エレクリ・エレヒスです。
原作と相違があると思いますが、SSだし、許してください。
すでに別の場所で完結済みなので、速攻で終わらせます。
応援、批判、感想、意見、要望、その他諸々…コメント待ってます(
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419180782
お馬さんの手入れをしているこの時間。
この時間だけが私にとって安心できる時間。
私の唯一の友達のお世話をしながら物思いにふける。
私は…
ヒストリア・レイスは…
なんで生まれてきたんだろう?
立派なお医者さんで、尊敬できる自慢の父さん。
美人で、怒るとちょっと怖いけど、とっても優しい大好きな母さん。
俺と父さん、母さんは仲が凄くいい。
こんな話をしたら俺のことが羨ましくなるかもしれない。
でも、友達は一人しかいない。
物知りなそいつは外の世界についてたくさん教えてくれた。
だから俺はいつか…そいつと一緒に…
外の世界を探検するんだ!
エレン「…ヒストリア?」
今日は父さんの仕事の付き添いで、内地に来た。
グリシャ「そうだ。お前と同い年の女の子だ。ヒストリアはいろいろある子だからな…仲良くするんだぞ?」
なんでも、その、ヒストリア?って奴と合わせたいらしい。
エレン「そいつの出方次第だけど…」
グリシャ「エレン…そんなんだから一人しか友達ができないんだぞ」
エレン「…」
痛いところを突かれてしまった。
ドンドンドン
グリシャ「レイスさん!イェーガーですが?」
ガチャ
使用人「イェーガー先生ですか?どうぞ上がってください」
グリシャ「お邪魔します」
使用人「そちらは…?」
グリシャ「息子のエレンです」
使用人「エレンさんはどうされます?」
グリシャ「どこかの部屋にでも置いとけば結構ですよ。一人では退屈だろうと思うのでヒストリアと居させてあげてください」
使用人「ヒストリア…ですか?まあ、いいでしょう。では、先生はいつもの部屋に行っていてください。ではエレンさん、こちらに」
エレン「…」
使用人「こちらの部屋で待っていてください」
エレン「…はい」
ガチャ
エレン「…」
待合室にするにはもったいないくらい広い部屋だった。
金持ちは違うな…
エレン「…」
暇だ…
することがねぇ…
ヒストリア「ふふっ、気持ちいいでしょう?」ニコニコ
ブラッシングしている時、お馬さんはとても気持ち良さそうな顔をする。
この子たちにも、たくさんの表情があって…
言葉は伝わらないかもしれない…
けど、想いは通い合ってると思う。
だから私と"彼"は友達なの。
使用人「お嬢様」
私の顔から一瞬にして笑顔が消える。
ヒストリア「…はい」
お嬢様なんて言ってるけど、本当は私のことどう思ってるかなんてわからない。
使用人「お客様です。こちらにどうぞ」
お客様…?誰?
使用人「早く。こちらに」
少し口調が強まった。
私がモタモタしているからだ。
ヒストリア「…はい」
そして私は連れて行かれた。
これから何が起こるのかわからない恐怖。
そのせいで心臓はバクバクしていた。
そして、あまり使われていない部屋の前に来た。
ガチャ
ドアを開けるとそこには一人の男の子が居た。
使用人「…さぁ、中へ」
ヒストリア「…はい」
ガチャン
扉が閉められる。
エレン「…」
ヒストリア「…」
部屋には私と男の子と沈黙だけが取り残された。
長い沈黙の後、先に口を開いたのは彼だった。
エレン「…お前が…ヒストリアか?」
ヒストリア「…はい」
エレン「俺はエレン、エレン・イェーガー、8歳だ。よろしくな」
ヒストリア「…よろしくお願いします」
チラッと顔を見た。
怖そうな目つきをしていた。
エレン「なんで敬語なんだよ。同い年なんだろ?」
確かに私も8歳だから同い年だ。
ヒストリア「そうですが…」
エレン「タメでいいぞ?」
ヒストリア「…う、うん」
エレン「なんでそんなに暗いんだよ」
ヒストリア「…え?」
確かに私はずっと下を向いていた。
なぜなら警戒しているから。
私の地域の子たちは、私を危ない奴とか言って石を投げてくる。
この人もそういうことをする人かもしれない。
だから、警戒していた。
なのに…
エレン「体調悪いのか?」
ヒストリア「別に…」
心配…してくれた?
初めてだったから嬉しいかどうかもよくわからない。
エレン「そうか」
ヒストリア「…」
エレン「…」
ヒストリア「…」
エレン「お前さ…」
ヒストリア「…」
エレン「もっと笑えよ」
ヒストリア「…え?」
エレン「暗い顔ばっかしててもいいこと無いぜ?」
ヒストリア「…」
エレン「ほらっ、笑tt「うるさい!」
怒鳴ってしまった。
鬱陶しかった…
いや、違う。
多分嬉しかったんだ。
私のことを気にかけてもらえて…
でも…
ヒストリア「…あなたに…エレンに私の気持ちなんて分からないでしょ?」
私は感謝するということがよく分かってないのだろう。
エレンに酷いことを言ってしまった。
エレン「…」
ヒストリア「…」
エレン「…」コチョコチョ
ヒストリア「ひゃぁ!///」
エレンがいきなりくすぐってきた!
なんで?なんで!?
エレン「…」コチョコチョ
ヒストリア「はははっ!や、やめてっ!///」
エレン「おお、笑った!」
ヒストリア「いきなりびっくりした!やめてよっ!」プンプン
エレン「悪かったよ」
ヒストリア「…」プクーッ
エレン「まぁ、怒るなって」
これは怒って当然…だよね?
エレン「それより、笑った方が可愛いぞ、お前?」
ヒストリア「か、可愛い…?」
エレン「おう!」
ヒストリア「あ…ありがと…///」ニコッ
あ、これが感謝するってこと?
エレン「!」ドキッ
ガチャ
部屋の扉が開く。
グリシャ「エレン、帰るぞ」
エレンの父さんが迎えに来た。
うーん、なんて言うか…
もーちょっと、話していたかった…かな。
エレン「うん…じゃあなヒストリア」
ヒストリア「…さよなら」
エレン(あ…)
使用人「ヒストリア、こちらへ」
ヒストリア「…はい」
エレン(また暗い顔してる…)
俺は、シガンシナに帰る馬車の中にいた。
グリシャ「ヒストリアはどうだった?」
エレン「暗かったな…あいつは笑うべきだ」
グリシャ「…笑わなかったのか?」
ヒストリア『あ…ありがと…///』ニコッ
エレン「…いや、一回だけニコッとした」
グリシャ「可愛かったか?」
エレン「…ま、まあな」
グリシャ「お前の好みか?エレン」
エレン「は、はぁ・・///何馬鹿なこと言ってんだよ!」
グリシャ「ははは…エレンも恋するようになったか」
エレン「だから別に好きとかじゃねぇって!…ただ…」
グリシャ「ただ…?」
エレン「ちょっと胸が締め付けられたんだ」
そうだ…
エレン「あいつに何があったのかは知らねぇけど…俺はあいつを助けなきゃいけねぇと思った」
俺はあいつの笑顔が見たい。
エレン「何から助けるのかはまだ、分からねぇけど…」
でも、どうすれば…?
あの日から…俺はヒストリアのことばかり考えるようになっていた。
ヒストリアのことを考えると胸がドキドキする。
俺はその気持ちが何なのか、この時はわからなかった。
あの日から一週間経った。
聞いた話なのだけど、グリシャという先生は毎週日曜日に来ているらしい。
そして今日は、その日曜日だ。
またエレンに会えるかな…?
あれ、何を期待してるんだろう、私は…
「おい!いたぞ!」
ヒストリア「!?」
いつも小石を投げてくる少年たちがいた。
「今日は絶対当ててやる!それっ!」
ヒストリア「きゃっ!?」
今日もまた投げられる。
「ヘッタクソ!俺がやる!それっ!」
ヒストリア「うっ…」
「よっしゃー!当たった!」
私は怖くなって逃げた。
「おいあいつ逃げてくぞ!この弱虫!」
「ねぇ、やめようよ…」
「俺の母さんが危ない奴って言ってたんだ!これくらいして懲らしめないと!それっ!」
私は建物の中に入った。
ヒストリア「痛い…」
そうだ…
何を今まで血迷っていたんだろう。
私に味方なんて…
いるわけないんだ…
グリシャ「エレン。今日もまた、内地に診療に行くぞ」
エレン「分かった」
グリシャ「じゃあ行こう。馬車の時間もあるから」
エレン「そうだね」
俺たちは馬車に乗って、レイス家へと向かった。
レイス家に着くと、前回同様、待合室に連れて行かれた。
そして少し待っていると、部屋のドアが開いた。
ガチャ
エレン「よう、久しぶりだな」
ヒストリア「…そうだね」
エレン「元気にしてたか?」
ヒストリア「…うん」
本当に元気だったのか?
