【神撃のバハムート】セレス「これでやっと……両親に会いに行けますわ」 (72)

※時系列は、ハロウィンゲームで騎士が優勝→無事に生還してしばらく後
※捏造設定注意
※物語の都合上オリキャラも出ます注意
※セレス嬢に甘噛みされ隊


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1414496910


~辺境の草原~


< ワンッ ワンワンッ

タタタタタッ

コープスドッグ「ハッハッハッハッハッ」尻尾フリフリ


振り返ると、どこかで見たような犬が、つぶらな瞳でこちらを見上げている……


???「こら、待ちなさい! 普通の人を噛んだりしては駄目……あら? 騎士さん!?」

セレス「まあ、やっぱり騎士さんでしたのね。久しぶりに会えて嬉しいですわ!」

セレス「それにしても、まさかこんな所で会えるだなんて。奇遇ですわね。お元気でしたか?」

セレス「ワタクシですか? ワタクシは……両親に、会いに行くところですの」

「ゾンビになって蘇った私を、以前と変わらず愛してくれ……
ワタクシを恐れる他の方々から庇い、こっそり逃がしてくれた父と母……
ワタクシが逃げた後二人がどうなったのか、ずっと気になっていましたの」

セレス「機会を得られるまで随分とかかってしまいましたけれど、……これで、やっと両親に会いに行けますわ」

セレス「あ……そうですわ! もしよろしければ、騎士様も一緒に来て頂けませんか?」

セレス「多少の危険なら自分で何とかできますけれど、やはりワタクシのことを知らない普通の方からは、女性の一人旅に見えてしまいますし……」

セレス「それに……もしかしたら、騎士さんの事を両親に紹介できるかもしれませんし……ね? いいでしょう?」



[5]セレスに同行する
[8]断る
>>↓1

セレス「そうですか……しばらくぶりですし、道すがらにつもる話でも、と思ったのですけれど……残念ですわね……」

セレス「騎士さんもお忙しいでしょうし、無理にと言うつもりはないのですけど……どうしても、駄目ですの?」



[5]セレスに同行する
[8]断る
>>↓1

セレス「そうですか……しばらくぶりですし、道すがらにつもる話でも、と思ったのですけれど……残念ですわね……」

セレス「騎士さんもお忙しいでしょうし、無理にと言うつもりはないのですけど……どうしても、駄目ですの?」



[5]セレスに同行する
[8]断る
>>↓1

腐犬「グルルルルル……バウバウバウ!!」

ガブゥ!

セレス「まあ、こらっ! 大人しくしていなさいな!」

腐犬「ウゥ~~……!!」

セレス「まったくこの子ったら……え? やっぱり一緒に来てくださるのですか? まあ、やっぱり騎士さんは騎士さんですわね」ニコッ

セレス「ふふ……それでは参りましょうか。ワタクシの生まれ故郷へ」




   神撃のバハムート
~蒼薔薇の令嬢と悲愛の真実~


 

セレス「それでは参りましょうか、騎士さん。ワタクシの故郷は、ここからならそう遠くないところにありますわ」

セレス「え? どうしてここに居るのか、ですって? そうですわね、かいつまんで説明しますと……」

セレス「騎士さんが帰られた後、領主……クリスさん主催のイベントが、また何度か開催されましたの」

セレス「そのイベントで、ワタクシは幾度目かの挑戦の末に、とうとう優勝を勝ち取ったというわけですわ」

セレス「ハロウィンゲームの時のお詫びだと、ハンクさんからこっそり手助けして頂いたりして、ね。そうそう、ハンクさんですが、魔境の地にもすっかり馴染んで、毎日楽しそうにしておられますわ」

セレス「話を戻しますと、優勝したワタクシはその報酬として、『外の世界へ、両親に会いに行きたい』という願いを叶えてもらったのですわ」

セレス「長時間日の光を浴びていても平気なように、クリスさんの魔力を分けて頂いて……ほら、普通の人間に見えるよう、体の継ぎ接ぎの跡も、見えないようにして頂いたんですのよ」スルッ

セレス「あら、どうかされましたか、騎士さん? ……はしたない、ですか? ふふ、意識してくださるの?」

セレス「冗談ですわ。ワタクシも、久しぶりに騎士さんに会えて、ちょっと浮かれているのかもしれません」

セレス「……でも、ひとつだけ言っておきますけど、ワタクシだって、誰にでも気軽にこのようなことをするわけではありませんのよ? ……ふふふ」

セレス「さて……そろそろこの辺りからはもう、ワタクシの両親が治めていた領地……の、はずですわ」

セレス「ワタクシが居なくなってから、何がどう変わってしまったかはわかりませんけれど……居なくなる前と大きく変わっていなければ、この先の村に、かつてワタクシ達の住んでいたお屋敷もあるはずですわ」

セレス「……不安、ですか? ない、とは言い切れませんわね……いくら貴族とはいえ、ゾンビになった娘を庇って村民と対立した両親が、あの後果たしてどうなったのか……」

セレス「もしもワタクシのことが原因で、ひどい目に遭っていたら……と胸を痛めたことも一度や二度ではありませんわ」

セレス「たしかめに戻ることも考えましたけど……せっかく両親が逃がしてくれたのに、おめおめと戻ったら、また追いかけられて、今度こそバラバラにされるかもしれないと思うと怖くて……」

セレス「でも、今回は心配いりませんわよね? だって、ゾンビには見えないようちゃんと身綺麗にしていますし、それに、何かあってもお優しい騎士さんが守ってくださるのでしょう?」

セレス「ふふっ、ありがとう、騎士さん。そう言ってくださると助かりますわ」

セレス「ああ……村が、見えましたわね……ええ、あの村ですわ。あの村が、ワタクシの故郷の村です」

セレス「……大丈夫ですわ。もし本当に追いかけられたら一目散に逃げますから。さっきはああ言いましたけれど、騎士さんにも、無理に戦って頂かなくて結構ですわ」

セレス「罪のない方々を傷つけるのは気が引けますし……村に入って話を聞けなくても、遠巻きにでも様子を窺って、両親の安否さえ確かめられれば、ワタクシはそれで十分ですの」

セレス「……、ええ、大丈夫。大丈夫ですわ。足を止めてすいませんでした、騎士さん。さあ、参りましょう」

セレス「あら、ちょうどあそこに、農作業をしている方がいらっしゃいますわね。村の方かしら」

セレス「……ワタクシには見覚えのない方ですわね。もしあれからいくらか住人が入れ替わっているなら、ワタクシのことを知らない人から、穏便に話を聞けるといいのですけれど」

