京太郎「修羅場ラヴァーズ」 淡「あーいらーぶゆー」 (1000)

・京太郎スレ
・短編集的、オムニバス的な感じです
・安価もあるかもしれない
・ヤンデレとかあるかもしれない
・話によって京太郎が宮守にいたり臨界にいたりするのは仕様です
・ライブ感は大事


まとめ
http://www62.atwiki.jp/kyoshura/


前スレ
京太郎「修羅場ラヴァーズ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400743823/)
京太郎「修羅場ラヴァーズ」 健夜「幸せな、お嫁さん」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401090438/)
京太郎「修羅場ラヴァーズ」照「ずっとずっと、愛してる」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402195940/)
京太郎「修羅場ラヴァーズ」姫子「運命の、赤い糸」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403418602/)
京太郎「修羅場ラヴァーズ」明華「夢でも、あなたの横顔を」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404137728/)
京太郎「修羅場ラヴァーズ」一「キミと一緒に、抱き合って」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405089598/)
京太郎「修羅場ラヴァーズ」小蒔「あなたしか見えなくなって」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407668440/)
京太郎「修羅場ラヴァーズ」 由暉子「誰よりも、何よりも」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410718540/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1415203531

「どこ行ってもーたんやろ……」

「んー? なんか失くしたん?」


家の中をあっちこっちへ歩き回る妹の様子に、寝そべりながらテレビを眺めていた洋榎も流石に落ち着かない。

恐らくは探し物か何かだろうと当たりをつけて、洋榎は上半身を起こして絹恵に声をかけた。


「いやな、見つからへんのよ。この前、京太郎と一緒にUSJ行ったんやけど……」

「だから、何がや」

「写真。私と京太郎で記念にとったんよ」

「ほー……」


ポリポリと頬をかく姉の態度からは、何も期待できそうにない。

絹恵は眉をハの字に曲げて、困った風に溜息を吐いた。


「まぁ、オカンにも行った方がええなソレは。三人で探せばどっかで見つかるやろ」

「うーん……」

妹と一緒に写真を探しても見付からず。

かと行って明日にも学校があるために、いつまでも探しているわけにはいかず。


「……はぁ」


自分の部屋に戻った洋榎は、部屋の隅のゴミ箱を蹴飛ばした。

勢い良くひっくり返されたゴミ箱からは、ティッシュや駄菓子の箱といったゴミ屑が雪崩出る。

その中に混ざって出て来たのは――皺だらけになった、笑顔を浮かべる妹の写真。


「……ホンマに、なぁ……」


乱暴に破り捨てられているが、恐らくは隣に誰かもう一人が映っていたのだろう。


「……なんで、絹やねんなぁ……」


くしゃりと、洋榎の手の中で妹の笑顔が歪む。

怒りなのか恨みなのか、自分の感情の底にあるものが何なのかはわからない。

ただ、玄関に飾られた写真を見て――許せないという想いが、洋榎を突き動かした。

京太郎。洋榎の大好きな男子。

一緒に遊ぶ幼馴染から、初恋の人に変わったのはいつからだったか。

ただ、京太郎の目線は母に向けられていたから――母のようになれば良いと思った。

誰よりも強い雀士になれば、振り向いてくれると思った。


「……」


だが、今は。

その目線が、妹に向けられている。

何もしてこなかった、妹に。


「……ま、そりゃそうか」


洋榎も、頭ではわかってはいる。

妹は何も悪くない。

だから、絹恵に直接この気持ちをぶつけることができない。

尊敬と信頼の眼差しを向ける妹に、醜い情念を向けられない。


「こんなんやから、ダメやねんなぁ」


臆病な自分は、母には似ても似つかず。

女としての魅力は、妹に及ばない。

わかってはいる、わかってはいるが――


「おねーちゃん? おかーさんが、ゴハンやって」

「……ん。わかったー」


――やめられない。

扉越しに声をかけてくる妹に返事をしながらも、写真に映る恋敵を痛め付けなければ、気が済まない。

降り積もる想いを吐き出す場所を、漸く見付けられたのだから。


「……お、この匂いは唐揚げか! すぐ行くで!」


だから、洋榎は絹恵の姉でいることができる。

自分の中で、気持ち悪い感情が育っているのを感じながら。

洋榎は、絹恵の姉で有り続けた。

次の更新時には久しぶりの臨海編でー
ネリーとかメグとか本編ではまだ明かされてないエピソードとかあると思いますが、いつも通りノリとライブ感で進んでいきます

ファミレスで部員たちと駄弁る京太郎。

対局中の集中した京太郎。

和に鼻の下を伸ばす京太郎。

咏や靖子にからかわれて、困った顔を浮かべる京太郎。

買い出しで両手いっぱいにコンビニ袋をぶら下げた京太郎。

はやりと良子に街中で絡まれて、戸惑いながらも満更ではなさそうな京太郎。

顔が黒く塗りつぶされた女性と抱き合う京太郎。


京太郎。

京太郎、京太郎。

京太郎、京太郎、京太郎、京太郎。

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京太郎。


「あ……え?」


床、壁、窓――兎に角、部屋の中を見渡す限り全ての場所に貼られた自分の写真。

そして、その全てが――カメラの方に、視線を向けていない。

勿論、写真を撮られた覚えもなければ、許した覚えもない。


「っ!?」

「あー、片目つぶっちゃったか」


不意打ち気味に焚かれたフラッシュ。

振り向けば、カメラを構えた恒子がイタズラっぽく舌を出していた。


「ね、これとか良く撮れてるでしょ? 自信あるんだよねー」


彼女は。

この光景を、異常だと思っていない。

それどころか、自信有り気に壁に貼られた写真を見せびらかしている。

半端だけどいったん区切り
もうちょっとだけ続きます

これは、盗撮だ。

倫理としても、法律としても許されることではない。

だとしても――目の前の恒子は、止まることはないだろう。


「どこ、行くの?」

「っ!」


無意識にした後退り。

手首を掴まれ、逃げることは出来なかった。


「密着取材、OKしたよね?」


ああ、そうだ。

恒子の取材を受け入れたのは、自分だ。

コーチとの練習が長引いて、帰りが遅くなったために、彼女の家に泊まることを選んだのも。


「ふっふっふ……本格的なのは、これからだからね!」


夜はまだ――終わらない。

              ,. --- 、        ____
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       /       ,:´ | { | l\{从 ∨ィ斧ミ、 |    |
    /\'´        /{  | 从{__,. \∨Vソ }イ ト、 ∧{
    ////\ r---  ´八 !∧  ̄   ,:  :.:.:  }/ノ/ リ
.   ///////\      \}∧         u 八/
  //////////〉        込、  __    ,.: /
  ///////// /          }>、   ` イ |从
 ,'//////// /   _      /--、l ` ̄ :,   |--、
.///////// /  イ/////\   {////}   /  「///|
'//////// /´// {////////ー '|////|   ,   |///l|
///////////// |l///////////ヽ// \    |////> 、
////////{/////{!/////////////////}--- /////////> 、




【須賀京太郎】

所属:臨海
立ち位置:マネージャー

【ステータス】

雀力:E とりあえず大体のルール・役は覚えている。点数計算も何とか。麻雀への熱意は普通

雑用:D 普通のマネージャー……だけどお茶の腕前には自信アリ
     日米仏中の食卓に自信を持ってお茶を出すことができる

運動:C 飛んだり跳ねたり投げたりは得意。そこまでズバ抜けて高いわけではない

料理:E いたって普通の男子高校生

学力:C それなりにできる。得意分野は数学

能力:- そんなオカルトありえません


【部のみんなへの印象】

智葉:男より男前。今まであってきた誰よりも凛々しい。憧れの人
   でも家には行きたくない。マジで勘弁して下さい

ハオ:美人。肌キレイ。顔近い。いい匂い
   同級生だけど一緒にいると何だかソワソワする

明華:らっさいらっさい。積極的なアプローチにドギマギ
   据え膳でいいの? と悩むもののヘタレて手が出せず
   手を出したら何故か取り返しのつかないことになりそうな気がする

メグ:同じカップの麺を食った仲。イケメン。ダーリン云々の件はジョークだと思っている

ネリー:一緒にいると凄い安心感。よく膝に乗ってくる。前にどっかで会ったっけ?

アレクサンドラ:監督。痩せている。自分のどこを気に入ったんだろう?


【部のみんなからの印象】

智葉:好青年、だと思う。素質はあるらしいが……?

ハオ:良い匂いがする。家族に紹介したい

明華:運命の人。はやく母に会ってほしい

メグ:ダーリン。エアメールでファミリーに紹介済み

ネリー:一緒にいると凄い安心感。膝は固いけど安心する。前にどっかで会ったっけ?

アレクサンドラ:???

何となく書いてみた育成安価スレによくあるステータス表的なアレ
ふと作ってみたくなっただけなので今後に出てくることは多分ないです。このスレには育成要素とか特にないです
大体こんなもんかー、程度に捉えておいてください

もうちょっと後で臨海編はじめます

ステ表書くのが意外と楽しい
有珠山あたりでギャルゲ的なの書いてみたいけど育成要素入れてヒロインとのイベント入れて日数決めて~ってやってると中々に難しそう


臨海日常編始めます
色々書いたけどそんな気にしなくて大丈夫です

あ、3G回線なのでID被りあると思いますがお気に入りなさらずー

放課後。

帰宅の準備をする生徒や、部室へ向かう生徒。

多くの留学生を受け入れている臨海高校は、少し見渡すだけでも国際色豊かな光景が見える。

京太郎が所属している麻雀部も、日中仏米具独と個性溢れる面子が揃っている。


「さて、と……」


京太郎も、いつまでも教室に残っている理由はない。

教科書を鞄に仕舞い、さっさと教室を後にするべきだが――



京太郎選択肢 下3
1.部室に行く。キャラ名も
2.帰る。帰ってねる。キャラ名も
3.そうだ、今日はバイトがあるんだった。キャラ名も
4.その他。自由安価

「おし、部室行くか」


チャイムが鳴って間もないから、まだ部室には誰もいないだろう。

一応はマネージャーという立ち位置で麻雀部に所属しているのだから、やるべきことはさっさとやろう。

そう決めた京太郎は、鞄を肩に引っさげて一直線に部室へ向かった。




「――ん? まだ京太郎一人か」


牌譜の整理やお茶の準備でもと、雑用に取り掛かり始めた瞬間に開けられるドア。

団体戦メンバーの中では、どうやら智葉が一番乗りのようだった。

今は髪を降ろしていて、眼鏡もサラシもつけていない。


「お疲れ様です」

「あぁ……」


部室を見渡して、智葉は目を細める。

智葉の持つ雰囲気と家庭の事情から、彼女のその仕草は見惚れる程に綺麗ではあるが、同時に背筋を冷たくさせた。


「ふむ――」


サトハ先生判定 直下
1~30 いつも、すまないな
31~60 ……京太郎は、強くなりたいか?
61~98 また、うちに来てくれないか?
ゾロ目 ???