とてもそうには見えなかった。
エレン「また暗い顔してるな…なんで笑わねぇんだよ」
ヒストリア「…エレンには関係ないでしょ?」
エレン「笑った時、可愛かったぜ?」
ヒストリア「…お世辞なんていらない」
エレン「お世辞?俺、本当のことを言っただけだぜ?」
ヒストリア「…嘘だ。エレンだって私のこと…危ない奴だとか思ってる癖に…」
エレン「はぁ!?」
ヒストリア「私に味方なんていない…だって私は、いらない人間なんだから…」
エレン「…」
ヒストリア「私なんて、生まれて来なきゃよかったのに…」
エレン「・・」
ヒストリア「…」
エレン「…」スタスタ
ヒストリア「…?」
エレン「…」バチンッ
ヒストリア「いっ!?」
俺は、ほぼ無意識にヒストリアの頬をビンタしていた。
そして、無意識に説教を垂れ始めた。
エレン「何が<生まれて来なきゃよかった>だ…」
ヒストリア「…」
エレン「いいかヒストリア」
ヒストリア「……」
エレン「お前だって命を持って生まれて来たんだから」
エレン「命を大切にしなきゃ駄目だ!自分の事を大切に思わなきゃ駄目だ!」
ヒストリア「…大切に…?」
ヒストリア「…私を大切にしてくれる人なんか居ないし…そんな事…」
エレン「居る」
ヒストリア「え?」
エレン「俺はお前の事を大切に思ってる!」
エレン「だって…俺とお前は友達だろ?」
ヒストリア「!」
エレン「だから…お前は大切だ!」
エレン「もう…絶対自分が生きている事を否定するな!」
エレン「そうじゃないと…」
ヒストリア「…?」
エレン「俺…悲しいよ」
ヒストリア「………」ドキン
エレン「俺は、お前に笑っていてほしい」
エレン「悲しい顔をしないでほしい」
エレン「だから…な?」
ヒストリア「う…うん…///」
ヒストリア「嬉しいよ、エレン」ニコッ
エレン「!?///」
ヒストリア「どうしたの?」カオノゾキコム
エレン「なっ、なんでもねぇ!///」プイッ
ヒストリア「…?」
俺は帰りの馬車に揺られて眠っていた。
グリシャ「おい、エレン!着いたぞ、起きなさい」
エレン「う…うん」ムニャムニャ
グリシャ「ただいまカルラ、今帰ったよ」
エレン「ただいま〜」ムニャムニャ
カルラ「お帰りなさい、あなた、エレン。ん?エレンは眠たいの?」
グリシャ「疲れたみたいでね、馬車でぐっすりだったよ」
カルラ「二人とも手を洗って!ご飯出来てるわよ!」
エレグリ「はーい」
エレン「おぉー!うまそー!!」
グリシャ「さっきのお休みモードはどこに行ったんだ?」
エレン「こんな美味そうなご飯見たら元気になるだろ!?」
カルラ「嬉しいこと言ってくれるわね!お代わりあるからどんどん食べなさ〜い!」
エレン「いっただっきまーす!」
グリシャ「頂きます」
エレン「うめぇ!!」
グリシャ「ああ、美味しいよ」
カルラ「ふふっよかったわ」
エレン「そうだ父さん!今日、ヒストリアを笑顔にしたぜ!」
グリシャ「おお、そうか!」
エレン「でも、もっといっぱい笑ってほしいな…」
カルラ「あら〜?エレンの初恋かな?」
エレン「べっ、別に好きとか、そーゆんじゃねぇし!///」
カルラ「へぇ〜」ニヤニヤ
エレン「ちげぇって言ってんだろ!」
グリシャ「エレン、恋をするってのは何も恥ずかしいことじゃないぞ?」
エレン「だーかーらっ!」
カルラ「…」ニヤニヤ
エレン「あー、もぅ!」ガツガツガツガツ
エレン「ふぅ、ごちそうさま!風呂入ってくる!」
バタンっ
カルラ「エレンも大きくなったわね…」
グリシャ「ああ」
カルラ「なんだか、私の元をどんどん離れていってる気がする」
グリシャ「時が経つのは早いものだ」
カルラ「ええ、本当に」
エレン「くそっ、なんなんだよ二人揃ってバカにしやがって!」ヌギヌギ
エレン「よっ!」ザバーンッ
エレン「ふわぁー」イイユダナ♪
なんか、カッコつけて説教垂れちまったな…
鬱陶しい奴とか思われてたらどうしよ…
『俺とお前は友達だろ?』
友達…か。
やっと2人目の友達が出来た。
嬉しい…
嬉しいはず…なのに…
嬉しくない。
友達じゃ嫌だ…
仲間?いや、違う…それ以上だ…
味方?間違ってはないけど…
恋人?…はっ!?///
何考えてんだよ、俺…
ふと、風呂の窓から星が見えた。
エレン「綺麗だな…」
夜、私は星を見ていた。
ヒストリア「…」
『俺はお前のことを大切に思ってる!』
『自分が生きていることを否定するな!』
『俺…悲しいよ』
ヒストリア「…///」
『お前に笑っていてほしい』
『悲しい顔をしないでほしい』
ヒストリア「〜〜///」
『俺とお前は友達だろ?』
ヒストリア「…」グッ
エレン…
そんなこと言われたら私…
ヒストリア「ひっ…ぐっ…」ポタポタ
嬉しすぎるよ!!!
ヒストリア「うわぁぁぁあああん!」ポロポロ
味方なんていない…
周りを見れば全部敵…
そう、思っていた。
いや、思い込んでいた。
でも、やっと気付いた。
あなたという…
ヒストリア「エレン…」
エレンという存在に…
ヒストリア「会いたいよぉ…」
エレン「じゃあ行ってきます!」ダッ
俺は勢いよく家を飛び出した。
カルラ「今日は喧嘩するんじゃないよー!?」
場所は何時も通り、川沿いの船着場の近く…
居たっ!
エレン「おーい、アルミーン」タッタッタッ
アルミン「あ、エレン!」
アルミン「そうだ!この前の話の続きなんだけどさ…」
エレン「おう」
アルミン「海にも魚がいて、その魚は塩水の中じゃないと生きられないんだって!」
エレン「え、そうなのか!?」
アルミン「海の魚は海水魚、川の魚は淡水魚といって、海水魚の種類は淡水魚の種類よりはるかに多いんだって!」
エレン「俺たちが知ってることなんて、この世の中の本当にごく一部なんだろうな…」
アルミン「でも、知らないことがたくさんあるから、ワクワクするし、探検のしがいがあるってものだよ!」
エレン「ああ、そうだな!そして、いつか必ず、外の世界に出るんだ!」
アルミン「うん!2人で探検しよう!」
エレン「おう!2人で…あ、3人にしてもいいか?」
アルミン「え?どうしてだい?」
エレン「最近、一人友達ができたんだ」
アルミン「え、本当に!?凄いじゃないか!どんは人なの?」
エレン「えーっと、ちっちゃくて、アルミンと同じ金髪碧目で、笑顔が少ない女の子だよ」
アルミン「笑顔が少ない?」
エレン「ああ、全然笑わねぇんだ。笑ったらすげぇ可愛いのに…」
エレン「それに、俺はあいつが悲しい顔をしてるのを見るのが嫌なんだ。ずっと笑ってて欲しいんだ…」
アルミン「エレンは…その子のことが、好き…なの?」
エレン「は、はぁ!?///なんでアルミンまでそんなこと言うんだよ!?」
アルミン「いや、聞いててそう思ったから…気に障ったのならごめん」
エレン「いや、別にいいけどさ…」
アルミン「…つまり君はどうにかして彼女の笑顔を増やしたいんでしょう?」
エレン「まあ、そーだな」
アルミン「だったら、まずは君が彼女に笑いかけてあげればいいんじゃないかな?」
エレン「笑いかける…?」
アルミン「そう。笑顔を作るのに、面白い本とか話とかも一つの手段としてはいいかもしれない」
アルミン「けど、誰かと一緒に笑い合うのが一番いいんじゃないかな?」
エレン「そっか…そうだよな!なんでそんな簡単なことに気がつかなかったんだろうな」
エレン「ありがとよ、アルミン!」
アルミン「ところでエレン、彼女とはどうやって知り合ったの?」
エレン「ああ、それはよーー」
ヒストリア「〜〜♪」
エレンは今何してるのかなー?
エレンは今何考えてるのかなー?
