超能力バトル物が書きたかった(192)
男「うっ・・・?」
気付けば知らない部屋にいた
はて、ここはどこだ
ざっと見回してみるとこの部屋の窓と出入り口以外には何も物がない
男「?」ガサゴソ
ポケットの中に何やら紙切れが入っていた
この部屋に連れ込んだ人が入れたのだろうか
男「……」
何か書かれているかもしれない
この紙切れに目を通してみるとしよう
『1.あなたたちには超能力を使い、殺し合いをしてもらいます』
男「はっ?」
なにやら穏便でない言葉が書かれているんだが
……まずは読み続けよう
『2.この殺し合いの参加者は16人、生き残ることが出来るのは2人までです』
『3.期限は一週間です。この期限を過ぎると16人全員が死ぬことになります』
『4.舞台はゴーストタウンとなったこの街一帯です。ここには参加者である16人以外は誰もいません』
『5.食料、飲料はコンビニや空き家の冷蔵庫などから各自で補給してください』
『6.残り時間、残り人数は街の広告テレビ等で確認してください』
『7.この殺し合いはあなたが目覚めたその時点からもう始まっています』
……一枚目はこれで終わりのようだ
二枚目に目を通してみよう
『あなたが使えるようになった超能力は
触った対象の温度を自在に変える能力
「温度変化」です』
……試しに窓ガラスを触り、念じてみた
するとどうだろう、窓ガラスはあっという間に結露し、付いた水滴も凍ってしまった
男「…夢じゃない…のか?」
ちなみに、触れていることで、冷たいと感じることはない
どうやら能力を使うことで俺の手が凍傷したり、火傷したりすることはないらしい
……とりあえず、この部屋から出よう
殺し合いはともかく、情報収集しなければ
男「……」
廊下みたいな場所に出た
この建物は学校…なのか?
でもさっきまでいた部屋には黒板が無かったしなぁ
しばらく散策しているうちに教室等も見つけ、ここが学校だという結論に至った
そして靴棚が並んでいるところに出た、ここは玄関のようだ
扉を開けて外に出た瞬間、
青年「!」
男「!」
出くわした
お互いに構える
『4.舞台はゴーストタウンとなったこの街一帯です。ここには参加者である16人以外は誰もいません』
あの紙切れに書かれていたことが本当ならこいつも能力者だ
青年「…」バチバチ
あいつの腕に電気が這う
どうやら電気を操る能力者らしい
馬鹿な奴め、自分の能力を相手に教えてどうするのだ
さて、ここは学校なのでうってつけの場所がある
さっき散策した時に見つけたのでまずはそこに奴を誘導することにしよう
俺は踵を返し、目的の場所に向かって走り出した
青年「(逃げた?、いや、誘っているのか?)」
青年「(……どっちにしろ、命がかかってるんだ、追わなきゃいけないか)」
青年「(出会いがしらで攻撃してこなかったのを見ると、どうやら遠くから攻撃できる能力ではないらしいな)」
青年「(……まずは追いかけるか)」ダッ
俺が向かっていた場所、それはプールである
さっきここに来たとき、俺はある仕掛けを施しておいた
青年「…っ!」
プールの周りを水で濡らし、凍らせた
時間が経ったので表面は溶けているだろう
水に濡れた氷はとても滑りやすいのだ
俺はさっき学校の散策中に見つけたスパイクシューズを履いているので氷の上でも滑らない
だがあいつはどうだ、履いているのは普通のスニーカーだ、滑り止め対策などないに等しい
俺はあいつが床に気を取られているうちに殴り掛かった
男「おらぁ!」ブン
青年「!」
奴は咄嗟にガードをしたが、踏ん張りが効かなかったらしく、プールに落ちた
そう、これこそが俺の必勝法だ
青年「ぶはっ!」ザバン
奴がプールに電気を流さないうちに、俺はプールに手を突っ込んだ
男「凍れっ!!」
ガキン
青年「…っ!!」
俺は能力を使い、プール全体を凍り付かせた
プールの中にいた青年はもちろん身動きが取れない
プールの中に突っ込んだ手の周りだけを能力で溶かし、俺は奴の元に近づいた
俺の勝ちだ、その頭を鷲掴みにして、脳を沸騰させてやる
そう思って奴の頭を掴んだ時だった
ボガンッ!!
男「……あ?」
爆発した
頭を掴んだ俺の腕が、爆発した
男「…あ、があああああああ!?」
激痛が走る、俺は思わず身悶えた
何故だ、なぜ爆発した
奴の能力は電気を操る能力のはずでは…
能力?
あいつは電気を操る能力でない?
まさか俺は、奴の能力を勘違いしていたのか?
ドォンッ
後ろで爆発音が響く
振り返ると、爆発で氷を吹っ飛ばしたらしいあいつが立っていた
青年「……終わりだ」
奴は俺の頭を掴んだ
それが俺の見た最後の光景だった
ボンッ!!
男 died.
残り、15人―
プロローグ、完
……
あいつの能力は物を凍らせる能力?
いや、あいつの手から湯気が立っていたから温度を操る能力か?
まあ……あいつは死んだ、今更考えても仕方ない
青年「そう、俺が…殺した」
…生き残るには殺さないといけない
分かってはいるが…割り切れない
……まずはここを出よう
俺は頭が吹っ飛んだ死体の方を見ないようにプールを、学校を後にした
『あなたが使えるようになった超能力は
自身のオーラを爆発させる能力
「炸裂」です』
腕に力を込めると青い電気のような閃光のような、まあそんな感じのオーラが走る
ボンッ
どうやらそのオーラを任意で爆発させることができるようだ
爆発による風圧は感じるが、爆発自体によるダメージは自身に来ないらしい
しかもそのオーラは腕だけでなく、体全体に纏えるらしい
……奴は腕から能力を操っていた
俺の能力も手から出ると勘違いしたのだろうか
女子高生「!」
青年「!」
しばらく歩いているとまた出会っちまった
休憩する暇もないのかよ、畜生
女子高生「っ、おおおあああ!」
うわぁ、向かってきた
どうやら戦うしかないようだ
女子高生「っ!」ブォン
彼女の右腕から光の棒、いや剣?、とりあえず細長いのが出てきた
あれが彼女の能力か
青年「っ」サッ
彼女が振りかざしてくるが、動きがわかりやすいのでかわすのは容易だ
だがどうする、攻撃のリーチでは負けている
どうにかして懐に潜り込まねば
袈裟切りに振りかざした光の剣を今度は横に薙いでくる
青年「!」
俺はしゃがんでかわすと同時に前へ踏み込み、腕に纏ったオーラを爆発させた
女子高生「っう!?」ドサ
く、届いてないか!
爆発が起きたのは彼女の目の前のようだ
だがこの爆発で彼女は怯み、尻餅をついたようだ
畳み掛けるなら今だ!
女子高生「く!」バッ
青年「ぬぁ!?」
こいつ、砂かけてきやがった!
体制を崩し、地面に手が付く
目に入るのは免れたが、ひるんでしまった
仕方ないので、後ろに下がって体制を立て直す
青年「くっ…」
女子高生「……」
彼女の方も立ち上がり、剣を構える
彼女が再び向かってくるために足を一歩踏み出した時だった
ドォンッ!!
女子高生「ぅあっ!?」
彼女の足元が爆発した
さっき俺が手を付いた部分だ
自身のオーラを切り離し、地面に付けることで
ちょっとした地雷にしたのだ
いろいろと能力を試しているうちに見つけた応用の一つだ
実戦では上手くいくかどうか不安だったが、なんとかなるものらしい
女子高生「ぐぅ…っ」
彼女が左足を押さえている
どうやらさっきの爆発で痛めたらしい
青年「……」
なんにせよ、止めを刺さねばなるまい、やらなければ俺が死ぬんだ
俺は彼女に近づいた
女子高生「うぅ…」
青年「!…」
……応戦に精一杯で気付かなかったけど、
この子、結構かわいい
女子高生「っっ!」
ブォン!!
青年「なっ!」
彼女がこちらに向けた剣が俺めがけて伸びてきた!
ボン!!
爆発の推進力で俺は咄嗟に突きを避ける
風圧は感じることを利用した移動・回避方法だ
これ、瞬間加速はすごいんだが、一瞬息が詰まるんだよな
にしてもあの剣、刀身の長さを変えられるのか
青年「いてっ」ガン
スピードの勢いが良すぎて、壁にぶつかってしまった
そういえば屋内で戦ってたんだよな
グラグラグラ
建付けが悪いボロ屋で…
青年「うわわっ」
女子高生「え?」
ガラガラガラガラッ!!
いけない、天井が落ちてきた!
俺は壁を爆発させ、急いで外に出た
青年「危ねぇー…」
…間一髪だったな
これでは止めを刺すどころではないな…
彼女はどうなったのだろうか?
崩れたのが俺の上の天井だったから大丈夫だとは思うが…
瓦礫が積み重なり、埃が舞っているために向こうの様子が伺えない
俺は外の目立つ場所にある広告テレビの方を見やった
『残り、15人―』
どうやら生きてはいるらしい
青年「ふぅ…」
仕方ない、他の場所へ移動するか
正直、埃が舞うこの中に入りたくない
…そういう意味では悪いことしたかな…
第一話『蒼閃光と光の剣』、完
新卒「何でこんなことになってんだよ…」
自慢じゃないが、俺はエリートの中のエリートだ
一流の大学では、首席…かはまだわからないが最上位の席次で卒業予定だし、
不景気と呼ばれるこの世の中で、世界を股に掛ける大企業への就職が決まった
なのにさぁ、
なんなんだよ、殺し合いってさ…
広告テレビを見る
『残り、15人―』
…確か、参加者って16人だったよな?
