縺溘▽縺九↑
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1409836335
・クレしん未来パロ×とあるです
・原作再構成と言う名の原作ブレイク
・台本形式の時とそうでない時があります
・カプはしんあいと上インの予定
・1がイーモバユーザーなので投下中に支援がはいります
以上がよろしければお付き合いください
1スレ目
野原しんのすけ(15)「ベランダに女の子が引っかかってたゾ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378302253
2スレ目
野原しんのすけ(15)「ねえヘタレのオジさん、言葉のままに歪めてみれば~?」
野原しんのすけ(15)「ねえヘタレのオジさん、言葉のままに歪めてみれば~?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384085516/)
支援
とある研究室
ポルターガイスト
ボー「『乱雑解放』?」
あい「ええ。ここ最近の地震は、どうやら本物の地震では無く暴走した能力によるものらしいのですわ」
ボー「まあ、不自然に局地的だとは、思ってたけど」
あい「このままほうっておけば必ずしん様が解決の為に動かれるでしょうから……」
ボー「そうなる前に、事件を終わらせておきたい。って事?」
あい「御名答、今回はボーにも働いて貰いたいのですけれど」
ボー「ぼくにも、自分の研究が、あるから」
バースト
あい「あら、この事件は『暴走能力』……つまり現時点で唯一の『Level6』へのヒントにして可能性、が大本に在るのですのよ?」
ボー「……『木原』が動く」
・・
あい「ええ。そしてそうである以上、仮に私が動かなかったとしても貴方は動く。違いなくて?」
ボー「……」
地震によって被害がでた夏祭り会場
あい「結局、ボーは現場には来ませんのね。まあ情報収集面での協力を取りつけられただけでも御の字なのでしょうけど……」
警備員?「そこの君」
あい「はい、なんでしょうか?」
警備員?「此処は我々『MAR』が調査及び瓦礫撤去作業等を行っている。危険なので近づかないでくれ」
アンチスキル
あい「『MAR』?『警備員』では無いのですか?」
MAR隊員「その部署の一つだ。今回のような災害時に備えて常設されている」
あい「そうでしたか。では私はこれで失礼いたしますわ」
公園出入り口
アンチスキル ジャッジメント
あい「……あのMARとか言う『警備員』もどきの殿方、私が『風紀委員』の腕章を着けているか確認もしませんでしたわね」
あい(つまり、風紀委員に協力をたのんでいないと言うこと。雑務雑用は下請けさせる事も多いはずなのですが……もしや、何か後ろめたい事が有る?)
あい「これは少し、彼等について調べた方がよろしいかもしれませんわね。公的機関の表側の情報なら初春さんに手伝ってもらえれば直ぐにすむでしょうし」
あい「そうと決めたら177支部に行くとしましょう」
支援
短いですけど今夜はここまでです
というわけで、グレムリン編を期待していた方はゴメンナサイ
多分、乱雑解放編の次になると思います
では予告と誘導を前スレに貼って来ます
このスレでは1スレ目で言ってたNGKaBT【エヌジーカブト】は出てくるのだろうか…?
遅くなってゴメンナサイ
これから投下します
>>10
その予定です
第七学区 風紀委員177支部
あい「というわけで、『MAR』について調べて欲しくて此方におじゃましたのですが……なんなのでしょうこの空気は」
初春「……」ツーン
白井「……」プイッ
あい「あの二人はケンカ中なのですか?」
固法「う~ん、どこから説明すれば良いのかしら……」
数分後
ルームメイト
あい「なるほど、つまり話をまとめますと『初春さんに同居人ができた』、『その人は春上衿衣という名前』で『春上さんは地震の直前に様子がおかしかった』と」
白井「ええ、ですので……」
あい「白井さんは『春上さんが一連の地震の犯人、もしくは何らかの鍵を握っている疑いが在る』と。そして同居人を侮辱されたと感じた初春さんと険悪になった……こういう事ですわね?」
初春「はい、ひどいと思いません?白井さんだって春上さんとは友達なのに……」
白井「そう言う私情を抜きにして事に当たるのが私達『風紀委員』の……」
あい「二人共それまでです。まず、初春さん」
初春「はい」
あい「事件解決の鍵かどうかはさて置き、彼女の様子がおかしかったのが事実ならばその事はしっかりと調べるべきでは?次に白井さん」
白井「なんですの?」
あい「一連の地震は『乱雑解放』、つまりは『RSPK症候群』なのですわよ?犯人も何も在りませんわ」
固法「そうね、確かに『AMI拡散力場』(無意識に能力者が造っている力場)の共鳴、共同での暴走が地震を起こす理由なら、悪意や犯意なんてあるはずも無いか」
白井「それはそうでけれど、彼女が『原因』である可能性が有るなら……」
あい「そこです、そもそも他の原因に心当りは?」
白井「心当り?」
あい「その春上さんと言う方は受信能力者なのでしょう?なら送信側の精神感応系の方が何処かに居るはずですわ」
初春「『枝先』さんがどうしたんですか?」
あい「あらまあ、また新しく人名がでてきましたわねえ」フム
ケータイ<デンワデスオジョウサマ
あい「私のケータイですわ……ボーからですわね。ちょっと失礼……はい私ですわ」
ケータイ(ボー)「今回の事件、やっぱり『木原』が絡んでるみたいだよ」
あい「やはり動きましたわね。それで、どの様に?」
ケータイ(ボー)「地震の直後に現場に到着して、その場に残ったAMI拡散力場のデータ採集を最優先で行い、そのついでに、まるで『ちゃんと仕事している』って言い訳するみたいに瓦礫撤去をしている、奇妙な救助隊が在る」
あい「それは『MAR』のことでしょうか?」
マルチアクティブレスキュー
ケータイ(ボー)「既に知ってたか。そう、『先進状況救助隊』。通称『MAR』その隊長であり、付属研究所の所長が……」
あい「『木原』と言うわけですわね。納得ですわ」
ケータイ(ボー)「ただ、腑に落ちないのは」
あい「どうかなさいまして?」
ケータイ(ボー)「僕は、この地震は、『木原』の誰かが意図的に起こしている物だと、思っていたけど……」
あい「違ったのですか?」
ケータイ(ボー)「むしろ、これからソレをする為に、『鍵』を手に入れようとして血眼で探してる。そんな気がする」
あい「『鍵』……つまり暴走するAMI拡散力場の核と成る人物ですわね(それが先程の『枝先さん』なのでしょうか?)」
ケータイ(ボー)「それで、あいちゃんの方も、何か情報はつかめた?」
あい「あっ、そうでしたわ。正に情報を得ようとしていたところでした。ではそう言う事で失礼いたしますわ。引き続き情報収集を頼みます」ピッ
白井「あの、酢乙女先輩。MARがどうかなさったんですの?」
初春「MAIってテレスティーナさんのところですか?」
あい「さて、どこから話したものか……それより、『枝先さん』と言うのはどのような方なのですか?互いの情報を交換しましょう」
初春「えっと、枝先さんは春上さんのお友達で……」
白井「かつて木山春生の生徒だった一人ですの」
あい「そうですか木山春生の……では現在は植物状態では?」
白井「ご存知でしたの!?」
あい「ええ、あれだけの事件。犯人の動機は知っておいた方が良いかとおもいまして。彼女の記憶を読んだ食蜂さんから聞いていましたから」
白井「そうでしたか。それで、ご存知の通り木山は以前実験の失敗によって自分の生徒達を植物状態にしています」
あい「そしてその生徒達を救うにはどうすれば良いのか、その『答え』を得る為に『幻想御手』を創った」
ツリーダイアグラム
初春「『樹形図の設計者』に……世界最高の演算装置に匹敵する演算能力なんて、本当に可能だったんでしょうか……」
あい「まあ一万もの人間の脳を繋げて並行演算させればあるいは……と言うお話だったのでしょうけれど。彼女が逮捕された今となっては、何とも」
白井「ああそうでした、その木山が釈放されていますの」
あい「あらまあ、それはまたお早いことで……っ!!??」
白井「どうかなさいましたの?」
あい「その事はMARも知っているのですか!?」
初春「その事って木山先生が釈放された事ですか?ならテレスティーナさんも知っていますけど」
あい「……この状況は非常にまずい展開かもしれませんわ」
白井「あの、酢乙女先輩。一体何が……?」
あい「今、その『枝先さん』を含め『木山春生の生徒達』は、おそらく第七学区の病院……『冥途帰し』のもとに居るのではなくて?」
ヘブンキャンセラー
白井「『冥途帰し』?」
あい「カエル顔のお医者様です」
初春「あ、はいその病院ではありませんがそのお医者さんの管理する所にいます」
白井「何故解ったんですの?」
あい「そう考えれば『何故木山春生が釈放されたのか』に説明がつくからですわ」
固法「説明って?」
ドクターヘブンキャンセラー
あい「冥途帰し先生といえば、『患者に必要なモノは何でも用意する』事を信条とする知る人ぞ知る名医。彼女の釈放は『生徒達』の為に彼が働きかけたとすれば納得できます」
白井「そ、そんな権限のある方なんですの!?」
あい「少なくともその権力を持っている人間に顔がきく程度には。それよりも問題は彼女の釈放が『生徒達』の居所を示してしまっている事ですわ」
白井「子供達の所在をMARに知られるのが何か不都合な事でも?」
あい「……『木原一族』、この名に心当りは?」
白井「『木原』と言うと……」
初春「あっ確か木山先生を騙したあの実験の上役が――」
ステレオタイプ
あい「ええ、『木原幻生』彼こそ典型的な『木原』。倫理と言うブレーキを持たず、人間をためらいなく使い捨ての実験動物として扱う。しかしそれ故に科学者として(悪い意味で)優秀」
マッドサイエンティスト
固法「何それ『狂科学者』って事?」
あい「ただの狂科学者なら自身の知識欲や知的探究心に正直なだけですから、むしろ科学に対して純粋と言えますが……『木原』はそこに『悪意』が加わります『〈悪用される科学〉が擬人化した様な連中』と称する者もいますわね」
初春「『一族』ってそんな人達が何人もいるんですか!?」
あい「ええ確か……五千人程でしたかしら?まあこの内の何人かは例外的な善人もいますけれど」
初春「ゴセッ!?」
白井「あの、話が見えないのですが。その『木原一族』が今回の『乱雑解放』の真犯人なんですの?それにMARと何の関係が……」
あい「MARの隊長は『木原』だと言う情報がはいりました」
初春「ええっ!?ち、違いますよ!テレスティーナさんのファミリーネームはライフラインですよ!?」
あい「では親の旧姓が『木原』なのでは?まさか木原一族も血族内だけの近親婚のみで続いてきたわけでは無いでしょうし」
白井「初春!!」
初春「し、調べてみます」カタカタ
あい「どうでしたか」
初春「コレって!?」
PC<MAR隊長兼付属研究所所長 テレスティーナ・木原・ライフライン
あい「あらまあ、このミドルネーム。ビンゴですわね」
初春「そ、そんな……しかも木原幻生の孫娘だなんて」
ケータイ<ゴシュジンサマデンワデスノ
あい「誰かのケータイが鳴ってますわよ?」
白井「あっ私ですの。佐天さんから?はい白井黒子ですの」
変なガラ
ケータイ(佐天)「い、今、春上さんのお見舞に行ったら迷彩模様の駆動鎧が病室に……」
あい「!!白井さんっスピーカーモードに!!」
白井「はっはいですの!!」ピッ
あい「佐天さん聞こえますか?酢乙女あいですわ。まずは落ち着いて状況を説明して下さい」
ケータイ(佐天)「ソイツ等に春上さんが連れて行かれて……私、なにもできなくて……」
あい「佐天さんは今その病室から掛けているのですわね?怪我はありませんか?」
ケータイ(佐天)「はい……怪我はありません。でも、御坂さんがソイツ等を追いかけて行って……」
白井「なぁっ!?」
あい「わかりましたわ。ではそこで待っていてください、白井さんを迎えに行ってもらいますから」
ケータイ(佐天)「……はい」プツ
白井「一体なにがおこっているんですの!?」
あい「MARが、というより『テレスティーナ・木原・ライフライン』が暴走能力の『鍵』を手に入れるために強硬手段に出たようですわね」
初春「鍵って!?春上さんがですか!?」
あい「おそらく『春上さん』と、『枝先さんを含めた木山春生の生徒達』。この二つだとおもいます」
初春「そんな!なんで!?」
あい「AIM拡散力場制御実験と言う名目で実際に行われたのは、暴走能力の法則解析用誘爆実験……『乱雑解放』と無関係とするには状況証拠が充分過ぎるほどですわ」
固法「でもいくらなんでも病院から患者を拉致するなんて『警備員』が黙っているはずないわ」
アンチスキル
あい「十中八九、この件で『警備員』が動くことはないでしょう」
白井「そんなバカな!?」
あい「統括理事の中にも何人かは『木原』を支持する者や『木原』を敵にしたくない者がいますから、『上からの圧力』がかかるはずです」
固法「……っ!初春さんは監視カメラの映像を追ってMARの物と思われる大型車両を探して!!白井さんは佐天さんを連れて来て!!私は一応『警備員』に問い合わせてみるわ」
初春「はいっ!!」
白井「すぐに!!」ヒュン
あい(おそらくもう一方、『木山春生の生徒達』もすでに……)
あい「……手を打って置きますか」ボソ
初春「見つけました!!でも、コレって!?」
あい「何かおかしなことが?」
初春「車両が二つ見つかったんです。一つはその後ろを御坂さんが追っていて、もう一つの方はスポーツカーが追いかけてます」
あい「なるほど、やはり『生徒達』の方も拉致されていましたか」
初春「え!?じゃあこのスポーツカーは木山先生の!?」
白井「連れて来ましたの」ヒュン
佐天「酢乙女さん、あいつらは一体……?」
あい「佐天さんこれから私はその駆動鎧の一団から彼女たちを救出しにむかいますが……ついてきますか?」
佐天「っ!?」
レベル0
あい「『どうせ自分は無能力者だから何もできない』なんて諦めるのか、自分に何ができるかわからなくてもあがき続けるか。貴女次第です」
佐天「行きます!!行かせてください!!」
あい「良い答えです」
初春「ああっ!?」
佐天「どうかしたの、初春!?」
初春「御坂さんの後ろから大型駆動鎧が近づいてきてます!!」画面ユビサシ
佐天「これもう鎧っていうよりロボットじゃん!?」
あい「あらまあ、まるで工事重機ですわね。まあ予想通りですけど」
佐天「予想通りって……」
白井「急いでお姉さまのもとへ!!助太刀に……」
あい「その前に白井さんは佐天さんと初春さんを木山春生の車へお願いします。私は固法さんとバイクで二車両の合流予測地へむかいます、よろしいですか?」
固法「あ、私のバイクで行くのね。わかったわ」
初春「ああっ大型駆動鎧が御坂さんと戦闘を開始しました!!」
白井「!?」
あい「白井さん落ち着いてください、そんな精神状態では能力を十全に使用できないですわよ?」つ紅茶コクリ
固法「逆に酢乙女さんは落ち着きすぎじゃないかしら」
あい「ええだって……もうすでに、手は打ってありますもの」
ハイウェイの上
御坂「ったく!!なんなのよコイツは!?」
大型駆動鎧「はぁ~?こちとらンナ強硬手段をとってんだ。邪魔モンがでてくる事も想定内。ならソレを叩き潰す準備位してて当然だろぉが!?」
御坂「その声!?テレスティーナ・ライフライン!?」
テレス「はっ今頃気づいたのかよ?バカなモルモットちゃん」ロケットアーム!
御坂「くっ戦ってる場合じゃないってのに!!」レールガン!
オモチャ
テレス「当たるかよ、んなチャッチイ能力がぁ」ギャリリリリ
御坂「なっ急ブレーキを掛けて50mの間合いを取った!?」
レールガン データ
テレス「てめぇの『超電磁砲』なんざ情報がしっかりとられてんだ!!効くわけねぇだろ、んなモン」
???「へえ、じゃあ、僕の能力はどうかな?」ドパン
テレス「がぁっ!?」ガン
御坂「氷の砲弾!?」
白衣の少年「君はあの車を追って。僕が、アレの相手をするから」
御坂「わ、わかった。ここは頼んだわよ!?」ビューン
白衣の少年「……さて、そう言う事だから」
テレス「ナニモンだぁ?お前」
白衣の少年「通りすがりの、科学者志望」
今夜はここまでです。
白衣の少年……一体何者なんだ?(棒
原作アニメを見ていれば解りやすいのですが補足説明を
『幻想御手』事件の犯人『木山春生』の目的は超高度な演算能力を得て、植物状態となっている生徒達を助けることだった
一方、その生徒達の中の一人『枝先絆理』が初春の同居人『春上衿衣』と交信・共鳴することで第七学区では局地的な群発地震『乱雑解放』がおこっていた
そして彼女たちに、極悪狂科学者の集団『木原一族』の一人『テレスティーナ・木原・ライフライン』の魔の手が迫っていた
と言う事です
以下、蛇足になりますが原作アニレーとの流れの違いについて補足説明
Q顔芸オバサンの行動早くね?
1 テレス、正体不明の何者か(ボー)がMARを調べている事に気づく
2 相手が普通の警備員や風紀委員なら(上からの圧力で)いくらでも黙らせる事ができるがDAみたいな相手(統括理事会のストップとかガン無視する)の可能性もある
3 テレス、その何者かが本格的に動き出す前に行動を起こすが得策と判断。強硬手段にでる
と言うわけです
またこのSSでは佐天さんが幻想御手を使って無いので当然特別補習も受けて無いわけで、
黄泉川先生の「限界を超える事に~」を佐天さんが聞いてない(佐天さんが黄泉川先生を説得出来ない)ので
警備員は上からの圧力に屈して動けません
ある意味「バタフライ効果」と「歴史の修正力」です。
次回はおそらくボーちゃん無双になります(ボソ
1です
これから投下します
ハイウェイ 木山の車内
白井「初春、佐天さん、こちらは任せましたの」ヒュン
木山「君達は!?どうしてここに?」
初春「貴女をサポートします。今はこのまま前の車を追ってください」
佐天「今度こそ、子供たちを助けましょう」
木山「……っありがとう」
ハイウェイ 合流地点
あい「ここで待っていれば御坂さんとも木山女史とも合流できるはずですね」
トラック
固法「大型車両がみえてきたわ」
あい「あちらは、御坂さんが追っている方でしたわね」
固法「来たわ、エンジンいれるわよ」ブルルン
あい「御坂さーん!!」
御坂「酢乙女先輩!?」
アシ
あい「あらまあ、車も持たずにどうやってMARを追いかけているのかと思っていたのですが……磁力で飛んでいたのですね」
固法「乗って!!三人までは大丈夫だから」
あい「道交法的にどうかは知りませんけどね」
御坂「二人はどうしてここに?」
固法「佐天さんから事情を聞いて援護に来たわ。初春さんが監視カメラの映像からルートを予測してくれたのよ」
御坂「助かりました。正直いつまでも飛び続けられるわけじゃ無いし飛びながらの戦闘なんて初めてだし、確実に攻撃にまわせる出力も落ちますから」
あい「あらまあ、では『彼』を先にむかわせたのは得策でしたわね」
御坂「『彼』って白衣の人ですか?高校生くらいの」
あい「ええ、彼の名前は『ボー』……と言っても、フルネームは私も覚えていないのですけれど。しん様の親友であり、幼馴染みですわ」
ハイウェイ数百メートル後方
テレス「科学者志望だぁ?なんだか知らねぇが邪魔すんなら……潰すぞ」
ボー「できもしない事を言うね、オバサン」
テレス「てめぇ……!!(見たところコイツは高校生、白衣の下は長点上機の制服……)」
バラ
ボー「まずはその、大型駆動鎧、分解すよ」ビュオン
ハイドロハンド
テレス「水の鞭!?水流操作系か!!」
パンゴリンズタン
ボー「ちなみに能力名は『自在化鞭』。色々と、制限が多い能力でね。おかげで低能力どまりだよ」
レベル1
テレス「低能力だぁ!?そんなんでコイツがどぉにかできると思ってんのかぁ!?」
テレス(嘘くせぇな……油断させようってハラかぁ?でもなぁ、学籍と能力が判ってりゃぁあとは『書庫』で……)ピッピッ
ボー「どうとでもできる、そう答えさせてもらうよ」
テレス「はんっ!!それじゃあやってみせてもらおうかぁ!?」
コックピット
テレスの座る操縦席、その前面は駆動鎧に搭載されたカメラが写す外の様子は勿論の事、
それ以外にも様々な情報を映し出す為のディスプレイになっている。
そこに浮かぶ文字列を見て、テレスは呆れていた。
(コイツ……デカい口叩いておいて、要は単なるハッタリかよ?)
バンク
彼女は今、学園都市の全能力者の情報が記されている『書庫』にアクセスし、眼前の白衣
の少年の正体を暴いていた。 レベル1
それによればこの少年は正真正銘の『低能力者』の様だ。
モルモット
「できそこないの実験動物の分際で、研究者様に逆らってんじゃねぇよ!!」
テレスが叫び、大型駆動鎧の腕が白衣の少年ボーに向け発射される。
レベル5 レールガン
テレスは当初、御坂美琴……つまり超能力者『超電磁砲』との戦闘を想定していたのだ。
故にこの大型駆動鎧もそれが可能な戦闘力を持つ。
たかが低能力者程度、簡単に排除できる雑魚でしかない。
そう思っていた。
だから、
彼女は、
テレスティーナ・木原・ライフラインは、
自身の眼の前で起こった事が信じられなかった。
「まずは、腕一本」
ボーがつぶやいた刹那。
彼に向かっていたロケットアームが上方へと弾き飛ばされた。
モノ
「『水』って、意外と重たい物質なんだよ?」
彼が自分めがけて飛んでくる機械の拳に鞭をぶつけた瞬間、正確にはその直前に、鞭の先が膨れ上がり一辺1メートル程の立方体に変化した。
その立方体に真下から叩き上げられた腕は宙を舞い、そして重力に従い地に落ちた。
その形は原型をとどめてはいるものの、水塊とぶつかった部分は大きく凹んでいた。
「っ!?」
テレスが息を飲みディスプレイに視線を移し『書庫』の情報を確認する。
低能力『自在化鞭』【パンゴリンズタン】
射程距離 0.00m 評価F-
同時操作可能水塊数 1個 評価F-
最大操作水量 1000L 評価A
備考
塩化ナトリウム水溶液のみ操作可能
総評
水量に関してはこちらが用意した上限まで操作可能であったが
射程距離・同時操作可能水塊数共に無能力者相当
また扱える液体が限られている事からも異能力には達していないと判断する
そしてその内容に彼女は毒づいた。
(クソッタレが!!無能共がいいかげんな仕事しやがって!!)
射程距離が0と言う事は能力使用中は水塊に触れ続けていなければならないのだろう。
しかし水を紐状に伸ばし続ければ遠距離攻撃も可能なはずだ。
水量にしても、それが限界とは思えない。
そうした『事実上の限界』のデータがスッポリと抜けている。
おおかた実験動物への負担なんかを気にして『限界を調べる』事をしていなかったのだろう。
これだから『木原』以外の科学者は無能なのだ。
ヤリ
(だがまぁ、コイツの戦い方は今のでだいたい解った)
レベル4 レベル3
要は物量戦だ。たしか水流操作は大能力に近い強能力であってもその最大水量は300Lチョイのはず。
そんな中で1000Lを操れると言うのは相当な自身に繋がる。
(なら自分の得意分野で戦おうとするよなぁ?)
大型駆動鎧の腕と肩を繋ぐワイヤーを巻取り戻しながら、テレスはボーを挑発する様に話す。
「成程なぁ。鞭じゃなくハンマーって事か、その大きさなら約1トン……その数字だけなら大能力者級だな」
だが。と、テレスは一呼吸置き大型駆動鎧を操作する。
「テメェの能力はもう『書庫』で確認済みだ!!一つしか動かせない水塊でコイツをどう防ぐ!?」
左右のロケットアームが同時に発射される。
「別に、防げない、わけでも無いけど、避ける方が楽だね」
ボーのもつ水の鞭が地面を叩くと、彼は棒高跳びの選手の様に高く飛んだ。
その直後、彼が今まで居た位置で二つの金属の塊がぶつかり合い大きな音を響かした。
そしてそこからやや後方に、彼は水をクッションにする事で無難に着地する。
「延びたワイヤーはすきだらけだよ」
鞭の先が膨らみ、楕円形の刃と成りワイヤーを二本とも切断する。
「なっ!?」
強靭なはずのワイヤーが切られた事に、テレスは驚く。
スピーカーから漏れたその声を聞き、ボーは口の端を上げる。
「何に驚いてるのさ?今のは水塊を高速で回転させてただけだよ」
「なんだと!?テメェまさか……!?」
テレスは『木原』として、今眼の前で起きた事に対して冷静に考察しようとする。
確かにウォータージェットはレーザーに並ぶポピュラーな金属加工技術だが、
それを実際に行うには音速ないしそれに近い速度で、対象に接する面積は可能な限り最少にする必要が有る。
水塊の移動速度もmm単位での形状の精密操作も、そのどちらでも、既に大能力の域すら超えている。
まさか『自在化鞭』【パンゴリンズタン】には水塊数1と射程距離0以外の制限が無いと言うのか!?
「ようやく、気づいたみたいだね。そこまでバレたなら、もう隠さなくても、いいかな」
テレスの声色から察したのだろうボーが、銃口を向ける様に駆動鎧を指さして言った。
はな レールガン
「ナメてんじゃねぇぞ!?いくら強い能力でもこっちは最初から超能力者を相手にするつもりだったんだ!!」
途中で切り落とされたワイヤーを肩からパージし、もう一対の予備アームを構える。
腕を発射しようとするが、既にカメラアイの寸前まで、水の鞭が伸びていた。
「細かい操作と、その速さ、二つが合わさればこんな事も出来る」
彼の指先から伸びた鞭が、その先が、機体に触れた瞬間、爆発した。
「がぁっ!?何をしやがった!?」
激しい衝撃により、大型駆動鎧が数メートル程後方へ移動し、テレスが毒づく。
「水を、高速で細かく振動させると、温度が上がる。だよ」
分子レベルでの操作をしたと言うのに、ボーは事も無く答えた。
「さてオバサンに問題、沸点を超えて、それ以上に熱くなっている時に、刺激を与えると?」
テレスはそのボーの言葉で爆発の正体を知る。
「突沸、いや水蒸気爆発だと!?」
「正解」
再び鞭が伸び、テレスは回避しようと駆動鎧を操作するが、意に反して大型駆動鎧は動いていない事に気づいた。
カメラを切り替えて見れば、大型駆動鎧の下半分が氷に包まれていた。
「なっ!?」
「何を驚いているのさ、『突沸』が出来るなら、その逆……『過冷却』も出来る。って考えなかったの?」
もっとも気体である水蒸気や、固体である氷になった時点で僕のコントロールからは外れるけどね。と、彼は続けた。
「……これだけの水、いつの間に用意しやがった?」
白衣の下に、分厚い鎧を着る様に水を隠しても、一トン程度が隠せる限界のはずだ。
だが今、大型駆動鎧の周りの氷は、ソレをはるかに超えていた。
「……」
ボーは無言で一番最初に砲弾としてぶつけた氷塊を指さした。
テレスの視界、ディスプレイに映るソレは、最初と比べ幾分か小さくなっている気がした。
「成程なぁ。必要な分をその都度溶かしていたって訳か」
「疑問も解けた?じゃあ、バイバイ」
凍り付き回避も防御も不可能になった大型駆動鎧の、
カメラアイの視界が白い爆発に覆われた。
第二十三学区の某研究施設
あい「この施設にいた、MARとの戦闘を御坂さんが一手に引き受けてくれたのはありがたいのですが……」
佐天「まさか、一人残らず気絶せてしまうとは……」
固法「子供たちが何処の部屋に運ばれたか訊きたかったんだけど……」
白井「お姉さま……」
御坂「し、仕方ないじゃない!?もっといっぱい居ると思ったんだもん!!」
初春「見つけましたー!!こっちに居ましたー」
木山「君達も来てくれ」
子供たちが集められた大部屋
あい「そちらの方が春上さんかしら?既に怪しげな機械が取り付けられていますわね」
木山「無理に外すのは危険かもしれない……資料がないか施設の中を探そう」
佐天「ああ、取説的なものですか?じゃ私は二階を探して来ますね」
初春「監視カメラの映像、施設内に誰か入ってきました!!」
あい「あらまあ、ソレは白衣を着た高校生くらいの殿方ではなくて?」
クレアボイアンス
固法「私が透視能力で見てみたけど、どうやら『その人』のようよ」
ボー「こんにちは、初めまして」ヌッ
初春「わあ」
あい「思ったよりも早かったですわね」
ボー「水で大きな、ボールを作って、その中に入って、飛んできたから」
あい「相変わらず、低能力とは思えないチート能力ですわねぇ」
ボー「それで、状況は?」
あい「ええ実は……」
互いに状況説明やら自己紹介やらで十数分後
御坂「見つからないわね……」
あい「春上さんさえどうにかできれば、枝先さん達は地震を起こさずに目覚めさせる案はあるのですけど……」
木山「本当か!?」
白井「どうするんですの?」
あい「要はネットワークから切り離せば良いのです。そしてそれが出来る能力を持っている方に心当たりがあります」
御坂「え、もしかしてそれって……っ!?」ズキッ
甲高い音<キ―――ン
固法「キャパシティダウン!!」ズキズキ
白井「ぐっ」ズキズキ
初春「くう」ズキズキ
ボー「……」ズキズキ
木山「何だ!?この高い音がどうしたんだ!?」
あい「どうやら、トラップのようですわ。この音が鳴っている限り私達は能力を満足に使えないばかりか頭痛に襲われます」ズキズキ
???「良く知ってるじゃねぇか。コイツの実践データを採らせたクズ共に知り合いでも居たのかよ?」
固法「テレスティーナ・木原・ライフライン!!アナタがビッグスパイダーにキャパシティダウンを……!?」ズキズキ
テレス「ビッグスパイダー?クズ共の名前なんか一々覚えちゃいねぇけどな、どこぞのスキルアウト共にってんなら正解だ」
ボー「あの大型駆動鎧、その今着ている駆動鎧を装着した上で操縦してたのか……」
テレス「おかげであの爆発にも耐えられたぜ」
木山「子供たちをどうするつもりだ!?」
テレス「ありがたく思えよぉ?このガキ共はレベル6誕生の礎になれるんだ」
木山「何だと!?そんな事の為に……」
ボー「確かに、AIM拡散力場を共鳴させて暴走させれば、必要な量のエネルギーは得られるかもね」
テレス「ほーう。流石に科学者志望、理解が早いじゃねぇか」
ボー「で、その膨大なエネルギーを、コントロールする方法は?」
テレス「は?」
ボー「『ここにソーラーパネルがあるので光が当たる様に核ミサイルを撃ってみましょう』って話だよね。オバサンの考えって」
木山「なっ!?」
ボー「しかも変電機も無し、そもそも動かしたい電気機械も、それとソーラーパネルを繋ぐ導線も無しでやろうとしてる」
木山「なんだソレは、破綻してるどころじゃ無い。失敗するのは眼に見えてるじゃないか、『木原』は優秀な科学者のはずだろう!?」
ボー「確かに『木原』は、優秀な科学者だ。でも『優秀な木原』は、科学者失格だ」
テレス「その台詞!?聞き覚えがあるぞ。テメェがあの『木原以上』だったってぇのかぁ!?」
オーバーサイエンス
木山「『木原以上』だと!?あの噂に聞く天才児か!?」
ボー「そう、呼ばれた事もあるけど、僕は一体どんな噂になっているの?」
木山「数年前に学園都市にやってきた天才児は、イヌ科愛玩動物用翻訳機といった様々な発明品を発表した……」
テレス「だがソレらは全て、もはや非科学的とさえ言える程のオーパーツ群……それ故に半ば学会から追放された鬼才。だったか?」
ボー「詳しいね」
うち
テレス「で、『木原』の誰かがソイツを養子にしようとして断られた。その理由を訊かれたソイツの返事がさっきの台詞だ……『木原』が科学者失格だとは何の冗談だ?」
ボー「別に冗談でも戯言でもないよ」
テレス「あ?」
ボー「本来、『科学』その物に善悪なんて無い。悪用される事もあれば、平和利用される事もある……」
テレス「何が言いてぇ」
ボー「なのに、悪用しかできないのなら、それは科学の半分にしか関われない事になる」
テレス「ハッ!!悪用だろうがなんだろうが、科学の発展に成るならソレが科学者の本懐だろぉが!?倫理だの良識だのと言い訳する無能な偽善者こそ科学者失格だ!!」
ボー「自分が見つけた物は、創った物は、いつか誰かが悪用するかも知れない。自分が産み出した『新しい科学』が、人を殺めるかも知れない……『ノーベルの苦悩』は、優秀な科学者なら避けて通れない命題だ」
テレス「『木原』には無縁な話だな」
ボー「だから『木原』は、科学者として優秀だ。時として、『科学』の邪魔になる物が無いから。でも、それ以上に邪魔をする物を持っている」
テレス「何だと?」
ぼー「悪意とプライド、だよ。現にオバサンもそれで失敗している」
木山「さっきのレベル6を造るのに肝心な部分が抜け落ちていた事か……」
ボー「かの発明王、エジソンは言った。『実験に失敗は無い、何故ならこの方法では上手く行かないと解ったのだから』。でもオバサンは、『既に上手く行かないと判っている方法』に、拘った」
木山「何故そんな……」
ファーストサンプル
ボー「多分、その理由は自分が『最初の被験者』だったから。同系統の手段に拘った、失敗すると答えの出ている手段に……」
テレス「テメェ、今すぐにソノ口を閉じろ……!!」
ボー「くだらないプライド、それは『常識』以上の『科学の邪魔』だ」
テレス「黙りやがれぇぇぇっ!!!」
ボー「だから『優秀な木原』は科学者失格なんだよ、悪意を介してでしか科学に触れられない。そして、いいかげんに気づいたら?」
テレス「っ!!音が!?」
御坂「止んでるわよ」バチッバチッ
テレス「クソッタレがぁぁぁ!!」つ鎗
御坂「遅いっての!!」ビリビリビリビリ
テレス「グアアァ―――……」バタッ
あい「ふむ、これで読心能力者でも風紀委員からよこしてもらえばこの怪しげな機械類の操作方法も判りますわね」
白井「お手柄ですわね、佐天さん」
佐天「エヘヘ」ヒョコ
御坂「あれ佐天さん!?二階に行ってたんじゃ?」
佐天「二階からでもここの様子はわかったんです、だからあの音が効かない私がなんとかしなくちゃって……」
ボー「正直、助かったよ。時間稼ぎしたかいがあった」
あい「ああ成程。あの挑発と貴方らしからぬ長台詞には、そんな意図がありましたのね」
白井「あの激しい頭痛の中でよくそんな事が思いつきましたの」
ボー「いや、頭痛はそんなに……」
レベル1
初春「ええっ?私も低能力者ですけど普通に痛かったですよ!?」
テレス「ほう、私にも詳しく教えてほしいな」
御坂「テレスティーナ!?たくもーしつこいわね!!」
ボー「待って」バッ
御坂「え?」
ボー「僕がやる。後で、機械類の、操作が必要になるかも知れないから、君と初春さんは温存」
テレス「……レベル5が相手をするまでもない、レベル1の自分で充分だって挑発のつもりか?」
ボー「挑発じゃなくて、事実。もう、準備はすんだからね」
テレス「なっ!?」ガクッ
ボー「駆動鎧内部の人工筋肉を、ズタズタに切り裂いた。立っているのがやっとのはずだよ」
テレス「グッ……コイツ、鞭を細く伸ばして、鎧の中に……!!」グググ
ボー「さて、チョットくすぐったいよ?」
テレス「んぁ!?中の水が、動いて、胸に集まって!?」
佐天「首の方から垂れた水が、風船みたいに膨らんでる!?」
テレス「テメェ、何する気だ!?」
パイロキネシス エアロハンド エアロシューター ハイドロハンド
ボー「『発火能力』、『空力使い』、『風力使い』、そして『水流操作』」
テレス「あ?」
テレキネシス
ボー「全ての『念動力』系の能力者は、精密操作を極めれば、第四位の能力に至る。って言う説を、僕は支持してる。おかげで、その一歩手前までは行けたよ」
メルトダウナー
テレス「第四位……?『原子崩し』の一歩手前だと……テメェまさか、この水の中の気泡の正体は!?」
ボー「そう、食塩水の水分を、元素別に分解して造った混合気体。だよ」つ白いナイフ
テレス「ナイフだと?……!!」ハッ!!