私のこと考えてたりして…
ヒストリア「きゃはっ///」
ここ最近、エレンの事しか考えてない。
初めて私とちゃんと喋ってくれた。
初めて、私を認めてくれた。
初めて…私を必要としてくれた。
初めて……私を叱ってくれた。
初めての大切な大切な友達。
ヒストリア「早く会いたいなぁ…」
待ちに待った日曜日がやってきた。
使用人は、いちいち私を呼ぶのが面倒だからと、出迎えに私を使った。
すぐにエレンと会えるから、好都合だった。
ドンドン
ヒストリア「はい」
グリシャ「おや?ヒストリアか」
ヒストリア「先生はいつものところに行ってください。エレンは私と一緒に来て」
グリシャ「わかったよ」
エレン「おう」
ガチャ
ヒストリア「入って」
エレン「ああ、サンキュー」
エレン「そういえばさ」
ヒストリア「?」
エレン(笑いかける…!)
エレン「今日は下向いてないな!」ニカッ
ヒストリア「!?///」
エレン「ん?どうした?」
いきなりその笑顔は反則だよ!
ヒストリア「なんでもない…///」
エレン「お、おい、なんで下向いちゃうんだよ」
ヒストリア「ほ、ほっといてよ///」
エレン「ほっとけねぇよ!ずっと俺を見てろ!」
ヒストリア「!?///え、エレンのばかぁ…///」
エレン「え、俺なんかまずいこと言ったか?」アセアセ
ヒストリア「言ってない、言ってないけど…」
仕返し…してやる…!
ヒストリア「エレンばっかりずるい!私も!」グイッ
エレン「袖引っ張るなよ!破け…えっ!?///」
ヒストリア「…」ギュー
エレン「お、おいっ!///」
エレンの胸の中…あったかい…
ヒストリア「会いたかった…1人は寂しかった」ウルウル
エレン「うん、俺も会いたかったよ」ギュッ
ヒストリア「…」
エレン「もう、寂しくないぞ。俺がいる」
ヒストリア「うん…」
安心する…いつまでもこうしていたい。
エレン「落ち着いたか?」
ヒストリア「うん、ごめんね」
エレン「いや、いいよ。謝んなって」
ヒストリア「うん。あ、そうだ、エレンの家ってどこなの?」
エレン「俺ん家か?シガンシナだぞ」
ヒストリア「シガンシナって南端の?」
エレン「ああ、ここからはかなり遠いな」
ヒストリア「そっか…遠いんだ…」
エレン「まあ、今度機会あったら来いよ」
ヒストリア「うん!」
機会を待ってても来ない。
自分で作り出さなくちゃ…
ガチャ
グリシャ「エレン、帰ろう」
エレン「わかった。またなヒストリア!」
ヒストリア「うん。バイバイ」
今日はあんまり下向いてなかったな。
なんだか楽しそうで…
俺も楽しかった。
別れる時はやっぱり寂しいな…
グリシャ「ヒストリア、明るくなったな」
エレン「あ、父さんもそう思う?」
グリシャ「ああ。良いことだ」
エレン「もっともっと、笑ってほしいな」
グリシャ「エレン、頑張れ」
エレン「おう!」
ヒストリア「はぁ…はぁ…」
意識がなくなってきた…
み、水…
「お、おい!お嬢ちゃん!?大丈夫か?」
ヒストリア「水…」
「水だな!待ってろ!」
ヒストリア「はぁ……はぁ……」
エレン…
早く会いたい…
エレン「…zzZ」スピー
エレン「むにゃ…」
エレン「ひ…とりぁ…わらぇ…」
カルラ「エレン!いつまで寝てんの!?起きなさい!!」フトンバサー
エレン「うわっ!?な、なにすんだよぉ…」ムニャムニャ
カルラ「何時だと思ってんの!?アルミン待ってるんでしょう?」
エレン「ありゅみん…?…あっ!!!今何時!?」
カルラ「もう10時よ!」
エレン「やっべっ!9時集合なのに!」
カルラ「早く行きなさい!」
エレン「分かった!行ってきます!」
カルラ「ちょっと!パジャマで行くの?」
エレン「あ…」
悪ガキ1「その本見せろよ〜」
アルミン「ダメだ!これはおじいちゃんから借りてる大事な本なんだ!」
悪ガキ2「ちょっとくらいいいじゃねぇかよ」
アルミン「さ、触るな!」
悪ガキ3「んだとっ!?てめぇ!」ボカッ
アルミン「うっ…」
悪ガキ2「さっさと寄越せっ!」ドガッ
アルミン「ぐっ…」
アルミン「…」キッ
悪ガキ1「なんだよその目はよぉ…あぁ?」
悪ガキ2「悔しかったら殴り返してみろ!この異端者!」
アルミン「僕は殴らないよ…君たちの意見に反論できるから」
アルミン「君たちこそ、話し合いもできない卑怯者だから、殴ることしかできないんだろ?」
悪ガキ3「このやろっ!」
エレン「やめろっ!!!」ボガッ
悪ガキ3「ぐっ…」
アルミン「エレン?」
エレン「大丈夫か?アルミン…」
エレン「くそっ…アルミンいじめる奴は俺が許さねぇ!!!」
エレン「痛っ…くそっ」ボロボロ
アルミン「仕方ないよ…3対1だったんだし…」
エレン「でも…」
アルミン「…僕のせいでこんな目に合わせちゃって…ごめん」
エレン「俺がやりたくてやってるだけだ。謝らないでくれよ」
アルミン「う、うん…」
エレン「それより遅れてごめんな?」
アルミン「大丈夫だよ」
エレン「母さんがお詫びとして昼飯ご馳走するって、後で俺ん家行こうな」
アルミン「なんか悪いなぁ…」
ハンネス「またやられたのかぁ、エレン?」
エレン「ハンネスさん!?ってか酒くさっ!また飲んでるのかよ…」
ハンネス「かるーくな。ところで、今日はお前に用があるんだ」
エレン「?」
ハンネス「お前もやるなぁエレン!いつの間にあんな子ゲットしたんだ?」
エレン「??」
ハンネス「連れてきたぞ、お嬢ちゃん!」
ヒストリア「!」
エレン「え!?ひ、ヒストリア!?」
ヒストリア「あ、エレン…!」
アルミン(この子がヒストリアか…マジ天使)
エレン「お前どうして…ってか、そんなボロボロになってどうしたんだ?」
ヒストリア「…エレンこそボロボロ」
エレン「あ、これは…」
ハンネス「ケンカでボロ負けしたんだよなぁ?」
エレン「言うなよ、ハンネスさん!恥ずかしいだろっ!」
ヒストリア「ケンカはダメだよ?エレン?」
エレン「あ、あぁ…」
アルミン「でも、エレンはいつも僕を守ってくれるんだよ」
ヒストリア「そう…なんですか」
アルミン(あれ、エレンと話してる時と雰囲気違うなぁ)
エレン「おいヒストリア、こいつは俺の大親友のアルミンだ!同い年だし、タメで大丈夫だぞ!」
アルミン「大親友って、照れるなぁ…よろしくね、ヒストリア」
ヒストリア「よ、よろしく…」
エレン「腹減ったし、一回俺ん家来いよ!二人とも!」
アルミン「じゃあ、お言葉に甘えて」
ヒストリア「うん…(エレンのお家かぁ///)」
エレン「たっだいまーっ!」
アルミン「お邪魔します!」
ヒストリア「お、お邪魔します…」
カルラ「おかえりエレン、いらっしゃいアルミン…と、誰?」
ヒストリア「あ、え、えっと…」
エレン「ヒストリアだよ!」
カルラ「ヒストリアって…えっ!?レ、レイス家のっ?」
エレン「うん」
カルラ「どうしてこんなとこ…
グゥー
エレン「…」オレジャナイ
アルミン「…」ボクジャナイ
ヒストリア「…///」
カルラ「ふふっ、ご飯にしましょうか」
エレン「よっしゃ!」
カルラ「アルミンも、ヒストリアも上がって?ヒストリアの家に比べたら狭くて汚いかもしれないけど」
ヒストリア「そ、そんなことないです…」
カルラ(確かに暗いわね…可愛らしい顔がもったいない)
エレン「そういや、父さんは?」
カルラ「アッカーマンさん?の家に診療に行くって言ってたわ」
エレン「そっか」
カルラ「ほらほら座って?もう出来てるわよ」
エレン「今日のご飯なにー?」
カルラ「クリームシチューとパンよ」
エレン「うまそー!」
カルラ「サラダもあるからちゃんと食べるのよ?」
エレン「えー」
カルラ「えーじゃない!」
アルミン「あはは」
ヒストリア「…」クスッ
エレン「笑うなよっ!」
カルラ「はい、どうぞ」
エレン「いっただきまーっす!」
アルミン「頂きます」
ヒストリア「…頂きます」
エレン「うっめぇぇええ!」
アルミン「濃厚で凄く美味しいシチューだ!」
カルラ「ふふっ、いっぱいあるからたくさん食べてね?あ、ヒストリアはどう?」
ヒストリア「…」
カルラ「…?お口に合わなかったかしら?」
ヒストリア「ひぐっ…」グスッ
エレン「お、おい!どうしたんだよ?」
カルラ「の、残しても…「違うんです!」
ヒストリア「お、美味しくて…あったかくて…」ポロポロ
母が台所に立つのは見たことない。
私の母は、昼はずっと寝てるし、夜は何処かに行ってしまう。
母の料理を食べたことなどなかった。
いつもスカスカの冷たくて硬いパンだけ。
これがお母さんの温もり…?