セレス「あの、そこの方。ちょっとよろしいかしら?」

老人「ん、なんじゃあんたら、旅人か何か……む!? お、お前はっ!?」ギョッ

セレス「あら? ワタクシのことを御存じなの?」

老人「おっ、お前は、お前はっ……! み、皆、急いで村に知らせるんじゃ!! こいつはゾンビじゃ! ゾンビ娘が、村に戻ってきおったぞ!!」

村人「そ、そんな、まさか!」「いや、この人が言うなら間違いはない!」「女子供は教会へ避難させろ! 男は武器を持って集まるんだ! 急げ!」

ワーワー バタバタ

セレス「なっ……ちょ、ちょっと待ってくださいな! ワタクシは別に何も……」

老人「騙されんぞ亡者め! わしの目が黒いうちは、二度とこの村で、亡者の被害は出させん!」ダッ

セレス「あっ、ちょっと! ……行ってしまいましたわね。どうしましょう?」

セレス「いえ、あの人とは本当に初対面のはずですわ。確かに、ゾンビになる前後で、少し記憶が曖昧になっているところもあるのですけど……」

セレス「少なくとも、ああして村の方々のまとめ役になっているような立場の方となら、貴族の娘として過ごしていた頃に、何度か顔を合わせているはずですもの」

セレス「ワタクシがゾンビになって蘇った一件は、そんなに重大事件として伝わっていたのかしら……」

セレス「ともかく、一旦ここを離れましょう、騎士さん」

セレス「まさかいきなりあんな過敏な反応をされるなんて……これじゃあとても村には入れませんわね」

セレス「けれど、せっかくクリスさんにも魔力を頂いて、ここまで来たのですもの。せめて、両親の安否くらいは何とか確かめてから……」

老人「居たぞ! あそこじゃ! 知恵の回る亡者め、こっそりと村に忍び込める場所を探しておったな!?」

セレス「追い付かれてしまったようですわね……戦えない人数ではありませんけれど……」

老人「お前の好きにはさせんぞ……! さあ行け! お前の出番じゃ!」グイ

少年「わわっ! ……って、ええっ!? あんな綺麗な人が、ゾンビなの……?」

セレス「あらあら、戦士というには随分と可愛らしい子が出てきましたわね」

老人「ええい、見た目に騙されるでないわ! あの亡者一人でも、わしらの村くらい簡単に全滅させられるんじゃぞ! さあ、お前の聖なる術で、あの亡者を土に還してやれ!!」

少年「う……わ、わかったよ、おじいちゃん! 僕、精一杯やってみる!」ザッ!

老人「よし! さあ皆も続け! 神のご加護は我らにある!」

村人「「「おおーっ!!」」」ザザッ!

セレス「どうやら、落ち着いて話ができる状況ではありませんわね……騎士さん、無茶を承知でお願いしますけど、どうか、あの方々を傷つけないよう加減して下さいな。これ以上、話をこじれさせたくはありませんから……」

セレス「……そう言ってくださると信じてましたわ。ありがとう、騎士さん。……来ますわよ!」

少年「そ、そんなっ、祈りの言葉が通じない……!?」

セレス「っ、あの子供、聖職の見習いだったようですわね……! クリスさんから魔力を頂いていたおかげで、大したことはありませんでしたが……」

村人「くっ、こ、こっちの騎士も強いぞ!?」

老人「ぐぬぬ、何故騎士が不浄な者の味方を……!? もしや、あの騎士も既に亡者か!」

老人「おのれ、よもや亡者が二人も来るとは……殺し切るにはこの人数では足りんか! 皆、一度退くのじゃ! もっと人手を集め、体勢を立て直す!」

セレス「……ふぅ、なんとかお互いに被害を出さずに乗り切れましたわね……」

セレス「でも、次はもっと多人数で来そうな雰囲気でしたわね……これは、急いで目的を果たして、早々に立ち去った方がよさそうですわね」

セレス「かなり大回りになりますが、こちらの森の中から迂回して屋敷を目指しましょう」

おぼろげな記憶・1


覚えているのは、全身が燃えているかのような、ひどく熱くて苦しい時間がずっと続いていたこと。

次に気がついた時には、正反対に、ひどく冷たくて狭い、真っ暗な箱の中に居ました。

ワタクシがその箱の天井を必死に叩くと、ついに天井板が割れて、今度は大量の土砂が崩れ落ちてきました。

ワタクシは全身泥だらけになりながら、必死でそれを掻き分けて、無我夢中で上を目指して掘り続けて……

そうしてついに、目が眩むほどの月明かりに出迎えられたワタクシは、ここが墓地であること、

そして、自分が一度埋葬され、亡者となって蘇ったのだということに気付きましたわ。

~村の周囲の森~

セレス「懐かしいですわ……かつてワタクシがこの地を離れる時にも、追手を振り切るために、この森を抜けて逃げましたの」

セレス「ゾンビになったおかげか、普通の人間より夜目がきくようになっていましたし、この森のことは元々よく知っていましたから、逃げるのにそんなに苦労はしませんでしたわ」

セレス「ええ、この辺りの森も、父の領地の一部ですわ。野生の獣が多いので、害獣の駆除と、貴族としての趣味をかねて、よく狩りに出かけていたんですの」

ミシミシ... ヴォルルル...!

セレス「……と、噂をすると現れましたわね……。放っておくと、村の方々に被害が出ることもありますから、遠慮はいりませんわ、騎士さん」

セレス「流石は騎士さん、お見事ですわ」

セレス「この森は昔からこういった獣が多くて、薪を取りに入った者が襲われることもたびたびありましたの。そういったところは変わっていませんのね……」

セレス「死体は放っておいて構いませんわ。どの道、ワタクシたちでは運べませんし、血で汚れてしまっても困りますし……」

  ザ ザザ ザ  ザザ――

セレス「……っ!?」ズキッ

セレス「…………? 今、何か……これは、昔の記憶……?」

セレス「ああ、いえ、別に何でもありませんわ。ワタクシは大丈夫です」

セレス「さあ、村の方々に見つかる前に、先を急ぎましょう」

おぼろげな記憶・2


目覚めてから、どれくらい呆然としていたのでしょう……

獣の遠吠えで我に返ったワタクシは、強張った体を動かして、屋敷を目指して歩き始めました。

亡者の存在については、吟遊詩人の弾き語りや絵物語などで知ってはいましたが、まさか自分がそうなってしまうだなんて。

ゾンビになって蘇ったワタクシを見て、両親は一体どう思うでしょうか……。

不安に胸が押し潰されそうで、けれど他に頼るあてもなく、ワタクシは、震える手で屋敷の扉を叩きました。

そうして、ワタクシを出迎えてくれた両親は――

最初ひどく驚き、ほんの少し悲しそうな顔をし、けれど、ワタクシが名前を呼ぶと、

「よく戻ってきてくれた」

と、そう言って、服が泥で汚れるのも構わず、強く温かく抱きしめてくれましたわ……。

セレス「……ふぅ。どうやらワタクシがいた頃よりも、森の手入れに入ることが減っているようですわね。歩きにくくて仕方ありませんわ」

セレス「たしかに、もっと身軽な服装なら楽だったでしょうけれど……でも、これでも一番動きやすいドレスを選びましたのよ?」

セレス「両親に会えるかもしれないと思ったら、みすぼらしい恰好は見せられませんもの」

セレス「……ああ、でも、こんなことになると分かっていたら、多少我慢してでも身軽な服装で来た方が良かったかもしれませんわね」

< ワゥワゥ! イタゾー! アソコダ!

