皇帝「朕朕詐欺をやろう」 (25)
――ある帝国の城――
大臣「陛下、隣国の女帝は着々と軍備を整え、いつ我が国に攻め込んできてもおかしくない状況です」
大臣「こちらとしても、何らかの手を打ちませんと……今のままでは確実に我が国は敗北します」
皇帝「分かっておる。しかし、軍備を整えるにせよ和解するにせよ、まずは資金をかき集めねばならん」
大臣「おおっ、つまり増税や産業の活性化を!?」
皇帝「いや、そんな暇はあるまい。もっと手っ取り早く金を稼がねばならん」
大臣「その通りです……が、何か手立てはあるのですか?」
皇帝「朕朕詐欺をやろう」
大臣「ハァ!?」
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大臣「朕朕詐欺って……まさか俺俺詐欺の皇帝バージョン!?」
皇帝「電話を用意せよ」
大臣「ど、どうぞ」サッ
皇帝「……」ピッポッパッ
皇帝「あーもしもし、朕、朕だけどさ、今事故っちゃって、示談金を払わなきゃいけなくなったんだ!」
皇帝「だからお金を――」
相手『ふざけんな!』ガチャッ
皇帝「……」ツー…ツー…
皇帝「もしもし? 朕だけど――」
『間に合ってます』ガチャッ
皇帝「朕、朕だけど……」
『今時振り込め詐欺もないでしょうよ』ガチャッ
皇帝「朕の口座に100万ゴールドほど振り込んで――」
『死ねボケ!』ガチャッ
皇帝「どうしよう……誰も騙されんぞ」
大臣「そりゃそうでしょうよ」
大臣「こうしてる間にも、女帝は軍を率いて攻め込んでくるかもしれないのです! 他の手立てを――」
皇帝「なるほど、妙案を思いついたぞ!」
大臣「妙案ですって!? どんな!?」
皇帝「女帝に直接朕朕詐欺をすればいい! そうすればあいつから資金を引き出せるし、一石二鳥だ」
大臣「ハァ!?」
大臣「ちょっ、本気でやるつもりですか!? んなことしたら、下手すりゃ戦争に――」
皇帝「……」ピッポッパッ
皇帝「……」プルルルル…
――
女帝「はい、もしもし」
皇帝「あ、女帝?」
――
女帝(この声は隣国の皇帝!)
女帝「わらわになんの用じゃ? 我が国の軍備拡張を恐れて、ようやくわらわに服従する気になったのか?」
皇帝「えぇと用件ってのは――」
大臣「やめて下さい! 戦争になっちゃいますよ!」ガシッ
皇帝「うわっ! 何をする!」
――
女帝「なんじゃ? よく聞こえんぞ、ちゃんと喋れ」
皇帝「朕の声聞こえる? 朕、朕なんだけど、お前の軍資金から100万ゴールドほど欲しいんだ」ドタバタ
大臣「受話器を置いて下さい!」ドタバタ
――
女帝「!!!」ドッキーン
朕の……ドタバタ……朕朕……ドタバタ……お前の……ドタバタ……万……ドタバタ……欲しい……
チンノ……チンチン……オマエノ……マン……ホシイ……
女帝「おぬし……ようやくわらわの気持ちに気づいたのじゃな!?」
女帝「分かった! 明日にでもわらわはおぬしのもとに嫁ぎ、わらわの初めてをくれてやろう!」
女帝「おぬしも勝負パンツを用意しておけよ!」ガチャッ
皇帝「……切られた」
大臣「当たり前ですよ! ところで女帝は何と言ってたんですか? まさか戦争……!?」
皇帝「おぬしに嫁ぎ、わらわの初めてをくれてやる、とか言ってた」
大臣「ハァ!?」
女帝「諸君、わらわは決めたぞ」
女帝「わらわは隣国に攻め込むのをやめ、皇帝の妻になることになった。それを受け、明日より両国は合併する」
側近「なんですって!?」
側近「まさか、近年軍備拡張を進めていたのは、隣国の皇帝を屈服させ結婚するためだったのですか!?」
女帝「その通りだが?」
側近「そんなスイーツな理由で、軍備を拡張したり、勝手に国同士の合併を決めるなんて……」
側近「やっぱり貴方は最高です!」
女帝「当然じゃ」
次の日、両国の国境で盛大な結婚式が行われる事になった。
皇帝「どうして朕とお前が結婚することになったの?」
女帝「また白々しいことを! おぬしがわらわにプロポーズしたのではないか! あんなにも露骨に!」
皇帝「したっけ? ……まあいいけど」
女帝「今夜は激しくし、て、ね」
この歴史的な事件の発端が“朕朕詐欺”であったことは、あらゆる歴史書に記録され――るわけがなかった。
―完―
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