家族って…
あったかいんだなぁ…
ヒストリア「ごちそうさまでした」
カルラ「喜んでもらえてよかった」ニコニコ
アルミン「ごちそうさまでした!…あ、じゃあ僕はこれで帰ります」
カルラ「あら、もう帰るの?」
アルミン「はい…なんか、お邪魔かなぁって」チラッ
カアサンノリョウリオイシイダロ?
ウン!スゴクオイシカッタ!
カルラ「そうかもしれないわね。なんか気を遣わせちゃったかしら?」
アルミン「いえ、そんなことないです」
カルラ「ふふっ、大人ね、アルミンは」
アルミン「そんな…///」テレテレ
カルラ「じゃあ気をつけて帰ってね」
アルミン「はい!美味しいご飯ありがとうございました!」
カルラ「いえいえ」ニコッ
エレン「アルミン帰るのか?」
アルミン「うん」
エレン「そっか…じゃあまたな!」
アルミン「うん!バイバイ!」
ヒストリア「…」
アルミン「ヒストリアも、またね!」
ヒストリア「う、うん」
カルラ「そういえばヒストリア、ここまでどうやってきたの?」
ヒストリア「馬車とか、船とか使ってきました」
エレン「すげぇな…」
ヒストリア「でも途中で家から持ってきたお金がなくなって…」
エレン「まさか、歩いたのか!?」
ヒストリア「うん、そしたら途中で倒れちゃって…さっきの駐屯兵の人に助けて貰ったの」
エレン「ハンネスさんか」
ヒストリア「それで、その、ハンネスさん?もシガンシナに行くからって、馬に乗せてもらったの」
エレン「すげぇな…」
カルラ「それは大変だったわね…あ、お風呂は?」
ヒストリア「入ってません…」
エレン「じゃあうちのお風呂使えよ」
ヒストリア「え…そんな、悪いよ…」
カルラ「いいわよ?お風呂入って、いろんなこと全部流しちゃいなさい!」
ヒストリア「あ、ありがとうございます」
カルラ「着替えはエレンの服まくって着ていいわよ」
ヒストリア「はい(エレンの服…///)」
カルラ「エレンはお風呂入る?」
エレン「あー、うん。ヒストリアの後に入るよ」
カルラ「一緒に入れば?」ニヤニヤ
エレン「は、はぁ!?///やめろよ母さん!///ヒストリアにも迷惑だぞ!///」
ヒストリア「…///」
カルラ「ふふっ、悪かったわよ」
ヒストリア「…」ヌギヌギ
ヒストリア「…」ガラガラ
ヒストリア「…あちっ」チャポン
私はお風呂があまり好きじゃない。
いつも、お風呂に入る時はその日あったことを思い返す。
いつも、嫌なことしかないから…
お風呂は好きになれない。
でも、今日は違う。
エレンに会えて…
あんなに美味しいご飯が食べられて…
今日のお風呂はいつもより小さいけれど…
今日のお風呂はいつもより気持ちよかった。
ヒストリア「気持ちよかったです」
カルラ「ならよかった」
エレン「じゃあ、俺も入ってくる!」
カルラ「よく洗うのよー?」
エレン「分かってるよ〜」
ヒストリア「…」
カルラ「…ねぇ、ヒストリア」
ヒストリア「は、はい」
カルラ「エレンのこと…好き?」
ヒストリア「!?///」
カルラ「好きなのね」
ヒストリア「…///」コクッ
カルラ「まぁ、好きじゃなければこんなところまで来ないわよね」
ヒストリア「…」
カルラ「エレンもあなたのこと好きだと思うわ」
ヒストリア「!」
嬉しい…けど…
私とじゃエレンは…
幸せになれないと思う…
カルラ「ところでヒストリア、どうしてエレンを好きになったの?」ニヤニヤ
ヒストリア「えっ!?」
カルラ「教えてよ〜」ニヤニヤ
ヒストリア「え、エレンは…私を初めて認めてくれたから…」
カルラ「初めて…?」
ヒストリア「父には会ったことないし、母には産まなければよかったと言われ…家の使用人にも迷惑がられていたんです…」
カルラ「ど、どうして…?」
ヒストリア「それは私が…妾の子だから…」
カルラ「妾…の子?」
ヒストリア「私の母は、父の妻ではないので…」
カルラ「そう…そんなことがあったのね…」
ヒストリア「でもそんな私を、ヒストリア・レイスを、エレンが初めて認めてくれたんです…必要としてくれたんです」
ヒストリア「だから私は…エレンのことが…大好きなんです///」ニコッ
カルラ「そっか…頑張って!応援するわ!」
カルラ「それにしてもヒストリア…」
ヒストリア「?」
カルラ「エレンの話をすると顔が生き生きしてるわね」クスクス
ヒストリア「!?///」
カルラ「さっきの笑顔、エレンにもいっぱい見せてあげて。喜ぶわ、きっと」
ヒストリア「はい!」
エレン「ぷはぁー!気持ちよかったー」
カルラ「よかったわね」
ガチャ
グリシャ「ただいま」
カルラ「おかえり、あなた。早かったのね」
グリシャ「ああ、そうだな」
エレン「おかえり!父さん!」
グリシャ「ただいま、エレン。…ん?君は、ヒストリアか!?」
ヒストリア「は、はい…」
グリシャ「どうして…?」
カルラ「実はーーってことなのよ」カクカクシカジカ
グリシャ「そうか…ヒストリア、お家の人には言ってないんだろ?」
ヒストリア「はい…」
グリシャ「…明日の朝、一緒に帰ろう」
エレン「え、なんでだよ!もうちょっと居られないのか!?」
グリシャ「向こうの人だって心配する。わかるな?」
エレン「う、うん…」
グリシャ「ヒストリアもだ。明日、帰るぞ?」
ヒストリア「はい…」
グリシャ「その代わり、今日1日はうちで羽を伸ばすといい。君の境遇は少し理解しているつもりだ。ゆっくりして行きなさい」
ヒストリア「!」パァァ
ヒストリア「あ、ありがとうございます!」
エレン「ヒストリア、夕飯まで部屋行こうぜ」
ヒストリア「うん!(エレンの部屋…どんなのだろ?)」ワクワク
ヒストリア(え…これは…)
エレン「入ってくれ!俺の部屋だ!」
ヒストリア「う、うん…(汚い…)」
エレン「少し散らかってるけど、くつろいでいいぞ!」
ヒストリア「分かったよ…(これで"少し"?)」
ヒストリア「ねぇ、エレン」
エレン「なんだ?」
ヒストリア「掃除、しよっか?」ニコォ...