老人「見つけたぞ亡者共め! 今度こそ滅ぼしてくれるわ! さあ行け!」

少年「う、うん! 念には念を入れて、杖と聖印と聖水も持ってきたし、今度こそは!」

セレス「またあの少年……相手を必要以上に傷つけないよう戦うというのは、難しいものですわね……」

セレス「騎士さん、手助けをお願いしますわ」

少年「ううっ、つ、強いよ……このゾンビ、今の僕じゃあ……」

老人「ええい泣きごとを言うな! 何のためにお前を聖職者見習いにしたと思っておる!」

セレス「……どうやら、聖職者としての訓練を積んでいるのはあの少年だけのようですわね……他の方々も、あの少年が一緒でないと腰が引けていますし……」

セレス「なら決まりですわ。騎士さん、あの子、さらってしまいましょう」ニコ

老人「ぐぐぐ、こうなればもう一度戻ってもっと大量の武器と人手を……」

セレス「あら、ちょっとお待ちになって?」ガシッ

少年「ひあああ!?」グイッ

老人「なっ、何をする気じゃ!」

セレス「ご安心なさって? ワタクシたちの目的が済めば無事にお帰しますわ。村にもこの子にも、余計な危害を加える気はありません」

セレス「さあ騎士さん、こちらへ!」

少年「わあぁ、お、おじいちゃぁぁん!」

老人「ま、待て! ……おっ、おのれ、亡者めぇぇぇ……!!」ギリギリ

おぼろげな記憶・3


両親は、蘇ったワタクシを以前と変わらず愛してくれました。

もちろん、ワタクシがゾンビとして蘇ったことを隠すため、屋敷から自由に出歩くことはできませんでしたが……

それ以外のことでは、両親は以前と同じようにワタクシと接し くれましたわ。

ワタクシはと言えば、以前よりもお肉が……特に生のお肉に対する食欲が増しているのを感じていましたが、

そのこと 話すと、両親は痛ましそうな表情をしながらも、ワタクシと共に悩み、それと向き合う方法を考えてくれました。

……このまま三人で、以前通りの暮らしを続けられたら……どれだけ幸せだったでしょう。

けれど ワタクシのことが村の方々にばれてしまうのは、時間の問題だったのです。

セレス「……どうやら振り切れたようですわね。やっぱり、聖職者がいない状態でゾンビと戦うのは恐ろしいのでしょう」

セレス「追手の動きが鈍っているうちに、さっさと用を済ませてしまいましょう」

少年「うううう……僕を食べても美味しくないよ……美味しくないから助けて……」ガタガタブルブル

セレス「……ふふ、そう言われると、本当に美味しくないのかちょっと味見してみたくなりますわね……」耳元フゥー

少年「ひゃああ!」ビクン

セレス「ふふふ、冗談ですわよ。たしかに食欲はそそられますけど、本当に食べたりはしませんわ。ねえ騎士さん?」

少年「ほ、本当に……? 本当に噛まない?」

セレス「あら、騎士さんの言うことが信じられませんの? そもそもこの方は人間ですし、とても誠実な方ですわよ?」

少年「で、でも……ならどうしてゾンビなんかと一緒に行動して……」

セレス「セレス」

少年「えっ?」

セレス「ワタクシの名前は、セレス、ですわ。たしかにワタクシはゾンビですけど、ちゃんと名前で呼んでほしいものですわね」

少年「ええっと……じゃあ、セレス、さん……?」

セレス「それで結構ですわ。貴方のお名前は?」

少年「ぼ、僕は……」


>>↓1
少年の名前

マッケンロー「……ま、マッケンロー、です……」

セレス「ではマッケンローさん、しばらくワタクシたちと一緒に来てくださいな」

セレス「何度も言いますけど、別に貴方を取って食べたり、どうこうしようという気はこれっぽっちもありませんわ。単に、貴方を中心に集まった村の方々から追いかけられるのが嫌なだけですから」

セレス「ワタクシたちは、用が済んだらすぐにここを立ち去ります。貴方のことは、そこで解放しますわ」

マッケンロー「用、って、一体……?」

セレス「この村は……ゾンビになる前のワタクシの故郷でしたの。ゾンビになったワタクシを他の方から庇い、逃がしてくれた両親にもう一度会いたい。それがワタクシの用ですわ」

マッケンロー「ほ、本当にそれだけ……? 村を襲おうとかじゃなくって……?」

セレス「もう、疑い深いですわね。いつまでも立ち止まっているわけにもいきませんし、話しながら行きましょうか、騎士さん」

セレス「……ということがあってしばらく魔境の地で暮らしていたのですけど、今回ようやく機会を得て、こうして故郷に戻ってきたのですわ」

セレス「両親に会えれば……せめてワタクシが居なくなった後の安否だけでも知ることができれば、それで満足でしたのに……貴方のお爺様でしたっけ? あの方が最初からすごい剣幕で、落ち着いて話をすることさえできませんでしたわ」

マッケンロー「へ、へえ……そうだったんですかー……」

セレス「……まだ態度が硬いですわね。ワタクシはこうして自分の身の上まで赤裸々に話しているというのに、もう少し警戒を解いてくれてもいいのではなくて?」

マッケンロー「え、や、その……亡者と戦うために駆り出されたのが初めてだったから、その緊張が抜けきってないって言うのもあるんだけど……」

マッケンロー「……その、なんかこうして話せば話すほど、普通の女の人にしか見えなくってきて、セレスさんみたいな綺麗な人、村にはそういないし……」

セレス「あら、ワタクシを普通の女の子扱いしてくださるの? ふふ、それは嬉しいですわ」

セレス「女の子扱いしてくれたお礼に、何かしてさしあげたいのですけど……何がいいかしら……?」スッ...

マッケンロー「えっ、あの、セレスさっ、顔、顔が近……!」ドキドキ

セレス「そうですわね……軽く一噛みしてゾンビにして、魔境の地にあるワタクシの屋敷で末永く一緒に暮らす、というのはいかが?」ニコ

マッケンロー「ひっ!」

セレス「ふふっ、冗談ですわ。あんまり反応が可愛らしいものですから、ついからかいたくなってしまって」クスクス

セレス「ええ、心配しなくてもわかってますわ、騎士さん。この獣共をさっさと追い払いませんとね」

マッケンロー「えっ、あっ、お、狼っ!?」

セレス「ふう。あまりドレスを汚したくはないのですけれど……マッケンローさん、お怪我はありませんわね?」

マッケンロー「ま、守ってくれたんですか……?」

セレス「当然ですわ。貴方のお爺様にも、無事にお返しすると約束しましたもの」

セレス「もう普通の人と共に暮らすことはできない身だと理解はしていますけど……共に居ることができなくても、その人のことを愛おしく思ったり、健やかであってほしいと願ったりすることがそんなにおかしいことかしら?」

セレス「だって、ここはワタクシの故郷の村で……貴方はその村の住人ですもの」

マッケンロー「…………!」

マッケンロー「その、なんていうか……ごめんなさい、セレスさん」

セレス「あら、何のことかしら?」

マッケンロー「おじいちゃんに言われるがまま、話も聞かずに攻撃したりして……ゾンビといっても、無差別に人を襲うような化物だけじゃなくて、セレスさんみたいな人もいるんだね」

セレス「ふふ、わかってくださったのなら、いいんですのよ。ゾンビと聞いたら、普通の人はだいたいそういう反応をするでしょうしね……」

セレス「まあ、貴方のお爺様の反応はちょっと過激すぎでしたけど」

マッケンロー「うん……ごめんね。なんかおじいちゃんが子供の頃、村の人が食い殺される悲惨な事件があったらしくって、それ以来、ゾンビに対して凄く過敏なんだ」

マッケンロー「僕も散々その事件のことを聞かされててさ。またゾンビが現れても今度は被害を出さないで済むように、って、聖職者の見習いをしてるのもそのせいなんだ」

マッケンロー「でも、セレスさんがその事件の時のゾンビだとは思えないや。こんなにはっきりした人格を持ってて、人を襲わないよう自制してるんだから」

セレス「あら。でも……すごく美味しそうな人間が相手だったら……どうかわかりませんわよ……? たとえばそう、貴方みたいな……?」ススス...

