P「安価でアイドルに復讐する。7スレ目」【善人か悪人か】 (1000)

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モバマスのPがアイドルに復讐する話の6スレ目です。女の子がひどい目に遭うのは堪えられない!、復讐はなにも生まない!という方はそっ閉じ推奨。
また、ホラーゲーネタや系列会社キャラも出てくる場合がございます。ご了承ください


終わったアイドル(順不同)
・復讐
日野茜
渋谷凛
高垣楓
橘ありす
荒木比奈
佐城雪美
塩見周子
向井拓海
佐久間まゆ(ジョイン)
城ヶ崎美嘉
城ヶ崎莉嘉
諸星きらり
ヘレン
櫻井桃華
棟方愛海
片桐早苗
水本ゆかり
八神マキノ
鷹富士茄子
高橋礼子
及川雫
柊志乃
姫川友紀
メアリー・コクラン
クラリス(この人から始めます)


・復讐(一時中断)
二宮飛鳥

・復讐(番外)
qp(棟方P)

・救済
星輝子
双葉杏
白坂小梅
白菊ほたる
三船美優
高森藍子
大原みちる
前川みく
神崎蘭子
輿水幸子
神谷奈緒
小日向美穂


・救済(断片的)
北条加蓮


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杏「…………」
小梅「……えへ」
P「あつ……」

まゆ「小梅ちゃん、楽しい?」

杏「…………」
小梅「わ、わりと……」
P「…………」

まゆ「良かったらそこ変わってくれるかしら?」


杏「そんなことしたら溶ける」
小梅「あ……あと五分……」
P「お願いってこれだったのか」

まゆ「五分後が楽しみ♪」

杏「杏は降りるぞー。離脱っ!」

小梅「あっ……」
P「退いてもらえると助かる」

杏「あー……暑かった」

小梅「起こして……ごめんね」
P「起こして悪かった」

杏「ほんとだよ。杏にこれからなにすればいいかわかってるよね?」

まゆ「はい杏ちゃん飴」

杏「フッフッフッ、わかれば良いんだよ、わかれば」

まゆ「でも食べるのは明日」

杏「お預けだなんてひどいやい」

小梅「こっち……きて」
P「暑い」

まゆ「はぁい♪ でも重なるのは小梅ちゃん潰れちゃうし、まゆもPさんに直に触りたいの。だからPさんをサンドイッチしない?」

小梅「サンドイッチ?」
P「痛いのはやめてくれよ」

杏「…………」

まゆ「あ、変な意味じゃないわよ?」

杏「杏が空気読んだのに台無しだよ」

まゆ「こうやって横から……えいっ」
P「暑い」
小梅「おぉ……」

まゆ「こうすれば小梅ちゃんもまゆもPさんにくっつけるわ。どうかしら?」
P「暑い」
小梅「ナイス……アイデア」

杏「暑そ」

まゆ「さらに。こうやって首筋に顔を埋めれば……ンー」
P「くすぐったい」
小梅「わ、私も……んー」

杏「ふあぁぁ……あふ。寝よ──」

みちる「朝! 突撃っ」

みく「隣のっ」

蘭子「朝の糧!」

みく「朝もはよからごくろうさんにゃ蘭子チャン」

蘭子「下僕に夜の悦楽を与えるも主の義務。我は当然のことをしたまでだ。指揮は高めておかねばな」

みちる「そんなこと言って、昨日はアニメ観てたくせに。おいしそうなアニメでしたじゅるり」

みく「たしかにおいしそうだったにゃ」

蘭子「しかし! 長き眠りから覚めるは今! 叩けよ、さらば開かれん!」

みく「おっはよーにゃー!」

まゆ「スゥスゥ……」
P「プー……」
小梅「ン……ン、クスゥ」

杏「あっつ……」

みく「にゃにゃっ、杏チャンが起きてるにゃ!」

杏「私が起きてたらあっづ……いけないの?」

みく「お昼くらいまで寝てるイメージあったから」

杏「それは否定しないけど…………この暑さだから……ねぇ……ぁっず」

みく「朝ゴハンはまだかー。早すぎたにゃ」

みちる「フゴ、フゴフゴフフッゴ」

みく「冷蔵庫漁ったのかにゃ。また怒られるよ?」

みちる「フゴゴ、フゴゴフゴ」

蘭子「我に秘策あり!と言っておる」

杏「どんな秘策か知らないけど、杏が言ったら一発だよね?」

みちる「フゴッゴォォォ!」

杏「飴で手を打とうじゃないか……ふふふ」

みちる「Pさんのロ、ロリポップで……!」

杏「だが断る」

みちる「なに!?」

杏「この双葉杏の好きなことのひとつは、自信満々のやつにNO!といってやることだっ」

みく「ロリポップってなんのことにゃ?」

蘭子「ペ、ペロペロキャンディ……」

みく「ペロペロキャンディのことだったのにゃ。子供がよくなめなめしてるアレのことか。でもなんで蘭子チャンは顔を赤らめてるにゃ?」

杏「そういえばゲームしてるとき近くにいたね」

蘭子「あれしきの事、我にとっては児戯に等しい! 侮るでない!」

みく「うるさくするとPチャン起きちゃうにゃ。疲れた顔して寝てるからそっとしておいてあげるにゃ。猫も寝てるところを起こすとすんごい不機嫌になるにゃ」

蘭子「即時撤退っ」

みちる「面舵イッパーイ!」

みく「取り舵イッパーイ」

蘭子「ッ!?」

杏「船体が裂けちゃうぅぅぅ……! 杏も食堂いこっと」

まゆ「……行きましたね」
P「……そうだな」
小梅「グゥ、スゥ……」

まゆ「もう少し寝ます?」
P「まだ眠いからな。少なくとも微睡んでいたい」
小梅「ンチュ、アッ……フスゥ」

まゆ「そうですね」
P「…………」
小梅「ンッ、フゥ……」

まゆ「こうして小梅ちゃんを見ていると思い出しますね……」
P「……そうだな。プロフィールのお復習はまたあとでしよう」
小梅「スゥスゥ──」

みく「え"っ、Pチャンとお風呂入ったことあるにゃ!?」

みちる「話しませんでしたっけ?」

みく「知らないにゃ。これはスクープにゃ!」

みちる「そんなスクープでもないと思うけど……ねぇ?」

杏「杏を見ないでくれるとうれしいかなーって」

奈緒「やっぱりそういうことしなきゃダメなんか……ウゥ」

みく「杏チャンも!?」

杏「杏なんのことだか知らないお」

奈緒「そこのところどうなんだ美優さん! Pさんはそういうのが好きなんか!? しなきゃいけないのか?」

美優「私に聞かれても……私はPさんとはそういうことしたことないし、その……ね?」

みく「なんだか危ない発言が聞こえたにゃ」

杏「……でもPさんって"そういうこと"気にしないよね」

みく「投げやり?」

蘭子「度量が大きい」

杏「そうなのかな」

みく「うーん……」

美優「唸ってどうしたの?」

みく「今考えてたんだけどにゃ、やっぱり口にしてみるのが一番かなと思って」

美優「何の事?」

みく「誰が一番危ないのかにゃと思って。ま、実際に口に出すにゃ。えー、まずは……みくとお風呂」

みちる「普通」

みく「自分でもそう思うにゃ」

杏「でも猫耳としっぽ着けてたら?」

みちる「プレイになる。不思議!」

みく「ならないにゃ! 次いくにゃ。みちるチャンとお風呂」

杏「頭朗らかそうだし普通じゃない?」

みちる「そう、ホガラカなんです」


みく「それ誉められてないからにゃ? 次いくにゃ。蘭子チャンとお風呂」

杏「よその人が見たら……どうなんだろ」

みちる「どうなるんでしょう」

みく「どうなるのかにゃあ」

蘭子「何処を見ている……目玉を抉り出すぞ!」

みちる「目が! 目がぁぁぁ!」

みく「それどころの問題じゃないにゃ。次。杏チャンとお風呂」

みちる「誘拐?」

杏「一人で入れないからしかたないね」

みく「え、そうなの?」

杏「うん」

みく「なんか悪いこと聞いちゃったにゃ。次いくにゃ、次。ほたるチャンとお風呂」

みちる「借金かな?」

蘭子「悪徳業者に手を借りたばかりに……! 」

みく「一気に犯罪臭くなったにゃ。ここは景気付けに幸子チャンいくにゃ。幸子チャンとお風呂」

みちる「番組の企画ですか?」

杏「たちの悪いドッキリ」

蘭子「悪手」

みく「そうとしか思えなくなってきたにゃ。ちゅぎ、次」

みちる「噛んじゃいましたね」

みく「かんでないにゃ。次は……次は……うん」

みちる「次は?」

みく「み、美優さんとお風呂……」

みちる「お店」

杏「お店」

蘭子「慰安風呂……」

美優「えっ、私ってそんなイメージなの?」

みく「ろくでもない男に引っ掛かりそうにゃ」

美優「たしかに乱暴な人もいたけどそこまでの人は……」

みく「今ものすごくヤッバーイ発言を聞いたような気がするけど、気がするで納めとくにゃ。次は……」

P「おはよう」

小梅「おは……よう」

みく「おっはようにゃPチャン」

美優「あ、お邪魔してます」

P「おはようございます」

みちる「来たなっ、悪徳極悪高利貸しめ!」

P「何の話?」

杏「Pさんの悪口いってたよみちるちゃん」

みちる「あっ、仲間を売ったな!」

杏「ふはははは、最初から仲間などと思ってないわぁ!」

みちる「くっ、この……!」

蘭子「閃光の寸劇」

みく「なんだか極悪人って聞くと壁ドンも別の意味に聞こえるにゃ」

杏「隣の声で不機嫌なのかな?」

みちる「カツアゲもしくは……」

P「そのヨーグルトはもしかして」

美優「あ、朝食代わりにもらいました。勝手にもらってすみません」

P「いいですよ。あとで補充しておけば」

みちる「っ!」

P「なにかを閃いた顔してるけど君の場合は話が違うからね」

みちる「ブーブーフゴフゴー」

P「さて、遅めの朝食にしよう──」

P「朝食も食べ終わった。プロフィールのお復習をしよう」

まゆ「あっ、まゆと二人きりになったのはそういうことですか。てっきり食欲を満たしたから次は」


P「名字がわからないキュートな年齢20歳。身長166cm、体重45kg。BMIは16.33。スリーサイズは80・55・82」

まゆ「クラレンスとか?」

P「それじゃどこかの映画だよ。あまりにも謎過ぎて、クラリスはシスターとしての名前で実は孤児だ、なんて噂もファンの間で囁かれてる。誕生日は8月26日の乙女座でAB型」

まゆ「シンデレラプロダクションって乙女座多いですよね」

P「人数が人数だからね。利き手は右。兵庫出身。趣味はボランティア」

まゆ「ボランティア?」

P「その手つきやめて」

まゆ「あ、シャレになりませんか?」

P「あまりいい冗談とは言えない」

まゆ「昨日、アンチスレ見てましたけどなにか書いてありました?」

P「そんなに数は多くないけどあったことはあった」

まゆ「あの人、聖母感すごいですからね。悪い噂も立ちにくいでしょう」

P「それでも立つ。なにせ協会関係だから宗教絡みでちょっとな。書いてあった噂はそれとは関係ないが」

まゆ「何と書いてあったんですか?」

P「>>21>>22


>>21
>>22
クラリスに対する悪口やアンチレスをお願いします

誰彼構わず宗教の勧誘をしまくってるらしいな

糸目がこわい

P「誰彼構わず宗教の勧誘をしてるらしい」

まゆ「らしい?」

P「宗教じゃなくて教会への勧誘ならよくしてる」

まゆ「悩みがあったら協会へ、みたいな?」

P「それだとお悩み相談室だな」

まゆ「他には?」

P「糸目が怖い」

まゆ「そういえば細目ですね。あれが怖い?」

P「子供からそういった意見があがってる」

まゆ「でも見たのはアンチレスですよね?」

P「今やこういうところを利用するのも大人だけじゃないからね」

まゆ「なるほどぉ。たしかに子どもからしたら怖いかもしれませんね」

P「しかも身長が高めだからね。上からこう、な」

まゆ「あれで常に微笑んでますものね」

P「さて、どうするか」

まゆ「お尻叩きます?」

P「なんで?」

まゆ「競馬用のムチで♪」

P「何を用いて尻叩くじゃなくて、何を理由に尻を叩くのかって意味」

まゆ「んー、悪いことをしたらお尻叩きますよね? それです」

P「暴力沙汰はちょっとな。神の名の下に受け入れそうだし」

まゆ「それなら罪のゆるしのためにPさんの精霊を注ぎ込みます? まゆは嫌ですけど口ならノーカンです」

P「それだと意味なくないか? オレも嫌だけどね」

まゆ「それならぁ……」

P「待てよ。罪の赦し……使えるかもしれないな」

まゆ「…………」

P「どうした?」

まゆ「……初めてはまゆにくれるって約束ですよね?」

P「そっちはしない」

まゆ「んもう……」

P「早速準備に取りかかろう」

まゆ「まゆはなにすればいいですか?」

P「服を調達してくれると助かる」

まゆ「お洋服を?」

P「後の用意はまた頼む」

まゆ「はい。それでどんな服を用意すれば?」

P「これだ」

まゆ「あ、それなら──」

クラリス「奉仕の心が大切ですわ……」

クラリスP「いきなりどうしたんですか?」

クラリス「自戒ですわ」

クラリスP「自戒ですか……オレもたまには悔い改めに神社にでもいくかな」

クラリス「それは私への当て付けですか?」

クラリスP「えっ、あっ! と、とんでもない……! ただ、お祈りにいくなら神社やお寺かなって!」

クラリス「フフッ、冗談ですわ」

クラリスP「も、もう……止してくださいよ。それに懺悔ならクラリスさん以外にはしませんよ」

クラリス「それはそれで複雑なものがありますわ。それでは今日もファンの方々に安らぎを」

クラリスP「えぇ、届けましょう」

P「慈愛の聖母ねぇ……」

小梅「ん?」

奈緒「ダジャレかよ。というかなんで向こうの会話聞こえるんだ?」

P「まゆのおかげだ」

奈緒「……少し怖いな」

ほたる「あの……私はここにいていいのでしょうか? カ、カップが割れたり、頭から水被ったりしないでしょうか……」

P「」




P「ないように気を付けよう」

奈緒「だからさっきからキョロキョロしてたのか……」

ほたる「じゅ、準備は万端ですから心配しないでください……ほら着替えもこんなに」

小梅「それに水が……こぼれたら……?」

ほたる「ヒィィッ! そ、そうなったら全裸に……!」

奈緒「さすがにそこまではないでしょ……」

ほたる「私の運の悪さをなめてはいけません。今日だってここに来る前に自販機で飲み物買おうとしたら、百円玉がなくてしかたなく千円札だしたら、風に飛ばされた上に水溜まりに落ちてグショグショになって使えなくなりました……やっとのことで買ったら違う飲み物が出てきてしかも温いんです……」

奈緒「あたしが悪かった……!」

P「そんなに喉乾いてたのか」

ほたる「少し体調不良で……今月はちょっとその……」

P「全部言わなくて大丈夫。わかってるから」

奈緒「?」

ほたる「あはは……」

奈緒「にしてもさ、本当にこんな服着なきゃダメなの?」

P「着てくれると助かる。選んだけどやっぱりしっくり来ないってなら他の買うよ」

奈緒「そういうわけじゃないけど……なんていうかあたしじゃなくてその……」

P「ほたるの事?」

ほたる「あ、やっぱり私ですか? そうですよね私と一緒なんてイヤですよね……」

奈緒「いや、そ、そうじゃなくて……!」

ほたる「私はお家で小日向さんと一緒に楽しんでますので……はい」

奈緒「な、なんだかあたしが悪いみたいになってるっぽいぞ!」

小梅「それにしても……Pさんも…………悪い人、だね」

P「そうかもね。さて、夕飯の材料買って戻ろうか」

小梅「今日は……らしくオムライス」

奈緒「やっぱ作れなきゃダメ……なのか?」

P「駄目じゃないよ。それは日本的サブカルなイメージだから」

ほたる「た、卵割ったらどうしよう……」

小梅「お尻……ペンペン?」

ほたる「アァ……」

奈緒「卵はあたしが持つ──」

みちる「モムマイフフゴフゴ」

蘭子「黄金の衣に包まれし紅き種子!」

みく「おかわりはまだまだあるにゃー」

みちる「フゴゴゴ」

みく「みちるチャン以外」

みちる「ブフゴッ!」

みく「鼻からゴハン出さないで! 汚ないにゃ!」

まゆ「お鼻チーンして」

みちる「ヂーン!」

ほたる「すいませんすいません……! 破いちゃってすみません!」

P「いいよ」

みちる「フーンシュポッ……おぉー鼻からお米」

P「ああいうのに比べたらね」

美穂「おいしいよ?」

P「腰はどう?」

美穂「少し痛いですが何とかなってますっ……!」

P「少し前に屈んで」

美穂「す、すみません」

P「…………」

奈緒「変な顔してどうしたの?」

P「生まれつきこの顔」

奈緒「あ、いやそういうことじゃなくて……いいや」

小梅「見て……ドクロ……かわいい」

輝子「血みどろパーリィーィィィィイェッハー!」


幸子「この色と艶と形。ボク完璧! ふっふーん」


杏「食べるのめんどーい」

まゆ「はい、杏ちゃんアーン」

杏「あーん……ンムンムンム」

まゆ「噛むのは?」

杏「コクン…………さすがにそれは自分でやるよ」

P「三船さんと高森さんは下か。おかわりはいるかな」

ほたる「すみません……私が転けたばかりに……」

奈緒「油断したあたしが悪かった。だからほたるちゃんは悪くない」

ほたる「わ、悪いのは私です……! だから、だからその……あのォ……」

小梅「モジモジしてる……」

P「こうしてみんなで食べてる。それでいいじゃないか」

ほたる「そ、そうですね……すみません」

みちる「あたし幸せ! ありがとほたるちゃん」

P「それお代わり?」

みちる「フゴッ……!?」

P「あとでアソコな」

みちる「フゴォォ……」

美穂「ア、アソコ……」

P「食べ終わって片付けしたらお風呂だね。上と下で別れよう──」

クラリス「…………」

クラリスP「どうしたんですか?」

クラリス「少し考え事をしていて……」

クラリスP「考え事?」

クラリス「以前私が、お仕事は選んでもいいのではないでしょうかと言ったのを覚えていらっしゃいますか?」

クラリスP「えぇ、はっきりと。あれで目が覚めました。それが?」

クラリス「なぜ皆様はお仕事を選ばないのかと思いまして」

クラリスP「可哀想なことですが、その地位にいないのでしょう」

クラリス「神の名の下に人は平等なのに……嘆かわしいことです」

クラリスP「嘆かわしいですね」

クラリス「私のところに懺悔に来る方々の大半の悩みがそれですので、やや疑問に思ってて」

クラリスP「それオレに話していいんですか?」

クラリス「貴方様だからこそ話すのです。ダメでしょうか?」

クラリスP「小首かしげられても……誰に話すわけでもないですから安心してください」

クラリス「ふふ♪」

クラリスP「そうそう、明日からしばらく仕事が入った」

クラリス「どの様な?」

クラリスP「数日なんだけどな、ほら前にもしたことがある種類の仕事でな、はっきりいって受けたくなかったから最初は断ったんだが、なんだかスポンサーの関係?ってやつで受けざるを得なくてさ……」

クラリス「なるほど」

クラリスP「スポンサーよりアイドルの事考えろっての。なぁ? これだから現場知らないお勉強ができる高学歴さんたちは困る」

クラリス「悪くいってはいけません。 彼らは彼らなりに大変なのでしょう。それでそのお仕事とは?」

クラリスP「その仕事ってのは──」

クラリス「大きな門。手入れの行き届いた庭と噴水。そして贅沢の限りを尽くしたような家」

クラリス「この家にはどの様な方が住んでるのでしょうか」

クラリス「私も道が違えばこういった家に住めたのでしょうか……考えても仕方ないですね」

クラリス「ベルは……これですね」

小梅「なに……してるの?」

クラリス「あら、小梅さん。あなたこそここで何を?」

小梅「えっと、働いてる……?」

クラリス「アイドルのお仕事で?」

小梅「それとは……別」

クラリス「別ですか」

小梅「あ、ほたるちゃん……も一緒」

クラリス「?」

小梅「ちょっと……言えない、かな。ところでクラリスさんは……なんでここに?」

クラリス「私も仕事でここに来たのです。中に入っても?」

小梅「あ……うん──」

クラリス「これに着替えれば?」

小梅「うん……あ、手伝おうか?」

クラリス「見えないわけではないので……」

小梅「そうだったね……」

クラリス「着替えながらで失礼します。ほたるさんはどこに?」

小梅「ほたるちゃんは……あの人のところ」

クラリス「あの人?」

小梅「ご主人様……?」

クラリス「つまりスポンサー」

小梅「そうなる……のかな? あ、着替え終わった……ね。こっち来て……」

クラリス「そのご主人様というのはどこにいらっしゃるのですか?」

小梅「あんまり見たことない……あ……」

クラリス「どうかしたのですか?」

小梅「ほたるちゃん……おーい」

ほたる「あっ、小梅ちゃん」

小梅「あの人……どこにいるか、わかる?」

ほたる「さっきまでお相手してたから。今はお昼寝してると思う」

小梅「じゃ、起こしちゃダメ……だね」

ほたる「これから食堂に行くけど一緒に行く?」

小梅「うん……クラリスさん案内するから……いい?」

クラリス「私はそれで構いません」

ほたる「それじゃ行きましょう──」

奈緒「目に染みるぅ……!」

ほたる「奈緒さんこんにちは」

奈緒「おう……玉ねぎ切ってるからこっち来ない方が……クゥゥ」

クラリス「貸していただけますか?」

奈緒「え?」

クラリス「玉ねぎを切るのは得意なので」

小梅「すごい……」

クラリス「糸目なので」

奈緒「それ関係あるのか……?」

小梅「少し臭う……」

ほたる「さっきまでお相手してたから……」

クラリス「これはどのくらい切ればよろしいのですか?」

奈緒「ここにあるの全部」

クラリス「全部……ですか。二時間で終わりますね」

奈緒「これを二時間で!? スゴ……」

クラリス「昔はこれくらいやってたので……昔とった杵柄というものでしょうか。ところで……」

奈緒「ん?」

クラリス「皆さんはなぜここに? 私はお仕事で来ました」

小梅「私も……そう」

ほたる「えっと……借金です」

奈緒「あたしも……かな」

クラリス「そう……ですか」

ほたる「パソコン壊しちゃって……」

クラリス「…………」

小梅「ニンジン切ろ……」

クラリス「ところでこの大量の野菜はどうするのですか?」

奈緒「今夜の晩ごはん──」

クラリス「量はこのくらいでよろしいのですか?」

奈緒「あぁ」

ほたる「私はこのくらいで」

小梅「よいしょ……それじゃお願い……します」

クラリス「はい。新入りはあの方と食事を取るのが決まりでしたよね?」

ほたる「はい……なんでしたら私が代わりに……」

クラリス「いえ、それがここの決まりなら従います」

ほたる「今日も優しく抱いてくれましたし……」

クラリス「…………」

小梅「それじゃ…………いって、らっしゃい……気をつけて」

奈緒「ご、ご主人様の部屋は大きい扉だからすぐ……わかる」

クラリス「はい。行ってまいります」

奈緒「…………行ったな」

小梅「そう……だね」

奈緒「……クッハァァァァ…………あぁぁあぁ恥ずかしかったァ!」

小梅「そう? 結構……楽しいよ……?」

奈緒「なんていうか気弱に見えてけっこうガッツあるよな」

ほたる「それにしても昼間は……気持ちよかったなぁ」

奈緒「抱くってもしかして……」

ほたる「えっ、あっ! そ、そういう意味じゃなくて……その……抱き締めてもらったって意味!」

奈緒「だ、だよな……」

ほたる「そ、そうですよ……! ア、アハ、アハハハハ」

小梅「シチュー……届いた……かな?」

奈緒「今ごろ届いて食ってるところでしょ」

ほたる「食中毒にならなければいいのですが……」

奈緒「それは考えすぎだって……たぶん──」

クラリス「失礼します」

P『どうぞ』

クラリス「……今日からお世話になりますクラリスと申します」

P「挨拶どうも。さ、座って」

クラリス「失礼します」

P「しばらく身の回りの世話をしてもらうことになる。よろしくね」

クラリス「はい」

P「なにか質問は?」

クラリス「あります。なぜ顔を隠すのですか?」

P「それは食後のお楽しみ。とにかく食べよう」

クラリス「わかりました」

P「美味しそうだ。それでは」

クラリス「…………」

P「祈る姿が美しい」

クラリス「…………」

P「沈黙もまた」

クラリス「…………」

P「悪いけどオレを楽しませてくれるかい? だんまりの食事はつまらない」

クラリス「すみません。あまり殿方には慣れてなくて」

P「外人さんはみんな男慣れしてるものかと」

クラリス「それは偏見でございます」

P「そうかもしれませんね。よくある謎の"紳士論"みたいなものですね」

クラリス「…………」

P「なにか気に入らない事でも言いました?」

クラリス「いえ……」

P「そうですか。ところでシスターというとやはり懺悔に来る人での困りごとありますか?」

クラリス「そんなことは感じたことがありません」

P「そうですか。あ、冷めないうちに食べましょう」

クラリス「…………」

P「……ん、うん、これおいしいな。この野菜切ったのクラリスさん?」

クラリス「そうですがなぜ?」

P「野菜の切り方がいつもと違うからね」

クラリス「いつもはどの様な切り方を?」

P「いつもは──」

P「ふぅ、ごちそうさま」

クラリス「それでは私はこれで……」

P「待ってよ。少し話し相手になってくれないか?」

クラリス「ですが……」

P「懺悔したいことがあるんだけど……」

クラリス「私は懺悔を聞ける立場にありません」

P「駄目?」

クラリス「無理なのです。私ではなく懺悔は司祭や司教といった私より上の立場の人に……そもそもシスターには」

P「懺悔を聞く資格がないのはわかってる。けどオレ"のは"聞いてくれないの?」

クラリス「……ですから私には……」

P「他の人のは聞いたのにオレのだけ聞かないなんてねぇ。それでも教会関係者?」

クラリス「っ!!」

P「あなたがシスターだってのは有名ですから。そんなに驚くことではありません」

クラリス「そうではなく……」

P「懺悔の件ですか? それは調べたからですよ。最初は親切心、いや好奇心だったのかもしれませんね」

クラリス「それは……私も若かったのです」

P「若輩者だった、と? 今でも十分若いでしょうに。あなたの教会が潰れた理由がまさかシスターが懺悔を聞いたことがバレたから、だなんて言えませんよね」

クラリス「…………」

P「周りからの圧力はどうでした? 恐ろしかったですか? それとも裏切られた気分ですか?」

クラリス「私は……」

P「立て直すのは容易じゃないでしょう。ましてやお金だけ集めればいいわけじゃなし。信頼はお金じゃなかなか集まらないものですからね。まぁ、でも当面は資金面ですか。だからお昼も食べられなかったのですか?」

クラリス「そんなの貴方には関係ありませんでしょう。例えば昼食が食べれなくとも、祈りの心は忘れない。清貧は善き事なのですよ?」

P「あなたに懺悔した人の前で同じことが言えますか? 私には資格がなかったと。懺悔しても悩みが消えなかった人はどう思うんでしょうね」

クラリス「神の示した道を行くしかありません。その方がどのような道を歩んだとしても私は受け入れます」

P「話がずれましたね。本題ですが私が教会を立て直すのを手伝ってあげます」

クラリス「汚れたお金などいりません」

P「それをあの子達の前で言えますか? 必死で借金を返そうとして頑張ってる子の前で……」

クラリス「…………」

P「その沈黙は賛成とします」

クラリス「私はなにをすれば……」

P「基本的にはメイドの仕事をしてくれればいいですよ」

クラリス「基本的には?」

P「なにか"特殊"な技能があれば仕事を増やします」

クラリス「私には特殊な技能などありません」

P「そうですか。それなら仕事は増えませんね。いずれにしろ頑張ってくださいね」

クラリス「言われなくてもそういたします。貴方の顔がわからなくてもそれは変わりません」

P「顔を見ないのは慣れてるでしょう。おっと、失礼」

クラリス「……失礼いたします」

P「ご苦労様です。それと退室したらほたるを呼んでください」

クラリス「…………」

P「聞こえませんでしたか? ほたるを、呼んでください」

クラリス「かしこまりました」

クラリス「──ただいま戻りました」

小梅「あ……お帰り……どうだった?」

クラリス「なかなか愉快な食事でした」

奈緒「そっか……良かったな」

クラリス「皆さまはどういった食事だったのですか?」

ほたる「ご主人様とですか? そうですね、私は…………少し緊張したけど食事のあと、や、優しく抱いてくれましたし……ちょっとうれしかった……かな」

小梅「私も似たようなもの……かな」

奈緒「あたしは……辱しめられた」

クラリス「え?」

奈緒「太いだの……お、大きいだの……というかなんであんなのが入るんだって感じで……その……」

クラリス「辱しめを……ですか」

奈緒「あ、あぁ」

小梅「あ、ところでご主人様……誰かよんで……なかった?」

クラリス「えぇ、ほたるさんをお呼びでしたが、なぜそれを?」

奈緒「今日はほたるか。昼間もほたるだったな」

ほたる「いつもお食事のあとに誰か一人お呼びになるんです……」

小梅「最近は……ほたるちゃん……お気に入り?」

クラリス「…………」

ほたる「パソコン壊しちゃったから……仕方ないよ、アハハ……」

奈緒「行ってこい。気をつけてな……」

ほたる「うん……優しくしてくれるから大丈夫……」

小梅「…………いっちゃった」

クラリス「ところでお二人はどちらの方が先なのですか?」

奈緒「ここに来たのがってこと? それならあたしより小梅ちゃんの方が先かな」

小梅「先輩……だね」

クラリス「ほたるさんと小梅さんとではどちらが先なのですか?」

小梅「ほたるちゃんについては……よ、よくわかんない……いつの間にかいたし……初めてあったの……廊下だし」

クラリス「……そうですか」

小梅「ちょっと電話……してくる」

奈緒「いってらっしゃい。気を付けろよ」

小梅「うん……」

クラリス「気を付けるとは?」

奈緒「たぶんあの電話さ、プロデューサーにかけてるんだと思う」

クラリス「プロデューサー?」

奈緒「担当プロデューサー。恋人だからさ」

クラリス「担当プロデューサーが恋人ですか……」

奈緒「まぁ、ものすごくヤバイことなんだろうけどさ。ちょっと応援したくなるよな」

クラリス「そうですね……」

ほたる「はぁはぁ……」

P「ここ冷暖房ないから暑いな」

ほたる「たしか、に……ハァそうです、ね……ハァフゥ」

P「今週はどんないいことあった?」

ほたる「プロ……デューサーから、ほめ、誉められま……アッ、した」

P「息整えてから話して。そんなに暑いなら離れるよ」

ほたる「いっ、いえ……これも……バランス……ですから……アツ」

P「オレも暑くなってきた」

ほたる「あっ、それとこれ。プロデューサーがプレゼントしてくれた手袋です」

P「カワイイね」

ほたる「えへへ……もっとくっついても?」

P「これ以上肉薄しようがないと思う」

ほたる「これ以上くっつこうと思ったら……ふ、服脱ぐしかない……ないですもんね……」

P「今日はそろそろ終えよう。もう夜の9時だからね」

ほたる「そうですね、ふふっ。不運だなぁ私……フフフ。プロデューサーとの楽しい事を話ながら抱きしめられるなんて……私不運だなぁ」

P「それが出たってことは満足した証拠だね──」

奈緒「……電話出れなくて悪かった」

P『構わないよ。そっちはそっちでやっていてくれてたんだろうしね。クラリスの反応はどう ?』

奈緒「恋人の話が出たら少し暗くなった。返事も単調。ぶっちゃけ気まずかった」

P『それは悪いことしたね』

奈緒「別にいいよ。あたしも覚悟はしてたし。あ、それとクラリスさんは小梅ちゃんが対応してる。なんかホラーの話で盛り上がってる」

P『そうか。それは良かった』

奈緒「話すことはそんくらいかな」

P『ありがとう。それじゃ』

奈緒「あーっとちょいちょいっ、ちょい待ち!」

P『なに?』

奈緒「今からアンタの部屋行ってもいいか?」

P『ほたるを抱いて疲れてるんだけど……いいよ』

奈緒「えっ、あ、おっ、おう……それじゃまた…………抱き疲れるって部屋でなにしてんだ? とりあえず行くか」

輝子「──レッツパァァァァァリィィィィィ! ウヒョハァァァァー!」

まゆ「床は防音じゃないから静かにしてねぇ」

輝子「あ、はい」

みちる「フゴッゴッ」

まゆ「みちるちゃん、それ以上食べるとPさんいないからおトイレ大変よ?」

みちる「フゴッ!?」

藍子「お茶入りました」

まゆ「藍子ちゃんありがとう」

美優「うーん……」

まゆ「どうしたんですか?」

美優「美穂ちゃんと幸子ちゃん、元気にしてるかしら」

まゆ「幸子ちゃんはわからないですけど美穂ちゃんは電話してました」

美優「そうなの? よかった」

まゆ「様子見に行きます?」

美優「後で」

まゆ「じゃあ、後でいきましょう」

美穂「えっ? えっ? Pさんのことご主人様って呼んでるの?」

ほたる『そ、そうなんです……!』

美穂「それって……それって……」

ほたる『はい……これは……』

美穂「なんだか背徳的ー!」

ほたる『ですよね! そう思いますよね!』

美穂「あ、壁は? 壁はやった?」

ほたる『えっと、壁ドンですか? 壁ドンはやってないですけど……その……』

美穂「その……?」

ほたる『ベッドの上でギュッて……しゃれまひた!』

美穂「きゃー! アイタタ……」

ほたる『だ、大丈夫ですか? あ、それとプロデューサーさんの話をしながら抱かれちゃいました……へへ』

美穂「イケないことしてるみたい! ほ、ほたるちゃんエッチ……! あ、誰か来たみたい」

ほたる『それじゃ今日はこれで……』

美穂「今行きまーす」

まゆ「こんばんは♪」

美穂「あ、まゆちゃん」

美優「私もいるんだけどいいかしら?」

美穂「美優さん」

まゆ「誰かと電話してたみたいだけど誰?」

美穂「えっ、なんで電話のこと……あ、ベビーモニター……」

まゆ「ずいぶんと楽しそうだったわ」

美穂「ほたるちゃんと電話してたんです」

美優「ほたるちゃんは向こうね」

まゆ「まゆはPさんと話せないのにぃ……!」

美優「連絡禁止されてるものね」

まゆ「むきぃぃ」

美穂「あの……」

まゆ「むきぃ?」

美優「みちるちゃんみたいになってるわまゆちゃん」

まゆ「コホン……なにかしら?」

美穂「P、イタタ……Pさんってどんな人なんですか?」

美優「私はよく知らないの……でも悪い人でないのはたしかよ」

美穂「そうですか……」

まゆ「うふふふふふふふふ♪ まゆは知ってる♪」

美穂「本当ですか!?」

まゆ「本当よ。何が知りたいの?」

美穂「え?」

まゆ「Pさんの何が知りたいの?」

美穂「何でかは聞かないんですか?」

まゆ「あ、やっぱりまゆのイメージってそういうのなのね……」

美穂「そもそも担当プロデューサーと……」

まゆ「その話はまた今度。今はPさんのこと♪」

美穂「そうですね。Pさんのことで知りたいのは……」

まゆ「好きな物から体位まで、なぁーんでも聞いて」

美穂「た、体位は知りたくないけど……知りたいのは──」

クラリス「おはようございます」

奈緒「おはよう」

小梅「……おはよう」

ほたる「おはようございます」

クラリス「昨日は楽しそうに話してましたね」

ほたる「友達と話してまして……すみません、うるさくして」

クラリス「いえ、友人との語らいは楽しいものですから」

小梅「ご主人様が……呼んでた……よ」

クラリス「……わかりました」

P「…………」

クラリス「お待たせいたしました」

P「朝から悪いね」

クラリス「いえ、これも私の務めですので……それで私に何のようですか?」

P「口で奉仕して欲しい」

クラリス「…………はい。それが神の導きなら」

P「……跪いて口開いてるところ悪いけどそういう意味じゃない」

クラリス「ン、ンンッ」

P「この箱の中でして欲しいことがある」

クラリス「この箱は……」

P「見覚えあるでしょ──」

ほたる「よいしょっ……こんなポーズでいいかな……」

小梅「なに……してるの、か、かな?」

奈緒「あたしに聞くなって。見ての通り写真撮ってるだけだろ。なんていうの……えーそうだ、自撮りだ」

小梅「地鶏? 首折れるの?」

奈緒「首の骨が折れるかはわからないけど、自分で撮るから骨折りだと思う」

小梅「あ……そっち」

ほたる「これをプロデューサーに……」

奈緒「担当プロデューサーに送るのならあたしが撮ってやったのに」

小梅「写真……撮るの……得意なの?」

奈緒「こう見えて加蓮のこと結構撮ってたからな」

小梅「そう、だったんだ……」

奈緒「……それにしてもなんで困ったような顔で写真撮ってるんだ?」

小梅「知らない……あ、クラリスさんとPさんだ」

奈緒「どこ?」

小梅「ほらあそこ……教会のとこ」

奈緒「ホントだ」

小梅「なに……してるん、だろ」

奈緒「そういうあたし達もなにしてんだろうな……」

小梅「メイド服……嫌い?」

奈緒「キライじゃないけど……似合わないからさ」

小梅「カワイイよ?」

奈緒「ありがと……小梅もカワイイから……な」

小梅「ありがとう……ふふ」

奈緒「……なんだよ」

小梅「なんでも……ない」


ほたる「あ……メモリーがいっぱいになっちゃった……」

P「着きました」

クラリス「ここは?」

P「見ての通り打ち捨てられた教会です」

クラリス「そのわりにはキレイですね」

P「あの三人が掃除しましたからね」

クラリス「ここで私はなにをすればよろしいのですか」

P「わかってるくせに」

クラリス「口で奉仕すればいいのですね」

P「嫌みな人。勘違いしたのはそっちなのに。それはいいとして今からここで人々の懺悔や悩みを聞いてもらいます」

クラリス「……わかりました」

P「逃げないように懺悔室の外から鍵をかけさせてもらいます」

クラリス「私は逃げません」

P「逃げたくせに」

クラリス「私とて人間。全知全能の神ではないのです」

P「言い訳にしても見苦しい。さて、入ってください」

クラリス「…………」

P「あぁっと、その前に!」

クラリス「まだなにか?」

P「少しでも彼女の気分を体験してもらうために下着を脱いでいってください」

クラリス「あなたは懺悔をなんだとお思いなのですか」

P「生憎鏡はここにはありません」

クラリス「…………これでいいですか」

P「結構。これは木箱に入れて懺悔室の後ろに置いておきますのでご安心を。ほら、ここです」

クラリス「私に口を開く権利は?」

P「もちろんあります。受け答えも自由。まぁこれだと説法や説教になりますね。何れにしろ自由です」

クラリス「わかりました」

P「それと懺悔を聞く人数ですが……」


下1
コンマ判定。コンマ一桁目の数字が人数になる。ただし3未満だったら二桁目で判定。それでもダメなら秒数の一桁目

13なら3人
32なら3人
22なら秒数

P「3人の話を聞いてもらいます」

クラリス「それが私の試練なのですね」

P「話を聞くのはある意味試練ですからね。それではどうぞお入りください」

クラリス「…………」

P「私は向こうから迷える子羊を連れてきますので……」

クラリス「わかりました」

P「暫しお待ちを」

クラリス「…………」

クラリス「下着がないというのは些か妙な気分になります……」

─「失礼します」

クラリス「どうぞお入りなさい」

─「アンタがオレの悩み聞いてくれるのか?」

クラリス「神はどんな人間にも手を差しのべるものです」

─「今日来たのは……」


下1
コンマ判定。コンマ以下が31以上なら懺悔、未満なら悩み

ゾロ目で倍(現在0倍)

─「今日来たのは悩みがあってなんだが……」

クラリス「神は悩める人にも手を差しのべます」

─「実はいくつかあんだけどよ。まずはサンテンリーダーなんて呼ばれてることに対して悩んでんだ」

クラリス「サンテンリーダーとは?」

─「文章で空白代わりに使う点々あっだろ? それだよ」

クラリス「続けてください」

─「それがよ、なんつーかあまりに特徴がなくて普通だからっていうんでつけられたんだよ。そこまではいい。なんつうかたまにそういうことあるしよ。でもよ ……」

クラリス「でも?」

─「……実はもう一人あまりにも普通で特徴がないって言われてるのがいるんだけどよ、そいつに泣かれちまってな」

クラリス「泣かれた……ですか」

─「しかもその内の1人と職業……っていうのかアレ? それが被っててよ」

クラリス「職業に貴賤はありません」

─「そうなんだけどよ……しかもその比べられてるやつが自分を見抜いてくれたと来てるんだよ……」

クラリス「…………」

─「もう一人は普通に大人だしよ……なんでオレなんかがリーダー格に選ばれるんだか。いやさ、イヤだってわけじゃねえよ? 選ばれればやるし、引っ張ってくのはキライじゃねえ。けどよ、それで泣かれるのは勘弁して欲しいっつうか……」

クラリス「神はあなたをお導きになります。そのままお進みなさい」

─「……たしかにそうだな。誰かに解決してもらおうなんて俺が間違ってたのかもしれない……それとまだあるんだがいいか?」

クラリス「よろしいですよ」

─「ありがとうな。実は…………やっぱ言いづれえ」

クラリス「ここでの会話は神以外聞いておりません。遠慮なく話してください」

─「仕切り越しで判断して悪いけどよ。アンタ外人だろ? わかっかなと思って……」

クラリス「たしかに私は外見こそ外国人ですが心は日本人と変わらないと自負しております」

─「そうだな。悪かった。実はよ…………あるアニメが大好きでよ」

クラリス「どういったアニメが?」

─「そのなんつうの……アイドルアニメって言えばいいんかな。廃校になりそうだからアイドル目指して頑張るって言えばいいんか、説明しにくいな」

クラリス「それが好きなのですね」

─「実は俺も似たようなことやってるから恥ずかしくてな……それに成人してないにしろ、年も年だしよ。最近はフィギュア集めにも凝ってて……」

クラリス「あまりに知られるのが恥ずかしいと?」

─「まぁそういうこった。どうしたらいいものかと思ってな」

クラリス「思いきって親しい友人に打ち明けてみるのはどうでしょうか」

─「友達に? アイツらにはバレたくねぇ。悪いやつらじゃないけどからかわれる」

クラリス「それも友人との語らいです」

─「それもそうなのか? ぜってぇからかってくるよなぁ……」

クラリス「趣味に貴賤はありませんがあまりに行き過ぎなものはいけません。ですがあなたのそれは健全の範囲内です。そのまま続け、時が来たら友人に打ち明けてみてください」

─「たしかにアイツらにからかわれっかもしれないが……うん、やってみるか」

クラリス「神もそう言っております」

─「よし、やってみるか! あっと、もう一つあるんだけど……さすがにまずいよな」

クラリス「ここでの時間はあなたのために流れています。遠慮なさらずに話してください」

─「間違えられんだよ……」

クラリス「間違えられる? なにをですか?」

─「名前だよ、名前。この前なんて『テラソマタクマ』って呼ばれてよ。『ま』しか合ってねえじゃねぇか!」

クラリス「名前というのは難しいものです。たまには間違えられることもあります。ですがそれに怒りを覚えず……」

─「たまにだったらどんなに良いことか……よく間違えられんだよ。この前なんて芸人みたいな名前で呼ばれたし、その前なんてマネージャーの名前とそっくりそのまま間違えられた。どう見ても俺は男だろ!」

クラリス「これは個人的なことですが、私もたまに間違えられることがあります」

─「あんたはそういうときどうしてんだ? 頭に来ないのか?」

クラリス「以前の私なら頭に来ることもあったでしょう。ですが神に仕える事を自覚してからはそんなことはなくなりました」

─「宗教でもやれってのか? ハッ、お断りだぜ」

クラリス「そうではありません。頭に来たときは今一度ご自分の立場というものを考えてはいかがでしょうか」

─「自分の立場か。たしかにそんなに考えたことねえな……考えてみっか」



下1
コンマ判定。コンマ以下が満足度になります

ゾロ目で何かが倍(現在0倍)

─「なんか納得いかねえところもあるけど、後は自分で考えろってことだよな。よしやってやるぜ!」

クラリス「その意気です」

─「ありがとうな。おかげでなんか元気出た気がするぜ。じゃあな」

クラリス「神の思し召しがありますように」

─「おう」

クラリス「……いきましたか」

P「最初としては上出来じゃないですか」

クラリス「私なんてまだまだです」

P「それじゃ次行ってみましょう」

クラリス「少し休ませていただけないでしょうか。幾分慣れないもので疲れを感じてしまって」

P「休ませません。口を動かし続けてください。次の人連れてきます」

クラリス「そんな……いえわかりました」

♂♀「おっ邪魔しまーす」

クラリス「…………」

♂♀「あ、おねーさんが話聞いてくれる人?」

クラリス「はい」

♂♀「そっかそっかあ。じゃあ聞いてくれるかな」

クラリス「どの様なことでも仰ってください」

♂♀「じゃあねえ……」



下1
コンマ判定。コンマ以下が26以上なら懺悔、未満なら悩み

ゾロ目で何かが倍(現在0倍)

♂♀「ザンゲしたいんだ」

クラリス「懺悔ですか。どうぞ」

♂♀「実は女の子傷つけちゃってさ」

クラリス「女性をですか」

♂♀「痛いって言ってたんだけどそのまま続けちゃってね。でもあっちも悪いんだよ。こっちのことバカにするしさぁ。悪いのは向こう」

クラリス「怒りに身を任せた、ということですか」

♂♀「たまにはそういうこともあるでしょ?」

クラリス「私にはありません。怒りに身を任せても良いことは何もないのです。ですが発散もしなくてはなりません」

♂♀「どうすればいいの?」

クラリス「発散した後が大切なのです。その事を謝罪するのです」

♂♀「優しくしろってこと?」

クラリス「有り体に言えばそうです」



下1
コンマ判定。コンマ以下の数値が満足度になります

ゾロ目で何かが倍(現在2倍)

♂♀「なーんか納得出来ない……」

クラリス「…………」

♂♀「あ、でも帰ったら"優しく"しようかな。いーっぱいね。イヤだっていってやめないからねー!」

クラリス「それは違うかと」

♂♀「神様は何て言ってる?」

クラリス「……神はあなたを許すと言っております」

♂♀「だよねー! これからいっぱい"優しく"するもんね♪ それじゃーね。たくさん注いじゃお♪」

クラリス「…………」

P「自分の無能さに気が付きましたか? 」

クラリス「人間は無力なのです」

P「人間じゃなくてあなた個人のことなんですがね。目の前に困った人がいても目を背けるあなた個人のことです。罪から逃げるのはあなた方の悪い癖ですね。ま、罪に対する対処に口を出すつもりはありませんけどね。あくまであなた個人についてです」

クラリス「…………」

P「話を聞くのが懺悔ですから顔は見ないのでしたね。それと間の格子でよく見えませんからね」

クラリス「次の方を連れてきてくださいませ」

P「次々にくわえたいんですね。そういうのを強欲と言うんでしたね。それでは次の人を連れてきます」

☆「チャオ☆」

クラリス「ようこそいらっしゃいました」

☆「おっ、天使ちゃんじゃなくて女神様か」

クラリス「今日はなにをしに教会へ?」

☆「懺悔か悩み事でも話そうかと思ってね」

クラリス「なんでも話してください。神は慈悲深いのです」


下1
コンマ判定。コンマ以下が13以上懺悔、未満なら悩み事

ゾロ目で何かが倍(現在2倍)

ほい

☆「懺悔だね☆ といってもどうこうしてほしいってわけできたわけじゃないけどね」

クラリス「聞きましょう」

☆「実は同じグループの友人の復讐に手を貸していてね」

クラリス「復讐に?」

☆「理由は些細なことさ。いまは複雑だが……大切なものを壊されてね。普通ならそこで終わりで手も貸さない。でもな、その友人と言うのが変わった人物でね。所謂、熱血バカ」

クラリス「大切な友人なのですね」

☆「まぁね」


下1
コンマ判定。コンマ以下が満足度になります

ゾロ目で何かが倍(現在2倍)

☆「話したら少し楽になりました。さすが女神様☆」

クラリス「これからも神はあなたを見ています」

☆「そうですね。それじゃチャオ☆」

クラリス「…………」

P「これで終わりです。どうでした?」

クラリス「私は……」

P「私は?」

クラリス「神に仕えるのに相応しくありません」

P「まぁ、メイド服着てますからね」

クラリス「私は……」

P「懺悔するのは戻ってからにしてください。戻りましょう」

クラリス「…………」

P「送信完了っと」

クラリス「それは?」

P「さぁ、なんでしょうね」

まゆ「──それで左手は掌を先っぽをグリグリしてぇ、右手は逆手にして竿を擦って……舌はぁ」

美穂「し、舌は?」

まゆ「コショコショ……の……な」

美穂「お、おしっ……!」

まゆ「うふ♪」

美優「ほ、本当にやったの?」

まゆ「どうかしらぁ?」

美穂「本当だったら……はわわわ」

美優「何か鳴ってないかしら?」

美穂「あ、私のスマホです。ちょっと待っててください」

美優「ねぇまゆちゃん……さっきの話本当?」

まゆ「どうでしょう、うふ♪ 美優さんもこういうことしたことあるでしょう?」

美優「さすがにア、アナ……はないわ」

まゆ「結構喜びますよ。是非お試しあれぇ」

美優「でも舐めるのには抵抗が……」

まゆ「それじゃぁPさんで試します?」

美優「え?」

まゆ「うふ、冗談です♪」

美穂「ほたるちゃんから連絡です」

美優「なんだっていってた?」

美穂「明日には帰ってくるって話です──」

クラリス「…………」

P「話は以上です。後をどうするかは好きにしてください。担当プロデューサーに話すもよし」

クラリス「私は……」

P「話した場合は端金ですがこの82000円があなたの口座に振り込まれます。この、お金を払って懺悔を聞いたお金がね」

クラリス「…………」

P「資格がないのに懺悔を聞いて、しかもお金をとっていた。こんなネタ週刊誌が黙ってるわけないですね」

クラリス「あなたは悪魔です」

P「鏡はそこにあります。悪魔はどっちなんでしょう。相談に来た人が誰かわかっていて、助けられる手段もあった。それなのにそれを使わなかった。これだけのことをやっていてもまだオレが悪魔?」

クラリス「…………」

P「あぁ、それと先程話したメアリー・コクランの話。あれですが、あなたにまだ良心があるなら助けてみては? ちょっとした事故で相手を怒らせてしまい、大変なことになってしまってますので」

クラリス「彼女はこの件とどういった関係があるのですか」

P「彼女のベビーシッターがとある事をやらかしましてね。あぁ、ベビーシッター兼プロデューサーの彼が。あなたも知ってますよね」

クラリス「存じております」

P「それにメアリー・コクラン自体にも問題があるのです。差別主義という問題が」

クラリス「ですがそれは教育によって……」

P「そう、教育。それを今してるのです。生の声を聞きながら、これ以上ない教師の下で」

クラリス「…………」

P「それにあなたも思ったことがあるでしょう。神戸に住んでたなら尚更。他の地域との格差に」

クラリス「それは……」

P「そういえばあなた自身の懺悔を聞いてませんでしたね」

クラリス「…………」

P「この部屋には二人きりです。小梅たちも今日は細やかながらパーティーを開いていますからここには来ません」

クラリス「……っ」

P「ブローチを握り締め、沈黙の中に罰を受けるよりも言葉にして吐いた方が楽になりますよ」

クラリス「…………」

P「…………」

クラリス「私は……彼女の目の前から逃げました」

P「逃げた?」

クラリス「勝手にそんなはずがないと決めつけました。彼女が言わんとしてることが何なのか分かっていながら。格子越しから見る顔が楽しそうにしていたので、その表情に逃げてしまい、眉をひそめる彼女の表情を見て見ぬふりをしました」

P「幸い彼女は軽度ですからそんなにではありませんが今も入院しています」

クラリス「存じております。私はその事からも逃げています。教会にいる理由もそうです。私は昔、権利も資格もないのに興味本意から懺悔を聞きました」

P「知ってます」

クラリス「その時の罪悪感を忘れて、また人々の懺悔を聞いてることからも、これは役に立つことだからと逃げておりました。ですが……」

P「ですが?」

クラリス「そんなのはただの体のいい口実。自由のなのもとに暴虐を尽くす悪魔となんら変わりません」

P「そうですね。それでどうしたいのですか? シスターを辞めますか?」

クラリス「私は……シスターを辞めません」

P「それまたどうして?」

クラリス「ここで辞めてしまったら、また逃げることになってしまいます」

P「なるほど。それで?」

クラリス「十字架を背負って生きていきます」

P「十字架は仕事道具でもありますしね」

クラリス「口では清貧は善きことと言っておりましたが、これからは質実ともに清貧なる暮らしをしていきます」

P「具体的には?」

クラリス「そこまではまだ決めかねております。手掛けとして、今住んでいるところから退去いたします。私には誘惑が多すぎますので……」

P「ホームレス暮らしでもするんですか?」

クラリス「神の思し召しなら。今の私には質実ともにそれが相応しいでしょう」

P「よかったら家に来ませんか?」

クラリス「貴方の住居にですか?」

P「ただし部屋代はいただきます。それにオレのやってることに手を貸してもらうこともありますがね」

クラリス「…………」

P「どうします?」

クラリス「……お許しください神よ」

P「堕落の道へようこそ……言い過ぎでしたね。さて……」

クラリス「…………」

P「ハンカチはそこに置いておきます。使い終わったら机の上にでも置いといてください。パーティー会場に参加者が増えると言ってきますので……それじゃ」

クラリス「あ…………行ってしまいました」

クラリス「鏡……」

クラリス「こうした服を着ていると昔を思い出しますね……」

クラリス「今にして思えばあの頃の私はどこにいったのでしょう。一所懸命にもがき苦しみ、それでも前に進もうとしていた日々。歌う喜びを感じていた頃。あれが輝く日々というものだったのでしょう」

クラリス「それが今や、ほんの一時人の話を聞き、決まり文句を言って人を理解した気になる傲慢な人間に成り下がった……」

クラリス「いつか……神は私を許していただける日が来るのでしょうか……」

クラリス「私が変わるために今は──」

P「はい……お世話様です。それでは」

クラリス「おはようございます」

P「おはようございます。昨日はどうでしたか?」

クラリス「楽しい一時を過ごさせていただきました」

P「三人に感謝ですね」

クラリス「はい……これからどうすれば?」

P「担当プロデューサーとは話をつけました。あなたはこれから教会での仕事が忙しくなるのでアイドル業はしばらく控えると。勿論、あなたが希望すれば変えますがね」

クラリス「その時はこちらから言います。ですが今の私に意見を言う資格などありません」

P「それと荷物は自分で運んでください。業者を使うなら連絡を」

クラリス「この身一つで行けますのでご心配なきよう。あとは手続きをするだけです」

P「一応は教会の寮に住んでるということになってますのでそこのところ注意してください。では移動しましょう」

クラリス「わかりました……」

P「どうしました?」

クラリス「三人にお別れを言っていないので……」

P「言う必要ないですよ」

クラリス「そうですよね……今の私が言ったところで迷惑なだけ」

P「それでは移動しましょう──」

クラリス「ここが貴方の本当の住居ですか」

P「清貧がモットーの教会関係者が住むには過ぎたところですかね」

クラリス「…………」

P「ポストを確認したら中に入りましょう」

クラリス「ここが私の新たな……」

P「ただいま」

まゆ「お帰りなさぁい♪ あら?」

P「ただいま」

まゆ「その女は?」

P「知ってるだろ」

まゆ「冗談ですよぉ。いらっしゃいクラリスさん」

クラリス「あなたは……」

まゆ「ウェディングドレスでの撮影会の時はお世話になりました♪」

クラリス「そのあなたが何故ここに」

まゆ「話せば長くなりますよ?」

P「ところで留守中に届いたものはあるか?」

まゆ「Pさん宛の小包が一つ。机の上に置いてあります」

P「もうか。仕事が早いな……ところで他の人たちは?」

まゆ「幸子ちゃんはわかりませんが、美穂ちゃんと杏ちゃんは部屋です」

P「わかった」

クラリス「…………」

P「とりあえずこっちへ」

クラリス「……はい」

まゆ「ちょうどお昼ですし、クラリスさんは何か食べますか?」

クラリス「私のことは気にしないでください」

P「素麺はどのくらい残ってる」

まゆ「まだ一箱はあります」

P「じゃあそれを茹でてくれ。それを昼食にしよう」

まゆ「はぁい」

杏「なっつぁすみはいいねぇー日本の生んだ文化だよぉ……ぐぅ」

P「ただいま」

杏「おっかえりー、ん?」

P「どうした」

杏「そっちの外人さんは?」

P「紹介しに来た。自己紹介をどうぞ」

クラリス「クラリスと申します。アイドルをやっております」

杏「へぇー。私は双葉杏。よろしくー」

クラリス「よろしくお願い致します」

杏「それにしてもなんか清楚な人だね。シスターやってそ」

クラリス「恐れながらそうでございます」

杏「へぇー……え?」

クラリス「?」

杏「もしかしてシンデレラプロダクション?」

クラリス「そうですがなにか?」

杏「あ、杏は自分を曲げないぞ! 悪魔の手先め……!」

クラリス「え?」

杏「杏をニートから脱却させる気だな!? だけどそうはいかないぞ! 夢の印税生活を送るまで諦めない」

P「そのために連れてきたわけじゃない」

杏「え、そうなの?」

P「今日からここに住むことになった」

杏「マジ?」

P「本当だ」

クラリス「はい」

杏「とうとうシスターにまで……」

P「そろそろ昼食だから手伝って」

杏「箸しか並べないぞ」

P「それでいいよ」

杏「……なんだか怖いからお皿も出してあげようじゃないか──」

ジョインの場合は次の安価は復讐のみ?

まゆ「お素麺美味しかったですね」

P「茹で方で変わるからね」

まゆ「茹でる前にまゆを誉めないでくださいね。茹ですぎるので」

P「わかってる」

まゆ「食事の後こうして私を部屋に呼んだってことは……あ」

P「脱ぐな」

まゆ「暑いので脱いだだけですよぉ? うふふ」

P「それならいい」

まゆ「ところで次はどうします?」

P「悩んでる」

まゆ「それじゃ今回はまゆが決めていいですか?」

P「どうぞ」

まゆ「昨日美穂ちゃんたちと話してたら色々と思い出してぇ」

P「何を思い出したんだかわからないが良かったな。それでどうする?」

まゆ「>>117層に>>119



>>117
ジュニア(12歳まで)かティーン(13歳から19歳まで)かアダルト(20歳以上)かをお願いします

>>119
復讐か救済かをお願いします。復讐の場合は軽くか徹底的か

それ以外は安価下

ティーン

救済

まゆ「ティーン層を救済しましょう」

P「珍しいな。明日は雨かな」

まゆ「最近雨少なかったですからね。恵みの雨ですね。Pさんの顔限定でまゆの雨が降ります♪」

P「カッパ着て寝るか。誰を救うか決まってるのか?」

まゆ「>>122


>>122

モバマスのティーン(13歳から19歳まで)アイドルをお願いします

それ以外は安価下

まゆ「奏さんを」

P「どっちも名字の速水奏のことか?」

まゆ「その奏さんです」

P「たしかキス魔で有名だったな」

まゆ「そうです」

P「彼女か……」

まゆ「あまり乗り気じゃなさそうですね」

P「彼のお気に入りだからね」

まゆ「お気に入りだということは知ってました。その口調からすると元は違うプロダクションなんですね」

P「その通り。速水奏がよく口にする"あの人"の正体にして、彼女の気掛かり」

まゆ「気掛かり?」

P「ふとした瞬間に影が出ると現プロデューサーが悩んでたよ。又聞きだけどね。まゆはなんで救いたいと思ったんだ?」

まゆ「それは……あの子がよく話してたからです」

P「そういえばよく話してたらしいな」

まゆ「それでも手は変えませんけどね」

P「彼女が寂しさを感じる理由はわかる?」

まゆ「大体は。彼はある意味女性的に一途ですからね」

P「よくも悪くもね」

まゆ「私は悪い意味でしか言ってませんけど♪」

P「恐ろしい。さて、話は長くなったがどう動く?」

まゆ「私にいい考えがあります」

P「頼むよ」

まゆ「クラリスさんも連れていって構いません?」

P「それは問題ないけど本人に聞いて」

まゆ「はぁい」

P「オレは今から上にいってくる。夜までには戻る」

まゆ「あっ、美穂ちゃんのところですか?」

P「二人のところ」

幸子「──シュワシュワの泡シュワシュシュワシュ♪」

幸子「すーきときーらいーでー100パー……よし」

幸子「勉強ノートの清書も終わりましたし、お茶にしましょう。とっておきのお菓子もありますし」

幸子「泡泡の、ん? 誰でしょう。ボクのおやつを邪魔するなんていい度胸してますね。用心のために輝子さんからもらったデスメタル棒を……」

幸子「……なんだPさんですか……いやいや信用して開けたところに他の人がいる可能性も……」

今現在マンションに住んでるのって
上の階 幸子 美穂
真ん中 P まゆ 蘭子 クラリス(new)
下の階 美優 藍子
でおk?