エレン「お、おう…(あれ?笑顔が怖い)」
ヒストリア「ふぅ…こんな感じかな…」
エレン「ありがとう!ヒストリア!俺の部屋じゃないみたいだぜ!」
ヒストリア「喜んでもらえたなら良かった。ちゃんと定期的に掃除しなきゃダメだよ?」
エレン「おう、分かったよ」
カルラ「エレーン?ヒストリアー?ご飯よー?」
エレン「今行くー!」
エレン「おお!うまそうだな!」
カルラ「今日はヒストリアもいるし、ちょっと贅沢して、お米を使ったわよ」
エレン「お米!?」
カルラ「そう。ちょっと高かったけどね。それと、昼に余った牛乳を使って、ジャガイモとほうれん草のドリアよ」
エレン「うまそーっ!」
グリシャ「これは美味しそうだ」
ヒストリア「…(美味しそう…)」
カルラ「どうぞ!召し上がれ!」
エレン「頂きます!」モグッ
グリシャ「頂きます」モグッ
ヒストリア「…頂きます」モグッ
エレン「!!!!!」コトハニデキナイ
グリシャ「ホワイトソースがご飯によく絡んでる。とっても美味しいよ」
カルラ「よかったわ。ヒストリアは、どう?」
ヒストリア「やっぱり美味しい…すごく美味しい!」ウルウル
カルラ「喜んでくれたみたいね」ニコッ
エレン「ごちそうさまでした!」
グリシャ「ごちそうさま」
ヒストリア「ごちそうさまでした」
カルラ「はーい。エレン、食器持ってきてー」
エレン「んー、分かったー」
ヒストリア「わ、私も手伝います!」
グリシャ「ヒストリアはいいよ。座ってくつろいでなさい」
ヒストリア「分かりました。ありがとうございます」
エレン「じゃあ、灯り消すぞ?」
ヒストリア「本当に私がベッドでいいの?」
エレン「ああ、俺は平気だ」
ヒストリア「…ありがとう」
エレン「じゃあ、消すぞ」
フッ
ロウソクの灯りが消え、部屋が暗くなる。
月明かりが眩しく見えた。
ヒストリア「エレン?寝た?」
エレン「いや、寝てない」
ヒストリア「…」スタッ
エレン「?」
ヒストリア「」ガサゴソ
エレン「え、おまっ…」
ヒストリア「…」ギュー
エレン「ど、どうしたんだよ?///」
ヒストリア「…なんでも、ない…」
エレン「そ、そうか?」
ヒストリア「…嘘」
エレン「え?」
ヒストリア「…エレンと離れたくない…」
エレン「…そっか」ナデナデ
ヒストリア「…///あったかい…///」
エレン「俺もだ」ダキッ
ヒストリア「…///」
エレン「…」
ヒストリア「…」
エレン「…」
ヒストリア「…エレン?」
エレン「…zzZ」スピー
ヒストリア「…おやすみエレン。大好きだよ///」ギュー
エレン「…」
ヒストリア「…zzZ」
エレン「…///」
4年前…
私は勝手に家を抜け出しエレンに会いに行った。
そのせいで家では、怒られることはなかったが、監禁に近い状態になった。
でも私は後悔することはなかった。
2年前…
エレンのいるシガンシナ区に超大型巨人、及び鎧の巨人が出現。
街は完全に巨人に占拠され、人類はウォールマリアも放棄した。
私はその知らせを聞き、エレンの無事を、ただひたすらに願った。
そして私はその日、"クリスタ・レンズ"になり、トロスト区に飛ばされた。
そして今…
唯一の手がかりである、シガンシナ区がなくなったこと。
さらに、巨人が入ってきたことでエレンはすでに死んでいる可能性が出てきたこと。
これらは私がエレンに会うという目的を諦めるには、十分すぎる理由だった。
そんな私はどう死ねばみんなが認めてくれるか?
そのことしか考えていなかった。
そして私は、訓練兵に志願した…
「だから知ってるって」
聞き覚えのある声…
彼の周りにはたくさんの人だかりが出来ていて、顔を確認することは出来なかった。
どうやら彼はエレンと同じシガンシナ出身らしい。
質問攻めにあっている。
「オイオイ正気か?…今お前調査兵団に行くって言ったのか?」
あの人は確か…ジャン?だっけ?
「あぁ…そうだが?お前は確か憲兵団に入って楽したいんだっけ?」
ジャン「俺は正直者なんでね…心底怯えながら、勇敢気取ってる奴より、よっぽど爽やかだと思うがな?」
あ、そろそろ終わる時間だ…
あの子にパン届けてあげようかな…
「そいつは俺のことか?」
喧嘩に興味はなかった。
私は食堂を出た。
ユミル「…」チラッ
クリスタ「ユミル?起きてよー」
ユミル「あぁん?もう朝かよ…」
翌朝、私は昨日知り合ったユミルという人とサシャの世話をしながら交代で寝た。
恩に着せるとか言ってたけど、なんだかんだこの人も"イイコト"をしている。
根は優しい人…なのかな?
サシャ「お二人とも…昨日はありがとうございました」
クリスタ「別に気にしなくていいよ」ニコッ
ユミル「あぁ。ただ、礼はしっかりとしてもらうがな」
クリスタ「もぉ、ユミル!そんなこと言っちゃダメだよ!お礼なんていらないよ?」
サシャ「いえ、礼はさせていただきたいと思います」
ユミル「ほら、クリスタ?サシャもこう言ってるぞ?」
クリスタ「でも…」
ユミル「じゃあ、サシャ。お前はこれから私とクリスタの分の掃除水汲み食事当番を全部やれ」
クリスタ「そんなに!?酷いよ!」
さっきの根は優しいという発言は撤回しようと思います。
サシャ「さ、さすがにそれは…」
ユミル「なんだよ?やれねぇのか?私達は恩人なんだぞ?」
サシャ「うぅ…」
ユミル「そんなに嫌ならやんなくてもいいぞ?」
サシャ「え?」
ユミル「ただ、教官に昨日のことを言ってやろう。私にも多少の罰はあるかもしれんが、勝手に晩飯を食べたお前と勝手に与えたクリスタはどんな罰を受けるかなぁ〜」
サシャ「くっ…や、やります」
ユミル「交渉成立だ。ありがとな、サシャ?」
クリスタ「酷い…私のは私がやるからやらなくていいよ?」
サシャ「で、でも…」チラッ
ユミル「…」
クリスタ「うーん、じゃあ一緒にやろっ?」
サシャ「は、はいっ!」
クリスタ「交渉成立だね」ニコッ
サシャ「神ぃぃぃいいい!!!」
ユミル「チッ…」
クリスタ「ほら、朝ごはんの時間だよ?行こう!」
サシャ「はいっ!」
私達3人は食堂に向かっていた。
サシャ「今日のご飯はなんでしょー?」ワクワク
ユミル「どうせパンとスープだろ。訓練兵に豪華な食事なんて出るわけねぇ」
サシャ「え!?そうなんですか!?」
クリスタ「ただでさえ、食料が足りてないんだもの。仕方ないよ…」
サシャ「訓練兵になったら色んなものが食べれると思ってたのにぃ…」
クリスタ「サシャは本当にご飯が好きなんだねぇ」クスクス
サシャ「はぁい!三度の飯より好きです!」
ユミル「飯より飯が好きってなんだよ…」
クリスタ「ふふふっ、面白なぁ…!?」
ユミル「どうしたクリスタ?」
それは驚きの光景だった。
クリスタ「え、エレン…?」
そこにはエレンがいた。
エレン「ふわぁ…ねみぃなぁ」
隣に居るのはアルミン!?
アルミン「エレンは本当に朝が弱いね」クスクス
二人とも生きてたんだ…!
私はエレンのところに向かおうとした。
その時だった。
「エレン、アルミン。おはよう」
エレン「おうミカサ、おはよう」
アルミン「おはよう」
ミカサ「一人で寝るのは寂しかった…」
エレン「何言ってんだよ?これからずっと一人で寝ることになるんだぞ?」
ミカサ、その女性はそう呼ばれていた。
背が高くて、顔立ちが整っていて、綺麗な黒髪の彼女はエレン、そしてアルミンと和気藹々と喋っていた。
私が行ったら邪魔…だよね?
それにヒストリアって名前も隠さなきゃいけないし…
ユミル「おい?クリスタ?どうしたんだよ!?」
クリスタ「…はっ!あ、ごめんね」
ユミル「あのエレン?って奴が気になんのか?」
クリスタ「ううん、なんでもないよ?」ニコッ
サシャ「二人ともー?早く行きますよー!」
クリスタ「ほら、サシャも呼んでるし、行こう?」
ユミル「あぁ…分かった」
それにしても、2人とも生きててよかった…
訓練が始まって一ヶ月が経った。
もうだいぶ生活に慣れてきた。
今でも、脱落する人は絶えない。
既に死人も出ている。
でも俺は負けねぇ…
なんとしても兵士になる…
巨人を一匹残らず駆逐してる。
コニー「エレンは?」
エレン「…は?」
コニー「オイオイ、聞いてなかったのかよ?好きな人だよ!す・き・な・ひ・と!お前はいねぇのか?」
エレン「んなもん、居ねぇよ。そんな余裕ねぇし」
ライナー「気になるやつも居ないのか?」
エレン「あぁ…特にいねぇな」
ジャン「ケッ!面白くねぇな…」
マルコ「まあまあ…」
アルミン「エレンはそういうのに疎いからね…」
エレン「気になるやつか…あ、一人いるぞ」
ジャン「な…」ビクッ
コニー「え!?誰だよ?」
エレン「クリスタってやつだ」
アルミン「クリスタ?」
ジャン「ほっ…」
ライナー「あいにくだが…クリスタは俺に気があるらしいぞ?」
エレン「別に恋愛感情はねぇよ…ただ、あいつは笑いすぎだ」
アルミン「笑いすぎ?」
エレン「あれじゃ本当の顔がわかんねぇ」
アルミン「?」
少し前から気になっていた。
彼女の顔は笑顔で溢れている。
コニー「次はアルミンの番だぞ!」
溢れかえって、本当の顔が見えない。
そんな、笑顔という仮面をかぶった少女に、俺は見覚えがある…気がする。
よく覚えていない…
アルミン「ぼ、僕?僕はーー
でも、見覚えがあるのはクリスタではなかった。
じゃあ…誰だ?