「また、うちに来てくれないか?」

「え゛っ」


智葉の口から出て来たのは、思いもよらない言葉。

うち、というのが智葉の家であることは間違いない。

スキンヘッドのお兄さんや、背中に絵を掘ったお兄さんたちがいる立派な和風のお屋敷だ。

智葉の祖父に気に入られた京太郎は、その意志に関わらず最低でも週一で彼女の家を訪れているのだが――


「部活の後では、時間が取れないからな」

「というと?」

「指導だよ。マネージャーとしての仕事ばかりでは、京太郎も飽きてくるだろう?」


……これは、智葉が付きっ切りで指導してくれるということだろうか。


「お前さえ良ければ、次の日曜に……どうだ?」


京太郎選択肢 下3

1.是非とも、お願いします
2.いえ、実はバイトが……
3.その他

日本で三番目に強い女子高生。

その指導が受けられるともなれば、これからの練習もかなり捗ることだろう。

……が。


「すいません、実はバイトが……」


ピクリと。

彼女の整った眉が、小さく動いた。


「……バイト?」

「はい」

「お前は、小遣いも満足に貰えていないのか?」

「いえ、そういうわけじゃないっすけど」


何と言うか。

地雷を踏んだような、何故だがそんなイメージが頭を過った。


「……なら、仕方ないな。どこで働いているんだ?」

「それは――」


京太郎のバイト先 下3で

「……」

「……どうした?」


何と言うか。

とても、非常に言いにくいのだが。


「まさかとは思うが……人には言えないことをしているのか?」

「言えない、というか……言いにくい、というか……」

「……」


部員に知られたくはないことなのだが。

折角の智葉の誘いを蹴ってまで優先するバイトなのだから――説明せねば、彼女は納得するまい。


「……さ、です」

「ん?」

「――女装バー、ですっ!!」

「……え?」


「……は?」


「は?……え?……ハァ?」


口をあんぐり。目をパチクリ。

智葉のこんな表情は、付き合いの長いメグですら見たことが無いだろう。

正確には、女装カフェ&バー。

秋葉原のとある店舗でやっているニッチな喫茶店である。

名前の響きからは如何わしい香りが漂うが、実体は女装した店員によるメイド喫茶である。

当然ながらお触りといった行為は禁止。健全と言えば健全な経営を行っている。


「……その様子を見るからに、どうやら不本意であるようだが」


一瞬の沈黙の後に。

コホンと、一つ咳払いをして智葉は話を再開した。


「……はい」

「一体なにがどうなって、そんなバイトをすることになったんだ」


京太郎選択肢 下3
1.親戚の繋がりで……仕方なく……
2.クラスメイトに嵌められて……
3.その他

「生活が、ちょっと苦しくて……」

「……そうなのか? 意外だが……」

「あ、いや我が家が特別貧乏というわけではなく」


どちらかと言えば須賀家は裕福な方で。

中学までは長野住まいで、親の仕事の都合で高校に上がると共に東京へ引っ越してきた。

ここで問題になったのは――ペットについての、ことである。


「……カピバラ?」

「はい。カピーっていうんですけど」


京太郎が小学生の頃から一緒にいる家族の一員。

そして、カピバラを飼育するには特別な施設が必要である――が。


「幾分、急な引っ越しだったので。あいつを飼える環境がなくて」

「……確かに、そうだな」


加えて、京太郎の入学と合わさり、タイミングが悪く須賀家にカピー専用の施設を作る余裕はない。

けれども、こんなことでカピーと別れたくはなかった。


「だから、出来ることをやろうって」

「それで、一番稼げるバイトがその………………女装、バーだったと」

「……はい」

京太郎は、引っ越した先ですぐにカピー用の施設を作って貰えると思っていたが。

両親は引っ越しが決まった段階でカピーについては諦めるつもりだった。

つい最近になって、カピーとの別れを知ったが故に――焦って、こんなバイトを始めることになった。


「………ふぅ」


長い長い沈黙の後。

智葉は、腹の底から疲れたような溜息を吐いた。


「それなら……私に、良い考えがある」

「ホントですか!?」

「ああ、そんなバイトに頼らずともどうにか出来る……はずだ」


京太郎としても、目覚めてはいけない世界の扉は開きたくない。

それに金を稼げるとはいえ、所詮はアルバイト。カピバラを飼育する環境が整うだけの金となれば、長い時間が必要になるだろう。


「ちょっと、ついてきてくれ」

「え? でも、部活は」

「今はそれよりも――家族の方が大事、だろう?」

カピバラを飼える環境を整えるだけの余裕を持った家。

できるだけカピーと離れたくない、京太郎の希望。


――命の恩人の頼みだ。それぐらい、お安い御用ってもんさ。


確かに、ここは全ての条件を満たしている。

かかか、と豪快に笑う智葉の祖父は、京太郎と智葉の懇願を快く受け入れた。


「ありがとうございます……何と言ったら良いか……」

「気にしなくていい。お前の人徳だ……だが」



「私たちにここまでさせたんだ。出来るだけ、会いに来いよ」



「はいっ!」


例えこの屋敷がその手の道の人が暮らす住居だとしても、またカピーと会えるならどうってことはない。

むしろ、今までよりずっとこの屋敷に訪れる機会は増えるだろう。

無邪気に喜ぶ京太郎の姿を見て、智葉は満足気に微笑んだ。


「あぁ……そうさ」


『家族』は。

何よりも、大事なのだから。

この強引な舵取り感
プロローグでタコスをネリーに奢ったり買い食いしたりと結構なお小遣い貰ってる臨海京太郎が生活苦ってイメージ付かなかったのでこんな話に
安価スレで綺麗に終わらせる人って凄いと思いました

とりあえずキャラ安価下3でー

流石にすぐにカピーを連れては来れないし、智葉の家で施設を用意するのにも時間がかかる。

会えるのはまだまだ先の日だが、それでも京太郎の心は弾む。


「あーまだかなー。ホントはやく――」

「嬉しそうですね」

「うわっ!?」


ぬっと、京太郎のすぐ斜め後ろからかけられる声。

あまりにも耳元に近く、意識の外からかけられた声。

物理的な意味でも、京太郎の心は大きく跳ねた。


「は、ハオか……ビックリした」

「何か?」

「いや……近いって」


後半歩近付けば鼻息が当たりそうだ。

意識せずとも漂ってくる髪の香りは、色々な意味で参る。

落ち着こうと数歩後退りすると、ほぼ同じタイミングでハオも一歩一歩を踏み出してくる。


「は、ハオ……?」

「これくらい普通です。それで、一体なにが?」


背後には壁。

観念した京太郎は、昨日のことを全て話した。


ハオ判定 直下
1~50 ……私も、会いたいですね。カピーに
51~00 紹介しなければならない家族が増えましたね
ゾロ目 ???

「成る程……そんなことが、あったのですね」

「ああ……そうなんだよ」


事のあらましを聞いたハオは、納得したように何度も頷いた。


「私も……カピーに、会ってみたいのですが」

「あぁ……いいぜ」


それは良い。


「ふふ……家族に紹介しなければならない家族が増えましたね」

「あ、あぁ……? そ、そうか……?」


良いの、だが。


「な、なぁ……ハオ」

「はい?」


相変わらず。


「ちょっと……離れて、くれないか?」


距離が、近い。

顔が近い、どころではない。

当たっているのだ。ハオの、立派なおもちが。

本人はそれに気付いているのかは定かではないが、京太郎にしてみれば気が気ではない。


「ほ、ほら……は、離れてな?」

「これくらい、普通だと思うのですが……」


だが、直接的に突っ込む勇気は京太郎にない。

そして廊下の端であるとはいえ人の通りが全くない訳ではなく、さっきから何人かの生徒に目撃されている。


「あ、汗臭いから!……な?」

何を突っ込むんですかねぇ

嘘ではなく、焦りやら何やらで京太郎の背中からはダラダラと汗が流れ出ている。

このままハオのペースで行けば、頭の中まで煮詰まってしまいそうだ。


「……そうですか?」


が。

その言葉に、ハオは身を退くどころか。


「……とても、良い匂いですが」


背伸びをして、京太郎の襟を掴み、匂いを嗅ぎ出した。


判定直下
1~30 キョウタロー! どこー!?
31~50 私も、混ぜてくれませんか?
51~90 何を……している?
91~00 若さ故の暴走

間近に見ると、ハオは本当に美しい。

手足は白く滑らかで、それでいて女性的な丸みがある。

髪からは相変わらず良い匂いがするし、自然と京太郎の指はその頬へ――




「何を……している?」



――伸びることは、なかった。

空気が切り裂かれたように一変する。

むせ返るような芳香が漂う空気は、一瞬にして底冷えするものに。


「何を……とは?」

「お前は……そんなことのために、日本に来たのか?」

「そんなこと……? おかしなことを、言いますね」


ハオが京太郎からその身を離す。

解放されても、京太郎に安堵の息を零す余裕はない。


「スキンシップですよ、ただの。明華もよくやっているじゃないですか」

「お前まで、そんなことを」

「それとも……羨ましく、なりましたか……? 今更」



「――」



その言葉に、ほんの一瞬だけ――智葉は、呆気に取られたように目を見開いて。



「……京太郎」

「は、はいっ」


そこから、表情がどのように変化したのかはわからなかった。

踵を返し、艶やかな長い黒髪を揺らす智葉に声をかけられた京太郎は、思わず身を縮ませた。


「カピーのことで、話がある。ちょっと来てくれ」

「わ、わかりました」


また後で、とハオに一言だけ伝えて、京太郎はその場を後にした。

残されたハオは、ただ一人――指を唇に当てて、小さく微笑んだ。

ハオとの出来事がどれだけ校内に広がっているか

判定、直下
1~20 噂にもならなかった
21~50 広がった噂『ハオと京太郎が廊下の端で内緒話をしていたらしい』
51~80 広がった噂『ハオと京太郎が付き合っているらしい』
81~00 広がった噂『ハオと京太郎が廊下の端で×××をしていたらしい』

ハオとの出来事を何人かの生徒に目撃されていたので、内心で不安に思っていた京太郎だが、意外なことに噂にもならなかった。


「よかった……さて」


ホッと一息つけば、放課後にいつまでも教室に残っている理由はない。

教科書を鞄に仕舞い、さっさと教室を後にするべきだが――



京太郎選択肢 下3
1.部室に行く。キャラ名も
2.友人にバイトのヘルプを頼まれているが……
3.その他

美人な上に立派なおもち。

京太郎のストライクゾーンを捉えているハオにベタベタされるのは実に嬉しいというか、喜ばしい。


『何を、している』


だけど。

度を過ぎたのだろうか、明華のアプローチも見逃していた智葉に厳しいお叱りを受けることになった。


「はぁー……」

「どったのキョウタロー。相談乗るよ? 1500円で」

「まったく、お前は……」


対してネリーは、可愛いというか子どもにしか見えないスタイル。

ハオとはまさに正反対で、京太郎の好みからは大きく外れているが――実のところ、部内で一番心安らぐ相手である。


「今ならオプションも付けるよ。スマイル500円!」

「調子のんなっての」

「わわっ」


無遠慮にグシグシと頭を撫でてやる。

何気に、ネリーは部内で唯一気軽に軽口を叩ける相手だった。

「まぁ……なんつーか……お前がいてくれて良かったよ、ホント」

「でしょ? 今なら半額でいいよ?」

「何がだよ、オイ」

「折角お得なのにー」


会話を交わしながら、ここが定位置だと言わんばかりにネリーは京太郎の膝の上に陣取った。

ハオや明華のような色気はないが、ネリーの体温は程よく温かい。安心感がある。


「おー、じゃあ席代で1万2000円な」

「んー?」


くるり、とネリーは京太郎を振り向いて。


「お金とるの?」

「安くはないぜ」

「じゃあ」


大きな丸い瞳の中に、京太郎の顔が鏡のように映った。


「お金払ったら、キョウタロー買えるの?」


京太郎選択肢 下3
1.最低でも1億円はいるな
2.等価交換でもいいぜ
3.自由台詞

何を交換するんですかね(ゲス顔)

「等価交換でもいいぜ」

「とーか……交換?」

「おう。まぁ、この俺と釣り合うぐらいのもんは中々無いだろうがな」


ドヤ顏で胸を張る。


「……」


……が、ネリーからのツッコミは帰って来ない。

膝の上で指を折りながら何やらブツブツと呟いている。


「ん……ゴホン。プライスレスってことで」


いたたまれない気分をわざとらしい咳払いで押し出す。

ネリーはぴょんと身軽に飛び降りて、とたとたと走っていく。


「あ、おい!?」

「ちょっと用事思い出した! サトハによろしく言っといて! お金はちゃんと振り込んどいてね!」

「よろしくって――」


止める間もなく、ネリーは部室の戸を開けて出て行ってしまった。


「なんだったんだ……あいつ……しかも金取るのかよ」

ここで一旦区切り
ネリーもそこそこ王道ラブコメな話を書けそうな気がします

相変わらず誤字脱字ありますがiPhoneから勢いに任せて書いているのでご了承ください
wikiにコピペする時は見直すようにしよう……


自由安価したりと色々やってる臨海編ですが何か意見とかリクとかあったらどしどし下さいー


それでは、今夜はここで
お付き合いありがとうございました!


高校によって京太郎のスペック結構違うから今回みたいに可視化されると分かりやすくていいね

>>190
数学が得意とか言われると某スレのすうが君を思い出してしまう

「おかえり」



「随分、遅い帰りやね」

「バイトの夜勤明け?……いつもとシフトが違うけど」

「急に頼まれた?……ふぅん?」




「ええ匂いするなぁ……京くんの髪。女の子が使うシャンプーみたいな香りや」



「誰だったかな……私、覚えあるわ。この匂い」



「それに……ほら、胸のここ。虫さされ?」



「……」


「まぁ、ええよ」


「あったかいスープ用意しとるから」


「今日と明日は休みやろ?」

「たっぷり、うちに付き合ってもらうからな」



「信じてるからな、京くんのこと」


「浮気とかされたら――私、どうなるかわからへんよ?」

職業女装バーでもか

>>201
臨海とは設定違うだろ

そうだったすまん

そもそも女装バーでのバイトはカピーの為にやろうとしただけなので、普通ならバイトするにしろ働くにしろ真っ当な所になると思いますとマジレス

ところでノヴァの日ってなんなんだろう……

多分NOVA(ノバ)っていう英会話教室の日って意味かと
昔「今日はNOVAの日ですから」って同僚とかからの誘いを断るCMがあったのよ

参考までに

ttp://m.youtube.com/watch?v=QYPqR2_GcAM

携帯だから上手く貼れてるか分からないけど

あぁ、懐かしい

そいじゃ、臨海編進めていきます



私がいなければ女装バーでアルバイトとをすることになっていたとは……危なっかしい
――自分が、見てやらなければ



いい笑顔をする。やはり、家族の絆は大事にしていかなければ
――そう、『家族』は……な。



廊下の端で、何をしているんだお前たちは
――何を、鼻を伸ばしている?



――離れろ


――そいつは、私の――

ぱお~んぱお~ん

「……いや、そうじゃない」


自室の布団の中で、智葉はひとりごちた。

自分の中の不可解な揺らぎ。


「……」


ハオのアプローチは風紀の面では褒められたものではないが――あそこまで、威圧的に言うことは無かった筈だ。

あの時の自分はどうにかしていた。

次に会った時に謝ろう。


そう決めると、智葉は目を閉じた。

自分の中にある感情には、蓋をした振りをして。

>>216
ああ、正しくは鼻の下を伸ばす、でした
ダメだこりゃ

休日。

部活動は休み、予定も特に無し。


「どうすっかなー」


京太郎行動安価 下3

特に用事はないが、折角の休日を寝て曜日で過ごすこともないだろう。

行き先も決めないままに、京太郎は気の向くままに近所を散歩することにした。


「……ん?」


京太郎の足を引き止めたのは、雀荘の看板。

これでも麻雀部の端くれ、少しだけ興味が湧いてきた。

利用料金もそこまで高いものではない。


「よし、ちょっと行ってみるかな」


臨海の麻雀部のメンバーが強豪揃いなのは、ほぼ初心者の京太郎にもわかる。

ならばこういった場所で打つ人は、どれだけの実力を持っているのだろうか。



京太郎と卓を囲むキャラ、下3まででー

店員曰く、ちょうど後一人席が空いている卓があるとのこと。

ネト麻以外で知らない相手と打つのは初めてだが、もしかしたら自分と同じような感覚で来店した客もいるかもしれない。

雲良くお零れが拾えたら、程度のつもりで京太郎が向かった先には――


テルー判定直下
1~30 ……どこかで、会ったような?
31~60 京……ちゃん?
61~98 久しぶり、だね
ゾロ目 ???


あわあわ判定下2
1~30 はやくやろうよー
31~60 ちょっとイケメンかも……なーんて
61~98 ねね、LINEやってる?


うたさん判定下3
1~30 悪いことは言わないから、帰った方がいいかもよ?
31~60 んー……ま、お手並み拝見、かな
61~98 さてさて……ちーっとばかし、面白くなってきたかね?

案内された卓。

京太郎の真向かいに座る少女と目が合った瞬間に浮かべた表情は、恐らく互いに殆ど同じだっただろう。


「京……ちゃん?」

「照……さん、ですよね?」


まさか、こんな雀荘で昔の知り合いに遭遇するとは重いも寄らなかったのだから。

その反応に食いついてきたのは、照の隣の長い金髪の少女。


「ねね、知り合いなの?」

「知り合い……というか」


興味津々といった風に京太郎を見つめる少女。

キラキラした視線の眩しさには戸惑いを隠せない。


「ねね、LINEやってる?」

「ああ、やってる……けど」


逆ナン、というヤツだろうか。こんな場所で。


「――悪いことは言わないから、帰った方がいいかもよ?」


独特の空気に包まれつつあった卓の雰囲気を一変させたのは、和服を着た童女のような出で立ちの女性。

身長はこの中の誰よりも低く、一見年下のようにも見えるが――底知れぬとでも言うのか、彼女に見つめられた瞬間に背筋に冷たいものが走った。


「……やってみなけりゃ、わかんねえよ」

「ほー? 言うねえ」


それでも言い返せたのは、男子としての意地。

照に情けないところを見せたくない、というのもあるかもしれない。


「……そいじゃ、始めようかい」


サイが、投げられた。


京太郎対局判定直下
66 3位
88 2位
00 まさかの1位

「ほら、言わんこっちゃない」

「……っ!」


和服を着た女性の言う通り――結果は、無残なもの。

言い返すことも、できない。


「ま、にーちゃんには此処はまだ早かったねぃ。オムツが取れたらまたおいで」


ま、知らんけど。

そう言い残して、彼女はさっさと出て行ってしまった。


「……」


恥ずかしのか、悔しいのか。

見栄を切っておきながら、結果は惨敗。

自分は初心者なのだから、と言い訳をするのは情けない。


「……大丈夫、だよ」


思わず握った拳に添えられたのは、白い指。


「情けない、なんて思わないから」


格好つかない自分を、照は励ましてくれているようだった。

もう一回やろう(提案)

「……そうそう! あんなヤツ、私がコテンパンにしてやるから!」


何故だか自信満々の金髪少女。



「……いや、お前も3位じゃん」

「いいの、次は100回倒すから」

「……ははっ」


その自信はどこから、と突っ込みたくなったが、彼女なりの強がりなのかもしれない。


「……」


ボロボロに負けて、再会した幼馴染の姉には慰められて。


「……」


ひっくり返っても、お世辞にも格好良いとは言えない。


「……そう、ですよね」

「京ちゃん?」

「……次は」


それでも。


「次は――もっと、やれますから」


火が着いたものは、あった。

【宮永照の連絡先】を入手しました
【大星淡の連絡先】を入手しました

京ちゃんの麻雀に対する熱意が上がったみたいです


キャラ安価下3でー

放課後になってネリーが部室に来た時、まだ部室にいるのは京太郎一人だった。

それは別段珍しいことではない、が。


「何してんの?」


ドアを開けた音にも反応せず、机に向かって何かを熱心に読んでいるものだから。

気になったネリーが後ろから覗き混んでみると――


「……教本?」

「あ、ネリーか。悪い、気が付かなかった」


麻雀の教本や牌譜。

京太郎が集中して読んでいたのは、どうやら麻雀関連の資料らしかった。


「……どうしたの、急に」

「ま、まぁ……色々、あったんだよ」


普通に考えてみれば、おかしなことではない。

京太郎も麻雀部員なのだから、興味を持つことはあるだろう。


「そうかなぁ」


しかし。

その瞳の奥には、今までとは決定的に違う何かがあるように見えた。


ネリー判定直下
1~30 「教えてあげよっか。今なら初回げんてーの無料サービス!」
31~60 なんだか――寂しいと、思った。
61~98 「等価交換……ね」
ゾロ目 ???

「てい」

「お、おい?」


自分から視線を外して、手元の資料を再び読み込もうとする京太郎。

それが何だか気に食わなくて、ネリーは無理矢理京太郎の膝の上に割り込んだ。


「よくわかんないけど……キョウタローは強くなりたいんでしょ?」

「まぁ……そうだけど」

「じゃ、ネリーが教えてあげる。この牌譜の人、知ってるし」

「え?……マジ?」

「うん」

「おう……じゃあ、頼むわ」


京太郎は自分よりもずっと背丈が低い特別講師に頭を下げて、ネリーの解説を聞き逃すまいと意識を集中させる。

ネリーは満足気に頷くと、小さな指で牌譜をなぞりながら、解説を始めた。

短い間の特別授業。

いつになく素直な京太郎に解説をしながら――ネリーは、ふとあることに気が付いた。


(あ、お金……)


いつもの自分なら、間違いなく授業料をとっていた。

けれども、今は――別に気にならない。


(ああ……そっか)


――お金払ったら、キョウタロー買えるの?

――等価交換でもいいぜ


等価交換。

等しい価値のものを、交換すること。

京太郎の時間という価値を、ネリーが特別講師になることで受け取っている。


「等価交換……ね」

「ん?」

「なんでもない、それでここは――」


今、この時間。

この膝の上は、ネリーだけのものだ。

改めてそう思うと、ネリーは身体の奥が暖かくなっていくように感じた。



――だが、ここが部室である以上。

二人だけの時間は、いつまでも続かない。



キャラ安価下3でー

「んーむ?」

「どったの?」

「いやさ、どうしてここはリーチしなかったんだろうって」

「それはね――」


「危険だからですよ」


背後から伸ばされた白い手が、京太郎の手を掴む。

白い手に導かれて、他家の河を指がなぞる。


「他家を見れば、すぐにわかるでしょう?」


だが。

そんなことよりも。


「どうです? 京太郎くん」


首筋を髪がくすぐる。背中に押し付けられる二つの膨らみの感触は、ネリーでは絶対にあり得ない。

横を見れば、白い頬がある。


「み、明……華……さん?」

「はい。なんですか?」


明華に、背後から抱き着かれている。

手を掴まれて、もう片方の手は肩に置かれて。


「何か、質問ですか?」


吐息がかかる、そんな距離。

心なしか――いつも以上に、アプローチが激しいような。

「……今は、ネリーが教えてるんだけど」

「あら」


面白くないのはネリーだ。

明華が来た瞬間に、京太郎の胸から伝わるバクバクがとても大きくなった。

それに加えて何がとは言わないが――兎に角、負けたような気持ちになった。


「今は、キョウタローの時間はネリーのものなの!」

「では、こういうのはどうでしょう?」


明華判定直下
1~50 半分こしましょう
51~00 京太郎くんに決めてもらう……というのは

「京太郎くんに決めてもらう……というのは」

「えっ」


ある意味で妥当な落とし所ではあるのだが。

ネリーと明華の視線の挟み撃ちを間近で受けるのは、少し辛い。

丸い大きなネリーの瞳。垂れ目がちな明華の瞳。

送られてくる視線は不安と期待。


京太郎が選ぶのは――

下1~3までの多数決

1.やっぱり最初はネリーに教えてもらってたわけだし、そっちを選ぶのが筋だろう
2.色んな人の意見が聞きたい――と建前。明華に頼む

時計の秒針の音がやけに大きく聞こえる。

いくら視線を泳がせても、助けになるものは見つからない。

今ここで、決断を下すしかない。


「ね、ネリーで!」

「キョウタロー!」


膝の上から喜びの声。

明華には申し訳ないが、やっぱり最初はネリーに教えてもらってたわけだし、そっちを選ぶのが筋だろう。


「あら残念……それでは、また次には」

「あ、はい。お願いします」

「ふふ――約束、ですからね」


言質を取られたような形になったが、明華はあっさりと身を退いた。


「個人指導……楽しみですね♪」


次はもっと強く――なんて明華の呟きは、全力で気のせいだと思うことにして。

今はとにかく、ネリーが上機嫌なうちに色々教えてもらうとしよう。

              ,. --- 、        ____
                  /,  ´ ̄ ̄` '⌒´     \
           、_/_/⌒ヽ , /            ヽ
            ,---、  / //    :       ヽ :.
           ,  / ̄-/ /' {   | |       | :
          / __   ̄,./ /-' l| l | |___ l |    |
            .:' /   ,イ _| | |ア__l { { | / }`| |    |
       /       ,:´ | { | l\{从 ∨ィ斧ミ、 |    |
    /\'´        /{  | 从{__,. \∨Vソ }イ ト、 ∧{
    ////\ r---  ´八 !∧  ̄   ,:  :.:.:  }/ノ/ リ
.   ///////\      \}∧         u 八/
  //////////〉        込、  __    ,.: /
  ///////// /          }>、   ` イ |从
 ,'//////// /   _      /--、l ` ̄ :,   |--、
.///////// /  イ/////\   {////}   /  「///|
'//////// /´// {////////ー '|////|   ,   |///l|
///////////// |l///////////ヽ// \    |////> 、
////////{/////{!/////////////////}--- /////////> 、




【須賀京太郎】

所属:臨海
立ち位置:マネージャー……だけど

【ステータス】

雀力:E とりあえず大体のルール・役は覚えている。点数計算も何とか。
     今は弱いけど……いつか、あの人を見返してやりたい

雑用:D 普通のマネージャー……だけどお茶の腕前には自信アリ
     日米仏中の食卓に自信を持ってお茶を出すことができる

能力:- そんなオカルトありえません


【部のみんなへの印象】

智葉:男より男前。今まであってきた誰よりも凛々しい。憧れの人
   カピーの件は本当に感謝してもしきれない

ハオ:美人。肌キレイ。顔近い。いい匂い
   同級生だけど一緒にいると何だかソワソワする
   天然なアプローチにたじたじ。そろそろ注意した方がいいかな

明華:らっさいらっさい。積極的なアプローチにドギマギ
   据え膳でいいの? と悩むもののヘタレて手が出せず
   手を出したら何故か取り返しのつかないことになりそうな気がする

メグ:同じカップの麺を食った仲。イケメン。ダーリン云々の件はジョークだと思っている

ネリー:一緒にいると凄い安心感。よく膝に乗ってくる。
    よろしくお願いします先生

アレクサンドラ:監督。痩せている。自分のどこを気に入ったんだろう?
        

