モバP「寒い季節になったなあ...」 (38)
P(ハゲ)「主に俺の頭が」
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ちひろ「なに途方に暮れているんですかプロデューサーさん?」
禿P「いえなにも?ただ寒くなってきたなあと思いましてね」
ちひろ「頭がですか?」
禿P「絶対聞こえてたでしょうちひろこの野郎」
ちひろ「本当にそう言ってたんですか?これは失礼しました」
禿P「鬼!悪魔!ちひろ!」
ちひろ「でも良かったじゃないですか!下手にハゲ散らかしているよりも見映えがいいと思いますよ、スキンヘッドみたいで」
禿P「ハゲ散らかしてるとか表現酷くないですか?」
禿P「...失う悲しみを知らない人は皆そう言うんですよ。悲しみは...どうしたって埋まらないんですよ」
ちひろ「さいですか...」
ちひろ「それにしてもプロデューサーさんって気付いたらハゲてましたよね。フサフサのプロデューサーさんのイメージは残ってるんですけど...過程が思い出せませんよね」
禿P「いやあ俺も気付いたらこれでしたからね」
梨紗「へー、どうして気付かなかったの?自分のことでしょ?」ヒョコッ
禿P「どっから湧いて来たんだ?」
ちひろ「ああなるほど、梨紗ちゃんはハゲた後のプロデューサーさんしか知らないから...」
梨紗「Pってもともと頭が薄...ハゲてたんじゃないの?」
禿P「言えよ!そのまま言えよ!いやハゲだけど!頭が薄いレベルではないけど!」
禿P「さすがに昔からハゲちゃいねーよ...昔はフサフサだったんだ」
梨紗「フッ」
禿P「オイ」
ちひろ「一応嘘じゃないのよ梨紗ちゃん」
梨紗「ふーん」
禿P「あーこれ信じてないやつだハゲればいいのに」
梨紗「で?どうしてハゲたの?」
禿P「どうしてって言われてもなあ...」
梨紗「アンタ本当に何も覚えてないの?」
禿P「いや、覚えてるには覚えてるんだが...。まあいいだろう...俺の覚えてる限りのことを話そう」
禿P「数年前ー...」
禿P「昔はフサフサだった...事務所が出来た当時はな。俺含め計三人のプロデューサーからこの事務所は始まったんだ」
禿P「プロデューサーなんて勿論初めてだったから...俺達三人はもう失敗の連続だった。昔はフサフサだった俺も数えきれないミスをした」
禿P「やっとアイドルをスカウトしても、当時は女の子の扱いもよく分かってなかったからな...そのせいで最初はバッドコミュニケーションの連続だった。昔はフサフサだった頭を掻きながら悩んだものさ」
禿P「だが三人で力を合わせながら昔はフサフサだった俺は着実に実力を付け、アイドルのこともプロデューサーのこともよく理解していった」
禿P「やっとの思いでライブして、なんとか成功させて、第一歩を踏み出せた時は...もう最高だった。一生この仕事を続けようと思ったよ。昔はフサフサだったんだ」
梨紗「ちょっと待って」
禿P「ん?なんだ?まだ始まったばかりなんだが」
梨紗「フサフサフサフサフサフサフサフサうるさいんだけど!?」
禿P「そうか?心地いいくらいだが」
梨紗「実は言いたいだけなんでしょフサフサって!強調したいだけなんでしょ!」
禿P「だって、ムフン、事実だしさ」
梨紗「昔は昔はって現実を見なさいよ!今のアンタはハゲでしょ!」
禿P「るせー少しくらいは見栄はってもいいだろうが!昔は本当にフサフサだったんだよ!」
ちひろ「プロデューサーさん、話が進まないんで昔のことは忘れてください」
禿P「クソッタレェ!」
禿P「確かにフサフサだったんだよ...」ブツブツ
梨紗「はいはいそれでそのあとどうなったの?」
禿P「...まあなんとか一人前のプロデューサーになったからな、気付けば俺は何人もプロデュースしてた」
禿P「あとの二人も、結構な数プロデュースしてたなあ」
ちひろ「スカウトやらオーディションやらで全体の人数も増えてましたしね」
禿P「だがそんなある日、社長があることを提案してきた」
禿P「これが全ての始まりだった...この辺りから俺は自分の髪型を覚えていない」
梨紗「あること?」
禿P「ああ」
第一回シンデレラガール選抜総選挙!