翌日、朝食の時に聞いてみた。
エレン「なぁ、ミカサ、アルミン」
アルミン「どうしたの?」
ミカサ「?」
エレン「どうも見覚えがある気がするんだよな…あのクリスタってやつ」
アルミン「クリスタ?そうかなぁ?僕は分からないや」
ミカサ「私も覚えていない」
エレン「そっか…気のせいかな?」
アルミン「…多分ね。まあエレンが会ったことあるだけで、僕らが知らない可能性もあるし…」
エレン「そうだな」
アルミン「分かったら教えるよ」
エレン「おう」
二人も知らないのか…
じゃあ俺の気のせいか…
いや、でも…
なんだ?この感じは…
アルミン「はぁはぁ…ん?やぁ、クリスタ、ユミル」
ユミル「休日に自主トレかよ、バカなんじゃねぇの?」
クリスタ「そんな言い方しなくていいじゃない!」
アルミン「ははは…エレンと一緒にやってたんだ。もう付いて行けなくなっちゃったけどね…ははっ…」
クリスタ「でも、すごいよ!アルミンは運動、得意じゃないんでしょ?それを頑張ろうとしてるのはすごくかっこいいよ!」ニコッ
エレン『あいつは笑いすぎだ』
アルミン「…ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」
そう言えばエレンがそんなこと言ってたけど…
クリスタ「頑張ってね、アルミン!」ニコニコッ
確かによく笑ってる…
僕には分からないけど、不自然なのか?
だとしたら何故?
元は笑う子じゃなかったから?
笑わない…
金髪碧目…
小柄…
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
エレン『俺たちが知ってることなんて、この世の中の本当にごく一部なんだろうな…』
アルミン『でも、知らないことがたくさんあるから、ワクワクするし、探検のしがいがあるってものだよ!』
エレン『ああ、そうだな!そして、いつか必ず、外の世界に出るんだ!』
アルミン『うん!2人で探検しよう!』
エレン『おう!2人で…あ、3人にしてもいいか?』
アルミン『え?どうしてだい?』
エレン『最近、一人友達ができたんだ』
アルミン『え、本当に!?凄いじゃないか!どんは人なの?』
エレン『えーっと、ちっちゃくて、アルミンと同じ金髪碧目で、笑顔が少ない女の子だよ』
アルミン『笑顔が少ない?』
エレン『ああ、全然笑わねぇんだ。笑ったらすげぇ可愛いのに…』
エレン『それに、俺はあいつが悲しい顔をしてるのを見るのが嫌なんだ。ずっと笑ってて欲しいんだ…』
ー
ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー
アルミン「!!!」
クリスタ「ど、どうしたの?アルミン?」
分かったぞ…!
クリスタ「アルミン?ねぇ、どうしたの?」
そうか…そうだったんだ!
ユミル「おいキノコ野郎、私のクリスタが話しかけてんだぞ?無視するなんていい度胸じゃねぇか」
アルミン「…はっ!あ、ごめん!ちょっとクリスタ?一緒に来てくれるかな?」
クリスタ「えっ?」
ユミル「てめぇ!クリスタに変なことしようとしてんじゃねぇだろうな?」
アルミン「ち、違うよ!ただ、一つ聞きたいことがあるんだ…」
ユミル「はぁ?」
クリスタ「大丈夫、ユミル。アルミンはそんな人じゃない」
ユミル「なんで分かんだよ?」
クリスタ「とにかく、ちょっと待ってて」
ユミル「チッ…あぁ、分かったよ」
クリスタ「で、どうしたの?アルミン?」
アルミン「君は…ヒストリア・レイスって人を知ってる?」
クリスタ「!!」
アルミン「知ってるみたいだね。それを踏まえて聞くよ。君はヒストリアか?」
クリスタ「…」
アルミン「…」
クリスタ「…質問は一つなんじゃなかったけ?」
アルミン「…酷いなぁ」
ヒストリア「ごめん。ちょっといじわるしただけ」
アルミン「やっぱり、君がヒストリアなんだね?」
ヒストリア「うん、バレちゃったね」
アルミン「ちょっとした賭けだったけどね」
ヒストリア「そっか…エレンは知ってるの?」
アルミン「いや、薄々は感づいてるみたいだけど…まだちゃんとは分かってないみたい」
ヒストリア「そーなんだ」
アルミン「クリスタは笑いすぎだって言ってたよ。本当の顔がわかんねぇって…」
ヒストリア「本当の顔…かぁ…」
アルミン「僕が気づいたのも、エレンがそう言ってたからなんだ。やっぱりエレンには敵わないよ」
ヒストリア「…私ね、もう、みんなに嫌われたくないの」
アルミン「…?」
ヒストリア「エレンにも会えなくなって、私を認めてくれる人は、また居なくなった」
ヒストリア「人間ってさ、1度甘い蜜を吸うとそれがないと生きていけなくなるのね…」
ヒストリア「私は誰も私を必要としてくれないことに耐えられなくなったの」
ヒストリア「どうすればみんなに嫌われないか?どうすれば私を必要としてくれるか?」
ヒストリア「必死に考えた。私なりに答えを出したの…」
ヒストリア「できるだけ、人の為になって死のうって…」
ヒストリア「だから私は笑顔を無理やり作って、このクリスタ・レンズって言う天使を作り出したの…」
ヒストリア「笑顔の練習だってたくさんした…でもエレンには分かっちゃうんだね」
アルミン「…君は間違ってないと思う」
ヒストリア「?」
アルミン「嫌われたくないってのも分かるし、みんなの為に死のうって考えるのも分かる」
アルミン「でもそれで…エレンは喜ぶの?」
ヒストリア「!?」
アルミン「もし、エレンが死んでてこの世にいないとして…そんな死に方して、天国のエレンは喜ぶのかな?」
アルミン「きっとエレンなら、こう言うと思うよ。『ふざけんな』って…」
ヒストリア「…」
アルミン「昔、エレンは言ってた。悲しい顔をしないでほしいって…ずっと笑っててほしいって…」
アルミン「でも、今の君は作り物の笑顔で悲しい顔を埋めてるだけだ。そんなのエレンが好きな君の顔じゃない!」
ヒストリア「!」
ヒストリア「私は…間違ってた…」
アルミン「最初にも言ったけど、君は間違ってないよ」
ヒストリア「え…?でも…」
アルミン「矛盾してるように聞こえるかもしれないけど、別にエレンがどう思おうと関係ないよ。君の人生は君のためにあるんだから」
ヒストリア「…」
アルミン「君には選ぶ権利がある。みんなに嫌われてもエレンを喜ばせる為に素の君を見せるか、エレンに嫌われてもみんなを喜ばせる為にクリスタを見せるか…」
アルミン「よく考えて選ぶんだ」
ヒストリア「…」
私の答えは…もう決まってる…
それは4年前から決まってた。
ヒストリア「私はみんなに嫌われてもいい!エレンを喜ばせたい!」
アルミン「そっか。ところでその偽名はどうしたの?」
ヒストリア「そ、それは…」
アルミン「言いたくないなら言わなくてもいいけど…」
ヒストリア「いや、アルミンには言うよ。いずれバレそうだし…」
アルミン「あはは…」
ヒストリア「えっとね…これはーーってことなんだ」カクカクシカジカ
アルミン「そ、そんなことが…じゃあ今もヒストリアって名前は隠さなきゃなんだね?」
ヒストリア「うん」
アルミン「分かった。これからはクリスタって呼ぶよ。改めてよろしくね、クリスタ」
クリスタ「よろしく、アルミン」ニコッ
アルミン(普通に可愛い笑顔だ///)
アルミン「エレンにはどうするの?」
クリスタ「私は気づいてもらいたい…かな」
アルミン「分かった。僕からは何も言わないでおくよ」
クリスタ「ありがとう」ニコッ
アルミン(可愛い///でもこの笑顔はエレンにとってどんな笑顔なんだろう?僕には分からないや)
ユミル「おい!遅いぞクリスタ!」
クリスタ「ごめんね、ユミル」
ユミル「変なことされてないだろうな?」
クリスタ「大丈夫だよ。じゃあねアルミン!」
アルミン「バイバイ、ヒs…くっ、クリスタ!」
クリスタ「…(アルミン大丈夫かな?)」
ユミル「"ひっ、くっ"ってなんだよ」ケラケラ
最近一つわかったことがある。
ミカサはエレンと深い関係らしい。
理由はよく分かってないけど、エレンは家族と言っているのを耳にした。
この歳で結婚はないだろうから、夫婦ではないだろう…
でも、もしかして恋人?
