響「自分はこしあんの方が好きだぞ」 (28)
春香「え?」
千早「え?」
響「……え?」
春香「…………」フー
千早「…………」ヤレヤレ
響「えっ? えっ? 何この空気」
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春香「まったくもう……このはいさいは」
千早「本当、はいさいには困ったものね」
響「…………」
春香「ちょっと千早ちゃん! はいさいこっち見てるよ!」ヒソヒソ
千早「あらやだ。もしかして聞こえちゃったかしら?」ヒソヒソ
春香「もー。聞こえるように言ったくせにー!」
千早「あら、ばれちゃった?」
春香「あははっ」
千早「うふふっ」
響「うぅ……もうその『陰湿な女子高いじめネタ』は飽きたよぅ……」
春香「いやいや、そんないじめだなんて滅相もございませんよ我那覇さん」
千早「そうですよ、我々のような底辺アイドル風情がトップアイドルの我那覇さんに対してそんな」
響「うぅ……その『敬っているようで内心バカにしているアイドル業界あるある会話ネタ』も飽きたぞ……」
春香「もう! 響ちゃんったらワガママばっかり!」
響「えぇ!? そこで逆切れ!?」
千早「そうよ春香! なんでそこで逆切れなの!?」
春香「え、あ、あれ? 千早ちゃん?」
千早「こんなにかわいい我那覇さんをこんなに困らせて! 恥を知りなさい恥を!」
春香「え、えぇ……?」
千早「恥を! 知りなさい!」
春香「は、はい……ごめんなさい」
千早「分かればいいのよ」
春香「……なんか納得いかない……」ブー
響「あはは。春香ったら怒られてやんの。やーいやーい」
春香「…………!」ワシャワシャ
響「あっ、あっ、無言で頭わしゃわしゃしないでぇっ……!」
千早「…………」ピッ
響「千早も黙って撮影しないで!」
千早「……ふぅ。最近のスマホは便利ね、春香」
春香「本当だね千早ちゃん。今の動画後で送ってね」
千早「もちろんよ」
響「うぅ……何勝手に二人で雨降って地固まる感出してるのさ……」
春香「…………」
千早「…………」
響「…………」
春香「響ちゃん、今ちょっと上手い事言ったって思ってるでしょ」
響「うぅ……本当はそんなに上手くなかったことくらい分かってるからそこは流してほしかったぞ……」
千早「そんな自己反省する我那覇さんも!」
春香「も!」
響「え? え?」
千早「かわいい!」ワシャワシャ
春香「かわいい!」ワシャワシャ
響「あーん! だからこれやめてってばぁ……!」
響「うぅ……もう髪ぼっさぼさになっちゃったじゃんかぁ……ぐすん」
春香「でもこれはこれで寝起きっぽい感じで最ッ高にかぅわいいよね」
千早「ええ。もう最ッ高にかぅわいいわ」
響「そんな不自然なイントネーションで褒められても全然嬉しくないぞ……」
春香「響ちゃん」
響「え? な、何? 急に真顔になって……」
春香「一生のお願いだから、『ふみゅう……もう朝ぁ……? 響、まだおねむねむだよぉ……』って言ってみてくれないかな」
響「どんだけ安いんだよ春香の一生」
千早「所詮その程度の女なのよ。天海春香という女はね」
春香「あーっ! この突然鋭角に切り込んでくる千早ちゃんのdisがたまらない!」
響「ねぇ、とりあえずそろそろ話を本題に戻さない?」
春香「本題?」
響「うん」
春香「本題って何だっけ? 千早ちゃん」
千早「さぁ……?」
響「いやほら、あんパンの話」
千早「ああ、『何故アンパンマンはばいきんまんを完全に淘汰しないのか』についての考察だったわね」
響「違うからね!?」
春香「それはあれだよ、ばい菌が完全にいなくなったらかえって困るからだよ。ほら、ビフィズス菌とかさ」
千早「そうね、春香。ビフィズス菌は必要だものね」
響「いや、ビフィズス菌はばい菌には入らないんじゃないの? ていうか仮にそうだとしても、ばいきんまんはビフィズス菌じゃないんじゃ」
千早「そんなこと知らないわよ! 私生物選択じゃないもの!」
響「え、えぇー……」