あれ梨沙の字が違う
脳内で直しといてくれると助かる
禿P「実際これを聞いた時は何とも思わなかったんだ。ああ誰が一位になるのかなくらいにしか思ってなかった」
禿P「だがたった一言で状況は変わった」
禿P「一人のプロデューサーがこう言った」
『まあ俺の担当アイドルがぶっちぎりかな』
禿P「その瞬間、一緒に切磋琢磨してきた俺達三人の仲に初めて亀裂が走った」
禿P「なんとしても我がアイドルを多くランクインさせなくては!シンデレラガールにしなくては!そう魂が叫んでいたんだ」
禿P「それからというもの、俺は死に物狂いで仕事をこなした」
禿P「営業をした」
禿P「沢山アイドルとコミュニケーションをとった」
禿P「一分一秒も無駄に出来まいとどんな時でも走って行動した」
禿P「何度も倒れそうになったがその都度ドリンクという名の劇薬で体をいじめながら働いた」
ちひろ「私のドリンクをそんな風に言わないでください!」
禿P「今思えばあの頃の俺は馬鹿正直だったし事務所もまだ有名じゃなかったから、全てのことを自分の体一つでこなそうとしていた」
禿P「寝不足にもなりかけた、でもその度に俺の体は少しの睡眠でも平気なように進化した」
禿P「食事時間が減ったから必然的に摂取量も減った、でもその度に俺の体は少ない栄養でも平気なように進化した」
禿P「ちひろさんに対するヘイトゲージがピークに達しかけた、でもその度に俺の心はヘイトゲージの上限を上げ続けることでヘイトが溜まっても平気なように進化した」
禿P「それでも我慢出来ない時は寝ているちひろさんにいたずらをしても平気なように進化した」
ちひろ「後半二つはおかしくないですか!?」
禿P「俺はひたすら自分とアイドルしか見てなかった」
禿P「進化しながら仕事をこなし数十分の睡眠を取る毎日」
禿P「あまりに凄まじかった」
禿P「だからその間自分の周囲で何が起こってたのか、仕事に関係ないことは覚えてないんだ」
梨沙「...」
禿P「そして選挙の結果が出た」
禿P「上位30人のうち俺のプロデュースしたアイドルが12人、トップ5にシンデレラガール含め4人はいった」
禿P「これは他二人より多い数だった」
梨沙「それって凄いことよね...お疲れ様」
ちひろ「シンデレラガールにもしてしまうんだから驚きですよねえ」
禿P「そして全てが一段落した頃、つまりようやく落ち着いた日々を取り戻した頃...」
禿P「俺は初めて自分がハゲていることに気付いた」
梨沙「...つまり、結局アンタはストレスでハゲたってこと?」
禿P「まあそうなるのかな」
ちひろ「それ以外に何かハゲるような理由があったとしてもまるで覚えてませんしね...」
禿P「まあ、アイドル達にこの髪と引き換えに夢を見せて、叶えてあげることが出来た...と考えればいいんでしょうかね」
ちひろ「プロデューサーさんの髪と引き換えに叶う夢とかなんか気持ち悪いですね」
禿P「母ちゃんなんでかないつだってハゲへの風当たりは強いよ」
禿P「ま、そういうわけだ梨沙。哀しくなるからこの話はおしまいだ」
禿P「そら、仕事だろ。さっさと行った行った」シッシッ
梨沙「...」
禿P「...ん?まさか行きたくないとかか?」
梨沙「もちろんちゃんと行くわよ!」スッ
梨沙「...」
禿P「なんだ?俺の顔になんかついてるか?」
梨沙「...アンタ、もう無理はやめなさいよ」
梨沙「倒れたらみんなも心配するんだから!」ガチャ バタン
ちひろ「...愛されてますね」
禿P「...ちょっとウルッときました」
ちひろ「さて、私たちも仕事しますか」
禿P「あっ俺の分は終わりましたんで分けてくれればやりますよ」
ちひろ「えっ!?...ありがとうございます」ヨイショ
禿P「お気になさらず」ズオオシュバッガガッサッツルツルバギャッ
ちひろ「...相変わらず驚異的な作業スピードですね」
禿P「えーと、このあとは...ああ、新作CDのレッスンかな。そろそろみんな来るか」
愛梨「おはようございます~」ガチャ
