京太郎「修羅場ラヴァーズ」 由暉子「誰よりも、何よりも」 (1000)
・京太郎スレ
・短編集的、オムニバス的な感じです
・安価もあるかもしれない
・ヤンデレとかあるかもしれない
・話によって京太郎が宮守にいたり臨界にいたりするのは仕様です
・ライブ感は大事
まとめ
http://www62.atwiki.jp/kyoshura/
前スレ
京太郎「修羅場ラヴァーズ」 - SSまとめ速報
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京太郎「修羅場ラヴァーズ」 健夜「幸せな、お嫁さん」 - SSまとめ速報
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京太郎「修羅場ラヴァーズ」照「ずっとずっと、愛してる」 - SSまとめ速報
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京太郎「修羅場ラヴァーズ」姫子「運命の、赤い糸」 - SSまとめ速報
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京太郎「修羅場ラヴァーズ」明華「夢でも、あなたの横顔を」 - SSまとめ速報
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京太郎「修羅場ラヴァーズ」一「キミと一緒に、抱き合って」 - SSまとめ速報
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京太郎「修羅場ラヴァーズ」小蒔「あなたしか見えなくなって」 - SSまとめ速報
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とりあえず前スレの続きから
最後にアンケ出して今夜は閉めます
貴子の涙。
ここにきて初めて京太郎は、これ程までに貴子に愛されていたのだということを、理解した。
「貴子さん……」
その涙を拭わないといけないと、京太郎は手を伸ばし――
「……ああ。わかったよ」
「っ!?」
――伸ばした腕の、手首を掴まれる。
あまりの痛みに、言葉にならない声が漏れた。
「本当に、お前は……危なっかしい、教え子だ」
もう片方の手で、胸倉を掴まれ、引き寄せられる。
抵抗することは、出来なかった。
「だから、よぉ」
「た、貴子、さ……」
「私が、ずぅっと」
力付くに押し付けられ、重なる唇。
獣が獲物に食らい付くように、乱暴なそれは。
「……見てやらなきゃなあ?」
「お前」が「私」の所有物だと、刻み込むようだった。
「駄目だ……貴子、さ」
「ん?……あぁ。確かにな」
貴子が、乱暴に上着を放り投げ、部屋の明かりを消した。
扉は堅く閉されて、貴子の意思が無ければ開くことは出来ない。
「……私が見てるだけじゃあ、意味がない」
「しっかりと、お前の方からも、私だけを見るようにしなくちゃなあ」
京太郎は、動けない。
身体は、貴子に押さえ付けられているから。
心は、彼女に逆らってはいけないと、刻み込まれているから。
「あぁ……安心しろ。向こうには連絡してある」
「今のお前は、私に身を委ねていれば、それでいいんだよ」
暗闇の中で、互いの血が流れ、交わった。
「ほら、コレ」
「あの三流マスコミ。まだ諦めてなかったらしい」
「あ?……あぁ、心配すんなよ。警告しただけだ」
「また次となればわからないけどな」
◆
須賀京太郎。
高校一年生から麻雀を始めたにも関わらず、あっという間にインターハイを制覇した雀士。
高校を卒業した後にはすぐにプロとしてデビューし、数々の功績を残した。
彼を天才だと讃えるメディアもいれば、指導者が優秀だったとする見解もある。
そして、スキャンダル等も全くなかった、彼の傍らには常に――
「京太郎……わかってるよなぁ?」
「何で、あんなに生温い打ち方をした?」
「相手が、アイツだったからだろう?」
「……は。まぁ、いい」
「本当にお前は、危なっかしい――」
【ED おによめ】
後もうちょっとでベストエンドでした
さて、次は小ネタの後に
1 白糸台全国パート EDあるかも
2 臨界日常パート
3 プロ勢編、コンティニューする?
4 永水日常パート
5 宮守全国大会後 EDあるかも
6 松実京太郎、都会へ行くの巻
7 先生編、個人戦パート EDあるかも
の、どれかになります
それでは、今夜は閉めます
長らくお付き合い、ありがとうございました!!
まぁ、では小ネタの後のプロ編コンティニューはやるとして、その後にやるものを
直下のコンマで
1~50 白糸台
51~00 臨海
ゾロ目 お好きにどうぞ
で決めましょうー
ではプロ編の後は白糸台でー
義姉ヤスコ編とかその他小ネタの後にー
【宮守出会い編より】
「はは、仲良きことは――てね。それじゃ、いくよ。ハイ、チー、ズ!……っと」
3年生の女子が五人に、1年生の男子部員が一人。
京太郎を真ん中にして撮影された集合写真。
今この瞬間より、宮守高校麻雀部の活動が始まるのである。
「ふぅ……」
「ちょ、小瀬川先輩」
撮影が終了した瞬間、肩の力を抜いてマスコットキャラのパンダのようにダラけるシロ。
それだけならまだしも、寄り掛かる先が自分ともなれば、京太郎も平常心は保てない。
「シロでいいって」
「そ、そんなこと言われても……」
柔らかく、温かく、良い匂いがする。
加えてシロのスタイルは非常に京太郎好みなのもあって、つい鼻の下が伸びてしまう。
正直、役得であるが――
「むー……っ」
「はっ」
――周りからの視線の刺々しさに気付かないほど、京太郎も鈍感ではなかった。
「んっ。コホンッ」
わざとらしく咳払いをして、無理矢理平常心を取り戻す。
寄り掛かるシロの肩に両手を置いて、自分から引き離す。
「ほら、しっかりして下さいよ」
「ダル……」
渋々と、それでも真っ直ぐ背筋を伸ばして立つシロに内心で溜息を吐く。
やれば出来るがやらない人、それが小瀬川白望という先輩である。
「まったくもう……」
……が、それにしても、やたらと甘えられることが多いような気がする。
他の4人の先輩も妙にスキンシップが多いし。
「……本気に、しちゃいそうだ」
思わず、ボソリと漏れた呟き。
秋波が送られてる、モテ期が来てると純粋に喜べたら良いのだが、5人の美人から同時に好意のベクトルが送られるなど信じられない。
そんなものは、物語の中でしか――
「いいよ。本気にして」
「……は?」
「あの日に一目惚れした。好きだよ、京太郎」
「え、いや、その」
真顔でいながら、頬には朱が差している。
冗談や勘違いではない。
ライクではない方の意味で「好き」のベクトルが、京太郎に向けられていた。
「だ、ダメだよーっ!!」
「姉帯先輩っ!?」
が、そのベクトルを遮る大きな影。
豊音に両手で力一杯抱きかかえられて、185cmの長身がぷらりと浮いた。
「京太郎くんは私の王子様だもんっ!!」
「ん、んんっ!?」
「ちょっと待った!!」
「わ、私だって!」
「I love you more than words can say!!」
雪崩れ込むように次々と突き刺さる熱愛の視線。
最早これは、勘違いのしようもなく。
「は、ははは……」
やっと、京太郎は理解した。
自分を取り囲むようにして撮られた集合写真。
みんなが、はにかんだような笑顔を浮かべているのは――
【温いラブコメ編、スタート】
須賀京太郎には悩みがあった。
自分の所属する麻雀部でのことだ。
「京ちゃん。ここはね――」
自分の手番時に、あまりよろしくない手牌を前にして悩んでいると、後ろから添えられる手。
京太郎の少しゴツゴツした手の甲に、ほっそりとしたなめらかな指が重なった。
「……照さん」
「ん?」
コテン、と小首を傾げる照はとても可愛らしい。
対局時とのギャップも相まって彼女の魅力を引き立てていると思う。
添えられた手の指先の爪は綺麗な桜色で、よく整えられている。
少し天然な面もある照だが、こういうところを見ると、女性としても努力しているのだと更に魅力を感じて――
「――いや、後輩の指導は部長の役目だろう?」
「……む」
「……あっ」
可愛らしい、というよりは凛々しいという表現が似合う声。
白糸台高校麻雀部部長、弘世菫が照の前に立ちはだかった。
「さ、ここは私に任せろ」
空いたもう片方の手に、菫の白魚のような指が添えられる。
ついでに彼女は気が付いていないのか、密着している肘に彼女のおもちが当たって、京太郎の心中は非常に穏やかでない。
「ぶ、部長っ」
「菫と読んでくれ。君と私の仲だろう?」
――いや、それただの部員と部長の関係ですよね?
そう突っ込みたくても、より強く母性の象徴を腕に押し付けられては、京太郎はコクコクと頷くことしかできない。
右手に照を、左手に菫を。
インターハイチャンピオンと、王者白糸台の部長に挟まれているという状況。
見方によっては羨ましいと言えるかもしれないが、
「……私の方が、京ちゃんのことはよく知ってるから。菫はあっち行ってて」
「いや、ならば尚更、私が手取り足取り教えるべきだな。部長としても、部員のことはしっかり把握しておかないと」
二匹の虎に挟まれた当の本人は、いつ喰われるのかと怯えるのみである。
「本命の部長に一票」
「じゃ、対抗馬の宮永先輩に」
「渋谷先輩かな、ちょっとしたアピールがね」
「良い先輩の亦野先輩で」
「私は大穴の大星かなー」
いつの間にやら、部内には「いつ京太郎が食われるか」などというトトカルチョまである始末。
部活では照と菫、教室では淡、休憩中には尭深、休日に遠出すれば誠子が。
ここ最近、必ずチーム虎姫の誰かが隣にいる。
「はぁ……」
チーム虎姫のみんなを嫌っているわけではない。
好きだからこそ、悩むのである。
「京ちゃん」
「須賀くん」
――どっちがいい?
どの選択肢を選んでも、京太郎に喰われる以外の未来は、無い。
【プチ修羅場ーズ】
照へのポンコツイメージはいつの間にか消えてたなぁ
ポンコツというより天然さんなイメージ
ヤスコ義姉ちゃんとか小ネタの後にプロ編コンティニュー、そして白糸台全国編となるわけですが
なんか自由安価が書きたくなったので臨海とか千里山とか選択肢を増やして始めるかもしれません
という報告でした
小ネタは投稿するかもですが、安価更新は金曜まで無いと思います
京淡ください
スカートをくいくいと引っ張る小さな手。
自分を見上げる、丸くてあどけない瞳。
『おねーちゃんが、おねえちゃん?』
――アレは、天使との出会いだった。
藤田靖子は後に、この時の出会いをそう振り返っている。
――結婚。
夫婦になること。愛の結実。人生の墓場。ゴールイン。
愛、幸せ、夢、利益。
一言で言い表せる言葉でも、その背景には複雑な思惑が絡み合うが、一般的に祝福されることには違いない。
披露宴で煌びやかな姿を見せる新郎新婦は、多くの女子の憧れである。
「んー……」
だが。
片手の指で数えられる年齢の子どもに、それが理解できる筈もなく。
「退屈?」
「うん」
椅子に座って大人しくしてはいるが、足をブラブラさせて退屈そうな様子。
どちらかと言えば外で走り回って遊びたい年頃の京太郎には、「じっとしていろ」という親の言葉は苦痛でしかない。
「やれやれ……」
いかにも子供らしい義弟の態度に、靖子は苦笑を零した。
みんなが幸せそうな顔をしているが、京太郎には今一理解できない。
キッズ用のフォーマル服は窮屈だし、早く帰りたい。
そんな不満がありありと滲み出る京太郎の頭を、靖子は優しく撫でた。
「お嫁さんってのは、とっても幸せなんだよ。見てる皆もね」
「ふーん……? どれくらい?」
「何よりも、かな。お義父さんの両手よりも、ずっと大きい」
「んー……」
「京太郎にも、いつかはわかる日が来るさ。好きな人と結ばれる日がね」
「……じゃあ」
「ん?」
「ねーちゃんとケッコンしたら、わかる?」
「……ク、クク」
「ねーちゃん?」
「いや……うん、15年は早いな」
「えー?」
靖子の言葉の意味は相変わらず理解できない。
しかし、優しく頭を撫でてくれるこの手の平は大好きだった。
「……そうだな、後で私の部屋においで。いいものをあげよう」
「いいもの?」
「フフ……」
披露宴の後、靖子に与えられたプレゼント。
黒光りする革製のそれは、京太郎の期待した玩具ではなく――
「……くびわ?」
「これはね、チョーカーっていうんだ」
目が点になっている京太郎の首に、靖子がチョーカーを着ける。
分厚いなめし革に銀の銀の金具による装飾が施されたそれは、幼い京太郎には少々不釣り合いだった。
「……キツイ」
「やっぱり、京太郎にはまだ早いか」
「なにがー?」
「フフ……」
「おねーちゃん?」
「それが似合うようになったら……さっきの意味も、きっとわかるさ」
「……なーんてことも、あったそうよ」
「ほぇー」
人差し指を立てて何故か得意気に説明する久と、呑気に口を開けて頷く優希。
話題の中心人物である京太郎は、恥ずかし気にそっぽを向いていた。
「どうしたの? 京太郎」
「どうしたもこうしたも……」
――知り合いのプロに頼んでるから。二人をヘコませて欲しいって。
――知り合い?
――そ。京太郎もよく知ってる人よ。
――あ、もしかして姉ちゃん?
