京太郎「修羅場ラヴァーズ」 (1000)

・京太郎スレ
・短編集的な感じです
・安価もあるかもしれない
・ヤンデレとかあるかもしれない
・話によって京太郎が宮守にいたり臨界にいたりするのは仕様です

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一人の男を巡って複数の女性が争う。
そんなものは物語の中か、ニュースでしか見れないし、自分には無縁なモノである。

そう、思っていた――自分が、その渦中の男になるまでは。


「京太郎」


背後から自分の名前を呼ぶ声。
鼻腔を擽るシャンプーの匂いと、首に回される腕。

「部活、行こうか」

「……小瀬川先輩」

いつからだったか、皆が通る廊下であるにも関わらず、この人がこうして俺に寄り掛かるようになったのは。
周りに権利を主張するように、べったりしてくるようになったのは。

「シロでいい……って言ったよね」

「……シロ、さん」

しがみつく力がより強くなった。

最初は役得だと喜んだ柔らかい感触も、今はこの後のことを考えると――


「なに、してるの」


憂鬱なものでしかない。

鹿倉胡桃。
自分よりも一回りも二回りも小さな人。
だけど、自分よりも一回りも二回りもしっかり者で頼りになる先輩――の、筈だった。

「なにって……」

「京太郎が困ってるでしょ」


返事も待たず、背後に回り、京太郎からシロを引き離す胡桃。
遠慮が無く、いっそ暴力的とも呼べる勢いだった。


「っ……」

「なに、その顔は」

「……別に」

胡桃はふん、と鼻を鳴らして京太郎の手を取った。

「ほら、行くよ!」

「ち、ちょっと」

そのままシロを置いてけぼりにしてズンズン進んで行く。

「……ちっ」

一拍遅れて、シロも京太郎たちに続いて歩き出す。
……ちらりと見えたブレザーの下に、小さな赤い染みが見えた気がした。

胡桃は京太郎の手を引いたまま、部室の戸を開いた。
まるで見せ付けるようだ、と感じたのは、京太郎の気のせいではないのだろう。
そして――


「ぷっ……なにそれ。幼稚園児みたいだよ、ソレ」

「チャイルド、デスカ?」

「あはは、京太郎くんも困ってるよー。早く離してあげないと、京太郎くんが可哀想だよ?」

にっこりと、笑顔を浮かべてはいるけれど。
三人の視線に敵意のようなものを感じたのも、きっと気のせいじゃない。

「……京太郎」

胡桃が京太郎の手を離し、三人が待つ卓へ着く。

「ネト麻しながら待っててね。後で指導してあげるから」

「ダメだよ京太郎。嫌なことは嫌って言わないと」

「……塞!」

「あはは、怒っちゃったかな? それとも図星?」

「早く始めようよー」

「ガンバリマショウ!」


続けて、牌を並べる音。
なるべく背後の会話は意識しないようにして、京太郎はパソコンの電源を入れた。

今日も、部活が始まる。
京太郎は、小さく溜息を吐いた。

翌日。
授業を終えて、放課後になった頃。
今日も部活か――とカバンを持った時、背筋に気持ちの悪い寒気が走った。

「風邪、ひいたか?」

今朝から若干の気怠さを感じてはいた。
額に当てた掌からも熱を感じる。

「……今日は、帰ろう」

こんな体調で、あの空間に耐えられる気がしない。
全員に今日は休むという旨をメールで伝え、京太郎は昇降口へ向かった。


「あ、確かに顔真っ赤だねー。大丈夫?」

「え?」

そこには、自分よりも背の高い三年生の先輩の。
姉帯豊音が待っていた。

「ちゃんと治さないとダメだよー? 京太郎くんを置いてインターハイになんて行けないもん」

「先輩、なんで……」

宮守高校は今年が初のインターハイ参加で、三年生の豊音にとっては今年が最初で最後の全国。
個人戦で敗退した京太郎とは違い、一日でも多く部活に時間を割かなければならない。
少なくとも、こんなところで話をしている暇と余裕は無い筈だ。

「え? だって、今日は休むんでしょ? それじゃあ、部活とか意味ないよー」

「そんな、こと……」

眩暈を感じたのは風邪のせいか、それとも。
足元も覚束ず、カバンを取り落としてしまった。

「わわっ!? 大変だよー! 早く帰らないと!」

酷く心配そうな顔をした豊音に抱きかかえられる。
京太郎は何もする気が起きず、豊音にされるがままに、帰路に着いた。

病は気から、という言葉がある。
病気は気の持ちようによって良くも悪くもなるという意味だが――風邪が完治した京太郎の体調と心は、完全に相反した状態にあった。

豊音の様子を見た限りでは、自分が休んだら彼女たちの練習の妨げになる。
だけど、自分が部活に参加すれば、部内の空気が険悪なものになる。

俺は、どうすれば――


「ゴハン、タベレナイ? マダ、カゼデスカ?」

考え事をしていたら箸が止まっていた。
隣りに座るエイスリンから不安気に覗き込まれ、我に返る。

「ああいえ、大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしてまして」

慌てて返事を返し、食事を再開する。
気持ちは沈んでいても食欲はあるし、エイスリンが奢ってくれたレディースランチは、京太郎の好みの味だ。

「ヨカッタ!」

そして、エイスリンの花が開いたような笑み。
京太郎と二人っきりなら彼女たちは穏やかで、可愛らしい微笑みを見せてくれる。


いつもこうだったらなぁ……。
考え事を再開しながらも、昼休みの残り時間内に食べ終わるように、京太郎は箸の進みを速めた。


そんな京太郎の様子を、エイスリンはじっと見守っていた。
自分の手元のトレーのパンに手を付けることなく。
じっと、じいっと。

「ごちそうさまでした」


昼休み終了の15分前。
今からトレーを片付けて教室に向かえばちょうどいい具合に授業が始まるまでの余裕がある。

「カタヅケテクル!」

「いや、さすがにそれは」

京太郎が止める前に、エイスリンは京太郎と自分のトレーを持って行ってしまった。
パンを口に加えながら一生懸命トレーを運ぶ姿は可愛らしいが、流石に手伝わなくてはと、腰を浮かせて


「ん? これは……」


ある一枚の畳まれた紙が、エイスリンの座っていた席に落ちていることに気が付いた。
広げてみると、デフォルメされた宮守高校麻雀部のイラストが描かれていた。
皆が満面の笑みを浮かべている。


「……」

「タダイマー……? ドウシタ、ノ?」

「あの、先輩。これは……」

「アッ!」


恥ずかしそうに頬を赤らめて、京太郎から紙を奪い取るエイスリン。
丁寧に畳んでブレザーのポケットにしまい、上目遣いに京太郎を見る。

「ミ、ミタ……?」

「ええっと……はい。先輩、やっぱり絵上手ですね。なんというか、ほっこりしました」

「ホッコリ……?」

「えっと……胸があったかくなったというか……嬉しく、なりました」

「 ! ウン! ウンッ!」


きっと、まだやり直せる。
嬉しそうに何度も頷くエイスリンを見て、京太郎はそう思った。










――イラストに添えられていた英語の文章の意味を京太郎が理解できなかったのは、お互いにとって幸せなことだったのだろう。









放課後。
京太郎が部室に着いた時、珍しく部員の誰もまだ来ていなかった。

「準備しておくか……」

誰がいつ来ても始められるように、卓と牌の用意をしてPCの電源を入れる。
お茶も淹れておこう。みんなが練習に集中できるように。

「……いつか、また」

戸棚に飾ってある写真。
京太郎の入部記念に撮った写真。
全員が、満面の笑みを浮かべている写真。
エイスリンに見せてもらったイラストのように、この写真のように。

いつか、また、みんなで――


「京太郎! いる!?」

「へ?」

物思いに耽る京太郎の心を吹き飛ばすように、勢い良く部室の戸が開かれた。

息を切らしながら飛び込んで来た塞の話を纏めると。
どうやら今日は練習が休みの日だったらしく、行き違いで京太郎に連絡が届かなかったらしい。
道理で誰もいない筈だ。

「本っ当ゴメン……」

「いえ、先輩は悪くないですよ。あ、お茶淹れますか?」

「あ、じゃあ私がやるよ。京太郎に押し付けてばっかりじゃ悪いし」

「いえ、一年ですし」

「いいのいいの。これぐらいはやらせてよ」

強引にポットを奪われ、ソファに座らされてしまった。

「~♪ ~♪」

鼻歌を口ずさみながらお茶を淹れる塞。
中学をハンドボール部で過ごしてきた京太郎にとって雑用は一年の仕事という精神が根付いており、今一落ち着かない。
なので、リズムに乗って無意識に振られる腰のラインに目が行くのは仕方がないのだ――と、京太郎は自分に言い訳をした。

お茶を飲んで一息ついた後。
折角だからと、塞が付きっきりで京太郎の指導に付き添うことになった。
教本を使った授業形式から始まり、過去の牌譜、ネトマを通じての実戦指導。
京太郎も塞も熱中して――気が付けば、時刻は夕方18時30分。


「んー……っ!」

大きく伸びをする。
良い意味で、体が疲れていた。

「ふぅー……何だか久しぶりだね、こういうの」

「そうですねぇ……」

一緒に麻雀を打って、笑って。
京太郎が来たばかりの頃は、当たり前の光景だった。

「……」

もし、自分がいなければ。

きっと、何もかもが上手くいっていたのではないだろうか。

シロはダルいダルいと言いながらも何だかんだ言って部に貢献して。

胡桃は口うるさいところはあるけど、みんなのことを考えていて。

豊音はミーハーだけど、強くて、可愛くて。

エイスリンは日本語はまだ拙いし麻雀の経験も浅いけれど、一生懸命で。

個性がバラバラのみんなを苦労しながらも塞が纏めて、全国へと出場する宮守高校。

そんな未来があったのではないか。


「京太郎」

「は――え?」

塞に、抱き寄せられる。

塞の心臓の音が聞こえる。


「大丈夫」

「きっと、上手くいくから」

「きっと、何もかもが京太郎にとって良いように進むから――ね?」

帰りの電車内。

下校時刻と少しずらして乗車したので、周りに宮守の生徒の姿はなく、二人並んで座る程度の余裕はあった。

「すみません、さっきは……」

「いいってこれぐらい。一年に胸貸すのは部長の役目だから。毎日やってあげてもいいよ?」

「ハハ、流石にそこまで情けない野郎では……っふぁ」

「おっきい欠伸だねぇ」

「……なんか、急に…凄い眠気が」

「しょうがないよ。あんなに集中したわけだし」

「……むぅ」

「寝ててもいいよ? 後で起こしたげる」

「いや、ほんとそこまでは――くっ」

カクンと、京太郎の意思とは反して首が下がる。
眠気を必死に堪える京太郎を見て、塞はクスリと笑った。

「無理しないで休みなって、ホラ」

「……す、すいま、せん……」

「おやすみ――京太郎」

どこまでも優しい塞の声と、暖かい何かに頭を抱かれて。

京太郎の意識は、沈んで行った。


「ちゃんと、後で起こしてあげるから」

「家に、着いたら」

「ちゃんと、ね」


それから月日は過ぎて――夏が、終わった。

結論から言えば塞の言う通り――京太郎の望むようになった。ただ、二つのことを除いて。

宮守高校が団体戦で優勝したのだ。

全員で協力してバトンを繋ぎ、永水、臨海、白糸台を破り、栄光の座を掴みとった。

優勝旗を前に全員で満面の笑みを浮かべた写真は、まさに京太郎の望んだものだ。

ただ二つの叶わなかったことの一つは、未だに部員同士の不仲が続いていること。

全国大会優勝によって以前の、下手をすれば死人が出そうな空気は緩和されたが――それでもまだ、以前のようには戻れていない。


そして、もう一つは――


「ねぇ、京太郎? 『眠くない?』」

「ふふ、大丈夫だよ。貸してあげるから――いくらでも、ね」

「心配しなくていいよ。大丈夫」

「何もかも……」

「京太郎にとって、上手くいくようになるから」


きっと自分は、一生この人から逃げられない。

言い逃れは出来ない。

精神的にも肉体的にも、彼女から離れることは出来ない。

そういう風に、刷り込まれてしまっている。

今までも、そしてこれからも、この関係は続いていくのだろう。


これがもし、周りに知られてしまったら。

そんな思考は――彼女の胸の温かさに比べれば、どうでもいいことだった。



【プロローグ 了】

とりあえず区切り
このスレのプロローグって感じで書きました
別スレの息抜きでやってる感じなのでクオリティ低めですがご勘弁を


次は
1 別の高校編
2 宮守出会い編
3 その他
のどれがいいですかね

あ、あと書き忘れてましたが次は安価かコンマか交じえて書きたいです

じゃあとりあえず次は2の宮守出会い編でー
その後に臨海か白糸台かプロ勢あたりを

白糸台は0.7宮守っぽい
プロに関してはギャグになりそう
臨海は1宮守以上かも

すこやん「おかーさん! 監禁場所ってどこがいいのかなー!?」
はやりん「あはっ! やっぱりこの薬飲んだからね☆ もうこんなになってる☆ 」
のよりん「出すっ!」プンスコ

ギャグなんだよなぁ……

宮守出会い編いきます

中学2年の冬休み。

両親の離婚。

肩の故障によるハンドボール部からの引退。


この三つが重なったのは、京太郎にはある意味で幸せだったのかもしれない。
県大会決勝でエースとして活躍し、来年には全国出場まで見えていたハンドボール。
その夢が断たれてしまった京太郎の目には、かつての仲間たちがグラウンドで練習をしている光景すら、辛く映った。


そして、同じタイミングでの両親の離婚。


父は鹿児島に。

母は岩手に。

二つの選択を迫られた京太郎は、母に着いていくことを決めた。

今の中学から離れることが出来れば、どこでも良かった。


――ただ一つ、人見知りな同級生の女の子が気がかりだったけど。

その子を気遣う余裕は、京太郎には無かった。

降り続ける雪に埋れた道。

冬休み明けには毎日通うことになる通学路。

今まで住んでいた長野とは大分雰囲気が違う。

自分は、ここで上手くやっていけるだろうか。


「うわっ」


考え事をしていたら、雪に足を取られて転んでしまった。
辛うじて手を付くことが出来たので全身雪まみれになることは避けられた……が、


「痛っ……」


肩に走る激痛。

転倒時の衝撃で、肩に大きな負担が掛かったらしい。

寒さで悴む指先では携帯を開くことも出来ず、痛みに耐えかねて蹲り――



「君、大丈夫!? 」




「え……?」

気が付けば、赤毛の髪をお団子に纏めた女の子が寄り添っていた。

酷く心配そうな顔をして、京太郎の手を握る。


「今すぐ、お医者さん呼ぶから――」


彼女の名前は、臼沢塞。

宮守高校麻雀部の部長で――これが、京太郎が入部するきっかけとなった出来事だった。


塞さんの京太郎への第一印象
コンマ判定、直下

1~30 はやく助けなきゃ!
31~60 よく見ると整った顔立ちかも……
61~98 なんだろう、この子の顔……見てると……
ゾロ目 ???

