に行こう。どうやら彼女に何かが起こったようだ

ほむら(もう魔女化…でも学校には今日も本人から連絡が入っているから絶命はしていないわね)

私は学校を出て、巴マミの家へ急いだ

-----巴マミ-------

キュゥべぇ「やあ、マミ。一体ふさぎこんでどうしたんだい」

マミ「…」

この白い悪魔
のこのこと私の前に現れて、ぺらぺらと私に話しかける

キュゥべぇ「今日は魔女狩りに行かないのかい?それとも今日は同族狩りかい?」

ピクリと私の眉がよがんだ

殺意を込めてマスケット銃の引きがねを引く
白い悪魔はハチの巣のように穴があき、肉塊と化して倒れた

キュウべぇ「やめてくれよ。全く無駄遣いしたくないんだよ」

自分の体を食べながらそういう奴の姿に改めてぞっとした

いままで信じていたものがこんなにも恐ろしいものだったとは

無知とはいえ、自分は狂っていたように感じる

マミ「全てあなたのせいよ、キュゥべぇ」

キュゥべぇ「またそんなことを言う。
あの時の君に選択肢はなかった。生きたいと願ったのは君さ。
そして生かしてあげたじゃないか。なにがそんなに不満なのさ?」

心の無いこいつになにを言ったところで無駄なのは分かっている
しかし、言わないと腹の虫は収まらない

マミ「私は、あのときこうなる運命と知っているならば、生きようなんて思わなかったわ」

本当にそうだ。あのまま死んでいれば…
今のような孤独も悲しみも味合わずに済んだのだ…

マミ「ねえ、どうして教えてくれなかったのよ…あなたのこと信じてたのに…!」

キュゥべぇ「はぁ…逆にどうしていう必要があるのさ?君らは何も聞かない癖に
いったらいったで君らはまず、魔法少女になることを拒絶するだろう」

キュゥべぇ「しかも、僕らはソウルジェムがグリーフシードになる瞬間が一番の目的なのにさ
君らは自らソウルジェムを破壊してしまうじゃないか」

白い悪魔は尻尾をゆらゆらゆらす
大きな影が部屋の真ん中に伸びていた

キュゥべぇ「全くの利益がないよ。人間がそうでなけりゃ、喜んで全てをいうさ
はぁ…僕にとって君はかなり厄介な存在だよ…
君が魔法少女達を殺すことによって、どれだけ宇宙の寿命が縮むことやら…」

頬に涙が落ちる
もう何日も泣き続けてきたというのに、まだ泣き足りないようだ
自分のソウルジェムを確認すると、もう汚れが溜まってきた
グリーフシードを当てて、汚れを吸収する

涙を拭いて、立ちあがった
手にはいつもの澄んだ輝きを放つソウルジェム

ソウルジェムをじっと見つめ、それを握りこんで外へ出た

キュゥべぇ「そういえば、この町に新しい魔法少女がきたよ」

マミ「そう」

キュゥべぇ「彼女はイレギュラーだ。僕は彼女と契約した覚えなんてない」

もう、そんな情報いらないし、どうだっていい
私は今、魔女殺すことと、魔女を生む魔法少女を殺す事に重点を置いているのだから

-----暁美ほむら-----

巴マミの家に行ったが留守だった
彼女はもう魔女狩りに行ったのだろうか

なんとか会いたいものだ…

巴マミ、とにかくはやいうちに出来たら今日中に接触を図りたい
いや、接触までとは言わない。彼女の行動をとにかく知らないとまずい

彼女の家はそのままあるのがありがたい
これで家まで移動されていたらどうしたものだったろう

マミが魔女狩りに行ったと仮定すると、魔女の気配を追うのが妥当だ

例え彼女に会えなくても、その時は家に張り込めばよい
きっと彼女はここに帰ってくる

私は手のひらにソウルジェムを乗せて歩き始める

もう何回も同じ町で同じ様な魔女を狩り続けてきた
もう、それはもう、何回も

魔法少女として最弱の能力の私が戦法によっては巴マミや佐倉杏子
強力な能力をもつ彼女らに太刀打ちできるほど戦ってきた

しかし私がどんなに強くなってもワルプルギスの夜は倒せない

私がワルプルギスの夜を倒せないがために何度もまどかが契約し、史上最悪の魔女になる

私はその度まどかを見捨て時間を戻った
同一人物であるはずなのに、各時間軸のまどかはほんの少しずつ違っていて…

ふと顔をあげると血のように赤い太陽が町を覆っていた
このときもう夕方であることを初めて知った

この夕陽は魔法少女の希望の様なものだ、美しく光り輝いているもの束の間
あっけなく沈んでしまう

待っているのは絶望の闇

それを知ってもなお、戦う私は神からみるとあまりに滑稽だろう

自分の為ではなく、親友の為に魔女になる危険を侵してまで魔法を使い
その命を削って生きていくのだから

私は滑稽でもいい、まどか…あなたは私にとってこの夕陽そのものなの…

お願い、はやく私の前に姿を現わして…

夕方から夜になりかける頃
高層ビルとビルの間の薄暗いところでソウルジェムは反応した

ほむら(ようやく反応ね…)

素早く変身をし、ゆっくり反応のあるところへ行く
しかし反応は強くなるどころか弱まって行くばかりだ

ほむら(魔女は倒された様ね。倒した主はきっと…巴マミ)

マミがグリーフシード回収の前に接触せねば。盾に手をかけた

カチッという音ともに止まる時間。全てが息をしなくなり
動いているのが自分のみとなる

しばらく走るとつきあたりにマミの様な黄色の人影ともう1人、誰かがいるように見えた

とりあえず盾を元にもどし、再び周りは時間を取り戻した

世界が動き始めたと同時に銃声が聞こえ、ガラスが砕け散るような音がした

ゆっくりと崩れ落ちる、マミではない方の人影

ほむら(…マミ…まさか…!?)

マミ「あら、あの白い契約者にそそのかれた、新人さんかしら」

そういいながら、彼女はゆっくりとこちらを振り向い

銃を自分の隣に突き立ててゆっくりと上品に紅茶をすする少女…
これぞ魔法少女という肩書きがふさわしそうな、そんな衣装に身を包み
優しげにふわりと笑って立っている…

彼女の足元には一人の見知らぬ少女が倒れていた

ほむら(さっきの銃声に何かが砕け散る音…そんなバカな…)

いや、さっきの耳を疑うような発言にこのシチュエーション…

笑う少女がこんなにも恐ろしいと思う日が来るとは…

いま私、暁美ほむらの前に対峙している彼女こそ探し人巴マミ…

いままでの時間軸ではインキュベーター…
キュゥべぇの事をあんな風にいったことはなかったし
第一倒れている人をあんな風に放置するような人間ではない

ほむら(マミ…まさか、魔法少女の運命を知っている…?)

カチャ

隣に突き立てていたはずの銃が目にもとまらぬ速さでマミの手に渡り
銃口が気づいたら自分に向けられている

あぁ、しまった
こんなことを考えている暇があるならば早く逃げればよかった

マミ「この倒れている子のお友達?
だったら今すぐ同じ場所に連れて行ってあげるわ
正直友達じゃなくても…関係無いわ…」

ほむら「マミッ!やめな…」

まだ言い終わらないうちに銃声が轟いた

これまでかと目をつぶる

ほむら「…」

マミ「どうして…」

恐る恐る目を開いてソウルジェムを見たが傷すらついていない
体も傷一つ負ってはいない
意外なものが私を救ってくれたのだ

キュウべぇ「今のうちに逃げるんだ」

私の目の前には発砲により穴が開いたキュゥべぇ
後ろには生きているキュゥべぇ

マミ「…一体何でなのよ…なんで…」

マミの肩は小刻みに震えだし、目は焦点が合っていない
まるであの時のようだ


『みんな死ぬしかないじゃない!!』

フラッシュバックする嫌な記憶

あの時間軸で美樹さやかは魔女化してしまい
巴マミは発狂、佐倉杏子はマミによって殺害されてしまった

マミ「ねえ、どうして…どうしてなの神様…」

マミもキュゥべぇの予想外の行動に同様を隠せないようだ

キュゥべぇ「今のうちに早く逃げるんだ、この巴マミという魔法少女は危険だ!!」

インキュベーターが珍しく私の味方に見えた
今は確かにこいつの言うとおり、逃げなければならない

このマミに対して人間に備わる本来の野生の勘が
逃げろ、逃げろと私を駆り立てている

さっと周りを見ても、元来た道を戻るか
それともビルを駆け上がるというものしかない

少なくとも来た一本道を戻れば、確実にマミの銃の餌食になる

魔法で爆上げされた身体能力により
私のソウルジェムをかなりの距離からでも撃ちぬく事は可能だ

一瞬でも銃口が自分から離れる時間がほしい

私は上へ飛び上がった

今のマミを背に普通に逃亡できる気がしない
せめて盾に手をかけて時間を止めるまで何とか逃げ切らねば

垂直に建つビルの壁を蹴り、盾に今まさに手をかけた瞬間だった

マミ「私が逃がすと思った?」

ほむら「へ…?」

ギョッとして隣を見ると、巴マミがいつの間にか私の隣にいる

バキィと派手な音をたてて私はマミの足蹴りを腹部にモロに食らった

たまらず落下してしまう

そして地上付近ではマミのリボンが待ち構えていた

まるで蜘蛛の糸のように私を絡め捕り、締め上げる

マミ「新人さん、私から逃げようなんて、百年早いわ…」

私は新人ではない。最弱ではあるが

マミ「あなたもいずれ、私たちの敵になるのよ…
魔法少女の真実を知る前に、私が葬ってあげるわ。感謝しなさい」

なにが感謝しなさいだ
私はまどかに会うまで死んでも死にきれない

黄色のマスケット銃が自分のソウルジェムを
今にも打ち抜こうとしている

ほむら(今死ぬわけにはいかないけど…絶体絶命、かしら)

目をギュッと瞑る
いつかの光景にリンクした

あの時はまどかがいた
瞼の裏に、まどかの優しげな笑みが浮かんだ

やはり、まどかを救うまで私はどうしても死ぬわけにはいかない

ほむら「巴マミ…」

私はマミをまっすぐ見つめる

ほむら「鹿目まどかを知らないかしら」

こんな窮地に陥っても問掛ける事はあまりに自分に関係ないことだった
いや、他人から見たら関係がないことのように思えるだけだ

私にとっては彼女は私の存在する全ての理由なのだから

マミ「えぇ。有名じゃない」

少し顔を傾げ、不思議そうに私を見た

ほむら「そう…」

有名…ということは、別人のまどかなのだろうか

ほむら「その人は女かしら」

マミ「何を言っているの?男よ。それよりあなたは今の状態を
もう少し気にしたらどうかしら」

最もである。しかし、私は魔法少女になった時点で半分死んでいるも同然だ
もう自分の命なんて惜しくはない

まあ、今ここでみすみす死ぬわけにはいかないのだが

どうにかして話を伸ばしマミに少し揺さぶりをかけて、脱出のチャンスをうかがう必要がある

しかし、一体女のまどかはどこにいるのだろう…

ほむら「私は女のまどかを探しているの」

ほむら「彼女を契約させないように」

大きく息をすって、マミの一番言われたくないであろう言葉を口にする
ほむら「マミ、もしかすると魔法少女の真実を知っているの」

巴マミの目は大きく見開かれた
間違いない、マミは知っている

…怖い、今このセリフを言ったら…マミは私を殺すかもしれない

でも賭けてみるしかない、この状況を打破するには…

ほむら「真実を知っているのは、あなただけでは無いのよ」

マミの手の中の銃が小刻みに震え始めた
黄色い瞳が大きく揺れ始めた

ほむら「私も知っているわ、だから…い」

がちゃり

銃はマミの手からこぼれおちた

マミ「あぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!」

-----巴マミ------

キュゥべぇ「いい加減にしなよ、巴マミ」

マミ「黙りなさい、うそつき」

マミの部屋の中で相変わらず白い契約者は大きな影を落としていた

キュゥべぇ「いいや、黙るつもりなんてないよ、マミ。
君はどうしてそんなに魔法少女を殺すのかい」

マミ「魔法少女が魔女を生むからよ」

部屋の隅で体操座りで顔を伏せているマミが淡々と答える

キュゥべぇ「それは今まで通り、街を守りたい思いからかい?
正義でありたいと思うからかい?」

マミ「…そうよ」

キュゥべぇ「はぁ…ならばどうしてさっき逃げたのかい?
君は魔法少女達を殺すことに罪悪感を抱いているなら早くやめてくれないかな?
ほんとに僕らは焦っているんだよ。宇宙の寿命が縮んでいるのだから」

マミ「うるさいわね…私は罪悪感なんてないわ」

キュゥべぇ「はぁ…君は思っている以上にバカだね。
君は自分で選んだ運命を受け入れる事から逃げているんだよ。
魔法少女達を殺すことによって、魔女を殺すことによって
まるでいじめっ子の精神だよ」

マミ「黙りなさい!!!」

マミは顔をあげた

ふざけないでよ。何が運命から逃げている、よ

彼女の目に怒りの色が宿っている

そっと手に銃をもった

キュゥべぇ「黙らないよ。君は佐倉杏子をまだ手にかけて無いだろう」

マミ「…」

キュウべぇ「もし君のいう(正義)を貫くならば…
まずは一番良く知っている魔法少女…彼女を殺るだろうね、普通。
だって彼女は魔法少女としての才能がある… つまり強力な魔女になるからさ」

マミ「……」

歯を食いしばり、何を言うか、言葉を探す
が、出てこない

キュゥべぇ「…もしかすると、昔共に闘ってたから
情があるんじゃないかい?」

マミ「…そんなこと」

キュゥべぇ「あの時佐倉杏子と喧嘩別れをしたよね。
マミ、彼女の言い分が今になって身に染みると思うよ。
そしてあれは結果として正しかった」

マミ「…」

キュゥべぇ「全く君は孤独が嫌いなくせにね…」

キュゥべぇ「君は(正義)でいることが誇りだった。ゆえに孤独になってしまった 」

キュゥべぇ「さらに君は(悪)である魔法少女を卑しいと思ってもいた。」

キュゥべぇ「そして真実を知った時、自分が間違っていたと実感して
君は逃げた。魔法少女達を殺すことで。」

キュゥべぇ「真実を盾に罪悪感をふさぎ、自分を正当化していただろう?
でも彼女…暁美ほむらは違ったようだね」

たまらず発砲する
キュゥべぇを少しでも黙らせたかった
しかし奴は穴があいてもしゃべり続けた

キュゥべぇ「巴マミ。暁美ほむらは知っていた」

うるさい、うるさい

キュゥべぇ「君の逃げた真実を知っている人間はいた」

だまれ、黙って!

キュゥべぇ「君は悪人になったんだよ」

キュゥべぇ「悪人はこの世界では必要とされていない存在だよね」

キュゥべぇ「君の定義する(正義)のせいで君はそんな存在になり下がったのさ」

キュゥべぇ「君は君自身を孤独にさせたことが分かっているのかい」

キュゥべぇ「その儚く極端な(正義)の定義で」

キュゥべぇ「せっかく真実を知る…
共に最後まで励まし会える人に出会えたかもしれないのに」

キュゥべぇ「佐倉杏子…彼女だって…君の味方だった」

キュゥべぇ「もしかすると…
君が殺した新人魔法少女の中に君と戦ってくれる子がいたかもしれないし」

キュゥべぇ「正直色々な可能性を捨ててきているよね
君の勝手な(正義)と(誇り)と(孤独)で」

キュゥべぇ「僕は君が嘆くたび、君を愚かしいと思うよ」

キュゥべぇ「ま、とにかく宇宙の為に魔法少女狩りをやめて欲しいな」

ばたりとキュゥべぇはその場に倒れた

分かっている…そんなことずっと分かっていた…

君は悪人だよ…巴マミ…

-----うるさい、うるさい、キュゥべぇの声はうるさい-----

------悪く無い、悪くない、私はわるくない、悪く…------

ねえ、私達は何で殺されたの…?

ねえ、どうして殺すの…?

---うるさい、あなた達だって…本当の事を知ったら耐えられないわよ-----

ねえ、マミどうして仲間をころすの…私は知っているのよ?

----うるさい、私は美人なあなたと違うわ!私は一人ぼっちなのよ…
あなたには人が寄ってくるでしょ--------

ねえ、人の為に戦う為に別れたお前がどうして殺人をしているんだい?

----…佐倉…杏子…?------

ねえ、ねえ、ネェ、ネェ、ネェ……

アナタナンテ、ハヤクシネバイイ
ヒトリデイツマデモイレバイイワ

マミ「いやあああああああああああああああ!!!!」

キュゥべぇ「彼女は意外としぶといねぇ」

キュゥべぇ「わざわざ魔法少女が魔女になる瞬間を見せてあげたのに」

キュゥべぇ「なかなか絶望しないんだもん」

キュゥべぇ「さっきみたいに言葉攻めにしても…まだ魔女になってない…
メンタル弱いからすぐに絶望すると思ってたのに
わけがわからないよ」

キュゥべぇ「早く魔女になっておくれよ」

キュゥべぇ「やがては魔女になる少女達…君らは魔法少女だからさ…」

白い契約者の目は、地獄であえぐ亡霊を焼き焦がす業火のような赤色であった

その目は絶望と戦うある魔法少女の部屋をじっと見つめていた

--------暁美ほむら-------

あの時、私が真実を知っていると告げた瞬間、マミは悲鳴をあげた

まさかマミがあんなに取り乱すとは思わなかった

実は、あの時もしかしたら、
このマミなら協力を求める事が可能かもしれないと思ったのに

魔法少女の殺戮をしているのは大変な問題だけど…

一人で自害も魔女化もしていないマミならば…

しかし驚いたのはマミがいなくなってしまったことだ

気が付いたらマミは消えていた

一体どれほどの早さで逃亡したんだ

そして私を縛っているリボンは解けた
どうやら魔法をといたらしい

ほむら(…マミは一体どうやって魔法少女の真実を知ったの…?)

今まででは、さやかが発端で魔女について知ることがほとんどだった

しかし、この時間ではどうやらマミ一人で知ってしまったようだ

もしかするとさやかはもう魔女化してしまったのかもしれない

とにかく、あの時はパーティを組んでいた魔法少女達
すなわち私達を殺そうとした

殺して自分も死のうとした
結果としてまどかに殺されたが…

けれどもこの時間で、どうやらマミは一人だ

そして今マミは…魔法少女達を殺している…?

どうして

彼女は魔女化したくない…要するに死にたくないのか?

魔女になる=死んでしまうと考えても問題はない

リボンが使用出来る時点でマミは自分の魔法を失っていない
要するに、『生きたい』その願いはいまだに喪失していない

むしろその思いは今までで一番強いのではないのか

“死”から逃れたい彼女は責任を転換して殺戮をしている…

人として仕方ないかもしれないが、かなり危険人物に変わりない

というか、私にとって今までで一番危険な巴マミだ。

しかし、ある意味私にとって一番都合がよいかもしれない

彼女はきっと魔法少女の勧誘を行う事は無いだろう

少しまどかを救う不安要素が減ったが
同時に私の命の危険性を思うとあまり状況は変わらないような

…そんな気がする

けれど…巴マミともう一度会う必要がある

彼女が魔女になるのを食い止める必要がある

真実を知り、共にワルプルギスの夜を倒す仲間として

彼女はきっと、戦力になるし
真実を知っているからまどかを止める事が出来るかもしれない

私よりも説得する役は彼女があっているような気がする

そうだ、会おう

もう一度会って、マミに協力を求めよう

命に危険をさらすことになるけれど、成功した場合…

もしかすると時間を戻るのはこれで最後にする事が出来るかもしれない

さっと立ちあがりドアを開けた

少し風が入ってきて、長い髪は少しゆれた

大きく息を吸って、地面を蹴って、飛び出した

巴マミの家に着いた時、彼女の家の中から銃を乱射する音がわずかにきこえた

ほむら(いよいよやばそうね…精神的にも…近所の誰かに通報されてないと良いけど)

正直今通報などされたら魔法少女という存在が明るみに出てしまい
あまりにも面倒な事になってしまう

ほむら(結界が私にもはれたらよかったのに)

きっと音も少しは防げただろう

しかし無い能力について考えても仕方ない
そっと盾に手をかける

カチッ

世界中で動いているものは私ののみとなる

そっとドアに手を触れると、ドアは一人でに開いた

真っ暗な玄関に廊下

部屋の電気もついていないようだ

さらに部屋は殺風景だった

ほむら(前にマミの家に行った時はこんなでは無かった…
もっと生活感にあふれていた…普通の部屋だった…)

一番初めにまどかとマミに救われた事を思い出した

優しくて、時には厳しく、カッコいい先輩だったマミ

あの後ろ姿を頼もしいと思った、あの日の自分

ほむら(今思うと…私はまどかだけを救いたかったわけではないのかもしれない)

暗い部屋を進むと、壁一面穴だらけの部屋についた

その部屋の中心には、銃を両手に握り、何かに脅えた表情をする巴マミ

ほむら(…とにかく銃を回収して…マミをヒモか何かで縛らないと…)

今の巴マミは昔の頼もしい先輩の巴マミではない

何かに脅え、魔法少女を殺している危険極まりない少女

しかし、共に戦う事が出来るかもしれない…そんな存在
というか、この時間軸で私が唯一確認が取れた存在

もしかすると、私もこの異常な時間でマミの存在が
不安を紛らわしているのかもしれない

…まどかが存在していないかもしれないという不安を

とりあえず、一連の作業が終わり、時間を動かす

カチッ

息を吹き返す世界

もちろん、マミも動き出す

マミ「…!?」

ほむら「巴マミ、協力してほしいことがあるの」

マミ「貴方何でここにいるのよ!!私に何をするの!?」

マミのヒステリックな叫び声が耳に響いた

まあ、いきなり身体の自由が奪われていたら誰でもそう叫ぶだろう
このマミならなおさらだ。むしろ思っていたより反応が薄いくらいだ

ほむら「巴マミ、落ち着いて頂戴。貴方を殺すつもりはないわ」

マミ「嘘つかないで、私はさっき、貴方を殺そうとしたのよ」

ほむら「この事はもう気にしてないわ」

マミ「いいえ、気にするわ。協力なんて、
餌をぶら下げてどうせ私を殺すんでしょう?一体誰のさしがねよ」

さすがに状況が良くなかったな…

錯乱時のマミの説得に何度か成功した事があるが今とその時ではまるで話が違う
あの時のマミは皆、“魔女になる前に自害する”というのを
受け入れさせるだけで良かった

しかし今のマミは“魔女化(死)への恐怖”“殺人を犯した事”
となんだか今までよりも問題が増えた気がする…

一番の問題はやはり魔法少女を殺した事だ

これで今まで魔女化するのを食い止めてきたのだろう…

下手に彼女の行動を否定したらそれこそ瞬時にソウルジェムは穢れる
しかし、肯定しても結果は同じような気がする

上手くいくかもしれないと思ったが、改めて考えると見当違いの可能性大だ

ほむら(問題山積みね…)