マッケンロー「ま、またまた、冗談でしょ? …………冗談、ですよね?」プルプル

セレス「ふふふ……連れてきたのが思ったよりからかいがいのある子で、回り道も楽しいですわ」

おぼろげな記憶・4


ゾンビとして蘇って、両親との暮 しがしばらく続いた頃……とうとうワタクシのこ が、村の方々に発覚しました。

屋敷で働いている者達には口止めをして たはずですけれど、やはり人の口に戸は立てられないということですわね。

人目を避  、ずっと屋敷の中で過ごしていたワタクシには、いつバレてしまったのかはわかりませんが、

ある日、父がワタクシの食べる肉を獲るために狩 に出ていた隙をつくよ に て、

村の方々が 大挙して屋敷に踏み込 ザザ たのです。

ワタクシは村の広場 引っ  出され、そして――

皆の持つ鋭い が、ワタ シ ザザザ 向け 振り下ろ ザザ した。

セレス「…………」

マッケンロー「この村にある貴族の屋敷っていうと、多分、この先にあるあれだと思うんだけど、でも、あそこは……セレスさん?」

セレス「……え? あ、ごめんなさい……つい、物思いにふけってしまったみたいですわ」

マッケンロー「大丈夫ですか……? その、もしかして、僕が聖術で攻撃しちゃったから……」

セレス「ふふ、まだまだ未熟な貴方の術くらいで、ワタクシはどうにかなったりしませんわ」

セレス「ただ……村に戻ってきて、昔のことが脳裏に過ぎることが増えたみたいですの。さっきぼんやりしてしまったのも、そのせいですわ」

マッケンロー「昔のこと、っていうと……ご両親と暮らしていた時のこととか、村から逃げ出した時のこととか……?」

セレス「そうですわね……たしかに、あの時走ったのもこの森でしたわ。ワタクシを恐れる村の方々から、両親がこっそりと逃がしてくれて……血と泥で汚れたひどい顔で、無我夢中で……走っ……て……?」ズキッ

ザッ ザザ  ザ ザザザッザ ザザ

セレス「血……? いえ……あれは、誰の……これは、いつの……」

マッケンロー「セレスさん? セレスさん!?」

セレス「……大丈夫、大丈夫ですわ。騎士さんも、心配をかけてすいませんでした。もうすぐ屋敷なのでしょう? なら、ぼんやりしてはいられませんわ」

マッケンロー「う、うん……セレスさんが大丈夫だって言うんなら、いいけど。でも、あの屋敷は……」

~村外れの廃屋~


マッケンロー「……ここが、この村にある唯一の『貴族のお屋敷』だよ」

セレス「これは……そんな……どういうことですの……!?」

マッケンロー「そんなに詳しいことは知らないけど……ここは昔、この辺りを治めていた貴族が住んでいたお屋敷らしいんだけど……その貴族夫婦が亡くなって、後継ぎも居なかったらしくて」

マッケンロー「領地は別の貴族に引き継がれたんだけど、その人はここに住もうとしなかったから、管理する人もいなくって。それですっかり廃墟になっちゃったんだ。今じゃ、ほとんど誰も近付かない」

セレス「ここですわ……ワタクシの住んでいた屋敷は……ここで間違いありませんわ! なのに……そんな、どうして……ああ、父様、母様……!」ダッ

マッケンロー「あっ、セレスさん!」

マッケンロー「騎士様、追いかけよう! あちこち大分痛んでるはずだし、一人で行かせちゃ危ないよ!」

セレス「嘘……いったい、どうして……」ブツブツ

マッケンロー「あっ、居たっ、セレスさ……うわぁ!?」

マッケンロー「なっ、こっ、これはっ……血痕っ!?」

マッケンロー「こんな……ここまではっきり残ってるなんて、一体、どれだけ出血したら……!?」

セレス「マッケンロー、さん……これは……?」

マッケンロー「し、知らないよ! ここが廃墟になったのは、僕が生まれる前だし……」

老人「……やはりここにおったか、亡者め」

マッケンロー「おじいちゃん!」

セレス「マッケンローさんのお爺様……一体ここで、何が起きたんですの? ワタクシが去った後、ここで、何が……!?」

老人「寝ぼけたことを……! 哀れな亡者め、今度こそここで、土に還るがいい! 行くぞ皆の衆!」

村人「「「おおっ!!」」」

マッケンロー「ま、待ってよおじいちゃん! あっ、騎士様!」

老人「邪魔をするな亡者の騎士! わしらは既に覚悟を決めた、立ちはだかるなら、貴様から倒すまでよ!」

老人「ぐっ、この人数でも容易く退けるか……もはや、わしらにはどうにもできん……この村も終わりじゃ……」

セレス「生憎ですけれど、ワタクシも騎士さんも、この村をどうこうするつもりなんて最初からありませんわ。それより、ここに住んでいた貴族の夫婦は、どこに行ったんですの?」

セレス「ワタクシは……それを確かめるためだけに、この村に戻ってきたのです」

老人「フン……亡者め……! わしの口からわざわざ語ることなどないというのに……それが知りたければ、村の北の外れへ行くがいい」

セレス「北ですわね。わかりましたわ」タッ

マッケンロー「あっ、待ってよ、セレスさん!」

マッケンロー「騎士様……うん、一緒に追いかけよう!」

おぼろげな記憶・5


ザザザ をバラバラに れる痛みは意外にありませ ザザ わ。

ただ、必死 形相でワタクシに武器 振り ザザ 皆さんのことが怖 て、

ワタクシを してくれた両親の ザザッ 思うと、胸が痛 ザザザザ ……

気が付 と、ワタクシは母に抱か て、見慣れた屋敷の中に居ました。

母は何度もワタクシに謝 ながら、ワタクシの ザザザ になった体を針 糸で縫い合 せてくれていて、

繋がった手足 ワタクシが動か ザザ せると、「良かった」と、そう言ってまた泣  した。

いつのま か父も戻っ ザザ いて、村の方々  話し合 ザザザ して るが、

隙を見て、ワタ ザザ ことを逃  と言っ ザザ ました。

ワタクシは――ワタクシザザザクシはワタクシはワタクザザザ気をザザザザザ欲がザザザザザザザザザザザザザ......