幸子「……一人分の隙間開けて…………どうぞ」

P「お邪魔します」

幸子「他には誰もいないですよね?」

P「大丈夫」

幸子「このスキに窓から入ってるなんてことは?」

P「鍵かけてるよね?」

幸子「それはもうバッチリ」

P「なら大丈夫」

幸子「……一応信用します。それでなんの用ですか? ボクは忙しいので手短に」

P「元気か確認しに来た」

幸子「はい元気です。はい、帰ってください」

P「ノートは足りてる?」

幸子「足りてます。僕が選んだノートしか使ってませんのでご安心を」

P「お風呂は?」

幸子「天使なボクは入らなくても問題ありません。それより臭いますよアナタ」

P「外暑いからね」

幸子「せめてこれで体を拭いてください。ボクが厳選したシャワーシートです。すっごくスースーしますから覚悟してください」

P「本当だ」

幸子「ね? 最初使ったときは驚きましたけどこれがクセになってクセになって」

P「それじゃそろそろ戻る」

幸子「結局何が目的なんですか? これじゃただ部屋の換気が大変になっただけですよ」

P「小日向さんの部屋にいかなきゃいけないからこれで失礼するよ」

幸子「もう二度とこないでくださいよーっと」

P「それとあとで紹介するけどこのマンションにシスターが住むから」

幸子「とうとう天使であるボクを迎えに来ましたね。正直遅いですね」

P「それじゃ」

幸子「まったくシスターだなんて……シスター?」

P「小日向さん、入りたいけどいいかな?」

美穂『あっ、開けていいですよぉ!』

P「声裏返ってるな……よっ」


美穂「お、お上がりくださぁひ……!」


P「声が遠いな。部屋かな。開けるよ」

美穂「ど、どうぞー!」

P「……跪いてどうしたの? 腰に悪いよ」

美穂「こ……小日向美穂がお口でご奉仕させていただきます……!」

P「何してるの?」

美穂「はーっ、はーっ……」

P「何してるの」

美穂「え……その……」

P「誰に教わったの?」

美穂「声を掛けてくださるのは光栄です。でも今は違うのを掛けてください……」

P「まゆだな……」

美穂「あの、あの……」

P「それをすればオレが喜ぶって教わったでしょ」

美穂「それはその…………はい」

P「それをしに来たんじゃないから安心して」

>>129

>>129
サンクス

美穂「え、それなら何をしに……」

P「そういう目で見られるのは慣れてるけどさすがに改めて確認したくなるよ。今日来たのは様子見に来たんだ」

美穂「様子見ですか? それならそこのモニターで出来ますよね?」

P「実際に見るのとモニター越しじゃ違うからね。それにこっちに来なきゃ出来ないことだし」

美穂「こっちに来なければ出来ないこと? あ……ガ、ガンバリマスっ」

P「だからそういうことじゃない。それにそういう表現をするなら奉仕されに来たんじゃなくてしに来たんだ──」

P「どうかな、気持ちいい?」

美穂「ハ、ハイ……!」

P「力抜いて。腰に響くよ」

美穂「す、す、すすみません! こういうこと初めてで……」

P「さすがに臭うね」

美穂「く、臭いですか!? そ、そうですよね……ここのところずっとしてなくて……」

P「後ろからいくよ。力抜いてね」

美穂「はい……っ、あっ」

P「上から下に……ちょっと痛いかもしれないよ」

美穂「だ、だいじょっ、ぶ……ですっ、んッふっぁ……」

P「もう少し力いれた方がくすぐったくないかな。力いれるよ」

美穂「お、おねがぃしまっ……ヒッう」

P「はい。後ろからは終わり。あとは前だけだね。前は自分で出来るよね」

美穂「は、はい……」

P「はい、体洗い用のタオル。あとの部位は自分で洗ってね」

美穂「がんばりますっ……!」

P「タオルで届かないならブラシもあるからね」

美穂「あ、ありがとうございましゅっ!」

P「数日間家を空けてて悪かった。まゆに頼んでいけばよかったな。失礼した」

美穂「い、いえ……ほたるちゃんから話は聞いてます。ガンバってるって……だからその……」

P「夜中に話してたの小日向さんだったのか」

美穂「知ってたんですか?」

P「誰かと電話してるのはね」

美穂「は、話の内容は!?」

P「そこまでは聞き耳たててない」

美穂「よ、よかった……」

P「洗い終わったね。流すよ」

美穂「はい……ひゃっ」

P「温めにしてあるから少し冷たく感じるかもね。流し終わったから湯船に少しだけ浸かって出よう。せーのっ」

美穂「はい…………ンッ!」

P「ごめん、痛かった?」

美穂「ちょ、ちょっとだけ……これでも良くなってるんですよ?」

介護だから問題無い(白目)

P「仰向けで眠れる?」

美穂「まだきついですけど……それでも良くなってる気がします」

P「なら無理のない範囲で筋トレでもするか」

美穂「ダンスレッスンですか?」

P「いきなりそんなのやらせないよ。まずは散歩から」

美穂「お散歩……ですか」

P「変装は任せる」

美穂「はい……」

P「タオルきつくない?」

美穂「あ、ちょうどいい……です」

P「コルセット代わりに着けてみたけど機能してるようでよかったよ。目隠しにもなるしね」

美穂「でも私だけハダカ同然なのはフェア……じゃないかなー……なんちゃって」

P「ところでシャンプーはそれでいい?」

美穂「あ、はい」

P「自分で使ってるのがあれば、買ってくるから言ってね」

美穂「はい」

P「そろそろ出ようか」

美穂「はい」

P「足元気を付けてね」

美穂「よっいしょ……」

P「足上げて。タオル……タオル……どっちがいい?」

美穂「ホワホワしてる方で……お願いします」

P「上半身の前は自分でお願いね。それ以外はこっちでやるよ」

美穂「は、はい……イッ……」

P「コルセットは……これだね」

美穂「前、拭けました。お、お願い、します」

P「うん」

美穂「ンッ……あれ?」

P「どうしたの?」

美穂「いえ……思ったほどじゃなくて……」

P「思ったほど?」

美穂「な、なんでもないです……あの」

P「何?」

美穂「えっと……拭き慣れてるなーと思いまして……はい」

P「まぁね。はい、拭き終わったよ。あとは着替えだけか。ソファで着替えよう」

美穂「はい……」

P「少しの間だから仰向けに寝て」

美穂「はい……ウッ、うん」

P「少しだからね。下着からだから──」

P「ただいま」

まゆ「お帰りなさぁい」

P「みんなは?」

まゆ「クラリスさんはまゆの部屋に、杏ちゃんはいつもの部屋に」

P「ならリビングでやるか」

まゆ「まゆは見られても構いませんけどぉ、他の人もいますよ?」

P「プロフィールのお復習だよ」

まゆ「あぁ、そっちですかぁ」

P「速水奏……速水奏……あった」

まゆ「まゆの"お口で"やりまぁす」

P「小日向さんに変なこと教えないでね」

まゆ「なんのことだかわかりませぇん」

P「この話は後でいいか。読んで」

まゆ「薄琥珀色の瞳がクールな17歳。身長162cm、体重43kg、体脂肪率は16.38。バスト・ウエスト・ヒップは86の55の84。まゆよりスタイルいい……」

P「たしかに薄琥珀色だな」

まゆ「まゆよりスタイルいい……」

P「スタイルの事に関してはわからない」

まゆ「んもう……誕生日は7月1日の蟹座。チョキチョキ……コホン。血液型はO型。右利き。出身地は東京都」

P「久しぶりに聞いたな」

まゆ「ちょっと恥ずかしかったです。続けます。趣味は映画鑑賞」

P「恋愛映画は苦手らしいな」

まゆ「まゆは恋愛映画好きですよぉ。好きな人と観るのは特に♪」

P「恋愛映画はむず痒くなるし、気持ちはわからなくもないけど理解できない」

まゆ「今度映画行きます?」

P「それもいいかもな」

まゆ「なにがいいかしらぁ♪」

P「映画について聞いてみるか」

まゆ「あ、クラリスさんのところに行ってきます」

P「スタイルの事はよくわからないけどオレは嫌いじゃない」

まゆ「え?」

P「いってらっしゃい」

まゆ「……んもう♪」

クラリス「…………」

杏「ねぇ……」

クラリス「はい?」

杏「なんでそこにいるの? 杏を浄化する気?」

クラリス「そのようなつもりはありません。ただ、この棚が気になっていて」

杏「いじらない方がいいよ。Pさんいい顔しないからさ」

クラリス「…………」

杏「…………」

クラリス「これは……!」

杏「ん? えっ、えっあっ!」

クラリス「何故この様な道具がここに……!」

杏「しまい忘れてた……!」

クラリス「これは杏さんのですか!?」

杏「あ、杏だって……私だって花も恥じらう17歳なんだからそのくらい持つよ!」

クラリス「それでもこれは持ちすぎかと」

杏「も、もういいでしょ……!」

まゆ「大声出してどうしたの?」

クラリス「あ、まゆさん」

杏「私は辱しめられた!」

まゆ「辱しめ? もしかしてクラリスさん、あっち系?」

クラリス「辱しめなどしておりません。ただこの様な道具があったので」

まゆ「あら、ローター」

クラリス「まゆさんからも何か言ってくださいません?」

まゆ「杏ちゃん……!」

杏「な、なに!」

まゆ「電池交換はまだいい? 切れそうだったら言ってちょうだいね」

杏「お、おう……」

まゆ「クラリスさん、こういうことはデリケートな話題ですから気を付けてください」

クラリス「ですが……」

P「クラリスさん」

杏「Pさんだ。これで勝つる」

P「クラリスさんちょっと来てください」

クラリス「なんでしょう」

P「焦る気持ちはわかります。すぐにでも変わりたいのは当たり前です」

クラリス「…………」

P「いいですか?」

クラリス「わかりました。ですが……言い訳をしても良いですか?」

P「どうぞ」

クラリス「杏さんが彼女に見えてしまうのです。声も体格もまったく違うのに……」

P「焦りですよ。とにかく、杏に謝ってください。話はその後聞きます」

クラリス「……わかりました」

P「焦らなくていいんです……焦らなくて──」

速水奏「ン…………ッチュ」

速水P「ン……どうした奏乗り気じゃないな」

奏「ごめんなさいねプロデューサーさん。ただ考え事してただけでそういうわけじゃないの」

速水P「考え事? よかったら話してくれないか?」

奏「ダメ。それは私がトップアイドルになってから話すの」

速水P「そんなこといって中々話してくれないじゃないか」

奏「女の秘密を暴こうとするとなかなか暴けないものよ?」

速水P「それでもオレは君のプロデューサーだ」

奏「だから話せないこともあるのよ……」

速水P「なんか言ったか?」

奏「ううんなんでもないわ。それよりキスの続きしましょう?」

速水P「事務所でやるの危ないからやめないか?」

奏「意外と根性なし?」

速水P「言ってくれるじゃないか」

奏「今は脳が蕩けるくらいキスしてほしい気分なの。お願い……ね?」

速水P「まったく……ン?」

奏「どうしたのかしら?」

速水P「誰か来る。離れるぞ」

奏「ハイハーイ」

速水P「こんな時間に誰だ」

奏「さぁ知らない」

速水P「スカPか?」

奏「あの人活動時間謎だものね」

速水P「自分をスカウトしてくれた人にたいして失礼だぞ」

奏「違う事務所の子だった私を拾ってくれて感謝してるわ」

速水P「入ってくるな。とりあえず普通にしてよう」

まゆ「こんばんはぁ」

奏「あ、まゆちゃん」

まゆ「あらぁ、奏さんじゃない。いらしてたんですか?」

奏「いらしてたんです。忘れ物?」

まゆ「そんなところ。そっちはなにを?」

奏「なにしてたんだろう。忘れたわ。プロデューサー覚えてる?」

速水P「そこで宿題してたろ」

奏「そうだったわ。宿題よ、宿題」

まゆ「夏休みの宿題って大変よねぇ」

奏「それじゃ私は帰るわね。バイバイ」

まゆ「はい、さようなら」

奏「プロデューサーもバイバイ」

速水P「おう!」

まゆ「私もそろそろ……」

速水P「まゆ」

まゆ「はい?」

速水P「オレの女にならない?」

まゆ「あはは、面白い冗談ですね。まゆは担当プロデューサーさんのものなんですよ? 前も説明したじゃないですかぁ」

速水P「あ、やっぱ見抜かれたか。担当とはどう?」

まゆ「どうなんでしょう。教えてあげません♪」

速水P「えー、それはザンネンだなぁ」

まゆ「うふ♪」

速水P「ところで奏がなに悩んでるか知らない?」

まゆ「奏さんがですか? あいにく知りません」

速水P「そっか……」

まゆ「心配なんですか?」

速水P「そりゃ担当プロデューサーだしね。それに奏は大切な人でもある」

まゆ「そんなに想われるなんて羨ましいわ」

速水P「君だってそうじゃないか」

まゆ「お世辞でも嬉しいです♪ あら、もうこんな時間! それでは失礼します」

速水P「気をつけて帰ってね」

まゆ「そちらこそ。それじゃまた明日」

速水P「…………チッ」

速水P「役に立たねえ。あー、いけすかねえ」

速水P「奏のあの態度ぜってぇ男関係だろ。ったく、オレがいんのになんなんだアイツ。男を手玉にとったような態度がうぜえ」

速水P「てか他のプロダクションから入ってきた中途のクセになんなんだあの態度は。スカPに連れてこられたからってなんなんだよ。そもそもスカPもいけすかねぇぜ」

速水P「監禁するっきゃねえか? ん、監禁? 待てよ……監禁よりいい手思い浮かんだぜ」

奏「…………」

まゆ「どうしたの?」

奏「わっ、脅かさないでよ」

まゆ「ごめんなさい。そんなところで立ち止まってどうしたの? 信号青よ」

奏「えっ、あ、うん……」

まゆ「そんな反応するなんて珍しいわ」

奏「……駅のカフェで話したいことがあるわ──」

奏「これで良かった?」

まゆ「はい。私の大好物です♪」

奏「良かった。それで相談なんだけども……キスについてどう思う?」

まゆ「ごめんなさい、どう思うというのは?」

奏「言葉が足りなかったわ。男女が唇を合わせることをキスと言うけれど、そのキスというのはどういうものだと思うかしら?」

まゆ「……それは個人的な意見を聞いてるのでしょうか? それとも一般的な意見?」

奏「一般的な意見」

まゆ「神聖なものだと思います。ほとんどのカップルにとって初めてお互いに触れる第一段階ですもの。手を繋ぐのもそうだと思いますけど」

奏「そうよね……神聖なものよね」

まゆ「少なくともドキドキするものだと思います。そこに至るまでの過程も重要です」

奏「私もそう思うわ。自分の過去とも結び付いてる……そうよね」

まゆ「ドラマの練習かなにか?」

奏「ん、この前の撮影でふと思ってね。なんなのかなって」

まゆ「スランプ?」

奏「スランプ……フフ、ある意味スランプかも」

まゆ「辛かったら相談に乗るわよ?」

奏「今こうして乗ってもらってるから助かる。初心を忘れていたのかもしれないわ」

まゆ「初心忘れるべからずね」

奏「そうかもしれない。憧れを追っていた頃を思い出さないと」

まゆ「憧れの人でもいるの?」

奏「秘密♪」

まゆ「あら♪」

奏「……今日はありがとう。少し気が楽になったわ」

まゆ「お役に立てたようでなにより」

奏「それじゃまた……」

まゆ「また♪」

奏「次の電車が3分後で……」

まゆ「行ったわ。奏さん…………憧れの人が憧れ通りだとは限らないわ」

P『辛辣なことをいうね』

まゆ「聞いてたのですか」

P『聞けって言ったのはまゆ』

まゆ「あっ、そうでした♪」

P『おかげで予想通りだったよ。ありがとう』

まゆ「いえ、お役にたてて光栄です♪ まゆから言い出したことなのにほとんどやってもらってすみません……」

P『手伝うならとことんまで。いつもやってた事だけどね』

まゆ「他にはなにかわかりました?」

P『たくさんある。事務所からの音声もあとでまた聴いてみる。彼に一人言を呟くクセがあって助かった』

まゆ「うふ♪」

P『残りは帰ってきてから話す。とりあえずそこから帰ってきて』

まゆ「はぁい。それにしても……うふ♪ こうしてるとまゆ独り言を言ってる危ない女ですよね」

P『そうだな。切るよ』

まゆ「家に着くまで電話でエッ」

P『早く帰ってきてね。それじゃブツッ』

まゆ「んもう──」

ほたる「それで押し倒されちゃったりなんかしちゃったりして……!」

美穂「見つめあう二人……!」

ほたる「止まる時間と訪れる静寂!」

美穂「動いてるのは時計の針と心臓だけ……!」

ほたる「気恥ずかしくなった二人は時計の音と心臓の音のせいにして……また見つめあう」

美穂「瞳と唇に吸い寄せられやがて二人は……チュッ。キャーキャー! だいたーん!」

ほたる「エッ、エッチ過ぎます!」

杏「杏の部屋に来たと思ったらいきなりこれだよ。そのベビーモニター越しでよくない?」

ほたる「私が使おうとするとなぜか壊れるんですよね……ザザッ……ザザッ……て」

杏「正直すまんかった」

美穂「杏ちゃんはそういうのある?」

杏「青春の話なんて砂糖吐きそう……オエー」

クラリス「気分が優れないのですか?」

杏「また人増えた……杏のSAN値ガリガリ減ってる気がする」

クラリス「さん……なんです?」

杏「気にしないで。それよりなんか用事?」

クラリス「そろそろ夕食ですので呼びに参りました」

美穂「誰が作ったんですか?」

クラリス「私が作りました」

杏「精進料理は勘弁して……」

クラリス「いたって普通の食事ですよ?」

杏「え、本当?」

クラリス「チキンのシチューにトーストとサラダです」

杏「おっおぉ……! なぜか感動してる私がいる。てっきりもっと寂しいもんかと思ってた。じゃがいも1つとか」

クラリス「さすがにそれでは体が持ちません。祈るにはまず、己が心身ともに健康でなければなりません。少なくとも私の奉仕していた教会はそうでした」

杏「宗教革命ってやつ? 宗教革命バンザイ」

クラリス「だからといって贅沢はいけません。ですのでこの飴の袋は没収してこいとお達しがありました」

杏「神は死んだ!」

美穂「よ、いっ……んッ」

クラリス「手伝います」

美穂「すみません……」

ほたる「…………」

杏「行こうかほたるちゃん」

ほたる「あ、はい……」

まゆ「ただいま戻りましたぁ」

P「お帰りなさい」

まゆ「いい香りします。今日のお夕飯はなんですか?」

P「シチューとトーストとサラダ」

まゆ「Pさんが作ったんですか?」

P「オレじゃなくてあっち」

クラリス「お帰りなさいませまゆさん」

まゆ「ただいま戻りました。今日のお夕飯はクラリスさんが作ったんですかぁ。いい香りしてます♪」

クラリス「恐縮ながら私が作らせていただきました。お口に合うとよろしいのですが……」

まゆ「ふふふ、それは食べてみないとわかりませんね。まゆ、お腹ペコペコです。着替えたら食卓につきますね」

P「よそっとくよ」

まゆ「お願いしまぁす──」

P「ふぅ……」

まゆ「お先にお湯もらいましたぁ。湯船っていいですね♪」

P「翌日の疲れが違うからね。そういえば神崎さんから連絡あった。今日は下で夜会してから帰ってくるってさ」

まゆ「蘭子ちゃん楽しそうでよかったです」

P「三船さんと高森さんに連れていってもらって正解だったよ。さて、入るか。今日は小日向さんと杏が疲れたから入らないって言ってたからオレが次はいるよ。クラリスさんは後で入るらしい」

まゆ「なら湯船はそのままにしておきます」

P「わかった」

まゆ「だからまゆのイケない毛も浮いてたりして、うふ」

P「お湯張り直す」

まゆ「うふふ。それではまゆは部屋に戻りまーす」

P「……入るか」

P「頭用のシャンプーは……あった。そろそろまた切ってもらいにいくか」

クラリス『すみません』

P「ん? なんですかー!?」

クラリス『……を……いた……』

P「今シャワー止めて少しドア開けます。よっと。目に入りそう」

クラリス「失礼します」

P「はい、それでなにか?」

クラリス「…………」

P「後ろに立つ意味は?」

クラリス「杏さんから聞きました。ここに来たらお風呂で奉仕するのが決まりだと」

P「そんな決まりはありません」

クラリス「そうなのですか? でも脱いでしまいました」

P「脱いだなら仕方ありません。少し狭いですがそこに立っててください」

クラリス「わかりました」

P「…………ふぅ」

クラリス「…………」

P「……異様な光景ですね。鏡越しに映る白人女性」

クラリス「不快でしょうか?」

P「後ろに鏡越しで人が映ると不気味です。頭あげたとき驚きましたよ」

クラリス「すみません」

P「今から体洗いますから少し待っててください」

クラリス「はい……」

P「…………」

クラリス「…………」

P「どこ見てるんですか」

クラリス「あっ、すみません。マジマジと見てしまいました……」

P「マジマジと見るものでもないでしょう」

クラリス「明るい場所で実物を見るのはハジメテなもので……」

P「危ない発言は控えてください。大体知ってますから」

クラリス「やはり男性もそういったところへの視線というのはわかるものなのですか?」

P「それはどうかわかりません。オレのことなんて誰も見てませんから」

クラリス「そうですか……ところで貴方は私をどこまで知っておられるのですか?」

P「大体のことは。それが仕事でしたし」

クラリス「…………」

P「どうしました?」

クラリス「私は自分がどこまでも無知であるということを思い知らされます」

P「というと?」

クラリス「まず、P様のお仕事を知らなかったことが一つ」

P「誰も気にしませんからね」

クラリス「本来ならばシスターである私はそこに目を向けなければならないのに、今の今まで今日の今日まで自分しか見ていませんでした」

P「…………」

クラリス「私の目があと少しでも開いていれば、彼女は苦しまずに済んだのかもしれません」

P「そうですね」

クラリス「気が付いていながらも知らんぷり。どこか対岸の火事でも見ているような気分でした。ですがそれは川を渡りこちらに来ていたのです。いえ、むしろ火元は私なのかもしれません」

P「……目に入ったシャンプーはお湯でよく洗い流してくださいね」

クラリス「すみません……」

P「気が付いていながらもという点ではオレもそうです。プライベートな事ですので周りに迷惑がかからない程度に放置してました」

クラリス「……言い訳にもなりませんが私はよくそういった男女の問題も聞きます。男女というのは不可解な関係です。まるでどこまで行こうと見えない神の背中です」

P「とかくこの世は生きにくい」

クラリス「日本では心は顔に現れるなどとよく言いますが、私に当てはまっております。私のこの目は慈愛の目や優しい目などと言われますが、その実何も見たくないのです」

P「喉元過ぎれば熱さ忘るるですね」

クラリス「貴方は私の急所を突くのがお好きなのですね」

P「それが仕事でしたから。ボディソープはそこの白いボトルのを使ってください。明日辺りあなた用を買いにいきます」

クラリス「私はこれで十分です」

P「オレと同じのを使われると困るから言ってるんです。それにあなたの髪質に合いません」

クラリス「……わかりました」

P「洗いながらで結構ですので聞いてください」

クラリス「はい……」

P「今まで祝福したカップルの中で別れると思った人達はいましたか?」

クラリス「……おりました」

P「そういうときどうします?」

クラリス「それでも祝福いたします」

P「ふぅん……」

クラリス「もし愚痴をいうことをお許し願えるなら言いたいことがあります」

P「愚痴?」

クラリス「一番困ったことが……結婚式が二度目の人でしかも以前に教会を利用した人が来たことです」

P「気まずいな……」

クラリス「はい……」

P「…………」

クラリス「なにかご用でも?」

P「明日頼みたいことがあります」

クラリス「頼みたいこと?」

P「もしご協力願えるのなら──」

まゆ「まーゆですよー♪」

P「おはよう」

クラリス「おはようございますまゆさん」

P「昨日は寝れましたか?」

クラリス「私ソファーベッドなるものに寝たのは初めてです」

P「どうでした?」

クラリス「教会のベッドが石に思えます」

まゆ「朝ごはん出来てますよぉ」

P「それじゃ食べましょう」

クラリス「杏さんは起こさないのですか? それに蘭子さんは……」

P「日頃の疲れが溜まってると思うので杏は寝かせておきます。蘭子は下に行ってくるとメールがありました。朝食を食べるのでしょう」


まゆ「あら、Pさんが名前で呼ぶなんて珍しいですわ」

P「試しにやってみたけど違和感あるからやめる」

まゆ「残念ですわ」

P「……なにかおかしいぞ」

まゆ「ほんのおちゃっぴいです♪」

クラリス「ドレッシングはどこにありますか?」

まゆ「冷蔵庫のドアポケットの……あります?」

クラリス「ありました。これはなにも書いてない瓶に入ってますが特製なのですか?」

まゆ「まゆ特製です♪ あっ、もちろん変なものは一切入ってませんからね」

P「食べよう。いただきます」

まゆ「いただきます♪」

クラリス「いただきます」

まゆ「あらぁ? そこはお祈りを捧げるんじゃないですか?」

クラリス「昔はそうしていましたが、教会で周りの日本人の方々と食事会をするうちに日本式に慣れていき、今では一人や気心が知れた人の前ではこっちですが、臨機応変に変えております」

まゆ「お祈りって少し憧れます」

クラリス「憧れるようなものでもないですよ?」

まゆ「花嫁衣装の次に憧れます♪」

P「バター取って」

まゆ「はぁい。まゆもシスターの服って一度着てみたいです」

クラリス「この季節は地獄ですのであまりオススメいたしません」

まゆ「風通しが悪いんですか?」

クラリス「それはもう」

P「ところでクラリスさん。準備は出来ましたか?」

クラリス「はい」

まゆ「どこか行くんですか?」

クラリス「暗い部屋で一人になるのです」

まゆ「? あ、ゲダモノ」

P「心配しなくても変なことはしない」

クラリス「着替えもこの通り用意しております」

P「蒸し暑いかもしれないからね」

まゆ「どこにいくのかはわかりませんけど気を付けてください」

P「あぁ」

クラリス「──やはりこの様なことは道徳に反します……」

P「今更引き返すんですか?」

クラリス「出来ればそうしたいと思っております」

P「迷ってもいいならどうぞ」

クラリス「……なぜこの様な場所が駅なのです。理解できませんわ」

P「そんなこと言っても駅は駅なんですから仕方ないじゃないですか。ほら、見失いますよ」

クラリス「なぜ奏さんの……尾行、など、ッハァハァするのですか……」

P「さすがに帽子は暑かったようですね」

クラリス「ですが、これがないと、目立って……しまうので……」

P「地毛が金髪なのも考えものですね。加えて地味な服装ですからますます目立ちます」

クラリス「習慣が仇となるとは……」

P「熱中症になられたら困りますからそこで休みましょう。彼女も美容室に入ったのでしばらくかかります」

クラリス「すみません……」

クラリス「あぁ神よ……快楽に身を窶す私をお許しください」

P「空調設備は良いですね」

クラリス「アァ……」

P「心なしか輝いてますね」

クラリス「甘いものは久しぶりなので……ああァ幸せ」

P「甘いものが好きなんですね」

クラリス「シスターとして、いけないことだとは分かっていながらも、こればかりはン……ひゃめられまひぇん」

P「食べるのはいいですがイメージは崩さないようにお願いしますね」

クラリス「わかっております。しかしながら普段からクーラーがない部屋や教会にいるので、こういった誘惑や快楽の波には弱いのです」

P「普段自制してますからね。たまにはいいんじゃないですか? オレは担当プロデューサーではないですが、しかしくれぐれも……」

クラリス「イメージを損なうな。わかっております」

P「ならいいです」

クラリス「我慢してからのクーラーというのはこれほどにも涼しいものなのですね。驚きました」

P「過ぎた我慢は忍耐を通り越してただの毒ですよ」

クラリス「少しクセになりそうです」

P「…………」

クラリス「私の顔に何かついてるでしょうか?」

P「目と鼻と口と耳」

クラリス「そういう意味ではなく、私の顔をジッと見つめていたので気になったのです」

P「冗談ですよ。なんでもありません」

クラリス「ハァ……?」

P「甘いもの好きなんだなと思いましてね」

クラリス「あの……この事は……」

P「皆には黙っておきます」

クラリス「ありがとうございます。ところで……」

P「はい」

クラリス「あそこの白い髪の……銀髪でしょうか? あの方をさっきから見てるのですが、よく食べるのは良いとしてどこに入るのでしょう?」

P「痩せの大食いというものです。気にしたら駄目です」

クラリス「たしかキリスト教の七つの大罪の一つに"暴食"がありますがもしや彼女は……」

P「違うと思います。ただ食べ物が好きなだけです」

クラリス「そういうものなのですか?」

P「そういうものなのです。あまり向こうを見ないでくださいね。失礼に当たりますから」

クラリス「あっ……すみません」

P「彼女のカットが終わったようですね」

クラリス「なぜわかるのですか?」

P「知り合いから連絡がありました」

クラリス「それでは移動しましょう──」

奏『ンフフーフンフフンフー♪』


クラリス「なにやら楽しげに買い物をしています。鼻歌が漏れてます」

P「ですね」

クラリス「しかしあれは俗にいう寄り道というものではないでしょうか」

P「夏期講習のあとなので制服ですからね。学生でなくとも中には卒業しても制服の人がいますけどね。奢ってくれるからだとか」

クラリス「身分を証明するために着るのではなく、欲望のために着る。なんとも嘆かわしいものですね」

P「欲望が服着て歩いてるみたいな人多いですよ」

クラリス「……しかし私はああいったことはしたことがないので、少しだけではありますが羨ましくもあります」

P「オレも寄り道はしたことないですね」

クラリス「…………」

P「どうしました?」

クラリス「私は人生を無駄にしてきたのでしょうか。細やかな疑問です」

P「どうして?」

クラリス「人々の懺悔や悩みを聞いているうちに自分との格差や経験の違いといったものがあることを思い出して……」

P「ここはかっこよく何かいうところなのでしょうけどオレにはどうとも言えません」

クラリス「ただの独り言です」

P「おっと手が止まってしまってますね。買い物をしてないと不自然に映ります。シャンプーはどれにしますか?」

クラリス「これを」

P「香りの強いものですか。わかりました」

美優「Pさん?」

P「三船さんじゃないですか。ここでなにしてるんですか?」

美優「ちょっと買い物を……えっとそちらの方は?」

クラリス「クラリスと申します。シスター兼アイドルをさせていただいております」

美優「あ、これはご丁寧に……三船美優です」

クラリス「初めまして」

美優「初めまして……でいいのでしょうか」

クラリス「というと?」

P「三船さんにはあなたの事は話してありますから」

美優「こうしてお会いするのは今回が初めてですので……」

P「高森さん達と一緒ですか?」

美優「藍子ちゃんと蘭子ちゃんは二人でカフェ巡りしてます。あ、いや3人だったかな……?」

P「何故一緒にいかなかったんですか?」

美優「二人の体力についていけないので……若いってスゴいわ」

クラリス「ふと思ったのですが蘭子さんという方は、なにやら特殊な言語を使うと聞きましたが、どの様な言語なのでしょうか?」

P「エストニア語みたいなものですね。元となる単語があり、それを独自に変換したものです」

クラリス「イマイチ要領を得ません……」

P「中二病というのをご存じですか?」

クラリス「なんとなく聞いたことがあるかもしれません」

P「簡単に言えば人に物事を伝えるときに心に何かしらのブレーキがかかり、ストレートに伝えられない心理状態です。素直に伝えるのが恥ずかしい場合もあります」

クラリス「……なんとなくわかりました。要するに懺悔する人の気持ちみたいなものですね」

P「それで理解しやすいなら」

クラリス「もうひとつ疑問が……もう一人の方は会話になるのですか?」

美優「藍子ちゃんはのんびり屋さんだから。ゆるふわっていうのかしら」

P「一方的な会話になりがちですがそんなに気にすることありませんよ。それこそ懺悔みたいなもの」

クラリス「…………」

P「……失礼。でも一方的な会話は得意ですよね?」

クラリス「はい……」

P「まぁ、あの頃の年齢同士なら"その場にいること"が重要ですからね」

美優「会話がなくても良い関係って憧れます」

クラリス「アウンの呼吸というのでしょうか?」

P「少し違いますけど大体合ってます。静的なコミュニケーションというものです」

美優「ところであそこにいる奏ちゃんはなにか関係あるのですか?」

P「あります」

美優「あ、移動するみたいです」

P「恐らく本屋か、それか化粧室。口紅で迷ってたから本屋ですね」

クラリス「──予想通り本屋に来ましたね」

美優「奏ちゃん、雑誌の方に行きます。手に取ったのは……ティーンズ誌?」

P「何を買うか迷ってたくらいですからね」

クラリス「それならそういった系統の雑誌を取るのでは? ああいった雑誌に詳しくないのですが載ってるとは思えません」

美優「あ、もしかして特集が載ったのを探してるとか……」

P「そうでしょうね」

クラリス「化粧品の特集が載ってるのですか?」

P「目的です」

クラリス「目的?」

P「無論付けるためですが、彼女が口紅を何のために買うか、誰のためか」

美優「あ……」

クラリス「わかるのですか?」

美優「はい。もしかしてですが……スカPさんのため?」

P「半分正解。あの雑誌を読んでるのにはもう半分の理由があります」

クラリス「もう半分の理由?」

P「それはあとで説明します。今は見つからないように動きましょう。三船さん、時間はありますか?」

美優「今日は一人で散歩してたので、えぇ時間はたっぷりあります」

P「すみません。それならイヤホンマイクを携帯電話にお願いします。持っていますか?」

美優「はい。便利なのでパーティーの後から時々使ってます」

P「役に立ってるようで良かったです。良かったらパーティーで使ったタイプを充電します、準備ができたらアプリを開いてください」

美優「アプリというとこれですか?」

P「はい、それを…………それで大丈夫です」

美優「それじゃあ私はしばらく遠くにいればい いのですか?」

P「速水奏から見つからない位置にいてください」

美優「わかりました」

P「こっちはこっちで動きます。クラリスさん」

クラリス「はい」

P「夕飯の話でもしてましょう」

クラリス「夕飯の?」

P「ここでじっと待っていても怪しいだけですし、彼女まで距離があります」

クラリス「急に言われても……」

P「嫌いなものはありますか?」

クラリス「好き嫌いはこれといってありませんが生魚は苦手です」

P「刺身は駄目……っと。他には?」

クラリス「贅沢なものもダメです」

P「フレンチフルコースは?」

クラリス「もっての他」

P「清貧に関しては今のところ問題はありません」

クラリス「あの様な部屋に住むなど私としては既に質素の域を出ています」

P「なら襤褸家に移りますか? その場合いくら日本が平和だとしても安全性は保証出来ませんけど。普通の部屋がいいなら渋谷辺りでアパートでも探しましょうか? その場合は更に安全は保証出来ません。外国人多いですし」

クラリス「……今のままで」

P「そうしていただけるとこちらも助かります。ここらなら安全料を家賃に含むなんて阿漕な足元の見方をしません。第一あなたが傷つくところなんて見たくありませんから」

クラリス「…………」

P「どうかしましたか?」

クラリス「…………」

P「…………」

クラリス「…………」

美優『あの……』

P「なんですか?」

美優『あ、お邪魔したらすみません。奏ちゃん動き始めました』

P「わかりました。また化粧品売り場に戻ると思いますから各々行きましょう」

美優『……まだ迷ってます』

P「いまどこに?」

美優『ちょうど反対側にいます』

P「しばらくは迷うでしょうね」

クラリス「…………」

P「補充するものありますか?」

クラリス「補充するものはありませんが……」

P「なにかほしいものでも?」

クラリス「いえ……」

美優『会計に向かいました』

P「結局何を買いましたか?」

美優『あれは…………最初に手に取ったものです』

P「なるほど……」

美優『地下に行くようです。お腹でも空いたのでしょうか?』

P「どこから地下にいきましたか?」

美優『階段を降りていきました』

P「なら反対側のエスカレーターで降りてください」

美優『え? 少し遠くなっちゃいますけど……』

P「様子が伺えます」

美優『わかりました』

P「さて、クラリスさんは先に行っててください。美優さんはあそこのエスカレーターから降りていきましたので合流してください。すぐに見つかると思います」

クラリス「わかりました。貴方は?」

P「少しやることがあります──」


奏「ハー疲れた。あの妙な視線はなんだったの? 気になったから地下に降りて階段で待ち構えてたけど来なかったし……ただの気のせいだったなんてね」

奏「人の視線には敏感な方だけども、アイドルになってからこういうことに敏感になったわ。これもあの人のせいかしらね」

奏「それにしても……ハァ……私がこんなもの買うなんてね。それだけスランプなのね。自分でもビックリ」

奏「目的のページだけ読んで捨てるのはもったいないかな。せっかくだし他も読も」

奏「なになに……彼を落とすならこのコーデに決まり! 明日から出来る実践ダイエット。うーん……なんとも言えないわね。あら、これいいかも。女子1000人に聞いてみた!愛しい人との理想的なキス。そうそうこれよこれ。こんなのが読みたかったのよ」

奏「誰もいない昼の海岸で、夏祭りの花火大会の最中に、気になる人に助けてもらったお礼に、車と衝突する刹那に……いっぱいあるのね」

奏「こうして見るといろんな意見あるのね。彼か自分の部屋でってのもある……」

奏「彼の部屋……か。プロデューサーの部屋はきれいな方だったな。でも……あの人の部屋はどうなんだろ。キレイなのかな? そもそもどんなところに住んでるんだろ。高級マンション? 一軒家? もしかしたらアパートかも」

奏「理想の人に理想のキス。女の子の夢よねぇ。私には到底叶えられそうにないけど……まぁでもプロデューサーかあの人になら…………なんてね」

奏「私の理想のキスってなんだろ。夜の公園で……アパートやマンションのベランダで夜景をバックにってのも……あ、イベントで行ったレストランって手もあるわ。人混みで人知れずってのも……うん」

奏「学校では真面目な方だけど、こういうことには憧れてもいいわよね? 周りはもっとスゴいし……免罪符にはならないか」

奏「この前チラッとパソコンに見えたけどアイドルでキス魔に見られるのってどうなのかしら。複雑な気持ち」

奏「キスにも色々あるようにアイドルにも色々あるのね。私には理解できない領域の話」

奏「私に考えられることは…………そういえばプロデューサーからメールあったわ。仕事についてかな?」

奏「プロデューサーのフォルダは…………やっぱり仕事についてだ。バラエティかぁ。私に人を笑わせることが出来るのかしら。指名されたからにはやるけどね」

奏「お料理も出来るようになったし、案外バラエティも出来るようになるかもね。そう考えるとちょっと楽しみね」

奏「……誰にとは言わないけどうまくいけば誉めてもらえるし、優しくされるのは嬉しいもの──」

P「シャンプー仕舞っておきますね」

クラリス「はい」

P「少し高いところに入れておきますから取るときは注意してください」

クラリス「わかりました」

P「少し横にずれてください」

クラリス「あ、すみません」

P「ふぅ……クラリスさんの教会のお風呂って狭いんですか?」

クラリス「バスタブがあるだけ私のところなどいい方です」

P「というと?」

クラリス「日本ではないのですが友人のところなどシャワーさえないところもあったと言っておりました。仕方がないから近くの川で洗ったり、友人のところに借りに行ったりだとか」

P「宗教観は様々ですがそれはさすがに行き過ぎですね」

クラリス「…………」

P「考え事でも?」

クラリス「貧富とは何かを考えておりました」

P「シスターらしい考えですね。それで?」

クラリス「富めるものは心が貧しく、貧しいものは心が清いなどとよく言われておりますが……」

P「物語の典型ですね」

クラリス「長いことシスターをやっておりますとそうとも思えなくなってきます」

P「富めるにも貧しいにも理由がありますからね」

クラリス「その理由に飲み込まれるか受け入れるか、抗うか曲解するかはこちらが選べないこと。故に悲しくも悔しくも心苦しくもあります」

P「それは誰のことを言ってるんですか?」

クラリス「私が相談を受けた彼女のことです」

P「勝ち組と負け組。さっきので言うなら富めるか貧しいか。抗うか曲解するか」

クラリス「本当の幸せというのもわからなくなってきました。昔はその人が幸せならそれで良しと説いてきた私が今はそう思えなくなっている。皮肉なものですわ」

P「たしかに皮肉ですね。しかしそれも規則に背いて懺悔を聞いてきたからこそ得られたものだったとしたら?」

クラリス「貴方は私を蹂躙するのがお好きなようですね」

P「ただの意見です」

クラリス「…………ハァ」

P「蹂躙ついでに聞きますが理想のキスってなんですか?」

クラリス「理想のキスですか?」

P「シスターに聞くのには不適切な話題ですけどね。ありますよね?」

クラリス「……私も少女の頃はありました。理想のキスですか。昔に戻れるならそうですね……お金の関係していない関係でのキスです」

P「初めてがそれみたいな口調ですね」

クラリス「世の中キレイなものばかりではございません」

P「同感ですね。しかしお金が関係しないとなると難しいですね。特にシンデレラプロダクションでアイドルをやっていたら」

クラリス「こんな私への神罰なのでしょう。神はそれを見抜いていた。もしかするとそれは神の与えたもうた試練なのかもしれません。どちらにしろ私はそれに敗北しました」

P「こうやってることが罰みたいなものですけどね。それとももう慣れましたか?」

クラリス「……知りません」

P「まぁ、彼女に謝る前に神谷さんに謝ることをおすすめします。彼女のことを心配してましたから」

クラリス「会わす顔がありません」

P「謝りたくなったら言ってください。呼んできますから」

クラリス「奈緒さんの連絡先を知っているのですか?」

P「今は小日向さんの部屋でアニメ観てます──」

奈緒「ウッ……!」

美穂「どうしました?」

奈緒「いや、なんでもない……ただ寒気がしただけ」

美穂「空調入れましょうか?」

奈緒「ホント大丈夫だから。それより次の観る?」

美穂「はい。それにしてもこういうのに興味あったんですね」

奈緒「きょ、興味つーかマンガをすすめられて読んだらたまたま、そうたまたま面白かっただけでこういうことに興味があるわけじゃ……! それに自転車ものかと思ってたし……!」

美穂「アハハ、そういうことにしておきます」

奈緒「それにしてもこんな青春あるのか? 少なくともあたしの周りじゃないな」

美穂「どうなんでしょう。そもそも男の子ってよくわからない」

奈緒「どうなんだろうな。あたしの知ってる男子はいろんなのだからなぁ。まさに男子ってのから大人びてるのまで。一番年上はプロデューサーだし」

美穂「私もそうです。必然的にそうなりますよね」

奈緒「青春ってなんなんだろうな」

美穂「杏ちゃんに聞いてみるとか?」

奈緒「なんで?」

美穂「えっ、名字が同じだから……?」

奈緒「そんな短絡的な……そういやよくほたるちゃんと盛り上がってるけど何話してんの?」

美穂「えっと……ぁーっと…………ヒミツです」

奈緒「秘密か……あんま好きじゃないなそういうの」

美穂「わ、私にも話したくないことくらいあります」

奈緒「やっぱそうなのか……加蓮……」

美穂「加蓮さんがどうかしたんですか?」

奈緒「……なんでもない。それでそんなに話したくないことって何? すっごい気になる」

美穂「言ってもいいですけど……笑いません?」

奈緒「まぁ……たぶん」

奈緒「──そんなことやってたの……」

美穂「あ、呆れてますね……!」

奈緒「それは……なぁ」

美穂「知ってるんですよ?」

奈緒「知ってるってなにを?」

美穂「ほたるちゃんから聞きました。ほたるちゃんとメイド服着てお仕事したときに鏡の前で、お帰りなさいませご主人様☆の練習してたの知ってるんですからね」

奈緒「んなっ……!」

美穂「ほら、画像も動画もあるんですからね!」

奈緒「消せ! 消して!」

美穂「きゃっ……あいたたた」

奈緒「あっ、わりい……!」

美穂「いえ、私もふざけすぎました。でも消しませんからね?」

奈緒「な、何が要求だ」

美穂「奈緒さんだって恥ずかしいことしてたじゃないですか。だから……」

奈緒「オッケー。二人のことは言わない。言うつもりもないけどさ」

美穂「私達の"ガールズトーク"に参加してもらいます」

奈緒「わかった。参加す……はぃぃぃ?」

美穂「だって私とほたるちゃんだけやってるなんてもったいないじゃないですか。せっかく仲間を見つけたのにぃ」

奈緒「あたしにも参加しろってのか!? ムリムリムリムリ! そんな恥ずかしいこと喋れねえ!」

美穂「……お帰りなさいご主人様ぁ♪」

奈緒「くっ!」

美穂「──後ろからってなんだかえっち……!」

ほたる「逃げるんだけど不運にも行き止まりに追い詰められちゃって、もう下がるところがなくてなかば無理矢理唇を奪われちゃうの」

奈緒「……なんで呼んでるんだ」

ほたる「俯く私のアゴを触って上向かせて……荒いチューを……」

奈緒「なぜ壁ドンの話からこんな話になった……」

ほたる「歯が当たっちゃうけどそんなのお構い無しにされちゃうの。お前が不運なのがイケないだって言いながら」

美穂「で、でもそれってレ、レイプだと思う」

ほたる「後でごめんっていって謝ってくれるの。ここ重要」

美穂「あ、優しい。ちょっとキュンとするかも……あぅぅなんか想像したら恥ずかしいよぅ」

奈緒「想像もしたくない……」

ほたる「私よ理想の壁ドンは以上……です。つ、次は奈緒さんの番ですからね……!」

奈緒「あたしかよ……つか美穂ちゃんの聞いてない」

ほたる「美穂さんのはガラスケースに頭を押し付けられて……でしたよね?」

美穂「うん。夕方の事務所でプロデューサーさんと二人きりなの。それで疲れたプロデューサーさんに大事な資料がある棚のガラス戸に追い詰められて、首筋にキスされちゃって抵抗しようにもガラスを割って怪我しちゃうかもしれないって思いが先行して……」

奈緒「どんだけ疲れてるんだよプロデューサー……働きすぎってレベルじゃないって」

ほたる「たしか私のを参考にしたんですよね?」

美穂「う、うん……イメージトレーニングかな? ベッドの上だと他にやること少ないから自然とイメージトレーニングするくらいしかなくて……あ、でも最近は違うのもある」

ほたる「違うの? 教えてください!」

美穂「う、うん。事務所で二人きりなのは同じなんだけど、今回は私がお芝居の練習をしていて練習に付き合ってもらうって。そこで台本にキスシーンがあることが判明するの。それでキスシーンの練習を私とプロデューサーさんは時間も忘れて……なんちゃって、なんちゃって」

ほたる「きゃー美穂さんカワイイー!」

奈緒「断れよプロデューサー……」

ほたる「もう! さっきから否定してばっかりですけど次は奈緒さんの番ですからね?」

奈緒「ゲッ……でもあたしは話すことなんて」

美穂「も、妄想、もとい"理想"のシチュエーションだから恥ずかしがることない、です!」

奈緒「顔真っ赤だぞ……」

美穂「うぅー……」

ほたる「み、美穂さんが顔真っ赤にして頼んでるのに、あっ、あーあー美穂さんかわいそーだなー」

奈緒「クソッ……! わ、わかったわかったよ。あ、あくまでもっ、妄想だからな──」

P「向こうは盛り上がってるな」

杏「うっさいくらいにね」

クラリス「こんな夜更けまで起きてるのは関心いたしません」

杏「そんなこと言っても三人とも年頃だから盛り上がるものは盛り上がるっしょ」

クラリス「杏さんも杏さんです。殿方にそんなにくっつくなどはしたないですわ」

杏「杏も年頃だもん。しかたないでしょ。それにまだマシな方だよ。15歳とか杏の年頃なんてそりゃもうヤりまくりだよ? 修学旅行先で男漁りして部屋に男連れ込んで夜のライブパーティー三昧だよ」

クラリス「性の乱れです」

P「そのネタはウチじゃ特に洒落にならないからやめてくれ」

杏「あー、ごめん」

P「それにあなたも人のことは言えないでしょうに」

クラリス「…………」

杏「人のこと言えない? それって…………あ」

P「世の中綺麗な事ばかりじゃない」

杏「うんうん、そうだよね」

クラリス「軽蔑はしないのですか?」

杏「私が? しないよ。そういうもんだと思ってたし」

P「苦肉の策だね。その身一つで頑張ってきたからね」

クラリス「……どうしたら私は人から許されるのでしょう」

杏「それは杏とPさんに聞いてる? だとしたら杏は答えられないよ。Pさんに至っては答えないよ」

P「自分で探してください」

杏「ね? それにPさんと一緒にお風呂入ったからわかるだろうけどこの人外すでしょ?」

クラリス「外すとは?」

杏「テンプレっての? 普通ならこうするって事をしないこと」

クラリス「いくつか心当たりがあります」

杏「あ、やっぱされたんだ」

P「杏、こっち来て」

杏「うあー飴で口を封じられたあー♪」

クラリス「お二人は仲がよろしいのですね」

杏「杏にはPカロさんしかいないからね」

P「飴」

杏「ふあーい。うまうま」

P「仲がいいというか他に頼る人がいないだけですよ」

杏「そうそう。他に頼る人がいないからしかたなくーってね」

クラリス「…………」

P「……ハンカチです」

クラリス「すみません……」

杏「杏なにか地雷踏んじゃった?」

P「オレもだ。すみません」

クラリス「いえ……救えなかったのは事実です」

杏「……何があったか知らないけど元気出してよ。寝付きが悪いよ、私」

クラリス「……そうですね。杏さんが安心して眠れるためにもそういたします」

杏「……これ使う?」

クラリス「それはいつも一緒にいるうさぎさんではないですか」

杏「見た目は汚ないけど落ち着くよ? それに最近洗濯したからふわっふわ」

クラリス「お借りしてもよろしいのですか?」

杏「杏の気が変わらないうちならね。それに杏には別のがある」

P「暑い……」

杏「暴れんな、暴れんなよ……! 暑くなっちゃうよPさん」

P「明日は早くから活動するからもう寝たいのだが……」

杏「無職のくせに。それに杏はまだ眠くないやい」

クラリス「子守唄でも歌いましょうか?」

杏「さすがにそれで眠る私じゃないって。杏の事いくつだと思ってるの? 花も恥じらう17歳の乙女だよ? それが子守唄で眠るわけない──」

杏「ンフー……ふすー」

P「眠りましたね」

クラリス「眠りましたね」

P「子守唄うまいですね」

クラリス「教会をよく託児所代わりに使う人がいるのでそれでうまくなりました。最初の頃は本当酷かったのですよ?」

P「成り立つんですか?」

クラリス「タダで預かってるんわけではないので。あ、この事は秘密にしていただけませんか?」

P「わかってます」

クラリス「弁明ついでにもうひとつ言いますが、私はたしかにお金を集めるために穢らわしいことをしたこともあります。しかし、ただ一つ頑なに護ってきたものがあります」

P「わかってます。さっきお風呂でチラッと見えました」

クラリス「神への言い訳にもなりませんがこれは私の最後の一線なのです。せめてこれだけは自分の意志で捧げたいのです」

P「クラリスさん……」

クラリス「これは罰なのです」

P「ならオレと寝ますか? 今日は比較的涼しいので」

クラリス「杏さんがいないときにそうさせていただきます」

P「わかりました。それじゃ寝ましょう──」

奏「真剣遊び城十代?」

速水P「そ。十代の男女が集まって真剣におしゃべりする番組。討論番組だな。それに出演してもらう」

奏「いいけどなんで私? 誰かに話せることなんてないわ」

速水P「題材は決まってないんだが応募だけかかってな。逃さず滑り込んで申し込んできた」

奏「そう……」

速水P「嬉しくなかったか? 申し込んできたけど断って来ようか?」

奏「ううん、少し上の空だったからごめんなさいね」

速水P「題材なんだがな、多分なんだが学校関係のことだと思うぞ」

奏「なにも面白い話なんてないわ。言ったでしょ? 学校じゃ真面目な方だって」

速水P「まあまあ。何が面白いか決めるのは向こうだから。それともうひとつ連絡がある」

奏「なにかしら?」

速水P「実は泊まり込みなんだよね」

奏「泊まり?」

速水P「そ、泊まり込み。特番スペシャルで三時間の放送だから一日じゃ撮りきれないからさ。たしかスカPもくるとか言ってたな」

奏「わかったわ」

速水P「おっ、やる気になったか。あと少しで来ると思うけど正式に題材決まったら連絡する」

連絡が遅くなり申し訳ありません。
仕事上のトラブルで立て込んでいるので更新は今日の18時以降になります。その前に1、2レス書けるかもしれません

引き続きご愛読のほど、よろしくお願い致します

奏「何泊か聞いておきたい。いいかしら?」

速水P「二泊三日の予定。うまくいけば一泊二日で終わる。あとは奏のトーク力次第だ」

奏「うん、わかった。テーマ決まったらよろしくね」

速水P「刺激的なテーマだといいな」

奏「あなたはそれが望み? それが望みなら……期待してくれていいわ」

速水P「ハハハッ、怖いくらいだな。おっと、電話だ。すまない。ハイ……」

奏「望んだアイドル……か」

美優「おはようございます」

奏「おはようございます」

美優「おはよう。奏ちゃん一人? 他の人は?」

奏「ここには一人。でもプロデューサーは廊下で電話。会いませんでした?」

美優「いいえ」

奏「そうですか」

美優「プロデューサーって仕事は忙しいって聞くわ。だから姿が見えないのも納得かしら」

奏「それは少し違うと……」

美優「?」

奏「あの……」

美優「なに?」

奏「理想のキスってなんですか?」

美優「り、理想の……?」

奏「あなたの思い描く理想のシチュエーション。ありますよね?」

美優「そういうのは少し恥ずかしいのだけれど……それにそういう話は……」

奏「……そうですよね。すみません」

美優「言える範囲でなら……」

奏「お願いします」

美優「そんなに素敵なものでもないと思うけどやっぱり──」

美穂「わかります。夕暮れの公園は外せないその気持ち」

奈緒「ま、まぁな……」

みく「みくはイヤだにゃ。相手の顔が見えないのは不安になるにゃ」

美穂「顔が紅くなってるの見られるの恥ずかしいです。だから……私はごまかせる夕方がいいなって思います」

奈緒「まぁ、わ、わからなくもない」

みく「さっきからはっきりしない返事ばっかにゃ。そもそも夕暮れの公園は奈緒チャンが出してきたくせに歯切れが悪いにゃ」

奈緒「う、うるさいな。今さらになって恥ずかしくなったんだ……!」

ほたる「話してるときの奈緒さん、輝いてました!」

奈緒「誉められてもうれしくない。てか、今のは誉められたのか?」

みく「それにしてもみくがお見舞いに来たら面白そうなことやってるとはにゃ。猫も歩けば棒に当たるにゃ」

奈緒「犬も歩けばだろ……良いことでもないし」

ほたる「それって良いことなんですか? 棒に当たってるなら不幸じゃ……あぁ思い出します。棒がはね上がってオデコに当たってよろめいたところが蓋のない側溝で…………」

みく「ほたるチャンが棒に当たると大変なことになるにゃ。しかーし、みくが棒に当たるとイイコトが起こるにゃ!」

奈緒「ていうかことわざとか知ってたんか。意外」

みく「いまひじょーに失礼な発言が聞こえたにゃ。みくだってことわざくらい知ってるよ。失礼だと思わないほたるチャン?」

ほたる「えっと……みちるさんと同じかと思って……ました……あはは」

みく「ほたるチャンまでひどいにゃ!」

奈緒「まぁ……そもそもあたしはもう汚れちゃったもんな……」

美穂「意外といえばPさんだよね……」

みく「Pちゃんがどうかしたのかにゃ?」

ほたる「あ、わかります。ギャップがあるというか……」

みく「ギャップ? 見たまんまの性格だと思うにゃ」

ほたる「それだったら今ごろ私たち不運なことに……」

奈緒「乱暴されてるってこと?」

ほたる「なんていうか"優しく"されてるというか……」

奈緒「正反対だな……」

ほたる「逃れられない蜘蛛の巣に絡め取られてるというか……」

みく「あーなるほど。みちるちゃんが言ってたにゃ。ダメにされるーって」

美穂「この前、お風呂に入れてもらったときもそんな感じだったよ。優しいんだけど肩透かしみたいな」

みく「今、さらっとスゴいこと言わなかったにゃ?」

美穂「お帰りなさいませご主人……」

奈緒「べ、別におかしいところなんてないぞ! み、みみっく!」

みく「みくは人食い宝箱じゃないにゃ。いきなりボケてどうしたの奈緒チャン」

美穂「あ、Pさんといえば……」

みく「Pチャンといえば?」

美穂「そこのモニターから見られてる気がします」

みく「にゃ! あ、ホントにゃ! モニターある」

ほたる「…………うん」

美穂「…………うん」

奈緒「何か通じあってるぞ」

みく「ニャイーンときたにゃね」

美穂「見られながらってのも……ね」

ほたる「そんなことになったら不運だなぁ」

奈緒「不運ってなんだっけ」

みく「お肉で頼んだコース料理が、品切れでお魚料理に代わってることにゃ」

ほたる「プロデューサーさんに見られちゃうとか?」

美穂「それ恥ずかしいよぅ」

みく「それはさすがに恥ずかしいにゃ」

奈緒「それにしても理想のシチュエーションねぇ……」

みく「おんにゃあー? まだまだ話すことがあるのかにゃー?」

奈緒「いや、そういうわけじゃなくてさ。ほら、気になんない?」

ほたる「何がですか?」

奈緒「ほらPさんの……」

みく「Pチャンが好きなの?」

奈緒「違う。そうじゃなくてまゆの事だよ。どんなシチュエーションが理想なのかって思って」

みく「あー……なるほどにゃー。まゆチャンも色んな噂がある子だから想像しにくいにゃ」

奈緒「な。本人に聞くわけにいかないし」

美穂「あ、プロデューサーさんに聞くのはどうかな?」

ほたる「まゆさんの担当プロデューサーに?」

美穂「うん。ほら、担当さんとラブラブ?らしいし」

みく「そうらしいにゃ。でも聞くところによるとヤンデレって言われるくらいらしいにゃ。ヤンデレってなんにゃ?」

奈緒「ヤンデレかよ……」

みく「知ってるの?」

奈緒「簡単にいうと病的にその人を愛するってこと」

みく「よくわからないけど要はストーカーさんにゃ?」

奈緒「受け手がそう思うなら往々にしてそうなる。好きな人のためにって感じかな? それの行き過ぎ版」

みく「しつこく求愛する猫ちゃんみたいにゃ」

ほたる「病的に人を好きになる……か。私には無理ですね。不幸にしちゃいますし」

奈緒「そういうのもありといえばありなんだよなぁ……」

ほたる「え?」

奈緒「なんでもない。それよりさっきから誰かのケータイが鳴ってる気がする」

ほたる「あ、私です。メールなんて久しぶりだからすっかり忘れてました。というか買ってから3ヶ月で壊れてない携帯電話なんて初めてで……」

みく「ほたるチャン……」

美穂「それで誰から?」

ほたる「三船さんから──」

奏「……台本渡されたのはいいけど……これどうなのかしら」

奏「男女交際について、ねぇ。アイドルにこの話題はどうなのかしら。在り来たりな答えしか出来ないのは向こうもわかってる……のよね?」

奏「トーク番組っていっていいのかわからないけど、トーク番組ってこんなものなの? それとも個人的な意見は言ってもいいとか……プロデューサーに連絡しよう。考えてても意味がない」

奏「男女交際……か。恋愛映画みたいな恋に少し憧れるなぁ。私とプロデューサーの関係もあまりない関係らしいけどそれとは違う」

奏「禁断の恋っていうのかしら。プロデューサーとアイドル。うん、まさに禁断。それにさらに重ねるなら……ふふっ、欲張りね私」

奏「でもこの気持ちは恋なの? ただの欲望や願望ってだけな気もする。自分に浮気願望があるなんて思いもしたくないけどこれは……ね」

奏「恋に恋してるじゃないけど、浮気に浮気してる、浮気に恋してるってだけかも。これじゃ一晩悩んで寝不足になりそう。こういうのを因果応報っていうのね。ま、寝不足になる気はないわ」

奏「男女交際ときたら絶対に理想の男性像を聞かれるわよね。プロデューサーのこといって意地悪しちゃおうかしら、ふふ。困った顔が目に浮かぶ」

奏「聞かれたらなんて答えようかしら。アイドルらしく電波な答え、それとも猫かぶるのがいいのかしら? 奏わかんなぁーい☆」

奏「うん、ないわ。無難に優しい人って答えるのが一番かもしれない。でもこれもどうなのかしら。これだったら私でなくてもいい。プロデューサー関係なく、出演するからにはしっかりとやらないとね」

奏「……優しい人か。優しいだけじゃ物足りないっていうのも贅沢かしらね。かといって求めてるのは暴力的でも肉食系でもないのよね……やっぱり贅沢ね」

奏「自分がなに言ってるのかわからなくなってきた。自問自答は苦手。誰かの部屋に行こうかしら。たしか他にも泊まってる出演者が……」

奏「たしか三船さんのメールに……あった。今日から泊まってるといいな。少し相談できるし。この前理想聞いたから少し喋りやすいもの。でも親しき仲にもね。メールしてっと……今日から泊まって……よし」

奏「こんなに不安になったの久しぶり……不安はいつものことね。プロデューサー達からはそう見られてないけど。そもそも見せてない」

奏「三船さんからメール返ってきた。ん? 開けて?」

美優『開けてもらっていい? 奏ちゃん』

奏「今開けます」

美優「遅くにごめんなさいね。明日から収録でしょ? だから今日はちょっとした女子会でもと思って。緊張もほぐれるかなって」

奏「それでお菓子ですか」

美優「迷惑だった?」

奏「いえ、私も相談しようと思ってるものがあるのでちょうどよかったです」

美優「相談事?」

奏「ガールズトーク──」

P「ふぅ」

クラリス「お疲れな様子ですね。どうかなさいましたか?」

P「三船さんが合流した」

クラリス「女子会をすると仰ってましたね。ところで女子会とはなんですか?」

P「女性が集まって食事したりお酒飲んだりすることです。二十代から三十代がほとんどですが十代もやりますね。食事の内容は年齢とグループによって変わってきます。十代は主にお菓子とファミレス、二十代はファミレスと居酒屋、三十代は居酒屋と自宅。四十代五十代もありますがここでは省きます」

クラリス「仕事のあとの飲み、というものですか?」

P「簡単にいうとそうですね。学校帰りの寄り道も女子会といえばそうです」

クラリス「友人との語らいは憩いの場ですね。私はそういったことをしたことがないのでよくわかりませんが」

P「まゆも向こうに着いたと連絡が来ました」

クラリス「まゆさんは何をしに?」

P「交流という名の妨害をしに速水プロデューサーの下へ」

クラリス「それはどういうことですか?」

P「撮影前日に泊まりだなんておかしくありませんか? しかもトーク番組で」

クラリス「住居が遠いとそういうこともあるでしょう」

P「寮住まいです。スタジオも寮から程近いところにあるところです。なのに寮より遠い場所にあるホテルに招いた。気がつくところは?」

クラリス「何かを企ててるのですか?」

P「それが普通ですね。ではなにを企んでいるか」

クラリス「とても口に出来ないようなことなのでしょうか?」

P「口にはできます。ただしづらいだけです」

クラリス「それはいったい……」

P「テレビ局とお笑いの悪習というべきか慣習というべきか。実はトーク番組なんてないんですよ」

クラリス「トーク番組がない?」

P「はい。トーク番組はないのにホテルに泊める理由、わかりますか?」

クラリス「やはりそこで何かをやるためですか……」

P「さっき番組はないと言いましたが、トーク番組は正確に言えばあるんですよ。ただそのトーク番組というのがお笑いなんですよ」

クラリス「先程いっていた悪習が関係しているのですね」

P「そのトーク番組というのが罰ゲーム付きのものなんです。これに出るのが、オレが言えたことじゃないですが所謂不細工芸人なんですよ」

クラリス「ブサイク……容姿のことは言いたくありませんがそれはきついですね」

P「罰ゲームは十中八九キスですね」

クラリス「…………」

P「今すごい顔してますよ。気持ちはわかりますけどね」

クラリス「もしかして私がどこかに向かっているのはそれに関係しているのですか?」

P「関係してます」

クラリス「私は何をすればよろしいのですか? 身代わりなら喜んで犠牲になります」

P「心意気は素晴らしいですがそこまでしてもらうつもりはありません。ただそこにいてくれればいいんです」

クラリス「そこにいる? なにもしなくてよろしいのですか?」

P「お経唱えてもらうこともありません。あなたの場合は祈りですね」

クラリス「何も行動しないというのは些か抵抗があります」

P「まゆと合流してくれればいいです。そろそろ着きます。オレはここまでです」

クラリス「貴方はどこに?」

P「別行動です。少し部屋の外がうるさくなりますが心配しないでください」

クラリス「わかりました」

P「それと何が起きても驚かないでください。今回はまゆ主導なので何をするのかわかりまそん。まゆのやることは極端なときがありますからね」

クラリス「口を出さないのですか?」

P「出したところで建設的じゃないですから」

クラリス「それは信頼ですか?」

P「そうとってくれて構いません。さて……」

クラリス「行ってまいります」

P「お願いします」

奏「──それエグいですね」

美優「私もびっくりしちゃった。まさか自分の恋人がそんな人だなんて思ってなかったから」

奏「大人の女って感じですね」

美優「こんなのをお手本にしちゃダメよ?」

奏「それにしても人は見かけ通りですね」

美優「そんな人ばかりじゃないけど内面が表面化するところってあるから」

奏「私の学校にもいます。そういう男の人と付き合ってる子」

美優「思えば私も若かったのよね」

奏「今でも若いですよ」

美優「ありがとう。お菓子いる?」

奏「もらいます。それにしても外が騒がしい……見てきます」

美優「お酒が入った団体さんがいたから多分その人たち。だから出ない方がいいわ。奏ちゃんがいるなんてわかったら騒ぎになっちゃうもの」

奏「それ嫌ですね。というか名前で呼びました?」

美優「あ、ごめんなさい。イヤだったかしら? イヤならやめるわ」

奏「いえ、特には」

美優「よかった。それで緊張はほぐれた?」

奏「まだ少しだけ残ってます。けどずいぶん楽になりました」

美優「よかった」

奏「三船さんの話を聞いて私もまだまだだなって痛感しました」

美優「そんな……奏ちゃんは立派よ。私には男の人を照れさせるなんて出来ないわ」

奏「私の場合は口先だけの臆病者。口では思わせ振りなこと言っておいて、心ここにあらずなんです。私の言葉はただの雑音。ううん、雑音にもなってない」

美優「そんなことはないわ奏ちゃん。あなたには女の私でもドキッとさせられることもあるもの」

奏「私は見よう見まねでやってるだけ。自分のものにしてないもの。でもそう言ってもらうのは嬉しい……かな」

美優「そうやって控えめなところもそうだけど、なにより唇をいじる仕草にドキッとさせられるの。わかる?」

奏「そこは意識してなかったわ」

美優「溶けない氷を口に運ぶって感じ」

奏「たまに詩的なこと言いますよね」

美優「あ、ごめんなさい」

奏「キライじゃないですけどね。やっぱり本物の女というのは違うわ……」

美優「そう?」

奏「さっきも言いましたけど、私は立ち向かう勇気がないただの臆病者なの。その実男の人との接し方なんてわからない。だからそれっぽいことを言って逃げるの。それが……精一杯」

美優「私だってそうよ。男の人はわからないことだらけ。自分でも自分がなんなのかわからないわ。今の自分も過去の自分もね」

奏「本当の"女"になればわかるのかもしれない。それとも……もしかしたら、あなたとキスすればわかる可能性だってある」

美優「え?」

奏「美優さん……」

美優「か、奏ちゃん……? ちょっと近いわ……」

奏「近付かないと……出来ないじゃないですか……それともそっちから……してくれますか?」

美優「さすがにそういう経験は……それにそっちの気は……」

奏「それじゃ初めて……ですね。ちょっと嬉しいです。目は瞑る派ですか? それとも瞑らない派?」

美優「息がかかって……くす、ぐっ……た、ぃ……」

奏「私、下唇が好きなんです。軽く噛むとピクンってするから」

美優「あっ、あぁ……ぁ」

奏「…………冗談です、ふふっ」

美優「え?」

奏「ビクッてした美優さんかわいかったです。絵になってました」

美優「え、あ、れ?」

奏「だからキスするのは冗談。本当にすると思いました?」

美優「……少しだけ」

奏「女優を狼狽えさせることが出来たから上々……かな」

美優「もう……大人をからかっちゃダメ」

奏「ごめんなさい。少しいじわるしたかっただけです」

美優「本当に怖かったんだからね?」

奏「ファーストキスみたいに?」

美優「それ以上に……と言いたいけど比べようが……」

奏「ファーストキスってどこでしました?」

美優「……放課後の教室」

奏「ちょっとロマンチックですね。誰とですか?」

美優「先輩」

奏「どんな?」

美優「何て言ったらいいのかしら……ちょい……ワル?」

奏「不良ですか」

美優「あの頃の私はどうかしてたのよ」

奏「それじゃあイヤな思い出ですか?」

美優「ううん。ファーストキス自体は思い出に残ってるもの。イヤな思い出じゃないわ」

奏「……なるほど。もしかしたらそうやって……」

美優「?」

奏「ありがとうございます。おかげで気が楽になりました」

美優「そう? それなら良かった」

奏「それにしても相変わらず外がうるさい」

美優「部屋の中には入ったと思うけど大きな声ね」

奏「叫び声にも似た騒ぎですね。久しぶりの再会を喜んでる……とは違う騒ぎ方」

美優「なにしてるのかしら──」

速水P「今頃奏の部屋でゲームしてるかな」

速水P「ブサイクお笑い芸人と一緒の部屋にいるのもイヤだろうにキスの罰ゲーム付きだもんな。ククッ、想像しただけで勃起もんだな」

速水P「奏もこれで少しは懲りるだろ。ぶっちゃけ生意気なんだよ。男食ったような態度が鼻につく。うちの枕営業用アイドルみたいで腹立つ。これを機にそっちに落とすのもありか?」

速水P「でもアレと違ってそんなイメージねえしな……男好きっていうより男惑わす感じだからなぁ……ん? 誰だこんな時間に……今開けまーす」

まゆ「こんばんはー」

速水P「あれ、なんで?」

まゆ「お邪魔してもよろしいですかぁ?」

速水P「あ、あぁ……」

まゆ「わぁ、広いですねぇ」

速水P「えっとさ、なんでいんの?」

まゆ「お仕事が長くなってしまって帰れなくなってこのホテルに泊まることになったんです。そしたら奏ちゃんを見掛けてぇ」

速水P「そうだったのか」

まゆ「奏ちゃんはどこですか?」

速水P「違う部屋に泊まってる」

まゆ「同じ部屋じゃないんですか?」

速水P「そりゃアイドルとプロデューサーが同じ部屋に泊まるわけいかないからね」

まゆ「そうなんですか? まゆはよくプロデューサーさんと泊まりますよ?」

速水P「プロデューサーもいるの?」

まゆ「はい♪ ついでに言うともう一人います」

速水P「もう一人?」

まゆ「あとから来ます。それより奏ちゃんは?」

速水P「ん、あー疲れて寝てるんじゃないかな。緊張してたし」

まゆ「隣」

速水P「隣?」

まゆ「うるさくないですか?」

速水P「ん、あー……たしかにね。なんかテンション高い人たちだったからね。何かの集まりかな?」

まゆ「賑やかなのはいいですけどこれじゃ奏ちゃん眠れなくないですか?」

速水P「チッ……静かにしろっていったのによ。これだからお笑い芸人は……」

まゆ「なにか仰いました?」

速水P「ん? イヤなにも言ってないよ。うるさいのってイヤだよね」

まゆ「笑うのは良いことなんですけどねぇ」

速水P「……で他に用事は?」

まゆ「はい? あ、用事ですか?」

速水P「うん。もうないなら帰ってくれると助かるかな」

まゆ「普段どんなのかなって気になって。お話聞こうかなって思って」

速水P「奏のこと?」

まゆ「はい」

速水P「うーん。ライバルになるかもしれない子に教えるのはなぁ」

まゆ「お仕事のライバルの前にお友達ですからごく自然なことだと思いますよ?」

速水P「まぁ差し障りのない範囲でなら答えられるよ。いま奏のところに行かれても面倒だし」

まゆ「やった♪ 本当は直に聞きたかったんですけど寝てるならしかたないですよ」

速水P「言っておくけど寝起きは機嫌悪いらしいよ?」

まゆ「そうなんですか?」

速水P「事務所で寝てたときはすこぶる不機嫌だった、ん?」

まゆ「あ、来た♪」

速水P「誰? さっきいってた人?」

まゆ「はい♪ 入れてもいいですか?」

速水P「全然全然、構わないよ」

まゆ「ありがとうございます。いまいきまーす」

速水P「誰だろ……厄介のじゃないといいけど……」

まゆ「お待たせしました。適当なところに座ってください、クラリスさん♪」

速水P「ゲッ……!」

クラリス「こんばんは」

速水P「クラリスさん……!」

まゆ「お知り合いですか?」

クラリス「…………」

速水P「前に仕事で一緒だったので……」

まゆ「だそうですけど……」

クラリス「……思っ、覚えております」

速水P「あの時は奏をありがとうございます」

クラリス「あれくらい当然の務めです。お気になさらないでくださいませ」

速水P「いやいやそんなわけには」

まゆ「私置いてきぼりですかぁ?」

クラリス「以前仕事のときに少し。あれはなんでしたでしょう」

速水P「えっとたしか……クラリスさんがデビュー仕立てのときのインタビューです。奏も一緒にいました」

クラリス「そうでしたね。懐かしいです」

速水P「その時の受け答えに感動して。それとよく教会利用していつも世話になってるから。いつもありがとうございます」

クラリス「こちらこそ。貴方のような方々に支えられてこその教会です」

まゆ「私も教会にいこうかしら」

速水P「なにか困った事でも?」

まゆ「さぁどうでしょう」

クラリス「教会に従事している私が言うべきではないのかもしれませんが、悩み事がなくとも気軽にお訪ねください。皆様の生活の一部となるべく努力をしております。まぁ、その前に教会を建て直さなければいけませんが……」