もう一人死んでるのかよ…
新卒「はぁ…」
自慢じゃないが、腕っ節には自信がない
通信簿でs判定が並ぶ中、体育のみはs判定を取ったことがない
青年「!」
新卒「うっ…」
出会っちまった
やだよ、戦うなんてさぁ…
青年「…」ザッ
しかもあっちは構えてる、戦う気満々だ
新卒「う、うわああああ!」
俺は不甲斐なく逃げ出した
青年「!」ダッ
後ろの方で足音がする
やばいよ、追いかけてきてるよぉ
さっきも言ったが、俺は運動が得意ではない
つまり、足が速いわけでもない
ボォンッ
後ろの方で爆発音が聞こえた
気にはなるが、振り返ってはいけない、振り返ったら走る速度が落ちる
だけど、何故だ
青年「っ」
新卒「え」
あいつ、俺を追い越してる
青年「ふっ」ブォン
新卒「ぶっは!?」
あいつが回し蹴りを放つ
追い越されたことに気を取られた俺はもろに顔面に食らった
新卒「がふぁ」ドサ
走っていたことで体に慣性がかかっていたため、
あいつの脚を軸に体が回る
結果、俺は地面に背中を打った
新卒「く、ぐぅ」
蹴られた顔が痛い、打った背中が痛い
青年「…」バチバチ
やばい、あいつが目の前だ
俺、殺されるのか
……あれ
意識が、遠のいていく……
―――――――――――――――――
少女「はぁ…」
ねぇ、殺し合いって何?、どういうこと?
なんで私、こんなことに巻き込まれてるの?
少女「…」
私にはお兄ちゃんがいたんだけど、数年前、事故で亡くなった
その日、私は命が重いものだってことを理解したんだ
だから、殺し合いなんて認めちゃいけない
命は簡単に奪い合っていい物じゃない!
少女「あ…!」
新卒「く、ぐぅ」
青年「…」バチバチ
私は殺し合いの場面に出くわしてしまった
一人が仰向けに倒れていて、一人が見下ろしている
お兄ちゃんが死んだとき、私は何もできなかったことを悔やんでいたけれど、
今なら、止める力がある!
少女「待ちなさい!!」
青年「!」
見下ろしてた男の人がこっちを見る
少女「殺し合いなんて、やっていいものじゃない!」
少女「私は、人の命を奪うことを許さない!」
私は右手を構え、力を込める
少女「やああああ!」ドォン
私は右手に渦巻いた炎を彼めがけて発射した
『あなたが使えるようになった超能力は
炎を自在に生み出し、放出する能力
「操炎」です』
炎を生み出し、発射する
それが、私の能力
出した炎は全身に纏うことができるし、
それで私自身が火傷することもない
また、私の能力で出したものではない炎も、私の炎を合わせることで操ることができる
青年「!」
彼は打ち出した炎の球を簡単にかわし、倒れていた人から距離を取った
私は二人を遮るように位置取る
青年「ちっ…」
少女「た、立ち去ってください」
睨み合いが続く
唐突に彼が私から目を逸らした
何やら驚いたような表情をしている
どうやら私の後ろを見ているような…
後ろ?
ズドンッ!!
少女「………え」
お腹に熱い感覚が走る
私はそこに目を向けると、
私のお腹から手が突き抜けていた
―――――――――――――――――
少女「…あ」
少女「ああああああああああああああああ!」
ズシャッ
少女が叫んだ直後、彼女の頭が引き裂かれた
青年「なっ…」
なんだ、こいつは
さっきまでの奴じゃない、別人のようだ
新卒「…ぐ」
全身の毛が逆立ち、皮膚は硬化し、鋭利な爪が伸び、なにより
新卒「…」ギロリ
獲物を捕らえるようなその眼光
まるで、ケモノじゃないか…
少女「」ドシャ
息絶えた彼女を無造作に投げ捨てる
奴の両腕は彼女の血が滴っている
新卒「グオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!!」
あいつは、危険だ!
気付くと俺は逃げ出していた
足元を能力で爆発させ、最大限加速して、
俺はその場から全力で離れていた
―――――――――――――――――
新卒「…うぅ」
やってしまった
意識が飛んで、記憶が全くない
だが、彼女の死体と血濡れた俺の両腕を見ると何があったのか、何をしたのかが瞭然だった
『あなたが使えるようになった超能力は
危機に陥るとと本能のままに暴れまわる能力
「獣化」です』
俺があの男に追い込まれたとき、無意識に能力が発動したのだろう
そういえばあいつはどうなったんだ?
見当たらないのを考えると、逃げ出したのだろうか
新卒「…うっぷ」
死体を見ると嘔吐感が湧き上がる
こんなことがまだ続くのか?
…
…俺、もうやだよぉ…
少女 died.
残り、14人―
第二話『ケモノの雄叫びに消える焔の思い』、完
青年「はぁ、はぁ…」
どうやらあのケモノは撒いたようだ
いや、最初から追ってきてなかったのか?
青年「ふぅ…」
時計を見ると午後4時を指していた
さて、夜はどうするべきか
寝ている間に襲われては堪ったものではない
しかし、喉が渇いたな
ちょうど近くにコンビニがある
しかし、入ってもいいものか?
誰かが待ち伏せしているのでは?
…いや、この街は広い、そんな中でたったの16人、いや、二人死んでもう14人か
コンビニも数か所あるだろうし、デパートなんかもあるだろう
わざわざここで待ち伏せしている確率は低いと見ていいか
コンビニに入ろうとしたその時だった
青年「ぐっ!?」
突然首を絞められたような感覚が走る
俺は咄嗟に首回りを能力で爆発させた
?「きゃ!?」ドサ
後ろの方で声がする
俺はむせながらも振り向いた
女子中学生「っ!?」
青年「!!」
女の子が倒れている
こいつが俺の首を絞めたのか?
いや、そもそも気配を感じなかったし、足音もしなかった、いつの間に?
青年「くっ」バチバチ
女子中学生「!」シュン
!
消えた?
確かに目の前に彼女がいたはずなのに
初めから何もなかったかのように突然消え去っていた
辺りを見回すも、首を絞めるのに使ったであろうロープ以外には何も見当たらなかった
そのロープは俺が能力で爆発させたことでボロボロに千切れている
…気配を消す能力か?
自分の姿だけでなく、気配や足音まで消す能力?
いや、そもそもそこにいることを認識させない能力か?
…静寂がしばらく続く
もうここからいなくなったか?
…
寝床は見つかりにくい場所にした方がいいか…
俺はそう思いつつ周りを警戒しながらコンビニで飲食料を漁った
―――――――――――――――――
盲目少女「うーん…」
殺し合いか…いまいち実感が湧かないなぁ
でも夢ってわけでもないんだよね、きっと
こんな事態になって感謝してることもあるしね
盲目少女「…」
私はとある事故で光を失った
殺し合いの説明の紙もご丁寧に点字で書かれていた
目が見えなくなってからは色々不自由だったけれど、
盲目少女「…」ヒュゥゥ
今は風が全てを教えてくれる
『あなたが使えるようになった超能力は
風を読み、自在に巻き起こす能力
「旋風」です』
風を操る、これが私の能力
かまいたちを起こしたり、空気を圧縮させて発射することで相手を攻撃でき、
身の回りに風を纏うことで相手を吹き飛ばす防御壁にもなる
そして何より、風を読むことで目から入る以上の情報を私は手に入れることができる
背後からこっそり、なんてのは通用しないのだ
盲目少女「むむむ…」
で、今何に困っているのかというと、
風を読むだけじゃあ広告テレビに何が映っているのかわかんないんだよね…
さっき全てを教えてくれると言ったが、全部じゃなかったね、うん
ともかく、これじゃあ残り人数と残り時間がわからない、結構致命的だよね?
三十路女「お?」
盲目少女「あ」
そうこう悩んでいるうちに誰かが来たようだ
風を読む限り、大人の女性のようだ
三十路女「あなたも参加者?」
盲目少女「ええ」
まあ参加者以外はこの街にいないらしいし
三十路女「…あんた、目が見えないの?」
盲目少女「気にする必要はないですよ」
三十路女「そ…じゃあ遠慮なくやらせてもらうわね」ザッ
彼女が構えた
どうやら戦わねばいけないらしい
三十路女「行くよっ!」
彼女がこっちに向かってきた
私も構える
盲目少女「っ…」ドンッ!
空気を圧縮させ、彼女めがけて撃ち出す
三十路女「わっと」サッ
うーん、かわされたか
盲目少女「ふっ!」ドンッドンッ
圧縮砲をどんどん撃ち出すが、全部かわされてしまう
何で当たらないんだろう?
…あれ?
彼女の走るスピードが速くなっているような
走る…いや、落ちてる?
三十路女「ぬんっ!」ドゴォ
盲目少女「うぐぅ!?」
加速した彼女は風の防御壁を難なく突き破り、
そのまま私の腹部にパンチをかました
盲目少女「う、げほっ」
あまりの痛みに思わず膝をつく
三十路女「あんたさぁ」
ん?
三十路女「あんなに大振りに構えてちゃあ、どこに攻撃するかなんて丸わかりだよ」
…そうなのか
私、そんなに動いてた?