~村外れの墓地~


セレス「………………」

マッケンロー「セレスさん……その、お墓は……」

セレス「ねえ、騎士さん、マッケンローさんでも構わないのですけれど、ひとつ、つかぬことをお聞きしてもよろしいかしら」

セレス「今は……何年になりますの?」

マッケンロー「それは……」

セレス「……そう。やっぱり……薄々そんな気がしていましたけれど……やっぱり、そうですのね」

セレス「ゾンビになって、老いることが無くなって、そんな体で魔境の地で呑気に暮らしているうちに……ワタクシは、外の世界の時間をすっかり忘れていたのですわ」

セレス「ワタクシの両親は……もう何十年も前に亡くなっていたのですわね。この古びた小さなお墓が、両親のものですわ」

マッケンロー「セレスさん……」

セレス「……いいんですのよ、慰めてくれなくても。この可能性を考えていなかったわけじゃありませんもの。たとえこうなっていても……ちゃんと両親のお墓参りをして、お礼を言えればいいと思って、魔境の地を出てきたのですもの」

セレス「だから……」

老人「……ッハハ、どうやらそこの亡者は、わしよりも耄碌しておるようじゃの。両親への礼などと、下らん戯言を」

マッケンロー「おじいちゃん……?」

セレス「……マッケンローさんのお爺様、おそらく貴方は、ワタクシの両親がその後どうなったのかを、直接ご覧になって知っているはずですわね?」

セレス「屋敷に残っていた、あの血痕はなんですの? ワタクシが去った後、一体何があったんですの?」

セレス「ワタクシが、ゾンビになってもワタクシを愛してくれた両親を偲ぶことを……何故、戯言だなどと仰るの……!?」

老人「フン、まだ思い出さんのか。つくづく愚かで哀れな亡者よ!」

老人「未熟な孫め、あるいはそこの騎士だ。ずっと一緒に居たのなら、何故こやつをさっさと滅ぼしてやらなかった! こんな、人の世の理から外れて蘇ってきた者を!!」

マッケンロー「そ、そんな言い方をしなくったっていいだろ、おじいちゃん! セレスさんはゾンビでも、こんなにはっきりした人格を……」

老人「それがこやつの業だと言うのじゃ! 亡者よ、もしもわしら村の人間が、亡者を庇いだてした貴族の夫婦を処刑したなどと思っているのなら、それは大きな間違いじゃ!」

老人「思い出せ!! 一体誰が、その爪で、その牙で、あの夫婦を食い殺したのかを!!」

セレス「ワタクシの両親が……食……? 誰、に…………っ!?」ズキッ


ザザッザザザ ザ ザザザザザザ ッザザザ ザザ ザ――――

セレスの母『あなた、どうし らいいの? 村 人達は――』


――お   母  サ ま ……?


セレスの父『その子を殺さ ばならぬと、その一点張りだ。話 合いは平行線で、早急に決着をつ ねば、暴動  起こりか ない……』


――オと う   様 …… 何ヲ 話   シ て ……


母『そんな……どう ザザ いいの……』
 ザッ                      ザザッ
父『……こ 以上は、屋敷において ザザザ はできな ……せめて ザザ てや こ しか……』
    ザザザザ   ザ              ザザ
 ザザ ッザ   ザザ
―― あア ……  何 も    考え らレ    な
      ザザザ     ザザ   ザザザザザ
  ザッザザ    ザザ  ザザザザ     ザザッ  ザザザザザ...

    ザザザ    ザザッザザザ   ザザ
母『この子をもう一度死なせ ザザザザ ……もう一度、今度こそ ザザザザザ いの……!』
 ザザザ            ザザッ    ザザザ
父『私も同 気持ちだとも……ああ……神よ……! どう ザザ ばこの子を救ってやれるのか……!』
 ザザッ   ザザザ         ザザザザ ザッ
   ザザ ザザ    ザザザザザッ    ザザ
―― おと ウ  サま …… お カ   さ、ま ……
ザ ザザザザ   ザザザザザザザザザッ   ザザザ
 ザザザザ ザザザッザザザ  ザザザザ ッザザ  ザザザザザザザ ザザ
母『! あなた、この子が何か……』
ザザザザザザザザ ザザ  ザザザザザザザッザザザザ ザザザ    ザ
父『! どう ザザ だ、セレス!?』
 ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ――――



――  オ なカ   が スい  タ の



ガッ グチュィ...ブチッ


父『――――っぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

母『あなたぁっ!!』
 ザザッ

―― お母 さ   マ ……? ワ  タ クシ   は ……


父『待て、来るなッ! この子の意識が ザザザザザ …… ザザザザ 消えかけて ザザザザザ ……!』
             ザザザッ
父『これが ザザザザザ うのなら、私は……! お前だけでも、この子と ザザザザ ……!!』
 ザザザ                   ザッ     ザザザザ ザッ
   ザザザザッザ    ザザザ
――  いシき が   さだ ま  ラな  ああ…… イイニオ イ ……

ガチュ グッ ムシャァ...  ガツッガツガツ...


母『ああ……セレス……あなた……!』

 ザザ  ザ
―― オ カあ   サ   ?    な ンデ   ソん な
      ザザザ ザ     ザザッ
 ザザザザ       ッザ  ザッザザザ ザザ
母『そう……まだ、足りない ね……? いい ザザザザ ……こっちに ザザザザザ 』
     ザザザザ ザザザザザッ  ザザザ
母『それであな が、もう一度 ザザ なれ ザザザザ ……どうか ザザザザザ ……』
 ザザザザ ザザザザザザ  ザザザッザザ ッザザザ ザ ザザザザ
母『どうか…… ザザザザザッザザ …… ザザザザッザザザザ るわ、セ ス……――』


  ガブッ  ブチッ


ガッ ムチッ  ガツ ガツ  クチャ  ミチミチッ ギチッ グチッ   ガチュッ ブチッ クチャ ミチャッ ガツッバクッバクッ ムシャッ



 ゴクン............

ザザッザ  ザザザザ...
セレス「何……なんですの、これは……ワタクシの、記憶……?」

マッケンロー「せ、セレス、さん……?」

セレス「そんな、まさか……ワタクシ、が……ワタクシが父と母を、食べてしまって……いた……?」

マッケンロー「!?」

老人「ようやく思い出したか、自分の罪を! あの二人は、亡者として蘇ることすら叶わぬほどに、無残に食い散らされていた……あの血痕はその血溜まりの名残よ!」

老人「忘れられるものか! 口元と手を血で真っ赤に染めて、屋敷から飛び出してきたきさまの顔を! 見誤るものか! きさまこそがあの惨劇を引き起こした張本人じゃ!!」

セレス「……ぅ、あ、あっ…………!」ズキッ

マッケンロー「そ、そんな……セレスさんがそんなことっ!」

老人「そもそもおかしいと思わなんだのか? 何故こやつは、亡者でありながら生前の記憶と人格をこうも保っているのかと!」

老人「明確な意思も知恵もなく、ただ本能のままに他者を襲い、食らい、そうして死んだ者もまた亡者として蘇り、ネズミ算式に被害を拡大させていく悪夢……きさまらの知る亡者も、そう語られていたはずじゃ」

老人「そうなるはずの亡者が、生前の人格を取り戻し、保つには、最も近しい者の血肉を食らうことで、己の魂を強く肉体に繋ぎ止めねばならんのじゃ」

老人「こやつがきさまらに何を語ったか知らんが……それも大方、曖昧な記憶を自分に都合よく組み換えて作り上げた、何の根拠もない妄言よ!」

老人「こやつがこうしてきさまらと普通に語らえていたこと、それ自体が、こやつが犯した許されざる罪の、何よりの証拠なのじゃぁぁぁっ!!!」

セレス「嫌っ、違う、ワタクシは、そんなっ……そん、な……!」フルフル


セレス「嘘っ、うそ、嫌あっ、ぁ、ああ、騎士、さん……ワタクシ、は……! ぅぐ、ぅあ、あっ、……ああぁあっ、あああああぁぁああああああああああああああああああああっっっ!!!」ダッ