千早「我那覇さんのバカ! もう知らない!」ダッ
春香「千早ちゃん!」ガシッ
千早「!? 春香!?」
春香「ダメだよ……千早ちゃん」
千早「もうほっといて! 私のことはほっといてよ!」
春香「ほっとかない!」
千早「!?」
春香「私……千早ちゃんのこと、ほっとかないよ」
千早「…………」
春香「だって私……また千早ちゃんと一緒に、ヨーグルト食べたいもん」
千早「……春香……」
春香「だからまた一緒に……ビフィズス菌。ね?」
千早「…………」コクッ
響「……春香って、上手くまとめようとして失敗すること結構多いよね」
春香「う、うるさいな!」カァア
響(あ、素で照れてる)
千早「……素の春香が、実は一番可愛いのかもしれないわね」
春香「千早ちゃんも急に素にならないで!」
春香「ご、ごほん! えっと、あんパンの話だったね! あんパン!」
響(まだちょっと照れてる)ププッ
千早(さっき動画撮っておけば良かったわね)ニヤニヤ
春香「……何? 二人とも」ムスー
響「いや別になんでもないさー」
千早「ふふっ。春香ってば本当めそ……げふんげふん、何でもないわ」
春香「(分かるけどもうツッコまないでおこう)……えっと、響ちゃんはこしあん派だっけ?」
響「うん、そうだよ」
千早「照れてツッコむ余裕がなくなってる春香も可愛いわね」
春香「ち、千早ちゃんもそろそろいいかな!」
響「あはは、春香ってばまだ顔赤いぞ」
春香「…………!」サッ
響「おっと、そう何度も同じ手には――」バッ
春香「と見せかけて!」ガシッ
響「ひゃっ!?」
千早「ああ! 我那覇さんの可愛いおなかを! 春香、何をする気!?」
春香「ふふふ……上段ガードにより隙ができた響ちゃんのおなかを鷲掴みにする作戦だよ!」ワキワキ
響「!? あぁっ! や、やめてっ! く、くすぐった……」
千早「はーい、いいよいいよ響ちゃーん! もっと哭いてみよっかー」
響「キャラ変早いよ千早! ていうか動画撮らないで!」
響「はぁ……はぁ……なんで最後はこうなるんだ……」
春香「まああれだよ、そういう役回りなんだよ」
千早「役得ってことね」
響「なんか違う気がする……」
春香「でも、なんでこしあん派なの? 響ちゃんは」
響「え? なんでって……こしあんの方が好きだからだけど」
春香「じゃあなんでこしあんの方が好きなの? 響ちゃんは」
響「うーん……こしあんの方が美味しく感じるから、かなあ……」
春香「……だってさ。どう思う? 千早ちゃん」
千早「いいんじゃない?」
春香「うん、そうだよね……って、あれ?」
千早「? 何かしら?」
春香「いや、そこはほら、もっと響ちゃんを責めて涙目にする流れじゃ……」
響「えっ!?」
千早「えぇ、確かにそれも考えたけど……」
春香「で、でしょ? なら……」
千早「でも、順番的に次は春香のターンじゃないかしら?」
春香「うぇえ!? わ、私!? でも私もさっき……」
千早「で、春香はどうなの?」
春香「え、えぇ……わ、私は……」
響「そうだそうだ、どうなんだよ春香ー!(何かわかんないけど、とりあえず助かったみたいだぞ……)」
春香「黙りなさいスネ夫」
響「スネ夫!?」
春香「いや、なんかスネ夫っぽかったからつい」
響「何だよそれ……」
千早「で、どうなの春香。そろそろリーダーとして、はっきりしなさい」
春香「リーダー関係無いよね!?」
千早「そうね、ぶっちゃけ矢吹さんの件がなかったら春香がリーダーになっていなくてもあんまり関係無かったわね」
春香「ああっ! 誰もが思っていても言わなかったことをあっさりと!」
響「まあでも確かに、可奈の問題が出てくる前の春香って、特にリーダーっぽいことやってなk」
春香「私はつぶあん派かな!」
響「わっ、びっくりした」
春香「私はつぶあん派かな!」
響「う、うん。それは分かっ」
春香「だって私は……天海春香だから!」
響「そ、そうだね」
春香「…………」
響「…………」
春香「…………」チラッ