……だなんて会話を、優希の前でしてしまったのが運のツキ。
根掘り葉掘り尋ねてくる優希に、ペラペラよく回る久の口は留まることを知らず、次々と京太郎の幼少期の記憶が丸裸になった。
「にしても、お前がなー」
「……なんだよ」
「おねーちゃんっ子だったとは。シスコンってやつか!」
「昔の話だよ、昔の」
いつものようにじゃれ始める二人を横目に、久は小さく溜息を吐いた。
京太郎にも優希にも聞き取れなかったそれは、久の胸の内側の虚しさを大きくさせる。
「本当に……昔の話なら、良かったんだけどね」
その時に貰ったチョーカーを、御守りのように鞄に入れて常に持ち運んでいることを、久は知っている。
彼の私服が若干パンクファッション寄りなのも、誰の影響なのかは明らかだ。
不利な状況から捲りを狙うことが多い彼の麻雀でのプレイスタイルは、誰を意識しているなんてのは最早、言うまでもない。
同性の久から見ても、ヤスコは格好良いと思う時がある。
その彼女を幼い頃から見て育ってきたのだから、ヤスコという存在は京太郎の中で非常に大きなウェイトを占めているのだろう。
「でもさぁ……」
――遠くの灯りばかり追いかけていないで、少しは身近にある物に目を向けてくれてもいいじゃないか。
「部長?」
「なんでもないわ」
そう言い出すことが出来たのなら、久もここまで悩まない。
彼女の得意な悪待ちは、こういう時には決まらなかった。
京太郎が清澄に入学して、麻雀部に来てくれたかと思えば、今度は同級生の和に鼻の下を伸ばす始末。
咲とはあくまでも友達のような関係らしいが、何となく怪しいような気もするし――
「……あ」
――と、ここまできて久は、忘れていた重要なことを、思い出した。
「そういえばヤスコって……」
京太郎が重度のシスコンであることは疑いようのない事実であるが、ヤスコも負けず劣らずのブラコンだ。
その彼女に、咲と和をぶつけさせるということは――
「……まぁ、何とかなるでしょ。多分」
――。
「あなたたちが、ねぇ」
「な、何ですか?」
煙管を吹かしながら、品定めをするように和と咲を見詰める女性。
微かに敵意のようなものが含まれたそれに加えて、圧倒的な威圧感。
見知らぬ相手にそのような感情を向けられる道理はなく、咲と和が戸惑うのも無理はない。
「『私の』京太郎が、随分と世話になっているようで」
「私のって……あなたは?」
だが、たとえ見知らぬ相手でも、その口から出た言葉は見逃すことはできない。
視線に精一杯の力を込めて、咲はその女性を睨み返した。
「えぇっと……」
置いてけぼりにされた和は、ただ首を傾げるばかりである。
――義姉、先輩、幼馴染。
本人の知らないところで、彼を取り囲む輪は、徐々に狭まっていく。
何よりも強固な素材で形作られたそれは、拘束が強まることはあっても、決して緩むことはない。
「大丈夫かな、二人とも」
「大丈夫だったら、ある意味困るのだけどね」
緩やかに、その輪は狭まっていく。
やがて、限界を迎えて千切れるその日まで。
【義姉】
最新巻で有珠山の王道ラブコメが捗る……捗らない?
プロ編コンティニュー始めます
コンティニュー地点はすこやん説得イベント後のキャラ選択辺りで
コーチのイベントは無かったことになります
「ま、まさかお前に……」
「へ、どんなもんだ」
決勝前の調整と称した部内対抗麻雀。
先輩二人と同級生を抑え込み、京太郎が首位の座を獲得した。
京太郎の後ろは2位の久、3位のまこと続き、優希が最下位。
信じられないと言わんばかりに震える優希とは対照的に、したり顔で胸を張る京太郎。
久とまこの先輩コンビも、驚いて目を丸くしている。
「……ふ。やっぱり、私の目に狂いはなかったわけね」
「あんたが得意気になってどうする」
ちょうど京太郎にツキが来ていたのもあるが、長野県予選の時よりも確実に強くなっている。
ほぼ毎日のようにしていた朝帰りも、どうやら無駄なことではなかったらしい。
ここまで京太郎が強くなったのは、やはり――
「……そっすね。部長のお陰です」
「へ?」
「本当に、ありがとうございます」
「え、あ……う、うん。当然ね、折角特別コーチを用意してあげたんだから――」
――と、そこでタイミングが良いのか悪いのか。
京太郎のポケットから携帯の着信音。
液晶に表示された、その名前は――
キャラ選択安価、下3でー
メールを送ってきた相手は戒能良子、京太郎が東京に来てから出会ったプロの一人。
そのメールの内容は、準決勝突破を祝うものに加えて、優勝祈願のおまじないをかけてくれる、とのこと。
「おまじない……ってことは」
京太郎の脳裏に浮かぶのは、先日の扇情的な巫女服を纏った良子の姿。
意識せずとも鼻の下が伸びてしまうのも、仕方のないことである。
「……須賀くん?」
「あ、いや、何でもないっす!」
「ふぅん……?」
久の探るようなジト目。
居心地が悪くなった京太郎は、携帯をポケットにしまうと、さっさと立ち上がった。
「すいません! ちょっと急用が!」
「あ、また!!」
そのまま、勢いよく駆け出す。
向かう先は先日と同じ、良子の宿泊するホテルだ。
「ふぅ……」
部長をやり過ごし、無事に良子の泊まる部屋の前まで辿り着く。
この部屋に来るのは二度目。
お払いだとか何だとかで、良子のキャラも相まって、前回は非常に胡散臭い体験をした。
「でも……それで、何だか調子が良くなったんだよなぁ」
そのお払いの効果かどうかは定かではないが、それ以来ツキが良くなったのは事実。
であるならば、きっと何かしらの意味はあったのだと信じたい。
何だかんだで、目の保養的にも美味しい体験だったわけだし――
「……そういや」
――何故、良子はここまでの厚意を自分に向けてくれるのだろうか?
今まで考えたこともなかったことが、頭の中を過る。
「……知りたい?」
「うわっ!?」
いつの間にやら、開いたドアの隙間から覗く良子の目。
バッチリと目があった京太郎は、驚きで腰を抜かしそうになった。
「ウェルカム。どうぞ、中に」
「お、お邪魔します……」
果たして、この人を理解できる日は来るんだろうか。
そんなことを考えながら、京太郎はおっかなびっくり良子の泊まる部屋に足を踏み入れた。
――部屋へと通された後の流れは、前回と変わらなかった。
決勝を間近に控えてるという事実を胸に、良子の誘惑を辛うじて耐え、おまじないをかけてもらうのだが――
「……む?」
巫女服姿の良子が、京太郎を改めて見て、眉根を寄せる。
何か、気にかかることがあったようだ。
かいのーさんの見つけたもの 判定直下
1~20 ソーリー、気のせいでした
21~71 これは……やっぱり、ね
72~98 何か、あったね……女性絡みで
ゾロ目 ???
「ソーリー、気のせいでした」
「はぁ」
一瞬、霊的なモノやスピリチュアル的な単語を想像した京太郎だが、杞憂に終わったらしい。
その後は滞りなくおまじないが進み、あっという間に夕方になった。
「おお……何だか、身体が軽い……気がする」
所謂プラシーボ効果というヤツかもしれないが、気分がスッキリしている。
グルングルン肩を回す京太郎に、良子はくすりと笑い――
「京太郎」
「はい……え?」
――チュッ
耳と、首筋。
それぞれに柔らかい感触と、湿った音。
「え、ぁ……」
「ふふ……今のは、おまじないとは別だから。覚えておいて」
……その後のことは、記憶が曖昧だ。
ただ、男子トイレの鏡を見たら、虫さされのような赤い斑点が出来ていた。
すいません、お腹痛くてダウンしてました
再開します
キャラ安価、下3で
「京太郎くん♪」
宿泊先への帰路の途中。
まるで待ち構えていたかのように、道端で牌のおねえさんに出会した。
「奇遇だね!」
耳心地の良い声。
先程の出来事で上の空だった京太郎の瞳に、意思が戻る。
「瑞原さん」
「はやりでいいよ。一緒のベッドで一晩過ごした仲なんだし☆」
「はは……」
道端で爆弾発言を投下するはやりに、苦い笑みが漏れる。
間違ってはいないが、その言い方では必ず誤解が生まれる。
はやりがオフ用の軽い変装をしていることと、周りの人影が偶々少ないだけあって、問題になることはなさそうだが――
「んー、コレって……?」
ニコニコと笑顔を浮かべていたはやりの雰囲気が、一変する。
じっと、はやりが見詰める一点。
それは、京太郎の――
はやりん判定、直下
1~33 首筋
31~66 頬
67~00 ベルト
「それなに?」
「えっと、ですね……」
はやりが見詰めながら指を差す一点は、京太郎の頬。
正確には、京太郎の頬の赤い斑点。
「……」
……理由は、明らかだが。
おいそれと話していい内容でもない、気がする。
「……虫さされ、だと思います」
「ふーん?」
蛇に睨まれた蛙。
牌のおねえさんに見詰められた京太郎は、何故だかそんなことをイメージした。
「……屈んで」
「え?」
「屈んで。はやく」
有無を言わせないはやりの声音。
テレビでも現実でも、彼女のこんな様子は初めて見る。
自分よりもずっと背丈の小さな、されど遥かに目力のある瞳を持つ彼女に見詰められて、京太郎は静かに膝を曲げて腰を落とした。
「消毒、してあげるね」
啄ばむように、はやりの柔らかい唇が、京太郎の頬を挟んだ。
そのまま拒む間を与えず、続けて舌先がほをねぶりまわす。
「……がんばってね。京太郎くん、人気者だから、色々と大変だと思うけど」
――それから、どれだけの時間が経ったのかは、わからない。
はやりの成すがままにされる京太郎には、一瞬のようにも、長い時間のようにも感じた。
「はやりも、そういう話は色々と知ってるから……困ったことがあったら、来てほしいな」
耳元で囁く、頭を蕩けさせるような甘い声。
「勿論、一人で……ね」
その言葉の内容が理解出来ずとも、京太郎の首は自然と頷いた。
「ふふ……それじゃあ――また、ね?」
京太郎が我に返った時には、はやりの姿は、もう無かった。
白昼夢でも見ていたような感覚と、立ちくらみのようにフラつく足元。
けれど、風を浴びる湿った頬の冷たい感覚と、襟から漂う甘い残り香は、確かに彼女が存在していたことを、しっかりと京太郎に伝えていた。
すいません、体調悪くなってきたので今日はここまでで
明日に更新できるかはわかりませんが、なるべくお待たせしないようにします
それでは、久しぶりであるにも関わらず、お付き合いありがとうございました!