はい

>>92
87 なんだろう、この子の顔……見てると……。


背が高くて、寒さで指先が真っ赤になっている男の子。

転んだ時にどこかを痛めたのか、苦しそうに顔を歪めている。

速くお医者さんに診てもらわないと――と、焦る気持ちとは、また別に。

塞の心の中に、生まれた感情があった。


なんだろう、この子の顔……見てると……。


痛みに歪む、整った顔立ち。

寒さで震える、長い手足。



彼が助けを求めている。

彼を包み込んであげたい。

彼に甘えてほしい。

彼を、私に。

彼を、自分の手で――


(……って、何考えてんの私!)


ブンブンと頭を振って思考を元に戻す。

今は彼を暖かい場所に連れて、医者を呼ぶことが先だ。

自分一人では力が足りないと考えて、塞は携帯電話を手に取った。

電話の相手は小瀬川白望。

先程分かれたばかりなので、距離的にも近くにいる筈だ。

ものぐさな彼女だがやる時はやる。コタツをリアカーに載せて引っ張ってくるくらいには。

人命がかかっているわけだし、時は一刻を争う。

速く来てくれと祈りながら、塞は通話ボタンを押した。



程なくして現れたシロの反応、直下

1~30 ダルい……
31~60 ダル……
61~98 ダ……
ゾロ目 ???

>>103 やったぜ



「ダ……」

――ルい、と続く筈の言葉は出て来なくて。

何故か固まってまじまじと京太郎の顔を見つめるシロの様子を不思議に感じる塞だが、今はそれよりも


「シロ、悪いけど――」

「わかってるよ」


塞が頼むよりも速く、屈み込んで京太郎と目線を合わせるシロ。

それから、「ちょっとごめんね」と断りを入れて、


「はむ」


京太郎の鼻頭に、啄ばむように口付けた。

「ちょっと、なにしてんの!?」

「なにって……寒そうだったから?」


激昂する塞と、平然と答えるシロ。

二人の間に蹲る京太郎は意識が朦朧としていて、何が起きているのかすら理解できない。


「何でそんな怒ってるのさ……」

「何でって……」


自分でも、何がここまで癪に触るのか理解できない。

言い淀む塞をヨソに、シロは出来るだけ負担がかからないように京太郎を起こした。


「ほら、塞」

「ああ……うん」



腑に落ちないが、今はそれよりも優先するべきことがある。

シロに促され、塞は京太郎の手を取った。

ここからなら、駅が近い。そこなら暖房も効いている筈だ。

肩に名前も知らない男子の重みを、心に言い表せないものを抱えて、塞はシロと一緒に歩き出した。


後日、お礼の品を持って、母親と共に宮守高校の麻雀部に訪れた彼。

そこで塞は、彼の名前が京太郎であると知った。

深く頭を下げる京太郎に、胸の底から言い様の無い暖かい気持ちが込み上げてきたが。

まだ、彼女は、この気持ちの名前に気が付かなかった。


そして、一年が経ち。

京太郎が、宮守に入学して、麻雀部に入部して、また暫く経って。

シロや豊音に迫られている京太郎の姿を見て、漸く。


「ああ――そっか。そう、なんだね」


この正体に、気が付いた。

出会い編なので、塞さんとシロはここまで
次は胡桃パートいきます

鹿倉胡桃は苛々していた。

共学化した宮守高校、そこまではいい。

問題は、それにより校内の風紀が乱れつつあること。

見学会で多くの数の男子生徒が宮守高校を訪れたが、だらしない格好の男子が多かった。

昔から細かい事が気になってしょうがないタイプの彼女は、これがとても気に食わない。

だから、次にだらしのない新入生を見かけたら思いっきり注意をしてやろうと――



直下判定
1~30 コラ! そこの男子!!
31~60 コラ! そこの男、子……
61~98 コ、コ……
ゾロ目 ???

おまかせあれ!

>>115 流石ですね


廊下の前を歩く金髪の男子。

ベロンと後ろから出た白いシャツ。

勿論これは胡桃にとって見逃せるものではない。

ガツンと注意してやろうと、勢い良く回り込んで、ビシリと指を突き付け――


「コ、コ……」

「?」


見事に、固まった。

男っぽい……と言うよりは、少し可愛い目の顔立ち。

ちょっとだけシロに似ているかもしれない。


「ハイ?」


困ったように眉根を寄せた表情。

耳心地の良い声。


「コ、コ……」

「あ、あの……?」


その何もかもが、彼女の想像していた姿の反対側にあって。


「……コーラ、飲む?」


何もかもが、彼女のストライクゾーンにどハマりしていた。

胡桃は運命の人なんて言葉は否定するタイプだった。

同級生が今年入ってくる男子に対してその手の話題で盛り上がっている時にも「バッカじゃないの」と切り捨てていた。

そんな彼女が、もしも、一目惚れを体験してしまったら。

もしも、意中の人に思考を埋め尽くされるようなことがあれば。


「あの、先輩……?」

「胡桃」


後は、もう。


「へ?」

「胡桃って、呼んでほしいな」



加速的に、堕ちて行くだけだ。

次はエイスリンパートです、が……
胡桃が尋常でないチョロインになってしまったので、もうちょい判定見直した方がいいですかね?
とりあえず宮守はこのままで行く予定ですが

時は、京太郎の中学時代まで遡る。



一週間もすれば宮守の空気にも慣れたもので、映画でも見に行こうと思い立った日のこと。

携帯で道を確認しながら歩いていると、ある女の子が目に止まった。


「ウゥ……」


金髪で青みがかった瞳。顔立ちから恐らく外国人。
オロオロと、困ったように辺りを見渡している。
運悪く、周囲に通行人はおらず、通りかかっても無視されている。


「……よしっ!」


困っている人は見逃せない!などと言うつもりはないが。
可愛い女の子が困っているのを放っておけるような男でもない。
あまり得意ではない英語の知識を必死に引っ張り上げながら、意を決して京太郎は女の子に声をかけた。

「め、めい、あい、ヘルプユー?」

「エ?」


振り向く女の子。

果たして、結果は――


1~30 ア、アノ……ニホンゴ、ワカリマス……
31~60 oh……
61~98 I fell in love with you at first sight……
ゾロ目 ???

病めるのですボクたち!

約4割の確立を的確に撃ち抜いていくスタイル
京太郎マジ特異点

あと差し支えなければ>>1の別スレ(本スレ?)教えて下さい

>>141 ドラゴンロード!



振り向いた女の子と目が合う。

「……」

緊張で、ゴクリと唾を飲む。

人と話すのは得意なつもりだが、外国人と話すのは初めてのことだ。

それも、教科書に載っていそうなシチュエーション。

果たして、上手くいくだろうか。


「……」

「……」


重なったまま動かない互いの目線。

吹く風が冷たく感じる。

寒さのせいか、女の子の白い頬も、どんどん赤く染まって――


「……I」

「へ?」


女の子が、京太郎の手をそっと握った。


「I fell in love with you at first sight……」

一目惚れをしました、という意味の英語だが。

ニュージーランドの訛りと、エイスリンも緊張していたこともあって、京太郎は上手く聞き取る事が出来なかった。


「え、なんて? え? ええ?」

「……」


じいっとこちらを見つめたまま動かない二つの青い瞳。

握られた手は離される気配が全くない。

京太郎の覚えている限りでは教科書にはこんなシチュエーションなんぞ載っていない。

どうすればいいのか、まるで分からなくなってしまった。


「……ン」


それを焦れったく感じたのか、女の子が背伸びをして、京太郎の両頬に手を添える。

訳の分からないまま引き寄せられ、女の子の小さな顔が――




「どうしたの。こんなとこで」

エイスリンの行為を中断するようにかけられた声。

ほっぺにエイスリンの両手をくっ付けたまま振り向くと、先日世話になった白い髪の先輩が立っていた。


「えっと……」

「小瀬川白望。京太郎、だったよね。で、そっちは?」

「それが……ちょっと、わからなくて。道に迷ってたみたいなんで、声をかけたんですけど」

「ふうん」


じろり。

エイスリンを睨めつけるシロ。

その目線に戸惑いながらも、エイスリンの両手が降りることはなかった。


「ま、いいか。確かその子、確かウチの生徒だし」

「え、そうなんですか?」

「うん。留学生……ホラ、いくよ」


シロが京太郎からエイスリンを引き離す。

ダルいダルいと口癖のように連呼していた先日の印象を覆すように素早い動きだった。


「行きなよ。用事、あるんでしょ。この子は私がどうにかするから」

「え、でも――」

「いいから」

「……はい」


彼女の迫力に、京太郎は頷くしかなかった。


「すいません。それじゃ、また」

「アッ……」


女の子に頭を下げて、その場を後にする。

その後ろ姿を、二つの青い瞳が、いつまでも見守っていた。

エイスリンパート終了
次は豊音パートいきます
ちょっと前に総合スレに上げたヤツが元になってるのでもしかしたら見覚えある人もいるかもしれない


>>148
非安価の京太郎スレとだけ

あとすっかりトシさんの存在忘れてたけど
流石にこのスレではいい、よね……?

その日は姉帯豊音にとって、特別な日だった。

熊倉トシの計らいで、同じ年の女の子と麻雀を打つ事が出来て、しかも宮守に編入することになった。

今日はタイミングが悪く会うことが出来なかったが、新入生として入学してくる予定の男の子もいるという。

もう一人ぼっちじゃない。これからは毎日が楽しい。

浮き足立つ彼女を止める者はいない。

そして、雪で凍結した歩道を歩くことを注意する者も。

今の彼女の隣には、いなかった。


「――え?」


するりと、段差から足を踏み外す。

帽子が宙に舞い、彼女は――




「大丈夫、ですか?」



直下判定
1~30 あ、ありがとう、ございます……
31~60 お、王子様……!
61~98 ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ
ゾロ目 ???


ついでに判定二個下

ほう

>>160 流石宮守全員天使
>>161 31以上で3年卒業後トシさん 61以上で3年現役トシさん修羅場INでした



ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ。




――そんな、奇妙な笑い声のようなものが、聞こえた気がした。

背筋に走った悪寒を飛ばすように頭を振る。

大丈夫。幻聴だ。自分に言い聞かせて視線を下に向ける。


「大丈夫ですか?」


瞬きもなく、自分を見つめる赤い瞳。

怪我はないように受け止めたつもりだが。

幸い、肩にも痛みはない。


「……」


反応がなく、彼女の頬が次第に赤く染まっていく。

……何だか似たようなことが、前にもあった気がする。


何となく吐きたくなった溜息をグッと堪えて、京太郎は豊音の反応を待つことにした。


ところでこの姉帯豊音という少女。

見かけに寄らず、ミーハーである。

加えて言うなら同世代の子との触れ合いもインターネットもなく育ってきた彼女にとって、娯楽と言えばテレビと一人で練習してきた麻雀くらいのもので。

「どこの月9だよ」と突っ込むたくなるようなコッテコテの恋愛や、ロマンチックな告白に憧れていたりする。


そして、この状況は、まさしく。


「王子様……」

「は、はい?」


彼女が、憧れた状況である。

「こ、腰が抜けちゃって……」


怪我は無いようだが歩けない、とのこと。

確かに下手すれば一生に残る怪我をする可能性もあったのだから、無理もない。

京太郎も彼女を支える腕が辛くなってきたので、近くのベンチに座ってタクシーを呼ぶことにした。


「お姫様抱っこで運んで欲しかったのに……」と、この時は少し不満に感じた豊音だが。

後に京太郎が肩に故障を抱えていることを知り。


そんな傷があるにも関わらず私を助けてくれた――

やっぱり、京太郎くんは私の王子様だよ――


と。


益々、惚れ込むことになった。

ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ





暗闇から、白い手が伸びる




ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ




笑い声が、近づいて来る



ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ


足が動かない


ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ


黒い髪が、首に纏わり付く

ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ

赤い瞳が、覗き込んで――


「!!」

まるで、心臓を鷲掴みにされたような。

そんな恐怖を感じて、目を覚ました。


「またか……」


草木も眠る丑三つ時。

最近、悪夢で起こされることが多過ぎる。


「……トシさんにでも相談してみようかな」


布団を被り直して目を閉じる。

枕元に落ちている一本の長い髪には、気が付かなかった。


こうして、京太郎は五人の少女たちと出会った。



「女子5人に男子1人、これで宮守高校麻雀部のスタートってわけだね。折角だし、写真でも撮ってみるかい?」

「おお! いいですね」

「ダる……」

「そんなこと言わない!」

「部長の私と京太郎くんは真ん中かな」

「それじゃ、私は京太郎の前で!」

「じゃあ、私はその後ろかなー。前だとみんな隠れちゃうし」

「ダルいから……定位置で……」

「キョータローノ、トナリ!」


「あ、あの、ちょっと皆さん近過ぎじゃ?」

「はは、仲良きことは――てね。それじゃ、いくよ。ハイ、チー、ズ!……っと」



笑顔で撮った集合写真。


この時、もしも、京太郎が。


彼女たちが笑っているのは、みんなでいるから、ではなく。

京太郎といるからだと、気付いていれば。


もしかしたら、未来は。


ほんのちょっとだけ、優しかったのかもしれない。



【宮守出会い編 了】


読み返すと塞さんが一番常識人ですね
さすが部長


さて次は

1 白糸台編。最初は非安価
2 臨海編。最初は非安価
3 プロ勢編。最初から出会い編で行くので安価、コンマ有り
4 宮守日常獄編。安価、コンマメイン
5 松実京太郎のお話。安価、コンマ有り