三十路女「じゃ、さっさと終わらせようか」ガシ
後ろから羽交い絞めにされる
くそぅ、豊満なそれを押しつけやがって
そして彼女は私を抱えながら跳んだ…飛んだ?
三十路女「私の能力、教えてあげようか」
三十路女「私は自分と自分が持っている物にかかる重力のベクトルを変えることができるの」
なるほど、さっきの違和感はそれか
やっぱり横に『落ちていた』わけだ
三十路女「で、今あんたを抱えて空に落ちてるの」
風を読む限りだと、結構高いところまで来てるようだ
三十路女「で、ここらで能力を解除するとどうなると思う?」
能力の解除、つまり重力のベクトルが元に戻るのか
三十路女「あんたは風を操る能力者みたいだから風を使って浮かないように私がきっちり拘束してあげるよ」
三十路女「あ、私はどういうわけか落下によるダメージがないようだから安心していいよ」
…結構、高い
ここから落ちたらまず即死だろう
万が一助かっても重傷だろうし…
私、詰んだかな?
三十路女「それじゃあそろそろぁっ!?」ダンッ
…?
何が起きた?
…彼女の頭が何かで撃ち抜かれた?
三十路女「」
頭を撃たれた彼女はどうやら即死らしい
いや、考えるのは後だ、今重要なのは、
盲目少女「っ」ヒュオオォォ
今から、落ちる
私は力のなくなった彼女の拘束を解いた
盲目少女「やっ!」ビュオオオ
風で私の体を押し上げることで落下スピードを軽減する
盲目少女「っと」ストン
ふぅ、無事に着地できた
だがまだ安心してはいけない、彼女が撃たれたということは、
私も狙われているということだ
私はすかさず風の防御壁を纏った
ダンッ
盲目少女「っ」
う、頬を掠った
だがこれでわかったことがある
私を狙ってる相手はスナイパーライフルを使っているかそれに準ずる能力だろう
今回は風の防御壁で銃弾を逸らすことで、直撃は免れた
撃たれた角度からして、結構な高所から撃ってきているのであろう
盲目少女「っ…」ダッ
ここにいては危険だ
私は狙われなくなるように、屋内へ避難した
―――――――――――――――――
中年「あー…一人逃げられたか」
高い場所から誰かいないか探していたが、
まさか空を飛んでいるとはな、狙いたい放題だったぜ
『あなたが使えるようになった超能力は
直線上の相手を狙い撃つ能力
「狙撃」です』
俺の右腕をスナイパーライフルみたいに構えることで、
指先にエネルギーがこもり、向けた先の映像が直接脳内に流れ込んでくる
そして、標的に標準を合わせて念じるだけで、エネルギー弾が発射される
弾の威力がどれくらいかというと、撃った直後に広告テレビに映る残り人数が一人減ったことを考えればわかるだろう
中年「ふむ…」
もう一人の女はどうやら屋内に入ったようだ
見失っちまったな
中年「…あー、腹減ったな…」
食料と飲み物は十分にかき集めてある
残り時間が少なくなるまで俺はここを動かない予定だ
…標的を探すのに疲れたし、日も落ちてきた
今日はもうやめるか
俺はデパートから持ってきた缶ビールの蓋を開けた
女子中学生「……」
女子中学生「…あそこの高層ビル、か」
三十路女 died.
残り、13人―
第三話『風を撃ち落とせ』、完
二日目―
女子高生「……」
やられた、完敗だった
もしあの時天井が崩れていなかったら私は止めを刺されていただろう
女子高生「く…」
負傷した左足は一晩休んだおかげで、本調子とまではいかないが大分動けるようになった
女子高生「げほっ」
そんなことより心配なのは喉の調子だ
天井が落ちて埃が大量に舞ったが、足を負傷して動けなかったため、あの場所にずっと留まっていた
おかげですっかり喉を傷めてしまった
女子高生「あ゙~…」
コンビニに薬ないかな、直接喉に噴射するタイプのやつ
嬢「あら」
女子高生「あ」
あー、出会っちゃった
正直、テンションが低いからあんまり戦いたくないんだけど
嬢「初日は誰とも会えなかったけれど、ようやく人に会えたわ」
さいですか
嬢「早速だけど、死んでくれるかしら」
フッ
女子高生「!」
突然辺りが暗くなった
理由は見たままだ
巨人「ォォォ…」ズン
彼女の背後に現れた黒い巨人が太陽を遮り、影を作っていたからだ
嬢「驚いたでしょ、この巨人を操るのがわたくしの能力よ」
でかい、5メートルはあるかな
嬢「あの紙にはもう一人の自分だなんて書いていたけれど、何がこんなに大きいのかしらね」
まあ…彼女、見た感じ背が低いし、願望?
嬢「それじゃあ…せいぜい足掻いて見せて頂戴」
巨人「ォォォオオオ!」ブン
女子高生「!」
巨人が拳を振り下ろす
私は咄嗟に後ろに下がり、攻撃を避けた
ズガンッ!!
拳が地面を叩くと同時に辺りが揺れる
拳を叩きつけたところには小さなクレーターが出来ていた
巨人「オオオァオオ」ズオ
巨人は次に脚を上げ、こちらに向かって落としてくる
これも避ける
ズシィン
女子高生「っとと」
地響きでバランスが崩れそうになる
巨人の攻撃は思ったより速くないので、左足が好調でない私でもかわすのは容易だ
そういえば彼女の姿が見当たらないな
どこか影にでも隠れたか
巨人「…ァオオオァ」バキバキ
突然、巨人が近くの家の壁を引っぺがした
巨人「ォア!」ゴォ
女子高生「!」
なるほど、あの壁を叩きつけるつもりか
確かにあの壁の大きさじゃあ今から走っても避けきれない
女子高生「…」キィィ
ならば、
その壁ごとぶった斬ってやるだけだ
女子高生「…」ブオォン
私は巨大な光の剣を生み出し、構え、
女子高生「せいやぁ!!」ブン
巨人めがけて振り下ろした
ズバンッ!!
巨大な剣は、巨人が構えた壁を斬り、
壁を構えていた腕を斬り、
そして、巨人の体を真っ二つに斬り裂いた
巨人「グオオオオオオオオ!!」
嬢「ぎゃああああああああ!!!」
巨人の叫びと同時に操っていた彼女の断末魔が聞こえる
どうやら受けるダメージを共有していたようだ
『あなたが使えるようになった超能力は
大きさを自由に変える光の剣を生み出す能力
「光剣」です』
光の剣を作り出すのが私の能力
手に力を込めると、光の剣が出現する
重さは感じない、というか掴んでる感覚もないんだけど、仄かに暖かい
剣の大きさは自由に変えられるけれど、大きさに比例して精神力も結構消耗する
切れ味は、ご覧の通りだ
巨人「」シュウゥ
真っ二つになった巨人が消える
ダメージを共有しているのならば、間違いなく彼女は死んだだろう
死体確認?、体が切断された死体なんて見たくないよ
「へぇー、やるじゃん!」
女子高生「っ!」
後ろの方で声がする
振り向くと、そこには派手目な女性がいた
ギャル「見てたよー、あんなでかいやつを倒すなんてすごいね!」
女子高生「…」ブォン
私は剣を生み出し、構える
ギャル「あー、私とやるつもり?」
ギャル「無駄だよ、もう勝負ついてるから」
女子高生「…!?」
体が、動かない?
ギャル「私の能力はね、目が合った相手の動きを止める能力なんだ」
ギャル「私が目を逸らすまで解除されないよ」
目線を逸らすことも瞬きもできない
声も出せないのか、くぅ
ギャル「それじゃあ、死んでね?」チャキ
彼女が右手にナイフを構える
そのまま、ゆっくりと私の方に歩を進める
…?
目線を変えられないせいでぼやけて見えるけど、
彼女の後ろに誰かいる?
「後ろががら空きだ」ガシッ
ギャル「えっ?」
彼女の頭が掴まれる
直後、
ボガンッ!!
彼女の頭が爆発した
能力が解除され、体が自由になる
ギャル「」ズシャ
倒れた彼女の後ろには
青年「よぉ」
女子高生「!!」
あいつがいた
嬢、
ギャル died.
残り、11人―
第四話『巨人を眺める視線の向こう側』、完
青年「よぉ」
女子高生「!!」
あいつがいた
私は剣を出し、構える
青年「あー、戦う気はないから、しまってくれないかな」
青年「どうしてもって言うなら戦ってもいいが…」
…前回戦って殺される寸前だった上に左足はまだ本調子でない
さらに先の戦いでそれなりに疲弊している
…私は剣を消し、構えを解いた
女子高生「…げほっ」
喉が痛い、咳き込む
彼もそれで私が喉を傷めてるのを理解したようで、ばつの悪そうな顔で頬を掻いている
…そんなわけであまり喋りたくないので、私が聞きたいことを汲み取ってくれればいいのだが
じろりと彼を見つめる
青年「…あー、戦わないのかって?」
どうやら私の意思を汲み取ってくれたようだ
私はうなずく
青年「なんていうかな……気分、だな、うん」
はぁ?、気分だって?