ほむら「じゃあ、誰か思い当たる節があるの、貴方」

マミ「沢山いるわよ!!私は一体何人殺したと思っているの!?」

ほむら「…」

マミ「私はもう引けないの。貴方と協力する気はないわ」

ああ、人の目はこんなに変わるものなのか
優しかったあの瞳はどこにいってしまったのだろう…

マミ「いまさら、誰か役に何か立てないわ!!!」

マミ「“魔法少女”という存在自体、あってはならないのよ!!」

ほむら「マミ…」

マミ「貴方だって、いずれ魔女になるのよ!!!」

ほむら「マミ…!」

マミ「ねえ、絶望してあんなのになるのに、どうして私は生きているの!?」

マミ「こんな思いするくらいなら私はあの時死んだ方が良かったわ!!!!
私が死んでたいら、私が殺した子たちだって!!!」

ほむら「マミッ!!話を聞きなさい!!」

たまらず大声をあげる
これ以上、彼女に話をさせてはならない

彼女の精神はズタズタなのだ。自分の犯したことも、運命も
どれほど重大か分かっているからこそ

…痛々しい…

ほむら「まずはソウルジェムを浄化するわ」

そういいながら、彼女のソウルジェムをとって、グリーフシードを当てた

マミは大人しく涙を流しながらその様子を見ている
浄化し終えると、がっくりと肩をおとした

部屋を沈黙が包んだ

ほむら「貴方は沢山の人を救ったわ」

ほむら「どうして私は貴方の事を知っていると思っているの?」

ほむら「貴方は遠い昔…どこかの時間で私を助けたのよ」

涙を流しながらマミは顔をあげた

そうだ、本当にそうだ
まどかとマミが来てくれなかったら今の自分はいない

ほむら「私は…貴方と共に闘ったこともあるのよ!」

暁美さん、と笑顔で呼ぶマミの声が頭に響いた

ほむら「貴方を先輩として慕っていた事だってあるわ!!」

マミの亡きがらを思い出した

あの日、私はマミの亡きがらを前にして
まどかがワルプルギスの夜に突撃していくのを見守った

あの日の私は、まどかとの出会いをやり直したいと思って願った

全てはまどかを救うため

しかし、皆も救おうと思ったのも事実だった

色々な事があってすっかり忘れていた…

…当時の自分にとってあまりに当たり前のことを

ほむら「私は貴方も助けに来たのよ!!!」

ほむら「貴方はこれから必要になるのよ!!!」

ほむら「お願いよ!一緒に戦ってちょうだい!!!」

ほむら「貴方は生きる必要があるわ!!!!」

彼女の心に届くかどうか、彼女が本当に欲している言葉かは分からなかった
私が今、マミに伝えたい事
生きる必要があるということ

ほむら「貴方の今までの行動…魔法少女達を殺す事は肯定できないわ…」

ほむら「だけど、貴方の力が無いと多くの犠牲がこれから出るのよ」

ほむら「あなたが殺した少女達に申し訳ないと思うなら、
彼女達の様な人を増やさないようにするべきよ!」

ほむら「魔女を退治しなければそんな子は増える一方なのよ!」

ほむら「しっかりしなさい!!
私の知っている巴マミはそんな人じゃないはず!!!」

最後の方は、完全に冷静さを欠いた、
序盤のマミよりもヒステリックな叫び声をあげていた

そしてその叫びを聞いても…マミの瞳の虚ろさは相変わらずだ

マミ「…」

こちらを向いたマミを見て、胸がちくちくと痛む…顔を直視できない

ほむら「…帰るわ。なにいってたのかしら、私。ごめんなさい」

マミから発せられる負のイメージは強烈過ぎて、私の叫びなどマミの心に届かないのは明らかだった

どうしようもなくなって、情けないがマミから背をむけた

そして、マミの家から出た

ほむら「…どうしてこうなってしまったのかしら」

先ほどのマミの様子

未だ見つからないまどかとさやか

ここは、あまりにも違う。違いすぎた

ほむら「私…間違ってたのかしら…」

ぼうっと空を見つめながらつぶやいた

目を閉じると未だに瞼の裏に沢山の過去の映像が浮かんでくる

最近、ずっとこうだ

忘れる事が出来ない。もう時間は何カ月もたっているのに

まるで昨日の出来事のよう

ほむら「まるで…私って亡霊のようね…」

…いけない

こんなことを思ってしまっては
私はまどかの為に、ここまで頑張ってきたのだ

これは、私の思いの丈を表しているんだわ

だから…頑張らなきゃ…まどかを救わなきゃ…

マミ『どうして私は生きてるの!?』

マミの件は…忘れるしかないわ…

第一、生きていて欲しいなんて…

何回も貴方を利用して見捨ててきた私が言える言葉なんかじゃないわ…

ほむら(…思い上がりも…いい所だわ…)

今回だって… 利用する…ために

…………

ほむら「…寝よう」

-------巴マミ-------

マミ「…」
ボーッ

マミ「…」

ぐうううううう

マミ「…お腹が空いたわ…」

マミ「何か…食べようかしら…」

久しぶりに冷蔵庫の扉に手をかける

マミ「…」

マミ「……私」

『貴方の力が必要なのよ!!』

マミ「必要とされて」

『貴方は生きる必要があるわ!!』

マミ「生きていて」

マミ「でも…あんなことをしたし…」

マミ「やっぱり後に引けないわ…」

自分が惨殺した少女達の脅えた表情を思い出し、胸がギスギスと痛む

マミ(どうしたらいいの…もうやめたい…でも引けない…)

どうしようもなくなって、ソウルジェムを取りだした

さっき浄化してもらったので美しく澄んでいる

が、しかし

マミ「…あ」

一点の穢れを見つけた。グリーフシードでもけせない穢れを

頭に大きな金槌で殴られたような、衝撃をうけた

マミ(…分かってたわ…もうすぐ魔女になることだって…)

目からまた、涙が流れた。ほんとに涙というのは枯れない

マミ(…そうよ…どうせすぐ死ぬのよ…皆…)

さっきの少女…ほむらの表情…叫びが脳内にありありと蘇った

ほむら『あなたが殺した少女達に申し訳ないと思うなら、
彼女達の様な人を増やさないようにするべきよ!』

マミ(…生きてみようかしら)

マミは久しぶりに夢から覚めたような、そんな顔をした

マミ(昔の…人助けをしていた時のように)

マミ(どうせ、長生きは出来ないわ)

黒い光が体を包み込んでいくような感覚がする

しかし悪い気はしなかった、今ならすんなりと受け入れられる気がする

マミ(死んだら、私は地獄に落ちるわね)

マミ(地獄にもっていける…冥土の土産話でも…生きてる間に作ろうかしら)

ソウルジェムに映る自分の顔が久しぶりに笑った

マミ「…寝よう」

------暁美ほむら------

今日は早く起きて、まどかの家にいくことにした

まどかの家は今まで通り普通に建っているのだが、まどかは出てこない

仕方なしに学校へと向かう

もしかしたらまどかはあの時まだ家を出発していなかったかもしれない
だから出来るだけゆっくり歩く

もしかしたら、何か用事があって早く行ったのかもしれない

せめて、さやか達でもいいから見つけたい

まどか達が通っていた通学路できょろきょろしながらあの3人の面影を探す

大勢の学生は楽しげに友人との談笑を楽しみながら歩いている

ほむら(…やっぱりいないわ…)

3人の様な女子学生は一人もいない

3人の様な女子学生は一人もいない

あの3人は結構目をひくので、見つけやすいはず

きっとここにはいないのだろう

もう急がないと学校に遅れる時刻になってしまった
ここの通学路もあんなに大勢いたのがうそのよう
走っている生徒を何人か見かけるだけになってしまった

ほむら(はぁ…)

カチッ

時間を止めて、私も走りだした

------------------------------------------------

(わ、あの子綺麗~)
(凄い美人だね)
(あんな子この学校にいた?)
(昨日転校してきたばっからしいよ)

相変わらず、この見滝原中学は活気にあふれている

ほむら(いつも廊下は騒がしいわよね…)

ついついこの学校にはいないと分かっているもまどかを探してしまう

ほむら(一体どこの中学にいるのかしら…)

ほむら(朝見なかったから、見滝原中学と逆方向の中学にいるわよね…)

ほむら(…早く会いたいな…)

今日の夜、明日の予定を少しずつ考えながら
まどかがいなくなった教室へと私は入って行った

-------------------------------------------------------------

昼休みになった

ここの中学は給食がない

生徒達はだいたい弁当をもってくる
そして私は弁当がない。食べる相手もいない

どうしても居心地が悪いので屋上へと上がる

手にはさっき購買で買ったその場しのぎにもならないカロリーメイト

パンはすでに売り切れていた

ガチャリ

青い空に穏やかな風

そして視線の向こうには…

マミ「あら、暁美…ほむらさん…だっけ?」

何とマミがのんびりと弁当を食べているではないか

昨日までの取り乱し方がまるで夢幻のようだった

ほむら「…巴…マミ…どうして」

マミ「貴方が私の力を貸してほしいって言ったじゃないの」

にこりとほほ笑むその姿はまさに昔のマミだった

マミ「私はもう大丈夫よ。もう魔法少女を襲ったりしないわ」

ほむら「本当…なの?」

マミ「ええ。また昔のように頑張るわ。」

マミ「貴方のおかげで目が覚めたわ」

マミ「ありがとう」

マミはペコリと頭を下げた
私はそんな大層なことをしてはいない

マミ「暁美さん、貴方に協力するわ」

…私の思惑通りに進んだのだけれども

…私はただ、巴マミを利用したかったから…
だから生きていてほしかっただけで…

ほむら(なんだか凄く悪いことした気分だわ…でも)

マミ「暁美さん…泣いてるの…?」

ほむら「へ?」

あわてて目をこする

ほむら(本当だ…なんで…)

涙は次から次へと流れ出し、嗚咽も漏れだしてきた

ほむら「うっ…うわあーん」

どうしてこんなに涙があふれるのか、
この歳になって子どものように泣く理由は思い当たらない

ただ、悲しいような嬉しいような気分なのは確かである

-------巴マミ-------

目の前の少女—暁美ほむらが泣きだしたのには驚いてしまった

美しく、誰も寄せ付けぬ刃の様な人

冷たく、誰も信用してはいない表情

彼女のルックスからは到底想像できなかった

マミ(クールな子というより…優しい子なの…かしら?)

彼女の背中をさすり、なだめつつ考えた

あの時の彼女の叫びは私に対するだけ思いだけでは無い気がしていた

むしろ私は…なんだかオマケみたいな…そんな感じだった

マミ(オマケでも…それでも必要とされて少し嬉しかったわ…少しだけね)

今まで自分は…駄々をこねた子どもだった

そうしていれば、誰かがこの悲劇的な自分を救ってくれると思っていたのだろう
マンガやアニメのヒーローがやってきて

そう、私はずっと探していた

そんな誰かを

だから違う度に絶望し、彼女達を殺したのだ

暁美ほむら、彼女がそうではないと分かった時、やはり絶望した

彼女の言うことなんて、聞く気は一切なかった

しかしソウルジェムの穢れを見てそれはありえないということを実感し

逆に吹っ切れたからこそ、彼女の要望をのむことにしたのだ

しかし不思議な事に目の前で流す彼女の涙は私の心にスコンと入ってきた

まあ協力を少しする程度に思っていて、正直全力で協力するつもりはなかった

しかし今の、触りでもしたらすぐに崩れ去ってしまいそうな
小さな背中を見せられたら全力で助けるしかない

そう思ってしまった

ズキッ

マミ(…っつ!?)

マミ(頭痛…だわ。風邪かしら?)

ズキッ!ズキッ!

マミ(…ううっ…)

思わず頭を押さえた、目の前はぼんやりとした

頭を振り、しっかりしろと自分に喝をいれる

ほむら「…どうしたの?」

泣きじゃくっていたほむらが心配そうに見上げてきた

まだ目に涙が溜まってる

マミ「大丈夫よ。少し風邪ひいたみたい」

心配かけまいと余裕の笑顔を向けてみる

少し安堵した表情になるほむらをみて、自分も安堵する

次の瞬間、暁美ほむらの容貌が一瞬だけ、変わった

三つ編みに眼鏡をかけている、気の弱そうな少女

気は弱そうだが今の刃の様な雰囲気は皆無で年相応の可愛らしい少女

今の彼女とはかけ離れた姿だった

マミ(…何なの…今の)

目を思わずこすり、ほむらを見るが、そこにはいつものほむらの姿

首をかしげ、とりあえず幻覚で片づけることにした

---暁美ほむら---

恥ずかしながら取り乱してしまった
昔、弱かった頃の自分の何かを思い出したからだろうか?

巴マミが今までのように普通に魔法少女として生きる決意をしてくれたのが
嬉しかったのだろうか?

だから泣いてしまったのだろうか…

違う、建前だ。まどかが救える可能性が増えたからだ

ほむら(…私って最悪ね)

自己嫌悪に陥りそうになるが、ぐっとこらえる

ほむら(マミに…ワルプルギスの夜の襲来と…まどかのことを伝えなくては…)

そう、それが目的なのだ。巴マミを危険を犯してまで止めた理由
最大の、大切な理由

他人から見れば気持ちの悪いほどの、まどかへの執着

私にとってはまどかの幸せ=私の命をかけて守ることなのだ

その為には、誰が苦しんでも、絶対まどかを生きながらえさせて
普通の生活をおくらせる

ほむら「…マミ、この町にとんでもない魔女がやってくるわ…」

大きく息を吸い、マミにワルプルギスの夜について話す

マミ「なんですって…?」

マミは目を見開く。マミもうすうす噂は聞いていたらしいが、
まさか自分の街へ来るなんて思ってもなかったことだろう

ほむら「作戦を考えましょう。今日の放課後に家にいくわ」

マミ「ええ、待ってるわ…大変な事になったわね…」

ほむら「では次の時間体育なのでこれで失礼するわ」

長い、うっとうしい髪の毛をおもいっきり跳ね上げる

そのまま屋上を後にした

一日の分かりきった授業を終えて、自分の家にいったん帰宅する
そこでワルプルギスの夜の出現の統計についてまとめた紙を持つ

それからマミの家へ急いで歩く

マミ「待ってたわ。入って頂戴」

昨日に比べると心なしか随分生活感が出て、明るくなっている気がする

マミ「ごめんなさい。急だったからお茶しかないの。」

マミ「本当ならケーキとか出したかったのだけど」

申し訳なさそうにマミは紅茶を出す

仕方もない、昨日まであんなに錯乱していたのだから、
手作りケーキや美味しい紅茶なんて気分ではなかったはずだ

寧ろ紅茶があることに感動を覚えた

ほむら「いいえ、気にしないで頂戴」

ほむら「これが、ワルプルギスの夜の資料よ」

統計の紙をマミにみせる

ほむら「正確な場所はまちまちだけれど…だいたいのポイントは○で囲んでいる所よ」

ほむら「出現日時は私が転校してから100%1ヶ月よ」

マミ「…一体どうやって…そんなことを…」

絶句するマミを無視して話を続ける

ほむら「それより、貴方本当に鹿目まどかという少女を知らないの?」

マミ「…そういえば、暁美さんは前もそんなことを言ってたわね」

ほむら「そうよ。私は彼女が契約しないようにこの町へ来たの」


マミ「…どういうこと?」

うたがるように眉をひそめる巴マミ。

ほむら「彼女はワルプルギスの夜を一撃で倒すほどの…強力な、いえ、
最強の…魔法少女になるわ」

マミの目は疑念の色から恐怖の色に変わった
心なしか、肩も震えている

マミ「…それって…ま、まさか…」

ほむら「そうよ…世界を一瞬にして滅ぼしてしまうくらいの…魔女になるわ」

マミ「…とんでもないわね」

ほむら「だから、私は彼女を探しているの。契約を阻止するために」

時間逆行の能力や、まどかが初めての友人だったことは伏せて説明した

万が一、キュゥべぇにこの情報が漏れたら面倒になるに違いない

知らない魔法少女をけしかけ私を消しにかかる可能性もある
過去に実際そんなことがあった

特に私の能力に関しては、ばれてしまえば対策を簡単に考えられる
そうしたら私はまどかを救うことは愚か、戦えない

ほむら(こんなことは隠しておかないと…)

ほむら「マミ、鹿目まどかという少女の容貌を今から説明するわ」

ほむら「彼女は非常に小柄よ。正直中学2年生ぽくはないわ」

ほむら「ピンクの髪を赤いリボンで二つ結びにしているわ。」

ほむら「名前が違ってもいいわ。思い当たる子はいないかしら?」

マミはウンウンと唸りながら一生懸命考えている、が…

マミ「…ダメだわ。思い当たらないわ…」

ほむら「そう…」

肩ががっくりを落ちていく感覚がする

パンと手をたたく音がして、思わずビクッとして顔をあげた

マミ「そういえば、鹿目まどか君の親戚とかは?」

ほむら「…?」

マミ「あ、ごめんなさい。この学校でピンクの髪って彼しか思いたらないから」

そうなのか、彼はまどかと同じ髪の色…
どんな感じなのだろう。想像がつかない。ピンクの髪の少年…

マミ「…暁美さんは鹿目くん知らないの?」

どうやら顔にはてなマークがいっぱいついていたらしい

マミ「えっと…写真か…テレビのcm…は…」

マミはそこらに転がる雑誌をあさりながら、テレビをつけた

マミ「あ!運が良いわ!!この人よ」

テレビ画面の、ピンク髪の物腰柔らかそうな少年を指差した
化粧水のcmなのだろうか、よくわからないがさわやかな笑顔を振りまいている

カッコいい…と言えばそうかもしれないが
今まで興味がなかったのでいまいちよく分からない

ほむら(…凄く微妙ね…確かに似ていると言われれば…そうかもしれないわ)

マミ「どうかしら?」

不安げに私の顔を覗き込むマミ

ほむら「少し、似ている気もするわ。確かに親戚の線は十分あると思う
明日会って話してみようかしら」

するとマミは非常に言いだしずらそうに手をこねくり回し始める

マミ「えっと…明日は可能かは分からないわ」

ほむら「?」

マミ「彼は売れっ子だから週に2、3回しか学校に来ないわ」

マミ「でも来た時はファンの子が駆け付けるから大騒ぎになって分かるわよ」

ううむ…スターとは大変なものである
まどかの近況を一刻も早く知りたいが、ここは我慢する所である

彼女を知りえそうな人物を言えば、鹿目まどか
同名の彼ただ一人なのだから

ほむら「分かったわ、ありがとう」

ほむら「じゃあワルプルギスの夜についてだけど…」

あれからマミとどれほどの攻撃を加えるべきか、
グリーフシードのストックをどれほど集めるべきかを相談した

後、佐倉杏子…彼女の協力も求めたいことも告げた

マミ「…そうね、彼女もベテランだし味方は多い方が良いものね」

マミは非常に言いだしづらそうに、渋い顔をしていたが了承してくれた

まあ、佐倉杏子の説得はマミ程大変ではないし、
この2人によくない過去があったとしても少なくとも今までの時間では
直接衝突することはなかった

美樹さやかとはよく衝突をしていたが、彼女ほど気の強くない、
大人な考えを持つマミなら心配もない

一人で何人かをあたるのは無益なのでそれぞれ担当を決める

ほむら「佐倉杏子の方は…私がいって、マミがまどかを…」

マミ「いいえ、私が行くわ。彼女にいうことがあるの」

驚いた。正直私がまどか探しに行きたかったのだが、
気を使って杏子との接触をしようと決めていたのだ

ほむら「…佐倉杏子の居場所を知っているのかしら?」

マミ「ええ。彼女は私に任せて頂戴」

…少し不安があるが、そういうのならマミに任せよう
私自身、そっちの方が良いし

ほむら「分かったわ。じゃあ明日はそれぞれ動きましょう」

マミ「そうね。じゃあまた明日、学校で」

コクリとうなずいて、マミの部屋のドアを押し、外に出た

今朝はとりあえず、見滝原中学と逆の中学の通学路に張り込む

一番人通りの多そうな通路を2、3日かけてじっくり通り過ぎる人を観察する

それらしき人はいないか、あるいは美樹さやか達でもよい

しかし、今のところそれらしき人物は誰もいないのだ

(誰だろう、あの子)
(凄い美人だなぁ。お前声かけてこいよ)
(え、無理無理!)
(見滝原中学…の制服?逆方向じゃない?)

ザワザワとうるさい大通り。

まあ、普段いない見滝原中学の生徒がいるのだから、皆珍しがっているのだろうか

なんだかじろじろと見られているような気もする
自意識過剰なだけかもしれない。

そうこうしているうちにいよいよ時間が切羽詰まってきた

ほむら(今日も収穫なし…ね…)

カチリ

停止した世界で全力で走りだした。
正直今日は間に合わない気がしてならない

学校に嵐のように到着し、大慌てで靴箱の扉をあける

バサバサッ

紙束が落ちてきたが、今はそんなものに気をとられている場合ではない
とりあえず、全部適当に引っ掴んで教室へ急いで向かう

一度、遅刻したことがあったが、やたら長い反省文を書かされた
そんなことをしたら休み時間や放課後がつぶれる

途中、女子の軍団に遭遇し、舌打ちをする

すると、舌打ちのお陰か、道がサッと分かれた

ありがたいのか、もしくは新手の嫌がらせなのか、何なのか分からない

とりあえず、早歩きで開けてもらった道を歩く

通り過ぎるクラスで一つ、尋常では無い人数の女子がいる教室があった

どうやらこの女子軍団の元凶のようだ。

何が起こっているかは興味は少しはある

けれどとにかく早く教室へいかないとならない

なんだかあまりに静かな廊下に少しおののきながら教室へ急いだ

あの後ぎりぎりセーフで教室へ駆け込みなんとか反省文を逃れた

椅子に座って一息つく

そういえばこの紙きれは一体何なのだろう…

そういえば昔、ドラマで見た一場面を思い出した

ほむら(…死ねとか書いてあるのかしら…)

いじめの対象の子に悪口をかいて送りつけるのだ

まさかこの時間では私はその対象なのか…
三つ編みの頃はこれが怖くて怖くて仕方の無かったのに、今は至って冷静である

ほむら(ああ…無視に限るわ…一体何なのよ、この時間は…)

いつまでも手に持っておくわけにはいかないので、バックに詰め込んでおいた

「わ、わわ私、ついに鹿目君と握手した!!」
「きゃー!凄いじゃない!!」
「よくあの熱血ファンクラブと先輩を押しのけて…」
「あのね、運が良かったの…あのね、」

hrの終わった少し長い休憩時間
朝早くに出たのでうとうとしていた所、大きな悲鳴と鹿目…
そのワードで飛び起きる

鹿目まどかが来ている…!?