まゆ「私にお手伝い出来ることがあれば言ってください。体張りますよぉ」

速水P「クラリスさんのところは有名ですからすぐにお金集まりますよ」

クラリス「神のお導きがあればですが」

速水P「あなたなら大丈夫です」

まゆ「あ、そういえば奏さん」

クラリス「そうでした、うっかりしていました」

速水P「奏になにか用事ですか?」

クラリス「以前事務所に忘れ物をしていったので届けようかと。普段使うものなのでないと困るかと思いまして」

速水P「それなら明日渡しておきますよ」

クラリス「貴方を嫌っているわけでも疑うわけでもないのですが……」

速水P「渡しにくいものなんですか? もしかして……」

まゆ「そういった類いのものではないですよぉ?」

速水P「中身は?」

まゆ「リップです」

クラリス「奏さんも年頃なので男性からこういったものを渡されるのは抵抗があるかと思いまして……」

まゆ「こういうのを見られるのって意外と恥ずかしいんですよ? 特にあなたみたいな人にはかなり」

速水P「そうなのか?」

まゆ「裸を見られるようなものなんです」

速水P「そうなのか……でも寝てるしな」

クラリス「ここで返しておかないで次の機会に……とするとずいぶん先に成りかねません。ですから……」

速水P「あ、それなら明日の朝にしましょう。明日の朝なら起きてるでしょうし」

クラリス「ですが……」

まゆ「あ、それなら部屋番号を教えてもらえますか? それなら朝に何かあってもすぐ部屋がわかります」

速水P「奏の部屋は1818号室」

まゆ「1818……ありがとうございます。それじゃ今から行きましょうクラリスさん♪」

速水P「えっ!?」

まゆ「うふふ、引っ掛かっちゃてカワイイ♪」

速水P「寝てるから起こすのは非常識じゃ……!」

まゆ「女は嘘つきなんですよぉ? うふふふふふ」

クラリス「まゆさん、それはさすがに失礼ではないですか?」

まゆ「うーん……たしかにそうかもしれませんねぇ。あ、でも場所の確認くらいはいいですか?」

速水P「それくらいなら……」

まゆ「それじゃあ行きましょう♪」

クラリス「…………」

速水P「……ヤバいかもな──」

P「まゆから連絡だ…………タイミングはバッチリ」

P「こっちは終わったっと。さて、引き上げさせるか。席が盛り上がってると引っ込みつかないからそこそこだといいけど……あれはお笑いのスナカワシュウジと入川か。案の定テンション低くなってる」


入川「あんなの見せられたら自信なくすーマジヤバイヨヤバイヨォー」

砂川「あんなんよりオレの方がオモシレーしっ」


P「あれが実力の差。そもそもジャンルが違うが。今から文句でも言いにいくのかな。まゆはそれも計算に入れてるのが凄い」

P「さて、次は三船に連絡を入れておこう」

美優「…………うん」

奏「どうかしました?」

美優「そろそろお開きにする? 明日早いだろうから」

奏「そうですね。そうしましょう」

美優「部屋まで送るわ」

奏「それにしてもいきなり部屋を移動してどうしたんですか?」

美優「お菓子取りに来るのめんどくさくなっちゃって」

奏「ハハ、なんですかそれ」

美優「それにあの部屋からの眺めの方がキレイでしょ?」

奏「たしかに。キラキラしていてまるでステージみたい。立ったことないですけど」

美優「奏ちゃんなら立てるわ。絶対に」

奏「実はそういうのに憧れてるなんて言ったら笑います?」

美優「うーん……あら?」

奏「どうしたんですか?」

美優「あなたの部屋の前が騒がしいんだけど……」

奏「本当だ。あれは……プロデューサーと……誰だろう?」

美優「どこかで見たことあるような……思い出した。お笑い芸人よ」

奏「お笑い芸人がなんで私の部屋の前でプロデューサーと話してるのかしら」

美優「それだけじゃなくて他にもいるようね。あれは……まゆちゃんとクラリスさんだわ」

奏「クラリスさんまで?」

美優「知ってるの?」

奏「以前仕事で少し。それより気になるから行ってみましょう」

美優「あっ、待って」

入川「捜しましたよー話が違っすよー」

速水P「話? というかなんでここに……」

入川「あれじゃオレら自信なくしちまうっすぉ」

まゆ「この方達は?」

速水P「お笑いの人だけど……なんでここに」

砂川「速さんがオレらにイイ話があるって言ったじゃん!」

クラリス「お笑いという?」

まゆ「人を笑わせる職業の人のことで、いわゆるコメディアンです」

クラリス「なるほど。私はいまはアイドルをやらせていただいておりますが、こう見えてシスターをしております」

入川「ピエロて……ヒドイなー。にしてもシスターかー色っぽ」

速水P「そういう目で見ないでくださいよ」

入川「あ、それよりどうしてくれんすか! こいつの相方なんてスッカリ自信なくして帰っちまったんすぉヤバイヨヤバイヨー」

まゆ「なんの話ですか?」

速水P「さぁ? なんのことだかさっぱり」

入川「とぼけてくれちゃってぇー。1818号室に行ってアイドルと王様ゲームしてこいっていったじゃないすか」

速水P「なんの話だかホントわからないな」

入川「いいんすか? 悪本珍喜劇怒らすと社長がだーってないすヨ」

砂川「この時期はカキタレだっつうのに……チッ」

クラリス「カキなんですか?」

入川「バカ……!」

砂川「オレら怒らすとどうなるか思い知らせてやりましょーよ」

奏「その話、私にも詳しくお願い」

美優「ハァハァ……速い、わ、か……ッ……奏ちゃ……ハァハァ」

まゆ「あ、美優さんいらしてたんですか?」

美優「アッ、ま、まゆ、ちゃフゥ、ンッ」

奏「プロデューサー今のなに?」

速水P「何ってなんのこと?」

奏「惚けないで。私の部屋がって話してた」

速水P「というかなんで部屋にいないんだ? 寝てたんじゃなかったのか? ダメじゃないか勝手に出歩いちゃ。どこでなにしてた」

美優「私の部屋でお話してました。ごめんなさい。なにかやることがあったのに邪魔してしまいました」

速水P「休むのも仕事のうちだぞ。な?」

奏「その休む部屋に私の知らない誰かを連れ込んでたくせに。なんのため?」

速水P「それはな……」

クラリス「なぜ私の方を見るのですか?」

まゆ「まゆたちがいると話しづらいんじゃないですか?」

クラリス「あ、そうでしたか。それなら私達は後ろに下がっております」

速水P「それはその……な。あーえー……そうだ。奏に笑ってもらうためだよ」

奏「私に?」

速水P「そうそう笑うと疲れなんて吹っ飛ぶからな」

奏「私こういうタイプのお笑いって好きじゃないの知ってるよね?」

速水P「あっ……! いやそれは……」

入川「なんか話噛み合ってなくないすか?」

奏「明らかに私になにかしようとしてた。正直に話して」

速水P「それはー……な」

奏「ここのところ嘘ばっかりついてる。私の何が気に入らないの?」

速水P「ウソはそっちだってそうじゃ」

奏「今認めた。聞いてました?」

砂川「お? ア、アァ」

奏「ほら。どういうことですか」

速水P「奏がなにか悩んでるからそれを知りたくて……」

奏「それとこれとがどう繋がるのか理解できない。私の悩みはプロデューサーに関係ない」

砂川「どーでもいーけど結局カキじゃないのかよ、ったく」

奏「説明して、早く」

入川「さすがのオレもキレそう。怒らすと……ン? 」

まゆ「ちょっといいですかぁー?」

入川「ナニ? 今取り込みちゅ」

まゆ「ドッキリ大成功ー♪」

美優「せ、せいこうー……」

速水P「…………ハ?」

入川「ハ? ドユコト?」

まゆ「これ悪本珍喜劇さん達へのドッキリだったんです! 驚きました?」

砂川「ハァ!?」

まゆ「ほら、その証拠にあそこにカメラマンさんがいます♪ 手振ってます」

カメラマン「……! っ!」

入川「マジだ……! どーゆことっすか」

速水P「えっ、あっ、そ……そーなんですよ! 驚きました!?」

砂川「どういうことだよ兄さん驚いてるじゃねーか──」

P「…………」

ほたる「お風呂お先にいただきました」

P「お疲れ様」

ほたる「いえ……」

P「みんなは?」

ほたる「今日は美穂さんの部屋に泊まるそうです」

P「うるさくしないように言っておくか。前川さんに言っておく」

ほたる「あ、はい……あのそれと」

P「何?」

ほたる「きょ、今日がなんの日かわかりますか……?」

P「…………」

ほたる「こ、今週は幸運なことがいっぱいあったのでうーんと抱かれないといけませんから……」

P「君を抱くのにも慣れてきた。おいで」

ほたる「慣れられちゃいました。あ、よろしくお願いします」

P「今回はどんな体勢?」

ほたる「あっと……胡座をかいて後ろからこう……」

P「わかった」

ほたる「ンっ……!」

P「お風呂出たばかりだから温かいね」

ほたる「また汗かいちゃう……あ、それ以前にPさんお風呂に入ってない」

P「あとで入るよ」

ほたる「臭いが移っちゃう……あぁ不運です」

P「匂いといえば今日はいつもと違うね」

ほたる「こ?は本当に不運なんです……実はいつも使わせて頂いているシャンプーが切れてしまって……Pさんのを使いました。ごめんなさい」

P「切れそうなら補充するから言ってね」

ほたる「油断してました……反省です」

P「…………」

ほたる「さっきから何読んでるんです?
何かのメモ書きみたいですけど。字キレイですね」

P「まゆの悪本珍喜劇についてのメモ」

ほたる「悪本珍喜劇ってみちるさんの好きなところです。もう一人好きな人知ってますが、その人も好きなというか支持してるところです。それがどうして……」

P「彼らにも問題があるからね。実に嘆かわしい事だけど、君もこの業界に入ってそれなりに経ってるから噂くらいは聞いたことあると思う」

ほたる「私の周りは不運になりますから……」

P「その危ない人達を扱う上で大切なことがある」

ほたる「大切なこと?」

P「怒らせないこと」

ほたる「それって難しいですよね。私、よく怒らせてしまうので……」

P「もっと言うとご機嫌とり。怒らせないのは要点を押さえれば難しいことはないよ。そうだな、彼らの場合でいうと所属の大きさと芸人としてのプライドに重点を置けばいい」

ほたる「よいしょしろってことですか?」

P「そこまでは言わないけど遠くないね。今回はとあるものを用意したからそれで大丈夫」

ほたる「なんですか?」

P「テレビカメラ。テレビカメラで撮影すれば途端に"芸人の顔"に変貌する。そのカメラが生放送か録画かに関わらず。それで治まらなくても矛先を調節すればいい」

ほたる「どこにですか?」

P「怒りを薄めて速水Pに矛先を向けさせる。芸人としての自信もなくなってるかもしれないけど」

ほたる「要するに奏さんに被害がいかないようにするってことですか?」

P「その通り」

ほたる「理不尽ってイヤですからね……ハァ」

P「速水奏になにかあれば疑われるのは自分たちだからね。証拠のテープも残るからね。それにドッキリってことにしておけば速水Pと芸人達の間、少なくとも芸人達は自分たちはドッキリに引っ掛かったと思うだろう。そこで怒ってしまったら、他の芸人から叩かれる要因になりかねない」

ほたる「なんか可哀想です……」

P「速水Pの提案に乗ったのが彼らの間違い。それにきちんと励ましてくれる人はいる。芸人仲間とかね」

ほたる「仲間ってステキですね……ハァ」

P「励ましてくれる人がいる。それがどんなのであれ、精神衛生上大切なことだよ。特に芸人はイメージが大切」

ほたる「でもそんなの関係ない!って人多いです……」

P「心当たりあるの?」

ほたる「はい……今はつきまとわれてませんがその人はしつこい人でした」

P「少し売れると調子に乗る人多いからね。大変だったね」

ほたる「それに……ハァ」

P「…………」

ほたる「ハァ……」

P「…………」

ほたる「ハァー……」

P「……今週何かあったの?」

ほたる「あ、はい……実は──」

まゆ「そんなわけでぇこれはドッキリだったんです♪ たしかタイトルは何でしたっけ?」

クラリス「存じ上げません」

速水P「なんだったかねぇ」

まゆ「思い出しました。芸人はどのくらいエッチなのか!?でした」

入川「そんなのに出されるの? ヤバイヨヤバイヨー」

まゆ「ディレクターとの話し合いによりますよ。ね?」

速水P「あ、あぁ。使われるかは話し合いによる」

砂川「……頼みますよ?」

速水P「それはこの後の態度次第ですかね」

砂川「ちょ、カンベンしてくださいよ」

入川「とにかく自分らは帰ります……」

速水P「お疲れさまでしたー…………ふぅ」

奏「…………」

速水P「そんなわけでお疲れ奏」

奏「……お疲れ様」

速水P「それじゃこれで……」

クラリス「奏さんとの話し合いはまだ終わってません」

速水P「うっ……」

奏「もういい……私の勘違いだった」

クラリス「ですが……」

まゆ「まあまあ。掘り返すのも悪いわ。それに勘違いって恥ずかしいんですよ? 私もよくやるからわかるわ」

速水P「それじゃこれからそっちは女子会ということで。おやすみ」

奏「…………」

美優「お部屋に行きましょう?」

奏「……はい」

まゆ「部屋に戻るより良いところがあるんだけど行く?」

奏「良いところ?」

美優「あ……」

まゆ「少なくともここにいるよりいい。そう思いませんか美優さん」

美優「たしかにそう思うわ。けど……」

まゆ「早速タクシー呼びましょう♪」

奏「部屋のものはどうするの?」

まゆ「部屋のものってこれ?」

奏「いつの間に……」

まゆ「うふふ♪」

P「──なるほどね」

小梅「次……これ観よ?」

P「もう夜遅いから寝て」

小梅「輝子ちゃんの……話聞いてたら…………こ、興奮して寝れなくなって……」

P「これからまゆが帰ってくるから部屋は使えないし、オレの部屋は埋まってるから寝るところないぞ」

小梅「ソファーは……?」

P「これから来客がある」

小梅「こんな遅くに……いったい……あ」

P「幽霊じゃないからね」

小梅「なんだ……残念」

P「それにこれから観たいDVDあるから」

小梅「私がいると……こ、困るDVD…………あ」

P「そういうのじゃない」

小梅「ま、またまたぁ」

P「これだけど観る?」

小梅「書いてあるのは……タイトルだけ……しかもディア……とか……フロム……なんとか」

P「君も関与してること」

小梅「?」

P「観ればわかるよ」

小梅「私も? あ、映画の……DVD?」

P「ちょっと違う……はいこれで観られるよ。再生するね」

小梅「わっくわくの……ド、ドッキドキ……だね!」

P「アニメ観たの?」

小梅「うん……楽しかった」

P「写り始めた」

小梅「画面が……ピントボケ?」

P「撮影部屋が暗いんだな」

小梅「ホコリっぽい部屋……イイ」

P「音声が聞こえづらい。素人撮影だから仕方ないか」

小梅「折檻……ある?」

P「たぶんない」

小梅「多分……ってことは……あるかも、し、しれない可能……微レ存?」

P「微レ存。抵抗させないようにしてるといいけど……まぁ心配はないかな。してても受け入れざるをえないけどね。寝かさないように言ってあるし」

小梅「よくわからない……でも、ちょ、ちょっと楽しみ、ふふふ…………胡座の中……入ってもいい?」

P「どうぞ」

小梅「ふふ……今日は素直…………私うれしい」

P「……よし、これで音声も流れる。スピーカーが合ってなかっただけだ」

小梅「5.1ch……対応?」

P「それよりかは少し落ちるけど問題ないレベルにしてある」

小梅「それじゃ…………ふふっ、ショータイム……だね」

??『……れでいいの……? じゃしゃべるワ』

小梅「画面……少し、み、見辛い……」

P「しばらくすれば見易くなるよ」

??『ハーイパパ元気してる? アタシは元気よ』

小梅「あ……これ……」

??『最近会えないけど安心してネ……と言っても元から心配なんてしてないわよネ』

??『こっちに来てから色んなことがあったワ。アイドルになれたり、友達ができたり』

小梅「メアリーちゃんだ……!」

メアリー『……そんな楽しいことがいっぱいあったノ。でもねパパ……それと一緒に悲しいことも学んだワ』

P「嬉しい?」

小梅「う、うん」

メアリー『時々差別されてるって思ってたけどきちんと理由があったの。だって私たちが好き勝手やって迷惑かけたんだもの。憎まれても仕方ないワ。それに私だけじゃなくて"彼"も迷惑かけてたんだモノ』

小梅「ウンウン……!」

P「本当嬉しそう」

メアリー『ヒロシマとナガサキの話……それに戦後の話も聞いた。私たちアメリカ人がどれだけ迷惑かけてきたか……聞いて驚いた、ううんそんな言葉じゃ表しきれない。言葉にならないもの。治安維持の名を騙ったレイプ、憲兵さんの話やそれだけじゃなくて、特に病院の話なんて夜トイレにいけなくなるくらいこわかった』

小梅「ふふっ……」

メアリー『聞いたのはそれだけじゃないワ。ベトナム戦争から帰ってきた人の扱いの話も聞いたし、今の帰還兵っていったかしら? その人たちの扱いも聞いた。ひどいなんてもんじゃない』

小梅「私も……聞いた……少し、こ、怖かった」

P「うん」

メアリー『……だからねパパ。私決めたの。日本の人に謝るって決めたの。だってそれが運命、ううん私が生まれてきた意味だモン。それに悪いことをしたら謝るのは当然だものネ。典型的なアメリカ人のパパには想像も出来ないだろうけど♪』

小梅「ンっ……」

メアリー『日本の人に教えてもらったのよ? 私たちがどんな風に見られているかネ。だからこれが私からパパに送る最後のビデオレターになるワ。でも心配しないで。こっちの人たちは優しいから♪』

小梅「これ何本か……あるの?」

P「この他にもあるよ。これの他に二本くらい」

小梅「日本だけに……? ふふっ」

メアリー『イイナズケってのも決めてもらったワ。だから心配しないでね♪』

小梅「許嫁?」

P「最近は耳馴染みない単語だね。許された嫁と書いていいなずけっていう。将来結婚するのが決まってる人」

小梅「約束された花嫁……?」

P「そんな感じだね」

メアリー『あ、それとママとお姉ちゃん。私はこれから本当のレディになるの! だから心配しないでネ♪ それと……私は一人じゃないからそこも心配しないで。友達を呼ぶもの。これをみんなに伝えなきゃ』

小梅「お友達? お墓で……運動会?」

P「生きてる友達。向こうから呼ぶんだろうね」

メアリー『アタシ、夫になる人好みのレディになるから楽しみにしててネ、パパ♪ 気が向いたらビデオレター送るネ』

小梅「うふふ……♪」

メアリー『ママのドレスが似合う、お姉ちゃんみたいな、ううんそれ以上のオトナになる。アタシがオトナになるビデオ、出したら売れるかしら、フフ』

P「どうした」

小梅「ちょっと、楽しく……なっちゃった……メアリーちゃん…………カワイイ」

P「それはよかった。はい、タオル」

小梅「いつもより……すごくて、ちょ、ちょっとした洪水…………あっ、見る?」

P「見ない」

メアリー『ダーリンにも謝らなきゃ。あ、ダーリンに乱暴しちゃダメだからねパパ? したくても出来ないでしょうけど♪ だってアタシ知ってるもん。シッターがやったこと』

小梅「シッター」

P「多分ベビーシッターの事。ほら、メアリーと一緒にきたあの人」

小梅「あ、あの顔の……彫りの深い人か……苦手」

メアリー『アタシ気付いちゃったの。彼がやった事は謝るだけじゃすまないワ。アタシを放っておいてなにやってたと思う? 彼ったらっ……』

P「おっと」

小梅「あっ……消えちゃった」

P「編集で消されたんだろうね」

小梅「なにやったの?」

P「なんだろうね」

小梅「隠し事は……"フラグ"……だよ?」

P「切り札になることだろうね。今ここでばらすのは尚早と判断したんだろうね」

小梅「焦らされるの……キライ……」

P「そうなの?」

小梅「うん……こういうことで…………じ、焦らされるのは……ね」

P「覚えておくよ。とりあえずさ」

小梅「……見る?」

P「あぁ」

小梅「でも見せない…………ね? 焦らされるの……イヤでしょ……?」

P「だな。それでDVDどうだった?」

小梅「びしょびしょ……?」

P「良かったってことか。どこが良かった?」

小梅「表情が……グッド……一見ね…………普通の顔……けどどこか狂ってるのが……に、にじみ出てくるの」

P「滲み出る?」

小梅「普通なのに……普通じゃない……!って感じの……普段を知ってれば更に心に来る感じの……わかる?」

P「わかる」

小梅「これメアリーちゃんの……お、お父さんに、みっ、見せるの?」

P「どうだろうね」

小梅「ウソが……へたっぴ……ふふっ」

P「何でそう思う?」

小梅「映像で言ってた……パパに送るって……そらにPさんが……送らないはず……ないもん」

P「極悪人みたいだなオレ」

小梅「ムォンスタァァァ……カプッ」

P「腕を甘咬みしない」

小梅「残念……手遅れ…………ウイルスに感染……しちゃい、ました」

P「他にはある?」

小梅「他の人を……巻き込もうと、するの、いい──」

奏「ここは……?」

まゆ「お世話になってる人が住んでる所♪」

美優「まゆちゃん、ここ……」

まゆ「さぁ行きましょう♪」

奏「そうね」

美優「…………」

まゆ「行きますよ?」

美優「あ、ごめんなさい……少し立ち眩みがしそうだったの。先に行っててくれるかしら?」

まゆ「はぁーい。それじゃ二階の一番奥の部屋に行ってます」

美優「えぇ」

クラリス「気分が優れないのですか?」

美優「えっ……ううん違うの」

クラリス「それならどうして」

美優「ちょっと引け目を感じちゃって……初めての場所だもの」

クラリス「それは私も一緒です。でもまゆさんは手慣れておりました」

美優「それはそうかもしれないわね。私の予想が正しいならここは…………」

まゆ「こんばんはぁーまゆですよぉ」

奏「合カギっぽいけど勝手に入ってよかったの?」

まゆ「私とあの人の仲ですもの。そんなの聞くのは無粋ですよぉ?」

奏「ごめんなさい。少し気になって……それにしてもきれいに整理されてる」

まゆ「私が掃除してるもの。当然よ♪」

奏「これは家族写真……飾ってる人いるんだ」

まゆ「アメリカのドラマみたいよね。最初見たときちょっと驚いちゃった」

奏「どれが彼?」

まゆ「真ん中の左側♪」

奏「結構イケメン」

まゆ「あげないわよ?」

奏「取る気はないわ。それよりいる気配ないけどまだ帰ってこないの?」

まゆ「そろそろ……あ♪」

??「たっだいまーって誰もいないんだけどな」

まゆ「お帰りなさぁい」

??「おわっ! まゆっ……!」

まゆ「お疲れ様ですプロデューサーさん♪」

佐久間P「また入ってきたのか。驚くからやめてくれよ……来るときは連絡しろって言ったろ?」

まゆ「そうでした? それより……じゃーん」

奏「こんにちは……」

佐久間P「……速水さん?」

奏「私の事知ってるんですか?」

佐久間P「もちろん。と言っても名前だけだがね。何でいるんだい?」

まゆ「何か悩んでるらしくてそれの解決プロデューサーさんにしてもらいたくて……ね♪」

佐久間P「悩み事?」

奏「…………」

まゆ「ほら」

佐久間P「何だか知らないけどなんでも相談してくれ。聞くよ」

まゆ「プロデューサーさんもこう言ってくれてるわ」

奏「……実は──」

P「ん?」

小梅「どうしたの?」

P「誰かから連絡が来た。あのバイブはまゆだな」

小梅「二度寝ならぬ…………二度風呂……だね」

P「そうだな」

小梅「あっ……でも……やっぱり三度風呂、かな?」

P「のぼせそうになるよ」

小梅「ドロドロに溶けて…………スープに、なっ、なっちゃう……ね、ふふ」

P「何日放置されてるのオレ」

小梅「2週間?」

P「半袖のシャツで我慢してね」

小梅「なんか……スースーする……」

P「大きいサイズだからワンピースみたいになって見えないから大丈夫だと思うけどスースーするか」

小梅「ちょっと……変態、ち、チック」

P「さすがに下着までは合うサイズなかったよ。でも濡らした小梅が悪いんだからな?」

小梅「刺激的な……DVDだったから…………しょうがない……ふふふふ」

P「たしかに刺激的だけどね」

小梅「それにしても……遅いね」

P「まゆか?」

小梅「うん……来客ってまゆさん……のこと、でしょ?」

P「ここに来る前に寄るところがあってそこにいるんだろう。そこで問題が解決すれば万々歳」

小梅「よく、わから……ない」

P「つまりここは最後の砦」

小梅「知ってる……お婆さんと犬に…………安全を破られちゃう……だよね?」

P「幸いここにはお婆さんも犬もいないから安心だな」

小梅「ゾンビ、まみれで……写真撮影…………変態さんだ……」

P「自転車で轢くのも凄い発想だよね」

小梅「私も……あんな役の…………お仕事して、みたい」

P「カメラマンかバイクレーサーかフリーターのどれ?」

小梅「カメラマン……かな……バイク……怖いし……機械……に、苦手…………あっ……でも体に蟲埋められたい……かも」

P「最後は死ぬかもよ?」

小梅「あ……それはや…………かも」

P「でしょ?」

小梅「あっ、時間といえば…………すごかったね……アレ」

P「アレって?」

小梅「ほら……娘がさ……10年経ったら……」

P「まぁ父親があれじゃグレるかもな」

小梅「私の、金髪は……だ、脱色…………もとに戻せばああなる……かも」

P「服装を少し輝子っぽくするとそうなるかもね。いや、少しパンク過ぎるか……」

小梅「私があのキャラ……そしたらPさんは…………おひげもじゃもじゃ?」

P「釘バット持たなきゃ駄目?」

小梅「だめ…………あれ……トレードマーク」

P「トレードマークかぁ」

小梅「私の……ト、トレードマーク……ってなんだろ……?」

P「ホラーとスプラッタかな」

小梅「血も滴る女…………あ……いいかも」

P「他の人で言うとなんだろうね」

小梅「輝子ちゃんは…………キノコ?」

P「それに関する知識か。もっと目立つのはライブの時の衣装だね」

小梅「あれ……スゴいよね…………私もあんな風に……なりたい」

P「インパクトはあるかも」

小梅「フハハハハハ……」

P「高笑いもいいけどなんかピンッと来ない」

小梅「スプラッタショー……始めよ?」

P「断言してみたらいいと思う」

小梅「スプラッタショー……始めるよ」

P「それっぽい」

小梅「次これにしようかな……」

P「楽しいかもね。舞台は洋館? 墓地?」

小梅「どっちも……捨てがたい…………ゾンビなら…………洋風のお墓……人魂は和風のお墓が……似合う……」

P「日本じゃ土葬はあまり一般的ではないからね」

小梅「どっちも……悲しいことには……か、変わらない……と思う」

P「トレードマークといえば目の下の隈どうしたの?」

小梅「あ……気がついた? 貸してもらった雑誌に…………載ってた」

P「身体的トレードマークだけどアイドルには向かないトレードマークでもあるから難しい。それで本音は?」

小梅「トレードマークに…………ならないって…………言われた」

P「泣き黒子とは違うからね。個人的には好きだけどアイドルとしてはな……」

小梅「ん?」

P「そろそろ寝るか」

小梅「まだ話したい……」

P「まゆも帰ってこないだろうから寝よう」

小梅「おしゃべり……」

P「ベッドの中でも出来る」

小梅「それじゃ……眠くなる、まで……シよ?」

P「だな。帰ってくるのは明日だな」

小梅「なんで……帰ってこないの?」

P「大切な日くらい向こうで過ごさないとな。キャラじゃない」

小梅「キャラ?」

P「この人といえばこれっていうもの。トレードマーク」

小梅「そういえば……さっき聞きたかった……けど……Pさんのトレードマークって……なんだと、お、思う?」

P「影が薄いことかな」

小梅「正解は……これっ」

P「枕はもっと上」

小梅「私専用……くふふ」

P「杏はよく使ってる」

小梅「むぅー…………人気……だね」

P「そんないいものでもないだろうに」

小梅「ビーズクッション…………言い得て……妙」

P「みんな好きだねそれ」

小梅「わたしも、こ、これくらい……欲しい」

P「お腹?」

小梅「ナイショ…………? なにか震えてる……?」

P「まゆから連絡だ」

小梅「あ……やっぱり来られ……ない?」

P「そうらしい」

小梅「見えない……」

P「人のを覗き見ない」

美優「──すみません……私たちもお邪魔しちゃって」

佐久間P「いいえ。お礼を言いたいくらいですよ」

美優「プロデューサーったら……もう」

まゆ「誰の前でいちゃついてるんですかぁ?」

クラリス「仲が良いことは良きことです」

奏「…………」

佐久間P「どうかした?」

奏「……なんでもありません」

佐久間P「まだ悩んでるのか? 大丈夫だよ、俺がプロデューサーを変えるように言うから心配するな」

まゆ「次は奏さんですかぁ? 節操がないのは教育ものですよぉ」

佐久間P「勘弁してくれって。俺が好きなのはお前だけだって」

まゆ「本当ですかぁ? 怪しい」

奏「…………」

クラリス「……少しよろしいですか?」

奏「私?」

クラリス「はい。プロデューサー様、少しの間お部屋をお借りしたいのですがよろしいでしょうか?」

佐久間P「大丈夫ですよ」

クラリス「それでは……」

まゆ「ふふっ……」

美優「それにしてもまゆちゃんとプロデューサーさん、仲が良いんですね」

佐久間P「そうですか?」

まゆ「うふ♪」

クラリス「お呼び立てしてすみません」

奏「それで私になにか?」

クラリス「先ほど佐久間プロデューサーに相談してましたでしょ? そのことで聞きたいことがあります」

奏「……なんですか」

クラリス「まだ悩みがありますね?」

奏「……何故わかるんですか?」

クラリス「シスターとしての勘です。その様子だと当たりのようです」

奏「…………」

クラリス「私に協力させていただけますか?」

奏「協力?」

クラリス「悩みの中身が何かに関わらず、協力したいのです。それが私の……」

奏「あなたの?」

クラリス「失言でした。お忘れください」

奏「佐久間さんとプロデューサーには悪いですがなぜだか晴れなくて……」

クラリス「晴れない?」

奏「安心しろって言われて安心はしてます。ですが心が晴れないんです。なんだか違うって……」

クラリス「それは原因がわかっているのですか?」

奏「心に響かないというか……なんなんでしょうこれ」

クラリス「なるほど──」

小梅「勝った……」

P「負けた」

小梅「トランプ……楽しい」

P「まだ眠くならない?」

小梅「少々……興奮、し、してる……」

P「目を閉じれば眠れるよ」

小梅「うーん……あっ……さっきのメール見せてくれ……れば……寝れる……かも」

P「本当に?」

小梅「うん……ふふふ」

P「はい、どうぞ」

小梅「読んでほしい……な」

P「自分で読みなよ」

小梅「私、か、勝った、Pさん、負けた」

P「わかったよ……」

小梅「ふふっ……言ってみる……もの、だね」

P「一気に読むからね」

小梅「ば、ばっちこー……」

P「急に良い考えが思い浮かんだのでこちらに泊まります。月給の話もありますし。お給料入ったら何を買おうかしら。漆塗りのカワイイお弁当箱狙ってるんです。あんなお弁当箱でお昼を食べられたらいいな。日にち的に帰るのは明日になります。まゆが帰るまで溜めといてくださいね、音符マーク。ハラハラした一日でしたがなんとかうまくいきました。誉めてください、音符マーク。誕じゃないですからね? 生でがいいです、あなたの初めてはまゆの物。日付が変わりそうなのでこれで失礼します。あなたのまゆより」

小梅「長いね……あれ? まだなにかかいてある? 追伸……本気ですからね?」

P「なんのことだろうなぁ」

小梅「さっぱり……わからない……」

P「控えめなんだか大袈裟なんだか」

小梅「謎は、深まる……ばかり…………ミステリー」

P「ミステリーだな」

小梅「ミステリーといえば…………今日のは、さ、サラサラしてた……水っぽいって、いえば……いいのかな?」

P「謎は深まるばかりだ」

小梅「今日は……ありがとう……」

P「どういたしまして。ついでにいっておくと彼女さ、あのDVDでは言ってなかったけど八重歯出来たってさ」

小梅「八重歯が……?」

P「アメリカ人はバカみたいに歯並びを気にするからね。海外の人もアメリカ人の特徴として挙げるくらいには有名。もはやアメリカ人といえばのステレオタイプ」

小梅「芸能人は……歯が……命?」

P「そのネタよく知ってるね」

小梅「うん……あ、り、理由は、き、聞かないで…………なにせ……ミステリアス…………だからね」

P「父親があのDVDみたら卒倒するかもな。あまり関係ないけどアメリカだと歯医者は人気職の一つだよ。それだけ良い歯医者が多いといいけど実際は多くないからね。だからこそ良い歯医者は人気が出て儲かる」

小梅「殺人歯医者…………なんてどう?」

P「スウィニー・トッドと被りそう。ちなみに髪型の流行り廃りはあまりない。地域差はあるものの、髪型が80年代で止まってるなんて地域も珍しくない」

小梅「メアリーパパの……様子…………見てみたいかも……ふふふ」

P「それだけ娘に八重歯が出来るのはショック以外の何者でもない。人によっては自分の力のなさを感じるかもしれないね」

小梅「風の前の塵……だね」

P「祇園精舎の鐘の声?」

小梅「授業で……やった……廃墟って……好き」

P「それには同意する」

小梅「そこで……人がいたって…………思うだっ、だけで……」

P「今はどこで何をしてるのかって考えると楽しいよね」

小梅「う、うん……趣味同じ……だね……これを機に……つ、つ、付きあ……」

P「ところで担当プロデューサーさんとはどう?」

小梅「えっ、あっ……仲いい……」

P「それはよかった」

小梅「……むぅ…………そんなPさん……こうして……あげる」

P「お腹めくらないでくれ」

小梅「アー……むっ……アグ……アグッ」

P「くすぐったい」

小梅「やわらかい……」

P「この前もらったクッションは?」

小梅「あれに匹敵……する、や、柔らかさ」

P「そんなブヨブヨしてる? 自分ではそう感じないけど……」

小梅「少なく……とも…………ピンク色……は……似てる」

P「色か……」

小梅「プロデューサー……じゃ、こうはいかない……」

P「比べられてもね」

小梅「また亀……やりたい……」

P「杏がいいって言えばね」

小梅「まゆちゃん……は?」

P「背後を取られたくない」

小梅「じゃあ……ほたるちゃん?」

P「嫌がるかもね」

小梅「小日向さん……」

P「腰が悪い」

小梅「あ、そうだった……輝子ちゃん」

P「そこが妥当かもな」

小梅「……みちるさん?」

P「やめてくれ」

小梅「…………」

P「…………」

小梅「…………」

P「…………考え事?」

小梅「……んむぇ……」

P「……なにしてるの?」

小梅「ほっぺた……でチュー?」

P「髭が痛くない?」

小梅「前にも……言ったけど…………これが好きなの……」

P「変わってるね」

小梅「Pさんも……変わってるよ」

P「変の塊だからね。わかってる」

小梅「私の……ここが好き……なんでしょ? この窪んでる……袋のところ」

P「そこは好きじゃないんだけどな……」

小梅「目の下のクマが好き……なんて……ヘンタイさん……」

P「彼氏は普通の人で良かったね」

小梅「……意地悪なところ…………キライ」

P「記念日は大切にしなよ」

小梅「そういうの……に、苦手……」

P「初めて会った日や告白した日は?」

小梅「それくらいなら…………考えてる……学校でもよく聞く話題……でも、よ、よくわからない……具体的に、なにすれば、いいか……」

P「一緒に食事するだけでも良いんじゃない? なにか特別なことがしたければ計画するって位で。オレもこういうことには疎くてね」

小梅「私も……よくわからない……」

P「個人的には好きにしたいけど誕生日くらい、大切な人と過ごすべきだと思う」

小梅「大切な人…………あっ、そういえば……」

P「どうした?」

小梅「最近また……あの子がいてくれるように……なった」

P「いつ?」

小梅「プロデューサーと……いるときに……ガンバレって」

P「白坂小梅復活だな」

小梅「う、うん……」

P「早速記念日にすれば?」

小梅「友達記念日……?」

P「名前はなんでもいいよ──」

まゆ「うふ、うふふ、うふふふ♪」

奏「何をしてるんですか?」

美優「あ、奏ちゃん。まゆちゃんさっきから携帯電話見ながらこの状態で……」

まゆ「これから私はぁ……うふふ」

奏「プロデューサーとなにかするんですか?」

まゆ「まぁ"私らしいこと"よ♪ 見てく?」

奏「怖いから遠慮しておくわ」

まゆ「何を想像したのかわからないけど残念。今日は"大切な人と過ごす"日ですもの。声が漏れるかも♪」

美優「あの、あまり過激なことは……」

まゆ「声は抑えます」

美優「えっ、あっ、その……」

奏「あまりからかうのは感心しないわよ」

まゆ「あっ、バレちゃった? うふふ」

奏「ところでなんで携帯電話を見ながら笑ってたの?」

まゆ「メールの返事が返ってきたから嬉しくて。やっぱりまゆと……うふっ」

奏「メール?」

まゆ「こぉれ♪」

奏「…………ふーん、そういうことなのね」

まゆ「通じあうものがあるのね。もしかして気が合うのかしら?」

奏「さぁ……」

クラリス「…………」

美優「クラリスさん?」

クラリス「奏さん」

奏「考えておきます」

美優「?」

まゆ「うふっ。それじゃ私は愛しの人のところへ♪」

クラリス「…………」

美優「私たちは寝ましょうか」

奏「そうですね──」

蘭子「夜明けの明星!」

輝子「モォォォォニングッスタァァァァァァァ! ヒィィハハハァー!」

蘭子「フゥーハハハハハ!」

輝子「モーニングコールだ! モーニングコールをするゼ!」

蘭子「心魅了せし声で死者を起こさん!」

奈緒「パンクとゴスロリ……なんか合わないなぁ。ん? でもこれはこれでありなコンビか?」

蘭子「運命はかくも扉を叩く!」

輝子「ヒャヒャヒャヒャアー!」

奈緒「朝から元気だな……フッ……ぁ」

蘭子「ヒュプノスからの招待状」

奈緒「は?」

輝子「すまない……わからない、フヒ」

奈緒「えっと、少し夜更かししちゃったからな……」

蘭子「我の時間に入ってくる……か」

奈緒「……この前貸したの楽しいか?」

蘭子「奇妙な冒険というのも一興、ククク血がたぎる」

輝子「ところで……ふ、ふたりともあれを……」

奈緒「ん?」

小梅「ン……んッ……ンギュ」

P「っと……やりにくいな」

小梅「オッ、オホッ……ブヒ」

P「そんな馬鹿な」

小梅「……ジョ、ジョーク」

P「まだする?」

小梅「うん……ふふっ」

輝子「あ、あれって……フヒ」

蘭子「ふ、布団が邪魔で見えない」

奈緒「掛け布団がな……いや、そういうことじゃない」

輝子「よ、夜通しでライブバトル?」

蘭子「ヒャァー……」

奈緒「こういうのって大体勘違いオチだよな……」

小梅「ぬっ、テッ……ホッ」

P「そんなに楽しい?」

小梅「触れるか……ふ、触れないかの……ギリギリが、た、楽しい……」

P「唇触れるよ?」

小梅「それも……いい…………ふふ」

P「とりあえずさ……みんな来てるから」

小梅「だね……」

蘭子「ぬっ……我が気配に気が付いてる……だと?」

輝子「っぽい、な」

奈緒「とりあえず素直に出ていかないか?」

蘭子「うむ…………我が友よ!」

P「おはよう」

小梅「おは、よう」

蘭子「煩わしい太陽ね!」

小梅「溶けちゃう、ね」

奈緒「……おはよ」

P「おはよう」

輝子「おはよう……兄弟、フヒ」

小梅「おはよう輝子……ちゃん」

輝子「おはよう、マイシスター」

P「朝食にしようか」

輝子「おっと兄弟……ごまかされないぜ、フヒ」

奈緒「小梅ちゃんとなにしてた」

P「何って……説明が難しい」

小梅「鼻……プレイ?」

輝子「お前は何をいってるんだ?」

小梅「えっとね、鼻と鼻で……チュー? 鼻と鼻を、コツンコツン……って」

奈緒「鼻キスか……」

輝子「想像ができない」

小梅「やってみるとね……」

輝子「フ、フフ、ちっ、近っ……フヒ」

小梅「……ね?」

P「今日は午後からお客さんが来る」

蘭子「来客だと?」

P「誰かは来てからのお楽しみ──」

奏「こんなところにも人って住んでるのね」

まゆ「人ってどんなところにも住めるものよ?」

クラリス「…………」

まゆ「どうしたんですか?」

クラリス「自分のことを棚にあげて申し訳ないのですが、なぜこちらに?」

まゆ「家に帰ってるだけですよぉ? それに……ね?」

奏「?」

まゆ「着けばわかるわ」

奏「着かなければわからないと」

まゆ「そうとも言う」

クラリス「…………」

美優「あの……どうしたんですか?」

クラリス「いえ……」

美優「……まゆちゃん」

まゆ「なんですか?」

美優「私、少しだけ気分が悪いから先にいっててもらえるかしら?」

まゆ「はぁーい。昨日からですが大丈夫ですか?」

美優「歳かしらね……アハハ」

まゆ「着いたら薬探しておきますね。それじゃ先にいってます。行きましょう奏ちゃん」

美優「お願いね」

クラリス「…………」

美優「行ったわ。もう話しても大丈夫」

クラリス「なんということはないのですが……まゆさんになにか見透かされてる気がしてならないのです」

美優「まゆちゃんに?」

クラリス「こう言っては失礼ですがなにか……得体がしれないというか……すみません、神に仕えるものがこんなのではダメですね」

美優「ううん。たしかにまゆちゃんは得体がしれないというかよくわからないところもあるわ。けどそれは誰だってそうじゃないかしら? 私だって誰かに突き動かされてるって思うこともあるけど、極力気にしないようにしてるの。逃げてるともいうけどね、ふふ」

クラリス「気にしない……ですか」

美優「そう。私達がただ気にしてるだけでまゆちゃんがどうのってことはないわ。まゆちゃんはただの普通の女の子。違う?」

クラリス「たしかにそうですが……」

美優「まぁPさんとの関係とか気になることもあるけど……ね?」

クラリス「すみません……私の考えすぎでした。最近些細なことでも気になってしまって……」

美優「そういうときに最適なストレス発散方法があるんだけど……する?」

クラリス「ストレス発散方法?」

美優「あなたから見たらちょっとだけ背徳的かしらね」

クラリス「公序良俗に反するものは宜しくないですよ?」

美優「公序良俗に反してはいない……と思う。あまり健康には良くないかもしれないけど」

クラリス「何をするんですか?」

美優「部屋にいけばわかるわ。藍子ちゃんの部屋にいけば、ね」

クラリス「藍子さんの部屋ですか?」

美優「Pさんには内緒でたまに開いてるの、あ、Pさんには内緒にしてね──」

P「ところでお菓子類の補充は大丈夫?」

奈緒「あたしはあたしで買うから大丈夫」

輝子「……うーん」

蘭子「甘き汁は吸い付くしたわ。千年は不要」

P「みんなからもらった家賃から出したりしてるから足りなくなったら遠慮なく言ってね」

小梅「わ、私も甘い……し、しばらくはいい……かな……昨日は、お、お楽しかった」

蘭子「お楽しかった? 新たなる言霊……か」

P「高森さんの部屋はどう?」

輝子「親友のロリポップを私にぶちこめェェェェェ!」

P「足りないのか」

輝子「フヒ、実はな。よくお茶会が開かれてるらしく、よ、よくなくなる」

P「ストレス溜まるとやけ食いするからね」

輝子「私はキノコ……美優さんはお菓子……フヒ」

P「三船さんも例に漏れずだからね」

奈緒「……あたしはそんなに食べないな」

P「ストレス発散は大事だよ」

小梅「あ……」

蘭子「鳴り響く警鐘」

P「帰ってきたか」

まゆ「只今戻りましたぁー♪」

P「お帰り」

輝子「お帰り……キノコあるぞ」

まゆ「それじゃお夕飯に使いましょう」

美優「輝子ちゃん、また新しいキノコ?」

輝子「フッ、フフ……まだまだ成長する」

美優「まだおっきくなるの? ちょっと体に入れるのが怖い大きさね……」

輝子「きちんと食べられるから安心。フフッ……フフフ」

蘭子「純白の邪気……!」

P「お礼言っておきなね」

輝子「お礼にこのキノコをあげる予定……喜んでくれるとうれしい」

奈緒「誰に?」

蘭子「我が言霊を解する猛る獣を使役する者に」

P「楽しかった?」

輝子「スリルたっぷりだった、フフ」

奈緒「猛る獣を使役する者って誰だ。猛獣使いじゃあるまいし」

クラリス「……皆様少しよろしいでしょうか?」

P「なんですか?」

クラリス「皆様にご紹介したい人がいます。奏さん、こちらに」

奏「……はい」

クラリス「既にご存じの方もいらっしゃると思いますが改めて……」

奏「……あ、速水奏……です。よろしく」

クラリス「訳あってここに住んでもらおうと思っています。ついては」

P「部屋と家賃については後で話聞くよ」

クラリス「皆様の意見を……ハイ?」

P「住むんでしょ? オレは賛成」

まゆ「私も賛成です」

美優「私も……」

輝子「キノコ仲間を増やすチャンス、フフ」

小梅「ザクロといえば……冥界?」

蘭子「ククク、漂う誘惑の乙女の参戦に異存はない」

奈緒「賛成もなにもあたしは……まぁ……いいんじゃない?」

P「上の階や他の人については後で話聞いておく」

まゆ「賛成すると思いますけどね」

奏「だそうですよ?」

クラリス「皆様……」

P「部屋はどうする?」

クラリス「奏さんさえ宜しければ、私と同じ部屋にさせていただきたいのですが……」

P「速水さんはどうしたい?」

奏「私はなんでも。まぁ、多少なりとも知ってる人だと助かる……かな。それにシスターだし、相談したいこともたくさんあるもの」

P「決まりですね。それでは新たに部屋を借りるということで」

クラリス「お手数をお掛け致します」

P「クラリスさんにも書いてもらうものがありますからついてきてください」

クラリス「はい──」

まゆ「Pさんが手続きしてる間に夕飯の支度をしちゃいましょ♪」

奏「私は何をすれば?」

小梅「奏さん……奏さん……」

奏「なにかしら?」

小梅「ホラー好き?」

奏「ホラー映画多いし、人並みには見る方だと思うわ」

小梅「あ、それなら……向こうで一緒に、み、観よ?」

まゆ「お夕飯の支度は私がしておくわ」

輝子「私も手伝う、フフ」

美優「私も手伝わせてもらっていいかしら?」

奈緒「あたしは他の人のとこに行ってくる。美穂のこと心配だし」

蘭子「さ迷う魂になりてそなたを守護しよう」

奈緒「さ迷っちゃダメだろ……」

まゆ「そういうわけで行動開始♪」

P「──これで住む準備はできた」

クラリス「ありがとうございます」

P「あとは家賃ですが……」

クラリス「私が払います」

P「速水さんにも聞いてみないことには判断しかねます。話さないと勝手に恩を押し付けることになります」

クラリス「わかりました。すみません、焦りすぎました」

P「部屋の管理は基本的な部分は任せますがオレも介入することもありますのでご了承ください」

クラリス「はい」

P「まゆも度々伺うかと思いますが、速水奏のこと頼みます」

クラリス「その覚悟です。この身に代えても」

P「頼みますよ」

クラリス「……夕飯の手伝いをしてきます」

P「少しゆっくりしていきましょう。静かな時間はもうないでしょうし」

クラリス「ですが……」

P「台所にあれ以上入りませんし」

クラリス「……これも神が与えたもうた休息なのでしょうね」

P「それにしてもシスターの仕事というのは大変でしょうね。節制しなければいけないし、それを期待されてるところもありますしね」

クラリス「その通りです」

P「そういうところはアイドルと似てますね」

クラリス「懺悔……いえ、相談に来た方の中にもそういった"期待"に押し潰されそうだという方がおりました」

P「よくわかります。あの人は"そうであろう"と思われると中々そういった見方から外されないですし」

クラリス「心当たりでも?」

P「ありすぎて」

クラリス「…………」

P「なにか?」

クラリス「本当に静かですね」

P「防音がしっかりしてますからね」

クラリス「知ってますか? 懺悔室も意外と静かなんですよ?」

P「昼寝してみたくなりますね」

クラリス「…………」

P「したことありますね?」

クラリス「何度か……」

P「どうでした?」

クラリス「……っすり」

P「はい?」

クラリス「ぐっすり寝てしまいました……!」

P「そんなに気持ちよかったんですか?」

クラリス「言い訳にもなりませんが……その時ちょうど教会の建て直しで"努力"してまして……自暴自棄になっていたのです」

P「静かなところを探し求めていたら懺悔室に至ったと」

クラリス「そこが"唯一の聖域"で……いえ汚されていない場所だったので」

P「一応皆さんにも良識はあったわけですか」

クラリス「懺悔室は私の様々な起点でもあります。なので自然と足が向いてしまうのでしょう」

P「努力の結果、体の調子はどうですか?」

クラリス「病気はありません」

P「そうですか」

クラリス「…………」

P「服、シワになりますよ」

クラリス「……愚かな自分が許せません」

P「誰でもやることとはいえ、客観的に見たら誉められたことではないですからね。神に仕えるシスターが"己"を武器に……ですからね」

クラリス「…………」

P「まぁ"男"じゃないオレがいっても負け惜しみにしか聞こえないでしょうが」

クラリス「そんなことはありません。どんな人の言葉もチクリとする事はあります」

P「それももうすぐ……かもしれませんね」

クラリス「?」

P「軽い話しますか」

クラリス「そういたしましょう。よく考えてみれば私はあなたのことをよく知りません」

P「でしょうね」

美穂「──うーん……」

ほたる「どうしたんですか?」

美穂「選んだ材料あれでよかったかなって」

ほたる「お夕飯の話ですか?」

美穂「そう。好きな食材を言ってくれって言われてもちょっと困るよね」

ほたる「まぁたしかに……苦肉の策っていってました」

幸子「お二人とも手が止まってますよ。カワイイボクが勉強を見てるんですからサボるのは許しませんからね!」

美穂「ひゃっ」

幸子「まったく、PさんもPさんです。いきなり部屋を訪ねてきて、勉強を教えてくれだなんて。言葉が足りませんよ、言葉が」

ほたる「幸子さんは何にしました?」

幸子「ボクですか? なんだっていいじゃないですか」

ほたる「あ、私なんかが聞いたら不吉ですよね……すみません」

幸子「うっ……まっ、まぁこの問題が解けたら教えてあげないこともないですよ」

ほたる「国語ってどうも苦手です……」

幸子「たかだか漢字でなにを言ってるんですか」

ほたる「なぜか一画足りなかったり微妙に間違ってたりで合ってた試しがありません。解答欄もひとつずれることあるし……うぅ」

幸子「それは学力云々ではないのでは?」

美穂「それにしても幸子ちゃん頭いいね」

幸子「当然ですよ。このボクですよ? カワイイだけでなく賢いんです。賢い・カワイイ・天使と三拍子揃ったボクは完璧なんです」

美穂「憧れちゃうな」

幸子「トータルバランスです、トータルバランス。それが高水準なだけです。ふふーんっ」

ほたる「胸は私と同じくせに……」

幸子「ほたるさん!?」

美穂「あっ、それ新しいキャラ?」

ほたる「はい」

幸子「新しいキャラ? どういうことですか。もしかして二人してボクを罠にはめる気じゃないですよね? それならボクにも考えというものが」

美穂「そ、そうじゃなくてね幸子ちゃん。ほたるちゃんは、えっと何て言えばいいのかな……新しい自分を模索中なの」

幸子「いまいち要領を得ません」

ほたる「私って不運な上にどうしても治せないんです。だからこれを利用しようと思って」

幸子「ひねくれるのがそうなんですか?」

ほたる「やっぱりそう見えます? 一応Sな人のつもりなんですが……」

幸子「……あれではただの悪口になってます」

ほたる「Sって難しいなぁ……やっぱり男の人いじめないとダメなのかな?」

美穂「い、いじめる……?」

ほたる「平手打ちしたり……あ、焦らしプレイとか……!」

幸子「あなたは何を言っているんですか?」

奈緒「……なにしてんの?」

美穂「あ、奈緒ちゃん」

幸子「ひっ……!」

奈緒「今夕飯の支度してる。こっちはどう?」

ほたる「幸子さんに勉強を教えてもらってます」

奈緒「ふーん」

幸子「な、なんですか」

奈緒「特に何ってのはないけど……新しい人が来たからそれを知らせに行こうかとしてたけど手間が省けたなーって」

幸子「あっ、新しい人?」

奈緒「速水奏っていう人」

幸子「聞いたことがあります」

美穂「どんな人?」

幸子「たしか……キス魔だって話です」

ほたる「キス魔? キス魔ってもしかして……」

奈緒「十中八九あのキ……チューの事だろうな」

美穂「な、なんだか大人」

幸子「奈緒さんと同じ17歳ですよ?」

美穂「キス魔ってことはプ、プロデューサーにも迫ってるのかな……?」

ほたる「キャー爛れた関係です!」

美穂「だよね、だよねっ!」

ほたる「夜の事務所。残業してるプロデューサーさんを横目にテレビを見て笑う奏さん」

奈緒「なんか始まったぞ」

幸子「またですか。これで何回勉強が中断されたことか……ハァ」

美穂「でも実はプロデューサーが疲れないためにコーヒーを入れて出してあげてる奏さん」

ほたる「最初はうっとうしいと思ってたプロデューサーさんもそれに気がついて、ふっと尋ねる。奏、お前もしかして……」

美穂「その時、プロデューサーの唇に人差し指をソッと当てて応える。言葉がないのに二人の気持ちは通じあって唇が……」

ほたる「キャー!」

美穂「キャー、キャー! 夜の事務所って、夜の事務所って!」

ほたる「大人な雰囲気ですよねっ」

美穂「うんっ、うん」

幸子「お二人が何をいってるのかさっぱりです」

奈緒「安心しろ。あたしもだ」

まゆ「──それじゃいただきまぁす」

P「いただきます」

幸子「い、いただきます……」

まゆ「あら? 幸子ちゃんが同じ食卓にいるなんて珍しいわ」

幸子「たまにはこういうこともしないといけませんからね。人付き合いですよ、人付き合い」

杏「なら杏の方に引っ付かないでよ食べづらい」

幸子「た、たまたま、偶然ですよっ」

杏「……なんでもいいけどね」

輝子「キノコ……フフ。マッシュルーム……クフフ」

奏「?」

クラリス「なにかほしいものはありますか?」

奏「それじゃドレッシングを」

クラリス「わかりました」

奏「ありがとうございます。それにしてもサッパリしたものが並んでますね。Pさんが考えたと聞いたのでてっきり……」

まゆ「中華でも並んでると思いました?」

奏「うん」

蘭子「氷海の天使な悪魔」

美穂「それは言い過ぎだと思う……」

杏「たしかにカワイイものは持ってるね。フハハ」

まゆ「でもまゆがお世話すると……うふっ」

P「食事中」

輝子「フフ、フフフ……フヒ」

小梅「どう……したの?」

輝子「ダメだまだ笑うな……いやしかし」

ほたる「変なものでも食べちゃった? あ、もしかして私がとっておいたチョコを……あれ賞味期限切れてたような……あれ、なんの音かな?」

蘭子「ムッ、我が言霊を解するものから連絡だ」

P「なんだって?」

蘭子「我が試練は終わらず悪戦苦闘。参上出来ず無念の極み」

P「勉強を疎かにしちゃいけない」

杏「Pさん時々鬼だよねぇ。あむぁ」

幸子「二足の草鞋を履くなら両立しなければいけませんからねっ」

小梅「ドヤ顔……ふふ」

杏「うまいこと言ったつもりか」

蘭子「もう一件ある。猫娘からか……ふむ」

美穂「なんだって?」

蘭子「……我に対する挑戦と受け取ろう」

美穂「え?」

蘭子「Pちゃんの鬼ィー! 何でみくにゃんがみちるチャンの宿題見なきゃいけないにゃあ! 鬼っ、悪魔ぁー! 子猫! にゃー!」

美穂「子ネコ?」

杏「おそらく一部分のことだね」

美穂「え……? あ」

P「…………」

まゆ「まゆがついてます」

ほたる「なんでニャーニャー言ってたんですか?」

蘭子「追伸を見よ」

ほたる「えっと……悔しいから音読するにゃ?」

蘭子「師範役に任命された腹いせか……フッ」

ほたる「それだけじゃなさそうだけど」

藍子「…………」

実優「おいしい……どうしたの? 食が進んでないわよ」

藍子「すみません。なんだか納得いかなくて」

美優「納得いかない?」

藍子「Pさんが言ったことです。やらなくていいって。普通はしてもらいたい、してあげたいものじゃないですか。なのに……美優さんはどう思いますか?」

美優「たしかに不思議。私もしてもらいたいって思うもの」

藍子「そうですよね……」

クラリス「たしかに喜ばれる日、そうあるべき日です」

藍子「あ、クラリスさん」

クラリス「こちらのテーブルにお邪魔してもよろしいでしょうか?」

藍子「はい。美優さんもいいですか?」

美優「えぇ」

クラリス「ありがとうございます。お話を中断させてすみません」

美優「いいえ。何を話してたかしら?」

藍子「私もしてもらいたいって話です」

美優「そうだったわね。それでね、最近思ったの。してもらいたくないって人もいるって。それは嫌だからっていうのもあるのかもしれないわ。楽しい思い出ばかりじゃないもの」

藍子「重い言葉ですね……」

美優「思い返してみればなんだけどね。私も最近考えるようになったの」

クラリス「それでもやはり喜ばれるべき日です」

P「…………」

まゆ「どうかしたんですか?」

P「なんでもない」

まゆ「変なPさん……」

奏「…………」

まゆ「奏さんまでどうしたんですか?」

奏「やけに品目が多いと思って。これなんてほら。サラダにしては多くない?」

杏「……材料選びは杏も参加した」

まゆ「杏ちゃんが? それはえらいわ♪」

杏「一応特別な日だし……」

まゆ「なにかいいことでもあったのかしら?」

輝子「フッ、フフ……」

小梅「お、落ち着いて……しょ、輝子ちゃんっ」

輝子「フ、フヒフ……フヒ」

P「…………」

輝子「ヘイッ……!」

まゆ「?」

輝子「ソ、ソイツはどうだった……!」

まゆ「お料理のこと?」

輝子「そ、そうだっ」

まゆ「美味しかったわ。材料が良かったわ♪」

輝子「ヒャッハー! ズップリくわえこんで、いや失礼……そ……そうかうまかったか、うん」

幸子「……まぁそれはそうですよね。なにせボクも選びましたからね!」

まゆ「幸子ちゃんも?」

幸子「え、えぇ」

美穂「わ、私も選んだかなー……なんちゃって」

ほたる「私も……喜んでくれてうれしいです」

まゆ「美穂ちゃんとほたるちゃんも? ありがとう」

美優「私も選んだの。ほら、そのパプリカ」

藍子「そっちのは私。喜んでくれるといいな」

まゆ「お二人も?」

クラリス「僭越ながら私も参加させていただきました」

まゆ「クラリスさんまで……」

蘭子「ククク、我の眼に狂いはなかった」

まゆ「蘭子ちゃんも?」

P「ついでに言うならここにいるほぼ全員が選んでる」

奏「私は選んでないけどね」

P「だからほぼ全員ね」

まゆ「私も選んでないわ。仲間ね」

輝子「そ、それはそうだ……な、なにせ……」

小梅「がっ、がんばって」

輝子「なにせっ……誕生日、だ、だから……フヒ」

まゆ「え?」

輝子「ハ、ハッピーバースデー……フッ、フヒ」

まゆ「……え?」

P「……そういうことだ」

輝子「それとこれは……みんなを代表して私からの、プ、プレゼントだ」

まゆ「これは……キノコ?」

輝子「ただのキノコじゃない……本物のシメジだ」

まゆ「本物?」

P「スーパーで売ってるものじゃない、野生のシメジ」

輝子「少し苦労した……でも味はお墨付き」

まゆ「輝子ちゃん……ありがとう」

輝子「フ、フヒ……お礼なら親友にも言ってやってくれ、クヒ……変な声出た」

まゆ「Pさん……」

P「君の希望も満たしてるし、みんなの希望も満たしてる」

まゆ「……っ、ありがとうございます」

杏「一応私も誕生日だったけど黙っておこう。飴もらったし」

P「まゆからメールも送られてきたからな。ちょうどと思って」

輝子「ウソはいけないぞ親友……時間軸がおかしい、フフ」

美穂「て、照れ隠しだよ輝子ちゃん」

まゆ「みんなもっ……ありがとう」

美優「まゆちゃん……」

P「まゆ……」

まゆ「それじゃあ、Pさんにベッタリくっついてもいいですか? いいですよね。答えはわかってます!」

P「ならくっつかないでくれ」

まゆ「うふ♪」

美優「今のうちに片付けましょう」

藍子「そうですね」

クラリス「はい──」

まゆ「はぁー……気持ちいい」

P「…………」

まゆ「黙ってどうかしたんですかぁ? のぼせちゃいました?」

P「祝ってすまなかった」

まゆ「その事ですか。いいんです。楽しかったですし。それに誕生日は過ぎましたから。それも計算のうち、ですものね」

P「たしかに誕生日は過ぎてるから正確には"誕生日を"祝ってはいない」

まゆ「えぇ。だから誕生日を祝われたくないまゆと祝い事をしたい皆の希望が満たされる。これぞウィンウィンの関係。ですよね?」

P「まぁな」

まゆ「こうしてPさんとお風呂に入れる事。それだけで嬉しくて♪」

P「それはよかった」

まゆ「それにいつもは無関心なのにこうして寄り掛からせてくれますし……そっち向いてもいいですか?」

P「…………」

まゆ「沈黙は了承と取りまぁす♪」

P「まゆ……」

まゆ「はあぁい」

P「今日はこの部屋には誰も入ってこない」

まゆ「あ、だから片付けが終わったらみんないなくなったのね。杏ちゃんまでいなくなったのは不思議ですけど」

P「プレゼントはどうだった?」

まゆ「あのキノコですか? きちんと頂きます。輝子ちゃんのプレゼントですもの♪」

P「そうか」

まゆ「…………」

P「抱き付いてどうした?」

まゆ「……祝われるのが怖いのは今でも変わってません」

P「…………」

まゆ「産まれたのを自覚するので嫌なんです……」

P「まゆ……」

まゆ「一歩また一歩と近付いているぞと刻まれるようでたまらなく怖いんです……」

P「…………」

まゆ「あなたがそばにいてくれる今も、これだけは変わりません」

P「簡単にはいかないからな」

まゆ「だから……こんなまゆを許してください」

P「…………」

まゆ「……ごめんなさい。暗くなっちゃいましたね。明るい話をしましょう」

P「……そうだな」

まゆ「えっと……Pさんからはプレゼントないんですか?」

P「オレからの?」

まゆ「はい。なにかあったら嬉しいなぁ……って」

P「ないこともないが……」

まゆ「あるんですか?」

P「ある。それも君が前から欲しがってたものだ」

まゆ「私が欲しがってたもの? お洋服……は違いますね。キッチン用品? でも揃ってるわ。うーん……」

P「わからないならいい」

まゆ「待ってください! もう少し考えてます! 私の欲しいもの……私の欲しいもの……」

P「"まゆ"の欲しいもの」

まゆ「私の欲しいもの……」

P「こう言ってるのも恥ずかしいんだけどね」

まゆ「まゆの欲しいもの……あっ♪」

P「……そういうこと」

まゆ「えっ、あっ、でもいっ、良いんですか」

P「まぁ……うん」

まゆ「本当にまゆで良いんですか……?」

P「あぁ」

まゆ「ほ、ほんとのほんとに?」

P「……何度も言うのは恥ずかしい」

まゆ「うふ♪」

P「部屋は綺麗にしてある」

まゆ「そういうところは手抜かりないんですから、んもう。でもどうせ汚れちゃうと思いますよ? まゆががおーって食べ散らかしちゃいます♪」

P「防音はしっかりしてるけど静かにね」

まゆ「はぁーい。うふっ──」

幸子「いいですか? この線から出ないでくださいね」

杏「朝まで起きる予定ないしへーきへーき」

幸子「そんなこと言ってボクを騙そうとしてもムダですからね」

杏「杏がそんなことに労力使うわけないじゃん。お金にもならないしさ」

幸子「それとあまりそこらのものを触らないでくださいね。汚されたらたまりません」

杏「一晩だけだし大丈夫大丈夫」

幸子「全然大丈夫に聞こえません」

杏「信じるか信じないかはあなた次第」

幸子「信じられるように努力してください」

杏「辛辣……」

幸子「慎重といってください。ボクの部屋にあげてあげただけでもありがたいと思ってください」

杏「それは感謝してる。幸子様々ぁー」

幸子「Pさんはなんでボクに杏さんを押し付けたんだか……まったく独特の感性してますよ」

杏「私だからじゃない?」

幸子「どういうことですか」

杏「杏自分より大きい人苦手なんだよね」

幸子「それいったら全員じゃないですか」

杏「あー、うんそうだね。苦手というより……ダメなんだよね」

幸子「ダメ? 怖いってことですか?」

杏「吐く」

幸子「そこまで!?」

杏「言っとくけど冗談じゃないよ?」

幸子「……だからあの薬を飲んでたんですか」

杏「まぁね。弊害というか合併症というかね」

幸子「…………」

杏「小梅ちゃんや輝子なら大丈夫。だからこの部屋にしたんだよ」

幸子「お二人は下の階ですがね」

杏「それを言ったらおしまい。それに騒がしいのも無理。すぐ胃に来る」

幸子「……苦労なさってるんですね」

杏「ニートをするのも楽じゃないよ」

幸子「一つお聞きしたいのですが佐久間さんはどうですか?」

杏「よくわからないから判断保留してる」

幸子「ボクは苦手です。というか怖い」

杏「スットレートだね」

幸子「何故かはボクにもわかりません。失礼なことだとは思ってますが……」

杏「まぁそれでも……」

幸子「人を信じろとは言わないでくださいね。それこそいきなりは無理です。今こうしてるのも」

杏「言わないよ」

幸子「はいぃ?」

杏「そんなこと言うわけないじゃん。だって杏だよ? 私が人を信じられてないのに言っても説得力ない」

幸子「……たしかに」

杏「うわっ、今の傷付いた」

幸子「段々とPさんに染まってません?」

杏「どうだろうね。杏は元々こうだよ。人付き合い好きじゃないし。双葉杏は静かに暮らしたい……ってね」

幸子「Pさんに初めてあったときはどうでした?」

杏「…………ぐぅ」

幸子「寝ないでください」

杏「とても口には出せないことを口走った」

幸子「なにしたんですか……」

杏「それをいっちゃおしまいよぉ。そういう幸子はどうなの?」

幸子「呼び捨てですか……そうですね…………ふ、普通でした」

杏「ふーん」

幸子「あっ、信じてないですね!」

杏「だってPさんだよ?」

幸子「それはそうですが……」

杏「杏はあったの最近なんだけどね。向こうは知ってたけど。幸子は?」

幸子「そうなんですか? ボクは──」

ほたる「お茶が入りました」

美穂「あ、ごめんねほたるちゃん。本当なら私がやることなのに……」

ほたる「気にしないでください。美穂さんは体の調子が悪いので仕方ないですよ。それにこうしてお茶をいれるのってなかなか出来ないことなので」

美穂「ほたるちゃん……」

ほたる「それと謝らないといけないことがあります」

美穂「謝ること?」

ほたる「カップの取っ手が外れちゃいました」

美穂「えっ!?」

ほたる「ごめんなさい! 本当にごめんなさいっ!」

美穂「あ、カップのことはいいよ。それよりケガしなかった?」

ほたる「それは幸いというかなかったです」

美穂「よかった」

ほたる「こういうことになるからあまりお茶とかいれないんです」

美穂「ほたるちゃんついてないよね」

ほたる「そうですよね……でも最近はそれでもいいかなって思えてきて」

美穂「そうなの?」

ほたる「人生バランスなんだなって」

美穂「バランス? 良いことの後には悪いことが起こるとかそういうの?」

ほたる「それもありますけど人生どこかでバランス取るんだなって気が付きました」

美穂「あ、それって蘭子ちゃんがよく言ってるね。因果応報だっけ?」

ほたる「良い言葉ですよね。人間万事塞翁が馬も好きです」

美穂「わからなくもないけど……でも気が滅入らない?」

ほたる「最近はそうでもないです。不運なのは私だけじゃないって知りましたし、コントロールも出来てるので」

美穂「コントロール? それってもしかして……」

ほたる「はい。そうすることによって不運を消化してるのです」

美穂「なるほど。たしかに不運だよね」

ほたる「不運です。この前までクーラーが入ってなかったから暑くてぬるぬるでした」

美穂「不運だね」

ほたる「不運です。この前なんて料理を作ったのですが──」

クラリス「…………」

奏「お風呂お先にいただきました」

クラリス「あ、はい」

奏「画面を食い入るように見て何してるんですか?」

クラリス「頼まれたことをしているのです」

奏「美穂ちゃんのモニターですよね? そんな食い入るように見なくても良くないですか?」

クラリス「ですが頼まれた以上一時も目を離すことは出来ません」

奏「真面目なのはいいですけど少し重いですよ?」

クラリス「重い?」

奏「それで傷付いたり頼みにくくなる人もいるってことです」

クラリス「…………」

奏「……出過ぎたこと言ってすみません」

クラリス「いえ、助かりました。たしかに少し肩に力が入っていました」

奏「それにしてもPさんって何なんですか?」

クラリス「私にもわかりません。知人の知り合い程度の面識しかないので計りかねます」

奏「ミステリアス……か」

クラリス「人は誰しも多少なりとも闇や霧を抱えているものです。そのわからない部分を指してミステリアスというのです」

奏「なんだか深い言葉。ところで優しさに傷付く人がいても不思議じゃないって思います?」

クラリス「人の優しさに悪意はない……と言うのが普通なのでしょう。優しさはお互いが傷付かないための定石ですから」

奏「含みがある言い方」

クラリス「私自身もそう思っていました。悔い改めなさい、神は赦してくださいます。何度言ったかわかりません」

奏「神が赦しても人が許さない……か」

クラリス「あなたも存外ミステリアスな方ですわ」

奏「フフ、ありがとうございます」

クラリス「私たちシスターは自分の……いえ違いますね。他人の物差しを自分の物差しにして図ってしまいます。それがシスターとしての性なのでしょう」

奏「誰が許しても自分で許してないと……ね」

クラリス「私は過去に、お仕事は選んでもいいんじゃないでしょうかと訪ねたことがあります。それは今でも変わらずそう思っております。ですが最近は『何故』を考えています」