のいずれかになります

では次は宮守で
進行方法としては、こちらが安価で指定するので、キャラ名を書いて下さい
なるべくそのキャラにあったシチュエーションで書いていきます

他校のキャラも混ぜる場合は、シチュエーションも指定していただけると助かります(全国大会の廊下ですれ違う、など)

あとこっそりキャラ名安価直下

廊下ですれ違う、多種多様な制服を来た女子たち。

まさか巫女服を来た女子がいるとは思わなくて、しかもある特定部位がとてもご立派だったので思わずガン見してしまったが――多分、大丈夫だと思う。

向こうもこっちを見てやたらと驚いた顔をしていたのは少し面食らったが、まぁ。


「来たんだな、全国に……」


自分がこの場に居れるのは先輩方の実力のお陰だ。

それでも、このインターハイ会場の空気には気分が高揚する。

来年こそは、自分の実力で。

そして、みんなとの仲も――



「京、ちゃん?」

「え?」



咲ちゃん判定直下
1~30 やっぱり、京ちゃんだよね?
31~60 久しぶり、だね
61~98 ぎょう゛ち゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛っ!!
ゾロ目 ???

どうしてトシさんの時は高コンマ出なかったんだろう……

>>211 61~98 ぎょう゛ち゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛っ!!



懐かしい声が聞こえた。

ちんちくりんで、ちょっとだけ特徴的な髪の毛で、読者が趣味で。

何やらせてもダメダメで――色んな意味で、目が離せなかった女の子。

そんな彼女が、ここにいるわけが――


「ぎょう゛ち゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛っ!!」

「うわぁっ!?」


トイレに行ったら、帰りに思ったよりも人が多くて、道が分からなくなって。

方向音痴にありがちな「とりあえず行ってみる」を繰り返し、角を右に左に曲がり続けた結果、見事に迷子になり。

心細くなったところで、かつての同級生に似た男子を発見。

まさかと思って近付いてみたらドンピシャで、今まで溜め込んだものが吐き出された――ということらしい。


「落ち着いたか……?」

「うん……」


ぐす、ぐす。

頭をポンポンと撫でてやると、咲は照れ臭そうに微笑んだ。


「久しぶりだね……京ちゃん……」

「そうだなぁ……」

まさか、高校生にもなって迷子の保護をするとは夢にも思わなかった。


「京ちゃんも、選手なの?」

「いや俺は付き添いだよ、先輩たちの……ってお前、まさか」

「うん。私、清澄の大将なんだ」


えへへ。

はにかむ咲を前に、絶句する。

このちんちくりんが。

ぽんこつ少女が、大将だと――?



京太郎は若干足元にフラつきを感じながらも、咲を送り届けるために歩き出した。


選択肢

1 途中まで届けてやれば大丈夫だろう
2 控室まで送っていくか?

「でもまさか、京ちゃんが麻雀部だなんて」

「それは俺の台詞だっての」

「スポーツ系の部活やってるかと思ってた。だってハンド部は――あ、ごめん!」

「気にすんな」



グリグリと、少し強引に咲の頭を撫で付ける。

もう。相変わらずだね、と髪を整える咲だが。

その台詞とは裏腹に、口元には柔らかな微笑みを浮かべていた。



「そうこうしている間に、清澄の控室が見えてきたな」



直下判定 竹井久
1~30 出来る部長
31~60 チョロい控室
61~98 どうあがいてもロッカー
ゾロ目 ???

二個下 原村和
1~30 咲さん、その方は?
31~60 ありがとうございます。
61~98 あなたが、京ちゃん?
ゾロ目 ???

こい

>>228-229
どういうことなの……



悪待ちが好き。

悪い時に良いものが運ばれてくるが多い。

麻雀でも私生活でも、竹井久はそんなジンクスを抱えていた。


例えば、自軍のエースが迷子になって、友人と後輩を探せに行かせたら。

そのエースが、素敵な出会いを連れてきた、とか。


「えっと、この人は……」

「なるほど……君が、咲を連れて来てくれたのね?」

「ああ、はい。それじゃ、俺はこれで――」

「ちょっと待って」


去って行こうとする京太郎の手を、久が握る。


「お願いだから、少しくらいはお礼をさせてよ――ね?」

少し強引に押し留められる京太郎。

それは、彼が美人に弱いということもあったが、自軍の控室のギスギスした空気から逃れたい……という気持ちもあったのかもしれない。


「あなたが、京ちゃん?」

「え――あ、ああ、うん」


「お茶とお菓子出すから、ちょっと待っててね。咲、手伝って」とソファに座らされた京太郎に、和が話しかける。

その見た事も無いほど豊満な胸に危うく視線が釘付けになりそうになったが――辛うじて、視線を剃らすことができた。


が、しかし。


「ふふ……ごめんなさい、咲さんがよく、あなたのことを話していたもので」

「お、おう……そっか、どんな風に」

「頼りになるけれど、ちょっとエッチで、間抜けなところもある男友達がいたって」

「あ、あいつ……」


勿論、それに気が付かない和ではない。



なぜ、でしょう。

彼を見た時から、彼に見られていると、胸が高鳴って。

この高鳴りのためなら、その視線も――決して、イヤなものではありません。

だから。


「ふふっ」

「おぉ……」


こんな風に、笑って、胸を揺らしてみたり、だとか。

そうすると、とっても正直な彼の目線が動いて。

マリオネットを操っているような気分になって、少し楽しい……です。

なんて。

「はい、どうぞ」


コトリ。

京太郎からの視線を遮るように、久がケーキの乗った皿とティーカップを京太郎の前に置いた。


「すいません、なんか」

「いいのよ、気にしなくて。ねぇ……和?」

「そう……ですね」

「じゃ、いただきます」


両手を合わせて、フォークを手にとる。

チーズケーキと紅茶の味わいが、京太郎の心と体を癒した。


「ふふ、なんならお代わりもあるけど?」

「いえ、さすがにそこまでは!」

「そう? 遠慮しなくていいのに」

「はは、そこのぽんこつ一人分にしては、高すぎる駄賃ですよ」

「私のこと!?」

ケーキと紅茶をご馳走になって。

目の保養も出来て。

少し気がかりだった同級生とも再会できて。

最後に連絡先を交換して――咲は、そもそも携帯を持っていなかったからこっちの番号を渡しただけだが。


麻雀部関連で、こんなに晴れ晴れとした気持ちになったのは実に久しぶりだ。

ああ、きっと。

宮守のみんなとも、またこんな風に談笑できる日が来るだろう。






直下判定
1~30 宮守の誰かが見ていた
31~60 宮守のペアに見られた
61~80 宮守のトリオに見られた
91~98 宮守の全員に見られた
ゾロ目 ???

宮守の誰と誰に見られた?
直下と下二 トシさんでも可

「ねぇ、さっきの」

「ナニ?」


廊下の角を曲がったら、シロとエイスリンの二人が立っていて。

二人に挟まれるように、問い詰められた。


「なにって……」

「随分、仲良かったみたいだけど」

「ナンパ?」

「ち、違いますよ!」


そんな度胸があれば、ここまで苦しくない……なんてことは、口が裂けても言えないけれど。


「あれは、中学のころの友達ですから。なんでもありませんよ」


さっきまでの良い気分に水を差されるようで、少し強めの口調になってしまった。


「すいません。ちょっと整理したいことがあるので、失礼しますね」

「アッ……」

「え」



二人を振りほどいて、自分の部屋へ向かう。

自分と咲と、清澄のみんなとの仲をそういう目で見られるのは嫌だった。


「……」

「……」


廊下に二人残されて、見詰めあうシロとエイスリン。

中学時代の友達。確か名前は。


「咲って……言ったっけ」

「ウン」

「強敵、かもね」

「ウン」

「――ダルい、なぁ」

「ソウ、デスネ」



このことが、宮守の団体戦優勝のきっかけの一つになることは。

まだ、誰にもわからなかった。

【迷子の迷子の大将さん 了】

清澄の連絡先(久・和)を入手しました!
他校の生徒を絡める場合は基本的に全国大会が合同合宿となりますが、彼女たちの場合は個別イベントを起こすことが出来ます

なんてシステムボイス風に書いてみたり
今日はキャラ安価直下出して寝ます。長くお付き合いありがとうございました!

キャラ安価直下 複数もアリ

「わ! 近くに有名なお弁当屋さんがあるんだってー!」



各高の対策を練るためのミーティングを終えて。

話も纏まり、時計の針も12時を差した頃。

備え付けのテレビを点けた豊音が、目を輝かせた。


「へえ。今日のお昼はそれにする?」

「あ、じゃあ俺が買って来ますよ。みなさんお疲れでしょうし」

「そうかい? 悪いねぇ」

「手伝おうか?」

「いえ、大丈夫ですよ。すぐ近くですから」


直下判定
一人で買いに行く 1~50
誰かがついて来る 51~98
ゾロ目 ???

「とりあえず今は早く行かない? 迷惑になっちゃうし」

そんな二人の様子を見て急かす胡桃先輩。

確かにこんな大所帯で人気商品の前を陣取っているのはよくない。


「向こうに食事スペースあるみたいだよー」

「おわっ」

俺の手を取って歩き出す豊音先輩。


「ダル……」

続けて俺の右隣を寄り添うように歩き出すシロ先輩。


「イキマスカ!」

その反対側を埋めるように寄り添うエイスリン先輩。

まるで、久に見せ付けているようだ。


「良かったら、ご一緒します?」

手を解いて久を誘う塞。

久も、笑顔のまま頷いて。


「ええ、それじゃ――『お邪魔』しようかしら」



トリップ忘れましたが>>287もです
ゾロ目は場面によっては即死ですが今回はそんな大したことないです

円形のテーブルに座る一同。

京太郎の両隣はシロとエイスリンが埋めている。

続くように、豊音、胡桃、塞が席に着く。


久の入る隙間など無いと言わんばかりだが、


「あの、何か?」

「いや、意外と可愛い食べ方するなぁって。京太郎くん」

「は、はぁ……」


そんなことを気にするような久ではなかった。

何だか照れ臭くて、久から目を逸らす。

恥ずかしさを誤魔化すように、箸の進むを速める。



「アッ」


カチャ、と食器が跳ねる音。

隣を見れば、エイスリンの制服の袖に、赤いソースが跳ねていた。


「ああ、コレ染みになっちゃうかも……すいません、じっとしていて下さいね」

「ハイ……」


未開封だったおしぼりを使い、染みを叩き出すように拭う。

応急措置だが、やらないよりはマシだろう。


「これで良し……っと。気を付けて下さいね」

「ウン! アリガト!」

「へぇ、京太郎くんって女子力も高いんだね」

「女子力って……」

「あら、褒めてるのよ? お姉さん的にポイント高いかも」

「からかわないで下さいよ」

「だって京太郎くん、可愛いんだもん♪」

「かわ……ああ、もう」


きっとこの先輩にはどうやっても勝てない。

そんな気持ちを含みながら、京太郎は麦茶を口にした。


「へぇ……」

「ふーん……」

「……お弁当、美味しいね」

「そうだね。東京は違うなぁ、色々と」


特に、それ以上は空気が荒れるようなことも無く。

平和な食事風景が続けられた。


「それじゃあ、また」

「ええ、楽しかったわ……とても、ね」

「次は試合で、ですかね?」

「どうかな? もしかしたらまたヒョッコリ、会うことになるかもね」


それじゃ、連絡ちょうだいね。京太郎くん。

そんな台詞を残して、久は自分たちの泊まっている部屋に帰って行った。


「清澄かあ……」

「あの人も、倒さないといけないんだよね」

「中堅だから、私の相手か」

「私も大将戦頑張るよ!」

「帰ったらまた」

「ミーティング!」

和気藹々と話しながら、自分たちの部屋へと戻る宮守。

その様子に、自分が入部したばかりの頃の空気を感じて。


「……よし、俺も頑張ろう!」


全国大会に来て良かったと。

京太郎は改めて、そう思った。


【お弁当を食べに行こう! 了】

いやあ、部活動って皆が共通の目標を持って一丸となりますからね。青春です
ちなみに一人で買いに行くことになった場合はキャプテン登場でした

キャラ安価下3で

「あっつぅ……」


照り付ける太陽、光を反射するビル。

ジリジリ熱を放つアスファルト。

今まで大都会とは無縁だった京太郎にとって、東京の猛暑は厳しいものがあった。


「張り切って買い出しに出たはいいけど……」


汗が頬を伝うのを感じる。

信号の待ち時間が酷くもどかしい。


「あ、コレ、ヤバイ……」


ぐらぐらする視界、込み上げて来る吐き気。


……この、症状、は……

目が覚めた時。

京太郎の視界は、白くて大きい何かに塞がれていた。


「……あ?」

「あら、大丈夫?」


上から聞こえて来る女性の声。

枕にしては柔らかすぎる後頭部の感触。

これは、一体……?