マミの一節をぼんやりと思いだした

『大騒ぎになって、分かるわよ』

ほむら(ああ…だからあんなに人が…)

流石はアイドルと言ったところである。あの人数もうなずける
まあ丁度良い。握手したといっている彼女に彼の居場所をきこう

ほむら「あの、少し良いかしら」

「え…!?暁美さん、ど、どうしたの」

私があまり話さないせいか、彼女の声は激しく動揺しているように思えた

ほむら(…もう少し社交性を身につけた方が良かったかしら…)

ふと気がつくと、クラス中がシーンとしている

ほむら「鹿目まどかさん…いえ、まどか君に話があるの」

ほむら「案内してもらえないかしら?」

少女の目は三倍にも見開かれた
「え、うっうん」

ガタガタと椅子から立ちあがり、私の前に立つ
クラス中にザワザワと、あまり大きくないが確かにどよめいた感じがした

ほむら(…そんなに珍しい事かしら…それとも私は嫌われてるのかしら)

ほむら(…案外慣れないのもね。嫌われるのに慣れたと思ったのに)

またぼんやりとまどか達の声がフラッシュバックする

ほむら(まただわ…気持ちが悪くなりそう)

四方からこだまする声、声、声
色々な、ごちゃまぜになる記憶と感情

思わずふらつき、倒れそうになるのを両足でしっかり支える

「暁美さん…大丈夫?」

ふらついた私を心配しれくれているのか、はたまた私を快く思っていないからかは分からないが
顔を曇らせていってくれた

ほむら「大丈夫。心配しないで」

とりあず、前者と信じて笑顔を向けてみる
最後に笑顔を作ったのは、一体いつだったのだろうか…

「何かあったら、声かけてね。さ、行こう」

彼女は大きな目をさらに大きくして、なんだか顔を伏せながら早口でいった

ほむら(…あまり好かれてはないようね…)

ほむら(いけない。私はまどかを救うためだけにここにいるんだわ)

ほむら(好かれる必要なんて、少しもないんだわ)

ハッと当初の目的を思い出し、気を奮い立たせる

鹿目まどか…彼がまどかに関する情報を持っていることを祈りながら教室を後にする

---鹿目まどか---

さやと「まどか!!一大事だぞおおお!!!」

朝のホームルームを終えた後のまだ騒がしいときに、奴はやってきた

まどか「うるさいなぁ。なんだよ」

さやと「おい、俺がどれほどの早さで駆け付けたと思ってる!」

まどか「分かったから早く言えよ」

さやと「おお、そうだった。あのな、いうぞ」

さやとはスーっと深呼吸する。無駄な動きが多いといつも思うのだ

さやと「暁美ほむらが、転校生がお前に会いにくるぞおおお!!!」

あまりに大声をあげるので耳をふさいでしまったが、話しの内容は聴こえた

---暁美ほむら---今朝見かけた、黒髪の美しい少女

どうして俺なんかに?

まどか「なんで?」

さやと「さあ?もしか」

さやとのいいかけた言葉は怒号によってかき消された

「くっそおおおおお」
「いっつもだよなあ、まどか!」
「くそお!!顔が良ければ!!顔が!!!」
「お前ー!!俺と代われー!!」

あまりの男子の気迫に恐れおののく
一方…

「どうしよう…まどか君とられちゃうの?」
「でも無理ないよ…あの暁美さんだよ」
「私ちらっとしか見てないけど、綺麗だったよ…なんか、同じ世界の人じゃない見たいだった」
「嫌だよお、私泣いちゃいそう…」

女子の思っている以上にブルーな雰囲気にかなりツッコミたくなった

まどか「ちょ、皆何でそんな思考に…」

ガラッ

ほむら「…」

噂の人とはどうしてこんなにタイミング?よく登場するのだろう…
彼女の突然の登場に皆一斉に口を閉じた

ほむら「えっと…鹿目くん、どこにいるのかしら」
…何だと!?今なんて…

「あ、あの、あああの人ですぅ!!ではこれで!!!」

ほむら「…あ」

付き添いの少女は自分に向かって指を指してすぐにバタバタと出て行ってしまった

まどか(まさか…自分がどこにいるか分かんない人がいるなんて…)

いつも俺の席は人だかり
そしていつも何故か無駄に目立つから、どこにいるなんて今までいわれた事はない

彼女、暁美ほむらはゆっくり歩いてくる

…何故だろう、怖い…すごく怖い…

まっすぐで漆黒の瞳から今すぐにでも逃げたい衝動に駆られる

美人だから?いや、理由になってないよな…

ほむら「貴方が…鹿目まどか君…?」

少しの間をおいて、彼女が問掛ける

クラスの静寂が気味悪い

まどか「う、うん…俺…だけど…」

ほむら「少し質問していいかしら」

まどか「…ど、どうぞ」

ほむら「ありがとう。じゃあ1つ目」

どんな質問か身構えてしまう。どうしてこんなに恐れているのだろう、
どうしてこんなにも彼女がこわいのだろう…

ほむら「妹さんか、お姉さんかいる?とにかく女兄弟」

あまりに普通…いや、普通ではないのかもしれない質問に拍子抜けする

まどか「いや、まだ3歳の弟一人だけど…」

一瞬にして彼女の顔がひどく悲しげになった気がした
気のせいかもしれないが

ほむら「そう…いとこか親戚には?」

まどか「それはいるとも」

少しだけ目が輝いた。そして気がついた。
彼女、いつも自分が一番魅力的でない表情をしていることを

だって少し目を輝かせただけで、さらに綺麗にみえるのだから
隣のさやとも目を見開いて驚いている

ほむら「その中に、ピンクの髪を赤いリボンで2つ結びをした小柄な女の子…」

ほむら「だいたい150もないくらいで…同い年くらいの子、いない?」

うーん…自分の記憶をたどる限り、そんな子はいない

第一、髪がピンクってのは自分の家族しかいないのだ。親戚は皆髪の色が違う

まどか「残念ながら、いないよ」

ほむら「…そう、ありがとう」

思いっきり顔が暗くなった暁美さん。今にも泣きだしそうに見える

まどか「あの、あのさ、誰か探しているの?」

ほむら「ええ…」

彼女の機嫌が少しでも良くなるように話す

まどか「きっと見つかるさ、えーっと、名前何だっけ?暁美さんの」

うそだ。まるっきりの嘘。彼女の名前なんて知っている

ほむら「…ほむらよ、暁美ほむら…名前負けしているでしょう…」

伏し目がちに彼女はそういった。全く名前負けどころか、
ほむらという名はある意味彼女にぴったりな気もする

まどか「いや、そんなことないと思うよ。
ほむらってカッコいいじゃん。燃えあがれーって感じでさ」

ほむら「…今、なんて…?」


彼女は一瞬非常に驚いた顔をした。彼女が初めて年相応の表情をした

まどか「…へ?」

ほむら「いいえ、何でもないわ。ありがとう、そう言ってくれて」

この瞬間には、いつもの冷めた…氷のように近づきたがい少女に戻った

まどか「あ、いやいや…とにかく、そんな感じの子に会ったら話しておくよ」

ほむら「感謝するわ」

彼女はクルリと背を向けて、
もう、俺には興味を失くしたかのように出ていってしまった

---暁美ほむら---

今自分は果たしてまっすぐ歩けているのだろうか

最悪の事態になってしまった…

多分、鹿目まどかは、まどかだ。まどかが男の子になってしまった…

今までの自分の成していたことが音を立ててガラガラを崩れていく

もう自分の知っているまどかはどこにもいないのだ

涙が溢れそうになるのをぐっとこらえて前を見る

家族に…まどかは確かに弟がいた…
名前は…タツヤで年も…3歳だった…

容姿はいやでもまどかを彷彿とさせる。あの笑顔や気の弱そうな表情

そして一番はじめにかけてくれた、言葉

まどか『燃えあがれーって感じでさ』

全く同じセリフが飛び出した、彼の口から

ほむら(嘘でしょう…)

立っていることが出来ずに座り込み、そのまま地面に倒れ込んだ

ほむら(…私はまどかの存在すら抹消したのね)

四方、いいえ全ての方向からまどかの声が聞こえる

目を閉じる。暗い世界で今までのまどかの顔が浮かんでくるが、
皆一様に私を睨みつける

ほむら(…もう、どうにでも…なって…)

涙があの時のように溢れてくれたら良かった

私のソウルジェムが転がった

----鹿目まどか----

暁美さんが出ていった後の教室はてんわやんわの大騒ぎとなった

特にこのクラスの人はあんなに近くで彼女を見たことのない人ばかりであった

「やばいな、あんな美人がどうして…」
「鹿目~。まじいいな~」
「でもあの発言にはほっとしたよな、まどかのことなんて興味が無いみたいだし」
「だよな~」

まどか(なんだか…凄く悔しい気分になったぞ…)

若干のいらつきと拍子抜け感…いや、別に告白とか、
そんなんを期待していたわけでは…まあ、少しは…

そんなもやもやとしたことを考えていると、突然自分にとある声が聞こえた

『早く外に出て!!』

まどか(え…?誰だ!?)

幻聴、普段ならそう思って完全無視をするのだが、この声は無視できなかった

…どこかで良く聞いていたような…すごく親しみのある声だ

まるで…自分にとても近いところにあった…ような…

『ほむらちゃんが…マミさんを…』

声は慌てているようだった

まどか(君は…誰?マミさん?暁美さんがどうしたの?)

『もう!!早くでて!!』

優しげだった声が一変して、強いものに変わった

その言葉に弾かれたように教室を飛び出し走りだした

---巴マミ---

マミ(…次は移動教室よね…)

ザワザワと皆が動く中、自分も移動を開始する

こういうとき、一人でいる事が身にしみるのだ。しかし…

マミ(…暁美さんの教室は確か、こっちかしら)

友達とはいえない存在だが、一人の自分にとっては十分すぎるほどの相手だった

マミ(学校で…っていったから、会っても大丈夫…かしら)

不安を抱きながら2年生の校舎にいった

ドンっ!!!

廊下を歩いているとダッシュしてきた少年に思いっきりぶつかった

手に持っていた教科書が辺りに散り、尻もちをつく

「す、すいません!」

声がするほうに顔をあげる

マミ(この人は…鹿目まどか…)

テレビの中のスターが目の前に立っている

こんなに近くで見るのは初めてなので、少なからず焦ってしまう

まどか「すいません、手伝います」

ありがたい事にサッとちった教科書類をひろいあげてくれた

マミ「い、いえ、おきになさらず」

自分もあわてて教科書類を拾い上げて立ちあがろうとする

まどか「…」

マミ「どうかしました…?」

動きが不自然なくらい停止している鹿目君に思わず問掛けてしまう

まどか「い、いえ…何でもないです」

マミ「そうですか。」

まどか「では失礼しました」

そのまま普通に別れようとお互い一歩を踏み出した。

まどか「あ、あの、すいません!」

数歩いったとことだろうか、突然大きな声が聞こえたため振り向いた

まどか「暁美さんの知り合いですか!?」

マミ「…まあ、少し話したことはありますが…」

暁美さん…彼女はもう鹿目君との接触を済ませたのだろうか?
そうでなくても彼女の噂はひどく大きなものであるようだから
興味を持ったのかもしれない

自分は休んでいたため知らなかったが、
大変な美少女が来たと毎日教室が大盛り上がりなのだ

マミ「…暁美さんがどうかしたんですか?」

まどか「いや…どうかしたかは分からないのですけど…」

まどか「ついてきてくれませんか!?」

いまいち意味は分からないが、彼の瞳はなんだか切羽詰まっているようだ

だんだん嫌な予感が…してき始めた

マミ「いいですよ、よくわかりませんが、急ぎましょう」

2人で廊下を全力で走り始めた

---鹿目まどか---

今、隣には金髪の先輩…巴マミという名の少女と走っている
さっきの謎の声がいってた名前が彼女の教科書に書かれていた

そしてよくは分からないが、嫌な予感のする方へ。

ひたすら全力で走った

すると、人だかりを発見した

まどか(まさか…)

さやとの言葉が頭によぎった

マミと共に人ごみを無理やりかき分け中心部へ向かう

長い黒髪の少女…暁美ほむらが廊下で倒れていた

ただですら白い頬はいっそう白く、全てを諦めたかの様な表情で倒れている

マミ「暁美さん、しっかりして!!」

マミが大慌てで駆け寄り、手を握る

その手の中に何か光るものは一瞬見えた

まどか(…何だろう?)

気になって近寄よろうとした刹那

養護教諭「どきなさい!運び出すから!!」

担架が運ばれ彼女は乗せられた。マミもどかされそうになるが必死に抵抗する

養護教諭「邪魔なのよ!手を放しなさい…」

むりやりつないでいる手を引き離そうとする先生

見ている側をあまりにも不快な気分にさせる光景だった

いや、先生の対応はごく普通で正しいのはわかっているのだけれど…

そして剥がした手の中を見て…先生の動きがとまった

養護教諭「…良いわよ。付き添いなさい」

さっきの強硬な姿勢が一変し、巴マミにつき添いの許可が下りる

マミは担架に乗せられたほむらと共に去って行ってしまった…

---巴マミ---

嫌な予感がしてなぜか人気アイドルの鹿目くんと共に走ったその先には

マミ「暁美さん!?」

昨日まで元気そうだった暁美ほむらが人だかりの中で倒れていた
ほむらのソウルジェムが隣に転がっている

ソウルジェムは穢れきっていた
はやく浄化しないとこの場で魔女になってしまう

ポケットに手を突っ込んで予備のグリーフシードを探す

マミ(でも…一体何が?)

幸いほむらのソウルジェムは長い髪に隠れていて
身体能力の大幅な強化をされたマミ以外の人は気がついていない

マミ(どうして…いきなりこんなことに…絶望するようなことが…?)

マミ「ごめんなさい、どいて!!」

無理矢理人だかりに押し入り、暁美ほむらの元へ行く

マミ「暁美さん、しっかりして!」

呼びかけつつ、ほむらの手にソウルジェムを握らせ、グリーフシードで浄化する

多分、こうすれば、大概の人は手を握り合っているようにしか見えないだろう

養護教諭「どきなさい!運び出すから!!」

まずい、タイミングが悪すぎる
彼女には病院ではなく、今はこのグリーフシードが必要なのだ

野次馬どもは養護教諭の一喝でざわざわと道を開ける

養護教諭「良いから離れなさい!!」

グッと私の方を掴む先生
いつもは大人しく従うが、今だけはそういうわけにはいかない
全力で振り払い、その場にとどまる

ソウルジェムの浄化が終わるまで、手を放すわけにはいかない
先生はどかない私を無理にでもどかそうと手を無理矢理放そうとする

他の先生達も養護教諭に従って無理に私を剥がす手伝いをするからたまらない

いくら魔法少女とはいえ、大人数人に一人で、しかも通常の状態で勝てるわけがない
ズルズルと引きずられる形で手が離れてしまった

マミ(…暁美さん…!まだ、浄化が終わってない…!)

養護教諭「…ん?」

養護教諭が手のソウルジェムを見つけたようだ
没収するつもりだろう

マミ(もうダメだわ…あれが100メートル以上離れたら…暁美さんは仮死状態に…)

しかし養護教諭の対応は意外なものだった

養護教諭「良いわよ、付き添いなさい」

マミ「え…?」

養護教諭「ほら、ぼさっとしないで一緒に病院へ行きましょう」

今まで私を剥がしにかかっていた先生達と共にポカーンとしてしまったが
急いで我に返り、暁美さんの手をもう一度握る

まだ中途半端にか浄化されていないソウルジェムがすっかり輝きを取り戻した時
私は校舎に出る直前だった

養護教諭「…終わったかしら?」

私にしか聞こえないように呟く彼女

マミ「…今、なんて…」

養護教諭「…貴方達、魔法少女でしょ…?」

相変わらずなんとか聞き取れるか、とれないかくらいの声だが
その衝撃的な内容を伝えるには十分すぎるほどだった

マミ「…どうして…そんなこと」

養護教諭「詳しい話は後でしてあげるわ、救急車が来るわよ」

けたたましいサイレンと共に暁美ほむらは救急車の中に消えていった

養護教諭「…私達も病院へ行くわよ」

養護教諭「車の中で話してあげる」

マミ「…はい」

---車内---

養護教諭「そう、事故がきっかけで巴さんは魔法少女に…」

養護教諭の彼女は大きなため息をついた

マミ「まあ、仕方のないことです…」

養護教諭「そうね…巴さんは魔法少女の真実は…知っているの?」

いいづらそうに、鏡に映った彼女の目は左右に泳いでいた
私の両肩はピクリを動く

マミ「…知っています」

その言葉を、二酸化炭素をと共に吐きだす。

養護教諭「…そうなの…」

彼女の眉は大きく下がり、悲痛の表情になる

養護教諭「よく…今まで…」

マミ「いえ、私は暁美さんに救われたのです」

マミ「真実を知って殺戮を繰り返していた私に立ち直るきっかけを作ってくれました」

養護教諭「…やはり友は大切なものね…」

養護教諭「私も友達がいたわ…」

遠い昔を懐かしむように語る先生

養護教諭「察してるかもしれないけど、彼女が魔法少女だったの」

唇をギュとかみしめる。その表情は悔恨に苦しんでいるようだった

養護教諭「彼女はもうこの世にはいないわ。」

養護教諭「彼女の最後は自決だったわ…」

先生の目から一筋の涙が流れた

養護教諭「あ…ごめんなさい、やっぱりこの話はやめるわね」

マミ「…なんか、ごめんなさい」

養護教諭「いいのよ、気にしないでよ。ほら病院についたわよ」

国立大学病院…大きな白い建物がいつの間にか私の目の前にそびえたっていた

---暁美ほむら---

ほむら「…う」

またしても見なれた白い壁

ほむら(えっと…学校で倒れて…あれ?また巻き戻し??)

しかし病室を見まわし、それは間違いであることに気がつく

養護教諭「大丈夫だった?」

マミ「暁美さん…一体何があったの…」

心配そうなマミに、若い白衣の女…確か養護教諭だった気がする

ほむら(…まどか)

もう無意識のうちに頭の中でその名を連呼している

ほむら(ああ、まどかはもうこの世にいないのね…)

再びトラッシュバックする今までの映像、記憶…

『キュゥべぇにだまされる前のバカな私を救ってくれないかな…』

ほむら(まどか…ごめんなさい…)

ほむら(ああ…いっそまた戻ろうかしら…また一から…そうすれば…)

そう思い立ち、2人が見ている前で変身してしまう

マミ「ちょ、暁美さん、ダメっ!!」

養護教諭「しっかりしなさい!貴方、どうしてそんなことを!!」

…うるさいッ、貴方達は私に関係ないわ!

ほむらの目は絶望にくれ、幽霊や妖怪のような“この世ならぬもの”
という雰囲気がいっそう強くなった

手がいつものように腕の盾に動く

ほむら「さよな」

いうかいい終わらないうちにガラスが割れる音がけたたましく響き渡った

それと同時にこちらに向う足音

ガラララッ!!

乱暴に病室を開ける、音

ブンと“何か”が風を切る

養護教諭「危ない!!!」

養護教諭はとんでもない反射神経で巴マミを押し倒し、突然病室に襲来した
“何か”をよけた

病室の壁には一本の赤い槍

その先には…

杏子「とうとう見つけたぜ…巴マミ…」

憤怒の表情で立つ赤いポニーテールの少女―佐倉杏子がいた

---巴マミ---

マミ「佐倉さん…どうして」

今目の前に佐倉杏子がたっている。いつも何かしら咥えているお菓子はない

杏子「フン、てめえ、ふざけんじゃねえ!!」

バンと壁をおもいっきり叩き、槍を元の長さに戻す

マミ「落ち着いて、貴方に話があるの!!」

杏子「話…?」

マミ「そうよ。私、貴方ともう一度戦いたいの」

杏子「へえ…」

眉をひそめる杏子。憤怒の表情は相変わらずでさらに疑惑の相まで出てきた

マミ「昔…私は貴方のやり方を否定したけど…今は」

マミ「今は、それでも有りかと思うの。だから…」

杏子「ほんとにそう思ってるのかい?」

杏子はにやにやと一歩…また一歩と私に近寄る

マミ「本当よ」

目を杏子からそらさずにまっすぐ見つめる
自分には敵意はないことが少しでも伝わるように

杏子「そうかい…ならば…」

杏子は大きく息を吸い、次に出た言葉は…

杏子「つべこべ言わず、死ね」
グァン!

マミ(…!?)

杏子の槍を間一髪でよける
と、同時に瞬時に変身する

杏子「寝言いってんじゃねえぞ、巴マミ」

マミ「どうして…」

杏子「お前の噂は聞こえてるんだぞ、この同族狩り」

マミ「…」

杏子「噂だけならこんなことはしないぜ、だけど」

杏子の表情がこれまでに見たことのないほど歪み、苦痛や怒りの入り混じった表情になる
まるで、般若…いや般若以上だ

杏子「お前…千歳ゆまを殺しただろう」

ああ…何ということだ、やはり因果応報、やったことは帰ってくるのだ

しかもあまりに沢山の魔法少女たちを殺していて誰が誰だか分からなくなっていた

杏子「ゆまみたいなチビも殺すとは…巴マミ、てめえ…」

杏子「ゆまには…お前のいる見滝原には行くなとあんなにいったのに…」

杏子は悔しげに歯を食いしばった。彼女の唇から血が出た
杏子「なのにいうこと聞かねえでさ、“説得してくる!”なんて置き手紙してさ…」

杏子の目から涙がこぼれた
罪悪感からか身体の力が抜けていく

杏子「馬鹿だったんだよ…あたしが、昔マミと一緒に戦ってたなんていったから…」

杏子「…とにかく、オトシマエはつけさせてもらうぜ、巴マミ」

マミ「…」

杏子の目は獲物を狩る野獣の目であった。非常に危険だと本能が警鐘を鳴らす

杏子「ゆまの無念を晴らせてもらう!!」

槍がまっすぐに自分に向ってくる
直観的によけられないと感じる…しかし、ここで槍に貫かれて死ぬのも悪くはない

カチッ!!!