【部のみんなからの印象】

智葉:色々と危なっかしい。私が見てやらなければ……

ハオ:良い匂いがする。家族に紹介したい。もっとずっとぎゅっとしたい

明華:運命の人。はやく母に会ってほしい
   これはアプローチを強くする必要がありますね

メグ:ダーリン。エアメールでファミリーに紹介済み

ネリー:一緒にいると凄い安心感。膝は固いけど安心する。等価交換の意味を模索中

アレクサンドラ:???


【その他】

照:幼馴染の姉。憧れのお姉ちゃん

淡:雀荘で知り合った子。逆ナンされた。ひょっとしなくてもアホの子

三尋木プロ:いつか見返してやりたい。いつか、必ず――でも、あの人どっかで見たような?

もう使うとは思ってなかったステータス表だけど思いのほか便利だったので結構使っていくかも
臨海編はまだ続きます


あと何となく有珠山のプロローグを思いついたので近いうちに非安価の小ネタという形で投下しようかなと思ってます


途中で1時間半近く間が空いたのはすいません。寝落ちしました


それでは、今夜はここで
お付き合いありがとうございました!

お金じゃ買えない価値がある、とは言うけれど。

この世の中にはお金でしか買えないものが多過ぎる。

その考えは、この先に何があったって変わることはない。


ネリーが今までに欲しいと感じたものは、全てがお金でしか買えないものだった。

だから、わからなかった。



お金では、絶対に手に入らないもの。



どうすれば、自分の――自分だけのものに、できる?

お金ではなく、物なのか。

だとしても、その「物」を手に入れるにはお金がいる。

悩んでも、教えてくれる人はいない。


だけど、意外にも――答えは、すぐに見つかった。


「ありがとな。ホント、為になった」


無遠慮に頭を撫でる、大きな手のひら。


――そっか。こんなに、簡単なことだったんだ。

あたたかくて、安心を与えてくれる。

それは、どうやってもお金じゃ手に入らない。

だって「それ」は――どうやっても、一方的に与えるだけでは得られない。


「……ホントに、欲しくなっちゃった」


今こうして、横になっている寮のベッド。

特に詳しい知識を持たないネリーにも、コレが上質なものだとわかる寝心地を与えてくれる。


「……だけど」


コレはこの部屋以外にもたくさんあるものだし、お金を稼げばコレ以上のものはいくらでもあるだろう。

今、ネリーが欲しいものは世界に一つしかなくて――お金を稼いでも、手に入らない。


「……キョウタロー……」


初めての体験。

胸の奥から少しずつ零れてくる感覚を、彼女は枕と一緒にぎゅっと抱き締めた。

民族衣装に身を包み、マスコミにカメラを向けられながらもまるで緊張した様子を見せずに卓に向かうネリー。

小慣れているというか、仕事に徹しているというか。

いつものように膝の上でじゃれついてくるネリーとは、また違った表情をしている。


「……そうなんだよなぁ」


世界ランカーやU-15準優勝者。

臨海が全国大会に向けてかき集めた麻雀部の面子にいるのだから、ネリーも相当な実力者。

それは以前からわかっていたことだが――麻雀に対する意識を改めた今となっては、より強くその実力を感じられる。

自分との力の差、という形で。


「……」


頑張ろうと意気込んでも、一朝一夕で強くなれたりはしない。

もし、臨海にとんでもない鬼コーチがいたとして。

自分の中の常識をぶち壊すようなスパルタ指導を叩き込み、生霊が取り憑くレベルで熱意を向けてくれたら話は別だが――そんなオカルトはありえない。

道は遠く、壁は高い。

宮永照というインハイチャンプがいる中で、飄々と1位の座を掻っ攫っていったあの和服の女性。


「……はーっ」


何年か、それとも何十年か。

もしかしたら、一生かかってもあのレベルには淘汰できないかもしれない。


「――」


――だが。

それは、彼が一人でその道を歩いていたらの話である。


判定直下
1~30 「大志を抱け――だよ」
31~60 「……少し、良い目をするようになったね」
61~98 その時彼女に電流走る。
ゾロ目 ???

強くなりたいと願うからこそ――自分にはあのレベルは無理だろうと、心のどこかから聞こえてくる諦めの声。

相反する気持ちによる板挟み。抜け出せない泥沼。

堂々巡りに陥りかけた思考を、自分のすぐ隣から聞こえた、何か軽い物が床に落ちる音が中断させた。


「いや失礼」


振り向くと、アレクサンドラ監督が身を屈めて空の紙コップを拾っていた。

どうやら取り落としてしまったらしい。


「大丈夫ですか?」

「ちょっと、ね。心配はいらない」


彼女がこのようなドジするのは珍しい。

ネリーの対局を見ても、そこまで同様するような展開があるようには思えない。

何か――彼女を震わせるようなものがあったのだろうか。

「……少しは、良い目をするようになったじゃないか」

「え?」

「君の話。何があった?」


何があった、と言われれば、思いあたることは先日の雀荘での出来事。

無残に負けて、自慢できるような話ではないが、あれが切っ掛けとなって火が着いたのは確かだ。


「……成る程、ね」


憧れのお姉ちゃんの前では、格好付けていたい。

自分よりも小さな相手に挑発されて、ムッときた。

見返したいと、自分なりに麻雀の勉強に熱を入れ始めたが――


「リベンジしたいけど、自分と相手の差に今頃気付いたと」

「……はい」

「……良い目をするようになったけど、まだ殻がついているね」

「……カラ?」


曰く、人は殻や錆がついていく。

自分には無理、失敗するからやりたくない、面倒くさい。

そういった虚仮や見栄の殻。


「確かに、壁はあるよ。努力じゃ消えない壁ってのは」

「……」

「でもね――」


凡人でも、殻を破って進むものはいる。

錆を落とした下から見えるのは、ギラついた勝利への渇望。

アレクサンドラが求めるのは、そういったモノ。

その中でもより一際、強い輝きを放つものにこそ――彼女は、揺さぶられるのだ。


「……君の目の奥。私はそこに、『何か』を感じたんだ」

「……え?」

「君は君らしくあればいい……でも、私は君が殻を破って進めるヒトであることを願う」


そして、その手伝いをすることも吝かではない。

そういい残すと、彼女は席を立って部屋の外へ出て行った。


「……」


自分は、どうするべきか。

答えは未だに出ないが――一歩だけ、前に進めた気がした。


「ん?」


と、ここである事に気付く。

アレクサンドラの座っていた椅子が、微かに湿っている。

さっき紙コップを落とした時に、中身を零してしまったのだろう。

今日は珍しいことが多いと、京太郎はハンカチで椅子を拭った。

翌日の放課後。

帰宅の準備をする生徒や、部室へ向かう生徒。


「さて、と……」


京太郎も、いつまでも教室に残っている理由はない。

教科書を鞄に仕舞い、さっさと教室を後にするべきだが――



京太郎行動安価、下3
あまりに変なモノは直下になったり判定入ります

「……教本を買いに行くか」


強くなるには勉強と実践の繰り返し。

土台作りの段階を怠ってもすぐに崩れるだけだ。

普通の麻雀部であれば部室から借りられるのだろうが、生憎と京太郎以外では教本が必要なレベルの部員はあそこにはいない。


そう決めた京太郎は、鞄を肩にかけて教室からさっさと出て行くが――


直下判定
1~60 廊下で部員の誰かに声をかけられる
61~00 普通に本屋まで何事もなく到着

「あ、連絡しとかないと」


このままでは部活を無駄でサボることになる。

そのことに気が付いたのは、本屋で教本の品定めをしている差中。


「ふーむ……」


メールで用があるから部活を休むと連絡を送り、教本選びを再会。

リスペクト麻雀への道だとか、麻雀でのお友達の作り方だとか。

教本と一口で言っても様々なものがあるが――


キャラ安価下3でー

「これは、お勧めですよ」


不意打ちと耳元での囁き。

これは何度やられても慣れないが、今回は心臓が跳ねる程度で済んだ。


「ハオ……なんで、ここに?」

「何でと言われても……私も、読みたい本はありますから」

「部活は?」

「今日は最初から休みですよ。サトハやメガンの都合がつかないとかで」

「そ、そうだったのか」


当たり前だと言わんばかりに背後にいたハオ。

相変わらず、ネリー以外の部員にはペースを握られっぱなしだ。


「……しかし、教本選びとは懐かしい」

「へ?」

「私も、この本屋で教本を買ったことがありますから」


意外な台詞。

彼女の打ち方からすると、日本人の執筆した教本など必要なさそうに思えるのだが。

「私にも……勝てなかった時期がありますから」

「そうなのか?」


日本の麻雀のルールはハオには馴染みがなく、日本に来たばかりの頃は不調だったという。

そこから試行錯誤と勉強を重ね、自分に合った打ち方を見出すことで、再び勝てるようになったのだ。


「京太郎には普段から世話になっていますから……私も、出来ることなら力になりたい」

「ハオ……ああ、よろしく頼む」


とりあえずは、ハオに勧められた教本から読み進めてみよう。

そう決めて、京太郎は棚へと手を伸ばす。


「待って下さい」

「ん?」


だが、目当ての背表紙に指を引っ掛けた瞬間に、ハオが制止の声をかけた。


「私の部屋に……まだ、私の使ったものがある筈ですから。譲りますよ」

臨海の留学生たちは基本的に寮暮らしであり、ハオもその例に漏れない。


「そのベッドにでも腰掛けて待っていて下さい」

「了解」


善は急げと、ハオに連れられてやってきた女子寮の部屋。

智葉を覗けば、初めて訪れる女子部員の部屋。

緊張してきた。智葉の家とは違う意味で。


「待ってろって言われたけど……」


京太郎選択肢 下3
1.素直に待つ
2.お茶でも淹れようか
3.その他

横目でハオの背中を追うと、本棚を前に腕を組んでいる。

昔使っていた教本をどこにしまったのかを思い出しているのだろうか。


「ただ待ってるのも悪いような……」


自分も何か出来ないか。

すぐに思い当たるのは、マネージャーで培ったお茶の腕。

部員たちのお墨付きである。


「ちょっと、台所借りるな」


ハオの背中に一言かけて、備え付けのキッチンへ。

探すまでもなく、茶葉や急須はすぐに見つかった。


判定直下
1~70 上手に出来ました
71~00 ん? これは……砂糖?

真面目な性格のハオらしく、台所の物もよく整理されている。

お陰でお茶の準備も滞りなく進んだが――


「ん? これは……砂糖?」


茶葉の類に混ざって、砂糖のようなものが見つかった。

調味料をこんなところに置くのはハオらしくないというか、違和感がある。


「ああ……そういえば、海外だとお茶に砂糖入れたりするんだっけ?」


京太郎選択肢 直下
1.両方のお茶に入れて出してみる
2.自分のだけに試しに入れてみる
3.ハオのだけに入れて出してみる
4.いや、お茶に砂糖はやっぱりおかしいよな

「……いや、お茶に砂糖はやっぱりおかしいよな」


そもそも部室で振る舞うお茶には砂糖なんか入れないのだから、奇を衒うべきではない。

お茶を注いだ二つのカップと急須を盆に乗せて、京太郎は台所を後にした。


「どうぞ、コレを」


ハオから例の京本を受け取る。

綺麗に使い込まれている。いくつか皺のついたページがあるが、決して乱雑に扱った結果付いたものではないことがわかる。

所々に赤いペンで書き足された中国語の注釈も、彼女がこの本を熟読した証拠だろう。


「わざわざありがとな」

「いえ……こちらこそ、客人に気を使わせてしまうとは」

「いいって。友達だろ、俺たち」

「友達……そう、ですね」

「……ハオ?」


「いえ……何でもありません」

「そっか……あ、そういえばハオってお茶に砂糖入れる?」

「砂糖……ですか? 私は入れませんが」

「そっか。やっぱりそうだよな」


その後は、お茶を飲みながら中国語の注釈について聞いたり、ハオのスランプ時代の苦労を聞いたり。

部員の意外な一面を知ることが出来た充実した一日だったと言えるだろう。


判定直下
1~10 ……あれ……寝ちゃったのか、俺
11~50 普通に帰った
51~00 ハオの部屋を出た瞬間、誰かにエンカウント

「ふぅ……」


教本を受け取って、自分の部屋に帰って来た京太郎が真っ先に考えたことは――


「……良い匂いだった」


こうして、家に帰ってくると。

その違いに、どうしても意識してしまう。

頬に、熱が集まるのを感じた。


京太郎選択肢 下3
1.今日はもう寝よう
2.ネト麻でもしようかな?
3.その他

「……」


――良い匂いがしますね。

ぶんぶん頭を振る。今は集中。


――力になりたい

ぶんぶん頭を振る。今は集中。




――そのベッドにでも――




「……無理」




――その夜、少年は。

解放感と虚無感と、罪悪感を覚えた――

翌朝の目覚めと共について来たものは、気怠さと痛みと熱。


「……マジか……」


38度。文句なしの熱である。

両親は共に朝早くから出かけている。

確かに夜遅くまで起きて、体力を消耗したとはいえ、ここまで体調を崩すとは思わなかった。


「学校は――げほっ」


行ったところで、帰されるのがオチだ。

京太郎は体の欲求に従って、布団を深く被り目を閉じた。


判定直下
1~20 サトハが心配して来てくれたぞ
21~40 ハオが心配して来てくれたぞ
41~60 明華が心配して来てくれたぞ
61~80 メグが心配して来てくれたぞ
81~00 ネリーが心配して来てくれたぞ
ゾロ目 ???

寝ては起きてを繰り返し、気が付いたらもう夕方。

相変わらず体は怠いままだ。


――ピンポーン。


インターホンの音が静かな家中に響く。

未だに重たい身体を引きずるようにして、京太郎は玄関へ向かった。


「はー、いっ!?」


来客を迎えようとした瞬間に、ふらつく足元のせいでバランスを崩してしまう。

受身も取れないままに、京太郎の体は投げ出され――


「オゥ、情熱」


――ダイレクトに、メグの胸の中にダイブすることになった。

風邪で汗に塗れた京太郎の体を受け止めたにも関わらず。

メグは嫌な顔一つ浮かべず、それどころかお姫様抱っこで京太郎を布団まで連れて行った。


「ドーゾ」

「どうも」


アメリカ伝統・風邪の時のチキンスープ。

メグも幼い頃に作ってもらったらしい。

朝から水以外は胃袋に入れていない京太郎には、中々に有り難い。


「アチッ」

「焦らずデス。熱いデスカラ」

「……」

「ナ、ナンデスカ?」


じぃっと、メグの顔を見つめる。

やっぱり――


「センパイ、すげぇイケメンっすね」

「ワッツ!?」



メグ判定直下
1~30 連絡事項を伝えて帰った
31~60 寝入るまで見守っててくれた
61~98 目が覚めたら、部屋の掃除までしてくれていた
ゾロ目 ???

体が奥から温まってくる。

心なしか、体のダルさもマシになってきた。

瞼が段々と降りてくる。


「……はやく治シテ、頑張りまショウ」


優しい声音は、普段の彼女のイメージとは少し離れているけれど。

とても、安心することが出来て。


「……オヤスミナサイ」


京太郎はゆるりと、温かい感覚に体を預けた。

家に上げたことの無いメグが、どうしてここの場所を知っていたのかは、どうでもいいことだった。

翌日。

熱は大分下がったが、身体の気怠さは残る。

両親の大事を取って休めとの言葉通り、京太郎は今日も学校を休んだ。

……が。


「……退屈だな」


京太郎選択肢 直下
1.寝る。部員の誰かが見舞いに来ます。判定も一緒にやります
2.ネト麻
3.その他

風邪薬を飲み、たっぷり熟睡。

病は気からとの言葉通り、目覚めた夕方には体調も大分回復してきた。


――ピンポーン。


インターホンの呼び出しにも、今度はしっかりと応じることができる。

確かな足取りで、京太郎は玄関のドアを開いた。


「……!」


そこには、何か身構えていたような智葉の姿。

鬼気迫る姿に思わず京太郎も挨拶のタイミングを逃がしてしまい――気まずい沈黙が、二人の間を覆った。


「くしゅっ……と、とりあえず中へ」

「あ、ああ……失礼する」


どことなく残念な気持ちを滲ませながら、智葉は須賀家に足を踏み入れた。

美人の先輩方が二日連続で見舞いに来てくれるなんて。


「ほら、粥だ」


気持ちに余裕の出来た京太郎は、今のシチュエーションに頬を緩ませた。

女子の家庭的な手料理を味わえるという状況に、不謹慎ながらも風邪に感謝である。


「美味いですね、コレ」

「そうか。それは良かった――で」

「?」


「これとメグのチキンスープ――どっちの方が、良かった?」


選択直下

ドスを喉元に突き付けられたような感覚。

冷たい汗が背中を伝う。

智葉の意図が掴めないが――なあなあで済ませることは、許されない雰囲気だ。


「え、えっと……」

「……」

「こ、こっち……ですかね」


嘘、ではない。

日本人の舌には、智葉の粥の方が合っていたから。


「そうか……それは、良かった」


心の底から安心した、そんな風な安堵のため息を零す智葉。

何をそこまで追い詰めていたのかは知らないが、正直に答えたのは良かったようだ。


「ああ、そうだ……京太郎。一つ、朗報がある」

「はい?」

「カピーを飼う為の施設の工事が、終わったようだ」

「おお!」

「明日の部活の後にでも――うちに、来てくれないか?」

「はい!」


久しぶりに、カピーに会える。

病は気からと言うのなら、この気持ちを考えれば明日には完全に治っていることだろう。

というわけで今夜はここで区切り

何故か自分の中でネリーの順位が急上昇中
なんかやるかもしれません

あとプロとか年齢関係無しにまた義姉ネタやるとしたら誰がいいですかね?


それでは、今夜はここで
お付き合いありがとうございました!

色々とネタ出しありがとうございますネリー可愛い
全部拾うのは無理かもしれませんが、出来るだけ書いていこうかと思いますネリー可愛い

臨海日常編は夜にやりますネリー可愛い

15分の仮眠のつもりが3時間睡眠ネリー可愛い
始めますネリー可愛い

綺麗さっぱり目覚めた朝。

昨日までの気怠さはないが、様々な国籍の生徒たちに混ざって登校する京太郎の表情は明るい。

鼻歌でも歌いたい気分であるが――


キャラ安価下3でー

「おっ」


様々な国から来た生徒がいるだけあって、同じ年齢でも体格に大きな差があるのが臨海の生徒の特徴だ。

その中でも、更に一際小さい慎重の女子。

ネリー・ヴィルサラーゼが少し前を歩いていた。


「……ん?」


だが、少し様子がおかしい。

上の空というか、アンニュイなオーラを漂わせている。

空を見上げながらのため息まで吐いている姿は、初めて見た。



さて。

どう声をかけるか――


京太郎選択肢 下3
1.普通に挨拶
2.ちょっとイタズラしてみるか
3.その他 自由安価

とんとん、と肩を叩いて。


「え?――ふゅっ」


振り向いたネリーの頬をぷにっと押す人差し指。

大分昔に流行った古典的なイタズラだ。


「よ、おはよう」

「……あ」


ネリーの反応は――


判定直下
1~30 ば……罰金! 罰金だからね!
31~60 指を差したあたりをふにふにと触って――
61~98 顔を赤くして走り去っていった
ゾロ目 ???

「え……?」


何度も瞳を瞬かせて状況確認。


「キョウタロー……?」

「おう。みんなの京ちゃんだぜ」

「……あ」


惚けていた瞳に宿る光。

この状況を理解するにつれて、頬の指が触れた箇所からネリーの顔が段々と赤くなっていき――


「――っ!」


耳までを林檎のように真っ赤に染めて、走り去っていった。


「……アレ?」


まるで意味がわからないのは、残された京太郎であった。

昼休み。


「……あ」

「あ……」


食堂へ向かう途中。

タイミング良く、保健室から出て来たネリーと鉢合わせすることになった。


「………」


今朝の出来事のせいか、お互いに気まずい沈黙が走る。

この空気を払拭しようと、先に話を切り出したのは京太郎だった。


「だ、大丈夫か? 怪我でもした?」

「……ううん。ちょっと……微熱?があって……でも、お腹空いたし、何ともなかったから」

「そ、そうか……お大事に。じゃあ、俺は食堂行くな」

「……待って」


早歩きで去ろうとした京太郎の袖を、ネリーの小さな手が引っ張った。

遠慮がちで、強い力はなかったけれど、絶対に無視することは出来ない指。


「……一緒に、いこ?」

臨海の食堂のメニューは豊富だ。

様々な国籍の生徒の要望に答えられるように、多くの手間と予算がかけられている。

広さもそれなりで、昼休みという繁盛時でも京太郎とネリーが席を取る余裕はあった。



判定直下
1~40 二人は幸せな時間を過ごして終了
41~00 ところがぎっちょん

ネリーと向かい合わせで席に着く。

微熱で休んでいたとのことだが、食欲は普通にあるようで何よりだ。

京太郎も安心して、自分の頼んだうどんに箸を伸ばす。


「……」


手元に視線を落とす京太郎は、気が付かなかった。

ちらちらと、そっと覗いて見るようなネリーの視線に。

そして――



キャラ安価下3でー

美味いか不味いかで言えば美味いが、これ以上の味はいくらでもある。

そんな味のうどんをズルズルと啜っているうちに、変化が欲しくなってくるのはある意味当然のことで。

テーブルの端に置いてある調味料へと京太郎は手を伸ばし――


「はい、七味です」

「あ、どうも」


ナチュラルに自分が欲しかったものを受け取って、ナチュラルにうどんに振りかけて。

あまりにも自然な流れだったので、そのまま食事を続けてしまったが――


「美味しそうに食べますね♪」

「え? そうです……あ」

「ふふ……隣、いただきますね?」


明華が、すぐ隣に座っていた。

可愛いらしい顔立ちに立派なおもち。

明華は京太郎の好みのど直球ストライクを行くような女子だが――それでも苦手意識があるのは、被食者の本能か。

手を出したら最後、というイメージがなんとなく浮かぶのだ。


「はぁ……どうぞ」


だが、彼女を拒む理由はない。

苦手意識はあるが嫌いというわけではないし、一緒に食事をするには何も問題はない――筈だ。


「それにしても……よくわかりましたね。七味」

「ニホンについて色々学びましたし……それに」


ちらり、と明華はネリーに横目を向けて。


「見ていますから。あなたのことを」

「っ!」


それから、にっこりと花開くような微笑みを、京太郎に向けた。


判定直下
1~50 ずっと明華のターン
51~00 ネリーの反撃!