――運命の出会い、なんて信じてなかったけれど。
「大丈夫ですか?」
あれは、私にとって、とても大事な出会いでした。
目を閉じれば、浮かぶ顔。
「成香ー?」
暖かくて、私の手よりも、大きな手。
「おーい、成香ー?」
何故、でしょう。
あの日から、あの子のことが――
「成香ってば!」
「ひゃいっ!?」
――突然の揺杏ちゃんの大きな声と、肩を揺らす腕に。
私の瞼の裏にいた彼は、まるで煙のように消えてしまいました。
「な、何……?」
「次、成香の番だってば」
「あっ……」
目の前にあるのは彼の顔じゃなくて、机の上に、山のように積まれた捨て札の束。
いつもの見慣れた光景。麻雀部とは名ばかりの、卓上ゲームで遊ぶ部活。
物思いに耽っていたせいか、私の手番だということに、すっかり気が付かなかったみたい。
「……大丈夫? 顔、赤いけど」
「う、うん。大丈夫、だから……ごめんなさい、パスで」
「ほーん……あ、8切でー」
……ここのところ、こんなことばかり。
ここに、この学校に、彼がいるわけないってわかっているのに――どうしても、私の目は、彼の姿を探してしまうのでした。
……どうしても、ゲームに集中できなくて。
私が連続で最下位になり続けて、挽回できないままに、ついに下校時刻になってしまった頃に。
「最近の成香、ちょっとおかしくない?」
「え?」
「うーん、確かに。さっきも何だか上の空?って感じだったしなー」
揺杏ちゃんと爽ちゃんが、そんなことを言ってきたのです。
「あ、もしかして~?」
揺杏ちゃんの、ニヤニヤと意地悪な笑顔。
わかっています、こういう時には、大体――
「ズバ」
「あ、男とか?」
――揺杏ちゃんが指を勢い良く突き付けて、格好良く決めようとした瞬間に、空気を読まない爽さんが割り込んでくる。
決めようとしても今一決めきれない、それが揺杏ちゃんだから。
「……男って……なるか?」
……目をまん丸にして、信じられないと私の顔を見詰めてくるチカちゃん。
恥ずかしくってその顔を直視できない私は、顔を真っ赤にして俯くしかありません。
「あ、マジなのかー」
「……まぁ、あれだけアンニュイなオーラ出してたらねぇ。なんつーか、見るからに恋する乙女、みたいな」
……やっぱり、みんなにはお見通しみたいです。
私でも、よくわからなかった自分の心。
でもやっぱり、この気持ちは、きっと。
「おー、赤飯炊く?」
「……でも、心配だわ」
「そうだなぁ。成香ってダメ男に引っかかりそうな――」
「あの人ことを、悪く言わないで!!」
……自分でもビックリするぐらい、大きな声。
みんながみんな、同じように、ポカンと口を開けて驚く顔。
「あ……ご、ごめんなさい……」
「い、いや……うん、こっちこそ、ゴメン」
気まずい空気。
誰が何を言えば良いのかわからない、そんな雰囲気の中で、爽さんが真っ先に口を開く。
「……でさ、その成香がゾッコンな男子ってのは、誰なんよ?」
「それは――」
少しでも、この空気を払拭したい。
そんなことを考えてたからでしょうか、普通なら躊躇って口に出せないことを、私は――
「……あれ?」
「……なるか?」
――そういえば、私は。
「……もしかして、名前、知らない?」
――私は、一番大事なことを、知らなかったのです。
「ダメだコリャ」
ヤレヤレだと、爽さんの肩をすくめるポーズ。
それは多分、みんなの心の中を代弁していました。
雨の日に、足を滑らせてしまったこと。
転びそうになって目を閉じた瞬間に、その男の子に抱き留められたこと。
風で傘を飛ばされてしまった私に自分の傘を渡して、その子は走り去って行ったこと。
「ふーむ……」
ポツリポツリと、あの日のことを思い出して話す私。
どうしても彼の顔がチラついて、しどろもどろになってしまう私の話を、みんなは一生懸命に聞いてくれました。
「なるほどなぁ」
「何か、感慨深いなぁ」
「……その男の子について、何か手がかりはないの? 見た目とか」
「えっと、背が高くて――」
「あー……多分その男子見たことあるわ」
身長が180cmくらい。髪の毛が金髪。出会った場所。
これぐらいしかわかることがなかったのに、揺杏ちゃんは思い当たることがあるみたいで。
「ほら、いつも買い出しで通る中学の前。あそこで掃除当番っぽいことやってるの見た」
「ふむふむ……」
「じゃあ、早速……!」
「待った待った」
いきり立つ私を制止する手のひらは、爽さんのもの。
「もしかしたら人違いかもしれないし」
「でも、行ってみないと」
「んー……成香、その男子を前にして、ちゃんと話せる?」
「えっ……」
……爽さんの言葉は、確かで。
こうして頭に思い浮かべるだけで胸がフワフワするのに。
本人を前にして、お話しなんて――とても、出来るわけがありません。
「第一次本内成香大作戦――開始!!」
第二次はあるのか、だとか聞いても基本的にノリで動いている爽さんに答えられるわけないです。
そのことがわかっているから、ちかちゃんも呆れ顔をしながらもツッコミを入れることはありませんでした。
「よ、よろしくです……!!」
それに、私も。
変わりたい、この気持ちを伝えることが出来なくても、せめてお礼だけは。
そう思ったので、爽さんの提案は、とてもありがたかったのです。
「ねーねー、ちょっと聞きたいんだけどさー」
「こんな子を探してるんだけど……」
揺杏ちゃんが彼を見たっていう中学の近くでの聞き込み活動。
「……わかった、ありがとね」
――須賀、京太郎。
私の胸の中から離れない名前。
「……でさ、もう一ついいかな?」
京太郎くんの好みのタイプや、服。
知らない相手から、そんなことまで聞き出せるのは、私にはとても出来そうにありません。
「ふーむ……成香には、ちょっと厳しいかー……?」
「あぅ……」
そして、判明していく彼の好み。
――確かに、私の貧相な体型では、彼の好みからは外れているかもしれません。
……だけど、諦めちゃダメ。
例え今は好みから外れていても、彼の好みに近付けることはできます。
「成香が燃えてる……!」
「こんなの、初めて見た……」
頑張って、ファッションのお勉強を。
頑張って、バストアップのお勉強を。
先輩たちに協力してもらって、自信の持てる自分になること。
それだけを目標に私は頑張って――
「いってきます!」
――ついに、「その日」がやってきたのです。
――その日は、曇り空でした。
まるで緊張する私の内面を映し出したような空模様。
……だったら私が、この空を晴らして見せる。
そんな、本当に。本当に、柄にもないことを、私は胸に抱きました。
「……うん」
それはきっと、自分を奮い立たせるため。
震える足を押さえて、ゆっくりと、一歩ずつ、私は中学の校門へと向かいました。
ちかちゃんたちの調査で、この日の、この時間に彼が下校することはわかっています。
後は、私が――
「ユキ……俺と……俺と、付き合ってほしい」
金髪の彼――京太郎くんの正面に立つ女の子。
ユキ、と呼ばれたその子は、とても胸が大きくて。
眼鏡の下は、私よりも、可愛らしい顔立ちをしていました。
「――」
そのユキと呼ばれた子が、京太郎くんの告白にどう答えたのかは、聞き取れませんでした。
ただ。
その、赤くはにかんだ顔は、鏡で見る私のそれに、よく似ていて。
……気が付いたら、私は、見覚えのない道を、ただ独りで歩いていました。
彼に返す筈だった傘も、いつの間にかに失くなっています。
天気は、バケツをひっくり返したかのような雨模様。
「……」
当然、傘もなく、合羽も着ていない私の全身はずぶ濡れ。
命の恵みを与えてくれて、嫌なことを洗い流してくれる筈の雨は、ただ私の体を冷たく打つだけでした。
「……どうして?」
口から漏れた言葉。
その意味は、私自身にもわかっていません。
どうして、あの日に私を助けてくれたの?
どうして、京太郎くんを好きになってしまったの?
どうして、あなたが――
「……違う」
ユキちゃんが、悪くないのはわかっています。
きっとあの子は、私よりも京太郎くんのことを、知っていて。
私よりもずっと先に、京太郎くんに出会っていたのでしょう。
私よりも胸が大きくて、私よりも可愛らしいあの子は、私よりも京太郎くんに相応しい。
そう、わかっている筈なのに。
「ユキちゃん」
あなたが。
あなたさえ――
……雨に打たれて、化粧が剥がれていくように。
私の心の中からは、あの子への悪い気持ちが、とめどなく溢れてきました。
「……あ」
だから、でしょうか。
私は前から走ってくるトラックに気が付かず、思いっきり水溜りの泥水をかけられてしまいました。
そして、足元の小さな出っ張りにも気が付かず。
「ぁ……」
私は、思いっきり前のめりになって、転んでしまいました。
頑張って勉強したお化粧は、雨水に剥がされて。
みんなに見繕って貰った綺麗で可愛い服も、泥水で台無しに。
「……そっか」
きっとこれは、罰なのだと。
誰よりも自分が悪いのに、あの子への気持ちを止められない私には、泥の化粧が相応しいと。
私には、そう理解できました。
「……」
目の前の水溜りは、たくさんの大きな雨粒に打たれて、ぐしゃぐしゃです。
目を閉じると、雨粒が色んなところを叩く音が、耳を埋め尽くしました。
寒い。冷たい。
けれども、彼は、あの時のように抱きしめてはくれません。
だって彼の胸の中は、あの子のものだから。
「……ねむい、です」
このまま、泥のように、雨水に流されて。
水溜りの中に、とけることができたのなら。
私の心の中は、きっと、そんな想いで満たされているのでしょう。
――けれど、きっと。
「大丈夫ですか!?」
運命の出会いっていうのは、きっと、こういうことを言うのだと。
「え……」
何よりも暖かくて、素敵な気持ち。
私のまぼろしでないのなら、この声を、私が間違えるわけがありません。
「すぐ、人を呼びますから!!」
あんなにも、夢見た彼が。
幾度となく、瞼の裏側に描いた顔が。
何よりも、誰よりも、私のことを、見詰めていました。
よく見ると、少し遠くから、ユキちゃんがこっちへ走ってきています。
一緒に歩いて帰っている途中、だったのでしょうか。
「すいません、少し我慢していて下さい……!」
転んだ時に切ってしまったのか。
私の膝からは、赤い血が流れていました。
けれど、傷の痛みよりも、体の冷たさよりも。
「あ……ぁ」
――ずっとずっと。
誰よりも、何よりも。
私だけを、見てくれる。
たった一つだけ、ユキちゃんに勝てるところを見つけられた私の心の中には。
ただ一つの、小さな喜びが、芽吹いていました。
――その時、不思議なことに。
痛いほどに私の体を叩いていた雨が、確かに止んだのです。
「あ、あ……!」
風で流されたのか、雲と雲の間に出来た隙間。
雨空に閉ざされていた太陽の光が、私たちを、優しく包みました。
「これは……」
京太郎くんが見上げた空。
雲の間から差す陽の光。
それは、私たちだけを照らす舞台照明のようであり。
私たちを祝福する光のようであり。
「そっか……そう、なんですね」
――歪な、傷痕のようでもありました。
【聖痕】
少し前に書いた小ネタの前日譚、のつもりが話の方向が違う感じに飛んで行った
ついでに最新刊で中学時代の京ユキ王道ラブコメが捗りそうです
あと>>176で耳と首筋ってあるのに>>183だと頬と首筋ってなってますがコレは完全にミスです
まとめる時に訂正します
なるべく近いうちに安価更新も再開したいと思ってます
温かく、とても素敵な気持ち。
「ま、待ってください……!」
気がついたら、私は走り去っていこうとする彼の腕を、夢中で掴んでいました。
そうしなきゃいけないような、ここで置いてかれちゃダメだって――何かに、突き動かされるような。
もしかしたら、コレを――天啓と、呼ぶのかもしれません。
「何ニヤニヤしてるんですか? 気持ち悪いですよ」
相変わらず容赦のない突っ込みに、京太郎は苦笑しつつ携帯を畳んだ。
声の方向に振り向けば、山のようなプリントの束を抱えた小柄な少女。
「手伝うよ。大変だろ?」
「……ありがとう、ございます」
頼まれごとを嫌な顔一つせずにホイホイと受け入れるものだから、気が付いた時にはその小さな体には収まりきらない量の仕事を抱えている。
それがこの、真屋由暉子という少女だ。
初めは親切心半分、あわよくば可愛い女の子とお近付きになりたい下心が半分で声をかけたのだが。
「ほい。いつものゴミ捨て場だよな?」
「はい。よろしくです」
今ではすっかり、目が離せなくなってしまった。
何だかんだ言って世話焼きな京太郎には、少し危なっかしいところのある由暉子は放っておけなかったのである。
野暮ったい大きな眼鏡と長目の前髪が齎す印象に加え、彼女自身あまり不満を言わない性格なので勘違いされがちだが、由暉子は言いたいことは遠慮しないタイプだ。
更にややこしいことは、キツイ発言をすることがあっても、別にその相手を嫌っているわけではない、ということである。
由暉子とそこそこに付き合いの長い京太郎には十分にそのことが理解できているために、先程の発言程度では一喜一憂することはない。
「……そういえば」
「ん?」
「さっきのアレ、何だったんですか?」
そして、さっきのアレとは聞くまでもなく、ニヤニヤしながら携帯の画面を見ていたことだろう。
「まぁ、ちょっとな」
「……ちょっと……ってなんですか」
じっと、眼鏡の奥の大きな瞳が見詰めてくる。
心なしか、いつもよりお互いの距離が近い。肩と肩が触れ合いそうだ。
いつのも彼女なら大して気にすることはないのだが、今日はやけに踏み入ってくる。
「ちょっと前の雨の日あっただろ? そこでさ――」
それに少し引っかかりながらも、京太郎は先日あった出来事を話し始めた。
目の前で転びそうになっていた有珠山高校の女子生徒を反射的に抱きとめてしまったこと。
タイミング悪く吹いた強い風に、彼女の傘が吹き飛ばされてしまったこと。
見詰めあって、つい気恥ずかしくなって、走り去ろうとしたら引き留められたこと。
そして――
「……その人と。相合傘をして帰ったわけですか。須賀くんは」
「うん。お礼させて下さいってことで、メルアド交換までしちゃったよ」
「……」
「……ユキ?」
急に押し黙ってしまった由暉子を怪訝に思うも、彼女の返事はない。
やれやれだと、京太郎は胸の中で溜息を吐き――
「……あ」
――そういえば俺、ユキのメルアド知らねえや。
ふと、そんなことを思いついた。
「……」
とは言え、黙りを決め込む今の由暉子にメルアドを聞いても教えてくれるだろうか。
変なところで頑固なのだ、この真屋由暉子という少女は。
「……あ、アレ。あの人だ」
「え?」
何気なく視線を泳がせた先。
校門の前でジャンケンをしている有珠山高校の女子生徒たち。
「あの、ちょっと前髪が長い人。あれが今の話の、本内さん」
「えっと――」
と、タイミングの悪いことに。
由暉子が振り向いた瞬間、前方不注意になってしまったせいで足元の小石に気が付かず。
「あっ!」
「大丈夫か!?」
プリントの束を撒き散らしながら、盛大にすっ転んでしまった。
前のめりに両腕を伸ばして倒れる姿は見ていて気持ちの良くなるくらいの転びっぷりで。
倒れた瞬間の、彼女の豊満な部分が広がる瞬間はまさにおもちのようで眼福――ではなく。
「眼鏡は、無事でした」
「怪我は?」
「多分大丈夫かと」
下らない方向にそれかけた思考を首に振って戻し、プリントの束を脇に置いて屈む。
転んだせいで制服は汚れてしまっているが、見たところ由暉子の身体に目立つ傷はないようだった。
「ほら」
「……」
差し伸べた手を、じっと見つめて。
「……由暉子?」
「……ありがとうございます」
逡巡するように何度か瞬きしてから、由暉子は京太郎の手を取った。
繋いだ手を引っ張って由暉子を立たせる。見た目以上に彼女の体は軽く、そして柔らかかった。
美容やファッションにはあまり興味が無い由暉子だが、繋いだ指は白く細く、なめらかで、綺麗だと京太郎は思った。