アルミンに聞いてみようかな…
クリスタ「ねぇ、アルミン?ちょっといい?」
アルミン「え?あぁ…どうしたんだい?」
クリスタ「ミカサってさエレンのこと好きなの?」
アルミン「うーん、それに関してはよく分からないってのが正直なところかな」
クリスタ「よく分からない?」
アルミン「家族だと思って大切にしていることは確かなんだ。でもそれが恋愛に結びつくのか…それは分からないんだ」
クリスタ「家族…というのはどういうこと?血が繋がってる訳ではないんでしょ?」
アルミン「それはね、3年前にーーということなんだ」カクカクシカジカ
クリスタ「そ、そんなひどい事が…でも、それでエレンを好きになるってのも考えられるね…」
アルミン「まあ、そうだね」
クリスタ「逆にさ…エレンはミカサが好きなの?」
アルミン「あー、この前男子寮での雑談で好きな人は居ないって言ってたよ」
クリスタ「本当に!?」
アルミン「うん。あと、恋愛的にではないけどクリスタが気になるって言ってた。その時に笑いすぎだって言ってたんだ」
クリスタ「そっか…」
アルミン「そういえば、ついこの間ーー
アルミン『どうしたの、エレン?』
エレン『え?』
アルミン『なんだか考え事してたみたいだから…』
エレン『あぁ…』
アルミン『悩み事があるなら聞くよ?力になれるかは分からないけど』
エレン『ありがとな。でも悩みじゃないんだ。前にクリスタは笑いすぎだって言ったろ?』
アルミン『うん』
エレン『まだ、笑いすぎなんだけど、少し自然になったかなって思うんだ』
エレン『それに、あの笑顔を見てると…楽しくなって来るんだ…』
アルミン『そっか』
エレン『しかもな、なんだか懐かしい感じがするんだ。やっぱり俺、どこかで会ったことあるんじゃねぇかな…』
アルミン『うーん、その件は僕からは何も言えないかな』
エレン『え?』
アルミン『エレンが、自分で気づくべきだから』
エレン『そ、そうなのか?』
アルミン『うん。いっぱいいっぱい悩んで答えを出すんだ。きっとエレンなら正解を出せるよ』
エレン『よく分かんねぇけど、分かった。考えてみるよ』
アルミン『ああ。頑張って!』
アルミン「ーーこんな会話をしたよ」
クリスタ「エレン、少し変わったこと気づいてくれてるんだね」
アルミン「うん。記憶の片隅に君がいることは確かだと思う。あとはそれをエレンが引き出せるかどうかだね」
クリスタ「そうだね…アルミン、手助けしすぎちゃダメだよ?私はエレンに自分で引き出して欲しいから…」
アルミン「分かってるよ、クリスタ」
クリスタ「ありがとう!アルミン!」ニコッ
アルミン「う、うん///」
クリスタ「ふんふふーん♪」
やっぱり落ち着くこの時間。
私は馬の手入れをしていた。
クリスタ「どぉー?気持ちいいー?」
私は馬と喋りながら、餌を変え、ブラッシングをしていた。
その時だった…
ざっ…ざっ…
クリスタ「!?」
足音が聞こえた。
…教官?
「おい、誰かいるのか?」
エレン「ふぅ…疲れた…」
今日の水汲み当番は、確かコニーだったはず。
だが俺は、トランプゲームで負けて、水汲み当番を変わることになった。
エレン「ったく、なんで俺が…」
乗り気じゃないのに始めたトランプ。
しかも負け。
ついてねぇなぁ…
エレン「はぁ…」
そんなため息を漏らしながら作業をしていた。
エレン「よいしょっと…重いぜ…ん?」
俺は光のついた建物を見つけた。
あれは…馬小屋?
何やってんだ?
ざっ…ざっ…
ゆっくりと扉に近づいていき、ドアを開ける。
エレン「おい、誰かいるのか?」
クリスタ「ほっ…エレンか…」
エレン「俺じゃ悪かったか?」
クリスタ「ううん!そういうことじゃなくて…教官だったらと思うとね…」
エレン「そういうことか…つーかお前、何やってんだ?」
クリスタ「馬の手入れだよ。馬術が上手くなるおまじない…かな?」ハハッ
エレン「え!?手入れすると馬術上手くなるのか!?」
クリスタ「まあ、懐いてくれるだろうし、やりやすくはなるんじゃないかな」
エレン「そっか」
クリスタ「それにね、私、馬の手入れをしてると心が落ち着くの…嫌なことを忘れられるんだ…」
エレン「…」
クリスタ「あ、ごめんね?変な話しちゃって…」
エレン「いや、大丈夫…」
クリスタ「なら良かった。エレンも馬の手入れ、やっていく?」
エレン「あぁ、そうさせてもらおうかな」
クリスタ「じゃあこのブラシ持って、こうやってブラッシングしてあげて?」
エレン「おう、分かった」
クリスタ「ね、ねぇ、エレン?」
エレン「なんだ?」
クリスタ「エレンってさ…ミカサのこと好き?」
エレン「は?好きだけど?いきなりどうしたんだ?」
クリスタ「いや、なんとなくだよ。何か話題が欲しかったから」
エレン「ふーん」
クリスタ「…それで、それは異性として好きなの?」
エレン「異性としてか…考えたことねぇかな…」
クリスタ「へぇー」
エレン「人をそういう意味で好きになるってよく分かんねぇんだ」
クリスタ「そっか」
エレン「でも…一回だけ。あれは多分恋だったんだろうなぁ…」
クリスタ「え?」
エレン「いや、俺がまだシガンシナにいた時の話だ。あれは多分恋だったんだ思う」
クリスタ「そ、そっか///」
エレン「そいつはさ、笑うと凄い可愛いんだぜ?それなのによ…」
クリスタ「も、もうその話はいいでしょ?///馬の世話も終わったし、私は帰るね!///」
エレン「え?あ、おう」
クリスタ「バイバイ!」
エレン「じゃあなー」
クリスタ「…」タッタッタッ
あ、あれは絶対私のことだよね!!??
私のこと、覚えてくれてるんだ…
クリスタ「…よかったぁ///」
私…待ってるから…
あなたが私を…ヒストリアを見つけ出してくれるのを…
エレン「…」
久々に思い出したな、ヒストリアのこと…
あいつ…元気にしてんのかな…
あれ?なんで出てくる顔はクリスタなんだ?
ん?そういえば、ヒストリアとクリスタ…すっげぇ似てるな…
もしかして…
いやいや、さすがにそれは無いよな…?
