結衣「おいでよ!」 八幡「チバ村」 (42)
運転手「ひどい雨だね」
八幡「……そうですね」
運転手「お客さん、名前何っていうんだい?」
八幡「比企谷八幡です」
運転手「へぇ、なんか縁起が良さそうな名前だね」
八幡「はぁ」
運転手「行き先は確か……あれ?何処だっけ?」
八幡「チバ村ですよ……ってか、行き先わかってなかったのかよ」
運転手「そ、そうだ!そうだ!チバ村だったね。はっはっはっ!」
八幡「ちゃんとチバ村に向かってるんですよね?」
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運転手「勿論だよ!心配無用だよ!」
八幡「すげぇ心配なんだが」
運転手「それはそうとチバ村には何しに行くんだい?」
八幡「引っ越しですよ」
運転手「引っ越しかぁ……比企谷さんもそういうのに憧れる歳ってか」
八幡「いや、親父に実家追い出されただけですよ」
運転手「……はっはっはっ!豪快な親父さんだね」
八幡「物は言い様ですね」
運転手「……」
八幡「……」
運転手「…………おっ!チバ村に着いたよ。ちょうど雨も上がったみたいだ」
ー役場前ー
運転手「詳しいことは、そこの役場で聞くといいよ。そんじゃ頑張ってな」
八幡「ありがとうございます」
ブルルルル
八幡「よく喋る運転手だったな。だから、タクシーは苦手だ」
ガチャ
ぺりこ「こんにちは」ニコッ
八幡「ど、どうも」ペコリ
ぺりこ「もしかして比企谷八幡さんですか?」
八幡「はい」
ぺりこ「はじめまして、私はここの窓口をしているぺりこと申します。比企谷さんのことは、たぬきちさんから聞いてますよ」
八幡「はぁ」
ぺりこ「新しくこの村に住む人のために、住み心地のいい家を用意してあげたって、ご機嫌でしたもの」
八幡「そうなんですか」
ぺりこ「はい!えっと……よいしょっ、これがこの村の地図です。比企谷さんの家は……あっ、これですね。」
ぺりこ「この地図は比企谷さんにあげるのでこれを頼りに家まで行ってください」
八幡「ありがとうございます」
ぺりこ「いえいえ♪これからもよろしくお願いしますね」ニコッ
八幡「は、はい」
ー家ー
八幡「ここか……小さいな、とりあえず入ってみるか」
ガチャ
八幡「狭っ!段ボールとロウソクしかない……これの何処が住み心地のいい家なんだよ」
トントン
八幡「ん?」
たぬきち「おーい、比企谷さーん」
八幡「はい」
ガチャ
たぬきち「どうも、ボクはこの村でお店をやってる、たぬきちっていうんだも」
八幡「どうも」
たぬきち「お店の他にも、お家を建てたり改造したり色々とやってるんだなも!」
八幡「へぇ」
たぬきち「とりあえず、注文したお家は建てといたしお金を払ってね。そしたらお家は比企谷さんのものだなも」
八幡「え?」
たぬきち「お家の値段は19800ベルになるんだも!」
八幡「ちょっ!?お金ってまだ払われてないんですか!?」
たぬきち「そうだなも」
八幡「マジかよ……あのクソ親父」
たぬきち「あはははは!そんな心配することないって!一気に払わなくてもいいだも」
八幡「そう言われてもお金を稼ぐあてが」
たぬきち「あっ!そうだ!良いことを思い付いたなだも」
八幡「?」
たぬきち「うちの店でバイトすればいいだも」
八幡「バイトすっか」
たぬきち「そんな嫌な顔しないで、これからの生活に大切な事が学べる上にお金も稼げる一石二鳥だも!」
八幡「……分かりました」
たぬきち「じゃあ着いておいでだも」
ーたぬきち商店ー
たぬきち「まずは、この作業着に着替えるだも」スッ
八幡「着ました」
たぬきち「それじゃ、早速バイトとして働いてもらうんだも」
八幡「はい」
たぬきち「この花の種と木の苗をお店の近くに植えてきて、ほしいんだも。」スッ
八幡「終わりました」
たぬきち「早いね、じゃあ次はぁ……あっ!そうだ!比企谷さんはぼっち村に引っ越したばかりだもね」
八幡「はい」
たぬきち「なら、ぼっち村の人達に引っ越しのご挨拶してくるだも」
八幡「いや、その」
たぬきち「繋がりは大事だも」ジー
八幡「……分かりました」
たぬきち「あと、村長さんにも挨拶してくるだも」
八幡「はい」
八幡「はぁ……村長さんはともかく、他の村の人達と関わることはないから、挨拶の必要はないんだよな」
結衣「ん?」
八幡「あっ、ど、どうも」ペコリ
結衣「やっはろー!見かけない顔だけど?もしかして最近引っ越して来た人?」
八幡「えーっと。今日、この村に引っ越してきた比企谷八幡です」
結衣「そっか!あたしは由比ヶ浜結衣だよ。よろしくね比企谷くん」
八幡「よ、よろしくお願いします」
結衣「そんな畏まらなくてもいいよ。歳も近そうだし。比企谷くんは何歳?」
八幡「あー、16」
結衣「じゃあ、あたしと同い年だね」
八幡「(マジかよ。大きいから、てっきり歳上かと思ちゃったよ。何処がとは言わないが)」
結衣「今は何してるの?」
八幡「今はバイト中で、村の人達や村長さんに挨拶しに行くところだ」
結衣「へぇ、なら、あたしが案内してあげるよ」
八幡「い、いや大丈夫だから」
結衣「もー、遠慮しなくてもいいよ」
八幡「遠慮とかじゃなくて」
結衣「ほら行くよ。比企谷くん」グイグイ
八幡「わかったから引っ張んな」
結衣「まずはあたしの友達の所からね」
八幡「ああ、頼む」
ー雪乃家ー
八幡「で、でけぇ……」
結衣「凄いよね。あたしと同じ時季に引っ越してきたのに、もう二階建てにしちゃうんだもん」
八幡「二階建てにする?」
結衣「比企谷くんもたぬきちさんに家を建ててもらったでしょ?」
八幡「あぁ」
結衣「家のローンを返済すると家を大きくすることが出来るんだよ」
八幡「そうなのか」
結衣「うん!あたしは次で二階建てにするんだ」
八幡「俺も早く家を大きくしたいな、あれはいくらなんでも狭すぎる」
結衣「あはは、最初のは凄いよね。狭すぎて家具を置けないから」
八幡「そういえば、お金ってどうしてるんだ?」
結衣「ん?」
八幡「いや、家を大きくするってことはそれだけ資金がいるだろ?この村はたぬきち商店と横にある服屋以外はバイトができそうな所とかないし、それにバイトだけじゃそんなに貯まらないだろ」
結衣「あぁ、そっか。比企谷くんは来たばかりだから知らないんだね」
八幡「何がだ?」
結衣「たぬきち商店って物を売るだけじゃなくて買ってくれたりもするんだよ」
八幡「買う?」
結衣「そうそう♪魚とか虫とか家具とか色々買ってくれるの。主な収入はそれかな」
八幡「マジで何でも買ってくれるのか?」
結衣「そうだよ。あたしなんてこの前ゴキブリ買って貰ったもん」
八幡「マジかよ……てかゴキブリって」チラッ
結衣「あ、あれだよ!別に部屋が汚い訳じゃないんだよ!木に止まってたのを取ったんだからね!」
八幡「お、おう……」
結衣「と、とにかく!そうやって色んな物を売ってお金を稼いでるんだよ!」
ガチャ
雪乃「さっきから人の家の前で何を騒いでるのかしら?」
結衣「あっ!ゆきのんやっはろー」
雪乃「こんにちは由比ヶ浜さん、ん?」
八幡「……」
雪乃「由比ヶ浜さん、あなたの隣にいる。そのぬぼーっとした人は?」
八幡「ぬぼーって……」
結衣「あっ、この人は比企谷くん、今日引っ越して来たばかりの新人さんだよ」
雪乃「そう、こんにちは比企谷くん。私は雪ノ下雪乃よ」
八幡「ど、どうも比企谷八幡です」
結衣「比企谷くん、大人びてるけどゆきのんもあたし達と同い年なんだよ」
八幡「へぇ、そうなのか」
雪乃「別に大人びていないわ。由比ヶ浜さんが幼すぎるのよ」
結衣「えへへ♪そうかな?」
雪乃「今のは誉めたわけではないのよ?」
結衣「えっ!?もー!ゆきのん酷いよ!」
雪乃「これからよろしくね。比企谷くん」
八幡「よ、よろしく」
結衣「あ、無視した!」
雪乃「それで、さっき騒いでたのはなんだったの?」
結衣「比企谷くんに色々と教えてたんだよ。お金の稼ぎ方とか」
雪乃「ちゃんと教えたのかしら?例えば、たぬきち商店にゴミを売りに行ってはいけないとか」
結衣「ゆ、ゆきのん!」
八幡「?」
雪乃「たぬきち商店が何でも買ってくれるからってゴミを売りに行った人がいたのよ」
八幡「……」チラッ
結衣「あぅ……い、言わないでよぉ」
雪乃「あら、私は由比ヶ浜さんとは言ってないわよ?」
結衣「ゆきのんのイジワル!」ポカポカ
雪乃「ふふ♪」ニコニコ
八幡「……」
結衣「むぅーっ」プクー
雪乃「機嫌を直して由比ヶ浜さん」ツンツン
結衣「まったく、ゆきのんはたまにイジワルをするよね」
雪乃「由比ヶ浜さんの反応が面白くてついね」
結衣「むっ」
雪乃「……」ナデナデ
結衣「えへへ」ニコニコ
八幡「……」
結城「これから比企谷くんに村の人達を紹介しに回るんだけど、ゆきのんも来る?」
雪乃「ごめんなさい。このあと用事があるの」
結衣「そっか、用事があるならしょうがないね。行こっか比企谷くん」
八幡「あいよ」
雪乃「あっ、比企谷くん」
八幡「なんだ?」
雪乃「もしも、由比ヶ浜さんに変なことをしたらタダでは済まさないから」
八幡「いや、しないから」
雪乃「そうかしら?あなたのその腐った目を見ていると不安で仕方がないのだけど」
結衣「だ、大丈夫だよ!……大丈夫だよね?」
八幡「安心しろ、俺は常識的な判断ができる人間だ。常識人すぎて皆が俺を頼って色々なことを任せてくるまである」
雪乃「それは押し付けられてるだけではないのかしら?」
八幡「……」フイッ
結衣「あっ、図星だったんだ」
雪乃「比企谷くんが可哀想な人だと分かったところで私は失礼させてもらうわね」
結衣「じゃあねー」
ガチャン
結衣「よし!張り切って行こう!」
八幡「ああ」
結衣「もー!比企谷くんテンション低すぎ!」
八幡「お前のテンションが高すぎるんだよ」
結衣「むぅーっ」
八幡「ほら、次行くぞ」
結衣「あっ!もー!ってか比企谷くんが先に行っても意味ないじゃん」
八幡「大丈夫だよ。役場で村の地図を貰ってるから」
結衣「え?地図?」
八幡「あぁ、ほら」スッ
結衣「ホントだ」
八幡「お前は貰わなかったのか?」
結衣「あ、あたし!?」
八幡「そうだ」
結衣「えっと……そのぉ……」モジモジ
八幡「?」
結衣「な、無くしちゃった」
八幡「……」
結衣「そんなダメな子を見るような目で見ないでよぉ……」
八幡「いや、ダメな子だろお前」
結衣「うぅ……」
八幡「はぁ……後で役場に行くから、その時にペリミさんに言って代えの地図を貰っとけ」
結衣「あるかな?」
八幡「代えの地図くらい置いてあるだろ」
結衣「うん」
八幡「もしなかったら俺の地図をコピーすればいいしな」
結衣「ありがとう比企谷くん」ニコッ
八幡「お、おう」
結衣「よーし!次の村人の所に行くよ!」
八幡「だからテンション高いっての」
結衣「ほらほら、早く!」
八幡「へいへい」
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次作期待