「苦しそうだったけど……大丈夫?」

「あ……!」


そうだ、確か、買い出しの途中で――!!


「……うぁ」

「こーら、まだ駄目よ。安静にしてなくっちゃ」


勢い良く立ち上がった瞬間に、軽い立ちくらみ。

幼子に言い聞かせるような口調で宥められ、座らされた。



「あ、あなたは……?」

「私は石戸霞。ここは、永水の控室よ」



霞さん判定直下
1~30 大丈夫? あなた、疲れてるみたいだけど
31~60 放っておけない子
61~98 霞さんは私の母になってくれるかもしれない女性だった
ゾロ目 ???

オモチが必要だな

>>314 トシさんが低コンマだったことを考えるとコンマ神はもしや……いや、よそう
ちなみにゾロ目だったら即死だった模様



「ほら、お水飲んで」

「はい、ありがとうございます……」


霞から水を受け取る京太郎。

どうやらさっきは霞に膝枕をされていたらしく、視界を埋め尽くす白い何かは巫女服に包まれた立派なおもちだったようだ。

首に貼られている冷却シートもこの人が用意したのだろう。


「大丈夫? あなた、疲れてるみたいだけど」

「そんなことは……いや、確かに、そうかもしれません」

「ふふ……少し、休んでいったらどうかしら?」

「……すいません。お邪魔、しますね」


そして、いつもなら直ぐに宮守の控室に戻る京太郎だが。
霞の持つ独特な雰囲気に飲まれて、その言葉に甘えることにした。


「ふふ……」


髪を撫でる手は、幼少時の母を思い出させる。

本当に、本当に懐かしい感覚。

昔にも、こんなことが、あったような――



「あーっ! もしかして!!」

「!?」

「小蒔ちゃんっ!?」




姫様判定直下
1~30 やっぱりそうです! 京太郎くんですよね!?
31~60 運命です! 神様のお導きですね!!
61~98 ああどうしましょう、お父様にもお伝えしなきゃ――
ゾロ目 ???

「覚えてませんか? 確かに、凄い昔なんですけど……」

「……あ」


まだ、京太郎が小学生に上がる前の頃。

父に連れられて行った鹿児島。

そこで出会った女の子の名前は、たしか――


「こまっちゃん……?」

「はい! お久しぶりです!」


ぱあっと、太陽のような笑顔。

今まですっかり忘れていたが。

確かに京太郎は、この子と会ったことがあった。


「あらあら、小蒔ちゃんのお友達だったのね」

「お友達というか――」

「はい! とっても大事な人です」

「いや、その」

「そう、なら良かったわ」

「いっぱいお話しましょうね! 京太郎くん!」

「は、はは……」


小蒔の勢いに圧倒されっぱなしの京太郎。

結局、彼が宮守の控室に戻ることが出来たのは、日が暮れてからだった。

「熱中症で倒れたって聞いたけど……」

「もう。いつも一人で頑張っちゃうんだから」

「へぇ。永水の。先鋒と」

「いいや? 怒ってなんかないよ」

「ただ自分が情けないなぁって」

「ねえ、もっとこっち来てよ」

「大丈夫」

「誰も、見てなんかないから」



【遠い日のこと 了】

宮守の永水への対抗意識が高まったようです
清澄の永水への対抗意識が高まったようです
永水の二校への対抗意識が高まったようです
末原さんがメゲるようです

コンマが低いと平和です
キャラ安価下3で

すこやんか。何かギャグルート混ざりそう
ちなみに今回のすこやんとプロ編の健夜さんは別モノですので悪しからず

「まさか京太郎があんな大物を連れて来るなんてね。どこで知り合ったんだい」

「ははは……」



トシの視線の先には練習に励む少女たちに混ざって指導をする女性。


小鍛治健夜。元世界ランキング2位で現在は前線から退いたとは言え、国内無敗の称号は依然として大きい。


様々なコネを持つトシも、京太郎が彼女を連れて来ることは全く予想出来なかった。



宮守の部員たちも彼女の実力に圧倒されながらも、何とか実力をモノにしようと喰いついている。

驚愕と賞賛の視線を込めて京太郎を見つめるトシだが、京太郎は少し居心地が悪い。


なんせ。


あの出会いは、そう褒められるようなものではないからだ――

マスカラ取れた。

ヒールも折れた。

こころも折れた。


親に勧められて。
相方の口車に乗せられて。
慣れない化粧を頑張って。

気乗りしないながらも挑んだ合同コンパ、結果は惨敗。

気付けば周りはカップルばかり。残された一人は自分だけ。

当て付けで呼ばれたんじゃないか、だなんて被害妄想まで浮かんでくる。


勿論、相方の女子アナがそんな性格の悪い子じゃないって分かってるけど、それでも。

「辛いよ……こーこちゃん……」


無理して飲んだ酒で胸が苦しい。

歩くのがしんどくて電柱にもたれかかる。

ああ、これが誰かの胸だったら――


「だ、大丈夫……ですか?」


すこやん判定直下
1~30 アラフォーでも恋がしたい
31~60 ……そういうことだったんだね、こーこちゃん
61~98 誰よりも何よりも君だけを
ゾロ目 ???

へい

>>351 今日は平和ですねえ



「ふえ……?」


見上げると、自分を心配そうに見つめる男の子。


「苦しそうですけど……医者、呼びます?」


イケメンだ。

金髪の髪がキラキラ輝いている――電灯に、照らされて。

私を迎えに来てくれたのか、彼が。


「……そういうことだったんだね、こーこちゃん」


自分が今日、合同コンパに参加したのは。

今、この時のためだったのだ。


「うわ、酒臭っ」


こんな固い電柱よりも、彼の胸がいい。

白いシャツに飛び掛かると、彼はしっかり受け止めてくれた。


「えへへ……」

「酔っ払いだったのか……どうしよ、コレ」



グリグリ。

頭を押し付けて彼の匂いを堪能する。


ああ、これが、幸せ――え?



「……」

「あの?」

「……おえっ」

「え゛」




酒は飲んでも飲まれるな。

京太郎は、胸に刻み込んだ。

幸いにもモノがかかったのは上着のシャツのみで。

女性のアレをおっ被ったまま街中を歩く苦行は避けられた。


「ごめんなさい……」

「あー……何と言うか、まぁ……」


そして、無事に女性を送り届けることが出来たが。

崩れに崩れた化粧が洗面台で洗い流されてようやく、この酔っ払いが小鍛治健夜であると気が付いた。

今にも首を吊りそうな悲壮感を漂わせる健夜を前にしては、怒る気持ちも萎んでいく。


「……死にたい……」

「うわぁ……」


酒の力とは言え恋に燃え上がったテンションからの、醜態。

健夜はこの世から消えてしまいたい気分だった。

しかしそんな健夜の胸中を、京太郎は知る由もない。

どうにか彼女を宥めて、帰りたい。

「だから私はアラフォーなんだ……こんな私は永遠に独り身がお似合いなんだ……」

「いや、ホラ? きっと健夜さんにもお似合いの人が来てくれますよ」

「こんな何の取り柄もない私でも?」

「ま、麻雀とか!」

「そんなの何のアピールにもなんないよ……」

「そんなことないっすよ! 俺も麻雀部っすけど、国内無敗とメッチャ凄いじゃないっすか!」

「え? そうなの?」

「ハイ! だから、自信持って」

「いや、そっちじゃなくて」

「君、麻雀部なんだ」

「あ、まあ。そうっすけど」





――ねえ、光源氏って知ってる?

――もういっそすこやんもさ

――ああいやジョーク! 冗談だから! そんな顔しないで!?





こーこちゃん。

ありがとう。



年は干支一つほど離れてるけど。

彼も麻雀部だし、つまりこれって。



そういう、ことだよね――?

「宮守高校、だっけ?」

「はい。俺は付き添いっすけど」

「見てあげよっか」

「え?」

「見てあげるよ、私が。君も宮守の麻雀部も」


――私が、君たちを勝たせてあげる。

……これが、小鍛治健夜と京太郎の出会い。

棚から牡丹餅ならぬ、口から――



「まあ、色々な事情がありまして」

「人生、何があるかわからないもんだねえ」


溜息を吐いて、視線を卓に向けると健夜と目があった。

飾らない素朴な笑みを見せる健夜に、ほんのちょっとだけ、京太郎はときめいた。



……その笑顔があれば、結婚くらいいつでも出来そうなのになぁ。

そんな言葉は、飲み込むことにした。


【若さってなんだ 了】

宮守の雀力が大幅に上昇しました!
小鍛治プロの連絡先を入手しました! これですこやんがいつでも現れるようになりました


また酉忘れたけど>>372ですこやん編〆です


次で大会編安価はラストにしたい所存
キャラ安価下三で

日差しがキツい日は反射で熱が倍増される。

風が強い時はビル風に圧倒される。

東京ってヤツは、下手な田舎よか過酷な環境なんじゃないか――?


「うわっぷ」


風で飛ばされて来た何かが顔に張り付いた。

突然塞がれた視界に慌てて払い飛ばすと、それは。


「……マフラー?」


こんな季節に、マフラー?

どこかビルの上から飛ばされて来たのか?

辺りを見渡すと――


宥姉判定直下
1~30 あ、あの、それ私ので……
31~60 この人、見てると……あったか~い……
61~98 この人……なんだか……
ゾロ目 ???

ほい

>>380 霞さんの辺りからコンマ低めですね。神の力に浄化されたか
宥姉さんあっさり終わりそうなので大会編もうちょっといけそうですね




「あ、あの、それ私ので……」

ぷるぷる震えながら、こちらを見る女の子。

身長は咲と同じ程度で、この季節に真っ向から逆らうように過剰な防寒着に身を包んでいる。

風が肌寒い、というレベルではなく、本当に寒そうに身を震わせている。


「あ、あの……」

「ああはい! すいません、どうぞ!」


思わずガン見してしまったが、急いでマフラーを手渡す。

マフラーを首に掛け、風で飛ばされないように手でぎゅっと握りしめる女の子。

ほっと、安心したように息を吐く。


「ありがとう、ございました……」


ぺこりと頭を下げて去っていく女の子。

色んな人がいるんだなぁ……。

「だから、京太郎の首から知らない匂いがするんだね」

「え? 意外とわかるもんだよ?」

「女の子って、その辺り凄い敏感なんだから」

「京太郎が何してたか、とか」

「私にはお見通しだから、ね?」


【寒がりな女の子 了】

塞さんが松実宥に警戒を強めたようです

キャラ安価下3

竜華了解、方言自信ないけど見逃してください
パンおいしいねん

「な、なあそこの君!」

「はい?」


見知らぬ声に振り向けば、息を切らした少女。

黒髪のロングヘアで、背が程よく高い。胸も大きめだが大き過ぎるということもなく、足も肉付きが良い。

京太郎は『バランスの良い、健康的な人』という印象を抱いた。


「ぜぇ……ぜぇ……」


そんな子が膝に手を付き、呼吸を整えている。

汗で髪が首筋に張り付いている。

余程急いで走り回っていたんだろう。苦しそうだ。


「あの、ポカリで良ければどうぞ」

「わ、悪いな……んぐっ」


ぐび、ぐび、ぷはーっ。

一瞬にしてペットボトルが空になる。

見ている方が気持ち良くなる程の飲みっぷりである。


「はー、生き返った。ありがとな」

「はぁ、どういたしまして」


りゅーか判定直下
1~30 東京にも親切な人はおるんやな!
31~60 ありがと! 恩に着るわ!
61~98 あら……なんなの、コレ……?
ゾロ目 ???

病めるのですボクたち!

>>395 これは……



親切な人だなあ、と普通ならその程度で終わるやり取り。

だが。


あら……なんなの、コレ……?


目の前の男子を、もっと知りたい。

名前を、趣味を、癖を、好きなものを、血液型を、呼吸を、鼓動を。

もっと深く、表面ではなく、内部まで。

この男の子を、知りたい。

知り尽くして、自分の手で管理したい――



「あの、それで?」



声をかけられて我に返る。

「あ、せやった。なあ、君、怜を見なかった?」

「怜?」

「そ。こんぐらいの、病弱アピールしてる子なんやけど。あ、コレ写真な」

「いや、見なかったですけど……」

「そっか……どこほっつき歩いてんのやら……」

「あの、一緒に探しましょうか?」

「ええの?」

「はい。これも縁ですし」

「よし! じゃ、君はあっち頼むわ! これウチの携帯の番号で、見かけたらよろしくな!」

「うす、了解っす」


直下判定 怜は
0~50 見つからない
51~99 京太郎が見付けた

「あ、あれか?」


自販機の隣で、ベンチにもたれ掛かっている女の子。

竜華から貰った携帯の画像データと照らし合わせても、間違いはない。

あそこで呑気に寝息を立てている彼女こそ、竜華が必死に探していた怜なのだろう。


「あの……?」


とりあえず、肩に手をかけて揺すってみる。

怜の、反応は――

怜判定直下
1~30 あと五分……
31~60 んん?……どっかで会ったか……?
61~98 ああ、ついにお迎えが来たんか……
ゾロ目 ???