奏「人の行動には意味がある、か。仕事を選ぶ方にも理由がある」

クラリス「私はいつの間にか独り善がりな行いをしていたのです。それはいつからなの、どのくらいなのかわかりません。だからこそ今こうしているのです」

奏「私も一緒かも。同じもの同士一緒に見ますか?」

クラリス「はい」

奏「あ、その前にお風呂を。それまで私が見てます」

クラリス「お願い致します。ところで……」

奏「なんですか?」

クラリス「何故お二人は笑顔で不運について話しているのですか?」

奏「人の業……かな」

クラリス「業? 性というわけですか?」

奏「そうかも。人のというより女の子のかな」

クラリス「……わかりかねます」

奏「口では説明しづらい」

クラリス「……体を清めてきます」

奏「お湯で洗ってくださいね」

クラリス「そのつもりですが?」

奏「勇気を出したジョークだったんだけど……」

クラリス「すみません。そういったことには疎くて」

奏「気にしないで。それじゃ私はモニター見てる──」

小梅「うわぁー♪」

蘭子「拘束されし謎の黒乙女……!」

小梅「見てっ、スゴい血……飛んでる」

蘭子「甘き誘惑の魔女!」

奈緒「だから見ない方がいいって言ったのに……」

小梅「もうちょっと上……」

蘭子「声なき断末魔……! 叫ぶことも許されない!」

奈緒「それにしてもホラー・スプラッタならアニメでもいいのか」

小梅「う、うん……でも実写の方が……す、好きかな」

奈緒「悪い、実写はない」

小梅「私の……お気に入り、み、観る?」

奈緒「遠慮しておく。貯め撮りしたの観たい。なんだかんだで時間とれないからさ」

蘭子「血の宴は終演を迎えた! フハハハハハハ!」

小梅「次は……時代劇?」

奈緒「いや違う。というか蘭子ちゃんは見ない方がいいかも。あっ、いやでも地上波だから規制かかってるから……」

蘭子「ま、魔力の補給に行ってくる! また会おうぞ!」

奈緒「あ、いっちまった。ま、いっか」

小梅「たっ、楽しいね」

奈緒「ん? あぁ、まぁな。あたしは見慣れてるからいいけど正直蘭子ちゃんにはキツいだろうな」

小梅「そう……だね」

奈緒「まぁ気持ちはわからなくもないけど」

小梅「?」

奈緒「あたしも人付き合いが不器用な方だからわかるんだけどな。どうしても離れられない友達っているんだ」

小梅「そうなの? 友達いないから……わからない」

奈緒「どうしても気になる。だけどしつこくしたら……って考えると行動できない。だから蘭子ちゃんはスゴい…………なに言ってんだろうなあたし」

小梅「うーん……」

奈緒「今のは忘れて……なんか恥ずかしい」

小梅「……ふふ」

奈緒「忘れない気だな?」

小梅「さぁ……どっちだろう、ね」

蘭子「我、帰還せりっ!」

奈緒「おか……ずいぶん持ってきたな」

蘭子「プロヴァンスの茶会は始まった! 甘き血と贄は潤沢にある! 己の欲望を剥き出しにし争え!」

奈緒「なにいってるのかわからない……」

小梅「……だね」

蘭子「王者は孤高という名の宿命を背負うもの。孤高というにはあまりに……孤独とは紙一重──」

輝子「キノコーキノーコキノコの旅ー……フフ」

美優「向こうで一緒にお茶飲まない?」

輝子「あ、いっ、いい……私はキノコに心奪われた女、フヒ」

美優「そう。来たくなったら来て」

輝子「フッ、フフ……」

藍子「どうでした?」

美優「向こうにいるって」

藍子「そうですか……美優さんが誘ってもダメでしたか」

美優「一人でいたいときもあるわ。気にしちゃダメよ?」

藍子「わかりますけど寂しくないですか?」

美優「いろいろ考えて辛くなるときもあるけど輝子ちゃんのは少し違うと思う。あれは本当に楽しんでる顔よ」

藍子「それはわかりますけど……」

美優「焦っちゃダメ。藍子ちゃんらしくないわよ?」

藍子「私らしくない?」

美優「えぇ。藍子ちゃんといえばマイペース。違う?」

藍子「私そんなにマイペースじゃ……」

美優「最近は何かに取り付かれたように焦って行動してるように感じるわ。少なくとも私は」

藍子「たしかに少し焦っているかとは思いますが……」

美優「そういうときはゆっくりお茶でも飲んで……ね?」

藍子「…………」

美優「…………」

藍子「はぁ……」

輝子「むっ、どうした?」

藍子「あ、輝子ちゃん」

輝子「ため息なんてついて……その湿気をキノコにプリーズ」

美優「向こうはいいの?」

輝子「キノコの世話は終わった……構いすぎも良くない。ニョキニョキ育たなくなる……待つのが大事……これ重要」

藍子「…………」

輝子「キノコはボッチノコで育つ……人知れず育つ、ニョッキニョキー……フフ」

藍子「寂しくないですか?」

輝子「そんなことはない」

藍子「そうですか……」

美優「…………そうだ。ちょうどいい機会だからお茶飲まない? この前買った椎茸茶残ってるかしら?」

藍子「たしか戸棚にあったと思います」

輝子「キノコの事ならまかせろー」

美優「それじゃあお願いできる?」

輝子「まかされ……よう。半キノコ時待っててくれ、フフ」

美優「濡れ煎餅もあったかしら?」

藍子「まだありますよ。出します?」

美優「えぇ。取ってくるわ」

藍子「場所わかります?」

美優「えぇ」

輝子「キッキッキノコ、キッキノコ……キッキキキノキノノコノコキノッコォ……フヒ」

美優「楽しそうね」

輝子「おや? き、聞かれた……」

美優「あ、ごめんなさい」

輝子「まぁいい……さて」

美優「?」

輝子「お茶だっ、お茶を淹れるぜっ! フハハハハ!」

美優「輝子ちゃん……?」

輝子「煮えたぎったお湯だァー! フフッフハハハァ! 出しちまえっ……! お前の欲望をさらしちまえェェェェハァァ!」

美優「…………」

輝子「これでエクスタ、いやこれはないな」

美優「えっと……それは?」

輝子「お茶だ」

美優「そうじゃなくて……さっきのは?」

輝子「……おまじない?」

美優「聞かれてもちょっと困るかな」

輝子「ああやるとテンションが上がることが判明した……それ以降ずっとああしてる」

美優「そういえばライブの時あんなテンションよね」

輝子「ふははははは」

美優「濡れ煎餅……濡れ煎餅……」

輝子「濡れ煎餅ならそっちの棚にある……」

美優「あった」

輝子「濡れてるのが好きなのか?」

美優「そうなの。あまりいないのよね」

輝子「実は私も湿ってる方が好き……フフっ」

美優「そうなの?」

輝子「私たち気が合う……濡れ濡れシスターズの結成だな」

美優「その名前はどうかと思うわ」

輝子「濡れ濡れといえば……親友はパリッとしたのが好きらしい……私も好みを変えるべきか」

美優「そこは変えなくてもいいんじゃないかしら?」

輝子「そこまでは変えなくていいか……」

美優「時々Pさんと何かしてるらしいけど何してるの?」

輝子「それは秘密……フフフ──」

まゆ「ふっ、うふ、うふふ♪」

P「元気だな」

まゆ「だって……ねぇ?」

P「だってなに?」

まゆ「んっ、んもうっ……! まゆの口から言わせるつもりですかぁ?」

P「…………」

まゆ「…………黙ってないで何か喋ってください。恥ずかしいじゃないですか」

P「具合は?」

まゆ「アソコの?」

P「体の」

まゆ「上々ですよ? それはPさんも感じましたよね?」

P「感じた」

まゆ「名器でしたでしょ?」

P「比べたことないからわからない」

まゆ「そこはお世辞でも肯定してくださいよぅ……んもう」

P「…………」

まゆ「えいっ♪」

P「何?」

まゆ「もう一回します?」

P「そうすると朝になる」

まゆ「朝になったらさすがにみんな来ますよね。あっ、見られながらってのも……」

P「それでいいの?」

まゆ「やっぱりなしで」

P「でしょ?」

まゆ「です。それにしてもまゆが育てただけありますね。スゴかった」

P「そうか」

まゆ「これからもよろしくお願いします♪」

P「せめて顔見て」

まゆ「うふ♪」

P「…………」

まゆ「明日からどうします?」

P「不健全な相談だな」

まゆ「健全な行為の後は不健全な行為の相談。ちょいワル系ですね」

P「どうするか」

まゆ「誰を狙いますか?」

P「復讐したい人……復讐したい人……」

まゆ「出したら気力なくなっちゃいました?」

P「いすぎて困ってる」

まゆ「精力絶倫ですね。まゆそういうねちっこいところ好きですよぉ♪」

P「それ違う意味でいってるよね」

まゆ「両方の意味です」

P「体験談だな」

まゆ「それも新鮮な♪」

P「さて、どうするか」

まゆ「前戯からやりましょう」

P「どの層にどれくらいかだな」

まゆ「思い出したら……アフっ」

P「>>402層に>>404


>>402
ジュニア(12歳まで)かティーン(13歳から19歳まで)かアダルト(20歳以上)かをお願いします

>>404
軽くか徹底的かをお願いします

それ以外は安価下

アダルト

徹底的

P「アダルト層に徹底的」

まゆ「スッキリしたら頭の回転もアップしちゃいました?」

P「そうだな」

まゆ「そこはお世辞でも……あら?」

P「誰にするか」

まゆ「今なんて言いました? そんなによかったですか?」

P「結構やって来たがまだまだたくさんいる」

まゆ「Pさぁーん? まゆにドハマリしちゃったって本当ですかぁー? もしもーし?」

P「よし決めた。>>406


>>406
モバマスのアダルトアイドルをお願いします

それ以外は安価下

衛藤美紗希

P「衛藤美紗希」

まゆ「マン力なら自信があります」

P「マンリキ?」

まゆ「ここの♪」

P「言うと思った」

まゆ「もう離しません。きゅっぽり掴んで離しません!」

P「手を誘導しないでくれ」

まゆ「はぁーい。でも後でシてくださいね」

P「気が向いたらね」

まゆ「手拍子すれば向きます?」

P「向かない」

まゆ「あ」

P「何を閃いたのか知らないけど話進めていい?」

まゆ「はい。それで何されたんですか?」

P「>>408


>>408
衛藤美紗希に何をされたかをお願いします

それ以外は安価下

女子力アップを理由にブランド物をたくさん買わされた

P「女子力アップを理由にブランド物をこれでもかと買わされた」

まゆ「まゆが知る限りそんなことしてませんよね? 口座のお金も動いてませんし」

P「語弊がある言い方だな。買わされたのはオレじゃなくて担当プロデューサー」

まゆ「それがなんでPさんが買ったことになるんですか?」

P「担当プロデューサーの給料を捻出するためにオレのが削られた」

まゆ「……なるほど」

P「衛藤美紗希はオレのことを認識さえしてない」

まゆ「認識してたらまゆが許しませんっ。ふふーん」

P「誰の真似?」

まゆ「幸子ちゃん。似てました?」

P「自信が足りない」

まゆ「あらー?」

P「…………」

まゆ「そういえば美紗希さん、私の担当プロデューサーにもちょっかいだしてました」

P「手広いな」

まゆ「二人で食事の約束をしたって大胆にも私の前で」

P「それは堪えられなかったろうに」

まゆ「それはもう"私"は怒りました。ぷんぷんって」

P「何かした?」

まゆ「趣味の悪い真っピンクのスマホケースを送りました」

P「あのドきついのはまゆの仕業か」

まゆ「うふふ」

P「お互い被害あったんだな」

まゆ「Pさんほどじゃないですけどぉ」

P「人とお金では比べ物にならない」

まゆ「私の愛する人に手を出すなんて! キィー」

P「そのハンカチまだ使ってたんだ」

まゆ「あ、はい。お気に入りです」

P「それを噛むのはどうかと」

まゆ「味が染み込んでて美味しいです♪」

P「…………」

まゆ「冗談ですよぉ」

P「女子力ねぇ……」

まゆ「女子力がどうかしたんですか? 上げたいんですか?」

P「言葉の意味は知ってるけどなんなのかなと思ってね。意味は理解してもオレは男だからわからない部分がある」

まゆ「女である私にもわかりません」

P「あの向上心と繋がってるとは思うんだけどね」

まゆ「まゆはPさんの男子力の方が気になります」

P「どんなのそれ」

まゆ「立派な……お腹?」

P「…………」

まゆ「腹枕♪」

P「…………」

まゆ「少なくとも男子力は上がりましたよね。あっちの」

P「複雑」

まゆ「うふ♪」

みちる「──おはようございます」

みく「……おはようにゃ」

みちる「そんなふて腐れないでくださいよー。宿題に付き合わせたのは反省してますからぁー」

みく「連座制でみくも被害にあったにゃ」

みちる「ステーキおいしかった」

みく「でしょー? みくの目に狂いはないにゃ」

みちる「その先も見据えてたらもっとよかった」

みく「うにゃっ……! それは言わない約束にゃ」

みちる「ちなみにあたしに先を考える頭はありませんっ!」

みく「ドヤ顔することじゃないにゃ」

みちる「誕生会はどうだったんでしょう。なにか美味しいもの出たのでしょうね。じゅるり」

みく「そこら辺はみんなに聞いて回るにゃ」

みちる「走れー走れーみーくにゃん。あたしの代わりに聞ーてくれ」

みく「断るにゃ」

みちる「行かないんですか?」

みく「みちるチャンのそばにいるのに置いてけぼりにゃ」

みちる「Pさんの部屋にレッツゴー!」

みく「こうなったらやけっぱちにゃ!」

みちる「おはよーございます!」

みく「鍵を開けたみくより先にいくなんてマナー違反にゃ」

みちる「……あれ?」

みく「どうしたにゃ?」

みちる「まだ起きてない?」

みく「今日はおやすみだからまだ寝てるんじゃないかにゃ?」

みちる「うーん……この嗅ぎ慣れた臭いが気になりますが……ふむ」

みく「お魚の臭い?」

みちる「このデジャヴ感」

みく「とりあえずそーっといくにゃ、そーっと」

みちる「忍び足は得意です」

みく「たまには驚かせてみるにゃ」

みちる「乗り気ですね」

みく「言ったでしょ。みくはやけっぱちって」

みちる「カッコ悪い」

みく「みくは自分を曲げないよ!」

みちる「では先陣切ってどうぞ!」

みく「見てるにゃみちるチャン。猫は忍び足の天才にゃ」

みちる「ソッと入るのは基本ですよね」

みく「にゃししし、Pチャンの驚いた顔が今から思い浮かぶにゃ」

みちる「とらぬ狸の皮算用。ちなみにあたしは驚いた顔が思い浮かびません」

みく「こういうのは想像だから好きに思い浮かべるにゃ」

みちる「なるほど。ベッドまで数メートル」

みく「ここまでは順調にゃ。ちなみに杏チャンがいないのは確認済みにゃ。無用な巻き添えはいけない」

みちる「さぁここから一気に」

みく「Pチャン覚悟ーっ! ッ!!」

みちる「固まってどうしたんですか? 来るのが遅すぎて腐ってました?」

みく「とってもすやらか、いや安らかにゃ」

みちる「さすがに死んでたらちょっと困ります」

みく「とっ、とにかくみくもみちるチャンもなにも見てないっ。いい!?」

みちる「なにも見てないもなにもあたしは本当になにも見てませんけど?」

みく「とにかく美優さんの部屋にいくにゃっ」

みちる「いったいなにを見たんですか?」

みく「こ、ここから先は通さないにゃ。通りたいならみくを倒していくにゃ」

みちる「あっ、魚が足元に!」

みく「えっ! どこどこ!?」

みちる「スキありっ!」

みく「にゃにゃ!?」

みちる「お布団ババッと!」

みく「終わったにゃ……」

みちる「……なんだこういうことですか」

みく「この事はみんなには黙ってるにゃ」

みちる「別にコンドー」

みく「シャラップ!」

みちる「モガッ」

みく「アイドルがその単語をいっちゃダメ! 言うとアイドル生命がクライシスにゃ! 別にいくないレベルでクライシスにゃっ」

みちる「フゴゴッフゴフフ」

みく「わかったら返事」

まゆ「はぁーい」

みちる「フーゴ」

みく「この事がまゆチャンにバレたら大変にゃ。血の雨が降るにゃ」

まゆ「怖ぁい」

みく「さっきからふざけた返事してるけどちゃんと聞いてるにゃ?」

まゆ「きちんと聞いてるわよ?」

みく「そういうときはしゃべり方を……にゃ?」

みちる「フゴ?」

みく「…………」

まゆ「?」

みく「いつからみくの背後に?」

まゆ「シャラップ!から」

みく「み、みみっ、みみっくはなにも見てないにゃっ」

みちる「プハッ、フウィー。別に恥ずかしがるものじゃないでしょ」

まゆ「恥ずかしい人もいるのよみちるちゃん」

みちる「つけてもらえるだけいいじゃないですか」

みく「これはみくのじゃないからにゃ! だ、誰に使ったのかは知らないにゃっ」

まゆ「本当に?」

みく「神に誓って知らないにゃっ!」

まゆ「……なーんて♪」

みく「うにゃ?」

まゆ「泣かないでみくちゃん。今のはほんの冗談」

みちる「少しチビりました。でもどうして怒らないんですか?」

まゆ「だってそれ使われたのまゆだもの」

みく「なぁーん……にゃ!?」

みちる「今日は忙しい表情筋」

みく「なんかとんでもないこと聞いちゃったにゃ」

まゆ「みんなには内緒よ♪」

みく「みくはなにも聞いてないみくはなにも聞いてないみくはなにも聞いてないみくはなにも聞いてないみくはなにも聞いてない」

まゆ「あら、行っちゃったわ……」

みちる「スタイルは?」

まゆ「正常位と対面座位。顔が見えて嬉しかった♪」

みちる「あ、ちょっとうらやましい」

まゆ「あげない♪」

みちる「やっぱり嬉しいものなんですね」

まゆ「それはもう。言葉では言い表せないわ」

みちる「ところで肝心のPさんは?」

まゆ「さっきシたからお風呂よ」

みちる「数が合わな……あ」

まゆ「うふ♪」

みちる「──このこの」

P「なに?」

みちる「憎いよ、この色男」

P「勉強のしすぎで疲れた?」

みちる「まゆちゃんから聞きました」

P「まゆ話したのか」

みちる「いえ、ドッキリ仕掛けたら二人ともいなくていつの間にか背後に立ってました」

P「お前は何をいってるんだ?」

みちる「みくちゃんが逃げました」

P「まゆは?」

みちる「みくちゃんを追いかけました。あれは追跡ですね」

P「そうか。どうするか」

みちる「何がですか?」

P「一人でするか」

みちる「朝からお盛んですね」

P「それじゃない。これだよ」

みちる「お主も悪よのう」

P「なにかわかってないでしょ」

みちる「誰かの履歴書としかわかりません」

P「そこに名前かいてあるよ」

みちる「ご……衛藤さん?」

P「後藤って言いそうになったでしょ」

みちる「いいえいいえそんなことありゃーせんよ」

P「誤魔化しきれてない」

みちる「これでも勉強頑張ったんです。四字熟語やことわざも覚えました!」

P「後で宿題見せてね。答え合わせするから」

みちる「あたしのを見るなんて……ハレンチ!」

P「嫌なら強制はしない。間違ったまま提出しても学習すればそれでいい」

みちる「なんか調子狂います」

P「さて、プロフィールのお復習でもするか」

みちる「ハイッ! ハイハイッ!」

P「……やりたいの?」

みちる「やらせてください」

P「そんなにやりたいならどうぞ」

みちる「あれ、意外とすんなり。これもひとつ上の男になっ」

P「引っ込めるよ」

みちる「今すぐ読みます」

P「頼むよ」

みちる「えとう、エトウ、衛藤美紗希。よし覚えた。女子力と向上心とパッションあふれる22歳。身長160、体重45。体脂肪率17.58。スリーサイズはおっぱい84、腰回り56、お尻80!」

P「単位省かないでね」

みちる「あたしはそんな小さなものにこだわらないのだ。そんなわけで続けます。誕生日は3月18日の魚座でしかもO型左利き」

P「なにが『しかも』なの?」

みちる「すごく聞こえるかなって思って言いました! 出身地は大分県。趣味は携帯小説と女子力アップ。携帯小説!」

P「…………」

みちる「カムカム」

P「……携帯小説読む?」

みちる「文字だけだから眠くなります」

P「そうだよね。なんで聞かせたの?」

みちる「世間話?」

P「井戸端会議にもならない」

みちる「女子力ってなんですかね?」

P「単語の意味は?」

みちる「女の子っぽいことをする能力ということは知ってます。女の子っぽいことってなんですかね?」

P「まずは料理」

みちる「パンしか作れません!」

P「裁縫」

みちる「針に糸が通りません」

P「気遣い」

みちる「それは自信があります」

P「そうだよね。辞書には『自らの生き方や綺麗さやセンスの良さを目立たせ、自身の存在を示す力、または男性からチヤホヤされる力』って書いてある」

みちる「あれはちやほやされる能力ですね」

P「ノーコメント」

みちる「求められると弱い女子、それがあたし。あれ、女子力高い?」

P「最近は私立中学校から大学まで、入試案内でも見られるようになったらしいね」

みちる「日本大丈夫なんですかね?」

P「さぁね」

みちる「あ、そういえばあたし体重増えました!」

P「なんキロ?」

みちる「1kg!」

P「よかったね」

みちる「触ってください」

P「断らせてください」

みちる「Pさんなら断らなさそうだったのに……賢者タイムとでも言うのだろうか」

P「…………」

みちる「ンヒ、いきなり触らないでくださいよ」

P「うっすら肉がついてるね」

みちる「女子力アップですね。どやっ」

P「学力もアップさせよう」

みちる「頭が沸騰します」

P「考える力は大事」

みちる「考える力…………ダメ。アソコのしまりがとか下ネタしか思い浮かばない」

P「呪いとでも言うのだろうか」

みちる「切実な悩みです」

P「それはそうだろうね」

みちる「……触った感じはどうだったですか?」

P「比べたことがないからなぁ」

みちる「でも今は少なくともまゆちゃんという実体験が……!」

P「あなた最低です」

みちる「これでも一応考えてるんですけどね」

P「大原さん……自分のお尻つねって笑いこらえるのはどうかと思う」

みちる「バレてる……!」

P「それはわかってる」

みちる「わかられてた」

P「…………」

みちる「…………」

P「…………」

みちる「ンー」

P「唇尖らせない」

みちる「沈黙に堪えられなくて──」

衛藤美紗希「おはよーございまぁす」

衛藤P「おう、おはよう。今日も朝から元気だな」

美紗希「やっぱりぃ、アイドルは元気じゃないとダメだと思うんですよぉ。暗ぁいアイドルとかどうかなぁって思ぉう」

衛藤P「アイドルは笑顔でいないとな」

美紗希「そーですよねー♪ お客さんを笑顔にさせてこそアイドルだもぉん」

衛藤P「それがアイドルの仕事でありオレの心情でもある」

美紗希「敏腕だねー」

衛藤P「そんなことない。こんなの当たり前だ」

美紗希「暗いのは見てるのも気が滅入るもんねぇ」

衛藤P「おっ、それよりこれ見ろよ」

美紗希「あっ、もしかしてこの前の評論?」

衛藤P「あぁ、見てみろ」

美紗希「…………うん……うんうん。やっぱこれだよね、うんうん」

衛藤P「まさかアメリカでのミュージカルが役に立つとはな」

美紗希「人生なにが役に立つかわからないぃ」

衛藤P「ご褒美に何か買ってやる!」

美紗希「プロデューサー気前いい!」

衛藤P「ガンバってる美紗希へのせめてもの礼だ」

美紗希「最初はイヤがってたくせにぃ」

衛藤P「新しいバッグ欲しがってたよな。それ買ってやる」

美紗希「やったぁ! でもそういうのは言わないでおいた方がサプライズは大きいですよぉ?」

衛藤P「しまった!」

美紗希「アハハ」

衛藤P「ハハハ」

美紗希「今日も女子力上げていきまぁす!」

美穂「──おさんぽ……ですか?」

P「筋肉をつけるためにね。歩けないほどまだ腰が痛いならいつものにするけど」

美穂「どうしよう……買い物もしたいし……」

P「とりあえずもう一人誘ってるから二人きりじゃない事は言っておく」

美穂「もう一人?」

P「輿水さん」

美穂「幸子ちゃんですか」

P「どうする?」

美穂「幸子ちゃんが一緒なら……あ、でも」

P「そこは話をつけてある。小日向さんならいいって」

美穂「私なら?」

幸子「あなたならです」

美穂「あ、幸子ちゃん」

幸子「こんにちは」

美穂「こんにちは。私ならってどういうこと?」

幸子「ズバリ弱ってるからです」

美穂「弱ってるからって……たしかに腰痛めてるけど……うぅ」

幸子「ボク策士!」

P「だね」

幸子「そこは怒るところ……といってもあなたにいってもしかたないですね」

P「よくわかってるね」

幸子「ボクはカワイイだけでなく人を見る目もありますからね! ふふーん」

P「何が良いものかも知ってるし言うことなしだね」

幸子「否定はしませんけど嫌みですか」

P「どっちだろうね」

幸子「良いものといえばこれでいいですか?」

P「……いい仕事するね」

幸子「ボクが選んだんですからもちろんそうですよ!」

美穂「それは?」

P「まだ秘密。支度したら出掛けよう」

蘭子「メデューサの魅惑……」

まゆ「はい?」

蘭子「メデューサの魅惑、何処から来るや」

まゆ「みちるちゃーん?」

みちる「フゴ?」

まゆ「またパン食べてるの? お夕飯に響くわよ」

みちる「フーゴー……ンゴク……ところでなんのようですか?」

まゆ「翻訳してくれる?」

みちる「合点承知の助! なにいったの蘭子ちゃん」

蘭子「メデューサの魅惑、何処から来るや」

みちる「素敵な女性になるには何が必要?って」

まゆ「素敵な女性? なにかしらねぇ」

みちる「お肌にいい食事!」

蘭子「日々の糧から得る、か」

まゆ「マナーも必要よね。ほたるちゃんに教えてもらう?」

みちる「マナーなんて関係なしに食べたい!」

まゆ「またPさんに躾られちゃうわよ?」

みちる「雨にも負けず風にも負けず」

まゆ「でも腹痛には?」

みちる「勝てません」

まゆ「ふふっ。お腹の調子はどう?」

みちる「快便」

蘭子「メビウスフェスティバル」

みちる「話がずれちゃいました。素敵な女性になるには……うーん、あっ、女子力を上げるのはどうですか?」

蘭子「女神力?」

みちる「女の子っぽいことをやること。例えばパンを作るとか」

まゆ「たしかにお料理は女の子っぽいわ」

みちる「牛丼食べたい」

まゆ「女の子から離れたわ」

みちる「幸子ちゃんが食べたがってましたよ?」

まゆ「本当?」

みちる「たまに食べたくなるんだとか。でも聞いた話ではあたしの知ってる牛丼と違う気がするんですよねぇ。あっ、鮭定食食べたい」

蘭子「平和の戦士カンパニーウォリアーズ……か」

みちる「たしかにサラリーマンっぽい」

まゆ「シュークリームあるけど食べる?」

みちる「ハイ!」

まゆ「みちるちゃんはダーメ。今さっきパン食べてたでしょ」

みちる「ショボーンです……」

蘭子「フッフッフッ……フハハ……フハハハハ! 我が喰らってやろうではないか!」

まゆ「今日の病む病む堂のヤムヤムパフよ」

みちる「一度食べれば何個でも求めてしまうというあの病む病む堂の!? ズルい!」

まゆ「はい蘭子ちゃん。あーん」

蘭子「ククク、心地好いぞフモフ」

まゆ「口にクリームついてるわ」

みちる「イチャイチャ禁止! 話を戻しましょう」

まゆ「女子力ってどこまでなのかしらね」

蘭子「プロテスタントホライゾン……境界線か」

みちる「線引き必要ですか?」

まゆ「だって言っても"女子"でしょ? それならその範囲から出たらもう違わないかしら」

みちる「むむっ、一理ある」

蘭子「境界線の外のこともを考えよう」

みちる「これは女子じゃないって行動……寝転がりながらのビール?」

まゆ「まぁっ、自堕落ねぇ」

蘭子「慈愛忘れし女神……ふむ」

みちる「職業でいうとモデル? でもモデルって女子っぽくない?」

蘭子「戦士の凱旋」

みちる「経験者の意見を聞いてみましょう」

まゆ「私? 私は読者モデルだからプロのモデルとは一線を画すわ。でもたしかに女の子っぽいわよね。夢があっていいわ」

蘭子「生ける標本を所望する!」

みちる「あたしたちの周りに女子力高い人います?」

まゆ「一人だけ思い浮かぶわ」

蘭子「イマジネーションを具現化せよっ」

まゆ「奏さん」

蘭子「半少半女。たしかに適当ではあるが……」

みちる「善は急げ。呼んできます──」

美穂「あっ、かわいい」

幸子「どれですか?」

美穂「ほらあれ」

幸子「……独特な感性してますね。耳にボタンがついてるなんて痛そうじゃないですか」

美穂「そう?」

幸子「それよりこっちの方がカワイイです。カワイイボクが選んだんですから間違いありません」

美穂「それもいいかも」

幸子「ふふーん。それよりも気になることがあります」

美穂「気になること?」

幸子「ずぅーっと黙ってついてきてる人がいることが気になって気になって気に食いません」

P「…………」

美穂「Pさんのこと? たしかに黙ってるけど……」

幸子「女性を楽しませることはあなたの義務ですよ?」

P「そういうのはちょっとね」

幸子「黙ってるとただの不審者です。楽しませろ何て言いませんからせめて喋ってください」

美穂「無理強いは良くないよ」

P「熊好きなの?」

美穂「私ですか? 好き……かな」

P「へー」

幸子「ボクを無視するなんていい度胸ですね!」

P「熊好きなの?」

幸子「特には」

P「へぇ」

美穂「…………」

幸子「…………」

P「…………」

美穂「あっ」

P「ん?」

美穂「……似てる」

幸子「誰にですか?」

美穂「…………」

P「…………」

幸子「やっぱり独特の感性してますね……」

P「熊のどこがそんなに好きなの?」

美穂「一言では言えませんが丸いところとかほわほわしてるところが特に好きです」

P「へぇ」

幸子「リアルな熊はそんなところ微塵もないですけどね」

P「…………」

美穂「そうなの?」

幸子「子熊でもゴワゴワしてる上に筋肉質なんです」

美穂「詳しいんだね。好きなの?」

幸子「実体験です」

美穂「え?」

P「番組の企画だね」

幸子「怖いものは怖いんですよ、まったく。何が『幸子はこれくらい平気だよね』ですか。ボクをなんだと思ってるんですか」

P「外だから家に帰ってから話聞く」

美穂「お菓子買い込んでく?」

幸子「人の不幸話を聞く趣味でもあるんですか?」

美穂「そういうの羨ましいなって……私そういうこと言えないから……」

幸子「……ボクの部屋でなら」

美穂「上がれるかな……」

幸子「無理なら諦めてください」

美穂「あっ、でもエレベーターがあった」

幸子「……フン」

美穂「あ……1人で歩けるかな……」

P「オレを見ないでくれ」

美穂「今日も来てくれるんですよね? ならついでに……」

幸子「こんなことになるなら協力しなければ良かった」

美穂「え?」

幸子「こっちの話、ボクとPさんの話です。とにかくご自分の力でなんとかしてください」

P「そろそろ次に行こう」

美穂「次はどこに?」

P「来ればわかる」

美穂「──えっと……」

幸子「うわっ、なんですかこれ。イボイボ付いてるじゃないですか。趣味悪い」

P「独特の感性じゃなくて?」

幸子「ここまで来ると感性なんてものじゃないですって。うっわ、こっちは振動機能付き。本来の用途から逸脱しすぎてて最早本末転倒じゃないですか」

P「いろんな人がいるからな。でもその気持ちわかる」

幸子「まともなのがあって良かったですよ。最初に店頭に来てたら選ぶ気なくしてますね」

美穂「あのっ……!」

P「何?」

美穂「こっ、こういうところはもっと年齢が上の人が来るところかなって……!」

P「最近じゃ小日向さんくらいの年齢の人も使ってるよ」

美穂「でっ、でも」

P「それに君も欲しかったでしょ?」

美穂「た、たしかにベッドにいるだけだからヒマだなーって思ってましたけど、な、なんでその事を」

P「ベビーモニターで見てたときにね。ベッドの上でそわそわしてたからもしかしてと思って」

美穂「うぅ……見られちゃった」

幸子「もしかしてボクからの贈り物を拒否するんですか?」

美穂「しっ、しないよ。けどこれはさすがに恥ずかしいよ……」

幸子「それともこっちの四本足のにしますか? これの方が便利ですし快適ですよ。新たな快感に目覚めるかもしれません」

美穂「でっ、でもほら値段だってこんなに……!」

幸子「ゼロが四つ五つ位なんだって言うんですか? ボクはお金持ちですからそれくらいどうってことありません」

美穂「うぅ……えっとえっと」

P「恥ずかしいだろうけど使ってみなよ」

美穂「は、恥ずかしくて使えません……杖なんてぇ」

幸子「これでいつでも好きなときに歩けるんですよ?」

美穂「でも杖は……」

P「だからと思って輿水さんに協力してもらった。とりあえず見て」

幸子「ここにあるのなんて比べ物にならないくらい素敵でカワイイですから期待しててください」

P「店頭はこんなのだけどね。ネット注文は怖いね」

幸子「いいところしか見せませんからね。まるでアイドルみたい」

美穂「本当に……可愛い?」

幸子「疑り深いですね。ボクがカワイイと言ったらカワイイんです」

P「こっち来て」

美穂「あ、はい」

P「現物はこれ」

美穂「シンプル……ですね」

P「杖の部分はね。手元を見て。握るところ」

美穂「握るところ? あ」

P「どうかな」

美穂「まるっこいクマが付いてる!」

P「元々は鳩なんだけど聞いてみるものだね」

幸子「ボクのセンスは抜群ですね。さすがボク!」

美穂「幸子ちゃんが選んでくれたの?」

幸子「この人に選ばせてたら大変なことになってましたよ。まさか犬を選ぶなんて独特な感性してますよ」

P「そう? 熊は安易かなって思ってね」

幸子「本気でそう思ってるのが独特だって言うんです。それでどうするんですかその杖。買うんですか? 買わないんですか?」

美穂「えっ、あっ、か、可愛いから欲しい……な」

幸子「まぁ買わないと言っても払ってもらいますけどね」

美穂「えぇー……」

幸子「当たり前じゃないですか。甘えないでください。こんなのヘリから突き落とされるより万倍マシですよ」

P「長さはそれくらいでいい?」

美穂「はい。ちょうどいいです」

P「それじゃ支払ってくる──」

美紗希「わー、これなんて女子力高っ!」

衛藤P「ッハーマジだ」

美紗希「でしょでしょぉ! みーんなわかってくれなくてチョー寂しかったぁ!」

衛藤P「マジか。ひっどくね?」

美紗希「そう思うよねぇ! あっ! あれも良さげっ!」

??「イッテ!」

美紗希「ほらこれ見て見て」

??「おいっ、ぶつかったんだからなんか言えよ!」

美紗希「ハイ?」

??「そこのお前だよ!」

美紗希「お前ってあたしのことですかぁ?」

??「お前以外に誰がいんだっての」

美紗希「それでなんか用ですかぁ?」

??「何かもなにもさっきぶつかっただろ!」

美紗希「えっなにそれ?」

衛藤P「オッ? どったん?」

美紗希「プロデューサー。なんか絡まれたぁー」

衛藤P「マジか。うちの美紗希がなにかした?」

??「ぶつかられたんだよ」

衛藤P「ふーん。そうなの?」

美紗希「まぁーったく身に覚えなぁーい☆」

衛藤P「っていってますけど?」

??「踏んだのは事実だっての」

衛藤P「えーあー、証拠は?」

??「証拠? んなもんねえよ。強いて言うなら踏まれた靴くらいしかねぇ」

衛藤P「フーン。まっ、とりあえず謝るか美紗希」

美紗希「プロデューサーが言うなら。あっ、この素直さ女子力高くない?」

衛藤P「だな。とりあえず謝るぞ」

美紗希「はーい。ごめんなさぁい」

??「なっ、テメっ……!」

???「どうしたんだ? ヤヤ・トゥーレ」

??「オレはトゥーレ・ヤヤじゃねぇ! 誰がサッカー選手だ!」

???「それでどうしたんだ?」

トゥーレ「この女がぶつかってきたのに謝りもしねえんだよ。なんかいってやってくれよ北闘莉王」

北闘「まあまあ、天使ちゃんにぶつかってもらえるなんて幸運な証じゃないか。それくらい目を瞑れって」

トゥーレ「また出た。それお前の悪いクセだぞ」

美紗希「そっちのお兄さんはそう言ってるけど? そもそもぶつかった覚えないしっ。なのにいきなり絡んできてホント迷惑」

トゥーレ「こいつ……! まだそんなこと!」

北闘「……あのな天使ちゃん。コイツはこういう性格だけど誰彼構わずケンカを吹っ掛けるやつじゃないんだ。その様子だとぶつかったのはそっちだろうね」

?「なになにどうしたのー?」

トゥーレ「あ、ミトゥーリ」

ミトゥーリ「なんでバレエのレオタード会社の名前なの? そんな趣味にでも目覚めた?」

トゥーレ「聞いてくれよ。この」

ミトゥーリ「話さなくていいって。見てたし」

トゥーレ「なら応援に来てくれても……いや面白そうだったから見てた口だろ?」

ミトゥーリ「当たり♪」

衛藤P「さっきから聞いてればそっちばかり被害者面してるけどうちの美紗希は悪いと思ったら素直に謝る。それが謝らないってことはこっちに非は」

ミトゥーリ「"うちの"? あはっ」

北闘「なるほどね……行くぞ二人とも。ここは退こう」

トゥーレ「ハァ? なんで……」

ミトゥーリ「いいからいいから。サッカーショップで二人とも待ってるし。それともここにいたいの?」

トゥーレ「二人置いてきたのかよ!」

北闘「それじゃ俺たちはこれで。この事は"お互いのため"に忘れましょう」

衛藤P「おいちょっと……ちっ」

美紗希「まぁまぁプロデューサー。許してあげなって。でも今のは男子力高いよ!」

衛藤P「オッ? そうか?」

美紗希「女子的にもスゴくうれしいかもぉ」

衛藤P「ハハハ。にしてもああいうのはうざったいよな」

美紗希「もうその話はやめにしない? それよりデートの続きしましょうよぉ」

衛藤P「おいおいデートって……まいっか──」

幸子「ふぅ……」

P「お帰り」

幸子「どこに行ってたのかは聞かないでくださいね」

P「小日向さんは?」

幸子「まだお花畑です。それより何を見てたんですか?」

P「アンチスレ」

幸子「可哀想な人達が集まる掲示板ですか。誰のを見ていたのですか?」

P「衛藤美紗希」

幸子「あぁ、あの人ですか。どんな事書いてありました?」

P「>>467>>468


>>467
>>468
衛藤美紗希に対する悪口・アンチレスをお願いします

それ以外は安価下

女子力ビッチ(笑)

スイーツ(笑)

P「女子力ビッチ、スイーツ。共に後ろに笑いが付いてる」

幸子「実に分かりやすいレスですね。もう少し語彙力をつけることを推奨します」

P「オレに言われてもな」

幸子「そもそもボクは『女子力』という言葉が嫌いです。意味の範囲が広いんだか狭いんだかはっきりしない上に曖昧でもやもやします」

P「わかる。ある意味便利だよね」

幸子「前まではなんとも思ってなかったですけど最近はもう……ね」

P「何人目かのプロデューサーと何かあったの?」

幸子「なにが『幸子は女子力が低いな』ですか。お笑い芸人みたいな事やらせてるのはどこの誰ですかまったく!」

P「溜まってるね。帰ってからが楽しみだね」

幸子「ボクの部屋に小日向さんが来られたらの話ですけどね。期待せず待ってます」

P「輿水さんから見て衛藤美紗希はどんな人だと感じてる?」

幸子「女子力女子力女子力バカみたいに言ってる人」

P「確かに女子力が高そうな仕事ばかり来てた」

幸子「努力家なところは褒めるに値しますがそれ以上に行動規範や価値基準が全て『女子力』ですからね。なんでも、高みの見物は女子力が低いんだとか。ない頭を捻りに捻って出た嫌みがこれですからね。程度が知れますよ。ボクがお金持ちだから、イコール世間知らずと判断したんでしょう。なんと短絡的な思考でしょうね。呆れるを通り越して諦めさえ感じます」

P「夜まで取っておいて。小日向さんが聞きたいと思う」

幸子「来られたらですよ、来られたらて」

P「話のネタは尽きなさそうだね」

幸子「えぇ、おかげさまで」

P「プロデューサーに感謝かもね」

幸子「これぞ皮肉ですよ」

美穂「お、おまたせ……!」

幸子「遅いですよ!」

美穂「ご、ごめん……混んでて」

幸子「身障者用に入れば良かったじゃないですか。ちょうど体を痛めてますし、問題ありませんし」

美穂「あ……」

幸子「ハァー……まぁいいです」

P「次はお菓子の買い込みかな?」

美穂「あ、そうです……迷惑じゃなければその……」

幸子「ボクが食べる分はボク自身で選びます。カロリーの計算も完璧なんて流石ボク!」

P「ついでにシャンプーも買っておく。小日向さんの部屋切れてるからね」

美穂「あ、すみません……」

P「自分に合うのを使わないとな」

幸子「ストックしてないのですか?」

P「そのストックが切れた」

幸子「本末転倒ですね。だらしないですよ」

美穂「幸子ちゃんはどこのを使ってる? やっぱり外国製?」

幸子「なんですかやっぱりって。普通に日本製ですよ」

美穂「そうなんだ……お金持ちだからてっきり」

幸子「偏見も甚だしい。生活用品ならいざ知らず、肌につけるものなので外国製は一切使ってません」

P「肌質が違うからね。シャンプーひとつ取っても髪が広がりやすい人や毛量が少ない人で違うように、人種で違うのは当たり前で、住んでる地域によっても違う」

幸子「その何百という中から選ぶボクってスゴい!」

P「小日向さんはあれのままでいい?」

美穂「ちょうどいいです。リンスの方も好きな香り」

P「なにかあったら言ってね。お菓子を買ったら帰ろう──」

奏「キスのシチュエーション?」

みちる「女子力とはなんぞやという話し合いの結果そうなりました!」

奏「話が見えないわ」

蘭子「フフフ、姿隠しの衣を身に纏う必要はない。シルフの囁きを耳にいれたわ。貴女がヴァルキュリアベーゼだということは既に知っておる」

みちる「キス魔なんですよね!?」

奏「それどこの誰から聞いたのかしら?」

蘭子「妖精は何処かで産まれ何処かへ去る。風の行方を知りたいのか?」

みちる「誰から聞いたか忘れました」

奏「正直あなたたちのご期待に沿えるかどうかわからない。それでもいいと言うのなら……」

蘭子「人間ごときが我を試そうというか。ククク、面白い」

クラリス「何をしているのですか?」

蘭子「忌々しい修道女めっ……!」

奏「キスの話をしてたんです」

クラリス「……そういった話題はあまりしない方がよろしいかと」

奏「希望を口にすると欲望になるでしたよね?」

クラリス「はい。それに何かの拍子に口に出してしまうかもしれません」

蘭子「欲望を抱えたまま生きる……人間には堪えられない」

みちる「心なしか蘭子ちゃんが輝いてる気がする」

まゆ「あまり過激な話はダメだと思うけどこのくらいの話ならいいと思います」

クラリス「しかし話題は選ぶべきものかと……不適切です」

まゆ「それなら当初の予定通り、理想のシチュエーションを聞くのはいいですか?」

クラリス「それくらいなら……」

まゆ「それじゃ決まり♪ それじゃまずはぁ」

みちる「言い出しっぺの法則!」

まゆ「あら、それならこの事を聞きたいと提案したみちるちゃんからじゃない?」

みちる「それもそうですね。ではセンネツながら……」

まゆ「僭越よみちるちゃん。せんえつ」

蘭子「ククク、我は影……誰の瞳にも映らない孤高の存ざ」

まゆ「蘭子ちゃん覚悟を決めましょう」

蘭子「ハッ!?」

みちる「蘭子は逃げ出した。しかし回り込まれてしまった。デレデーン」

輝子「……フヒ」

奏「なんだか賑やか」

みちる「あたしの理想のシチュエーションはやっぱりパンに囲まれて──」

幸子「ボクは言ったんですよ。そのままだと危ないってなのに人の忠告を聞かないで転けてボクを恨むなんておかしいです」

美穂「よ、よくいったね。私だったら緊張しちゃってムリだなぁ」

幸子「危ないと思ったから言ったのにあれじゃ骨折り損どころか、忠告した自分が情けないですよ」

P「そういうときの対応は育ちが出る」

幸子「本当ですよ。わざわざボクが忠告したんですからありがとうの一言くらいあって然るべきです」

P「礼が言えないって致命的だな」

幸子「人に非ずです。見返りを求めてやったわけではありませんが社会人としての常識でしょうに」

美穂「お礼が言えない気持ちもわかるかも……」

幸子「はい?」

美穂「だって緊張しちゃって声がでない時あるし……」

幸子「それとこれとは違います」

美穂「…………」

幸子「あ、お菓子が切れてますね」

美穂「あ、私取ってくるよ」

幸子「結構です。Pさん取ってきてください」

P「わかった」

幸子「余計なものいじらないでくださいね」

P「いじらない」

美穂「……幸子ちゃんとPさんって仲良いの?」

幸子「は?」

美穂「なんだかその、そんな感じがしたから……」

幸子「本来待ち合わせ場所に来るはずだったプロデューサーの代わりに来たのが初めて会った時です」

美穂「そうなんだ……それで?」

幸子「それだけです」

美穂「え、本当にそれだけ?」

幸子「えぇ、それだけです。存在を忘れてたくらいですからね」

美穂「それならなんで……」

幸子「Pさんといるかですか? まず言っておきますがボクはPさんといるためにここにいるんじゃないんです。たまたま引っ越し先がここしかなかっただけです」

美穂「それなら離れても……」

幸子「突っぱねる理由もありませんし、そういうの疲れます。好き嫌いはあれどそれに気力や大切な時間を使うのは馬鹿馬鹿しいです」

美穂「…………」

P「お待たせ」

幸子「遅いですよ!」

P「はい、どうぞ」

更新遅れてすみません。ブラウザの調子がもうなんていうか……ね
本編は0時半から1時の間に始めます

パン以外はフランスパンやクロワッサンの話題かぁ……ん?それはパンの話題じゃないか(名推理)

美穂「ふ菓子?」

幸子「カリントウに見えましたか?」

美穂「意外だね」

幸子「カワイイボクに和菓子なんて似合わないとでも? カワイイボクにはなんでも似合うんです」

美穂「クッキーとかだと思ってた」

幸子「なんならケーキもあります。食べますか?」

美穂「えっ、いいの?」

幸子「ボクだけじゃ食べきれませんからね。それに何が入ってるかわかったもんじゃないですし」

美穂「どれだけもらったの?」

幸子「……いるのかいらないのかどっちですか? 病む病む堂のケーキだとかいってました。独特な名前ですよね」

美穂「チーズケーキある?」

幸子「あります。持ってきてくださいPさん。冷蔵庫を開けて二段目の中頃にあります」

P「わかった」

幸子「…………訂正します。ボクがいきます。せっかくのケーキを台無しにされたくありませんからね」

美穂「?」

P「…………」

幸子「そこでお座りしててください。言っておきますがなにもいじらないでくださいね」

美穂「幸子ちゃんの部屋なんだか寂しい……」

P「そういえばほしい家具ある?」

美穂「特には……」

P「家具以外は?」

美穂「それも特には……あ」

P「何?」

美穂「温もり」

P「クマのぬいぐるみ洗濯中だったね」

美穂「あれがないと眠れなくて……前まではこんなことなかったんですけど……なんでかな」

P「腰を悪くして不安なんだろう。いつ悪くなるかわからないからね。モニターで見る限り体に力が入って強張っている様子だからね」

美穂「不安なのかな……? たしかにそう言われるとそう思います」

P「家で休めないのは苦痛だからね」

美穂「あの……」

P「何かな?」

美穂「私と……寝てくれませんか?」

幸子「あなたは何を言っているのですか」

P「お帰り」

幸子「聞かなかった事にするにはあまりにも厳しい会話がなされていましたね」

美穂「…………」

幸子「これが世に言う赤面ですね」

美穂「あっ、あのっ、これはちがっ違うの」

幸子「以前のボクなら正義感で止めてるところですが面倒事に巻き込まれたくありませんので聞かなかったことにします」

美穂「クマの代わりに寝てもらおうとしてね……その」

幸子「アーアー聞こえませーん」

P「意地悪しないで聞いてあげて」

幸子「聞こえませんし、意地悪もしてませーん」

美穂「うぅ……」

幸子「あーあー」

美穂「ぐすっ……」

幸子「……やめた」

美穂「えぇっ?」

幸子「人に意地悪するなんて気持ちいいものじゃないです。こんなのをしたがる人の気持ちなんてやはりわかりません」

美穂「幸子ちゃん……?」

幸子「すみませんでした」

美穂「えっあ……うん」

P「…………」

美穂「…………」

幸子「……どちらか笑ってくださいよ。話が進まないじゃないですか」

P「クマがなくて夜眠れないそうだ」

幸子「安心毛布ですか?」

P「腰が悪化するのが怖くて眠れないんだ」

幸子「そういえばそうでしたね」

美穂「寝るときは言われた通り横向きに寝てるんだけど……ふとしたときに心配で起きちゃって」

幸子「それとクマのぬいぐるみがなくて不安と」

美穂「うん……いつの間にか必要な物になってたの」

幸子「それなら簡単ですよ。今日買った杖を代わりに抱いて眠ればいいじゃないですか」

美穂「え?」

幸子「杖を大切な人と思えばいいんです。この場合はクマのぬいぐるみですが」

美穂「大丈夫かな……」

幸子「ボクが言うのだから間違いありません。ボク賢い!」

美穂「…………」

幸子「なんですかその顔は。自分で自分を褒めることがおかしいですか?」

美穂「そうやってポンッて解決策が思い浮かぶのってうらやましいなって思って……」

幸子「ボクは賢いですからこれくらい造作もないです」

美穂「女子力低いのかなぁ」

幸子「女子力?」

美穂「最近ほたるちゃんとそういう話になって……女子力って生きる力なんだって」

幸子「ふーん。ボクの知ってる女子力とは違う気がします」

P「そういう雑誌読むのか?」

幸子「情報を仕入れておかないと大変ですから。いくらボクが可愛くても周りを賢くするわけではありませんので、そういった雑誌も読んでます。最近も小梅さんに貸しました」

美穂「小梅ちゃんに?」

幸子「たしか何かの特集でした」

美穂「もしかしてそれって、ドキッ!好きなあの人にアピール☆特集?」

幸子「それです。なんだか頭が悪いタイトルでした」

美穂「私あのタイトル好きなんだけど……」

幸子「……独特なセンスしてますね」

P「それを貸したのか」

美穂「小梅ちゃん好きな人いるの?」

幸子「担当プロデューサーっぽいです。あくまで予感ですが賢いボクが言うんですから間違いありません!」

美穂「禁断の愛!? あれってどんなの載ってたっけ?」

幸子「素っ気ない態度をとったり彼氏ができたといったりですね」

美穂「私だったら卒倒しちゃうよ。でもそういうのも女子力なんだろうね」

幸子「そういうことなら小日向さんも女子力高いですよ」

美穂「そう?」

P「クマの人形やハート型のもの多いからね」

幸子「Pさんも読んだんですか?」

P「まゆが読んで逐一それを実践してた」

美穂「でも私ブラックコーヒー飲めない……飲めないとダメなんだよね?」

幸子「それはツンデレ特集じゃなかったですか?」

美穂「あ、そうだったね。ツンデレかぁ……ツンデレってどんなのだろうね」

幸子「恥ずかしくて本心と逆のことを言ったり、本心を言えなかったりです。実物は見たことがありませんがなんだか面倒な人ですね」

美穂「恥ずかしがり屋とは違うの?」

幸子「そこに強がりが含まれていればいいのだとか。そう書いてありました。あとは二人きりの時には優しいとか。なんだかこう振り返ると二面性がある人ですね」

P「アイドルも似たところあるよ」

幸子「否定はしませんがあなたという人は……」

美穂「私ってみんなにどう映ってるんだろう」

幸子「あなたがどう見えてるかなんて知りませんよ。わかりますか?」

P「さぁ」

幸子「だいたいどう見えてたっていいじゃないですか」

美穂「それはそうかもしれないけど……気になるよ」

幸子「それはボクみたいになってから言ってください。一番カワイイアイドルなのに色物として見られてからに」

美穂「幸子ちゃんはそんな風に見られて」

幸子「ないということはそれこそあり得ません。まっ、ボクの可愛さがわからない人は可哀想ですけどね」

美穂「それなら私が……」

幸子「飲み物を取ってきます」

美穂「あっ……」

P「…………」

美穂「幸子ちゃん……」

P「…………」

美穂「前は自信いっぱいだったのになんで……」

P「誰にどう見られようといいのは本心。そ?は前から変わってない」

美穂「でもなんで……」

P「自分達の見られ方を変えたいから入った」

美穂「自分達の見られ方?」

P「輿水さん以外の輿水さんの事知ってる?」

美穂「幸子ちゃん以外の幸子ちゃん? それって幸子ちゃんの周りのことですか?」

P「そう。ややこしい言い方してごめん」

美穂「それだとエレベーター式の学校に通ってることとお金持ちなことくらいしか知りません」

P「自分達というのはそのお金持ちの事」

美穂「お金持ちの?」

P「小日向さんはお金持ちをどう見る?」

美穂「どう見ると言われても……」

P「失礼。また回りくどい言い方をした。お金持ちの子供の事を世間一般ではどう見ると思う?」

美穂「世間一般ではですか? それは男の子ならお坊ちゃん、女の子ならお嬢様で…………あ」

P「そう。その見られ方を変えたくてアイドルになった。正しく表現するにはこれじゃ足りないけど大まかに言えばこれ」

美穂「そうなんだ……」

P「それに本来一番信頼できる人が自分の味方じゃないどころか、人からそう見られる原因を作ったからね」

美穂「それって担当プロデューサーのことじゃないですか」

P「信頼できる人が信頼できない。彼女の味方は極少数。だからああなった」

美穂「それなら……それなら私が……っ」

P「小日向さんが?」

幸子「お待たせしました。Pさん、あれほど弄らないでと言ったじゃないですか。それなのに……」

美穂「幸子ちゃんをそういう風に見ない!」

幸子「…………なんの話ですか」

美穂「えっ、あっ、それはその……」

幸子「…………はぁ」

美穂「っ……!」

幸子「なんのことだかわかりませんが、人の部屋でいきなり叫ばないでくだ」

美穂「幸子ちゃん!」

幸子「……なんですか」

美穂「私はそういう風に見ないからね!」

幸子「どんな風にボクのことを見ないのかわかりかねますが……そうですか。なら是非そうしてください」

美穂「うんっ」

幸子「なんのことだかさっぱり。それより先ほど佐久間さんから連絡がありましたよ。PさんはどこPさんはどことそればかりがざっと五通ほど」

P「そうか。それなら戻らないとな。小日向さん戻ろう」

美穂「それじゃあ私はこれで……またね幸子ちゃん」

幸子「はいさようなら。あ、Pさんは少し残ってください。言いたいことがありますので」

P「わかった。先に外に出ててくれるかな?」

美穂「あ、はい。よいしょっ」

幸子「……行きましたね」

P「行ったね」

幸子「ハァ、まったく……個人情報をベラベラ喋らないでください。そんなんだから昇進出来ないんですよ」

P「やり過ぎた」

幸子「ボクが入っていかなかったらどんなことを言われていたか……それにあれはなんですかあれは。あんなのじゃボクの思ってることの三分の一も伝わらないですよ。回りくどい言い方だとご自分で理解しているなら訂正してくださいよ」

P「今から気を付ける」

幸子「当たり前です」

P「少し意地悪をいうけど、期待して入ってきてどうだった?」

幸子「……いつから気が付いていたんですか」

P「ドアの前に立ってることはなんとなく」

幸子「変態力が身に付いてますね。まっ、ボクほどカワイイなら隠しきれないほどオーラもスゴいから仕方ないですが。あぁ、カワイイって罪」

P「小日向さんにああ言われて嬉しかった?」

幸子「……多少は期待して入りましたが、あんなこと言われても信用できないからちっとも嬉しくなんかないですよっ」

P「そうか」

幸子「本当に……っ……」

P「小日向さんが外で待ってるからこれで。返さなくていいから」

幸子「じょっ……冗談じゃないですよ。ボクの、趣味じゃないですしっ、こ、こんな趣味の悪いのを持つだなんて、おっ、おぞましくて嫌っ、ですよ……」

P「……好きにして」

幸子「え、えぇ、それはもう後で、滅菌消毒してっ、返してさしあげッ……ちょっ、ちょっと…………なんなのですかもう……ウゥっ」

P「お待たせ」

美穂「アッ、ハ、ハイ」

P「冷えたかな?」

美穂「や、やっぱり顔赤いですか?」

P「赤い」

美穂「お、思い返してみると恥ずかしいこと言っちゃったなって……あうぅ」

P「笑い話になるといいね」

美穂「が、がんばります」

P「是非そうして」

美穂「やっぱりまだ恥ずかしいの治らない……こんなんじゃまたプロデューサーにからかわれちゃう」

P「冷えたから部屋に戻ったら暖かくしないとね」

美穂「でっ、ですね。あのっ」

P「言いたいことはわかる。部屋に戻ったらするよ」

美穂「よかった……幸子ちゃんに気付かれないかハラハラしてて」

P「そわそわしてたね」

美穂「恥ずかしい……」

P「──痒いところある?」

美穂「後ろの生え際が少し……」

P「右が特に真っ赤だね」

美穂「ハッア……」

P「どう?」

美穂「あ、ありがとうございます」

P「どうも」

美穂「…………」

P「いつも通り背中は洗うから上半身の前は自分で洗って」

美穂「は、はい……はぁぁ」

P「どうしたの?」

美穂「なんだか今ごろになって緊張しちゃって……」

P「何に緊張してるの?」

美穂「こ、この状況に……」

P「あぁ……」

美穂「Pさんは緊張しないですか?」

P「ドキドキしてるけど緊張はしてない」

美穂「その、へ、変な気分になることは?」

P「ない」

美穂「そうですか……よ、喜んでいいやら悲しむべきか」

P「この状況を利用するほど落ちてはいない。節度は守ってる」

美穂「ドキドキしてる私っていったい……」

P「健全。普通はそうなる」

美穂「私、女子力低いのかな……」

P「高くてもいいことはないと思う。あくまで個人的な意見だが」

美穂「こんな私でもせめて……」

P「なれるといいね」

美穂「少し恥ずかしいですけど……がんばります」

P「必要なものがあったら言って。用意するよ」

美穂「はい」

P「…………」

美穂「……な、なにか喋ってください。黙っていられると恥ずかしい」

P「小日向さんは女子力が高い人ってどんな人だと思う?」

美穂「おしゃれなカフェを知ってる人なんて素敵だと思います」

P「カフェか。たしかに素敵かもね」

美穂「ああいうところは一人だと恥ずかしくて行きにくくて……」

P「入りにくいよな」

美穂「そうなんです。なんだかさみしい子みたいに見られそうで……だから気になるところにも入れなくて」

P「気になるところ?」

美穂「駅の近くの路地を入ったところにあるのを見掛けたんです」

P「あそこか。良くなったら高森さんでも誘って行ってくれば?」

美穂「いつになるのかな」

P「筋トレにまだかかるからね。腰はどう?」

美穂「まだ不安です。あ、杖ありがとうございます」

P「恥ずかしいだろうけど外に出るときは持っていきなね」

美穂「はい」

P「杖を持ってると便利だからね。電車の席も譲ってくれる」

美穂「悪くなってから思いますけど腰って大事なんですね」

P「肉付きに要と書くくらいだからね。湯船に移るよ」

美穂「あっ、はい。ンッ……ふッ」

P「湯加減は?」

美穂「ちょうどいいです」

P「今日は後半は半身浴にするからね」

美穂「半身浴って下半身だけ浸かるあの半身浴?」

P「そう。家庭用湯船に使う椅子も買ってある。これなら縁に座るより安全だから。バスタオルもここに用意したよ」

美穂「ありがとうございます。なんだか悪い気がしてきちゃいました」

P「たまにはお風呂楽しみたいだろうからね」

美穂「また外を歩けるようになりたいなぁ」

P「今日は少し遠くまでだったけど近場なら杖があるから行けるよ」

美穂「そういえばここの周りって歩いたことない」

P「ここに来てからずっと部屋の中だしね」

美穂「どんなお店があるんだろう」

P「探すといいよ。ただし、何かあると困るから外に出るときは付き添いをつけて」

美穂「幸子ちゃん、誘ってみようかな」

P「それはやめておいた方がいい。今日のも少し渋ったからね」

美穂「そっか……」

P「輿水さんの前に君を治さなきゃね。向こうのことはそれから」

美穂「……はい」

P「そろそろ出よう──」

美紗希「おはよぅござぃまぁす」

衛藤P「おう、おはよう。今日レッスン入ってたか?」

美紗希「入ってませんけど来ちゃいましたぁ」

衛藤P「周りに勘違いされたら困るだろ」

美紗希「それはそれでイロイロ都合いいかもぉ♪」

衛藤P「おいおい勘弁してくれよ」

美紗希「アハハー」

衛藤P「ちょうどいいや。この中から仕事選んでくれ」

美紗希「それじゃこれでぇ♪」

衛藤P「決断早いな」

美紗希「悩んでるのもウジウジしてて嫌いなんですよねぇー」

衛藤P「好評だよーこの前のあれ」

美紗希「あー、アメリカの? あれは作品がよかったからぁ」

衛藤P「辛口批評だったぞ?」

美紗希「日本映画会もあれくらいガンバってくださいっていう私なりのメッセージ、みたいな?」

衛藤P「たしかにあんまり携帯小説や本読まないオレでも思わず涙したな。セリフまったくわかんなかったが」

美紗希「今の時代バイリンガルくらい出来ないとダメですよぉ?」

衛藤P「ハハハ、手厳しい」

美紗希「やっぱ恋愛はパワーなきゃ!」

衛藤P「草食系なんてお呼びじゃないと?」

美紗希「どうでしょうー」

衛藤P「はっきりしないな」

美紗希「ミステリアスなのも女子力高いかもー。そう思わない?」

衛藤P「だな!」

美紗希「うちのプロダクションにもウジウジしたのがいるけどああいうのって需要あるのぉ? 普通即切らない? 不幸不幸言い過ぎっしょ」

衛藤P「不運がウリなんだしかたない」

美紗希「ふぅーん」

衛藤P「今のギャグ?」

美紗希「そんなわけないじゃないですかぁー。そうだあたしぃこの前ついてなかったんですよぉー」

衛藤P「どしたなにがあった」

美紗希「せっかく机の下掃除してあげたのにまたすぐに汚されてぇ。せっかく抗菌スプレーかけたり、乾燥しないようにしてあげたのにぃひどいと思いません?」

衛藤P「ここにそんな机あったか? 誰の机?」

美紗希「ほらあのジメジメェーってした子ですぅ」

衛藤P「あ、えっと干し椎茸みたいな名前のか。星なんとか」

美紗希「そうそうそうそう。テルコちゃん!」

衛藤P「あれっ? あれで『しょうこ』じゃなかったっけ?」

美紗希「そうなんですかぁ? キラキラネームじゃないですかぁ! ヤダァ」

衛藤P「オタクの間ではドキュンネームとも言うらしいぞ」

美紗希「女の子なんだからもっとキレイにしなきゃなのに。そぉ思いません?」

衛藤P「おう、そう思う。だいたい今の男はいろいろ気にしすぎだよな」

美紗希「ですよねぇ。もっとワイルドに生きなきゃ」

衛藤P「サバサバしてなきゃな」

美紗希「ジメジメサイテー!」

衛藤P「ジメジメサイテーだよな」

美紗希「今度ミュージカル行かなぃ?」

衛藤P「おう。それにしても語学力高いよな」

美紗希「英語は女子力の基本だもん」

衛藤P「そういやこんな仕事来てるけどやる?」

美紗希「へぇー」

衛藤P「どうだ?」

美紗希「こんなこと考えたこともなかったけどいいかもぉー♪」

衛藤P「よかった」

美紗希「それにしてもさすが敏腕ですねっ。こんな仕事よく持ってこれましたねぇ。この子ってあのプロダクションのですよね?」

衛藤P「前から何回か来てたがなぜか他の人が断ってたんだよ。まったくなに考えてんだか。それで相談なんだが……」

美紗希「この格好でやるのぉ? 合わなくないですかぁ?」

衛藤P「撮影時はスーツに着替えるから安心して。この番組プロデューサーは始めにこういうことやるらしい。業界でも有名だとさ」

美紗希「ふぅーん」

衛藤P「妙ちくりんなものだけど評判はいい」

美紗希「あの格好したときあたし誰それかと間違われちゃいましたよねぇ」

衛藤P「あぁーあったな。失礼な話だよな。子供と一緒にするなんてな」

美紗希「あたしカワイイ系よりキレイ系みたいなぁ?」

衛藤P「ずっとカワイイしずっとキレイだって」

美紗希「やだぁプロデューサー。上手なんだからぁ」

衛藤P「本当のことだって。そういやそれに片割れも出るらしい」

美紗希「この番組にぃ? へぇー」

衛藤P「まっ、どうでもいいか。よし、これからインタビューいくぞ──」

みく「朝にゃ」

みく「一人にゃ」

みく「孤独にゃ」

みく「なんだかみくだけ仲間外れにされてる気分がする。気のせい?」

みく「あまりにも寂しいからだぁれもいないのにこの口調にゃ」

みく「今日は美穂チャンとこ行こっと。猫は気まぐれ風任せにゃ」

みく「そんなわけで美穂チャンの部屋の前。藍子チャンのメアド知ってて助かったにゃ」

みく「おや? 鍵が空いてるにゃ。無用心だねぇ。開けたのがみくだったからよかったものの。さて、抜き足差し足キャットウォークにゃ」

みく「美穂チャンの部屋カワイイものいっぱいだよねぇ。廊下からもうカワイイって卑怯」

みく「一歩踏み出す度にみくの何かがクライシス」

みく「ん? 部屋から何か話し声がするにゃ。電話でもしてるのかにゃ」

みく「この声はPチャン?」

P『トイレの時は起こしてよ』

美穂『ぐっすりだったので……ごめんなさい』

P『片付けはやっておく。今は着替えなきゃ』

美穂『すみません……』

P『今度から考えなきゃね』

美穂『あのもしかして……』

P『いつもはいられないからさ。先に着替えようか』

美穂『はい……』

みく「ハッハーン、みくのキャットセンスにビビビッと来たにゃ。みくはここにいちゃダメにゃ。巻き込まれる」

P「前川さんも手伝って」

みく「にゃっ!?」

みく「──元気出すにゃ美穂チャン」

美穂「は、恥ずかしくて死にそうだよ!」

みく「あんなの誰だってやるよ。気にしたら負けにゃ」

美穂「PさんもPさんですよぉ!」

P「あのまま去られても困る。後々面倒なことになる」

美穂「それでも……!」

みく「まあまあ。子猫ちゃんの世話で慣れてるからみくは気にしないにゃ」

美穂「私が気にする!」

みく「珍しくおこにゃ」

P「暑いタオル用意したから拭いてあげて。オレは洗濯してくるから」

みく「了解にゃ」

P「それとあとで話がある」

みく「にゃ?」

P「あとで話すよ」

みく「それじゃ美穂チャン脱ぐにゃ」

美穂「も、もう脱いでるよぉ」

みく「にゃ、そうだったにゃ…………ん?」

美穂「ど、どうしたの? この格好かなり恥ずかしいから早くしてよぉ」

みく「みく履かせる、美穂チャン腰悪い、美穂チャン脱いでる…………」

美穂「?」

みく「美穂チャンの貞操がクライシス!」

美穂「てっ、貞操?」

みく「ところでなんでPチャンがここに? どうせ下に誰かしらいるのになんで?」

美穂「それは……お話が盛り上がっちゃってそのまま泊まっていったから」

みく「ホントならスッゴい話なのにサラッいってのけたにゃ。ところでPチャンとなんの話で盛り上がったの?」

美穂「Pさん何気にクマの人形に詳しくて」

みく「あー、見た目がクマさんっぽいからにゃ。にゃはは」

美穂「意外だよね」

みく「なんかいろいろ勘繰りたくなるにゃ。ミステリアスはみくの領分なのにこれじゃみくの領分がクライシスにゃ」

美穂「そういえばさっきビックリしちゃった」

みく「ビックリ?」

美穂「うん。みくちゃんがいるの気付かなかったもん」

みく「忍び足は得意分野にゃ。夜通し練習もしたくらい血の滲む努力をしたにゃ。Pチャンにバレたのは計算外だったにゃ」

P「そういうのには敏感になってね」

美穂「あ、お帰りなさい。ありがとうございます」

みく「Pチャンは足音を殺して歩くのが癖なのかにゃ?」

P「話に夢中で気が付かなかったのをオレのせいにされてもね。着替え終わった?」

みく「バッチリ着替えさせたにゃ」

P「ありがとう」

みく「お礼を言われるほどでもないにゃ。困ったときは人間も動物も一緒」

美穂「動物と一緒……」

みく「アッ、そういう意味で言ったんじゃないにゃ」

美穂「そうだよね……この歳になって粗相しちゃうんだもんね……そうだよね……」

みく「あぁっ、失言が取り返しのつかないことに……!」

P「小日向さん、あまりからかいすぎないでね。前川さん本気で悩むから」

みく「え?」

美穂「……えへ♪」

みく「だっ、騙したにゃ! かわいく舌を出しても許さないにゃっ!」

P「暴れないでね。腰が悪化するから」

みく「こうなったら美穂チャンに猫耳つけて、人形も全部猫にするにゃ!」

美穂「や、やめてよぉ」

みく「みくのハートはアングリーにゃ!」

P「ちょっといいかな」

みく「なんだにゃ! Pチャンの番はあとにゃ。今は美穂チャンを……!」

P「話したいことがあるって言ったよね。それを話したい」

みく「むっ、それならしかたないにゃ。ちょっとまってろにゃ美穂チャン!」

美穂「い、いってらっしゃーい」

みく「それで話ってなんにゃ?」

P「前に他のプロダクションと仕事したの覚えてる?」

みく「こっちに来てから? それとも向こうにいたとき?」

P「言葉が足りなかったね。こっちに来てから」

みく「覚えてるにゃ。みくがどこまで猫なのかを試されたにゃ。それとエビは魚か聞かれたときは返答に困ったにゃ。あの子元気してるかにゃ」

P「……元気にしてるよ。その子に会いに行くんだけど一緒に来てくれないか?」

みく「そんなのお安いご用にゃ。何だかんだで楽しかったにゃ。また会えるなんて驚きにゃ。Pチャン何者?」

P「縁というのは不思議なもの。オレはオレで用事があるからその間元気付けてほしい」

みく「お任せにゃ!」

P「前川さんのそういうところいいね」

みく「猫は気まぐれだから次はないかもしれないよ? それでいつ行くの?」

P「これから」

みく「ワーオ……いきなりすぎにゃ。猫もビックリ」

P「いきなりでごめん」

みく「ホントにゃ。こういうのは猫チャンで慣れてるからいいけど次はないにゃ。アポ大事、みく思う」

P「先方へはアポはとってある」

みく「なんだか今日ここに来たのが陰謀のような気がしてきたにゃ」

P「偶然だよ」

みく「まっ、そういうことにしておくにゃ。なんだか釈然としないけど深く考えると怖くなるからやめとくにゃ」

P「場所は新しくできた猫カフェ」

みく「新しくできたとこってもしかしてあのニャンニャン時空伝のこと!?」

P「そこのこと。流石耳が早いね」

みく「血統のいい猫しかいないで有名だもん。必ず三毛猫がいるってウワサにゃ!」

P「そうらしいね」

みく「それでいて批判も少ないから心置きなく利用できるって評判にゃ! 猫好きにやっさすぃー場所にゃ!」

P「同じ経営者が保護猫カフェもやってるからな。批判が集まりにくい」

みく「そんな人に一度でいいから会ってみたいにゃ」

P「会えなくもないよ」

みく「え?」

P「関係者だから。正確にいうなら提供スポンサー。ほら、聖靴学園の撮影の時に」

みく「覚えがないにゃ」

P「主役に聞けばわかる」

みく「小梅チャンに? あとで聞いてみるにゃ。とりあえず今は猫カフェにゃ!」

P「オレが連れ回す形になるから4割出すよ」

みく「そこは全額負担が妥当にゃ。いや、当然にゃ」

P「それがいいならそうしよう」

みく「やっぱやめるにゃ。4割でいいにゃ。あとで何か要求されそうで怖いから」

P「話も決まったところで移動しよう」

みく「レッツゴーにゃ!」

P「──いきなりお呼び立てしてすみません」

?「いえ、こちらこそ。もうあなたは関係ないのにこうして誘っていただいて」

P「これで元気になるなら幸いです。今日はそっちの髪型なんですね」

?「えぇ、そうなんです。アレだと上が揺れるから猫がよってきてスーツが大変なことに……だからこっちにしたんです。こっちの方が固いですからあまり揺れません」

P「見慣れた髪型ですので安心しました」

?「そういうのはセクハラになりかねませんから気を付けてくださいよ?」

P「それもどうかと」

?「あはは、たしかにそうですね。ちょっとしたイジワルです」

P「イジワルですか……」

?「移ったのかもしれません」

P「そういえば最近は若と呼ばれてるとか聞きましたが」

若「なんで知ってるんですか……あ」

P「ブログですよ」

若「そういうことを書くなっていってあるのにぃーあの子ときたらぁ……!」

P「少し前までは鬼軍曹でしたね」

若「落ち込むと人のニックネームつける癖は治してもらいたいですよ」

P「やはり落ち込んでましたか?」

若「わからない程度には」

P「すみません」

若「いえ、仕事を受けた私にも責任があります。製作陣が変わり者なのは知ってましたし、私自身にも驕り高ぶりはありました。これだけ有名になったのだから標的にはされないだろうって。リサーチミスでした。まさかあのままの格好で出てくるなんて思いもしませんでした」

P「変化球でした」

若「それに本来ならあなたが謝りに来る必要はありません」

P「これも性分なのでしょうね。自分でもわかりません」

若「事務所が有名になると厄介事も増えますしね。昔は実感なかったですが最近はヒシヒシと感じます。それにしてもここ変わってますよね。猫カフェのなんたるかは知りませんが、分煙ならぬ分猫ですね、これ」

P「子連れも多いですからね。ゆっくりお茶が目的の人もいますから」

若「アレルギーの人も多いですしね」

P「家庭を持つとアレルギーでもこういうところに来なければならないときありますから」

若「家庭持ちの貫禄ありますよ」

P「それはどうもありがとうございます。独身には嬉しい言葉です」

若「それ喜んでないじゃないですか」

P「ははは、たしかにそうですね。ところで最近そちらの事務所はどうですか?」

若「先程も言いましたけど有名になるといろいろ大変で……この前なんて珍しく社長が直々に抗議する流れになって大変でした。若い人の発言とはいえ私もどうかと思ったんですけどね。止めるのに大変で」

P「学生主体の討論番組とはいえあれは配慮に欠ける発言でしたよ。彼女なら言いかねない発言でしたが」

若「私にもああいう時期がありましたが少し私とは違う気がします。ジェネレーションギャップなんでしょうか?」

P「中二病にジェネレーションギャップですか。あるかもしれませんね」

若「どの範囲で謙虚になるか、謙虚になったことでどんな影響があるか、わかれというほうが間違ってるのかもしれませんね」

P「珍しく弱気な発言ですね」

若「仲の良い親戚はいますけどなんだかんだ言っても私は一人っ子ですから。真の意味であの子の気持ちはわかりません」

P「支えになってると思います」

若「根本がグラグラな支えだから支え自身に不安があります」

P「たしかに」

若「相変わらず辛辣というか毒舌というか……あ」

P「どうしました?」

若「あんな風にネコを操るなんて……」

P「本当に好きなんでしょうね前川さん」

若「かわいい……」

P「行ってきます?」

若「で、でも私スーツだし」

P「エプロン借りれます」

若「そ、それじゃ……」

P「…………」

みく「いやぁ遊んだにゃ遊んだにゃ♪」

P「楽しかったようでなにより」

みく「やっぱ若い子パワーがあるにゃ!」

P「二十代になってからの2歳違いと十代の2歳違いじゃ違うものだけどそう感じるときもあるよな」

みく「うんうん。みくの学校の運動部見ててもそう思う。何て言うかパワーがダンチにゃ」

P「そういえばアニメ借りたんだって?」

みく「奈緒チャンが『ダンチ』って言葉使ってたから最初は団地の事かと思ってハテナだったにゃ」

P「それで借りたのか」

みく「みくのキャットセンスにビビビッと来たから問い詰めたら、すーぐ毛玉をゲロったにゃ」

P「感想は?」

みく「アニメじゃなかったにゃ。それにしても奈緒チャンはああいうのも見るのに驚いたにゃ」

P「男性向けだからね」

みく「漫画くらいは読むけどみくにはわからない世界にゃ。話は変わるけどPチャンってなにもの?」

P「見ての通り」

みく「ただの不審者じゃないのはたしかにゃ」

P「言うね」

みく「猫舌は辛口なのだ。みくは自分を曲げないよ」

P「そう……」

みく「ここら辺のお店から猫カフェからちぃーさなお店まで知ってるなんてちょっと異常にゃ」

P「自然と身に付いたことだから説明するのは難しい」

みく「普通に生きてきたらこんなに知ってるのはおかしいにゃ。摂理自然の法則から外れてる」

P「そんなに外れてるのか」

みく「かすりもしてないにゃ」

P「しっかりと前を見て歩いて。眼鏡落として割れる」

みく「変装にもお金かかるのが辛いにゃ」

P「仕事での移動の時はする必要あるけど普段ならしなくても大丈夫だよ」

みく「それはみくが売れないって遠回しにいってるのかにゃ?」

P「そうじゃないよ。芸能人だからといって騒ぐ人は少ないって言いたいの。特に東京育ちならそういうのには慣れてるし理解もある」

みく「恐るべし都内!」

P「変装関係なくファッションとして楽しいよね」

みく「Pチャンはファッションに興味があるにゃ?」

P「そんなにない。TPOに合わせた服装を心掛けてる程度」

みく「ふーん」

P「…………」

みく「……Pチャンはみくのことどこまで知ってるにゃ?」

P「大体のことは」

みく「それはみくのアイデンティティがクライシス! みくはミステリアスキャットでいなきゃいけないにゃ! 猫は気まぐれ風任せにゃ」

P「素性が明かされたらビーバッパパラポ」

みく「それはスキャットマンにゃ」

P「頭の回転早いよね」

みく「罠だったにゃ」

P「帰ろう」

みく「Pチャンは謎ばかりにゃ──」

P「ただいま」

みく「ただいまにゃー」

みちる「おっ帰りなさぁー……い?」

みく「どうしたにゃ?」

みちる「誰?」

みく「誰はひどいにゃ。一日会わなかっただけで忘れちゃったの?」

みちる「委員長みたいな知り合いはいないです」

みく「ん?」

P「メガネ」

みく「にゃ!? 忘れてた!」

みちる「それで誰なんですか?」

みく「メガネ脱! ネコミミニャシーン!」

みちる「あっ!」

みく「思い出したにゃ?」

みちる「……みくちゃん!」

みく「今の間ひどくない?」

まゆ「お帰りなさいPさん…………と?」

みく「まゆチャン」

まゆ「ふふ、冗談♪」

奈緒「……お帰り」

P「ただいま」

奈緒「ん……」

P「オレの部屋に来るなんて珍しいな」

まゆ「奈緒ちゃんですか? 夕方に訪ねてきてそのままお茶してました」

P「…………」

奈緒「…………」

まゆ「まゆたちは向こう行ってますねぇ。行きましょう二人とも」

奈緒「…………」

P「…………」

奈緒「…………」

P「…………」

奈緒「あたしの部屋に来て」

衛藤P「──お疲れー」

美紗希「お疲れさまですぅープロデューサー♪」

衛藤P「何それ」

美紗希「たまには言い方を変えてみようかと。マンネリ防止ってやつぅ?」

衛藤P「なんだかアニメキャラみたいで気持ち悪い」

美紗希「アハハそうですよねぇ。そういうプロデューサーも口調移ってない?」

衛藤P「かもな。そういやアニメといやぁ思い出しちまった」

美紗希「思い出す? なにそれ気になる気になるぅ!」

衛藤P「うちのプロダクションにもいるんだよ。アニメ好きなアイドル。ぶっちゃけキモい」

美紗希「女の子にキモイほダメだと思うなー」

衛藤P「だってよ、なんつーのああいうの? 深夜アニメっての見てるらしくてよ。DVDまで持ってるとか言ってたんだぜ?」

美紗希「うわっそれキモイかも!」

衛藤P「女の子にキモいはなしじゃなかった?」

美紗希「女だからノーカン♪」

衛藤P「いい年してアニメとかぶっちゃけ犯罪者予備軍」

美紗希「言えてる。どんな子なの?」


衛藤P「名前は伏せる、というか忘れたが眉が太い」

美紗希「特徴それだけ?」

衛藤P「容姿はそれなりだけどぶっちゃけなんでアイドルやってんのかわかんね。なんでなれたんだって感じ」

美紗希「オタクはそういうアニメ好きな女の子好きだからね」

衛藤P「客寄せパンダかよ」

美紗希「共感って人との付き合いでの基本だからね。つか、ぶっちゃけアニメ好きとか女子力チョー低い。むしろマイナス?」

衛藤P「マイナスだ。しかしホントオレは幸運だよ」

美紗希「あたしっていうアイドルに会えて幸運っしょ♪」

衛藤P「あぁ! 根暗に不運にアニメオタク、最悪だよこのプロダクション──」

奈緒「…………」

P「…………」

奈緒「……なあ」

P「何?」

奈緒「あたしってそんなに女っぽくないか?」

P「どうして?」

奈緒「質問に質問で返さない。今はあたしの質問に答えて」

P「どこからどうみても女の子。どうしたの?」

奈緒「眉毛が太いのにか?」

P「そういう人もいる」

奈緒「化粧にそんなに興味ないし、服だって着れればそんなに気にしない」

P「それで?」

奈緒「自分の体の手入れだってしてないし、17過ぎてアニメ好きでも?」

P「アニメ好きでも」

奈緒「…………」

P「……どうしたの?」

奈緒「この前話聞いちゃってさ」

P「誰の話?」

奈緒「……名前伏せてもしかたないか。衛藤美紗希って知ってる?」

P「もちろん」

奈緒「その人と担当プロデューサーの会話」

P「最低だね」

奈緒「たしかにあたしはさっきもいったけど自分の体の手入れなんてしてない。下もその……生やしっぱなしで……放置……してるけどさ」

P「虱に気を付ければ君の自由」

奈緒「……なぁ、普通ここは恥ずかしがったり、女の子がそんなことを言うんじゃないっていうところじゃない?」

P「……オレに普通を求めないでくれ」

奈緒「そこで頼みなんだけどさ…………あたしを女にしてくれよ」

P「君は何を言ってるんだ?」

奈緒「……別にそういう意味じゃないって。あたしもそこは節度持ってるよ。あたしが言いたいのはなんていうか……女っぽいこと」

P「いまいち意図が読めない」

奈緒「今のあたしにはさ……その、大切だって呼べるものがないんだ。凛も加蓮もいなくなってさ寂しいんだよ。その上、アイドルとして否定されたら……」

P「女としての自信がほしいということ?」

奈緒「そうなのかな……よくわかんない」

P「協力するのはいいけど具体的な方法は?」

奈緒「……ある──」

P「…………」

奈緒「あ、あんまりじっくり見ないでくれ。は、恥ずかしい」

P「こうやって見てる方も恥ずかしい」

奈緒「け、結局……毛深い女ってどうなんだ?」

P「好き好きとしか」

奈緒「…………」

P「どうしたの?」

奈緒「なんか慣れてるのがヤだな」

P「髪の毛も問題ない」

奈緒「なんていうかもう少し褒めてもよくないか?」

P「歯が浮くセリフは苦手」

奈緒「それでどうなんだ。あたしのは毛深いのか?」

P「見比べたことがないからわからない。普通なんじゃないかな。とにかく風邪ひくといけないから湯船に入ろう」

奈緒「そうさせてもらう。いい加減恥ずかしくなってきた……」

P「ところでどうだった?」

奈緒「ん?」

P「三助具合のこと」

奈緒「……あたしも比べたことないからわからないけど…………良かった」

P「結構遊んでるんだね」

奈緒「……あたしも年頃だから」

P「大切にね。髪は女の命っていうから」

奈緒「ん」

P「…………」

奈緒「……何考えてるんだ?」

P「三助で伝わるのが少し嬉しくて」

奈緒「漫画にそういう単語出てくるから自然と覚える」

P「難しい単語や表現が出てくるよね」

奈緒「そういうの調べるのってちょっとだけ楽しい」

P「わかる」

奈緒「……あたしもさ、その」

P「その?」

奈緒「アイドルに夢見てなかったわけじゃないんだ。本音を言うと憧れてたし、キラキラしたのを想像してた。実際にそうだった部分もあるし、それには満足してる。けど……」

P「……君自身の性格もあるけど年齢的なものだよ」

奈緒「年齢? 年齢か……そうなのかな。なんていったらいいんかな。周りが輝けば輝くほど自分の暗さが目立つんだよね。そんなときふっと違う出会い方だったらどうなったんだろうって考えるんだ。凛と仲良くなれたのかな……とか。あ、仲が悪かったってわけじゃなくてその……」

P「その事は知ってる。洗剤の件でしょ? 周りにも被害者がいたからね」

奈緒「やっぱり知ってたんだ。勧められてビックリした。それってねずみ講じゃないのかって。あの時あたしが言ってれば変わったのかなって」

P「変わらない。彼女は信じなかったよ」

奈緒「あたしなんかじゃ無理だよな……」

P「彼女は頑固なところあるからね。それに年齢的なものもあるから、君が何をいっても難しい。覚えない?」

奈緒「たしかにそうかも。中学から高校に上がってピリピリしてるし、まぁ凛がどうだかわからないけどあたしはそうだった」

P「今でもピリピリしてる時あるね」

奈緒「……なぁ今、気がついたんだけどさ」

P「何?」

奈緒「この状況ってものすごく恥ずかしい状況じゃない?」

P「たしかに」

奈緒「あんたは平然としてるけどな……」

P「疚しい気持ちはない。少し恥ずかしい気持ちもあるけど」

奈緒「お、襲うなよ」

P「湯加減は?」

奈緒「スルーかよ……ちょうどいい。悔しいくらいちょうどいい」

P「ところでさ」

奈緒「な、なんだ」

P「小日向さんってどんなアニメをよく観る?」

奈緒「他の女の話かよ……別にいいけどさ」

P「悪いね。気になったからさ」

奈緒「あたしも相談しようと思ってたとこだからいいよ。恋愛ものが多い」

P「恋愛ものか」

奈緒「少女マンガ原作の砂糖吐きそうなのはもちろん、最近は少年誌原作のも。まぁ、弾切れ気味なのもあるけどさ」

P「お金が厳しいなら買うよ」

奈緒「圧迫するほどは買ってない。お金が厳しいのは確かだけど……なにか比奈さんに頼もうかな」

P「豊富にあるからね」

奈緒「部屋見たことあるの?」

P「どんな人か知っておく必要があったからね」

奈緒「ふーん。もしかして部屋をきれいにしなきゃいけなくなった事態って……」

P「オレの訪問だな。元を質せば事務所の方針だけど」

奈緒「どういうこと?」

P「プロダクションにとってアイドルの素性や隔たりが不透明なのは不安材料でしかない」

奈緒「それって担当プロデューサーの仕事じゃ?」

P「変に担当アイドルを刺激したらまずいからな。根掘り葉掘り探られてたとわかったらどう思う?」

奈緒「信用なんてできなくなる。それにその後気まずくなることを考えると胃が痛くなる。理解され過ぎるのもウザいけどね。あたしの元担当みたいに」

P「そんなときに問題が起きてもすぐ切り捨てられるのがいたら使わない手はない。頼まなくてもする必要があったし」

奈緒「それが普通なんだろうけどなんだかイヤだなそれ」

P「世間一般との擦れだね」

奈緒「あたしは……容姿で差別しない。これだけは……絶対」

P「どうも。そろそろ出ようか」

奈緒「……ン──」

P「……それで」

奏「…………」

P「これはなんだ」

奏「あなたの部屋に布団を敷いて待機してる。それだけ」

P「なんでこんなことを?」

奏「正式に挨拶してなかったもの」

P「それなら普通にしてくれ」

奏「佐久間さんからここに来たらこうするのがここの形式だと聞いたのだけれど?」

P「それで部屋に誰もいなかったのか」

奏「下の部屋に移動するって言ってたわ」

P「……とりあえず居間に移動しよう」

奏「ドアを開けて暗い廊下をすぐ。まるで私ね」

P「どういう意味?」

奏「ミステリアスに見えて実に単純」

P「自分がどう見られてるか知ってるのか」

奏「それくらいはね。ミステリアスなんて言われてるけど私なんて浅いわ。だからこの部屋から居間までの距離のようにすぐに奥が見える」

P「少なくともファンからは奥が見られてない」

奏「どうだか。人って勘が鋭いところがあるもの」

P「優しくされるのは辛い?」

奏「辛い。座ってもいいかしら?」

P「オレも座るからどうぞ」

奏「…………」

P「…………」

奏「優しくされるのが辛いってどうなのかしらね」

P「善意も悪意もなくやる時もあるし、精神衛生を考えてやる場合もある」

奏「優しい人は時に残酷」

P「辛く当たられたい?」

奏「時にはその方がいいわ」

P「それは君が他人に思い入れがあるからだね」

奏「……かもしれないわ」

P「…………」

奏「…………」

P「担当プロデューサー好きだった?」

奏「少しいいなと思ってたわ。だから余計に優しくされるのが辛かった」

P「叱られたいねぇ……女心はよくわからない。今までちやほやされてきた反動なの?」

奏「わざとらしい嫌味な言い方ね」

P「そんなプロデューサーも今やオレに優しくされるのと同じわけだ」

奏「理解され過ぎるのも辛いものね。えぇ、なんとも思ってないわ」

P「はは」

奏「佐久間さんのいった通りね」

P「何て言ってた?」

奏「さぁ、なんでしょうね」

P「部屋戻るか」

奏「待ちきれないみたいね」

P「ただ寝るだけだろ」

奏「私がほしいものくれる?」

P「…………」

奏「こういうのが好きなんじゃないの?」

P「まゆから教わったのか」

奏「まぁ、それとは関係なくもう少しこうしてたいのだけど」

P「もう少しなら」

奏「私がほしいもの……」

P「なにかあるのか?」

奏「素直さ……かな。衛藤さんって知ってるかしら? 衛藤美紗希。彼女の素直さの十分の一でもいいから分けてもらいたいわ」

P「考える力と謙虚は大切だよ」

奏「それをなくしてもいいから欲しいの」

P「素直になったらどうなるの?」

奏「ビターチョコからスイートチョコになる」

P「ビターが好きって聞いたけど」

奏「誰から聞いたのか知らないけど、チョコはやっぱり甘い方がいいわ」

P「甘いのは苦手」

奏「それに……チョコは少し溶けたくらいが美味しいの」

P「腿にのし掛かられると動けないのだが……」

奏「スイートチョコになる前の最後の私……食べてみる?」

P「チョコ類は控えてる」

奏「あらあろ、それじゃチョコじゃなくてキスはいかが?」

P「キスチョコなんてあったな」

奏「イケないキスは好き?」

P「部屋が暗いからそんな雰囲気だな」

奏「薄暗い部屋に少女と醜い野獣。雰囲気たっぷりね。ねぇ、スイートになったらイケないビターはなくなるわ。それでもしない?」

P「……それくらいにしとけ」

奏「あなたを見下ろしてるのは私。今さら強がってもムダ」

P「いいからそれくらいにしてくれ」

奏「舌を絡めて蕩けさせてあげる……」

まゆ「おイタはダメですよぉ」

奏「あら、佐久間さん」

まゆ「まゆがいないからっておイタはダメですよぉ」

P「だから言ったのに」

奏「いつからいたのかしら」

まゆ「ビターチョコからスイートチョコに、ですかぁ。気になりますねぇ」

P「明日に備えてもう寝よう──」

衛藤P「謝罪!? するわけないでしょ!」

美紗希「おはよーございまぁ……あら?」

衛藤P「とにかくこっちはなにも悪くない! 向こうの事情なんて知ったこっちゃない!」

美紗希「どうしたんだろぉ」

衛藤P「ったく!」

美紗希「どうしたんですかぁプロデューサー」

衛藤P「あ、おはよう。この前の仕事にケチがついてな」

美紗希「ケチ?」

衛藤P「共演した子のことは覚えてるか?」

美紗希「いたっけ? あ、あー思い出した。いたね」

衛藤P「今になって文句言ってきたらしくてな。向こうのプロダクションから番組に抗議が入って、うちに謝罪しろって番組プロデューサーから言ってきたんだよ」

美紗希「なにそれぇ! 今言われてもぉ」

衛藤P「気分を害したならその場で言いなさいっての」

美紗希「まぁ子供のやることだからぁ」

衛藤P「この業界にいて大人も子供もあるかっての」

奏「おはようございます」

美紗希「あ、奏ちゃんおはよー♪」

奏「おはようございます」

美紗希「なんか元気ないけどどぅしたのぉ?」

奏「ちょっと困ってしまって」

美紗希「よかったらあたしに話してよー☆」

奏「実は──」

蘭子「漆黒の国王よ!」

?「私のことかね?」

蘭子「我は手加減などせぬ!」

?「どれでも好きなのを頼んでいい。迷惑をかけてしまったからね」

P「どうもすみません。抗議したんですね」

?「たまには毅然とした態度を取らなければな。顔どころか存在を忘れられてしまう」

蘭子「叡知の王よ!」

?「それは私のことかね? 呼び方を統一してくれると助かる」

蘭子「……中村の王」

P「チュウソン? 中村か」

中村「独特な呼び方だね。それでなにか用かな?」

蘭子「ヴァルハラを駆ける許可を出したことを金輪際で後悔させてやる!」

中村「好きにしていいよ」

蘭子「じゃ、じゃあ……!」

P「失礼して向こうでゆっくり選ばせてもらいなさい」

中村「この猫カフェというのはなかなかだな。少し敬遠していたが今度から来てみよう」

P「スーツでですか? 似合いませんね」

中村「珍しく笑顔で帰ってきたからね。気になって聞いてみたらここの事を言われてね」

P「よく聞き出せましたね」

中村「お菓子をあげたら教えてくれたよ」

P「もう一人からですか。よく話せましたね」

中村「落ち込んでたとはいえ、話せてよかったよ」

P「どんな様子ですか?」

中村「見ての通りだよ」

P「……ですね」

中村「君がシンデレラプロダクションからいなくなった穴は大きいようだ」

P「プロデューサーじゃない私がいなくなっても誰も気にしませんよ」

中村「ハハハ、たしかに気にされる存在ではないかもしれないな。私も長をやらせてもらっているがこの年になって思うよ」

P「衛藤美紗希と担当にとっては寝耳に水でしょうね。難癖に近いかもしれませんね」

中村「厳しいことを言うようだが、そこに気が回らないのが彼の限界だ。勿論、こちらに気を回せなどと言うつもりはないが、せめて共演者のことは調べておくべきだ」

P「その前に止める役がいればいいんですけどね」

美紗希「──えーマジィ?」

奏「はい」

美紗希「子どもじゃないんだからそんな続々とやめるなんてありえない」

衛藤P「どうした?」

美紗希「聞いてよぉプロデューサー。奏ちゃんの担当番組のぉ……」

衛藤P「ちょっと待って。ちひろさんから電話だ。ちょっと出てくる」

美紗希「ねぇーさっきの話ホント?」

奏「私のポカミスで一斉に」

美紗希「でもたかがそれだけでそれってなくない? 子どもじゃないんだから」

奏「珍しくないって言ってた」

美紗希「ふーん」

衛藤P『ちょっと待ってくださいよ! ちょっ、ちょっとちひろさん!』

奏「きゃっ」

美紗希「どしたんだろ。怒鳴るなんて珍しい」

奏「なにか焦ってた感じ」

美紗希「ちひろさんからかかってきてるしなんかやったのかな?」

奏「…………」

衛藤P「美紗希来てくれ」

美紗希「ちょっといってくるね。なにぃ?」

奏「…………ハァ」

P『どうした?』

奏「いきなり話しかけないで」

P『ごめん』

奏「なんだかイケないことしてるみたい」

P『心配だからこうしてすぐ連絡とれるようにしてる。嫌だろうけど我慢して』

奏「耳元で囁かれてるみたいでこそばゆい」

P『溜め息ついてたがどうした』

奏「しちゃイケないことしてるみたいで少し興奮しただけ。そっちはどうなのかしら?」

P『相手は帰った。速水さんが帰ってくるまで待機してる』

奏「1つ聞きたいのだけれどいいかしら? 本当にさっき私が話したようなことってあるのかしら」

P『ままあることだよ』

奏「そう。それなら私はこの先怖くて喋れなくなりそう」

P『二人はどうしてる?』

奏「外で話してる」

P『近付ける?』

奏「ドアのところだから声が聞こえてくる」

美紗希「はぁ?」

衛藤P「あの番組がきっかけで大口の仕事がなくなった……」

美紗希「え、なんで……」

衛藤P「共演者のプロダクションからの苦情でスポンサーが一斉に降りた」

美紗希「そんなことありえなくない?」

衛藤P「しかもその中にうちと契約してるとこ、ほら検診とか受けるだろ? そこも含まれててうちとは手を切るって言ってるらしい」

美紗希「……原因は?」

衛藤P「あの格好」

美紗希「それであたしはどうすればいいのぉ?」

衛藤P「まだ続きがある」

美紗希「続き?」

衛藤P「損害分をこの事務所に吹っ掛けられた」

美紗希「ハァ!?」

衛藤P「しばらく二人ともタダ働きだ」

美紗希「マジ……?」

衛藤P「あぁ……」

美紗希「…………」

衛藤P「すまない……それとこの仕事に行ってくれ」

美紗希「これは…………マジ?」

衛藤P「マジだ──」

奈緒「なぁ……」

P「なに?」

奈緒「さっきのってもしかして」

P「その通り。よく知ってるね」

奈緒「隠しキャラ扱いで有名だから。滅多に顔出さない幻のって」

P「へぇ」

奈緒「顔のない人とかノーフェイスリーダーって二つ名まである」

P「顔がないのに認識するって面白いね。読み取りと長をかけてるんだね」

奈緒「思い出すのは黒い顔って怖い話にもなってる」

P「そこまでいくと名物だね」

奈緒「その人と知り合いなんてどんだけだよ」

P「初めてあったのが謝罪じゃなければ格好もつくんだけどな。そろそろ準備しないと。ここからちょっと歩く」

奈緒「本当に参加していいのか? 美紗希さんも来るって聞いたんだけど」

P「あぁ。たっぷり発散して来るといい」

奈緒「アンタもえげつないこと考えるよな。オタクばっかが集まる会に美紗希さん呼ぶなんて」

P「あの番組の協賛に出版社があったからね」

奈緒「あたしは遠慮なく話してくるけど美紗希さんにとっては地獄だろうな」

P「やめる?」

奈緒「趣味をバカにされるのは慣れてるけど、最近のあたしは機嫌が悪い」

P「最悪なタイミングだったわけだ」

奈緒「容姿と趣味で人をバカにするやつは嫌いだ」

P「普通の趣味だしね。関係ないけど眉調えた?」

奈緒「とっ、調えてねーし」

P「気合い入ってるんだね。ほら、そろそろ出ないと」

奈緒「あ、あぁ……」

P「忘れ物?」

奈緒「……ありがと」

P「気にしないで。楽しんできて」

奈緒「そこは聞こえないフリしろっての……それじゃ行ってくる」

P「楽しんできて」

奏「…………」

P「お帰り」

奏「ただいま」

P「どうだった?」

奏「美紗希さんは暗い顔でどこかに行ったわ。担当プロデューサーは事務所」

P「そうか」

奏「他の人はどこに行ったのかしら?」

P「神谷さんは集まり、神崎さんは向こうで猫と遊んでる」

奏「そう…………お茶頼んでいいかしら?」

P「どうぞ」

奏「すみません。ダージリンをひとつ」

P「…………」

奏「…………」

P「なに考えてる」

奏「店員の前で貴方にキスしたらどうなるのかしらって考えてたの」

P「それで?」

奏「試してみる?」

P「お茶が美味しくなくなるよ」

奏「それもそうね。フフ」

P「…………」

奏「貴方こそ何を考えてるの?」

P「三船さんには悪いこと頼んだなって思ってね」

奏「何を頼んだの?」

P「とても残酷なこと」

奏「どのくらい?」

P「人生がかかるくらい」

奏「犯罪?」

P「犯罪ではない。外堀を埋めてもらった」

奏「何をしたの?」

P「難しいことはしてない。ただ──」

P「ただいま」

まゆ「お帰りなさぁい♪」

美優「お帰りなさい」

P「こんばんは三船さん。どうでした?」

美優「うまく伝わったと思います」

P「ありがとうございます」

まゆ「Pさんの容赦のないところ、まゆ大好きですよぉ♪」

P「三船さんには辛いことを頼んでしまい申し訳ありませんでした」

美優「いえ」

まゆ「Pさんは美紗希さんがより気合いが入るようにしただけですよね?」

P「どうだろうね。向こうの反応はどうでした?」

美優「お母様喜んでいました」

P「それはよかった。これで衛藤美紗希が辛いところから逃げる人という評判は立たない」

まゆ「美紗希さんが担当プロデューサーを置いて実家に帰らないようにこっちで結婚してこっちで暮らすなんていう情報を流すなんて」

P「半分嘘で半分本当だからね、それ。以前結婚についてのインタビューしてたときの記事思い出してね」

美優「それでも本当に危ないなら帰ると思いますが……」

P「どうでしょうね。半ば強引に大分を出てきましたからね。しかも帰ったら自分の職業を言わなければ気まずいですからね。飛び出して来て数年、娘後帰ってきたらアイドルになってた。勘当ものですね。それに彼女自身のプライドが邪魔します。だから実家に帰ることはしません」

