アキ「今日は楽しいクリスマス」(24)

夜・十六夜邸にて……

アキ「……あっ、もしもし遊星?」

アキ「ごめんなさい、こんな時間に……あの、今ちょっと良いかしら?」

アキ「その、遊星って今度のクリスマス・イヴって何か予定があったりする?」

アキ「そう、空いてるのね……あ、空いてるんだ」

アキ「…………」

アキ「その、本当に遊星が良かったらで良いんだけど――」




アキ「――クリスマス・イヴは私に付き合って貰えないかしら?」

アキ「うん、じゃあ24日の夕方に時計台の前で……ええ、おやすみなさい」

アキ「…………」ピッ

アキ「……誘っちゃった」

アキ「クリスマス・イヴを遊星と過ごすのが……決まってしまったわ」

アキ「…………」

アキ「……うっ、うわああああぁぁぁぁ!!!///」ジタバタキオン

アキ(電話を掛ける前に遊星を誘う予行演習を30回くらいしたからスムーズに話は進んだけど……まさかここまで上手くいくなんて)

アキ(一応遊星には急用が出来た友達の代わりに一緒に映画を観ましょうって事で話を進めたけど……) ※勿論友達の話は嘘である

アキ(イヴで2人だけで映画を観るとか……これってやっぱりデ、デ、デ、デートになるのよね?)

アキ(しかも流れでその後夕飯も一緒に食べる約束もしたし……)

アキ「うわああああぁぁぁぁ!! 自分から誘ったのに何でこんなに恥ずかしいのよぉぉぉぉ!!!///」ゴロゴロットン

ドスン!!←ベッドから転げ落ちた音

アキ「ふにゃん!?」

節子「(ドアの向こうから)アキ、どうかしたの? 部屋の中から鈍い音が聞こえたんだけど?」

アキ「な、何でもないわ! 心配しないで、ママ」

アキ(うぅ、鼻打った……テンション上がり過ぎてベッドから落ちてしまうなんて我ながら情けないわね)

アキ(とにかくここでジタバタしても仕方ないわ。決まった以上、私も覚悟を決めないと)

アキ「このイヴは絶対に成功してみせるわ……覚悟してなさい、遊星!!」キリッ

アキ「…………」

アキ「って、やっぱり恥ずかしいぃぃぃ!! ていうかこっちから誘うなんてちょっと大胆過ぎるわよ、私ぃぃぃぃ!!!」キャーキャー

節子(さっきからずっと1人で騒いでいるけど大丈夫かしら、あの娘?)

イヴ当日・待ち合わせの時計台の前にて……

アキ(遂にこの日が来たわね。何だかあっという間に当日になった気がするわ)

アキ(ああ、自分から誘った事とはいえやっぱり緊張するわね。それにしても……)チラッ

<キャキャウフフ

アキ(やっぱりクリスマス・イヴね、さっきからやけにカップルの姿が目につくわ。みんな、幸せそうね)

アキ(だけどもし遊星が来たら私もあの中に……って、駄目よ! これ以上恥ずかしくなる様な事を考えたら心臓が持たないわ!!)ブンブン

アキ「平常心、平常心……取り乱したら負けよ、アキ」スーハースーハー

アキ(さて、そろそろ遊星が来る頃ね。今更だけど服装はこれで良かったかしら?)

アキ(一応服もおろしたてだし、靴も……って、ちょっと待ちなさい)

アキ(相手はあの遊星よ? 今日の私とのお出かけも悲しいけどデートと認識している可能性は限りなく0に近いわ)

アキ(そうなれば遊星は間違い無く普段の格好で来るはずだから……このお洒落は逆に浮く!?)

アキ「ど、どうしよう? 今から家に戻って私も普段の格好に着替えようかしら? ああ、でもそろそろ遊星も来る頃だし……」アタフタッグフォース

遊星「――おい、アキ」

アキ(って、背後から聞こえるこのイケメン宮下ボイスは間違いなく遊星だわ! ごめんなさい、貴方の思考回路をちゃんと把握していなかった私が悪いのよ!!)クルッ

遊星「何だか慌てている様だがどうかしたのか? もしかして忘れ物か?」

アキ「……あれ?」

遊星「アキ?」

アキ「あ、いえ、その……遊星、その恰好は?」

遊星「ん? この服がどうかしたか?」

アキ「いえ、その、てっきり普段着で来るとばかり思ってから……」

遊星「ああ、実は出掛けにクロウに着替えた方が良いと言われてな。前から持っていた物なんだが……やはり似合わないか?」

アキ「そ、そんな事無いわよ! むしろとっても似合ってる! カッコ良いわよ、うん!!」

アキ(ていうか何時もと違う格好の時点で新鮮過ぎて色々とやばいわ……とりあえずクロウ、GJ!!)

遊星「アキの方もその服はお前らしくて良く似合ってると思うぞ」

アキ「あ、ありがとう。その、今日の為に新しく用意した服だからそう言って貰えると嬉しいわ」

遊星「別に俺と出掛けるだけなんだからそこまで気合いを入れなくても良いと思うが……ところで俺はもしかして間違えたのか?」

アキ「へ? 間違えたって?」

遊星「待ち合わせ時間だ。一応少し早めに来たつもりだったんだが、アキは大分前から待っていた様だったから……」

アキ「い、いえ、時間通りだから安心して。私も遊星が来るほんの少し前に来たから」

アキ(さすがに楽しみ過ぎて待ち合わせの2時間前に来ましたなんて言えないわ。下手すればドン引きされる可能性もあるし……)

遊星「…………」ジィー

アキ「って、何、遊星? いきなり人の顔をジッと見て……」

……ぎゅ

アキ「ふえ!?///」ビックリボー

アキ(な、何? い、いきなり見つめられたかと思ったら手を握られて……ま、まさか遊星!?)

アキ「だ、駄目よ、遊星! いくらイヴだからってまだ夕方なのよ!? そ、そもそもこういうのはもう少し順を追って……!!」アワアワイト

遊星「……アキ、嘘はいけない」パッ

アキ「……はい?」

遊星「手がこんなに冷たくなっているじゃないか。少し待ったくらいでこうはならないぞ?」

アキ「えっと、それは……」

遊星「ほら、使い掛けで悪いがカイロだ。まだ温かいからこれで温めると良い」

アキ「あ、ありがとう」

遊星「映画が楽しみなのは分かるが風邪でも引いたら大変だろう? 焦らなくても映画は逃げないから」

アキ(……まあこんなオチだとは思っていたわよ、うん)


…………

遊星「さすがクリスマス・イヴだけあってシティも華やかだな。みんな楽しそうだ」ウキウキ

アキ「そ、そうね」

アキ(よ、予想はしていたけどやっぱりイヴに遊星と並んで歩くのはそれだけで緊張するわね。さっきから心臓がバクバクだもの)ドキドキング

アキ(しかも遊星は普段と恰好が違うから余計に……おまけにさっき手を握られた感触がまだ残っていて何が何やら……うぅ)

遊星「サテライトにいた頃もお祝いはしていたがさすがにここまでは……おっと」グイッ

アキ「きゃあ!?///」ビックリボン

遊星「ああ、驚かせてすまない。人にぶつかりそうだったから」

アキ(か、肩抱かれて引き寄せられた……嬉しいけど何でこういう事を平然とやってくるのよ、遊星は!?)

アキ(駄目よ……このままじゃ駄目よ、アキ! 今日のクリスマスデートは私から誘ったんだがもっとしっかりしないと!)

アキ(今年のイヴは今しかないの! ここで動かなくて何時動くって言うのよ!!)

アキ(ここは攻めの姿勢で行かなきゃ! まずはそう、今度は私の方から遊星の手を繋ぎましょう)

アキ(ベタだけど今は人も多いからはぐれない様にって理由で……見てなさい、《YU-JYO》のカードが無くても異性の手ぐらい握ってみせるんだから!)

アキ(…………)

アキ(……ってやっぱり無理! 私の方から遊星の手を握るなんて恥ずかし過ぎて無理ぃ!!///)

遊星(今日のアキは落ち着きがない……よほど今日の映画が楽しみなんだな)

映画館にて……

<ガヤガヤ

遊星「凄い人の数だな。席、座れるのか?」

アキ「それは大丈夫よ。席は予めネットで予約してあるから」←結局手は繋げなかった

遊星「さすが準備万端だな。ところで今日は何の映画を観るんだ?」

アキ「えっと、最近面白いって評判の恋愛映画なんだけど……ほら、そこにもポスターが出てるわ」

遊星「ふむ、この映画か……」

アキ「あ、もしかして遊星ってこういう映画は苦手だったかしら? ごめんなさい、予めどれを観るか言ってなくて……」

遊星「いや、この手の映画はほとんど観た事が無いだけだ。だから逆にどんなものか興味がある」

遊星「それに今日はアキが観たい映画を観に来たんだ。俺に気を使う必要は無いさ」

アキ(良かった、チョイス間違えたかと思ったわ……よし、この映画を観て必ず遊星と良い雰囲気になるわよ、私!)フンス

そして数分後……

遊星「予約を間違えた?」

アキ「え、ええ……ネットで予約した時に別の映画の席を予約してたみたいで……」ションボリチュア

遊星「だけどチケットはアキが観たい映画のものなんだろう?」

アキ「いえ、これは元々貰い物で……この映画館の映画ならどれでも観られるって物だから」

遊星「じゃあ予約の入っていない席に座るしかないのか」

アキ「それが予約だけで劇場はいっぱいみたいで、どうしても観るなら立ち見になるらしいわ」

遊星「そうか……どうする? アキが立ち見でも観たいなら俺も付き合うが?」

アキ「いえ、さすがにいいわ……立ち見する人も結構居るみたいで、劇場はかなり狭いらしいから」

アキ(いくら恋愛映画を観ながらでもそんな状態じゃ良い雰囲気も何も無いわよ……こんな凡ミスするなんて私の馬鹿ぁ)グスン

遊星「元気を出すんだ、アキ。映画の公開は今日までじゃ無いんだろう」

アキ「ええ……イヴの公開は今日だけだけどね(遠い目)」

遊星「ならその映画は日を改める事にしよう。とりあえず今日はアキが席を予約した方の映画を観ないか?」

アキ「そうね。チケットも今日までしか使えないし……」

遊星「それで間違えて席を予約したのはどの映画なんだ?」

アキ「えっと、私もタイトルをチラッとしか見てないけど多分何処かにポスターが……」キョロキョロ

アキ「あ」


…………

遊星&アキ「…………」


ジャンジャカジャーン←派手なBGM

『真のギャラクシーアイズ使い! バリアン・イエロー!!』

『全てのものは我が手の中! バリアン・グリーン!!』

『唸る拳が神をも砕く! バリアン・レッド!』

『ジャジャーン! 俺、バリアン・ブラック!!』

『灼熱の太陽すら瞬間凍結! バリアン・ブルー!!』

『バリアンの非力な盾! バリアン・ホワイト!!』

『そして俺がバリアンジャーを統べる者、バリアン・パープル!!』

『7人揃って……七星戦隊バリアンジャー、参上!!』ジャキーン


<キャキャキャ

アキ(拝啓、パパとママ……今私はクリスマス・イヴに遊星と特撮ヒーローの劇場版を観ています)

アキ(周りは子供達ばかりで、親御さんを除けば男女で並んで観ているのは私と遊星だけです……だけです)ウルウル

アキ(あうぅ、何で今日のメインイベントがこんな事に……いや、私が席の予約を間違えたのが原因なんだけど)

アキ(こんな子供向けの映画を観ながらじゃ良い雰囲気も何も無いわね……というか何で私達は律儀にこの映画を観ているのかしら?)

アキ(遊星にも申し訳無いわ。せっかく付き合ってくれたのにこんな子供向けの映画なんて観せてしまって……)チラッ

遊星「♪」キラキラ

アキ(何か今まで見た事ないくらいに目が輝いているぅ!?)ガビーン


『いくぞ、俺達のオーバーハンドレッド・ロボを合体させるんだ!!』

『おう!!』

『スーパー・オーバーレイ・合体! 誕生、キボーオー・バリアン・ロボ!!』


遊星「素晴らしい合体ギミックだ……D・ホイールにも応用出来るかもしれない」ムハー

アキ(い、意外だわ……まあ遊星も男の子だしこういうの好き、なのかしら?)

アキ(ま、まあ遊星も喜んでいるみたいだし結果オーライかしら? 相変わらず良い雰囲気は皆無だけど……)

遊星「おお……うわぁ……」ワクワク

アキ(そういえば遊星がこんなに屈託ない笑顔を浮かべているのは初めて見たかも)

アキ(全然笑わないなんて事は無いけど……そう、遊星ってこんな風にも笑えるんだ)

アキ(最初に考えていたものとは大分違う展開にはなったけど……)

アキ(この遊星の笑顔を見れただけでも……今日誘って良かった、かな)


…………

遊星「すまないな、アキ。何だか俺1人だけ楽しんでしまったみたいで」

アキ「気にしないで。何だかんだで私の方も楽しめたから」

アキ「それに……良い物も見れたしね」ボソッ

遊星「ん? 何か言ったか?」

アキ「何でも無いわ。それよりそろそろお腹減っちゃったわ。何か食べに行きましょう」

遊星「そうだな……ん?」

アキ「あら? これって……雪?」

遊星「天気予報では今日は1日曇りだって話だったが……」

アキ「天気予報なんて肝心な所で役に立たないものよ……それにしても綺麗だわ」

遊星「ああ。雪の粒も大きいし、これでホワイトクリスマスだな」

アキ「そうね……あ」

アキ(遊星の手……空いてる)

遊星「…………」

アキ「…………」

……ぎゅ

遊星「アキ?」

アキ「えっと、雪が降って寒いでしょ? だから、その、手を繋いだ方が良いかなって……///」

遊星「……確か前にもなかったか? こうやって手を繋ぐの」

アキ「そ、そうだったかしら?」

遊星「ああ……だがまあ仕方ないな、寒いんだから」ギュ

アキ「そ、そうよ。寒いんだから……仕方ないわよ」ギュ

遊星「じゃあ行こうか……っと、その前に1つ言い忘れた事があったな」

アキ「ああ、そういえばそうね。私も1つあったわ」

遊星「アキ……」

アキ「遊星……」




遊星&アキ「メリークリスマス」

<おわり>

読んでくれた人、ありがとうございました。本当はクリスマスに載せる予定でしたが諸事情により少し早めの投下となりました。ご了承下さい。

クリスマスを題材とした話は去年に『クロウ「今日は楽しいクリスマス」』というのも書いているので、もし何処かで見かけたらよろしくお願いします。では。

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