「ん、ん……?」


ピクリと瞼が揺れて、ゆっくり目が開かれる。

起こす前に先に竜華を呼んだ方が良かったかもしれない、と今になって気付く。

さて、何と言ったものか。


「あのですね、俺は――」

「ああ、おはよ。京ちゃん」

「へ?」


首に腕が回される。

京太郎がその行為の意味を理解するよりも、速く。


「ん」

「!?」


唇を強引に奪われた。

それもただ触れ合うだけの軽いものではなく、深く、味合うように、長く。

京太郎が何も理解出来ずに固まっているにも関わらず、彼女の行為は止まらない。


「――ぷはっ」


やがて、怜から唇を離す。

二人の間に、透明な橋がかかった。


「ん。ごちそーさん」

ちと離席。なるべくすぐ戻ります

「あーっ!! 何しとんねん!!」

「ひっ!?」


建物全体に響き渡る怒声。

先程の彼女の印象を覆す形相に、つい情けなく怯えた声を漏らしてしまう。

いや、この表情には、見覚えが――


「ウチの京太郎くんにへんなことすんな!!」

「んー? なにって」


ぽりぽり。

対して、呑気に頬をかく怜。

大者なのか、惚け者なのか、京太郎にはわからなかった。


「昨日はりゅーかの番やったし、今日はウチの日やろ?」

「へ?」


ピタッと止まる竜華。

彼女の反応は、


竜華判定直下
0~55 ああ、せやったか。せやなぁ
56~99 なに言っとんの!?

ヌッ

>>429 やりますね



「ああ、せやったか。せやなぁ」

「りゅーかは変なところでおっちょこちょいやなぁ」

「あは、堪忍したってやー」


あっはっはっは。

楽しそうに笑う二人。

違う。

さっきの竜華の表情は、宮守の先輩たちを思い出させたが、違う。

宮守の先輩たちの表情はまだ、理解できるけど。



この人たちは、


「もー、そんなんで京ちゃんに愛想尽かされても知らんよ?」

「京太郎くんがそんな器の小さい男じゃないのは怜もよく知ってるやろ? なあ、」


「京太郎、くん?」


異質、だ。



京太郎判定直下
1~66 京太郎は逃げ出した!
67~00 しかし回り込まれてしまった!

てい

ここで逃げちゃえるのかよ(驚愕)

>>440
>>442 「ウチ、病弱やし……」



「っ!」


考えるよりも先に、恐怖感が体を突き動かす。

纏わり付く怜を跳ね除け、がむしゃらに足を動かす。

今は一刻も速く、ここから逃げ出したかった。




「はぁ……はぁ……」

途中ですれ違った咲も久も霞も小蒔も無視して。

気が付いたら、宮守の控室に着いていた。

竜華も怜も、追いかけては来なかった。

>>446 ちょくちょく酉忘れる……



「どうしたの? なんか色々凄いことになってるけど」

「胡桃、先輩……」


今は、この小さな先輩が。

何よりも、頼りに見えた。


「先輩……!」

「え? いや、どうしたの!? そりゃ私も嬉しいけど心の準備ってものが!!」


小さな体に縋り付く。

宮守の先輩なら誰でもよかった。

さっきの光景を、忘れさせてほしかった。


その後、東京にいる間は京太郎が一人で行動することはなかった。

最低でも二人の3年生と、常に一緒に行動した。

塞たちは、「絶対に私たちが京太郎を守る」と決意した。

京太郎の心に、トラウマに近い傷を残したとはいえ。

結果としてこのことが、宮守の絆を深めることになったのは。


何とも、皮肉な話であった。


【宮守、全国大会日常パート 了】

なお、逃げ切れなかった場合は竜怜による監禁管理エンドになった模様

次は

1 白糸台編。最初は非安価
2 臨海編。最初は非安価
3 プロ勢編。最初から出会い編で行くので安価、コンマ有り
4 永水編。最初は非安価
5 宮守全国大会終了後日常編 安価、コンマメイン
6 松実京太郎のお話。安価、コンマ有り

のいずれかになります

あ、ちなみにこっちの健夜さんはギャグルートじゃないですよ。多分

んー、134が強い感じですかね
直下判定で決めます
1~33 白糸台
34~66 プロ
67~99 永水
00 お好きにどうぞ

次は永水ですね
非安価なので肩の力を抜いて気楽にどうぞ
永水書いたら白糸台の非安価パートいきます



蝋燭の灯火だけが灯りとなっている、薄暗い室内。


二人の男と女が、覆い被さるように横にななっている。

二人とも、一糸纏わぬ姿であり。

二人の間を遮るものは存在しない。

ただ、これは、閨での睦事と呼ぶにしては。


「だめだ、そんな、こと――」

「……」



あまりにも、一方的なものだった。




身体が重い。

まるで、全身の血液が鉛にでもなったかのようだ。

抵抗しようにも、指一つ動かすことすら出来ない。


「なんで、だよ! なんで、こんなこと、するんだよ――!!」

「……」


その問いにも答えず、ただ男の唇に人差し指を添える女。

そのまま唇に、爪を立てた。


「っ!」


血が滲み、指先を赤く染める。

その血が附着した指先を口に含むと、女は小さく微笑んだ。


――朝、目が覚めると、自分の腕を枕代わりにして眠る小蒔の顔が目の前にあった。


「はぁー……」


まただ。

いつもの光景だが、つい溜息が出てしまう。

初めこそ飛び起きる勢いで驚き、恥じらいを覚えたシチュエーションだったが。

今ではもう、呆れが先に出て来る。

きちんと部屋に鍵をかけているし、見張り役も頼んでいるのに。

どうやって毎度の如く部屋に入って来るのだろうか、この寝坊助姫様は。


「ほら、起きて下さいよ」

「んぁ……ん、あと五分……」

「起きる時間に五分もなにもありませんってば」


肩に手をかけて少し強めに揺さぶる。

遠慮はしない。生半可なことでは彼女は起きないし、早く彼女を起こさないと――



「あらあら、まったくもう。姫様ったら」



――どうやら、間に合わなかったらしい。

石戸霞。

普段はおっとりした雰囲気の女性で、ある特定部位の大きさから母性すら感じさせる。

いつもは冗談混じりで「母さん」なんて呼んだりして、彼女も乗って返してくれるのだけれど。

朝の、この時間の彼女は。


「ほら、起きなさい!」

「ひゃんっ!?」


鬼だ。

未だ寝惚け眼の小蒔の頬を叩き、引きずるように立たせる。


「ごめんなさいね、京太郎くん。いつも、姫様が」

「いえ、ぜんぜん構わないんですけど……」

「うぅ……京太郎さまぁ……」

「もう、まだ寝ぼけてるの? この子ったら」

「あの、霞さん。それくらいに……」

「京太郎くんもあまり姫様のこと甘やかしちゃ駄目よ。すぐあなたのところ来ちゃうから、この子」

「うー……」

「それじゃあ、また朝食の時に、ね」


小蒔を引きずるように去っていく霞の後ろ姿を見て、京太郎は身を震わせた。

身支度を整え、朝の食卓へ向かう途中の廊下。

京太郎の、経験によって磨かれた第六感が、「彼女」の襲来を告げている。


「……! ココだ!」

「むむっ!」


身を捻って振り返る。

瞬間、すれ違う小柄な影。

ベタン!と朝の澄んだ空気を台無しにする音を立てて、京太郎が元いた地点に着地する少女。


「はっはっは! その技、既に見切ったり!」

「むー! 生意気ですよー!」


彼女は薄墨初美。

京太郎と出会った時から「背が高くて生意気です!」なんて難癖を付けて。

あの手この手で京太郎を屈服させようとしている。

この朝の光景も何回も繰り返されており、今では屋敷に住む誰もが慣れている。


そして、


「ぺろっ」

「ひゃ!?」

「あーっ! またー!!」


彼女が最後に美味しいところを掻っ攫って行くのも、誰もが見慣れた光景だ。

油断し切った京太郎の首筋を文字通り「舐めた」彼女の名前は、滝見春。

ここでは唯一の京太郎と同じ学年で、同じクラスということもあって一番一緒にいる時間が長い。

無愛想で無口で黒糖が何よりも好きで、でも意外と優しいところがある、そんな少女。


「ぺろぺろ」

「ひゃあっ」


そして一番、永水の中で考えを読めない少女でもある。


「いい加減やめるのですよ!」

「ぺろっ」

「ひっ」

「あーっ! もーっ!」


うがー!

怪獣みたいだなぁ、と思いながら、春は京太郎の首筋を舐め続けた。

「ああもう……ごめんね、春ちゃんが」


春の涎まみれになった京太郎のうなじをハンカチで拭う少女。

狩宿巴。

「祓い」を引き受ける彼女は、このように誰かの尻拭いを引き受けることが多い。


「いや、巴さんが気にすることじゃないっすよ」

「そうだね」

「お前は反省しろ!」


そんな彼女の苦労など、何処吹く風の春へ突っ込む京太郎。

その光景に、胸の隅で燻りのようなものを感じたけれど――きっと気のせいだと、巴は頭を振った。

そして、全員が揃った食卓。

京太郎の両隣を小蒔と春が囲み、反対側に初美と霞と巴が座る。


「いただきます」


全員で手を合わせて始まる朝の食卓。

男一人でここに混ざることも、既に慣れた。


「はい、あーん♪」

「え、えーっと……」


ごく当たり前のことだと言わんばかりに朝食を箸で摘まんで京太郎に差し出す小蒔。

新婚夫婦にはよく見られるモノで以前は憧れていたが、今の京太郎には抵抗感があった。

いざ直面すると照れ臭さが勝り、そして、どうしても今朝の霞の様子を思い浮かべてしまう。


「~♪」


しかし、不思議なことに。

ちらりと目を向けた霞は、今の小蒔に対して憤りの類の感情を見せることはなく。

むしろ、上機嫌に鼻歌などを口遊んでいらっしゃる。

行儀の良い振る舞いとは、とても思えないのだが。


「あーん♪」

「……」


何故だろう、と考えても答えは出ない。

京太郎は観念して、小蒔の差し出した箸にパクついた。



……痛っ。



考え事をしながら食事を続けていたせいか、下唇を噛んでしまった。

下手をすると口内炎になりそうだ。


「……?」


何だろう。

つい最近、似たような痛みを感じた覚えがある。

所謂デジャブと呼ばれる感覚だが、さてはて――?



しかし思い出せないというのなら、大して重要なことではないのだろう。

そう結論付けた京太郎は、先に食器を片付けて、小蒔たちを玄関で待つことにした。



【プロローグ 了】

というわけで永水プロローグでした
これからどう進むかはコンマ神のみが知る

次は白糸台です

白糸台高校麻雀部一軍。

通称、チーム虎姫。

彼女たちが普段、どのような活動を行っているのか。

麻雀関係以外にも大勢いる――




「照、これはどういうことだ?」

「ん?」


菫が乱暴にテーブルに放り投げた雑誌。

開かれたページには、営業スマイルを浮かべる照の姿。

それだけならばいつもと大差がない。

今回、菫が問題視しているのはそのトーク内容にあった。


「金髪の彼氏のために頑張ります――だなんて、ついに頭がおかしくなったらしいな。私のために頑張るマネージャー、か。泣かせるじゃないか、笑い死ぬかと思ったぞ」

「なにがおかしいの? 事実だけど」

「はは、お前もそんな冗談を言えたんだな。驚きだ」

「……」


話が通じない。

そう感じた照は、菫を無視してポッキーに噛り付く。


「わかっているんだろう? 本当は、自分が彼に相応しくないと」


加えたポッキーが、真ん中で砕けた。

「菫」

「ん? なんだ?」

「撤回して」

「意味がわからないな」


相変わらずの無表情だが、照の口調には確かな怒気が含まれていた。

雑誌に写る彼女しか知らない者には、到底想像出来ないだろう。


「なにがおかしい? 事実じゃないか」


さっきの意趣返し。

肩を竦め、照を挑発する菫。


「こんな風にメディアを使って、外堀を埋めるだなんてやり方をするなんて」

「……それは、私の京ちゃんに勘違いして近付く奴が多いから」

「私の、か。彼の好みとは随分と遠い位置にいる、お前が?」

「っ!!」

寝て起きたらいきなり修羅場かよ(歓喜)