「……もう大丈夫です」
「あ、あぁ」
つい見惚れてしまったが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
名残惜しく思いながらも、京太郎は由暉子の手を離す。
「はやく、プリントを――」
「はい、どうぞ」
風で散らばる前に、速くプリントを回収しないと。
そう考えた由暉子に白い紙の束を差し出す腕は、京太郎のものではなく――
「おケガはありませんか?」
「あなたは……」
――本内、成香。
「また、お会いできましたね」
ニッコリと京太郎に満面の笑みを見せる彼女こそが、さっきまでの話題の中心となっていた少女だった。
「どうしたのさ、なるかー」
「急に走り出さないでよ、重いんだからぁ……」
少し遅れて、彼女の後からやって来る有珠山高校の制服を着た女子たち。
一番後ろの髪の長い女子は、4つのビニール袋を両手にぶら下げて息を切らしている。
その様子からして、買い出しの途中だったところに成香が抜け出して来たのだろうか。
「……お? 成香、この少年が例の?」
「はい。須賀くんです」
いつの間にやら、ぞろぞろと。
二人しかいなかった校舎の脇が、随分と姦しくなった。
「ありがとうございました!」
京太郎と由暉子は、二人して頭を下げた。
彼女たちの親切心によって運ぶのを手伝ってもらったので、予定より随分と早くゴミ捨てが終わった。
「んー。二人とも、この後ヒマか?」
「はい」
「はい、今は部活やってないんで」
「ふむ……よし!」
髪を頭の右サイドで括っている少女――獅子原爽は、一人頷いて。
「お前ら――今から、ウチの部活に来い!」
連れて行かれた先は麻雀部――というのは名ばかりの、卓上ゲームクラブ。
先代が麻雀牌を売り払ってしまったために、あるのは麻雀マットだけで後はトランプやらボードゲームやらで遊ぶしかないらしい。
それならばと、由暉子が自宅の壊れた自動卓を直せば動くかも、とのことで寄贈することになり――
「おぉっ! 動いた!」
「すっげ! なんだこのオモチャ!!」
――有珠山高校麻雀部。
ゲストの由暉子と京太郎を加えて、初めてその名の通りの活動が始まるのであった。
由暉子、爽、誓子、揺杏。
寄贈者である由暉子は確定で、後はジャンケンで決まった卓の面子。
奇しくも、経験者が卓を囲み、初心者である成香と京太郎は見学することになった。
「いつもゴミ捨てとか雑用とか押し付けられてるっぽいけど、それでいいのか?」
「押し付けられてるつもりは、ないのですが……」
牌を切りながら卓上で交わされる会話。
安牌を切り、爽に返事をしながら、由暉子は無意識に京太郎に横目を向けた。
「私には取り柄とかなにもなくて、何か頼まれごとしてると落ち着くんです」
「んー……」
取り柄がない、の言葉に首を捻ったのは京太郎である。
同じく、揺杏と爽もその台詞には引っかかるものがあったようで。
「顔立ちいいじゃん」
「うん、かわいいよね。あと胸デカいし」
「それって誰かのためになるんですか?」
「それを誰かに見せたらよろこぶ人がいるんじゃねーの?」
所謂、アイドルのような扱い。
顔立ちも良く、少し改造すれば光るものがあるのではないかと言うのは爽の言葉だ。
「そっすね。確かに今のままだともったいないかも」
元からほぼ一目惚れのような形で由暉子に惹かれていた京太郎は、その台詞には頷くばかりである。
「アイドルで私みたいに身長が低すぎる子ってなかなかいないし、胸が大きいのもダメなんじゃないですか」
「この清水谷とか神代とか胸は結構あるけど人気だよ」
そう言う揺杏の指差す雑誌のページには、健康的な印象の少女と、巫女服に身を包んだ少女。
二人とも由暉子にサイズは劣るものの、大きな胸をしている。
「それにさ――そこの少年も、大きいの嫌いじゃないっしょ」
「えっ」
そしてこの流れで自分にパスを渡されるとは思っていなかった京太郎は、女子たちの視線に狼狽えるしかない。
「……須賀くん?」
特に、由暉子の目線。
眼鏡と前髪で隠れがちだが――彼女の目力は、強い。
「須賀くんは、好きですか?」
「え、えっと……」
「私の胸――好き、ですか?」
あかん眠さ限界です
由暉たんいえいな話の筈が長くなりすぎました
あと1か2レスくらいなんですが中断します
すいません
京太郎も健全な男子であるからして。
勿論、正直に答えればイエス以外の返答はない。
そもそも最初に由暉子に惹かれたきっかけが、その立派な二つの膨らみなのだから。
「……まぁ、その……うん、そうだな――」
「好きか嫌いか。ハッキリしてください」
だが、それを目の前の本人に言うのは些か恥ずかしい。
二人っきりなら兎も角、ここには年上のお姐さん方がいるわけで。
目を逸らしても必ず誰かしらの視線と重なり――面白そうに観察しているのが3人、不安そうなのが一人、瞬きもせずに返事を待つのが一人――逃げ道は防がれている。
「……き、だよ」
「聞こえません。もっとハッキリしてください」
「――好きだよ! 大きな胸が、ユキの胸が!!」
廊下にまで響く大きな声。
最早、半ば焼けっぱちであった。
「……そう、ですか」
頬を朱に染め、うつむくように京太郎から視線を逸らす由暉子。
彼女がこのように照れているのは中々にレアな光景だが、今の京太郎にその様子を堪能する余裕はなく――
「……の」
「……へ?」
――隣から、蚊の鳴くような声と、控え目に引かれる手。
「私の胸は、どうですか……!」
ひゅう、と口笛を吹いたのが揺杏。
おー、と面白そうな声をあげたのが爽。
あんぐり、と大きな口を開けて驚いたのが誓子。
「ま、負けません……!」
成香の小さな手に導かれるがままに。
京太郎の手のひらは、その控え目ながら確かな柔らかさをもった温もりに触れていた。
「え……あ……え?」
もっとも当の本人は、オーバーヒートしたままに、まともな返事などできる筈もない。
「……」
そして、その様子を見て面白くないと感じる少女が、ここに一人。
制服越しに伝わる感触は柔らかく、優しく、手のひらに伝わる鼓動は成香の心の揺れ動きを感じる。
どうにかしなければと茹で上がった頭で考えても、具体的な結論は何も浮かばず――
「須賀くん」
――無防備に空いた左手を、由暉子に掴まれて。
「あなたの好きな、胸ですよ」
そのまま立派な二つの膨らみの、谷間の中へと――
――世界で一番幸せな大岡裁き。
後に京太郎はそう振り返っているが、今現在の彼にそんな余裕はない。
ただでさえ成香のアプローチで限界寸前だったところに、由暉子の誘惑である。
「……」
「むむ……っ!」
目の前で二人の少女が静かに火花を散らす様にも気が付けない。
仮に気が付いたとしても――今この場で京太郎にできることは、火に油を注ぐ以外にはない。
「か、かくなる上は……!」
「は……!」
「早まるなーっ!!」
京太郎が決着を着けなければ――否。
例え決着を着けたとしても、一度着いた火は消えることなく、周り全てを巻き込んで燃え続ける。
例え京太郎の意思がどうあれ――火種となった彼に出来ることは、燃え尽きるまでその身を委ねることだけである。
二日遅れの由暉たんいぇい
最後のシーンが書きたかったんですが余計な描写でグダグダ長くなってしまうのは悪い癖……
次の更新時に今度こそプロ編再開します
成香の胸タッチの下りが
京ちゃんのなかの人繋がりで
あのシーンを思い出した( ̄▽ ̄)
成香の胸タッチの下りが
京ちゃんのなかの人繋がりで
あのシーンを思い出した( ̄▽ ̄)
連投すみません
強い雨風が窓を叩く音が目覚ましベルの代わりとなって、京太郎は目を覚ました。
「……あー」
カーテンの向こう側は薄暗く、陽の光は分厚い雲に遮られている。
壁にかかった時計の針は正午を示し、枕元の携帯に目を向ければ何件かの着信履歴が溜まっていた。
恐らくは先輩と同級生からのものだろうと、京太郎は身を起こし――
「……んぅ」
――隣で眠る、一糸纏わぬ姿の彼女に引き留められた。
彼女と京太郎は先輩と後輩の関係で、恋人同士だったわけではない。
昨夜は雨が強く、びしょ濡れの彼女が雨宿りさせてほしいと来たので、家に上げた。
風邪をひかないように風呂場に案内し、彼女が温まっている間にココアを淹れて、母親の部屋から着替えを幾つか拝借して。
『……あの』
そしたら。
京太郎のワイシャツだけを身に付けた彼女が、ベッドに腰掛けて、京太郎を待っていた。
『……わかってます。私だって、男の人に、こういうことする意味は』
震える瞳は、迷いなく京太郎を捉え。
『はしたないって、思うかもですけど……』
零れる吐息は、あなたがほしいと、訴えていた。
『それでも、好きなんです――あなたのことが』
先輩たちへの言い訳だとか、同級生への罪悪感だとか。
胸を過ったものは色々あるけれど、何よりも彼女が愛おしかった。
「そうだった……」
初めて彼女と一線を越えて――気持ち良さとか何だとかは、お互いに緊張し過ぎてよくわからなかった。
こうして行為を終えた後に残るのは――ただひたすらに、彼女を愛おしく思う気持ち。
「ふー……どうすっかなぁ」
だが、いつまでもそうしている訳にはいかない。
台風が近付いて来ているとのことだが、休講の連絡は来ていない。
つまるところ、彼女と京太郎は二人揃って授業をサボタージュしてしまったのである。
「……でもなぁ」
幸せそうに身を寄せて眠る彼女を起こすのも忍びない。
あまりの痛みに涙を滲ませて――それでも行為をやめないでほしいと懇願してきた彼女。
今の京太郎の中での彼女は、学業や部活動よりも優先すべき存在となっていた。
「……ふむ」
リボンを解いた彼女をこんなにまじまじと見詰めるのは初めてだ。
何気無く、彼女の髪を一房手に取ってみる。
指を通してみると滑らかで引っかかるところがなく、気持ちがいい。
クルクルとスパゲッティのように人差し指に巻き付けて匂いを嗅ぐと、とても良い匂いがした。
「……ん、……アレ……?」
そうこうしているうちに、彼女も目を覚ましたようだ。
「おはようございます」
「はい……おはようござ……え?」
寝ぼけ眼のままに京太郎の部屋を見渡す彼女に挨拶をすると、段々と意識が覚醒してきたらしい。
意思を宿す瞳がハッキリとしてきて、昨夜の記憶を思い返し――
「~~~っ!?」
――羞恥心のあまり、顔を真っ赤にして布団に潜り込んでしまった。
可愛い
ちょっとしたことなんだけと休校じゃなくて休講だと高校ではなく大学が舞台なのかな?
「あ、あの、先輩?」
「うぅ……っ!」
シーツを体に巻き付けて必死に隠すその姿は、昨夜アレだけ自信の恥ずかしいところを見せて来た彼女の姿とはまるで結び付かない。
だが、惚れた子にちょっかいを出したくなるのは思春期の男子の特徴であり、意地悪なところでもあり。
「てい」
「ひゃぁっ!?」
頭隠して尻隠さず。
剥き出しになっている真っ白な背中。
その魅力的な首筋から背骨のラインに添って人差し指を走らせると、実に良い声を上げてくれた。
「も、もう……!」
「ごめんなさい、つい」
プンプンとほっぺを丸く膨らませてはいるが、彼女だって本気で怒っているわけじゃない。
その一挙一動が本当に可愛く見えてしまうのは、コレが惚れた弱みということだろうか。
――ピンポーン。
「……あ」
そんな風に彼女にちょっかいをかけていると、響き渡るインターホン。
最初は宅配便かと思ったが、何度も短い間隔で押されることから、恐らくは友人の誰かであることは想像がついた。
「……すみません、ちょっと行って来ます」
せめて寝巻きだけでもと、京太郎は軽く身なりを整えて。
誰だろうと、ドアスコープを覗き込んだ。
最新刊読んでたら自分の中で彼女の株が急上昇したので事後シーンだけ書きたくなった
のでとりあえずここまで
プロ編ラスト始めます
「それで……話、とは」
ピーク時を過ぎているだけに、夜中のファミレスは人の入りが少ない。
グラスの中で氷がぶつかる音を立てながら、貴子は目の前の健夜を睨み付けた。
瞳の中の敵意を隠そうともしない視線は、教え子に見せられるものではない。
「……先日の、非礼を詫びようかと思いまして」
「非礼を……?」
……それは、以前に彼を連れて来た時のことか。
それとも――
「彼にも、あなたにも……失礼なことを、してしまいましたから」
「……いえ」
あの時のことを客観的に振り返るなら、礼を欠いていたのは明らかに貴子の方であり健夜に非はない。
そして、今の健夜はあの時の健夜とは「何か」が違っている。
具体的に言い表すことはできないが、気持ちの悪い違和感がある。
振り上げた拳の先を見失ったような、噛み合わない違和感。
「……ですが」
「……」
「……彼を諦める気は、ありませんから」
「――っ」
直後に込み上げてきた感情を、貴子はグラスの中の冷水と共に飲み干した。
爆発しかねないそれを辛うじて抑え込み、グラスを叩き付けるようにテーブルに置く。
静かな店内に、乱暴な音が響き渡った。
毎日プロ雀士やコーチ達、アナウンサーをとっかえひっかえして遊ぶ
京ちゃんとか見たい
「少し、静かにした方がいいですよ」
「あなたは……!」
――グラスの中の水を目の前の女にブチまけなかっただけ、まだ堪えた方だ。
「彼の前でも、そうなんですか?」
「……っ」
暗に、自分のような乱暴な女は京太郎には相応しく無いと。
そう言っているのだ、この健夜という女は。
「……ちっ」
舌打ち程度に留めたのは、場所と自分の立場を考えて。
ここで問題を起こせば彼に会えなくなる、煮え付いた頭の中でも溶け切らなかった常識で、貴子は踏み留めた。
>>381
闘牌で搾られフラフラの京ちゃん(一位で上がれば休めるよ)しか浮かばない。
京太郎の占有権(アナがごねたので一位の独占は無くなった)を卓で決めるアナやアラフォー、コーチ達か。
◆
セットしておいた携帯のアラームで、京太郎は目を覚ました。
一般的な男子高校生の起床時間、東京に来てからは朝帰りの連発でロクに守っていなかったが――
「――いよいよ、明日か」
インターハイ、男子の部個人戦、決勝戦。
ついに、ここまで来た。
短かったようで、とても長かったような気もする。
プロの人たちに鍛えてもらったから強くなれた。
部長や部員たちに祝って貰えたから、元気付けられた。
泣いても笑っても、明日が最後の日だ――
京太郎の行動安価 下3
1 部員たちと過ごす
2 大人勢の誰かと過ごす(キャラ名も)
3 その他
それは、最後の調整中。
咲や和、そして風越のキャプテンも交えての対局を終えた直後のことだった。
「須賀くん、あなたにお客さんだって」
「え? 客?」
「そ、なんと――」
「はいはーい! ひっさしぶりぃ!!」
久の言葉を遮って、文字通り飛び出すように登場した彼女。
忘れもしない、毎朝のようにテレビで見る女子アナウンサー。
彼女の目的は、手に持ったハンディカムを見れば明らかである。
盗撮、脅迫かもな。
「いよいよだねー! うん、お姉さんは信じてたよ! 京太郎くんは出来る子だって!」
「は、はは……」
相変わらずのテンションと推しの強さ。
「ま、休憩代わりってことでいいんじゃない?」との部長の許可も貰って恒子の取材を引き受けたわけだが、早くも後悔し始めていた。
「プロたちを着々と落としていってるみたいだしねー」
「落とすって、そんな……」
まるで自分がタラしのような言い方だ。
確かに、奇縁というか、色んなプロたちとの出会いはあったが。
「んー……すこやんとアヤシイ関係なのに?」
「怪しいってそんな……」
「師弟関係……って感じではないよねー」
「まぁ、確かに。そうですが……」
恒子が疑うような関係ではない……とは、思う。
いや確かに、そうはなりかけたけど――
「あの人とは……友達、ですよ」
「ふーん?」
「友達、友達かぁ……」
「……なんですか?」
「いや、さぁ。友達なら――」
こういうことも出来るよね、と恒子は――
こーこちゃん判定、直下
1~50 抱きついてきた
51~98 目を閉じて、唇を――
ゾロ目 ???