ボー「さあテレスティーナ・木原・ライフライン。化学の問題だ」
テレス「……」ギリィ
ボー「その水でできた風船に向けて、この『ナトリウムの粉末を食塩の結晶で薄く包んで造ったナイフ』を投げたら……どうなるかな」ビュッ
オーバーサイエンス うちら
テレス(ようやく解ったぜ。コイツの、『木原以上』の二つ名は、『木原』以上の発明品を作るからじゃ無い。コイツの思考は、『木原』以上に『木原』なんだ……)
水風船<PANN!!!
ボー「模範解答は、表面の食塩が水に溶けて、ナトリウムが水に触れて発火、風船内の可燃性ガスに引火して爆発。かな?」
テレス「」シーン
ボー「まあ、一瞬で燃え上がって、燃え尽きるから、フラッシュスタン程度にしか使えないんだけどね」
あい「皆さん大丈夫ですか?」Eグラサン
佐天「う~。眼の前がピカって……一体何が起きたんですか?」
あい「ボーが、水から酸素と水素の混合気体を作って爆発させたのですわ」
固法「何それ、水流操作の能力の範囲を越えて無い!?」
あい「けれど、ずいぶん手加減したみたいですわね」
初春「手加減?」
トリチウム
あい「ボーいわく、やろうと思えば『三重水素』も作れるそうですから」
佐天「え!?それってつまり水バ……」
あい「もっとも、『頭痛がひどくなるからやりたくない』そうですけれど」
佐天「あ、もういいです。あの人の能力については、これ以上聞くと私の中の何かが変わってしまいそうなんで。常識とか色々」
初春「でもあの音の対策は聞きたいですよ」
御坂「そうね、これから先も、似たような道具を使う奴が敵になるかも知れないしね」
白井「お姉さま、一般人が荒事に首を……」
御坂「ハイハイ後で聞くから」
固法「それで、君はどうやってあの頭痛をおさえたの?」
ボー「うん、まず前提として、アノ音は、能力を100%封じれるわけじゃ無い」
御坂「そうね、私だったら電撃を撃つ位はできるかしら。まず的に当たらないでしょうけど」
ボー「僕はそう言う、なんとか『使える範囲』で能力を使って……」
御坂・初春・固法・白井「「「ふむふむ」」」
ボー「水を振動させて、指向性スピーカー代わりにして、キャパシティダウンの逆の周波数になるように、音をだしたんだよ」
御初固白「「「」」」
数日後 喫茶店『男たちの挽歌』
あい「……と言うことがありまして、上条さんのお力添えいただいたおかげで無事に群発地震もやみましたわ」
しんのすけ「ほほう、確かに考えてみれば、AIMも能力の一部ですからなあ。上条君の『右手』で消せるわけだ」
あい「そして、問題を先回りして解決しておいたおかげで、こうしてあいはしん様とデートできるというわけですわ」
しんのすけ「……それで?アノ飛行船の動画広告に写っている子供たちがソノ木山先生の生徒達?」ソラヲユビサシ
あい「ええ、なんでも木山女史の誕生日だそうで。微笑ましいですわね」ニコ
しんのすけ「ところであいちゃん」
あい「はい」
しんのすけ「上条君へのお礼って高級食材とかだったりする?」
あい「ええ、高級と言うほどの品ではございませんが、食料を。インデックスさんは健啖家だと聞きましたから」
しんのすけ「ああ、やっぱりそれでか」
あい「あの、なにか不味い事でも?」オズオズ
しんのすけ「いやね、実はさっきここに来る前、上条君に会ったんだけどその時にね……」
上条「インデックスの舌が肥えて、前より3ランク高い品を買いたがるようになった……ふ、不幸だ……」
今夜はここまでです。
と言うわけで、乱雑解放編でした。
ボーちゃんの能力の使い方は
『大質量による飽和攻撃』よりも『高速での精密操作による多彩な戦術』でした
読者様方の予想を裏切れましたかね?
次回は月曜日の夜九時投下予定です
以下、ボーちゃんの能力『自在化鞭』【パンゴリンズタン】の正しいデータまとめ
最大射程距離 5000m(ただし水塊に触れてる必要あり)
同時操作可能水塊数 1個(ただし本が一つなら九条鞭を一条ずつ動かすのも可能)
精密操作 元素ずつに分けれる(ただし精密操作にはその部分が眼に見えている必要あり)
ボーさんすげえ
どうも、今からドラクエ無双が楽しみで仕方がない1です(いつか学園都市無双でないかな……)
これから投下します
>>68-70
ボーちゃんはクレしんキャラの中でも特に『自分だけの現実』が強そうな気がします
春日部市双葉町 馬の尻公園
体の大きな少女「遅いなぁ」
くせ毛の美少女「まぁまぁ美憂、桃も手習いとやらで忙しいのでしょう。もう少し待っていてあげましょうよ」
いかつい少年「ひまわりちゃんは優しいなあ」
美憂「なにゲンキ、それは私が優しくない的な?」
ハンサム美少年「いや美憂ちゃん、ゲンキにそんな他意はないって」
ゲンキ「本田くん!!いつも庇ってくれてありがとう!!」ウルウル
ひまわり「ゲンキは感激屋だなぁ」
美憂「これにはヒトシも苦笑い」
ヒトシ「してないよ?」
ショートの美少女「ごめーん、遅れちゃったねー」
ゲンキ「あっ桃ちゃん!!」
ヒトシ「それじゃあメンバーがそろったところで、定例会を始めようか」
ひまわり「何か報告のある人―?」
桃「はいっ!!」
ヒトシ「はい石坂さん」
桃「実は遅れた理由でもあるんだけど。ここに来る途中で泣いてる子供にあったの、幼稚園児くらいの」
ひまわり「ほうほう、桃はその子を泣き止ませていて遅れたの?」
桃「ううん、ちがうよひまわりちゃん。その子は今もカバの尻公園で困ってると思う」
美憂「ん?どーいうこと?」
桃「失くし物をしたんだって。だから一緒に探してたんだけど結局は見つけられなくて」
ゲンキ「うん?」
桃「それでその子に『探すの手伝ってくれるお友達を連れてくるよ』って言ってここに来たんだけど。おねがい、手伝って?」
一同「「「そこをもっと早く言いなよ」」」
ヒトシ「……ええと、じゃあカバの尻公園に向かおうか」
みんな「「「うん」」」
カバの尻公園
ひまわり「あった、この竹刀袋でしょう?」
幼児「ありがと、おねいちゃん。これでどーぞーにチコクしなくてすむよ」
ゲンキ(銅像に遅刻?ってなんだろ?)ヒソヒソ
ヒトシ(たぶん、『道場』だと思う)ヒソヒソ
桃「良かったねー」
美憂「時間押してんの?ならもう行ったほうが良くね?」
幼児「うん!!……あ」
桃「どうしたの?」
幼児「どーぞーのばしょわかんない」グス
美憂「おい!?」
ひまわり「では剣道少年君。せっかくだから道場まで送って行ってあげましょう」
幼児「いいの!?」パァ
ひまわり「乗り掛かった舟ですから。それで道場の名前はわかりますか?」
自分流剣術道場
ひまわり「おおう、まさか此処だったとは。どうもご無沙汰しています、竜子さん」
竜子「相変わらず、アイツの妹とは思えない礼儀正しさだな……ありがとよ。うちの門下生が世話になった」
幼児「おねいちゃん、せんせーのおくさんとトモダチだったの?」
ひまわり「お友達と言いますか、色々とありまして」
竜子「しかし、迷子になったあげくに竹刀も失くしたとは……ほら、お前もこいつらに礼を言え」
幼児「うん!!ありがとー。おねいちゃん、おにいちゃんたち」
ひまわり「次は気を付けるんですよ」
ゲンキ「どうする?公園に戻る?」
ヒトシ「そうだね、戻るまでの道すがらゴミ拾いと、困っている人がいないかパトロールだ」
美憂「賛成」
路地裏
横たわる不良「」シーン
ひまわり「おおうこれは大変だ。お兄さん、大丈夫ですか?」
不良「う、うう」
ヒトシ「話せますか?何があったんですか?」
不良「女をナンパしたらその彼氏らしい男が出て来て、最初はやたらビビッてたからちょいと脅せば女を置いて逃げるかと思ったんだが……ソイツが豹変して……」
美憂「で、返り討ち?マジダサくネ?」
不良「グ」ガク
ゲンキ「美憂ちゃん、それトドメだよぅ」
ひまわり「……ひょっとして、その女の人はうさぎのぬいぐるみを持っていませんでしたか?」
不良「あ、ああ持っていた。ソレをバッグから女が取り出したトタン、男の雰囲気が急に変わって……」
ひまわり「とりあえず、近くのお医者さんまで行きましょう。ゲンキ、肩かしてあげて」
ゲンキ「わかった」
不良「ありがとよ……お前、ガキのわりにタッパあんな……」
ゲンキ「父親譲りです」
ひまわり「ここからだとサンタバーバラ接骨院が一番近いかな」
サンタバーバラ接骨院
ひまわり「徳せんせーい、急患ですよーう?」
徳郎「ああ、これはヒドいね。丁度他の患者さんが居ない時でね、直ぐに診てあげよう」
美憂「あれ?梅さんのダンナじゃん!?」
ゲンキ「え、本当!?」
???「ええ本当よ、ゲンキ君。彼が私の旦那様よ」
ひまわり「あっ梅さん!!」
梅「三人とも久しぶりね。卒園してからはめったに会わないから」
徳郎「梅、どうしてここに?」
梅「コレ、忘れてたわよ」つお弁当
徳郎「わざわざ職場まで届けてくれたのかい?ありがとう」
梅「べ、別にこれくらい、夫婦なら当然でしょ!?」
ひまわり「お熱いですなぁ」
ゲンキ「け」チッ
美憂「イチャつくのは別に良いけど、私らが連れてきた怪我人、ちゃんと診てやってよね」
徳郎「と、いけないいけない。じゃあ早速始めようか」
馬の尻公園
ヒトシ「じゃあ、本日の『NGKaBT』【エヌジーカブト】の活動はここまで。解散!!」
ひまわり「バイバーイ」
美憂「またね」ノシ
ゲンキ「じゃあまた」ノシ
帰り道
桃「ねえ、ひまわりちゃん……」
ひまわり「なんでしょう?その前に私からも質問を一つ良いですか?」
桃「質問?なにかな?」
ひまわり「貴方は誰ですか?」
桃「……どういう意味かな?ひまわりちゃん」
ひまわり「ソレです。桃なら私を『ひまちゃん』と呼ぶはずなのです」
桃?「……」
ひまわり「他にも細かく言えば、桃らしからぬ言動を貴方はしていました。私には判ります、何せ比喩で無く『生まれた時から知っている』幼馴染みですから」
桃?「……私からも質問いいかな?」
ひまわり「どうぞ」
桃?「『エヌジーカブト』って何の略?」
ひまわり「New Generation Kasukabe Bouei Taiです。当然それは桃も知っている答えですから、観念したと受け取りますよ?」
???「あー、うん。観念した観念した。騙して悪かったな、俺だよ」
ひまわり「貴方は確か……『トール』さんでしたか?お兄ちゃんからは『女装家のお兄さん』だとは聞いていましたが……」
トール「お互いメンバーなのに、直に顔を合わすのはコレが初めてだったな」
ひまわり「私は新入りですから。そもそも『グレムリン』がどうやって出来たかも、お兄ちゃんが何故参加しているのかすら知りません」
トール「ふむ」ウーム
ひまわり「どうかしましたか」
トール「良しナンナちゃん、新入りの君にお兄さんが『グレムリン』結成の物語を聞かせてやろう」ポン
今回はここまでです。
次回投下は木曜日の夜九時の予定です
次回、勇者と魔神が出逢う時、物語は嵐を呼ぶ!!(基本ギャグです)
徳郎さんテロで死んでないのな
とある時空だしテロ自体が起こんなかったか違う事件が起こったのかね
ひまちゃんもグレムリンメンバー?兄弟そろってすごいわ。気になったがグレムリンって新約から出てきた魔術結社だと思うが、ここではいつごろ結成したのだろうか?原作の設定とこっちの設定が混ざって時々混乱してしまいます。
徳郎さん生きてるのか!
松坂先生が幸せそうでよかった…てっきりこの人もしんのすけの救えなかった人のうちの1人かと
1です。これから投下します。
>>83>>85
1スレ目にさわりだけかきましたがこのSSの時間軸ではアニメと原作両方の設定を活かしたいので
アニメ→徳さん死んで無い
原作→紆余曲折乗り越えて二人が結ばれた
の二つが混ざってこうなりました
>>84
二次SSを読んでると1も時々そうなりますね
原作読み返して、「アレ?このキャラとこのキャラってデキてるんじゃなかったっけ?」とかなります
混乱させてすみませんがこればかりはSS読みとしては「馴れるしかない」と思います
>>86
VSテレスティーナのシーンは実はボーちゃんの台詞を大分カットしているんです
長台詞や彼だけがしゃべるのは彼のキャラに合わないと思ったので
なので今回はお蔵入りした彼に言って欲しい台詞は、まだけっこう有ります
冬もそろそろ終わりかと言うその日、後に魔術結社『グレムリン』を立ち上げその当主となる少女、オティヌスは手に入れた情報に、久方ぶりに胸を躍らせていた。
アレイスター カード
「『銀の星の男』が新しい『原石』を手にしたようだな……」
『原石』それは人類史上、節目節目に現れ歴史の表裏を問わず活躍し、今なおごくまれに現れる異能者や超人達をさす言葉である。
そんな『原石』達を羨ましく、あるいは妬ましく思う人間は、少なからずいたのであろう。
この世界の秘匿された一面である『魔術』は、『原石』達の『能力』を何とか再現しようとして生まれた物だ。
そしていつしか、その時として『才能無き者の為の牙』と呼ばれる特殊技術は、裏社会の更に奥深く、あるいは上流階級のごく一部といった人々の間で……
『魔術』は学問として確立されていった。
しかしそうなると、多くの『魔術』を使える者たち、『魔術師』達が産まれるようになった。
その中には、原石でこそなかったが、いわゆる『天才』も含まれており、彼等は『魔術師を超えた者』……『魔導師』と呼ばれた。
そして……更に極々僅かに少数、『魔導師すらも超越した者』が現れた。
オカルトサイド
魔術側の世界であっても『理論上存在しうると言うだけで実在はしない』とされている彼等……『魔神』は、しかし確かに存在していた。
今日、双葉町を訪れた少女、オティヌスもまた、そんな『魔神』の一人であった。
「今回は、『当たり』か……?」
口の端を上げ、彼女はつぶやいた。
彼女は『魔神』へと至り、『無限の魔力』を得てしまったが故の思わぬ副作用、自身の特異体質に悩んでいた。
思わぬ副作用、それは常に『50%の失敗』を伴うと言う呪いにも似たモノであった。
その理屈は単純だ『無限』は100分の1になろうが1億分の1になろうが『無限』なのだ。
故に何らかの魔術を使う為に魔力を使えば、その『余波』……つまり『余分である』『本来不必要な』『失敗の原因ともなる』魔力もまた、十二分に込められてしまうのだ。
つまり正の結果も負の結果も、どちらも等しく起こりうる状態に成ってしまうのである。
その為に彼女はその膨大と言う表現では生温い程の魔力、『無限』のエネルギーに方向性を持たせる為の手段を探していた。
例えば『神』が使う事を前提にする霊装、『神器』の製作をめざしたり、例えば既存の魔術理論に当てはまらず、また学園都市の超能力とも理を異にする、全く新しい異能の理論を組み立てようとしたりだ。
道具
「コイツを下僕にすれば、あるいは『槍』を創るよりも確実かもしれんな……」
要は今の自分は、『重心の偏りが全くない一枚のコイン』の様な状態だ。
トスした結果が、常に表であり続けることなどあり得ない。
しかし今はこの街に住み、春からは学園都市に移り住むと言う『原石の』少年『法則無視』ならば、ソレが可能だと言う。
「『野原信之介』だな?待っていたぞ」
そしてその少年は今、彼女の眼の前に居た。
どうやら犬をつれて散歩していたらしく、片手に小ぶりのハンドバッグ、もう一方の手には三匹の犬がそれぞれつながれたリードを持っていた。
「オラに何か用?ところでお嬢ちゃんバッチリ決まった魔女っ子ファッションだねぇ、でもハロウィンはとっくに過ぎてるゾ?」
「クック、この私を前にして軽口か、剛毅な事だ。結構結構」
彼女はそう言い、マントを翻す。
そのとたん、彼女の魔力があふれ出し、周囲の空気を張りつめた冷たいものに変える。
「おわ!?過激なデザインの下着オンリー!?ダメだよお嬢ちゃん、その遊びが許されるのは小学校に上がるまでだけだゾ!?ほらシロたちも怯えるし」
「……如何にも調子がずれるな。まあ良い長い前置きは好かん、野原信之介、お前の『法則無視』を私に魅せてみろ!!」
叫びと共に、彼女の魔力が一際大きく弾ぜ、空間が震えた。
「あっ、お嬢ちゃん学園都市の人?コレって戦闘を模した実践形式のデータ採取か何か?もーなら早く言ってよう。じゃ、一丁ヤリますか!!」
これが、複数回繰り返されることになる彼女としんのすけとの決闘、その始まりとなる一戦であった。
「と、まあ。コレが『隻眼の魔神』オティヌスと『嵐を呼ぶ勇者』しんのすけのファーストコンタクトだそうだ」
俺もオティヌスから聞いただけだけどな。と、トールは物語を紡いでいた口をそこで一度休めた。
ひまわりは怪訝な顔で彼にたずねる。
「なぜオティヌスさんは、『50%の失敗』と言う『不運』な自分が、『大数の法則を無視』して『都合の良い結果を引き寄せる』、『悪運持ち』のお兄ちゃんに勝てると思ったんでしょう?」
運も実力の内と言うのならば、この二人には逆転しえない絶望的な実力差が在ると言えるだろう。
にもかかわらず、なぜゆえに彼女は戦いを挑んだのだろうか?
「さてね、理由は色々と考えられる。単純に自分より強い奴が居るなんて考えもし無かったとか、あるいは『法則無視』がどれ程のモノか、身をもって確かめる為にあえて負けると解っていて挑んだか……」
「なるほど、それなら……」
ひまわりは後者の理由に納得しかけたが、トールは言葉を続けた。
「たださぁ……」
「ただ?」
「俺もこの話をあいつから聞いた時、同じ事が気になって訊いてみたんだよ。そしたら……」
「そうしたら?」
「無言で顔真っ赤にして横っ面殴られた」
「つまり十中八九前者だったんですね……」
「首がもげるかと思った」
「魔神の照れ隠しぱねぇ」
今夜はここまでです。
次回投下は日曜日夜九時の予定です
次回は前スレで要望のあったアノ人が出ます。
そういや靴底親子どうなった?
乙
まぁ、50%の失敗持ちでしんちゃんに敵対すりゃその50%の失敗引き続けるよな
>>98
100%の成功を引き続ける能力者でも法則無視されて全部失敗にされる相手に50%も入り込む隙を与えてたら勝てるわきゃねーべよ
まさおはやっぱり豹変タイプかwwww
いえむしろ遅い遅い早くしろだなんて言うアホがすいません
了解
1です。これから投下します
今回は本日DVD/BD発売の最新映画のネタバレを含みますのでご注意下さい
>>97
アツミ(娘)の方は1スレ目にでてきます
彼女は冊川中学で初春さん佐天さん達のクラスメイトという設定です
厚子(母)は今も春日部で主婦やってます
>>98
1もそう思ったので『こう』なりました
>>99
今のしんのすけはそこまで凄いことはできませんが、槍無しのオティヌスには厄介な相手でしょうね
「ゆびをふる」とか「パルプンテ」とかしんのすけ相手には絶対に使ってはいけない手ですね
きっと「じばく」とか「メガンテ」とかが発動することでしょう(しかもしんのすけに当たらない)
>>100
はい不良をボッコにしたのはマサオくんです
>>102-104>>106-107
お待たせしました
あたたかい言葉、ありがとうございます
数日後、某安アパートの一室……もといオティヌスが双葉町で新たに得た隠れ家にて。
彼女は世界の表裏を問わず方々から集めた資料を眺めていた。
流石に彼女も幾度の敗北から学び、『魔神』としての自分は『法則無視』との相性が最悪であり、正面から戦ってもまず勝てないと考えた。
ならばとまずは『彼』についてもう少し調べる事にしたのだ。
アンタッチャブルファミリー
「裏社会の都市伝説『野原一家』、か……」
その結果解った事は『彼』とその『家族』は、裏社会から恐れられているらしいと言う事だ。
いわく、幾つもの組織が滅んできた時、そこにはかの一家が関わっていたと。
まず
「ふむ、最初は……」
まず記録に残っている最初のケースはインド洋周辺で活動していた犯罪組織『ホワイトスネーク団』の壊滅に関わった事だ。
「古代ブリブリ教を魔教たらしめた伝説の『魔神』か……」
思うところが無いでも無いが、今はその事は関係ない。
ホワイトスネーク団は表側の組織だが、この件は魔術側にも深く関わっている故か、詳しくは判らなかった。
確かなのは、『ホワイトスネーク団は壊滅する直前、彼を拉致していた』と言う事だけだ。
しかしそれだけならば『偶然』で片付いたであろう出来事も、数が重なればまた違って見えてくる。
ホワイトスネーク団の一件からしばらく、とある魔術結社――正確には退魔師の一族――が、警察に逮捕された。
表向きの罪状は大学の考古学研究室からの窃盗と幼児誘拐、この時にさらわれたのが『彼』の妹だと言う。
それから後、今度はまた『彼』本人が、幼稚園の遠足中に友人四名と共に秘密結社『ブタのヒヅメ』に連れ去られた。
そしてそう時を置かず、ブタのヒヅメは壊滅した。
そして……YUZAMEの、巨大ロボットによるテロ事件。
ソレはまさに『災害』と呼んで然るモノだった。
被害総額はある程度正確な物となると、資産する事すら困難を極めた。
何せ『ロボットが破壊した物』の値段を省き、『ロボットを破壊する為に使用した物』だけで百数十億円だったというほどだ。
奇跡的に死者こそ出なかったものの、負傷者は123名に及んだ。
もっともこちらも、当時の被災地の状況を考えれば奇跡的な少なさなのだろうが……。
それほどの犠牲を出した巨大ロボットが、最後はこの町、当時も変わらず『彼』等『一家』が住んでいた町、春日部市双葉町で沈黙した……。
表向きにはロボットは自衛隊によって撃破された事になっているが、『彼が関わっているはずだ』と言うフィルターを掛けて見れば、やはりそうとしか思えない事件であった。
他にも同様の事件は、数多く見つけることが出来た。
所属する売人と殺し屋が逮捕された事に始まる麻薬組織モルヒーネ・ファミリーの壊滅。
モロダシ共和国にてクーデターを企てた、当時の副大統領ヒップとそ私兵団全員の逮捕。
日本各地の都市機能をダウンさせるほどの大量誘拐事件を起こした、イエスタデイ・ワンスモアの解散。
テロ組織ひなげし歌劇団の終幕と宇宙監視センターUNTIの長官の更迭。
自然保護団体を装うカルト集団SKBEの指導者であった双葉町町長、四膳守の失踪とそれに伴う組織の崩壊。
軍国主義と事実上の独裁体制で知られた、スカシペスタン共和国での兵器工場群の連鎖爆発事故とソレをきっかけとした国家単位での趣旨替え。
排他的だったA級グルメ機構の最高責任者グルメッポーイの差別思想からの脱却。
デモ団体ちちゆれ同盟を扇動していた黒幕、下春日部警察署所長の黒岩仁太郎の逮捕。
Etc.……
「なんだコノ経歴は……ふざけているのか?」
この全てに、『彼』はかかわっていると言うのだろうか。
めまいを覚え、軽く頭を振って資料に目をやる。
公的な記録もあれば噂話程度の物も在る、直接『彼』の名前が書かれている物もあれば『その時その場に居た謎の少年がどうやらそうらしい』と言う程度の物も在る。
「いや、逆にここまでの事をやらなければアンタッチャブルなどとは呼ばれないか」
しかし余程の巻き込まれ体質なのか事件の数が多い。
いや調べた限りでは『彼』は一旦事件に関わったらあとは自分からより深く突っ込んでいる様に思える。
対岸の火事を消しに行く様なお人よしなのだろうか。
「……コイツなら、もしかしたら……」
『彼』なら自分を助けてくれるのではないか、そんな馬鹿げた考えが頭をよぎる。
「……下らない、そんな事あるわけないだろうに」
そうとも、魔神である自分を助けてくれる人間など居はしない。
もし居たとしても魔神がどうする事も出来ずにいる問題を、人間がどうこう出来るものか。
あの稀有な『原石』も私が利用してこそ、その真価を発揮するのだ。
「問題はその為にどうするかだが……」
ふと部屋のすみに違和感を覚えそちらを見れば、前の住人が置いていったらしい粗大ゴミが眼に入った。
「これは……なんなんだ?」
ソレには魔力に似た、しかし初めて見る、それでいてひどく懐かしくも思える、そんな
異質なエネルギーが感じられた。
今まではただの粗大ゴミだと思っていたが、どうやら違うらしい。
つか
「……ほう、これは利用えるやもしれんな」
そうつぶやくと、オティヌスはソレに空いた丸い穴を覗き込んだ……。
誤字してましたね
>>110
被害総額はある程度正確な物となると、試算する事すら困難を極めた。
次の投下までチョット時間かかるかもしれません
ロボとーちゃんREBOOTとか来ないかな
流石に映画の中に入ったことは来歴には残ってないか
あらためて経歴羅列するとやばいな・・・
流石、ドラのびと双璧をなす日本アニメ最高キャラだわ
一方その頃『彼』はと言うと、思わぬ知人との再会を喜んでいた。
「まさかまた会えるとはね」
眼を輝かせ、体全身で喜びを表しながら言うしんのすけに対して、その知人は冷静に話しかけた。
「ええ、ですが今は、時間が在りません。しんのすけ君、単刀直入に言います」
「なに?」
「この世界に危機が迫っています。また以前の様に協力してください」
「うん解った。じゃ、とーちゃんとかーちゃん、ひまわりにシロも……」
「いえ、前回とはいささか事情が違いまして、今回はしんのすけ君だけでいいのです。むしろ、みさえさん達を巻き込むわけには……」
「そうなの?で、オラは何をするの?」
「ついてきてください。事情は道すがらお話します」
しんのすけが案内された先は、オティヌスのいるアパートだった。
「あれ?ここって……」
意外な場所に連れてこられ、しんのすけが少々おどろいていると、部屋の戸が開けられ、オティヌスが顔を出した。
「ほう、貴様の方から私を訪ねてくるとはな……丁度こちらも、今度こそ貴様を討つ準備が出来たところだ」
「いや、ココに眼帯のお嬢ちゃんが居るなんて知らなかったし、その台詞は敗北フラグだと思うゾ?」
「しんのすけ君、君にしてもらいたい事というのは、私が説得に失敗したら彼女を止めることです」
オティヌスは、その時初めてこの場にもう一人居る事に気がついた。
「な、なんだその『光る玉』は?」
しんのすけの知人は、しゃべり発光している球体と言う姿をしていた。
「ほらだから言ったでしょミライマン」
そう言ってしんのすけは、懐から怪獣型のソフトビニール人形を取り出した。
対して彼からミライマンと呼ばれたしゃべる光玉は、渋々といったようすでその人形の中に入っていく。
「確かに私の姿は目立ちますが、シリマルダシに入ってもソレは同じなのでは?」
「でもコレならいざと言う時は『腹話術です』ってごまかせるゾ?」
「おい!!だから一体なんなんだソイツは!?」
自分の質問に答えず会話しはじめた二人に対して、オティヌスが再度問いかける。
「申し遅れました、私は30世紀の時空調整員です」
「時空調整員だと……?ソイツが私に何の用だ。元居た世界に帰れと言うのか?生憎それは不可能でな……」
彼女の台詞を遮り、ミライマンは言った。
「単刀直入に言います、大規模な世界改変を今後は自粛して頂きたい」
「……何だと?」
「因果律に逆らう無理の有る世界改変は、様々な『歪み』を発生させます」
「『歪み』ってアノ怪獣達みたいな?」
しんのすけが訊ねた。
「ええ。ですので、世界の改変は『修正』する側も『無理』が最少に成る様に手を尽くします」
「ほうほう」
「例えば以前の様に『その時代の人の手で』怪獣を倒すのもその一つですね」
しんのすけに正面を向けていた人形が、オティヌスに向き直る。
「ですが、『隻眼の魔神』オティヌス。貴女には『ソレ』が無い……この世界に干渉出来る魔神は他にも居ますが、私が貴女のもとに来たのはそう言う理由です」
彼の説明が終わり、オティヌスは事態を理解した。
しかし彼女『体質』の為、ソレは生涯魔術を使うなというのに等しく、彼女の『目的』の為には絶対に了承出来るものでは無かった。
「ふん、貴様とて私がその話をのむはずもない事を理解しているのだろう。でなければコイツがここに居る必要が無いからな」
彼女はしんのすけを指さし言った。
「だが、そうだな……先程も言ったが丁度貴様を討ち倒す準備を終えたところだ」
「ほうほう……つまり?」
しんのすけがその真意を問う。
「正真正銘最後の勝負と行こう、いい加減に決着をつけようじゃないか『法則無視』!!」
「決着って、眼帯のお嬢ちゃん一方敵に絡んで来てただけじゃ……」
「五月蝿い黙れ……で、だ。時空調整員とやら、コイツが勝ったら私はもう二度と魔術を使わないと約束しよう」
その提案に、ミライマンがうなずく。
「解りました。ただし、しんのすけ君が全力で戦えるように、私がそのサポートをしますよ?」
「かまわんさ、むしろそれくらい当然だな。……ただし、信之介」
「なに?」
「私が勝ったら貴様には私の下僕として協力してもらうぞ」
「ん~、ま、いっか。お嬢ちゃんもそんな悪そうな子には思えないし」
「ふっ、世界を滅ぼす様な大罪に手を貸せと言うのかもしれんぞ?」
「ならオラが勝てばいいだけの話。こう見えて結構ギャンブル好きなんだゾ?」
イカサマ無しなら負けた事が無いからね、と彼は続けた。
その答えに満足気に、オティヌスが先を促した。
「では部屋に入れ、決着の舞台に相応しい戦場を用意した」
彼女が指さしたのは『丸い穴の空いたオブジェ』だった。
「これは?」
ミライマンにはソレが何か判らなかったが、しんのすけはソレを知っていた。
「あちゃー、ゲッツさんコレ置いていっちゃてたのかー」
「知っているのですか?しんのすけ君」
「ゲッツさん?ソレが前の住人の名前か?」
しんのすけに、ミライマンとオティヌスが訊いた。
「うん、惑星ヒマワリの人。んでこれは、地球とソコを繋げる為の装着」
「……知っているのなら話が早い。先に行っているぞ」
それだけ言うと、オティヌスはその穴に吸い込まれていった。
「まあ確かに『この中』ならどれだけ暴れても被害は無いね」
「しんのすけ君、『この中』はどうなっているのですか?」
訳知り顔の彼に、ミライマンは訊ねる。
「オラはSFには詳しく無いけど、いわゆる『多次元空間』ってヤツらしいぞ?」
「なるほど『世界と世界の狭間』……『何処でも無い場所』ですか。」
「じゃ、行くゾ」
「え」
穴の中の黒い霧を見つめていた怪獣型人形を掴み、しんのすけもその穴に飛び込んだ。
「来たか……待っていたぞ」
「……もう『マントの下に服を着ろ』とは言わないから、せめて下着のデザイン変えない?」
飛び込んだ先、その『何も無い』場所に、マントを翻したオティヌスが立って居た。
「最後の決戦だと言うのに、相変わらず軽口か……だがコレを見てなお冗談が言えるかな?」
そう言い終えると、彼女の手に武器が現れた。
「ボウガン?」
初めて見る彼女の武器に、しんのすけが首を傾げた直後、まるでビーム兵器の様な『矢』が、彼のこめかみをかすった。
流石にしんのすけも冷汗を浮かべる。
その様子に満足したのか、笑みを浮かべたオティヌスは言う。
わたし
「ここでは『魔神』も十全に魔術を扱える。昨日までと同じと思っていると……死ぬぞ」
「……こうして、勇者と魔神の決戦、そのコングが鳴ったのでした」
トールは長話に疲れてきたのか、水を口にした。
そんな彼にひまわりは手を挙げる。
「ハイ、トール先生」
「ハイ、ナンナちゃん」
「何でオティヌスさんは魔術が使える様になったんですか?」
「良い質問だ。ナンナちゃんは『星空のパラドックス』って知っているかい」
「えっとたしか『宇宙の体積が無限ならば、そこに在る星々の数も無限になり夜空は星に埋め尽くされるはず』って話ですか?」
「そう、『けど実際にはそうなっていないから宇宙は有限である』って続くヤツだね……まさか知っているとは思わなかったけどさ」
「それがこの話と……ああ、なるほど」
「そう、魔術師が魔術を使うのに最初に行う事は『世界を切り取る』事だ」
並みの魔術師は自身の魔力で世界の全てに影響を与える何て出来ない。
故に魔術師たちは皆『箱庭』を作る。
この『箱庭』の中でのみ、魔術師は魔術を行使出来るのだ。
例外的にオティヌスは、逆に魔力が多過ぎた為に魔術を上手く扱えずにいた。
しかし『有限な世界』では多過ぎる『無限の魔力』も、それこそが適量となる『無限の世界』を得ればどうなるか。
「だから『あの戦場』に限りオティヌスも本来の強さを取り戻したってわけさ」
もっとも、あの時に使えた力はせいぜい『魔導師』級だったとも言ってたけどな、と続けた。
「なるほど、『決戦に相応しい舞台』と言うだけはありますね……ただ」
「うん」
「お兄ちゃん相手に『強者の余裕を見せる』って『フラグ』ですよね」
「……だね」
今夜はここまでです。途中で間をあけてしまいゴメンナサイ
次回投下は水曜日の夜11時の予定です
>>116
チョット意味が変わりますがロボとーちゃんもいつか登場予定です
>>117
同時に大量に行方不明者が出れば事件になったかもしれませんが、
帰って来たのが同時なだけで神隠し自体は長期間にわたって少しずつ起こってたので大事件として記録には残らないと思いました。
とあるサイドも原作ではサードウォー症候群とか『不思議体験した人がソレを他人に話すと頭が可哀想な人扱いされる』っていう下地がある世界なので
春日部の住民達は耐性があっても記録を録る人は一般人でしょうから
>>118
あとはサトシ君でしょうかなんせ『創造神の怒りを鎮めた雷の魔獣使い』ですし
乙
トールさんとひまわりの会話いいわあ
敵側だった人が改心して出て来ても面白そうだな
どれもふざけた能力や発明だけど学園都市の常識は超えてるし
戦国時代にタイムスリップしたのも書籍とかに残ってるんだろうかね
野原信之助一族等の奮闘により…って奴か、ある意味しんのすけがあの穴から消えた時点で歴史は確定してたんだろうね
いや、箱を埋めた瞬間かな。
オマタ王子とスンノケシ王子マダー?