マッケンロー「あっ、セレスさんっ!」

老人「追うのか、騎士よ。ならば迷わず、今度こそ殺してやれ。それがあやつに残された唯一の贖罪の方法であり、救いじゃ。どの道、わしらにはもう何も手出しできん」

老人「ゴホッゴホッ……! はぁ、はぁ……あんな、あんな悪夢のような出来事を……できれば、生きているうちに思い出したくなどなかったわ……!」

マッケンロー「おじいちゃん……」

マッケンロー「騎士様……セレスさんを追いかけるの? ……うん、放ってはおけないもんね。僕も、一緒に行くよ! 急ごう!」

~村の外の森~


マッケンロー「セレスさん、こっちの方に来たはずなんだけど……」

マッケンロー「ってうわぁ熊ぁっ! ……あ、死体、か……びっくりしたぁ……」

マッケンロー「これ、もしかして、セレスさんが……? そう、だよね……こんな、引き千切られたみたいな傷跡……ゾンビみたいに、すごい腕力を持ってないと……」

マッケンロー「……あっ、向こうにも、別の動物の死体があるよ! セレスさんが……襲ってきた動物とか、進路上に居た動物を、手当たり次第に殺して進んでる、のかな……」

マッケンロー「……うん、追いかけよう。これを辿っていけばきっと、セレスさんに追い付けるはずだよ……!」

~月明かりの落ちる空き地~


マッケンロー「……騎士様、気付いてる? さっきから、落ちてる死体に、その……齧られたみたいな傷跡が、だんだん増えてきてるってことに……」

マッケンロー「これって……やっぱりセレスさんが……? だとしたら、今のセレスさんって……」

マッケンロー「! 待って騎士様、聞こえた!? 向こうから、何か物音が……」

...チッ ミチッ  グチッ ボキ  グチャ ムシャ バキッ...

マッケンロー「空き地があるよ……視界が……開ける…………ねえ騎士様、あれって、もしかして……」

セレス「……ウゥゥウウ……グル、ァアア……」ガツッ グチャッ ミチッ

マッケンロー「……ひ、ひいっ、き、狐を生で食べてる……!」

セレス「――ゥアアッ!!」グルン

マッケンロー「ひいいっ!! せ、セレスさんっ! 落ち着いてよ! 僕や騎士様のことが、わからないの!?」

セレス「アアァ……ァ…………ゥオアァァァ……!!」ユラ...ユラ...

マッケンロー「こ、こっちに来るよぅ、騎士様……た、戦うのっ!?」

マッケンロー「うう、でも……やるしか、ないよね……うっ、うわあぁぁぁぁぁっ!」

セレス「グルォアアアアァアァァァァァァァッッッ!!!」

マッケンロー「つ、強い……強すぎるよ……単純な腕力だけじゃない、僕の聖術も全然通じないっ! なんでっ!?」


……

セレス『――優勝したワタクシはその報酬として、『外の世界へ、両親に会いに行きたい』という願いを叶えてもらったのですわ』

セレス『長時間日の光を浴びていても平気なように、クリスさんの魔力を分けて頂いて……――』

……


マッケンロー「今のセレスさんは、そんなすごい人の魔力をもらってる状態だったのか……」

マッケンロー「でも、そんな……それじゃあ、どうしたら……!」

セレス「ハァ、ハァ……ッグ、グルルルゥウウウ……!」ヨロ...

マッケンロー「一応、騎士様の攻撃は効いてる……のかな……」

セレス「グッ……ルァアアアアアアアアアッッッ!!!」グォッ...!

マッケンロー「あ、危ない騎士様っ!! 来るよっ!!」




[5]セレスを討つ
[8]何もしない
>>↓1

無限ループは確かにゲーム通りなんだよなぁ…
無駄に再現度高いけど騎士様の現地妻が増えないのはおかしい(迫真)


< ――ワンッ

「――?」チラッ

腐犬「ハッハッハッ……」ジー

「…………」



……

『ワタクシはセレス。ここは生と死の間にある魔境の地。貴方、迷ってこんな場所まで来てしまったみたいね。』

『ワタクシにも叶えたい望みがありますの。でもせっかく出会えたのも何かの縁……仲良くしましょう?』

『……ふふ。人の手の感触なんてどれぐらいぶりかしら。手助けしてくださってありがとう。』

……



「…………」コクン

腐犬「ハッハッハッッ……」コクン タタタ...

「…………」クル

マッケンロー「――騎士様ぁっ!!」

セレス「グルァァァァァッ!!!」ガバァッ

「…………!」ポイ

マッケンロー「騎士様!? どうして剣を――!」

ガシィ

セレス「グルル…………!」ガハァ...

「…………」

セレス「――ッアァ!」グァッ



 ガブッ...!



 

セレス「グルルルルッ……!」ギチギチギチ...!

「…………」

セレス「ルルルル……グゥ、ルグゥァ……!」ギチギチギチギチ...!!

「…………」...ギュ

セレス「っ!? グ、ゥウ…………ぅう……ううう……う、ぁ、あああ…………!」ギチ......

「…………」ギュ

セレス「…………どうして……どうして、斬ってくれなかったんですの?」

マッケンロー「! セレスさん、本当は、意識が……!」

セレス「どうしてっ……ワタクシなんて、実の両親を食い殺したおぞましいゾンビとしてっ……! 殺してくれて、よかっ、のにっ……!!」ポロポロ...

セレス「うう……ぁああ、ああぁぁぁぁぁぁぁ……!」


……



セレス「……はぁ。こんな、子供みたいに大泣きするだなんて、本当にみっともないところを見られてしまいましたわ……」グス

セレス「……というか、あんまり顔を見ないでくださる? 今のワタクシ、間違いなくとても酷い顔をしてますもの。鏡を見なくたってわかりますわ」グシグシ

マッケンロー「えぇっと……セレスさんは落ち着いたみたいでよかったけど、でも、噛まれちゃった騎士様はゾンビになっちゃうんじゃ……!」

セレス「ああ、その心配なら必要ありませんわ」


……

『吾輩か? このハロウィンゲームの主催者にして、この魔境の地の領主…クリストフであるぞ!』

ペカー
『さぁこれでもう大丈夫だ。おまけで、またゾンビに噛まれてもゾンビにはならないようにも魔力を込めたぞ』

……


セレス「……というわけで、騎士さんなら、ゾンビに噛まれても大丈夫ですの」

マッケンロー「そうだったのか……騎士様ってほんとすごいんだね」

セレス「……それでゾンビになる危険が無いのは自分だけだから、って、防御を捨てて本当に噛みつかれてでもワタクシを止めに来るだなんて……」

セレス「噛みついたワタクシが言うのも何ですけど、無茶し過ぎですわ。ゾンビにはならなくても、そのまま噛み殺されるとは思わなかったんですの?」

セレス「……え? ワタクシを……信じてた、ですって? どうしてそんな……」


……

『騎士さんって本当に美味しそうな匂いだこと…。ねぇ、足の小指一本でもいいの…いただけないかしら?』

『なんて冗談ですわ! ワタクシ、どんな状況になったとしても、貴方だけは食べませんわ。でも、舐めるぐらいはいいかしら?ふふふ…』

……


セレス「なっ……あの時のそんな冗談みたいなやり取りを、まだ覚えて……!」

セレス「ほ、本当にっ、騎士さんはっ……ちょっと人が良過ぎですわっ……! だいたい、両親のことを思い出したショックで本当にワタクシの人格が壊れてしまっていたら、どうするつもりだったんですの?」