「……へ?」
包まれる柔らかさと温かさと甘い匂い。
「ふ、福与アナ!?」
「おー、あったかい。流石男の子」
座っている京太郎の頭を胸に抱くように――恒子は、京太郎を抱き締めた。
「な、な……」
はやりの時は事故だった。
健夜の時はテンションに身を任せた行動だった。
だが、これは――
「こーら、暴れないのー」
「いや、だって――」
「――だって?」
「友達のすこやんとは、こういうこと、できるんでしょ?」
「な?……え?」
京太郎を抱く腕は離さないまま。
恒子はバックの中から、ハンディカムを取り出した。
表面は傷だらけで、レンズには罅が入っている。
まるで固いものに叩き付けられたような、高いところから落としてしまっかのような傷跡だ。
「ねぇ……京太郎、くん?」
表面はボロボロだが、中身の機械は動くようだ。
電源の付いたハンディカムは、スライドショーのように、彼女が記録した写真や映像を映し――
「私たちもさぁ……友達に、なろ?」
ともだち(二十世紀少年的な意味)でしょう。
ぞろ目=決着ーーーゥゥゥゥゥ
だと、狙いは高コンマか。
◆
「ふふ……これからも、よろしくねー!」
バイバイと元気良く手を振って去って行く彼女を、京太郎は力無く見送った。
「休憩……にはならなかったみたいね、その様子だと」
「大丈夫ですか?」
その様子を見て、休憩していた久と和が駆け寄ってくる。
彼女たちにとっては短い邂逅だったが、福与恒子がどのような人物かは、十分に理解出来たのだろう。
「もう少し休む?」
「いえ、大丈夫です……むしろ、余計負けられないって、なりましたから」
『男子個人の部、決勝戦――』
負けられない。
みんなが見ている。みんなに、見られているのだから。
――須賀。
――須賀くん。
――京太郎くん。
――きょーちゃん。
――京太郎。
ここで、みんなの想いに答える為には、優勝以外の未来はあり得ない。
「俺は――」
浮かんでは消えていく、出会った人たちの顔。
最後に、京太郎が強く思い浮かべたのは――
高校生パート最後のキャラ安価、下3
「京太郎くん」
「……あ」
こうして、個人戦の前に彼女と会うのは三回目。
あの時とは違う――けれど、心に描いた健夜と同じ微笑みを浮かべて。
「頑張ってね」
友達らしく――健夜は京太郎の腰に手を回して。
「応援、してるから」
そう、激励をした。
京太郎選択肢、直下
1 健夜を、抱き締め返す
2 お礼を言って、先に進む
「……はい」
彼女の細く、小さな体を抱き締め返して。
「勝って、きますから」
京太郎は堂々と宣言し、決勝の舞台へと上がっていった。
多くの人に関わって、多くの人に助けてもらった。
そのことを胸に抱き続ける限り――彼の歩みは、止まらない。
【プロ編 高校生パート 完】
というわけで、プロ編の高校生パートはここで終了です
が、ちょっとヤンデレメインになり過ぎたかなーって思ったので、
いくつか他の高校の話を進めた後にこの京太郎が成長してプロになった話の未来編をやろうかなと
高校生で大会途中って縛りなければプロ達も本気出せますし
もしくは、また別の話を考えて高校生パートでプロ編やろうかと思ってます
最初にプロ編に出そうと思ってた憩ちゃん、もこはアナウンサー編辺りで多分出ます
清澄編はヒッサを全力で依怙贔屓したくなってしまうので自由行動安価メインな長野編という形でやるかもしれません
この次の安価パートは白糸台の全国編です
それでは、今夜はここまでで
お付き合いありがとうございました!
「……ユキ?」
ドアスコープの向こう側で待っていたのは、同級生の由暉子だった。
出来るだけ急いで準備をしたとはいえ、先輩との情事の後。
色々と手間取ってしまい、玄関先で待たせるには時間がかかり過ぎたのだが、それでも彼女は待っていた。
「……悪い、遅くなって」
さも今起きたばかりという風体を装って、由暉子を迎える。
もし学校をサボった理由がバレたりしたら――なんて想像は、できるだけ避けたかった。
>>373
普通に誤字でした、すみません
「……どうしたんですか? 先生や先輩が心配してましたよ」
顔を合わせる彼女の調子は、いつもと変わらない。
バレてはいないようだと、京太郎は内心で安堵の息を零しながら、表面上は何でもない風に装う。
「なんか……朝調子悪くてさ。寝てたら大分良くなったんだが」
「そうですか……。これ、今日貰ったプリントです。台風の影響で、午後は学校を閉めるようなので」
彼女が鞄から取り出した藁半紙の束を受け取る。
授業で使ったものに加えて、台風についての注意事項が記されたそれに、京太郎が軽く目を通していると――
「……ソレ、大丈夫ですか?」
「え?」
由暉子が目敏く見付けて指差した先。
はだけた寝間着の胸元から、血の滲んだ小さな傷跡が見えていた。
北海道に台風が上陸することは滅多にないけどね
「あっ……!」
思い当たる節は、昨夜の出来事。
情事の差中に、痛みに耐えながら、先輩が無意識に立てた爪。
だが、それを正直に伝えるわけにはいかない。
「いや……多分虫に食われたんじゃないかな。掻きむしっちまったんだよ」
「なるほど……」
由暉子の目線が胸元から逸れる。
どうやら誤魔化せたようだ。
「ところで、先輩も無断でお休みしたみたいなんですけど」
「え?」
「何か――知りませんか?」
知っているも何も。
この玄関の先の、向こう側に彼女はいるわけだが――
「いや……知らないな。桧森先輩なら何か知ってるんじゃないか?」
「そうですか……それでは、お大事に」
何食わぬ顔で嘘をつくと、由暉子は長い髪を風に靡かせながら帰って行った。
曲がり角の向こう側に消えた後ろ姿を見送って、京太郎はドアを閉めた。
「ふうぅー……」
胸の奥から深く息を吐き、ずるずるとドアに背中を預けてへたり込む。
さっきまで胸の中を占めていた幸せいっぱいな気持ちはどこへ行ったのやら、その頬には冷や汗が伝っていた。
「言い訳……ちゃんと、考えておかないとなぁ……」
バスの窓を叩く大粒の雨。
「……」
ドアの隙間から見えたローファー。
あのサイズは、明らかに京太郎の物ではない。
「……」
『先輩』としか言っていないのに、彼の口から出た『桧森先輩』という名前。
虫さされとは思えない、胸の傷。
「……嫌、だな」
由暉子の勘違いであればいい。
勘違いで、あってほしい。
けれども、彼女の見たものは、想像を嫌な方向へと運んで行く。
雨風の音が、この想像を掻き消してくれればいいのに。
その想いは祈りにも近く、由暉子は目を閉じて、バスの背凭れに体を預けた。
>>461
まぁ、異常気象的なことが起きたということで
こっそり小ネタ安価を下3くらいまで
「勘違いしてる子っているよね」
自分の手番が終わると同時に、未春はそう切り出した。
対して、同じ卓を囲む三人の反応は二つに別れる。
冷や汗を流す星夏と純代に――無言で敵意の視線を向ける華菜である。
「面倒見が良くて、小さい子も嫌いじゃないから妹さんのために遊んであげてるのに――自分に気があるって勘違いしちゃう子とかさ」
トン、と華菜が牌を切る音が響く。
未春の「勘違いしちゃう子」が誰を指すかは最早、言うまでもない。
巻き込まれた二人は早くこの対局が終わってほしいと願うばかりだが、部活動はまだ始まったばかりだ。
「しかも、それを得意気にさ……見てて、痛々しいかなーって」
話題の渦中の男子はこの場にはいない。
トラッシュトークを咎めるコーチも――その男子を別室に連れ込んで、特別指導の真っ只中だ。
「そうだなー」
星夏は、出来るだけ華菜の表情を見ないように、目の前の河に意識を向ける。
華菜の声音は平静を装おっているが、水面下の激情は、牌を掴む指先の震えを見れば明らかだ。
「自分に度胸が無いからって僻むしかない能無しなヤツとかなー」
手を抜いて、星夏か純代の片方の点数が尽きればこの対局からは解放される。
しかし、根が真面目な二人には、そのようなことは出来ない。
これで話題の中心となる彼にやるせない感情の矛先を向けることが出来ればまだ気が楽だったが――恨みをぶつけるには、彼は人が良過ぎた。
結果として、二人に出来ることは――ただ、この対局が終わるのを待つのみとなる。
「……ッ」
牌を切る音に混ざって聞こえた舌打ちは、気の所為だと思いたかった。
「……」
宿題として課されたネト麻のログを無言で読み込む貴子の横顔を、京太郎は緊張した面持ちで見詰める。
彼女の鬼具合は風越の誰もが知っていることであり、それは京太郎も例外ではない。
……だが。
「……言われたことは直してるな」
「良かった……」
「ホッとしてんじゃねえよ。読みが甘い――いや、甘えてる場所が多過ぎんだよ後半で。最後まで集中してやれ」
彼女は無意味に怒鳴ることはないし、褒めるべき箇所はきちんと褒める。
鬼コーチのイメージも強いが、どこが良くてどこが悪いのかを歯に布を着せずに指摘する貴子の指導は悪いものじゃない。
中学時代に体育会系の部活に所属していたこともあり、怒鳴られるのにも慣れていたから、彼女の指導方法も反発を抱くことなかった。
「――須賀ァッ!!」
メールの文末にたまに付けられる可愛らしい顔文字や、猫のマスコットキャラクターの待ち受けを見れば、落とされる雷も可愛いものだ。
貴子に慣れた――というより、慣らされた京太郎のメンタルは、確かに強くなっていた。
怒号が響き渡る練習が終わり、部活の終了時刻が間近になった頃。
「な、なぁ……須賀?」
鬼コーチの姿からは想像がつかない程、歯切れの悪い貴子の様子。
後ろに隠した手には何を握っているのか。
モジモジと居心地悪そうにするコーチの姿を見られるのは、恐らく風越には自分しかいないだろうと思う。
「そ、その……だな。今度――」
「コーチ? いらっしゃいますか?」
漸く貴子が意を決したかと思えば、控えめに扉をノックする音。
程なくして、静かに扉が開けられた。
「お疲れ様です。もう部活も終わりますから」
「あ、あぁ……」
入って来たのは、片目を閉じた風越高校の3年女子。
「京太郎も、お疲れ様」
にっこりと癒やされる微笑みを京太郎に向けるのは、風越麻雀部のキャプテンこと、福路美穂子である。
さらりとした金髪に、大きな胸。
優しい顔立ちは甘えたくなる家庭的な雰囲気を醸し出している。
「よく頑張ったのね」
「い、いやぁ……ハハ」
まるで子供をあやすかのように、優しい手の平に頭を撫でられる。
照れ臭くとも、その手を拒む気になれないのは美穂子の全てが京太郎の女性の好みに合致しているからだろう。
「……ッ、さっさと行くぞ」
舌打ちのような音が聞こえたが、京太郎は気のせいだと思うことにして、貴子と美穂子の後に付いて部屋を出て行った。
指導中は厳しい貴子でも、今この場で機嫌を悪くする理由はない筈だ。
「……ふふ」
結局、最後まで――貴子の手に握られていたものは、わからなかった。
「京太郎っ」
沈む夕日を背に受けながら、校門から出たところ。
聞き心地の良い柔らかい声音が、耳に入って来た。
「はぁ……良かった。間に合って」
急いで駆けて来たのだろうか、汗が頬を伝い息が乱れている。
その一挙一動に胸を高鳴らせ、無意識に鼻の下を伸ばしながら、京太郎は美穂子に声をかけた。
「どうしたんです?」
「ふぅ……一緒に、帰りましょう?」
それぐらいなら、メールをくれたら待っていたのに――と苦笑しかけたところで、目の前の彼女が大層な機械オンチであることを思い出す。
普段はしっかりしているだけに、こういったところでのギャップが可愛らしい。
実に美穂子は、京太郎の好みを突いていた。