美優「駆け落ちの可能性は?」

P「限りなく低いです。お互いの職業もそうですし、働く場所も必要です。なにより二人ともそんなに相手を信用できていません」

美優「そこまで見てるだなんて……」

まゆ「ねぇー怖いですよね♪」

P「道具を用意してくれるまゆには助かってるよ。三船さんもありがとうございます」

まゆ「まゆはPさんのためならなんでも揃えます♪」

P「本当にすみません三船さん」

美優「いえ……それに私こう見えても覚悟は決めてます。今までなにも考えずに生きてきたのでこれからは償わなければいけないって反省してます」

P「前もいってましたね。応援します三船さん。速水さんもありがとう」

奏「忘れられてるかと思った。安心したわ」

P「神崎さんもありがとう」

蘭子「ククク、我の魔眼に惹かれし言霊の具現化。悪くなかったぞ」

P「向こうからの指名だからね。オレも驚いた」

奈緒「あたしは礼を言われることはしてないからな」

P「ありがとう」

奈緒「……ん」

みく「みんなー、お夕飯出来たにゃー。あっ、P達お帰りにゃ」

P「夕飯の支度ありがとう」

蘭子「褒美をやろう」

みく「お土産にゃ? あ、カワイイ猫ストラップにゃ!」

蘭子「フハハハハ、恐れ戦けぇ!」

みく「ありがとうにゃ!」

まゆ「手を洗ったらお夕飯にしましょう──」

まゆ「ハァハァ……」

P「今ので何回目?」

まゆ「そ、そういうこと……聞いちゃうなんて……うふ♪ えっと3回目……? 忘れ、ちゃい……ましたぁ」

P「はい水分」

まゆ「ありがとうございます……ンク……フゥ。Pさんも指疲れませんでしたかぁ?」

P「疲れた」

まゆ「それじゃあ、次はまゆがご奉仕しちゃいますねぇ」

P「なぁ」

まゆ「うふっ、相変わらず可愛い♪ これがあんなに膨張するなんて……うふふ」

P「…………」

まゆ「それでなんですか? なにかいってましたけどぉ」

P「なんでもない」

まゆ「奏さんのことでしたら当たりですよぉ。まゆ、少し嫉妬しちゃいました♪ Pさんとあんなロマンチックなことするなんてぇ」

P「ロマンチックか?」

まゆ「だからまゆはエロマンチックなことをしようかなぁと」

P「ところで次はどうする?」

まゆ「エロマンチックしましょう」

P「明日からどうするか」

まゆ「まゆと耽溺な日々を送りましょう」

P「後でちゃんとするから。決めてからにしよ」

まゆ「約束ですよ?」

P「約束する」

まゆ「じゃあどうします?」

P「>>581層に>>583


>>581
ジュニア(12歳まで)かティーン(13歳から19歳まで)かアダルト(20歳以上)かお願いします

>>583
救済か復讐かをお願いします。復讐なら軽くか徹底的か

それ以外は安価下

そういや救済されたジュニアいないな
ジュニア

まさかの見てる人いないとか?
救済で連取ダメなら下

P「ジュニア層に救済」

まゆ「麻袋にいれて連れてきます?」

P「人、それを誘拐という」

まゆ「大きな問題抱えてる子いました?」

P「人による。そんなに大きな問題抱えてるのは多くない。ほとんどが担当プロデューサーの不手際や方針によるものだ。個人的な問題も多いけどな」

まゆ「具体的には誰を?」

P「>>587


>>587
モバマスのジュニア(12歳まで)アイドルをお願いします

それ以外または連取は安価下

P「結城晴」

まゆ「晴ちゃんですか?」

P「知ってるのか」

まゆ「話を聞く程度なので実物は知りません」

P「……あぁ、なるほど」

まゆ「たしか12歳ですよね?」

P「そうだ。プロフィールのお復習を」

まゆ「する前にシましょう」

P「今からするよ」

まゆ「違いますよぉ。カタカナのシましょうですよぉ♪」

P「専念したいからプロフィールお復習を先にしたい」

まゆ「……約束ですよ?」

P「あぁ」

まゆ「お腹借りますねぇ♪」

P「それじゃお復習をしよう」

まゆ「腕も借りますねぇ」

P「結城晴。クールな12歳で学年は小学6年生。身長140cm、体重37kg。BMIは18.88でスリーサイズは74の55の78」

まゆ「Pさんがスリーサイズって言うとやらしく聞こえますね」

P「誕生日は7月17日で蟹座。血液型はA型で右利き」

まゆ「まゆは右でも左でもうまくできますよぉ?」

P「愛媛県出身で趣味はサッカー。男兄弟の中で育ったから活発」

まゆ「マーユーマユマユマユー、マユーはこーこでーす♪ 夜のサッカーしましょう!」

P「蹴られるのはちょっと……」

まゆ「ボールをギュッとするといつもより多く出るんですよ?」

P「それで今日はどんなの?」

まゆ「顔を見ながらで。腰を抱いてくれるとなお良いです♪」

P「わかった──」

結城晴「おはよー」

結城P「どうした元気ねーな」

晴「ちょっとな」

結城P「オーストラリアから帰ってきてから元気ねえぞぉ?」

晴「チッ、誰のせいだと思ってやがる……」

結城P「ア?」

晴「ッ!」

結城P「ところでよ」

晴「な、なんだよ」

結城P「橘のプロデューサーから仕事の依頼どする?」

晴「…………」

結城P「おい?」

晴「断っておいてくれ……」

結城P「オース。電話番号はっと」

晴「なんで聞いたんだ?」

結城P「お前が受けたくない仕事受けても晴が嫌だろ?」

晴「……だな」

結城P「電話かけてくる」

晴「いってらっしゃい……」

結城P「大人しくしてろよ?」

晴「事務所で暴れねえよ」

結城P「じゃ、行ってくる」

晴「……オレが悪いのかよ」

結城P「たでーま」

晴「早っ」

結城P「断るだけだかんな」

晴「向こうなんだって?」

結城P「またのご縁をとか言ってたぞ。またくるといいな」

晴「……だな。ところで今日はなにすりゃいいんだ?」

結城P「今日はダンスレッスンだ」

晴「一人でか?」

結城P「ルキトレさんと一緒」

晴「そりゃそうだろ……」

結城P「まぁ"1人じゃない"ってこった」

晴「行ってくる」

結城P「おう」

ルキトレ「──もっとテンポよく!」

晴「ハッ、ハッ!」

ルキトレ「早すぎ!」

晴「エッ、あっつぉぉっと!」

ルキトレ「きゃっ、だ、大丈夫……?」

晴「……わりぃ」

ルキトレ「最近どうしたんですか?」

晴「ちょっとな……」

ルキトレ「お腹痛い?」

晴「……いや」

ルキトレ「なら……」

晴「……なぁ」

ルキトレ「はい?」

晴「……やっぱいい」

ルキトレ「言ってください」

晴「ルキトレはさ……」

ルキトレ「慶」

晴「え?」

ルキトレ「私の名前です」

晴「それじゃあ慶さ。アイツとは仲いいのか?」

ルキトレ「アイツ?」

晴「プロデューサー」

ルキトレ「晴ちゃんのプロデューサーさんですか? 普通ですよ?」

晴「……そっか」

ルキトレ「もしかして好きなんですか?」

晴「オレがアイツを? それはない」

ルキトレ「またまたぁ」

晴「慶は好きな人いんの?」

ルキトレ「私ですか? 私は──」

杏「お疲れ」

P「……おはよう」

杏「昨夜はお楽しみでしたね」

P「昨夜はぐっすりだったね」

杏「もう、人がいなかったから快眠で快眠で」

P「良かった。オレは今から寝る」

杏「ベッド使わせてもらったよ」

P「マットレス干したから気持ち良かったでしょ」

杏「少し暑いくらいぽかぽかしてた」

P「本当だ。ぐっしょり」

杏「昨日は杏もお楽しみだったからね」

P「するのはいいけど後片付けはしてね」

杏「乙女のたしなみは手ひとつで出来るのだよ」

P「そうだね。おやすみ」

杏「私も寝ていい?」

P「これから二度寝か」

杏「まぁね。こっちの布団敷く?」

P「そうしよう」

杏「狼狽えないところに変態さを感じるよね」

P「オレが狼狽えても気持ち悪いだけだろ」

杏「や、やめようよこんなこと……い、いけないよぉ」

P「二度寝やめる?」

杏「まさか。もうちょっとそっちいって」

P「ん」

杏「あー……布団の中あったかい」

P「…………」

杏「……臭うね」

P「まゆの部屋から直だからな。それにまゆは今日は仕事だから」

杏「アイドルと男の秘密の関係。やばっ、このネタ売ったら832万円もらえそう」

P「そんなにお金にならないよ」

杏「売らないって。杏が心から休める場所を手放すと思う?」

P「思わない」

杏「でしょ? それにしてもスっゴい臭い」

P「風呂に入ってから寝るか」

杏「そのまま寝ちゃいなって。話も聞いてもらいたいし」

P「愚痴?」

杏「愚痴じゃない。乙女の鬱憤」

P「聞くよ──」

晴「やばっ、もう昼か」

ルキトレ「あ、本当ですね。話してたらこんな時間になっちゃいましたね」

晴「それじゃこれで」

ルキトレ「たまには一緒に食べません?」

晴「は?」

ルキトレ「私たち一緒にお昼食べたことないでしょ?」

晴「そりゃねえけどよ……」

ルキトレ「だから食べない?」

晴「……ん」

ルキトレ「それじゃあ決まり♪」

晴「で、どこに食べに行くんだ?」

ルキトレ「ふふふ! よくぞ聞いてくれました!」

晴「なんだそのテンション……」

ルキトレ「どこにいくかというと……」

晴「どこ?」

ルキトレ「着いてからのお楽しみー!」

晴「なんだそれ」

ルキトレ「まぁまぁ。とりあえず着替えましょう」

晴「ったく」

ルキトレ「よいしょ。それにしてもここのロッカールーム広いですよね」

晴「そうだな。よく使うサッカー場位はあるな」

ルキトレ「そうなんですか?」

晴「そうはいっても小さいところだけどな。親父がよく連れてってくれたんだぜ」

ルキトレ「いいお父さんですね。私はどうだったかなー」

晴「…………」

ルキトレ「……ん? 私の胸がどうかしました?」

晴「別に……」

ルキトレ「胸見てましたよね?」

晴「……フッ」

ルキトレ「んなっ!?」

晴「同じ姉妹なのにその差は……フッ」

ルキトレ「ね、姉さんたちにはスタイルでも負けますけどこれでもある方だと自負しています!」

晴「大丈夫だ。二人とも成長期だから直ぐに大きくなる」

ルキトレ「も、もー!」

晴「可能性信じようぜ!」

ルキトレ「い、いきますよ!」

晴「なぁ、慶って普段どんなもの食べてるんだ?」

ルキトレ「私ですか? 普通のものですよ」

晴「うわー、会話が広がらないやつだなぁ」

ルキトレ「うぐっ……!」

晴「女子大生なんだからもっとあっだろ? カフェ巡りとかさ」

ルキトレ「あ、カフェならよくいく」

晴「やっぱ甘いの飲むんか?」

ルキトレ「まぁそうですね」

晴「せんべいとか置いてないの?」

ルキトレ「カフェにお煎餅はちょっと……ポテトチップスならありますけど」

晴「マジ!?」

ルキトレ「えぇ。最近はどこもかしこも変わり種ブームですから。あ、着きました」

晴「えっ?」

ルキトレ「いやぁ実は好きなんですよね、ハンバーガー。姉さんには『体に悪いからやめろ』って言われてますけど体に悪いからこそ惹かれるものがあるんですよっ」

晴「うっ……」

ルキトレ「プロデューサーさんから晴ちゃんハンバーガー好きだって聞いてこれは!と思いまして、オーストラリアではよく食べてたらしいで……どうしました?」

晴「うぇ!? え、あ、実は……」

ルキトレ「実は?」

晴「ヤバイんだ……」

ルキトレ「ヤバい? あ、お金なら心配しないでください。私が出しますから!」

晴「そ、そうじゃないんだ。ヤバいのは……」

ルキトレ「ヤバいのは?」

晴「体重……」

ルキトレ「体重ですか。それなら別に姉さんたちじゃないんですから私は少しの誤差くらいどうってことないですって」

晴「誤差が3キロでもか?」

ルキトレ「さ……!」

晴「…………」

ルキトレ「さすがにそれは……」

晴「な? だから……」

ルキトレ「ま、まぁ成長期ですし仕方ないですって。それにここはサラダもあるみたいだし!」

晴「えっ、マジで?」

ルキトレ「マジです。だから行きましょう!」

晴「……ん、わかった」

ルキトレ「レッツイットハンバーガー!」

晴「ハァ──」

輝子「お、おはよう……親友」

P「おはよう」

輝子「ひ、久しぶりに……ひ、ひっ、人と話すから……でぃ、どもる」

P「落ち着こう」

輝子「フッフッヒー……フヒフヒフー…………フヒ」

P「落ち着いた?」

輝子「お、おう……それで親友が……私を、よ、呼んだのは……」

P「実はしてほしいことがあってね」

輝子「わ、わかってる……覚悟はしてた……」

P「ん?」

輝子「ヒャッハー! ファックだ、ファックをするぜェェェ!」

P「まだ朝」

輝子「フヒ? 違うの?」

P「今回頼みたいことは違う」

輝子「フヒー?」

P「頼みたいことは……」

まゆ「…………」
小梅「…………」

まゆ「堪えるのよ小梅ちゃん。まゆたちは"今"必要とされてないだけで"後で"必要とされるときが来るから」
小梅「う、うん……」

P「…………」

まゆ「その時は例え火の中水の中森の中……」
小梅「あ……」

P「……お待たせ」

輝子「容赦ないところ……イエスだぜ」

P「君に頼みたいことは──」

ルキトレ「はい、いっちにさんしっ」

晴「ハァハァ……!」

ルキトレ「ストップ!」

晴「フゥゥゥ」

ルキトレ「やる気あります?」

晴「あるって。ただ食ってないだけだって」

ルキトレ「お家でキチンと食べてください」

晴「だから体重が増えたから減らしてるだけだって」

ルキトレ「測ってみたら全く増えてなかったじゃないですか。ウソついたらダメです。ムリなダイエットは体に毒です」

晴「そんなんじゃねえし」

ルキトレ「今日のレッスンはここまでにします。いいですか? キチンと食べてくださいね。そんなんじゃプロデューサーさんから嫌われちゃいますよ?」

晴「だならそんなんじゃ……それもありか」

ルキトレ「はい?」

晴「なんでもねぇ」

ルキトレ「プロデューサーさんから聞きましたけどプロデューサーさんからの食事も断ってるらしいじゃないですか」

晴「そりゃだってなぁ……」

ルキトレ「はい?」

晴「なんでもねぇ。オレ個人のことであってアンタにゃ関係ない。じゃあな」

ルキトレ「あっ、ちょ……行っちゃいました。いつも通りプロデューサーに連絡しておきますか」

幸子「──ボクの悩みですか?」

P「そう」

幸子「部屋に訪ねてきてなにかと思えば……悩み相談に託つけてエッチなことでもするんでしょう」

P「しないよ」

幸子「どうだか。悩みはこれといってありません」

P「そう。小日向さんとはどう?」

幸子「メールがしつこくて困ってます。今日だけでもう十通はきました。指が疲れたので六通目から返信してません」

P「暇ができたら返信しておきなね。それで本題なんだけどさ」

幸子「なんですか?」

P「学校で悩みはある?」

幸子「悩みですか? ボクが一番カワイイ事以外悩みはありません。それも悩みらしい悩みじゃないですけどね。嫉妬なんて慣れたものですよ。ま、それも一部の方々ですがね」

P「物理的なことは?」

幸子「持ち物に何かされたとかですか? ないですね。そこはプライドが許さないんでしょうね」

P「よかった」

幸子「それで本題というのは? まさかいじめられてないかというのが本題じゃないですよね?」

P「その通り。一人称についてなにか言われてる?」

幸子「学校ではないですが仕事場ではままあります。ボクのかわいさに嫉妬してるんですよ」

P「何て言われる?」

幸子「その年でボクとかオタクに媚びてるぅとか、ぶりっ子かよペッとかですね」

P「酷いね」

幸子「嫉妬なんてそんなものですよ。それでなぜ一人称の事を?」

P「少し思うところがあってね。育ちがいいって大変だよね」

幸子「育ちが悪い人の方が大変ですよ。育ちの悪さに気がつかないんですから」

P「そうだな。そういうのに限って親だけは大切にするんだよな」

幸子「そして忘れる早さも人一倍」

P「忘れるか過保護かの二極」

P「…………」

幸子「黙らないでくださいよ」

P「ごめん。考え事してた」

幸子「カワイイボクに如何わしいことをする算段ですか?」

P「イケメンが言うなら絵になるがオレだとただのセクハラじゃないか」

幸子「通報ものですね。まぁ、ボクの恩情で情状酌量はつけてあげますよ。カワイイボクを目の前にして興奮しない人はいませんからね」

P「…………」

幸子「ちょ、そこで黙らないでくださいよ」

P「ストレスは何で発散してる?」

幸子「ストレスですか? 最近は料理ですね」

P「だから小梅の口から香ってたのか。口の端にソースもついてた」

幸子「……あなたのその勘のいいところ嫌いです」

P「それじゃまた」

幸子「……また」

幸子「まったく、ボクがノートの清書をしてるときに来なくてもいいじゃないですか」

幸子「せっかく清書をやめて話してもあんな話題……少しはボクにも気をつかってくださいよ、まったくもう」

幸子「しかも聞きにくいこと聞いてくるから嫌になっちゃう。なんなんですか。ボクが差別する人ならとっくに通報ものですよ」

幸子「だいたい一人称が『ボク』な時点でからかってくる人がいたなんて予想がつくでしょうに。まぁ、そこはわかってたからいいです」

幸子「……疲れるから愚痴はこれくらいにしておきましょう。ん? また小日向さんからメールですか。まったくよく飽きないものですね」

幸子「それにしてもこんなことで気がつくなんて……まぁPさんの違和感の正体がわかってもなにもいいことはないですけど」

幸子「返信が遅くなってすみません……今……ノートの清書を……あっ、打ち間違えた──」


みく「にゃ?」

P「どうかな?」

みく「猫ちゃんのことを知ってもキライにはならないにゃ。まぁ、知りたくないこともあったけどにゃ」

P「なるほど。ありがとう」

みく「そんなこと聞いてどうしたにゃ?」

P「気になってね」

みく「Pチャン、ミステリアス過ぎると見捨てられるにゃよ?」

P「…………」

みく「みくはPチャンがちょっと怖いにゃ」

P「好きなものの事を奥まで知ると嫌いになる。そうとしか言えない」

みく「……今はそれでいいにゃ」

P「ごめん」

みく「猫ちゃんで慣れてるにゃ」

P「……これ」

みく「にゃ! お肉にゃー!」

P「焼くよ。どう焼く?」

みく「肉汁が滴るミディアムレア! お醤油かけて!」

P「わかった」

P「よいしょ」

みく「そ、それは!」

P「便利だよね、これ」

みく「お肉に焼き目がつくやつにゃー! それで焼いて食べると美味しさ二割増し!」

P「両側から挟むからね」

みく「Pチャン何者!?」

P「肉はこれくらいでいい?」

みく「なんかお店みたいにゃ。それでバッチリにゃ」

P「お皿はそこにあるので好きなの取ってね」

みく「お昼からステーキなんて、みくバチが当たりそうにゃ」

P「しばらくは食べられないだろうからね」

みく「どゆこと? あ、みちるちゃん」

P「こんな豪華なのはなかなかしないからね」

みく「みくとPチャンの秘密? なんだかイケないことしてるみたい」

P「やめる?」

みく「食べないと牛さんに呪われるにゃ。いっただきまーす!」

P「どうぞ」

みく「よだれが止まらないにゃ」

P「ゆっくり食べなね」

みく「ムグムグ……ンック、うんめーにゃー!」

P「よかった」

みく「それにしてもここって食材豊富にゃ。お弁当屋さんみたい」

P「お弁当とか作ってたからね」

みく「お弁当?」

P「小日向さんとか」

みく「美穂チャン?」

P「今日もだけど腰が悪いから食事にいくのも辛いからね。だからお弁当」

みく「にゃるほど。Pチャンって案外器用にゃ。でもそんなことしたら色々危なくない?」

P「バレないようにしてる」

みく「バレない仕組み?」

P「お肉冷めるよ」

みく「ふにゃ!?」

P「オレもなにか食べるか──」

晴「腹減った……さすがになにか食べねえとなぁ……けどサイフはアイツが管理してるし、そもそも金がねぇ」

美穂「あの……」

晴「レッスンにも身が入らねえ……」

美穂「あのぉ……!」

晴「え? あっ、おわぁぁぁ!」

美穂「ひっ! ご、ごめんなさい!」

晴「ビ、ビックリしたぁ……!」

美穂「ごめんね! ご、ごめんね!」

晴「誰だよお前!」

美穂「あ、えっと私小日向美穂って言ってアイドルやってるんだけど」

晴「そりゃそうだよな。トロそうだからトレーナーじゃねぇしな」

美穂「ト、トロそう……」

晴「で、なんか用か?」

美穂「お腹空いてそうだからこれどうかなって」

晴「弁当?」

美穂「そう。食べきれなくて困ってるの」

晴「マジか」

美穂「どう?」

晴「……まい」

美穂「ん?」

晴「ウマイ! なにこれ、こんなの食ったことねぇ」

美穂「お茶もあるよ」

晴「ただのおにぎりなのになんでこんなに! ンムッ、ンムっ」

美穂「よほどお腹空いてたんだ」

晴「ニンジンうめー!」

美穂「ニンジン大丈夫なの?」

晴「ア? 別にこれくらい食えっだろ」

美穂「苦手だと思ってた」

晴「アー、もしかして一人っ子か?」

美穂「うん」

晴「あのな、男兄弟がいりゃわかっけどよ。ニンジンがキライとか言ってたらガシするのよ、ガシ。わかる?」

美穂「そ、そうなの?」

晴「他にもな……」

結城P「オッ、晴じゃないかー。どしたー昼か?」

晴「ッ!!」

結城P「うまそうな弁当だな」

晴「や、やらないからな!」

結城P「いらないって。ちょっと話したいことあるんだけどいいか?」

晴「お、おう」

結城P「それにしても良かった良かった」

晴「なにが?」

結城P「最近食べてなかったらしいじゃないか。それが食べてるってことは喜ばしいことだ」

晴「誰のせいでこうなったと思ってやがる」

結城P「なにかいったか?」

晴「……なんでもねえ」

結城P「それじゃ晴借りてくけどいい?」

美穂「え、あっ、はい」

ルキトレ「あれ?」

美穂「どうしたんだろう……」

ルキトレ「おーい!」

美穂「あ、ルキトレさん」

ルキトレ「最近レッスンお休みになってるけど大丈夫ですか?」

美穂「あ、ちょっと体調が優れなくて……」

ルキトレ「プロデューサーさんも心配してましたよ? 面会謝絶で心配だーって」

美穂「面会謝絶? あ、病院」

ルキトレ「あれ、言っちゃまずかった? お医者さんから面会謝絶になってるの知らされてません?」

美穂「え、アッ、アーそういえばそうでしたー」

ルキトレ「良かった。知らされてたんですね」

美穂「ところでプロデューサーといえば、晴ちゃんと担当さん様子がおかしくありませんでした?」

ルキトレ「様子?」

美穂「はい。言葉じゃ言い表せませんけどこう……」

ルキトレ「あの状態でしたらオーストラリアから帰ってきてからああですよ」

美穂「オーストラリアから帰国してから?」

ルキトレ「はい。その前から仲は良かったですが帰国してからはより一段と仲がいいですね」

美穂「そうなんだ……」

ルキトレ「親子というか兄弟というか、そのくらい仲良くなりました」

美穂「へぇ」

ルキトレ「ところでこれからトレーニングメニューどうします?」

美穂「あ、個人的に指導を受けてるのでもうしばらくお休みをもらえると嬉しいかなー……って」

ルキトレ「ムッ……まぁいいです。それでは休みにしておきます。お大事に」

美穂「お、お疲れさまでしたー……」

晴「……それでなんか用かよ。叱られるようなことした覚えねえからな」

結城P「ンーンッンッンッンー、ウソつくな」

晴「ハ? ウソなんて誰もついて……」

結城P「そうだ、ここにおいっしーいハンバーガーあるけど食べる?」

晴「ウッ……!」

結城P「そうか。で思い出した?」

晴「だから叱られるようなことはなにも……!」

結城P「ルキトレちゃんから聞いたよ。話してるときに言ったんだってぇ?」

晴「ハァ?」

結城P「とぼけない」

晴「さっきからなんのことを……」

結城P「思い出さないとまた聞かせるよ?」

晴「……聞かせるって何をだよ」

結城P「オーストラリアでのハンバーガーはうまかったか?」

晴「…………」

結城P「これでもいい子だったから抑えてるんだけどなー。サッカーの仕事断ったし、言葉使いも控え目になってきてたからな」

晴「……どうも。オレはいい子だからな」

結城P「私」

晴「は? あ……」

結城P「そんなんじゃ見捨てるぞ? ンー?」

晴「……たし」

結城P「聞こえないなー」

晴「私」

結城P「うんうん、それでいいそれでいい」

晴「…………」

結城P「なにか飲む?」

晴「いらない──」

美穂「あの……」

P「痒いところあるの?」

美穂「あ、いえありません。そうじゃなくて晴ちゃんのことで聞きたいことがあって」

P「何?」

美穂「晴ちゃんはオーストラリアで何があったんですか?」

P「話す前に湯船に移ろうか。立てる?」

美穂「あ、はい……ンッ……フゥ」

P「気持ちいい?」

美穂「はい……」

P「入浴剤入れてみた。どうかな?」

美穂「いい香りです。これ、なんの香りですか?」

P「リンドウ」

美穂「ずっと吸ってたい……」

P「危ないことしてるみたいだな。オーストラリアでなにがあったか知りたいんだよね?」

美穂「ルーキートレーナーさんが言ってました。オーストラリアから帰ってきてから変わったって」

P「仲が良くなった」

美穂「はい。何でですか?」

P「仲が良くなったというよりは……」

美穂「あ、それ聞きました。たしか兄弟関係や親子関係ですよね?」

P「主従関係」

美穂「え?」

P「一種の親子関係とも言える」

美穂「あの……どういうことですか?」

P「そのまんまの意味」

美穂「それじゃなんで?」

P「自分好みにしたいんだろうね」

美穂「好み?」

P「すべてのプロデューサーが自分の好きなアイドルをプロデュース出来るわけじゃないからね」

美穂「それじゃ好みというのは?」

P「小日向さん」

美穂「はい?」

P「小日向さん」

美穂「なんですか?」

P「……彼の好みは君」

美穂「え?」

P「でも心配はしなくていい。彼は君をどうこうしようなんて思ってない」

美穂「その代わり晴ちゃんを……」

P「大人しくておっとりした女の子。それが彼の好み」

美穂「オーストラリアでは何があったんですか?」

P「好物のハンバーガーを食べた」

美穂「ハンバーガーを食べただけですか?」

P「オーストラリアは牧畜が盛んだからね。こと牛に関してはね」

美穂「どういうことですか?」

P「大人しくさせるために牧場を見せたんだ。羊毛刈りのね」

美穂「羊毛刈りの?」

P「それもとびきり酷いの。羊を押さえて殴り付けてっての」

美穂「うわぁ……」

P「それ見せられたあとで牛の屠殺の話を聞かされた。子供は創造力豊かだからね。想像に固くない」

美穂「ひどい……」

P「彼が自慢げに話してたらしい。その又聞き」

美穂「晴ちゃんは大丈夫なんですか?」

P「ストレスは多大に蓄積してるだろうね」

美穂「今の晴ちゃんに必要な事はなんですか? 私、晴ちゃんのためなら……」

P「その時には頼む。今の彼女に必要なのは──」

晴「え?」

結城P「だから歯の矯正だ」

晴「歯の矯正って歯医者だろ!? 絶対やだ!」

結城P「歯は大事だぞ? ねぇルキトレさん」

ルキトレ「はい! 歯並びをよくすれば今の2割増しで動けます!」

晴「ぜってぇーイヤだ!」

ルキトレ「それに歯並びがいい人は人気が上がります。欧米では常識です!」

晴「いくわけないだろ!」

結城P「ふーん……」

晴「な、なんだよ!」

結城P「行かないと困るんだよねぇ」

晴「自業自得だろ!」

結城P「そうじゃなくてな。クビになるかもしれないんだよな」

晴「はぁ?」

結城P「最近大きな成果あげてないだろ? だからだよ」

ルキトレ「プロデューサーさんがクビになったら晴ちゃんも危ないわよ?」

晴「え?」

結城P「プロデューサー不足だから仕方ない……」

晴「……準備してくる」

結城P「おう」

ルキトレ「……いいんですか?」

結城P「なにが?」

ルキトレ「あんなウソついて」

結城P「ウソじゃない。成果をあげてないのは本当だ」

ルキトレ「オーストラリアのライブで十分成果あげてたじゃないですか」

結城P「あれは個人の力じゃない。それにただの足掛けだ」

ルキトレ「悪い人ですねぇ」

結城P「きれい事じゃ生きていけないからね」

ルキトレ「…………」

結城P「それじゃね」

結城P「──緊張してるの?」

晴「…………」

結城P「それもしかたないか。それじゃ"オレ"は営業行ってくる」

晴「……ん」

歯医者「行ったな」

晴「歯の矯正だろ? 早くしてくれ」

歯医者「怖くないのか?」

晴「覚悟はできてる」

歯医者「それはいい心がけだ」

晴「…………」

歯医者「ところでなにか好きなことはあるか?」

晴「好きなことぉ? んなことどうでもいいから早く始めてくれよ」

歯医者「緊張されてるとやりにくいんだぜ?」

晴「急に話し方変わったな」

歯医者「この方が緊張しなくていいだろ?」

晴「かもな。好きなことか。サッカーだな」

歯医者「麻酔打つぞ」

晴「ン……」

歯医者「頭の中で十からカウントダウンして」

晴「わかった。スポーツ好きか?」

歯医者「あぁ。こう見えても体を動かすのは好きだ。深呼吸して。呂律が回らなくなるが心配するな」

晴「スーフー……そうだよな。スカッとするよやぁ……オレは……サッカーが…………好……き……ぁ」

歯医者「そうだな」

晴「スー……スー……」

歯医者「スポーツはいいぞ──」

P「こんなこと頼んですみません」

美優「いえ……」

P「輝子もすまない」

輝子「し、親友のためなら……火の中、水の中、スカートの中……フフ」

P「それでは準備してください」

美優「はい」

輝子「そ、それじゃやるぞ……!」

美優「お願い」

輝子「フオォォォォリャァァァァ! ファックだ! ファックをするぜェェェ!」

美優「ン……ッフ、ンッ……ンァ」

輝子「メチャクチャにされて悦んでやがる! ヒィィハァァァ……これでよしっ」

美優「ど、どうですか……ハァハァ、さん」

輝子「どうだハァハァさん」

P「いい感じにはだけてますね」

輝子「やったぜ、フフ」

P「それじゃオレたちはこれで」

輝子「スタコラサッサ……フヒ」

美優「あ、待ってください」

P「先にいってて」

輝子「フフッヒ」

P「どうしました?」

美優「すみません。少し不安になっちゃって……」

P「嫌なことを頼んですみません。ここを出て写真を撮られるだけとはいえ、嫌なことですよね」

美優「それはいいんです。この格好が不安で……」

P「問題はないと思いますよ。それに彼はあなたには絶対に手は出しません。好みから外れてますからね」

美優「何か足りないと思いません?」

P「足りないもの?」

美優「輝子ちゃんには頼めないこと。ン……」

P「……これですか」

美優「ッハァ……フフ♪」

P「確かにこれは頼めませんね。それじゃ外に出てます」

美優「……少しだけまゆちゃんの気持ちわかったかも──」

晴「ン……」

小梅「あ、起きた」

幸子「起きましたね」

晴「あ……ここ……は……?」

小梅「ロッカー……ルーム……」

晴「ロッカールーム?」

幸子「正確にはサッカースタジアムのロッカールームです」

晴「サッカースタジアム?」

小梅「サッカー、す、するとこ……」

晴「知ってるっての」

小梅「だ、だよね」

晴「で、なんでここに?」

幸子「そこにユニフォームとスパイクがあります」

晴「……わかった、お前らアイツの手先だろ?」

小梅「アイツ?」

幸子「担当プロデューサーのことでしょうね。心外ですね」

晴「シンガイ?」

幸子「まるで見当外れです。バカもいいとこですね。ボクたちが彼の仲間? ハッ」

晴「鼻で笑いやがった……!」

みく「おっそいにゃー!」

小梅「ナイス……タイミング」

みく「待ちくたびれたにゃ!」

晴「誰だお前!?」

みく「その子がみくの相手!?」

晴「お前はなにを言ってるんだ?」

みく「説明してないの?」

幸子「説明までたどり着いていません。そもそもユニフォームとスパイクで見当がつくはずでしょうけどね」

晴「どういうことだ?」

幸子「あ、バカでしたか」

晴「何をぉ!!」

幸子「ボクの分かりやすい説明がわからないなんて分かりやすいお馬鹿さんです」

小梅「サッカー……しない?」

晴「え?」

みく「玉遊びするにゃ!」

晴「サッカーして……いいのか?」

幸子「そのための貸し切りです」

晴「ハァ!?」

みく「早くやるにゃ! 早くボールをいじりたくてウズウズしてるにゃ!」

晴「だ、誰も怒らないのか?」

幸子「怒る人なんていません。いるとしたらスタジアムを貸し切りにしたのに使用しなかったと知った支配人ですね」

晴「…………」

小梅「しよ……?」

みく「にゃっにゃっ!」

晴「…………」

幸子「…………」

晴「……カ」

幸子「はい?」

晴「サッカーしようぜ!」

小梅「オッ、オー!」

幸子「ボクはしませんからね──」

まゆ「楽しそうですね」

P「やってくるか?」

まゆ「やめておきます。邪魔するわけにいきませんもの。それにまゆはこうしてPさんにくっついてるだけで充分です♪」

P「そうか」

まゆ「Pさんこそやってきます? 少し痩せるかも」

P「やめておく。邪魔しちゃ悪い」

まゆ「まゆと一緒ですね♪」

P「今日の夕飯の件なんだが」

まゆ「ちゃんとわかってます」

P「頼む」

まゆ「久しぶりに腕奮っちゃいます」

P「高森さんには言ってくれた?」

まゆ「それはもうきちんと言いました。快く引き受けてくれました」

P「それはよかった。ありがとう」

まゆ「いいえぇ」

P「大原さんにも言っておかないとな。メール見てくれたかな」

まゆ「クラリスさん、興味津々でしたね」

P「そうだろうね。騙すなんて酷いです!なんて言ってたな」

まゆ「恥ずかしそうに顔を赤くしてるのがまた、うふ」

P「そろそろ支度に帰る」

まゆ「あとはみくちゃんに任せましょう」

P「それと高森さんに」

まゆ「なんだかみんなで動いてるって感じですね♪」

P「みんなで動いてるんだ」

まゆ「まゆ、そういうの好きです」

P「ありがとう」

まゆ「チューしましょう、チュー。ンー」

P「やめないか。みんなが見てる」

まゆ「かもしれない、ですよね? まゆはお見通しです」

P「今はやめてくれ。今は──」

晴「ッハー、動いた動いた!」

みく「なかなかやるにゃ!」

晴「お前もなみく! さすがネコだぜ」

みく「すばしっこさなら負けないにゃ!」

晴「やっぱサッカーはいいな、サッカーは!」

小梅「ハァ、ハァ……よ、よっ、よかっ、た、ね」

幸子「あなたもお疲れ様です」

晴「体力ねーな」

幸子「あなたとは違うんです」

晴「お前はやってないだろ」

幸子「だから最初に言ったでしょう。やらないと」

晴「あぁいうのはなんていうかフリっつーんじゃねーの?」

幸子「あなた、絶対に押すなと言われて押すタイプでしょ?」

晴「なんでわかったんだ? 学校の非常ベル鳴らして怒られた。あんなの誰だって押したくなるっての」

幸子「うわぁ」

みく「さすがにそれはどうかと思うにゃ」

晴「えっ、押したくならね!?」

小梅「迷惑……かな、うん」

晴「うわ、マジかよ。反省しよ。それにしてもここのシャワースゲーな! 壁から水がブシャーって出てきたぜ!」

幸子「あれはここの売りのひとつです。もしかしてボタンをやたらに押して壊してませんよね?」

晴「壊すわけないじゃん。ガキじゃあるまいし」

幸子「非常ベル押して怒られた人が言う台詞ですか、まったく」

みく「ヒュ、ヒューヒューヒヒュー……」

幸子「もしかして壊したとか言いませんよね?」

みく「こ、壊してないにゃ! ただボタンを押しまくりたい衝動にかられただけ!」

幸子「それでも十二分に反省してください」

晴「それにしてもみくでかかったな!」

みく「にゃ?」

晴「あれだけでかいとすごいんだろ? えーっとユーワクっての?」

みく「みくはそんなことしないにゃ!」

晴「そうなのか? ウチのクラスの男子はそんなこと言ってたぞ? でかいのはユーワクされるって」

幸子「その学校大丈夫ですか?」

藍子「お疲れ様です♪」

幸子「あ、お疲れ様です」

晴「誰だ、そのねーちゃん」

藍子「初めまして。私は高森藍子、よろしくね♪」

晴「オレ……私は結城晴。こちらこそよろしく」

みく「クンクン、この匂いは!?」

藍子「ケーキ持ってきたんだけど食べる?」

晴「マジか!? 食う食う──」

P「お皿の支度しておいて」

奏「わかったわ」

クラリス「これはどうすれば?」

P「テーブルに運んでください」

まゆ「揚がりましたよぉ」

P「テーブルに運ぶよ」

まゆ「お願いしまぁす」

蘭子「動くこと雷霆の如し!」

P「人数分の食器ありがとう」

蘭子「ククク、この程度ヴァルハラの扉を開くより簡単」

P「そろそろみんな帰ってくる」

みちる「動かざること山の如し」

P「電話番頼んでごめんね」

みちる「動かざること山の如し」

P「連絡きたら知らせて」

みちる「アイアイサー!」

P「頼んだよ」

奏「グラスも出しておいたわ」

P「ありがとう──」

晴「グゥグゥ……」

小梅「寝ちゃったね……」

幸子「子供とはいえあれだけ動いてあれだけ騒げば誰でも眠くなりますよ」

藍子「そろそろ交代します」

みく「大丈夫にゃ。まだまだキツくないって」

藍子「でもさっきからずっとおぶってます」

みく「藍子チャンはお茶の道具で手一杯だし、これくらい猫ちゃんの世話に比べたらどうってことないにゃ」

小梅「そんなに、た、大変……なの?」

みく「おデブにゃんは大体五キロ以上あるにゃ。それを追っ掛けるのに比べたらまだまだ余裕っしょ」

幸子「本当に重いのかって位機敏に動きますからね。なかなか腰の入った体当たりをしますから、体当たりされた日にはもう……痛みがしばらく引きません」

小梅「猫の爪……フフフ」

藍子「小梅ちゃん?」

小梅「あ、なんでもない」

みく「それにしてもこのままPチャンの部屋に連れていって本当にいいのかにゃあ……なんだか誘拐してるみたいにゃ」

幸子「このまま帰してもろくなことはありません。また困惑するだけです」

みく「にゃ?」

幸子「……ボクにはわかるんですよ。賢くてカワイイボクには」

みく「あ、見えてきた」

幸子「……先に行って玄関を開けておきます」

小梅「あ……私もいく」

幸子「あなたはお二人に手を貸してあげてください」

小梅「う、うん」

みく「小梅チャン寂しい?」

小梅「え? あ、別に……い、今に始まったことじゃ、ないし……うん」

みく「そういうときは空を見るにゃ。そうすると気分がスッキリにゃ」

小梅「わ、私に太陽は……ま、まぶしすぎる……」

みく「夜行性だったかー。せっかくいい話風にしようと思ったのにぃ……! まっ、いいか。とにかくウジウジ考えてるよりテンション高く生きるのが一番にゃ」

小梅「で、でもありがと……」

みく「まー、どこかの誰かみたく能天気もまずいにゃ」

小梅「誰のこと?」

みく「名前は伏せておくにゃ。あれでも一応考えてるっぽいにゃ」

小梅「そろそろ着く、ね」

幸子「さて、ボクは一足先に部屋にいきましょう。服も着替えたいですし、ん?」

美穂「ンッ……しょっ」

幸子「あれは小日向さん……階段を降りるのに辛そうですね。ボクには関係ないことなのでスルーしましょう」

美穂「あっ、あっ、キャッ……!」

幸子「…………」

美穂「あ、危なかった」

幸子「あなたはこんなところでなにをしているんですか?」

美穂「あ、幸子ちゃん。お帰り」

幸子「階段で生まれたての子馬の真似ですか?」

美穂「Pさんの部屋に行きたくて……そろそろご飯出来そうだから」

幸子「そういえば今日は歓迎会と言ってました。あまりにも興味ないのですっかり失念していました。食事の件は連絡が来たのですか?」

美穂「連絡というよりその……モニターを見たからかな」

幸子「モニター?」

美穂「ベビーモニター。Pさんが朝に持ってきたの。これで様子を見て動いてくれって。訓練も兼ねてるんだって」

幸子「五分前行動は基本ですからね。それにしても危なっかしいですね、あなた」

美穂「まだ少し怖くて」

幸子「……食事の時間がずれると皆さんが困りますので特別に手を貸してあげます」

美穂「幸子ちゃん…………ありがとう」

幸子「ボクを見たい気持ちは理解できますが今は足元を見てください──」


晴「ン……フア……フゥッァァァ……」

小梅「あ、起きたっ……知らせてくる」

みく「おっはようにゃ」

晴「ンア?」

みちる「まだ寝ぼけてますね」

みく「しばらくすれば治るにゃ」

晴「ここ……どこだ?」

みく「アパートの一室にゃ」

晴「え、マジ?」

みく「マジにゃ。それがどうかした?」

晴「今……ゲッ!」

みちる「ゲゲの鬼太郎?」

みく「話が進まなくなるにゃ。どうしたにゃ?」

晴「帰らねえと怒られる!」

みちる「別にそんな時間でもないような……もしかして寮住みですか?」

晴「ア、アァ! それに早く帰らないとアイツに怒られる……!」

みく「寮住まいならわかるにゃ。でもアイツって?」

みちる「あっ、寮には連絡してあるそうです」

晴「でもアイツに……!」

美優「担当さんには連絡して話をつけてあるわ。しばらく泊まりになるって」

晴「あ、エロい姉ちゃん」

美優「エ、エロ……」

晴「ふいんき?あるって評判だぜ?」

みちる「どこで?」

晴「オ、私んちで」

みく「ん?」

美優「みんな待ってるわ。今にいきましょう」

みちる「どこいくか、いついくか。今でしょ!」

みく「美優さん動揺が隠せてないにゃ」

美優「い、いいから居間にいきましょ……!」

みく「なんだか今日の美優さんはおかしいにゃ」

晴「なんかうまそうなニオイするな」

みく「お魚ないといいにゃあ」

晴「うおわあぁ、なんだこれ!」

みちる「オー」

みく「見事に野菜ばっかにゃ」

蘭子「我はプロヴァンスの一番槍の到来を歓迎する!」

晴「プ、プロバ……なに?」

みちる「ようこそって言ってます」

蘭子「豊穣の単欲よ、口寄せご苦労!」

みちる「ハハー!」

クラリス「今日の糧をお与えくださり……」

晴「んっ、これうめぇ!」

クラリス「アッ……」

藍子「いただきます──」

まゆ「ごちそうさま」

P「ごちそうさま」

まゆ「一緒に食べなくて本当によかったんですか?」

P「異性が入ると雰囲気が変わるからね。まゆこそよかったのか?」

まゆ「まゆが入ったら幸子ちゃんに怖がられるから入りませんでした。んもう、わかってるくせにぃ」

P「片付けが終わったらしい。今から結城晴が来る」

まゆ「ココアでも入れてきますね」

P「頼む」

晴「えっ、今から?」

小梅「う、うん」

晴「どこに連れてくんだよっ」

小梅「い、いいから……いいから」

晴「ちょっ、押すなって」

輝子「足を持つぜぇぇぇぇ!」

晴「自分で歩くって!」

美優「晴ちゃん、行きましょう」

晴「あ、エロい姉ちゃん」

美優「私の名前は三船美優。エロい姉ちゃんなんて言っちゃダメ」

晴「……うん」

小梅「……行こ?」

晴「ン……」

小梅「ココ……だよ……」

晴「お前は来ないんか?」

小梅「私はここまで……あとは……アナタ次第、だよ」

晴「こえぇこと言うなよ……!」

小梅「うふ……ウフフ……フフフフフフ」

晴「不気味なやつめ…………開けっか」

晴「お邪魔しまー……す。暗……くない」

まゆ「こんばんはぁ」

晴「ヒッ!」

まゆ「こっちへ」

晴「い、いきなり後ろに立つなって!」

まゆ「ごめんなさい。こっちへ」

晴「人の話を……いいや」

P「こんばんは」

晴「誰だ、お前」

P「オレが誰かは君次第、それより聞きたいことがある」

晴「なんだよ」

まゆ「…………」

P「今、満足してる?」

晴「まあまあ……」

P「まあまあか。他のところに移れるなら移りたい?」

晴「それは……考えてない」

P「しばらく戻らなくても怒られないけど寮に帰りたい?」

晴「…………」

まゆ「はい、ココア」

晴「ありがとう」

まゆ「いいえ」

晴「あっち!」

まゆ「ゆっくりでいいわ。ゆっくりで」

晴「……あのさ」

P「何?」

晴「オ、私のことどこまで知ってるんだ?」

P「一人称は『オレ』でいいよ。喋りにくいだろ」

晴「オレのことどこまで知ってる」

P「だいたいのことは」

晴「……そっちの姉ちゃんはえっと……佐久間だっけ?」

まゆ「まゆのこと知ってるの?」

晴「まぁな……」

まゆ「まゆどうやら有名人らしいです」

晴「アンタの事は知らないけどな」

P「オレのことは知らなくてもいい」

晴「不気味なままでいいのかよ」

まゆ「あとはお二人でごゆっくりぃ」

晴「ハ?」

P「まゆはどこにいく」

まゆ「お茶でも飲んできます♪」

晴「あ、ちょっ、な……」

P「…………」

晴「…………」

P「…………」

晴「……なんか喋ろうよ」

P「ここでは普通に喋っていい」

晴「これがオレの普通です」

P「…………」

晴「わかったよ。これでいいんか?」

P「それでいい」

晴「…………」

P「キョロキョロしてどうかした?」

晴「別に」

P「そう」

晴「……なぁ」

P「ん?」

晴「オレってこう見えてもアイドルやってんだけどさ」

P「知ってる」

晴「だよな。でさ、聞きたいんだけどよ……女ってなんだ?」

P「それをオレに聞くか」

晴「あんたスケコマシってやつなんだろ?」

P「違う。誰から聞いた」

晴「兄貴の本に描いてあった」

P「描いてあったのか」

晴「で、女ってなんだ?」

P「なんだろうね。オレにもわからない。男だからね」

晴「オレも」

P「気になる?」

晴「スゲェ気になる。オレさ、知ってると思うけどよ、親が勝手に応募してアイドルになったんだ」

P「へぇ」

晴「それでさ、オレって男っぽいだろ? だからオレを女らしくしたくて応募したんじゃないかって」

P「そうだろうね」

晴「だからプロデューサーの言うこと聞いてた……」

P「そうだね」

晴「もう限界だけどな……」

P「怖かったね」

晴「だな……ヒック……」

P「タオルどうぞ」

晴「ちくしょ……なんでオレが、こん、こんな、ウゥ……」

P「…………」

晴「──スゥスゥ……ッヒク……プゥ」

P「…………」

杏「ねぇ……」

P「どうした?」

杏「普通こういうときってさ」

P「泣き疲れて眠った子がいるときだな」

杏「うん、まさにこの状況。でさ、普通はベッドで一緒に寝てあげるのが人情だよね?」

P「人情だな」

杏「人情だよね」

P「朝起きてオレの顔が隣にあったら?」

杏「うん、ごめんね。杏が間違ってた」

P「…………」

杏「……杏はこれくらいの時何してたかなー」

P「雪遊びは?」

杏「こたつで寝てた」

P「今と変わらないね」

杏「杏は男とか女とか考えたことないから晴ちゃんの悩みはわからないけど、親に思うことがあるのは同じ」

P「見離される恐怖」

杏「怖いだろうね」

P「訳もわからずある日アイドルにだからね」

杏「その点、杏は計画的だからね。目指せ印税生活!」

P「やり方を間違えたら大変なことになる。これはその好例だな」

杏「悪い好例って変」

P「…………」

杏「……なんかこれを端から見るとPさんがロリコンに見えるよね」

P「ソファーで寝る?」

杏「それは寒いからやだ」

P「…………」

杏「どうしたのさ」

P「ここのところ人が増えてごめん」

杏「私に危害がなければいいよ。絶対に接しなきゃいけないってわけでもないしさ。気楽なもんだよ」

P「そうか……」

杏「それより今はPさんに倒れられる方が杏は嫌だな」

P「杏……」

杏「Pさん……」

P「個数と質どっちがいい?」

杏「質」

P「わかった」

杏「…………」

P「どうした?」

杏「寒いから少し近づいてもいい?」

P「布団をかけてあげよう」

杏「Pさんの白くて暖かいよぉ」

P「……いつも通りでいい?」

杏「こんなときでも溜まるものは溜まるのが人の性。いつも通りでお願いしていい?」

P「わかった」

杏「かなり最低なことしてるよね」

P「トイレ行くか」

杏「うん……」

P「無理のないようにしがみついてね」

杏「抱き付くのも慣れたもん。慣れって怖い」

P「静かに移動しよう」

P「──ふぅ」

まゆ「まだ起きてたんですかぁ?」

P「あぁ。お茶会楽しかったか?」

まゆ「はい。晴ちゃんどうでした?」

P「泣き疲れて寝たよ。怖かったんだろうね」

まゆ「訳もわからずアイドル活動ですものね」

P「多感な時期は難しい。普通が通用しないことも珍しくない」

まゆ「担当プロデューサーをロリコンか疑りながらですからねぇ。それでもお仕事は真面目にする。素直ないい子です」

P「複雑だろうね。よく押し潰されなかったよ」

まゆ「はい……」

P「…………」

まゆ「こういうときはそんな顔しないでください。でないとキスしますよ?」

P「……そうだな」

まゆ「…………」

P「……明日からどうするか」

まゆ「晴ちゃんと楽しい毎日が待ってます」

P「そういうことじゃなくて」

まゆ「ふふふ、まゆにいい考えがあります♪」

P「言ってみて」

まゆ「>>678層に>>680


>>678
ジュニア(12歳まで)かティーン(13歳から19歳まで)かアダルト(20歳以上)かをお願いします

>>680
軽くか徹底的かをお願いします

ティーン

かるーく

まゆ「ティーンにかるーく。綿毛みたいにかるーく」

P「氏名は?」

まゆ「あなたを愛すること」

P「名前は?」

まゆ「あ、そっちの氏名ですか。>>682です」


>>682
モバマスのティーンアイドルをお願いします


※今回は復讐になりますのでご注意ください

五十嵐響子

まゆ「五十嵐響子っ!」

P「ハンカチ噛まない。何で五十嵐響子?」

まゆ「キャラ被ってるんです!」

P「それ以外での理由」

まゆ「>>684


>>684
五十嵐響子に何をされたかをお願いします

それ以外は安価下

救済されてるアイドルにいじめ

まゆ「みんなへのいじめです」

P「みんな?」

まゆ「このマンションにいるみんなです」

P「そのみんなか。噂は本当だったのか。火のないところに煙は立たずだな」

まゆ「噂?」

P「掲示板であざといって噂になってる。裏で陰湿なことしてるってさ」

まゆ「ヤンデレですか? まぁ、怖い」

P「アンチスレでも見るか?」

まゆ「はい、そっち寄りますね♪」

P「はい、携帯電話」

まゆ「あぁん……ブゥ。浮気してないかチェックしてやるぅ」

P「何て書いてある」

まゆ「>>686>>687


>>686
>>687
五十嵐響子に対する悪口・アンチレスお願いします

悪口・アンチレスなので前にレスした人も参加OKです。次スレがあったら>>1に追加して書かないと

どんな男にもいい顔するビッチ

家事が得意なのはいいが同年代のアイドルを馬鹿にしてる感じが嫌い

P「どんな男にもいい顔するビッチ」

まゆ「みんなに優しいですよねぇ」

P「本当にそう思ってる?」

まゆ「いいえ」

P「恋人にすると不安を与えるタイプだな」

まゆ「誰にでも優しいですからねぇ」

P「いわゆる『いい人』だな」

まゆ「友達止まり」

P「はっきり言うね」

まゆ「まゆは素直なのが売りです♪」

P「家事が得意なのはいいが同年代のアイドルを馬鹿にしてる感じが嫌い」

まゆ「グイグイ行くタイプですよ、響子さん」

P「どんな感じに?」

まゆ「事務所でもプロデューサーの自宅に行ってることを隠しません。それに家事のことを自慢してきます」

P「出来るのは当たり前ってタイプか」

まゆ「自慢するなんて浅いですよね」

P「自信があるのはいいが浅いな」

まゆ「まゆはあなたとの関係隠してます」

P「ありがとう」

まゆ「アイドルと男の秘密の関係。なんだか映画みたい♪」

P「出来る女をアピールすると嫌われる」

まゆ「まゆとデキるあなたは幸運です♪」

P「今日は小学生がいる」

まゆ「じゃあ静かにやります? お互いに衣擦れの音を聴きながら……ね? キスからしましょう。ンー」

P「節度を持って」

まゆ「んむっ……むもぅ」

P「…………」

まゆ「ほれふきでふねぇ」

P「なに?」

まゆ「それ好きですね」

P「そういうわけじゃない」

まゆ「頬っぺたグニグニします?」

P「しない」

まゆ「下の頬っぺたにします? ブラしてませんから服の上からでもやわっこいですよ」

P「……ふぅ」

まゆ「抱き締めるだけで満足だなんて……んもう」

P「明日からも頑張ろう」

まゆ「パワーを充填しなきゃ♪」

P「お腹から?」

まゆ「お腹から。これ落ち着くんです」

P「そうか──」

晴「…………」

杏「んー……」

まゆ「ほら、杏ちゃん起きて。寝惚けてると怪我しますよー?」

杏「杏は寝てたいんだよぉ」

まゆ「朝御飯食べたら寝ていいから。ね?」

ほたる「あ、これソースじゃなくてお醤油……」

みく「目玉焼きには胡椒にブアックシュ!」

みちる「胡椒ですよね。パンにコショウもなかなか」

みく「振りすぎにゃ! おかげでくしゃみしちゃったでしょ!」

蘭子「ククク、悪魔召喚の儀はなれり」

みちる「こういうときなんて言いましたっけ? あ、思い出した。くさや!」

みく「嚏にゃ! くさやじゃお魚にゃ! 想像しただけで鳥肌がぁ……!」

P「どうした?」

晴「なんだこれ」

P「朝食。うるさくてごめん」

晴「あ、いやそれはいい。家もいつもこんな感じだしよ。それよりアレ。あの頭の悪そうな……」

みちる「もう1斤食べたい」

みく「一斤は多すぎにゃ」

P「大原さん?」

晴「そういうのか?」

P「まぁ、彼女も頑張ってるとだけ言っておく。ベーコンいる?」

晴「いらねえ……」

P「…………」

みく「ところでPチャン。その隣の子は誰にゃ?」

晴「オレか? オレは結城晴。よろしくな」

みく「みくはみくにゃ!」

晴「よろしくなみくにゃ!」

みく「あっ、本名は前川みくにゃ」

晴「ミクニャって変わった名前だな。実は外国人とか?」

P「前川みくが本名だ」

晴「マジか。じゃあその『ニャ』ってなんだよ」

みく「語尾。晴チャンの一人称みたいなものにゃ」

晴「ふーん。まっ、よろしくにゃ!」

みちる「フゴゴくお願いしまフゴ」

晴「そっちのパンくわえてるのは?」

みちる「大原みちる。大きいの大に原っぱの原、それにひらがなでみちる」

晴「それくらいわかるよ。バカじゃあるまいしよ」

みちる「フゴー……」

晴「あ、ごめんよ」

みちる「鬱だ……食べよう」

P「もう駄目」

みちる「なんとぉっ!」

晴「食いたいんなら食わせりゃいいじゃん」

クラリス「暴食は罪ですよ」

P「おはようございます、クラリスさん」

クラリス「おはようございます」

晴「また増えた」

クラリス「そちらは……」

晴「結城晴。よろしく」

クラリス「私はクラリス。こちらこそよろしくお願い致します」

晴「クラリスだな。それで名字は?」

クラリス「私はシスターなので名字ありません」

晴「ハ? よくわかんねぇけどヘレンみたいなものか。あんたも世界レベルなんか?」

クラリス「俗世に染まっております」

晴「ぞく何?」

ほたる「あ、あのぉ……」

晴「あ?」

ほたる「あ、ごめんなさい」

晴「誰?」

ほたる「白菊ほたるです。よ、よろしくお願いします」

晴「なぁ」

ほたる「は、はひ……!?」

晴「なんでビクビクしてんの?」

ほたる「わ、私に近付くと不運になります」

晴「んなバカな。あのなそんなの迷信だって」

ほたる「こ、来ないで……!」

晴「だから迷信だっ、てぇ!」

みちる「あ、ビー玉で転けた」

晴「なんでこんなとこにビー玉があんだよ!」

P「今日の朝何かありました?」

クラリス「朝食の目玉焼きを落としたんです」

P「それは不運でしたね」

クラリス「私の目玉焼き……」

P「あなたのだったんですか」

クラリス「黄身の部分を残してた私が悪いんです……」

ほたる「他にも美優さんの口紅を踏んづけてしまって……ポッキリと」

P「…………」

晴「不運っつーか疫病神じゃねえか」

ほたる「うぅ、そ、そうです、私は、や、疫びょ……が」

まゆ「晴ちゃん!」

晴「な、なんだよ」

まゆ「謝りなさい」

みく「今のは晴ちゃんが悪い」

晴「うっ……ご、ごめん」

ほたる「疫病神なのは事実ですから……気にしないでください」

P「…………」

クラリス「ところでほたるさんに用事があるようですが」

P「そうでした。二人ともこっちへ」

ほたる「あ、はい」

晴「オレも?」

P「そうだよ」

みちる「あれはお尻叩かれますね」

みく「晴チャンはわかるとしてなんでほたるチャンまで?」

みちる「……趣味?」

P「違う。行くよ」

晴「んで、オレ達になんか用?」

ほたる「やっぱり、お、お尻叩かれちゃうのかな……不運だなぁ」

P「しないよ。話ってのは君にしか頼めないことなんだ」

ほたる「私にしか出来ないこと?」

晴「じゃオレ呼ぶ意味ねえじゃん」

P「君にも関わること」

晴「オレにも?」

P「そう。白菊さん」

ほたる「は、はい」

P「晴も教室に連れていってあげて」

ほたる「教室? マナー教室の事ですか?」

晴「マナー教室ぅ? なんだそれ」

P「名前の通り、マナーを学ぶところ」

晴「うげっ、そういうの苦手なんだよな。パス」

P「駄目」

晴「ダメって、あんたが決めることじゃねぇだろ」

P「親でも兄弟でもないからな」

晴「だったら……」

P「悩みがなくなるよ?」

晴「オレは何も悩んでなんかねえって」

P「女性らしくなりたいんでしょ?」

晴「エッ? なんでその事知って……」

P「だからアイドルになった。違う?」

晴「それは親が勝手に応募して……」

ほたる「……あ」

P「そうだね。勝手に応募してだね。まぁこれはオレの願いでもある」

晴「なに訳のわかんないこと」

ほたる「晴ちゃん!」

晴「な、なんだよ」

ほたる「一緒にマナー教室行きましょう!」

晴「いや、だから行かねぇって。なに急に張り切って」

ほたる「こ、来ないと、ふ、不運パワーで、の、呪います!」

晴「ハァ!?」

ほたる「さっきはビー玉踏む程度で済みましたがわ、私が不運パワーを送ったらあの程度じゃ済みません……!」

晴「き、気味悪いこと言うなよ……! そ、そんなんじゃビビらねえかんな!」

ほたる「し、信じるか信じないかは晴ちゃん次第です!」

晴「う、うぅ……わ、わーったよ」

ほたる「や、やった……! あ、違った。そ、それでいいんです。わかればそれでいいんです」

P「話がついたみたいだね」

晴「つーか具体的にどんなとこなんだ?」

クラリス「──なるほど。その様なところで服を……」

まゆ「お手軽に変えるのが魅力です。解れたら自分で縫うことも出来ます」

クラリス「古着とはそういったことも出来るのですね。勉強になります。フリーマーケットを開いてはいるのですが服のこととなるとどうにも……」

まゆ「クラリスさんの服、高そうですものね」

みく「それなりにかかってそうにゃ。ボロ着てても高そうに見えるにゃ」

P「ただいま」

まゆ「お帰りなさい」

P「片付けよう」

まゆ「手伝います」

ほたる「あ、私もお手伝いします」

P「まゆは台を拭いて」

まゆ「はぁーい」

ほたる「わ、私はなにをしたら」

P「こっち来て」

クラリス「私は邪魔にならないところにいます」

杏「さらっとサボる気だな。やっるぅ」

クラリス「違います──」

P「洗い物お疲れ様」

ほたる「ご、ごめんなさい」

P「怪我がなくてよかった」

ほたる「でもコップが……」

P「駄目になったのは残念だけど小さなヒビを見つけてくれてありがとう」

ほたる「あ、いえ」

P「それにしてもさっきはよく晴のことに気がついたね」

ほたる「ご両親のことですよ? なんとなくです。前にいたところにも似た人いましたから。親が花嫁修行代わりにって人」

P「晴の親は男社会の中で育った娘を心配してだけどね。まぁ、違いはないか」

ほたる「あの……」

P「どうしたの?」

ほたる「お尻を叩いてくれませんか?」

P「どっちの意味で?」

ほたる「不安なんです……私で晴ちゃんを変えられるのかなって」

P「緊張することはないよ。お互いに励まし合えば大丈夫。それに白菊さんが教えるわけじゃない」

ほたる「で、でも……」

P「緊張するのはわかる。しかし、その緊張を忘れないでいこう。いいね?」

ほたる「は、はい」

P「いつも通りで大丈夫」

ほたる「こ、こんな人に励まされるなんて……不運だなぁ」

P「その調子。お茶どうぞ」

みく「Pチャンと何を話してたにゃ?」

晴「なんでもいいじゃねえか」

みく「気になるにゃ! 純粋に気になるだけにゃ!」

晴「やだよ言いたくない」

みく「簡単に教えてくれるだけでいいにゃ!」

みちる「先っぽだけでいいから!」

蘭子「天罰!」

みちる「ゴ、ゴム鉄砲はなしっ……! というかそんなのどこに……!」

晴「簡単になら」

みく「よっにゃー!」

晴「えっと……簡単に簡単に……」

みく「ドキドキにゃ」

晴「オレを女にするって話」

みく「Pチャアァァァァァン!」

ほたる「──響子さんからのいじわるですか?」

P「いじめね。ある?」

ほたる「ありますが……鉢植えの水やりを勝手にやられた程度でそこまでいじわるというほどでは……」

P「根腐れした?」

ほたる「……ちょっとだけ。あ、でも窓辺に出してた私も悪いんです」

P「……そう」

ほたる「あ、部屋に戻ります」

P「わかった。ん?」

みく「Pチャン!」

ほたる「そ、それじゃ私はこれで……!」

みく「ほたるチャンは早く行くにゃ!」

P「どうかした?」

みく「見損なったよ、Pチャン!」

P「何で?」

みく「晴チャンに手を出すなんてロリコンにゃ!」

P「手を出す?」

みく「惚けてもムダだにゃ! 晴チャンを女にするって聞いたにゃ!」

P「誰に?」

みく「晴チャンから直に!」

P「……それは勘違いだ」

みく「フシャー!」

P「威嚇しないで聞いてよ」

みく「それ以上近付いたら猫パンチするからね!」

P「女にするじゃなくて女性らしくするの間違いだよ」

みく「どっちも同じ意味にゃ!」

P「マナー教室に通わせようとしてるんだ」

みく「夜のマナー教室!?」

P「前川さんは勘違いすると一直線だね。普通のマナー教室だよ。ほたるも通ってるところ。聞いたことあるでしょ?」

みく「……その話は聞いたにゃ」

P「納得した?」

みく「前科がある人の話は信用できないにゃ」

P「前科?」

みく「みちるチャンから聞いたにゃ。キャンプでのお風呂の件。一緒に入ったんでしょ?」

P「入った」

みく「……みくは自分を曲げないよ」

P「それでいい。ところで聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

みく「えっちな質問じゃなければいいにゃ」

P「五十嵐響子からどんないじめ受けた?」

みく「いじめなんてないにゃ」

P「ふーん」

みく「……ちょっとだけされたにゃ」

P「猫耳隠された?」

みく「猫耳じゃなくてお花を隠されたにゃ」

P「いつも髪に着けてるそれね」

みく「これにゃ。これと猫耳がないとなかなかみくだって認識されないにゃ。変装には困らないけどちょこっとだけ寂しいにゃ」

P「いつもはメガネと花飾りだからな」

みく「なんで知ってるの?」

P「それを隠されたのか」

みく「まぁ、たまたま落としただけかもしれないにゃ」

P「君がそれでいいなら」

みく「精神衛生のためにそうするにゃ。ストレスで毛がハラハラと落ちちゃうにゃ」

P「…………」

みく「あのPさん……」

晴「あ、いた」

P「やぁ」

みく「にゃ、にゃあ晴チャン」

晴「何してんだ? なんかうまいもんでも食ってた?」

P「飴どうぞ」

晴「サンキュ。ムチュ……あめぇ」

P「それじゃ前川さん、また後で」

みく「おうにゃー! それじゃみくはハウスに戻るにゃー♪」

晴「テンションたっけぇな。ガリゴッ……アメも一個ねえ?」

P「噛まずに舐めきりなよ」

晴「アメは噛むもんだろ」

P「飴の前にひとつ」

晴「んあ?」

P「五十嵐響子から何か意地悪されたりいじめられたりした?」

晴「五十嵐響子? あー、あのよく来る姉ちゃんね。なにもされてないぜ」

P「なにか隠されたりは?」

晴「別にそんなことは……あ」

P「何か思い出した?」

晴「プロデューサーと話してたら、プロデューサーつってもオレのじゃなくて向こうのな。そしたら『へぇーサッカーの話ですかぁ。女の私にはわからないからうらやましいなぁ』って言われた」

P「酷いな」

晴「別にオレは男とか女とか気にしてねぇけどよ、なんつーかカチンと来た」

P「カチンと来るよな」

晴「オレがカッコいい服着て何が悪いんだっての。カワイイ格好とかゾッとするぜ。そう思わね?」

P「そうだね」

晴「大体どいつもこいつもカワイイ服カワイイ服。オレはカッコいいのがいいんだよ!」

P「格好いいアイドルもいるからそっち目指したいよな」

晴「だよな! あのなんつったっけ何とか地シンっつーアイドル」

P「765プロの?」

晴「そうそうそうそう」

P「菊地ね。それにシンじゃなくて真。それと彼女は可愛いもの好き」

晴「えっ、マジで?」

P「マジで」

晴「意外だなおい」

P「アイドルとしての彼女と素の彼女は違うからね」

晴「みくが魚食えないみたいなもんか?」

P「そんな感じだね」

晴「……なぁ」

みちる「おいしいもの!」

晴「っ!」

みちる「おいしいものはどこですか!?」

P「冷蔵庫にあるもので作れるよ。でも食べたばかりだから駄目」

みちる「ガーン!」

P「それじゃまたね」

晴「お、おう」

P「そうだ。神谷さんのところに行きな。アニメ観れるよ」

晴「マジ!? で、神谷って誰?」

P「神谷奈緒。格好いい服の人」

みちる「それじゃ分かりにくくありません?」

P「他にある?」

みちる「眉毛が太い!」

晴「あぁ、あの人か。行ってくる」

みちる「行ってらっしゃい」

P「それでなんでここに?」

みちる「台所からなかなか出てこないので何かおいしいものでも食べてるのかなと。名推理でしょ!」

P「タイミングはいいね」

みちる「タイミング?」

P「五十嵐響子から」

みちる「食べようとしてたパンを取られました!」

P「反応早いね」

みちる「食べ物の恨みは恐ろしいんですよ!」

P「どういう状況?」

みちる「昼食に食べようとしてた大原ベーカリー特製ジャンボホットドッグを担当プロデューサーに渡すなんて!」

P「君の担当?」

みちる「向こうのです。こんなに食べきれないでしょ? 大きなお世話です!」

P「大きなお世話だな」

みちる「女子力なんてぇ!」

P「それは大事」

みちる「ムヌ?」

P「ところでそれってもしかしてお弁当として渡した?」

みちる「あ、そんなこと言ってました。今思い出しました」

P「君という人は……はい」

みちる「これは?」

P「怒るとお腹空くからね」

みちる「コッペパンだけはちょっと」

P「はい、練乳」

みちる「ありがとうございます!」

P「移動しようか」

みちる「ムグムグムゴフゴゴ──」

P「晴、白菊さん、前川さん、大原さんには聞いたと。あとは……」

輝子「何をしているんだ、し、親友」

P「やぁ」

輝子「やぁ……リビングで湿ってどうした。キノコ育成の……環境作りか?」

P「誰に聞いたかなと思ってね。そうだ、ひとつ質問があるんだけどいいかな?」

輝子「どんな質問でも……答えてみせよう、フフ」

P「五十嵐響子からどんないじめを受けた?」

輝子「ず、ずいぶんストレートな、し、質問だな……嫌いじゃないぞ、そういうの」

P「それでどんなことされた」

輝子「キノコ栽培を、ディ、ディスられた」

P「どんな風に?」

輝子「ある日……私がいつものように、つ、机の下で寝てるときのことだ。誰かが事務所にはいってきた……それが五十嵐響子……」

P「それで?」

輝子「机の下から原木は撤去してたから……事なきを得たが……机の下を見たヤツは言った……『キノコを育てるなんてステキですね』と……」

P「いまいち前後が繋がらない」

輝子「いきなり言ったわけじゃない……その前にも二言……三言喋った……彼女は家事が趣味らしいな……キノコ栽培をしたいらしいが……家事が忙しく時間がないらしい……片手間にやるのは難しいと、いったところさっきのセリフを言われた。しかも、鼻で笑われた……」

P「いつもキノコありがとう。助かってるよ」

輝子「私もいつか……親友のキノコをいただきたい、フフ」

P「そう……」

輝子「今は二人きり……湿るチャンスだぞ、親友」

P「二人きりと言えば昨日三船さんの様子がおかしかったけどなにか心当たりある?」

輝子「す、すまない……それは私のせいだ、フヒ」

P「どういうこと?」

輝子「冷蔵庫の中にある……私が栽培したキノコを使って料理をしたらしい」

P「危ないのが混ざってたのか」

輝子「私も細心の注意を払って、さ、栽培してたのだがどうやら……失敗してたらしい。その事に気がついたときにはもう……」

P「…………」

輝子「す、すまない」

P「ところでキノコの原木はまだ事務所で熟成させたりする?」

輝子「あ、あそこの倉庫はちょうどいいジメリ具合だから……」

P「…………」

輝子「し、尻でも、た、叩くか?」

P「原因が君ならね。とりあえずオレからの用は済んだ」

輝子「ほ、本当にすまない……罰ならなんでも受ける……」

P「とりあえず部屋に戻ってて」

輝子「そ、そうさせてもらう……」

P「気を落とさないで」

奏「…………」

P「今日は入れ替わり立ち替わりだな。助かってるが」

奏「何の話?」

P「これからの話」

奏「それは今擦れ違った星さんと関係があるのかしら?」

P「あるかもしれないしないかもしれない」

奏「思わせ振りな態度。はっきりしない人は嫌いよ」

P「五十嵐響子にどんないじめや意地悪をされた?」

奏「はっきり過ぎるのも考えものね。いいわ。はっきりいえと言ったのは私だし」

P「それでなにされた?」

奏「されてはいないわ。ただ悪口を言われただけよ」

P「悪口?」

奏「遠回しにふしだらな女と言われたの」

P「詳しく」

奏「私の奥に入ろうとするなんて無遠慮な人……凌辱されてるみたい」

P「嫌なら話さなくていい」

奏「勝手な想像で話を進められても困るもの。言うわよ。そうねあれは……ある夕日の綺麗な日だったわ。私が事務所でなんとなしに彼女の担当プロデューサーと話してたときだったわ」

P「あの高さにしては珍しく夕日が綺麗に見えるよ」

奏「えぇ、私には眩しいくらいにね。プロデューサーは営業帰りで彼女とは別々だったわ。そうは言っても私も馬鹿じゃないわ。彼女が来るのはわかってたもの。だから話題には気を付けてた」

P「会話は断片を切り取るとどうとでも解釈できてしまうからね。匂いや気配は表せなくともとも言葉は表せるからね。関係ないが思ってることを画面に投影出来る装置があるらしいね」

奏「そんな装置があるのね。私もこれを投影できたら楽ね。会話というのは少し苦手。その時もそんなことを考えていたの。そうしている内に息を切らせながら彼女が来た。少し大きめなリボンとチェックスカートが印象的な制服でね。あれは学校の制服ね。いつも通りの格好に私は何も思わなかった」

P「彼女のプロデューサーがなにか言ったんだな」

奏「えぇ。いつもより遅いなって。そういった状況だから彼女は焦ったのかしら、それとも走ったせいかしら。何が原因かはわからないけど彼女は普通じゃなかった」

P「なるほど。続けて」

奏「話が私の苦手な方向に行き始めたの」

P「苦手な方向?」

奏「……恋愛の話。特に仲がいいというわけではないから、恋愛の話も定番な流れになる。モテるにはどうしたらいいかって。そうしたら彼女が私を見ながら悪意を込めてこう言ったわ。キスが得意な人ってモテますよねって」

P「印象を植え付ける気だな」

奏「その通りよ。私は特に気にしてないけどもあれがどう広まるか考えると嫌になるわ」

P「キスが得意な女性というのは男性にとって経験豊富と同じくらい不安要素にしかならないからな」

奏「以上よ」

P「話してくれてありがとう」

奏「こっちこそ。面白くもない話を聞いてくれて感謝してるわ」

P「……余裕がないね」

奏「不安に押し潰されそうなの。あなたが励ましてくれる?」

P「頑張れ」

奏「ひねくれた人」

P「そういうのはイケメンに頼んで」

奏「あなたも棘のある言い方するじゃない。もしかしたら同類なのかもしれないわね」

P「それはない。ところでここには元々何をしに?」

奏「一人になりたかっただけよ」

P「そういうときあるよな」

奏「この時間ならと思ったけど今日は祝日なことを忘れていたわ」

P「うちのプロダクションは極力祝日は休ませるからね」

奏「仕事で忘れたいこともあるのにね」

P「その気持ちはわかるけど休みは重要。特に休める学生はね。社会人になると次の仕事のために休日も準備に追われるなんて珍しくないからね」

奏「安らぎが欲しいわ」

P「この時間は人がいるかもしれないけど静かではあるからここの部屋でボーッとしてるのもいい」

奏「そういえばここのマンション、防音が凄いらしいわね」

P「それが売り」

奏「ならここで私とあなたが"不適切"な事をしても外に音が漏れないということね」

P「そうだね」

奏「…………」

P「…………」

奏「本当に静かね」

P「聞こえるとしたら家電の駆動音くらいだね」

奏「モーターって響くのね」

P「意外と気にしてないものだよね」

奏「普段気にしないところが気になるのかもしれないわ」

P「そうだね」

奏「もうしばらくこの静寂の中にいたいわ」

P「休日や祝日は人がいるけど平日の昼夜は静かなものだよ」

奏「誘ってるのかしら?」

P「本来はあまり来ないで欲しいけど静かな場所がここしかないなら」

奏「その口調だと他にもあると言いたげね」

P「少し埃っぽいけど事務所の倉庫」

奏「あぁ、あの倉庫ね」

P「行くときには先住の人に筋を通して」

奏「先住の人?」

P「輝子」

奏「わかったわ」

P「今なら部屋にいると思う」

奏「私はまだ行くとは言ってないわ」

P「そう」

奏「でも事前にいっておけばいきなり行くことにはならないし、驚かれないからやっておくべきかもしれないわね」

P「そうだね」

奏「それじゃ」

P「それじゃ」

奈緒「……あっとわりぃ」

奏「いえ」

奈緒「相変わらずクールだな……」

P「何か?」

奈緒「別に用事っていう用事じゃないけどよ」

P「どうかした?」

奈緒「アニメの事で悩んでてよ」

P「オレはそっち方面には明るくない」

奈緒「そうじゃねえって。いま晴が部屋に来てるんだけどどんなアニメ見せていいのかわかんなくて……とりあえず一通り見せたけどもうネタがなくて困ってんだよ」

P「ここには晴くらいの子が観るものはない」

奈緒「少し過激なの見せていいのかわかんなくて。ほら、影響とかあるだろ?」

P「そんなに受けないけどな。心配するのは良いことだね。そうだな……」

奈緒「お色気シーンがあるのはダメそうだし」

P「下着くらいなら大丈夫」

奈緒「最近普通にあるからなぁ。ちょっと前のアニメだとないけどさ」

P「無難にあの海賊漫画のは?」

奈緒「タバコが悪影響っぽい」

P「それならアメリカ版で吹き替えのを見せればいい」

奈緒「なんか違うの?」

P「煙草が飴になってる」

奈緒「本当か?」

P「それか禁煙してる」

奈緒「それじゃ名前が意味なくなるじゃん。タバコ吸ってるからそのまんまな名前のキャラいるじゃん」

P「チェイサーになってる。名前変わってもあっちは名前そのまま使わないからそんなに影響はないだろう」

奈緒「名前が変わるのか……」

P「ちなみに銃が水鉄砲になってる。ほら」

奈緒「これギャグだな……話では聞いてたけど本当だったのか」

P「ところで気のせいかもしれないけど喋り方変わったね」

奈緒「晴とおしゃべりしてたら移った」

P「関西弁が移るみたいなものだね」

奈緒「そういや関西出身いないよな」

P「いるけど関西弁喋んない」

奈緒「……誰?」

P「前川さん」

奈緒「そういや今日は見ないな」

P「来てるよ。ただ猫耳つけてないだろうね。日干しするらしいから」

奈緒「……捜してみるか」

P「ところで聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

奈緒「ん」

P「五十嵐響子にどんないじめや意地悪された?」

奈緒「事務所にいじめなんてない」

P「カチンと来たこと言われた?」

奈緒「……それはある」

P「どんなの?」

奈緒「…………」

P「言いたくないのか」

奈緒「なぁ……眉毛の太い女ってどう思う?」

P「気にしてるの?」

奈緒「聞いてるのはこっちだ。で、どう思う?」

P「力強く感じる」

奈緒「……ふぅん」

P「変えたい?」

奈緒「あたしは別に……美容とか興味ねえし」

P「知り合いに美容関係がいるから聞いておくよ」

奈緒「いるの?」

P「いる。それよりどんな状況で言われた?」

奈緒「別に普通だけど……それにいじめっていうほどじゃないけどイタズラならされたことある」

P「なに?」

奈緒「衣装をメイド服に入れ換えられた」

P「メイド服に?」

奈緒「しかもネコミミメイド。ああいうのほんっと恥ずかしいからやめてほしい!」

P「何か言わされた?」

奈緒「ま、まぁ」

P「想像つくよ。彼女、あれでなかなかお茶目なところがあるらしい。こっちにしちゃいい迷惑だけど」

奈緒「ほんと無茶ぶりにもほどがある。しかもプロデューサーの前だったから断るわけにもいかない。ほんっと苦だった」

P「プロデューサーはいつでもアイドルの事を考えてるからね。考えものだよな」

奈緒「あ、やばっ」

P「どうした」

奈緒「晴待たせてるから戻る」

P「わかった。話ありがとう」

奈緒「ん……」

P「元気だしなね」

奈緒「……ん」

P「…………」

小梅「どう……したの?」

P「やあ」

小梅「いまさっき……な、奈緒さんと入れ違った……けど……なにか、あ、あった?」

P「少し話をしてただけ。話すのって疲れるからさ」

小梅「あ、それ……ちょっとわかる…………疲れるよね」

P「何か用事?」

小梅「特に……よ、用事ってわけじゃ……この部屋ひんやり……してて……気持ちいいから……うん」

P「適温だよな」

小梅「うん……」

P「…………」

小梅「…………静か……だね」

P「静かだな」

小梅「…………」

P「……座らないの?」

小梅「あ、うん……座る」

P「…………」

小梅「……あ……心臓の音…………聞こえる」

P「静かだけど流石にそこまで静かじゃないよ」

小梅「そういえば……こんな話……知ってる? 静けさを求めて…………死んじゃう、男の人の話」

P「静寂が好きな人の話でしょ? 最後は心臓の音がうるさくて止めるの」

小梅「そう、それ」

P「それがどうかした?」

小梅「あ……ただそれ……だけ」

P「そうか」

小梅「うん……」

P「…………」

小梅「…………」

P「…………」

小梅「……うん」

P「どうした」

小梅「だ、黙ってても、き、気まずくないな……って」

P「そうか」

小梅「こうやって……離れても…………近付いても……気まずくない……」

P「それはよかった」

小梅「…………」

P「何があったの?」

小梅「コンプレックス……なのかな」

P「肉体的コンプレックス? それとも精神的コンプレックス?」

小梅「精神的、かな」

P「よいしょ……話聞くよ」

小梅「誰が悪いわけでも……ないんだけど……キラキラしてる人見てると…………爆発しろって……思う」

P「リア充か」

小梅「うん……誰かのために……なにかできるのが羨ましい……のかな……」

P「自分を悪く言ってるようだけど誰になにされたの」

小梅「…………」

P「……五十嵐響子?」

小梅「…………うん」

P「体が傷付いてないところを見ると何か言われたね」

小梅「ふ、服の下も……みる?」

P「五十嵐響子は刃傷沙汰は起こさない」

小梅「なんで……わかるの?」

P「家事に支障が出るから。人を殴ると殴り方が悪ければ、殴った方にも反動がくる」

小梅「たしかに殴られてない……でも殴られたのと同じ…………かな」

P「辛いことでも言われた?」

小梅「学校のこと……聞かれた」

P「…………」

小梅「で、でも向こうも……お、覚えてないだけかも…………」

P「何を?」

小梅「学校のこと……あまり話したくないって言ったの……」

P「それなのに聞いてきたのか 」

小梅「ちょっとチクッ……て……した…………響子さん……学校楽しいって……私はそう思ったこと……ないから……嫉妬心なのかな」

P「それは覚えていない向こうが悪い」

小梅「覚えてなかった……だけなのかな……」

P「人の気も知らないでなんてよく言ったもんだよ。15歳らしいと言えばらしいけど……酷いな」

小梅「意地悪な顔……してたのは、わ、私の……気のせい……だよね……」

P「小梅……」

小梅「最近は……事務所にいても……息が……つ、詰まっちゃって……」

P「そういうときはここに来ていい」

小梅「ありがとう……あ、あのねっ」

P「ん?」

小梅「あ、やっぱ……いい」

P「そういえば新しいの買ったからやる?」

小梅「ゲーム……?」

P「そう。和風ホラーとスプラッタ物」

小梅「や、やる……!」

P「それじゃ手と顔を洗ってきて。目が赤い」

小梅「カ、カラーコンタクト……」

P「とにかく行ってきて」

小梅「Pさんも、い、一緒に……やる?」

P「後で行く」

小梅「まっ、待ってるね」

P「先に始めてて」

小梅「スプラッタは……後……フフ」

美優「あ……小梅ちゃん」

小梅「あ、こ、こんにちは」

美優「そんなに急いでどこかにお出掛け?」

小梅「出掛けるといえば……出掛ける……」

美優「?」

小梅「ヘッドホン……か、借ります」

P「スプラッタはヘッドホン、和風はイヤホンがいいよ。それとこの事は口外しないでね。年齢的にアウトだから」

小梅「ホラー映画で……慣れてるから……だいじょぶ…………それにあれは」

P「対象年齢とはいえ危ないからさ」

小梅「わ、わかった……」

P「それじゃ楽しんできて」

小梅「フンッ、フンッ……!」

美優「……興奮してましたね」

P「架空と現実の区別はついてますので大丈夫です」

美優「架空と現実?」

P「ところで何か用事ですか?」

美優「今日は人が多くて……嫌だってわけじゃないんですけど落ち着かなくて……」

P「高森さんの部屋ですよね?」

美優「お邪魔させてもらってる身で悪いのですが、いろんな人を招いててごった返していて……まるでパーティーみたい」

P「楽しそうですけど落ち着きはないでしょうね。本を読みたいけど落ち着かないから……ですか」

美優「本、読んでもいいですか?」

P「どうぞ」

美優「ありがとうございます」

P「…………」

美優「……あの」

P「なんですか?」

美優「こ、この前の事は忘れてください」

P「わかってます」

美優「あの時の私はおかしかったんです……」

P「正常ならオレにあんなことしないですからね。何かあったんですか?」

美優「特にそんな記憶は……ただあの日は午後から体が火照って仕方なくて」

P「生理は?」

美優「……今月はもう」

P「謎ですね」

美優「謎です……」

P「本の続きどうぞ」

美優「あ、はい」

P「…………」

美優「…………」

P「…………」

美優「…………」

P「膝掛け持ってきましょうか?」

美優「いえ、結構です」

P「わかりました」

美優「…………」

P「…………」

美優「……あの」

P「なんですか?」

美優「あ、いえ……なんでもありません」

P「…………」

美優「…………」

P「…………」

美優「あの、何をしてるんですか?」

P「本を読んでます」

美優「そ、そうですよね。見ての通りですよね……お邪魔してすみません」

P「いえ……」

美優「ハァ……」

P「…………」

美優「……ハァ」

P「……どうかしたんですか?」

美優「あ、いえ……なんでもありません」

P「そうですか」

美優「…………」

P「……浮かない顔ですね」

美優「あ、すみません……」

P「体調優れないんですか?」

美優「そういうわけではないんですが……」

P「悩み事でも?」

美優「あの……えっと……」

P「なんですか?」

美優「私……その……きちんとしてますでしょうか?」

P「ずいぶん曖昧な質問ですね。年相応ですよ。助けられることもあります」

美優「そう……ですか。ありがとうございます」

P「誰かになにか言われたんですか?」

美優「そういうわけじゃ……私が勝手にそう受け取っただけですので誰が悪いというわけでは……」

P「誰に何を言われたんですか?」

美優「……男の人からみて、私の年齢で結婚してないのはどう思いますか?」

P「一般的に見れば結婚してないんだな程度です。オレ個人としても特に思うところはありません。男は結婚に固執しませんし、あまり考えてない事が多いです」

美優「そうですか……そうですよね。ありがとうございます」

P「どうしてそう思ったんですか?」

美優「ただなんとなく……」

P「ぼかさないでください」

美優「本当に私がただそう思っただけです。それにあんないい子が悪口で言うわけ……」

P「いい子に見えてろくでなしなんて珍しくありません」

美優「それは言い過ぎじゃ……響子ちゃんは本当にしっかりしてていい子で……」

P「なるほど。五十嵐響子ですか」

美優「あ……」

P「何て言われたんですか?」


美優「…………」

P「…………」

美優「お仕事が終わって、思いの外疲れたので事務所で休んでたら、響子ちゃんが来たんです」

P「事務所違いますよね?」

美優「その日はお仕事の関係上、響子ちゃんの事務所が近かったのでそちらで休ませてもらったんです」

P「それで?」

美優「しばらく話していたら親の話になって。響子ちゃんのご両親、早くに響子ちゃんを産んだんですね。たしか二十歳かそこいらの時に」

P「22歳の時ですね。両親の年齢から逆算すれば」

美優「はい、そうでした。響子ちゃん、ご両親を尊敬してるらしくて笑顔で話してくれました。私も早く子供産みたいなって言ってました」

P「なるほど。それで?」

美優「やっぱり結婚は早い方がいいですよね!とも言ってました。その時なんだか馬鹿にされたような気がして……」

P「考えなしの発言は気に障りますからね」

美優「それからずっと心に引っ掛かってて……」

P「家事は問題なく出来るので後は相手だけですね」

美優「それと実はあまり結婚に関心がなくて……まだ一人で静かに暮らしてたいので」

P「結婚をすると一人の時間がグッと減りますからね。専業主婦をやるにしてもご近所との事もあります。なかなか一人というのは難しいですからね」

美優「それにこの先どうなるかわからないし……ハァ」

P「その気持ちわかります。三船さんみたいに考えすぎる人には一人の時間は重要ですからね」

美優「……私はなにも考えてません」

P「それでも重要です」

美優「…………」

P「…………」

美優「風が、気持ちいいですね」

P「そこは日当たりがいいので暑いでしょう」

美優「体がポカポカして気持ちいい……」

P「そうですね。そういう場所でリラックスするのは休まりますよね」

美優「えぇ……」

P「…………」

美優「…………」

P「……膝掛け持ってくるか」

美優「スゥ……フゥ──」

小梅「ふふっ……フフッ……くふふ」

蘭子「漆黒の扉から出でし、墓所姫の不敵なる微笑。踏み込むは闇か……」

美優「寝込んでしまってすみません」

P「高森さんには連絡しておきました。返信はありませんけど」

美優「何から何まですみません……」

P「いいえ。どこまで進んだ?」

小梅「さ、貞子……出て……きた」

美優「貞子? 怖い映画観てるの?」

小梅「えっと……志乃さん……?」

蘭子「酒呑童子?」

P「孫の手付きだね」

小梅「奇々……怪々……ふふふ」

P「晩御飯食べていきます?」

美優「そうさせていただいていいですか?」

P「はい」

小梅「晩ごはん……なに?」

P「リクエストある?」

小梅「ギ、ギドニー……パイ」

蘭子「ギドニーパイ? 」

P「三船さんは何かリクエストありますか?」

美優「……お台所をお借りしてもよろしいですか? いつも世話になっているのでたまには何かしたくて……」

P「いいですよ」

美優「ありがとうございます」

P「先に行っててください。あとからいきます」

美優「何か用事でも?」

P「神崎さんに話があるんです」

蘭子「我に?」

美優「わかりました。小梅ちゃん」

小梅「あ、うん……」

蘭子「……それで如何様な話だ。取るに足らぬ事だったら断頭台にかけるぞ」

P「楽しいことじゃないけどね。こっち来て」

蘭子「…………」

P「明かりつけるね」

蘭子「解放されし闇は楽園」

P「このままにしておく」

蘭子「汝の言霊に耳を傾けよう。慟哭を聞かせるがよい!」

P「五十嵐響子から何された?」

蘭子「八面六臂の鉢かつぎから? 我には痛くも痒くもない」

P「なにかされたのか」

蘭子「…………」

P「何か隠された?」

蘭子「我の眼は欺けない」

P「学校の事を言われた?」

蘭子「グングニルもかくや」

P「的中という事でもなさそう」

蘭子「…………」

P「喋り方?」

蘭子「ッ……!」

P「喋り方か」

蘭子「あれはメギドの残り火、そして刻は闇に迫る黄昏時。我はプロヴァンスの風に当たっていた」

P「エアコンない事務所は大変だね」

蘭子「異世界からの侵略者を想定した神々の遊びをやっていたときのこと」

P「扇風機の前でやるあれはいつの世代も変わらないね」

蘭子「ヴァルハラの扉は開かれ、エインヘリャルを従えヴルキュリャが訪れた」

P「担当プロデューサーと事務所に来たと。それで?」

蘭子「エインヘリャルは西の狼の部屋に行き、ヴルキュリャは鎧に覆われた長椅子で羽を休める」

P「衣装部屋はいつ見ても充実してるよね」

蘭子「紅き命の水を飲んでいると話しかけてきた。コ、コホン……『蘭子ちゃんの服装と喋り方って憧れるなー。けど、私には恥ずかしくできないかな』と」

P「それで?」

蘭子「我の真似事をし出した」

P「嫌なもんだよね」

蘭子「児戯は気にしないが我を侮辱したことは赦せん。我の魔導書を断りもなく持ち出してきたことも赦せん」

P「あのスケッチブックの事?」

蘭子「左様」

P「あれのことも言われたのか」

蘭子「闇の魔導書を開いて以来、我の言霊は混沌を呈している」

P「だから少し変だったのか」

蘭子「左様」

P「左様か」

蘭子「……ふ、普通にしゃべれない、こ、こともない……が……は……恥ずかしい」

P「そのままでいいよ。さて、夕飯の支度をしにいこう」

蘭子「が、がんばります」

幸子「──フー、有り合わせで作ってもこの美味しさ。ボク凄い♪ 後は食後のティータイムを、ン?」

幸子「……はい、なんですか?」

P『こんばんは』

幸子「今から食後のティータイムを楽しもうとしてるボクに何か?」

P『聞きたいことがあるからそちらの部屋に行ってもいいかな?』

幸子「ダメに決まってるじゃないですか。電話で済ませてください」

P『電話で済ませたくない』

幸子「欲求不満に聞こえますね。なんの用事ですか?」

P『事務所でのことを聞きたい』

幸子「特に何もありません」

P『五十嵐響子とも?』

幸子「ボクは気にしてません。わからない人にはわからなくて結構ですから」

P『何かあったんじゃないか』

幸子「あなたという人は……いいでしょう。今から来てください。ただし!」

P『一人でいくよ』

幸子「当たり前です」

P『それじゃ』

幸子「……不本意な招待とはいえお客様はお客様です。お茶菓子くらい用意してあげましょう。熊っぽいですしハチミツクッキーでいいでしょう」

幸子「それにしても騙すような手を使われるのは些か不愉快です。来たら文句言います。ん? 来ましたね。はーい、今開けますから待っててください」

P「こんばんは。ゆっくりしてるところごめん」

幸子「本当ですよ。とりあえず入ってください」

P「お邪魔します」

幸子「お邪魔されます。リビングで座っててください。お茶を持ってきてあげますから」

P「ありがとう」

P「…………」

幸子「お待たせしました。人の部屋を観察するのはあまり感心しませんね」

P「きれいにしてるね」

幸子「常にキレイな部屋を心掛けてるだけです。別に誉められることはしてません。それより騙すような誘い方は止めていただけませんか?」

P「すまない」

幸子「今回は許してあげますがもう後はないですからね。それでボクから何を聞き出したいのですか?」

P「五十嵐響子から受けたイジメについてだ」

幸子「イジメなんてされてませんよ。不快なことなら言われましたが、イジメというほどではありません」

P「何を言われたのかを教えて」

幸子「お金持ちへの嫉妬です。それも極めて稚拙な」

P「どんなだ?」

幸子「あなたは努力もしないで上がれるから楽ですよね、といった感じです。あまりにもくだらないので覚えてません」

P「精神衛生を取るのは当たり前だが覚えていて欲しかった」

幸子「稚拙な嫉妬は稚拙な嫉妬です。十把一絡げにして問題ありません」

P「それもそうだね」

幸子「だいたい、ボクお金持ちの家庭に生まれたからといって、それがなぜ家事ができないに繋がるのか。不思議で仕方ありません。たしかに家事が出来る事は素晴らしいことです。技能であり技術です。技能や技術というのは訓練や練習で身に付きます」