焼肉ロードの世界改変を知ってる奴って野原家以外にいるのかな
アニメじゃいないけどタイムマシンやら超強力成長促進剤、オリジナルと正反対の人格を持ったコピーを作り出す鏡とか作った北与野博士はまだですかねぇ…
あれもう魔法でしょ…
>>135
世界改変ってのはシュタゲみたいに「世界がそう改変された場合のつじつま合わせ(クリスが親父に刺されるからって親父刺そうとしたらクリス刺しちゃったって感じ)」が過去に起きるから
改変された世界の後では改変した本人以外に改変の違和感に気付かない、何故なら初めからそうだから。
例えば水とお湯の呼び名はさっきまで逆だったかもしれない、
けど俺たちは水は水、お湯はお湯の世界に生きてるから
お湯が水、水がお湯だった世界の事には気付けない、でも改変した本人は呼び名我入れ替わってることに気付ける
そんな感じだから誰も知らないんじゃないかな
まだか…
無理はしないで…
予告どおりに来れなくてゴメンナサイ、1です。これから投下します
>>130
1の中でトールは世話焼きなイメージです
かつての悪役達もおいおい出していきます
>>131-132
しっかり記録に残ってはいますがオティヌスの集めた資料の中には天正二年の春日合戦は含まれていませんでした
>>133
タイムスリップを前提にした歴史は『何処で(何時)確定したか』の正解は無いと思います
>>134
『グレムリン結成』編の次の次にはたぶん……
>>135>>138-139
今回の話はそこが物語の鍵になります
>>135-136
ソノウチ……としか今は言えません
>>140-144>>146-147
お待たせしました
「ミライマン!!」
「はい!しんのすけ君!!」
しんのすけが呼びかけ、ミライマンがそれに応えた。
「『変・身』!!」
人形を上下逆さまに掴み天へと突き出す。
時空調整員の持つ、万能対応システムにより人形は光へと変わり彼を包み込んだ。
その光は赤と銀の全身スーツと成り、しんのすけに闘う為の力をかす。
まえ
「この格好は……以前と似ていますが細部は違いますね。モデルはこの国の特撮ヒーローでしょうか?」
パーツ
腰に付いた宝石の様な部品が点滅し、ミライマンの声があたりに響く。
「そうだね、十年前は特に意識してなかったけど。昭和時代の伝説的ヒーローだよ」
その声にしんのすけが応えた。 ヒーロー
彼の今の姿は、かつて彼の父親が憧れたブラウン管の中の英雄を模したものであった。
その名はヒーローSUN、太陽の光を己が力に変え闘う戦士である。
「さしずめ、今のオラはヒーローSHINってところかな」
独特な掛け声と共にポーズを決めたしんのすけに、オティヌスが再びボウガンをかまえ忠告する。
「ほう、それが『サポート』とやらか。ではどれ程のものか見せてもらおうか……気を抜くなよ?」
「デュワ!?」
放たれた矢をしんのすけが避ける。
しかし矢が彼のすぐ横を通り過ぎる時には既に次の矢が放たれている。
「ちょっー!?ボウガンって連射出来る武器じゃないでしょ!?」
「それを言うのならば、避けられるものでも無いだろう」
非常識な攻撃に文句を言う彼に、オティヌスは暗に『それ以上の非常識を貴様はしている』と返した。
そもそも本来ならば1度に10発を撃つ『オティヌスの弩』だが、回避難易度を上げる為にあえてその10発をずらして撃っているのだ。
……にもかかわらず、彼は避けていたが。
「かもね!!昔『足の短いオジさん』から受けたダンスレッスン(マシンガン使用)の経験が役に立ったかな!?」
「そうか、ではペースを上げるとしよう」
彼女がそう言う間にも、矢が放たれる間隔が更に短くなっていき、今はガトリングガンもかくやと言う程であった。
しかもそれでいてその一発々々は実に多様。
真っ直ぐに飛ぶものもあれば、矢にあるまじき曲がり方で左右から襲うものや、大きく弧をえがき後方から飛来するものもある。
真上に撃ち上げられた矢が数秒後に鋭角に進路を変え襲いかかってきた事もあった。
しんのすけはそれらの軌道を先読みしたかの様な動きで何とか回避していたが、次第に追い込まれつつあった。
「くう、こうなったら……」
このままではまずいと、何かを思いついたらしいしんのすけが、腕を大きく振るう。
そして高く飛び上ると、彼の腰の、先程点滅していた宝石の様な部品から、
金色に輝く一条の光が放たれた。
「エェキスポビィーーームッ!!!!」
ビームを放ちながら、彼はまるで氷上を舞うフィギュアスケート選手の様に、いや鉄棒から降りる際に大技を決める体操選手の様に、回転する。
そうしてその光は次々に周囲の矢を射抜き、撃ち落としていった。
「ほう、やるな。だが撃ち漏らしがあるぞ」
オティヌスが感心しながらも忠告する。
彼女の言う通り、しんのすけの頭上約100mには、今まさにその鏃の先を彼に向けんとする矢が在った。
「心配御無用!!」
「なっ!?」
しんのすけが腕をグイっと引くと、それに合わせてオティヌスはそちらへ引き寄せられた。
そこでオティヌスは気づく。
彼女の身体をわずかながら覆う衣服には、何時の間にかヨーヨーが、正確にはそこから飛び出た鉤爪が引っかかっていたのだ。
(さっきの腕の振りは光線のタメじゃ無い!!コレを私に投げる為だったのか!?)
ヨーヨーはうなりを上げ回転し、自ら鋼線を巻き取る。
それによって彼女の意に反し、その身体はしんのすけへと高速で近づいていった。
そしてそのまま引っ張られ自身の放った矢と彼女が衝突する刹那、マントから鉤が外れてヨーヨーはしんのすけの手の中におさまった。
「すごい武器ですね……しかしいつの間に?」
ミライマンがしんのすけに訊ねる。
いつ彼女のマントにヨーヨーをつけたのか、では無い。
あのヨーヨーはいつ用意したのか、を問う言葉だった。
時空調整員の万能対応システムは『魔法少女のステッキ』と言った武器ならば衣装とは別に創ることも出来るが、件のヨーヨーは万能対応システムに因る物では無かった。
にもかかわらず、彼の掌に突然ソレは現れたのだ。
ミライマンが疑問に思うのも当然と言えた。
「この世界って、思った通りの物が何でも出てくるんだよ」
そしてその疑問にしんのすけが答えた。
いわく、現実と想像がイコールで結ばれる場所なのだそうだ。
もっとも『この世界』で産み出した物を元の世界に持ち帰る事も出来ないし、
逆に言えば『自分』のイメージを持てなければ、自己を失ってしまう危険も在ると言う。
「初めて『ココ』に来た時は、オラも一時的にソウなりかけたしね」
本来ならば三次元の住人が『この世界』に立ち入るのは、荒れ狂う大海に角砂糖一つ落とす様なものだ。
記憶喪失に近い状態、それも一時的なものですんだのは流石と言えよう。
「だから昔持っていた物とかだと、イメージし易いからすぐ出せるゾ?」
どうやらあの鉤のついたヨーヨーも、過去に入手した物らしい。
使い勝手も良いし何かと便利そうだから家に帰ったら物置部屋から引っ張り出して、これからは普段から持ち歩くようにしようかな。
と、彼は小さく口の中でつぶやいた、その時だ。
「……ほう。それは良い事を聞いた」
オティヌスは起ちあがっていた。
矢に射抜かれた筈の彼女は、それでもなお未だ倒されてはいなかった。
そしてその手に大きな『槍』を持って、こちらを真っ直ぐに見据えていた。
「……もしかしてその『槍』は、所謂お嬢ちゃんの『最強装備』ってヤツ?」
その『槍』の異様な雰囲気に、しんのすけが冷汗を流しながら彼女に訊ねる。
「ああ、『主神の槍』【グングニル】と言う。間違いなくコレが今の私に使える『最強』だ」
そう言うとオティヌスは後方に跳び、しんのすけとの距離をあけた。
「貴様の思い描く『最強』をもって、打ち破って見せろ!!」
彼女は槍を投擲すべく、かまえる。
「解ったゾ。眼帯のお嬢ちゃん……」
アイテム
しんのすけの手に新たな道具が現れる。
「ほう?銃や剣でもだすかと思ったが……」
自身の思い描く最強。
そう言われて彼の頭にうかぶイメージは、武器などでは無かった。
それは……正義と勇気、努力とど根性で、宇宙より来た魔王すら退けた。仮面の英雄
それは……祖国を、同胞を、家族を、兄弟を、敵にしてなお戦い続けた。無敵の勇士
それは……自身の存在の危険性故に、誰も自分を利用できぬよう消えた。救いのヒーロー
それは……幼き頃より仕える姫が為、戦場においては鬼とすら呼ばれた。戦国の武士
それは……短いあいだだけであれど、彼にとっては確かに家族であった。鋼鉄の父親
そして……
天災により、数知れない程の人達が、計り知れない大切な物を失った世界で、
かつての景色を取り戻そうとあがき、そして成し遂げた。未来の自分
「曇り空を晴らすには、コレが一番合ってるからね」
今、彼の手に有るのは、緑色のバイザーの様な物だった。
「曇り空を晴らすだと?」
彼が口にした言葉を、オティヌスが聞き返した。
しんのすけはバイザーを装着し、応える。
「お嬢ちゃん、ボウガンからその槍に武器を変えた時から、顔が『くもってる』ゾ?」
「なに?」
「だから、なんか辛そうで苦しそうで……哀しそうな顔。本当は使いたくないんじゃない?その槍。何か嫌な思い出があるとかさ」
「……」
「このケンカが終わった後はさ、やっぱり笑顔が良いよね」
そうして笑顔を見せるしんのすけとは反対に、オティヌスは静かに怒りを燃え上がらせていた。
曇り空
「やってみろ、人間。魔神の心を晴らしてみせろ!!」
彼女は叫んだ。
出来る筈も無い、『原石』とは言えただの人の身で『魔神』の苦しみや悲しみを癒せるものか。
「もちろん!!言われなくても!!」
彼も大きな声で返す。
その身体からは青白く光るオーラが立ち上がり、周囲の『何も無い空間』が明るく照らされる。
「はっ!!ソレが貴様の『最強』か!?その程度ならば消えてしまえ!!」
グングニル
オティヌスが『主神の槍』を投げた。
「おおおおっ!!!!おバカパワー充填120%ォ―――!!」
投擲された槍が真っ直ぐに彼へと迫る最中、蒼いエネルギーはバイザーへと集中していく。
そして、槍がしんのすけの額を貫こうした瞬間に、ソレは放たれた。
トルネードコール
「『法則無視』ファイヤー!!」
掛け声と共に撃ち出された光線は、槍を飲み込んでなおその勢いは止まる事無くオティヌスへと向かっていく。
「成程、これが貴様の『最強』か……」
グングニル
『主神の槍』すらものともしない、凄まじい程の力。
いっそこの敗北はすがすがしさすら感じられた。
『目的』を諦める気は毛頭無いが、『無限の更にその先』の存在を垣間見えた。
しんのすけ
結局『法則無視』を手に入れる事は出来なかったが、これだけでも十分な成果だ。
魔術を使わないと言う、時空調整員との約束も守ってやろう。
元々、今の私には使いこなせない代物だ。
かつて魔導師だった『銀の星の男』が科学に因る新しい異能『超能力』を見つけ出した様に
魔術では無い異能を、自分で創ってみるのもいいだろう。
(また零から始めよう……)
彼女は光に包まれながら、自分の口元が緩んでいるのに気がつく。
(アイツめ……多少、雲の厚さを変える事は出来たらしい)
だが晴らすとまではやはり無理だったか。
どうやら自分は最後の最後に、彼に『一矢報いる』事が出来たらしい。
(お前との戦いの日々は、悪くなかった。いや久しく忘れていたが、『楽しい』とはああいうものなのだろうな)
薄く笑みを浮かべ、彼女は光の中へその意識を手放した。
少女は夢を見ていた。
始まりは、ある独人の少女の物語。
まだどこか幼さを残すも天才と呼ばれた少女は魔術師となり、魔導師となり、そして魔神となった。
少女は自身の魔術で世界をちょっとだけ幸せにしようとした。
それは『世界』を丸ごと描き変えてしまうものだった。
落ちているゴミを拾う。捨て猫の飼い主になってくれる人を探す。挨拶は元気よくする。
そんな風に善良な人間は皆『より良い』社会の為に『自分に出来る事』をする。
少女もまたそうであったが、彼女にとっての『自分に出来る事』の範囲は常人と比べはるかに広かった。
そうして出来た『新しい世界』は、決して少女を満足させるものでは無かった。
自分が望んだ世界である筈なのに、少女が感じるのは違和感、孤独、疎外感。
どれだけ幸せな世界でも、それがツクリモノであると知っている。
またそれを知っているのは自分だけ、故にその孤独を相談出来る相手はおろか、打ち明けられる相手すら居ない。
少女の心が限界を迎える度に、彼女は又『新しい世界』を創る。今度こそはと、満足出来る『世界』を信じて。
そうして何度も創られた『世界』はいつもどこかが彼女の望み通りにはならなかった。
少女が強大な力を持っていると知った世界各国の上層部が、彼女を犯罪者に仕立て上げ追い立てた『世界』が在った。
少女では無い別の誰かが、かつて少女が立って居た位置で、少女の友人達と笑い合っている『世界』が在った。
なにもかもが上手く行った、だがそれは少女が最初から居なかったから……という『世界』が在った。
そして、やがて少女は『世界』を創る事を止めた。
理想とは程遠い世界で、無限の魔力を手放しただの魔術師としてひっそりと暮らしていた。
しかし一度魔神であることを捨て、一介の脇役である事を選んだ彼女に『世界』は再びその力を与えた。
そうして得た魔神の力で彼女が望むのは、自身が最初に居た『元の世界』へ帰ること。
その為に魔神の力を、かつてと同じく十全に使いこなす為、少女はその方法を探す旅に出た。
そして少女は、少年に出逢った。
夢の続きは、ある一人の少年の物語。
少年は年相応に、ブラウン管の中のヒーロー達が大好きだった。
特にお気に入りの特撮ヒーローのカードがおまけに付いているチョコレート菓子は、母親の買い物についていく度にねだって、買ってもらっていた。
レア
ある日、少年はそのカードの中で最も希少と言われる幻のカード『№99』を手にする。
それは彼の最初の大冒険、その始まりを告げるものだった。
カードを手に入れた数日後、少年は家族と共に平行世界へと行く事になる。
そこは、少年が憧れたヒーローが実在する世界。
しかし少年が訪れた時、その世界では星海の彼方から来た、魔王を名乗る侵略者が次々に人々を洗脳、その支配を広げていた。
そして彼は意図せずして、魔王とその配下達から追われる身となる。
配下達との激戦の末、たどり着いた魔王の居城にて、少年はヒーローの召還に成功する。
少年はヒーローと共闘し、終に魔王を討ち果たした。
最初のエピソードが終わっても、その後も少年の物語は続く。
少女は少年について調べていた。しかし夢が少女に見せるのは、彼女が知らない物語。
文化人を自称する時空犯罪者により改竄された世界で、家族揃って20億円の賞金首にされた。
遠足先の遊園地ではそこの秘密を知ってしまい、二人組の魔神級の魔女との戦いに巻き込まれた。
大好きなヒーロー映画の船上試写会に行けば、船に居た大人達が全員さらわれた。
気がついたら戦国時代の天正二年に居た。
映画の中の世界に飲み込まれた。
ある日突然、世界の為に命懸けで闘って怪獣達を三分以内に倒せと言われた。
友人知人、隣人達が、知らない間に偽者にすり替わっていた。
暗黒の世界の帝王に、たった一人で挑まなければならなかった。
暗雲が常に空を覆う、隕石群の衝突で一度滅んだ未来に連れて行かれた。
世界を救う為に妹と離れるか、世界を亡ぼしてでも妹と共に居るかの選択を迫られた。
少年の物語は理不尽の連続だった。
しかしそれでもなお少年は笑顔だった。
懐いていた侍と死に別れようとも、彼は涙を拭って青空を見上げた。
恋した少女の存在を、自ら終わらせてしまった時すらも、何も知らずに少年の帰還を喜ぶ愛犬に、彼は笑顔で応えてみせた。
少年の物語は理不尽の連続だった。
しかしそれでもなお少年が笑顔でいられたのは、そんな理不尽こそがもたらした奇跡もまた、確かに在ったから。
少年が事件に関わらなければ、不幸になっていた者たちが居るだろう。
少年が事件に関わった事で、救えた者たちが確かに居るのだろう。
だから、少年は笑顔だった。
だが、だからこそ少女は納得出来なかった。
それは少年とその家族意外の、誰一人の記憶に残らない物語。
それは丸一日、24時間にも満たない物語。
少年の他のエピソードと比べればあまりにも短い話。
それでも少女には最も重要な、その結末が決して許せぬエピソードだった。
その日、少年の母親が用意した家族の朝食は、とても質素な物だった。
夕食を最高級焼肉にする為に切り詰めたのだと言う。
その話を聞いて納得した少年達は夕食を楽しみにする事にし、まずはその質素な朝食を食べようとした。
しかしその朝食ですら彼等は食べる事ができなかった。
突然家に乗り込んできた保護を求める怪しい科学者風の男に、その男を追ってやってきた軍人風の男、彼等が所属する組織によって。
この日、少年とその家族達はあらゆるモノを奪われた。
何時の間にか、犯罪者にされていた。
少年の通う幼稚園の教師達は、少年達を信じてはくれなかった。
昨日まで夕飯をたかりに来るくらい仲の良かった隣人の若夫婦は、賞金目当てに少年達を捕まえようとした。
少年が惚れていた女子大生は、涙ながらに走り去って行った。
少年が憧れたブラウン管の中のヒーローは、その番組の中で視聴者に少年の逮捕協力を呼びかけた。
そして少年の親友達は、高がお菓子の為に……少年を売った。
最後は少年の父親が黒幕を殴り倒し、少年がその組織の開発した催眠増幅装置を逆利用する事で、彼等は全てを取り戻した。
しかし少女が何よりも許せないのは、その後だ。
恩師に、隣人に、想い人に、親友達に、少年は確かに一度裏切られたのだ。
にもかかわらず、少年はそれを全て『無かった事』にした。
そしてもう一度訪れた日常で、少年は変わらぬ笑顔を向けるのだ。
……自分を裏切った者たちに。
「……どうしてお前は、笑っていられるんだ?」
オティヌスが目を覚ます。 クサハラ
見慣れぬ景色に上体を起こして周囲を見れば、どうやら自分は草原に寝かされていたらしい。
「お、おきた?」
その声の主は、夢に見ていた少年だった。
あの少年の物語が、野原しんのすけの実体験だと言うことは、その内容から理解できていた。
「先程まで貴様の記憶を見ていたぞ……アレは何だ?」
オティヌスは少年を睨みながら訊いた。
「ああ、アノビームはオラのイメージの塊だからね、アレに撃たれた事でオラの記憶と繋がっちゃったとかじゃない?」
詳しくは知らないと、彼はあくびをしながら答えた。
「それより、ココは何処だ?」
辺りは田園地帯と言おうか農耕地帯と言おうか、少なくとも双葉町では無いだろう。
極めつけに、地面から泡に包まれた何かがポコポコと浮かび上がってきている。
「惑星ヒマワリだよ。慌てて出口をイメージしたからこっちへ出ちゃった」
「ちょっと待て『慌てて』だと?」
魔神の放つ攻撃の数百発を対処してみせた彼が慌てる程の事態が、自分が気を失った後にあったのだろうか。
「だって眼帯のお嬢ちゃん、気絶しちゃうんだもん。説明したよね!?アノ世界で『自分と言うイメージ』を持てなかったら……って!?」
彼は怒っていた。彼女が背後から奇襲をかけようとも、苦笑いと文句一つで済ませていた彼が、しかし今は怒っていた。
「アソコで戦おうって言いだしたからには、良く知っていると思ったんだけど!?」
「……確か、存在が限りなく消滅に近いレベルで希釈されるんだったな。だが私が気を失ったのは貴様のビームに撃ち抜かれたからだろ」
我ながら、酷い責任転嫁もあったものだと思うが、オティヌスからすれば敵にそこまでの情けをかける方がおかしいのである。
そもそもオティヌスは数えるのも馬鹿らしくなる程の死線を潜りここにいるのだ。
逆にそのまま消えなかったのなら、自分が消えかけて慌てるしんのすけを見たかったと惜しむくらいだ。
「まあそれは置いといて、お嬢ちゃん」
イノチ
「何だ?私は貴様に負けた。その上に存在まで助けられたらしいしな。ソレが余計なお世話だと言う事を抜きにしても……後は何でも、貴様の好きにすればいい」
煮るなり焼くなり喰うなりな、と続けた彼女にしんのすけは自分はロリコンじゃ無いからと告げて、本題に入った。
「本当にもういいの?オラの『原石』を使って、やりたい事があったんじゃないの?」
「ああ、それか……それも、もう良い」
恐らくこの少年は、『自分のせいで少女が夢を諦めた』など絶対に在って欲しくない状況なのだろう。
オティヌス自身、この魔神を打ち破ってみせた心優しい少年が、そんな下らない事で悩むのは本意では無かった。
「……気に病む事じゃ無い。別に貴様に負けたから諦めると言う訳じゃ無いのだからな」
「詳しく聞いても?」
「まあ、良かろう……」
不思議な程、彼女の口は良く動いた。
すらすらと、しんのすけを相手に自身の物語を紡いでいった。
自分が今まで幾つもの『世界』を創ってきた事。
どんな『世界』で生きていても誤魔化し切れない孤独感の事。
そして『元の世界』に帰りたかった事。
「今にして思えば、私が欲していたのは『元の世界』ではなく、私では無い『別の誰かが創った世界』だったのだろうな」
どれだけ『元の世界』と寸分違わぬ『新しい世界』を創っても、ソレを自分で創ってしまえばソレが偽者であると言う認識をしてしまう。
『創る側』では無く『創られた側』に成れれば、この孤独は無くなると信じていた。
「今の今まで、私自身忘れていた動機だがな。しかもだ、貴様の記憶によれば、私も知らない間にこの世界は何度も改変されていたそうじゃないか」
なんと滑稽なことだろう。
自分の望みは、とっくの昔に叶っていたのだから。
自虐的に笑う彼女に、しんのすけは問いかけた。
「これからどうするの?」
夢が既に叶っていたと言うのなら、彼女は今後をどう生きるのだろう。
「さっきも言った。貴様の好きにしろ」
オティヌスは彼をすこしくらい困らせてやろうと、したり顔で答えた。
さて、こんな難題を振られて、この少年はどう答える?
「じゃあさ、眼帯のお嬢ちゃんはこれからも魔法使いでいてよ」
以外な事に、彼は明るい声と顔で即答した。
「正確には『魔法使い』では無く『魔術師』で、それも私はその最高位の『魔神』と言うランクなのだがな……」
「え?何て?」
小さく呟いた彼女の声は聞こえず、彼は聞き返したが、今度はオティヌスからの質問だった。
「時空調整員とやらとの約束は反故にしても良いのか?」
「その約束はそもそも貴女から言いだしたものですし、我々からすれば無茶な時空改変さえしないのであれば、何も言う事は有りませんよ」
その解答は、近くに浮いていた光る玉から返された。
「居たのか……」
「気付かなくても無理ないよ。何せこの景色だし」
しんのすけがフォローを入れる。
彼の言う通り、周りには幾つもの玉が浮かんでいるのだ。
「それで?魔術を使って何をしろと……」
「居場所を作るんだゾ!!」
「居場所?」
「優秀過ぎてその業界から追放されたり、異端視される人達の為の居場所!!」
「成程、そういえば貴様の関わってきた数々の事件の中には、そんな人間が起こしたら物も在ったな」
そんな人間達が、世間を怨む事も無く社会を憎むも事無く、世界に復讐を誓う事が無くなれば、あるいは……。
「今の話を聞いて確信したゾ!!誰よりも孤独を知っているお嬢ちゃんならそんな人達とも友達になれる!!」
「ん?何か引っかかるな、この話の構想自体は以前から持っていたのか?」
そこに自分を組み込んだ、と言うことだろうか。
「エドワードのオジさん、学園都市のスカウトマンの人がこう言ってた。『この世界にはきっとまだまだ沢山の原石達が眠っている』って」
「ふむ、学園都市以外の場所では、異能者は時として『化物』と同義だからな」
「それにオラは『科学』だけで、世界の全てを語れるとも思えなくて……」
言いたい事は解った。
彼が『条約』の存在を知っているかは判らないが、どちらかといえば魔術側よりの『原石』は学園都市にスカウトされる事も無いだろう。
つまりこの世界には『生まれ持った異能により(しかもそれが優秀であればある程)孤立する者達』が居ると言う事になる。
そんな者達の居場所、か……。
「元々はオラが高校を卒業したら始める予定だったんだけど、できるかぎり早い方がいいから」
「解った。引き受けよう」
オティヌスの心は既に決まっていた。
「良いの!?ありがとう!!」
「ああ任せろ」
満面の笑顔を向けるしんのすけに、彼女はサムズアップで応える。
そして同時に彼女は思う。
自分と彼がこれから作る『孤立した者達の為の居場所』に、彼の居場所は有るのだろうか……と。
『優秀故に周囲から異端視され孤立する者』それはあるいは、遠からぬ未来の彼自身では無いだろうか。
彼は言った、誰よりも孤独を知る自分ならば孤立する者達と友になれると。
ならばその自分ですら理解できなかった思想を持つ彼の居場所は、いったい何処に在るのだろう。
いつ
(だが何時の日か……お前の『笑顔』を、私が理解出来る時が来るかもしれんな)
いや今は無理でも、いつか絶対に理解してみせる。
そう決意して、彼女はしんのすけに語りかけた。
「では先ずその集団の名前を決めようか」
グレムリン
「……こうして俺達、秘密結社『科学と魔術』が生まれたってわけさ」
流石に喉が疲れたと、トールは二三咳ばらいをした。
「……え、マジっスか?」
心底嫌そうな顔をしてひまわりが言った。
「俺にはナンナちゃんの口調がいまだに掴めないよ……で、何が不満なのさ?」
「私もお兄ちゃんも『ぼっち』じゃありません!!断固否定します!!あと口調は時々地が出るだけです!!」
「あれだけ長い話を聞いて抱いた感想がそれかよ!?そしてあれが地の口調!?」
「まあ冗談はさておき」
「おう」
ゼリー状の何かをトールに手渡しながら、ひまわりは彼の話の感想を述べる。
「お兄ちゃん、創設メンバーというか、オティヌスさんにその構想を与えたのがお兄ちゃん本人だったんですね」
「ああ、『光明のバルドル』の名も納得だな」
バルドル オーディン トール
「エッダにおいて光明神は主神の嫡子ですけれど、長子は雷神じゃなかったですか?」
「そこら辺は諸説あるとしか……ていうか詳しいねナンナちゃん」
彼女のくれたゼリー状の物質を口にしながら、トールはその年不相応な博学に感心する。
「基礎知識です。ああ、ところで名前といえば、私の『ナンナ』もある意味納得なのですが、よく義姉様が許しましたね」
こ
「ああ、あの娘か、確か……オティヌスから彼女は『ソック』の名を貰った筈だ」
「お兄ちゃんの生殺与奪が握られていますね」
「あー、喉大分楽になったはありがとうな」
「いえ、しゃべらせたのは私ですから」
ゼリー状の物質は喉薬の様な物だったらしく、トールが礼を言う。
「話には聞いてたけど凄い『原石』だなナンナちゃんの『星之姫君』【プラネットプリンセス】……究極の癒し成分『ヒママター』を産み出す能力。だっけ?」
「違いますよ、『自然物からヒママターを取り出す』能力です」
「兄妹で二人揃って『原石』とはねえ、このぶんじゃ、まだまだ居そうだね」
「まだ見つかっていない『原石』ですか?」
「あるいは『聖人』とかかな」
「そういえばトールさん、どうして私に会いに来たんですか?」
「あ、そうだった。本題をすっかり忘れてた」
こうしてオティヌスから指令を受けたひまわりの大冒険がはじまるのだが、それはまた別の物語。
今夜はここまでです。
グレムリン結成編、やっと終わった。
バルドル、ナンナに続く第三のこのSSオリジナルのグレムリンメンバー『ソック』……一体誰ナンダー?
ひまわりも『原石』と言う設定でした。
彼女は常盤台中学か霧ヶ丘付属中学に進学予定です。
このグレムリン結成編が、一応原作での新約9巻の再構成(及びブレイク)に当たります
当初の予定では原作で上条さんが味わった地獄をしんのすけが体験
↓
オティヌス「何故だ!?ナゼ貴様の心は砕けない!?」
↓
しんのすけ「だって、似たような経験なら前にもしたし」
みたいな話だったんですが上条アンチSSっぽくなりそうだったので止めました
あとオティヌスが見たしんのすけの記憶の箇条書きの部分は焼肉以外映画の順番通りになっているのですが
1「もうやめてぇ!!しんのすけのライフは(普通だったら)ゼロよ!?」
ってなりました。5歳児が歩む人生じゃないよ。書いてて泣きそうになりましたよ
最後になりましたが、納谷六郎さんの御冥福を心よりお祈りします
組長先生…
乙
自身の思い描く最強。それは……ってところで涙腺が緩んだ
義姉って誰だ、タミコじゃないだろうしあいちゃんかな?
おつおつ
ところどころ抜けてる映画があるな
特にオトナ帝国は結構気に入ってる映画だったからもうちょい掘り下げてくれると嬉しかった
>>173
今回見たのはオティヌスが把握してなかった出来事だよ
オトナ帝国のやつは前に調べあげた中に入ってる
組長…高倉健さんと同じ日に亡くなったらしいな、ご冥福を御祈りします。
ソック、一体何あいちゃんなんだ…
いつか使った「悪ヲ滅スル一撃(カンチョウ)」はあまり使わないのは女性が多いからかね?
そういやシロ今どこ?
野原しんのすけ(15)「ベランダに女の子が引っかかってたゾ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378302253/773)
お久しぶりです。1です。これから投下します
ところで次の映画は踊アミ路線なんですかね?
文字で見た時はそうでも無かったけど、アニメでみると『襲ってくるサボテン』って結構グロくて恐怖なんですが
>>171>>176
まさか彼に関わる人間を三人も一度に失ってしまうとは……
1としてはナナコお姉さんみたいに後続が出来て欲しい派なのですが
ぶりぶりざえもんの様になる可能性もあるのでしょうか?
>>172>>176
現時点での明言はサケマス。
しんのすけのグレムリンでの名前をバルドルにしようと決めた時に
彼女をナンナ(エッダでのバルドルの妻)にしようかとも考えたのですが
やっぱりナンナはひまわりの方がイメージに合うと思い、彼女はソックになりました
今後も原作には居ない(クレしんサイド)メンバーや、原作では所属していない(とあるサイド)のメンバーが何人かでてくるかもしれません。
>>173
実は1はこのSSシリーズを書くに当たって気をつけている事の一つに
『とあるサイドの事件(原作X巻の再構成)を解決する為の重要な鍵と成る「クレしんサイドのエピソード」(しんのすけの記憶)は基本一つ(多くても三つ程度)』
と言うのが有りまして
今回は全部に浅く触れましたが、基本的に深く掘り下げるのは一つ二つにしようと思っていまして
そして今回のそれは焼肉だった(1スレ目では夕陽とスパイ)のです。
なので大人帝国もいつかその経験が鍵と成る(ピックアップされる)事件が来ると思います。
>>175
>>110と>>160で一応は全映画に触れているはずですね。
ヌケオチが無ければ良いのですが
>>177
神裂、ナタリー、オティヌスと、女性相手なので(原作ではみさえ以外の女性にはしていないはず)
>>178
>>179さんの言うように、1スレ目にでてきます。しんのすけと一緒に学園都市に住んでいます
第四学区 焼き鳥屋デスペラード
マフィア風の男「マスター、いつもながら素晴らしい腕だ。やはり私の専属料理人に……」
マスター「旦那ぁ、その話ぁ毎回断ってんじゃねえですか」
マフィア風の男「ははは、そうだったね。まあこうしてたまに食べに来る事で『この味』を楽しめるなら、今はそれで満足しておくとしよう」
マスター「今後もどうぞ御贔屓にぃ」
マフィア風の男「ほら野原君も、あと君は『浜面』君と言ったかな?二人共ドンドン食べなさい。今日は私の奢りだ!!」
しんのすけ「ゴチになりまーす!!」
浜面「あ、ども。ゴチッス」ペコ
マフィア風の男「うんうん。若者こそ『良い食事』を摂らないとね。あマスター、私もコレとコレ追加で……あとソレとアレも……」ユビサシユビサシ
マスター「へーい」テキパキ
浜面「なあ、しんのすけ……」
しんのすけ「何?仕上君」
浜面「この人誰?お前の知り合いみたいにだけど」
しんのすけ「あれ?説明して無かったっけ?」
浜面「してねえよ?俺はお前から『焼き鳥食べに行かない?』って呼ばれただけだし」
しんのすけ「まあさっき聞いた通り、今日はこのオジさんのおごりだから」
浜面「そりゃありがたいけどな……あ、もしかして『訊かない方が良い事』だったか?」ヒソヒソ
マフィア風の男「ん~?その様子では浜面君は野原君から何も聞かされていない様だね」
浜面「わっ!?」
きみたち 期待
マフィア風の男「まあ私の事は『武装集団』に投資しているパトロンの一人……そう理解してくれれば良いよ」
しんのすけ「パトロンって言うよりスポンサーだね」
浜面「ん?それってどう違うんだ?」
しんのすけ「詳しくは知らない」エヘン
浜面「おいおい」
マフィア風の男「ふふ、自己紹介が遅れたね。私の名前は『亡本裏蔵』……これからも君達には日々の活動を続けて欲しい」
浜面「あっハイ。こちらこそよろしくッス」
数十分後 店外
亡本「じゃあね、浜面君。今日はなかなかに楽しかったよ」ノシ
浜面「こっちこそ、ゴッソサンっす」ペコ
しんのすけ「バイバイ仕上君。また明日ね」ノシ
浜面「おう、またな」ノシ
亡本「……行ったか。外見は兎も角、近年稀に見る好青年だったな」
しんのすけ「仕上君の事?」
亡本「ああ、私の名前を聞いても特に態度を変えなかったところなんて好感が持てる。普通は緊張して萎縮してしまうからね」
しんのすけ「ふーん、そーゆーもの?(仕上君は理事の名前を知らなかっただけだと思うけど……オラも関わりの有る人のしか覚えて無いし)」
亡本「そうだとも。君を抑えて組織のナンバー2でいるだけの事はある」
しんのすけ「知ってたの?」
投資
亡本「支援する側としては、その対象について調べ無い訳にはいかないさ。彼がそうなんだろ?」
しんのすけ「うん。駒場さんの右腕、オラ達スキルアウトの副長。浜面仕上君だゾ」
亡本「では野原君、次は私を自宅へ」クルッ
しんのすけ「はーい、お送りしまーす」つ腕輪ハメ
学園都市地下の何処か 停車しない超特急
てっちゃん
しんのすけ「ほい着いたゾ。相変わらず世界中の乗鉄聴鉄達が泣いて羨ましがりそうな環境ですな」
クイテツ
亡本「私はどちらかと言えば喰鉄かな。まあ鉄道じたいにはあまり興味も無いのだが」
しんのすけ「オラの父ちゃんは鉄道オタクだったけどね」
亡本「さて野原君」
しんのすけ「解ってるって。『亡本のオジさんは外食になんか行っていない』でしょ?」
亡本「責任ある立場と言うのも考え物だな、美味しい料理を食べに外出する事も出来ない」
しんのすけ「その分腕の良い専属料理人を雇っているじゃない」
亡本「それでもさ。料理と言うのは作った料理人次第で十人十色だからね、色々な料理を食べてみたいのだよ」
しんのすけ「亡本のオジさんは本当に食欲に忠実に生きてるよね」ヤヤヒキ
亡本「とは言え」
しんのすけ「お?」
亡本「確かに以前の私ならば、専属料理人の料理だけで満足していただろうね……」
しんのすけ「えーと……オラのせいですと?」
亡本「ふふ、君と出会わなければ、きっと今でも私は狭量な偏見に凝り固まっていたんだろうね……あの、グルメッポーイの様に」
しんのすけ「おシリ合いだったの?」
亡本「料理と食材に対する考え方の違いから袂を分かったがね……野原君」
しんのすけ「何?」
亡本「改めて、礼を言わせてくれ。一人のグルマンとして、感謝しているんだ……『A級グルメ機構』の暴走を、止めてくれた君にはね」
しんのすけ「いいよ。オラ一人でやった事じゃ無いし、そもそもオラ達がやった事は『ただ焼きそばを作っただけ』だしね」
亡本「ふふ、謙虚な事だ。さあ君ももうそろそろ家に帰りなさい、こんな時間まで付き合わせてしまってすまないが」
しんのすけ「おわ、もう完全下校時刻過ぎてた。じゃあね亡本のオジさん、さっき頼まれた事も近い内にやっとくから」ノシ
亡き本「ああ、頼んだよ」
ドア<コンコン
亡本「入りたまえ」
前髪パッツン美人秘書「失礼します……どなたかいらしてたのですか?」
亡本「ああ、野原君だよ」
テレポーター
秘書「そうでしたか。確かにこの地下超特急の亡本様の私室へは空間転位能力者でも無ければ来られませんでしたね」
亡本「彼の能力は『空間転位』では無いのだがね(まあ彼以外には『腕輪』を扱える者が居ない以上、彼の能力と言っても良いのかもしれんが)」
秘書「……ではどのようにしてここへ」
亡本「野原君に関する事は、あまり深く考え無い方が良い」
秘書「かしこまりました」
亡本「私自身、彼と初めて会った時は驚きの連続だったなあ」
しんのすけ「毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
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毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね」
今夜はここまでです。
続きは明日の夜9時の予定です
みさえ「毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね
毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利蘭死ね」
乙。 亡本裏蔵って名前だけ見るとクレしんにいそうな名前だな。
>>195
あのオカマのセールスウーマンは今頃どこでなにをしているのか
乙
クレしんにそんなキャラいたかなと思ったら禁書外伝のキャラか
なかなかエキセントリックな生活してる人だな
四郎くんはまだかね
東京カスビアン産業大学に行ってたよね
1です。これから投下します
>>194
他にも薄絹休味とか大野雷禅など、なんとなくクレしんワールドに居そうな名前が結構ありますね
意外と親和性の高い世界なのかもしれません
>>197>>199
10年後を想像しずらかったり、動かしずらかったり、禁書側のストーリーに絡ませずらいキャラは出てこないかもしれません
>>198
今回は彼が如何にしてしんのすけと関わるようになったかのお話です
まだまだ寒さを残しながらも、数日後には新学期が始まろうと言う春先の某日。
学園都市統括理事の一人『亡本裏蔵』はその日も自宅兼オフィスである列車の一室で食事をとろうとしていた。
「ん?」
扉が開く音がしたのでなんとなしにそちらに目をやり、彼は驚いた。
「なっ!?」
開いた扉からは見えるはずの向こう側が見えなかった。
そこからはどこまでも、まるで無限に続く深淵の闇の様な、『黒い空間』が広がっていた。
そして更に驚くことが起きた。
その『黒い空間』から人の手が飛び出してきたのだ。
そして直ぐに一人の人間、その全身が現れた。
出てきたのは、片手にビニール袋を持った、まだその顔に幼さを残す少年だった。
恐らく高校生、それも新入生なのだろう。彼はこの街で一番の名門校の、それも真新しい制服を着ていた。
「あれ?ここどこ?」
その少年は、きょろきょろと辺りを見回す。
どうやらこの場に来た事は彼にとっても本意では無いらしい。
(転位系能力者で制御に失敗したのか?)
だがあのような異空間をかいした転位能力など聞いた事も見た事も無い。
ならばこの少年は一体何者なのだろうか。
「そこのオジさん、つかぬ事を訊きますがここは一体何処なのでしょうか」
判断しかねていると、少年の方からこちらにコンタクトをとってきた。
「あ、ああ。ここは私の自宅兼仕事場で、この部屋はその食堂だよ」
不意を突かれつい正直に答えてしまったが、まずかったかもしれない。
なにせ、彼の立場や目的が判らないのだ。
部屋の外には護衛達が控えてはいるが、室内の異変に気づく事は恐らく無いだろう。
ここ
「ガタンゴトンって音がしてるよ?電車に住んでるの?お家賃いくら?」
「いや貸家じゃないから家賃も無いが」
「ほうほう」
亡本裏蔵は学園都市のトップ、統括理事会のメンバーの一人であり暗殺や襲撃を防ぐ為に地下を走り続ける武装列車に住んでいる。
「う~ん、なんで間違った所に出ちゃったんだろう?」
少年は首を傾げている。その姿には敵意や害意は感じられない。
やはり偶然迷い込んだだけなのだろうか。
「せっかく差し入れ持って来たのになあ」
少年がビニール袋をのぞきこみながら残念そうに呟いた。
その時、袋の中から漏れ出た匂いが亡本の鼻をくすぐった。
(こっ、これは!?食欲に直接語り掛ける様な芳醇な香り!!)
「じゃ、そーゆーことで。お邪魔しましたー」
こちらに手を振り、後ろの『黒い空間』に戻ろうとする少年に、亡本は声をかけずにはいられなかった。
「待て!!その袋には、何が入っている!?」
「お?焼きそばだけど……」
少年は袋からタッパーに入った焼きそばを取り出した。
そのとたん、より一層強くあたりにその香ばしいソースの匂いが広がる。
「……」
ゴクリ。と、亡本の喉が鳴った。
「えーと……食べます?」
「是非!!!!」
その焼きそばは、一見すると普段の自分ならば絶対に口にしない様な、縁日等で売られているどこにでもありそうな代物だった。
良く言って普通の、悪く言えば陳腐な焼きそば。
しかし亡本はその焼きそばから眼を放す事が出来なかった。
(私の本能が叫んでいる!!早くこの焼きそばを食したいと!!)
割り箸と共にタッパーを差し出す少年から、奪い取るように受け取ると、亡本は一心不乱にその焼きそばを口に入れた。
「う……うまい……」
そしてソレだけではない。体の奥底から元気が、心の奥底から楽しさがこみ上げてくる。
「ほうほう、お気に召したようで何よりですな。じゃ、オラはこれで」
焼きそばを食べ終わり、気がついた時には既に少年の姿はそこに無かった。
もう一度あの焼きそばを食べたい。その欲求に抗えず部下に件の少年の身元を調べさせた。
彼の着ていた制服から通う予定の学校は判っていた、あとは『一人称がオラの新一年生』で調べさせれば直ぐにその正体は判明した。
トルネードコール
「第八位の超能力者『法則無視』、野原しんのすけ。か」
今夜はここまでです。
続きは明日の夜9時の予定です。
けんさんの焼きそばか
あれは美味そうだった
伝説のソースじゃなくても上手いよな、絶対wwww
今回の投下は飯テロだったのか…
1です。これから投下します。
皆さんは今まで食べたもので感動したもの、忘れられない料理ってありますか?
ちなみに1は鯨の刺身です
>>208
この人を味方にするにはあの焼きそばしかないと思いました。
>>209
モヤシ、タマネギ、ニンジンといったに豚肉(たぶん)を具に、青ノリ、卵黄をトッピング
アレは絶対美味いですよね
>>210
今回は前回以上かもしれません
亡本は直ぐに『焼きそばのお礼がしたい』と言う名目で彼を招待した。
「いやぁお礼なんていいんですよ」
遠慮のカケラも無くこちらの用意した料理をパクパクと食べながら、件の少年、野原しんのすけは言葉でのみ断りを入れる。
彼が言うには『あの焼きそばは不法侵入に対する迷惑料』とのことだった。
「ふむ、ではこうしよう。あの焼きそばのレシピを教えてくれ、この料理はその情報料だ」
「オーケーオーケー。まずソースがね……」
あまりマナーの上では褒められた事では無いが、二人は食事と共に会話を続けた。
しんのすけの話では、昔食べた『秘伝のソース』の味を再現してみようと色々やってみた結果、ある程度納得できるモノができたので
この街でこれから度々世話になるだろう人物に、そのソースで作った焼きそばを手土産に出かけたと言う事だった。
「しかし間違って私の所に来てしまったと……その世話になる人物とはひょっとして統括理事会のメンバーなのかい?」
「うん、亡本のオジさんもなんでしょ?どおりで出るとこ間違えちゃったわけだ」
亡本は考える。
彼が既に統括理事の、誰かしらの庇護下にあるのは意外でもあるが同時に納得の状況でもある。
何せ新しい超能力者だ。誰でも手に入れようと動くだろう。
しかしそれならば何故今日自分は彼を招待できたのだろうか?
普通は彼に入知恵して断らせるなり、何かしらの邪魔をするだろう。
考えられる可能性はこうだ。
誰かは知らないが、その統括理事は彼を利用するつもりは無い。
彼が助けを求めたら助けるが、それ以外は彼の自由にしている。
だとすれば、そんな『お人好し』のメンバーはあの二人の内のどちらかだろう。
「君に世話を焼いてくれるのは『親船最中』と言う人かい?」
「いや?違うゾ?」
成程もう一人の方かと察し、ならば不快にさせるかも知れない無用な詮索は避けるべきだと別の話題を向ける。
「君は今までにあの焼きそば以外にも何か美味しい物を食べてきたのかな?それと『秘伝のソース』と言うのも詳しく聞かせてくれ」
亡本には正直彼が超能力者である事等どうでもいい。
元来『食事』以外に興味を持たない男である。
自然にふる話題もそう言った方向になった。
「うん、昔『B級グルメカーニバル』ってお祭りがあってね……」
会話が続く。
しんのすけから見たら亡本が食べたあの焼きそばの味は、まだ及第点であった事にも驚いたが
そのオリジナルがあの流離の料理人『ソースのケン』の焼きそばであった事はそれ以上の驚きだった。
加えて『A級グルメ機構』の暴走を止めたのは、彼とその友人達だったのだ。
しんのすけの話す内容は、亡本には驚きの連続だった。
「とまあ、オラが食べた『美味しい物』はこんなかんじ」
「ああ、とても参考になったよ」
彼は料理の記憶を、それはそれはおいしそうに語っていた。
ブリブリ王国の宮廷料理の数々。
酢乙女財閥会長の孫娘に仕える料理人が作ったコンソメスープ。
モロダシ共和国で王子の結婚式に参列した際に食べたクザクザロ・グマ(鮪の姿焼き)。
朝から晩までの逃走劇のすえにやっと口にした焼肉。
たった今釣り上げたばかりの魚を船の上でさばいた鮮度抜群の刺身。
南海の孤島のジャングルで遭難していた時に見つけた野生のバナナ。
『A級グルメ機構』に追われ森の中で一夜を過ごす事となった日の、5人と1匹で分け合った一つのクッキー
高級料理もあったが高級とは程遠いものもあった。
しかししんのすけは全ての記憶を同列に語った。
彼にとっては皆どれも美味しかったのだろう。
(『皆で食べればもっと美味しいよ』……か)
彼がグルメッポーイにかけた言葉。
人との交流が最高のスパイスになるなど、欺瞞でしかないと思っていた。
料理とは特定の誰かにこそ特化して作られるべきだという考えを改める気は無いが、彼の話にはそう言った物は出てこなかった。
むしろ大人数で食べた記憶が楽しかったと言う話の方が多かったと思う。
何より、今彼共にした食事は楽しかった。
(食事は楽しいもの、か。久しく忘れていたな)
どうやら自分のこだわりも、グルメッポーイのソレと大差無かったらしい。
「野原君」
亡本は憑物が落ちたような顔で、しんのすけに呼びかけた。
「何?」
「これからソースが完成に近付く度に、ここへも持って来て欲しいのだが」
亡本は思う。
彼のパトロンが彼を自由にしておくのなら、自分も一枚噛ませてもらおう。
何より直感が訴えている。
今後も彼との縁が続けば、美味しい物を食べられると。
「うん、そんな事で良いならおやすいごようだゾ」
こうしてその後も亡本裏蔵と野原しんのすけの交流は続いた。
しんのすけがスキルアウトに入った後には亡本はその活動資金の提供者となった。
もっともチーム内でその事を知るのはリーダーである駒場利徳と仲介をしたしんのすけのみであったが。
そうして何時しかしんのすけはこもりきりの亡本を心配し、彼の部下達には秘密で外食に連れ出す様にまでなった。
ここで亡本の回想は終わり、舞台は現在へと戻る。
秘書が亡本に訊いた。
「第八位に何か指令を?」
亡本が答える。
カジノ
「ああ、とある賭博場のアガリが、私の政敵でもある理事会メンバーの一人に流れているようでね……」
子飼いの傭兵達に任せても良かったかもしれないが、未だ不確かな情報だ。
しんのすけに頼んだのは探りを入れつつ、真相が確定したら賭博場を閉鎖に追い込む事。
後半だけならともかく、前半も合わせると亡本の手元に最適な者達は居なかった。
「多少危険な仕事だが彼ならやれるだろう。君も彼からしらの要望があれば極力援護しろ」
「承りました」
とは言え、彼は自分独りでは無理だったり危ないと判断すれば迷わず誰かに助けを求める。
今日も亡本の護衛に、組織のナンバー2を引っ張りだしてきた。
浜面本人は何も知らされておらず無自覚だったが、しんのすけは彼なら『危なくなれば隣に座っている者を護るはずだ』と言う
浜面仕上と言う人間に対する信頼の表れだろう。
秘書が退室し一人になった部屋で、亡本は呟いた。
「さて。この依頼に、彼はどんな人材をつれて行くのかな?」
今夜はここまでです。
マフィアの若きドンって見た目のおっさんが現役高校生と楽しく食事しているだけのお話
しんのすけが女性だったら亡本さん完全OUTだな……
あと今回それ程重要なものではありませんがちょっとしたミスリードを仕込みました
次回投下は少し空いて年明け後の予定です
そういや初期に温泉でしんのすけに犬かきを教えてもらった、アクション小麦粉の会社のヤクザっぽい社長さんいたよね。
その後、花見で会ったり、しんのすけを師匠と読んだり
めっちゃ好きだからまだ読んでいたい
忙しいならハーメルン辺りに引っ越してもいいのよ
1です。ネット環境が多少変わったのですが、トリ変わってませんかね?
大変お待たせしました。ご心配おかけして申し訳ありませんでした
これから投下します
>>223
彼も出したいのですが、外の極道さんは学園都市内の物語には絡ませづらいのでチョット悩んでます
このクレしん×とあるを書き終えたら(恐らく年単位で先の事でしょうが)クレしん×龍如を書くつもりなので
そっちでは大活躍でしょうが
>>238
ハーメルンには、完結後に加筆修正(台本形式を小説形式にしたり)したものを投稿する予定ですが数年は先の事になりそうです
しんのすけ達がデスペラードで夕食をとった翌朝 上条宅
自動書記「上条当麻、ベッドの下に在ったコレはなんですか?(怒)」
上条「そ、それは……」セイザ
自動書記「……ハア」
上条「っ」ビクッ
自動書記「誤解しないで下さい。こういう物が在った事を怒っているのではないのです」
上条「え?」
自動書記「上条当麻は高校生です。こういった物がこの家に在ったのは、むしろ当然です」
上条「……」
自動書記「もう一度問います、上条当麻。コレはなんですか?」
上条「……夏休みの宿題です」
自動書記「ええ、そうですね。では何故白紙なのですか!?」バン
上条「ゴメンナサイ、今までソノ存在を忘れてました」
自動書記「まったく、貴方と言う人は」
ドアチャイム<ピンポーン
上条「あっ俺が出るよ」
自動書記「いえ、そのままで。禁書目録、対応していただければ幸いです」
インデックス「ハーイ」
しんのすけ「よっ!こんにちは上条君」
上条「あ、しんのすけ」
しんのすけ「……上条君、なんで正座?浮気がばれたの?」
ツインデックス「「え?」」ジトー
上条「浮気なんてしてねえよ!?ていうか俺にはそもそも彼女がいねえ!!お前と一緒にすんな」
しんのすけ「自分で言ってて悲しくならない?あとあいちゃんはあくまで幼馴染だから、オラも特定の恋人は今居ないからね?」
上条「誰も酢乙女の名前なんて出してないけどな」
しんのすけ「んぐ……それで、なんで正座なの?」
自動書記「実は上条当麻のベッドの下から」
しんのすけ「えっそんなマニアックなのが?」
上条「違うから!!ペンデックスが見つけたのは学校の宿題だからな!!」
しんのすけ「ああ、今は夏休みだもんね。え?それが見つかったからって、なんで正座?」
インデックス「白紙だったんだってさ」
自動書記「そういう事です。なお、禁書目録は何故白紙だと私が怒るのかは理解していないと思われます」
インデックス「うん。そうだよ」
自動書記「……はあ、禁書目録。貴女はリビングでテレビを見ていて下さい」
インデックス「え?なんで?」
自動書記「しんのすけが親友から借りて来てくれたカナミンのBDをまだ全部観ていないでしょう?なお、こういう物は可能な限り早く返すのがマナーだと思われます」
わか
インデックス「あ、そうだね。了解ったんだよ」タタタ
自動書記「ふう、これでやっと本題に入れますね」
インデックス
上条「あいつには見せられない程の折檻を!?」
自動書記「いえ、そうではなく……上条当麻、貴方が宿題の存在を忘れていたのは『竜王の殺息』の後遺症なのですか?」
上条「い、いや違うぞ!?完全にただの俺のド忘れで、お前の責任なんてこれっぽっちも無いんだ!!」
自動書記「私はそれを信じて良いのですか?」
カード
しんのすけ「良いと思うゾ。あの時オラは『悪い所全部直す』つもりで霊装を使ったからね」
自動書記「そう、ですか。なら……」
上条「そういう心配をしてたのか。なら確かにインデックスには聞かせられないな」
しんのすけ「ああ、インちゃんは上条君が一度記憶を失くした事、知らないんだっけ」
自動書記「はい、その為彼女に対し、ごまかす必要がありました」
しんのすけ「それが正座説教って……でも、てことは上条君、素で宿題を忘れてたんだよね?念の為もう一度ヤっとく?」つカード
上条「しんのすけ、お前のその一欠けらの悪意も無い心配は逆に傷つく」
自動書記「そもそも、しんのすけは何故上条当麻を訪ねて来たのですか?」
しんのすけ「うん、ちょっと手伝って欲しくて」
上条「手伝う?なにをさ」
しんのすけ「上条君、一晩で巨万の富を掴んでみない?」
夜 とあるバーのカウンター
しんのすけ「注文いい?」
バーテンダー「はい、何をお出ししましょう」
しんのすけ「『シンデレラとブラッディ・メアリを3対1』……」
バーテンダー「……」ピク
しんのすけ「『ウォッカ抜き』でね」
バーテンダー「かしこまりました」カチャカチャ
上条(こういう店、初めてだからかなんか緊張してきた……)
バーテンダー「どうぞ『オールオアナッシング』です」つカクテルコト
しんのすけ「ありがと」クイ
バーテンダー「お客様……『当店新メニューの試飲をお願いできますか?』」
しんのすけ「うんもちろん。彼も一緒に良い?」
店員「ハイ、こちらにどうぞ」
しんのすけ「ほら、行くよ上条君」
上条「お、おう」
店の地下 違法賭博場
上条「ほ、本当にあるんだな……こういうの」
しんのすけ「売上の一部が統括理事の誰かしらに行く様になっていて、アンチスキルには情報が入ってこないようにされているらしいよ」
上条「で、その金の行方を調べるのがお前の頼まれた仕事なんだっけ?」
しんのすけ「加えてそれが依頼者の政敵で確定した場合、このカジノを閉鎖に追い込む事もね」
上条「……理事会メンバーってのは仲が悪いのか?」
もの ソノリジ
しんのすけ「政界なんて何処も似た様な状況だと思うけどね。まあ相手には黒い噂もあるし」
上条「黒い噂?」
チャイルドエラー
しんのすけ「『置き去り』の脳髄を引きずり出して、私兵団のブレノイドを量産しているとか……」
上条「前半部分だけでヤバイ単語だって解るけど……ブレノイドって何だ?」
ノウ アンドロイド
しんのすけ「SF用語で脳だけ生身の人造人間のことだゾ」
上条「……あくまで噂だよな?」
しんのすけ「うん、噂でしかないよ」
上条「……お前の『依頼人』は大丈夫なのか?」
しんのすけ「ん~、せいぜい『雇っている傭兵達は特に仕事が無い時は仮死状態で冷凍保存されている』ってのがある位かな」
上条「いや、黒い噂の有無じゃなくて」
しんのすけ「うん大丈夫。支配欲、権力欲、金銭欲とは無縁な人だから」
上条「へえ、やっぱり統括理事も悪人ばっかりってわけじゃ無いんだな。でもなんでそんな人間が政治家やってんだ?」
しんのすけ「その分食欲がカンストしてて、高級食材や希少食材を手に入れるのに必要な立場だからだゾ」
上条「……頭が痛くなってきた。この街本当に大丈夫か?」
しんのすけ「まあまあ、上が悪人揃いじゃないって言うのは本当だから。」
上条「なら良いけどな……」
しんのすけ「さあ難しい話は終わりにして、まずは大勝してBIPルームでの高レートゲームに参加する資格を得なきゃ」
上条「BIPルームなら事情通な常連客も居るだろうって事か」
しんのすけ「そう言う事、その為に上条君を連れて来たんだから~」
上条「なあ、人選が壊滅的に間違っている気がするんだが?」
しんのすけ「そんな事無いって。大丈夫、オラに考えが在る!!」
ルーレット
しんのすけ「最初はコレ、赤と黒。上条君はどっちに賭ける?」
上条「こういうの、当たった事が無いんだよな……まあ、赤かな」つコイン1枚(百円分)
しんのすけ「じゃオラは黒で」つコイン10枚
ディーラー「では……」スッ
上条「……やっぱり」(コイン残り10→9枚)
しんのすけ「おお、勝った勝った」(コイン残り10→20枚)
数十分後
しんのすけ「上条君の手持ちも終わっちゃったし、次でラストにしようかな?」
上条「悪いな、幾らかかまわしてもらったのに、全部スッちまった」
しんのすけ「まあ端数分だから気にしないで」
ギャラリー1「すげぇ、あの客ずっと連勝してるぞ」
オールベット
ギャラリー2「しかも初めての内は、常に全賭けだったぞ……」
ギャラリー3「だけど反対にその連れは外れ続きみたいだな」
上条(そうか、これがしんのすけの『考え』ってやつか。俺の賭けた方とは逆に賭ける事で勝ち続ける……)
しんのすけ「最後だし、上条君。一度くらい勝ちたいよね?」つコイン2枚
上条「そりゃ勝ちたいけどさ、どうするんだ?俺の不幸は知ってるだろ?」
しんのすけ「かんたんかんたん、赤と黒の両方に賭ければ良いだゾ」
ディーラー「っ!?」
ギャラリーズ「「「なっ!?」」」
上条「あ、ああなるほどな。儲けはないけど、勝ちは勝ちか」
しんのすけ「そういう事。ああ、あとギャンブラーのマナーでは『勝ち逃げは御法度』……」
ディーラー(ま、まさか……)
しんのすけ「オラは上限いっぱい(千円コイン500枚)を『0』に一点賭け!!」ドン
上条「えーとそれでしんのすけが勝てば、50万の32倍だから……」
ギャラリー2「1600万だ」
ギャラリー「お、俺も『0』に!!」
ギャラリー3「俺もだ!!」
上条「え、なにこれ微妙に傷つく」
ディーラー「で、では」ガタガタダラダラ
上条(震えてるしすごい量の汗だな)
ディーラー(も、もし0に入れてしまったら……)
しんのすけ「……」ニヘラー
ディーラー「そ……そんな……」ガンメンソウハク
黒服「見事な強運ですね、お客様」パチパチ
しんのすけ・上条((来た!!))
黒服「どうでしょう?BIPのみが参加できる、高レートゲームがあるのですが……」
今回はここまでです。
続きは可能なら明日中には投下します
実はルーターを新しいのに変えたのですが、そのルーターがイカレてるのか仕様なのか
通信が安定しなくてですね
3月からは多少ましになると思いますが
今後は最低でも周一更新を目指しますが今まで以上に亀更新になるかもしれません
トランプで上条君の頭の悪いところは治んなかったか
いつかヘクソンとかパラダイスキングとか出ないかな。
ぶりぶりざえもんは勿論いつか出してくれますよね?(期待)
おひさしぶりです1です。今日から投下再開します。
>>256-258
原作のアレ(上条さんアタマ悪い説)ってデッドロック戦の後遺症だったりするんでしょうかね?
このSSでは上条当麻の素の学力(頭脳)については「学校を度々欠席遅刻無断早退しているためテストは赤点」「授業には補修をうけることでギリギリついていけている状態」「記憶力は低いが理解力は高い」と言う風に考えています
>>262
劇場版の悪役はほぼ全員どこかのエピソードで出す予定です
1は可能な限り両原作オールキャラSSを目指しています。(今回も超マイナーキャラが出ますし)
なのでもちろんあの救いのヒーローも出ますよ。彼は比較的早く登場してその後のストーリーに絡む予定です
地下違法賭博場BIPルーム
上条「……あれ?なんか違和感が」
しんのすけ「どうしたの?」
上条「ああ、解った。なあしんのすけ、ビップってVIPじゃなかったっけ?」
VIP
しんのすけ「やだなぁ上条君、オラ達が『上客』なわけないでしょ」
上条「そりゃそうだ……つまり?」
プレイヤー
しんのすけ「ここは『バカ勝ちしたイヤな客』ルームだゾ」
上条「んん!?」
しんのすけ「ねえ上条君、例えば国際テロ組織による世界規模のサイバーテロを未然に防ぐとか、そういう活動をしている国連直属の秘密組織の名前とかさ、世の中そんなもんなんだよ」
上条「解った。例えがやけに壮大かつ具体的な事も含めて、俺はもう突っ込まない」
しんのすけ「で、話を元にもどすとね。VIPって言うのは『この部屋』のゲームの勝敗で、賭けをする様な人達の事だよ」ユビサシ
上条「あの監視カメラ……イカサマ防止とかじゃなくてそういう事なのか」
しんのすけ「そ。本当のVIPルームじゃ、ここの様子が映ってるってわけ。まあこの部屋だって簡単には入れないはずだゾ?だから事情通なお客ならここにも居るんじゃない?」
上条「そのわりには俺達は案外早く入れたな」
しんのすけ「まあ周りから注目されてたしね。もっと言えばカジノ側からすれば『大勝する客』より『カジノに損をさせる客』にこそ早々に退場願いたいわけだし」
上条「ああー、さっき周りの奴らが皆『0』に賭けたから……」
しんのすけ「カジノは大損、少しでも取り返したいってところが本音だと思うゾ」
黒服「お待たせしましたお客様。当賭博場自慢のギャンブラーをお連れいたしました」
上条「ギャンブラー?」
しんのすけ「所謂用心棒だね、大勝した客とサシ勝負してカジノの負け分を取り返すのがお仕事……のはずなんだけど」
緑髪の小学生「なんだい?」
しんのすけ「用心棒?」
小学生「そうだよ。僕がこのカジノの用心棒さ」
しんのすけ「上条君、予定変更。子供を働かせているとかお金の行き先以前にもうこのカジノアウトだ」ヒソヒソ
上条「情報収集は止めって?」ヒソヒソ
小学生「何をこそこそ話してるのさ」
しんのすけ「ああ、ごめんごめん。それでゲームの内容は?」
小学生「種目はポーカー、細かいルールはそっちが決めて良い事になってるよ」
上条「良いのか?ソレだけ聞くとカジノ側が不利なようだけど」
小学生「もちろん。何故なら僕は『絶対の幸運』に護られているからね」
しんのすけ「んなっ!?上条君の……真逆の、能力だと!?」ザワ
上条「しんのすけ、お前は俺の『幻想殺し』をなんだと思っているの?」
しんのすけ「まあ冗談はさておき、それならまずは新品のトランプを買って来てくれる?それをそのまま使うから」
カジノ
上条「相手側にイカサマされない様にか」
小学生「無駄な用心ごくろうさま。結局は負けるのにさ」
しんのすけ「負けないよ。イカサマ無しの賭けじゃ一度も負けた事無いもん」
小学生「……へぇ」
黒服「『新品のトランプ』ですね。直ぐに用意いたします」
しんのすけ「あ、そうそうどうせなら普段は絶対にカジノじゃ使わないようなヤツが良いな。カナミンとかキャラ物のさ」
小学生「『相手がガキなら使うカードも安物で良いだろう』って挑発のつもり?オジサン意外にせこいね」イラ
しんのすけ「別に?元々カジノ側が用意してあった『未開封を装った物』の可能性を少しでも減らしたいだけだゾ」
上条(確かに子供向けのアニメキャラクターのトランプなら前もって用意してあるはずも無いか)
小学生「ま、良いけどね。どうせ勝つのは僕なんだし」
黒服「双方同意ですね?では買いに行かせます。準備が整うまでしばしのお待ちを」
上条「しんのすけ、チョット」
しんのすけ「ん、なあに?」
部屋の隅
上条「すごい自信満々だけど勝算があるのか?」ヒソヒソ
しんのすけ「無い事も無いかな?もしもあの子が本当に上条君と真逆の能力なんだとしたら正直お手上げだけど」
上条「『無い事も無い』……か、具体的には?」
しんのすけ「まあこの腕輪とか使えば、イカサマなんていくらでもできるけど……」
上条「ああ。『ワープホール発生装置』なんだっけ?」
しんのすけ「そ、『ゆるゆるの賢者の腕輪』~。あの黒服のオジさんが買ってくるノが、オラが用意した5種類と同じヤツならね。まあそうなる様に誘導したけどさ」
上条「ああ、さっきの……」
しんのすけ「そういう事~お?来たみたい」
上条「ん?」
黒服「お客様、準備が整いましたので、テーブルへ」
しんのすけ「ホイホーイ。じゃね、上条君」
上条「ああ、手伝える事はなさそうだし、俺は他の客と一緒にお前が勝つのを観てるよ」
BIPルーム中央のテーブル
プレイヤー
黒服「ではこれより当カジノが誇るギャンブラーと今宵幸運の女神に微笑まれたお客様とのゲームを始めます」
しんのすけ「よろしくね」
小学生「ふん」
黒服「まずプレイヤーから、ルールの発表をお願いします」
ステンド オールベット
しんのすけ「OK、勝負はドローポーカー。チェンジは一回、降りなし全賭けのみ一回勝負」
小学生「へぇ……強気だね(簡単に終わって楽で良いや)」
しんのすけ「使用するカードはついさっき買ってきた新品をそのまま使う。だから『ワイルドカード有り』のルールだゾ」
上条「ん?どういう意味だ?」
バンダナの男「この手の賭博場じゃ、ポーカーにJOKERつまり『ワイルドカード』は普通は使わない。在っても一枚だけだ」
かんざしの女「今回は新品を『そのまま』使うので、JOKERを引き抜く事が出来ない。それ故の『ワイルドカード有り』と言う事ですね」
上条「なっ(コイツ等いつの間に俺の隣に!?)」
バンダナ「『有り』の場合、ロイヤルストレートフラッシュよりさらに上。ファイブカードと言う役が最高役になる」
かんざし「つまりJOKERを手にする事が出来るかが、勝負の鍵……」
バンダナ「一回勝負……普通ならどちらの手札にも来る事無くゲーム終了。だが」
かんざし「ええ、イカサマかあるいは純粋な強運か……いずれにせよ『この部屋』に入る事が許されたプレイヤーと、そんな相手に勝つべくカジノ側が用意した用心棒」
バンダナ「双方、かなり高い役をつくるはずだ」
上条(こ、この二人はまさかイワユル『解説モブ』なのか!?)
しんのすけ「まあ、大まかなルールはそこの二人が今言った通りで基本的には普通のドローポーカーと変わらないから」
黒服「かしこまりました」
小学生「わかった。で、その肝心のトランプは?」
黒服「こちらになります」
つゲコ太トランプ
小学生「さすがに、対象年齢低すぎじゃない?」
しんのすけ「オラもこれは予想外だゾ(しまったゾ。コレは用意して無い奴……さて、どうしますか)」ニガワライ
今夜はここまでです。267さん270さん支援ありがとうございます。ルーター変わったら連続書き込み出来る様になったみたいですので次回からはもう大丈夫です
今年の劇しん観てきました
詳しいネタバレは避けますが、序盤から泣かせに来てますね
まさかの伏線……
あとラリアットで荒鷲△ってテンション上がりました
あと映画と言えばベイマックスのBD観たのですがエンディングで思わず叫んでしまいました
ワニ山さーん!?何故貴方が其処に!?
駄目だ・・・小学生の声が銀河万丈で再生される
好きな映画だったブタのヒヅメからも早く出て欲しいと思いーの
木山先生の尻型取りそうな大袋博士とかSML最年少エージェントになったセーギ君とか(CNはイケメンで)
まだかなまだかな
サボテン大襲撃面白かったけどコレ関連のネタもいつかやらないかな。
魔術師によって強化復活を遂げた人食いサボテンが学園都市に持ち込まれるとか。あれは能力者ども「弱点」以外の能力で倒すのは難しそう。
あいちゃんならメキシコに行ったしんのすけを当然の如く追って引っ越しすると思った。
>>282
親とか黒磯さんに説得されて思いとどまるというドラマがあればいいなーと思いましたまる
ここで話すことでも無いけど今回の映画は一つ15分30分のエピソード付けて欲しいシーンや描写があったな
おいおい、まだかよ…
お久しぶりです、1です。これから投下します。
>>274-276
一応この少年はとあるサイドの原作キャラクターです(アーカイブドラマCD)
普通にショタ声でした。中の人の名前まではわかりませんが、たぶん女性の方ですね
>>277
セイギ君のコードネームはチョット悩んでますお色気と筋肉の子にふさわしい名前にしたいのですが、
単純にジャスティスにすると夕陽のカスカベボーイズに出てきた知事とかぶり
イケメンだと宇宙のプリンセスに出てきたマズマーズとかぶってしまうので悩みどころです
>>281>>287
お待たせして本当にすみませんでした。
>>282>>284
1も映画館で「貴女は逢おうと思えば何時でも逢えるのでは?」と思いましたが
原作をよく読んで見ると彼女は好き勝手(黒磯さんへの買収や脅迫等)やっている様に思えても英才教育でわりと自由が無いんですよね
36巻ではそれが嫌になってしんのすけに自分と駆け落ちしてくれと頼んだり
45巻で水泳嫌いになったり(このお話、カプ厨脳しんあい派の1的にはマジお勧めの神回です)
そこらへんが次のエピソードでのメインテーマになります
>>285
クレしんファンとしてはすごく良い映画なのに
要素やエピソードを箇条書きに抜き出すと、絹旗ちゃんが好きなジャンルになる
そんな不思議な映画でしたね
緑髪の小学生、違法賭博場の用心棒は今日の対戦相手が何かイカサマに失敗したのだと察した。
だが相手のその顔には、苦笑いこそ浮かべているが冷汗は無い。
おそらく致命的なミスと言うほどでは無いのだろう。
あるいは……
(まともに勝負しても、僕に勝てるつもりだとか?)
思わず鼻で笑ってしまう。
「何か?」
それを不信に思ったのか、この勝負でディーラーをつとめる(と言ってもカードを配るだけだが)黒服の男に問いかけられた。
直ぐに真顔に戻し応える。
「何でも無いよ。さ、早く始めようか」
「オラも良いゾ」
黒服の男がトランプの封を切り、シャッフルしたカードを二人に配る。
(『絶対の幸運』って言うのは、まあウソなんだけど……今回は本当にそうだと思っても良いかもね)
配られた手札を視て、知らぬうちに笑みが浮かぶ。
S10 DA HQ C10 J スペードの10ダイヤのAハートのQクラブの10そしてJOKER
ワイルドカードを含め、この時点で既にスリーカード。
チェンジが一回のルールならば、普通は負ける方が難しい程の恵まれた手札。
しかし……
「5枚チェンジだ」
彼はその恵まれた手札をJOKERさえも含めてチェンジする。
そしてその結果は……予想以上のカードを引き当てた。
もう自分でも、笑いを隠す事が出来ない。
「ほほ~う?」
「何さオジさん」
そんな彼を、しんのすけはにやにやと眺めて言った。
「いやね、最初の手札を配られた時点で笑ってたから、すごく良いカードが来たんだろうなって思ったのに、変えちゃうから」
シャミセン
ブラフでも無いだろうし、と続けるしんのすけに答えを返す。
「問題ないよ。もっと良いカードを引いたからね」
今、彼の手札はSK SQ D9 H3 J スペードのKとQダイヤの9ハートの3そしてJOKERだ。
ジャック ストレート ワンペア
3がJだったなら中級の役ができたが、これでは下の役。
ブタ スリーカード
役無しよりはマシと言えど、最初の下の上の役よりも二つ下の役だ。
だが、彼の能力を併せれば結果は変わる。
『絶対の幸運』『絶対的な幸運に護られている』彼が好んで使うフレーズであり、それを聞いた者は『運』に作用する能力かと推測するが勿論事実は異なる。
彼の本当の能力とは『精神感応』系統のもので、一言で説明すれば『自分の言葉を他者に信じさせる』と言うものだ。
例えばクラブの2のカードを、彼が『これはJOKERだ』と言えば、その言葉が聞こえた者には実際にそのカードがJOKERに見える。
故にポーカーでは手札を開示する時に何のカードか宣言すれば、どんな高位の役でも思いのままだ。
相手もギャラリーも、その言葉を信じるのだから。
とは言え、絶対にこちらの手札にあるはずの無いカード……例えば相手側の手札の中にあるカード等を使って役を作るわけにはいかない。
その為しんのすけの提示したルールは、故意か偶然かはともかくとして、彼の能力による優位性を著しく落とすものではあった。
何せ万が一の事態を避ける為には、最初に引いたカードと一回のみのチェンジで得たカードの最大10枚の中から役を作らなければならない。
イカサマ
全くの能力使用無しと比べればそれでもまだ有利ではあるが、能力の使い方が大分限られたのは事実だ。
しかしそれでも今回は自分の勝ちだと、彼は既に確信していた。
彼が役を作る為に選べる10枚のカードは
S10 DA HQ C10 SK SQ D9 H3 J×2
その中から彼が選ぶカードは
S10 SK SQ J×2
『JOKER2枚を含めたスペードのロイヤルストレートフラッシュ』
つまり負けようが無い最高役である。
先程ギャラリーの一人が「ワイルドカード有りのルールではロイヤルストレートフラッシュが最高役にならない」と言ったが、
そのロイヤルストレートフラッシュよりも上の役である『ファイブカード』は、ワイルドカード無しには作れない役だ。
(つまり僕は絶対に負けないってことだ)
つい笑顔にもなろうというものだ。
心配があるとすれば、能力が効かない相手にイカサマが見破られることだが、今まで一度としてそんな事は無かったし、
能力開発を担当した研究者が言うには、
「声を媒介にした思念波は赤外線を媒介にしたそれとは異なり、超能力者の一人であり精神感応系最高位である『心理掌握』が効かない『超電磁砲』に対してすらも理論上は有効」
とのことだ。
レベル5
超能力者すら騙す自分の能力が破られるはずは無い。
そんな静かに笑みを浮かべる彼に対し、しんのすけもまた笑っていた。
その様子に、上条は不安げにつぶやく。
「ああ、なんかあの子供すごい余裕っぽいんだけど、しんのすけは大丈夫なのか?」
「さあな、だが……」
隣にいた、バンダナの男が言う。
ステンド レイズ
「降りも上乗せも無い全掛け一回勝負じゃ、ハッタリは意味がない」
「えっと……つまり?」
バンダナの男の言葉の真意を解りかね、上条は聞き返す。
するとそれに、かんざしの女が応えた。
「某海洋学者が学生時代に使ったテクニックは今回は使えないと言う事かと」
「いや、そうじゃ無くてな……」
しかしかんざしの女もバンダナの男の言いたい事を理解していたわけでは無い様で、バンダナの男が否定する。
「あんたの連れは、笑ってるだろ?」
「あっ!そうか!!」
この勝負にハッタリは無意味、しかししんのすけは笑っているのだ。
「少なくとも、それなりに良いカードは来たんじゃないか?」
3人がしんのすけを見る。
ちょうどテーブルではディーラーがしんのすけにカードチェンジを問いかけていた。
「では、続いてチャレンジャー……何枚のカードをチェンジしますか」
「0枚、オラはノーチェンジだゾ」
それを聞き、ディーラーはゲームを進行する。
「では降りなしのルールなので、両者手札をオープンしてください」
「じゃあ僕からいくよ?早く終わらせたいからね」
用心棒の少年が手札をテーブルに伏せた。
(ほほーう、なかなかこった演出ですなー。じゃオラも……)
しんのすけも同じようにカードをテーブルに伏せる。
「僕のカードは……まずスペードの10!!次にスペードのクイーン!!そしてキング!!」
用心棒の少年が一枚ずつ裏向きのカードを返し、公開していく。
三枚をめくり終えた時点でギャラリーがざわめいた。
「おい……まさか」
「いや、だとするとジャックが無いぞ!?」
少年はその様子にほくそ笑む。
「(ふふ計算通りだね)……そして最後の2枚は……JOKERだ!!!!」
「なっ!?」
「すっげぇ!?ホントにロイヤルストレートフラッシュが揃うとこなんざ初めて観たぜ!?」
まず目にする事の出来ない高位の役に、ギャラリーが盛り上がる。
ディーラーをつとめる黒服の男も満足気にしんのすけに公開を促す。
「ではチャレンジャーも」
「ほいほい、いや~君すごいね」
そう言いながら、しんのすけがカードを表に返していく。
一枚目はクラブのエース、二枚目はダイヤのエース。
「ふふ、残念だったねオジさん。ま、相手が悪かったのさ」
「いやいや、オラも負けてないゾ」
会話しながらもカードを返す。
三枚目はハートのエース、四枚目はスペードのエース。
「確かに普通ならフォーカードでもすごいんだろうけどさ。オジさん往生際が、いや頭が悪いね。僕の揃えた役はコレより上がないんだよ?」
「うん、このゲームが子供向け商品のトランプを使ってなきゃ負けてたゾ」
「え?」
しんのすけの手が最後の手札を開示する。
そこには……
何も描かれていなかった。
ブランクカード
「なっ、『白紙』!?」
「そうとも言う~」
『白紙』のカード……
子供向け商品のトランプや花札には、カードが折れたり無くなっても良い様に予備のカードとして一枚だけ入っている物。
「今回の『ワイルドカード有り』のルールは『新品をそのまま使うから』が理由!!」
「なら当然アレも『ワイルドカード』として『あり』って事か!?」
ギャラリーが先程以上にざわめきだす。
「じゃ…じゃあ……」
用心棒の少年が青ざめながら震える声を絞り出した。
エース
「そう、オラの役は『Aのファイブカード』!!正真正銘『これより上がない役』だゾ!!」
「そ、そんな……嘘だこんな事!!僕は『絶対的な幸運』に護られているんだ!!」
「君がどれだけの強運でも、オラの悪運がそれ以上だったらコウなるでしょ」
真正面から否定され、少年の感情がついに決壊する。
「う……嘘だ!!『こんな現実、全部嘘だ!!!!!!』」
少年を中心にBIPルーム内の景色がグニャリと歪む。
それを見て、しんのすけが叫ぶ。
バースト
「上条君来て!!暴走だ!早く!?」
部屋の隅でギャラリーに紛れていた上条が、その声を受けて飛び出した。
「触るのは頭で良いんだよな!?」
確認しながら、自身の異能『幻想殺し』が宿る右手で少年の頭部に触れる。
「うん、それで治まるはずだゾ」
しんのすけがそう言った通り、周囲の歪んだ景色が元に戻っていく。
「ふう、何とかなったね。ありがと上条君」
「ああ……と、この子気絶してるぞ?」
少年の上半身は、テーブルの上にうつぶせに倒れていた。
「暴走の負担は大きいからねー」
「大丈夫かこれ。口と鼻塞がってないか?」
「おこしたげれば?」
「そうすっか……ん?」
気を失いテーブルに突っ伏した少年を、椅子にもたれるようにその身体をおこそうとした上条が何かに気づく。
「おいっ!?このカード!!?」
テーブルの上、上条が指さした先には先程置かれた少年の手札が在った。
それはスペードのキングとクイーン、10、そして2枚のJOKERであったはずだった。
しかし今其処に在るのは……スペードのキングとクイーンは変わらない、だがその後はダイヤの9にハートの3、1枚だけのJOKERだ。
それを見たしんのすけがニヘラと笑う。
「なるほどなるほど。こういう事ですか。さしずめ精神感応系かな?」
上条が訊ねる。
「やっぱりイカサマだってのか?」
「たぶんね。『言った言葉を信じさせる』とかそんなのじゃないかな?ゲームを盛り上げる演出かと思ってたけど」
手札を『一枚ずつ』宣言するなんて普通ならしないもんね。と笑いながら言うしんのすけに、今まで大人しくしていた黒服の男がようやく口を開いた。
「お客様、今回はイレギュラーによりノーゲームとさせていただきます……コレは強制だ拒否権は無えぞ」
豹変する黒服の男に、しんのすけが返す。
「言葉遣いのメッキがハゲてるゾ?オジさん」
しんのすけが懐に手を入れる。
テーブルをはさんだ反対側、少年と上条のすぐ側に移動しながら告げる。
「結局コウなっちゃったか。ごめんね上条君、巻き込んじゃってさ」
「……『コウ』ってどんな?なんかヤバイ雰囲気なんだけど?」
冷汗を浮かべながら上条が聞き返した。
「『イカサマがばれた以上、それを知ったお前らを生かしちゃおけねぇ』ってところじゃない?」
オレ
「この場に偶然居合わせただけのBIP達も含まれるんだろうな。ハァヤダヤダ」
「かなり無茶苦茶ですが、逆に言えばそれだけの無茶を通せるだけの権力がバックに居ると」
又しても何時の間にか上条達の両脇を守る様に立って居た二人。
バンダナの男とかんざしの女が、しんのすけの台詞の続きを繋げた。
「ナァツ!?ふざけんな、俺達は関係無ぇだろ!?」
「オイ!!ドアが!?ドアが開かねぇぞ!?」
それを聞いたギャラリー達が騒ぎ、黒服の男へ非難や罵声が飛ぶ。
しかし黒服の男はそちらをチラリとも見なかった。当然、弁解もしない。
その態度が何よりもしんのすけ達の説明を正解だと肯定していた。
「まあそういうことなら……よいしょっと」
しんのすけが懐から取り出したソレを、右肩に担ぐ様にして構える。
「は?」
「え?」
「エ?」
黒服の男、上条、こちらを見ていたギャラリーから、呆けた声が漏れる。
しんのすけが懐から出した大きく無骨なソレは、真っ直ぐに黒服の男を狙っていた。
「し、しんのすけ?ソレはなんなのでせうか?」
腕輪の効果により、しんのすけが大きさや重さに関係無くポケットから様々な物を取り出せる事を、その場で唯一知っていた上条が動揺しながらも訊いた。
バラエティ番組等でも目にするバズーカ砲とよく似た外見、しかしその先にはミサイルの様な物が付いている異様な武器は何なのかと。
「携帯式非殺傷性ロケットランチャー通称『しんちゃんボンバー』だゾ」
「ロケランの非殺傷ってなんだよ!?」
バンダナの男が突っ込む。
「グ……」
銃口と言うべきか砲門と言うべきか、その先端を向けられた黒服の男が油汗を流し悔しげにうめく。
「御両人、後頼んだ。それと、ごめんね上条君」
不意に、そう言ったしんのすけは照準を上に向け引金を引いた。
爆発音の後、天井に穴が開く。
しかし瓦礫や建築材が、落ちてくる事は無かった。
ただ向こう側の見えない真っ暗な穴が開いていた。
「腕輪の効果か!?」
その穴の意味は、上条は知っていた、自分がその穴を通れ無いことも。
無理に通ろうとすれば、『此方側』に右手だけ置き去りになってしまうだろう。
(『ごめんね』ってそう言う意味か!?)
上条が視線を天井からしんのすけに戻すと、彼はロケットランチャーを懐にしまい、用心棒をしていた少年を肩に担いでいた。
そして穴に向けヨーヨーを投げ入れる、『向こう側』の何かにしっかりと引っかかったらしいそれは、一瞬でしんのすけと少年を穴の中へ引き上げた。
「お、置いていかれた!?」
上条が叫ぶ。
既に穴は閉じ消えて、少し凹み焦げただけの天井になっている。
「ハァ、めんどくさいけど頼まれたからなぁ」
バンダナの男が袖から何かを床に落とす。
一見すると小さな飲料缶の様なソレから煙が噴き出し、上条の意識は暗転した。
「お、上条君起きた?」
「……ここは?」
上条が意識を取り戻すと、そこはしんのすけの家だった。
「えっと、あの後結局何がどうなったんだ?」
上条は混乱していた。
何故自分が気を失ったのか、誰が自分をここに運んだのか。
しんのすけが直ぐに戻って来て回収したのだろうか?
「おお、上条氏が起きましたか」
声をかけられそちらを向くと、地下賭博場のBIPルームで会った二人組の片割れ、かんざしの女がそこに居た。
今の彼女はカジノの時のスーツ姿ではなく、黄色を基調とした片方の袖が無い浴衣を着ていた。
「半蔵様!!上条氏が起きましたよ」
かんざしの女に呼ばれ、バンダナの男も上条のそばに来た。
「よっ!!気分はどうだ?」
「あんた達は?BIPルームで会ったよな?」
上条に訊かれ、バンダナの男が答える。
「まあ察してると思うが、俺達はしんのすけのダチだ」
スキルアウト
「『武装集団』か」
「そういう事。俺はハンゾー、こいつは郭だ」
半蔵に親指でさされた郭が上条に会釈する。
「今宵、私たちは万が一の時の為にと、野原氏が後詰として呼んだのです」
郭のあとを半蔵が続ける。
「途中までは正直俺達いらないよなぁと思ってたんだけどさ……」
言いにくそうに言葉を切ったので、しんのすけが引き継いだ。
「荒事になったら直ぐに逃げるつもりだったんだけどね、その子を置いて行くのはまずいかなって」
しんのすけが指さした先を見ると、上条の隣にはカジノの用心棒をしていた少年が寝ていた。
「暴走の後遺症も無いみたいだし、今はグッスリ寝ているゾ」
上条に少年の状態を説明するしんのすけに、半蔵が思い出したように文句を言う。
「お前が真先にそのガキを連れて脱出した理由も解るし『負けちまった用心棒の末路』なんざ想像したくも無いけどよ、いきなり『後頼んだ』は酷くね?」
「まあまあ、半蔵様。それも信頼の証と思えば」
「お前は『御両人』って呼ばれたのが嬉しいだけだろ!?」
話が脱線し始めたので、上条が発現する。
「えっと、俺は何で眠ってたんだ?」
「ん?ああ、コイツさ」
半蔵が上条に小さな飲料缶の様な物を見せ答えた。
「高揮発性の睡眠薬と言うか、催眠ガスと言うか、とにかくそういうのが噴き出すんだ」
「学園都市の技術により進化を遂げた、現代版の眠り火の術とでも言いましょうか」
「郭、黙れ。そんで周り全員眠らせてから、俺があんたを担いで逃げ出したってわけだ」
「ドアはどうしたんだ?閉じ込められてたんじゃなかったか?」
上条が疑問に思った事を訊く。
「そこは私の苦無でドアノブをこう、ガンと……」
「苦無って……まるで忍者だな」
そう言えば以前しんのすけからマイナー武器マニアの武装集団仲間の話を聞いた事があったなと、上条は思い出した。
彼女がそうなのだろうか。
「……」
一方の郭は、上条の台詞に顔を凍りつかせていた。
彼女の表情の変化に、上条は戸惑う。
「おい、どうした?大丈夫か?」
「ひ、秘密を知られた!?消さっ……上条氏を消さないと!?」
「ええっ!?」
うろたえる郭を半蔵がおさえ、驚く上条にフォローする。
「落ち着け。と、悪いな上条。コレはこいつの持ちネタみたいなものだから気にしないでくれ」
「あ、ああ……そうだ!!BIPルームに居た他の奴らは!?カジノ側はあいつらも殺すつもりなんだろ!?」
「心配いらねぇよ。実はBIPルームの中の状況はカジノや上のバーには連絡されて無いみたいでな、わりとすんなり脱出だきたんだわ。それでよ」
「うん」
上条が続きを促す。
アンチスキル
「丁度俺達と入れ違う様に、バーに警備員が踏み込んできたのさ」
「じゃあ保護か逮捕かはともかくBIPたちも無事だろうね」
「だな。そんな時間無かっただろうし、そもそも眠らせてきたからな」
「今思えばカジノの連携不良も恐らく、突入の前準備として彼女たちがジャミングしていたのでしょうね」
平常心を取り戻したらしい郭も説明に加わる。
「彼女?警備員は女の人だったの?」
「しんのすけ、そこは今どうでもいい」
郭の言葉にしんのすけが興味を持ったが、これ以上脱線させてたまるかと上条が止めた。
しかしその甲斐むなしく、郭はしんのすけに答えたが。
「ええ先陣をきってたのは、半蔵様をたぶらかすあの女でした」
「えマジで!?気づかなかった。カー、しくった。あの巨乳を拝むチャンスが―――」
「で、でも良かったな警備員が直ぐに来て」
オーラ
半蔵のアホな発言で、郭から怒気が吹き出る気配を感じ、上条は話題を戻す。
しかし本心でもあった。いくら黒服達を眠らせたとは言え、結果としては他の客達を見捨てて自分達だけが逃げてきたのだ。
その時眠っていた自分に文句を言う資格などないと解っていても、釈然とはしない。
だがBIP達が一人も死んでいないのなら、少しは気が楽になった。
「あ~、それなんだけどよ……どうやらしんのすけが呼んでみたいだ」
警備員の到着は、偶然では無いらしいと半蔵が言った。
上条は聞き返す。
「しんのすけが?」
「うん、元々カジノを閉鎖に追い込むのも仕事の内だったからね」
なら警備員に通報すれば確実でしょ。と彼は続けた。
「一体何時通報したんだ?カジノに、っていうかバーに来てからずっと一緒だったけど気づかなかったぞ」
「その子が用心棒として出てきた時に、あのカジノを潰す事は決まったからね」
その時だと、しんのすけは言った。
何処かに連絡するそぶりは見せなかったがどうやったのか、と上条が聞けば、腕輪の効果だと答えた。
前以て連絡したい内容を紙に書いて内ポケットに入れておけば、好きな場所へ一瞬で送れるとのことだ。
「ポケットの口に触る必要があるけどね」
彼は先程、元々カジノを潰す事も仕事の内だったと言った。
ならばその準備も色々としていたのだろうと、上条は納得する。
「はあ~でもすごい図太ぇよな、しんのすけって」
半蔵が言う。
「もう既に連絡済で、いつ警備員が突入して来るか分からないって状況で笑いながらポーカーやってたんだからなぁ」
「だから一発勝負にしたんだゾ。早く終わる様にね」
「アレってそう言う意図があったのか」
「ともうこんな時間か、インちゃん達が心配するから上条君も家に帰らなきゃね」
「ああ、そうだな……って今何時だ?」
上条が帰るにあたり、じゃあ俺達もそろそろと半蔵と郭も帰り支度を始めた。
二人に泊まっていっても良いがとしんのすけは言ったが、乗り気の郭に対して半蔵が断固拒否した。
そうなるとしんのすけとしても、まさか郭だけ泊めるわけにもいかず、また彼女本人も半蔵が居ないなら泊まる気も無いようで帰るとのことだった。
「じゃあなしんのすけ。それと……」
半蔵と郭の二人が帰り、最後に玄関に立った上条がしんのすけに訊く。
「あの子供はこれからどうするんだ?と言うか、どうなるんだ?」
「保護してくれそうな所はあるけど、あのカジノで働かされてた事が『犯罪歴』扱いになるかもしれないから、そこらへんも解決しないとね」
「そっか……」
「その時は、また手伝ってくれる?」
「ああ勿論だ」
上条は応える。
むしろここまでつきあって、最後は人任せで後日談の聞き役になるだけなんてごめんだ。と
その言葉に感謝を返し、しんのすけは上条を見送った。
「で、『此処』でその職歴を消せる奴と待ち合わせだと」
ティータイム
翌日の午前10時頃、上条は緊張していた。
しんのすけに呼び出され、交渉相手との待ち合わせ場所だと連れて来られたのは、なんと『学舎の園』の内にある飲食店のカフェテラスだった。
「本当にココで?と言うか、良く入れたな俺達」
「ここは知っての通り、男性の入場制限に厳しいですからな~。でも絶対じゃないゾ?」
「そうなのか?」
「うん。まあ女子でも内部の5校以外の制服着てると注目されるくらいだから、オラ達は特に悪目立ちしないように気を付けなきゃ……お、来た来た」
しんのすけが会話を打ち切る。
どうやら、目当ての人物が来たようだ。
それが顔見知りであった事に少し驚きながらも、同時にしんのすけの人選に納得する。
「よ!!」
しんのすけに挨拶され、件の人物もこちらに挨拶を返す。
テレパシスト メンタルアウト
「こんにちはぁ上条さん野原さん、精神感応系最高位『心理掌握』の食蜂操祈ちゃんです☆」
彼女が席に着くと到着早々、しんのすけが本題を切り出す。
「いきなりでごめんね。じゃ、操祈ちゃんこの写真を見てくれる?」
そこには髪を緑に染めた男子小学生の寝顔が写っていた。
「この子がどおかしたのぉ?また厄介力の大きな事件?」
食蜂は写真を見た後、しんのすけにその真意を問う。
「事件そのものはもう終わっているんだけどね……頼みたいのはこの子の『職歴』についてなんだけど、良い?」
後半、声をひそめて確認する。
「正直めんどくさいわぁ。報酬力次第ね」
「報酬か~……」
彼女の要求に、しんのすけは腕を組んで少し考える。
「じゃ、とりあえず前払い分って事で、ここでなんか奢るゾ。成功報酬についてはケーキでも食べながらって事にしない?」
「わかったわ」
しんのすけの提案を、食蜂が了承する。
一方で上条はしんのすけの先程の『奢る』と言う台詞に、
昨夜彼とした『手伝う』という約束を思い出し不安が頭をよぎっていた。
「なあしんのすけ、その『奢り』って……」
「あ、上条君の分は自腹で頼むゾ」
「いや、そうじゃ無くてだな」
「ああそういうこと。やだなぁ別に操祈ちゃんに奢る分を上条君と割り勘にしようなんて考えて無いってば」
その言葉に上条は安心した。
そして疑問に思う。
「ん?でもだとしたら……」
しんのすけは何故自分を連れて来たのだろう?
確かに『後日談の聞き役になるだけなんてごめんだ』と言ったのは自分だが、彼女との交渉で自分が役に立てるとは思わない。
自分を呼び出したのは、しんのすけにとっては単なる無駄手間だったのではないだろうか。
そんな事をしんのすけに訊ねたら、予想外の返事が返ってきた。
「やだなぁ上条君。もしオラと操祈ちゃんが二人きりでお茶してるとこを、あいちゃんに見られたり後日その事があいちゃんの耳に入ったら?」
「え?」
どうなるんだろう。その解答は食蜂が出した。
「多分だけど、最悪学園都市の超能力者は『最初から七人だけだった』事になるんじゃないかしらぁ?」
「まあ、あいちゃんもソレだけでそこまで怒ることは無いと思うけどね。でも噂には尾ひれが付くし、あいちゃんも結構思い込みが激しいから」
「うふふ、私の推理力も中々でしょう?」
「可能性としては、そう言う結末も充分ありえますな」
かなり物騒な話に呆気に取られる上条が、恐る恐る確認する。
「前もしんのすけが『存在が抹消される』とか言ってたけど……」
「実際可能でしょうねぇ。酢乙女先輩の実家がもつ経済力や隠蔽力なら」
「まあそうならないように上条君を呼んだわけで……じゃオラは注文してくるね」
そう言ってしんのすけは席を立ってしまった。
今三人が座っていたのは外のカフェテラスで、店員に声をかけるには誰かが店内に行く必要があった。
先のしんのすけの台詞ではないが、急に食蜂ほどの美少女と二人きりにされて上条は戸惑う。
しんのすけが帰って来るまで間を持たせようと話を振る。
「あ、あのさあ食蜂。あれからボーンレス症候群の後遺症とか大丈夫か?」
言ってから年頃の女子にする話題じゃ無いと自己嫌悪するが、振ってしまったものは仕方がない。
「ええ完治してるから、特に後遺症は―――上条さん今何て!?」
食蜂が身を乗り出して詰め寄る。
「ああだから三沢塾の時さ。お前、ボーンレス症候群になっただろ?何も問題無いなら良いんだけどさ」
「……う、嘘……こんな事って」
上条の返事を聞き、食蜂は感極まった様にその場で泣き出してしまった。
「ええっ!?あ、もしかして忘れた方が良い事だったか?そうだよな、そりゃ女子としちゃ潰れた水風船みたいになった事なんて忘れて欲しいよな!?」
泣く食蜂に、上条はテンパりながら謝りたおす。
「そうだ!!お前の能力で記憶を消せば……あダメだ俺の右手っ!?」
「違う!!!」
謝ってくる上条に、食蜂が叫ぶ。
「覚えていてくれるなら……どんな不名誉な事でも良い……私は二度と貴方に『忘れろ』なんて思わない!!」
「わ、わかった。わかったから落ち着けって」
泣き続ける食蜂に、上条はいよいよどうしていいか判らなくなる。
「じょ、女王!?」
女性の驚く声に上条が振り向くと、ドリルと言おうか縦ロールと言おうか、これぞお嬢様といった髪型をした常盤台生がこちらを睨んでいた。
「アナタが女王に何をなさったかは存じませんが……その方が常盤台中学最大派閥当主と知っての狼藉ですか?」
静かな怒りと確かな敵意を見せる常盤台生に、上条はたじろぐ。
「ええ!?狼藉っていうかそもそもなんで泣き出したのか……」
「なんと言う身勝手な言い様、事情次第ではこちらの誤解かとも思いましたが……まさか知らぬ存ぜぬとは……」
「あ、あの……?」
縦ロール女生徒の敵意がさらに強くなった気がした。
「もはや、容赦できません……!!」
上条は椅子から立ち上がり数歩後ずさる。
確かにこの状況を傍から見れば、上条が食蜂を泣かした様にしか見えないだろう。
そして誤解をとこうにも、自分では何故こうなったのか説明できない。
……うん、つんだ。
(しんのすけ、後は頼んだ。食蜂、すまん)
上条はこの場に残していく二人に心の中で謝罪を送り後ろを振り向くと、ダッシュでその場から逃げ出した。
「逃がしません!!」
縦ロール女子は逃げる上条を追いかけながら、愛用の携帯電話ラブリーミトンのピョン子モデルを開き
派閥の仲間の一人、強能力者の精神感応である『口囃子早鳥』と連絡をとる。
「女王に不埒な真似を働いた狼藉者が、現在『学舎の園』内を逃走中です!!」
自分だけでは取り逃がすかもしれないので、仲間に連絡して確保に協力するよう頼む。
その際、対象の特徴を伝える事も忘れない。
「雲丹の様な黒くとげとげしい髪型の男性です、直ぐに見つかるはず」
「ああー、結局こういうオチなのかよ!?不幸だーーー!!」
学舎の園の何処かで、雲丹の様な髪型をした誰かの叫びがこだました。
上条が数十人の常盤台生から逃げ回っているころ、しんのすけが両手に抱えたお盆の上にケーキとエクレアでピラミッドを建築して帰って来た。
「ただいま~。お?上条君はどこ行ったの?」
「あー、ちょっと誤解力が積み重なって……ね」
「ふーん、まあいいや。それで報酬についてなんだけど」
しんのすけが本題を切り出そうとすると、食蜂は顔を横に振って止める。
「要らないわぁ。野原さんには返しきれない恩義力ができたみたいだからぁ」
「そうなの?」
「ええ、ここの払いも自分の分は自分で払うわ。むしろ野原さんに奢っても良いくらいよ?」
「年下の女の子に奢って貰うわけにはいかないよ」
そう言ってエクレアを頬張りながら、この状況が嫉妬深い幼馴染に知れた時の言い訳を考えるしんのすけであった。
同時刻、学園都市の地下を走り続ける武装特急列車の食堂車にて、亡本は秘書からの報告を受けていた。
「例の賭博場に警備員の手が入りました。どうやら法則無視が通報したようです」
「ははは、確かに一番確実な手段ではあるけど、まさか警備員を使うとはね」
「結局、誰に資金が入っているのかは不確定のままだそうですが」
「別に構わないさ。少なくとも、私以外の統括理事だとは判ったのだから充分だよ」
「左様で」
「うん、ペナルティは無し、今まで通り彼の所属する武装集団には支援を続けていこう」
「かしこまりました」
「うん、それにしてもコレは実に美味いなあ」
報告を聞きながら、亡本は食事を続ける。
赤い果実の様な蕾をナイフで二つに切り、中の蜜をスプーンで掬い口に運ぶ。
「君もどうだね?近年メキシコで発見されたサボテンの蜜だ」
『違法賭博場』【ブラックカジノ】編 完
今夜はここまでです。健康と文才と執筆速度が切実に欲しい
以下『とあるサイドの事情はあんまり知らないよ』って人のために落ちについて補足説明
中学時代の上条さん(以後カコ条さん)は、食蜂操祈ちゃんと仲が良かったのですが
(中略)
彼女を狙った暴漢と戦闘になり死に掛けます。
ネタバレ防止の為省略
その時の後遺症により上条さんは食蜂操祈に対してのみ記憶障害や相貌失認症の様な状態になっていたのですが、
>>243でしんのすけが言っていること(1スレ目)が理由でこのSSではそれが無くなっています。
次回投下は一週間後です、しばらくは週一更新になりそうです。
今回のエピソードではほぼとあるサイドのキャラクターだったので
次回のエピソードはクレしんサイドのキャラクター多目でお送りします。
乙
過去は思い出せないけどこれからは覚えてられるか……
乙ー
これはキラーサボテン復活の可能性が…
あとオマタ王子とスンノケシ王子の出番はまだですか?
キラーサボテンを早速かw
しかし、映画でしんのすけがスペイン語習得したってことでいいんだろうか。
コミックだとスペイン語って名言していたし。
普通に映画でもスペイン語が上手くなったって言われてたと思う。
キラーサボテンは水をかければ一撃だけど、ダイナマイトでも殺せないしな…
そういや人間の悪口を聞くと成長し、誉め言葉を聞くとダメージを受ける宇宙植物とかいたけど、今後出ないかな。
某国に行ったあれの片割れはどうなったんだろ…
後、みさきち良かったね!
スペイン語かあ、どうしてもオサレ技名イメージしかない
一回フォーマットして書き直したらバグが治ったでござるってこったな
そういや最近読み直して思ったんだが1スレ目でペンちゃんが言ってた「上条のすべてが記された本」を作ったら「くっ、俺の右腕が疼くぜ」とかを事細かに記した本が出来るわけだよな。
焼き捨てなきゃ(血走った目)
また忙しいのか…
1です。これから投下します。
>>302
原作の彼女もいつかは救われるのでしょうかね?
カコ条さんは記憶障害と言っても「覚えられない」のではなく正確には「思い出せない」「記憶を引き出せない」だけで
その開かない引出しの中には、確かに食蜂操祈との記憶が積み重ねられていたはずなのに、それが『竜王の殺息』で消えちゃったわけで
つまり彼女が祈っていた「上条さんが『思い出せる』ようになる奇跡」はもうありえない。
原作の彼女はこの事を知っているんでしょうか?
どうかして救われて欲しいなあ
>>304
あの二人は次回投下分で出てくる予定です
>>305
おそらくネイティブなみに話せるのでしょうね
ただしメキシコの田舎訛りのきついスペイン語なのでしょうが
>>306
あの宇宙植物も近い内に出しますよ
>>307
1はつい最近まであれはラテン語だと思ってました
そういえば何でチャドはともかく、他のキャラも普通に使える(通じる)んでしょうかね?
>>308
上条さんの場合、本当に右手に何かが宿っている人なので……
でも普通に厨二力高そうですよね上条さんって
>>309
遅れてすみません
第七学区 某所
あい「あら」
美琴「あ、酢乙女先輩」
あい「あらまあ、あまり顔色が優れませんわね。夏バテですか?御坂さん」
美琴「いえ、実は食蜂から『最近できた弟分』の自慢話をずっと聞かされてて」ゲッソリ
あい「弟分、ですの?」
美琴「はい『将来力抜群、レベル5は確実よぉ』だとか、『あの子の洗脳力の前には御坂さん自慢の防御力も紙きれ同然☆』とか……ゲ」
食蜂「みーさーかさーん!あ、酢乙女先輩も居るぅ。奇遇ですね☆」
あい「ええ奇遇ですわね」
美琴「なにが『奇遇ですね』よ?どうせまた私に弟の自慢話を聞かせに追って来たんでしょうが」
食蜂「そうとも言う~。まあ良いじゃなぁい、細かいことを気にしちゃいけないゾ☆」
美琴「このっ」プルプル
あい「あらまあ、いつにも増して上機嫌ですわね、何か良い事でもあったのかしら?」
食蜂「えへへー、実はですね……」
美琴「ちょっ!?酢乙女先輩!?」
あい「ああ、私としたことが迂闊でしたわ。往来では他の方の邪魔になりますわね。長いお話なら座っていたしましょう」
ファミリーレストランレストラン Joseph's
佐天「あ、御坂さんに酢乙女さん」
初春「それに食蜂さんも、こんにちは」
白井「珍しいですわね、お姉さまが食蜂ミs、もとい食蜂先輩と行動を共にするなんて」
あい「ええ三人ともこんにちは」
美琴「ほら食蜂、こういうのが本当の奇遇っていうのよ」
食蜂「むぅ~それより白井さんが普段は私を呼び捨てにしてるっぽいんだけどぉ、御坂さんの先輩的指導力としてそれってどうなの?」
美琴「だからどうしてアンタはいつも私の話はスルーなのよ!?」
あい「まあまあ、御坂さん食蜂さん。まずは何かたのみましょう」
佐天「それで、今日はどうしたんですか?」
初春「さっき白井さんが一緒にいるのは珍しいって言ってましたけど」
あい「ええなんでも、食蜂さんに弟分ができたとかで」
白井「普通に『派閥に新人が入った』……と言う話ではないのですのよね?」
初春「あそうか、それなら『妹分』のはずですもんね」
食蜂「ええ、派閥のメンバーとは違うわよ。実はねぇ、このあいだ野原さんからある小学生の男の子を紹介されてぇ」
あい「しん様から?」
食蜂「(細かい事は省くけどぉ)それが天才力たっぷりの精神感応系の能力の子でね、それで私が能力行使のコツとかを時々教える事にしたの」
佐天「うわあ、レベル5に直接教えてもらえるなんて羨ましいなぁ」
白井「しかも同系統の相手からですの」
このまち レベル5
食蜂「ふふーん、再来年くらいには学園都市の超能力者は9人になってるかもしれないわよぅ?」
佐天「はぁ~良いなぁ」
あい「ああ、そういえば空力使いからは、まだ超能力者が出ていませんでしたわね」
佐天「いや酢乙女さん、私が羨ましかったのはそこじゃなくてですね」
初春「あれ、でも野原さんの能力名って確か……」
あい「ええ『法則無視』【トルネードコール】……しかしよく誤解される方がいますが、しん様は風力使いでも空力使いでもありませんわ」
美琴「そういえば、前にそんな事言ってたわね」
あい「それより先程の食蜂さんのお話には、少々違和感がありますわね」
白井「違和感、ですの?」
食蜂「ど、どこかおかしかったかしら?」ギク
あい「ええ、食蜂さんは確かに面倒見のいい性格をしていますけれども、男子小学生のお世話を学舎の園在住の身で引き受けるほどでは無かったはず」
美琴「あ、確かに」
食蜂「う」ギクギク
あい「おそらくしん様からその子を頼まれた時に機嫌が良く、引き受けてしまった。と言ったところではないでしょうか」
食蜂「え、え~と」ダラダラ
あい「だから訊きましたのよ?『何か良い事でもあったのかしら』って」
食蜂「……(ど、どうしよう!?それは勿論上条さんからアノ後遺症が消えたのはすっごく嬉しかったけど、そのまま話したら絶対に御坂さんがめんどくさい事になるわぁ)」アセアセ
白井「判り易いほどに動揺していますの、これは何かかくしてますわね」
初春「良かった事なのに隠しておきたい事、ですか?」ウーン?
佐天「ズバリ、恋話だね!!」ピーン
食蜂「ほふぇ!?」ギクゥ
白井「まあ!!図星なんですの!?」
美琴「へ、へー。アンタが好きになった相手か……ねえどんな人なのよ?気になるじゃない教えなさいよ」ニヤニヤ
食蜂「御坂さんが私に対して今まで無い位フレンドリーに!?」
あい「あらまあ、ダメですわよ?本人が話したくない事を無理に聞いたりしては」
食蜂「酢乙女先輩……」ホッ
あい「ですが食蜂さん、よろしければお話くださいませんこと?私も気になりますわ」ニコッ
食蜂「あ、はい(ああ、これつんだわ)」ガク
食蜂「(仕方ないわねぇとりあえず偽名を使って、要所々々ぼかして……)その人はフォックスワードさんって言うんだけど……」カクカクシカジカ
数十分後
白井「はー、なんとまあ。ドラマみたいな話ですの」
初春「うう、良かったです。フォックスワードさんの後遺症が治って」グス
あい「初春さん、よろしかったら」つハンカチ
食蜂「後は酢乙女先輩の推理力の通りよぉ」
白井「しかし、最大派閥の当主に高校生の彼氏ですの?貴女の取り巻き達がどう思うか……しばらく校内がさわがしくなりそうですわね」
食蜂「あらぁ、彼氏じゃないわよ」
美白初佐「「「「え?」」」」
食蜂「だからぁ、私の片想いなのよ」
佐天「ええ!?『あんなこと』(原作新約11巻参照)までしといて恋人同士じゃないんですか!?」
食蜂「ええ、今そう言ったでしょう。それにねぇ……」
美琴「それに?」
食蜂「あの人は『覚えていられる』ようになっただけで、『思い出した』わけじゃないから」
初春「あ……」
食蜂「私との思い出は、あの人の中には一つも残ってないのよ」
一同「「「……」」」シンミリ
食蜂「まああの人が記憶を取り戻して、『よりを戻す』にしても当時の関係が友達止まりじゃあねぇ」アハハ
美琴(く、空気が重い!!)
白井(キャッキャッウフフな恋話かと思いきやとんだ地雷話でしたの!!)
初春(そんな自虐ネタ笑えませんよ!?)
佐天(わ、話題を変えよう!!)
食蜂「どうしたの皆、私だけ恋話して終わりなんてぇ許さないわよ?」
佐天「(おおう、助かった)そうは言っても、この中で彼氏持ちは酢乙女さんだけですしねー」
食蜂「じゃあ次は酢乙女先輩のお話?わぁお☆ヒロイン力高そう」
あい「先の食蜂さんとフォックスワードさんに負けないほどのインパクトのあるエピソードですか……」フム
美琴「いや普通のでも全然」
白井(地雷原タップダンスの暴露パーティなんてごめんですの!!)
あい「では話の前振りといたしまして……皆さんは殿方からのプレゼントはどんな物が思い出深いですか?」
佐天「プレゼント、ですか?殿方からって言われても男の人からなんて小さなころに父親から貰ったのくらいですよ」
初春「同じく」
白井「あら、初春はあの蛙の縫いぐるみがあるじゃありませんの」
美琴「いや、アレはカウントしちゃダメでしょ」
食蜂「私の場合、コレかしらぁ」つホイッスル
あい「以前読んだ少女漫画で、『男性からのプレゼントで両想い、脈ありかどうかが判断できる』と言う話題が出ていまして」
食蜂(判断しかねるプレゼントよねぇコレ)つホイッスル
あい「今から話すのは最も思い出深いプレゼントを、しん様から贈られた時の話です」
同時刻 東京都世田ヶ谷一等地の某豪邸
SP「見慣れぬ執事が一人屋敷に増えていると思えば、まさかどこかの魔術結社の手の者だったとは……この俺が気づかないほど見事に執事を演じていたとは」
縛られた執事服の男「まあ、執事の方が魔術師より本業と言える生活だったんで」
SP「手荒な事はしたくないが、そちらの態度次第では……」
縛られた執事服の男「待ってくれミスター黒磯、私は『明け色の陽射し』所属のマーク・スペース。そちらと敵対する意思は無い」
黒磯「……何が目的だ」
マーク「我々と敵対関係にあった、とある魔術結社の情報だ」
黒磯「魔術結社の情報、だと?」
マーク「奴らの名は『宵闇の出口』、昨年のある日を境に一切の情報が入らなくなった。連中が最後に企てたとされる事件の中心がここ、『酢乙女』だ」
黒磯「去年?……ああ、あの事件か。当時俺は現場には居なかったが、あらましは聞いて知っている」
マーク「先程も言ったが、こちらに敵対する意思は無い。拘束をといて話を聞かせて欲しい」
黒磯「……」
今夜はここまでです。
次回投下予定は一週間後です。今度こそ遅刻しないようにしたいです
乙
あいちゃんヒロイン力高いのう
上条さん、みさきちに関しては記憶破壊されて無い気がするんだよなぁ。
記憶破壊されているならみさきちのことも覚え直せる気がするし。
経路が途絶えていたおかげでみさきちの記憶は破壊されていないみたいな。
流石に希望的観測過ぎるか
今日もあいちゃんは可愛かった。ドローンネタはいつか拾うかな?
あと、売間久里代は出ないかな?セールスレディーから社長とかになってそう。
北与野博士もいつかお願いします!
1です。これから投下します
>>317
ハンカチを出したところでしょうか?
このSSでの彼女は想い人に相応しい自分に成ろうと努力し続けたあいちゃんなので
こういう気遣いが出来る娘だと思います
>>320
「家主にも開けられないほど堅牢な金庫の中身は家が泥棒に入られても無事だった」と言う話をおもいだしました
なるほどそういう解釈なら、まだ食蜂さんにも救いがありますね
ただ上条さんの記憶復活の時期を間違えると(棒巫女幽霊が生き返った事で逆にフラグが折れたみたいに)
逆にかませヒロイン化しそうな可能性でもありますけど
>>321
先週のドローンの話面白かったですよね!?
あいちゃんの思考が素でストーカーだったんですが
怖いと言ったボーちゃんをはじめ皆ドン引きしていたのに平気だったしんのすけには
広瀬康一君と似たナニカを感じました
とある大統領の視点からの情報
その日、世界一の大財閥を経営する一族である酢乙女家の邸宅にて、盛大なパーティが開かれていた。
世界中の大金持ちや王侯貴族、為政者と言ったそうそうたる顔ぶれのならぶ会場を眺めながら、招待客の一人が退屈そうにしていた。
「……なんだって今更、こんな事をするのかねえ」
立派なひげをたくわえたその男、アメリカ合衆国大統領ロベルト・カッツェはつぶやいた。
「こんな事、とは?」
そのつぶやきが耳に入ったらしい、他の招待客が訊ねた。
「コツバーン!!お前も来ていたのか!!」
「やあロベルト!!久しぶりだな!!」
陽気なラテン系アメリカ人らしく、友人と再会をハグで祝う。
その相手もまた国は違えど大統領、モロダシ共和国首相コツバーンであった。
「それで、何が『今更』なんだ?」
「この『お嬢様が寝返りをうった記念日パーティ』がさ。そりゃここの総帥の親バカっぷりは有名だし実際ここの令嬢が幼かった頃は毎年恒例だったらしいが……ここ数年、この名目では無かっただろ?」
「そう言いながら、君も理由は大体察しが付くだろ」
「ああ『婿選び』、だな。それこそ今更な理由なはずだが……」
酢乙女財閥の総帥には今年で15になる愛娘がいる。
それ自体は有名な話だが、その未来の伴侶となるお相手はと言うと、未だ何処の誰かは決まっていなかった。
令嬢には仲の良い幼馴染が居る。令嬢は現在片想い中だ。令嬢は失恋から立ち直っていない。
様々な噂や憶測が社交界を飛び交ったが、事実無根かつ不名誉な類を除き、酢乙女家はそれらの噂にはノータッチだった。
それゆえ酢乙女家は、政治的な――いわゆる『御家の為の』――結婚を令嬢に強いるつもりは無く、
そこら辺は彼女の自由意思に任せているのだろうと、今まではそう思われていた。
「状況が変わったってことだ。具体的なソレが何かは把握しているだろう?」
「……ああ、解ってたんだよコンチクショウ。酢乙女財閥が令嬢の婿選びを今になって始めたのは、『ブルーシェイク家』の騒動が原因だってな」
アメリカ合衆国の歴史を語る上で欠かす事の出来ない西部開拓、ゴールドラッシュと呼ばれる時代。
その頃からいち早く『情報』の持つ価値を理解し、調査や報道と言った『情報産業』を立ち上げた一族が在った。
その名はブルーシェイク家、彼らが起した商売は時代と共により大きく、より手広くなっていき、
近年にはその当主は『メディア王』と呼ばれるようになり「世界中の石油の少なくとも30%には何らかの形で関わっている」
とまで言われる程の大金持ちになっていた。
「皮肉なものだな、メディア王がメディアによって殺されるとはな」
しかし件の人物はこの会場にはいない。
先日、そのメディア王は、『オーレイ・ブルーシェイク』は逮捕された。
ブルーシェイク家の女性当主である彼女にはかつて夫と娘が居たが、彼女は娘に厳しすぎる英才教育を行っていた。
それは第三者から見れば暴力以外の何物でも無く、故に離婚、親権は裁判で争われる事になった。
彼女はここで、悪い意味で『メディア王』の名に相応しい活躍をする。
財力にものを言わせ腕の良い弁護士を揃え、証拠は捏造、真相は隠蔽。
表向きの離婚理由は夫の家庭内暴力という事にして、彼女は娘の親権を勝ち取った。
(もっともそうまでして手元に置こうとした娘との暮らしは結局、児童を虐待から守る公権力の介入により叶わなかったが)
そして、そうした悪事の数々がある日突然明るみに出てしまった。
きっかけは彼女の娘リンディ・ブルーシェイクが後見人と共に暮らすハワイの自宅近くで、とある日本人観光客一家が謎の集団に襲われた事だった。
リンディはその集団が自分を連れ戻しに来た母親の手の者だと思い込み、とっさにその観光客の家族に助けを求めてしまう。
それがオーレイの、いやブルーシェイクグループの破滅の始まりであった。
(結局ブルーシェイク家と日本人一家を襲った集団は無関係だった)
証拠の捏造といった親権裁判での件を皮切りに、様々な悪事が瞬く間に公表、拡散していった。
物証の無いグレイゾーンも多く、彼女に下された刑期こそ短かかったが刑務所暮らしを終えて出て来ても復権は不可能だろうほどに、オーレイは既に社会的に抹殺されていた。
先程コツバーンがつぶやいた通り、皮肉にもメディア王はメディアに殺された結果となった。
「今の経済界は、国に例えれば宰相が空席になって、貴族達がその座を狙っているってわけだ」
ロベルト・カッツェが毒づくように言った。
酢乙女には勝てずとも、確実に経済界の重鎮であったであろうブルーシェイクの脱落。
空席となった№2の位置にどの家もいきたいのだ。
国内 王家
「そのとおり、そしてその経済界の混乱は酢乙女に飛び火しかねん」
酢乙女家はそうなる前に足元を固めておきたいのだろう。
故に今更な婿選びを始めたのだ。
「お、噂をすればだ」
カッツェが目線で示した先にはリンディ・ブルーシェイクがこのパーティの主役である令嬢、酢乙女あいと談笑していた。
「さっきの例え話なら大公とか上級貴族がとり潰しになるところを、下級貴族に降格ですんだのは不幸中の幸いだったな」
コツバーンが言うように、そうなれば世界恐慌すら視野に入れた経済対策が必要だっただろうが、
幸いにして大分規模を縮小したとは言え、ブルーシェイクグループはリンディが継ぐこととなった。
もっともまだ7歳である彼女に代わり仕事をする人間が要るのだろうが、こういう場には彼女自身が出なければならない。
彼女は上手く社交界なじめるだろうかと、しばしその様子を観ていたら、令嬢とリンディの会話に二人の日本人が加わった。
令嬢と同い年か少し年上位の少女と、令嬢より2~3年下だろう少年だ。
どうやら旧知らしく、令嬢がリンディに二人を紹介する。
少年は「ミーヤ」、少女は「ちひろ」と言う名らしい。
人数が四人に増えても、なかなか会話は弾んでいるらしい。
幼くしてグループ企業のトップに立つ事になった彼女だが、意外と上手くやれているようだ。
その様子に、安心してもう一度会場を見渡すと、ある違和感に気づいた。
「しかし、意外と年寄りや女性客も多いな?これが実質婿選びだってのは暗黙の了解つーか周知の事実ってヤツだろうに」
カッツェの疑問をコツバーンが答える。
「その理由は幾つかある。まず婚約じゃ無くても、普通に友人として酢乙女と縁を作っておきたい者」
コツバーンはその条件に当てはまっているらしい人物を、本人達に気づかれないように指さしながら説明する。
まずは餅を喉につめたふりをして周りの人間を驚かしている男性と、アレルギー症状がでたふりをしているその両親。
「俺やウチの王家の方々もそうだ。ヘマタ王子にウチマタ王妃オオマタ国王両陛下」
「お前の祖国の人間ってギャグに命賭けるって話は本当だったんだな」
カッツェが呆れ気味に先を促す。
次にコツバーンがさしたのはハート型の頭巾を被った女性二人。
「あちらにいるのはスカシペスタン共和国のナーラオ最高元帥とヨースル最高総統」
「あの二人も長いこと政権をとってるよな~お前と張れるんじゃないか?」
「スカシペスタンの事情は知らんが、俺にはそうせざるおえない事情があったからな」
「事情?」
「後で話す。どうせ適齢期過ぎたおっさん二人、令嬢の婿選びが目的のパーティじゃ直ぐ暇になるからな」
「へえ、ソイツは良い暇潰しができたな」
「で、コレは主に年寄りだが、酢乙女家の方から縁を作りたい相手」
熱く議論を交わしているらしい二人の老人を指さす。
「日本の北与野博士、ヘーデルナ王国のヘガデル博士だ」
「羨ましい事だ、全くあのレベルの科学者がウチの国にも欲しいぜ」
「同感だ。『木原』は抱え込みたく無いしな」
コツバーンはここで一度区切り、声量を落としてから先を続けた。
「で次だ。コイツは少々生々しい話になるが……」
「おう」
「酢乙女が婿に選ぼうって程の男だ、あわよくばその愛人にって女性、もしくは横からソイツをかっさらおうって女性」
「うへぇ、えげつねえなあ」
「あそこにいる英国王家の三姉妹なんかは、たぶんそのどちらかだろう」
「ほーう!!何度見てもやっぱし美人揃いだねこりゃ」
「最後に、そんな客達に同行を求められた者。例えば今君の後ろで穏やかな笑みを浮かべているローズライン・クラックハルト女史とかね」
その言葉を聞き、カッツェがまるで油を注していない古い人形の様にギギギギギと後ろを向く。
コツバーンの言葉に嘘は無く、そこには穏やかな笑みを浮かべた優秀なアメリカ合衆国大統領補佐官が立っていた。
ただし、その眼はゆうゆうと語っていた『この野郎、後で覚えとけよ』と。
「んで、この婿選び、何処の誰が選ばれるとお前は読んでるんだ?」
クラックハルト女史が挨拶周りに再び自身から離れると、カッツェは何事も無かったかのように話を振ってきた。
「そうだな、とある魔術大国の王子が、令嬢と同い年らしい」
「おいおい酢乙女財閥は令嬢が他家に嫁ぐことも考えてるってのか?」
カッツェの質問に、コツバーンは答えなかった。
なぜなら今まさに丁度、その王子が令嬢のもとへ挨拶に来たのだから。
なんの偶然か、会場は静まり返り、二人の声は離れた位置に居た大統領二人の耳にも良く聞こえた。
「こんにちは、あいちゃん」
「コレは一体、なんのサプライズかしら」
馴れ馴れしいのは不慣れな日本語ゆえか、王子は微笑みかけながら令嬢に話かけた。
一方の令嬢はやや顔を赤く染め、しかし怒りは見えずむしろあふれ出る喜びを公の場ゆえ精一杯隠しているようだった。
その顔はまともに恋愛経験を積んだ者ならば十人中九人は『恋する乙女の表情』と言うだろう。
「お前の読みってすげえな……今度プライベートで俺とベガス行かない?」
カッツェの言葉はコツバーンに届いていたかは定かでは無い。
この時コツバーンの心は、激しい怒りに震えていた。
(魅了の魔術か!?令嬢を洗脳してまで酢乙女財閥を手にするなど、一体何を考えている……ブリブリ王国!!)
カッツェは友人の読みが当たった事に、コツバーンは令嬢の態度が予想外だった事に、それぞれ驚いていて気がつかなかった。
令嬢のみを護るべく彼女のそばに控えたボディーガードの一人が、困った様に令嬢と王子の顔を交互に見ていた事。
そのボディーガードの顔立ちが大きなサングラス越しでも判る程、王子とそっくりだった事に……
酢乙女邸でのパーティより一週間前、
野原しんのすけは二通の手紙を手に悩んでいた。
一通は幼馴染である酢乙女あいからの物。
その内容は『自分の婿選びのパーティが開かれる』『どうにかしてそのパーティに参加して欲しい』
『そうすれば自分はしんのすけを選ぶ』『もし来られないならばコレを機にスッパリ諦める』
と言う事が書かれていた。
もう一方の手紙は酢乙女家に仕える黒磯の同僚、赤崎、青山からの物だった。
『久しぶりにあいお嬢様のパーティを開くが黒磯が育児休暇中でボディーガードが一人足りない』
『そこで唯一の黒磯の弟子と言えるしんのすけを当日あいお嬢様のボディーガードとして雇いたい』
『黒磯の穴を埋める者として』
「あいお嬢様の側に居て、あいお嬢様を護る者は貴方が一番相応しいと従者一同の総意です」
と言った事や、引き受けてくれるならと連絡先が書かれていた。
最後の一文だけフォントが違った、というか手書きだった。
「ハァ~やれやれだゾ」
しんのすけはため息をついてケータイを開いた。
★
今回はここまでです。最初に言って置く、NTRは無い!!
新約の事件の芽は過去編で刈り取っていくスタイル、書いていて楽しいです。
ロベルト・カッツェ大統領がロベルト・マクガイヤー(隣のおばさんの甥っ子)の十年後という設定もチラッと頭をよぎったけど流石に矛盾が多過ぎるのでボツにしました
以下、クレしんサイドのマイナーキャラ紹介です。
コツバーン大統領 原作42巻(中頃)登場
軍国主義者だが王家に対する忠誠心は本物
ヘマタ王子 原作29巻~登場
原作ではまたずれ荘に居たモロダシ共和の王子
ミーヤ 原作14巻(最後)登場
大金持ちの息子、転んで泣いていた所をしんのすけからチョコビをもらい泣きやんだ
あとこのSSでは34巻(初めから2話目のラスト)に似ているモブがいるので同一人物と言う事にしています
ちひろ 原作新3巻(57話)登場
大金持ちの孫娘、父親は冒険家
北与野博士 原作22巻~登場
科学の領域からはみ出している科学者
訂正ヘマタ王子じゃ無くてオマタ王子でした
スンノケシ王子だっけ?
懐かしいなー
スンノケシ王子キター!
あの映画は好きだな…
この>>1ならボーちゃんの初恋だった車椅子の女の子のネタも拾ってくれるかな(無理強い)
マサオのは男の娘への恋のやつは印象に残ってる
ドッペルゲンガー並みにそっくりなあの人ですね。
というか会場がしんのすけのおしりあいだらけ(笑)
大丈夫かな
>>333
実は長点にいたりしてな
修造回ヤバいwwww
あとかき氷の話も良かったけど、おばあさんの名字が天井だった…
再来週の話の女の子は詳細不明だけど、結構ネタとして美味そう…
たいへんお久しぶりです。1です。これから投下します。
>>332>>334
はい、彼です
しんのすけと縁のある王家は今や複数ありますが、昔は彼だけだったんですよね
>>333>>338
車椅子の少女とは原作50巻に登場のリンちゃんのことでしょうか?
このSSはマイナーキャラも極力出していく方針なので何時かは出るかもしれませんが予定は未定です
余談ですが時系列的には25巻であいちゃんに惚れた方が先ですね
アニメ版だとボーちゃんの初恋は梅先生で、その後工事現場で交通整理をしているお姉さんに惚れたりしてますね
>>336-337
暑さでパソコンも1の頭も使い物にならなくなってました
お待たせしてすみませんでした
>>339
次回予告にうつってた子は、原作新クレしん52話(三巻収録)に出てくる子ですね
もしかしたら25巻にも出てきてたかもしれませんが
酢乙女邸でのパーティより三日前、とある魔術結社の幹部たちがそのアジトの一室に集まっていた。
「例の計画に、おあつらえ向きに最適な機会が巡って来た」
「三日後、その屋敷に世界中の王侯貴族が集まる……」
「政治家や財閥会長といった商人達はどうする?」
「必要無いだろう。大統領のような『首相』、つまり『一国のトップ』と言える者なら別だがな」
「『王家』が存在しないアメリカ合衆国の大統領は、『標的』の内か?」
「然り、『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』が俺達の在り方故な」
彼らの名は『宵闇の出口』。
かつて存在した巨大魔術結社が分解した際に産まれた複数の魔術結社『黄金系』と呼ばれる者達の内の一派であった。
「此度の件が上手く行けば、我々が『黄金』のトップとして彼等を纏め上げる事も夢では無い」
幾つかに別れた各魔術結社には、それぞれの特色がある。
例えば黄金系では最大勢力を誇る魔術結社『明け色の陽射し』ならば、
タロットカードや四大属性といった王道的な魔術を得意とする魔術師の集まりだ。
またその魔術師達は才能豊かな優秀揃いで知られる。
そんな組織のボスはお茶の供が欲しくなれば、片手間に十秒とかけずに書いた札からでもクッキーを生み出せるだろう。
その逆に『宵闇の出口』の特徴は、その構成員達に『才能が無い』事だと言えた。
それ故に他の魔術結社の、あるいはフリーの魔術師が簡単に出来る事、少ない対価で出来る事が彼等には出来なかった。
先の例え話に当てはめれば、数枚のクッキーを産み出す為に彼等なら複数人の生贄でも用意しなければならないだろう。
事実、その目的はクッキーでは無いにせよ、生きた人間を使い潰す様な魔術こそが彼等の手法であった。
才能が足りない以上、他の何かでそれを補うのは当然であり、彼等が選んだその手段は『対価の量』であった。
各地の人身売買組織にコネクションを持つことで、魔術に必要な『対価』を十二分に用意する。
才能が無い故に並みの魔術師の百倍の代償が必要ならば、千倍の『対価』を支払う事で並みの魔術師の十倍の成果を出す。
それが『宵闇の出口』と言う組織であった。
ある意味では、他の何処の魔術結社よりも『魔術』――才能無き者の為の牙――の扱いに長けた者達と言えるだろう。
「では、三日後に備えておけ。解散」
その声を最後に、その一室から話声は消えた。
同時刻、ニューヨーク。
とあるビルにて、まだ何処か幼さを残す年頃の二人の男女が、ノートパソコンからのびるイヤホンを片方ずつ耳にして何やら話していた。
「……だとさ、どうしようか『タチバナ』さん?」
「今はこれ以上情報は得られないでしょうから」
少年からタチバナと呼ばれた少女はノートパソコンを指さし電源を切る様にジェスチャーする。
「了解」
少年がイヤホンを外して、パソコンを操作する。
「結局、彼等が具体的に何をするつもりなのかまでは判らなかったわね」
少女もイヤホンを外し、自分の眉間を揉みながら言った。
少年が応える。
「でも『国のトップ』を狙っている事は判った」
「それも政治家より王族……やっぱり魔術的な何かかしら?」
「だろうね、拉致か暗殺か……具体的には判断しかねるけど」
少女はため息を一つついて文句を言う。
「連中が何か悪いことを企んでいるのは確かなのに、こちらからは動けないなんて」
「『条約』があるからね、仕方がないよ」
「結局後手後手か……どうするの?」
「決まってるさ、当日ぼくらも酢乙女邸に潜入して誰にも知られる事無く対象達を護衛するだけだ」
「君はまた難しいことを簡単に言うわね『インテリ』」
少女にインテリと呼ばれた少年が返す。
「後手後手なのも、難易度ナイトメアもいつものこと。それが僕達『SML』のお仕事だよ」
パーティ当日、開始一時間前の酢乙女邸のキッチンにて。
パティシエのポールはその日に出す分の調理を一段落させるとSPの赤崎、青山の二人と話していた。
「それで、彼は来てくれそうなのか?」
赤崎と青山の二人は(正確にはお嬢様に仕える者のほぼ全員が)今日開かれるパーティにお嬢様の想い人である少年を参加させようと動いていた。
何故ならそのパーティはお嬢様の未来の伴侶を選ぶ為のものであり、この家に長く働いている者達にとっては
お嬢様に想い人である幼馴染が居る事は周知の事実であったからだ。
だがそれには幾つか問題があった、まず件の少年はごく普通の、父親は中小企業のサラリーマン母親は専業主婦という一般家庭に産まれた一般人、いわゆる庶民であった事だ。
世界中の経済を動かす名士に、王侯貴族や為政者が参加するパーティに自然に加わる身分ではなく、彼に招待状は送られていなかった。
次に、これがいつも通りのパーティであれば、お嬢様の友人として招く事も出来たかもしれない。
実際、彼は何度か他の友人達と共に酢乙女家のパーティに参加していた。
しかし『御家の為の婿選び』が目的となってしまってはそれもできなかった。
「ああ、黒磯が休暇中で助かった」
奇しくも十年前の今日、『お嬢様が初めてねがえりをうたれた記念日パーティ』に
件の少年はSPの一人として参加しアクシデントからお嬢様を護っていた。
当時彼はお嬢様付きのSPである黒磯に弟子入りしていたらしい。
その日の彼の実績と、黒磯が今日のパーティの警護に参加出来ない事が合わさって、一般人である少年をよぶ名目が奇跡的に立ったのだ。
「そうか、なら後はあいお嬢様次第だな」
世界中の名士が集まったパーティ会場で、交際なり婚約なりを宣言してしまえばそれはもはや既成事実となる。
酢乙女家の本意とは違っていても、取り消しはほぼ不可能だ。
かなり無茶苦茶な、確実とは言えない賭け。
しかしお嬢様が一般人である想い人の少年と結ばれるにはそれしかないだろう。
本来ならば社交界やら上流階級やらとは無縁であったろう一般人である少年をまきこんでしまう事に、何も思わないわけでは無いが……
「……上手くいってくれることを祈るばかりだな」
主の長年の想いをとげさせようとする者、集まる権力者を狙う者、それを人知れず阻止せんとする者……
開始まで一時間をきったパーティ……その会場たる酢乙女邸には、様々な人間の思惑が集まり交叉し、渦巻いていた。
ちょっと短めですが、今回はここまで
関わった悪の組織が壊滅する一般人……一般人ってなんだっけ?