「いいですよ。ゆっくり帰りましょうか」
彼女に歩幅を合わせるため、京太郎は歩を緩めた。
美穂子に一目惚れするような形で麻雀部に入部したのだから、このシチュエーションは願っても無いことだ。
美穂子の白い肌は夕日に映える。
例えその気がなくとも、つい目で追ってしまうだろう。
そして視線が重なると、彼女は優しげな微笑みを浮かべてくれる。
厳しい練習の後の美穂子の存在は、最大のご褒美だった。
「あ、今度の日曜日は暇かしら?」
赤信号に差し掛かり、二人して足を止める。
車の姿は見えず、無視しようと咎める者はいないが、できるだけこの時間を引き伸ばしたかった。
「はい、特に用はないっすけど」
「良かった……こんなものを、貰っちゃって」
歩みを止めた美穂子が鞄から取り出したのは、二枚の水族館にチケット。
少しクシャクシャになっていて、物を大事にする彼女らしくはないのだが、貰い物とわかれば納得である。
「ここには行ったことがなくて……良かったら、京太郎もどうかしら?」
「……え? それって、デ――」
「おーいっ!!」
やかましい声が聞こえたかと思えば、2人の間に割り込む小さな影。
「そろそろ混ぜるし!!」
「……華菜」
「みんなで帰った方が楽しいよ」
「吉留先輩」
京太郎と美穂子の間に割り込むように華菜が。
空いている京太郎の左隣を埋めるように、未春が後ろから追いついて来た。
「ん? キャップ、それは?」
「……これは」
「水族館? なら、みんなで行った方が楽しそうだね」
なし崩し的に、二人っきりのデートはお流れになりそうだ。
まるで台風の目にいるように、周りで事がグルグルと進んでいく。
これが、京太郎の風越高校での日常だった。
「……」
瞼の下で揺れ動く、美穂子の瞳には気付けなかった。
うーん、キャップを最初から混ぜるとパーフェクト過ぎて圧勝してしまう
王道的にいくなら、池田ルート的な流れが書きやすいんですが
とりあえず風越小ネタはここまでで
続くかどうかは未定。ノリ次第
次は永水小ネタか白糸台の全国編パートでいきますー
尚小ネタでは池田に負けた模様
ちょっとだけ白糸台やります
公式で女子校認定されたけどプロローグの時点で数年前に共学化したって書いたからセフセフ
『金髪の彼氏』
『私のためにマネージャーとしても頑張る彼』
とある麻雀雑誌のインタビュー記事に掲載された内容。
本文の隣にはファンサービス用の笑顔を浮かべている照の写真。
頬を染めてはにかんだ微笑みを見れば、誰もが彼女を恋する乙女と思うことだろう。
「ふざけた話だ」
「え……」
そのページを躊躇なく握り締め、破り捨てる菫の手は怒りで震えている。
菫に対しては頼れる部長という印象を持っていた京太郎は、目の前の彼女の態度に戸惑いを隠しきれなかった。
「本当に、すまない。私が止めるべきだったんだ」
雑誌の記事の『金髪の彼氏』が誰をさすのかは京太郎にも理解できている。
勿論、それが事実とは異なることだということも。
理解できないのは、菫がここまでの怒りを露わにする理由だ。
「君には、本当に苦労をかけてしまった」
「い、いや……」
確かに、一時期は他の部員からの妬みでイジメ紛いの噂を流されたりもしたが、今では菫を初めとした先輩たちの手助けによって収まっている。
先輩たちに余計な気遣いをさせてしまったと、自ら深みに嵌まりかけることもあったが――
『きょーたろー!!』
――それでも、救ってくれる光があった。
今回の照の行動も、恐らくは彼女なりに京太郎を守ろうとした結果なのだろう。
インタビューの本文――菫によって乱雑に破り捨てられた切れ端からは、『金髪の彼氏』が如何に熱心に部活に取り組んでいるのかが書かれているのが読み取れる。
照れ臭くとも、悪い気はしない。
「もしかしたら、この記事のせいで君の元にも記者が来るかもしれない。そしたら、すぐにこのインタビューを否定するんだ――いいな?」
「え、でも」
「ああ、そうだ。君の努力を否定しているわけじゃない。君がどれだけ頑張っているかは皆知っているさ。麻雀部員ならな」
――それがわからない奴は、ここにいる資格はない。
そう付け足してから、菫は雑誌をゴミ箱に投げ捨てる。
「照の奴は恥をかくだろうが、自業自得だ。わかったな?」
京太郎選択肢、直下
1 「そこまで、怒らなくても……」
2 「……わかりました」
「そこまで、怒らなくても……」
京太郎の口から出た言葉は、どちらかといえば照を庇うもの。
極端な行動であるとはいえ、自分を守ろうとしてのこと。
それを悪く言われるのは良い気はしないし、菫も少し言い過ぎに感じる。
そう思っての、言葉だが――
「――よりも、か」
「……え?」
顔を俯かせ、髪が陰となってその表情を隠す。
京太郎には菫の返事は聞き取れなかったが、その言葉の端の震えは彼女の内面が零れ出ているかのようだった。
「……わかって、くれ。勝手なことは、許しては駄目なんだよ」
顔を上げて京太郎と目を見詰める菫の瞳には、既視感があった。
怒りを堪え、無知な子どもに言い聞かせるような声音。
「なぁ……そうだろう?」
それは、王者白糸台の部長としての台詞か。
それとも、別の何かを含んでいるのか。
何れにせよ、この場の京太郎には菫の内面を計り知ることはできなかった。
ということで全国パート導入部了
次から全国大会まで時間飛びます
ついでにキャラ選択安価下3でー
すいません安価出したばかりですが急な頭痛が辛いのでここで切ります
次回は照から始めます
お付き合いありがとうございました
熱いテル人気ww そんでもってゾロ目とは。
なにが起こるんでしょうねぇ(期待)
菫さんがぞっこんな白糸台編と、ちゃんとした指導者(アレク監督)がいる臨海編の京ちゃん
の麻雀の腕前は先生編、プロ編についで3番目くらいになりそうだよね。最終的に。
サクっと逝くのは京太郎とは限らない模様
>>584
菫もプロの指導者ではないし臨海編の京太郎は現状そこまで麻雀への熱意が無いので雀力順に京太郎を並べると
先生編>>>(なんか凄い壁)>>>プロ編>>>(すこ病んパワーの壁)>>>松実>>>白糸台≧臨海・宮守≧永水
となります。臨海・宮守・永水の京太郎は原作と大差ないです
臨海京太郎は自由安価で進める予定なので未知数
宮守京太郎は胃が痛くてわりと練習どころではなかったり
永水京太郎はまだ部活未定
インターハイ会場。全国の強者が集まる場所。
今はチーム虎姫のマネージャーのような役割で来ているが、次こそは自分の手で。
助けてくれた先輩の為にも、支えてくれている同級生の為にも、そして自分の為にも。
そう決意する京太郎の手に力が入り、拳が強く――
「京ちゃん、お菓子買いに行こう?」
――握られる前に、照にそっと手を取られた。
指を一つずつ絡ませる、俗に言う恋人繋ぎ。
「……照さん」
「なに?」
「これは……」
「何も、おかしくないよ」
「けど、誰かに見られたら――」
「こうしておかないと。京ちゃんを守れないから」
守る。
その言葉が京太郎の思っている通りの意味なら、やはり前回の照のインタビューは京太郎の為を思ってのことなのだろう。
「売店、あっちだって」
恋人のように京太郎の手を引いて歩こうとする照に、京太郎は――
京太郎選択肢 下3
1.強く否定する。「すみません……困ります、こういうの」
2.控えめに否定する。「彼氏ってのは嬉しいけど……俺と照さんじゃ、釣り合いが取れないですよ」
3.手を握り返す。「そっすね。行きますか」
4.その他。自由台詞。何かあれば
すいません、用事で離脱してました
再開します
「……京ちゃん?」
自分が手を引いているにも関わらず、京太郎は一歩も動かない。
それを不思議に思ったのか、照も足を止めて京太郎を見詰めた。
「彼氏ってのは嬉しいけど……」
「?」
「俺と照さんじゃ、釣り合いが取れないですよ」
「釣り合い?」
「はい……急に彼氏扱いされても、ちょっと」
照の厚意は素直に嬉しく感じるし、自分を守ろうとしてくれたことには感謝が絶えない。
しかし、片やインターハイチャンピオンで、片や個人戦敗退の部員。
その事実は、京太郎の心の内に強く引っかかっている
「……」
照は、軽く数秒だけ目を閉じてから口を開き――
照の反応判定、直下
1~33 そっか。ゴメンね
33~66 ……じゃあ、誰も釣り合わないね
67~99 ……菫でしょ?
ゾロ目 ???
「……菫でしょ?」
「え」
「菫に、何て言われたの?」
照の瞳が、京太郎の瞳を見透かすように。
赤みがかった瞳は、まるで鏡のように京太郎の狼狽える顔を映していた。
「……いえ、これは」
「嘘」
指から伝わる震えは、視線を逸らすこを許さない。
「やっぱり、そうなんだね」
「……」
「大丈夫だから。菫は、部の体裁を保ちたいだけだから……京ちゃんのことなんて、考えてない」
「だからね」
「あんなヤツの言うことなんか、信じちゃダメ」
「京ちゃんは――私だけ、見てればいいから」
「京ちゃんに変なこと吹き込まないで。目障りだから」
「お前が言うのか。京太郎に無断であんなことをした、お前が」
「……京ちゃんは、私を拒まなかった」
「……ははっ」
「なに」
「……優しいから、だろう?」
「……」
「彼は優しい。だから、お前の面目を潰すような真似は出来なかったんだろうさ。お前はそこに漬け込んだだけだ」
「違う。私は――」
「本当に」
「本当に、卑怯なヤツだよ。お前は」
――京ちゃんのことなんて、考えてない
照の言葉を信じるなら、菫は部の体裁を保ちたいだけ。
虐めを止めさせたのも、京太郎の為ではなく麻雀部の為。
「いや……」
本当にそうだったら、あそこまで親身になってはくれないだろう。
それに――あそこまで、人に怒りを向けることは出来ない筈だ。
「だったら……やっぱり」
照と菫の間にある、確執。
何かが、不協和音を呼んでいるのだ。
「俺は――」
京太郎選択肢 下3
1.誰かに相談する
2.俺が首を突っ込むべきじゃないし……買出しに行こう
3.思い付かない。とりあえずそこいらを歩き回ってみる
4.その他
こういう時に、一人で悩んでいても答えは出ないだろう。
ならば、少なくとも自分よりは彼女たちに詳しい人に相談した方がいい。
そう思い立った瞬間、京太郎の足は自然と彼女の泊まる部屋に向かっていた。
「確か、この部屋だよな」
ノックしても反応がない。
仕方ないので携帯に電話をかけると、数回のコールの後にドアが開いた。
「んー……なにー……?」
寝ぼけ眼で出て来たのはチーム虎姫の大将。
どうやら昼寝をしていたらしい。相変わらずのマイペースさに、京太郎は小さく苦笑した。
「悪い。休憩してたか」
「んーん、いーよ。どうせヒマだったし」
入ってー、とドアを開いて京太郎を中へと招く淡。
学年が同じで、チーム虎姫の中で一番話しやすい相手となれば、彼女しかいない。
寝起きの淡に相談するのは気が引けたが、ドンと来いという彼女を信頼して、京太郎は打ち明けた。
照と菫の確執。それは、大会中で気が立っていることだけが原因とは思えない。
自分よりもチーム虎姫の面子との交流が多い淡なら何かわかるかもしれない。
「んー……んーっとねぇ」
「何か知ってる?」
「んー……」
じぃっと、目を細める淡。
注意深く見詰める先にあるものは――
「ん?」
「いや、後ろじゃなくてさー」
「え……俺?」
淡判定、直下
1~33 あー……ゴメン、わっかんないや
33~66 やっぱり、イケメンだなーって
67~99 台風の目……って言うんだっけ?
ゾロ目 ???