P「つまりお金持ちは家事が出来ないと見られたことに腹が立っているというわけか」

幸子「ボクが何も努力をしない人みたいに言われたことに腹が立ったのです。だいたいですね、家事は喜んでくれるから進んでやるべきだってのはおかしい。その人のペースというものがあるのにそれを無視して物事を……」

P「だいぶ堪ってるね」

幸子「まだまだありますよ」

幸子「──そもそも人をいじめて楽しむなんて悪趣味もいいところですよ。アイドルと芸人の線引きが出来ていないなんてプロデューサーとして恥ずかしくないのかと。あの人 はアイドルをプロデュースしたいのか、芸人をプロデュースしたいのかわかりません」

P「そういうものは体張ったものが多い。アイドルが体を張るっていうのは少なかったからいいのであって、今みたいにバラエティーに出演するアイドルがたくさんいると珍しくもなくなり、有り難みがなくなる」

幸子「せっかく天使をプロデュース出来るのにやることが芸人だなんてホント頭が残念ですよ」

P「それが彼の限界なんだろうね」

幸子「哀しいですね」

P「そろそろ帰ってもいいかな?」

幸子「あ、もうこんな時間。遅くまですみません」

P「鬱憤を発散するのは大事だからね」

幸子「まぁ、そういう契約ですからね。ボクの愚痴を聞けるなんてあなたはついてますよ!」

P「それじゃあね」

P「小日向さんに連絡するか」

美穂『もしもし……』

P「こんばんは」

美穂『こんばんは……』

P「さっきの件、今から行ってもいいかな?」

美穂『お願いします……』

P「鍵は開けるから大丈夫だよ」

美穂『先に支度してます……』

P「…………」

P「お待たせ」

美穂「無理いってすみません」

P「一人で出来ないなら仕方ないよ。もう着けてるね。巻きキツくない?」

美穂「ダ、ダイジョブ……です」

P「下半身から暖めていこう」

美穂「は、はい……」

P「杖はどう?」

美穂「あ、気に入ってます。よく見ると可愛いデザインなんです」

P「輿水さんの意見だよ。見えないところにも気を配ったからね」

美穂「見えないところ……」

P「揉もうか?」

美穂「え?」

P「そこ」

美穂「あ、お願いします。ン……」

P「コリコリしてるね」

美穂「今日は、ず、ずっと本……読んでたのフア……ので」

P「少し指で押しながら揉むよ」

美穂「いっ……グリュグリュ、しないでく……だっ」

P「血行を促さないと。ところで歯は痛くない?」

美穂「歯ですか? いえ特には、ヒァァッ」

P「高い声出たね。驚かせたかな」

美穂「だ、大丈夫……です」

P「歯は大丈夫か。だとすると本の読みすぎかもね」

美穂「Pさんは今日は何をしてました?」

P「一言じゃ言い表せないくらい色々してた」

美穂「いいなぁ。私は読書か日向ぼっこくらいしか……」

P「本当は散歩に連れていってあげたかったんだけど手が空かなくて」

美穂「今度連れていってほしいなー……って。ダメですか?」

P「構わないよ」

美穂「あ、ありがとうございます。欲しいぬいぐるみがあって気になってるんです」

P「それなら早い方がいいかもね。そういえば、今日やったことで共通してることがある」

美穂「共通してること?」

P「五十嵐響子にどんなことされた?」

美穂「どんなこと? 助けられたかですか?」

P「言葉が足りなかった。どんなイジメを受けた?」

美穂「い、いじめなんてそんな……」

P「あるはずだよ」

美穂「……わ、笑わないでくださいね」

P「笑わない」

美穂「いじめとは違うかもしれませんが……プロデューサーくんって知ってます?」

P「君のクマのぬいぐるみだね」

美穂「実はあれを取られちゃって……」

P「部屋にあるのは違うの?」

美穂「あれは……あれもそうですけどあれとは違ってその…………事務所用みたいな」

P「事務所用?」

美穂「じ、実は私、事務所用に持っていってるのがあるんです。それで緊張したときとかにあのぬいぐるみを抱くと緊張がほぐれて」

P「さっき部屋で見かけたけど、いつも部屋にあるのとは違う少し大きめの?」

美穂「はい。それが汚れていたので洗うと言われたんです」

P「だから違う香りがしたのか」

美穂「私、いつも使ってる洗剤の香りじゃないと落ち着かなくて……だからいじめとかじゃなくて」

P「やめてと言った?」

美穂「言いました……でもなかなか強引で……」

P「なら立派ないじめだよ」

美穂「私のプロデューサーくんが……」

P「臭いが抜けたらいつも使ってる洗剤を買いにいこう。どこに売ってる?」

美穂「寮の部屋にあります」

P「どうせなら新しく買おう」

美穂「残ったのがもったいない……」

P「オレの部屋で使うから大丈夫。ちょうど詰め替えようと思ってたしさ」

美穂「それなら……あれ?」

P「どうしたの?」

美穂「あ、いえなんでも……」

P「そうか」

美穂「ところでひとつ質問が……」

P「珍しいね。何?」

美穂「洗剤って他社製品と混ぜると危ないですよね?」

P「場合によっては塩素ガスが発生するから絶対にやらないで」

美穂「そうですよね…………あれ?」

P「タオルキツくない?」

美穂「あ、大丈夫です」

P「よかった」

美穂「バスタオルしたまま湯船につかるのってなかなか慣れません……」

P「テレビではよく見る光景だけどマナー違反だからやらないように仕付けるところが多いね」

美穂「私もよくクマのぬいぐるみをお風呂に連れていって怒られたなぁ」

P「昔から好きなのか?」

美穂「はい。いつかテディベアが欲しいなって思ってます」

P「なかなか女の子らしい感性だね」

美穂「子どもっぽいですか?」

P「いや、全然」

小梅「爪長い……」

杏「長いなんてレベルじゃなくない?」

小梅「こういうの……見てると…………肉まん食べたくなる……」

杏「あー、ぽいね」

小梅「あ、返り血……ス、スゴ……」

杏「どうでもいいけどこれさ、三半規管弱い人酔うね。真下に落下して次真横だもん」

小梅「あ……トラップ」

杏「トラップがトラップしてるのも珍しいよね。またわざと引っ掛かるの?」

小梅「うん……あ」

杏「豪快に首飛んだね」

小梅「スパーン、ふふ」

杏「杏も頭が二つあったらもう片方にすべて任せて杏は寝てたい」

小梅「に、二人羽織……する?」

杏「頭の位置がずれるよ」

小梅「なら……横に」

杏「パス。密着するの無理」

小梅「あ、ご、ごめん……」

杏「別に小梅ちゃんが嫌いなわけじゃないよ……こっちこそごめん」

小梅「電気椅子、発見……」

杏「ドMもいいとこだね」

小梅「どれ上げよう……体力は……少ない方が……あっ……でも」

杏「それにしても見えない敵作った人は根性ねじ曲がってるよね」

小梅「これで……いいや…………セーブ」

杏「それにしてもこのメガネはどれだけメガネがないと困るんだろう。というかコンタクトにすればいいのに」

小梅「人の命より……メガネ……なかなかの鬼畜……だね」

杏「メガネキチガイじゃん。それと猛犬注意なんてレベルじゃない。それにしてもこれ一切規制なくない?」

小梅「海外版だから……」

杏「エロは規制するのにこういうのは規制しないって不思議」

小梅「エッチなのは……いけないよ……? まぁ、それだけ人の肉に……飢えてる……のかな?」

杏「ナカまでくっきり見えてるさすがプレイなステーション4。あ、貞子」

小梅「こういうの……なんて、い、言ったっけ」

杏「ジョジョ立ち?」

小梅「あ、それ」

杏「ジョジョ立ちで瞬間移動する血に飢えた貞子……詰め込みすぎ」

小梅「うーん……」

杏「どうしたの?」

小梅「この曲……なんだろうなって」

杏「ごめん、杏クラシックはよくわからない」

P「ドビュッシー。曲名は月の光」

杏「おっ、おぉう、びっくりした」

小梅「お、お帰り」

P「驚かせてごめん。そこと最初の解体所でかかってた曲のことだよね?」

小梅「う、うん」

P「それなら今さっき言ったのだよ」

小梅「あ、美優さんの様子……どうだった?」

P「ソファーでぐったりしてる三船さんならトイレに連れていったよ。なぜか我慢してたがこういうことだったのか」

小梅「は、反省……」

P「今は……そこから先息つく暇ない怒濤の展開だから今日はそこまでにしといた方がいい」

小梅「そうなの……?」

P「緩急なくだから疲れるんだ。一旦そこでやめておいて明日続きやれば疲れが違うし、感想も違ってくる」

小梅「じゃ……そうする……100%楽しみたい……から」

杏「それにしてもわざわざ死ぬのはどうかと思う。余計に時間かかるじゃん」

小梅「ホラーとスプラッタを……た、楽しむためなら……えんやこら……?」

杏「しかもこれ死ぬまでがなかなか長い」

小梅「馬乗りに……なられたら怖い……かな?」

杏「怖いなんてもんじゃない」

小梅「あっ……ご、ごめんなさい」

杏「はは……」

小梅「…………」

P「何?」

小梅「あ、えっと……お邪魔虫かな、って」

P「特には」

小梅「ほら、あの事……」

P「今は聞かないよ」

杏「?」

小梅「あ、それなら……も、もう少し……いても…………いい?」

P「オレは構わないよ。杏は?」

杏「杏もいいよ」

小梅「あ、ありがとう」

P「それどうだった?」

小梅「た、楽しかった……えっと……エビル……うっ、う……ウィシン?」

P「ウィジン。正確に言うならウィズィン。THの口の形で喉の奥でIを発音する。THでッシュって抜けるからそのすぐあとにIの発音でも……やっぱりウィジンが言いやすいし近いかな」

小梅「な、なるほど」

杏「英語の知識も謎だね」

小梅「そういえば……貞子さん……」

P「四本腕の?」

小梅「うん……あれって最後…………血吸ってる?」

P「頭の角度が微妙なところだけどそうだろうね」

小梅「うん、何か…………おかしかった」

P「個人的には作り直したと見てる。さすがに脳を食べるのはダメだって判断したんじゃないかな。ストーリーでガッツリ脳出てるけど」

小梅「そういうゾンビ……いた」

P「設定上喉が渇いてるから飲むでもおかしくないけどね」

小梅「そう……なの?」

P「進めていけばわかる。あ、英語でわからないところあるだろうからわからないところは言ってね」

小梅「う、うん……ちょこっとだけならわかるから……だいじょぶ」

P「テープで聞き取りにくいし専門用語なんかも出てくる」

小梅「専門用語?」

P「番号で言われるから問題はないと思うけど念のためね」

小梅「眠くなりそう……」

P「満足すると思うよ。なにせ脳が剥き出しで瞬きもしてるし」

小梅「ちょっと楽しみ……」

P「規制かかってないから高画質で楽しめるよ」

杏「やっぱ規制かかってない方がいいの?」

小梅「わ、私は……人の内臓見たいって……タイプじゃないし……そういうのはしかたないけど…………どうなのかな…………シーンごとないのは……ちょっと……残念かな──」

小梅「プゥ……スゥ」

P「…………」

杏「……寝ちゃったね」

P「寝たな」

杏「中学生と添い寝ってヤバイよね」

P「しがみつかれるのは添い寝と言うのかな」

杏「お腹をトントン叩くのは母親なら絵になるけど、Pさんだから変態だよ、変態」

P「ベッドの縁に頭乗っけて顔をじっと見てる人も大概だよね」

杏「杏は女子だからセーフ」

P「そうだね」

杏「それで杏に聞きたいことってなに? さっきなにか聞きたがってたよね」

P「五十嵐響子からどんないじめ受けた」

杏「まっずい飴を舐めさせられた。略してムリヤリ舐めさせられた」

P「そうか」

杏「あれは口内レイプ、いや舌レイプだね。間違いない」

P「それいつの話?」

杏「ちょっと前の話。その後からだっけか。きらりが『女の子を泣かせる杏ちゃんはオシオキにぃー』ってのし掛かってきたのは……そして見事長期入院」

P「杏……」

杏「ごめん……思い出したら怖くなっちゃった……」

P「ほら、飴」

杏「今は違う甘いもの舐めたいかな。でももらっておこう」

P「どう?」

杏「杏を喜ばす天才だね」

P「それはよかった」

杏「少しだけだけどね……良くなってきてはいるんだ。小梅ちゃんくらいなら近くにいても怖くない」

P「それはよかった」

杏「ホラーもの見られるの今日は私くらいしかいなかったしさ」

P「三船さんは頑張ったと思うよ」

杏「早々にダウンしてたけどね。まぁ、肉が見えた肉まんみたいに脳ミソ露出してる頭部見たらああもなるだろうけどさ」

P「頼まれたら断りきれないところあるからね」

杏「だね。ンエ」

P「どうした。ペッしたいのか?」

杏「違うって。この飴があまりにも美味しいから一緒にどうかなって思ってさ」

P「それが最後の一個だ」

杏「ふーん。ならちょうどいいじゃん。一緒に舐めよ──」

P「…………」

藍子「なにしてるんですか?」

P「こんばんは。ここに来るなんて珍しい。なにかあった?」

藍子「美優さんが青い顔して帰ってきたのでなにがあったのか気になりまして。何をしたんですか?」

P「オレはなにもしてない。ただ、小梅がホラーのスプラッタシーンを見せてしまったらしい」

藍子「小梅ちゃんが……?」

P「そう」

藍子「…………」

P「三船さんも頼まれると断れない人だからさ。どっちが悪いってことでもない」

藍子「たしかにそうですが……」

P「深く考えない。夜に考え事すると気が滅入るよ」

藍子「……それもそうですね。私に考え事は似合いませんもんね」

P「そこまでは言ってない。ちょうどいいから聞くけどさ」

藍子「はい」

P「五十嵐響子にどんないじめされた?」

藍子「いじめですか? そんなのされたこと」

P「あるはずだよ」

藍子「…………」

P「言いづらいこと?」

藍子「そうではないですが告げ口するみたいで嫌な気持ちになります」

P「吐き出すと楽になるよ」

藍子「……話すと後戻り出来なくなりそうなんです」

P「後戻り?」

藍子「だからといってあなたを信じるわけではありません」

P「あぁ、そういうことか」

藍子「…………」

P「…………」

藍子「……少し前に」

P「うん」

藍子「少し前にオススメのカフェを教えてほしいって言われたんです。みんなでお茶が飲めるところがいいと」

P「それで?」

藍子「教えたまではいいんです。そこからが問題だったんです」

P「美味しくないとか言われた?」

藍子「いえ、どこで見られたのかわかりませんが何故だか私のお気に入りのところが荒らさせたんです」

P「荒らされた?」

藍子「私にも一人でゆっくりしたいときがあります。そんなときに利用するカフェのことが響子ちゃんに知られて、事務所のみんなに広まってしまい……」

P「それで落ち着かなくなったのか」

藍子「落ち着いて利用したいから広めないでって言ったんですけど聞いてくれなくて……」

P「なるほどね」

藍子「……ただそれだけです」

P「新しく見つけられた?」

藍子「いえ……」

P「そうか」

藍子「今は私の部屋がありますから」

P「そうだね」

藍子「そういえばまゆちゃんが呼んでました」

P「わかった。ありがとう」

藍子「いえ」

P「新しいお茶買ってきたからよかったら持っていって」

藍子「……ありがとうございます」

P「…………」

藍子「…………」

P「頑張って」

藍子「がんばってます」

P「そうだね。まゆがどこにいるか知ってる?」

藍子「……私と一緒に出てきたのでもう部屋に戻ってると思います」

P「ありがとう」

藍子「それじゃあ……」

P「それじゃ」

クラリス「…………」

P「廊下で何をしてるんですか?」

クラリス「こんばんは。少しまゆさんと話していたのです」

P「あまり遅くならないでくださいね」

クラリス「もう帰るところです」

P「送ります。話したいこともありますから」

クラリス「私にですか?」

P「少し冷えますね」

クラリス「えぇ、少し不思議な感覚です」

P「不思議な感覚?」

クラリス「えぇ。というのもこの季節はホームレスへの炊き出しで寒さを感じてる暇がありません」

P「そういうことですか。たしかにそうかもしれませんね」

クラリス「寒さという人間らしい感覚を味わえるなど私には贅沢です」

P「たまにはいいんじゃないですか」

クラリス「…………」

P「どうしました?」

クラリス「炊き出しに来る皆様のことを考えていたのです」

P「ホームレスのことですか」

クラリス「暗い顔の方もおりますが、皆様笑顔で炊き出しに来るのに毎回驚かされています。もちろん、食事ができることへの喜びなのでしょうが生き生きとしており、力をもらいます」

P「どんな理由であれ笑顔はいいものですからね」

クラリス「……はい。それで私に聞きたいことというのは?」

P「五十嵐響子にどんないじめを受けました?」

クラリス「いじめではありませんがひどい勘違いをされてしまい困りました」

P「勘違い?」

クラリス「これも周囲の間違った知識に巻き込まれただけかもしれません」

P「勘違いというのは?」

クラリス「教会が信仰してる宗教のことです。宗派というのでしょうか。共通している部分はありますが少し違うので」

P「なるほど」

クラリス「それにいじわるといえばこれよりあれの方が当てはまります」

P「抽象的ですね。言いにくいことですか」

クラリス「……多少は」

P「なるほど。なんですか?」

クラリス「教会で飼育している動物のことです」

P「いますね」

クラリス「その動物の事を子どもたちの前で聞かれて、困らされてしまいました。その事自体は良いのですが、子どもたちの目がとても痛々しくて……すみません」

P「なるほど……」

クラリス「それと私は嘘をつきました」

P「嘘を?」

クラリス「子どもたちにその動物を食べるのかと聞かれ、つい肉は食べないと言ってしまったのです」

P「先日、美味しそうにお肉食べてましたよね」

クラリス「……肉汁たっぷりでした」

P「それはよかった」

クラリス「部屋に着きました。送っていただきありがとうございます」

P「それでは」

クラリス「おやすみなさい」

P「おやすみなさい」

クラリス「…………」

P「子供は鋭いですからわかってる子はわかってますよ」

クラリス「はい?」

P「……おやすみなさい」

まゆ「……うふ♪」

P「部屋で待っててくれてよかったのに。急ぎか?」

まゆ「くっさぁい♪ 去り際に励ますなんてとってもくさぁい」

P「部屋に戻るぞ」

まゆ「はぁーい」

まゆ「──お風呂っていいですよねぇ。フゥ」

P「そうだな」

まゆ「きれいになったまゆはどうですかぁ? スベスベしてます?」

P「お湯に入ってるからいまいちわからない」

まゆ「ほぉらどうですかぁ? パフパフですよ、パフパフ」

P「その単語久しぶりに聞いたな」

まゆ「考え事もいいですけどたまにはまゆの相手をしてくださいよぅ」

P「後で相手するよ」

まゆ「んもぅ、またそうやって断るえ?」

P「今はそっちの用事を終わらせよう。何の用だった?」

まゆ「まゆは準備万端ですよぅ。ほらぁ、もうこんなに♪」

P「そういう用事で捜してたの?」

まゆ「あ、その事ですか。それならもういいです。もう他の人としちゃいましたでしょう?」

P「何の事だ」

まゆ「いつもやることですよぅ。女の子のナカの中まで見ちゃうアレ♪」

P「プロフィールのお復習ならまだ」

まゆ「それじゃやりましょう」

P「近い」

まゆ「年齢は15歳で身長154cm、体重43kg、BMIは18.13のキュートな押し掛け女房アイドル。ちなみに旦那さんはいろんな人♪」

P「嫌みな言い方だな」

まゆ「スリーサイズはおっぱいが81センっチ、ウエスト58cm、ヒップ80cm。これは少し前の数値です」

P「今胸に手をもっていかせた意味は?」

まゆ「新しいものだと81の57の80になってます。意味ですか? まゆよりおっぱい大きいですし、スタイルもいいですが触れぬおっぱいより触れるおっぱいが良いというまゆなりのアピールです。お嫌いですか?」

P「そんなことしなくても心傾かない」

まゆ「……本当ですか? 後でテストします。誕生日は8月10日の獅子座。血液型はAB型。右利き。鳥取県出身で趣味は家事全般これを総合すると肉食系二重人格押し掛け女房アイドル、鳥取砂丘を添えてですね♪」

P「料理みたいだな。それにしても憎しみがこもってるな」

まゆ「肉食系だけに?」

P「寒いな」

まゆ「それはいけません。まゆの体で暖めてあげます♪」

P「お湯で大丈夫だ」

まゆ「それー♪」

P「水で埋めるな」

まゆ「これからまゆの愛と二人の熱ぅい体液でポカポカになりますから!」

P「風邪ひく」

まゆ「そうしたら一日中まゆを見ててくれますか?」

P「その前に彼が放っておかないだろうね」

まゆ「二人での取り合いにはならないです。だってまゆは……」

P「そこまでにしよう。風邪をひいたら本当に大変だ」

まゆ「じゃあ今日はギュッてして眠りましょう♪」

P「……それで満足するなら」

まゆ「満足させてみせます♪」

五十嵐響子「おはようございます!」

五十嵐P「おう、おはよう。今日も元気だな!」

響子「元気な挨拶は活力になりますから!」

五十嵐P「おう、そうだな!」

響子「はい、これ!」

五十嵐P「おっ、弁当いつも悪いな」

響子「いえいえ、こんなのどうってことないです。1人分も2人分も変わりませんから♪」

五十嵐P「今日はなんだぁ?」

響子「ストップ! お昼までの楽しみにしててください!」

五十嵐P「そう言われるとますます気になる」

響子「ダメです。見たら没収します」

五十嵐P「OKOKわかったよ」

響子「わかればよろしい。あっ、ネクタイ曲がってます」

五十嵐P「え? マジか」

響子「動かないでくださいね…………はい直りました」

五十嵐P「いつも悪いな」

響子「いいえぇ、このくらいいつものことですから♪」

五十嵐P「ハハハ、参ったなこりゃ」

響子「そういえばメアリーちゃんのシッターさん知りませんか?」

五十嵐P「メアリーのシッター? シッターってプロデューサー兼任してるあの外国人の?」

響子「はい。この前部屋に忘れ物して」

五十嵐P「部屋に?」

響子「このゴムなんですけどね、少し高級そうだから届けないとなんて思いまして」

五十嵐P「なんだそういうことか。それならオレが本人に届けるよ」

響子「シッターさんの方が良くないですか?」

五十嵐P「メアリーくらいの年の子はデリケートだから本人に渡した方がいい。響子は忙しいだろ?」

響子「たしかにそうですけど……」

五十嵐P「それともオレじゃ不服なのか?」

響子「いえいえ、そんなことありません。プロデューサーは頼りになります!」

五十嵐P「この前メアリーの担当プロデューサーに会って予定聞いたから今はテレビ局だ。用事もあるしついでに渡してくる」

響子「そうなんですか。それではお願いします」

五十嵐P「おう! さて、さっそく今日の仕事なんだがな──」

まゆ「うふっ、うふふ、うふふふふふふふ」

蘭子「悦びに満ち溢れる乙女の微笑」

みちる「朝から機嫌が良いっぽいでふぬ、何かフゴフゴッゴゴ」

晴「ウマイもんでも食ったんじゃね?」

みちる「それだ!」

まゆ「濃くてジューシィ。うふっ、うふふ♪」

みく「スキありぃ! みちるチャンと晴チャンのベーコンもらいにゃ!」

みちる「あッ!」

晴「テメッ……! なにしやがる!」

みく「残してたからいらないのかと思ったにゃ。残してるのが悪いにゃっ」

晴「大人のやることかよ!」

奈緒「……大人だからやるんだろ」

晴「あ? なんか言ったか?」

奈緒「何も」

みく「食事中によそ見をしてるのが悪いにゃ」

蘭子「神判や如何に!」

P「よそ見してるのも悪い」

みく「ほーら、みくの言った通りにゃ! 反省するにゃ……"のも"って言った?」

P「前川さんもいきなり取るのはいけない。まずは警告しなきゃ」

蘭子「布告なき戦争は略奪なり」

晴「ちっくしょーお……オレのベーコン」

奈緒「ステーキじゃなくてよかったな」

晴「あん?」

奈緒「なんでもない」

晴「ハァー……油がのってカリカリのベーコン楽しみだったのに……」

奈緒「……ん」

晴「……なんだこれ」

奈緒「あげる」

晴「えっ、マジ?」

奈緒「ほら、そのなんだ、そのー……ダイエット中だから」

晴「やせる必要なくね?」

奈緒「いらないならみちるちゃんに回す」

みちる「ヒャッホーイ!」

晴「いるよ、いるいる! その……なんだ……あ、ありがとう」

奈緒「お、おう」

みく「初々しいカップルか!?」

みちる「いいなぁ……」

美優「よかったら私の分食べてくれる?」

みちる「ふぁっ!?」

晴「そういや来たときから気分悪そうにしてるな。てか部屋ちがくね?」

美優「藍子ちゃんが"体調"を崩しちゃって。その人の前で食べるのはちょっと悪いと思ってここに来たの。それに冷蔵庫には私が買った食材入ってないの」

晴「体調不良なら食わなきゃまずくね?」

美優「そういうことじゃなくて……いいわ」

晴「よくわかんね」

美優「晴ちゃんもいつかわかる日が来るわ」

晴「?」

P「今はまだそんなに経験してないでしょうから」

美優「そういうのはめっです」

P「すみません」

晴「あ、わかった。悪阻ってやつだな!」

みく「にゃっ!?」

蘭子「ぬぅっ!?」

みちる「ふわっ!?」

奈緒「ブフッ!!」

P「…………」

晴「こういうときどうすんだっけ? 赤飯炊くんか?」

P「それは違う」

みく「見損なったにゃPチャン!」

蘭子「我の神眼が曇ったというのか!?」

美優「違うのあのね……」

みく「一大スキャンダルにゃ!」

美優「みんな、は、話を聞いてちょうだい……! うぷっ、思い出したら……また……」

小梅「あ、あのね!」

みちる「おっはようございます小梅チャング」

小梅「あ……おはっよう……あ、そうじゃなくて……その」

みく「心の傷は深いにゃ! どう責任取る気でい……」

輝子「シャラァァァァァァァァップビッチ!」

みく「にゃっ!? みくは雌犬じゃないにゃ!」

輝子「さっきから人の話を聞いてないやつは口を開くなぁぁぁぁ! アソコから手ぇ突っ込んでノド奥ゴロゴロ鳴かせてやろぉぉぉぉかぁぁぁぁ……うん、これはない」

小梅「あ、あのね、私がむりやり……」

晴「お前女だろ? 女同士じゃできないって。もしかして付いてるとか?」

奈緒「貞子かっての……」

輝子「静かになったな?」

みく「開いた口が塞がらないにゃ」

小梅「あのね、じ、実は私が昨日──」


P「それじゃあ事務所の方を頼む」

まゆ「わかりました。さ、行きましょう」

輝子「た、太陽がまぶしい……鬱だ」

みく「サングラスかける?」

蘭子「日傘もあるぞよ!」

クラリス「あの……」

みく「なんですか?」

クラリス「失礼ですがどちら様でしょうか」

みく「そういう冗談は面白くないよ?」

晴「みくどこ行った?」

みく「はいはい。ついてこないと置いてくよ」

藍子「行きましょうクラリスさん」

クラリス「あ、はい。本当にあの方は誰なのでしょう……」

P「さて、こっちはこっちで動こう」

藍子「……はい」

小梅「オ、オー」

杏「ヴォー……」

美穂「フ、フラフラしてるよ杏ちゃん……!」

みちる「具体的には何するか決まってるんですか?」

P「どうでも動けるように準備する。その為にまずは買い物からだ」

美優「あ、それなら私がやります」

P「小日向さんのトレーニングも兼ねてですので家でまゆ達からの連絡を待っててください」

美優「わかりました」

P「何か買いたいものがあったら連絡してください」

藍子「三船さんがここにいるなら私もこっちに残ります」

P「わかった。三船さんのサポートをしてあげて」

藍子「言われなくてもそうします」

美優「藍子ちゃん……」

奏「私はどっちにいけばいいのかしら?」

P「買い物の手伝いをして」

ほたる「荷物が増えるといけないので私はお家にいます」

P「白菊さんはこっち」

ほたる「ふあっ!?」

奈緒「あたしもこっちに参加させてもらう。いいよな?」

P「構わないよ」

奏「私はどうしたら?」

P「どっちでも」

奏「それなら買い物についていくわ。知りたいことがあるから」

杏「殺人鬼が彷徨いてるかもしれないんだ! 杏は部屋に籠るぞ!」

小梅「あ、それなら……私も……」

美穂「あ、幸子ちゃんは……」

P「やってもらっていることがあるから部屋にいる」

美穂「やってもらってること?」

P「負担にはならない。さて、整理しよう。買い物にいくのはオレと小日向さんと白菊さんと神谷さんと速水さん」

美優「私と一緒にこっちに残るのが私と藍子ちゃんと小梅ちゃん、それに杏ちゃんにみちるちゃんと幸子ちゃん」

P「それでは動きましょう」

杏「ぐぅ……」

小梅「起きて……」

奏「これは心配ね──」

まゆ「おはようございまぁす」

五十嵐P「おう、おはよう。あれ、午後からじゃなかった? 佐久間Pまだ来てないよ?」

まゆ「愛する人のために色々とすることがあってぇ、うふ」

五十嵐P「あはは、相変わらずスゴいな。お?」

響子「おはようございます」

五十嵐P「響子も早いな」

響子「いつもこのくらいの時間ですよ? むしろ早いのはプロデューサーの方です」

五十嵐P「今日は早く目が覚めちゃってな」

まゆ「おはよう響子ちゃん」

響子「あ、おはようございます。そうだ、プロデューサー……はい、これどうぞ!」

五十嵐P「いつも悪いな」

響子「いえいえ、それじゃ私はデスクの掃除してきます♪」

五十嵐P「おう、いつもすまないな。みんな感謝してるぞ」

響子「そんな、当たり前のことをしてるだけですって」

五十嵐P「ハハハ」

響子「行ってきまーす」

まゆ「響子ちゃん元気ですねぇ」

五十嵐P「おかげで元気をもらってるよ」

まゆ「そうなんですかぁ。まゆも後でお弁当渡そうっと♪」

五十嵐P「佐久間Pに?」

まゆ「秘密です♪」

五十嵐P「どんな弁当か試しに聞いていい?」

まゆ「んー、どうしましょう」

五十嵐P「頼む!」

まゆ「そんなに気になります?」

五十嵐P「気にならない?」

まゆ「まったく。なにか悩み事ですか?」

五十嵐P「実は──」

みく「グッモーニャーング!」

五十嵐P「おっ、元気だな。もう昼だけど」

みく「みくはいつでも元気いっぱいだよ!」

五十嵐P「さすがネコキャラ」

みく「キャラじゃなく猫にゃ」

クラリス「おはようございます。みくさん、いつの間に来てたのですか」

みく「ずっと一緒だったよね?」

クラリス「はい? そんな覚えは……」

五十嵐P「みくの頭を見てどうしたんですか?」

クラリス「頭にお花……あ」

みく「え、ひどくない?」

クラリス「す、すみません」

五十嵐P「二人とも面白い」

みく「笑い事じゃないにゃ。これは死活問題にゃ」

クラリス「笑うことはとても良いことなのですよ?」

みく「笑われたみくはたまったもんじゃないにゃー!」

五十嵐P「プッ、アハハハハ、あ、いやご、ごめん、でも……プハハ」

みく「橋が転がってもおかしいお年頃でもないでしょ! 笑いすぎにゃ!」

クラリス「久しぶりにお笑いになったといった感じです」

五十嵐P「あ、わかっちゃいます? 実は──」

晴「ったく、たまんねぇよ」

響子「おはよう晴ちゃん」

晴「ン? あぁ、はよ」

響子「機嫌悪いけどどうかしたの?」

晴「聞いてくれよ。プロデューサーったらたかが転んだだけで大袈裟なんだよ。サッカーで転ぶなんて珍しくもなんともないっつーの!」

響子「それは心配するよ」

晴「大げさだっつーの! オレに静かにしろだなんて殺す気かっての」

響子「試しに静かにしてみたら?」

晴「うえっ、殺す気かよ。それにうるささならそこには負ける」

響子「そこ? 誰もいな」

輝子「ファイヤー! バァァァァァニィィィィン! ヒャハハッ、ライブだ……! ライブをするぜェェ!」

響子「きゃっ!」

晴「相変わらずうっさいなぁもう」

輝子「過激にファイヤァァァ! これでよし……フフフ。これで次のライブパフォーマンスは決まった、フフ」

晴「朝からあんな感じでヤになっちまう」

輝子「ヘイ、そこのオジョーちゃんもキノコらないかァァァい……フヒ」

晴「だから嫌だっていってんだろ」

響子「服装とキャラがチグハグ」

晴「な。仕事まで時間あるしなんかねぇかな」

響子「事務所のマガジンラックになにかあるから、それ読んで時間を潰したら?」

晴「うげ、勘弁してくれよ。あんなキラキラした雑誌鳥肌がたっちまう」

響子「そう? 他の人との話の種になるよ」

晴「アクセサリーとかよくわかんねえ」

響子「私がいつも読んでるの読む?」

晴「だから」

輝子「か、カッコいいのは、あ、あるか?」

響子「V系は範囲外ですけどある……かな」

晴「V系? なんだそれ」

響子「そういうのが好きな子から教わったの。輝子ちゃんが好きなのはそういうんだって。私はあまり……ね」

晴「ふーん──」

蘭子「我の言霊に耐えられる者などいない。故に孤独であり孤高である。影ながら歴史を記す。それが魔王の責務」

蘭子「あ、間違えた……消さなきゃ」

みく「おっ疲れにゃー♪」

蘭子「闇に飲まれよ!」

みく「何してたの?」

蘭子「刹那の時を書に封印していた」

みく「これから響子チャンが来ると思うから閉まっておいた方がいいにゃ」

蘭子「小事は気にせぬ」

みく「それじゃみくは先に喫茶店にいってるにゃ」

蘭子「うむ……」

みく「…………」

蘭子「…………」

みく「……やっぱり不安?」

蘭子「このような小事などラグナロクを待つ刹那の暇潰しにもならぬ」

みく「ならいいけど。あっ、そうだ。この猫耳貸してあげる」

蘭子「魔王にそのようなものは不要」

みく「いいからいいから」

蘭子「と、時よ止まれ!」

みく「うん、似合うにゃ。なにか一言よろしく!」

蘭子「闇に飲まれにゃ!」

みく「うんうん、その意気♪」

蘭子「我は鋼の心臓を持つ魔王ぞ」

みく「魔王様にも部下は必要でしょ? まぁ、みくは自由気ままにやるけどね」

蘭子「ふん……!」

みく「大丈夫。私がついてる」

蘭子「……真の姿は闇夜の霧の中」

みく「ん、このメガネがどうかした?」

蘭子「闇の鐘を鳴らせ!」

みく「先にいってるね」

響子「何を話してるんですか?」

みく「お疲れー」

蘭子「ッ!!」

響子「あ、お疲れ様です」

蘭子「闇に飲まれよ!」

響子「相変わらずなにいってるのかわからない
けど、蘭子ちゃんもお疲れさま。それより聞いて」

蘭子「よしなに」

響子「この前学校でお弁当食べてたらどうやって作るか質問されちゃって」

蘭子「知識は神から授かるものでなく求めるもの……か」

響子「蘭子ちゃんはそういうことある?」

蘭子「全ての知識は我の中に。ソーサラーになど興味はない──」

奈緒「大丈夫か?」

ほたる「は、はい……虫が顔に突っ込んできただけですし……」

P「短い距離だから階段でいこう」

美穂「ちゃ、ちゃんと手繋いでてくださいね……!」

奏「生まれたての小鹿みたい」

P「店についたら喫茶店に席をとって行動しよう」

奈緒「別行動じゃいけないのか?」

P「集合場所を決めておけば何かあったときに楽になる」

奏「目標を失った私への当て付け?」

P「そうじゃない」

ほたる「ナビアプリってあるじゃないですか。目的地まで案内してくれる。あれでよく迷子になるんですよ。ルートから外れましたって……歩くの遅いんですかね……ハハッ」

奈緒「あたしがついてるから大丈夫だって」

ほたる「だといいんですけど……私の不幸力は凄まじいですよ?」

奈緒「後ろ向きに自信満々だな……」

ほたる「あ、ごめんなさい……」

奏「そろそろ着くわ」

P「席も取れたことだし、別れて行動しよう」

奈緒「あたしとほたるが先にいく。いい?」

P「わかった。オレはここで三船さんからの連絡を待つ」

奈緒「行こうほたるちゃん」

ほたる「あ、はい」

P「いってらっしゃい」

奈緒「ど、どこか行きたいとこ、あ、あるか?」

ほたる「と、特には……」

奈緒「そ、そうか……」

ほたる「ハ、ハイ……」

奈緒「…………」

ほたる「…………」

奈緒「適当に歩こうか」

ほたる「そ、そうですね」

奈緒「…………」

ほたる「…………あ、あんなところに噴水があります」

奈緒「お、おう寄ってみよう」

ほたる「そ、そうですね」

奈緒「近くによると結構……大きいな」

ほたる「そうですね、おっきいです」

奈緒「こう、なんていうかスゴいな」

ほたる「…………」

奈緒「ほたるちゃん……?」

ほたる「えっ、あっ、そうですね」

奈緒「考え事?」

ほたる「あ、はい。少しだけしてました」

奈緒「どんなこと?」

ほたる「えっと、それは……」

奈緒「悪いこと?」

ほたる「あ、あそこに犬いますよね?」

奈緒「い……るな。デカッ! あ、えと、犬好きなのか?」

ほたる「あとその近くに男の子がいますよね」

奈緒「10歳くらいの男の子のこと?」

ほたる「はい、見ててください。あの男の子、数分もしないうちにあの犬の尻尾踏みます」

奈緒「……そんなバカな」

ほたる「そして私の方に犬が来て襲われるんです。逃げようとする私は躓いて池にボチャン」

奈緒「いくらなんでもそんなことは……」

ほたる「私にはわかるんです。そのあと風邪ひいて看病されちゃうんです。あぁ、不運だなぁ」

奈緒「ならここから離れよう」

ほたる「ムダです……どこにいっても不運な目に遭うんです。この前だって雨宿りしてたら、カラスにフンをかけられました……」

奈緒「それは……」

ほたる「他にも、お花見していたら毛虫さんがお弁当に落ちてきたり、かわいい服見付けたらサイズがなかったり……」

奈緒「……行こう」

ほたる「あ、ちょっと奈緒さん……!」

奈緒「ここまでくれば大丈夫だろう。ペット連れ込み禁止だし」

ほたる「ハァハァ、なっ奈緒さん、早すぎ、っます」

奈緒「わ、悪い。なんだかいたたまれなくなって」

ほたる「ウジウジしてちゃダメ……ですよね」

奈緒「ホントに悪い。なんか友達と被って……」

ほたる「お友達……ですか」

奈緒「そ。よく勘違いされるやつなんだけどさ、根は悪くないんだ。むしろいい方」

ほたる「そうなんですか。ちょっとうらやましいかも」

奈緒「まぁ、ここんとこ連絡とれないんだけどな」

ほたる「えっ!? そんなことって」

奈緒「あたしのせいなのかもしれない、ううんあたしのせいだ」

ほたる「何があったんですか?」

奈緒「悩んでたんだけどあたしが無視したから」

ほたる「えっ?」

奈緒「あたしの一方的な勘違いだって自分で決めつけてた。けど実際は悩みがあった。あたしはそれから逃げた。だからもうそんなことをしたくない……だからさっきみたいな態度とったんだ。ごめん」

ほたる「そうだったんですか……」

奈緒「言い訳にもならないよな……」

ほたる「そんなことないです。だって奈緒さんの手から離さないぞって気持ちが伝わってきました」

奈緒「痛かったよな。ほんとごめん」

ほたる「そ、そんな、頭をあげてください」

奈緒「どうしたら許してくれる?」

ほたる「どうしたらってそんな……あ。そ、そうだもっと奈緒さんのこと知りたいです……!」

奈緒「あ、あたしのことぉ……!?」
ほたる「私、奈緒さんと話したことないですし、これを機に知りたい!と思って……!」

奈緒「わ、わかった、てか近い!」

ほたる「えっ? あ、すみません!」

奈緒「あ、あたしのことなんて知ってもなんの得も……」

ほたる「あ、あー引っ張られた腕が痛いなー、肩抜けそうだったなあー」

奈緒「なっ、あっう……」

ほたる「奈緒さんのこと知りたいなー痛いなー」

奈緒「…………」

ほたる「な、なんて言ったりしてみちゃったりして……アハハ」

奈緒「……わかった」

ほたる「え?」

奈緒「わかったけど……その……こ……後悔したり……ひ、ひいたりすんなよ……」

ほたる「えっ、あ、はい──」

ほたる「えっ、それでどうなったんですか!」

奈緒「見事に大炎上」

ほたる「大炎上……?」

奈緒「ブログや作品に苦情がものすごく来ること。どんな騒動か詳しく聞けなかったけど、比奈さんから聞いた話だと少し前にも似た騒動があったんだって。結局デマだったけどそれはもうお祭り騒ぎだったってさ」

ほたる「人が亡くなるシーンで歓声はさすがに……」

奈緒「漫画も一字違えば全く意味が変わるものもあるから気が抜けないってさ」

ほたる「そうなんですか……」

奈緒「あ、ごめん。陰気な話しちゃった」

ほたる「いえ……私の他にも不運な人がいるとわかって気が楽になりました」

奈緒「少女漫画が原作のアニメも観てみる?」

ほたる「えっ、あるんですか?」

奈緒「ある。っていっても恋愛ものはないけど」

ほたる「でもよくわかりません……」

奈緒「例えば……あ」

ほたる「どうかしました?」

奈緒「今日単行本の発売日だった。すっかり忘れてた」

ほたる「人気なんですか?」

奈緒「そこそこかな。ちょっと本屋によっていい?」

ほたる「構いません」

奈緒「ありがとう。さっそく行ってくる」

ほたる「あ、私もいきます。見たい本があるので」

奈緒「なら行こう」

ほたる「はい」

奈緒「…………」

ほたる「…………」

奈緒「なんかごめん」

ほたる「い、いえ……しかたないですよ。ショッピングモールにこんなところがあるなんて予想つきませんし」

奈緒「なんで普通の本屋がないんだよ……」

ほたる「あ、でも私の探してる本もあるかもしれませんし」

奈緒「いやない。絶対にない。これだけは言える。絶っっっっっっ対にない」

ほたる「そんな思い切り否定しなくてもぉ……」

奈緒「あっ! そ、そんなつもりじゃないんだ……! ただ、"普通"の小説はないって思っただけで他意はないんだ!」

ほたる「入ってみなきゃわからな……」

奈緒「さ、魚臭いだろうけど入りたい……?」

ほたる「お、お魚の臭いくらいへっちゃらです……! それにそういう臭いはPさんので慣れ……っ!」

奈緒「な、なにいってんだ!? とにかくここで待ってるのが最善の」

ほたる「へっちゃらです…………ッ!!」

奈緒「……どうだった」

ほたる「Pさんのより強烈でした! えっ、な、なんで……!?」

奈緒「──その……」

ほたる「あの……すみません」

奈緒「あ、いやこっちこそごめん。なんか変なテンションになってた……」

ほたる「なんだかものすごく失礼なことを口走ってた気がします……」

奈緒「あたしも……えっとそれじゃ……えー、買ってくる」

ほたる「あ、行ってらっしゃい。か、帰り待ってます」

奈緒「すぐ終えるから」

奈緒「新刊新刊……えー……新刊、あった。それと……ン?」

奈緒「フィギュアか。そういえば、加蓮にそっくりなキャラがいるっていってからかったこともあったっけ。あの時は珍しくそういう気持ちになったんだよな」

奈緒「あるかな…………ないか。そんな都合よくあるはずないない」

奈緒「加蓮……今どこでなにしてるんだよ……っとと落ち込んでちゃダメだ」

奈緒「買い物は楽しくやらなくちゃな。他にはー……おっ」

奈緒「これもそうだ。凛をからかったなぁ。なんのことかわかってなくて『渋谷でも夜空に星は見えるから……』ってクールに返されたっけ。加蓮のツボにハマったから大変だった」

奈緒「……買ってくか。お金は……大丈夫だな。あ、でもほたるちゃん。こういうの持ち歩くと連れにダメージあるんだよな。経験則だけどあれ不思議だよな。まぁでも大丈夫かな。こういうのバカにするタイプじゃなさそうだし。それじゃ棚から取ってと……よいっン?」

?「あぁ?」

奈緒「あ、悪い」

?「こっちこそ悪い。手が当たっちまった」

奈緒「ハハハ……」

?「それじゃ、んっ?」

奈緒「ン?」

?「これ買いたいから離せよ」

奈緒「いや、あたしも買いたいんだけど……」

?「俺のが先に手に取ったから」

奈緒「いやいや、目をつけたのはあたしが先。それに男が人形はどうかと」

?「いやいや、あのな俺はこれをただ欲しいってわけで買うんじゃない。俺の中の魂が叫んでるんだ」

奈緒「ハァ?」

?「それにこれは魅力がわかってる俺が買った方がこいつも喜ぶってもんだぜ。つまりだな──」

ほたる「奈緒さん遅いなぁ……もしかして私忘れられちゃったのかな。前にもこんなことあったなぁ。あの時は私だけ忘れ去られてバスに置いていかれて寒かったな……はぁ。あ、このビーズかわい」

??「アッ……!」

ほたる「えっ?」

??「ウワワワッ」

ほたる「いたっ……! あ」

??「いたっ、イタタッ! ビーズ!?」

ほたる「す、すみません! お怪我は!?」

??「わ、私の方こそごめん! 何もないところで転んじゃって……! と、とにかく拾おうよ!」

ほたる「あっ、はい!」

??「あっ、足元にもあるよ」

ほたる「あ、ほ、本当です。危なかった……ありがとうございます」

??「ううん、別に。あ、店員さんだ」

ほたる「わ、私が謝ってきまっガッ!」

??「だ、大丈夫!? 強かに後頭部ぶつけたけど」

ほたる「だ、大丈夫です……頭をぶつけただけですので……ウゥ」

??「と、とりあえず落ち着いて……! あ、私店員さんに謝ってくる」

ほたる「あ、あっ……行っちゃいました──」

ほたる「あ、ありがとうございました」

??「私の方こそごめんなさい。私が転けなければあんなことにはなってなかったのに」

ほたる「いえ、何にしろああなってたと思います。不運体質ですから」

??「アハハ、そんなまさか。あっ、そうだ。お礼といってはなんだけど一階にあるカフェでなにか買うよ」

ほたる「そ、そんな悪いですよ。それに私、友達を待ってますし」

??「それじゃその友達も誘ってみんなでお茶しよ! ねっ!?」

ほたる「えっ、あの、その……知らない人とそういうことはちょっと……」

??「あ、私あま……天田音」

ほたる「あま?」

天田「甘ーいものに目がなくて」

ほたる「はぁ……?」

天田「それじゃ行こっか」

ほたる「あの、やっぱり」

天田「あ、そうだっけ……うーんでもそれだと私の気がすまないし……」

ほたる「あ、それじゃあちょっと連絡するので……」

天田「あ、うん。そうだよね」

ほたる「えっと……あれ?」

天田「どうしたの?」

ほたる「携帯電話が……」

天田「お家に置いてきちゃったとか?」

ほたる「さっきまであったのに……」

天田「さっき落としちゃったのかな?」

ほたる「そうかもしれません」

天田「ちょっと探してみよ。あ、番号わかる?」

ほたる「すみません。覚えてないです……」

天田「そっかぁ。なら自力で……ところでどんなの?」

ほたる「白地に紫のラインの入ったカバーをしてて、本体は……」

天田「……もしかしてビーズでデコってる?」

ほたる「え? デコってはいませんけど……」

天田「あそこでビーズまみれになってるのって違うのかな」

ほたる「え? あっ!」

天田「見事に接着剤にまみれていい具合にビーズが……」

ほたる「こ、これじゃ頭の悪いギャルみたいです……」

天田「そこまでなの……」

ほたる「クスン……いえこれも私の不注意ですので……お気になさらず……うぅ」

天田「うっ、なんだか罪悪感。あの、えっと……名前なんだっけ?」

ほたる「白菊ほたるです。あ、私の名前なんて聞いても不運が移るだけですので聞かない方が……」

天田「なんだか一時期の友達を思い出す。あ、それはいいとしてほたるちゃん!」

ほたる「あ、はいなんですか」

天田「どのカバーがいい!」

ほたる「はい?」

天田「こうなったのは私のせいだし、カフェだけじゃなくてカバーも私が買うよ!」

ほたる「そ、そんな悪いです……!」

天田「ううん、悪いのは私だもん。これくらいどうってことないよ」

ほたる「えっ、でも……」

天田「これなんてどうかな!? 控えめで大人っぽくていいと思うよ!」

ほたる「あ、あの……!」

天田「ん、なに?」

ほたる「……こ、こっちなんてどうでしょうか」

天田「おっ、なかなか。値段は…………っ!!!」

ほたる「どうかしましたか?」

天田「い、いやなんでも……! よ、よーし会計へレッツゴー!」

ほたる「?」

天田「お金は問題ないけど値段に驚いた。オレンジジュースの値段に驚いて以来だよ、こんなの」

ほたる「はい?」

天田「な、なんでもない──」

P「…………」

奏「なにをしてるの?」

P「三船さんからの連絡を見返してるところ」

奏「またなのね。まるで恋人からのラブレターでも見てるみたいね」

P「そんな風に見えるのか?」

奏「そんな感じよ。ラブレターなんて読んだことも読んでるところをみたこともないけど」

美穂「と、ところで」

奏「なにかしら」

美穂「奏さんは変装とかしないの?」

奏「特には。私を見てる人なんていないもの。それに変装という変装は逆に目立つと思うからしないの」

P「帽子くらいだね」

奏「私を隠してくれるもの。帽子は好き」

美穂「なんだか大人ですね」

奏「……誰かから聞いたけど、大人になるって悲しいことらしいわ。そんなの悲しく見える?」

美穂「え、その、私は別にそんなこと思って……」

奏「ウソよ。ちょっとからかってみたの。どうだった? 驚いてくれたかしら?」

美穂「も、もう!」

奏「フフッ」

P「そろそろ神谷さんが戻ってくる」

美穂「ほたるちゃんはどうしたんですか?」

P「連絡がとれないらしい。だから一回ここに戻ってくる」

奏「迷子にでもなったのかしら。いえ、迷子にされたのかしら」

美穂「迷子にされた?」

奏「なにも迷子というのは自分が原因じゃなくてもなるの。私みたいにね」

P「人生の迷子と言いたいの?」

奏「オチを先に言う人はキライ……」

美穂「二人についていけない……」

奏「ところで」

美穂「はい?」

奏「さっきマップを見たらファンシーグッズのお店があったわ。後で行きたいのだけれど小日向さんはどうかしら?」

美穂「あ、いきたい」

奏「それなら決定ね。いいかしら?」

P「どうぞ。買うものは決まってるからこっちはそんなにかからない」

奏「それなら行ってくるわ」

美穂「誰かが戻ってきてからにした方が……」

P「席なら取っておく。それと上の階に行くならエレベーターを使って」

奏「エスカレーターはダメなのかしら?」

P「階段以外ならそれでもいい」

美穂「すみません……」

奏「行ってくるわ」

P「行ってらっしゃい」

奈緒「ただいま」

P「お帰り」

奈緒「ほたるちゃん置いてきちゃって悪い」

P「連絡は?」

奈緒「連絡はした。返信ないのが気になる」

P「落としたかなにかしたかな」

奈緒「なにもないといいけどな……」

P「そんなに心配?」

奈緒「別にそんなことは……んぁ?」

P「どうした」

天田「着いたよ!」

ほたる「ここですか……?」

天田「あれ……あんまり感動ない? みんな驚くんだけどなぁ……」

ほたる「出会いって不思議です」

天田「はい?」

ほたる「な、なんでもありません」

天田「それじゃ入ろっか」

ほたる「は、はひ」

奈緒「なんだか邪魔しちゃ悪い雰囲気だな」

P「……だな」

奈緒「誰だろ。どっかで見たことあるけど何か足りないような」

P「何だろうね。それより何か興奮してるね。どうかしたの?」

奈緒「ちょっと不思議な人にあってさ──」

みちる「フフ、フフフ、ヌフフフフフフ」

小梅「これ、どこに置けば……い?」

みちる「ヌフ、ヌヌッフ、フフフ」

小梅「わかった」

美優「こうやって見てるとみちるちゃんってパン屋さんなのね」

みちる「んあ?」

美優「なんでもないわ。鼻に粉付いてるわ」

みちる「フガ、フガッ」

美優「拭くわ」

みちる「はりがとうほざいます」

杏「イースト菌はこっちで寝かそう。杏と一緒に寝かそう。ぐぅ……」

小梅「ここ、暖かい……ね」

杏「ねー。杏はイースト菌育てるので忙しい」

小梅「ムクムク……育ってる……フフ」

杏「見事だね」

小梅「ほんとここ、暖かくて……眠くなる……」

杏「イースト菌育てるのは杏だけで充分。ほらほら行った行った」

美優「よいしょっ、ふぅ」

小梅「あ、次、できた……」

美優「まだまだあるわ」

杏「乙。後どれくらい?」

美優「あと5箱程度」

杏「がんば」

みちる「こっちは終わりましたよー!」

杏「だってさ。さぁ早く杏のところに運んでくるのだ!」

みちる「アッ、ここあったかい!」

杏「もっとそっち行ってよ。ここは杏の領域だぞ」

みちる「せめて、せめてお腹だけでも陽に当たりたい……!」

杏「背中痛めるぞ……」

みちる「パン生地パンパンし過ぎて腕がパンパンパンしてる。あっ、見てください! 微妙に腕筋がピクピクしてます!」

杏「あぁーイースト菌が育つぅー」

小梅「よい……しょ」

みちる「ムッ」

杏「んぁー?」

美優「えっと、足元確認できないんだけどここでいいの?」

小梅「うん」

美優「わかった。よい……っしょ」

小梅「後はこれ……ここ……置いて……」

みちる「しまった……! パン生地に囲まれた!」

杏「食べ物で遊ぶのは罰当たりだって思うな」

みちる「パン生地は食べ物じゃないですよ? 焼かないとおいしくないです」

杏「食べたことあるの?」

みちる「モニョッとしてました。こう、モニョッと。オススメ出来ません」

美優「向こうの片付けしましょう小梅ちゃん」

小梅「あ、うん……」

杏「…………」

みちる「うあー……陽でとけるぅ」

杏「…………」

みちる「アー」

杏「Pさんたち今頃なにしてるだろ」

みちる「おいしいもの食べてますね100パー」

杏「だよね」

みちる「中華かな? パンかな? 和食かな? パンかな? イタリアンパンかな?」

杏「なにそれ」

みちる「…………タコ?」

杏「いや、聞かれても……そういえばさ」

みちる「コーゴーセー……はい?」

杏「なにそれ。まぁいいや。それでさ、Pさんのことどう思ってる?」

みちる「どう思うもなにも……うーん」

杏「どんな関係だとかさ」

みちる「関係? それなら…………トイレ?」

杏「なにそれ卑猥」

みちる「もはやあの人がいないとイケない身体になりましたね」

杏「体に」

みちる「身体に」

杏「なにそれ卑猥」

みちる「それがどうかしたんですか?」

杏「たまには周りのことを考えてみようかなってね」

みちる「なるほど」

杏「今のでエネルギー使い果たしたけど」

みちる「そんなときは大原ベーカリーのパンをどうぞ。一口食べれば疲労なんてあっという間になくなります」

杏「なにか危ないものでも入ってるの?」

みちる「チーズくらいです。チーズに混ぜ物なんてしてませんからね? 少し前に問題になりましたがうちはクリーンです」

杏「クリーンだよー」

みちる「グリーだよー」

杏「…………」

みちる「そういえば最近」

杏「ん?」

みちる「両親から不思議がられて」

杏「なにをさ」

みちる「食べる量が減ってる!って」

杏「どういうこと?」

みちる「今までもたまにその週に食べたものを記録して送ってるんですよ。ある事情から」

杏「それで?」

みちる「それでその週に食べたものをメールに書いて送っていたら驚かれた。ただそれだけです。五割減なので驚かれといえば当然でしょうが。あたし自身もビックリ」

杏「まぁ、そうだろうね」

みちる「それでもうひとつ発見しました」

杏「聞こうか」

みちる「疑られたことないんですよ。こと、食べ物に関しては。つまみ食いは信じてもらえませんが……前科が前科だけに」

杏「あー、つまみ食いしてたらしいね。よく知らないけど」

みちる「おいしいんだもん」

杏「だもんって……まぁおいしいものは仕方ないね。杏も飴舐めるときはそうだよ」

みちる「ちょっとだけ夢なんですよね」

杏「夢?」

みちる「看板娘」

杏「ふーん」

みちる「食べるのも作るのも得意です」

杏「杏は食べるのかな」

みちる「そういえば頬っぺたモチモチしてそうですね」

杏「触らないでね」

みちる「あ、はい」

小梅「これ、そ、そこの上」

美優「よい……しょ」

小梅「…………」

美優「どうしたの?」

小梅「な、なんでもない」

美優「?」

小梅「あ、これ……ここだ」

美優「それで最後ね」

小梅「うん」

美優「少し休みましょうか」

小梅「あ、お茶……飲む?」

美優「いれるわ」

美優「──どうぞ」

小梅「ありがとう……ふ、二人は?」

美優「寝てたわ」

小梅「そなんだ……」

美優「……さっきからどうしたの? なにか上の空というか心ここにあらずというか」

小梅「あのね……」

美優「なにかしら?」

小梅「Pさんのこと……好き?」

美優「それはどういう意味?」

小梅「手、繋ぎたい?」

美優「そういう意味でならノー。そういうのを感じないわ。だから居やすいのかしら」

小梅「そ、そっか……音楽かけていい?」

美優「えぇ。小梅ちゃん、どんな音楽聞くの?」

小梅「そうあうの……よくわからないけど……クラシック? あ、あった──」

美穂「ほぁー……」

奏「どうしたのかしら。なにか見つかった?」

美穂「クマの、クマの人形がいっぱいです!」

奏「ファンシーショップなんだから当たり前じゃない?」

美穂「おっきい……!」

奏「横に大きいわね」

美穂「見てください見てください!」

奏「なにかしプフッ」

美穂「これPさんにそっくりじゃありません」

奏「ゲホケホ……えっ、えぇそっくり」

美穂「私が隠れちゃいます!」

奏「そうね」

美穂「あれ?」

奏「なにか見つけた?」

美穂「あの人って……」


響子「♪」

奏「響子さんね」

美穂「ここでなにしてるのかな」

奏「買い物か、誰かへの買い物でしょうね」

美穂「なにか違うの?」

奏「響子さん、誰にでも優しいわね」

美穂「そうだよね。少し憧れる」

奏「優しさで傷つく人もいるの」

美穂「はい?」

奏「なんでもないわ。ところで憧れているのになぜ隠れてるの?」

美穂「体が自然と……」

奏「フフ、やっぱり面白いわね」

美穂「…………」

奏「さぁ、そろそろ目を違う方に向けましょう」

天田「──うんうん、わかるよ。私も何もないところでよく転んじゃうもん」

ほたる「私は排水溝の蓋がないところで転びますけど」

天田「そ、そういうときもあるよ、うん! 自慢じゃないけどうちの事務……ジムでもよく転ぶところだって有名なの」

ほたる「ジム?」

天田「うん、ジム! いろんな女の子がいて、その中でもよくイタズラする子がいるの。だからよく転ぶんだ。しかもお客さんまで転ぶ。何度叱ったか覚えてないくらい」

ほたる「いたずらですか……あれもいたずらだったのかな。前の事務所で……」

天田「あ、あわわわわ! そ、そうだ、のっ、ノド渇かない!? 私もうカラカラで!」

ほたる「あ、それじゃ私買ってきます」

天田「い、いいよいいよ。私買ってくるから!」

ほたる「…………」

天田「そ、そんな涙目で訴えられても……うぅ。じゃ、じゃあお願いしよう……かな」

ほたる「っ! はいっ!」

天田「うぅ、私って弱いなぁ」

奈緒「…………」

P「…………」

奈緒「…………」

P「……おかわりいる?」

奈緒「……お、おう」

P「買ってくる」

奈緒「……おう」

P「行ってくる」

奈緒「誰か早く帰ってきてくれ……」

ほたる「あ、Pさん」

P「お疲れ」

ほたる「連絡してなくてす、すみません!」

P「神谷さんから聞いてるからいいよ」

ほたる「実は……」

P「見事なデコレーションだね」

ほたる「転けたとこに棚を思いっきり倒してしまって……」

P「予想はついてるよ」

ほたる「いつも通りの不運です……」

P「彼女に会ったのは幸運だけどね」

ほたる「はい?」

P「時間は気にしなくていいからゆっくりしてきて。買うものは決まってるからパッと買うだけだから」

ほたる「早めに戻ります。あの人まぶしすぎて……」

P「何れにしろ楽しんできて」

ほたる「は、はい……!」

まゆ「ただいま戻りましたぁ♪」

輝子「俺様のご帰還だァァァ……ただいま」

小梅「あ、お帰り、なさい」

まゆ「Pさぁーん」

美優「Pさんならまだ帰ってきてないわ」

まゆ「あらぁ? 残念、せっかく抱きつきたかったのにぃ」

輝子「その溢れるリビドー……わ、私で発散するか?」

まゆ「そうしましょう。それじゃお風呂入りますねぇ♪」

輝子「フヒ!!」

小梅「と、ところで……」

美優「なに?」

小梅「藍子さんは……? ずっと見掛けてない」

美優「藍子ちゃんなら病院よ」

小梅「どこか……具合悪いの?」

美優「Pさんから頼まれごとしたとか言ってたわ」

小梅「なんだろ……」

まゆ「小梅ちゃんも入りましょう。ほら、捕まえた♪」

小梅「キャ、キャー……」

美優「フフ、楽しそう」

まゆ「あなたもどうですかぁ?」

美優「私は遠慮しておくわ」

まゆ「そうですかぁ。それじゃぁ」

美優「……藍子ちゃんなにしてるのかしら──」

加蓮「……フゥ」

藍子「お疲れさま。お茶です」

加蓮「あ、ごめん。ありがとう」

藍子「体調はどう?」

加蓮「良いよ。入院してるのが不思議なくらいに元気」

藍子「お医者さんの言うことは聞いた方がいいですよ?」

加蓮「耳にタコができるくらい聞いてるよ。昔はよく言われてたから」

藍子「あ、これ」

加蓮「手紙? なにこれ」

藍子「私は預かっただけだから中身までわからないの。ごめんなさい」

加蓮「…………」

藍子「あっ、外出てるね」

加蓮「いいよ、そのままで」

藍子「そう? あ、それならパウンドケーキ持ってきたんだけどどうかな」

加蓮「前から思ってたけどここは喫茶店じゃないんだからあんまり持ってきてもらったら困るかな」

藍子「あ……ごめんなさい」

加蓮「あ、私の方こそごめん……ここのところ治療続きで余裕なくて……」

藍子「ううん。そういうときはしかたないですよ。気持ちわかります」

加蓮「実はここ最近なんだけど、昼間に体調がいいときは散歩してるの」

藍子「お散歩っていいですよね」

加蓮「だね。それでお年寄りによく会うんだ。ここの近くにお年寄りが集まってる病棟があるから。そこの人たちから甘いものもらっちゃってね。お見舞いに持ってくるんだけど食べきれないらしくてさ……」