お久しぶりです、1です。これから投下します。
おまえのところ
「それで、モロダシ共和国の『事情』って?」
アメリカ合衆国大統領ロベルト・カッツェが隣に立つモロダシ共和国大統領コツバーンに訊ねた。
「ん?ああ……」
そういえば暇になれば話すと彼には言っていたなとコツバーンは思い出した。
確かに自分は挨拶回りも終え、十分暇と言えるだろう。
後は令嬢の婿選びの結果が気になるが、其方もアノ様子ではほぼ確定だろう。
かの国がかつて魔教を擁した魔術大国であると聞いていたため、最初は魅了の類の術か何かを使ったのかとも思ったが
しばし二人の会話する様子を観ていれば、それは見当違いだと解った。
令嬢は心底楽しそうに同い年の少年から話を聞いており、時々相槌を打ち続きを促している。
そこには操られている者独特の不自然さは見れない。
(ここからではよく聞こえないが……)
どうやらソノ内容は十年前に犯罪組織にさらわれた際に、数日後に自分と同じようにさらわれて来た日本人少年との出会いから始まる
当時は未だ五歳である幼児二人の、『小さな大冒険』の話らしい。
令嬢は興味深々と言った様子で、その二人に割って入れる者は(少なくともパーティの招待客には)いないだろう。
ホスト
主催者側としては問題のある態度かもしれないが、このパーティの主役は彼女であり
『酢乙女』への挨拶と言うだけならばそれを受ける人物も別に居る様であった。
「わかった……少し長い話になるぞ?もう十年も前になるが、当時の副大統領がクーデターを企ててな……」
ロベルトが目を向く。
「おいおいクーデターだ?穏やかじゃねぇな」
「結果としてはヒップ、副大統領の名前だ。彼とその私兵団全員の逮捕に終わったが……それ以降、うちでは副大統領の座は空席になっている」
「へえ!!敵勢力の死者0かよ!?よく未然に防げたな」
「いや未然ではない。王子とその友人一人がさらわれ、その救出に向かう我々正規軍側は嘘の情報をつかまされていた……」
当時を思い出し、ため息をつく。
「向かわせた部隊の全滅、どころかクーデターの成功も充分にありえた」
「それが何で死者0の全員逮捕って結果に?何があった?」
「……『奇跡』いや、『理不尽』だな。一言で言うのならば」
どういうことかと、ロベルトが目線で先を促す。
結果だけを言えば、王子が敵の隙をつき、国軍に罠だと伝えた。自身の現在地である副大統領の私兵団のアジトの場所共にだ。
そして……
「ヒップの私兵団のアジトに国軍が到着した時、既に私兵団は壊滅状態だった」
「内部から裏切り者でも出たのか?」
「いや。王子と共に、友人の一人が連中にさらわれたと言っただろう?」
そもそも王子が何故こちらに連絡できたかと言えば、その友人が私兵団を混乱のどん底に叩きおとしたからだ。
当時まだ五歳の、それ故に状況の理解も出来ていなかった幼い少年が、たった一人で軍隊を全滅させたのだ。
「そいつが?」
「王子とは齢の離れた友人でな、まだ子供だったのだが……本人曰く、『その辺にあったオモチャで遊んでただけ』だそうだ」
「は?」
「ちなみに『その辺にあったオモチャ』とは、ヒップがクーデターのために用意した兵器群のことだ」
「悪魔かよそのガキは……けど、なるほどな。軍隊同士での衝突は起きなかったってことか。しっかし、よくクーデター側の連中はよく生きてたな」
「ああ、『理不尽』と言う物を味わったよ。そして、それからだ」
「何がだ?」
「真っ当な軍事力など、幾ら強化したところで……『理不尽』には勝てんと知ったからな。私の政治家としての在り方が変わったのさ」
「そうして国民から長く愛される大統領の誕生って訳か」
「他に相応しい人間が居なかっただけかもしれんがな」
国民が国の行末を任せようと思える人物なぞ、元々そうそう居るものでは無いが副大統領がクーデターを起したとなれば、国民も現役大統領以外の政治家に対し猜疑的にもなるだろう。
ひとしきり話し終えたので、このパーティの主役に意識を戻せば、少年と令嬢の会話も丁度終わったところらしい。
令嬢はまだ少年と話したそうにしていたが、そこに少年へと挨拶に訪れた者がいたのでそれは叶わなかった。
「アレは……誰だ?」
「さあ?」
勿論、コツバーンもロベルトも世界中の名士全ての顔や名前を記憶しているわけではないが
ブリブリ王国王子の元に挨拶に来るほどの者であれば、それなりに身分の高い者に限られるはずだ。
「私も存じない方ですね」
「おお、クルックハルト女史」
優秀な補佐官がアメリカ合衆国大統領の元に戻る。
「お前が知らない?……おかしくないか?俺が普段から『そういうの』は丸投げにしてたのに?」
友人の一国の大統領としてはあまりにもアレな発言を受けて、コツバーンはアメリカの行末に不安を覚えたが、
すぐに今自分が気にする事では無いなと考えをきりかえる。
「ではあの男は……」
誰なんだと、続くはず言葉は出なかった。
男が少年の腕をとり引き寄せ、その首筋にナイフを突き付けたからだ。
反対の手には銃も持っている。
その際、瞬く間の出来事でありながら、少年は未だ自分の近くにいた令嬢を突き飛ばすことで、彼女を男から遠ざけた。
「キャッ!?」
令嬢が上げた短い悲鳴が会場中の注目を集め、他の者達も事態に気づく。
突然の事に上がる多くの人の声、驚きや恐れ等のざわめきは、しかし直ぐに切り裂かれた。
「お静かに!!」
男の声が、一発の銃声と共にパーティ会場に響き渡る。
「我々は傭兵です。名前は言えませんがさる組織からの依頼を受け、この会場に集まった方々の中から何名か誘拐させていただきたく……」
男は静まり返った会場を眺め、一息置くと再び話し出した。
「それさえ叶うのであれば、その他の方々には一切の危害は加えません。ですので仲間からの指示があるまで大人しく願います」
男が言う『何名か』とは誰なのか、誘拐してどうするのか何が目的なのか。
疑問、把握しなければならない情報は幾つも在るが、それを口にする者は居なかった。
誰もが皆、突如現れた危険人物【テロリスト】を刺激しないように口を閉ざしおとなしくしていた。
その中で唯一。おそらくは酢乙女家のSPの一人であろう、令嬢と少年の一番近くにいた黒服の一人が男に向かおうとしたが、
ブリブリ王国から王子の近衛としてついてきた来た女性軍人に止められていた。
シャリ……。
シャリシャリ……。
シャリシャリシャリ……。
……。
シャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリ
誰一人動かず、声も出さない、静まり返っているはずの会場に、何やら妙な音がしだした。
自然、全員の眼がその音の在処へと向けられる。
それは、とらわれの少年の首元であった。
「何をしているのですか?」
男の言葉はこの場に居るほぼ全員が共感しただろう。
何せ人質にされているはずの少年が何処から取り出したのかリンゴを手に、器用にも自身の首筋に突き付けられたナイフでその皮を剥いていたのだから。
・・・
「オツヤの準備だゾ。オジさんもお一ついかが?」
オヤツ
おそらく軽食と言いたいのだろう。
皮を剥き終えたリンゴを片手に、少年は男に訊いた。
「いや結構」
「ま~ま~御遠慮無く~」
少年は歌う様にそう言いながら、男の口にリンゴを突っ込んだ。
「ムグ!?」
男が驚いた隙をつき、少年はしゃがみこむことで拘束から抜け出す。
そしてすぐに立ち上がり、彼の頭部の頂きが真っ直ぐに男の顎を真下から打ち抜いた。
リンゴが噛み砕かれ、果汁を飛び散らしながら、気を失ったらしい男は後ろへ大の字に倒れた。
男が少年を拘束した時同様、いやそれ以上に一瞬の内の出来事に未だ周囲が言葉を失っていると、少年が黒服の一人、
先程ブリブリ王国の女性軍人に止められていた者に話かけた。
「ごめんねスンちゃん。借りてた服なのにリンゴの汁で汚しちゃった」
今回はここまでです続きは多分明日か明後日には
すごくお久しぶりだというのに申し訳ないです。
いいかげんまるでエタるエタる詐欺の様な更新速度を少しでも上げたい
それもこれも浜面君の中の人が主演で駒場さんの中の人も出ているアニメや
その原作が長編かつどこでも品切れなのが悪いんだ……
おつ!冷静に考えてしんのすけのコネクションやばすぎだよな
何かあったのだろうか・・・。心配。
1です、お久しぶりです。これから投下します。
>>369
しかも原作(アニメ含む)が続く限りコネクションは広がり続けるという
敵対する者達にしてみればまさに悪夢
>>370-371
ご心配おかけしてすみません
声の主は、先程テロリストを運んで行った者だった。
その声を聞いて、他の者達も各々近くの出入口を確認する。
「王子、全ての扉が何らかの理由により開けられなくなっている様です」
ブリブリ王国から、スンノケシ王子の護衛についてきた女性軍人ルル・ル・ルルが主人に報告する。
「どうしようしんちゃん」
スンノケシがしんのすけに相談する。
「あのオジさんは『仲間からの指示』とか言ってたしその人達のしわさなんじゃない?」
「あの男と同じように、参加者に紛れ込んでいる可能性は高いでしょうね」
しんのすけとルルの言葉にあいがうなずき、気になっていた事を訊ねる。
「仲間が捕えられて、出るタイミングを失った。と言ったところでしょうか?ところでしん様」
「なに?」
「ブリブリ王国のスンノケシ王子としん様の交友関係は先程聞きましたけれど、なぜ入れ代わっておいでに?」
「ああ、それはね……」
話はパーティ開始の数十分前にさかのぼる。
赤崎達に案内され会場に一足先に着ていたしんのすけは、招待客の中に見知った顔と名前があることに気づき、近くにいたその二人に挨拶しようと声をかけた。
「ほほーい、スンちゃんスンちゃ~ん」
他国の王侯貴族等ならばともかく、酢乙女家に雇われているだけの筈の黒服がやたらと馴れ馴れしく近づいてきたので、
ルルは王子を護る為に黒服と王子の間に立つ。
護衛が立ち塞がったのに対し、黒服は笑いながらサングラスを外し言った。
「やだなぁ、忘れちゃったの?オラだよ」
王子は驚く、サングラスの下から出てきたのは自分が毎日見ている顔と同じ物だったのだから。
そして、その顔を持つ者は王子が知る限り一人しか居ない。
「あっしんちゃん!?」
久しぶりの友人との、予想外の再会に王子は喜ぶ。
「パーティ開始まで、まだあと少し時間あるしチョット話さない?」
しんのすけの提案に、スンノケシは迷うことなくうなずいた。
ここでは他の人の邪魔になるからと、しんのすけは二人を連れて会場とキッチンを繋ぐ通路の脇にある、使用人達の控室に来ていた。
この時間になれば、もう本来の部屋の使用者達はそれぞれの持ち場で仕事に当たっているのだろう。
今その部屋にはしんのすけ、王子、ルルの三人だけであった。
「まさかしんちゃんと会うとはね」
王子の嬉しそうな声に、ルルも自分の言葉を続ける。
「日本を訪れる以上、ブリブリ王国内に居る時よりも可能性は上がるかと……ですが確かに、その事を踏まえた上でも今日の再会は意外でしたね」
「ルル……さんも、お久しぶり~」
「『ルル(お姉……って歳じゃもうないな)さん』に込められた失礼な間には気づかなかった事にするわね。しんちゃん」
「いやいや、そんなこと思ってないってば」
苦笑いを浮かべる友人を助けようと、王子が話題を変える。
「そう言えば、しんちゃんも今日のパーティに出るの?」
「いえ王子、彼の服装と先程のサングラスは、この家の警備達の物です」
「えっしんちゃん酢乙女家で働いてるの?僕と同い年だからまだ14だよね?ひろしさんに何かあったの?」
確か日本ではまだ義務教育も終えていない年齢のはずだが、それが働いているとはどういうことだろう。
それもこんな『気軽にアルバイト』とは無縁な職場となればなおさらだ。
そんな王子の疑問と心配に、しんのすけが答えようと口を開いた。
「いやさ、実はこの家の娘さんとは幼馴染でね?それがまだまだ遊びたいさかりだろうに、御家の為にと涙を呑んで婿選びじゃ……」
しんのすけの言葉の途中、彼の背後の天井から何かがドサリと落ちた。
「っしんちゃん!?」
王子がしんのすけの後ろを指さし叫ぶ。
天井から落ちたモノ、それは人だった。
スパイ映画でお馴染みの『全身タイツに小物入れが沢山付けられたベルト』といった格好をしたその人物は、
こちらに気づくと直ぐに襲いかかってきた。
「何?後ろ??」
しんのすけが頭を下げ、自身の両足の間から王子の指さす方を確認する。
一方でルルも護衛としてエリート軍人に恥じぬ動きをしていた。
王子が叫ぶか否かの時には、少年二人と『スパイ然とした不審者』の間に立っていたのだ。
しかし、彼女がつちかってきた武術が、その不審者に振るわれることは無かった。
不審者が彼女達に迫り、彼女がその頬に拳を撃ち込もうとした刹那、不審者の躰は弾かれるように後方に飛んだからだ。
そうして倒れると、床を背にしたまま動かなくなった。
「なっ!?しんちゃん!?」
ルルの眼は確かに視た。自分の脇、腹の横を通り過ぎ真っ直ぐに伸びた彼の脚の爪先が、不審者の鳩尾へと吸い込まれる様にめり込んでいくのを。
「おわー、なにこのテンプレ装備」
彼女の驚きの声も気にならないのか、彼はしゃがみこんで倒れた男の装備品を物色していた。
「でも、何て言うか……『和洋折衷』?しかも十年前でも見ることが出来たヤツがほとんどだし、スパイ業界がその間進歩していない筈も無いから……」
立ち上がり、王子とルルに向き直ってしんのすけは言った。
「ねえルルさん、この人どこかの国や機関の諜報員っていうよりフリーの傭兵ぽいよ?」
ルルは唖然とし、王子はしんのすけに問いかけた。
「しんちゃん、日本に帰ってから君に何があったの?」
「まあ、ホワイトスネーク団だけじゃ無くてあれから……」
しんのすけは笑いながら片手の指を折り数える。一度折られた小指がすぐに伸ばされ、薬指中指ときて人差し指が伸ばされたところで言葉を続けた。
「『何回か』犯罪組織にさらわれたり、さらわれた家族をお助けしたりしたからね。このくらいのトラブル、なんてことないよ」
「少なくとも9回以上あって、数えるのが面倒臭くなるくらいあるんだね……」
驚けばいいのか呆れればいいのか判らず、王子はそう返すのがやっとだった。
「そういうこと~……で、」
しんのすけが天井をにらむ。
つられ、王子とルルも上に目をやるが、カバーの外れた通気口があるだけに思えた。
おそらくこの通気口から不審者は降りて来たのだろう。
どうしたのかと、スンノケシがしんのすけに視線を戻したその時、ルルが何かに気づき、しんのすけも再び口を開いた。
「お二人さん。そろそろ出てきたらどうかな?」
数秒の間。その後に通気口から部屋へと降りて来たのは若い男女の二人組であった。
しんのすけ達と同じくらいか、1,2歳年上といったところだろう。
「……まさかの知った顔だったゾ」
あちゃー、と。額に手の甲を当て、しんのすけが天を仰ぐ。
「知った顔、ですか?」
ルルがしんのすけに問いかける。
「うん、確か……『世界の平和を守る国連直属の秘密組織』SML……だったよね?セイギ君」
「はぁ……その通りだよ、しんのすけ君。ただ本名で呼ぶのはよしてくれ、『インテリ』ってコードネームがあるんだ」
インテリと名乗る少年としんのすけの態度から、どうやら本当に知り合いらしいとスンノケシとルルは警戒を解いた。
こ
「そっちの娘も?」
もう一人の少女の方も知り合いなのかというスンノケシの問いに、しんのすけが応える。
「うん、でも……『はじめまして』で、良いんだよね?この場合」
すこしだけ悲しそうなしんのすけの言葉に少女が返す。
「うん、『はじめまして』。野原しんのすけ君。私はコードネーム『タチバナ』です」
スンノケシは二人の間に何かあるような気がしたが、聞いても教えてくれる事じゃなさそうだと思い、黙っていることにした。
「それで……この床でのびてる人についてと、どうしてSMLの二人が此処にいるのか、話してくれるよね?」
「はぁ……できれば部外者を巻き込みたくないいんだけど」
そこでしんのすけに対するインテリの言葉を、ルルが遮る。
「ですが、我々は既にそこの男と接触しています。ならば私は王室近衛として事態を把握する義務があります……話してくれませんか」
しんのすけ
王子の親友の知り合いが相手だろうとその為ならば拷問もじさないという、彼女の軍人としての覚悟と矜持を言外に感じさせる言葉であった。
ヒヤリとした空気の中、しんのすけが言う。
「まあまあ、オラとセイギ君の仲じゃないの~。それにSMLが任務中現地で部外者を巻き込むなんて今さらな事なんだから、気にしない気にしない」
「ちょっ!?しんのすけ君一国のVIPやロイヤルの前で何言ってるの!?あと本名はやめて」
「え?インテリ、過去にそんなケースがあったんですか」
SMLとしては、民間人8名を巻き込んでしまったあの事件は隠しておきたいモノなのだが、
それをVIP(エリート軍人)やロイヤル(王子)に明かされそうになりインテリは焦る。
おまけに相棒はここに来てまさかの知らんぷりだ(本当に知らないのかもしれないが)。
「一国?確かに今ここにはブリブリ王国の二人しか居ないけど、そういえばパーティ会場には何ヶ国のVIPが来るのかしらね?」
わざとらしいオカマ口調で話すしんのすけを前に、インテリは察した。
「コイツ脅す気だ」と。
「モロダシ共和国のオマタさんも来てるかしら?彼と私、昔なじみなのよ」
世界最大の金産出国とのつながりをチラつかせてきた。
「……解った、全部話すよ。実は……」
インテリもこの何処か浮世離れしている友人が、まさか本当に国連直属平和維持組織に対する世界各国からの信用を失墜させるなんてしないとは思うが、
それが彼にとって『やろうと思えば出来る事』なのは事実だろう。
インテリは諦めてしんのすけの協力を得ることにした。
それは奇しくも、十年前に彼の父親であるエージェント『キンニク』が味わった思いと似たものであった。
「……なるほど魔術結社『宵闇の出口』ですか」
情報が一通りもたらされ、ルルは自身の頭の中で整理する。
流石にここまで時間が迫っていては、酢乙女家へこの情報をそのまま伝えてもパーティの中止はできないだろう。
もうすでに世界中の名士が会場に集まっている。
おまけに情報元である彼ら『SML』その存在を酢乙女家の警備責任者が知らなければ『悪質なクレーム』と判断されかねない。
そしてSMLが秘密組織である以上、その可能性はおそらく高いだろう。
勿論「『宵闇の出口』が酢乙女邸に送り込んだのはそこの床でのびている男一人だけで問題は既に解決している」可能性もありえるが、
そうでない可能性を無視するわけにはいかない。
「クレームに思われない程度にそれとなく酢乙女家側に危険を知らせて……その上で王子の警護も……」
とは言え、あまりに物々しい警備体制は「私達は主催者側の警備を信用していません」と明言する様な物であり、酢乙女家を相手にそんなことできるわけがない。
その為今回王子についてきた近衛は自分も含めても三人(その内二人は今は会場の外に居る)だけだ。
王子の護衛、捕らえた傭兵の尋問及び監視、魔術結社が送り込んだ者が他にもいないか探す者。
SMLの二人も含めて1:2:2で分けることになるだろう。
王子の護衛に自分が、傭兵の尋問と監視に同僚達、邸内の探索をSMLの二人がするということだ。
「そうだね、拷モ……尋問はBADCOP&GOODCOPって言って二人がかりでするのが基本だし、監視役を一人だけにするのも捕虜の脱走・逃亡の危険を増やすからね」
自分の頭の中を読んだようなしんのすけの声にハッとしそちらを見ると、若者四人が集まって作戦会議していた。
「と言うわけでルル。君はあの二人を至急この部屋に連れて来てくれ」
「オラは一応、ダメ元で赤崎さん達に伝えておくゾ」
仕える主の言葉に了解を示し、しかしそれでも不安な点の確認をとる。
「かしこまりました、しかしそれでは賊が紛れているやもしれない会場で護衛が私独りとなりますが……」
「大丈―夫」
しんのすけが自分を指さし言った。
「此処に『近衛兵でも見間違える最高の影武者』がいるでしょう」
今夜はここまでです。次回投下は月曜の夜九時の予定です
今日のクレしん、マサオ君の身体能力高すぎじゃないですか!?
と思ったけど彼は鰐を相手にダンスできる位のポテンシャルを持ってる園児でしたね
スンノケシ「久しぶりに会う幼馴染がめちゃくちゃ強くなってた件」
A.「このSSのしんのすけは『その後も十年間事件に巻き込まれ続けたしんのすけ』なので」
>>1としては1しんのすけ=1.1アックア=0.9ウィリアムくらいのイメージです
はじめましてのタチバナか
1です。これから投下します。
今回は短めですが、キリの良い所まで。
>>381
例え元バディであっても名を変えて再び会えば『はじめまして』
それがハードボイルドなスパイのルールなのです(と言う1の妄想)
「……とまあ、だいたいこんな感じの流れでね」
しんのすけが、あいへの説明を終えた。
SMLの存在を隠したりと、要所々々ごまかしてはいたが大筋は同じであった。
しんのすけがそういったことを話している間に、彼に縁の有る者達がその場に集まって来ていた。
「ほーう、こりゃ驚いた。確かに二人共儂の若い頃にそっくりじゃわい」
「僕も農学の権威ヘガデル博士と僕の幼馴染が知り合いとは驚きました」
ヘガデル博士の言葉にスンノケシ王子が応える。
「そう言えばドクター北与野も……」
「ええ、友人ですよ。貧乏時代には、彼が『祖父から送られてきたから』と持ってくるお裾分けによく助けられたものです」
「あれ?博士居たんだ」
しんのすけはそこで思いの外、参加者に自分の友人知人が多く居た事に気付く。
招待リストには目を通していたがスンノケシの印象が強かったためか、大分見落としていたらしい。
「良かった、博士が居るなら……この状況何とかできる?」
「ごめん。今日は何も発明品は持って来てないよ」
北与野博士の発明品ならばと期待したが、そう都合よくいかなかったようだ。
「しん様?屋敷の扉が開かないのは一時的なものではないのですか?」
護身の為に最低限の心得と知識だけは与えられていても、あまりこういった事の実経験は無い(それでも皆無では無いが)令嬢が、しんのすけに訊く。
「う~ん、さっきの二人が倒されたから残りは計画失敗の速撤退ってことなら、その時間稼ぎが目的なわけだからじきに開くだろうけど」
「しん様は、おそらくそうでは無い。と?」
彼はうなずく。
先程、しんのすけを捕らえていた男は、片手にそれぞれ拳銃とナイフを持っていた。
ならば普通、人質のこめかみに拳銃を当てるところを、あの男は首筋にナイフを当てた。
『人質を捕ってなお襲って来る相手に向ける為にフリーの手に拳銃を持った』と言うのなら
そもそも拳銃を二丁用意しなかったのは何故か。
控室で捕らえた傭兵も、装備は一通り揃ってこそはいたが、質の良い物では無かった。
彼等の依頼者がカルト宗教団体である事と合わせて考えると、一つの仮説が成り立つ。
つまり、『今回動いている傭兵達もまたオカルト側の人間、魔法使いなのではないか』と言う物だ。
であれば、『銃を持ちながら銃よりナイフに信頼を置く傭兵』という風変わりな存在も納得出来る。
正確には『カルト宗教団体』ではなく『魔術結社』であり、『魔法使い』ではなく『魔術師』なのだが、しんのすけにはその違いが分かるほどの知識は無かった。
しかし彼は、『魔法もそれを扱う者も、普通に実在する』ということは嫌と言う程に良く知っていた。
そして相手が魔法使いの傭兵ならば、この『既に二人の仲間を失った』状況からでも何らかの逆転の一手が打てるはずであり、
それなら時間稼ぎも撤退の為では無くその為のものだと考えるべきだ。
「「キャアーーーーーッ!!」」
しんのすけがそんな事を考えていると、会場の一角から悲鳴が上がった。
双子の姉妹がハモッた様に綺麗に重なった声の出所を見れば、スカシペスタン共和の両女王が抱き合って怯えていた。
そしてその二人の眼の前には、十年前に一度、しんのすけが出会った『怪物』がいた。
およそ『世界各国の名士が集まる場』においては最強最悪とも言えるその存在を見て、
しんのすけは額に手をやり呟いた。
「今日は懐かしい『顔』によく会うけど……まさか『人面草』とも再会するかね」
今日はここまでです
人面草は原作39巻91ページからのお話に出てきます。
次回投下は金曜の夜十時の予定です。
ところで話しは変わりますが、『カルト宗教団体がテロ』って時期的に不謹慎なネタになってませんかね
不快な思いをした方がいらしましたらばごめんなさい。
大丈夫ですよね?
このレベルでダメならとあるサイドの原作のネタほぼ全部アウトですが一応念のため
人面草ってまさかアレか……片割れの方か。
1です。これから投下します。
>>389
そうです、何処かの紛争地帯に落ちたアレ(正確にはそかから派生した奴という設定)です。
その怪物は、大きな向日葵のようでもあった。
球根から伸びた花の中に晩年のピカソが描いたかのような人の顔がついていなければだが。
「し、しんちゃん。アレも知ってるの?」
スンノケシ王子が、怪物を『人面草』と呼んだ幼馴染に訊ねる。
護衛であるルルの陰に隠れる様に立つ彼は、怪物を目にしやや怯えているようであった。
過去に一度、犯罪組織に誘拐されたがゆえに、それ以降は過保護に育てられたのかも知れない。
少なくともこういった事に慣れている様子では無かった。
「あの二人のこと?あの女の人達は『スカシペスタン共和国』の最高総統と最高元帥で……」
「あの、しん様?スンノケシ王子が訊きたいのはあの『お花』のことかと」
それを知ってか知らずか、しんのすけは的外れな説明をしだし、あいに止められた。
「もー。軽いジョークなのにぃ。で、『人面草』についてだっけ?」
「そうですしんちゃん。アレが何か知っているなら教えてください」
ルルは視線を怪物から外すことなく、しんのすけに情報を願う。
「まあアレには未だ脚が生えて無いから、今のうちは近づかなきゃ伸ばしてくる蔓と葉っぱのビンタに気を付ければ安全だと思うゾ」
「『未だ』ってそのうち生えてくるのかい?」
「ほう興味深いな。可能ならサンプルを研究所に持ち帰りたいものじゃな」
未知なる植物に対し、農学者が食い付く。
しかししんのすけは首を横に振る。
「残念だけど、そんな余裕は無いと思うゾ。ほら」
しんのすけが指をさす。
彼が説明していた間、招待客達を護ろうと酢乙女家のSPや各国から連れてこられた護衛達が
濁った奇声を上げる人面草と戦っていた。
そして、変化が起きた。
「なっ!?」
『それ』を見ていた誰ともなく声が上がった。
きっかけは、引き千切ろうとも更に数を増やし襲って来る触手のような蔓の群れに、何処かの国の護衛が捕まった事だろうか。
捕まった男がもがき、怪物を口汚く罵ったのだ。
「あの花、ひとの『悪意』で進化するから」
そんなしんのすけの説明が、スンノケシにはどこか遠くの事のように聞こえていた。
それほどまでに、全体的により大きく、蔓の一本一本が太さを増し見るからに力強くなっていく様は恐ろしかったのだ。
何より、先程しんのすけが言った通りに球根から脚が生えた。
それは『あの怪物は移動手段を得た』と、観ていた者達がそう理解するには充分であった。
パニックが起こった。
一部の人間が我先にと逃げ出そうと扉へと走りだしたのだ。
彼等は急ぐ、他者を突き飛ばしてでも、少しでも早くと……
しかし扉は開かない。
先にきた者はあとから来た者と扉との間に押しつぶされ蛙の様な声を漏らす。
怪物から逃げられぬと知れば、今度はそんな現実から目をそらすべく互いを罵り合う。
「邪魔だどけ!!」
「そっちこそだ!!ハゲ爺!!」
会場の一角がそんな醜い修羅場と化したことで、人面草はみるみるうちに巨大になっていく。
しんのすけが呟く。
「あれ?これヤバくない?」
今夜はここまでです
次回は火曜日の夜九時の予定です
今日のしんちゃん、川口さん対応大げさな気もしますが相手が『野原ひろし』である以上あれが正しいと言うか、むしろ手ぬるい位なのかもしれませんね
まあ、ひろしがそのぐらい川口に慕われているとも言えますな(焼肉ロードのアレは気にしない)
とりあえず褒めなければ…
花の弱点を見てきて、この場にいる人物を確認……うん、こいつはやべーぜ(棒
遅れてすみません1です。これから投下します。
>>398
アレはもう『世界のフィルターが書き換えられた』ようなものですから、しかたないかと
「ど、どうするのしんちゃん」
植物の巨人と化した怪物に怯えながらスンノケシがしんのすけに訊ねる。
しんのすけはそれに直ぐは答えず、少し考える時間をくれとでもいうように目を閉じ上を向いてしまった。
「しん様?」
あいが心配そうに声をかける。
「あ、うん。大丈夫、あの花には弱点もあるから」
「そうでしたの、それは安心ですわね」
「ところで……」
ここで、周りの者が気になっていた事を、代表して北与野博士が訊いた。
「しんちゃんは、なんであの怪物に詳しいんだい?」
「詳しいってほどでも無いゾ?昔一度遭ったってだけ。その時はアレが庭に落ちてたんだゾ」
「庭に落ちてたって……」
あまりにも軽く言う少年に博士はめまいがした。
一度この少年のトラブル体質を研究してみたい気もするが、おそらく生涯をかけても自分に解き明かせるモノでは無いだろうとも思う。
「ソレデ、ジャクテンテ?」
北与野博士が黙って何やら考え込んでしまったのでオマタ王子が話を元に戻す。
「本当はできればやりたくないんだけど……とりあえず、こっちの『声』が聴かせられるくらい近づかなきゃね」
『できればやりたくない』それが先程スンノケシへの返答をためらった理由だろうか。
「『声』ですか、では弱点は『大きな音』、いや『特定の周波数』かそれとも……」
ルルはその情報から、怪物について考察する。
怪物の居る会場の一角へ眼をやれば、壁際で先程我先に逃げようとした者達が、彼等と怪物の間には彼等が母国から連れて来たらしい護衛達が立ち、
怪物の攻撃(触手を伸ばして掴もうとする)を防いでいた。
客達の恐怖をあおり、より成長する事が目的なのか、伸ばされ振るわれる触手のスピードはそれほどでも無かった。
そして会場の反対側を見る。
現在しんのすけの周辺に居る、すなわちこの場に居る者意外は、怪物がいるのとは反対側の会場の一角に集まっていた。
そちらは押し合いにもならず全員冷静にしているあたり、こういった事に慣れている立場の人間なのだろう。
「アッチはもうしばらくは大丈夫そうだし、近づく前に何か食べてからで良い?」
怪物の方を指し、しんのすけは言う。
既にその手には上半分がクッキー生地に覆われた丸いパンが在った。
「ドコカラダシタノ?ソノ『サンライズ』」
「え『サンライズ』?オマタさんコレは『メロンパン』だゾ」
首をかしげるしんのすけに、あいが説明する。
「『サンライズ』とはメロンパンの別名ですわ。狭義では別種のパンになるのかも知れませんけれど」
「へぇ、そうなんだ。近くのテーブルの上にあったゾ、オマタさん。他にも菓子パンが沢山」
そう言えばオマタ王子の日本語には不自然なところが多々あったな。
と、十年前の日々を少し懐かしく思いながら、しんのすけはあるテーブルを指さした。
そこには彼の言う通り、様々な菓子パンが乗っていた。
「そう言えば立食式のパーティなのに、あいちゃんと話し込んでてしんちゃんは何も食べて無かったね」
スンノケシの言葉に、「ああそう言えば」と思いもしたが、ルルは怪物退治を急がせる。
あくまでも本命は紛れ込んでいる傭兵であって、あの『花』は前座でしかないのだから。
「なんにせよ、アレを倒せる手段があるのならお願いします」
ルルにうながされ、しんのすけが食べかけのパンを懐にしまい言った。
「うん、じゃあいちゃん、オラについてきて。『花』に声が聞こえるくらい近づいたら、あいちゃんはオラの質問に正直に答えてくれれば、それでいいから」
「これくらい近づけばいいか」
現在しんのすけとあいは、怪物のすぐ近く、背後にあるテーブルの陰に隠れていた。
「とぉう!!」
しんのすけが飛び出し、怪物の注意を向ける。
「あいちゃん!!」
呼びかけに応じ、あいも物陰から飛び出す。
怪物の意識が彼女にも向けられた事を確認し、しんのすけは作戦決行の合図でもある、質問を一つした。
「ねえあいちゃん。あいちゃんはオラのこと、どれくらい好き?」
※最初の二行と最後の一行だけ読めば問題なし
「お慕いしていますわ。ドッジボールで負けたあの日から、デートを断られたあの時から。
十年前のあの頃から今もずっと変わらず。いえ、十年前のあの頃より今はずっとはげしく。
初めて出逢った時から何年も経ちますけれど、今なお想いは募るばかりですわ。
だってしん様は、あいが心の底から惚れこんでいるつもりでも、何度でも何度でも
更に惚れ込んでしまいますもの。
しん様は気づいていましたか?あいが悩んでいた時、塞ぎ込んでいた時、
しん様があいの心を晴らしてくださっていたんですのよ?
幼稚園の水泳大会で、トップを泳ぐ河村さんのクロールを犬かきで抜き去ったしん様のあのお姿に、
あいはどれだけ励まされたことかわかりません。 さき
実家が傾き、節約のために昼食を抜かねばならなかった頃、誰よりも最初にしん様はご自分の食事をあいに分けてくださいました。
シャンパンの栓があいに向かって飛んできた時、しん様は身を呈してかばってくださいました。
そんなしん様に見てもらいたくて、あいはしん様の気を引こうとまだ子供なのに似合うはずも無い化粧をしてみたり、
しん様の好みに合うよう大人っぽく見えるような髪形をかえてみたりもしましたけれど、
今にして思えばそれも間違っていたのでしょうね。
だってあいは、誰にも媚びずどんな時も自分らしくある。しん様のそんなお姿に惚れたのですもの。
だからしん様。ごめんなさい。あいは一つ、しん様に嘘をつきました。
先日送ったあの手紙には今日この会場にしん様がこなければ、あいはしん様への想いを諦める
と書きましたけれど、諦められるわけがありません。
しん様が会場に来てくれさえすれば、どうにかできる手段は有ると書きましたけれど、
本当は持っていないのです。
しん様にとって、あいの気持ちは、ご迷惑かもしれません……ですが!!
私は酢乙女家に生まれました。何時の日か、家の為に親の決めた相手の伴侶になる時が
来るのでしょう。
それが一年後だと言うのなら、その日までの一年間は、しん様の事を想わせてください。
それが明日だというのならば、せめて今日一日だけは、しん様の事を想わせてください。
叶うならば永遠に来て欲しく無いその時が来る日まで、しん様の事を想わせてください。
そして、その時が来る、その日までは……
あいはしん様の事が大好きです」
ドン引きしていた。
会場中のほとんどの人間の気持ちを、一言で表すならば、まさにソレだろう。
令嬢の独白が始まると、怪物がもだえ苦しみだした。
口から血を吐き、目からは涙が溢れ、その貌は苦痛に染まっていた。
躰中の各所から古傷が開いたかのように血を噴き出し、最後には体液を蒸発させミイラの様になっていきたえた。
しかし会場の人間がドン引きしていたのは、そんなグロテスクな怪物の亡骸では無く。
苦しみもがき、死の舞踏を踊る怪物をバックダンサーに、怪物のあげる断末魔をバックコーラスにしながらも、
全くそれらが気にならない様子で、歌うように愛の言葉を紡いでいた令嬢に対してだったのかもしれない。
今夜はここまでです。次回投下は金曜夜十時の予定です
>>399
宇宙植物の弱点は『あい』だった!!(ダブルミーニング)
まあ、こうなりますよね。あの花にとってヤンデレって天敵な気がします
釘宮声のあの人よりあいちゃん嫁にした方がいいと思う
うん、ダブルミーニングまで含めてだろうと思ったよ。
でもこんなに長い愛の叫びとは思わなかったよ。
1です。これから投下します。
>>410
1はアノ世界のあいちゃんってほぼ確定で死んでるとおもうんですよ
隕石で東京都が海に沈んで、さらに金有は敵対する相手を消して行ったわけで……
>>411
ヤンデレと言えば長台詞。もっと長くしたかったんですけど1の文章力ではこれが限界でした
西尾維新ってすごいな(小並
「あいちゃん、ストップ」
「ふぎゅ!?」
あいはまださらに言葉を続けようとしていたが、しんのすけが指二本で彼女の鼻の穴を塞いで黙らせた。
聞いているだけでも周囲の人間にはドン引きものだったのに、言われている本人にはたまったものでは無かっただろう。
むしろよく怪物がいきたえるまで我慢出来たものだ。
羞恥のためか彼は顔を赤くし、令嬢の手をひいてスンノケシ達の元まで戻ってきた。
「で、説明をおねがいしたいのですが!?」
ルルがしんのすけに詰め寄る。
そもそも『怪物に弱点が在る』とは聞いていても、その弱点が何かとまでは聞いていなかった。
それがあんな『バカップルの片割れが言いそうな台詞』ランキングベスト3に入るであろう質問をしたかと思えば、
それに令嬢が答えたとたん怪物が苦しみだしたのだから、理解が及ばない。
「えっとね、アイツにとって最高の栄養は『悪意』だから逆に『愛』は毒になるんだゾ」
「なるほど、そう言われれば納得じゃわい。ところであのミイラは持って帰ってはダメかの?」
農学者は一人納得し、貴重なサンプルを欲しがっていたが、問われた令嬢の返答は自分にその権限が無いから返答出来ないと言うものだった。
「まあ、未遂とはいえ誘拐、誘拐目的の不法侵入。充分事件だよねコレ」
証拠品とかで警察が持ってくんじゃないかな、としんのすけに言われ、二人の博士が落ち込んだ。
ヘガデル博士だけではなく、北与野博士もアレが欲しかったらしい。
「はぁ~、もういいです。傭兵を探しましょう」
話が横にずれていく事に頭を痛めながら、怪物の件は過ぎた事と切り替える。
「さて、紛れるならおそらくあちら側でしょうが……」
現在会場の人だかりは、三グループに別れている。
先程我先に逃げようとした者達、その反対側に居る者達、そして会場中央の、しんのすけ達だ。
ルルは、傭兵は疑われるのを避けるため怪物に襲われていた側(我先に逃げようとした者達)の方に紛れているだろうと考えていた。
「それはどうかなぁ。そういう魔法もあるかも知れないけれど、『人面草』はコントロール出来る物じゃない気がするゾ?」
なら万が一を考えれば、襲われる側に身を置く事は出来ないだろう。
と言うのが、しんのすけの考えだった。
「ともかく、照合には招待客のリストが必要ですね。どちらにしよ話はそれからですわ」
あいが話をまとめる。最悪全員調べれば良いのだと。
しかし彼等の思惑は実にあっさりと外れた。
「おいっ!?扉が開くぞ!!」
客の一人(行儀良くしていたため襲われなかった方)が良く通る声を会場に響かせた。
「どうやら傭兵は諦めたようですわね」
あるいはあの怪物も、形勢逆転からの目的達成を狙ったものでは無く、自身が逃げる為の時間稼ぎだったのかもしれない。
酢乙女家の黒服達が会場に入り、要救護者の確認等を行う。
「あ、あのナイフのオジさんを使用人控室へ運ばないと」
「お供しますわ」
しんのすけが壁際で転がされている傭兵を見て途中でほったらかしにしていたことを思い出す。
あいはしんのすけが傭兵を運ぶのを手伝うと言った。
「僕も行くよ。彼らがどうなったか心配だ」
「わかりました、王子が行くなら勿論私も」
スンノケシとルルは控室に傭兵と共に居る仲間を心配してついてくるようだ。
「ボクハ、ソロソロ両親ノ所ニ戻ルヨ」
「わしも此処に残るかの、警察が持ってくにしても、その前に調べるだけ調べたい」
「でしたら、私も」
オマタ王子、ヘガデル博士、北与野博士とは一旦ここで別れて、しんのすけが傭兵を担いで会場の外へ出た。
「しんちゃん、ソイツ捕まえて!!」
会場と控室を繋ぐ通路に入った瞬間、タチバナの声がしんのすけの耳に入った。
今夜はここまでです。続きは多分明日の夜九時です
しんのすけ、そいつはAだゾ。
乙ー
突きつけられたナイフでリンゴむくのって、いつかのスペシャルでデパート強盗?か何かに人質にとられたときのネタ?