怪訝な目で彼を睨む
青年「この答えじゃ不服か?、そうだな…」
青年「また今度会うことがあったら教えてやるよ」
そういうと彼は背を向け、歩き出した
女子高生「…助けてくれたことには礼を言っておくわ」
喉が痛いので擦れ声だ
青年「…あ、そうだった」
彼はこっちを振り向いて、
青年「ほれ、喉の薬だ、直接噴射するタイプ」
小さな箱をこちらに放り投げた
私はそれをキャッチする、確かに喉の薬だ
青年「じゃあな」ボガンッ
彼は足元を爆発させて大きく跳躍し、天井に登って消えていった
…
彼はわざわざ喉の薬を探してくれたのだろうか?
しかし、戦わないことといい、彼の考えてることはさっぱりわからない…
とりあえず薬を塗布しよう
私は薬の箱を開けた
―――――――――――――――――
少年「ふっふっふっふっふ」
僕の能力は、最強だ
思わず笑いが込み上げるほどにね
少年「くふふふふふふ」
でもまあ、初日にもそのことで散々笑みが出たわけだけどね
じゃあなんで今笑っているのかというと、
若者「なーにがそんなにおかしいんだ?、お前」
やっと獲物に出会えたからだ
少年「いやね、嬉しいんだ」
少年「僕の最強の能力を堪能してくれる獲物にやっと会えたからね」
若者「…ふーん、最強、ね」
少年「はは、残念だったね兄ちゃん、ここで死んじゃうんだからさ」
若者「…ふわぁ~あ」
…なんだこいつ
欠伸してやがる
少年「…ずいぶん余裕なんだね」
若者「そりゃあ、俺の能力は最強だからな」
…は?、最強だって?
少年「…兄ちゃん、僕の話を聞いてたのかい?」
若者「あー、最強なんだっけ?、無駄話はいいから早く見せてくんないかな」
若者「お前の能力が最強かどうか判断してやるよ」
…こいつ、舐めきってやがるな
いいだろう、そこまで言うなら見せてやる
少年「たっぷり味わわせてやるよ!」
そして僕は念じた
ピキィン
若者「」
少年「…」
少年「(くっくっく)」
さて、今僕が何をしたのかというと
「時間」を止めた
『あなたが使えるようになった超能力は
自分以外の時間を止める能力
「時間停止」です』
僕以外の時間を止める、それが僕の能力
念じることですぐさま時間を止めることができる
念じている間はずっと時間が止まっているままだ
ただ、停止中は空気中の分子の動きも止まるみたいで、呼吸が出来なくなる
要は、僕の息が続くまで、時間を止められるってことさ
まずはこの能力の片鱗を見せてやろう
僕は彼の背後に回ったところで能力を解除した
若者「!」
少年「こっちだよ」
僕を完全に見失っていたらしいあいつは僕の声で振り向いた
少年「どうだい、これが僕の能力だよ」
若者「…瞬間移動する能力か?」
解っていないようだ
だったら丁寧に教えてやろう
相手が知ったところで対策なんて出来やしないからね
少年「僕の能力はね、時間を止める能力だ」
少年「念じるだけで一瞬で僕以外の時間を止めることができる」
少年「全てが止まった中で、僕だけが動けるんだ」
少年「これを最強と呼ばずしてなんて呼ぶんだい?」
若者「……それだけか?」
…は?
今なんて言った?
それだけって言ったか?
若者「何が最強だ、期待外れだな…」
き、期待外れ、だと?
こいつ…!
少年「…どうやら、直接体に教えないとわからないようだね」
若者「おーおー、やってみろよ、やれるものならな」
少年「後悔するなよ!」ピキィン
僕はすぐさま時間を止めた
まずはそのがら空きな腹に一発お見舞いしてやる
そう思って彼に近づいた時だった
ガンッ
少年「うっ!?」
なんだ?、何かにぶつかったぞ?
僕はぶつけたあたりに手を当てる
…これは、壁?
少年「(…う)」
息が続かなくなってきた
僕は一旦能力を解除した
若者「…どうだい、俺の能力」
少年「…なんだこれは」
若者「わざわざ教える必要がどこにあるんだ?」
くっ…
若者「回り込んでも無駄だぜ、俺の周りに張ってるからな」
若者「まあそんなことももう出来やしないだろうがな」
…なに?
少年「…くそっ!」ピキィン
息が整った僕は再度時を止める
こいつは得体が知れない…距離を取らねば
ガンッ
少年「(なっ!?)」
僕の後ろに壁?
…まさか!
僕は四方に手を伸ばす、何かを触っているような感触が返ってくる
…やっぱり!
僕は、見えない壁に囲まれている!
…息が持たない、能力を解除する
若者「…理解したか、お前はもう逃げられない」
若者「時間を止めたとしても、な」
…だからどうした
僕を囲んだだけでなんだというのだ!
若者「…お前もういいよ、さっさと死んでもらおうか」
奴が人差し指と親指の間を狭めるような動きをする
少年「うぐっ!?」ガッ
僕の前後にあった壁に挟まれた!?
少年「う、がああああ!?」グググ
前後の壁は僕を挟んでもなお、迫ってくる
若者「そのまま、潰れろ」
少年「あ、が、あああああああ!!」ミシミシ
馬鹿な、馬鹿な!
こんなやつ、簡単に捻ってやる予定だったのに!
僕の、能力は、最強じゃなかったのか?
若者「言っただろ」
若者「最強は、俺だ」グッ
彼はそう言って近づけつつあった人差し指と親指をくっつけた
グチャッ
若者「…弱い」
若者「いや、俺が強いだけか、くくく」
若者「はぁーーーっはっはっはっはっは!!」
彼は、大きく笑っていた
少年 died.
残り、10人―
第五話『自身を最強と信じて疑わない時間の支配者と空間の覇者』、完
青年「!」
チャラ男「おっ」
盲目少女「む」
おや、この広い街で三人が同時にかち合うのは珍しいな
いや、俺を入れて四人、かな
まあ物陰から様子を見てるだけなんだがな
…誰も気付いていないようだし、このまま観戦と行きますか
相手の動きや能力を観察することは重要なことだからな
チャラ男「へへっ」ザッ
青年「…」ザッ
盲目少女「…」ザッ
各々が構える
さて、じっくり見せてもらおうか…
チャラ男「…」ブォン
あのチャラい奴の両腕の周りににエネルギー弾か何かが6発ずつストックされる
チャラ男「喰らいなっ!」ダダダダダダダ
その弾丸を他の二人めがけて発射する
なるほど、機関銃みたいな能力か
青年「っ」ダッ
男の方は…普通に横に避けたな
盲目少女「!」ビュオオォォォ
へぇー、あっちの女の子は風を操るのか
撃たれた弾丸の軌道を風で逸らし、動かずして避けている
チャラ男「へへへへ!」ダダダダダダダ
盲目少女「うぐっ」ドス
しかし、放たれる弾丸が多すぎて全部は逸らしきれなかったみたいだ
一発だけ右足に当たったな
少女は立っていられなかったようで、膝をついた
チャラ男「そらそら!」ダダダダダダダ
あの弾丸野郎は弾が当たったのを見て、全弾を風の少女に集中させる
盲目少女「くっ!」ビュオオォォォ
少女はさっきよりも風を強くしたらしい、弾丸をすべて逸らしている
防御に徹すればこれくらいはできるってか
青年「…」バチッ
さて、フリーになった男の右手に電気のようなものが走る
その手には石ころが握られている
青年「せやっ!」ブン
その石ころを弾丸野郎に向かって投げつける
チャラ男「!」サッ
石ころに気付いたそいつは避けようと体を逸らすが、
ボガンッ!!
チャラ男「ぐあっ!?」
なんとあの石ころ、あいつの横を通過する辺りで爆発した
石ころを投げた男の能力は爆発させる能力かな?
チャラ男「ぐっく」ドサ
爆風をもろに受けた男はその勢いで地面を転がる
ボフンッ
青年「ぬぉあ!?」
おや、あの爆発男も大きく吹っ飛んだな
青年「ぐっ」ドカ
うへぇ、家の壁にぶつかってる、すごい飛んだなぁ
盲目少女「…」ビュオオォォ
どうやらあの風の子がやったらしいな
風を使った何かをぶつけたんだろう
ふーむ、どうやら三人の力は均衡しているようだ
こりゃ長期戦かな?
―――――――――――――――――
中年「お、あそこで三人が戦ってるな」
十分に、観察した
中年「しかも一人は昨日逃がした女のようだな」
この男の能力で反撃を喰らうことは、ない
中年「へへへ、全員撃ち抜いてやるぜ…」ジャキ
あの男が構えている、今が好機だ
女子中学生「…」チャキ
私は右手にナイフを構え、近づいた
『あなたが使えるようになった超能力は
周りに存在と行動を認識されない能力
「隠密」です』
簡単に言うと、私が何をしてようが、誰にも気付かれない
女子中学生「…」サクッ
中年「がっ…!?」ブシャアアア
このように、相手の首を掻っ捌いたとしても
私が、念じているだけで誰も私を認識しなくなる
でも、能力を使うには結構集中力がいるようで、
ちょっとでも集中が途切れると能力が切れ、相手に気付かれてしまう
また、認識できなくなるといっても、私自体はそこにいるわけだから、
相手が偶然私にぶつかったり、相手の攻撃が偶然当たってしまったりすることもある
そうなると集中が途切れて能力が切れるため、当然相手に気付かれる
中年「」
女子中学生「…」ビチャビチャ
返り血が私の服に飛沫する
出来れば、血を見たくなかった
だから昨日は絞殺しようとしたが、そのせいで失敗した
その失敗を踏まえ、今回は相手をじっくり観察し、どんな能力か見極めた
女子中学生「ふぅ…」スッ
相手が動かなくなったことを確認し、能力を解除する
女子中学生「…」チラ
私は窓から外を見回した、この街は本当に広い
女子中学生「…う」ヘタリ
緊張の糸が切れたみたいで、腰が抜けてしまった
…今日はここで…いや、死体があるから隣の部屋で休もう
幸い、食料はこの男の分があるしね
―――――――――――――――――
新卒「ひぃぃ」ガクガク
なんでだよぉ、戦いが嫌で家にこもってたというのに、
チャラ男「そらそら!」ダダダダダダダ
盲目少女「くっ!」ビュオオォォォ
青年「せやっ!」
なんですぐ外で戦いが始まっちゃうんだよ!