照のスタイルは、決して悪いものではない。

彼女のスレンダーな肉体は均整が取れていて、可愛らしいと言うよりも美しいと言った方が近い。

だが、話題の渦中の少年。

須賀京太郎の好みは。


「部活でも廊下ですれ違った時も。彼の視線は私に向いていることの方が多いようだが?」

「……」

「結局、自分に自信が無いんだろう? だから、こんな姑息な手を使う」

「……それは、菫が部長だからでしょ」

「ほう?」

「京ちゃんは優しいし、菫は部長の立場があるから。だから、菫を拒めない」

「……」

「可哀想な京ちゃん。こんな人が、部長だなんて」


「……照」

「……菫」


遠くで、何かが落ちた音がした。

寝起きで修羅場は身体に良くないな


亦野誠子。

チーム虎姫副将。

ボーイッシュな髪型で、活動的な性格の彼女は男女問わず人気が高い。

趣味が釣りというのは女子にしては珍しいが、そこもまた人気の一つとなっている。

後輩の面倒見も良く、相談を受けることも多い。

京太郎もまた、彼女とよく話をするが――




「それってつまり、女として見られてないってことだよね」

「あ?」

自前の緑茶を啜りながら、渋谷尭深はそう言った。

ショートボブヘアーで眼鏡をかけた小柄な少女。

チーム虎姫の中では、胸が一番大きいことも密かな自慢。

料理も得意で、以前京太郎が話していた「家庭的な女性がタイプ」という条件に、一番合致している自信がある。


「ほら、そういうところ。ガサツだもん」

「あのなぁ……変に先輩ぶったりメーワクかけたりするよりはずっとマシでしょ、その方が」

「須賀くんのタイプではないけど」

「変に媚びを売るよりはいいさ。その方が須賀も話しやすいだろ……それに」

「須賀がお前を迷惑に思ってるって、気が付いてるか?」

「……え?」

「やっぱりか。媚びばっか売って相手をみないからそーなるんじゃないかな」

「どういう、こと」

「気が付かないか? お茶を淹れてもらう度に固まってるよ、あいつ。何か盛られてるんじゃないかって不安らしい」

「……何それ、結局ただの妄想じゃない」

「はは、お前よりはマシかな」

「須賀くんのタイプからかけ離れてるからって」

「その割には、あいつと一緒に遊んだこともないじゃないか」

「……それは」

「結局、自分の中で満足してるだけで相手のことは何も考えてないんだな。そんなヤツが須賀のタイプ? その眼鏡、新調した方が良いよ」



「……許さない」

「私はずっと前からそう思ってたよ」


須賀京太郎には悩みがあった。

自分が所属する麻雀部でのことだ。

数年前に共学化した白糸台高校だが、当然のことながら麻雀部は女子の方が圧倒的に強い。

そんな中で自分がチーム虎姫のエースたちと関わりを持てているのは、以前から照と知り合いだったことが大きい。

勿論その立場に甘えるつもりはない。

マネージャーとして雑用係を積極的に引き受け、空いた時間で実力を上げるための努力もしている。

先輩たちも積極的に協力してくれる。



だが、やはり。

そんな彼を、妬む者もいる。

照は弱味を握られているのだ、とか。

顧問に媚を売っている、だとか。


そんな噂を流すヤツがいた。


菫は男女部員全員の前でそのことを否定したし、照も噂の出処を潰した。

尭深は悩む京太郎にお茶を淹れてくれたし、誠子は相談に乗ってくれた。

先輩たちの心遣いを嬉しく思うと同時に――そんな尊敬する先輩たちの顔に泥を塗った自分が情けない。



「俺のせいで、先輩たちの練習量が減っている」



王者白糸台。

その威光に、自分は傷を付けたのではないか。

そんな悩みを、抱えていた。

「辞めよう、かな……」


せめて、今年のインターハイで彼女たちが優勝するのをこの目で見てから。

来年に入部してくる新入生にもこの噂は引き継がれるだろう。

その時には菫も照も、もういない。

二人の先輩に、負担が集まる。

そうなる前に、自分から――


「きょーたろー!!」

「おわっ!?」


沈みかけた思考を吹き飛ばすような。

相手に対する配慮など全く無い衝撃を背中に感じて、京太郎は躓いた。


首に回される腕。

ガッチリと腰回りをホールドする足。

背中にへばり付いた彼女は簡単には剥がれないだろう。


ゲームにこんな感じの雑魚敵がいたなぁ――と、実に失礼な思考を浮かべ京太郎は溜息を吐いた。


「むー! 反応薄いぞー!」

「慣れたんだよ、もう」

「私とのことは遊びだったのか!」

「変なこと言うな!?」


大星淡。

チーム虎姫大将。

自分と同じ、白糸台の1年生だ。

「ま、いいや。ねーねーカラオケいこーよこの後!」

「お前、今日はミーティングあるだろうが」

「えー? だってつまんないんだもん」

「オイオイ……」


天才。

同じ1年生でありながら、白糸台の層の厚さを超えて大将の座を勝ち取った彼女には、まさにその言葉が似合う。


「それにさー、きょーたろーめっちゃ暗い顔してんだもん。同じ金髪として情けないぞ!」

「なんだそりゃ」

「だからさー、思いっきり歌お! ぱぱぱーっと!」

「まったく……」


まぁ、コイツはコイツなりに、俺のことを励ましてくれているんだろう。


「よし!」

「お!」

「部活行くか!」

「ええ!?」


悩んでいた自分が、実にバカらしくなった。

「いいだろ別に。練習見てくれよ、同じ金髪として」

「えー? 高校100年生の壁は厚いよ?」

「なんだそりゃ」

「高校100年生くらいの実力ってこと!」


――やっぱりコイツ、バカかもしれない。


「ま、いーや。どうしてもって言うなら――」

「どうしても、だ」

「へ?」

「どうしても、頼むぜ。淡」

「……そっか。じゃーしょーがないなー! きょーたろー弱っちいからなー!」

「うっせ」

「えへへ」



近くで何かが、落ちた音がした。


「ん?」


振り向いても、何も無い。

気のせいか。


「どったの?」

「いや、何でもない。部活行こうぜ」

「……ん」



バッカみたい。

淡の呟きは、誰にも聞かれることなく。

風に飲まれて、消えていった。




【プロローグ 了】

白糸台パートが今までで一番スムーズに書けた気がします
多分ぽんこつじゃない照でしたけど、安価パートでぽんこつ化する可能性は多いにあり


さて次はプロ勢出会い編でしょうか
それともまた決め直した方がいいかな?
とりあえず寝ます、お付き合いありがとうございました!

おつ

Q 何で白糸台こんなギスギスしてんの?
A チーム虎姫は全員攻撃型


次は
1 白糸台出会い編。安価、コンマ有り
2 臨海編 プロローグ 非安価
3 プロ勢編。最初から出会い編で行くので安価、コンマ有り
4 永水 全国大会編。安価、コンマ有り
5 宮守全国大会終了後日常編 安価、コンマメイン
6 松実京太郎のお話。安価、コンマ有り
7 その他 何か希望があれば

ではプロ編か松実編で
直下判定で決めます

プロ 1~50
松実 51~99
00 お好きにどうぞ

おまかせあれ

では次は松実編で
宮守編の宥姉のコンマ結果はリセットされます

五月下旬。

春が終わりを告げ、梅雨を迎える時期。

衣替えの日が近付き、寒さとは無縁の季節が迫る。

だが、松実館のある一室では――




「うぁっつう……」


エアコンの暖房設定。

十重二十重に重ねられた毛布やタオルケット。

曇る窓ガラス。

そして、自分の上に覆い被さるように眠っている姉。


「あったか~い……」


こんな環境でありながら健やかな寝顔を晒せるのは、日本広しと言えども自分の姉くらいのものだろう。

勿論、自分は違う。このままでは暑さでやられる。

姉の安眠を妨げるのは心苦しいが、起こさなければ。


「ほら、姉さん。起きろよ」

「んぁ、むぅ……」


宥姉判定直下
1~40 おはようの、ちゅー……
41~60 やだぁ……
61~98 もっと……
ゾロ目 ???

コンマ神ご乱心

モゾモゾと身じろぎする姉。

目を擦っているが未だ寝惚け眼であり、覚醒しきっていないようだ。


「ちゅー……」

「ハァ?」

「おはようの、ちゅー……」

「……」


宥が瞳を閉じる。

そっと唇を付き出し、言葉の通りのものを求めている。


「……姉、さん」


それに対して、京太郎は。

そっと、姉の肩に手をかけて。


「アホかーっ!!」

「ひゃぁっ!?」


思いっ切り、押し飛ばした。

汗を流すためにシャワーを浴びて、朝食をとり、身支度をすればあっという間に登校時刻。

憂鬱な休み明けの通学路を、欠伸を噛み殺しながら歩く。

そんな京太郎の様子を見て、幼馴染の新子憧は苦笑した。


「ちゃんと寝たのー? 今日、テストだけど」

「いや、宥姉さんがさ……」

「……あぁ」


松実姉妹の弟への溺愛っぷりは。

阿知賀に通う生徒なら、誰でも知っている。



あこちゃー判定直下
1~30 お願いだから法に触れるのは止めてよね
31~60 ……相変わらず、ねぇ
61~98 私だって……京太郎と……

あ、ゾロ目判定書き忘れたんですけど

このまま31~60の判定で書くか
ゾロ目適用させるか
判定やり直しか

どうしましょ

即死判定だとちょっとどうだろう?って感じ
いやコンマとってないからいらん意見だろうが

ではゾロ目適用で
>>637 さすがにここで即死判定はないですよー



姉と弟。

近親相姦。

常識として、倫理として普通ならば考えられない。

法律で禁じられていることだ。

だけど、あの姉妹は、実の弟に、異性としての感情を向けている。


「寝苦しいけど……姉さんほっとけないしなぁ……」


そして、この隣を歩く幼馴染も。

気持ちが傾きつつあるのを、憧は知っている。



「……ズルい……」


神様。

お母さん、お父さん。

どうして私を。

京太郎の姉として、産んでくれなかったの。

ジャージ「・・・ガタッ」

髪を伸ばした。京太郎がドラマの髪が長い女優に見惚れていたから。

化粧を覚えた。京太郎が年上の女性に憧れていたから。

急に色気づいたと馬鹿にするヤツはいたけれど、姉に習って、雑誌を読んで、必死に勉強した。

だけど。



「いやさー、玄姉さんも玄姉さんで……」


勝てない。

京太郎と一緒にいられる時間でも、京太郎の好みの体つきでも。

あの姉妹には、勝てない。

不公平だ。

こんなにも、京太郎のことを見ているのに。

神様は、時間も、体も、幸運も。

憧にはくれなかった。



「おーい、憧……?」

「……」

「おーい! あっこちゃんやい!」

「ふきゅっ!?」


勢いよく肩を叩かれて、憧は我に帰った。


「止まれって。車来てる」

「え? あ、あぁ、うん」


京太郎に手を引かれて、道の端へ。

幼馴染の手のひらは温かくて、優しいけれど。

ほんの一瞬、鼻腔を擽ったシャンプーの匂いは。


「……京太郎」

「ん?」

「ありがと」

「ん」


憧の心に、小さくない引っ掻き傷を作った。

「んー……大丈夫かな、あいつ」


昇降口で憧と分かれ、別のクラスへ。

二人が通う教室は廊下の反対側にある。

様子のおかしかった幼馴染は心配だが、自分にも授業がある。

ずっと側にいてやることはできない。




「……む!」

教室の入り口に差し掛かった辺りで。

京太郎は、背後から近付いてくる足音に気が付いた。

朝昼晩を問わずやたらとやかましいこの音は、絶対にアイツだ――



穏判定直下
1~30 どーん!!
31~60 おっはよー!! きょーたろー!!
61~98 どーん!! むー? あれれー?
ゾロ目 ???

京太郎の脇を擦り抜ける、弾丸の如き小さな影。

ぎゅぎゅっと急ブレーキの音を響かせて、京太郎へと振り向く彼女。


「おっはよー!! きょーたろー!!」


黒いジャージに白い上履き。

ぱっと見で小学生にも見える彼女の名前は高鴨穏乃。

憧と同じくらい付き合いの長い、もう一人の幼馴染。


「……む? おっはよー!!」

「いや、聞こえてるから」



相変わらずの様子に、苦笑する。


全身全霊全然オッケー。

元気があれば何でも出きる。


そんな言葉を体現したような少女だ。


ちと個人的な事情でBB2Cとスマホからの投稿なんでちょくちょくID変わっちゃうんですよね

「んー? 憧は?」

「そりゃ別クラスだし」

「あ、そっか」

ポンと手を叩く穏乃。

小学生まではずっと同じクラスだったが、中学からはクラスが変わってしまった。

……思えば、その時から。

憧の、今朝のような様子を見ることが増えたかもしれない。


「なあ、穏」

「んー?」

「なんか憧が元気ないみたいでさ、後で話聞いてやってくれないか? 男の俺より話しやすいだろうし」

「んー……そんなことは無いと思うけど……わかった!」


元気よく頷く穏乃。

これで、憧の曇りを晴らすことができればいいのだが。

予鈴が鳴っても、京太郎の思考は授業ではなく幼馴染の方向を向いていた。

安心感(病んでないとは言っていない)

京太郎は現在高校生で

あこちゃーの変遷は

小学生→ずっと一緒のクラス
中学生→京太郎と一緒がいいから同じ中学、でも3年間違うクラス
高校生→ 違うクラス、でも穏乃は京太郎と同じクラス

こんな感じですね

休み時間。


「ふぅ……」


雉打ちを済ませ、晴れやかな気分で廊下を歩く。

爆弾処理を無事に済ませた後は、誰だって気分が良い。


「……む?」


目の前を歩く小柄な後姿は、見覚えのある――というか、自分の異性の知人はみんな小柄だ。

多くのファイルを抱えた姿は少し危なっかしい。


「あの、手伝いますよ」

「む……」



あらたそ判定直下
1~30 いいの……?
31~60 ありがと……
61~98 だ、ダメだと思……
ゾロ目 ???