「ね、きょーたろー」
「なんだ?」
「きょーたろーってさ、自覚ある?」
「……何の?」
この会話の流れで、この言葉。
やはり、照と菫の不仲の原因は、自分にあるということだろうか。
薄々勘付いていたことだが、それを認めたくは――
「きょーたろーってさ、結構モテるんだよ?」
「え?」
勢い良く身を乗り出して、迫り来る淡の顔。
突然のことに固まる京太郎に対し、淡は止まることなく――
「えへへ、貰っちゃった。テルや菫先輩よりも先に、貰っちゃったぁ」
「えへへ、貰っちゃった。テルや菫先輩よりも先に、貰っちゃったぁ」
「あ、あわ……い?」
どうして、何故。
聞きたいことは、ただ一つだけ。
だというのに、口を開いても出て来る音は、言葉にもならない意味のないものばかりで。
「私ね、好きなんだ。きょーたろーのこと。大好き」
「……ウソ、だろ?」
彼女が京太郎にじゃれついてくるのは、照にしているものと同じで。
そこに、恋愛の念は、なかった筈で。
「テルや菫先輩も……ううん、たかみ先輩や亦野先輩だって」
「……」
「好きなんだよ、きょーたろーのこと」
「絶対ヤダ。取られたくない」
「……みーんなきっと、そうなんだよねー」
嘘だと言いたかった。
信じられなかった。
けれども、目の前で笑う淡も、唇の湿った感覚も、現実で。
「ねぇ、きょーたろー」
「きょーたろーは、私のこと。好き?」
京太郎選択肢 下3
1.「……わからない」
2.「……ごめん」
3.「……信じられるかよ」
4.その他
すいません、半端なとこですがこんな時間にまさかの呼び出しを食らったのでここで区切ります
わりと重要な選択肢です
あと、安価に参加して協力していただけるのは嬉しいんですが、読書同士の修羅場はNGでお願いします
あくまで修羅場「ラヴァーズ」なスレなので
それでは、お付き合いありがとうございました
再開します
「……ごめん」
淡の告白に対する京太郎の返事は、否定でも受け入れるでもない言葉。
「……お前のことが、嫌いなわけじゃない」
「……」
震えるように、喉の奥から一つ一つ言葉を絞り出す。
「だけど……今は、答えられないんだ」
照と菫の確執が本当に自分を巡るものだとしたら。
インターハイが終わるまでは、京太郎の心に誰かを受け入れるような余裕はない。
「……待ってくれ。せめて、インターハイが終わるまで」
「……ふーん?」
「じゃあさ、いっこ教えてよ」
「テルや菫先輩と、私なら」
「誰が、一番好き?」
京太郎選択肢 直下
1.淡
2.照
3.菫
4.その他
「……それ、は」
部活中でも、つい目で追ってしまう人。
親切に指導してくれて、虐めからも庇ってくれた人。
淡の言う「好き」が友情としてのものでないなら、思い当たる人は――
「……」
「……そっか。まぁ、いいや」
ぴょん、と跳ねるように淡は椅子から立ち上がった。
「……淡?」
「そろそろ、夕食でしょー? あ、鍵よろしくー」
座ったままの京太郎を置いて、淡はさっさと部屋から出て行ってしまった。
長い金髪に隠れて、すれ違い様の表情は見えなかった。
こんな展開だけど一番近いのが淡ルートだったりするアレ
ゾロ目にしては控え目なイベントと思う人もいるかもですが、ここから先の選択肢次第では誰か死ぬ可能性も
あまり捻くれた選択肢は出せないので基本大丈夫かとは思いますが
キャラ安価、下3で
翌日に逃げるように買い出しに出掛けたのは、少しでも一人になれる時間が欲しかったからかもしれない。
不協和音を生み出しているのが自分ならば、自分さえいなければ。
京太郎の心は、再び自責の念に囚われつつあった。
「……あっ」
そうして、注意力が欠けていたせいか。
廊下の曲がり角で、他校の生徒とぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさいっ!!」
「いえ、こっちこそ――って」
「……アレ?」
自分より小さな背丈の、他校の少女。
その髪型は、照によく似ていて――
「もしかして……」
「……咲?」
咲さんとの関係は 直下判定
1~33 友達
34~66 かなり仲の良い友達
67~99 友達以上恋人未満、だった
ゾロ目 元カノ
二人並んで道を歩くのはいつ振りになるだろうか。
懐かしく感じる親友との再会に、沈みかけていた京太郎の心は少しだけ綻んだ。
「へぇ、大将……え、お前が?」
「うん。頑張るよ」
「ほぉー……?」
「……なに?」
「いや、お前にも得意なことってあったんだなぁと」
「もう」
軽口でのやり取りも久しぶりになる。
京太郎は長野での中学時代を思い出した。
鈍臭いイメージしかなかった咲が清澄麻雀部の大将とは、驚きしかない。
「京ちゃんも、麻雀部なんだよね」
「あぁ……」
「それで、白糸台ってことは……」
その続きは、言わずとも分かる。
白糸台、麻雀部、宮永となれば――
「勿論、照さんも来てるよ」
「……そっか」
意味ありげに頭上を見上げる咲が何を思っているのかは、京太郎にはわからない。
二人の間に何があったのかは知らないし、恐らく聞いても答えてくれることはないだろう。
照がそうだったように。
「あ、そうだ」
「ん?」
「お姉ちゃんと言えば、この前にインタビューを見たんだけど――」
「あー……アレは」
京太郎選択肢 下3
1.全て打ち明ける
2.実は、付き合ってるんだよ俺たち
3.その他
「話しにくいことなら……」
「……いや、言うよ」
京太郎は、あのインタビュー記事の背景にあるものを、全て打ち明けた。
麻雀部に入ってからのこと。
チーム虎姫のみんなと仲良くなったこと。
それが原因となって、虐めのような噂を流されたこと。
そして――
「……そう、なんだ」
「……」
咲も、何と言えばよいのかわからない。
当事者ではなく、彼女自身にそういった経験がない以上は、下手なことは言えない。
「……でも、何か、手伝えることがあったら」
「おう。ありがとな」
言葉以外で、伝えられるものがあったなら。
きっと、京太郎もここまでは悩まなかったのだろう。
ここで咲に会ったことで照の爆弾解除フラグが立った……かも
でも団体戦だと先鋒と大将で離れてるんだよなぁ
キャラ安価下3でー
圧倒的。
他に言い表せない照の快進撃により、白糸台は危うげなくインターハイにおける初戦を突破した。
「お疲れ様です」
「ん」
労いの言葉をかけながら頭を下げると、照は小さく頷き、京太郎の手をとった。
そのまま足を向ける先は、駄菓子を販売している会場内の売店である。
「……照さん」
「ん?」
照と二人きり。
他の部員が見ていない今だからこそ、確かめたいことがあった。
「照さんは……俺の、どこが好きなんですか?」
京太郎の問いに、照はゆっくりと小さな口を開いて――
てるてる判定 直下
1~33 優しいところ
34~66 ぜんぶ
67~99 理由が、いるの?
「ぜんぶ」
「ぜ、全……?」
淡の言葉が正しければ、気になることは、照が何故自分なんかに好意を向けてくれているのか、ということ。
――どうして須賀なんかが宮永先輩の側にいるんだよ。
インターハイに来る前に、散々に聞いた陰口。
単なる妬みの感情が形になったに過ぎないとはいえ、その言葉自体には京太郎の心に引っかかるものがあったのだが。
「優しいところ。格好いいところ。可愛いところ。あったかいところ。全部」
「で、でも……」
「だから、我慢できない」
「え?」
繋いだ手から、小さな震えが伝わった。
「私の大好きな京ちゃんが、ほかの女に穢されていくのが」
「――っ!?」
後ろから、自分の中身を無遠慮に覗き込まれるような感覚。
背筋が冷たく凍る感覚に思わず振り向いても、背後にはただ廊下が続くだけ。
「だから、京ちゃんは私が守ってあげる」
京太郎選択肢 下3
1.「……でも、俺は照さんとみんなにも仲良くしてほしいです」
2.「穢されるなんて、そんなこと言わないで下さいよ」
3.「……」 無言で、照の手を握り返す。
4.その他
え、これ正解とかあるん?
「……」
京太郎は、無言で照の手を握り返した。
「京ちゃん」
喜びながら名前を呼ぶ照の声には、安堵の色が混ざっている。
自分を拒まなかった。受け入れてくれた。
「いこ」
他の何を捨ててでも、京太郎さえいれば良い。
言葉だけではなく、行動によって受け入れられたと喜ぶ照の瞳には、京太郎しか映らない。
足早に売店へ向かう照に手を引かれて、京太郎はただ無言で追従していった。
>>749
何を正解とするかは人によりますが後の展開が大きく変わったりする選択肢はいくつか
今夜はここで区切ります
白糸台が終わったら臨海か有珠山か大阪かやってみたい所存
それでは、お付き合いありがとうございました!
「なるかがいて、揺杏がいて、爽がいて、私がいて、京太郎がいて――それで、良かったのよ」
窓の外の景色に目を向けて、誓子は淡々とした口調で切り出した。
背を向けられた由暉子には、誓子の顔は窺えない。
「たとえ誰かと京太郎がくっついても、みんな笑ってられた。許せた」
「あなたの、せいよ」
「あなたが、京太郎を誑かしたから――みんな、おかしくなった」
「返してよ」
「みんなを」
「京太郎を」
「私に、返してよ」
窓から見える曇り空は、今にも雨が降り出しそうに見えた。
――どうして、こんなことになってしまったんだろう。
「ふふ……旦那さまぁ♥」
「今夜も……精一杯、ご奉仕しますね」
一糸纏わぬ少女たちを前に自問しても、答えは出ない。
彼女たちの望むままに押し倒され、彼女たちの望むままに、その肢体を貪る。
「忘れさせて、あげるから……」
そっと、脇腹の傷跡に指を添えられて。
その痕を埋めるように、少女たちの身体が重なる。
「ああ……」
今日もまた、少女たちを拒めないままに――夜が、深くなっていく。
痴情の縺れ。
京太郎が生まれ育った長野から離れて暮らすことになった理由を説明するのなら、その一言に尽きる。
――起きてよ、京ちゃん……起きてよぅ…
最後に聞いた、幼馴染の言葉。
彼女を庇って、脇腹に尖った何かが突き刺さって。
熱いだとか痛いだとか寒いだとか、頭の中がごちゃ混ぜになって――目が覚めた時には、病院の一室にいた。
――俺の、せいか。
長い眠りから覚めて、最初に発した言葉。
運が悪ければ間違いなく死んでいた。
――俺が、あいつらを……
仲が良かった彼女たちをそこまで追い詰めてしまったのは――間違いなく、自分のせいだ。
自分を刺した少女への恨みでもなく、その後に彼女たちがどうなったかでもなく、自分をひたすらに責める気持ち。
目が覚めたばかりの京太郎の胸の中を、ただひたすらに自責の念が埋め尽くした。
彼女たちに謝ることも、再び会うことも、京太郎は出来なかった。
両親が許さなかった。
息子を傷付けた彼女たちを、父と母は糾弾した。
「……」
そして、退院の日。
迎えに来た父親の運転する車が向かう先は、住み慣れた我が家ではなく――
「京太郎」
耳をねぶるのは、春の舌。
「ここには、京太郎を傷つける人はいない」
刷り込ませるように、何度も聞かされた言葉。
「だから――全部、忘れよ?」
そして今夜も、彼女たちを抱く。
父の実家の鹿児島。
再会した少女と、出会った少女たち。
向けられる好意に気付いても、応えることは出来なかった。
関われば、彼女たちの絆を壊してしまう。
――京太郎くんは、何もしなくてもいいの。
だが。
――後は、私たちに全てを委ねて……ね?
最初から、欠けたものがあって。
ぴたりとそこに、はめられたとしたら。
求める少女たちを、京太郎は拒めない。
京太郎の全てに応え、受け入れる少女たちを。
もし、自分がいなくなったら。
きっと、清澄にいた頃よりも取り返しのつかないことになる。
「あなたさえいれば……他には、何も……」
彼女たちの愛を受けて、囲われて。
何もかも忘れてしまえば、楽になれる。
「……っ」
けれども。
痛む傷跡は――きっと死ぬまで、あの泣き顔を忘れさせてはくれないだろう。
そろそろ白糸台再開したい所存
地雷地雷地雷不発弾臨界点みたいな状況だけど多分どうにかなるでしょい
「照……それは、なんだ?」
眉を顰める菫は、最早不快感を隠そうともしない。
「……」
「……照」
朝食の席に、想い人と恋敵が手を繋いでやって来たのだから、彼女の内心は穏やかではいられない。
直接声に出さずとも、尭深や誠子も考えていることは同じだ。
「……」
照は、答えない。
今の彼女には見せびらかすだとか、牽制だとかの打算はない。
隣に京太郎がいること。
それは、雨が振れば傘をさすように当たり前のことなのだから。
「……」
京太郎も、何も言えない。
あの時に、照を受け入れることを選んだから。
危ういと感じた照を、繋ぎとめてしまったから。
だから、今は照の手を握り返すことしかできなかった。
明日が、準決勝の日。
「……」
心配せずとも、白糸台は、チーム虎姫は準決勝を制して決勝戦へ歩を進めるだろうが――
京太郎選択肢 下3
1.買い出しに行く
2.誰かが部屋に訪ねてきた
3.その他
「……買い出しに、行こう」
今はマネージャーとして、チーム虎姫に同行して来ているのだから。
麻雀で力になれなくても、出来ることをしなければならない。
「……」
それぐらいしか、自分には出来ないのだから。
キャラ安価下3 他校もアリ
なお直下のコンマを下2のコンマが上回った場合……
買い出しから戻ってきた京太郎を出迎えたのは、部長の菫だった。
「お疲れ様」
「いえ、これが俺の仕事ですから」
労いの言葉に片手を上げて応じ、部屋に戻ろうと踵を返す。
だが、京太郎が振り向いた瞬間、その肩に白く滑らかな菫の手が置かれる。
「……少し、話がある。私の部屋に来てくれ」
「え、えっと……」
引き留めた手から伝わる力は強く、菫の瞳は京太郎を真っ直ぐに射抜いている。
彼女がここまで強く出るということは――今朝のことについての、言及だろうか。
「……わかり、ました」
だとするならば、京太郎も頷くしかない。
いつまでも、知らん振りではいられないのだから。
かちゃり、と。
背後で菫が鍵をかけて、ドアチェーンをかける音まで聞こえる。
「……」
当然ながら、部屋には菫と京太郎の二人きり。
そこまでして、人に聞かれたくない話をするのだろうと思えば、京太郎の決意も固まる。
「……なぁ、京太郎」
菫が話を切り出すのを待っていると、唐突に衣擦れの音が聞こえて。
「……え?」
振り向くと、胸のリボンを解きながら、菫が一歩ずつ、ゆっくりと歩み寄って来た。
「……私は、君に応えたい」
一歩、菫が踏み出す度に、彼女の足元に制服が脱ぎ捨てられていく。
「京太郎」
京太郎の目の前。
菫の髪の匂いがわかるほどの近い距離。
彼女が身に纏うものは、最早黒い下着しかない。
「私の全てを、君のものにしてほしい」
京太郎は――
京太郎選択肢 下3
1.菫に応える
2.菫を拒む
3.その他
圧倒的2
PADがいかんかったか
憧れの人が、手を伸ばせば届く距離にいる。
期待に揺れる瞳で、熱く零れる吐息で、京太郎を待ち望む。
「……服を、来てください」
「ぁ……」
それでも、京太郎は。
菫を拒むことを、選んだ。
「……」
するりと、力が抜けて。
糸の切れた人形のように、菫はその場に崩れ落ちるように、座り込んだ。
「おかしいですよ……こんなの」
「わ、私……は……」
選択肢 下3
1.自由安価。呆然とする彼女に何か台詞を
2.何も言わずに去る
「とても、魅力的でした」
例えば、もう少し早く、菫に迫られていたら。
京太郎は、躊躇うことなく、菫の肢体に欲求をぶつけていただろう。
「……でも、ごめんなさい」
だけど。
今の京太郎には、それ以上に、大事なものがあった。
「……照、なんだな」
京太郎は、答えない。
ただ、静かに鍵を開けて、菫の部屋を後にした。
判定直下
1~33 おかえり
33~66 ……誰と、あっていたの?