バリィーン
新卒「わぁぁっ」ビクン
流れ弾が飛んでくるみたいで家の窓が割れる
…これ、もしかして俺にも当たる?
ガシャーン
新卒「うっ」ズバッ
割れた窓ガラスが飛んできて手を切った
やっぱり弾が当たる可能性がある?
それとも窓ガラスの破片が心臓に刺さる?
…死ぬ可能性がある?
…
あ、くる
心の中のケモノが、俺の意識を喰らう
うぅぅ、もうあんな思いは嫌な…の……に……………
―――――――――――――――――
ガシャアァァーン
新卒「グオオアアアアァアァァ!!!」
青年「!!」
チャラ男「なっ」
盲目少女「っ!」
それは突然だった
均衡していた三人の中に、一人の人間が割って入った
いや、あれは…人間、なのか?
青年「くっ!」ボガンッ
爆発野郎はあのケモノを見るや否や、一目散に逃げ出した
爆発の能力って、あんな風にスピードアップにも使えるのか
チャラ男「な、なんだ?」
盲目少女「う…」
ケモノは残された二人を見つける
新卒「!」ダッ
最初の標的はあの弾丸野郎のようだ
ケモノはまっすぐに走り出した
チャラ男「っ!!」ダダダダダダ
男はケモノに向けて弾丸を放つ
新卒「ォォォオオオ!!」キンキン
チャラ男「んな!?」
おいおい、弾丸が弾かれてるのか?
どうやら皮膚がとても硬化しているようで、弾丸が効かないみたいだ
…あの弾丸、家の壁に穴を開けるくらいの威力はあったと思うんだがなぁ
チャラ男「く、来るな!、来るなぁ!」ダダダダダダ
男は変わらず弾丸を撃ち続けるが、
やっぱり全部弾かれている
ケモノの迫るスピードに変化はない
新卒「グオオオオオオオ!!!」
チャラ男「う、うわああああ!!」
ケモノの鋭い爪が、男を襲った
ザシュ、ドシュ、ズチュ
チャラ男「がああああああ!」
む、むごい…
体中を爪で引き裂く
ケモノは返り血を存分に浴びる
チャラ男「が……あ……」ピクピク
新卒「…」ガシ
そして、止めと言わんばかりにケモノは男の頭を掴み、
グシャ
思い切り地面に叩き付けた
新卒「グオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!!」
ケモノの咆哮は辺り一帯に響いた
―――――――――――――――――
新卒「う?」
突然意識が戻る
俺、さっきまで家の中にいたよな?
つまり…
チャラ男「」
新卒「…」
また、やってしまったのか
俺がこの人をここまでひどくズタズタに切り刻んだというのか
新卒「!」
盲目少女「ぁ…」ガクガク
近くには、俺を見て怯える少女がいた
どうやら、その子は足を怪我しているみたいだ
俺は一歩近づくと、
盲目少女「ひぃ…!」ズサ
後ずさりされた
しかし、足の怪我のせいで上手く動けないらしい
俺は彼女の近くまで歩み寄った
新卒「…目、見えないのかい?」
盲目少女「ひぃぃぃ!」
返事は来ない、ただ頭を抱えて震えるだけだ
俺は彼女に手を差し伸べようとしたところで、俺の手が血塗れていることに気が付いた
出しかかっていた手を引っ込める
…やっぱり、俺、怖いのかな
あの能力は、そんなに恐ろしいのかな?
新卒「…」
俺は彼女に背を向け、この場を立ち去るべく歩き出す
…
他人に拒絶されるのって、心にくるな…
涙が出かけるが、腕で拭おうにも腕が血まみれだったから、涙を流すまいと必死で我慢した
―――――――――――――――――
…
あの男は下手に近づいたら危険、だな
爆発野郎も触った途端にそこを爆破されそうだし、
あの風の少女に至っては目が見えないと来た
弾丸野郎ならまだやれると思うんだが、もう殺されちまったしなぁ
うーん…
「あいつらはやめておこう」
戦いを見ていた俺はその場を離れた
中年、
チャラ男 died.
残り、8人―
第六話『三つ巴の戦いの諦観者と乱入未遂者と乱入者』、完
三日目―
「っ…」
もう8人も死んでしまった
だというのに何故今まで誰とも出会えなかったのだろうか
…それよりも、
早くあいつを止めなければ…
銀髪女「これ以上の犠牲が出る前に…」
突然私の後ろで気配を感じた
私は振り返る
銀髪女「!」
女子中学生「え…」
背後には少女がいた
右手にはナイフが握られている
女子中学生「な、なんで…」
私を殺すつもりだったのだろう
仕方ない…
女子中学生「っ…」
銀髪女「…」ガシ
少し、眠っていてもらおう
私は少女の腕を掴み、地面に捻じ伏せた
女子中学生「うぐっ!?」ドシン
衝撃で少女がナイフを手放す
私はそのナイフを遠くに蹴飛ばした
銀髪女「ふっ」トン
女子中学生「ぁ…」ガク
少女の首の後ろを軽く叩く
少女はあっという間に意識を手放し、気絶した
銀髪女「…」
銀髪女「そこにいる人、出てきなさい」
「あ、あれ?、ばれちゃった?」
私がそう言うと物陰からサングラスの男が出てくる
サングラス「いやぁー、あの手際の良さを見ちゃったからさ、できれば逃げさせてもらいたいんだけど…」
銀髪女「…そう」スタスタ
サングラス「あれ?、逃がしてくれるん?」
銀髪女「好きにしなさい」
私はその場を離れるべく、歩き出した
サングラス「…好きにしろって言われたらさ、本当にそうしたくなるよね」ガシ
彼は私の腕を掴んでいた
この男が近づいているのに掴まれるまで気付けないとは…
こいつ、なかなかやるようだ
サングラス「三日目にしてやっと俺の能力をお披露目出来るぜ…」カチャ
そう言って彼はサングラスを外した
サングラス「俺の目を見ろぉ!!」カッ
…
……
………
銀髪女「………」
サングラス「……あ……あれ?……」
銀髪女「ふんっ」ドガ
サングラス「おげぇっ!?」ドサ
私は彼の鳩尾に重い一発をくれてやった
サングラス「な…何故…」ガク
彼は気絶したようだ
銀髪女「はぁ…」
時間を取られてしまった
私は歩き出す
銀髪女「…」チラ
私は空を見渡す
高いところから街全体を見下ろして標的を探しているのかもしれない
空の上にいることなど彼の能力ならば容易いことだ
そう、あの男…
若者ならば
―――――――――――――――――
若者「ふーむ…」
参加者の数も減ってきた
そろそろあいつと出くわすかな?
盲目少女「ぐっ、かは…」ミシミシ
若者「血の雨を降らすってやつ、一回やってみたかったんだよな」グッ
盲目少女「ぁ」グシャ
ビチャビチャビチャ
女が潰され、血と肉塊が街に降り注ぐ
さて、俺が今どこにいるのかというと
空の上だ
俺は今、空の上に立っている
正確には…俺の能力で作り出した壁の上に立っている
『あなたが使えるようになった超能力は
あらゆる物質、波動を遮断する壁を作り出す能力
「遮断」です』
俺が念じると見えない壁ができる
この壁はいかなる物も通さないし、壊すこともできない
また、この壁は移動させることができ、二つの壁を使って相手を押し潰すこともできる
今やったみたいにな…どうだ、最強だろ?
若者「うーむ…」
さっきも言ったが、血の雨ってのをやってみたくてこんな高い場所で潰したのだが、
いまいち、パッとしないな…
若者「あれか、量が少ないんだな」
ガキンチョ一人じゃ足りないってことか、そうか
まあ、もういいや、血の雨が思ったよりしょぼくて興味が失せた
俺は街を見下ろす
若者「…お」
見つけたぞ
銀髪女「…!」
あっちの方も俺を見つけたみたいで、地上から睨んできている
いいぜ、決着をつけてやるよ
若者「現実世界での借り、返してやるぜ」ニヤリ
盲目少女 died.
残り、7人―
第七話『銀の乙女は覇者の野望に立ち向かう』、完
新卒「はぁ…」
残り7人、かぁ…
死んだ人たちの中で2人、俺が手をかけたと考えると、気が重くなる
ビチャ
新卒「ん?」
何かが降ってきた
これは…血!?
新卒「わ、わあああ!?」
血に続いて肉塊がボトボトと落ちてくる
新卒「うひぃぃぃぃぃぃ!?」
何のホラーだよこれ!?
カコン
新卒「んん!?」
血や肉塊と一緒に骨が落ちてきた
…ちょっと待て
この骨が俺に突き刺さったら、俺、死ぬんじゃ?