マミ「!?」

杏子の槍の動きが止まった
いや、世界中が止まっている

ほむら「…マミ、逃げるわよ」

マミ「これが…暁美さんの魔法?」

ほむら「…手を放したら貴方も止まるから」

手をひかれながら病院を飛び出し、街を駈け、路地裏に突入した
カチッ

再び息を吹き返し、動き出す世界

マミ「…」

ほむら「…」

お互い、かける言葉が見つからない

マミ「…私から良いかしら」

ほむらはゆっくりとうなずく

マミ「…一体何があったの?」

ほむら「…」

ほむらは何も答えようとはせず、ただですら漆黒のビー玉の様な瞳がさらに生気をうしない、なかなか不気味に見える

もしかすると

これ以上、触れるなという警告…

だけれども、あんなに真っ黒になったソウルジェムをみる限り、放置しておくわけには
いかないのだ

ほむらには恩がある
それに魔女も少ない方が良い

さてどうしたものか…

マミ「暁美さん、ソウルジェムが穢れきっていたようだけど…」

ほむら「…」
マミ「私は暁美さんのお陰で…なんとか立ちあがるきっかけを貰ったから」

マミ「暁美さんが何か大変な事に突き当たったなら、一緒に解決策を…」

ほむら「…」

マミ「暁美さんが、私には関係がないと感じていても、相談くらいして欲しいの」

マミ「少しでも、役にたてるかもしれないわ」

ほむら「…」

相変わらず無表情なほむらはフラフラと歩き出した

マミ「あ、ちょ、ちょっと待っ」

カチッ

耳にその音が聞こえたと思ったら、もうほむらはいなくなってしまった

マミ(暁美さん…)

―――暁美ほむら―――

ほむら「…」

杏子が怒り狂いつつ、自分の病室を襲ったため、帰るタイミングを失ってしまった

養護教諭に変身する所を見られたが
私はたとえこの時間が壊滅しようとどうしようと関係は無い

私にとって、私の生きる理由がいない時間…

やはり世界はグラグラし、さっきの巴マミがなんて言っているか私は分からなかった

とりあえずうっとうしかったので、時間を止めてマミから逃げ出した

ほむら(これから…どうしようかしら…)

とりあえず盾に手をかけ、あの日…入院初日に戻ろうとする

ほむら(…?)

盾に手をかけたが、なぜか動かす気にならない

なぜか、戻る気にならない

しかし、まどかを救わねば…そう思い直し、
盾に手を向かわせやっとのことで動かそうとするが…盾はピクリとも動かない

ほむら(…参ったわね…)
一体全体、全くおかしい。どうして盾が動かないのか?

盾が動かないという異常状態だけでなく、自分自身もたった数日くらいしかいないのに、
こんなにも心境が変わってきている…

心境の変化…実はもう少しこの異様な時間に居ても良いような気もしているのだ

まどかはいないが、今まで一度も経験したことの無い時間

マミが殺戮をおこない、美樹さやかは存在しておらず、
佐倉杏子はゆまを殺されてマミを狙う、この時間

ほむら(…この後どうなるか…少し気になる…)

ほむら(!…何を考えているの…私…)

自分が当初の目的を忘れかけているという、ありえない事に気づきぞっとする
ここに長くいれば、まどかの事を完全に忘れそうな気がしてきた

ほむら(…まどかのことを…忘れる…?)

ほむら(…あり得ない、いやあり得てはいけない!)

全身に鳥肌が立つ。自分が恐れている…まどかが死ぬ、という現実以上に恐ろしい
一刻も早く脱出せねばと手早く盾に手をかけ、無理やりにでも時間を戻そうとする

ようやく動くかという、その瞬間自分の目の前の空間がグリャリとよがんだ

ほむら(…!魔女の結界の中!!)

何も考えず歩いていたせいで、無意識にあのcdショップの地下に自分はたどりついていた

消火器を発射する音と、少年2人の話声が耳に届く

次の瞬間、自分は勢いよく音が聞こえた方へ向かって走りだしていた

―――鹿目まどか―――

暁美さんが運び出された後、自分は教室へ戻った

なんというか、皆のネットワークは一体どうなっているのだろうか

もう暁美ほむらが倒れたことが知れ渡っている

クラスの皆がザワザワと各々のお喋りを楽しんでいる中、
さっきの声の事を考える

まどか(…空耳…にしちゃ、出来過ぎている…)

まどか(でも…一体なんだ?普通に考えておかしいだろ…)

ハッキリ言って自分には霊感なんてものもなく
こんなオカルトチックな事に対面したのは初めてである

オカルトチックと言えば、暁美ほむら…彼女もオカルトな感じがする

皆は美人だ美人だと騒ぎ…いや、自分も美人だと思うが…

なんだか彼女に対する感情は、生身の人間に対するものではない気がしてならない

写真…心霊写真を見せられているような気分になるのだ

正直…彼女がとっても怖いような…でも…

まどか(…なんだかなぁ…色々過ぎて訳わかんなくなってきたな…)

ぼんやりと空を見つめているうちに、一時間目が始まり、あわてて教科書を出した

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一日の授業が終わった後、仁、さやととファーストフード店による

3人で他愛のない会話を楽しむ

…色んな人からの視線が痛い…

仁「おっと、こんな時間ですか」

仁が時計を見つめ、少し焦ったような声をあげる

仁「すみませんね、習い事の時間なんで、ちょっと」

そう言って席をはずす

仁はおぼっちゃまで、習い事をいくつもこなしているのだ

一体何個だったか…数は忘れてしまった

仁「ではまた明日」

さやと「おーっ、じゃあな~!」

まどか「またな」

2人でエスカレーターに乗り、消えて行く仁を見送る

仁と分かれた後、cdショップへ向かう
お気に入りの歌手の新曲や、気になる曲の視聴をするのだ

まあ、さやとは目的が違うのだが

とにかくcdを見つけ、プレーヤーに入れた後、ヘッドフォンをつける

流れる音楽に自然と体がリズムを刻みだす

――――――助けて――――

まどか(…ん?)

まどか(なんか、声が…)

まどか(…最近、仕事入れ過ぎたか…)

空耳と思い、無視を決め込む。今日は変な声がよく聞こえる日だ…

―――――助けて、鹿目まどか――――

まどか(…やっぱ聞こえる…)

まどか(…くそっ)

さやと「ん…?ちょ、まどかどこ行くんだよ!!」

行きついた先は立ち入り禁止の地下

薄く光る、非常口の印

おそるおそる、扉を開くと薄暗い一面コンクリートの空間

――――助けて――――

まどか「…どこにいるんだ、お前は誰だ」

声をあげるが、応答はない

と、思った瞬間

ガラガラガラ

天井の鉄板が落下し、白い変な何かが一緒に落下してきた

まどか「!?」

――――た、たすけ…て――――

まどか「お、お前なのか」

あわてて傷だらけの白い生き物を抱き上げる

息を荒くしている白い生き物は何に襲われたのだろうか

まどか「おい、と、とにかく俺の家に来い」

全力で走る

白い生き物の傷の手当てをするためもあるのだが、正直なところ
この空間が不気味でしかたなかった

非常口へ、早く、早く…

非常口の明かりが見え始めた時、急に空間がゆがみ始め思わず足をとめた

まどか「…な、何だ…ここは」

辺りに色鮮やかな蝶が舞い、茨が生え、さっきとは明らかに違う道が出来始めている

――――は、早く、逃げるんだ――――

白い生物は息を切らしながら言う

まどか「おい、何なんだ、これは」

―――ま、魔女だ――――

まどか「…何だそりゃ…」

まどか「…な、何かいる!?」

滅茶苦茶な道の奥の方に白いもこもこした、これもまた変な生き物が沢山やってきた
あの鮮やかな蝶たちも一緒だ

何とも言えない奇声をあげ、自分達に少しづつ迫っている

まどか「…おい、逃げられないぞ…」

じりじりともこもこと自分との距離はつまる

もこもこの恐ろしい表情がありありと見える距離に来た時だった

シュー!!!

辺りに白い煙が舞う

さやと「おい、まどか、こっちだ!!!」

さやとが消火器を手に立っていた

まどか「さやと、助かった!」
さやとに駆け寄り、全力で走る

さやと「おい!何なんだよ、ここは」

さやと「てか、何だそれ、ぬいぐるみ…じゃないか、生き物か!?」

さやとが混乱した表情で聞く。こっちも教えて欲しいくらいだ

まどか「さあな…、でも、こいつを助けねえと!」

出口を…さっき入ってきた非常口を探すため
色々なあべこべな標識を通り過ぎたが、やはり見つからない

さやと「はあ…はあ…非常口はどこだよ…」

まどか「おい!さやと、また来たぞ!!」

白いもこもこがまた大群でやってきた

どうやら自分達の後をつけてきたようだ

さやと「くそっ、どうなってんだ!?まどか!?」

パニックを起こしたように叫ぶさやと。

さやとだけでない。自分もパニックを起こしている
マンガやアニメの中の世界、しかも絶体絶命といっても過言ではない状況

まどか「…夢でも見てるんじゃねえのか」

夢や幻としか思えない現実。夢ならば、早くさめろ

空中にはさみが浮かび、茨が自分達をとりかこむように生え、もこもこ達が自分達を囲み、
さっき以上に間合いを詰めてきた

―――――ねえ

さやと「!?」

2人で顔を見合す。どうやらさやとにも聞こえたようだ
自分を呼んだ声が

―――――この状況をどうにかしたいかい?

まどか「どうにかって、そりゃ…」

――――だったら僕と契約して… 魔法少年になってよ!!―――

ドカン!!

まどか「!」

さやと「!」

辺りに響く轟音に激しい砂煙。もこもこも、道路標識も、茨も、一瞬にして吹っ飛んだ

「その必要はないわ」

砂煙がはれ、声のする方へ顔を向ける

そこには…

まどか「あ、暁美…さん…?」

身体に不釣り合いな大きな大砲を手にした少女------暁美ほむらがたっていた
彼女は大砲を肩に乗せ、一瞬のうちに自分たちの前に立ちふさがる謎の生き物を
蹴散らしていく

一匹、また一匹と気が付いたら消えていった

まどか(すごい…瞬間移動してるみたいだ…)

人間は極限までいくと、嫌に変な所で冷静になる

まずこの謎の生き物に襲われる状況がありえない、
同級生が、ファンシーな服を着て、大砲をブッ放しているも姿がありえない

…ファンシー?

まどか(あ…あれは…まさか…)

黒い闇の中を一人戦う少女の夢

あの少女と暁美ほむらの容姿は全く同じだった

ほむら(…だから…どこかで見た気がしていたのか…)

不気味な出来事だ。一体自分はどうしてしまったのだろう
とにかく大変なことにまきこまれている
暁美ほむらが大砲をもう一発発射する

すると風景はよがみ、元の薄暗いコンクリートの壁に戻った

さやと「たっ、たすかった~」

さやとはへなへなと腰を下ろした
自分も緊張が解けたからか、とっと疲れが身体に襲いかかる

まどか「あ、ありがとう、暁美さん」

さやと「まじで助かったよ。てかなんだなんだ!?その衣装は?武器は?さっきの化け物は?」

さやとは困惑顔でマシンガンのように質問をぶつける

しかし彼女はそんな自分達をあの氷の様な視線で睨みつける

その鋭い視線に身体が動かなくなった。

ほむら「どうやらさっきのは取り逃がしたようだわ」

ほむら「でもこのことは忘れなさい。こいつ、私に渡して」

こいつ…自分が抱えてる白い物体を暁美ほむらは指差す

ほむら「早く、こっちに渡して。」

まどか「う、うん」

助けてくれた人なら…そう思い、重い腰をあげて暁美さんに近づいた

暁美さんにその物体を渡すその瞬間、その生き物は苦しそうに叫んだ

「やめて!僕はまだ死にたくない!!」

「助けて、まどか!暁美ほむらに殺される!!!」

衝撃的な内容に、ほむらへ渡そうとする手は引っ込む

まどか「え、どういうことだい…」

ほむら「何を言うの!?貴方達は死なんて怖くは無いでしょう!?」

ほむら「貴方のかわりはいくらでもいるわ」

ほむらの表情は焦っている
…多分、この白い物体は嘘をついたわけではないのだろう

ほむら「貴方達、騙されてはダメよ」

「お願いだっ…僕は…会いたい人がいるんだ、まだ…死にたくないんだ!!」

ほむら「こいつの言うことは無視して!!」

ほむら「こいつの言うことは全て嘘よ!!」

さやと「…どうすりゃいい」

まどか「分からないけど…こいつは俺に助けを求めているのは分かった」

まどか「そして、暁美さんはこれを殺そうとしている」

さやと「…こいつを助けるのか?」

ゆっくりとうなずく

まどか「エイミーのようになってほしくないからね」

さやと「…じゃ、俺も協力するぜ」

ジリジリと彼女から離れながらさやとは笑顔を浮かべた
エイミー…俺が通学路の途中で見つけた捨て猫

色々世話を見ていて、俺に懐いていた

このまま野良猫としてではなく、飼いたいと思った
だから両親に相談をし、長い交渉の末飼うことが決定した

しかし、迎えに行った日、エイミーは轢かれて死んでいた

今腕にいるこの白い物体

こいつとエイミーは確かに違うが
初めて会った、腹を空かせて助けを求めていたエイミーに姿を重ねてしまう

エイミーを救えなかった…償いではないが、せめてこいつは助けたい

暁美ほむらと少し距離があいた所でさやとと目配せして走ってにげる

しかし…

ほむら「いい加減にして」

彼女は自分達の進路方向に立ちふさがっていた

ほむら「私の言うとおりにして頂戴」

ほむら「こいつはほんとに悪いの。何人もの人がこいつに騙されたわ」

本当だろうか?腕の中で息を切らすこいつはそんなに悪い奴とは思えなかった

「君ら…だって、犯罪を犯しているじゃないか…」

「殺人も、強盗もするじゃないか…ねぇ」

ぎょっとして、暁美ほむらをみる

彼女の表情は変わらぬまま

ほむら「関係無いわ。鹿目まどか」

矛先が自分に向き、背筋が思わず伸びだ

ほむら「家族や友達を本当に大切だと思っている?」

この場面には不釣り合いなセリフ。思わずきょとんとしてしまう

ほむら「ねぇ、どうなのかしら」

まどか「そ、そりゃ、大切さ。家族も、友達も、みんな大切さ」

暁美ほむらは目をつぶって大きく息を吸った

何かをふっ切るようなしぐさだった

ほむら「本当に大切なら、変わりたいなんて思わないこと、それと…」

ほむら「こいつを一刻も早く手放すこと」

まどか「…嫌だ」

俺の犯行的な答えにほむらの眉はピクリと動く

まどか「こいつ…俺に助けを求めたんだ。助けを求める奴を助けないのは…」

カチャン

ほむら「なら、こいつ共々、撃ち殺すわよ?」

黒光りする銃口がこちらを向いている

さやとは真っ青になって、俺達を見ている

さやと「ちょ、落ち着いて、ね、暁美さん」

なだめようとしたさやとに視線を向ける暁美ほむら

そして銃口はさやとに向く

ほむら「ほら、渡さないと、友達が死ぬわよ?」

さやと「げ、ちょ、冗談はよしてくれよ~」

バン!!
両手をあげおどけるさやとの脇を弾丸がかすめる
壁に穴があき、薄い煙が銃口から少し出ていた

ほむら「…次は外さないわよ」

彼女はさやとに発砲した…
彼女をおもっきりにらみつけ、さやとに声をかける

まどか「さ、さやと!大丈夫か!?」

さやと「だ、…だいじょーぶ…」

顔面蒼白で薄笑いを浮かべるさやと
精神面はとても大丈夫そうではない

ほむら「さ、渡しなさい」

まどか「くっ…」

言葉につまり、どうすればいいか分からなくなったその瞬間だった

一瞬のうちにオレンジ色のリボンがあちらこちらから出現して
暁美ほむらが向けていた銃にまきつき、彼女の手から銃を奪った

マミ「暁美さん、落ち着いて!!」

黄色い、これもまたファンシーな少女が現れたかと思うと、カチリと音がした

――――巴マミ――――

暁美ほむらを探していたら、魔女の気配を感じた

マミ(まさか…暁美さんが魔女化…)

ほむらの精神状態に、あの真っ黒になったソウルジェム
最悪の予想が頭をよぎる

マミ(…とにかく、早くいかなきゃ…暁美さんと決まったわけではないわ…)

いきたくない、予想が現実だとしても、そんなもの見たくない

心に渦巻く不安をなんとか押し込めて現場へ向かった

現場にはすでに魔女の気配は無かった

少年2人の声とキュゥべぇの声が聞こえる

マミ(…それに…暁美さんの声も…よかった…)

バァン!

ほっとした瞬間、辺りに轟く銃声

あわてる少年の声

マミ(まさか…暁美さんが…銃を向けている…それとも…まだ魔女が?)

しかし魔女の気配は相変わらず無いままである
ほむらが少年に銃を向けたと考えるのが妥当だろう

とは言っても、まだ皆がいる所まで到着していないため、音だけでは判断しづらい

人目に晒されるため解除していたが再度変身し、全力でその場から駆け出す

流れるように、周りの景色は過ぎ去る。通常の人間では決して出すことの出来ない速度

だんだんと声に近づいていっている

そしてついに、3人を捉えた

ほむらは…青い髪の少年とピンクの髪…鹿目まどかに銃を突きつけている
まどかの腕の中にはキュウべえ

マミ(…状況は何となく分かったわ…キュウべぇを渡せということで銃を…)

マミ(暁美さん…普段の彼女なら殺したりはしないと思うし…今も大丈夫だとは…)

マミ(でも…何をするかわからないもの事実。さっきも威嚇とはいえ引き金を引いたのね)

マミ(…用心の為にせめて銃だけでも)

シュルッ

魔法を発動させる

辺り一面にどこからともなくリボンが発生する

まるで生き物のように動く黄色いリボンは暁美ほむらのもつ銃一直線にめがけて進む
そして、彼女の銃にリボンは絡みついた

3人もこちらの存在に気がつき一斉に自分をみる

2人の少年は混乱しきっている表情

暁美ほむらは…

マミ(…何なの、あの表情…)

さっきの生気を失った瞳に加え、さらに絶望と怒り…微かな希望…?

まるで白紙に全種類の絵具を塗りつけた、
とにかくごちゃまぜの感情の塊のような表情だった

そういえば今まで、ある一つの感情が全面に出ている人間にばかりに遭遇しているように思える

自分も、さっきの杏子も、少し前のほむらも

だから、彼女のその表情は…大変恐ろしかった
さっきの無の表情も恐ろしかったが

しかし、きっとこちらの方が数倍恐ろしい

この全てがむき出しの、狂気とも思える表情が、恐ろしかった

マミ「暁美さん、落ち着いて!」

嘘だ。彼女は至って落ち着いている、
本当は自分が落ち着きたかった

カチリと時の止まる音が耳に届いた

そして、自分の手に暖かい何かが触れた

マミ「…暁美さん」

ほむら「…マミ、私の手を振り払ってはダメよ、さっきも言った通り」

マミ「ええ。分かっている」

停止した世界でほむらと自分だけ、動いている
さっきも体感したが、奇妙な気分だ

ほむら「マミ、質問があるわ。少しいいかしら?」

コクリとうなずく

ほむら「感謝するわ。この世界に…魔法少年って存在するのかしら…」

マミ「確か、噂で聞いたことはあるわ。私達と全く同じことをしている男の子達がいると」

ほむら「…そう。彼らは、私達と全く同じ運命とたどるのかしら…?」

うつむきながら、呟くようにいうほむら

彼女にこんなにも表情があったのかと驚く

マミ「分からないわ…でも、多分…同じ運命を…」

ほむらの自分の手を握る強さが強まった

彼女は歯を食いしばり、泣き出しそうな顔をする
グッとこらえ、まっすぐ自分を見てはいるが

この子は、なかなかの泣き虫のようだ。
あの3つ編みの少女=ほむらという図式は案外、ハズレではなさそうだ

ほむら「マミ…私が勘違いしていなければ、彼が私の探している…鹿目まどか」

ほむら「彼を…魔法少年にしてはダメだわ…」

びっくりした

鹿目まどかは女だと聞いていたから仕方が無いと自分を納得させる

マミ「分かったわ…で、どうすればいいの?」

ほむら「…私の説得には応じないでしょう」

ほむら「…私の説得には応じないでしょう」

ほむら「少なからず、私は彼らに銃を向けてしまったから」

マミ「…」
ほむら「だから、マミ」

ほむら「最初、彼らからある程度の信頼を得て頂戴」

マミ「え…」

ほむら「そして彼らが契約しないように説得してほしいの」

ほむら「目を放してはいけないわ。こいつは思っている以上にずる賢いから」

ほむら「もちろん、インキュベーダーと真っ向に渡り合うと
貴方の…殺戮の秘密がばれてしまうわ。こいつがばらすの」

キュウべえを指差すほむら

マミ「そうね…」

自分の重い罪は、3重にも4重にも縛ってくる鎖のようである

自分自身は良いとしても、世界がこれで終わるのはあまりにもまずい

ほむら「貴方ならきっと私よりずっと上手くやると思っているわ」

ほむら「とにかく私はここを去る事にするわ。貴方が私を追い払ったことにして。」

ほむらはさっきの抜け殻はどこへいったのやら、しかしいくら普通に話していても
彼女の精神は表情から察するにあまりに不安で
ソウルジェムの濁りも相当なものだろうと容易に考える事が出来る

マミ「分かったわ。任せておいて頂戴、上手くやるから」

ほむら「じゃあ、いったん手を放すわ」

手から暖かい感覚が離れていくのが分かった

----鹿目まどか----

カチリ

またそんな音がした

そしてさっきまで立っていた暁美ほむらは地面に尻もちをつく形で座り込んでいる

黄色の少女はどこから取り出したのか、黄色の長い銃をもち
暁美ほむらを見下ろしている

「飲み込みがわるいのね。見逃してあげるっていってんの」

暁美ほむらは黄色の少女を憎々しげに睨みつけると、スッと立ち
一瞬で立ち去った

ほっと2人で顔を見合わせ、息をついた

「もう大丈夫よ。あら、キュウべえを助けてくれたのね、ありがとう」

「その子は私の大切な友達なの」

にこっとほほ笑むその笑顔に自分の脳裏にある人間の顔が浮かんだ

まどか「あ…貴方、今日廊下でぶつかった!!」

マミ「そうね。私は見滝原中学3年の巴マミよ。よろしくね」

さやと「3年…じゃ俺達の1つ上か。お前知り合いだったんだな」

さやと「俺、美樹さやとっていいます。で、こいつは…知ってますよね」

ニヘラと笑い、俺を指差す
人を指で指すな

マミ「ええ。よくテレビで見るわ。いつも応援してます」

まどか「そ、そんな、めっそうもない…」

マミ「さて、キュウべえを貸してくれないかしら?
外傷はないようだけど、とりあえず治療はするから」

まどか「はい」

暁美ほむらとは違い、彼女は渡す理由を述べてくれたので安心できた

彼女はこの白い生物…キュウべえを地面に置き、手を当てた

光が手からあふれ出し、キュウべえはスクッと立ちあがった

さやと「す、すげえなー…」

キュウべえ「ま、マミ…」

マミ「もう大丈夫よ、キュウべえ」

マミ「そういえば…数日間私何をしていたか…知らない?」

キュウべぇ「え…?ふ、普通に魔女退治してたじゃないか?」

マミ「そう。そうなら良いわ」

キュウべぇ「変だな…とにかく、助かったよ、マミ!」

マミ「お礼はこちらの人達に。私は通りかかっただけだから」

少し引っかかりを感じる会話だったが、キュウべぇが喋りかけてきたことによって
そんなことはどうでもよくなった

キュウベぇ「どうもありがとう!僕の名前がキュウベぇ!」

さやと「うわあぁ!!やっぱ改めて驚くわ…」

さやとはいつも若干オーバーリアクションをとり気味だ
一緒にいると、さやとのリアクションに驚いてしまう

まどか「…まあまあ。お前が俺に喋りかけてきたのか?直接頭に??」

キュウべぇ「そうだよ、鹿目まどか、美樹さやと!」

さやと「ちょ、まどかはともかく何で俺の名前まで…」

キュウべぇ「僕、君たちにお願いがあってきたんだ」

まどか「お願い…?」

キュウベぇ「僕と契約して、魔法少年になって欲しいんだ!!」

あまり表情豊かとはいえないキュウべぇの顔が、笑顔になった

ピピピッ、ピピピピッ

目ざましの音に驚き飛び起きる

まどか「…またかよ…ん?」

キュゥべぇ「おはよう!まどか!!」

まどか「お、おお、おはよう…」

昨日助けた白い生き物キュゥベぇを自分の部屋で見た瞬間、夢でないと実感した





詢子「まどかぁ、あんた、帰り遅かったらしいね」

まどか「ごめん。先輩の家いってて」

詢子「門限とかはいわないけど、仕事がきつそうだし、無理しちゃダメだからね」

詢子「あと、晩飯前にはさぁ、一本くらい入れといてほしいわ」

まどか「ごめん、気をつける」

朝、目ボケ眼の母と歯を磨きながら、昨日の帰宅時間を軽くいさめられる

そして目を少しずらすと…

キュゥべぇ「♪」

湯につかって気持ちよさそうなキュゥべぇ

まどか(…ほんとに誰にも見えて無いみたいだな…)