セレス「その時はその時で何とかした? もうっ……先に言っておきますけどね、自分の血肉を食べさせればワタクシの魂を呼び戻せるかもしれないとか、そんな風に、その、自惚れてもらっては困りますわよ!」

セレス「もう……もうっ、本当に騎士さんはっ!」

マッケンロー「騎士様って……本当にすごいんだね……」

セレス「はぁ……騎士さんが、ワタクシのことをそこまで信じてくださったことは、素直に嬉しいですわ」

セレス「けれど……ワタクシが、両親を食い殺してしまったという事実は……何がどうあろうと変わりませんわ……」

マッケンロー「セレスさん……」

セレス「ワタクシは……一度死んでゾンビの体になってしまったせいで、もう一度死ぬことすら、自分では満足にできませんの」

セレス「だからいっそ、騎士さんの手で斬ってほしかったのに……ワタクシは一体、これからどう償っていけばいいのでしょうか……」

マッケンロー「僕には……僕にはわからないよ……騎士様はどう思う?」

セレス「……ワタクシの、本当の記憶、ですか? まだ思い出せていないことはないか、と?」

セレス「……たしかに、まだ所々もやがかかったような、曖昧なところはありますけれど……でも、それを思い出しても、何か変わるとは……」

セレス「……いえ、そうですわね。ワタクシを信じてくれた騎士さんの言うことですもの。ワタクシも、信じてみますわ」

~村外れの廃屋~


セレス「……亡者は、近しい者の血肉で魂を定着させると、マッケンローさんのお爺様は仰っていましたわね」

マッケンロー「うん……だから、それならもう一度血をなめたら、もしかしたら記憶も……」

セレス「…………たしかにこの血痕は両親の血でできたものですけれど……はぁ、わかりましたわ」

セレス「でも、床をなめるなんてはしたないところ、できればあまり見ないでくださる?」

マッケンロー「わ、わかった。僕たちは向こう向いてるね?」クルッ

セレス「騎士さんも、お願いしますわよ? ……いえ、こんなところまでわざわざ見守っていただかなくても結構ですからっ」

セレス「もう……んっ……」ペロ...

セレス(苦……土と埃の味がしますわ……)ペロペロ

セレス(……ここでワタクシは両親を……ワタクシの犯した罪の記憶……)ペロペロ

セレス(不明瞭な記憶のもやの中に、一体何があるというのかしら……)ペロ...

セレス「……っ!」ズキッ


 ――ザザ ザ  ザザザ ザ――――



――ザザ ザッ
母『あなた、どうしたらいいの? 村の人達は――』

父『その子を殺さねばならぬと、その一点張りだ。話し合いは平行線で、早急に決着をつけねば暴動が起こりかねない……』

母『そんな……どうしたらいいの……』

父『……これ以上は、屋敷においてやることはできない……せめて、どこかへ逃がしてやることしか……』

母『この子をもう一度死なせたくない……もう一度、今度こそ幸せに生きて欲しいの……!』

父『私も同じ気持ちだとも……ああ……神よ……! どうすればこの子を救ってやれるのか……!』

セレス『……ゥ……ァア、ォア……ァ……』

母『! あなた、この子が何か……』

父『! どうしたんだ、セレス!?』


――ガッ グチュィ...ブチッ


父『――――っぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

母『あなたぁっ!』

ムシッ グチッ...ゴクン

セレス『……ォ、ァア、さマ……? ァ……タゥ、シ、は……』

父『待て、来るなッ! この子の意識が戻りかけている……先程まで消えかけていたのに……!』

父『これが必要だというのなら、私は……! お前だけでも、この子と共に生きろ……!!』

セレス『ァア……ア……ィイ、ィオ、イ……』カハァ...

ガチュ グッ ムシャァ...  ガツッガツガツ...

母『ああ……セレス……あなた……!』

セレス『ォカあ、サ……ァ……? なンデ……ォんァ……』ユラ...ユラ...

母『そう……まだ、足りないのね……? いいのよ……こっちにいらっしゃい』

母『それであなたが、もう一度笑顔になれるのなら……どうか私の命を、糧にしてちょうだい……』

母『どうか……どうか幸せになってね……いつまでも愛してるわ、セレス……――!』

セレス『…………!』ガハァ


  ガブッ  ブチッ


 

セレス『…………』ガッ ムチッ

セレス『…………ゥ、』ガツ ガツ  クチャ

セレス『……ゥアァァア……!』...ポロッ

ガツッバクッバクッ ムシャッ    ゴクン......



セレス『……ゥアアァア、アあ、ゥァアあぁアあァぁあ…………!』ポロポロ



『――さっきの悲鳴は何だ……!?』『ゾンビの声が……まさか!』『扉をぶち破れ! 中を確認するんだ!』
ドンドン! ガタン!!

セレス『!』

セレス『ゥうっ……うあアあぁああァぁぁっ!』ダッ

ガシャァーン!

『ぞ、ゾンビだぁ――!』『あんなに血で汚れて……食いやがったのか、あのご夫婦を!』『逃がすな! 殺せ!!』

ワァァァァァ...!!

……


……

セレス『グ……ゥ、あ……はぁ、はぁっ……っく……!』ゼェゼェ

セレス『……ここハ……一体……?』

???『やあやあ! ようこそ、新しいお客さんかなぁ?』ヒョコッ

セレス『きゃっ、喋る骸骨……!? 貴方、一体何ですの……!?』

クリス『吾輩かい? 吾輩はこの魔境の地の領地をやっている、クリストフという者さぁ! 親しみを込めて、クリス、と呼んでくれて構わないよ!』

クリス『そういうお嬢ちゃんはどなた? 随分ワイルドな格好だけど!』

セレス『ワタクシは……うっ』ズキッ

 ――いつまでも愛してるわ、セレス――

セレス『うゥ……あ、あぁあぁぁァあ……!』

クリス『えっ何、待って待って、吾輩そんなひどいこと聞いちゃった!? うぅーん、これはどうもワケありみたいだなぁ……』

クリス『女の子にこういうことするのは気が引けるんだけど、それじゃあちょっとだけ失礼して記憶を……』ポゥ...

クリス『……ふむふむ。事情はわかったよ。君のご両親は、本当に君のことを愛してくれていたんだねぇ……』

セレス『でもっ! ワタクシはっ、その両親をっ……自分のっ、手でっ!!』

セレス『ワタクシは一体、どうしたら……!』

クリス『君のその涙は、君のご両親が命を賭して守ってくれたものだ。だから今は、好きなだけ泣けばいいよ』

クリス『けれど気持ちが落ち着いたら、ご両親の最期の言葉通り、君は幸せに生きることを目指すべきだと、吾輩は思う』

セレス『どうやって幸せに生きればいいんですの……! こんな、こんなひどい罪を背負ったワタクシが……! ワタクシは……もう……!』

クリス『ふむ、それじゃあここは吾輩が、魔境の地の新たな仲間のために一肌脱ぐとしようか! あそれ』ペカー

セレス『っ? この光は……いっ……たい…………?』クラ...