…
しまった
こういうこと考えちゃうから、
俺の能力が発動しちゃうってのに………
意識が……飲み込まれる……
―――――――――――――――――
私の職業は、警察だ
最近、謎の失踪事件が何千件と発生しており、世間を騒がせていた
私はこの一連の事件を捜査していた一人だ
この事件を捜査しているうちに、ある男の名前が出てきた
それが若者だ
私は捜査を続け、ついに奴の居場所を突き止めたのだが、
銀髪女「まさか、こんなことに巻き込まれるなんてね……」
逆に彼に捕まり、この殺し合いに参加させられたのは不覚だった
だが、私はこの事件の真相の手前、いや、もう真相は掴んだも同然のところまで来ている
あとは、奴と決着をつけるだけだ
グオオオオオオォォォォォォ!!
銀髪女「!」
何かが雄叫びを上げ、こちらに向かってくる
新卒「ォォォォォオオオオオ!!」ダダダダ
能力が発動しているであろう男がこっちに向かってきている
せっかく奴を見つけたというのに、こいつの相手をしなければいけないのか
まあ…こいつならそこまで時間は取られないだろう
新卒「オオオオオオ!!」
ケモノの爪が私に到達するその一歩手前で
バシュン
新卒「おおぉ……お?」
ケモノは、人間に戻った
『あなたが使えるようになった超能力は
相手の能力を打ち消し、無効化する能力
「無効化」です』
私の半径1m以内に入ると相手の能力は無効化される
奴の壁も打ち消すことが可能だ
だがしかし、それだけだ
この能力で攻撃することはできないし、
能力を間接的には打ち消す事ができない
例えば、物を浮かせる能力者がいたとして、
その能力者が自動車を浮かせて私にぶつけられるのは無効化できないのだ
まあ攻撃に関しては、護身術に多少の心得があるし、
そもそも人を殺すことは考えていない
ただ一人…若者を除いては
新卒「……??」
どうやら彼はケモノになっている間の記憶はないようだ
目をぱちくりさせている
銀髪女「…ふっ!」グイ
新卒「おっが!?」ドシン
私を切り裂くために伸ばされた腕を掴み、
背負い投げをして彼を地面に叩き付けた
新卒「ぐぅぅぅ」
どうやら受け身が取れなかったようで悶絶している
私は彼の手を離し、離れようとしたが、
新卒「ま、待って…」
彼に呼び止められた
銀髪女「…何かしら?」
新卒「お、俺を……」
「殺してくれ」
銀髪女「…はぁ?」
いきなり何を言い出すのだ
新卒「俺…もう嫌なんだ」
新卒「俺の能力で相手を傷つけるのが…」
新卒「いや違う…俺は…」
新卒「その能力で、孤独になるのが、怖いんだ…!」
彼は、震えていた
銀髪女「……」
「お望みとあらば、殺してやるよ」
ズバンッ
新卒「か」ブシャア
彼の首が、刎ねられた
若者「よお、また会ったな」
彼が、いた
刎ねた首をボールのように蹴飛ばし、近づいてくる
その際飛んだ血は、ご丁寧に能力でガードしていた
若者「俺の能力を応用すれば、何でも切断する刃も編み出せるんだぜ?」
若者「まあ…お前には効かないんだろうけどな」
銀髪女「……」
私は構える
若者「おぉっと、正面から立ち向かっても勝てないのは知ってるんでな」
若者「ちょいと避難させてもらうぜ」ブォン
彼は見えない壁を作ったらしく、それに乗って空中へ逃げる
銀髪女「くっ…」
空中に逃げられては、私からは手出しできない
若者「お前の能力の弱点は知ってるんだ」
若者「死んでもらうぜ」パチン
彼が指を鳴らすと同時に
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
銀髪女「な!?」
左右の建物が迫ってきた!
若者「俺の能力で建物を押してるのさ!」
若者「このまま瓦礫に潰されて死ねぇ!」
銀髪女「くっ…!」
まさか、奴の能力がここまで強大だったなんて…
銀髪女「くあ…!」
私は為す術なく、建物の瓦礫に飲み込まれた
―――――――――――――――――
ドガァァァァァン!!
押し出した建物同士がぶつかり、派手に崩れ落ちる
若者「くくくくく」
この分ではあの女も生きてはいまい
俺は広告テレビを確認する
『残り、5人―』
さっき首を刎ねた奴と合わせて二人減ったわけだ
俺は勝利を確信した
若者「くくくくく、はぁーーっはっはぁ!」
思わず笑っちまったぜ、おい!
さて、一番の障害は潰した
後はこの殺し合いを終わらせて現実世界に戻るだけだ
さっさとあと3人…いや、
俺以外の奴は全員殺してやる!
―――――――――――――――――
サングラス「うっく……」
酷い目にあった
まさか能力が効かなかったなんて…
サングラス「うーん?」
…何故効かなかったのだろう?
謎だ
女子中学生「…う…」
そういえば、あいつも一緒に気絶させられたんだっけ
…丁度いい、あいつで試してみるか
ええと、今、残り何人だ?
『残り、6人―』
6人か、減ったもんだな
さて、残り人数を確認したところでやりますか
サングラス「おい」ガシ
俺は女の手を掴む
女子中学生「う…?」
サングラス「俺の目を見ろ」カッ
女子中学生「!!!」ギュイン
女の体から力が抜ける
どうやら効いたみたいだ、使い方を間違っていなかったようで安心した
『あなたが使えるようになった超能力は
触れている相手と目を合わせると相手を即死させる能力
「凶眼」です』
相手に触れたまま、その相手と目を合わせる
それだけで、相手を即死させることができるのだ
一見、強そうなんだが、実は使い勝手が悪いんだよな
例えば、昨日の爆発野郎の場合は触った途端に爆破されるだろうし、
風の少女は目が見えないわけだからそもそも目を合わせられない
不便ね、俺もそう思ったよ
さて、残り人数は…
『残り、5人―』
よしよし、ちゃんと死んだようだ
…
あと3人、かぁ
生き残りたいもんだよねぇ、ほんとに
―――――――――――――――――
…
ガコン
銀髪女「はぁ…はぁ…」
銀髪女「ぐっ…」ヨロッ
銀髪女「…私はまだ、死ねない…」
銀髪女「あいつの野望を阻止するまで、死ぬわけにはいかない…!」
新卒、
女子中学生 died.
残り、5人―
第八話『覇者の判断を狂わす諦観者の眼』、完
とあるゲームが、開発されていた
そのゲームは、プレイヤーが仮想世界の中に入るというこれまでにない試みだった
仮想世界ではプレイヤーは超能力を使うことができる
その超能力を使い、他のプレイヤーと協力して大きなモンスターに立ち向かう
そんな内容だった
しかし、あるとき、事故が起きた
仮想世界でモンスターにやられ死亡したテスターが、現実世界でも死亡した
この報告を受け、上層部はすぐにゲームの開発を中止させた
開発チームは解散し、責任を取る形で会社を辞職させられた
このゲームに人生を懸けていた男がいた
男はゲームの開発を中止され、辞職を言い渡され、深く絶望した
男は思った、復讐がしたいと
あるとき、男はあることに気が付いた
仮想世界と現実世界で生死をリンクしているのならば、
現実世界でも超能力が使えるようになるのでは?
仮想世界での男の能力は「遮断」
この能力が現実世界でも使えるようになれば銃弾もミサイルも、例え原爆でも通用しなくなる
この世で最強の存在になる
いつしか、男の復讐の念は自分をクビにした会社だけでなく、
この世のもの全てに向けられていた
男は仮想世界で能力を使い続けた
人間を殺すことで
男は人間を拉致し、仮想世界に送らせ、
殺し合いをさせていた
そして、男自身もその殺し合いに参加していた
死と隣り合うことで緊張感を生み出し、現実世界で能力が使えるようになるのを早めることを考えての事だった
そして一年後―
何回目かももう数えていなかった殺し合いが終了する
今回生き残ったのは、男と銀髪の女の二人
この殺し合いを終えて、
ついに男は現実世界でも超能力が使えるようになった
「ふははははははは!!」
「ついに!、ついにこの時が来た!」
「ついに世界に復讐する時が来たのだ!」
「……」
「次の殺し合いの分の人間も用意していたが、無駄になったようだな」
「…あなたは…」
「あなたはこのために人を殺し合わせていたの?」
「…そうだ」
「まずは、今回生き残ったお前を、この能力で殺してやろう!」
「現実世界で俺の能力で殺される記念すべき一人目になるのだ、感謝するがいい!」
男が能力を発動させ、私の横から壁が迫る
しかし、その壁は私に触れた途端、消え去った
「…なんだと?」
自分でも驚いていたが、奴も相当動揺していた
「なぜ能力が消え……まさか!?」
「お前も発現しているのか!、現実世界で!、超能力に!」
…私の能力は相手の能力を無効化する能力だった
そうか、私も発現していたのか…
「なぜだ、俺は数えていないほど繰り返したのにこの女はたったの一回で…」
「いや、考えるのは後だ…まずこの女を何としても」
「殺さねばなるまい!」チャキ
男が懐に仕舞っていた拳銃を構える
しかし、私はそれよりも早く男の懐に潜っていた
「何!?」
私は拳銃を払い、男をカプセルの中に押し込む
このカプセルに入り、仮想世界とリンクするのだ
私は彼をカプセルに入れた後、すぐに入口を閉める
「くそっ!」ガチャガチャ
このゲームは彼が作ったものだ
当然、中から出る方法も知っているだろう
男がカプセルから出てくる前に私は機械を操作した
「……リンク、スタート!」ポチ
「くそがああああああ!!!」
男は動かなくなった
仮想世界とリンクし、殺し合いのゲームが始まったのだろう
さて…私もカプセルに入らなければ
奴は…あの男は現実世界に放ってはならない
この仮想世界の中で、あいつを倒す
カプセルに入った私は、仮想世界とリンクし、ゲームをスタートさせた
―――――――――――――――――
若者「あの女ァ…やってくれたな」
若者「見つけたら、確実に殺してやる!」
―――――――――――――――――
銀髪女「さて……」
銀髪女「あの男を探して……私の手で、殺さなければ」
16人の殺し合いが、始まる―
第零話『野望を食い止めるたった一度のゲーム』、完
青年「うわぁ……」
これは、ひどいな…
建物が派手に崩れている、地震でもあったのか?
これも誰かの能力によるものなのだろうか
「うっく…」
青年「!」
誰か、いる
銀髪女「くぅ…」ヨロ
そこには重症の女がいた、立っているのがやっとみたいだ
青年「…」バチッ
俺は構え、女に近づく
しかし、女のすぐ近くまで来たところで、
フッ
青年「…?」
爆発のオーラが、消えていた
銀髪女「…あなた…」
女に話しかけられる
大丈夫か?、喋るのも辛そうだ
銀髪女「…私に、協力して、くれないかしら…」
銀髪女「うぐっ」ヨロ
青年「おわっ」
俺は倒れる女を思わず受け止めていた
しかし、不思議だ
さっきからオーラを出すことができない
銀髪女「…倒さなければ、ならない奴が、いるの…」
女は話を続ける
……まずは聞いてみよう
―――――――――――――――――
サングラス「……」
若者「……」
サングラス「……」コンコン
若者「……」ニヤリ
見えない壁に阻まれている
↓
相手に触ることができない
↓
詰んだ
サングラス「……俺もここまでか…!」
若者「無念はあの世で晴らすんだな」ブン
奴が振りかざす動作をすると、俺の体はバラバラに引き裂かれた
サングラス died.
残り、4人―
―――――――――――――――――
俺は銀髪の女からすべてを聞いた
ここが仮想世界だということ
この女と、若者という男の能力のこと
そして、若者が現実世界でも能力が使えるようになったこと
銀髪女「私はこの状態だから、もう私では、奴を倒すことができない…」
青年「…どうやって相手にすればいいんだよ?」
銀髪女「…可能性は、あるわ」
青年「!」
銀髪女「彼がまだ、それに気付いていない今しか、チャンスはない」
俺は女から若者の弱点を聞いた
…
心当たりが、あるぞ
青年「…倒せるぞ」
銀髪女「え?」
青年「奴を、倒せる」
銀髪女「それって…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
青年「なっ!?」
なんだ!?
建物が左右から迫ってきている!?
銀髪女「これは…まさかあいつが!」
「生きているとは思わなかったぞ!」
青年「何!?」
その声は、上から聞こえた
奴は、空の上に立っていた
若者「まあ、そんなことはもうどうでもいい」
若者「また潰してやるよ!」
建物がそこまで迫ってきている
銀髪女「くっ…!」
青年「…おい、能力、解除してくれ」
銀髪女「…え?」
青年「俺の能力で、脱出するぞ」グイ
俺は女を抱きかかえる
銀髪女「…何をする気かは知らないけど、任せたわ」
青年「…」バチッ
オーラが出るようになった
いけるぞ
青年「しっかり掴まってろ」
青年「今から、跳ぶからな」バチッ
銀髪女「え?」
ボガンッ!!
俺は足元を爆発させ、
大きく跳躍した
そして、迫りくる建物を飛び越えた
若者「…ほう」
青年「ふっ」ボンッ
着地の衝撃を爆発で抑える
銀髪女「ぐっく…」
うめき声が聞こえる
あまり無茶な動きは出来ないな…
銀髪女「…それで、脱出したのは、いいけど」
銀髪女「これから、どうするつもり?」
青年「探すんだよ」
青年「俺の知ってる、心当たりをな!」ボガンッ
俺は足元を爆発させ、走り出す
抱えている女にあまり衝撃を与えないように
若者「…逃げる気か?」
若者「無駄だ、息の根を止めるまで追いかけてやるぞ!」
…
青年「くっ…!」
結構走ったというのに、見当たらないな
どこにいるんだ、あいつは!
銀髪女「…っ…」
この女も呼吸が浅くなってきた、もう長くは持たないか…
若者「そこまでだ!」
青年「な!」
前方に、奴がいた
ゴンッ
目の前の見えない壁にぶつかる
俺が能力を使うために女が能力を解除していたため、もろにぶつかった
青年「ぐぅっ」ドサ
銀髪女「あぅっ」
ぶつかった衝撃で女を放してしまう
若者「このゲームを作ったのは俺だ」
若者「この街のマップくらい頭に入っているさ」
若者「さて…」グッ
青年「うぐっ!?」ミシ
倒れていた俺の上から見えない何かが迫ってきている
これがあいつの能力か…!
青年「ぐあああああ」ミシミシ
若者「このまま押しつぶしてやるぜ」
くそ、ここまでか…
あいつは、一体どこに…
!
いた!
あの男の、後ろの方に!
青年「うおおおおおおおおおおお!!!」
女子高生「!」
残念ながら、俺は彼女の名前を知らない
だから大声で叫び声を上げた
どうやら気付いてもらえたみたいだ
そいつは、こっちへ走ってくる
若者「ん?」
男も足音で気付いたらしく、後ろを振り向く
女子高生「おおおおおお!」
彼女が光の剣を作り出す
若者「ふん、そんなものでこの俺を倒せるとでも…」
青年「思いっきり貫けええええええええ!!!」
俺は力の限り叫んだ
女子高生「うっぐ!?」ゴチン
そいつは見えない壁にぶつかる
若者「無駄だ!、俺に近づく事などできるわけがない!」
女子高生「くぅ…おおおおおお!」ブォン
女は、その場から男に向かって、
光の剣を伸ばした
若者「ふん、そんなもの」
ドスッ
光の剣は
男の作った壁に遮断されず、
男の胸を刺し貫いた
若者「がぁっ……!?」
女子高生「はぁ、はぁ…」シュイン
光の剣が、消える
同時に、男の胸から血が噴き出す
若者「ぐぅ…くっ……」
若者「ぬぅおおおおおおおおおおおおおお!!」ブォン
男は胸に手を当て、能力を使う
傷口を壁で塞ぎ、出血を無理矢理止める
若者「かはっ…な……何故だ!」
若者「何故、遮断しなかった!」
若者「何故、すり抜けたぁ!!」
その男に近づくものがいた
銀髪の女だった
銀髪の女が男に近づく
その男の能力は無効化され、再び血が噴き出る
若者「がぁぁ!?」
青年「うっ…」
俺に迫る壁も消え去り、体に自由が戻る
男は女から離れようとするが、
女は男にしがみついた
銀髪女「ぐぅ…」ギュウ
若者「くぅぅ、離せぇ」
銀髪女「…私は、知っているわ」
銀髪女「剣が、すり抜けた、理由を」
若者「な、ん、だと?」
銀髪女「きっと、あなたが思えば…くっ…遮断することも、できたでしょう」
銀髪女「だけど、あなたは、それに気付かなかった」
銀髪女「いえ、それが当たり前だと思い、疑問にも思わなかった!」
銀髪女「なぜ、壁が見えなかったのか…!」
若者「…!!!」
若者「そうか……最初から、遮断して、いなかったというのか…」
若者「”光”だけは…!」
銀髪女「ぐふっ!」
若者「かはっ!」
二人が、血を吐く
もうそこまで長くないだろう
若者「くそったれぇ…」
若者「俺は、俺はぁ…」
若者「現実世界で能力を、げほっ、つ、使って」
若者「俺をクビにした会社に、世界にっ!」
若者「ふ、ふく、復讐を…!」
若者「………」
銀髪女「………」
二人が、同時に、力尽きた
銀髪女、
若者 died.
残り、2人
ゲーム終了―
第九話『希望を導く閃光と、野望を貫く光の剣』、完
青年「ふぅ……」
あの殺し合いから、三ヵ月が過ぎた
今通っている大学も、無事に進級できそうだ
あの時は本当に大変だった
ゲーム終了のアナウンスがしたと思ったら意識が途絶え、気付いたらカプセルの中にいた
出る方法がわからず、四苦八苦していたら誰かが外からカプセルの入り口を開けてくれた
どうやら警察の人だったようで、銀髪女さんの携帯のgpsからこの場所を割り出したとか
そんでもって、俺はなんか行方不明者扱いされていたようで、そのまま警察に保護された
いろいろ事情聴取もされたが、まあ、うん、信じてもらえなかったよ
仮想世界で超能力を使って殺し合いバトルしてたなんて、誰が信じるんだろうな?