昨日のあの後のことをぼんやりと考える

マミの家に呼ばれ、説明されたこと…

さやと・まどか「お邪魔しま~す」

さやと「いやー女の子の家って入ったことが無くて~」

嘘だ。上条さんの家にいつも行ってるだろう、こいつは

まどか「綺麗な家ですね」

マミ「最近掃除したばっかりだからよ」

マミ「遠慮しないで。私1人暮らしだから。ま、ロクにおもてなしも出来ないけど」

おもてなし出来ないなんてのは全くの嘘である、としか考えられないようなケーキと紅茶が登場した

この人はかなり謙遜で控えめな人なんだろう

まどか「マミさん、すげえ美味いです!」

さやと「まじで、まじでうまいっすよ!!」

マミ「ありがとう。じゃあ、本題に移るわね」

マミ「キュゥべぇに選ばれた以上、貴方達も人ごとじゃないわ。ある程度の説明をしようと思うの」

さやと「おうおう、何でも聞いてくれたまえ」

まどか「おい、逆だぞ…」

さやとの、人によっては激しく怒鳴られそうな軽口を
笑顔で聞いてくれるマミさんはいい人だと心底思った

マミ「これがソウルジェム」

マミの手のひらの上には黄色の卵型の宝石が乗っていた

まどか「おお、綺麗だな」

マミ「キュゥべぇによって選ばれた女の子が契約によって生みだす宝石よ」

マミ「…男の子は…?」

キュゥべぇ「魔法少年も同じシステムさ!ただ、指輪じゃなくて時計の様なものになるけど」

さやと「時計…?」

マミ「あ、いつもはこうして…」

ソウルジェムが小さくなり、マミの指に吸い込まれてそこには指輪があった

マミ「こうして持ち運ぶの。魔法少年は時計みたいね」

さやと「へぇ~便利だなぁ」

マミ「ソウルジェムは魔力の源であり、魔法少女、少年の証でもあるの」

さやと「そういや、契約って?」

キュゥべぇ「僕は君たちの願い事を何でも1つかなえてあげる」

なかなか、いや、かなり衝撃的なフレーズが飛びだした

さやと「ええっ」

まどか「願い事…」

キュゥべぇ「何だってかまわない。どんな奇跡だっておこしてあげられるよ」

何とも甘く、魅力的な契約内容なんだろう
しかしこういう物には代償がつきものである
少し、怖いとも思ってしまった

さやと「おお!金銀財宝とか不老不死とか…ハーレムとか」

よだれを垂らし、明後日の方向を向くさやと
彼の頭の中は今、どんな願いをかなえようかでいっぱいのようだ

まどか「ちょ、さやと落ち着けよ…」

キュゥべぇ「でも、それと引き換えに生み出されるのがソウルジェム」

キュゥべぇ「それを手にしたものは、魔女や魔物と戦う使命を課されるんだ」

うきうきとしたムードから一変、魔女という単語に反応する

まどか「魔女って…昨日の…」

マミ「ええ。魔物ってのは…初めて聞くけど…」

キュゥべぇ「魔物ってのは、主に魔法少年達が倒した魔女のことをいうんだ」

キュゥべぇ「ま、基本同じだけど倒した人によっていい分けてるだけさ。
深い意味は無いよ」

マミ「そう…ごめんなさいね。実は魔法少年にあったことは無いの」

意外な事に、マミは魔法少年にあったことは無いという
普段、魔法少女と魔法少年は別々に活動しているようだ

キュゥべぇ「別に魔法少女と同じだから心配は無用さ」

キュゥべぇ「さあ、話を続けよう」

さやと「あ、質問、良いっすか!」

手をピンと挙げ、マミとキュウべぇに叫ぶ
さやとはこう見えて結構真面目に考えているのだろう

マミ「ええ。どうぞ」

さやと「魔女ってなんすか?魔法少女や少年と何が違うんですか?」

マミ「えっと…」

キュウべぇ「僕が答えるよ」

マミ「あ、ありがとう。キュゥべぇ」

キュゥべぇ「願いから生まれるのが魔法少女だとしたら、魔女は呪いから生まれた存在なんだ。魔法少年や魔物も全く同じさ」

キュゥべぇ「魔法少女は希望を振りまくけど、魔女は絶望を振りまく。しかも普通の人間には見えないからタチが悪いのさ」

キュゥべぇ「不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ。そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」

マミ「理由のはっきりしない自殺や殺人は、実は大部分が魔女の仕業よ」

マミ「形の無い悪意となって、人間を内側から蝕んでいくの」

2人とも、思わず息を飲む
さっき暁美ほむらが来なかったら、自分たちは一体どうなっていたのやら…

まとか「…」

さやと「…どうして…そんなヤバい奴らに…どうしてだれも気付かないのか?」

キュゥべぇ「魔女は結界の奥に隠れてて、決して人前には姿を現さないからね」

マミ「普通の人間は結界から生きては出る事は出来ないの」

マミ「暁美さんが来てよかったわね」

暁美ほむら…彼女はなぜ、キュゥべぇを殺そうとしたのだろうか…
キュゥべぇは魔法少女に協力的なのに

彼女の目的は今のところ、謎に満ちている

まどか「そんな怖いものと…マミさんは戦ってるんですね」

マミ「ええ。いつ死んでもおかしくないわ。だから貴方達は安易に選ばないこと」

マミ「しっかり、よく考えてね」

マミ「そこで提案なんだけど…」

さやと「なんですか?」

マミ「私の魔女退治に付き合わない?」

マミ「魔女との戦いを見てみて、そして命をかけてかなえたい願いが見つかったら契約すればいいわ」

キュゥべぇ「それは名案だね、マミ」

まどか「…」

さやと「…」


さやと「おっす、まど…げ!?」

まどか「おはよう、さやと、仁」

仁「おはようございます。さやと君、どうしたのですか?」

さやと「いっいやあ、なんでもねぇ」

さやとの声は激しく裏返り、動揺しているのが目に見えて分かる

さやとの動揺の原因…

キュウべぇ「おはよう!さやと」

仁「?」

さやと(ほんとに…見えてないんだな…)

俺の肩にのったキュゥべぇ

仁「あの…?」

さやと「なんでもねぇ、ほ、ほら、早く行こうぜ」

へらへらと笑い仁にごまかし、自然にふるまえるようにさやとは頑張っているようだ

まどか『頭で考えるだけで、会話とか出来るみたいだぞ、さやと』

さやと『ひっ』

さやと『お、俺達もうそんな…マジな力が!?』

キュゥべぇ『いやいや、今は僕が中継しているだけ。でも、内緒話には便利でしょ?』

さやと『な、なんか変な感じだなぁ~』

仁「2人とも、さっきからどうしたんですか?」

まどか「い、いやいや、別に。なっ?」

さやと「お、おう」

仁「…そうですか…」

仁は疑っているような目つきでこちらを見ている。
真実を言うわけにはいかず不自然極まりないがとにかく笑ってごまかすしかなかった

学校に到着し、廊下を歩きながら寄ってくる女の子を適当にあしらい、さやとと会話する

さやと『つーか、お前ここにきて大丈夫か?』

キュゥべぇ『どうして?』

さやと『あいつ、暁美ほむらはこの学校に来てるんだぞ。お前命狙われてるんだろ?』

キュゥべぇ『むしろ学校の方が安全じゃないかな?』

キュゥべぇ『どうせまどかについていくんだし』

さやと『まあ…確かにまどかとあいつは違うクラスだけどさ』

キュゥべぇ『それにマミもいるし』

まどか『マミさんは3年生だからクラスは結構遠いぞ』

マミ『ご心配なく、話は聞こえているわ』

突然マミの声が頭に響き、びっくりしてさやとと一緒に声を思わず挙げてしまった

女子が何人かこっちを向き、ヒソヒソと話して去って行った

キュゥべぇ『この程度なら、テレパシーも圏内だよ』

まどか『えっと…お、おはようございます』

マミ『ちゃんと見守っているから安心して。
それに暁美さんだって、人前で襲ってくるようなマネはしないはずよ』

さやと『なら…いいけどさ』

突然、廊下のざわめきが収まる
それから、いっそう大きなざわめきが起こった

まどか「…ん?なんだ?」

さやと「…さあ…」

まどか「…おい!」

前から1人の少女が歩いてくる

さやと『げ…噂をすると影』

さやとは暁美ほむらに拳銃を突きつけられたため、俺以上に彼女に嫌悪感を示す

まどか『こっちにくるぞ!!』

キュゥべぇをかばいつつ、ギッと彼女を睨みつける
さやとも嫌悪感のこもって目つきをして、彼女を見つめている

ほむら「…」

しかし、俺達2人の視線なんてまるで気にしていないかのように、涼しい顔をして通り過ぎてしまった

さやと『ほ…』

まどか『と、とりあえず何もされなくてよかったな…』

緊張が解け、肩の力がスッと抜ける

昨日きいた…彼女がいかに危険かの話を、ぼんやりと思いだした

さやと「あの転校生も…魔法少女…だよな、マミさんと同じ」

マミ「ええ、そうよ」

さやと「どうしてあんなことを…」

さやと「確かに魔女を追い払ってはくれたけど、あんな乱暴な…」

マミ「誤解してるわ、彼女は本当は…」

キュゥべぇ「彼女の狙いは僕だよ!!新しい魔法少女が生まれて欲しくないのさ!!」

マミは何かを言おうとしたが、キュゥべぇの声にかき消されてしまった

さやと「え…なんで?同じ敵と戦っているなら、仲間は多い方がいいんじゃ…」

マミ「それが…そうでもないのよね…」

マミ「魔女を倒せば、それなりの見返りがあるのよ」

マミ「だから…時と場合によっては…手がらの取り合いになって、ぶつかる時もあるのよね」

さやと「じゃあ…あいつは最初からまどかが魔法少年の素質があるのを見抜いて…それであんなことを…?」

キュウべぇ「そうだよ。彼女は魔法少女の中でも一番くらいに危険だよ」

キュゥべぇ「彼女は魔法少女を何回も殺害したことがあるんだ。」

マミの表情は一気に苦々しげに変化した

キュゥべぇの言っている事は本当なんだろう

でも何で…あの時マミは暁美ほむらを助けたのだろうか…?

キュゥべぇ「その魔女を倒した見返りが欲しいがためにさ」

キュゥべぇ「でも心配は無いよ。まどか、君の方が彼女よりよほど強いんだから」

昼休み、天気が良いので屋上で昼食をとることにした

さやと「まどか…願い事きまったか?」

まどか「いいや…全然。さやとは?」

さやと「俺も全然だ…なんだかなぁ…」

さやと「やっぱ…命がけって所で…引っかかるよな」

さやと「そうまでするもんじゃ、ねえよなって…」

まどか「…だよな」

キュゥべぇ「意外だな~大抵の子は二つ返事なんだけど」

さやと「まあきっと…俺らが馬鹿なんだろうな」

フェンスにより、さやとは町を見下ろした
風が強くふき、さやとの長く無い髪ですら、少し揺れた

まどか「…そうなのかな…」

さやと「そうさ…幸せ馬鹿…別に珍しくないはずだ…命と引き換えに、叶えたい望みって…」

さやと「そういうの抱えてる人達は…世の中に大勢いるんだろ…」

さやと「だから…それが見つからない俺達は…その程度の不幸しか知らないんだ」

フェンスをぐっと握り、うつむくさやと

さやと「恵まれ過ぎて、馬鹿になったんだよ」

こちらから顔が見えないが、きっと今、さやとの表情は笑っていても、悲しげに見えるだろう

まどか(さやと…上条さんの事…)

上条恭子…さやとの幼馴染。天才バレリーナといわれ、将来有望といわれた美少女

しかし…この間交通事故に遭って…
足を酷く負傷しておりバレエは愚か歩くことすら困難な状況にある

さやとは彼女をずっと心配し、よくお見舞いに行っている

さやと「何で…俺達なんだ」

まどか「さやと…」

さやと「不公平だと…思わないか」

さやと「こういうチャンス…本当に欲しいと思っている人は…他に居るはずなのにな」

突然一陣の風が吹き、いつここに来たのだろうか、暁美ほむらが目の前に立っていた

さやと「…何の用だ!!」

まどか「くっ…」

彼女はさやとのどなり声を全く無視してまっすぐこちらを見つめるだけ
俺は力強くキュゥべぇを抱いた

マミ『2人とも、安心して。ちゃんと見てるから』

頭の中にマミの声が響き、少し回りを見渡すと隣の塔にある人影が見えた

おそらくあれが巴マミであろう

さやと「…昨日の続きか?…それとも、俺達を殺しに来たのか!?」

ほむら「…そんなつもりはないわよ」

ほむら「貴方達は…魔法少年になるの?」

さやと「うるさいな。お前にとやかく言われたくねえよ」

ほむら「…そう」

相変わらず無表情な彼女
一体何を考えているか、全く読めない。不気味だ

ほむら「…いいわ、巴マミについていきなさい」

ただそれだけいって、クルリと背を向けて歩き出した

まどか「お…おい」

まどか「あ、暁美さんは…一体どんな願いで」

彼女は振り向きもせず、完全無視してそのまま視界から消えていった

さやと「…あいつ、一体何なんだ…?」

---暁美ほむら---

マミの手を離し時間を再び動かす

皆が動いたと同時に消える予定だったのだが…

グラッ

ほむら(…しまった)

なんとつまずいてしりもちをついてしまった

大変ドジでマヌケな姿

マミはポカーンとした顔で私を見ているがすぐに我に返ったようだ

マミ「見逃してあげるっていってるの」

一瞬のうちにマスケット銃を出し私に突き付ける

ほむら(助かったわ…)

マミに目配せし急いでその場から離れる

ほむら(…ばれなかったかしら…)

すべてのものが動き出す直前だったとはいえこける瞬間を目撃された可能はある

とりあえず、隠れて3人の様子を遠くから見てみたが、どうやらバレては無いようだ

ほむら(別にこけた瞬間を見られてどうってわけではないけれども…)

マミとの少しの会話で自分はまどか達と敵対することになったため、
あまりドジな姿を見られるわけにはいかないのだ

ほむら(…やっぱ無理矢理銃を突きつけるべきでは無かったわ…)

自分のやってしまったことに対する後悔、しかし今頃遅いのだ

マミがいなければ、正気を取り戻せず危うく2人とも殺すところだった

…まどかを救う…男でも、女でも

前を向いて目的達成のために突き進まなければならないのだから

3人が動き出したため、私も尾行を開始した

マミの家に到着した

どうやらここで契約について話をするようだ

ほむら(…上手く契約しない方向へ誘導してくれるかしら…)

魔女は魔法少女達の慣れ果てである…この真実を告げるだけで契約する気はグッと下がるはずだ

しかし問題はキュゥべぇ

この時間のキュゥべぇは正直、今までで一番信頼できない

あまりにも嘘をつく…いいや、真実をいうタイミングがある意味絶妙なのだろう

マミが魔女化について話そうとすると…何かしらの邪魔をするはず

最悪、まどか達にマミの殺戮行為がばれてしまう

そんなことになったら、きっと私達の言うことなんて信じてはくれなくなり、
キュゥべぇ側の人間になってしまう

ほむら(…マミ、大丈夫かしら)

かなり不安ではある

しかし、今自分がまどか達に説得する側にまわっても、
きっと彼らは信じてはくれないはずだ

後ろでサポートする役割…これが私のやるべきことだろう

ほむら(でも…意外だったわ、まどかのみならず美樹さやかまで…男になってたなんて)

さやかはいつも上条恭介、彼への恋が原因で命を落とす結果になる

ほむら(上条恭介についても調べた方がよさそうね。事故がなく、
上条恭介の性別が変わっていなければ…さやかはキュゥべぇと契約する必要が無くなるわね)

ほむら(志筑仁美…そういえば彼女は?)

さやかの魔女化の原因にかなりの確率で彼女が絡んでくる

ほむら(一番理想の形は…さやかと上条が男同士で、
さやかが上条に恋心を抱いていない…
そして仁美は女のままでさやかとの接点があまりない…)

ほむら(理想通りになっていればよいのだけれども…)

ガチャンという音で我に返る

ほむら(…出てきたわ…)

2人の表情や会話の内容を聞く限り…マミは真実を言えなかったのだろう
しかし、2人の信頼は得ているようだった

ほむら(とにかく、マミは信頼を得る事に成功したようね…)

あとはいかにキュゥべぇを2人から引き離すか

ほむら(この時間のキュゥべぇも…正直イレギュラーだわ…)

ほむら(まさか…あんなことをいって、まどかに近づくなんて)

インキュベーターは…感情が無い

しかしあのキュゥべぇはまるで感情があるかのようにふるまっている

必要があれば演技もする…さっき、まどか達に助けを求めた時だって

あの体の傷…きっと自分でやったんだろう

厄介だ…非常に厄介だ

あの場面を何も知らない人が見たら、口をそろえて私の方が悪いというだろう

ほむら(…友好関係を築くことは当分あきらめましょう)

なぜか大きなため息が漏れてしまった

ガダッ

誰かが教室に入ってきたのでみると、まどかだった

今は昼休み。皆は弁当を食べているが、私は相変わらず1人
コンビニで買ったおにぎりをほおばっていた時のことである

ほむら(…美樹さやか…いいえ、美樹さやとに会いに来たのかしら?)

さやとと少し談笑すると、2人はすぐに教室を出ていった

おにぎりもほとんど胃袋に入っていたので、大慌てで最後の1、2口を食べると
2人の後を追いかけた

ほむら(この方向は…屋上)

2人は屋上へ出ていった
とにかく様子を見れる場所に隠れる

ほむら(接触して、真実を伝えた方が…よいのかしら)

しかしこの考えはあの声が聞こえたので、不可能であると悟った

ほむら(キュゥべぇ…まどかと一緒にいるのね)

キュゥべぇがいるのなら、まだ演技を続けねばならない

今までの時間のように、無関心で、あまりに冷たい、そんな人間であるかのように
この時間のキュゥべぇも、そんな私にむかって口を出すわけは無い

会話の内容からすると幸い、この時間のまどか達も
契約するかしないか非常に迷っているようだ

巴マミ、彼女がまどか達を説得するのがベストである
彼女が思う通りに動き、私は彼女に危険がせまったときに助けに行く

…今までの時間では、マミは魔女化か戦死している…

数回、ワルプルギスの夜とも戦ったが、マミが最初にやられていた

マミの魔女化の線が消え、まどか達への干渉があまり出来ない今、
ワルプルギスの夜襲来前にマミの戦死を防ぐこと

これが最も最重なことだと思っていて間違いがない

彼女が生きる事はきっとまどかの契約防止につながるのだから

ほむら(…ソウルジェムが…これは巴マミね…)

マミがどうやら近くに来ているようだ
丁度いい、少し話をしよう

カチッ

時間を止め、マミの元へ向かう

実は私の時間停止の魔法…一体どれくらいの時間、止められるか分からないのだ

3分止めれるときもあるが、30秒しか止められない時もある

砂時計の落ちる速度で毎回どれくらいで時間が止まるか予想をして行動している

ザッ

マミの前に降り立ち、マミに手で触れる

マミ「暁美さん…」

ほむら「また時間を止めた世界で…悪いわね」

マミ「いいえ、気にしないで…それよりも、ごめんなさい」

マミの顔は一気に暗いものとなった

マミ「魔法少女の真実は愚か…
暁美さんに無実の罪をなすりつけることになってしまったわ…」

ほむら「無実の…罪?」

マミ「キュゥべぇが…私のしたことを、暁美さんがやったと…」

ほむら「私が魔女狩りをしたっていうのね、
なんてまあ、よくもキュゥべぇは平気でうそをつくわね」

マミ「ごめんなさい…私、魔女化の真実を記憶を失くしたふりをして…」

マミ「挙げ句の果てには、鹿目君達を…魔女狩りに連れていくことにしてしまったの…」

おお、何ということだ
話の流れもあるだろうが、きっと私が戻り過ぎてしまったのも大きな原因だ

過去に何度も同じような内容を話し過ぎてもう、癖のようになっている

私も人のことは言えない
昨日、cdショップでまどかを助けた…別に男だし、
一見別人のようにしか見えないから無視しておけば良いのに

なのにいつものように走り、いつものようにキュゥべぇを狙い
いつものように、警告した…

そしてまどかを助ける決心までしてしまったのだから

その一連の行為に私の意思はあまりない
反射的に体が動いていた

マミの魔女狩りの提案…きっとこの発言も反射のように出てしまったのだろう

ほむら「そう、大丈夫、私もばれないようについていくわ」

マミ「…ありがとう」

マミ「今日、魔女狩りに行くの…万が一の時に頼むわ」

ほむら「ええ、分かったわ。あと、きっと2人で会っていたらマミが真実を知っていると感づかれる
明日の昼屋上にいて。私が時間をとめるわ。そこでまた会いましょう」

マミ「ええ。まっているわ」

カチッ

世界はまた動きだし、私をびっくりした顔でまどかとさやとは眺めている

ほむら(…いつもと同じ様に、2人は私を警戒している)

ほむら(いまキュゥベェを撃って、真実を…)

ほむら(いいえ…ダメだわ。まどかはキュゥべぇを放さないだろうし、
今ここでキュゥべぇを打ち抜けば、確実にまどかに玉が貫通してしまう)

ほむら(やっぱり、いつも通りの質問をして、いつものように去るのが問題なさそうね)

さやと「…昨日の続きか?…それとも、俺達を殺しに来たのか!?」

美樹さやと…男になっても私に対する感情は変わらぬまま
いや、きっともっと酷いだろう

ほむら(そりゃそうね…銃を向けられた揚句、こいつは人殺し
なんて教えられたら、誰だって警戒するわ)

ほむら「…そんなつもりはないわよ」

ほむら「貴方達は…魔法少年になるの?」

さやと「うるさいな。お前にとやかく言われたくねえよ」

ほむら「…そう」

ほむら「…いいわ、巴マミについていきなさい」

ただそれだけいって、クルリと背を向けて歩き出した
すると、まどかの声が聞こえる

まどか「お…おい」

まどか「あ、暁美さんは…一体どんな願いで」

ぎっ…と歯を食いしばってしまった

私の願いはまどかを救うこと…例え男でも…

なんだかしゃべり方が乱暴な気もするが…

とにかく私の友達のまどかは誰であっても救う

そんなこと、まどかに言えるわけがない

ほむら「…」

無視をして、屋上から、立ち去った

-----鹿目まどか-----

とうとう放課後になり、マミさんと待ち合わせした場所に向かう

さやと「魔女退治…か」

まどか「結界だっけ?俺らが迷い込んだ場所をおもうと、どんな奴か想像したくないな」

あのグロテスクで精神がおかしくなるような風景が頭によぎった
さやとの表情がどんどん硬くなる

さやと「でもマミさん、強いんだろ?」

まどか「多分…な」

あの転校生、暁美ほむらをマミは目にもとまらぬ速さで追い詰めて、追い払った
そのことを思うと、少なくともほむらよりは強いのだろうと察することが出来る

まどか「マミさんは暁美さんを追い払ったんだから
少なくとも暁美さんよりは強いだろうな」

まどか「暁美さんで魔女を追い払えたんだから、マミさんは必然的に魔女と十分戦えるだろ」

さやと「…別にマミさんが魔女よりも弱いとは思わねえよ」

さやと「ただ…今だに信じられなくてさ。こんな世界があるなんてことが」

さやとの視線は真っ青な空に向かう
一見平和そうに見えるこの町には、あの恐ろしい世界がどこかに広がっているのだ

そこは澄んだ青では無い、真っ暗でおどろおどろしい空が広がっている

まどか「…さやと」

さやと「何だ?」

まどか「…上条さんの足のこと」

さやと「…」

聞いてはいけないことなのは百も承知だった
でも、友人として聞かないわけにはいかなかった

お陰でそれ以降、俺達の会話はプツンと途切れてしまった

マミ「さて、それじゃ魔法少年体験コース第一弾、張り切って行ってみましょうか」

マミは相変わらず、あの余裕のある優しげな笑みを浮かべている
魔女退治に向かう前でもそんな余裕があるのが不思議だった

マミ「準備はいい?」

まどか「とりあえず…心の準備は。なっ、さやと」

さやとに目配せをするが、さやとは無視をして、何かをあさっている

さやと「準備になっているかどうか分かんないっすけど…持ってきました!」

ドオン!

布に包まれた棒状の何かをテーブルの上に叩きつけた

まどか「うおっ」

思わず声をあげてしまい、少し恥ずかしくなる

フライドポテトを食べているキュゥべぇも驚いて喉につまらせたようだ
自分の喉をどんどんと叩いている

そして包んである布を思いっきり取り去ると、バットが姿を現した

さやと「何もないよりはマシかと思って」

マミ「まあ…そういう覚悟でいてくれるのは、助かるわ」

少しマミはさやとのやる気?に困惑しているようだ。苦笑いを浮かべている

さやと「まどか、お前も何か持ってきただろ?」

まどか「俺は何も持ってきてないよ」

さやと「はぁ~ダメだな、お前は」

まどか「うるせえな、良いだろ別に」

さやと「よくねえよーだ。ま、俺様が何かあった時には守ってやるから安心しな」

正直、さやとに守ってもらいたくは無い。第一、バットなんてあんな奴らに効くのか?

マミ「はいはい、そこまでよ。行きましょう」

ガタンとマミが立ちあがった

俺もさやとも荷物をもち、マミの後を追いかける

店を出る瞬間、頭に声が響いた

『あの時、私皆から笑われちゃったんだよなぁ…』

『今思い出すだけでも恥ずかしいよ、うぅ』

まどか「!?」

聞き覚えのある声だった
これは…あの時、ほむらが倒れた時に指示を出した声

さやと「ん?まどか、どうした?」

まどか「い、いや、何でもない」

さやと(…?ま、いいか…)

声のことは置いといて、2人に急いでついていった

------------------------------------------------

俺達は、昨日襲われた所にいた

マミ「これが昨日の魔女が残していった、魔力の痕跡」

マミのソウルジェムが黄色く点滅する

マミ「基本的に魔女探しは足だのみよ」

マミ「こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配をたどってゆくわけ」

さやと「…意外と地味ですね」

マミは何も言わず、先頭にたち、その場をさる
俺達もついていく

キチンと整備され、街の眺めもよい歩道を3人並んで歩く
もう夕暮れだった

さやと「光、全然変わらないっすね」

マミ「昨日から1晩経っちゃったからね、足跡も薄くなってるわ」

まどか「あの時、すぐ追いかけていたら…」

マミ「すぐ仕留められたかもしれないけど、
貴方達をほおっておいてまで、優先することじゃなかったわ」

まどか「…ごめんなさい」

どうしようもない気分になって謝罪する

魔法少女達は魔女を倒すことによって得る事が出来る見返り…
それを求めて魔女を倒す

あの時、自分達は魔女では無い
暁美ほむらに襲われていたのだ

見捨てて魔女を追いかければ、見返りを確実に得る事が出来ただろうに

そのようにはせず、ほむらを追い払ってくれたマミは本当に正義の人だ

マミ「いいのよ」

さやと「くうっ、やっぱマミさんは正義の味方だな!」

どうやらさやとも自分と同じことを考えていたようだ

さやと「それに引き換え、あの転校生…マジでムカつくし、危ないなぁ」

語気が荒くなり、表情をひきつらせるさやと

さやとはほむらの話題になる度顔を歪ませるが無理もない
あの時いきなり銃を向けられて、威嚇とはいえ、撃たれたのだから

まどか(…確かに暁美さんは…悪い魔法少女かもしれない…けれど…)

それにしても、不自然なことが多い

まず、マミとほむら過去に接触したことがあるはずだ
でなければ、あんな顔をしてマミがほむらの手をとるなんてことは無い

そしてその後、マミはほむらに銃を突きつけた

マミは人助けを最も重要視している
対してほむらは、見返りを重要視している

邪魔な魔法少女を殺したこともあるほむらと、弱者を救済し続けるマミ
決して相容れないような存在の2人が、どうして…

まどか(病院にいってからの数時間のうちに…何か対立することでもあったのか?)

まどか(…まさか、マミさんはほむらの虐殺を知らなかったとか)

おお、辻褄があったぞ
と、我ながら感動

しかし脳裏に彼女の悲しげな、あの顔が横切る

女の“まどか”がいないと知った時の、あの表情を

まどか(…本当に悪い子なのか…?)

あの時のほむらはとても人を殺すような顔をしていなかった

ただの少女だった

まどか(…考えれば考えるほど、訳が分からなくなってきた…もうやめよう)

とうとう俺は思考することをやめたのだった

さやと「なあ、マミさん」

さやと「魔女のいそうな場所、せめて目星くらいはつけられないのか?」

さやとは普段おちゃらけているが、結構正義感の強い奴なのだ
願いをかなえる事と同じくらい魔女の呪いの影響について関心を寄せていた

マミ「魔女の呪いの影響で割と多いのは…交通事故や傷害事件よね」

マミ「だから大きな道路や大きな歓楽街などを優先的にチェックしないと」

マミ「あとは、自殺に向いてそうな人気のない場所」

マミ「それから、病院とかに取りつかれると最悪よ。」

マミ「ただですら弱っている人達から生命力が吸い上げられるから、
目も当てられないことになる」

マミの手に乗っているソウルジェムが強く点滅した

マミ「かなり強い魔力の波動だわ…近いかも」

マミは歩きながら辺りに視線を泳がせ、それらしき場所を探し始めた

自分達もきょろきょろしながら、それっぽい所を探す

魔力の波動に従いつつ動いた結果、近くの廃ビルに到着した

ソウルジェムが今までにないくらい、強く光り輝いている

マミ「まちがいない、ここよ!」

さやと「あっ、マミさん、あれ!!」

さやとが指を指した先は、ビルの屋上。そこには小さな人影

その人影はふらりとビルから落ちた

さやと「あ!!」

まどか「大変だ!!」

俺達が走りだすよりも先にマミが飛び出した

トンと地面を1蹴りしたとたん、マミの身体はあの黄色のリボンに包まれた

そして瞬く間に魔法少女の、あのファンシーな服装となり…

マミ「はっ!」

手をかざし空から落ちてきた女性を、
どこからともなく現れたリボンが受け止め、静かに地面に横たわらせた

力なく横たわる女性の首元には、不思議な模様の…刺青の様なものがあった

マミ「魔女の口づけ…やっぱりね」

マミはさっと立ちあがり、廃ビルへ向かう

まどか「この人はこのままでも…」

マミ「大丈夫。気を失っているだけ」

マミ「行くわよ」

マミの優しげな声が一気に力強いものとなる

ビルの入り口に入り、マミが警戒しながら一歩、また一歩と進む

マミの髪飾りのソウルジェムが強く光り目の前にあの口づけの模様が現れた
どうやらこれが魔女の結界の入り口のようだ

マミ「今日は逃がさないわよ」

マミはさやとのバットをグッと握った

すると、さやとのバットは全く違う模様の棒に変化した

さやと「おお~!」

マミ「気休めだけど、身を守る程度には役に立つわ」

マミ「絶対に私のそばを離れないでね」

さやと・まどか「はい」

さやとは俄然、やる気を出し、俺はそこまでやる気は無いが勢いよく結界に飛び込んだ

その様子を、黒髪の少女はじっと見つめ、
やがて彼女も結界の中に飛び込んで行ったのを俺は知らなかった

結界の中は何とも不気味だった

あの白いもこもこ達が一列に並び、何かを運んでいる

階段をまっすぐ走りながら登っていると、気持ちの悪い蝶が現れる
それをマミが軽く一撃で倒し、さらに奥へ走る

奥はさらに謎の生物が多く、マミが銃を数発撃ち、俺達が走れる道が開く
さやとは何か叫びながら、その棒で生物を追い払っていた

マミ「どお?怖い??」

さやと「な…なんてことねえや!」

さやとは強がりを言ったが、確かに声が震えていた

突然マミが手で俺達を制止させる

前に向かい銃を構え、数発撃ちこむ

さらにふわふわとした何かをその銃で薙ぎ払う

銃から逃れた謎の生物が俺達の後ろに回り固まるが、
それをマミは華麗に一蹴りし、消滅した

まどか(…正直怖い…でも)

マミの横顔をみる

昔、テレビの中のヒーローに憧れていた自分を思い出した

どんどん奥へ進む

キュウべぇ「頑張って、もうすぐ結界の最深部だ!」

腕の中のキュゥべぇはそういう

しばらく走ると目の前に扉、それにあのもこもこ達

マミは一瞬にして銃を何個も出現させ、発射

もこもこは煙のようポン!と消え、扉が開く

何とも間の抜けた様な音がして、2、3個連続で扉が開き、辺りの視界が開けた

そして芋虫の様な本体と蝶の羽が付いている、
何ともグロテスクな怪物が椅子に座っている

マミ「見て、あれが魔女よ」

マミは物おじせずに落ち着いている

さやと「…グロイな」

まどか「あんなのと…戦うんですか?」

マミ「大丈夫。負けるもんですか」

さやとの元バットを地面に叩きつける

すると周りは淡い光に包まれた

マミ「下がってて!!」

マミはそう言い残して飛び出していった

マミは優雅にスカートを持ち、お辞儀する

スカートからは長銃が2丁

魔女もマミに気がつき、攻撃を仕掛ける

大きな巨大な板がマミを襲うが、マミは軽くかわしてそれを銃で破壊した

魔女はそのすきに蝶の羽を使い空を飛ぶ

マミは帽子をとり、一振りするとあの長銃が地面にいくつも現れた
これも魔法の力なのだろう

その銃を使い捨て方式で、魔女に打ち込む

しかしなかなか当たらず、気がつけばマミの身体に触手が這い上っていた
そのまま釣りあげられ、さかさまになる

それでもなお、魔女に向かい銃を撃つ

けれどもこんな状況では当たるわけもなく、地面にヒビが入るだけ
マミはそのまま壁に打ち付けられた

さやと「マミさん!!!」

大声でさやとは叫ぶ

俺も息を飲んだ

マミ「大丈夫。未来の後輩にあまりかっこ悪い所見せられないものね」

ピンチともいえる状況で、マミはほほ笑む余裕を見せた

するとさっき入ったヒビから沢山のリボンが生え、魔女にまきつき始めた

あわてて逃げようとするが、すでに時遅し

マミ「おしかったわね」

そう呟いて、マミは胸のリボンを解く

そのリボンがマミを捕まえる触手を切り、どんどん長くなっていったと思うと、
マミの身体より何倍も大きい巨大な大砲が姿を表した

マミ「ティロ・フィナーレ!」

その掛け声と共に巨大な大砲から弾が発射される

魔女に見事にヒットし、激しい轟音を立てながら魔女の姿が消えた

全てが落ち着いた時、マミは魔女のいた場所にトンと降り立ち、紅茶を優雅に飲む

さやと「か…勝ったのか?」

まどか「す…すごい…」

戦いの余韻に浸ろうとした瞬間、風景が歪み、元の景色に戻った

マミは変身を解くと、黒い何かの元へ向かった

マミ「これがグリーフシード。魔女の卵よ」

さやと「魔女の…卵…」

マミ「運が良ければ時々魔女が持ち歩いていることがあるのよ」

キュゥべぇ「大丈夫。その状態では安全だよ」

今まさに尋ねようとしていたことを
キュゥべぇは質問内容が事前に分かっていたかのようにさらりと答えた

キュゥべぇ「寧ろ役に立つ貴重なものだ」

マミ「私のソウルジェム、昨夜より少し色が濁っているでしょ?」

さやと「…確かに」

マミ「でもこうして使えば…」

グリーフシードをソウルジェムの隣に近づけると、
ソウルジェムの濁りがグリーフシードに吸収されていった

さやと「あ、綺麗になった」

マミ「ね、これで消耗した私の魔力も元通り」

マミ「前に話した、魔女退治の見返りが、これ」

確かに暁美ほむらが魔法少女を殺してまで手に入れる必要性が分かった
魔力を消耗しきったら…きっと魔法が使えなくなってしまうのだろう

キュゥべぇ「さて、一件落着といいたいところだけど…」

ぴょんと俺の腕から飛び降りたキュゥべぇ

キュゥべぇ「マミ、あそこの影に向かって銃を撃つんだ、早く」

マミは意味が分からないという顔をしていたが、ハッとして急いで変身した

しかし銃は向けはしない

マミ「人違いならどうするつもり?」

キュゥべぇ「それは無いよ。僕が間違えるとでも?」

マミ「…」

険しい顔をして、ガチャリと銃を影に向かって銃をかまえた

バアン!!

けたたましい音が鳴り響いたが、音源はマミでは無い

まどか「暁美さん…」

影から姿を現した、暁美ほむらである
あの紫色のファンシーな姿…魔法少女に変身している

マミ「…これがそんなに欲しいのかしら?」

ほむら「…」

マミ「あげるわ、あと一回くらいは使えるでしょ?」

マミはグリーフシードをほむらに投げてよこす

ほむら「貴方の獲物よ。貴方が持てばいいわ」

意外なことに、ほむらはマミのグリーフシードを投げ返した


マミ「…そう」

マミは魔女と戦う時以上に渋い顔をしながらほむらを見送った

さやと「くーっ、美人だけど、感じ悪いやつだ!!」

マミ「…そうね」

マミの答えの微妙な間が気になるが、
魔女と戦って疲れたからだろうと訳の分からない解釈をして、
結局自分の考えをはぐらかしてしまった

----美樹さやと---

さやと「」

こっそりと病室を覗き込む
お見舞いの花が夕陽に照らされ、非常に鮮やかで美しく見える

さやと「スゥー、ハァー」

病室の前で大きく深呼吸、そしてごく普通を装い病室へ入る

恭子「ん…あ、さやと!」

さやと「よっ!」

上条恭子、彼女は交通事故で足を負傷した俺の幼馴染

初めて恭子を見たのは…ガキの頃。

俺が親に無理矢理連れられていった劇場

そこのステージであいつは踊っていた

さやと「ほれ、暇だろうと思って、優しい俺様がcdを持ってきてやったぜ」

恭子「わぁ、ありがとう」

ぱっと笑顔になる恭子を見て、ドキリとする

恭子は美人で天才と世間で有名なバレリーナ

俺じゃ手が届かない…といつも思うがそれでもこの笑顔が見たくて見舞いに来てしまう

恭子「このcdレアなやつだね。ほんと、さやとはレア物を見つける天才だよ」

さやと「だろ?流石俺」

恭子「そこ自分でいうの?」

おどけた俺に対してけらけらと恭子は笑った

さやと「ま、ただ運が良いだけだがな」

恭子「この人の演奏は本当に凄いよ。私、この演奏に合わせて踊ってみたいな」

机に置いてあるイヤホンを取り、持ちはこびが可能なcdプレーヤーにセットする

恭子「あ、さやとも聴く?」

さやと「い、いいのか?」

イヤホンの片方をさしだされ、上ずった声で答えてしまう

恭子「本当はスピーカーで聞かせたいけど、病院だしね」

イヤホンをつけたが、お互いの距離が離れているせいで、イヤホンがとれそうになる

恭子「あ、ごめんね」

恭子が身体を傾け近づいてくる

足を負傷している恭子を動かすのは悪いので俺が思い切り近づくことにした

さやと(…俺が動いたんだけど…近づきすぎたか…髪の匂いが…)

しかし少し離れるとさっきのようになってしまうので、と自分に言い訳し
赤面しそうになるのを我慢して、目を閉じて演奏に聴き入る

遠い昔、小さな恭子が広いステージでこの曲に合わせて踊っていた

今でもあの姿を忘れる事は無かった

はたと目を開いてみると、こちらに顔を向けていた恭子が窓の外を見ていた

その頬には一筋の涙がこぼれ落ちていた

さやと「…」

気のきく言葉を探したが、結局何も言えず気まずい空気のまま演奏を聞いていた

マミ「ティロ・フィナーレ!」

こちらにウィンクをして、マミは巨大な大砲を発射する

魔女に見事に命中して、一気に風景は元に戻った

さやと「いや~、やっぱマミさんはカッコいいっすね~」

マミ「見せ物じゃないのよ。危ないことしてるって意識は忘れないでほしいわ」

電灯の上に立っているマミは変身を解き、すたりと降りてきた

ガサガサ

さやと「!?」

後ろの草むらが大きく揺れ、驚いて振り返る

キュゥべぇ「やあ」

さやと「何だ、キュウべぇかよ。お前まどかについていったんじゃ…」

キュゥべぇ「あそこは僕が見える人が多すぎて…」

―――――――――――――――――――――――

共演者「何これ、可愛い~!」

まどか「え!?」

共演者「おい、こいつどこで買ったのか?」

まどか「い、いや…えっと…家にあったやつで…」

共演者「私この人形ほしいなぁ~」
ギュウ~

キュゥべぇ「…」

――――――――――――――――――――――

キュゥべぇ「うかつだったよ。tvに出る人達は一般人よりも魔法少女や少年の才能がある子が多いのさ」

無表情のキュゥべぇの顔が少し歪んだ気がした
よほど大変だったと想像出来る

さやと「へえ、だからまどかも才能が?」

キュウべぇ「多分、そういうことさ」

さやと「それよりもマミさん、グリーフシードは?」

マミ「持ってないわ。ま、使い魔だったし」

さやと「ま、魔女じゃなかったのか…」

マミ「使い魔だって、ほおっておけないわ」

マミ「成長したら、分裂元と同じ魔女になるから」

マミ「さ、行きましょう」

要するに使い魔を倒しても利益は無いどころか、魔力を消費するということだ
それでも使い魔を倒す彼女本当に正義の味方だ

さやと(…魔法少年になるなら…マミさんみたいになりたいな)

-------------------------------------------------------

マミ「何か願い事は決まった?」

2人で夜の街を歩きながら、今、悩んでいる事柄について尋ねられた

さやと「それがさっぱり…まどかも同じ状況で…」

マミ「それが普通よね、いざ考えろといわれたら」

さやと「マミさんはどんな願いだったんですか?」

ぴたりとマミの動きが止まり、悲しみに満ちた表情になる

さやと「あ、す、すいません、いやだったらいわなくていいです」

すう、と大きく息を吸い込み、少し笑顔を浮かべて語りだしたマミ
その内容は予想を超えた、壮絶な物だった

マミ「いいえ…実は事故に遭ってね…両親もその時死んでしまったの」

マミ「私はキュウべぇと契約したから…一命を取りとめて今ここにいるのよ

マミ「…別にあれは仕方なかったし…
私の場合は…考えている余裕さえなかった…それだけ」

マミ「後悔は無いわ。今の生き方も、あそこで死ぬよりか…」

さやと「…」

マミ「でもね、キチンと選択のある子には、ちゃんと考えて決めて欲しいの」

マミが自分に向き直る

マミ「ハッキリ言って、魔法少年にはならないでほしいわ。私は」

さやと「マミさん…」

マミ「だって、命をかけて願っても、その願いの本質が叶えられるわけじゃないの」

さやと「…どういうことですか?」

マミ「願いは、まあ叶うんだけど、 その人が本当に望んでいる願い事は叶わないかもしれない…
いいえ、ほぼ叶わないのよ」

マミ「もし契約する願いが叶わないなら…それこそ、
今食べたい食べ物を対価に願った方がマシだわ」

さやと「そんな…」

脳裏に恭子の姿がよぎる

さやと「で、でも…そんな願いで命をかけるなんて…」

マミ「…もったいない?」

さやと「…」

マミ「なら魔法少年にならないでほしいわ」

マミ「魔法少年になることが目的じゃない限り、
どこかで絶対この生活に耐えられなくなるわよ」

耳の痛いセリフがマミから飛び出した

…多分マミの言っていることは正しいのだろう

長年魔法少女として戦ってきた彼女は、戦闘の厳しさや苦しみを知っている

きっとキュウべぇに叶えてもらった願いが思わぬ方向にいった話なども…
聞いているのだろう

その背景を良く考えた上での…アドバイス

恭子の足を治したい…

その為に契約していいかなんて聞くほど、自分は愚かになりきれなかった

マミと分かれて家に帰ってから、さらに頭を抱え悩ますこととなってしまった


-------------------------------------------------------

「ほむらちゃん…どうして…そうまでして…」

「何をいってるの、私は私のやりたいようにしただけよ」

「…辛いんじゃないの」

「まさか、三つ編みでメガネになんて、戻りたくないわ」

「…う…うそ…つかないで」

「…」

「わ…私は…」

「サッサと避難所に戻りなさい」

「私はいまさら、戻る気は無いから、まどかを避難所まで送るなんて、しないから」

「杏子ちゃんやマミさんにさやかちゃん…
みんなワルプルギスの夜と戦わせないよう…だから強烈な睡眠薬をみんなの食べ物に…」

「…そうよ…まどかはわかっていたのね…大誤算だわ」

「せっかくまどかの睡眠薬も準備して、仕込んだのに」

「あなたは食べなかったのね…」

「食べなかったのは偶然…ほむらちゃん…」

「一人じゃ…無理だよ…」

「馬鹿なこと言わないで。私一人で十分よ」

「もしついてきたら、魔女と一緒に撃ち殺すから」

「…ほむら…ちゃん…こ、これ以上…と、通さないよ…」

「…はぁ、めんどくさいわね」

「へ…?」

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---暁美ほむら---

バアン

乾いた銃声の音が響いた

発砲したのは紛れもない、私だ

マミにはずっと正義の味方であってもらわねばならない

私は悪人であることを印象付けるいい機会だ

マミ「…これがそんなに欲しいのかしら?」

ほむら「…」

マミ「あげるわ、あと一回くらいは使えるでしょ?」

投げられたグリーフシードを受け取り、自分のソウルジェムをちらりと見た

なるほど、これは酷い穢れだ

しかし、グリーフシードを投げ返す

一瞬マミは驚いたような顔をしたが、すぐに憎む者をみるような目つきに変わる

そこから先のやり取りは覚えていない

気がついたら家で眠っていた

ほむら(…もう嫌だ)

私はハッキリとそう感じた

ほむら(一体何なの、魔法少年って…)

マミの隣にいた…あの少年の顔を思い出す
あれは紛れもなく、まどかじゃない…やっぱり、同じ人とは思えない

ほむら(…まどか、私が助けたかったまどか…どこにもいない…)

ほむら(…まどか…まどか…)

ほむら(…苦しいよ…)

ほむら(…苦しいよ…助けて、お願い、私を助けて)

鏡の中の自分は、心の中で叫ぶ自分とは裏腹に、あまりに冷静な顔をして
ソウルジェムを浄化した

ほむら(…また…勝手に…)

自分はもう、疲れた

まどかなんて、どうでもいい

だけど、私の身体は諦める事を許してはくれない

ソウルジェムが穢れれば、勝手に浄化し

ソウルジェムを砕こうと銃を握れば、その手が震えて上手く撃つことができない

ほむら(…)

一点の穢れもなく澄んでいるソウルジェムをじっと見つめ、
絶望した挙げ句に魔女になっていったさやかや杏子、マミを思い出した

今の自分には絶望すらできない

彼女達がうらやましかった

ほむら(…もう、終わりにしたい)

ほむら(もう、時間を戻りたくない…)

ほむら(…前に…進みたい。私は死んでも良いから…)

そう思っても、まどかがいる限り、実行できないのは目に見えている

…まどかを助けて何のメリットがあるのだろう

たまにぼんやりと考えるのだ

結局彼女は、私の友になってくれるのだろうか

その先の未来に何が待っているのだろう

…楽しい未来…

でももうどうでもよくなった

私は、ループしなければ本当は何歳になったのだろう…

私の未来は、どこに…

…私の助けたかったまどかは、どこにもいない

…一番初めに死んでしまった…

他のまどかはみんな別人だ…

…「まどか」という名の他人のために私は何回も無駄に繰り返したのだ

…まどかなんて、もういないといいのに

いっそ今のまどかを殺して、魔女になれたらどれほど楽だろう

ああ、どれほど楽なんだろう

ピシッ!!

耳元に何かにヒビが入る音が聞こえた

…ソウルジェムがグリーフシードに変化するときの音に
似ていたが自分のソウルジェムは相変わらず光を放っている

ただの幻聴か…

残念に思い、立ち上がった瞬間異空間が広がった

ほむら「!?」

魔女の結界…

でもここは自分の部屋である

魔女は普段はこんなところには出現しない

ほむら「いったい…何が起きているのかしら…」

今の状況をもっと詳しく把握したいのだが、ぐずぐずしてはいられない

ここはアパートだ

はやく魔女を倒さないと集団で飛び降り自殺する人間が多発する

もう使い魔も沢山発生している…足が歯車の犬が…

ほむら「…こんな使い魔…みたことがない」

イレギュラーな世界だからイレギュラーな魔女もいるのだろう

あわてず、きちんと殺す

走りながら使い魔に銃を向け、爆弾を投げる

使い魔の金切り声が響き渡り、炎の海にのまれていった

魔女を探すため自分の部屋の扉と思われるドアを開け、本来ならば外であるはずの空間にでる
すでに惨劇は始まっていた

沢山の人が魔女の口づけを受けて、自殺したり誰かを殺そうとしたり…

車は事故を起こしたりしていたのだ

ほむら「くっ…」

カチッ

何をどうすればよいかわからないが、とにかく飛び降りようとしている人を
引き上げる

さらに凶器を振り回している人から凶器をとりあげる

カチッ

時間切れである

残念ながらこれ以上ここで街の人を救い続けてもラチがあかないので、先に進む

「いやぁああああ!」

ほむら「…ちっ」

ああ、面倒だ

そう思いながらクルリと踵を返し悲鳴が聞こえた所まで戻る

使い魔から逃げている一人の少女を発見した

白…いや、銀色といったところか…ショートカットの綺麗な顔の少女
どこかで見たことがあるような気もする…

まあ、それよりも注目すべき点

ほむら「…使い魔が見えている…?」

一般の人が見えないはずの使い魔が見えている…

要するに、あの少女は、魔法少女の才能があるということか…

「だ、誰か!!」

銃をかまえ、救いを求める少女の方に向かって発砲する

「あ…」

少女を襲おうとした使い魔は吹っ飛び、少女は私の存在に気がついた

「あ、貴方は!?」

何も答えずにこの場を去ろうと思ったが、このまま少女を置いていくのも気が引ける

ほむら「…ついてきて」

結局、少女を守りつつ、魔女の元へ、結界の奥へと進む

「きゃっ!」

大量の使い魔をマシンガンで蹴散らし、先に進む

「あ、あの、これは一体…?」

ほむら「…これは魔女の結界の中よ。で、こいつらは子分」

ほむら「今から親玉を倒しに行くわ」

少女は大変不安そうな顔で私をみる

沢山のチェーンで作られた橋を渡りきると、最深部に通じる扉を見つけた

まあ見かけはただの人間だし、不安なのもうなずけないことは無い

ポンッ!!

開いた扉の奥にはオートバイがある

それに人型に集まったチェーンが真っ黒なヘルメットを被っている

ほむら「…やはり、みたことがない魔女ね…」

「へ…?」

ほむら「さがってて!!」

おおかた、チェーンを使った遠距離の攻撃が得意だろうと推察する

この少女を守りながら戦うのは、時間が長引けば長引くほど厳しくなるだろう

カチッ

時間を止めて爆弾を大量に配置する

一番素早く魔女を倒せるが、何分時間が止まるか分からないのだ

ヘタすれば時間が動き出し自分も爆発に巻き込まれてしまう

スッ

最後の爆弾を配置し、なんとか爆発に巻き込まれないところへ走る

カチッ

なんとか回避できる場所に降り立ったとたんに時間が動き始め大爆発が起こった

爆風で体が吹っ飛んだ

とにかく態勢を持直し炎をじっとみる

まさかこの炎を生きているとは思わない…

油断したのが悪かった

ほむら「!?」

足にチェーンが巻き付いている

前を見ると炎は消え失せ変わりにつむじ風が発生している

そして信じられない速度で突っ込んできた

たまらず正面衝突する

ほむら「ぐはあっ」

お腹にタイヤがクリーンヒットしてその場にしゃがみこんだ

「きゃ!!」

少女の悲鳴が聞こえる

バイクの音が、だんだんと近づいている

痛む腹を押さえる手を盾へむかわせる

カチッ

ギリギリセーフて時間をとめた

2回目の攻撃を寸でで回避し、昔使ったゴルフクラブをとりだした

もう使わないと思っていたが、銃弾を避けられてしまう

それでは困るのでしっかり殴って倒すとしよう

バキッ
ドカッ

だんだん変形するバイク

変形するヘルメット

殴っている途中で気がついたがこの人型チェーンには足がない

ブレーキが踏めないからあんな速度で動けるのか…

殴り続けながらぼんやりと考えた

やがて結界が壊れはじめ
路地裏であることがわかった

「あのぅ…」

グリーフシードを探しそれを素早く回収して変身を解く

「助けていただいて…ありがとうございました」

ほむら「別に、気にしなくていいわ」

「ケガは…」

ほむら「別に無いわ」

ほっと胸をなでおろす少女

誰かに心配してもらうのは、久しぶりな気がした

しかしそれがどうしたというのだ、嬉しいとでも、いうのだろうか

「私の…私、上条恭子っていいます!今度お礼に…伺いたいのですが…」

ほむら「…!上条恭子…!?」

上条「あ、はい!えっと…お名前は…」

ほむら「暁美ほむらよ…」

動揺を悟られないように、髪をかきあげて後ろを向く

…上条恭介、彼は女となっているのは…正直仁美とさやかの件で予想はついていたのだが
ここで出会うなんて思いもしていなかった…

さらに彼女も魔法少女の才能があるならば、キュウべぇに出会う日も遠く無い
面倒なことにならないといいのだが、回避は無理だと考えていいだろう

上条「…暁美さん、えっと…」

ピシッ

ほむら「!?」

あのヒビが入るような音が聞こえたかと思うと、上条恭子の顔が、風景が歪み、
気がついたら自分のアパートの自室に座っていた

ほむら「…夢?」

いや、手の中にあるグリーフシード…さっきの出来事は夢じゃない…

ほむら「一体…何が起きたの?」

呆然と壁を見つた。ああ、ここの時間は何度も思うが訳が分からない

運命は…一体私に何をしろというのだろうか…

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次の日いつものように登校したのだが…

上条「あ…!暁美ほむらさん!?」

ほむら「!?」

教室に入ったと同時に、銀色の髪の美しい少女に声をかけられる

彼女の名は…

ほむら「上条…恭子…さん」

上条「あれから一体どこへ行っていたんですか!?」

ほむら「…ちょっと、ね」

“フラフラ”する、この2、3日で何度このセリフが頭に浮かんだかわからない

一体どうなっているのだ、どうして…どうして上条恭子が目の前にいるのだ

ごく当たり前のように、何もなかったかのように

今までの記憶が正しければ、上条恭介…彼は事故で腕が動かなくなる

私が転校してきたときにはすでに彼は事故が原因で入院している

その為私は、ほとんど彼と接触はしたことは無い
まあ、長いことループしているため、さやかの苦しみを伝えたり…
協力を求めたり…したことはある

…もう、この話はやめよう

彼はいつも天才的な“何か”が事故によって奪われるのだ

バイオリニストやギタリストの上条恭介は、腕がいつも動かなくなるといった具合に

上条恭子はバレリーナ。大方、足が動かなくなるのだろうと予想できる

そして、運命の予定通りに私がループを始める数日前に事故に遭遇しているのだ

少なくとも、私があの魔女を倒す前までは

そう、今予定外の出来事が発生。まさか、足が治るなんて…

どうしよう、訳が分からない
次にどう行動すればいいかわからない
今までで遭遇したことのない状況に陥ってしまった

まあ、まどかが男という時点でありえないのだが

上条「暁美さんは魔法少女ですねよ」

ほむら「…まあ、あながちハズレじゃないわ」

上条「よかった…キュゥべぇが契約した覚えが無いなんて言うから…」

キュウべぇ「やあ、暁美ほむら」

ほむら「…キュゥべぇ…」

今すぐ銃で撃ち殺したくなる衝動を必死に押さえ、平静を装う

キュウべぇは、上条恭子を魔法少女にしようとしている
遠まわしでもいい、警告せねば

じっと上条恭子の顔を見つめ、どう話題を切り出すか必死に考える

しかし、適当な言葉は見当たらず、
上条恭子の話にあわせて相槌を打つだけしか出来なかった

上条「あ~、でも噂の転校生が暁美さんで、ほんとによかった」

ほむら「…どうして」

上条「だって、1人じゃ心細かったんだもの」

ほむら「…ま…さ…か…」

両肩が震え、息がつまる
今すぐに逃げ出したくなる衝動に駆られる

聞き間違いだと、全て今までの会話は聞き間違いだといって欲しかった

上条「私、魔法少女になったんです!」

彼女の指輪が光り、銀色のソウルジェムが出現した

大失敗だ

彼女がすでに魔法少女になっているなんて、大誤算だった

これから未来がどう動くかわからなくなった

こうなってしまった原因は私にあるのかもしれない

あの時、上条恭子は交通事故に遭っているはずだ

そうだ、本来なら魔女の口づけを食らって暴走する車にはねられたのだ

それを私が魔女を倒したことによって、本来あるべきことが無くなってしまった

そして…彼女は魔法少女になってしまった

鹿目まどか、美樹さやと…巴マミに佐倉杏子、それにこの…上条恭子

…何度運命をかき混ぜれば気が済むのだ…私は

ああ、もう戻りたくない

もう、犠牲を増やしたくない

私が望んだのは、そんなことではない

まどかを救って…普通に生きること…ただそれだけだ

私は、もう諦めていいだろうか

もう、諦めさせて貰えないだろうか

神様、もうやめさせてくれないだろうか

まどかから、逃げていいだろうか

私が探し求めていたまどかは…やっぱり消えたのだ

私が救いたかった、世界は、まどかは、今はここにはいない

いや、もうどこにも存在しない

もう、私の望むものは存在していない

ああ、気がついていたのだ

とっくに気がついていたのだ

いままでは気づいているフリをしていただけで、本当は思いを包み隠していたのだ

だからソウルジェムを砕けなかったし、グリーフシードで浄化した

まだ、私の願いを叶えることが出来る

そんな望みを捨ててなかった

このイレギュラーな世界で、改変された世界で、
私はその現実を目の当たりに、目にしっかり見える形で思い知らされたのだった

私の、本当の願いは叶うはずが無いと

私の望んだ世界は魔法少女になり、時間逆行を始めたあの瞬間に終わったのだ

ほむら(…私は…ずっと絶望していたんだわ…)

忠告を聞かず戦死するマミに

上条恭介に失恋し、守りたい世界に失望し、絶望するさやかに

さやかと共に自爆する杏子に

何度も目の前で息絶えるまどかに

そして、誰も救えない自分に

誰も信じられない自分に

まどかばかりに執着していた挙げ句、彼女を男にしてしまった自分に

すべてをごちゃ混ぜにしてしまった罪深い自分に


もういいでしょう、もういいでしょう

運命なんて変わらない

教室を飛び出し、誰もいないところまで走る
誰もいない屋上に飛び出す

ほむら「くっ…うっ…うわああああん」

むせび泣きつつ、真っ黒になったソウルジェムを取りだす

まどか『キュゥべぇに騙されるまえの…馬鹿な私を救ってくれないかな…』

ほむら(ごめんね、ごめんねまどか、約束守れそうにないよ)

まどかとの約束は叶えることは出来ない

なぜなら私が救いたかったまどかはこの世でたった一人しかいないから

私の本当の願いはたった一人の、あの時間のまどかと共に生きていくことだったから

ほむら(だから…ごめんね、まどか…)

-----ほむらちゃん----

まどかが悲しげな顔で私を見つめている気がする

まどかの幻ともこれでもうお別れだ

ほむら(さよなら…)

パリン!

真っ青な空が徐々に見えなくなっていく

目の前は完全に暗くなり、風の音だけ微かに聞こえた



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キュゥべぇ「いやはや、大変なことになってしまったよ」

マミ「…暁美さんを魔女にしたのはあなたなの?」

さやと「え…?どういうことなのか…」

まどか「…いま、魔女にしたって…」

マミ「ごめんなさい、今まで騙してて」

マミ「魔法少女達は最終的に絶望して魔女になり、一生を終えるの」

さやと「…!?」

まどか「じ、じゃあ今いるこの…黒い魔女ってまさか…」

キュゥべぇ「そうさ。絶望しきった暁美ほむらの魔女さ」

キュゥべぇ「暁美ほむらと巴マミは君らを契約させまいと奔走してたのさ」

キュゥべぇ「ま、“今までの”僕にとっては邪魔もいい所だったけど」

キュゥべぇ「ちなみに魔法少女を殺していたのは暁美ほむらじゃないよ」

さやと「一体…誰だ」

キュゥべぇ「マミだよ」

さやと「マミさん…どうして」

マミ「…私は正義の味方じゃなったってことよ」

マミ「説明は後でするわ…まずは暁美さんの魔女を…」

キュゥべぇ「それがそういうわけにもいかないのさ」

キュゥべぇ「君らに恐ろしい話をしてあげよう」

マミ「…何よ」

キュゥべぇ「もう、そんなに怖い顔をしないでくれ」

キュゥべぇ「僕らのせいじゃないだからさ」

キュゥべぇ「まどか、まず君は人間じゃない」

まどか「…はあ!?」

キュゥべぇ「君は僕の国で作られた人造人間だ」

まどか「…嘘…だろ」

キュゥべぇ「本当さ。本当の鹿目まどかは今大変なことを引き起こしている」

マミ「…もしかして暁美さんが探している…お友達さん?」

キュゥべぇ「その通りさ。彼女、鹿目まどかは今はある概念に成り果てているのさ」

さやと「概念…?」

キュゥべぇ「そうさ。いわば神様ってやつだ」

キュゥべぇ「でもはっきり言うといい迷惑だ、本当に」

キュゥべぇ「実はこの世界は何十回とやり直した世界なんだ」

キュゥべぇ「鹿目まどかがこの世界を巻き戻し続けている」

キュゥべぇ「彼女の目的は…運命を変える事」

キュゥべぇ「特にこの暁美ほむらを救済すること」

マミ「…暁美さんを…?」

キュゥべぇ「そうさ。暁美ほむら、彼女の願いは聞いたかな?」

まどか「いいや…教えてくれなかった」

キュゥべぇ「そうかい。じゃあ今ここで教えてあげるよ」

キュゥべぇ「暁美ほむらの願い、それは…」

キュゥべぇ「鹿目まどかとの出会いをやり直したい」

まどか「…俺との出会い…?」

キュゥべぇ「君じゃないさ。きみは僕らから創り出された人間だ」

まどか「俺は信じねえぞ!!そんなこと!!」

キュゥべぇ「もう一度聞きたいのかい?君は作りだされた人間さ」

キュゥべぇ「まあもう少し僕の説明を聞いてくれ。そんな怖い顔をしないでくれよ」

キュゥべぇ「ワルプルギスの夜に敗れたまどかを救う…これが暁美ほむらの願いさ」

キュゥべぇ「そして鹿目まどかの願い、それは」

キュゥべぇ「この手で皆の、暁美ほむらの運命を変えたいってさ」

さやと「…運命…を」

キュゥべぇ「ああ。暁美ほむらの願いは決して叶うことが無い」

キュゥべぇ「まどかはその結末を変えようと時間が戻り続けるわけなんだ」

キュゥべぇ「暁美ほむらの平行世界の旅ならばまだマシだったさ」

キュゥべぇ「暁美ほむらがいなくなっても世界は崩壊しないんだ」

キュゥべぇ「要するにさ、君らに未来はないんだよ」

キュゥべぇ「僕らはここで死と同等…それ以上のものを迎えるのさ」

マミ「…あなたは、最初から知って…何もしなかったの!?」

キュゥべぇ「知ってたから努力したさ」

キュゥべぇ「何のためにまどか、君を作ったと思うのかい?」



キュゥべぇ「しかし今は本当に時間が戻っているんだ」

キュゥべぇ「暁美ほむらが“鹿目まどか”から逃避できるようにしたんだ」

キュゥべぇ「暁美ほむらが願いを放棄して自由に生きることが、鹿目まどかの願いの本質と僕は予想した」

キュゥべぇ「暁美ほむらが絶望せずにまどかから逃避する方法は二つ」

キュゥベェ「まず…記憶を消す…これは失敗したんだ」

キュゥべぇ「そしてもう一つ…“まどか”は存在するが、存在しない」

キュゥべぇ「その条件を満たす存在が男の君さ、まどか」

まどか「…何だよ、それ…」

キュゥべぇ「全てはほむら、彼女の人生を歩んでもらうためにね」

キュゥべぇ「で、巴マミ、君は自殺するように仕向けたのさ」

キュウべぇ「君は鹿目まどかの中でそこまで大きな存在ではないと判断したからね」

キュゥべぇ「君はまどか達をいつもこっちの世界に引き込む、僕からしたら邪魔ものさ」

マミ「…じゃあなんであの時助けたの…」

キュゥべぇ「…それは僕じゃない、別の僕だ…」

マミ「は…?」

キュゥべぇ「…話がこれ以上ややこしくのは避けたいから君の話はここまでだ」

キュゥべぇ「結局流れ的にまどかを契約へ勧誘させることになった…まあ“僕”では無いけど」

まどか「…?」

キュゥべぇ「とにかく大失敗だったよ、僕の作戦は…
まどかは君らのことをあきらめようとはしないし、ほむらもあきらめない」

キュゥべぇ「まどかは君ら全員が生還しないと気が済まないようだし」

キュゥべぇ「ああ、まどかが何を求めてるかわからなくなってくるよ」

キュゥべぇ「人間ってのは、妥協できない生き物なのかい?あきらめが悪すぎる」

さやと「…お前、自分の言っている意味がわかってんのか」

キュゥべぇ「はぁ?君は何を言うんだい?」

キュゥべぇ「絶望したくないんだろ、だったら諦めるしかないじゃないか」

キュゥべぇ「あきらめて、次の願いを見つけたら良いじゃないか…命の続く限り」

キュゥべぇ「大概の小さな願いなら叶えられるように魔力が備わっているんじゃないか」

さやと「お前っ…ほんとに感情があんのか…」

キュゥべぇ「…ないさ、基本的にね」

キュゥべぇ「はぁ、何が感情だ…もう僕だってウンザリさ…あ、もうタイムリミットのようだね」

マミ「世界が…!壊れていく!?」

キュゥべぇ「さよならだ…また会えるといいね」

………

ほむら「え…?」

目が覚めると、またあの病院にいた

ほむら「私…魔女になったんじゃ…」

頭と顔を触る

メガネもかけていない、髪も解かれたまま

ああ、容姿が変わっていないから、時間を戻ったわけではないのかとぼんやりと理解する

ではここは私の幻だろう

ならば…ソウルジェムは黒いままで…

私の幻や理想の世界なら、きっとソウルジェムは黒ずんでいるはずだ

今私が強く願ったから

しかしソウルジェムは、相変わらず澄んだ色で輝いている

ほむら「また…なの」

かたかたと震える肩を押さえ、狂ったように学校のパンフレットを奪う

ほむら「…まどか…が…いる」

美少年、人気アイドルとして鹿目まどかが紹介されているのだ…

ほむら「い、いやああああああああ」

ほむら「もうダメ、もう無理よ、もう…」

頭を抱え、暴れる私にポンと何かが触れた

騒ぎを聞きつけた医者かと思ったが違う

ほむら「…」

―――ほむらちゃん――――

ほむら「まど…か…?」

白いドレスを着ていて、髪は長いが間違いなくまどかだった

――――ほむらちゃん、もう気にしなくていいんだよ―――――

――――もう、ほむらちゃんは自由に生きていいんだよ――――

ほむら「え…?どういうこと…なの…」

――――ほむらちゃんは、私をキュウべぇの契約から守らなくてもいいんだよ――――

ほむら「そんなこと…出来るわけないじゃない…」

今までわたしは何のために頑努力してきたのだ

信じられない怒りの念が胸を覆い尽くしていく

穏やかな笑みを浮かべているまどかは私の頬に触れた

――――願いは変わるものなんだよ―――――

―――――ほむらちゃんがどうしたいかは、ほむらちゃんが決めればいいんだよ――――

ほむら「無責任なこと言わないでよ!」

涙があふれ、頭を抱えた

私は一体どうしたかったのか、何を望んでいたのか、
まどかにとってどうなりたかったのか

もうわからないのだ

―――――私はほむらちゃんは友達だと思っているよ―――――

ほむら「…」

―――――ほむらちゃんが私を助けたかったみたいに、私もほむらちゃんを助けたい―――

ほむら「まど…か」

――――それにほむらちゃんの本当の願いは…私を助けることじゃないよね?―――

ほむら「…馬鹿なこと言わないでよ!!」

ほむら「私にとって…まどかはたった一人の…友達」

ほむら「私は、大切な友達と…普通の生活に憧れてて…」

そこまで口走り、私にとっての世界の動きが止まった

目の前が一気に灰色になり、周りの風景がかすんでいく

――――ほむらちゃん、おめでとう―――――

――――私と一緒に生きていけないだろうけど…――――――

――――私はそういう風に楽しげに毎日を送って欲しいの――――

――――大丈夫、友だちは出来るよ――――

ほむら「いや!私の親友はまどか一人なの!!」

――――もう、ほむらちゃんたら嬉しいなぁ――――

――――でもほむらちゃんは私のことをもうすぐに忘れちゃうんだ―――

ほむら「…どういうことなの…!?」

――――そのまんまだよ―――――

ほむら「意味がわからないわ!!」

ほむら「いやよ!私はまどかのことなんて忘れたくない!!」

――――ほむらちゃん…私ね――――

―――俗に言う“神様”ってやつになったんだ…―――

―――皆を助けようとして、気づいたらこうなっちゃった、テヘへ―――

―――だから…今ほむらちゃんが私を認知していること自体奇跡なんだよ―――

―――ようやく…ようやくほむらちゃんが私から解放される―――

―――それはとっても嬉しいなって――――

イタズラが見つかったように、軽いノリで説明するまどか

ほむら「…そんな…嘘よ…」

ほむら「…まどかは…誰にも覚えられて無いの…?…」

―――まあね―――

ほむら「…これじゃ…死ぬよりも酷いよ…」

――――ほむらちゃん、私が今不幸せと思うの?――――

――――私は全てを知りたかったからこうなったの――――

―――皆を助けようとしたからこうなったの―――

―――私が全力を尽くした結果なの―――

――――あんなに頑張ってくれたほむらちゃんのようにね――

――――それに私は一人じゃないよ、ずっと心の中にほむらちゃんがいる―――

徐々にまどかの体が透けていく

ほむら「ま、待って、私もそっちに行くから…」

――――だめだよ、ほむらちゃん―――――

ほむら「待って、待ってまどか!!」

ほむら「私のせいで…私が…ごめんなさい、まどか!!だから、待って!!」

何度謝っても、謝り切れない

私のせいで、私の浅はかな願いで

それじゃあの時まどかが死んだままの方がまだマシだった

まどかはこれから未来永劫一人ぼっちだ

今思うと、前の時間ですでに忘れかけていたのだ、まどかのことを

いやだ、忘れたくない

まどかのことを忘れたくない

絶望が胸を這い寄る

――――謝らないでよ、それよりほむらちゃん―――――

――――ほむらちゃんが願いを叶えようとしないなら…――――

――――私、ほむらちゃんと絶交して魔女になっちゃうから!―――――

にこりと満面の笑みを浮かべてまどかは白いカーテンの向こうへ消えていった

ほむら「あ…」

ほむら「まどかぁああああああ!!!!」

私は両手でまどかが消える前に掴もうと必死で伸ばした
金切り声の絶叫をあげながら

けれども私の両手はまどかに届くことは無く…

まどかが消え去った瞬間、プツンと脳内にある音が響いた

--------神名あすみ------

ズキズキと顔が傷む

今日もまた殴られてしまった

あすみ(…皆、消えてしまえばいいのに…)

父親が出ていき、母は過労死

身寄りがいなくなって引き取られた親戚からは暴力を受ける

あすみ(お父さん…)

誰かにこの話をしたところで、誰も助けてはくれないことくらいわかっている

せいぜい悲しい顔をして、希望を捨てちゃダメだ、といわれるのが関の山

何が希望だ、何が夢だ

そんなものこの世にあるわけない

キュゥべぇ「ねえ君願い事はないかい?」

あすみ「へ…?」

キュゥベぇ「願い事を一つかなえてあげる代わりに…僕と契約して、魔法少女になってよ!」

そんな時、こいつは突然現れた

私の嫌う、夢と希望の使者として

-----暁美ほむら-----

今私は転校生の紹介待ちで教室の前に居る

和子「では暁美さん、いらっしゃい」

ガラス張りの真新しい教室に初めて足を踏み込む

大変新しい教室で、とっても綺麗だ

そんなことをぼんやり考えつつ教室に入った瞬間、クラスがざわめく
…そんな反応されるとハッキリ言って緊張する

教室の真ん中に立った時ばれないように深呼吸

ほむら(よし…大丈夫ね)

落ち着いてあいさつをする

そして指示通りに席に座る

そして休み時間

私の周りに沢山の人が集まってきた

転校生は珍しいのだろうか、質問に頑張ってにこやかに答える

ほむら(ああ…大変ね…)

作り笑いだと表情筋が攣りそうだ

ようやく野次馬が引き揚げてほっと一息つくと、一つの影が私の前で立ち止まった

ほむら(…またかしら)

ぼんやりと顔をあげると、銀色の髪で色白の少女がにこにこしながら私を見下ろしていた
彼女の顔は大変美麗で思わずうっとりと引き込まれる

上条「お久しぶりです!、私魔法少女になりました!」

ポカンと口を開けた


………

ほむら(…え…魔法少女…?何を言い出すの…?)

美しい笑みを浮かべていきいきと話す上条恭子を横目で見る

彼女の隣にいるといろんな人の注目を浴びる

彼女をみるためだろう、立ち止まり振り返る人はあまりにも多く
数えるのが不可能と感じるくらいだった

上条「でもほんとにあの時は助けて下さってありがとうございます」

ほむら「いいえ。助けを求めていたから…」

どこで彼女を助けたのか私は全く覚えていない

しかし、なぜだろう、出まかせに答えてしまった

上条「カッコいい…」

キラキラとした目で見られている、正直照れくさい
そして大変罪悪感を感じる

いまさら人違いなんて言えない…ああ、私は馬鹿だ

上条「あ、今から喫茶店いきましょう!あわせたい人がいるんです!!」

トン、と少し私の前に出てにこやかに笑う彼女をみて思わずつられてほほ笑む

ほむら「ええ、いいわよ」

そうだ、あの子も一緒に…

ほむら(…?)

ほむら(私…今誰を誘おうとしてたのかしら…?)

第一ここに来て間もないので知り合いなど誰一人としているはずは無いのである

なのに…いる気がするのだ

忘れている気がするのだ

自分にとって大切な誰か

とはいってもその人のことについて、本当に全く覚えていないのだ

ほむら(おかしいわね…)

首をかしげて恭子の後をついていった

マミ「あら、お友達?」

喫茶店で待っていたのはこれまた美人な人だ

優雅に紅茶をすする姿はあまりに優雅で様になる

本当に中学生なのだろうか?

マミ「上条さん、綺麗な人を連れてきたわね」

上条「マミさんだって美人で有名じゃないですか」

…美人は美人をひきつけるようだ…

自分などこの場にふさわしく無さ過ぎる、そう痛感するのだった

上条「紹介します、彼女が巴マミさん、私達の1つ上の学年の魔法少女の先輩です!」

上条「この子は私を前助けてくれた暁美ほむらちゃんです」

マミ「よろしくね、暁美さん」

ほむら「よろしく」

…私はほんとにいつどこでこの子を助けたっけ…?

何度思い返しても身に覚えが無い

それに魔法少女とは何なのか?

マミ「…暁美さん、会っていきなり凄く言いにくいことだけど…」

大変深刻な顔をしてじーっと私の顔を見つめる彼女

ナルト「サスケ!むっちゃ機嫌良さそうだってばね!何か言いことあった?」

サスケ「っふ、今日はお前を相手にしてやってる暇はないんだウスラトンカチ。なんてったって今から俺は兄さんに修行をつけてもらうんだからな」

ナルト「えっ!いーな、いーな!!俺も俺も!」

サスケ「ぜってーお前はついてくんな!今日は久しぶりに修行つけてもらえんだかんな。邪魔されたくないんだよ」

ナルト「えー。……サスケはいいよな。あんなかっこよくて優しくて優秀な兄ちゃんがいて」

サスケ「まぁな」

ナルト「母ちゃんは美人だしー」

サスケ「まぁな」

ナルト「父ちゃんは渋くてかっこいいしよー」

サスケ「まぁな」

ナルト「羨ましいってばよ!」

サスケ「まぁな」

ナルト「うわ、そのドヤ顔ムカつく!!」

サスケ「だろうな!」

マミ「…魔法少女の慣れ果てって知ってる…?」

ほむら(…私が魔法少女であること前提に話すのね)

いきなりの予想外の展開に動揺するが、私はあまり表情にでないよう

ほむら「な…何?」

マミ「やっぱり…」

上条「…暁美…さん…」

非常に暗い顔をする二人

何とも悪い話なのだろう、まあ魔法少女ではない私には問題ない

と、思っていたら…

マミ「…暁美さん…まずはソウルジェムを…」

ほむら(…!?な、なんなのよそれ)

ほむら「えっと…何ですかそれ…」

マミ「え…!?その指輪を変形させれば…」

指輪なんてない、そう答えようとして自分の指を見た時衝撃が走った

知らない指輪が自分の指にはめられているのだ

ほむら「え…」

愕然としながら指輪を触れる…

突然光り、指輪が無くなったと思ったら卵型の宝石が自分の手に乗っていた

ほむら「…どうなってるの…一体…」

こうして自分の記憶がおかしいものであることに気がつき始めた

vip+に投下してあるのはどうやらここまでのようですね
前のスレにいた方はここからご覧になられるといいと思います

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--鹿目まどか---


「…これって、あれじゃないか」
「願いを一つ叶えるかわり…化け物に食われるかもって」
「俺は魂を取りだされるって」
「私は化け物になるって」

まどか「…な…何なのかい…?その話…」

「え…知らないの?」
「魔法少年、魔法少女の話だよ?」

仕事の合間の休憩での出来事だった

まどか「僕は知りませんよ…次のアニメの題名ですか?」

「違うよ…そっか、知らないのか」
「まあ鹿目くんはこういう話嫌いそうだしね~」

失礼極まりない発言にピクリと眉を動かすが、
大人の対応を心掛けている自分はなんとか愛想笑いを浮かべて話を続ける

まどか「まあ、得意ではないですが…気になります」

ニヤニヤと皆笑い、僕を見つめる

まるで品定めをするように、ハッキリ言って、嫌な気分だ

「あのねぇ、実はこんな話しがあるんだ」
「ある時突然、白い猫みたいな喋る生物が現れてこんなセリフを言うんだと」
「僕と契約して、魔法○○になってよ!」
「丸の所は少女か少年な」
「契約して魔女又は魔物と戦うかわりに願いを一つかなえるそうだ」
「しかし…そのかわり…」

まどか「その代わり?」

「化け物から命を取られたり…」
「自分が化け物になってしまうんだってさー」

まどか「は…はあ」

何だ、何とも子供だましな都市伝説じゃないか

第一僕がこれくらいで怖がると…思っているのだろうか

流石に…ま、まああまりに非現実的な話だから…信じないけどさっ

「おっ、やっぱ不気味~?怖い??」

まどか「べっ別に!!」

何でだろう、人間怒りで声が震えることもあるんだなぁ、あはは…

----神名あすみ---

あすみ「ふふっ、どこに行くのかしら?」

モーニングスターを手に持ち、一人の少女を追い詰める
その少女はまだ幼い、ネコ耳の小さな魔法少女だった

あすみ「じゃあね」

モーニングスターを振り下ろす

辺りに血が飛び散り、その少女は即死…

あすみ「…もう回復してるんだ」

驚いたことにその少女は腕で攻撃を受け止め、回復まで終わらせていた

そしてネコの手?とにかくそんな感じなものを振り下ろす

ゴッと強風が吹き体が吹き飛ぶ

あすみ「あーあ、小さいから優しくしてあげてたのに、もう許さないから」

素早く手を空にかざすとどんどん異空間が広がる

「あ…あう」

少女の目が恐怖の色で染まった

なにやら危険を感じたようだ、
それもそのはず、精神攻撃が私の得意技なのだから

あすみ「さあ、もうそろそろソウルジェムが…」

穢れた頃だわ、と続けたかったがそういうわけにもいかなくなった

なぜならば、穢れてないのだ

「杏子が…キョーコが来てくれる」

恐ろしいメンタルである

あすみ「あははっ、このまま死んじゃうけどね?」

精神がダメなら…物理攻撃でやる

この少女は精神面を保つだけで精一杯のようなのが幸いした

そっとその少女の前に降り立ち何度もモーニングスターで殴りつける

パキーン

ガラスが砕け散る音が聞こえて、ソウルジェムが砕けたことを知る

あすみ「…つまんないの」

ガン

倒れている少女にモーニングスターをつき刺しその場を去ることにした

---鹿目まどか----

静かに泣く少女がいる

彼女は大変悲しげで、今にも消えそうな、影の薄い少女だ

黒く長い髪が風に揺れて、黒い大きな影が彼女を覆った

パァン!!

大きな銃声が聞こえ、そして…




ジリリリッ

まどか「…また変な夢だぁ…」

もう何度見たかわからない夢

眠りが浅かったせいか、仕事の疲れが抜けて無いのか、とにかくだるい体に鞭打ち起き上がる

起き上がって服を着替えようとクローゼットの方へ行くと…

何やら見知らぬぬいぐるみが、僕をじっと見つめていた

まどか(…こんなの…持ってたっけ?…とりあえずスルー)

なぜか足音を立てないようにこっそりそのぬいぐるみの前を通ろうとする…が…

「ねえ、鹿目まどか!」

まどか(…幻聴、幻聴…)

「ねえってば、幻聴じゃないよ!」

思いっきりビクッとする

きっと今、自分は本当に情けない顔をしている事だろう…

まどか「…君は…だ、だれ…ですか」

体の震えが止まらない

キュウべぇ「…僕の名前はキュゥべぇ」

まどか(ひっ…まさか…あの都市伝説…?)

白い猫のような姿で…ある言葉を投げかける

その言葉は…

キュゥべぇ「僕と契約して、魔法少年になってよ!…と言いたいところだけど…」

まどか「!?」

キュゥべぇ「…君、何か変な夢を見ないかい?」

予想を飛び越えた質問

例のセリフが飛び出したと思ったら、よくわからない展開に陥っている

まどか「夢…」

確かに昔からおかしな夢を見る
漆黒の髪の少女が涙を流す夢を

まどか「…」

キュゥべぇ「君がもしそんな夢を見るならば、手伝ってほしいことがあるんだ」

まどか「えぇ…?」

キュウべぇ「お願いだ…」

まどか「…」

キュゥべぇ「世界にかかわる大切なことなんだ」

----暁美ほむら---

マミ「暁美さん…記憶喪失に…?」

上条「じゃあ、あたしを助けてくれたことも…覚えてないの?」

ほむら「ごめんなさい、その…さっき出まかせ言ってしまって」

上条「いいや、全然大丈夫だよ。気にしないで」

手を振り、優しい言葉をかけてくれる

上条恭子は見かけと同じように優しく、その優しさにほっとする

とにかく、魔法少女として契約した記憶は無い

しかし、魔法少女の証であるソウルジェム…と呼ばれる宝石が自分の手に乗っているのだ

自分が魔法少女であることを認めざるおえないだろう

ほむら「でも魔法少女なんて…とにかく何をすればいいのか…」

マミ「暁美さん…」

上条「…暁美さん、魔女のことも覚えてないの?」

残念ながら全く分からないので首を横に振った

マミ「そっか…」

悲しそうな顔をしてマミはゆっくりと喋り出したが、無理矢理声を出しているように感じた

マミ「あのね…私達魔法少女は一つだけ願いをキュゥべぇという契約者に叶えてもらう代わり…
魔女と戦う使命を課されてしまうの」

上条「要するに…暁美さんはもうすでに、何かしらの願いをかなえてもらっていて…
魔女と戦わないといけないんです」

なんということなのだろうか

フラッとするのを止められない

ほむら「そんな…私、戦いなんて…」

マミ「そうよね…でも暁美さん、魔女を狩らないと、ソウルジェムに穢れが溜まってしまって…溜まり切ってしまうと私達は魔女になってしまうの」

ほむら「へ…?」

上条「どの道、いづれ皆魔女になってしまう…
でも、せめて遅らせるためにも、魔女を狩らないといけないの」

ありえない、信じられない話ばかり

喉が胃からせりあがったもののせいでちりちりと焼けるように痛くなった

ほむら「くっ…ゲホッ…」

口を押さえ、九の字に体を折り曲げた

マミ「暁美さん!」

ほむら「大丈夫…」

幸い何も吐き出さなかったが、私にとってはそれほどショックな出来事だった

自分は何もした覚えがないのに…

2人は心配そうに顔を見合わせているようだった

----美樹さやと----

俺のクラスは注目の的の有名人がいる

一人は上条恭子

全学年にファンがいる、俺の幼馴染の天才バレリーナ

銀色の髪で、優しげな整った笑みに心奪われる男が今でも多発している

もう1人は暁美ほむら

突然やってきた謎の転校生

運動神経バツグンで頭も良い、長い黒髪のクールで神秘的な少女

2人はどうやら仲が良く、並んで歩いている姿をみると思わず立ち止まってしまう

そんな人は少なくない

うちのクラスではどちらと付き合いたいか、とか夢物語を熱く語るアホも多い

まあ俺は恭子派だか、誰にも言ったことは無い

まあそんなことは置いといていいのだ

問題は今の状況だ

上条「さやと、大丈夫?」

ほむら「魔女を逃がしてしまったわ、今マミが追いかけている」

ファンシーな衣装を着た2人が目の前にいるのだ

そして隣にいる謎の白い生物

キュウべぇ「僕はキュゥべぇ!君、僕と契約して魔法少年になってよ!」

急展開もいいところだろう

cdを買いに行っただけでこんなことになるなんて…

----少し前の鹿目まどか---

ほむら「…」

まどか「あんまりだよ…ほむらちゃん!」

黒髪の少女は小柄なピンクの髪の少女を完全に無視して、
人魚の化け物に向かって銃を放つ

杏子「くそっ、ほむら!!やめてくれ!!!」

炎のように赤い髪を持つ少女は…黒髪の少女に向かって懇願とも思える叫び声をあげる

ほむら「…貴方が美樹さやかの魔女と共に死なないならば…いいけど」

ほむら「どうせ貴方だって…いつもそう」

パァン!!!

ほむら「美樹さやかだったものと共に、地の果てへ行ってしまう」

パァン!!

杏子「…てめえ、いい加減にしろ、銃をしまえっ…さやかを…殺さないでくれ…」

ほむら「…」
カチカチ

ほむら「どっちが…」

カチッ

ドオオオン!!

ほむら「…どっちが…よ…」

『グォオオオオオオオ…』

杏子「…」

杏子「…ら」

ほむら「…」

まどか「ほ…ほむら…ちゃん…何で…」

まどかは小さくうずくまり、泣きじゃくった

杏子「ほむらぁあああ、てめえ!!」

杏子「よくもっ、さやかを…殺しやがったな!!」

杏子「許さねえ、絶対許さねえ!!!!」

まどか「…ほむらちゃん…私も…」

パァン!

まどか「杏子ちゃん、腕!」

杏子「くっ…ほむら、あたしのことも殺すつもりかい…?」

ほむら「…何で…なのよ…」

まどか「…ほむらちゃん…?」

ほむら「ねえ…私が喜んでこんなことしてると思っているの…?」

杏子「…お前…何で…泣いて…」

ほむら「キュウべぇが2人に接触しないようにした」

ほむら「巴マミが死なないように先回りして…彼女を止めようとした」

ほむら「私…美樹さやかが契約しないように…忠告した」

ほむら「佐倉杏子、貴方が美樹さやかと共に死なないように…仕方ないから…殺した」

まどか「だ…だって!ほむらちゃんあんまりにも…」

ほむら「あんまりにも何?先に話せば皆理解してくれたの?」

まどか「…」

杏子「…」

ほむら「私だって…巴マミや美樹さやかに真実を…“仲間”として告げたことはあるわ、
でも…誰も信じてはくれなかった…寧ろ逆効果だった」

ほむら「何度も…何度も…繰り返して…助けようとしても…貴方達は…」

ほむら「貴方達は一度も私の話を信じてはくれなかったじゃない!!!」

ほむら「どうせ信じてもらえないなら、無理矢理でいい、嫌われていい!!」

ほむら「そう思って頑張ったわ…」

涙を流しながら、黒髪の少女はフラフラと座り込んだ

赤い髪の少女とピンクの髪の少女はただだまって、人魚の魔女がいた所をみつめ、少女に向き直った

杏子「…ほむら…お前、一体何者なんだ…?」

ほむら「それを言ったところで無駄じゃない」

まどか「ほむらちゃん、あの」

ほむら「お願い、あっちへ行って」

まどか「…」

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つ、疲れた…
今日はとにかくこれで終わりです

あと一番初めに書いたつもりで忘れていました、
これはまとめへの転載禁止でお願いします

それと…べぇさんの名前が統一されてない…
正しくはキュゥべぇです…ごめんさない

あと私の口から言うのはなんですが
多分>>276は誤爆しちゃったんだと思うのです(丁度近くにナルトssがありました)
だから気にしなくていいと思うのです

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