1です。これから投下します。
>>418
「鼻の穴を指で塞ぐ」の意味わかる人から見たらしんのすけの行動は
ものっそいキザに見えるはずですね
>>419
そうです。スペシャルでパラレル設定のしんのすけが刑事やってる話のネタですね
「え?」
そちらを見れば、ドレスを着た女をタチバナとインテリが追いかけていた。
おそらく彼女が会場に紛れていた傭兵なのだろう。
「ほいっ!!」
反射的に懐へ手をやり、逃げる女めがけて武器を投げつける。
「あ、間違えた」
しかし、そもそもしんのすけは今、武器と呼ばれる様な物は持っていなかった。
そのため、投げられたソレは、女の顔面に当たると彼我の強度の差から一部を砕け散らせながら落ちた。
しんのすけが投げた『武器』、彼が懐に忍ばせていた物。
ソレは広くはこう呼ばれている物だった……『メロンパン』と。
「固めに焼かれたクッキー生地が無ければ、この女性も逃げれたのかもしれませんわね」
それでも女には十分なダメージになったらしく、その場で気絶した彼女を見下ろし、どこか気の毒に思いながら、あいが言った。
当時しんのすけやはあいは知らなかったが、本来魔術師と言う者は基本的に身体能力が低くなりがちである。
魔術の行使には魔力が必要であり、その魔力の元は本人の生命力であるためだ。
勿論例外もいるが、魔術を使う者は体力や筋力が同程度の体格の魔術を使わない者と比べて劣り易い。
それだけが理由では無いが、硬めのパンが顔にぶつかっただけで、ドレスの女が気を失ったのにはそんな背景があった。
「ふう、助かりました」
タチバナが倒れた女を背負い上げ、しんのすけに例を言う。
あいは初めて見る顔にやや警戒したが、しんのすけの態度から二人は見方だろうとはんだんした。
「どーいたまして。で、その女の人が?」
傭兵なのかと、しんのすけが訊いた。
「うん、たぶんね」
「たぶん、ですか?」
インテリの返事に、ルルが眉を顰める。
「扉が開くようになって最初に出てきたんだよ、こそこそとね」
「中の様子は凡そ把握していましたが、彼女は『我先に逃げだした方』ではありませんでした」
「だったら、扉が開くようになった事を誰にも知らせず、一人だけで出てくるのは不自然だ。だから声をかけたんだけど……」
「逃げ出したってわけか」
スンノケシがインテリの言葉を受け継ぐ。
「ともかく、二人共早く控室に運ぼう」
「ですね。そこでこの女性がリストにあるか確認させましょう」
あいが携帯端末をいじる。使用人や黒服達に指示しているのだろう。
「彼女も傭兵なら、これで三人。他に何人紛れているのか」
「零……だと良いね」
眉間のしわをのばしながらのルルのつぶやきに、しんのすけが返した。
「チクショウ、全員捕まったのか」
控室に入って早々、先に捕まっていた『スパイ風の男』がこちらを見て悔し気に言った台詞に、しんのすけ達は顔を見合わせた。
「零、みたいだね」
「ですが、確認は必要ですわ」
それから一時間後、優秀な酢乙女家の人間によって招待客リストが確認され、事件は終了した。
「……とまあ、コレが私の特別『思い出深い話』ですわね」
舞台は現在、ファミリーレストランJoseph'sへと戻り、あいが話を締めくくる。
SMLの二人には触れず、魔術師もテロリストに代えられていたが
「ええー、確かに凄いお話しだとは思いますけどまだ肝心プレゼントが出てきてませんよ?」
佐天が不満げに話の続きを催促した。
「あら、何も形に残る物だとは言ってませんわよ?」
「どういうことですの?」
意味深なあいの態度に黒子が訊ねる。
「国によって、文化や風習は違いますわね?そしてしん様の御友人にはモロダシ共和国の方がいらっしゃるのですが……」
あいは恥ずかしそうに、そしてそれ以上に嬉しそうに話す。
それは、遠い異国での『鼻の穴を指で塞ぐ』ことの意味を知った女子中学生達が、黄色い声を上げ店員から迷惑そうな顔をされる、数分前の出来事だった。
ヒートアクション・メロンパンの極み!!
短かったですが、今回はここまでです。
続きは明日の夜十時です。
結局知られとるがな。
時期的にそろそろ常盤台のイベントかなぁ
遅れてすみません1です。これから投下します。
>>427
盛夏祭のことでしょうか?
アレは乱雑解放よりも前だと思うので既に過ぎてますね
「……なあ、マジでベガス行かね?」
事件がひとまず解決し、招待客リストの照合が行われている中、暇なのかロベルトがそんな事を言い出した。
「いきなりどうした?いや、まだ続いてたのかその話題」
呆れたようにコツバーンが返す。
「だってよ、ご令嬢の『婿選び』についてはお前の言った通りだったじゃん」
「流石に入れ代わっているなんて想像もしてなかったがな。まあ確かに彼『野原しんのすけ』と言ったかな?彼に決まりだろう」
「あ、やっぱりお前もそう思うか」
「ああ。どうやらあの怪物を倒す為だったらしいが、令嬢のあの『告白』を聞いてなお自身を売り込める家は無いだろう」
「あの少年が令嬢をふっちゃうとか、酢乙女の『家』が二人の交際を認めないとかは?嬢ちゃんの方は覚悟してるみたいだけど」
「いやむしろあの少年が俺の国も含めて各国の名士と友人だと判った以上、なんとしてもあの少年を堕としてワガモノにするよう令嬢に言うだろうな」
「え!?」
それまで黙って二人の会話を聞いていたクルックハルトが驚いて聞き返した。
「しかし、元々今回のパーティ……令嬢の婿選びはブルーシェイク失墜による混乱が酢乙女家に及んだ時の為に足元を固める事が目的だったはずです」
彼にそれだけのバックボーンがあるのだろうか。
「さらに言えば、今回テロリストを邸内に入れてしまったことで酢乙女家へ非難する者もでるのでは?」
コツバーンは、そんなクルックハルト女史の疑問に気だるげに答えた。
「そのどちらも既に解決した、おそらくな」
「それは何故?」
「怪物が襲われた時、我先に逃げ出した奴らにヘイトが集まるからな」
経済界の混乱もまず奴らに他家の攻撃が集中すれば、酢乙女家にとって充分な時間を稼げる。
愛娘に望まぬ婿をあてがうよりも、穏便な手段もとれるだろう。
元々酢乙女家はそのつもりだったのだから。
逆に言えば、それだけブルーシェイクの穴は大きく急な事だったということだが。
「そしてそもそも、金で買える物であれば酢乙女家に手に入らない物なんてほぼ皆無だ。それ故に婿に求められるのは金で買えないモノをいくら持ってるかだ」
少なくとも、彼が持つ二人の王子や二人の天才科学者との絆は本物だろう。
「少年の方が嬢ちゃんをふるかもって可能性は?」
ロベルトが訊く。
「それもほぼ無いだろうな……」
「何でよ?」
モロダシ キス
「自分の指で相手の鼻の穴を塞ぐのは、俺の祖国じゃ他所の接吻と同じ意味を持つからな」
オマタ王子の友人である少年が、それを知らないとは思えなかった。
ファミレスの一角で上がった黄色い声も止み、女子中学生達が思い思いの感想を述べる。
「じゃあ、野原さんは話し続けようとした酢乙女先輩をキスで黙らせたってこと!?」
「なにそのイケメン力と行動力」
「どこの乙女ゲームの攻略キャラですの!?」
佐天が、食蜂が、白井が続けて言う。
「異国文化ってやつですか……」
でも意味はキスと同じと解っていても微妙にロマンチックとは遠いですね。と苦笑いだった。
残った一人、御坂は顔から湯気を出し黙っている。
おそらく自分が同じことを(日本流で)想い人からされたらと妄想しているのだろう。
「……まあ、この時私がいただいた『思い出深い物』はキスではなく、別のものなのですけれど」
あいのそのつぶやきは、はしゃいでいる後輩達に聞こえることは無かった。
彼女は目をつぶり、パーティが終わった後に交わした、北与野博士との会話を思い出していた。
「お嬢さん、ちょっと良いかな?」
「あら、何でしょうか。北与野博士」
「今回の件で、君としんちゃんの結婚はほぼ決まっただろう」
「え?そうなんですの?だとしたら嬉しいのですけれど、何故?」
「しんちゃんはああ見えて、責任感の強い子だ。そして何より優しい」
少なくとも幼馴染が意に添わぬ結婚を強いられるかも知れないのなら、それを邪魔しようと動く程度には。
そしてその幼馴染が自分のことを想い続けて婚期を逃してしまったら、その責任を感じてしまう程度には。
「ソレは……罪悪感に着けこんで結婚を迫るなんてしたくありませんわ」
何より、あいは彼には自由でいてほしいのだ。
「だろうね。君も彼に劣らぬ優しい子だ。だから何時からきっと、君の想いは彼に届く日が来るだろう」
博士の言葉は続く。
「だから彼の伴侶となるだろう君に、知って置いて欲しい」
「何を、ですか?」
「世間では、彼をシンデレラボーイ扱いするかも知れない、一般市民と大金持ちの財閥令嬢の恋だとね」
でも実際は違う。と続けた。
「彼は所謂『英雄』だ。そういう運命をたどってきたし、これからもきっとそうだろう」
やっとあいにも、北与野博士が言わんとしてる事が解った。
苛酷な運命を共にする覚悟はあるのかと問われているのだ。
返事など、とうの昔に決まっている。
「何故そこまで、貴方はしん様の事を気に掛けるのですか?」
北与野博士は、少し悲しげな表情を浮かべ、ぽつりぽつりと話しだした。
「彼には幸せになって欲しいんだよ。私は彼にとても辛く苦しい想いをさせてしまったからね……」
「酢乙女先輩!?ちゃんと聞いてます?」
佐天が呼びかける声で、あいは現実に引き戻された。
「あ、すみません。それで、私の次は誰が話すのですか?」
「それが白井さんが言うには、御坂さんに彼氏がいるらしいです」
「お姉様に彼氏だなんて、私は断じて認めませんの!!」
「だから!!アイツはそういうんじゃなくて!!」
「つまり気になってはいると」
「だからぁ!!」
「私は色々と知っているけどぉ?」
「食蜂!?あんたまさか裏切る気!?」
「何時から仲間になったんですの……」
「ちょ!?四人共、店員さんが凄い形相ですよぅ!?」
女三人寄れば姦しいとは言うが、その二倍もこの場に居るのだ。
ある程度のやかましさは必然だろう。
(こんな風に友人と騒ぐのも、あの日、しん様がパーティに来てくれたからこそ……)
あの日以来、親や家は自分の結婚については何も言わなくなった。
むしろ応援されるくらいだ。
もしも、怪物を倒したのが他ならぬ酢乙女の娘である自分でなければ、侵入者を許した失態も相まって、いよいよ嫁に行くしか無かっただろう。
その相手にしだいでは常盤台中学を中退させられ、学園都市に居られなくなっていたかも知れないのだ。
(しん様、あいはしん様からかけがえのない『自由』をいただきました。友人と遊ぶ自由や、結婚相手を、自分の意思で選んで良いという自由を)
そうして得た自由意思で、酢乙女あいは、野原しんのすけを愛する事を選んだのだ。
ロンドンのランべス区、ごくごく平凡な石造りのアパートメント。
その一室で今、魔術結社『明け色の陽射し』のマーク・スペースは自身の仕えるボスに命じられた調査の報告を終えた。
「以上が、酢乙女家のパーティで起こったことの全容になります」
「ふん、連中らしいな。結局現場に出るのは傭兵のみ、正規メンバーの情報は無しか」
「はい、その傭兵達から再度調べますか?ボス」
「いや、もう良い。『宵闇の出口』がどうなったかは大体見当がついた」
マークは驚いて顔を上げる。
「何を驚いている?恐らく『宵闇の出口』はもう存在しないだろう。事件の渦中に『野原』を巻き込むとは、つまりそう言う事だ」
アンタッチャブルファミリー
『野原一家』の都市伝説はマークも聞いた事があった。
もし実在しているのならば、この魔術結社にとって接触は避けられない相手だ。
『明け色の陽射し』とは、英雄や王に成るべくして成る者、その資質持った人間を研究する者達なのだから。
「しかし、『野原』の長子の嫁が『酢乙女』の娘か。そっちも調べてみるか」
「あのねボス『王たる資質を持った者』を調べるのが我々の仕事でして、その伴侶までは研究対象外かと」
「なあマーク、お前『酢』ってどんな意味だと思う?」
ボスからの突然の問いかけに、マークは少し考え応えた。
「ビネガーって意味です」
「0点」
ぴしゃりと頭を叩かれる。
「漢字の成り立ちだったり、今とは違う意味であったりと……専門外だが一つレクチャーしてやろう」
ボスは楽しそうに笑いながら説明しだした。
「まず『酒』には『水と似て非なる物』と言う意味がある」
「そうなんですか」
『酢』の話では無かったのだろうか。
「なんだその生返事は……まあ良い、そして肝心の『酢』だが、これは『酒と似て非なる物』となる」
「酒に似てる物?薬、、毒、ソース、血液……」
色々と考えるマークにしたり顔でボスが言う。
「『火をつけると燃える水』と言えば?」
「?そりゃ『油』でしょ……っあ!?」
『油』『乙女』……『油と乙女』……
「ボス……まさか」
ようやく正解に至ったかと、満足げにうなずきボスと呼ばれた幼女が立ち上がる。
「『油を携えし乙女』……どうだ?案外英雄の傍にいる女となるのも天命だとは思わないか?」
今回はここまでです。
次回投下は一週間後の予定
あいちゃんの過去話は今回で終了、次回投下から歴史の修正力が働いた結果の合コンが始まります
そうか、次は3巻か……
北与野博士 なんかしたっけ?
インスタントクローンかな?
正反対の自分を作る鏡かな?
両方とも紛れもない自分自身を消した訳だし。
>>438
後は、助かったし、しんのすけが勝手に持って帰って、
んでひまわりが飲んだだけだけど、ひまわりがどんどん成長(老化)していって死にかけた奴?
次のクレしん映画は爆睡ユメミーランド大突撃か。
インディアンポーカーと絡められそうだな
気になったけど、この世界でのリンディが助けを求めた日本人観光客家族って誰のことだろう? 謎の集団に巻き込まれる家族っておのずと限られてくると思うから野原一家かだと思うけど クレしん側の話が原作やアニメのどこにあるものか分からないから疑問に思った。
ひろし主人公で新しいスピンオフが始まりましたね。
妙にクセになるねアレ。
グルメ漫画で新しい食ネタくるかなー
ふと思ったが、しんのすけってテクニシャンらしいね。何がとは言わないが。
少し心配・・・。
たいへんお久しぶりです1です。これから投下します。
>>437
その前に歴史の修正力(メタ的に言えば辻褄合わせ)のための合コンがあります
>>438>>440
>>430で北与野博士が言っているのはインスタントクローンのことです。
しかしそれ以外にも様々な(悪田魔博士とかの)件に巻き込んでしまったと、しんのすけに対して北与野博士は罪悪感を持っているという設定です(このSSでは)
>>441
あの映像を観た限りだと夕陽やB級グルメみたいに『野原一家』よりも『カスカベ防衛隊』が主役のパターンみたいですね
>>442
原作にあるわけじゃないですけど野原一家です。
このSS本編とクレしん原作は十年のタイムラグがある設定なので、その間に起った事件のうちの一つという位置付けです。
>>443
新連載ってことはアレが何回か続くんですよね?全何話位なんだろうか……
>>445
おもに相手は風間君とひろしですが、なぞる(つー)・息を吹きかける(フー)・甘噛み(ハミハミ)と、修めているテクニックは多岐にわたるようですね
>>447
ご心配をおかけしました
事の始まりは、暗部組織『アイテム』の構成員『絹旗最愛』がそのセーフティハウスの一つにて
同僚の『フレンダ・セイヴェルン』と昼食を共にしている時の、何気ない会話であった。
カッコウ
「絹旗ってさ、いつも男の子みたいな服装してるよね」
フレンダがいつものように『電気ショックを与えると爆発する修正テープの様な道具』で
お気に入りのサバ缶を開けながらそう言った。
「なんですか超藪から棒に」
絹旗が返す。
確かに自分はパーカー等、どこかボーイッシュな雰囲気の有る服を好んで着ているが、
それがどうしたというのだろう?
「もっと女の子らしい格好はしないの?男装家って訳でも無いんだよね?」
「別にそういうんじゃ超ありませんが……」
否定しつつ、考える。
果たしてそう言いきれるだろうかと。
かつて、『暗闇の五月計画』と呼ばれる実験プロジェクトがあった。
学園都市第一位の超能力者の精神性や演算パターンを他者に移植することでレベル5の量産を目的としたものだ。
彼女、絹旗最愛自身もその被験者の、数少ない生き残りの一人である。
つまり、彼女の趣味嗜好がその影響下にある可能性は否定しきれない。
(たぶん第一位は男性だったはず……)
……止めよう。考えても仕方がない事だと思考を切り替えた時、フレンダが爆弾を落した。
「ああ~。じゃあやっぱり結局アレか、滝壺と一緒って訳ね」
「滝壺さん?」
「うん、あの子。いつもジャージでいるでしょ?で、私等『アイテム』は女だけのチームでしょ?」
「そうですけれど、それが?」
「結局、男共の目線が無いと、女子力なんてすぐ枯渇するって訳よ。絹旗がオシャレしないのもそう言う理由何でしょ?」
女子力と言ったか!?
今、女子力と言ったか!?
今、コイツは女子力と言ったか!?
『怪しげな商売道具』で缶を開け、中身を皿に移しもせず缶から直接先割れスプーンで口に運び、
それを口に含んだまま話掛けてきたコイツは、今、女子力と言ったか!?
「オシャレしてないンじゃないンです!!あえて超ボーイッシュにしてるンですよ!?」
遠まわしにフレンダより女子力が低いと言われた絹旗が立ち上がり反論する。
「わ!?落ち着いて!?『男の眼』が云々ってのは結局一般論ってワケよ!?」
フレンダは『絹旗は自分でも女子力の低さを気にしていて、自分は地雷を踏んでしまった』と
失礼な勘違いをしながら、何とか弁明しようと支離滅裂な事を言った。
「居ますよ!?私にも男の友達位超居ますよ!?」
そんな出鱈目なフレンダの言葉に、絹旗が生真面目に返すのだからこちらも無茶苦茶だ。
「そうなの!?じゃあ紹介してよ!!」
フレンダ・セイヴェルン。趣味・友達作りである。
それから数分後。
売り言葉に買い言葉、フレンダの提案を了解してしまった絹旗は、ある少年に電話をかけていた。
「で、オラに電話してきた。と……」
「超申し訳ないです。なんと言うか、私もつい少しだけ超見栄を張ってしまって」
「OK オラとあと他に、男の子二人連れてそのフレンダちゃんって子に会えばいいんだね?その二人も元からさいあいちゃんの友達のふりして」
「超迷惑かけます……」
「気にしないで、でも……一つ条件出しても良いかな?」
「なんですか?」
「そっちもさいあいちゃんとフレンダちゃんの他に、もう一人女子を連れてきてくれない?」
今夜はここまでです。続き明日中にはたぶん
今回から『ラノベらしさ』を意識して書いてみました。
絹旗ちゃんが自分は一通さんの影響で女らしい服を着ないのではないかと悩んでいる頃
当の本人はユニセクシャル物を好んで着ているという茶番
乙
3対3…あいちゃんに知られたらヤバそうですな
浜面にも春がくるのか?
おつ。
浜面はもげろ(未来観測)
「どうだった?」
絹旗がしんのすけへの電話を切って程なくしてフレンダが顔を出した。
相手の都合を聞くから待っていろと、彼女を自室に待たせていたのだが待ちきれなかったらしい。
「ええ、今夜第四学区のお店で待ち合わせです」
「えっひょっとして絹旗の友達ってセレブ?」
第四学区と言えば『その一学区だけで世界中の料理が食べられる』と言われるほどに飲食店が多いことで有名であり、
その中には当然高級店や、さらには統括理事会メンバー行きつけの店すらあるとも噂されるほどだ。
勿論大衆向けの店もまた多いのだが、フレンダもつい期待してしまう。
「どうなんでしょうね?あの人とは映画仲間なんですが、そう言えばプライベートな事は超話しませんね。お互いに」
「そうなの?」
「私も超暗部の人間ですから。口をすべらせない程度の付き合いが良いんです……ところで」
「何?」
「紹介するにあたって条件と言うか、向こうが提案をしてきまして。具体的には私とフレンダの他に、もう一人女子を連れてきて欲しいそうです」
「わ!合コンみたいで面白そう。どうせならあと一人と言わず二人!!アイテム皆で行こうよ」
それは『ああ!?合コンだぁ!?暗部が顔広くしてどうすんだよ!!』と自分達のリーダーが怒りそうな提案だなぁと絹旗は思った。
むこう ピン
「いえ、男側も三人ですし。それに今夜麦野には単独の仕事が入ってたはずですよ?」
フレンダだけが叱られるのならばまだしも、今回は確実に自分も巻き込まれるだろう。
ならば最初から合コンに誘わない、もっと言えば合コンの存在すら知らせない方が良い。
そう考え、絹旗は適当にでっち上げたリーダーの予定をフレンダに吹き込んだ。
「そっかあ、じゃあもう一人は誰にしようか?」
良し、信じたようだ。と内心ほくそ笑む。
「普通に滝壺さんで超良いじゃないですか」
友人の多いフレンダならば、今夜都合のつく女子の一人位すぐによべるのかもしれないが、
それは絹旗が気まずい。
「そうだね。じゃあ私、滝壺に参加できるか聞いてくるね」
「らっしゃーい」
第四学区、焼き鳥屋『デスペラード』に暗部組織『アイテム』からリーダー麦野沈利を除いた三人が来店し、マスターの声が上がる。
「おお!さいあいちゃん、こっちこっち」
店内に手招きしている少年を見つけ、三人はそちらに向かう。
「しんのすけ、今日は超よろしくお願いしますね」
挨拶をして、席につく。
「お~いえ~。じゃ先ずはお互いの自己紹介から始めようか」
(しんのすけ超ナイスです!!)
これでしんのすけ以外の男二人の名前が分かる。
滝壺の正面の位置に居る馬面の男は見たことがある様な気もするが、フレンダの向かいのバンダナの男は確実に初対面だ。
「じゃあ私からね!!フレンダ・セイヴェルン。好物はサバ缶で趣味は友達作りって訳よ」
「……滝壺理后」
「結局それだけ!?」
一呼吸間をあけておいて名前のみの自己紹介にフレンダがツッコミを入れる。
「では流れで私も、絹旗最愛。趣味は映画を超みることと、自分で実際にみた映画のチケットのコレクションです」
しんのすけが二人にどこまで事情を話しているかは判らない。
万一を考え絹旗も自己紹介しておく。
「アア、知ってる」
「お前は自己紹介要らないだろ……まあ、趣味は初めて聞いたけどな」
どうやらしんのすけはしっかりと話を通してくれたようだ。
そしてバンダナも良い仕事をしてくれた。『友人だがそこまで親しかったわけじゃない』アピール。
これでボロがさらに出にくくなる。
「だから流れで、って言ったじゃないですか」
「次はオラ達の番ね。オラは野原しんのすけ15歳。納豆にはネギとタレのみ派。好きなものはチョコビとプリンです」
「俺は浜面仕上。趣味はバイクかな」
「ハンゾーだ。ま、好きに呼んでくれ」
男女六名が自己紹介を終え、いよいよ合コンが始まった。
今夜はここまでです
というわけで合コンの参加メンバーはこの六人です
1には見える……後日しんのすけが合コンの幹事をやったと聞いて上条さんが「なぜ俺を呼ばなかった!?」的な事をいって同居人二人からボコられてる姿が
いや、面白いわ、数年ぶりに見に来たけど
続きを楽しみにしつつまた数年後に拝見させてもらいます
まだかの…
遅くなってすみません。お久しぶりです1です。これから投下します。
>>466
そうですね。1の更新速度だとそれくらいがいいのかもしれませんね
……かまちー細胞ってどうやったら手に入るんだろう?
>>467-469
お待たせして申し訳ありません。
父親が骨折したり1の親不知が痛みだしたり風邪ひいたりとかしてました
適当に飲み物や食べ物を全員分頼み終えると、先ずはしんのすけが話題を振った。
「ところでフレンダちゃんって妹いる?」
「え?なんで?」
「いやね、よく似た北欧系の金髪碧眼でセイヴェルンって同じ名前のちっちゃな子を知ってるからさぁ」
しんのすけの言葉を受けて浜面も続く。
「ああ、そう言えば居たな。フレメアだっけ?苗字だけじゃなくて名前も似てるな」
それにフレンダは少々驚きながら、正直に答える。
「あ、うん。フレメアなら私の妹で合ってるって訳よ」
「ああやっぱり」
しんのすけが納得顔でうなずく。
「でもなんであの子と知り合いなの?男子高校生が女子小学生と知り合うってどんな状況?」
妹の交友関係を少し心配する姉の問いには、ハンゾーが答えた。
「フレメアの通ってる学校に、ボウガン持った男が侵入しようとしてさ。ソイツをうちのリーダーが取り押さえたのさ」
「『うちの』って?」
絹旗がしんのすけに訊く。
「自警団だゾ。当時オラはまだ参加してなかったけどね。一月頃だっけ?」
「ああ。で、フレメアが大将、駒場利徳っつーんだけど……大将に懐いちまってさ」
ハンゾーの説明に浜面が続けた。
「おかげで俺達もチョイチョイその学校にボランティアとしていくことになってな。特にしんのすけがうちに加わった6月からは」
「へえ、意外としんのすけは超新参者なんですね」
絹旗は驚く、ハンゾーも浜面も、二人共しんのすけとは竹馬の友と言われても信じたであろう、それほど三人の仲は良く思えたのだから。
しかし考えてみれば絹旗自身もまた、しんのすけと知り合って長くはない。
(しんのすけはそういう能力が超高いんでしょうか?)
人の内側に入り込んでいると言おうか、気づかぬうちに距離が近くなっていると言おうか。
似たような事が出来る精神感応系能力者なら他にもいるだろうが、おそらくはこの街の能力開発と、彼のソレは関係ないだろう。
(この店に来る前、フレンダにも言われましたけれど、私はしんのすけについて超何も知りません……)
例えばどんな能力の、どの程度のレベルなのか。
例えばどこの学校で、バイトや部活等しているのか。
ともすれば自分と同じく暗部の人間の可能性もあり得る。
(今日は超いい機会です)
少しだけプライベートなことにも踏み込んでみよう。
ジュースの入ったコップを口に傾け、そんなことを考える。
コップの中身が酒ならばもう少しさまになっただろうが、あいにくとここの店主はそういうことには厳しいらしい。
(暗部に身を置く女の前に現れた、もしかしたら商売敵の同業者かも知れない謎の男……超燃える展開ですね!!)
スパイ映画のような話に内心はしゃいでいる絹旗だが、別にしんのすけは今までも自分の私生活について隠しているつもりは無かった。
カラ
「……と、もう空ですね」
いつの間にかジュースを飲み干してしまったようだ。
「あ、じゃあ俺おかわり貰ってくる。皆さっきと同じので良いか?」
浜面が立ち上がり言った。
カウンター席ではなく、店員がマスター独人なのだから、おかわりを注文して待っているより、こちらから貰いに行った方が早いだろう。
「オラはサイダーでおねがい」
「私は飲み物はまだ残ってるからいいって訳よ。でもサバの味噌煮が煮食べたいな」
しんのすけとフレンダが答える。
「俺もまだいい。絹旗は?」
「え?あ、はい。超同じので。滝壺さんは?」
急にハンゾーから呼びかけられ、どもりながらも絹旗も答える
バナナ
「甘蕉茶」
「了解。じゃ行ってくるわ」
全員の注文を聞き浜面が席をたつ。
「……ム」
すると今まで無表情だった滝壺がわずかに顔をしかめた。
「滝壺、どうかしたの?」
それに気づいたフレンダが問いかける。
「信号が遠ざかった」
「信号って?」
滝壺の回答に対して、しんのすけは補足説明を絹旗に求めた。
「えっと……滝壺さんは『AIM干渉』系の能力なんですが」
その言葉だけで何かを察したらしく、しんのすけはうなずく。
「おお、じゃあ日光浴みたいに?」
「うん、私の趣味」
滝壺が肯定する。
つまり彼女は、能力開発を受けた者なら誰でも発している波長を受信でき、そして浜面のそれを気に入ったようだ。
「おまたせー」
丁度タイミング良く、浜面が帰ってきた。
「おまたせー」
丁度タイミング良く、浜面が帰ってきた。
「えー、しんのすけがサイダー、絹旗がウーロン茶……」
各々の前にコップを置いて行く浜面。
「でセイヴェルンがサバの味噌煮な」
「ありがと。あと呼び方はフレンダで良いって訳よ」
「了解、んで滝壺が甘蕉茶だったな」
フレンダの前に味噌煮の盛られた小皿を置き、滝壺の前にコップ置こうと伸ばした浜面の手の袖を滝壺がキュッとつまんだ。
「おおぅ、りこうちゃん大胆」
しんのすけのはやしたてる声も届かない様子で、滝壺が浜面に言った。
「やっぱり、あなたの信号だった」
「え!?な、何かな滝壺……さん?」
鼻の下を長くしつつも、それ以上に困惑した様子の浜面に、ハンゾーが助け船をだしてやる。
「あー、なんと言うか、その嬢ちゃんはお前を気に入ったらしいんだ」
「マジで!?えっ!?連絡先の交換とかしといた方が良いのか!?」
(うわ、童貞臭が超します)
「あ、じゃあ結局私達のも交換しちゃおうよ」
絹旗は浜面の台詞にやや引いていたが、フレンダの主導でスムーズに事は進んだ。
その後は主にフレンダとしんのすけが浜面と滝壺をはやしたてたりけしかけたりしながら、時間は過ぎていった。
そしてアイテムのセーフハウスへと帰る途中。
(ハッ!?結局しんのすけのプライベートについて、超何も訊けてません!!)
「どうしたの絹旗、なんか私のお株を取られた気がするんだけど」
また後日、この日の事が某くノ一と某令嬢にばれて恐ろしい目に遭ったしんのすけとハンゾーの二人が、浜面から彼女が出来たと報告を受けるのは、そう遠くない話。
今夜はここまでです
合コン編・完
フレンダの台詞「……って訳よ」はいいけど「結局」が上手く使えない
次回(多分一週間後くらい)からは妹達編なので新スレ立てます
なんかとある科学に魂の生成とか出てきたんだが
やり方が回りくどい上にロボとーちゃんで頑馬博士が通った道だけど
チッ、リア充か祝ってやる
この1は忙しいから予告1週間が1ヶ月2ヶ月はよくあるが楽しみに待ってる
映画も公開したし、新たなネタが降りてきたのだろうか
>>498
だとすると毎年新たなネタが降りてくるからさっさと進めないとそのうち設定おかしくなるぞ
お久しぶりです1です。次スレ建てました。
先ずはこちらにエピローグ兼プロローグを投下します。
>>493-494
ただ、魂を科学的に解析、説明可能なエネルギーの一種としてしまうと、そこから作れる魔力も一通さんが反射できてしまう事になっちゃうので
魂は非科学的な物しとかないと設定的にまずいと思うんですが、どうなるんでしょうね?(一通さんが魔術も扱えるようになる可能性が微レ存?)
>>495
リア充なのは1じゃなくて1の周りの人間です(GWに従姉の結婚式がありました)
>>497
ありがとうございます、そして毎度エタ詐欺の1で本当にごめんなさい
>>498
映画見てきました。どうやらこのSSのみさえは二重聖人になりそうです
>>499-500
逆に、ここの設定どうしよう?と独自解釈を悩んでた所に公式が正解を教えてくれる事もあります
設定に矛盾がでたら、なんとか辻褄合わせをがんばりたいと思います
舞台は再び昨年、パーティ終了後の酢乙女邸へと戻り、SMLのエージェント二人の会話を映す。
「それで、連中の『目的』ってなんだったんですか?」
「うん、魔術は専門外だからよくわかんないけど……『宵闇の出口』は、『聖人』ってのを欲していたらしい」
「『聖人』、ですか?」
ソレはどういうモノなのか、タチバナはインテリに説明を求めた。
「伝説や神話の、神様とか英雄なんかと類似性……今回のケースなら共通点を持つことで、それらの能力が使えるようになった人間、いわゆる『超人』のことらしい」
「共通点?」
「『国のトップ』を狙っていただろ?」
「ええ、だから私達SMLが動いたわけですが」
「洗脳なり脅迫なりで、命令を出させるつもりだったらしい。『国中の二歳児以下の子供を殺せ』ってね」
「ハア!?なんですかソレ!?そんなんで超人が生まれるとでも!?」
「少なくとも連中の雇い主、『宵闇の出口』は本気でそう信じているらしい」
「『生き残った一人は水の上を歩けたり病気を治せるようになる』って!?そんなバカな!!」
「どんだけ馬鹿げていても、それが事実だ。問題は彼等が妄想を行動に移した事だ」
「……」
「僕らは何も知らない。『彼等』の考え方、在り方、行動理由」
「このままではSMLは常に後手ですね……」
「そうだ。そして何よりも問題なのは『彼等』は『宵闇の出口』だけじゃないって事だ」
私達
「では上は現場にどうしろと?既に組織本部に報告はしたのでしょう」
「ああ、今回捕らえた傭兵たちには司法取引が持ちかけられることになった」
オカルトサイド おもて
『魔術側』、その存在を知る者達がそう呼ぶ世界。『科学側』の存在であったSMLも
『世界の平和を守る秘密組織』という性質上、いつまでも無関係ではいられない。
オモテ ウラ
かつて定められた科学と魔術の不文律『条約』もまた、機能し続けることは不可能。
今は未だ、誰も知ること無く、しかし確かにその矛盾や歪みといった『綻び』が
世界各地に産まれ、積み重なっていった。
そして、そんな存在がまた一つ……
デリート
「ここは?私は確か消去されたはずだが……」
その生命体は戸惑っていた。
突如、見知らぬ場所に産まれ、いや復活したのだから。
「ふむ、思いのほか時間がかかってしまったが、やっと復元に成功したか」
そしてその存在を確認し、つぶやく声があった……
学園都市第七学区『窓のないビル』その一室で、巨大なビーカーのような装置の中を逆さまに浮かぶ人間が、その顔に笑みを浮かべていた。
To be continued
「目の前に『殺して良い理由』が百や千と並んでたところで!!『死なせて良い理由』なんて何処をどう探したって一つも見つから無いでしょうが!?」
―――学園都市第8位 野原しんのすけ
「相手が各上だからって理由で退くほど、俺の根性はヤワじゃねえんだよ!!」
―――学園都市第7位 削板軍覇
「二度と私の前で、『クローンだから死んでもいい』なんて言うな!!」
―――学園都市第5位 食蜂操祈
「コレは一体どう言う事かにゃーん?」
―――学園都市第4位 麦野沈理
「あんた達、何者なの?」
―――学園都市第3位 御坂美琴
「聞いて無いのか?今回の仕事はオレら『スクール』とお前ら『アイテム』で協力して当たれだとよ」
―――学園都市第2位 垣根帝督
「『最強』の更に先……オレは『無敵』に成りてェンだヨ」
アクセラレータ
―――学園都市第1位『一方通行』
これは……
レベル5
7人もの『超能力者』が関わる物語……
しかし物語の鍵と成る者は、その誰でも無い。
「待たせたな、とミサカはドヤ顔で決め台詞を放ちます」
コード
―――検体名は有れど、自身の名前を持たぬ少女
レディオノイズ
『欠陥電気』
「懐かしい名だ。ジャン・ピエールよりは聞こえは良い」
ツリーダイアグラム
―――『樹形図の設計者』の住人
????????
ふたつ イノチ
二種類の『創られた生命』が交差する時、物語は嵐を呼ぶ
とある魔術と科学の法則無視 第三章
野原しんのすけ(15)「歯を食いしばれサイジャク、オラのサイキョウはちょっと響くゾ」
野原しんのすけ(15)「歯を食いしばれサイジャク、オラのサイキョウはちょっと響くゾ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462982618/)
こっちはここまで。
三日ほどしたら依頼だしますね
このSSまとめへのコメント
早くしろよ
早くしろよ
あくしてねん★
面白いです。
頑張って続きをお願いします!
月初めからお疲れ様っす!
ここが今の生きがい…
見てるよ!待ってるよ!頑張って!
面白いです。
頑張って続きをお願いします!