やっとのことで解放されたら、次は迎えに来た家族がめっちゃ俺を心配して引っ付いてきた
今年中学生になる妹なんかもう顔がぐしゃぐしゃになるほど泣きじゃくってて、
その日はお兄ちゃんと一緒に寝る、と言い張って聞かなかったもんな
後、現実世界と仮想世界の時間はリンクしていたようで、
行方不明になっていた時期も数日間だけだったから、大学の勉強に遅れる心配はなかった
青年「んー…」
で、今俺は公園のベンチに座っていて、良く晴れた空を見上げてる
あの出来事は今でも夢なんじゃないかと思う
女子高生「あっ」
青年「ん?」
…
まさか、現実世界で出会うとは思っていなかった
女子高生「…」ポカーン
あっちも同じことを思っているようで、放心している
青年「…よ、よぉ」
とりあえず声をかけた
女子高生「…」
そいつは俺の隣に腰かけた
女子高生「……」
青年「……」
やっべぇ、何話したらいいんだろ
青年「…な、何してたんだ?」
世間話でも、振ってみることにした
女子高生「……」
女子高生「受験の帰り」
青年「…高校生か?」
女子高生「そうだけど…」
青年「大学に行くんだ?」
女子高生「まあ、うん…」
そういや、俺の大学は今日一般試験をやるとかで、
サークルが休みになったんだったか?
…ん?、一般試験?
青年「まさか、お前が受けた大学って、あそこの大学じゃ…」
俺は大学への方角を指差す
女子高生「え、なんでわかったの?」
青年「……」
こんな偶然、あるものなんだなぁ…
青年「あそこな、俺が通ってる大学」
女子高生「…」
女子高生「えぇ!?」
まあ、そりゃ驚くわな
青年「はぁー…お前、俺の後輩になるわけか…」
女子高生「ま、まだ結果が出てないから決まったわけじゃないけど…」
青年「まあ、そうなったらよろしくな」
女子高生「う、うん…」
女子高生「そうだ」
青年「ん?」
女子高生「あんた、言ってたよね?」
青年「何を?」
女子高生「今度会うことがあったらなぜ戦わなかったのか教えるって」
青年「…」
青年「あ」
そういえば、そんなことを言った気がする
すっかり忘れてたなぁ
女子高生「で、どうなの?」
青年「んー…」チラ
女子高生「……」ジー
すごい見つめてくる
…言うしかなさそうだ
青年「…最初にお前の顔を見たときな」
女子高生「うん」
青年「かわいいと思ったんだ」
女子高生「うん…え?」
青年「多分、一目惚れ」
女子高生「え…え?」
青年「だから、殺し合いたくなくなった」
青年「…こんな理由じゃ、駄目か?」
俺が彼女の顔を見ると、
女子高生「……」
なんか放心してると思ったら、
女子高生「っ!」ボンッ
途端に顔を赤くした
女子高生「な、なななな」
なんか慌てふためいてる
かわいいな
青年「まあ、その…いきなり付き合おうとは、思ってないからさ…」
女子高生「う、うん?」
青年「まずは、えっと…メルアド、交換しようか」
女子高生「……」
女子高生「わ、わかった…」
……長い付き合いに、なりそうだ
そんな予感がした
冬の風は寒いが、心は温かくなるのを感じた
エピローグ、完
いやー、書いた書いた、書ききった!
地の文ありのシリアス系なんて初めて書いた!
スレ立てた当初は16人全員の設定も考えてなかったけど、何とかなるもんだ
あとはおまけという名の能力紹介を投下して終わりです
呼んでくれた人、ありがとう!
おまけ、能力紹介
青年
能力「炸裂」
電気の性質を持ったオーラを発生させ、そのオーラを爆発させる能力
オーラは体中に纏うことができ、爆発のダメージは自身に来ない
爆発の威力は人間の頭は簡単に吹き飛ぶくらい
足元を爆発させ、爆発の風圧を利用して加速したり、高く跳んだりできる
オーラは切り離すことが可能で、地面に切り離して地雷にしたり、
石ころ等にオーラを込めて爆弾にして投げつけることも可能
余談:主人公的な何か。全話登場させようかと思ったけど普通に無理だった
女子高生
能力「光剣」
腕から光の剣を出す能力
光の剣の太さ、長さは無限に調節可能で、いくらでも伸ばすことができるが、大きくした分すごく疲れる
剣の切れ味は人間の骨程度なら切断可能で、作中では巨人もぶった切った
暗いところでも剣を出せば明るい
その気になれば両腕から剣を出して二刀流もできる
余談:ヒロイン的な何か。風邪は喉に出る
男
能力「温度変化」
自分の手で触っている物の温度を変える能力
下限は氷が一瞬で凍るくらい、上限は鉄がぎりぎり溶けないけど柔らかくなるくらい
自分の能力で凍傷、火傷にはならない
余談:説明役というか、チュートリアルというか
新卒
能力「獣化」
危機に陥ったら獣化し、本能のままに暴れる能力
発動条件は新卒が「俺、死ぬんじゃね?」って思ったとき
伸びた爪は鋼鉄すらスライスチーズみたいに切り裂き、硬化した皮膚は弾丸すら受け付けない、中年の狙撃もきっと致命傷にならない
100メートルを7秒弱で走る、金メダリストを余裕で超える速さ
獣化してもなお、危険に追い込まれると強さ、狂暴性がさらに増すから困る
危機が去ると、獣化が解け、元に戻る
余談:少女を死姦させようと思ったけど没にした
少女
能力「操炎」
炎を操る能力、早い話がジョジョのマジシャンズ・レッド
自身の炎で自分は火傷しない、炎を撃ち出して離れた敵を攻撃することも可能
自分が作ったものではない炎も自身の炎と合わせることで操ることができる
自分で出した炎は好きに消せる
余談:新卒の獣化の説明のため犠牲に。悪いことをした
女子中学生
能力「隠密」
自分の存在と行動を相手に認識されなくなる能力
能力を使うには結構神経を使うらしく、長時間存在を消すことは可能だが、ちょっとしたことですぐ能力が切れる
存在を消しても、自分はそこにいるわけだから相手にぶつかったり、当てずっぽうの攻撃を喰らうことがある
余談:少女、盲目少女との年齢の区別ができない、困った
盲目少女
能力「旋風」
風を読み、操る能力。一番使い勝手がいいんじゃなかろうか
目は見えないけど、風を読むことで状況把握はバッチリ
かまいたちや空気の圧縮弾などの豊富な攻撃手段に加え、自身の周りに風を巻き起こすことで防御も万全
作中では使わなかったが、上昇気流を起こして周りを低気圧にし、相手を酸欠状態にすることも可能
きっと空も飛べる
余談:新卒といい感じな関係にしようと思ったけど、彼の能力のせいで無理だった
三十路女
能力「重力方向変化」
自分と、自分が持っている物にかかる重力のベクトルを変える能力
横に落ちたり、空を飛んだりできる
落下によるダメージを受けない、何でだろう?
経験はあるが未婚。
余談:パワプロクンポケットシリーズの大江和那がモチーフ
中年
能力「狙撃」
簡単に言うとスナイパーライフル
射程は直線上ならば何キロ離れていようと狙撃可能
威力はヘッドショットで即死するレベル
作中最年長。すこし腹が出ている
余談:するめいかが大好きで、酒のつまみによく食べる
嬢
能力「別人格」
もう一人の自分とも言える巨人を操る能力。ジョジョではない、ペルソナだ
巨人の全長は5メートル程、人一人を握り潰せる握力を持つ
作中では使い慣れていないのか結構動きが鈍い、嬢自身もきっとやきもきしていたはず
巨人とは反対に嬢は平均よりずっと背が低い
余談:彼女の父親が経営している会社は、新卒が入社予定だった会社である。殺し合いがなかったらいい関係になっていたかも?
ギャル
能力「束縛」
相手と目を合わせると相手の動きを封じる能力
相手は瞬きや声を出すことすらできなくなる、でも呼吸はできる
ギャルが視線を逸らすまで効果はずっと有効
1対1なら強いんだろうが、対複数だと途端に弱くなる
余談:出オチ。
少年
能力「時間停止」
自分以外の時間を止める能力
時間を止めている間は空気中の分子の動きも止まり、呼吸が出来なくなるので、
息が続くまで時間を止められる、ということになる
余談:時間を止める能力は昔は強かったんだろうけど、今になるともうかませじゃね?
チャラ男
能力「連射」
両腕にエネルギー弾を6発ずつストックし、撃ち出す能力
弾速、命中精度はそんなに良くないが、何より連射速度がすごい
片腕で一秒に6発、両腕合わせて一秒に12発撃つ事ができ、撃った弾はすぐリロードされる
威力は家の壁に穴を開ける程度、人間は簡単に貫通するが、獣化した彼には効かなかったようで
余談:ヤリチン。チャンスがあればヤろうと思っていた
サングラス
能力「凶眼」
相手に触れたまま、相手と目を合わせるとその相手を即死させる能力
別にサングラス越しに目を合わせても能力は発動するが、能力を使うときにサングラスを外すのは彼の気分
鏡を見ると自分も即死する、日常生活に支障をきたす能力
余談:コメディ担当の何か。アカツキ電光戦記の塞がモチーフ
銀髪女
能力「無効化」
自分の半径1メートル以内に入った能力を打ち消し、無効化する能力
それだけ
…攻撃手段として護身術を使う、警官の嗜み
余談:青年よりよっぽど主人公やってる。……言いたいことは作中で全部言った
若者
能力「遮断」
どんな物質、波動も遮断する壁を作り出す能力
しかし、作中では光を遮断できていなかった。光を遮断していたら壁が見えないわけがない
壁は移動させることができ、2枚の壁を使ってサンドイッチにしたり、
能力を応用して何でも切断する刃を作ってスライスしたりできる
余談:ラスボス的な何か。……何も言うまい
以上、おまけ終わり…16人全員書いたよな?
改めて、見てくれた人、ありがとう
このSSまとめへのコメント
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