「はい、あーん♪」

「えっ」


スプーンに乗せて差し出されるイクラ丼。

何の前ぶりも無いので驚いたが、一向に引かない明華の様子を見るにイタズラや悪ふざけではないのだろう。


「……ぱくっ」


こうなれば、半ばヤケだ。

くれると言うなら遠慮なく――京太郎は、思いっきり差し出されたスプーンを口にした。

プチプチ潰れるイクラの食感が美味しい。


「お、美味しかった……です」

「それは何よりです♪ 私も、そのうどんを食べてみたいのですが」

「えっ」




「……」

お金では、絶対に手に入らないもの。

言い換えればお金が無くても手に入るということだが――


「……」


――ネリー以外にも、「それ」を手に入れる資格はあるということになる。

熱で惚けていた頬が、すっと冷めていく。

心地良い浮遊感に包まれていた胸の奥から、冷たい何かが染み出していく。


どうすれば、「それ」を手に入れることが出来るのか

答えは簡単。

つまり、欲しいと願う人が――



「な、なぁ。ネリーも一口、くれないか?」

「……一口?」

「あ、ああ……そのランチ、女子専用だろ? ちょっと食べてみたくてさ」


京太郎に声をかけられて。

まるで、止まっていた時間が動き出したような感覚を、ネリーは覚えた。


「……いいの?」

「それは、お前が聞くことじゃ――あ、そうか。ほらよ」


パスタのように、クルクルとフォークに巻かれるうどん。

目の前に差し出されたそれを前に、ネリーは少しだけ逡巡して。


「……美味しい。スゴく、おいしい」

「そ、そうか……よかったよかった」


ゆっくり咀嚼して、ニッコリ微笑むネリー。

ハオや明華とは違う照れ臭さを感じて、京太郎はそっぽを向いた。







「……ちっ」


判定直下
1~50 三人の間だけの出来事
51~60 先鋒は見ていた
61~70 次鋒は見ていた
71~80 副将は見ていた
81~90 監督は見ていた
90~00 後からみんな噂で知った

昼休みの食堂での出来事は、特に噂になることは無かった。

明華がアプローチを仕掛けるのはいつものことなので、臨海の生徒たちには別段珍しいことでもなかったのかもしれない。


「さて、と……」


放課後。

京太郎も、いつまでも教室に残っている理由はない。

教科書を鞄に仕舞い、さっさと教室を後にするべきだが――


「あ、そうだ」


今日は、部活の後に智葉の家に行く用事がある。

大事な用を思い出した京太郎は、鞄を肩に担いでさっさと部室に向かった。

――私は君が殻を破って進めるヒトであることを願う


監督の言葉は、麻雀に向き合う時には必ず胸に浮かぶ。

凡人でも殻を破って進む者はいる。

この臨海麻雀部のメンバーが生まれついての天才なのか、後天的に努力して強くなったのかはわからない。

しかし、誰もが自分よりも遥かに格上であることは確かで。


「ふーむむむ……」


強者から見て学ぶ、というのは上達するには欠かせないことだと思う。

今日の部活は、誰かの打筋を見て考えてみても良いかもしれない。


さて――


誰から見て学ぶ?
キャラ安価下3

インターハイ女子個人戦、3位。

日本で三番目に強い女子高生。

男子の部が女子の部よりレベルが低いことを考えると、日本で三番目に強い高校生と言い換えてもいいかもしれない。

ならば、その打筋から見て学べるものは多いだろう――


1~30 さっぱりわからない……
31~60 ちょっとだけ進めた……気がする
61~98 何かが掴めた感覚があった
ゾロ目 ???

ゾロ目だったらうちしゅじに魅せられすぎて精神汚染でも受けてたのだろうか

鋭い。

智葉の麻雀を一言で説明するなら、この言葉が最も適切だろう。

稼ぐのも潰すのも上手い。巧みな立ち回りで、気付けば三コロというような状況を生み出している。


「何か掴めるものはあったかい?」

「あ、監督……はい、ちょっとだけ前に進めた気がします」

「いいね。サトハもわざわざ分かりやすく打っている甲斐があるだろう」

「……え?」


それなら、彼女は。

最初から、自分の視線とその目的に気付いて。

それでいて、あの強さを発揮しているというのか。


「……ふっ」


驚愕の視線を送ると、智葉が微かに笑った――ような、気がした。

部活が終われば、待ちかねていた時間。

ついに、カピーと再び会える。


「まるで子どもだな、お前は」


そう言われても、楽しみなのだから仕方ない。

カピーは元気にしているだろうか――



判定直下
1~50 「あれ、二人ともどこ行くの?」
51~00 「なぁ……お前、今日は泊まっていかないか?」

「なぁ……お前、今日は泊まっていかないか?」


黒スーツのお兄さんが運転する高級国産車。

その後部座席で、隣に座る智葉がそう切り出した。


「泊まり……ですか?」

「あぁ。カピーとの時間は多く取りたいだろうし……それに、夜は付きっ切りで教えてやれるからな」


京太郎にはメリットしかない智葉の提案。

ならば、彼女の厚意はありがたく受け取ろう。


「じゃあ、是非ともお願いします」

「よし、なら決まりだな」


この一晩で、更に強くなれる。

この人にも近付ける。

期待に胸を弾ませる京太郎を乗せて、黒塗りの高級車は智葉の屋敷に到着した。

>>647


インターハイ、エキシビションマッチ。

男子と女子の境目を失くして、それぞれの強者がぶつかり合う戦い。


――よろしく。


眼鏡の奥の眼差しは研ぎ澄まされた刃の如く。

微かに隙を見せれば喉元を無残に切り裂かれるだろう。


――よろしく、お願いします。


手足の震えは怯えではなく、楽しみから。

間違いなく――この大会で今まで打ってきた誰よりも、強い。


でも。


――◼︎◼︎ァッ!

――応◼︎してるから、◼︎◼︎り◼︎

――やれるだ◼︎、やりゃあいー◼︎じゃね? ◼︎らん◼︎ど

――頑張っ◼︎ね、◼︎太郎


負けない。貴◼︎や◼︎夜、◼︎に◼︎長――多くの人が、ついている。

ギリギリまで頑張って踏ん張って――一歩も下がるつもりはない。


――良い目、だな。


そう言って、クールに笑う彼女に。

これからの対戦相手でありながら――少しだけ、惹かれた。

「――ロー! キョウタロー!」


瞳いっぱいに涙を浮かべた少女。

固い床に倒れている自分。


「ネリー……?」

「大丈夫!?」

「いや……なに、が?」

「倒れたんだよ、お前は」

「え?」


確か、自分は。

智葉の打筋を見て学ぼうとして。

それで――


「っ!?」


激しい頭痛。

頭が割れるかと思える程の痛み。


「キョウタロー!!」

「お前が慌ててどうする……今、監督が保険医を連れて来る。すまないが……少しだけ、耐えていてくれ」


安心させるように、智葉が肩を抱く。


「そして――またいつか、あの日の続きをしよう」


その瞳の奥に宿した執着の情念は――確かに芽を生やした。

ゾロ目ならリーディングシュタイナー発言しつつ智葉に属性が追加されつつ監督はびしょ濡れでござんした
ネリー可愛い


臨海編、日常パートがさり気なく今までで一番長くなってるような気がしますが
まだまだ長くなりそうです
ネリー可愛い

どういう風に終わらせて大会編に移るかは決めてますが、
そこまで行くのにもしかしたらこのスレを最後まで使うかもしれません
ゾロ目連発で呆気なく終わる可能性もありますが……
ネリー可愛い