ヒストリアはあんなに笑顔ふりまくってるやつじゃなかった。
でも、もしあの笑顔の仮面をとったら…
エレン「あー!訳分かんねぇ!」
ジャン「うるせぇんだよ!さっさと寝ろ!この死に急ぎ野郎が!」
クリスタ「ねぇミカサ」
対人格闘訓練。
ミカサ「どうしたの?」
それは唯一…
クリスタ「一緒に組まない?」
ペアを組めて、少し話すことが出来る訓練。
ミカサ「別に構わないけど」
クリスタ「じゃあお願いね?」
ミカサ「分かった」
クリスタ「先に私がならず者やるね」
ミカサ「ええ」
クリスタ「やっ!」ダッ
ミカサ「…(全然なってない)」バシッドガッ
クリスタ「ぐはっ…」
ミカサ「ご、ごめんなさい。少しやりすぎたかもしれない…」オロオロ
クリスタ「だ、大丈夫だよ…」
ミカサ「なら、いいけど」
クリスタ「ミカサ、本当に強いね」
ミカサ「まだ、足りない。これではエレンを守れない」
クリスタ「…ミカサってさ」
ミカサ「?」
クリスタ「エレンが好きなの?」
ミカサ「!?///す、好きというか…エレンはわ、わた、私の家族///」
クリスタ(可愛い)
クリスタ「じゃあ、もしエレンが誰かと付き合うことになったら…どう?」
ミカサ「…そ、それは…家族として祝福すべきだと思う」
クリスタ「!」
ミカサ「でも、そうなった時、私は冷静でいられないかもしれない…」
クリスタ「…」
ミカサ「…ので、私は私が認めた者でなければ、削いでしまうだろう」
クリスタ「…そ、そっか…じゃあどんな人なら認めるの?」
ミカサ「…私よりも強い人」
クリスタ「」
ミカサ「…クリスタ?」
クリスタ「…これからも対人格闘組んでくれる?」
ミカサ「構わない」
クリスタ「よろしくね、ミカサ!私強くなる!」
ミカサ「そう…それはいいこと。頑張って」
クリスタ「うん!」
エレン「お前はもっと踏み込んできた方がいいな。ビビってちゃ何もできない」
アルミン「でもなぁ…結構怖いんだよ?」
エレン「そりゃ俺だって怖いぜ?アニとか強えし…でも強くなれるなら俺は構わないな」
アルミン「やっぱエレンは強いな…」
エレン「そうか?俺はただ、自分の夢に忠実なだけさ」
アルミン「そっか」
エレン「お前だって、強いぞ?」
アルミン「え?ど、どこが?お世辞はいらないよ…?」
エレン「自覚ねぇだけだ。お前も強い」
アルミン「そ、そうなの…?」
エレン「この訓練兵生活を送れてるのが何よりも証拠だ」
アルミン「うん、ありがとう」
エレン「よし、飯行くぞ!」
アルミン「あ、ちょっと用があるんだ!先に食べてていいよ」
エレン「用ってなんだ?」
アルミン「ちょっと図書館にね」
エレン「ん、分かった」
アルミン「じゃあね!」
エレン「おう」
アルミン「お待たせ…ヒストリア」
今日の朝、格闘訓練が終わったら図書館に来て欲しいと言われた。
クリスタ「ダメだよその名前は…誰かに聞かれたらどうするの?」
何故かは分からないけど、今日の格闘訓練で色々分かると思うからって言われた。
アルミン「そうだね…ごめん。ところで話ってなんだい?」
クリスタ「今日ミカサと組んだの」
アルミン「あー、そうだったね」
クリスタ「それでね、私色々聞いてみたんだけどーーって感じだったんだよ」ペラペラ
クリスタは今日あったことを細かく話してくれた。
アルミン「ミカサが照れるなんて珍しいね」
クリスタ「すっごく可愛かったよ?」
アルミン「ふふっ、そっか。それと強い人じゃないと削ぐ…か。ミカサらしい…のかな?」
クリスタ「さ、さぁ?それはアルミンのほうが分かるでしょ」
アルミン「あはは…」
クリスタ「まあ、これが今日私が知り得た情報だよ。アルミンには相談に乗ってもらってるから一応報告しとこうと思って」
アルミン「うん。ありがとう」
クリスタ「じゃあ、もうご飯だから戻ろう?」
アルミン「うん」
ミカサ「エレン、ここ」
食堂はすでに賑わっていた。
エレン「おう、ありがとな」
ミカサ「アルミンは…?」
エレン「図書館に行ってから来るって、先食べててって言ってたけど…」
ミカサ「待とう」
エレン「だよな」
俺たちはいつでも三人で一緒に食べる。
暗黙の了解だった。
エレン「そういやミカサ…」
ミカサ「?」
エレン「今日、珍しくクリスタと組んでたな?」
ミカサ「え、み、見てたの?///」
そういや最近、やけにクリスタに目がいっちまう…
エレン「あぁ見てた。気になったからな(クリスタが)」
ヒストリアと似てるからかな…
あいつが何をしてんのか。
あいつがどんな表情なのか。
なんとなく気になる。
なんか気持ち悪いな、俺…
ミカサ「そ、そんな…恥ずかしい///(気になったって…グヘヘ///)」
エレン「なんで恥ずかしいんだよ」
ミカサ「…エレンには分からない」
エレン「はぁ…?まあ、いいや。そんで、今日は、なんでクリスタと組んだんだ?」
ミカサ「誘われたから。強くなりたい…というような事も言ってたと思う」
エレン「ふーん」
ミカサ「どうしたの?」
エレン「いや、別に?」
強くなりたい…か。
そんなの別にミカサじゃなくても…
ミカサ「…心配しなくても」
確かにこいつは強いけど…
格闘技の成績だけなら俺だってそんなに負けてない…はず…
ミカサ「あなたが望むのなら…」
てかなんで俺はこんなこと…
なんかすげぇモヤモヤする…
ミカサ「私はいつでもあなたとペアをくm…「ごめん!二人とも!」
エレン「お、アルミン!」
アルミン「待ってなくても良かったのに…」
エレン「お前を置いて食えるかっ!早く食うぞ!腹減ってんだ」
アルミン「ありがとう、エレン!ミカサ!」
エレン「おう」
ミカサ「…」
アルミン「あれ、ミカサ?なんか元気ないよ?」
ミカサ「…なんでもない」
アルミン「そっか…?」
エレン「それよりお前、何やってたんだ?」
アルミン「調べ物さ」
俺は知ってる。
詳しいことを言ってくれないとき…
エレン「…そうか」
大抵アルミンは嘘をついている。
まあ、悪い嘘をつくことは少ないんだけどな。
アルミンの嘘は誰かのための嘘がほとんどだから…
でも行ったい誰のためなんだ…?
俺に言えないことか…
ちょっと寂しいな…
アルミン「エレン?どうしたの?」
エレン「あ、あぁ…悪い、ぼーっとしちまった」
アルミン「そっか…ほら、早く食べよう!」
エレン「おう!」
私はまた馬の手入れをしていた。
クリスタ「…」
最近揺れている…
気付いてほしいという私と…
さっさと自分から言いたい私がいる。
エレンは多分ヒストリアを覚えている…はず。
それはアルミンからの情報を基にした予想…
もし…覚えてなかったら?
気付かれないままの方がマシ…なのかな?
でもやっぱり…
エレンから気付いてもらいたいかな…
ところで気付いてもらえたとして、私は何を望んでるの?
友達になること?
それとも恋人になること?
やっぱり恋人…かな?///
でも、エレンが私と付き合ってくれたとしたら、エレンに迷惑がかかるんじゃないかな…
だったらいっそのこと気付かれないままで…
「またこんな時間までやってるのか」
クリスタ「ふぇっ!?えっ、エレン!?」
エレン「何をそんなに驚いてんだよ」
クリスタ「いや、と、突然だったから…」
エレン「そっか」
クリスタ「エレン、どうしてここに?」
エレン「いや、今日の水汲み当番俺だったから…」
クリスタ「そっか…」
言うか…?
言わないか…?
二人きりになる数少ないチャンス…
無駄にしたくない…
でも気付いてほしい…
エレン「クリスタ?」
クリスタ「え?あっ、いや別に…なんでも…」
そっか…
エレンは私をクリスタだと思ってるから気付かないんだ…
だったら私がクリスタじゃなくなれば…
ヒストリアに戻れば…
クリスタ「…ないです」
私はクリスタの仮面を無理矢理剥がした。
エレン「な、なんでいきなり敬語なんだよ?タメに戻せよ…」
クリスタ「…う、うん」
エレン「てか、なんでそんなうつむいてんだ?俺、変なこと言ったか?」
クリスタ「…言ってない」
エレン「下向くなよ…なんか嫌なんだよ。お前が悲しい顔してるの…見たくないんだ」
クリスタ「えっ!?///」
エレン「お前の笑顔見てると、たまに嬉しくなるし…ははっ、何言ってんだろうな、俺は…」
嬉しかった。
ただ、純粋に嬉しかった…
でもここは、気付いてもらうために…
クリスタ「…嘘だ」
エレン「は?何がだよ?」
クリスタ「私に味方なんていない…だって私は、いらない人間なんだから…」
エレン「え…?」
クリスタ「私なんて、生まれて来なきゃよかったのに…」
エレン「…」
エレン…
クリスタ「…」
気付いて…!!
パチンッ!!!
クリスタ「いっ…」ヒリヒリ
いつかのように私はビンタされた。
エレン「…ごめん。それと、俺がこれから言うことの意味が分からなければ、聞き流してくれ」
クリスタ「?」
エレン「…俺、言ったよな?もう絶対自分が生きていることを否定するなって…」
クリスタ「!」
エレン「お前に笑っていてほしい…」
そうだ…
エレン「もう…お前に悲しい顔はしないでほしい…」
この言葉…
エレン「だから…な?」
エレンの言葉だ!
クリスタ「エレン…エレン!」ギュッ
エレン「おっ…と、久しぶりだな。ヒストリア」ダキッ
エレンが私をまた叱ってくれた…
クリスタ「…寂しかった」
エレン「ごめん…」
エレンが私の名前を呼んでくれた…
クリスタ「…早く気づいて欲しかった」
エレン「悪かったな…」
エレンが私を抱きしめてくれた…
クリスタ「ずっと…待ってたんだよ?///」ウルウルニコッ
エレン「!」
私は心の中で叫んだ。
エレン「お前…笑えるようになったんだな!」ニカッ
エレン!大好きだよ!!!
ー完ー
これにて終了です。
読んでくださった方々、ありがとうございました!
最初にも言いましだが…
応援、批判、感想、意見、要望、その他諸々…コメント待ってます(=゚ω゚)ノ
このSSまとめへのコメント
こういう感じのすごい好きです!
エレクリもっと書いてください!
ひひひひひひヒヤヤヤヤヤヤヤヤヤやややややや
読んでいくにつれて感動できた。続編希望だ!!
このssはかなり感動したよ
この作品の続編らしい。
クリスタ『・・・あったかい///』