「ありがと……」

「いいっすよ。むしろドンドンこき使って下さいよ」


鷺森灼。

小柄でおかっぱ頭の彼女を初めて見た時、『こけしみたい』だなんて感想を抱いた事は、墓場まで持っていかなければならない。


「須賀くん……」

「だからいいっすよ、これぐら――」

「ドエムさん?」

「なんで!?」


彼女のノリは、少し独特だ。

レジェンドを前にした時はかなりわかりやすいのだけれど。

ところでレジェンドはどうしましょうかコレ
プロ編に突っ込んでもいいんですが

では阿知賀枠でー


灼と一緒に職員室へと授業用のファイルを送り届けた京太郎。

「じゃ、また……」

「うす、次は部活で」


灼と京太郎のクラスも反対方向にある。

振り向いて、自分の教室へ戻ろうとした京太郎は、深刻な表情を浮かべて職員室の戸をくぐる赤土晴絵に気が付いた。

すれ違いになったので灼は晴絵の様子に気付いていない。

自分の机に座り、腕を組み、深々と溜息を吐く晴絵。


「はぁ……」

「どうしたんすか、先生」


その様子が放っておけなくて、京太郎は晴絵に話しかけた。


ハルちゃん判定直下
1~30 (おいしそう)
31~60 (食べたい)
61~98 (いただきます)
ゾロ目 ???

コンマ神の起床

「なぁ、京太郎? 覚えてる?」



何故か、晴絵に生徒指導室へと連れ込まれた京太郎。

あまり広くない空間に二人きり。

教師とはいえ小さい時から知っている相手なのであまり緊張はしないが。

なんだろう、このままいると。


「な、なにを……?」

「『ハルちゃんスキー! いっちゃヤダー!』」

「そ、それ間違えて酒飲んだ時の……」

「いやー、おもいだしちゃったよ。うん」



大切なものを、失いそうな気がする。



「まさか、その白いのは……!」

「なぁ、お見合いってさ。何だろうね。幸せって、なんだ」

「落ち着きましょう、先生」

「ハルちゃんって呼んでもいいよ。昔みたいに、さ」



いただきます。


そんな声が、聞こえた気がした。

諦めることさ

食べられる事だろ(意味深)

「なにやってんの、二人とも」


底冷えのする声と共に開かれる扉。

憧が、恐ろしいほどの無表情で立っていた。


「あれ、鍵かけた筈なんだけど……」

「普通に開けたけど。で、何やってたの、京太郎」

「うっ……」


じろり。

憧の目線が京太郎を捕らえる。

責められているわけではないのに、言葉に詰まる。


「言えないようなこと? まさかとは思うけど――」

「し、進路相談! 進路相談だよ、二人で。な、京太郎!」

「え? あ、ああ、うん! そうそう! ちょっとこれからの話を!」


嘘は言っていない。

どちらかと言えば相談に乗っていたのは京太郎で、あまりにも一方的なソレは対話の体を成してすらいなかったが。

嘘は、言っていない。


ちと離席します


玄と宥は、姉妹と一目でわかる見た目をしている。

玄が髪の毛を染めてコートとマフラーを着込んだら家族以外には誰も見分けが付かないだろう。

対して、京太郎は全く二人に似ていない。

男と女の違いがあるとはいえ、面影すらない。

そんなことを、酒の席で父親に酌をしながら話したら



「そういや俺と姉さんたちってあんま似てないよな」

「ああ、それな――お前、橋の下で拾ってきたから」

「……え?」



松実京太郎。

齢十五にして知る、衝撃の真実だった。







「す、すごいコト、聞いちゃった……!」


くろちゃー直下判定
1~30 今夜は眠れないよぉ……!
31~60 な、なら、大丈夫……だよね?
61~98 おねーちゃんにも知らせなきゃ!!
ゾロ目 ???


どっと疲れる一日だった。

浴室でシャワーを浴びて、汗を洗い流す。

朝の宥に始まり、昼には晴絵と憧に迫られて、そして先程明かされた衝撃の真実。


「まぁ……でも……」


納得できる部分はある。

まずあの二人と全く似ていないし、それに。

あの二人を、異性として意識したことも――


「……いかん、いかん」


頭を振って邪な考えを追い出す。

血が繋がっていようがいまいが、あの二人は姉だ。それ以上でも以下でもない。


「えっと、シャンプー……」

「はい、どうぞ」

「あ、ども――え?」


えへ、と笑う松実玄。

勿論ここは風呂場であるのだから、衣服など身に付けている筈もなく。


「お姉ちゃんが、背中流してあげるね!」

「あったかく、してあげる……」


逃げ場など、あるわけがない。


前には宥が、後ろには玄が。

玄から逃げれば宥が、宥から逃げれば玄が。

二人の姉妹に挟まれて、京太郎はただ縮こまることしかできなかった。


「どうしたの、きょーちゃん?」

「あったかく、できない、よ……?」

「い、いや……だって……」


二人の肢体は京太郎には刺激が強過ぎる。

なんて事、言える筈がない。


「ほら、こっち向いて……」

「や、ダメだよ! 姉さん!」

「なんで?」

「なんでって、そりゃ――」

「何も、問題ないじゃない。血が繋がってないから……」

「っ!! それ、は」

「おとーさんが言ってたもんね!」

「でも、俺たちは姉弟で――」

「でも」

「赤ちゃんは、産めるよ?」



「う、あ、あ……」




京太郎判定直下
耐えて逃げる 1~50
負ける 51~00

ここまでのコンマ全部OUT

思春期の男の子には刺激が強過ぎた・・・アコ病むな・・・


響く嬌声も、流れる血も。

浴室の壁に阻まれて、シャワーに洗い流されて。

そこで何があったのか。

知っているのは、松実姉弟の三人だけだ。



――ただ、薄れていく意識の中で。

――最後に、憧の顔が見えた気がした。



「……」

「どうしたの? 大丈夫?」

「ん、ああ。ちょっと考えごとしてた」

「そう……なら、いいけど」

「……」

「ねえ」

「ん?」

「今度さ、旅行に行かない? 休みにさ」

「あ、ああ。いいな、みんなと――」

「いや」

「え?」

「二人がいい。京太郎と、二人で行きたい」

「……」

「……」

「……そう、だな」



【プロローグ 了】


宮守よりは平和

いざ書く側になって初めて理解したあこちゃーを苛めたくなる心理
ちなみに憧ちゃんは三人の関係は知りません

ちなみにコレ、最初は愛宕京太郎の予定で
京太郎に女としてアプローチかけまくりガンガンいこうぜな絹恵と、京太郎に異性として惹かれている自分を自覚しながらも絹恵を宥める洋榎
京太郎に惚れている漫ちゃんとか末原さん
ある日、酒で酔っ払った母に「アンタ橋の下で拾ってきたんよー」と宣告を受ける京太郎
もうブレーキをかける必要がなくなったと更に激しくなる絹恵と洋榎
ある日、ついに一線を超えてしまう三人
しかし実は、母の発言は酔った冗談で、本当は三人とも血が繋がっていて――


みたいな前にスレ立てようとしてボツにした話が元になってます

ボツにした程のネタを阿知賀で
再現したのはこれいかに

ん、てことは結局玄、宥と京太郎の血は繋がっているのかね
だとしたら…

>>767
方言がネックだったのとモチベーションが足りなかったのが理由ですね

>>768
あくまでボツネタなのでこっちとはあんま関係ないですよ
コンマ神の気まぐれ次第ですね

今後、阿知賀でイベントを進める場合

・キャラ安価の際に特定コンマで憧ちゃんが登場します
・レジェンドと二人きりになると強制イベントが発生します
・松実姉妹は塞さんポジション

となります

次はプロ編かな?

登場する人は
健夜、靖子、晴絵、理沙、良子、咏、はやりの予定


「メガカツ丼特盛、ねぇ……」


これでもか!と言わんばかりに油でギラギラ光る肉。

米を完全に覆い隠すその存在感は、「美味しそう」の前に「ご馳走様でした」という感想が飛び出す。

以前に運んだ自動卓に匹敵する重量感。

両手でトレーを抱えなければ落としてしまうだろう。

こんなもの、テレビのB級グルメでしか見る機会がないと思っていたが。

高校の先輩のツテで始めたバイト先で見ることになるとは。



こんなものを食う輩は、よっぽどの大食漢に違いない――


「メガカツ丼特盛のお客様ー」

「ああ、こっちだ」

「……え?」


ヤスコ判定直下
1~30 ふむ。悪くない
31~60 中々のものじゃないか
61~98 じゅるり
ゾロ目 ???

普通だな

「中々のものじゃないか」

「……え?」


注文を運んだ先にいた女性は、京太郎の想像とは正反対に属する容姿をしていた。

いかにもベテランといった立ち振る舞いの、大人の人。

接客業としてはあるまじきことだが、思わず凝視してしまった。


「む……?」

「あ、すいませ――」

「そうかそうか、君もこの良さがわかるのか」

「へ?」


が、それの何を勘違いしたのか。

上機嫌な様子で、注文を追加するために片手を上げた。


「メガカツ丼特盛――追加で、よろしく」

「え……あ、ああ、はい! わかりま――」

「いや、君は座りなよ」

「え?」

「私の奢りだ。打とうじゃないか、たっぷりと」

「え゛」

着くのか


何で麻雀喫茶にこんなメニューがあるんだ……。



これは夢だと思いたい……が、目の前のメガカツ丼特盛の油のテカりは否が応でも完食しなければならない現実を思い知らせる。

そう考えても、箸に手が伸びない。


「……ふう、ご馳走様」

「……へ?」


京太郎が攻略の算段を頭の中で巡らせている間に、隣の肉の山が空になっていた。

信じられない。ポカンと間抜けに口が開く。


京太郎の後に新たに卓に着いた常連二人も、これには目を丸くした。


「さて」

「打とうか」


そして、京太郎と靖子と、名前も知らない常連二人とで。

麻雀が始まった。

結果は、


「お疲れー」

「にーちゃん、次はもっと頑張れよー」

「うす……あざしたー……」

「ふむ……」


当然、京太郎の惨敗。

全てにおいて最下位を維持し続けた京太郎と、京太郎を飛ばし続けた靖子。

卓に突っ伏す京太郎と、余裕を持って腕を組む靖子は実に対極的だった。


「なぁ、麻雀部と言ったよな?」

「ええまぁ、ハイ……」

「もしかして、清澄?」

「そっすけど……俺なんてまだまだで」

「いや、それは見ての通りだからわかるよ」

「うぅ……」


ガクリ。

力尽きる京太郎を前に、靖子は一人頷くと、席を立った。



「あぁ……これも、か……」


すっかり冷めたメガカツ丼特盛。

麻雀で神経を使い空腹であるとはいえ、強敵だ。

京太郎は意を決して、箸を手にとった。

「一年に男子が一人いるだろ?」



「……ふむ、指導はちゃんとできているのか?」



「いやいや、嫌味を言っているわけでも攻めてるわけでもないよ」



「ただ、面白いと思ってね」



「ねえ、良かったらその一年……私に、預けてみない?」



「ふふ、色々あるのさ。大人には――ね」



「へぇ、藤田プロ、弟子をとったんですか?」

「まぁ、そうなりますかね? そんな大層なものじゃないですけど」

「よっぽど才能のある子なんでしょうね」

「いや、全然。不要牌をよく引いてますし、むしろその逆ですよ」

「はぁ。じゃあ、なんで?」

「んー……面白いと、感じましたから。陳腐な言葉ですが……彼には可能性があります」

「可能性、ですか」

「はい――これ、写真なんですけど」



すこやん判定直下
1~30 うーん……普通の男の子、だよね?
31~60 ちょっとかっこいいかも……
61~98 確かに……何か、感じますね
ゾロ目 ???

こーこちゃん判定下二
1~30 金髪だー
31~60 まぁ、イケメンってとこ?
61~98 え、ウソ……これって……?
ゾロ目 ???

コーチ判定直下三
1~30 わかりませんが、藤田プロがそう言うなら……
31~60 意外と、好み……か?
61~98 今度、私も合わせてくれませんか?
ゾロ目 ???


ちなみに健夜の判定はまた別にあります
久保コーチは今回次第

任せろ

>>802-804 え、なにこれ




――なに、この感覚 。


携帯のディスプレイを通して、須賀京太郎の姿を見た健夜は、ある既視感を覚えた。

そんな筈はない。彼とは会った事もないし話をしたこともない。

……なのに、何故か。

彼の胸に縋り付いて、涙を流したような。

そんな光景を、小鍛治健夜は想起した。


※次回健夜判定値に+20
100を超える場合はゾロ目扱い






え、ウソ……コレって……?


金髪の彼の表情を見た瞬間に覚えた胸の高鳴り。

それは小学生以来の、とても懐かしい感覚。

鼓動がどんどん大きくなる。頰の紅潮が止まらない。

ウソだよ、ウソウソ! あるわけないよ!

社会人となって、乙女チックな感情は捨てた筈。

だけど、これは。

言い逃れのしようもなく。

きっと、この感情の名前は――


※健夜登場時に特定コンマで恒子が登場します




「今度、私も会わせてくれませんか?」


考えるよりも何よりも速く。

そんな言葉が口から出ていた。

靖子の言うような何かを感じたわけではない。

ただ、自分はこの少年に会うべきだ、と。

雀士としての直感と、自分も気が付かない女としての心が。

彼女の口を動かした。


※プロたちに久保貴子が追加されました!


「え? ああまぁ、構いませんが……」


予想以上の三人の食い付きに、若干ひき気味になる靖子。

確かに自分は京太郎に面白い可能性を感じているし、この感覚は間違いではないと確信している。

だがそれは直接彼と打って覚えたもので、解像度の低い携帯の写真から伝わるものではない。

健夜は急に無表情になってしきりに何かを呟いていて、

恒子の顔は明らかに恋する乙女のそれぞれで、

貴子は口調こそ問いかけているものだが、その据わった目付きは拒否することを許さない。



……もしかしたら私は何か間違えたか?