67~99 肩……髪の毛
「おかえり」
部屋に戻ってきた京太郎を、ソファに座った照がポッキーを齧りながら出迎えた。
何故ここに――だとか、鍵はどうやって――だとか。
問いかけても無駄に終わることは京太郎にもわかっているので、軽く溜息を吐くだけに留めて、照の隣に座った。
「……」
「……照、さん?」
照がじぃっと見詰める一点。
京太郎が照の視線の先を追う前に、彼女の白く滑らかな指が京太郎の肩を撫でた。
「……照、さん?」
照が指先で摘まむもの。
細く、見えにくかったそれは――
「肩……髪の毛」
「あ……」
長い黒髪。
部内で、そして今この場で思い当たるその持ち主は、一人しかいない。
「――」
背筋に走ったのは、あの時と同じ、覗き見られる感覚。
何もかもが無遠慮に暴かれていく感覚。
全身を這いずる視線に、京太郎は身を震わせた。
「……大丈夫、だから」
自身の肩を抱いて身を縮ませる京太郎の頬を、照が優しく撫でる。
凍えるような感覚の中で、照の指が触れた頬だけが、陽の光のような暖かさを覚えた。
「京ちゃんを穢すやつは、みんな――」
次の判定は重要な判定です
>>858
このスレの菫さんはポンコツ小ネタ以外はおもち持ちである
――夜が明けて、準決勝の日が訪れた。
阿知賀女子、千里山、新道寺。
名だたる強豪校の先鋒を相手にする照の様子は普段と変わらない。
「……京ちゃん」
だが。
照の瞳は、何かを期待するように京太郎を見上げている。
京太郎選択肢 下3
1.頭を撫でる
2.手を握る
3.口づけをする
4.その他
「……」
何かが欲しい、けれど何も言わない。
無言でじっと見つめてくる照を、京太郎はそっと胸に抱き寄せた。
「……!」
そのまま照の前髪をかき分けて、口づけを落とす。
腕の中で、小さな体が大きく震えたのを感じた。
「……京、ちゃん」
「今のが、俺の……精一杯、です」
頬を朱に染め、瞳を潤ませる照の顔は部活でも雑誌でも見たことがない。
照の想いに応えることが出来たかはわからないが――
「……うん。いって、くるね」
――踵を返して準決勝の舞台へ向かうその背中に、不安は見られなかった。
てるてる判定下3
1~70 阿知賀先鋒トビ終了
71~00 結果的に原作通りの順位
――結果として、白糸台は準決勝を通過した。
だが、その試合の内容は快勝とは言い難い。
先鋒の照が大きく相手校を削ったが――
「……京ちゃん」
「自分のせいだって、思ってる?」
「自分がいなければ、私たちはもっと良い結果が残せたって」
「そう、思ってる?」
「……」
「ううん、違うよ」
「悪いのは、京ちゃんを穢すことばかり考えて」
「練習が疎かになっていた、菫たち」
「……でも」
「安心して」
「京ちゃんを不安定にさせるのは」
「私が」
「お姉ちゃんが」
「みーんな、やっつけてあげるから」
「だから――ね?」
2位通過という結果は、当然ながら満足のいくものではない。
敗北に等しい事実を胸に抱えながらも――早くも全員が、次の試合に向けて再起している。
「……」
ならば、自分も。
いつまでも、悩んでいるわけにはいかない。
自分に出来ることを、最後までやり通すべきなのだろう。
白糸台、最後のキャラ選択安価 下3
コンマ結果によっては死人が出るので選択は慎重に
「照さんは、何か欲しいものありますか?」
そう聞いたのは、マネージャーの役目として。
少しでも役に立ちたいという京太郎の願いに、照は――
てるてる判定下3
1~30 そこに……座って?
31~60 また、精一杯が欲しい……かな
61~00 赤ちゃん
「欲しいもの……」
顎に手を当てて、考え込む素振りを見せる照の姿は意外と珍しい。
最近は京太郎が側にいることで、常に満ち足りているために、改めて欲しいものと言われると中々に思い浮かばない。
その小さな口からどのような要求が飛び出して来ても、京太郎は全力で応じるつもりで身構える。
お菓子が欲しいと言われれば行列で評判の店に走りに行くし、データが欲しいと言われれば――
「……あ」
「決まりました?」
「赤ちゃん」
「………………え?」
耳がおかしくなってしまったのだろうか。
おかしいなと、京太郎はこめかみの辺りに親指を当てて――
「赤ちゃんが、欲しい。京ちゃんと、私の、赤ちゃん」
しゅるりと、照が胸元のリボンを解く。
京太郎が呆然としている間に、照は制服を脱いで、下着すら躊躇わず脱ぎ捨てた。
「京ちゃん」
一糸纏わぬ照が、手を伸ばす。
「――きて?」
判定、下3
1~85 ノーマルエンド
86~90 ???
91~95 ???
96~00 ???
照の伸ばした手をとって、指を一本ずつ絡めさせる。
雛鳥のように待つ照に深く口付けをして――京太郎は、照をベッドに押し倒した。
「あは……っ」
一人用のベッドが軋む音。
二つの影が一つになるのに――時間は、かからなかった。
――団体戦の結果は、白糸台の優勝。
阿知賀の先鋒が照に飛ばされたことで、呆気なく終わりを迎えた。
個人戦の優勝者も照。
蹂躙の他に言いようがない活躍を見せて、圧倒的な力量でインターハイチャンピオンの座を守った。
大方の予想通り。
白糸台高校は、インターハイ3連覇を成し遂げたのである。
インターハイが終わって少し経ってから、菫は失踪した。
彼女の靴や鞄は川の近くで見つかったが――彼女は、どこにも見つからなかった。
京太郎は、照の卒業と共に部活を辞めた。
一番の理由は、彼女がそれを望んだから。
そして――
『バイバイ。きょーたろー』
――自分が傷付けてしまった女の子が、いなくなってしまったから。
もう、何もかもが昔の話だ。
あの時に、照だけではなく、皆と一緒にいることを諦めなければ。
まだ、未来の形は変わっていたのかもしれないけれど。
「おとーさん。おかーさん、まだ?」
「もうすぐ帰ってくると思う。そしたら晩御飯にしような」
「うんっ」
今は、ここに守るものがある。
専業主夫として、家族を支える生活も悪くはない。
「ただいま」
「おかえりなさい」
――遠くで、何かが落ちた音がした。
【白糸台 照END うたかた】
というわけで白糸台は一旦終了です
強くてニューゲームorコンティニューも考えてますが大分先になる予感
次に進める話は臨海にしようかなと思ってます
前にアンケ取った時に白糸台の次に多かったので
このスレの残り的に臨海始めるのは次スレからで、このスレは小ネタでうめるかも
取り敢えず次は清澄三人娘小ネタです
三人娘って咲和タコスでいいんだよね?
他にも何かネタがあれば出来るだけ拾いたいと思ってます
それでは、今夜はここで
長らくお付き合いありがとうございました!
「ちーっす……あれ、みんなは?」
「あ…ま、まだ来てないじぇ」
意気揚々と部室のドアを開いたはいいが、中にいたのは優希だけ。
部活が始まる前に優希と二人きりという状況は、中々に珍しい。
「そっか、じゃあ俺みんなが来る前に買い出しに――ん?」
踵を返してコンビニにでもひとっ走りしてこようかと思えば、控えめに引かれる袖。
振り向くと、優希が指先で学ランの袖を掴んでいた。
「な、なんだよ?」
「……」
目を合わせると、丸い頬を林檎色に染めて俯いてしまう。
普段の優希にしては珍しい煮え切らない態度だが――ここ最近の彼女は、二人きりになるといつもこうだ。
全国大会が終わって、漸く落ち着いて練習ができると思えば同級生のこの態度。
「んん……?」
何というか、非常に落ち着かない。
そして、様子がおかしいのは優希だけではなく――
「いい加減にしたらどうですか? 須賀くんが困っていますよ」
「の、和……」
機嫌が悪いというか、雰囲気が刺々しいと言うべきか。
敵意と呼んでも差し支えない視線を優希に向ける和。
「……のどちゃんこそ、図々しいじぇ」
負けじと睨み返す優希。
二人の間で針の筵となった京太郎にしてみれば、今の状況は居心地が悪いどころの話ではない。
「お、俺! 買い出し行ってくるからっ!」
「あっ」
優希の手を振り切って、和の制止の声も聞かずに部室から飛び出す。
あの空気の中での三麻は、流石に耐えられない。
……とはいえ。
「……はぁ」
出かけた先は近場のコンビニ。
よく考えれば、今のところそこまで必要な物もなく、買い物もビニール袋一つに収まってしまう。
結局のところ問題を先延ばしにしただけで、すぐにあの部室に戻らなければならない。
「染谷先輩がいれば、いいんだけどなぁ」
最近はまこも雀荘での仕事が忙しく、仲裁は期待できない。
咲は頼りない。
また、あの空気に耐える時間が――
「お困りかしら?」
「あ……部長」
「もう部長じゃないんだけど……ま、いっか」
横から声をかけて来たのは竹井久、元部長。
3年生である彼女は大学進学の準備で色々と忙しいらしかった。
部活での成績に加えて内申点稼ぎを怠っていなかったこともあり、他の3年生に比べればいくらか余裕があるとのことだが、それでも部活に顔を出す頻度は減っている。
「それで、何かあったの?」
「えっと……」
そんな彼女に、悩みを打ち明けて良いものか。
久は何だかんだで頼れる存在であるが、余計な心労をかけるのは躊躇われる。
「……話せないことなら、無理にとは言わないけど……でも、出来れば力になりたいのよね」
「え……」
唐突に、空いた片手を久の両手に握られた。
対局の時でも、見たことのない真剣な表情。
今はそれが、京太郎一人に向けられている。
「……清澄が全国へ行けたのも、私に余裕があるのも」
「……」
「……須賀くん。あなたのお陰だから」
久は、美人だ。
今まで意識していなかったが、こうして真っ正面から見つめられると――兎に角、頷いてしまいたくなる。
ぽつりぽつりと、京太郎は悩みを打ち明けた。
迷惑をかけるのではと思っても――それでも、久に相談したかった。
全ての話を聞き終わると、久は小さく頷いて。
「……わかったわ。私が、力になってあげる」
「部ちょ……先輩!」
やはり久は、何だかんだで頼りになる。
沈みかけていた京太郎の表情に明るさが戻るが――
「……んー、でもさ。先輩ってのも何だかよそよそしくない?」
「へ?」
ちっちと、人差し指を左右に振る久。
急にそんなことを言われても、京太郎には理解が追い付かない。
「久でいいわよ。呼んでみて」
「え、でも……」
「……」
「ひ、久……先輩」
「……ん?」
「ひ、久……さん」
「あと一声!」
「……久!」
「もっと愛を込めて!」
これ以上どうしろと――と、振り回されても悪い気はしない。
やはり先輩に相談して良かったと、京太郎は安堵の息を漏らした。
「……ふふっ」
ちろりと見せた、蛇のような舌舐めずり。
その瞳は、確かに京太郎に向けられていた。
なんか微妙に違う話になった感
なんもかんも政治が悪い
モバマスss懐かしい
2年前くらいの昔にVIPで楓さんとか和久井さんとか大人勢とかロリ勢の話とか書いてました
ただちょっとあの話は趣旨が外れそうで、オチがほぼ固定されそうなのがうーん……
あと折角リクエスト貰って申し訳ないんですが闘牌は書けません
なにやら埋まりそうなので新スレでございます
京太郎「修羅場ラヴァーズ」 淡「あーいらーぶゆー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415203531/)
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