禿P「おう、おはよう愛梨」
ちひろ「あ!そうですプロデューサーさん!愛梨ちゃんに聞けばいいんですよ!」
禿P「何をですか?」
ちひろ「プロデューサーさんの過程ですよ、過程!うっすらハゲの時の!」
禿P「あー...なるほど。いや別に聞きたくないんですけど」
愛梨「なんの話ですか~?」
ちひろ「愛梨ちゃん、第一回総選挙の時のプロデューサーさんを覚えてる?」
愛梨「え?Pさんのことですか?」
ちひろ「そうそう、頭的な意味で」
禿P「どんな意味ですか」
愛梨「えーっと...海藻を良く食べててー、鏡をよく見ててー...」
禿P「やめて!!それは最近の俺の日課だから!!」
愛梨「あ、選挙の時でしたね!えーと、Pさんに髪がありました!」
禿P「あれ過去形ってこんなに破壊力あったっけ」
ちひろ「ハゲになる直前とか覚えてる?」
愛梨「ん~...フサフサのPさんはすぐ思い出せるんですけど...」
ちひろ「やっぱりみんな覚えてないみたいですね...。もしかして一晩で全部抜けたとか...」
禿P「それ枕元ホラーになってそうですね」
愛梨「Pさんはそんなに自分の頭が気になるんですか?」
禿P「ええそりゃね愛梨さん、風当たりが強いですからね」
愛梨「そうなんでしょうか...」
禿P「電車に乗ったら視線が痛いし甥っ子にはお坊さんだと思われるしうちのお笑い担当には『Pしゃんのあt心も照らす...太陽になりたいよう...』とか言われるし」
禿P「俺の元気の源は『せんせえの頭綺麗だね!』って言われるしな」
ちひろ「なんと無邪気な暴力...」
禿P「というかなんだかんだでみんな俺のことハゲネタでいじってきますからね」
ちひろ「それだけ愛されてるってことですよ」
禿P「まあ確かに、不思議とそんな傷つきませんよねえ」
禿P「ハゲに気付いた時はショックだったし嫌だったはずなんですけどね」
ちひろ「不思議なもんですねえ」
愛梨「...Pさんは気付いてないかもしれませんけど、みんなPさんを頼りにしてるんですよ」
禿P「そりゃ嬉しいなあ」
愛梨「優しくて、面白くて、辛いときに助けてくれて、でも時には突き放して、そして私たちの夢を真剣に考えてくれてる...」
愛梨「私たちは、そんなPさんが大好きなんです!だからたとえPさんが太っていても、小さかったとしても、髪がなかったとしても...」
ちひろ(髪がないのはたとえじゃないですね)
愛梨「私たちはPさんを大好きでい続けます!...だから頭のこと、そんなに気にしないでくださいね?」
禿P「おー、愛梨は思い切ったことを言うなあ」
愛梨「ええっ!?私そんな凄いこと言っちゃったんですか~!?」
禿P「でも愛梨」
愛梨「は、はい?」
禿P「ありがとな」
..........
禿P「そうだ愛梨、外はどうだった?」
愛梨「とっても寒かったんですよ!もうビックリして目が覚めちゃいました!」
禿P「おいおい、秋田生まれだろ」
禿P「まあでも、そんな季節なのか...」
藍子「おはようございます」ガチャ
輝子「フ、フヒ...お、おはよう...」
茜「おはようございます!今日も張り切っていきましょう!」
禿P「おう、おはようみんな」
禿P「あれ、裕子はまだか?」
今年も寒い季節になりました
裕子「おはようございます皆さん!早速ですがエスパーユッコのモーニングサイキックショー!昨日出来立てホヤホヤの超能力をお見せしましょう!」バーン
裕子「見ててください...この水晶玉に念を送ると...未来がここに映ります...映ります...」ムムム
ですが季節に関係なく
禿P「...おい裕子」
裕子「水晶玉が喋った!?」
禿P「それ占いだろうがあああああああああ!!!!!!!!」
俺の頭への風当たりはいつも優しく暖かいです
終劇!
今回はなんかハゲが書きたくなった
実際世の中はハゲへの風当たりが強すぎると思います(半ギレ)
見てくれた人はありがとうございました
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