カレーを口に運びながら、靖子は少し後悔した。

×恋する乙女のそれぞれ
○恋する乙女のそれ

コンマ神が不調なんて嘘だったんだ

「あ! じゃあ私も!」

「はぇ?」


勢い良く手を上げる恒子。

予想外の連続に、靖子は間抜けな声をこぼした。


「ほら、お二人がそんなに注目するって言うなら私も気になりますし? 期待のホープってことで!」

「いや、そんなに期待していくとガッカリしますよ。絶対」

「それはそれで美味しいじゃないですか。片田舎のサクセスストーリーってことで!」

「ふーむ……まぁ、そこまで言うなら」


「あ、それじゃあ私も」

「いやー、すこやんはダメっしょ」

「はえぇ?」


この流れから、健夜も参加することは読めていたが。

それを恒子が否定するとは思わなかった。


「え? どうして……」

「だってすこやん、見た瞬間に襲いそうだし――あ、ゴメン嘘嘘。
そんな怖い顔しないでよ……ゴホン。だってすこやん、来週からチームで出張でしょ? 時間的にも無理だと思うんだけど」

「あ……」

「ま、私がすこやんの分もこの子と話してくるよ!」

「……よろしく、ね」


イキイキと話す相方に、健夜は再び既視感を抱く。

この胸の曇りは、一体。




「……」

そんな外野のやり取りは一切耳に入れず、貴子は写真の京太郎を見つめ続けていた。

ゾワゾワしてくるわ



女子5人と男子1人で、申し訳ないことに私たちには須賀くんの面倒を見ることが難しいんだけど――安心して、特別コーチを用意したわ。

得意げな久に紹介された雀荘に出向けば、先日出会ったカツ丼さん。

名前は藤田靖子で現役のプロ雀士であるそうな。

先日の飛びまくった京太郎の何処に才能を感じたのかはまるで理解できないが、高いレベルの指導を受けられるのであれば拒む理由もない。


そして今日もいつも通り、放課後に雀荘に出向いたのだが――



「おう、来たか」

「どーも! 始めまして!」

「……」


知らない二人が、座っていた。

練習(意味深)

これはフルメンバーで指導(清澄麻雀部とプロとの全面戦争)を受けた方が良い面子。

いや、一人は知っている。

女子アナの福与恒子。度々テレビ越しに見かける。


「君が須賀京太郎くんだね! 私は福与恒子! よっろしくぅ!」

「あ、はい。よろしく、です」

けれど、彼女がこんなにもフレンドリーに接してくる理由がわからない。

押し売りのような勢いで渡された名刺をポケットにしまい、コクコクと頷く。



「……久保貴子。風越でコーチやってます。今日は、藤田プロのお話をお伺いして来ました」


そしてもう一人。

クールな印象の出で立ちの美人。

靖子の話を聞いてと言うが――



「……」

靖子に視線を向けても、やれやれだと言わんばかりに肩を竦められるだけ。

……まぁ、練習を見てくれるなら。それにこしたことはない。



「よろしく、お願いします」


腑に落ちない気持ちを抱えながらも、京太郎は頭を下げた。



コーチ判定直下
1~30 須賀ァッ!
31~60 須賀ァッ!!
61~98 須賀ァッ!!!
ゾロ目 須賀ァッ!!!!!

低い

そして池田の妹達に寝取られる(一緒に昼寝的な意味)と

手牌は好調。もしかしたら、この三人が良いものを運んで来てくれたのかもしれない。

いつもは負け越しているが、今回は靖子に一矢報いることができるかもしれない。

少しでも点を高くしようと、京太郎は牌を切り――


「あ、それロン!」

「え――?」

恒子に、振り込んだ。


「須賀ァッ!!!」

「ひっ!?」


貴子の怒号に、全身が萎縮する。


「さっきから見てればよぉ……何だァッ!? その打ち方は!!」

「いや、だって――」

「誰が言い訳しろっつった!!!」

「ひいぃっ!?」

「相手を見ろ! 相手を!! 安易に鳴くな! 藤田プロに教わってるだろうがっ!!!」

「は、はい!」

「……うし、もう一回だ。続けるぞ」

「……はい」

「返事!」

「はい!」


そして、練習が再開されるが――


「須賀ァッ!」

「須賀ァッ!!」

「須賀ァッ!!!」


「……やれやれ」


どっちが師匠だかわからん。

苦笑しながら、靖子はカツを一切れ頬張った。

そして、何度も貴子に絞られながら迎えたラスト。

精神的に参りながらも、集中力は増していくかつてない体験に戸惑いながら対局が進み――


「あ、それ……ロン、です!」

「ほう」


始めて、靖子に振り込ませることに成功した。

点数で言えば非常に安い。

だが、初めて、コーチに一泡吹かせることが出来た。

頬が緩んでいくのを感じる。


「……」

「……あ」


だが、隣にいるのは鬼コーチ。

「こんな低い上がりすんじゃねぇっ!!」と、怒鳴られることを予想して、思わず目を瞑る。



「おー、よくやったじゃねーか」

「……え?」


目を開くと、貴子に頭を撫でられていた。

「教えたことも守ってるし、牌効率も、まぁ悪くはない。点数は……ま、こんなもんだろ」

「……え? え、え?」

「この短時間で大分出来上がったな。今日の教えを忘れんなよ?」

「……えっと」

「返事!」

「はい!」



「ほぇー、あんな優しい顔出来るんですねぇ」

「久保コーチは鬼コーチですが、無意味に怒ることはしませんからね……それにしても少し、甘い気もしますが」

「ふんふん」

「それよりも、京太郎はどうでしたか? あれだけ絞られていましたが」


あんな情けない姿を見れば、きっと百年の恋も覚めるはず。

そう予測した靖子だが、



「いえ! 京太郎くんって、しょげてる時素敵なんですね!! 母性が擽られました!!!」

「あ、ハイ」


恋とは、予測ができないから恋なのである。

この日から、京太郎は他家の当たり牌を握ると怒号の幻聴が聞こえるようになり。

これがきっかけとなって全国へのキップを握ることになるが、それはまた別の話だ。

※京太郎がオカルト 須賀ァッ!! を会得しました!
なお、特に意味はない


靖子パートの筈が久保コーチパートになってた不思議!

コンマ神の導きによりプロ編の京太郎は全国大会に選手として出場します

時系列的には次から全国大会に飛びます

全国大会へ選手として出場し、東京を訪れた京太郎だが、大会の日付はまだまだ先だ。

部長の久から自由行動が許されたので、京太郎は練習の息抜きとしてドラマのロケ地を見学することにした。


「はー、スゲぇ。ビルがいっぱいある」


電車に揺られながら、窓の外の景色を眺める。

田舎者丸出しの感想だが、それをからかう部員はいない。



くすっ


が、その初々しさに心を擽られる者はいた。

時間帯のせいか、空いている車両内。

その笑い声はすぐに京太郎の耳に届いた。


「む……」


すぐ側で吊革を握っている女性。

帽子とサングラスが特徴的で、まるでお忍びの――


「……え? はやりん?」


可愛らしい顔立ちと豊満な胸。

よく目を凝らして見れば、その顔には見覚えがあった。

驚く京太郎に対して、女性――瑞原はやりはウィンクを見せ、人差し指を唇に当てる。


――シっ。みんなには、内緒だよ☆


そんな声が、聞こえた気がした。

MK5(マジで喰われる5秒前)ですね

テレビ越しに見る印象とはまるで違う、生の牌のおねえさん。

こうして直接会うと、やっぱり魅力的で――正直、ときめいた。

ハートに矢が突き刺さるイメージは本当なのだと、京太郎はフラ付きを感じ――


「っ! これ本当に!」

「はやっ!?」


直後、電車にかかる急ブレーキ。

車両全体が大きく揺れる。

せめてはやりだけでも助けようと、京太郎は腕を伸ばした。




「……ってて」

「あわわ……」


揺れが収まり、車内にアナウンスがかかる。

はやりの下敷きになった京太郎は背中を強く打ったが、それ以外にダメージは無い。

はやりは無事だろうか、京太郎は顔を上げて、


「あ……」


絶句する。

はやりを助けるために伸ばした腕が。

その豊満な胸を、


「あん♪」


鷲掴みにしていた。


はやりん判定直下
1~30 はややっ
31~60 ありがと、ダーリン☆
61~98 せ、責任……とってくれますか?
ゾロ目 ???

事故により、近くの駅で停車して運行を中止した電車。

京太郎ははやりに連れられて、近くの喫茶店に入った。


「あの……その……」


頬を染めてモジモジする瑞原はやり。

テレビでは決して見ることの出来ない姿に更にときめく京太郎だが、それを楽しむ余裕はない。

冷房が効いているのに汗が止まらない。


「せ、責任……とってくれますか?」


「……は、はい……」


責任。

賠償金か、痴漢として自首か。

何にせよ、選手としての未来はここで、断たれる。

どうしてこうなった。

善意の行動が裏目に出た京太郎は、涙を流した。

「あ、ああゴメンね! そうじゃないの!!」

「……へ?」

「そうじゃないっていうか、その……」


言葉に詰まるはやり。

京太郎もどう返していいかわからず、互いに沈黙する。


「ゴメンね、キミは、はやりを助けてくれたのに……変なこと言っちゃって」

「え、えっと……」

「お礼がしたいから、また会えないかな?」

「それは……」

「さっきは、ビックリしてて責任って言っちゃったけど……」

「……」

「ちゃんとしたお礼がしたいの。こんな、コーヒー一杯じゃなくて」

「そんな」

「だけど、はやりも仕事があるからあまり時間取れないし……また、会えないかな?」

「……瑞原さんが、それでいいなら」

「それじゃあ、これ。はやりのアドレスだから、後で連絡ちょうだい?」

「はい。わかりました」

一万円札とアドレス。

コーヒー一杯にしては高過ぎるものを置いて、瑞原はやりは去って行った。


「……はあぁぁ……」


息を吐き、ぐったりと椅子に寄りかかる。

何だかよくわからないが助かった。


「災難だった……ん?」


いや、冷静になれば。

アイドルのアドレスゲットした上に、また会う約束まで取り付けたわけで。

しかも、この手が覚えた感触は。


「……へ、へへ……」


自軍の控室に戻って「京ちゃんキモイ」と言われるまで。

京太郎の頬は緩みっぱなしだった。

あるホテルの一室。

床、壁、窓、ドア、ベッド。

部屋の至る所に、ある男子の写真が貼り付けられていた。

それは地方新聞の記事であったり、ブログの写真であったり様々であるが、一つ共通していることは。


「京太郎、くん……♪ 京太郎くぅん……♪」


必ず、須賀京太郎の名前が入っていること。


「あは……♪ 幸せ……♪」


京太郎に全身を包まれている。

写真の海の真ん中に埋もれるはやりは、視覚的な幸せに酔いしれていた。


「でも……足りない……♪」


胸に残る彼の掌の温かさ。

もっと彼を感じたい。

このような虚構の彼ではなく、全身でこの温かさを感じたい。


「京太郎くん…♪ 京太郎くん……♪」


だけど、彼女は焦らない。

京太郎にも幸せになってほしいから。

自分と同じ温かさを共有してほしいから。

その為には、準備が必要だ。

長い長い手間をかけた、準備が。



「あはっ♪」


だから、今だけは。

はやりは、虚構の幸せで妥協した。

はやりんパート終了
大人の女性は好きです

とりあえず今日はここで区切りますー
あと二人くらい書けると思ったけど靖子パートという名の久保コーチパートが予想以上に長くなった

あと京太郎が選手として全国に来たのでレジェンドパートの構想考え直す必要があることに気付きました

カツ丼さんとかコーチは病み具合は低めですが今後のキャラ安価の選択次第で病みます。めっさ病みます

次スレは次の人が終わったら、かな?


では、お付き合いありがとうございました

スレ跨ぐのアレなんで、次スレ立てちゃった方がいいですかね
次は判定少し多目なので

じゃあ、次行っちゃいましょうか?

ついでに埋めネタがわりに
一番笑ったコンマ判定に聞かせてください

次スレ立てましたー
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs

途中送信してしまった
こっちは小ネタで埋めます

>>954
すこやんこーこちゃんコーチが個人的にハイライト

京太郎「修羅場ラヴァーズ」 健夜「幸せな、お嫁さん」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401090438/)

>>961
申し訳ない、ありがとうございます


小ネタ安価直下

すいません、書いてる途中で野暮用が……22時くらいまで戻れないかもしれません

竜怜了解です
修羅場は軽めか、殺傷沙汰か、どちらがいいですかね?

表向き甘々で裏はドロドロで

竜怜修羅場は次スレの頭に持ち越しで
このスレは埋めちゃってください……グダグダで申し訳ない

あと、安価スレの「>>1000なら~」ってやつを一度やってみたかったので何かリク等あれば


あと、

>>519

通称、チーム虎姫。

彼女たちが普段、どのような活動を行っているのか。

麻雀関係以外にも大勢いる――


ここ、正しくは



通称、チーム虎姫。

彼女たちが普段、どのような活動を行っているのか。

それを知りたがるものは、麻雀関係者以外にも大勢いる――


ですね。恥ずかしい

1000なら有珠山大噴火(修羅場的な意味で)

>>1000ならヤンデレかおりんが京太郎独占

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年09月25日 (火) 00:00:36   ID: 7V_KUR2g

うん

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