千早「……あ、ごめんなさい。さっきの我那覇さんの動画を観ていて聞いてなかったわ」
春香「ひどいよ千早ちゃん!」
響「自由だなあ」
千早「で、春香はなんでつぶあんが好きなの?」
春香「うーん、やっぱりつぶつぶ感があるからかなあ」
千早「そのままね」
響「ひねりがないな」
春香「……今日はやけに強気だね? 響ちゃん」ムギギ
響「あ、ほ、ほっへひっはひゃはいへ……」
春香「ごめんなさい、は?」
響「……ほ、ほへんなひゃい……」
春香「もう。すぐ調子に乗るのは響ちゃんの悪い癖だよ」パッ
響「うぅ……なんか理不尽だぞ……」
千早「……っふ……我那覇さんのこの表情……いい……」
春香「本人が目の前にいるのにずっと動画観てる……」
響「これはこれでなんか腹立つな……」
春香「ていうか! そもそも千早ちゃんが聞いたんじゃん!」
千早「え? 何が?」
春香「もー! あんパンの話!」
千早「ああ、そういえばそんなこともあったわね」
響「そんな昔の話みたいに」
千早「そうね、大切なのは昔より今よね」
春香「え? ま、まあ……そうだね」
千早「春香。我那覇さん」
春香「はい」
響「どしたの、改まって」
千早「未来は今の延長よ。だから今を大切に。悔いの無いように」
春香「う、うん」
響「そ……そうだね」
千早「だから私は――……今、一番食べたいこれにするわ!」バッ
春香「あっ!」
響「ああっ!」
春香「わ、私が食べたかった『なめらかしっとり高級クリームパン』を!」
響「ズルいぞ千早! 自分もそれが食べたかったのに!」
千早「あら? 二人とも何を言っているの? 春香にはつぶあんのあんパンが、我那覇さんにはこしあんのあんパンがあるじゃない」
春香「そ、それはそうだけど! でもそうじゃないでしょ!」
響「そうだぞ千早! 今までのせめぎ合いはその『なめらかしっとり高級クリームパン』を巡る高度な情報戦だったのに!」
千早「まあそれはそれとして」モグモグ
春香「あー! もう食べてるし!」
響「あーん! 千早のばかーっ!」
ガチャッ
P「おーいお前ら。もう食事済ませたか? そろそろ……」
春香・響「プロデューサー(さん)!」
P「うおっ。何だ? ……もしかして、パンだけじゃ足りなかったか? でも収録前にあんまり食べ過ぎるのも……」
春香「そうじゃなくて! 千早ちゃんが!」
P「? 千早がどうかしたか?」
千早「……プロデューサー」
P「おう、千早。何かあったのか?」
千早「いえ。何でもありません」
P「そうか? ならいいんだが……」
千早「差し入れのパン、どうもありがとうございました。とても美味しかったです」ペコリ
P「そりゃよかった。音無さんに教えてもらった店で買ってきたんだよ。テレビでも取り上げられてたらしい」
千早「そうでしたか。どうりで美味しかったはずです」
春香「むぅ……千早ちゃんめ……いけしゃあしゃあと……」
響「は、春香!」
春香「? どうしたの響ちゃん。リスみたいにほっぺ膨らませて……」
響「こ、このあんパンめっちゃくちゃ美味しいぞ! 春香も食べてみてよ! はい、つぶあんの方!」モグモグ
春香「ええ……何あっさり懐柔されて……って何これ! 美味しっ!」
響「でしょでしょ!?」
春香「はふぅっ……こ、このつぶつぶ感がたまらにゃい……」モグモグ
響「自分の食べてるこしあんのもとーっても美味しいぞ! すっごく舌触りが良くて!」
春香「ホント? ねね、響ちゃん、一口ちょうだい!」
響「いいよ! はい!」
春香「ありがとー! じゃあ私のもあげるね!」
響「わーい!」
P「お、お前ら……そろそろ収録に……」
春香・響「!! 美味しい!!」
P「あー……完全に聞いてないな、これ……」
千早「……雨降って地固まる、とはこのことですね」
P「えっ?」
千早「上手いこと言いましたね、今の私」
P「え? そ、そう……なのか?」
千早「ふふっ」
了
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