このまま切って他の話を進めるか
臨海編を続けるか
どっちがいいですかね?
ネリー可愛い


とりあえず、今夜はここまでで
お付き合いありがとうございました!
ネリー可愛い

「あー、スマンが誰かこのプリントの束を先生に――」

「あ、じゃあ俺が」

「私がやりますっ!」


はいっ!と勢い良く手を上げる義姉。

出鼻を挫かれた京太郎は、伸ばしかけた手をおずおずと降ろした。


「ハァ……」


『ウチの弟に箸より重たい物は持たせない』

言い過ぎでも何でもなく、彼女の顔にはそう書いてある。

過保護……と、呼ぶには少し度が過ぎているように思えるが。

義姉からすればまだまだ足りないくらいだという。


――大変やなぁ、君も。


義姉の同級生の先輩と目が合って、小さく苦笑された。

清水谷京太郎。

母親の再婚によって、変わったものは苗字と周囲の環境。

義父は良い人だし、何だかんだで友達もたくさん出来た。

問題なのは――


「よ、よろしく……な?」

「こちら、こそ……よろしく、お願いします」


血の繋がらない、義理の姉。

ひと言で言うと、実に気まずい。

しっかり者で、スタイルも良く、美人。

竜華という人物は京太郎にとって理想とも呼べるタイプだが――それだけに、家族として一つ屋根の下で暮らしていくにはどう接すれば良いのか分からず。



背が高くて、スケベなところもあるが、何だかんだで根は優しい。

悪い子じゃないのは分かる。けれども、年頃の男子で親しい友人なんて、竜華にはいない。

家族として、毎朝顔を合わせることになると――どんな顔をすれば良いのやら。


「京太郎……くん? ご飯、出来たって」

「あ、ありがとう……ございます。竜華さん」


家族にしては、余りにもギクシャクした関係。

それが変わっていったのは――竜華の、親友。

園城寺怜がいなければ、未だに二人はぎこちない関係だったかもしれない。

ある日の土曜日。

京太郎は休みで、竜華は部活の日。


「お姉ちゃんお弁当忘れてったみたいだから、届けてあげて?」


ハイ、と母に渡された弁当の小包み。

しっかり者の竜華が忘れ物とは珍しいと思ったが、この時の京太郎は何も疑問に思わなかった。

実のところ、これは母なりに二人の仲を近付けようと仕向けたことなのだが――それを知るのは、もう少し後の話。

京太郎は小包みを受け取って、素直に千里山高校へと向かった。


「……アレ?」


少し道順についてはあやふやだったけど、目の前の義姉と同じ制服を着た女子の後を追えば間違いはないだろう。

そう当たりを付けて歩いていたら――


「あ……これ、アカン……」


ふらりと、その女子が目眩を起こして。

倒れ込むように、その場にへたり込むなんて、思いも寄らなかった。

善人を気取るつもりはないが、見捨てられるほど非情でもない。

急いでその女子に駆け寄って。

その女子――怜の言葉に従って、すぐ近くにあるという千里山高校の保健室を連れて行った。


「怜な――前から、病弱でな?」


白いベッドに包まって、眠る怜の手を取りながら。

竜華はぽつりぽつりと、自分の過去について話し始めた。

中学時代の怜のことが中心だが、義姉がここまで自分のことを話してくれたのは初めてで。

もっと竜華のことを知りたいと、思うようになった。

怜の件がきっかけとなって、二人は少しずつ歩み寄り始めた。

京太郎は前の長野の中学で所属していたハンドボール部や、幼馴染についてのこと。

竜華は怜やセーラとの思い出や、千里山高校麻雀部でのこと。

元から、お互いに悪く思ってはいない。

一度心を開いて、お互いのことを深く知っていけば、ぎこちなさは少しずつ抜けていった。


「入学、おめでとう!」


そして訪れた高校の入学式。

数年前に共学化した千里山高校。

義姉がいるから、というのも高校選びの一因となったことは間違いない。

義姉に祝福され、千里山に入学した京太郎が選んだ部活はバスケ部。


これでも中学時代はハンドボール部レギュラー。

飛んだり跳ねたり投げたりは得意だし、チームプレイも苦手ではない。

千里山男子バスケ部の歴史が浅いこともあり、京太郎は新入生の中でも頭角を現していった。

気のいい友人と、先輩たちに囲まれて。

京太郎の大阪での生活は、順風満帆に進んでいった――






「止めておけば、良かった」




その日は、雨が降っていた。

バスケ部の練習試合は体育館の中で行われるため問題はない。

高い湿気は少なからず試合に影響を与えるが、他校との練習試合には勝つことができた。


「やったなぁ、京太郎」


浮かれていた。京太郎も、竜華も。

有利とは言えない環境の中で活躍できた京太郎は高揚していたし、竜華も自分のことのように喜んだ。

だから、気が付かなかった。


「あ――え?」


帰り道の交差点。

スリップしたトラック。

視界を塗り潰すライトの光。

耳を劈くクラクションの音。


「……うそ」


竜華は、気が付かなかった。

バスケ?ハンド?俺がアスぺなのかもしれんがどういうことかわからんぜよ

注意しなければならないのは、自分だった。

京太郎が疲れていることも、試合に勝って浮かれていることも。

側で見ていたから、わかっている筈だった。


「うちの、せいや」


とめどなく溢れる自責の念。

瞳からは涙が、口を開けば自らを責める言葉が零れて止まらない。

この日から、彼女は変わった。

>>694
中学時代はハンドボール部に所属
高校ではバスケ部に所属

こんなつもりで書いてましたがわかりにくかったですね、すみません

京太郎が大怪我で済んだのは、ある意味で運が良かったと言える。

派手な運動にはドクターストップがかけられ、バスケ部を引退することにはなったが、日常生活は無事に送ることができる。


一番変わったのは、義姉だ。


甲斐甲斐しい、なんてレベルではない。

京太郎が死んだら、ウチも死ぬ。

比喩ではなく、そう公言する義姉を誰も止めることはできなかった。


「頼むからウチの麻雀部に来てくれ、マジで。このままじゃエースが使い物にならん……」


麻雀部の監督に、土下座に近い勢いで頼み込まれたのは記憶に新しい。

京太郎センサー。

誰が付けたのか、ふざけたような名前だが当人にしてみればシャレにならない。

廊下でくしゃみでもしようものなら階が違っても飛んでくるし、転んで怪我をした日には京太郎がミイラ男になる。


「愛されとるなぁ、この色男め」


当然ながら竜華は部活どころではなく――打ち出された唯一の打開策が、京太郎を手元に置くこと。

麻雀が打てずともマネージャーなら……という考えは、竜華が京太郎の仕事を奪うため本末転倒に。

怜と京太郎を合わせて『要介護コンビ』と揶揄されることもある。

一時期は京太郎を差して千里山の置物だとかマスコットだとか皮肉を言われることもあったが――


「ん? 誰が、何やって?……なぁ?」


不思議と、一週間も経たずに消滅した。

義姉を不安にさせた責任は京太郎にもあるし、麻雀部に入ることに抵抗はなかったとはいえ。

家ではベッタリ、外でもベッタリ、部活でもベッタリとなると、流石に参ることもある。

経緯は兎も角として、母の目論見は成功したことになるが――


「ちょっと……どうにかなりませんかね?」

「うち病弱やし……」

「それ言えばどうにかなると思ってません?」

「てへっ」

竜華を除いた千里山麻雀部一軍会議。

正確に言えば京太郎も一軍ではないが、議題上参加は不可欠。


「ちゅーてもなぁ……ようは、竜華を安心させなアカンわけやろ?」

「また元気に走り回るとこ見せりゃ解決や。オレと一緒にサッカーせえへん?」

「江口先輩、それ多分地獄の底まで追い回されることになりますよ」


監督と部長である竜華は大会に向けて話し合っているために不在。

ようは、『私がコイツ抑えとくからその隙に何か妙案を頼む』ということである。


「せやかてフナQ、他になんかないか?」

「そーですねぇ。ようは、部長を安心させればいいわけですから……」

「そこが難しいんやけどな」


ピン、と。

浩子の目に、何かを閃いた光が走った。


「こんなのはどうでしょ」


フナQの提案 自由安価 下3

「ようは、部長が京太郎を任せられる人がいたら解決や」

「つまり?」

「京太郎。お前さっさと恋人作れや」

「えぇー……?」


随分と簡単に言うが。

さっさとで恋人が作れたら誰も苦労はしないし、何より竜華が認める相手となれば相当にハードルは高い。


「あ、フリってことですね」

「お前にしては鋭いな泉。そういうことや」

「あぁ……」


だが、まだ問題はある。

誰が、恋人役をするかということだが――


「あ、なら私。やってもええよ」


停滞しかけた空気の中で、真っ先に手を上げたのは怜だ。

その表情には緊張感の欠片もない。


「りゅーかの膝枕は最高やけど。京ちゃんの腕枕も良さそうや」

「え、えっと……」


他の部員の反応は――


好感度判定

泉 直下
1~30 普通の部員
31~60 悪くないけど恋人はちょっと
61~98 負けてられへん

セーラ 下二
1~30 良い先輩
31~60 一緒に良い汗流した仲や
61~98 一緒に良い汗流した仲(意味深)や

フナQ 下三
1~30 普通の後輩
31~60 ちょっと気になる
61~98 京太郎のデータ……まだまだ足らへんのよなぁ……

ノリで安価やってみたものの小ネタにしては結構長めになりそう……いつぞやの鬼コーチくらい
眠気MAXなのでいったん区切ります。怜の安価は出し忘れたわけではないです
泉の死亡フラグが立ったかもしれないけど多分頑張れるでしょう

「あ、あのっ!!」

「んー?」


じゃあ怜でいいか――と固まりかけた場の空気に待ったをかけたのは泉だ。

怜は気怠げに顔を向けながら、京太郎の膝の上に陣取った。


「京太郎も、同学年の方がやりやすいと思うんですけどっ」

「そうなん?」

「いや別に……」


相手が怜ではなく浩子だったら少し難しかったかもしれないが、怜相手ならそこまで緊張することもない。

怜とは中学からの付き合いだし、伊達に要介護コンビの片割れをしていない。

「そ、それでも……相手役は京太郎が決めるのが、筋とちゃいますか?」

「まぁ、ごもっとも」


膝の上に座る時が、振り向いて京太郎を見上げた。


「で、京ちゃんは誰にするん?」


京太郎の返答 下3でー

怜の言葉を受けて、京太郎は一軍メンバーの顔を見渡した。


セーラ――は、義姉からの信頼は厚いだろうが彼女とそういった関係を偽るのは難しいだろう。

フナQは――まるで、想像がつかない。何気に面倒見の良い先輩ではあるが、あーんとか膝枕とか、似合わないにも程がある。


実質的に、怜か泉かの二択。


ちら、と目線を落としてみる。


「~♪」


くんくん、と首筋の辺りの匂いを嗅いでいる

目線を泉に向けてみる。


「……」


いかにもクールですよ、という風を装うとしているがプルプル震えているのはモロバレである。


ここは――



「泉で」

「やたっ!」

「参考までに聞くけど、なんで?」

「いやー……怜さんだと姉さんの弟離れどころか余計にベッタリしてきそうなんで……」


確かに、と泉以外の誰もが頷いた。

離れるどころか、要介護コンビがくっ付いたことでむしろ今まで以上に張り切る未来が見える。


「つーわけで、よろしくな。泉」

「えへ、えへへ……」

「泉ー?」


怜を膝から降ろして泉に近寄る。

顔の前で手を振っても反応ナシ。


「泉ー」

「ひゃいっ!?」


肩に手を乗せるとビクンと跳ねた。


「大丈夫かよ?」

「も、勿論や! 任しといてくださいな! 今日から私が京太郎の――」



「――誰が、誰の……なんやって?」

「ぶ……部長……」


後退る泉の手を。

震える竜華の手が、逃がさぬとばかりに掴んだ。


「ごめんなぁ、さっきまで監督と話し込んでたもんやから」

「ひっ……」

「うちも話に混ぜてや。誰が、誰のなんやって……?」


爪が食い込んで血が滲み出てもお構いなし。

竜華の尋問は止まらない。


「わ、私が……」

「んん?」

「私が――今日から、京太郎くんの彼女ですぅっ!!」

「ふーん……?」




「はぁ?」

「だ、だから先輩は安心して私に京太郎を任せて……」

「なぁ、知っとる? 京太郎の誕生日」

「に、2月2日……です」

「身長は?」

「え? 180くらい……ですか?」

「くらい……? まぁ、ええか」

「……」


「好きな食べ物は?」

「は、ハンバーグ……」

「最近の好きなアイドルは?」

「瑞原……はやり、ですよね」



「体重は?」

「え?」

「平均体温は?」

「え、え?」


「今朝の体調は? 歩く時のクセは? 鼻をかんだ回数は? 欠伸をしたのは? 睡眠時間は? 最後にじ――」


「姉さんっ!」

矢継ぎ早に質問を浴びせる竜華から泉を庇うように、京太郎が二人の間に割って入った。


「やっぱり駄目やって、京太郎。泉、全然京太郎のこと知らんし――」

「これから」


竜華の敵意から解放され、想い人の背中に守られた泉は吐息を零した。


「これから、知っていけばいいだろ。彼氏と彼女なんだから、俺たち」


ひゅう、と面白そうに口笛を吹いたのは浩子だ。

怜は眠た気な目で三人のやり取りを見守っている。


「……ふん」


長い見つめ合いの末、先に折れたのは竜華だった。

初めてとも言える弟の反抗に、どうすれば良いのかわからなかったということもある。


「……」


くすり、と怜が小さく笑みを零した。

「家じゃ竜華がベッタリ」

「外じゃ泉がベッタリ」


「大変やなぁ、京ちゃんも」


「姉に手を出すわけにはいかんし」

「泉は『フリ』やからなぁ……」


「なぁ、京ちゃん」

「今なら、誰もおらんよ?」


「りゅーかは大将戦やし……取り繕う必要もないんとちゃう?」


「なぁ、京ちゃん」


「私」


「京ちゃんが、欲しいな」

「ごめんなぁ、竜華。抜け駆けみたいなマネしてな?」



「けどな、私な――竜華になら、ええと思っとるんよ?」


「それに、こうでもせんと京ちゃん一線越えてくれへんし……」


「親友やし、ずっと、ずぅっと、私と京ちゃんを守ってくれたし」


「……ん、私も嬉しい。そういうとこ、大好きやで」



「……ん?」


「あれ?」


「なんや、泉」


「もしかして、まだ――ここに自分の居場所があるとか、思っとるんか?」

「まぁ、消えろとは言わんけど……」



「怜はな、京太郎が中学の頃からの付き合いで――私と、京太郎の絆を深めてくれたんよ」



「まぁ、せやな」


「ほんのちょっと、ちょっぴりだけ――空気読んでくれたら、それでええよ?」


閉じていく扉に、手を伸ばしても。

開くことは、二度となく。


「……」


『彼』も――こっちを見ては、くれなかった。

『彼』は、もう自分を見てくれない?

『彼』を、諦める?


「……上等、やん」


違う。

この程度で、手放すくらいなら。

最初から、怜に譲っていた。

怜を抱いた、と聞いた瞬間に頭が真っ白になって。

その間に、竜華と怜の二人に掻っ攫われた。


つまり、最初から――自分は、ダシに使われていたのだ。


恋人役になった瞬間から。

怜はずっとこの時だけを考えて、笑っていたのだ。


「……許せん、よなぁ」


全ての発端となった竜華を。

自分を利用した怜を。

自分を傷付けた――京太郎を。


「……」


あの二人は、自分のことを障害とすら認識していない。

だから、付け入る隙はある。

恋人役なのだから当然と言い張って『彼』から受け取った家の合鍵。


「……待っててな、京太郎」


薄暗い外灯の下で。

泉は静かに、歩み始めた。

でもな、正直な
泉って時点でな
勝利√が見えへんのや……

ちなみに恋人役がセーラの場合は、影でこっそり浮気ルート
恋人役がフナQの場合は、弱みを握ったフナQによる大勝利ルートでした


今夜の更新はここまでで
次はまた誰かの義姉小ネタか臨海編から始まります

臨海編の後は

1.白糸台ニューゲーム
2.臨海
3.プロ編EX 武者修行編
4.永水編日常パート破
5.宮守
6.松実
7.先生編
8.有珠山。今までとちょっとだけ違います


のいずれかをやると思います

それでは、お付き合いありがとうございました!

「麻雀部、今年は大会出るらしいよ?」

「え? マジ? というか雀卓あったんだ、あそこ」


有珠山高校麻雀部。

麻雀部とは名ばかりの、お遊び倶楽部だった部活。


「まー、多分そろそろ何かしら活動しないと部室取り上げとかされるんじゃない?」

「あー、そっか。勝てるわけないしね、あんなとこが」

「そうそう。いいとこ予選で――」


「やってみなきゃわかんないだろ、そんなの」

岩館揺杏。

飄々としているというか、いつもどこか余裕な態度をとっている二年女子。

麻雀部でも、彼女や爽が中心になって動くことが多いが――


「ふぅ……」

「……」

「ど、どどどどうしよう京太郎、あんなこと言っちゃった……!!」


――ご覧の通り。

二人っきりの時は、わりとダメダメな義理の姉である。

先ほどの啖呵を切った勢いはどこにもない。

「まー……やるしかないんじゃない? 言っちゃったわけだし」

「え、うん……そうなんだけどさ……」


義姉が不安に思うのも無理はない。

由暉子が自動卓を寄贈してくれるまで碌な活動をしてこなかったのは事実だ。

加えて、成香はそれまで麻雀のルールも知らなかったわけだし。

爽や由暉子は文句無しに強いが、誓子や揺杏は全国大会が舞台となると――正直、厳しいものがあるだろう。


「まだ時間はあるわけだしさ、頑張ろうよ」

「う、うん……!」


だが、言ったものは取り消せないし、悩んでも先には進めない。

月並みな言葉だが、今できることは励ますことしかない。

それに――由暉子なら、負けたらどうしようと悩むよりも、どうすれば勝てるかと考えるはずだ。


「で、でさ……」


チラチラ向けられる義姉の視線。

その眼差しが期待するものは、一つしかない。


「はいはい」


仕方ないな、と苦笑して。


「はぁ……あっ♪」


京太郎は、揺杏を両腕で目一杯に抱き締めた。

みんなの前では格好付けて、さばさばした風を気取っても。

人並みに弱いところはあるし、辛いことがあれば泣く。

姉が弱音を吐くところを何度も見てきたし、何度もこうして受け止めてきた。

ただ――


「んん……♪」


最近は、以前に比べて頻度が高い。

貪欲に求めるような、依存して縋り付くような。

身動ぎする揺杏の求めるものは、安心だけに留まらない。

その瞳が潤むのは――きっと、それ以上の温もりを、求めているからだ。


「はい、ここまで」

「……けち」


だから、無理矢理に揺杏を引っぺがす。

文句で口を尖らせてもお構いなし。

紅潮した頬と熱を帯びた吐息は明らかなシグナル。

それでも、答えるわけにはいかない。


「ほらさ、ユキたちもそろそろ来るだろうし……」


ただでさえ、勘の良い爽には釘を刺されている。

それに、一度答えてしまえば――京太郎も、滑り落ちるように止まれなくなる。

そして。


「……また」

「へ?」

「また、ユキなんだ」


どうやら姉は、酷くお気に召さなかったようで。


「姉さん、何言ってんの」

「昔から好きだったもんね。胸デカイの」


ネクタイを解き、上着を脱いで。


「あんなの。触れなきゃ意味ないじゃん」


揺杏は、シャツの裾に手をかけた。

「……ダメだろ、それ以上は」


手が動いたのは、反射的だった。

放って置いたら、後戻り出来なくなる。

普段から義姉のことはよく見ていたから――体が先に動いて、義姉の早まった行為を引き止めた。


「……離してよ」

「離したら、またやるだろ」

「だって」

「……」

「だって、不安なんだよ」


「京太郎がユキに取られちゃう。京太郎、おっぱいも好きだし、可愛い系も好きだし」

「……」

「あの子、何でもやるよ。きっと。そしたら私、勝ち目ないじゃん」


「そしたら――構って、くれなくなるでしょ」



「やだよ私。そんなん、絶対にイヤだ」

「ユキだけじゃない。成香も、チカ先輩も」


堰を切ったように溢れ出る不安や嫉妬の言葉。


「みんなのお陰で部活が出来たことは感謝してるけど……コレは、別」


もう、止まらない。

ずっと前から、揺杏は引き返せないところまで来ていて。


「もう無理。我慢できないから」


ただ、破裂する時が、今だっただけの話だ。


「それでも、止めるっていうのなら」


だったら、京太郎のするべきことは。


「そしたら、私――んっ!?」


揺杏の望むように――その口を、塞いでやる。

押し付けるだけの、拙い行為。

それを姉は、拒まなかった。


「……今は、ゴメン」


十秒。

ちょうどそれだけ時計の針が進んだ頃に、京太郎は唇を離した。


「あ……」


それから、更に十秒。


「あ、あわわわわ……」


自分が何をされたのか、頭での理解が追い付いてくるに従って。

徐々に、揺杏の体温が上昇していく。


「責任、取るから。絶対、不安にはさせない」

「せ、責任……って」



自分に、依存させてしまったことの責任。


「今は、無理だけど。いつか、絶対に」


姉がもう、後戻り出来なくなるのではないのなら。

自分も、同じところまで落ちるしかない。

もう、これで姉が自分を追い詰めるような行動はしないだろう。

そう考えた京太郎だったが――


「京太郎、はやくはやく」

「はい、はい」


あすなろ抱き。

椅子に座る揺杏を、求められるままに背後から抱き締める。


「おいおい……やるなぁ、二人とも」

「へへ、いいだろ。キョータリュームエネルギー補充!」


問題なのは。

今が、部活中ということで。


「酷く頭の悪そうな名前ですね」

「まぁまぁ」


少し。


「……いいなぁ」


早まった、かもしれない。

あの時のように、衝動的な行動はなくなった。

それ以上を求められることも。


「……手、緩んでる」


その代わりに、遠慮がなくなった。

責任は取る、不安にはさせないと言った手前、要求には出来るだけ答えなければならない。


「はい、はい」

「へへっ」


ぎゅっと、シートベルトのようにフィットさせる。

不満気だった顔が一転、花マル笑顔に早変わり。


「……」

「いい、なぁ」


二人の物欲し気な視線の意味は、考えたくなかった。

「なぁ、わかってる? 京太郎は一人しかいないんだぞ?」


爽の言葉の意味は、考えるまでもない。

遠回しに『まだ諦めないのか』と告げられた由暉子と成香だが、その顔は納得とは程遠い。


「あの二人は姉と弟です。結ばれるなんて、ありえません」

「そ、そうですよ! アレはただの、スキンシップで――」


二人が認められないのは、その壁があるからだ。

踏み外せない最後の一線。

常識という名のブレーキが、揺杏と京太郎にはある筈なのだ。


「でも、あの二人――血、繋がってないじゃん」


しかし、そのブレーキも。

揺杏には意味をなさず。

そして――


「そう、ですか……」

「……」


どうやら、そのブレーキがかかっていたのは。

この二人も、同じだったらしい。


頷きもせず、否定もせず。

ただ無表情で、成香と由暉子は部屋から出て行った。


「……もしかして、マズった?」

その日は、雨が降っていた。

用事があるから先に帰っていて、と姉に言われて。

下校途中に姉が傘を持っていなかったことに気が付いたのは――ある種の、虫の知らせのようなものが働いたのかもしれない。


「なに、してるんだよ」

「ん……? あ、どうしたの? 先に帰れっていったじゃん」

「なにしてるんだよっ!!」


顔だけをこちらに向けて、微笑む姉。

その両手が、血管が浮かび上がる程に、握り締めるモノ。

その両足が跨ぐ、小さなモノ。


「――」


涙を浮かべた瞳が、言葉もないままに。

最後に京太郎だけを見つめて――静かに、目を閉じた。

何かを叫んだことは喉の痛みが覚えている。

熱が退いて白くなっていた視界が戻ってきた頃には――姉の胸倉を掴んでいた。


「――かはっ」


背後で、苦しげな息を漏らす音。

続いて、不規則に繰り返される呼吸。

それを聞いた姉は――酷く残念そうに、眉を顰めた。


「私から京太郎を奪うって、ケンカ打ってきたからさー」


たった、それだけのことで。


「何度無駄だって言っても聞かないからねぇ」


たった、それだけの言葉で――



「もう、駄目なんだよね――今だって、良かったっていうよりも残念に思ってるから」

もう、麻雀部にも――有珠山にも、いられない。

姉を壊したのは自分だ。

彼女たちを壊したのは、自分だ。


姉と一緒に、どこか遠くの場所に行く。


きっとそれしか、もう道はない。


「……行っちゃうの?」


だから――最後に、未練で訪れた麻雀部。

休日で、あんなことがあったから、誰もいないと思っていたのに。

彼女は、そこにいた。

「みんな、悲しむわ」

「……」


答えない。

答えたら、きっと決心が揺らぐから。


「……どうしても、駄目なの?」


踵を返して。

思い出の残った麻雀部を後にする。

トランプを広げた机も、楽しんだ自動卓も。

もう、帰ってこない。


「……そう」



「残念、ね」


バチバチと音がする何かが、首のあたりに押し付けられた。

体中に、激痛。

硬直する全身の筋肉は、自由が効かず。

まともな思考能力を奪われた頭では、何も考えることができなかった。


「揺杏の勝手は、あなたを縛り付けた」


「なるかとユキのワガママが、あなたを傷付けた」


「爽の浅慮が、あなたを追い詰めた」


動けない体を、抱き締められる。

一方的な愛情は、拒むことを許されない。


「私が」

「私が――あなたを、守ってあげる」


「ずっと」


「ずぅっと、ね」


勝手に降りてくる瞼。

暗闇に閉ざされていく視界の中で一つだけわかったのは――もう二度と、みんなには会えないということだけ。

かけ間違えたボタンは、二度と直せない。

「弟くん。私は悲しいです」

「……」


「弟くん。私は怒ってます」

「……」


「弟くん。私は――」

「わかった! わかったからっ! 明日一日中言うこときくから!」

11月13日。

それは姉の誕生日であり、京太郎がすっぽかした日である。


「ん……よっと」


竹井家は少し複雑な事情があり、それだけに姉弟の仲も――


「……なに、してんの?」

「湯たんぽ」


もぞもぞと遠慮なく布団に入ってきた姉に思考を中断される。

両腕を胸に回し、脚はカニばさみでがっちりホールド。

湯たんぽ、との言葉通り互いの体温がダイレクトに伝わる状態どある。


「ね、姉ちゃん、寝づらいんだけど」


そして薄手の寝巻きである以上、伝わるものは体温だけではない。

健全な青少年であることを自負する京太郎には、この状況は耐え難い。


「今日一日。言うこと聞くんでしょ?」


対して姉はどこ吹く風。

時刻は00:10。

屁理屈っぽいが――確かに、姉を拒む権利は今の京太郎にはない。

ソファに寝っ転がる時はスカートがめくれていたり。

夏は風呂上がりにタオル一枚で家の中を徘徊したり。

狙っているのか単に無防備なのか。

竹井久という女子は、したたかなようでいて意外と抜けているところも多いので判断しにくい。


だが、この場合は――


「ふぅ」

「――っ!」


唐突に、耳元に吹き付けられる吐息。

背筋にゾクゾクしたものが走り、堪らず身震いする。

それも許さないとばかりに、姉はより強く腕と足を絡ませた。


「ダメよ、勝手に動いちゃ♪」


姉は、楽しんでいる。

こちらの反応とその意味を、理解した上で。


「部活中でも……お願い、しちゃおうかな?」


更なる反応を見るために、楽しんでやっているのだ。

「ん……」


ちろちろと、舌が耳たぶを擽る。

身悶えすることも許されない京太郎は、ただ身を縮こませて姉の悪戯を甘んじて受けるしかない。


「ふふっ♪」


そして、舌の動きと連動するように。

久の指先が、服の中へと伸びて――


「っ!!」


ぷつん、と。

何かが切れた、音がした。

「ごめんっ!」

「あっ」


力尽くで布団もろとも姉を跳ね除け、パーカーを引っ掴みそのまま勢いに任せて駆け出す。

背後で姉が何やら言っているようだが無視。全力疾走で玄関から飛び出した。


「……ちぇっ」








危なかった。

あのまま姉のされるがままになっていたら――決定的な何かを、超えていた。


「……どうすっかな」


勢いに任せて飛び出したはいいが、寒い。

寝巻きの上にパーカー一枚では時期的にも時間的にも辛い。

家に戻って顔を合わせるのも気まずい。

財布も無いので適当な時間潰しも難しい。

咲の家はここからは遠いし、何よりこの時間の訪問は非常識極まりない。


「京太郎っ!!」


さて八方塞がりだと肩を下ろしたところに、背後から酷く心配した調子で自分の名を呼ぶ声が聞こえた。

赤く上気した頬に、乱れた吐息が寒さで白くなっていた。


「良かった……すぐに、見つかって」


暗い寒空の下、急いで走ってきたのだろう。

電灯に寄り掛かりながら、息を整えている。


「久から、電話があって……京太郎が、出て行ったって」


彼女の名は福路美穂子。

姉の親友で、風越のキャプテン。

世話焼きな性格であり、京太郎もよくお世話になっているのだが――


「どうして、家出なんかしたの……?」

「え、えっと……」


純粋にこちらを心配する瞳に戸惑う。

まさか『ヤバイと思ったが性欲を抑えられそうになかった』などと正直に話すわけにはいかない。

姉から電話で――と言っていたが、どこまで話を聞いているのだろうか。

ヤバイとは思ったがスレを抑えられそうになかった
京太郎「修羅場ラヴァーズ」ネリー「大好きがいっぱい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416300917/)

続きは次スレでー
別スレの気分転換のために初めて立てた安価スレですがついに10スレ目
なんかめでたい

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