藍子「あ、体重」

加蓮「それもあるけどね。ちょっと処理に困っちゃって……よかったら持っていってくれる? 袋物だから期限は表記されてるし、汚なくもないからさ」

藍子「汚ないだなんて思わないよ」

加蓮「ごめん……ついクセで。あ、手紙の続き読むね」

藍子「邪魔してごめんなさい」

加蓮「ううん」

藍子「♪」

加蓮「…………」

藍子「あ、茶葉」

加蓮「フーン」

藍子「読み終わったの?」

加蓮「まぁね。文章読むの早くなったんだ。入院ってすることないから本ばっかり読んでて。そのおかげかな」

藍子「私も最近お茶に凝ってて」

加蓮「そういえばそうだよね。なんか本格的」

藍子「私なんてまだまだです。あ、ところで手紙にはなんて書いてあったんですか?」

加蓮「ちょっとね……」

藍子「?」

加蓮「ほら私ってこんなんじゃん? だからそういう心配されるの。親からも誰からも」

藍子「そういう心配?」

加蓮「親がうるさくてさ。変な男に引っ掛かってないかとか無理はするなとかさ。特に……大きい声で言えないけど……最近は特に恋愛の方で言われてね。やになっちゃう」

藍子「あぁー」

加蓮「私って軽く見られるからそういうのが寄ってくるんだよね」

藍子「恋……」

加蓮「アイドルが大きな声で話す話題じゃないね。それに私の場合……」

藍子「加蓮ちゃんの場合?」

加蓮「私の場合は相手がどんなのにしろスマホのバッテリーみたいだから」

藍子「スマホのバッテリー?」

加蓮「ハハ、いまの忘れて。私もどうしていいかわからないんだよね。自分のことなのに」

藍子「……そういうのよくわからないけど深く考えないでリラックスするべきだと思います」

加蓮「それもそっか」

藍子「あ、髪の毛ときます」

加蓮「お風呂入ってないから臭いよ?」

藍子「臭いのは慣れてます」

加蓮「慣れてる?」

藍子「ブラシ借ります──」

みちる「おは」

まゆ「あらみちるちゃん。おはよう」

みちる「うごっ!?」

まゆ「驚いてどうしたの?」

みく「おそらくまゆチャンが早起きしてて驚いたってところにゃ」

まゆ「いつもこのくらいの時間よ? それに今日は約束したでしょ? 」

みちる「ヤク……ソク……?」

みく「その分だと覚えてないにゃ」

みちる「なにぶんあたしには記憶力がないもので」

みく「わかってるにゃ」

まゆ「ほらほら二人とも手が止まってるわ」

P「おはよう」

まゆ「おはようございます♪ これどうぞ」

P「ん……」

みく「おっはようにゃ」

P「おはよう」

みちる「…………」

P「…………」

みちる「……フゴッ」

P「おはよう。それ朝ごはんね」

みちる「フゴー……」

P「さぁ、気を引き締めていこう──」

まゆ「それじゃ行ってきます」

P「行ってらっしゃい」

まゆ「ンー」

P「行ってらっしゃい」

まゆ「誰もいないんだから行ってらっしゃいのチューしましょうよぅ。ね?」

P「後ろで興味津々に見てる二人いる」

みく「にゃっ!?」
みちる「やっぱりパンに擬態していれば……!」

まゆ「見せつけましょう」

P「終わったらするよ」

まゆ「もうパパッと終わらせてきます!」

P「気をつけて」

まゆ「いろんなところにしてもらいますからね?」

P「常識の範囲内なら」

まゆ「うふ、うふふふ♪ いってきまぁす♪」

みちる「これから二度寝! 寝るぞ!」

みく「学校に遅れちゃっても知らないにゃよ」

みちる「眠いものは眠いんです。二度寝しないの?」

みく「起きてるにゃ」

みちる「それではおやすみなさい」

みく「おはようの時間だけどにゃ」

P「朝食の仕方するか」

みく「手伝うにゃー」

P「その前に朝食にするか」

みく「?」

P「これ。残り食べないと大原さんが食べたがる」

みく「アー、なるほど。悪だにゃPチャン」

P「どうぞ」

みく「どうもにゃ。ところでこんな朝早くからまゆチャン出掛けさせて大丈夫にゃ? 早すぎだと思うにゃ」

P「このくらいじゃないと間に合わない」

みく「響子チャンはそんなに早いのかにゃ?」

P「早い。さすがに事務所の鍵を開けるなんてことはしてないけどそれでも苦情が来るほど早い」

みく「苦情?」

P「前川さんは仕事の時間になるまで事務所で一人だったらなにする?」

みく「本読んだり、ネコミミの角度弄ったりしてる」

P「そういうのが彼女の場合は掃除や整頓になるんだ」

みく「良いことだと思うにゃ。整理整頓大事」

P「勝手な整理整頓でも?」

みく「もちろん本人の了承を得てなきゃドロボーと同じにゃ。それに物の配置が変わってたら気味悪い。苦情ってそういうことにゃね」

P「いや、苦情は出入りの清掃業者からくる」

みく「自分達のお仕事取られちゃうから?」

P「それもあるかもしれないが、遠回しに仕事にケチをつけられてるって苦情、しかも知ってか知らずか、業者が入ったすぐ後に掃除し始める」

みく「でもそれくらいなら問題ないと思う……にゃ」

P「個人と業者なら問題はさほどないが、業者と業者なら問題は出てくる。信用問題に発展する。あそこの業者が掃除してもまだまだ掃除が必要なくらい汚れが残る。そんな仕事をする会社だ、なんて噂になったらどうする?」

みく「とっても気分悪いにゃ」

P「加えて彼女の売れ行きも作用してる」

みく「他の人の仕事取っちゃうのはいけないにゃ」

P「話を戻そう。そんな訳でまゆはこの時間に出した。それに着く頃は彼も来るだろうからね」

みく「彼?」

P「そう、彼──」

五十嵐P「おはようございまーす……誰もいないか。響子は……今日はいないのか。珍しいな」

五十嵐P「ってことは一番乗りだな。つってもやることないからなぁ。おしっ、書類整理でもするか」

まゆ「おはようございまぁす」

五十嵐P「うわぁぁぁ!」

まゆ「きゃっ」

五十嵐P「さ、佐久間さん……おっ、驚かすなよ」

まゆ「ごめんなさい……人の姿が見えたもので嬉しくてつい」

五十嵐P「どゆこと?」

まゆ「だって事務所に来たのに誰もいないんですもの。少し寂しかったです」

五十嵐P「一番乗りじゃなかったのか。ちょっと残念だな……」

まゆ「はい?」

五十嵐P「なんでもない。それより早いね」

まゆ「お弁当を渡そうと思いまして」

五十嵐P「佐久間さんのプロデューサーなら午後から出勤だよ?」

まゆ「知ってますよぉ。プロデューサーさんにも渡しますけど今日はもう一人にも渡そうと思ってぇ」

五十嵐P「もう一人?」

まゆ「はい、どうぞ」

五十嵐P「え? これって」

まゆ「お弁当です。ほら、この前仰ってましたよね? たまには体に悪いものが食べたいって」

五十嵐P「言ったか?」

まゆ「言いましたよぉ? ヘルシーなお弁当だけだとたまには体に悪いものが食べたくなるって」

五十嵐P「アー、たしかに言ったな」

まゆ「だからぁ」

響子「おはようございまーす!」

五十嵐P「オッ、さすが早いな。おはよう」

響子「はい、おはようございます! プロデューサーこそ早いですね」

五十嵐P「やることあるからな」

響子「お疲れ様です。あ、二人きりですね」

五十嵐P「ん、二人きり?」

響子「事務所にですよ。この時間はいつも私一人で寂しくて」

五十嵐P「二人きりじゃないぞ。そこに」

まゆ「おはようございます」

五十嵐P「ッ!!」

響子「あ、おはようございます」

五十嵐P「いつの間に響子の後ろに……」

まゆ「あらぁ、お邪魔しちゃったかしら」

響子「いえいえそんなことないですよ?」

まゆ「そう? ならよかった。今朝早く起きすぎちゃってぇ」

響子「寝不足は大敵です」

まゆ「あら、わかる?」

響子「また担当プロデューサーのところですか?」

まゆ「えぇ♪ まゆの大切な人ですもの」

響子「そういうの羨ましいです」

まゆ「うふ。それじゃまた後でぇ」

響子「はい! あ、なんの話でしたっけプロデューサー」

五十嵐P「えっ、あぁ今日の仕事なんだがな──」

蘭子「煩わしい太陽ね!」

みく「おはようにゃ」

晴「はよーっす」

小梅「おっ……おはよう」

P「朝食出来てるから食べたら出掛けて。ちょうどいい時間に出られる」

蘭子「ククク、畏れ戦くがいい」

小梅「これとこれと……これも……持っていこう」

晴「そんなにあってどうするんだよ」

小梅「え、どうするって……観るよ?」

晴「そんなに見れねえだろ。つかそんなのよりサッカーの持ってこうぜ! 録画したのがあんだよ」

小梅「えっ、えっ」

蘭子「ニンゲン同士争うがいい! フハハハ!」

晴「言ってることとやってること逆じゃね?」

蘭子「汝ら、我の求めに応じよ! さもなくば死の祝福を授ける!」

小梅「ゾンビものも……あり」

晴「物騒なこと言ってるのはわかる。こわっ」

蘭子「へぅ……」

みく「凹むなら言わない方がいいにゃ」

晴「あっべ、遅れる!」

蘭子「フム……」

小梅「ムグムグ……」

みく「口に御飯粒ついてるにゃ」

P「慌てない」

晴「で、オレはなにすればいいんだ?」

P「そんな難しいことはない」

小梅「お菓子は……いくら、ま、まで?」

P「300円くらいまで」

みく「少ない! せめてもう一声っ!」

P「何で入ってくるの?」

みく「いやぁついクセで」

蘭子「魔力が充実してきたわ!」

晴「あ、これも入れてくれ」

小梅「……や」

晴「半分やるからよ」

小梅「……わかった」

みく「仲が良いんだか悪いんだかわからないにゃ」

蘭子「いざ、ペガサスに乗って!」

小梅「ドラゴンの……ゾンビ……乗りたい」

晴「それ飛べんのか?」

みく「いってらっしゃいにゃ──」

五十嵐P「お疲れ様でーす」

晴「おっす」

小梅「お、お疲れ……さま、です」

五十嵐P「おっとお疲れ。なにしてんだ?」

晴「サッカー見てた。今は小梅がなんか見てる」

小梅「わっ……わっ……! グチュグチュ……」

五十嵐P「ほー」

晴「やっぱフォワードだよな!」

五十嵐P「サッカー詳しいのか?」

晴「サッカー好きだぜ!」

五十嵐P「ほう。さっきフォワードって言ったけどな」

晴「あ? 言ったぞ。それが?」

五十嵐P「フォワードよりディフェンダーだろ」

晴「守るののなにが楽しいんだよ」

五十嵐P「わかってないな」

晴「やっぱ動かなきゃダメだぜ!」

五十嵐P「それには賛成するがやっぱ守備だろ」

晴「そんなんだから日本はダメだっていわれるんだって。もっと攻めてかなきゃダメだろ」

五十嵐P「攻撃が好きなんだな」

晴「こっちからいかなきゃ始まらないだろ? 攻撃は最大のなんたら」

五十嵐P「攻撃は最大の防御なら防御は最大の攻撃だな」

晴「ン?」

小梅「ふはぁ……よかった」

五十嵐P「お疲れ」

小梅「あ、なに……話してたの?」

晴「サッカーのこと。守るのが好きなんだってよ」

五十嵐P「白坂さんは何してたの?」

小梅「ホラー見てた……」

五十嵐P「へー」

小梅「あ、キーパー好き?」

五十嵐P「キーパーもいいかもな」

晴「まったく動かねえじゃん」

小梅「おっきくて……いいよね」

晴「でかい?」

五十嵐P「ゴール守るからどっしりしてると安心感あるよな」

小梅「安心感? あ……ハンマー……かっこいいよね」

晴「ハンマー? サッカーの話だよな?」

小梅「え……?」

晴「え?」

五十嵐P「え?」

響子「お疲れ蘭子ちゃん」

蘭子「闇に飲まれよ!」

響子「今学校帰り?」

蘭子「滅せよ!」

響子「? なんかよくわからないけど違うっぽいね。そうそう聞いてよ、今日学校でね──」

響子「どう思う?」

蘭子「フム……」

響子「あ、そろそろ事務所入ろっか」

蘭子「ム?」

響子「お疲れ様でーす」

晴「え、マジで!?」

五十嵐P「持ってるぞ」

晴「くれ!」

五十嵐P「ヤだよ。なん袋買ったと思ってるんだ」

小梅「食玩……高い」

晴「オレもなん袋も買ってるのにまったくあたんねえ」

五十嵐P「この前の試合撮ったけど今度見るか?」

晴「みるみる」

五十嵐P「それじゃ、オッ、お疲れ様」

響子「なんの話してたんですか?」

五十嵐P「サッカー」

晴「こんなに話すんだな。意外だったぜ」

響子「そんなに話したんですか?」

五十嵐P「あ、あぁ」

響子「ふーん……」

五十嵐P「こんなに話したのはほんと久しぶりだ」

晴「炭酸飲むか?」

五十嵐P「サイダーか」

晴「キライなんか?」

五十嵐P「大好物。でもいいのか? プロデューサーから止められてるだろ?」

晴「炭酸はノドにってやつ? オレ歌わねえし関係ねえよ。それに動いたあとの炭酸サイコー」

五十嵐P「わかる。炭酸派か」

晴「当たり前だろ。てか、それ以外あんの?」

五十嵐P「プロテイン飲むやつもいるんだよ」

晴「アーあれか。なんか薬っぽい変な味するよな」

五十嵐P「薬っぽいというか薬だからな」

晴「サプリメントってやつか」

蘭子「魔力が尽きた……!」

五十嵐P「ン? 」

晴「そういやもう昼か」

小梅「お昼……ランチ」

晴「どっか食いに行く?」

五十嵐P「いってらっしゃい」

小梅「行かないの?」

五十嵐P「弁当ある」

響子「え? 今日の分まだ渡してないですよね」

晴「その箱どっかの弁当屋?」

五十嵐P「ん? ンーそんなもんだ」

響子「そんな健康に悪そうなものよりこっちを食べてください!」

小梅「あ、おいしそう」

五十嵐P「うーんでもなぁ」

晴「ならオレにくれよ。うまそう」

小梅「油もの……ないよ?」

晴「お前はオレをなんだと思ってるんだよ」

五十嵐P「悪いけどそうしてくれ」

響子「…………」

蘭子「天恵!」

小梅「あ、おいしい」

晴「うめぇなこれ!」

響子「……そう──」

美優「おはようございます」

五十嵐P「あ、おはようございます。あれ、今日は休日じゃ」

美優「近くまで買い物に来てたのでついでに忘れ物を取りに来たんです」

五十嵐P「忘れ物?」

美優「個人的なものなので……」

五十嵐P「あ、すみません!」

美優「あれ、それって」

五十嵐P「あっ、気にしないでください」

美優「胃が悪いんですか?」

五十嵐P「ただの胃薬。それに別に胃が悪いわけじゃないんですよ。ちょっともらいすぎて」

美優「試供品ですか?」

五十嵐P「試供品といえば試供品みたいなところありますけど……」

美優「はぁ……?」

五十嵐P「響子からもらったんですよ」

美優「響子ちゃんから?」

五十嵐P「もういらないって言ったんですけどね。あって困らないですから!って押されて断りきれなくて……」

美優「なら少しいただけます?」

五十嵐P「いいですが……胃でも悪いんですか?」

美優「その……」

五十嵐P「あ、すみません! セクハラでした!」

美優「いえ、もう恥ずかしがる年でもないんですけど……」

五十嵐P「そんなことは……まだまだ若いじゃないですか」

美優「ふふっ、ありがとうございます」

五十嵐P「もしかしてその……便秘ですか? あ、いえ母親もそれでよく悩んでるので」

美優「まぁその……はい。プロデューサーさんはどうですか?」

五十嵐P「俺は逆ですね。下痢ぎみで。あ、すみません。汚い話になっちゃいましたね」

美優「いえ」

五十嵐P「そういえばこの間、ブライダル系の仕事してましたね」

美優「はい。それがなにか?」

五十嵐P「子どもって何人ほしいですか?」

美優「二人くらいは」

五十嵐P「やっぱりそのくらいが妥当で現実的ですよね。専業主婦か兼業主婦かにもよりますよね」

美優「私はどっちになるのかしら」

五十嵐P「最近は働きながらも珍しくない。それに共働きも主流になりつつあるらしい。受け売りの情報ですけどね」

美優「どこかで聞いたんですか?」

五十嵐P「響子が雑誌のインタビューで聞かれたんですよ。ついでだからプロデューサーさんもって言われて。15歳になに聞いてるんだって話だけど」

美優「でもそういうときでないと話せませんよね」

五十嵐P「結婚できない年の子に聞くのは憚られます。セクハラになりかねません」

美優「難しい年頃ですからね、あのくらいの女の子は」

五十嵐P「幻滅されないかいつも不安です」

美優「その気持ち少しわかります。私もその頃は……」

響子「お疲れ様でーす」

五十嵐P「おっと、お疲れ。遅かったな」

美優「お疲れ様」

響子「少しよってたところがあって。なんの話してたんですか?」

五十嵐P「ちょっとな……」

響子「えー、怪しいですね」

五十嵐P「例えるなら大人の話だ」

美優「えぇ。響子ちゃんには少し早いわ」

響子「ムッ、ますます怪しい」

五十嵐P「怪しくないって。それでよってたってどこに?」

響子「メアリーちゃんのシッターさんのところです。ここのところ元気がないから心配で」

五十嵐P「心配するのは結構。でもあまり干渉しないように」

響子「心配なものは心配なんです」

五十嵐P「……まぁいい。このあとはインタビューだから準備しておいてくれ。俺は先に準備してる」

響子「はーい。それでなんの話をしてたんですか?」

美優「響子ちゃんにはまだ早い話よ」

響子「ムッ──」

みく「にゃっふっふっふっ」

P「不敵な笑みを浮かべてどうした」

みく「とうとう、とうとうみくの出番にゃ! 活躍するよ!」

P「一人でいくわけじゃないから協調性持ってね」

みく「猫は気まぐれ風任せにゃ。ほしょーは出来にゃい」

P「準備運動忘れずにね」

みく「なんのことにゃ? みくはみくでずっとこのままだよ?」

P「クラリスさんを起こしてくる」

みく「それならみくがやるにゃ!」

P「静かに起こしてきてね」

みく「元気よく起こすのがみくにゃんこの特徴にゃ」

P「この前怒られたの忘れた?」

みく「うっ……!」

P「粛々淡々と怒られたのを忘れるわけないよね」

みく「あれはみちるチャンが煽ったからにゃ! 悪くない、みくは悪くねぇにゃ!」

P「で、どうする?」

みく「そっとしておくにゃ。睡眠は重要だからね」

P「起こしてくる」

みく「それより準備運動に付き合ってくれると助かるにゃ」

P「準備運動?」

みく「Pチャンもさっき言ってたでしょー?」

P「あれは心の準備という意味で言ったんだ」

みく「いいからご奉仕させるにゃー!」

杏「朝からお盛んだね」

みく「にゃっ、杏チャンおはようにゃ」

P「もうお昼過ぎてるぞ」

杏「芸能界はいつでもおはようだから怠惰がバレなくて最高だよね」

みく「おはようにゃ杏チャン!」

杏「おはよう。朝から元気な人見ると疲れる」

みく「もうお昼過ぎもお昼過ぎ、夕方といっても過言じゃないにゃ」

杏「ネコって一日半分以上は寝てるんだよね? いいなぁ、杏もネコになりたい」

みく「ならまずはPチャンにご奉仕にゃ!」

杏「なんでさ」

みく「準備運動に付き合ってくれないにゃ。この際杏チャンでもいいにゃ」

杏「妥協で来られても複雑な気分……奉仕ってなにやるの?」

みく「適当に遊ぶにゃ」

杏「じゃあゴロゴロしてくる」

みく「それじゃいつもと変わらないにゃ」

杏「知らないよ。ならお手本見せてよ」

P「それよりこれどうぞ」

みく「うにゃ?」

P「大原さんが焼いたパン。話の種にどうぞ」

みく「話の種?」

P「向こうにいったときに役立てて」

みく「わかったにゃ」

クラリス「おはようございます」

P「おはようございます」

みく「おっはようにゃー!」

クラリス「すみません、少し寝坊してしまって」

P「許容範囲内ですのでお気になさらず」

クラリス「すみません」

みく「それじゃクラリスさんが来たところで出発にゃー!」

クラリス「よろしくお願いいたします──」

みく「おっはにゃー」

クラリス「皆さま、おはようございます」

五十嵐P「おはようございます」

みく「ありゃ、五十嵐Pチャン一人?」

五十嵐P「今の時間はみんなで払ってる。留守番だよ」

みく「ありゃりゃ」

クラリス「約束までまだ時間がありますね」

みく「そうにゃね」

五十嵐P「約束?」

みく「遊びの約束にゃ」

五十嵐P「遊ぶのはいいがあんまり遅くなるなよ」

みく「わかってるにゃ。ところで元気なさげだけどどうしたにゃ?」

クラリス「確かにあまり体調が優れないようですが……」

五十嵐P「そうですか? そんな風には感じませんけど」

みく「いいや元気ないにゃ。みくにはわかるよ!」

五十嵐P「ンーどうなんだろうなぁ。たしかに元気いっぱいって感じじゃないのは当たってる」

クラリス「悩み事でも?」

みく「いいや、これははじけ不足にゃ」

五十嵐P「はじけ不足?」

みく「最近ワーって騒いだりした? してないでしょ」

五十嵐P「たしかにしてないな」

みく「はしゃがなきゃダメだよ! こたつで丸くなってちゃダメにゃ!」

五十嵐P「それネコ否定してるんじゃ」

みく「猫ちゃんも寒いときは動くにゃ!」

クラリス「はしゃぐのはよろしいですが外に連れていくわけにも参りませんよ? 約束もありますし」

みく「なにも騒ぐだけがはじけることじゃないにゃ」

五十嵐P「というと?」

みく「ジャジャーン!」

五十嵐P「それは……ネコミミ」

みく「これをつけて猫ちゃんの気持ちになればいいにゃ!」

五十嵐P「はじけるってそういうこと……」

みく「さぁつけるにゃ!」

五十嵐P「やだよ」

みく「なんと!」

五十嵐P「キャラじゃない」

みく「チッチッチッ、甘いにゃ。チョコレートフォンデュより甘いにゃ! キャラじゃない? 猫ちゃんは"キャラ"じゃなくて"生きざま"にゃ!」

五十嵐P「生きざまぁ?」

みく「それに考えても見るにゃ。仮にもアイドルをプロデュースする人がキャラじゃないで試そうともしないのはダメダメにゃ。いろんな可能性を試さなきゃダメにゃ! それにはまずは自分から!」

五十嵐P「いや、え? ん? そうなのか?」

クラリス「一理あります」

みく「そうにゃ! さぁネコミミをつけるにゃ」

五十嵐P「…………」

みく「どうにゃ猫耳のつけ心地は!?」

五十嵐P「悪くないな」

みく「にゃふふにゃふふ、そうだろそうだろ」

五十嵐P「なんだかこういうの久しぶりだな」

クラリス「私がいうのもなんですが社会人になるとそういう事をやりづらいと聞きます」

五十嵐P「セーブしちゃうんですよ」

みく「ささ、クラリスさんもつけるにゃ」

クラリス「私もですか?」

みく「新たな道が拓かれるかもしれないよ?」

五十嵐P「物は試しですよ。俺もやったんですからクラリスもぜひ。プロデューサー業の者としても見てみたいですし」

みく「さぁつけるにゃ!!」

クラリス「それでは……」

みく「オ、オオッ」

クラリス「どうですか?」

五十嵐P「……ありです」

みく「語尾に『にゃ』をつけてみよー」

五十嵐P「男がそれはちょっと……」

みく「そういうのも今はあるから問題ないにゃ! 自分の名前に『にゃ』をつけるのでもいいにゃ。自己紹介ならやり易いと思うにゃ」

五十嵐P「はじめまして……にゃ」

みく「声が小さいにゃ!」

五十嵐P「はじめましてにゃ」

みく「その調子にゃ。はい!」

クラリス「はい?」

みく「クラリスさんもやるにゃ」

クラリス「私もですか?」

みく「今後こういう仕事が来るかもしれないにゃ」

クラリス「仕事は選んでもいいと思うのですが」

みく「早くやるにゃ」

クラリス「コホン……ではやらせていただきます。はじめましてクラリスにゃ」

みく「ッ!」

五十嵐P「これはなかなか……」

クラリス「どうだったでしょう」

みく「グッドにゃ! でもなんか不満げ。疑問に思うことがあるなら話してにゃ」

クラリス「ほんの些細なことなのですが……猫の鳴き声はミャオではないのでしょうか?」

みく「人によって聞こえ方が違うって聞いたことあるにゃ」

五十嵐P「クラリスさんってなに人なんですか?」

みく「そういえば気になるにゃ」

クラリス「私がなに人でもいいではないですか」

五十嵐P「そうですけど」

みく「まぁ、神の子でいいにゃ。次は猫耳の角度にゃ!」

五十嵐P「こうか?」

みく「もっとおったてるにゃ」

クラリス「…………」

みく「クラリスさんは見えてるの?」

クラリス「え? 見えておりますが?」

みく「あ、クラリスさんは寝かせるにゃ」

クラリス「こうですか?」

みく「その調子その調子」

五十嵐P「これでいいのか?」

みく「二人とも飲み込みいいにゃ。次はポーズ! みくの真似をしてみるにゃ! うー」

五十嵐P「うっ、うー……」

クラリス「ぅゆー」

みく「恥ずかしがっちゃダメ! それとクラリスさんは発音が妙にゃ──」

みく「それじゃみんなでやるにゃ。準備はオーケーにゃ?」

五十嵐P「あぁ!」

クラリス「よろしいです」

みく「うー」

五十嵐P「うー」

クラリス「ウー」

みく「にゃー!」

五十嵐P「にゃー!」

クラリス「ミャー!」

みく「……決まったにゃ!」

五十嵐P「こういうのいいな」

クラリス「魂の解放と言うのでしょうか。なんだかスッキリいたします」

五十嵐P「魂の解放ですか。そんな感じですね」

みく「猫にゃ、猫になるのだ!」

五十嵐P「いやーこんなこと響子がいると出来ない」

みく「にゃ? こういうのキライなの?」

五十嵐P「知らない。でもなんかこういうことする気がおきない」

クラリス「雰囲気というものですね」

みく「ぶっちゃけ響子チャンのことどう思ってるの?」

五十嵐P「どうって?」

みく「好きだーとか愛してるーとかにゃんにゃんとか」

五十嵐P「まぁ好きだな」

みく「にゃにゃ! これはスキャンダラスな香り!?」

五十嵐P「そういう意味の好きじゃない」

みく「なーんだ」

クラリス「それにしてはなにやら曇り顔です」

五十嵐P「ちょっとね」

クラリス「私でよければ聞きます」

みく「あ、みくは出てるにゃ」

五十嵐P「いや、いてもいいよ。意見も聞きたいし」

みく「それなら残るにゃ。それで悩みって?」

五十嵐P「響子がいろんな人のところにいってるのが心配でな」

みく「独り占めしたいってこと?」

五十嵐P「そうじゃないけどさ。なんだか複雑なんだよ」

みく「猫ちゃんみたいなものだにゃ」

五十嵐P「そう思ってるのが楽か」

クラリス「…………」

五十嵐P「まぁ忘れてくれ」

クラリス「わかりました」

響子「お疲れ様でーす!」

みく「おっつかれにゃー」

響子「あ、みくちゃんとクラリスさん、おはようございます」

クラリス「おはようございます」

みく「おっはにゃ」

五十嵐P「お疲れ。汚れてるな」

響子「さっきまで少し掃除してましたから」

五十嵐P「……そうか」

みく「あ、そうだ。ちょっとあげたいものがあるから外にいくにゃ」

響子「え?」

みく「取り分減るにゃ」

クラリス「パンのことですか」

五十嵐P「パン?」

みく「バレたにゃ! 早くいくにゃ。食べられちゃう!」

響子「ハ、ハァ?」

クラリス「…………行きましたね」

五十嵐P「え、あ、そうですね」

クラリス「悩みの件ですが……」

五十嵐P「あ、はい」

クラリス「割り切っていいと思います」

五十嵐P「そうします。距離をとるのも必要ですよね」

クラリス「それが良いかと」

五十嵐P「なんだか気が楽になりました」

クラリス「では──」

クラリス「ただいま戻りました」

P「お疲れ様です」

みく「おっつにゃー」

P「楽しそうだね」

みく「わかるにゃ?」

P「猫耳ついてるからね」

みく「にゃ? 外したはずだけど…………ほらないにゃ」

P「クラリスさんにね」

クラリス「ッ!!」

まゆ「お帰りなさい。あら、かわいい猫耳♪」

みく「お夕飯食べるにゃー♪」

まゆ「もう少しで出来るわ。手伝ってくれる?」

みく「オッケー! あ、お魚はないよね?」

まゆ「どうかしらぁ」

みく「意地悪はなしにゃ!」

まゆ「うふふ。先いってますね」

P「わかった」

みちる「お疲れさまです!」

晴「よっ、お帰り」

みく「急に夕飯が心配になってきたにゃ」

晴「あ?」

みちる「どうでした?」

みく「みちるチャンのパン食べたときの顔を見せたかったにゃ」

みちる「おいしかった?」

みく「今度大原ベーカリーに連れていくにゃ!」

みちる「あたしが行っても門前払いですよ? 試食のし過ぎでお店の方には近づかせてくれません」

みく「にゃんと!」

みちる「それにしてもおいしかったですか。よかったよかった」

晴「おい、パン焦げてるぞ」

みちる「ふあっ!?」

まゆ「ほたるちゃん大丈夫?」

ほたる「あ、はい。今のところ問題ないです」

晴「さっきめっちゃくちゃ胡椒ぶちまけてたよな?」

まゆ「スパイスが効いておいしくなるわ」

晴「そうかぁ?」

みちる「ほっ。焦げてない」

みく「みくはなにすればいいにゃ?」

まゆ「晴ちゃんと一緒にお肉の成形して」

みく「お肉!? 俄然やる気が出てきたにゃ!」

みく「──うまいにゃ! うっめーにゃー!」

みちる「うーん、この肉汁のたっぷりな感じ。パンもうまく焼けたしいうことなし!」

みく「怪我の功名にゃ」

晴「そういやなんか人少なくね?」

P「さすがに朝のように詰め込むのはいかないからな。他の部屋は他の部屋で先に食べてもらった」

晴「ふーん」

まゆ「晴ちゃん、口にケチャップついてる」

晴「ンッ……ム……拭きすぎだろ」

まゆ「つきすぎ」

ほたる「おいしい」

晴「なにせオレが作ったからな」

みちる「パンはあたしが!」

ほたる「あ、フォークとナイフ逆です」

晴「んなこまけえこと」

ほたる「ダメです。習ったことはキチンとしないと」

晴「……食いずれぇ」

みちる「うまうま」

みく「みちるチャンもお作法習った方がいいにゃ」

みちる「フゴ?」

まゆ「お作法教室どう?」

晴「マナー教室のことか? まぁうまくいってるぜ。堅っ苦しいくてしかたないけどな」

P「手を焼いてるらしい」

まゆ「まぁ」

晴「知ってんのか?」

まゆ「色々素敵そうなおじ様よ。イロイロと♪」

P「食事中」

晴「ああいうのもいいけどたまにゃラーメンが食いたくなる」

ほたる「音が出てる内はムリかも」

晴「ソシャク音っての? 出るものは出るんだからしかたねえだろ」

ほたる「スープ、がんばろ?」

晴「……あぁ」

クラリス「マナー教室もやっているのですか?」

P「知り合いがいる」

みちる「フゴフゴゴ」

みく「やっぱりみちるチャンも通うべきにゃ」

みちる「フゴー?」

みく「小首を傾げられても……」

みちる「フゴゴフゴフゴフゴゴフゴゴフフゴホーフ」

みく「人の言葉を喋るにゃ」

みちる「あたしにはPさんがいるから大丈夫!」

みく「その心はなんにゃ」

みちる「あとでいっぱい出してもらえますから」

みく「ドヤ顔で言われてもなんのことかわからないにゃ」

P「食事中」

晴「なぁなんのことだ?」

ほたる「わ、わた、私に聞かれても……!」

P「ところでお風呂は入ったのか?」

まゆ「はい。楽しかったです。ね、ほたるちゃん、晴ちゃん♪」

晴「ん? アァ、まあな」

ほたる「は、はい」

みちる「あたしは一人でした。寂しい!」

クラリス「P様は入ってらっしゃらないのですか?」

P「まだだ。やることがあったからね」

クラリス「やること?」

P「そう、やること。さて、明日も早いから今日は片付けたら寝よう」

晴「なんかあんのか?」

P「早起きすれば面白いものが見られるかも」

晴「は?」

P「明日のお楽しみ。さ、片付けよう──」

響子「おはようございます!」

五十嵐P「おう、おはよう」

奏「動かないで」

五十嵐P「お、おぅ」

まゆ「もぉちょっとこっち向いてくださいますか?」

五十嵐P「こ、こうか?」

まゆ「はい♪」

響子「なにしてるんですか?」

奏「宿題」

響子「宿題?」

奏「学校で美術の宿題が出たから協力してもらってるの」

響子「そうですか」

奏「それに……」

響子「それに?」

奏「ううん、なんでもないわ」

響子「えー、気になります」

五十嵐P「俺が頼んだんだよ」

響子「え?」

五十嵐P「前に絵を描いてもらってるのを見て俺も欲しいなって思ってな」

響子「……そうですか」

奏「そういうことなの」

まゆ「うふ♪ 描けた」

奏「私も」

五十嵐P「おぉ、うまいもんだな」

まゆ「練習しましたから」

五十嵐P「練習?」

まゆ「秘密です」

響子「…………」

五十嵐P「まっ、いいや。おっ、そうだ」

響子「お弁当ですね! 今日のお弁当は」

五十嵐P「その事なんだ」

響子「はい?」

五十嵐P「これからは極力なしにしてくれ」

響子「えっ、どういう……」

五十嵐P「実はな……ちょっと問題になっててな」

響子「問題……?」

五十嵐P「いやな、俺はいいと思ってるんだがこの前の会議で『結婚もしてないのに弁当を作ってもらうとはなんてことだ』って怒られてな」

響子「え? えっ?」

五十嵐P「なんていうな、その……」

奏「マスコミに嗅ぎ付けられたら困る」

五十嵐P「……そういうことだ。いや、作ってきてもらうのはうれしい。俺もかなりうれしいよ。けどこのままじゃ響子に迷惑がかかる」

響子「私は別に……気にしません」

五十嵐P「それに俺も自分の飯くらい作れなきゃって思っててな」

響子「……それならお掃除を」

五十嵐P「それも控えてくれ。アイドルに事務所のことやらせてる事務所なんて言われたらそれこそ大問題だ」

まゆ「それくらいなら問題ないと思いますよ?」

五十嵐P「うーん」

奏「すぐに答えを出す必要はないんじゃないかしら」

五十嵐P「それもそうだな。だが弁当の件は忘れないでくれ」

響子「わかりました……」

五十嵐P「あ、ちょっと」

奏「……今はそっとしておきましょう。一人になりたいときもあるわ。それが必要なときも」

五十嵐P「だけど」

まゆ「まゆ行ってきます」

奏「お願い」

まゆ「それじゃ」

五十嵐P「……これでよかったのか?」

奏「えぇ」

五十嵐P「それにしてもこのノート誰が書いたんだ? すごく細かくびっしりレシピが書いてある」

奏「妖精さんか天使じゃない?」

五十嵐P「昨日帰ろうとしたら机の上に置いてあって驚いたよ」

奏「それは役に立った?」

五十嵐P「料理初心者の俺でも分かりやすく丁寧に書いてあって、かなり作りやすかったよ」

奏「そう。なら妖精さんか天使に感謝しなきゃ」

五十嵐P「だな。ところでこの絵もこの人が描いたのか?」

奏「さぁ、わからない」

五十嵐P「この絵どっかで見たことあるんだよな。誰だっけ……3枚もあるのに思い出せない」

奏「ふふ」

響子「…………」

まゆ「いた。捜したわ」

響子「あ、まゆさん」

まゆ「辛いのはわかるけどいきなりああいうことはダメよ? 心配しちゃうわ」

響子「すみません。ハァ、私が結婚できれば……」

まゆ「そうねぇ。16歳にならないと結婚できないものね」

響子「…………」

まゆ「どうしたの?」

響子「こういうとき"歳上"っていいですよね。まゆさんが羨ましいです」

まゆ「そうね。たかが一歳、されど一歳」

響子「…………っ」

まゆ「あまり心配かけちゃダメよ? それじゃ戻るわ──」

晴「うわー」

奈緒「容赦ないな……すぐさまあんな言葉出るなんて」

P「だな。あれでもかなり控えたよ」

晴「あれで?」

P「あれで。まゆなら『あ、それならまゆと一緒にプロデューサーさんのお嫁さんになりますかぁ?』くらいは言ってる」

奈緒「そういえばブライダル系の仕事したらしいな」

晴「結婚出来ないのにか?」

P「さて、絵の感想は聞いた?」

奈緒「あぁ。伝えておくよ。好評だったって」

P「オレは上の階に行ってくる」

奈緒「あたしは出掛けてくる」

晴「どこいくんだ?」

奈緒「晴ちゃんも来るか?」

晴「サッカー出来んの? うまいもんあるとか」

奈緒「サッカーは出来ないけどマンガならある」

晴「行く。ガム持ってこ」

奈緒「そんなに長居しない」

晴「あ、金ねぇや」

奈緒「バス移動だからあたしが出すよ」

晴「じゃ頼む」

P「きちんと頼みなさい」

晴「……ありがとうございます」

奈緒「うん。それじゃ支度したら行くか」

P「気をつけて──」

幸子「ふぅ」

P「お疲れ様」

幸子「やっとですか。昨日の夜連絡したなら朝イチで来るのが礼儀ですよ」

P「すまない」

幸子「お茶も冷めちゃって……入れ直さなきゃいけないじゃないですか」

P「ノート役に立ったよ」

幸子「当然です。ボクが作成したんですから役に立たないわけないじゃないですか」

P「美味しそうなのがたくさんあった」

幸子「事実美味しいです。絵と文章と実食があのノートには詰まってるんですから!」

P「それでこれ作ってみた」

幸子「卵焼きですか。どれ…………ンム……んー」

P「どう?」

幸子「本当にレシピ通り作ったんですか? ボク好みの味じゃないです。即ち、レシピ通りじゃないという事です」

P「出汁は少な目にした」

幸子「ほら、きちんと作ってないじゃないですか。お手本を見せます」

P「色々無理言ってすまない」

幸子「なんのことです。それより今はきちんと見ててください」

P「あのノートのこと」

幸子「それですか。その事でしたら別にどうってことないですよ。ボクにとっても予習になりますし。まぁ、覚える気でやってないから覚えてはいませんがね。そう、ここで塩加減を間違えると味が落ちますから注意してくださいね」

P「なるほど」

幸子「溶きすぎるとコシがなくなってフワッとしなくなります。かといって火の通しが甘いとお腹を壊します。特にお弁当で持つならよく火を通してください」

P「気を付けてる」

幸子「はい、これで完成です。ボクの域まで来るには数年かかりますがまぁお弁当程度なら問題ないでしょう」

P「ありがとう。参考になった」

幸子「本当に覚えたかどうか今度テストします。今は眠いので寝ます」

P「寝不足か。すまない」

幸子「多すぎる謝罪は誠意が感じられなくなります。ま、ボクにとっては朝飯前ですけどね。あ、そうだ。一つ提案があります」

P「提案?」

幸子「ボクをベッドまで運んでください。歩くのが億劫です」

P「わかった」

幸子「ボクに触れられる事を光栄に思ってください」

P「眠気で不機嫌だね」

幸子「寝不足は大敵です。早く運んでください。アッ、変なことはしないでくださいね──」

まゆ「ただいま戻りましたぁ♪」

P「うっぷ……! 飛び込んでくるな」

まゆ「だってぇー」

P「だって何?」

まゆ「響子ちゃんと話してたら愛する人に抱きつきたくなって♪」

P「それなら向こうに行きなよ」

まゆ「ブーブー」

P「近い」

まゆ「くっついてますもの」

P「他の人たちは?」

まゆ「一緒に帰ってきましたけど各々別々の部屋にいきました」

P「なるほど」

まゆ「杏ちゃんもいません。つまりぃ……二人きり♪」

P「そうだな」

まゆ「男と女が二人きりになってやることと言えば一つ♪」

P「これからの事だな」

まゆ「子作り!」

P「それはおかしい」

まゆ「んもぅ。やっぱり響子ちゃんじゃ満足できません?」

P「満足してる。軽くならこの程度で充分」

まゆ「あなたらしくないセリフ。あ、そういえば響子ちゃんと話してるとき睨まれて怖い思いしちゃいました。慰めてください♪」

P「イヤリングから見てたよ」

まゆ「そんなところから見てたなんて。なんだかエッチな響き」

P「それにしても器用」

まゆ「このくらいはどこでも売ってますよぉ」

P「カメラ部分はね」

まゆ「それじゃお風呂に入りながら話し合いましょう」

P「きちんとした話し合いになるか不安だ」

まゆ「裸の話し合いですからねぇ、うふ♪」

まゆ「──ハァー温まりましたぁ。ポカポカ」

P「温まったな」

まゆ「さて、お風呂から出たらぁ、うふふ」

P「ベッドに行くか」

まゆ「今日はまゆの部屋で寝ませんか?」

P「たまにはそうするか」

まゆ「ところで少し遅いですが今日はポッキーの日でしたね」

P「そうだな」

まゆ「黒い棒を食べたり舐めたりする日なんだとか」

P「少し違う」

まゆ「想像してみてください。黒い棒に囲まれてるまゆを。元気になってきません?」

P「別になんともない」

まゆ「そんなこと言ってぇ、ここはこぉーんなに……あら?」

P「な?」

まゆ「あら、あらららららぁ?」

P「それより部屋にいくぞ」

まゆ「はぁーい」

P「明日からはどうする」

まゆ「数字の指定をした方がよかったかしら……4本とか」

P「聞いてる?」

まゆ「聞いてませぇん」

P「膨れるな」

まゆ「ブーブー」

P「着いた」

まゆ「まゆの部屋にようこそぉ!」

P「どうも」

P「久し振りだな」

まゆ「ここで家族計画を……うふふ」

P「その前に明日からの事を決めよう」

まゆ「っ!? ならパパッと決めてピチャピチャと移動してヌプヌプしましょう!」

P「擬音ばっかりだな」

まゆ「明日からどうします?」

P「>>948層に>>950


>>948
ジュニア(12歳まで)かティーン(13歳から19歳まで)かアダルト(20歳以上)かお願いします

>>950
復讐か救済かをお願いします。復讐なら軽くか徹底的か

それ以外は安価下

ティーン

かるーく

P「ティーンに軽く」

まゆ「決まりましたね。それではいざベッドへ」

P「まだ名前をいってない」

まゆ「Pさんの好きな十代女子が待ちきれなくて誘ってるんですよ? 狼のように食いついてこないと。あ、豚のようにでもいいです♪」

P「はぁ……」

まゆ「冗談ですよぉ。こうして話してる方が楽しいです。それで誰なんですか?」

P「>>952


>>952
モバマスのティーンアイドルをお願いします

それ以外は安価下

お嬢

P「お嬢」

まゆ「お嬢?」

P「村上巴」

まゆ「あぁ、巴ちゃんですかぁ」

P「知ってるのか」

まゆ「えぇ、それはもちろん」

P「じゃあ理由は言わなくていいな」

まゆ「それは言っていただかないとわかりませぇん。ほらほらぁ、早くまゆの耳元で囁いてください。早く早くぅ」

P「……>>954


>>954
村上巴に何をされたかをお願いします


それ以外及びあまりにも変なのは安価下

気に入らないって理由で舎弟呼んで恫喝された

P「気に入らないって理由で舎弟呼んで恫喝された」

まゆ「まゆの胸で泣いていいんですよぉ。ほぉーらよしよし」

P「オレが直に恫喝されたわけじゃないんだが」

まゆ「でも怖かったんですよね?」

P「他の人たちに被害が及んだら責任とらなきゃならないしな」

まゆ「それこそ役割以上の越権行為です」

P「取らされる立場になってほしいよ」

まゆ「ところで何がそんなに気に入らなかったんでしょう」

P「仕事の内容。極力"そういう系"は省いてカワイイ系の仕事を割り振ってたんだが、本人曰く、カワイイ系はいらんのじゃ!と」

まゆ「まぁ、贅沢な子。お仕事があるだけいいのに」

P「実家がヤのつく自由業だからね。しかも出身が出身だしさ」

まゆ「さぁ、誰にするか決まったことだし。ベッドの中でぇ」

P「あぁ」

まゆ「やった♪」

P「今日は口をよく動かしてくれ」

まゆ「焦らすのが楽しいのに。でもあなたの頼みならまゆ二十四時間でも頑張っちゃいます♪」

P「さすがに二十四時間はな」

まゆ「いつかやってみたいわ♪」

P「うーん」

まゆ「それじゃっ、いきましょ。早く早く」

P「そうだな。やるか……プロフィールのお復習」

まゆ「っ!?」

P「どうした」

まゆ「んもぅPさんのいじわる!」

P「決まったらするって約束したろ。口を動かしてくれっていったら了承したし」

まゆ「……グスン」

P「読み終わったらきちんとする」

まゆ「……約束ですよ?」

P「約束する」

まゆ「本当の本当に約束ですよ?」

P「破らない」

まゆ「Pさんがその気になるように読んでる最中、手で弄っちゃいます!」

P「ちゃんと読んでよ」

まゆ「袋をイジメちゃいますからぁ♪」

P「はい、プロフィール」

まゆ「それでは……コホン。村上巴ちゃん、任侠パッションな13歳。身長146cm、体重37kg。体脂肪率は17.36でスリーサイズは74・53・76」

P「実家がヤクザ以外は普通だな」

まゆ「あんッとかウっとかシーッハァーとかカワイイ声出してくださいよぅ」

P「慣れかな。それと最後のは可愛いのか?」

まゆ「むっ、マンネリって言いたいんですかぁ? ならもっと本気出さなきゃ♪」

P「プロフィール」

まゆ「続けます。両方♪ 1月3日生まれの山羊座でA型。利き手は右。皮の中をクリクリー♪」

P「指が臭くなるよ」


まゆ「まだおっきくしてあげませんから♪ 出身地は広島県。趣味は演歌と将棋」

P「趣味と刺繍好きと実家以外は本当に普通。明日の晩御飯は広島焼きにするか」

まゆ「じゃあ鉄板出しておきます」

P「頼む。買い物はこっちでやっておく」

まゆ「お願いします。さっ♪」

P「約束は守るよ」

まゆ「うふふ、それではお待ちかねのぉ……アー……っム。マモーム♪」

P「風呂入ったばかりだぞ」

まゆ「むむめみひゃいなムモメムもォ」

P「テンプレ?」

まゆ「ンプッ……はふぅーん♪ Pさんも待ちきれなかったんじゃないですかぁ。先導隊がこんなに」

P「さっきから弄られてればそうもなるよ」

まゆ「冷たいですね。いいですよぉ、まゆがポッカポカにしてあげます♪」

P「このリボンは?」

まゆ「まゆの左手首とPさんの右手首に結びつけてぇ……ホイホ……んッと、はい出来ました♪」

P「結んだ意味は?」

まゆ「今日はこのリボンがほどけないようにしましょう。お互いのことを想いながら」

P「なるほど」

まゆ「それにマンネリ防止にもなりますもの♪ 体位は限られますけど今日は時間がたっぷりありますし、ゆっくりねっとりと……ね?」

P「たしかに時間はたっぷりあるな」

まゆ「その為の人払いも完璧にしましたから心配ないです♪ うふふ」

P「抜かりないな」

まゆ「それではまずはキスから──」

村上巴「帰ったぞワレェ!!」

村上P「ドアを蹴るな!」

巴「手が塞がっとるんじゃ。男ならこんくらい大目にみぃ」

村上P「で、仕事はどうだった」

巴「うちの若い衆が来とったからちょちょいのちょいじゃ」

村上P「ハ? また連れてったのか!?」

巴「お前が一緒に来んのがいかんのじゃ。安心せ、何もしとらん」

村上P「そうそうやられてたまるかよ……」

巴「ふぅ……」

村上P「おい、どこで誰が見てるかわからないんだからその態度はやめろって」

巴「別に胡座くらいええやんけ」

村上P「上がうるさいんだよ。ただでさえ厄介なのに……」

巴「アァ? 何か言ったか?」

村上P「何も。ところでその若い衆は?」

巴「扉の前におる」

村上P「帰ってもらって」

巴「なんでじゃ」

村上P「事務所にガラの悪い人達が出入りしてると評判に響くんだよ」

巴「外見で判断するのは愚か者のやることじゃ」

村上P「いや外見がどうのって話じゃなくてな」

巴「まぁ安心せぇ。次から若い衆は来んから」

村上P「え、マジ?」

巴「オヤジから言われてアイドルやってけぇ借りてるだけじゃ。じゃけど向こうがおおがっそうになるくらい忙し言われたら、戻す以外なかよ」

村上P「ふーん。まぁ暴力沙汰がなくなるならそれでいい」

巴「んなあらましな事せん。ありゃーのうただお喋りしてるだけじゃ」

村上P「若い衆引き連れてそれやったらただのお喋りじゃなくなる。ま、何にしろ大人しくしろよ? ただでさえ忙しいんだから」

巴「言われんでもわかっとる──」

まゆ「ん……ン……ァ…………ハッ」

P「おはよう」

まゆ「おはようございますぅ……あれまゆ……」

P「あのまま寝た。一晩中リボンつけっぱなし」

まゆ「あ、本当だぁ。ぁン……あら?」

P「おまけに一晩中その状態」

まゆ「繋がったまま寝ちゃったんですね。ごめんなさい。そういうときは起こしてくれて構いませんのに」

P「気持ち良さそうに寝てたから起こすのが忍びなかった」

まゆ「それに普段は入るくらい大きくないですよね? あ、もしかして育ったとか♪」

P「計ったことないからわからん」

まゆ「それだけまゆの中が気持ちよかったってことですね♪ まゆは気持ち良さの絶頂で眠り、Pさんも気持ちいい中で寝た。お互い気持ちよく寝れましたね、うふふ」

P「そうだな」

まゆ「ところでさっきからなに見てるんですか?」

P「村上巴のアンチスレ」

まゆ「何て書いてありました?」

P「大体似たようなことだけどまとめるとしたら二つかな」

まゆ「二つ?」

P「>>966>>967


>>966
>>967
村上巴に対する悪口・アンチレスお願いします

それ以外は安価下

話によると気に入らない相手がいるとこわーいお兄さん方を使って恫喝するらしい

どこぞの野球選手のネタ記事みたいに
ファンに対して、些細なことでも「お前に言われんでもわかっとるわ」って言ってそうなくらい短気だよな

P「話によると気に入らない相手がいるとこわーいお兄さん方を使って恫喝するらしい」

まゆ「らしいではなく事実ですよね」

P「ほっきりいって事務所としてもプロダクションとしても迷惑なんだよね。それにそれが目立つといろいろ問題が起きる。特にそこの土地にいる"そういう方達"は面白くない」

まゆ「みんな仲良く出来ればいいのにぃ」

P「だな」

まゆ「もうひとつは?」

P「ファンに対しての暴言。些細なことでも『お前に言われんでもわかっとるわ』って言いそうなくらい短期だよな」

まゆ「応援する人に対してその態度はダメですよねぇ」

P「言い訳をするならライブバトルで劣勢の時の発言だからね。言い訳にもならないけど」

まゆ「そういうときはますます応援に応えなきゃいけません」

P「その気持ちはわからないがそういうものなの?」

まゆ「かけてもらえると嬉しいものです」

P「そうなのか」

まゆ「お互い目も覚めたことだし掛け合いします? 注ぐのでもいいですよ♪」

P「遠慮しておく」

まゆ「でも元気ですよ?」

P「朝から動けない」

まゆ「まゆが動きますよぉ」

P「動かれるのも少し疲れる」

まゆ「えい、えい。右、左♪ 下に下がってコスコスコス」

P「やめてくれ」

まゆ「うふふ♪ はぁーい」

P「……ふぅ」

まゆ「起きたばかりなのにお疲れですね」

P「おかげさまで。朝から元気だよね」

まゆ「精力絶倫ですもの♪ まぁーるかいてちょんっ♪」

P「お腹を弄らないでくれ」

まゆ「こうやって乗ってみてわかります。Pさんのお腹って気持ちいいんですね。杏ちゃんの気持ちがわかる気がします」

P「らしいね」

まゆ「…………」

P「どうした?」

まゆ「あ、いえ少し考え事を……あの子達がいた頃からは想像もできないなぁって思いまして」

P「何が考えられないと?」

まゆ「ん、んもぅ! まゆの口から恥ずかしくて言えませんよぉ」

P「こういう関係になるのがか?」

まゆ「それもそうですけど、前からこういうことはしてきましたよね? お口でですけど。そうじゃなくて、杏ちゃん達のことです」

P「周りに人が集まってること?」

まゆ「はい。前の私なら独占したいと思ってましたけど今は安心感で満たされています。私の人を見る目は間違ってなかったと実感します」

P「読者モデル時代の彼は?」

まゆ「もちろん期待してましたけど結局違いました」

P「……そうか」

まゆ「それはわかってますでしょ?」

P「あぁ」

まゆ「うふ♪ あ、まゆのお腹触ってみます?」

P「やめておく」

まゆ「遠慮しなくていいのにぃ」

P「そろそろ誰か来る時間だ。服を着よう」

まゆ「はぁーい。あら?」

P「固結びになったね」

まゆ「まるでPさんとまゆみたい♪」

P「上手くない。ちょっと貸して」

まゆ「あんっ、そんな乱暴にだなんてぇ♪」

P「ほどけた」

まゆ「すんなりですね。もっと固く結んでおけばよかったかしら……」

P「…………」

まゆ「冗談です。着替えるので手を離してください。それともまゆの生着替え見ていきます? そのまま我慢できなくなったPさんは……キャー」

P「また後で」

まゆ「はぁーい」

P「それじゃ」

まゆ「まゆの手を握って離さないなんて変なPさん…………あ──」

巴「あの女ぁ、てごなんていらんゆうてんのにしつこいんじゃ、ったく!」

村上P「あの女?」

巴「五十嵐響子じゃ。いごいごとてごは?てごは?バカみたいじゃ。いこいごしよって少しは落ち着かんか。待てん女は育たん!」

村上P「それくらいいいだろう。お前に気兼ねなく話しかけてくれる貴重な人材だぞ?」

巴「あんなんじゃ人がいなくなって当然じゃ」

村上P「そういえば明日からのオフはどうすんだ?」

巴「あー休みじゃったな。なぁーんもすることなか」

村上P「ならやってほしいことがある」

巴「てごか?」

村上P「大したことじゃない──」

ほたる「おはようございます……」

P「目の下の隈すごいね。寝不足?」

ほたる「昨日の夜小梅ちゃんに怖い話を聞いて眠れなくて……ふあっぁ」

P「少し休みな」

ほたる「はい……あ、ところで私になにか?」

P「頼みたいことがある」

ほたる「あ、はい。なんでグゥゥゥしょぅ……はぅ」

P「朝御飯は?」

ほたる「ぼうっとしてたら食べ損ねました……」

P「残りだけど食べて」

ほたる「あ、おいしそう」

P「お弁当用の卵焼きを少し変えた。どうかな?」

ほたる「あぁ……」

P「どうした」

ほたる「これが……これが卵焼きでふぅ」

P「卵焼きだよ」

ほたる「殻が入ってない……! 焦げてない! それに……おいひぃ」

P「ゆっくり食べて」

ほたる「あぁ、おいしひ……おいしいです!」

P「寝不足だからテンションが変だね」

ほたる「あ、ところで頼みってなんですか?」

P「買い物をしてもらいたくてね」

ほたる「買い物ですか?」

P「そんな大変なものじゃないし、半分は遊びも入ってる。それとこれを先に渡しておく」

ほたる「これは……遊園地のチケット?」

P「そう。プロデューサーと行ってきな」

ほたる「あ、ありがとうございます」

P「買い物には一緒にいってもらいたい人がいる」

ほたる「や、やっぱり──」

ほたる「えっと、巴ちゃんは……」

巴「おうここじゃここじゃ! ほたる、ここじゃ」

ほたる「ひ、ひぃ! 目立ってるよぉ」

巴「遅かったのぉ!」

ほたる「ちょっと電車が遅れちゃって……ごめんなさい。あれ?」

巴「なんじゃ?」

ほたる「そこ糸解れてる」

巴「あぁ、これか。ヒマじゃからそこらへんと遊んだだけじゃけぇ」

ほたる「あ、遊んだ?」

巴「臨時収入も入ったしのぉ」

ほたる「り、臨時収入……?」

巴「治療代じゃ」

ほたる「そ、それじゃ行こう」

巴「なんじゃビクビクしながらキョロキョロして。胸張らんか、胸ぇ!」

ほたる「私の近くにいると不運が……」

巴「なんじゃそんな事か。安心せい! うちがいる限り、今日は不幸なんて近付かせん! うちの全てをかけて守っちゃる!」

ほたる「もうこれが不運だよぉ……うぅ」

巴「なにぶつくさっとる。女は度胸じゃ!」

ほたる「ほ、本当に守ってくれる……?」

巴「二言はなか! 守れなかったらなんでも言うこと聞くけぇ!」

ほたる「そ、それじゃあ──」

巴「しっかしここはおかしげな奴らばかりじゃ」

ほたる「そうかな……」

巴「そうじゃそうじゃ。いいとこ妙ちくりんな格好しかおらん。なんちゅうたかなこういうん……」

ほたる「オタク?」

巴「そうそうそうそう。男らしゅうないっちゅうか。若い衆にはおらんタイプじゃ」

ほたる「たしかにオタクさんに見えるけどみんながみんなそうってわけじゃ……」

巴「おっ」

ほたる「どうしたの?」

巴「これ見ぃ。イカすけぇ」

ほたる「り、龍……?」

巴「こんな妙ちくりんなとこにこんなのがあるなんて今日はええ日になるかもしれん!」

ほたる「買うの?」

巴「臨時収入もあるしのぉ。値段は……微妙じゃの」

ほたる「お金足りないの?」

巴「買えないわけじゃない。けどもこれからのこと考えるとちぃ苦しいんじゃ」

ほたる「そうなの?」

巴「いっつもなら若い衆と遊ぶんじゃけどもうおらんけぇ。チンチロや株が懐かしいのぉ」

ほたる「デイトレード?」

巴「なんじゃそりゃ」

ほたる「トレーナーさんのお姉さんがやってる」

巴「そげなものじゃない。くそっ、やっぱり考えがまとまらん」

ほたる「買い物出来るかな……」

巴「あ? なんか言った?」

ほたる「う、ううんなんでもない」

巴「そろそろ行くかぁ──」

晴「共演えぬじぃ? なんだよそれ」

奈緒「知らないならいい。変なこと聞いて悪かった」

晴「共演なんたらってなんだよ。気になる」

奈緒「知らないなら知らないでいい」

晴「隠し事すんなよー。なーなー」

P「何してるの」

晴「おっ、よっす。なんか隠し事してっから問い詰めてる」

P「隠し事?」

奈緒「大したことじゃない」

晴「あ、ちょうどいいや。共演えぬじぃってなんだ?」

P「共演NG?」

晴「あぁ。それがオレにあるかどうか聞いてきたんだよ」

P「神谷さんが?」

晴「あぁ。意味がわかんねえから聞いたんだけど教えてくれなくってよ」

P「共演NGっていうのは一緒の仕事現場にいてほしくない人、顔を会わせちゃダメな対象のことを指す言葉」

晴「どういうこと?」

P「例えるなら、可愛い服を着せたがる人がいるとしてその人と仕事したい?」

晴「やだ」

P「それの事」

晴「あー、要は選り好み?」

P「それとは違う」

晴「嫌いなもんとは一緒にいたくないっつうこと?」

P「噛み砕いて言うとそう。細かくいうと嫌いなものだけじゃなくてそうじゃなくても対象になりうる。例えば犬アレルギー」

晴「犬がダメな人の事だよな? それはわかる。病気ならしかたないもんな」

P「そういうこと」

晴「オレのクラスにもあるな。なんかオレの事が嫌いな女子がいる。そいつにとってオレは共演えぬじぃ対象ってことか」

P「そうかもね」

晴「なるほどな。勉強になった。こんなことなら教えてくれたってよかったのに」

奈緒「うっ」

P「神谷さんにも色んな考えがあっての事だよ」

奈緒「……まぁ」

晴「難しいことわかんねえけど、オレのこと考えてくれたってことだよな? だとしたらありがと」

奈緒「あ、あぁ……」

晴「あ、それじゃこれ借りてくっから!」

奈緒「汚さないでな」

晴「わーってるって」

奈緒「…………」

P「…………」

奈緒「それであたしに何か用事?」

P「思い詰めた顔してたから気になってここに来た」

奈緒「……よく見てんな」

P「表情に出てたから」

奈緒「どうせあたしは眉毛が太いっての……」

P「何を悩んでたの?」

奈緒「……あたしにも共演NGってあんのかなって」

P「オレがいた頃はこちらからも他からもない」

奈緒「……そっか」

P「何か気になることでも?」

奈緒「ちょっとな……」

P「渋谷凛のこと?」

奈緒「……違う」

P「北条さんのこと?」

奈緒「…………」

P「……そうか」

奈緒「嫌われたんじゃないかって思ったんだ……」

P「…………」

奈緒「連絡しても返ってこない……悩みがあるっぽいのに相談してくれなかった。だから……あたしのことが迷惑なんじゃないかって」

P「どうなのかわからない」

奈緒「ほら、あたしってこんなんだろ? この歳でアニメ観てるしさ。アニオタっていいイメージないでしょ? それに……あたしが見た加蓮はそりゃもうキラキラしてた。だから余計にあたしが重荷になってるんじゃないかって」

P「…………」

奈緒「あたしって、その……素直になれないとこあるんだよ。恥ずかしいっていうか怖いっていうか……」

P「それで?」

奈緒「知ったところでどうにか出来るってほどの力もない。けど……けど……辛いよ」

P「北条さんのプロデューサー」

奈緒「それが、なに」

P「よく同僚に話してたって。最近担当アイドルが同じユニットの友達の話ばかりして少し妬けるって」

奈緒「……加蓮」

P「嬉しそうな反面、突っ走らないか心配だとも言ってた」

奈緒「加蓮のやつ……あた、あたしだけじゃなくて……プロデューサーにも、め、迷惑かけて……バカ……ウゥ」

P「…………」

奈緒「ホント、バカだよッ……ちくしょう」

P「……オレは戻る──」

P「…………」

奏「何を見てるの?」

P「こんにちは」

奏「こんにちは、か。久しぶりに聞いたような気がするわ。いつもはおはようだから」

P「何か用事?」

奏「迷いながら悲しげにケータイを見るあなたを見たら何をしに来たか忘れた」

P「用事がないなら帰って」

奏「ないわけじゃない。忘れただけよ。だから思い出すまでここにいていいかしら? それとも思い出す時間を与えることさえ惜しいのかしら?」

P「静かにしてるならいい」

奏「それには自信があるわ」

P「ならそうして」

奏「えぇ……」

P「…………」

奏「…………」

P「…………」

奏「…………」

P「…………」

奏「ねぇ……」

P「何?」

奏「静かね」

P「そうだな」

奏「このまま物言わぬ置物になりそう……それくらい静か」

P「平日だからね。それにしても今日は早かったね」

奏「早く終わったのよ。なぜかしらね。こんな日だからかしら? みんな風景に消え行きたいのかもしれないわ」

P「テスト週間か。テスト勉強しないでいて不安にならない?」

奏「テストというのは日頃の積み重ねだもの。慌てて取り繕ってもボロが出るだけ。それにペンの音だけが自分の存在を示すよりも、誰かの息遣いを感じていたいの」

P「事務所にいけば感じられるよ」

奏「静かな息遣いが好き。荒々しいのもいいけどね。それに好きなのよ、そのコシュッコシュッていう指が擦れる音とコツ……コツ……トントンっていうケータイを弄る音が」

P「そうか」

奏「まぁ、用事というのはこの事なんだけどもね」

P「なら静かにしよう」

奏「そうね」

P「…………」

奏「…………」

P「…………」

奏「ねぇ……」

P「……何?」

奏「私は貴方を感じてるけど、あなたは私を感じてる? 私の息遣いや服が擦れる音。感じてる?」

P「感じてる」

奏「……美優さんが言ってたことがわかる気がする」

P「何を言ってたの?」

奏「秘密よ」

P「そう」

奏「声を発しなくても存在をわかってくれる人ってかけがえのない存在よ」

P「そうだね──」

みく「にゃんにゃんうにゃーん♪」

まゆ「にゃにゃんぅにゃぁぁん♪」

みく「うんうん、いい感じにみくのアイデンティティがクライシスにゃ」

輝子「ニャァァァァンニャンウゥワァァァァァニャァァァァァン!!!」

みく「うっさいにゃ」

輝子「フヒヒ、サーセン……」

まゆ「元気があっていいと思うわ」

みく「次は猫じゃらしの素振りにゃ」

輝子「フヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

まゆ「速いわぁ♪」

みく「そんなんじゃだめにゃ。猫ちゃんによって振り方を変えなきゃそっぽ向かれる。落ち着きがない子にはゆっくり降るにゃ」

輝子「こ、これが欲しいんだろぉ……? フヒ」

まゆ「なんかエッチな感じね。まゆに出来るかしら」

みく「問題ない気がするにゃ。フム……二人とも好きに振ってみるにゃ」

輝子「ほ、ほぉら……ね、ねこじゃらしだぞー……フ、フヒ」

まゆ「…………」

みく「まゆチャン振り方カワイイけど顔が怖いにゃ」

まゆ「っ!! 輝子ちゃーん」

輝子「よ、よしよし。な、なんてやつだ……!」

みく「顔は猫ちゃんを見つつも怖くない表情じゃなきゃダメにゃ。表情も猫ちゃんによって変えるにゃ」

まゆ「猫のことになると真剣ねぇ」

みく「みくはいつでも真剣にゃ。まゆチャンのPチャンみたいなものにゃ」

輝子「恋人……ということはネコが恋人?」

まゆ「私の恋人はプロデューサーさん♪」

みく「みくの恋人は普通の人間がいいにゃ」

まゆ「猫と人の恋……素敵ね」

みく「出来れば背が高くてヒィィィィ!!がいいにゃ」

まゆ「?」

みく「ちょっと待って、今のなに」

輝子「蘭子の悲鳴……かも」

まゆ「小梅ちゃんとホラー観てるからその声じゃないかしら。心配ねぇ」

みく「ここって防音大丈夫なの?」

まゆ「それは大丈夫。昨日声聞こえなかったでしょ?」

みく「なんのことにゃ?」

まゆ「なぁーんでもないわ。うふ♪」

蘭子「鮮血の宴! ヒッ、屍の舞踏会!!」

小梅「ワンパターン……」

蘭子「輪廻の既視感だと!? 屍乙女よ! 我の耳に届かぬものがあるなど!」

小梅「えっとね……こういうの、よ、よくある……扉開けたらバーン……って……あ、次は日本の……観よ」

蘭子「静かなる陰の恐怖……!」

小梅「あんまり観ないけど……その…………蘭子ちゃんとなら……観たい……」

蘭子「無垢なるその心が我を殺すと言うのか!?」

小梅「あ、始まった……」

蘭子「墓場への一歩を踏み出す度に武者震いが止まらなヒッ」

小梅「……あのね…………」

蘭子「何ようだ屍乙めへェェッ!?」

小梅「一緒に……み、観て、くれて……ぁ……ありがとう」

蘭子「乙女の悲鳴! 戦士の断末魔……! 魔力が暴走するっ……!」

小梅「聞いてない……けど…………いっか、ふふっ…………手つなご?」

蘭子「来るなら来い……フフッ……ハハ……フハハハハハ──」

新スレ立てました
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それでは新スレで

P「安価でアイドルに復讐する。8スレ目」【捌きか末広がりか】 - SSまとめ速報
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このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月25日 (月) 07:35:12   ID: JdLtSq6U

これまだ続いてたのかよ死ね
胸くそわりい

2 :  SS好きの774さん   2014年09月19日 (金) 23:59:03   ID: 9g0INJGb

復讐嫌いな人もいるだろうけど
救済されたアイドル達の日常だけでも読んでほしい
特にまゆ・杏・小梅・蘭子が好きな人にオススメ

3 :  SS好きの774   2014年11月09日 (日) 00:28:51   ID: cvrEEUnN

いままでの復讐されたアイドルの末路誰かまとめてくんないかな

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