―王宮
王様「おお、勇者よ、旅に出たまえ。」
勇者「…はっ。」
大臣「果たして、彼は帰ってくるでしょうか?」
王様「それは余にも分からぬ。だが、餌をくれてやったのだ。せめて挑んでもらねばな。」
大臣「餌ですか…ひのきの棒に木の盾、そしてわずか100Gとは随分お安いもので。」
王様「何を言う。彼の住処であった孤児院を維持してやろうとしただけでも、十分なものであろう。」
大臣「そういえば、そんな約束がありましたな。まさか、王女様があの孤児院の近くの地を気に入ったがために、土地を強制徴収とはなんともまぁ。」
王様「仕方あるまい。移転先を用意するために、王宮の財政から負担させてやったのだからな。それぐらいの要求に答えては困る。」
大臣「以前派遣された勇者たちも、同じような境遇でしたな。」
王様「それぐらいじゃないと、勇者になろうとする者がおらんのだ。」
大臣「まぁ…最後は見事に死体も残らずに魔王によって消え去る運命だと分かってるのですから、わざわざなる者もおりませんな。」
王様「うむ。しかし、派遣しなければ教会に色々と言われる。これは必要悪だ。」
大臣「必要悪ですか。」
王様「そうだ。彼が行くことで、この国の民は神に許されるのだ。」
―西の村への道
勇者「(俺が死ぬことで、孤児院はあの地でまた続けられるのか…。)」
勇者「なんともまぁ。仕方ないって言えば仕方ないのだろうけど…、やっぱり死にたくはないよな…。」
勇者「ハハハ、勇者が死にたくないとか、格好悪いな。」
勇者「ま、なんにしても生きる努力ぐらいはしていいよね…?」
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