クリス『吾輩の魔法さ。セレスお嬢ちゃんの辛い記憶をしばらく封じておく。いずれ時が来れば……君がこの記憶に向き合えるようになったら、記憶の封印を解いてあげよう』

クリス『だぁい丈夫! もしセレスお嬢ちゃんが辛くなっても、きっとその頃には、セレスお嬢ちゃんのことを支えてくれる人が傍に居てくれるさ! 吾輩の勘はよく当たるからね!』ドヤ

セレス『…………う? あら? ワタクシは、一体……?』

クリス『さあ、ようこそ魔境の地へ! 歓迎するよセレスお嬢ちゃん! ここの住人は吾輩含め気の良い死人ばっかりだからね。きっと君も、楽しく過ごせるさ――』




セレス「…………これ、が……あの時の、真実……?」

マッケンロー「セレスさん……?」

セレス「両親は……ワタクシの両親は、ワタクシの魂が身体に留まれるようにと、わざと……ワタクシに、食べられ……」

セレス「そんな……お父様……! お母様……!! ぅ、ううっ……あああああぁぁ……!!」

マッケンロー「……娘のためとはいえ、生きたまま食べられることを選ぶなんて……」

マッケンロー「……ああ、でも、僕は少しだけわかる気がするよ、騎士様。僕の両親も、森から出てきた野獣から僕を庇って、それで……」

マッケンロー「上手く言葉にできないけど……親が子供を想う気持ちって、こんなにも強いものなんだね……」グスッ...

セレス「グスッ……ああ、ごめんなさい、騎士さん……また、みっともないところを見られてしまいましたわね……」グシグシ

セレス「もう……騎士さんと再会した時は、まさかこんなことになるだなんて思ってもみませんでしたわ」

マッケンロー「セレスさん……大丈夫? その、なんて言えばいいのか、わからないけど……」

セレス「大丈夫ですわ。これでも、ゾンビになってから何十年と過ごしているのですもの。悲しいことは……っもちろん、悲しい、ですけれど……」クスン

セレス「……それでも、自分の気持ちをちゃんと自分で整理できるくらいには、ワタクシはもうオトナですから」ニコ

マッケンロー「……それなら、良かった。うん、セレスさんがまた笑えるようになるんなら、それで大丈夫だよね!」

セレス「……ふぅ。気持ちに一区切りを付けたところで……そろそろここを去るとしましょうか、騎士さん」

マッケンロー「え、帰っちゃうの……?」

セレス「当然ですわ。生者と亡者は共には暮らせません。この村には、今更ワタクシの帰れる場所はありませんし」

マッケンロー「そ、そんなことないよ! だって……だってこの村は、セレスさんの故郷でしょ!?」

マッケンロー「ならっ、セレスさんがここに帰って来たって、何もおかしいことはないはずだよ!」

セレス「ふふっ……マッケンローさん、そのお気持ちだけ、有り難く頂いておきますわ。けれど、ワタクシももう、魔境の地で自分の屋敷を持っていますの」

セレス「ワタクシを待っていてくださる方々もいらっしゃいますし……ワタクシは、魔境の地のお屋敷に帰りますわ」

マッケンロー「……そっか……そう、だよね……」

セレス「……でも、ワタクシのことを理解してくださる方が一人でもいるのなら……時々、両親の墓参りに来るくらいは、してもいいかもしれませんわね」

マッケンロー「えっ? ……あっ、うん! いつでも来てよ! おじいちゃんたちが騒いだって、僕が説得してみせるからさ!」

セレス「あら、ありがとう。でも……ワタクシの時間感覚だと、次は何年後になるかわかりませんわよ?」

マッケンロー「それならそれで、次は僕が立派になったところを見てもらうからいいよ! そうだなぁ、いつかきっと、この辺りで一番の、すごい聖術師になってみせるから!」

セレス「そ、そう……頼もしいですわね。それはワタクシにとってはちょっと不安でもありますけど……」

セレス「……それでは、また会える日を、楽しみにしていますわ。さようなら、マッケンローさん」

マッケンロー「うん……! セレスさんも、騎士様も……またね! 僕、待ってるから!」

セレス「ええ……また、いつか」

~辺境の森付近~


セレス「……ありがとう、騎士さん」

セレス「何って、ほら……今回の旅では本当に色々と迷惑をかけてしまって……」

セレス「みっともないところも何度も見られてしまって、それはできる限り早く忘れてしまってほしいのですけれど……」

セレス「……噛み痕、もうひとつ増えてしまいましたわね。あの時は勢いで噛みついてしまいましたけれど……ちょっと申し訳ないことをしましたわ」

セレス「だって、そんなところにそんな傷跡が残っていたら、騎士さんも困るのではなくて?」

セレス「……大丈夫ですの? 本当に? たとえば……ほら、知り合いの女性の方に見られて、要らぬ誤解を招いてしまったり、とか」

セレス「……見られて困るような相手はいない、ですか……へぇ……そうですの……。ああ、いえ、何でもありませんわ。こちらの話です。……ふふ」

セレス「ともあれ……そろそろこの辺りでお別れですわ、騎士さん。ここから先はもう、魔境の地です」

セレス「ワタクシの屋敷に立ち寄って、クリスさん達に挨拶して行くというのもいいですけど……騎士さんにも、またこれから行くべき場所があるのでしょう?」

セレス「ふふ、構いませんわ。どうせ立ち寄るなら、時間のある時に、ゆっくりと滞在して頂く方が嬉しいですもの。その時までには……ワタクシも、きっと気持ちの整理を終えていますわ」

セレス「……両親を食らった罪は……きっとこの先、ワタクシが再び土に還る時まで消えはしないでしょう。それこそ、両親を生き返らせでもしなければ、決して消せはしませんわ」

セレス「けれど……二人の命と共に、ワタクシに託された願いを思い出しましたから。ワタクシがこれから先、罪の意識を背負い、両親のことを悼んで喪に服し続けるような日々を送ることは……それはそれで、両親の最期の願いを裏切るものですわ」

セレス「ですからワタクシは、この手と口で食らった両親の心が、常にワタクシと共にあるのだと思って……自分が楽しく幸いに生きられることを、両親に誇り、感謝しながら日々を過ごしていくつもりですわ」

セレス「……少なくとも、次に騎士さんが魔境の地を訪れる頃には、そうなれていたらいいと思います」

セレス「……ええ、きっと。騎士さんのおかげで、両親が遺してくれた本当の想いを知ることができたんですもの。次にお会いする時は……きっと笑顔で」

セレス「……それでは騎士さん、御機嫌よう。次に会える時を楽しみにしていますわ……」スゥッ...

「…………」

カプッ

「……!?」ビクッ

腐犬「ハッハッハッハッ」尻尾フリフリ

腐犬「ワゥ!」タタタタ...スゥッ

「…………!」

「…………」フゥ





――そうして、魔境の地へと戻っていった一人と一匹を無事に見送り、
騎士は、次の目的地へと歩き出した……





   神撃のバハムート
~蒼薔薇の令嬢と悲愛の真実~

Fin.

EDの選択肢で8連打してゾンビ化してセレスさんと一緒に永住ENDになって「えっ……これむしろGood ENDじゃないですかやったー!」って歓喜した同志に捧げます
というわけで、無駄に時間が開いてしまいましたがこれにて閉幕です
>>47を見て、そうかマッケンロー君を少年じゃなく「少女」としておくべきだったかと我が身の不出来を悔いましたが、まあセレスさんがヒロインやからこれでええねん! ええねん!

ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。依頼出しときます

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom