セシリア「もしも一夏さんが、わたくしにぞっこんだったら!」 (108)




     その日は、そよ風が、とても気持ちのいい日でした。

     わたくしは気分転換に、IS学園裏の雑木林を抜けた先にある

     丘を目指して歩いていました。

     一夏さんと一緒に来たら、きっと楽しいでしょう……そんな事を考えながら。

     そして……わたくしは、アレを見つけましたの。

 
     

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セシリア「…………?」

セシリア「……なんですの? これ?」

セシリア「デザインは、古めかしいですけど……」

セシリア「電話ボックスの様ですわ」

セシリア「…………」

セシリア(おかしいですわね……)

セシリア(わたくし、これをどこかで見た様な……?)

セシリア(………) ウ〜ン…


セシリア「…あ!!」

セシリア「そうですわ!」

セシリア「ラウラさんに見せてもらった、日本のアニメーション!」

セシリア「あれに出てきた、ミラクルアイテムですわ!」

セシリア「…………」 マジ マジ

セシリア「だとしても」

セシリア「誰が、何のために……?」

セシリア「…………」


セシリア(…………) ウズ ウズ

セシリア(だ……誰も、見ておりませんわよね……?)

セシリア(…………)

セシリア(ちょ、ちょっとだけ……)

     カチャ…キィ…………パタン

セシリア「え〜っと、確か……」

セシリア「もしも一夏さんが、わたくしにぞっこんだったら!」

セシリア「ふふふ……なんt」

     ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!

セシリア「!!??」

     ガチャ! キイッ…バタン!


セシリア「…………」 ドキ ドキ

セシリア「……なんですの?」

セシリア「まったく、手の込んだイタズラを……!」

セシリア「ブルーティアーズ!」 スウウウウウウンッ!

セシリア「どこの誰か、わかりませんが……」

セシリア「このイギリス代表候補生セシリア・オルコットをコケにして」

セシリア「タダでは済みません事ですわよ!!」 ヒュン ヒュン!

     ボウンッ…!!

セシリア「……ふん」

セシリア「ブルーティアーズ、待機へ……」 スウウウウウウン…

セシリア「まったく……せっかくの気分が台無しですわ……」

     スタ スタ スタ…


 ——夕方——

 ——IS学園寮・セシリアの部屋付近——



     コン コン

セシリア「はい? どなたですか?」

??「セシリア、俺だ、一夏だ」

セシリア「まあ、一夏さん。 少々お待ちください」

     …ガチャ

セシリア「どうなさいましたの? 一夏さん?」

一夏「いや……セシリアの顔が見たくなって」 ///

セシリア「!?」 ドキッ///

セシリア「い、いきなり、な、なんですの? 一夏さん……」 ///


一夏「あー、いや。 半分冗談だよ、セシリア」 クスッ

一夏「晩飯、一緒にどうかな? と思って誘いに来たんだ」

セシリア「!?」 ///

セシリア(い、一夏さんが、わたくしを食事に!?) ///

一夏「……もしかして、もう済ませたのか?」

セシリア「い、いえ! まだですわ!」 ///

一夏「そうか。 良かった」 ニコッ///



セシリア(う、うれしいですわ!) ///

セシリア(こんな事……わたくしから誘う事はあれど……)

セシリア(一夏さんから誘っていただいた事なんて、一度も無かったのに……) ///

セシリア(一体、どうされたのでしょう……?) ///


一夏「じゃ、行こうか?」 スッ…(腕を差し出す)

セシリア「? 何ですの? 一夏さん?」

一夏「……え?」



一夏「今日は……腕を組んでくれないのか?」



セシリア「!!?」 ドキッ///

一夏「あ……いや、そうだよな。 気分的にダメって時も……」

セシリア「い、いえ! そ、そんな事 ありませんですわ!」 グッ

セシリア「さ、参りましょう!」 ニコッ///

一夏「そ、そうか、良かった……」 ホッ…///

セシリア「うふふ……」 ///


セシリア(一夏さんが、わたくしと腕を組みたがるなんて……) ///

セシリア(しかも、それが当たり前の様に……) ///

セシリア(はあ……。 一体、何が起こったのでしょう……?) ///

セシリア(一夏さん……) ///


 ——食堂——



一夏「今日は、カレイの煮付け定食にするかな」

セシリア「わたくしは、カレイのムニエルをいただきますわ」

     アハハ…

一夏「さて、いよいよ明日だな」

セシリア「?」

セシリア「何か、ご予定が?」

一夏「」

セシリア「一夏さん?」


一夏「……すまんセシリア。 俺……何か、気に障る事をしたのかな?」

セシリア「???」



一夏「明日……デートしようって、前から約束してただろ?」



セシリア「…………」

セシリア「ええっ!?」 ///

一夏「……もしかして」

一夏「忘れてた……のか?」


セシリア「い、いえっ! ……そのっ!」 ///

セシリア(どどどどど、どういう事、ですのっ!?) ///

セシリア(その様な約束、交わした覚えなどありませんが……!?) ///

一夏「……セシリア?」

セシリア「は、はいっ!?」 ///

セシリア(と、とにかく、お話を合わせておかなくてはっ!) ///

セシリア「す、すみません……わたくしとした事が……」 ///

セシリア「うっかりしておりました……。 ごめんなさい」 ///

一夏「あー……いや、誰だって、そんな時、ある、さ。 ハハ…」

一夏(正直、ちょっとショック……) シュン…


一夏「えっと……まず、午前中は植物園」

一夏「それから昼飯食って、ショッピング……」

一夏「後は、港近くの公園をブラブラしようかな?って思ってるんだけど」

一夏「どう……かな?」 ///

セシリア「はい! そ、それで構いませんわ!」 ///

セシリア(どの様な所であろうとも、一夏さんと一緒なら) ///

セシリア(それだけで、わたくしは……) ///

一夏「そうか……楽しみだな」 ニコ ///

セシリア「はい、一夏さん」 ニコ ///


 ——翌日の朝——

 ——モノレールIS学園駅前——



セシリア「一夏さん! お待たせしました」

一夏「おう、セシリア」

一夏「…………」 ///

セシリア「……? どうなさいましたの?」

一夏「い、いや……」 ///

一夏「セシリア……いつも綺麗だけど……」 ///

一夏「今日は、格別だな」 ///

セシリア「い、一夏さん……」 ///

セシリア(う、うれしい、ですわ……) ///


 ——午前中——

 ——植物園——



一夏「よし、着いたな」

セシリア「はい」

セシリア「ちょうど、秋口の花が見頃ですわね」

一夏「まあ情緒なく言うなら温室で一年中、様々な花が見れるけどな」 クス

セシリア「ふふ。 では、行きましょうか? 一夏さん」 ニコ


 ——植物園——

 ——中央庭園——



一夏「おお……」

セシリア「まあ……」

一夏「綺麗だな」

セシリア「ええ……本当に」


セシリア「あ、ラベンダーですわ、一夏さん」

一夏「へえ……これがそうか」

一夏「日本だと北海道の風物詩、ってイメージが強いな」

セシリア「あら? そうですの?」

セシリア「わたくしにとってはハーブの一つ、というイメージですわ」

一夏「ああ、そうか。 そういやハーブだっけ、ラベンダー」

セシリア「今の時期ですと……セージなども花を付けますわ」

一夏「へえ……勉強になるな」

セシリア「今度、美味しいハーブティーをご馳走しますね」 ニコ


セシリア「これは……? 珍しいお花ですわね?」

一夏「ん? どれが……って、彼岸花か」

一夏「確かにイギリスには無さそうだな」

セシリア「ヒガンバナ?」

一夏「毎年、冬から春、夏から秋へと季節の変わる時期に咲く花で」

一夏「日本では、『暑さ寒さも彼岸まで』なんて言葉もあるんだ」

セシリア「まあ……季節の変化を告げる花なのですか……」

セシリア「日本には、素敵なお花があるのですね」

一夏「本当は中国原産の花で、言葉も彼岸の『時期』を指すんだけどな」 ハハ…

セシリア「ふふ、そうなんですの? でも、勉強になりますわ」 クスッ


セシリア「…………?」 クンクン

一夏「? どうした? セシリア?」

セシリア「いえ……なんだか、とてもいい匂いがして……」

セシリア「なんでしょう? 柑橘系の様な匂いですわ」

一夏「……?」 クンクン

一夏「ああ、金木犀の匂いだな」

セシリア「キンモクセイ?」

一夏「ええと……」 キョロ キョロ…

一夏「あった。 あれだ。 あの木」


セシリア「まあ……これは、とても強い香りの花ですわね」

一夏「木、全体で花を付けるからな」

セシリア「これだけ香りが強いと……お茶などに入れるのは、向きませんわね」

一夏「おっ? 金木犀のネームプレートに説明があるな」

一夏「何々……花言葉は『謙遜』『真実』『陶酔』『初恋』……」

一夏「へえ、花を白ワインに漬けて熟成させて、飲んだりもするんだって」

セシリア「ワインに、ですか」

一夏「まあ、これだけ香りが強いとな……」

セシリア「大人になってから、ですわね」 クスッ


 ——植物園・温室コーナー ——



セシリア「ふわっ!?」

一夏「!? どうした!? セシリア!?」

セシリア「い、いえ、何かが……髪の毛に……」

一夏「ああ……なるほど、引っ掛かったのか」

一夏「よし、取ってやるから」

セシリア「お願いしますわ、一夏さん」

一夏「…!!」

セシリア「……? 一夏さん?」

一夏「ん? あ、いや……何でも無い。 ちょっと待っててくれ」

セシリア「はい」


     ガサ ガサ…… ガサ ガサ……

一夏(うっ…くっ…このっ…)

一夏「……よしっ! 取れたぜ、セシリア」

セシリア「ありがとうございます、一夏さん」

一夏「じゃ、行こうか」

セシリア「まったく……このセシリア・オルコットの髪を絡めるなどと」

セシリア「無礼を働くのは、どの様な木なのかしら?」

一夏「あっ……」

セシリア「……!?」

セシリア「こ、これは……」


セシリア「柊(ひいらぎ)の木……!」

一夏「あー……」

セシリア「一夏さん、手を……手を見せてください!」

一夏「大丈夫だって」

セシリア「一夏さん!」

一夏「………はい」

セシリア「!! こんな……こんなに傷だらけに!!」

一夏「別にいいって。 そんなに血も出てないし」

セシリア「……ごめんなさい、一夏さん」

一夏「気にするなよ、セシリア」




一夏「……セシリアの綺麗な手が、こうならなくて良かったって思っているんだから」 ニコ



セシリア「……!!」 カアッ ///

セシリア「い、一夏、さんっ……」 ///

セシリア(……紳士、ですわ) ///

一夏「さっ、次に行こう」


———————————


一夏「おっ……あったあった」

セシリア「……? 一夏さん、先程からお探しになっていたのは、その花ですの?」

一夏「ああ……そうさ。 なんて言ったってこれは」

一夏「セシリアだからな」 ニコ

セシリア「わたくし?」

一夏「そう」


セシリア「そのお花は……牡丹ですか?」

一夏「へえ、セシリア、牡丹を知っているのか」

セシリア「バラに少し似ているので……調べた事がありますの」

一夏「なるほど。 でも牡丹じゃない。 惜しいけどな」

一夏「これは芍薬(しゃくやく)だよ」

セシリア「シャクヤク……」

一夏「……日本には、こんな言葉があるんだ」

一夏「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はユリの花……」




一夏「美人の姿を花に例えた言葉なんだ」 ///



セシリア「!!!」 ドキッ ///

セシリア「うあっ……そのっ……もうっ! い、一夏、さんっ……!」 ///

セシリア(ほ、ホントに、どうされましたの……? 一夏さん) ///

一夏「ハハハ……それに、この花は凄いんだぜ?」


一夏「薬(くすり)の漢字が名前に使われているけど、実際、薬草なんだ」

一夏「根っこをすり潰して傷に塗ると、殺菌、消炎効果があるし」

一夏「食べても薬になる生薬(しょうやく)なんだ」

一夏「その代わり、すっごく苦いけどな」

セシリア「ふふっ、一夏さんは物知りですわね」

一夏「はは、いや、さ……まさに俺にとってセシリアがそうだから、さ」

一夏「セシリアと一緒に居ると……ううん、顔を見るだけでも俺は」

一夏「元気になれるから……」 ニコ///

セシリア「はわっ……! わわ……わ……」 ///


セシリア(ああ……もうっ。 こ、こんなに言ってもらえるなんて) ///

セシリア(か、体が、溶けてしまいそうっ……!) ///



一夏「さて、そろそろ お昼にしないか? セシリア」

セシリア「は、はい、一夏さん」 ///

一夏「よし、それじゃあ、レストランに行くか」 ニコ

セシリア「ええ」 ニコ///


 ——昼——

 ——レストラン——



一夏「さて、何にするかな……」

一夏「おっ、季節の旬野菜セット、なんてのがあるな」

セシリア「では、わたくしはそれを注文してみますわ」 ニコ

一夏「面白そうだ……。 俺もそれにするかな」 クスッ


一夏「人参、ゴボウ、春菊、チンゲン菜、そしてキノコのかき揚げ……」

一夏「おっ、汁物はけんちん汁か。 徹底してるな」

セシリア「この……ドロっとした物体は、一体何ですの……?」

一夏「ああ、それはおろした山芋だよ」

一夏「『とろろ芋』とかって、呼んだりもしてる」

セシリア(納豆、梅干に次ぐ、ジャパンビックリメニューですわ……)

一夏「まあ……強くは進められないけど、美容と健康にとても良い食べ物なんだぜ?」

セシリア「あら、そうですの?」

一夏「栄養もさることながら、繊維質が豊富でな。 整腸作用があるんだ」

セシリア「むむっ。 それを聞いては、引くに引けませんわね」


     アリガトウ ゴザイマシター

一夏「大丈夫か? セシリア?」

セシリア「……味は、嫌いでは無いのですけど……食感が……」

一夏「無理に食べなくても良かったのに……」

セシリア「いえっ! 美容に良いとあれば! 食べない道理は、ありませんわ!」 ゴオオッ!

一夏「次は、美容と健康に良くて」

一夏「セシリアが、美味しいと思えるメニューを調べておくよ」 ニコ

セシリア「一夏さん……」 ///


 ——午後——

 ——ショッピングモール——



一夏「さて、着いたけど、何を見る?」

セシリア「そうですわね……先ずは、服、でしょうか?」

一夏「よし、服な」


———————————


一夏「…………」

     バサッ バサッ バサッ…

一夏「お、おい、セシリア。 まだ選ぶつもりか?」

セシリア「うふふ、ご心配なく」

セシリア「全部買うわけでは、ありませんから♪」 ルンルン♪

一夏(軽く10着は選んでるぞ……)


     ゴソゴソ……シャッ…

セシリア「一夏さん、これはいかがでしょう?」

一夏「うん、似合っているぞ」

セシリア「そうですか? 3つ前の服と同じ様な色なのですが……」

一夏「デザインがセシリアに合ってる」

一夏「やっぱりロングスカートの方がよく合うな」 ニコ

セシリア「一夏さん……」 ///



———————————


セシリア「では、これとこれと……これを購入しますわ」

一夏(3着……しかも全部ブランド物……)

一夏(値段も一桁上だし……)

一夏(学生の身分で出せる金額じゃねぇ……) クスン…

     アリガトウ ゴザイマシター

セシリア「お待たせしました、一夏さん♪」

一夏「おう……」

セシリア「? どうかなさいましたか?」

一夏「な、何でも無い」


 ——夕方——

 ——港近くの公園——



セシリア「はあ……風がとても心地よいですわ」

一夏「疲れてないか? セシリア」

セシリア「はい、一夏さん」

セシリア「荷物は宅配サービスにしてもらいましたし」

一夏「便利な世の中になったよな」 クス

セシリア「そうですわね……」

セシリア(幼い頃……荷物持ちばかりしていた、お父様の事を思い出しましたわ)

セシリア(…………)


セシリア(思えば、男などくだらない存在だと思っていたのに)

セシリア(それを打ち壊したのは一夏さんでした……)

セシリア(女尊男卑の世の中で、前時代的な感覚を持っている人)

セシリア(始めはそうでしたのに……)

セシリア(物怖じせず、はっきりと自分の意見を言う一夏さん……)

セシリア(そんな一夏さんを、いつの間にか、わたくしは……) ///


一夏「セシリア?」

セシリア「! は、はい?」

一夏「い、いや……座らないか?」

一夏「そこのベンチ、空いてるぜ?」


セシリア「そ、そうですわね、座りましょう、一夏さん」

     ストン(着席)

セシリア「……夕日が、綺麗ですわ」

一夏「ああ……本当に」

セシリア「…………」

一夏「…………」

セシリア(……い、今、気がつきましたけど)

セシリア(あたりに人けはなく……わたくし達二人きりで……) ///

セシリア(しかも薄暗くなりつつある、こ、この、ふ、雰囲気は……) ///

セシリア(もしかして……もしかしますの……?) ドキドキ///

一夏「…………」 ///


一夏「セシリア……」 ///

セシリア「は、はい……」 ///

一夏「今日は……楽しんでもらえたかな?」 ///

セシリア「もちろんですわ」 ///

セシリア「わたくしは、一夏さんと一緒なら……」 ///

セシリア「どこでも楽しいです」 ///

一夏「そうか……」 ///

一夏「俺も……セシリアとなら、どこでも楽しく過ごせる」 ///

セシリア「一夏さん……」 ///




     ……それ以上の言葉は、不要でした。

     一夏さんは、わたくしの肩に優しく手を回し……反対側の手で

     わたくしの顔を一夏さんの方へ向けさせました。



     わたくしは……目を閉じて、一夏さんのなすがままに任せ、そして……

     自分の唇に……そっと、何かが触れるのを感じて……んっ。



     なんて……甘美な感覚。お互いが、お互いを支配し、支配される様な

     奇妙で、とても甘く、濃厚な瞬間……。


     




     全身に……力が入らない……。

     まるで、溶けてしまいそうな、そんな恐怖すらも快感に感じてしまう。



     ああ……このまま……時を止めてしまいたい。

     大好きです、一夏さん……。


     


 ——翌日の朝——

 ——1組教室——



セシリア「フフ〜ン、フン♪」

セシリア(はあ……夢の様なひと時でしたわ) ///

セシリア(あんなに積極的な一夏さん……少し違和感がありますが)

セシリア(素敵なのは、変わらないですわ) フフフッ♪

セシリア(…………)

セシリア(それにしても……)

セシリア(デートの約束など、いつ交わしたのでしょう?)

セシリア(それだけが気になる所ですが……)


箒「…………」

セシリア「あ、箒さん。 おはようございます」

箒「!?」

セシリア「……? どうかなさいましたか?」

箒「…………」

箒「いや……おはよう」

箒「オルコット」

セシリア「!?」

セシリア「…………」


一夏「おはよう、セシリア」

セシリア「あ……おはようございます、一夏さん」

一夏「……箒と何かあったのか?」

セシリア「い、いえ……挨拶を交わしただけですわ」

一夏「そうなのか……ならいいんだが」

一夏「そうだ、昼なんだけど……食堂で新メニューが登場するらしいぜ?」

セシリア「あら、それは是非とも試したいですわね」

一夏「当然、競争率は高くなるだろうから食えるか分からないけどな」

一夏「一緒に行くか?」

セシリア「はい、喜んで♪」

一夏「じゃあ、決まりだな」 クス


セシリア「…………」

セシリア「……ところで、一夏さん」

一夏「ん?」

セシリア「ラウラさんと、シャルロットさんは、今日お休みなのでしょうか?」

一夏「……!?」


     ザワッ……!


セシリア「……え?」

セシリア(な、なんですの? この雰囲気……)

一夏「……セシリア」

一夏「今のは、さすがに冗談でも笑えないぞ?」

セシリア「え? あ、あの……わたくし……」


一夏「…………」

一夏「……冗談で言ったんじゃないのか?」

セシリア「は、はい……、一夏さん」

一夏「…………」


山田「はーい、皆さん。 席に着いてくださーい」

山田「HRを始めまーす」


一夏「……ともかく、後で……休憩時間にでも話そう」

セシリア「わかりましたわ」

セシリア「…………」


 ——休み時間——

 ——どこかの個室——



一夏「セシリア、あんまり時間がない」

一夏「今朝のひと言、冗談じゃ無いなら……本気で言ったって事か?」

セシリア「ええ」

セシリア「ご学友の事を普通にたずねたつもりですけど……」

一夏「…………」

一夏(……記憶喪失?)

一夏(そういや、俺とのデートの約束を、まるで覚えてないみたいだった)

一夏(原因は分からないが……ありえるな)


セシリア「一夏さん?」

一夏「ん? ああ、すまない」

一夏「…………」

一夏「……そうだな、今日の昼休み」

一夏「予定を変更して、購買で弁当か何か買って、屋上で取ろう」

一夏「ちょうど、話したい事も出来たしな」

セシリア「はあ……」

一夏「詳しい事は昼休みに」

セシリア「分かりましたわ、一夏さん」


 ——昼休み——

 ——屋上——



一夏「ごちそうさま」

セシリア「ごちそうさまでした」

一夏「……さて、セシリア」

セシリア「はい」

一夏「本題に入るけど……」

一夏「その前に聞きたい事があるんだ」

セシリア「何でしょうか?」

一夏「何か……無かったか?」


セシリア「何か……とは?」

一夏「例えば、記憶を失う様な……頭を強く打ったり、とか」

セシリア「いえ……その様な事……」

セシリア「…………」

セシリア(……!!)

セシリア(まさか……)

セシリア(あの……ミラクルアイテム!?)

一夏「……心当たりがあるのか?」

セシリア「! い、いえ……」


セシリア(…………)

セシリア(……ほ、本物、でしたの!?)

セシリア(…………)

セシリア(では……この一夏さんは)

セシリア(わたくしの理想の一夏さん、という事……?)

セシリア(……!!)


     ……その時、わたくしは、思い出した事に戦慄を覚えました。


セシリア(あ……あ……)

セシリア(わたくし……あれを……)

セシリア(破壊してしまいましたわ……!!)


一夏「どうしたんだ? セシリア?」

セシリア「…………」

一夏「セシリア?」

セシリア「一夏さん……」

一夏「うん」

セシリア「わたくし……何が起こったのか、すべて把握いたしました」

一夏「え?」

セシリア「……ですが」

セシリア「まず、先にラウラさんや シャルロットさん……」

セシリア「それから、箒さんと 鈴さんの事も教えてください」

一夏「…………」

一夏「わかった」




     そこからの話は……衝撃的でした。

     最初に一夏さんが転校してきてからすぐに、わたくしとひと悶着あった。

     そこまでは同じでした。



     けど、意見を言い合う内に打ち解け、そのまま恋仲となり

     そして、わたくしとお付き合いが始り、公認のカップルとなった模様です。



     箒さんも、新たに転校してきた鈴さんも、わたくしが居るにもかかわらず

     一夏さんに告白をした様ですが……あえなく撃沈したとの事……。

     箒さんが微妙なお顔をされた理由が、やっとわかりましたわ。


     




     それから転校してきたシャルロットさん。

     彼女は、男装がバレた時点でそのまま強制送還された、との事。

     ……IS学園の特記事項は使われなかった様です。



     さらにその後、転校してきたラウラさん。

     彼女は最初、一夏さんを憎んでおられました……。



     わたくしも経験しましたが……鈴さんと二人がかりで彼女一人に負け

     危ない所を一夏さんに救われました。


     




     ところが、そこで一夏さんに異常な執着を見せるラウラさん。

     織斑先生に止められたにもかかわらず一夏さんに襲いかかり、その場で暴走。

     そのまま織斑先生に峰打ちを繰り返され……命を落とす事に……。



     ……最後に福音事件。

     一夏さんが箒さんとの共同作戦に失敗し、その後、生死の境をさまよう最中

     わたくし達は、一夏さんの敵を打つべく、三人で福音と対峙する。



     しかし……福音は、何とか復活した一夏さんとで仕留めるものの

     その戦いで、鈴さんは……帰らぬ人に……。


     


セシリア「……その様な事が」

一夏「……ああ」

一夏「そして、千冬姉もその時の責任を取って辞職してしまった……」

一夏「周りは俺を含めて、みんな止めたんだけどな」

セシリア(……悪夢ですわ)

一夏「それで? さっきセシリアは把握した、とか言ってたけど……」

セシリア「…………」

セシリア「それでは……わたくしの事情をお話します」

一夏「おう」



———————————


セシリア「——という事ですわ」

一夏「…………」

セシリア「……信じられないでしょうね」

一夏「まあな……」

一夏「…………」

一夏「ともかく、その破壊した、ミラクルアイテム?を見てから、だな」

セシリア「放課後に案内しますわ」

一夏「頼む」

一夏「…………」


 ——放課後——

 ——IS学園裏の雑木林——



     テク テク テク…

セシリア「ありましたわ! あれです!」

一夏「……これか。 見事に黒焦げだな」

一夏「…………」

一夏「ああ……あれか。 も○もボックスだ、これ」

セシリア「その様な名前でしたか」

一夏「確か……言った『もしも』が、実現してしまうアイテムだったな……」

セシリア「はい……」

一夏「…………」

一夏「こんな……冗談みたいな出来事が起こるなんてな」


セシリア「いったい、誰が、何の目的でこの様な物を……」

一夏「…………」

一夏「……それについては、俺に心当たりがある」

セシリア「え!?」

一夏「こんなデタラメなオーバーテクノロジーの代物を作れるのは」

一夏「この世界に一人しか居ないよ」

セシリア「……篠ノ之博士ですか?」

一夏「まあ、他に居ないわな」

一夏「いろんな意味で……」 ハア…

セシリア「連絡は取れるのですか?」


一夏「いや……俺や千冬姉でも彼女の連絡先は知らない」

セシリア「…………」

一夏「でも」

セシリア「え?」

一夏「たぶん箒なら、知っている」

セシリア「!」

セシリア「そ、それでは!」

一夏「ああ、わかってる。 さっそく箒に頼んでみよう」

セシリア「ありがとうございます! 一夏さん!」

一夏「……勘違いするな」

セシリア「……!?」 ビクッ

一夏「俺が知る、俺のセシリアの為だ」

セシリア「…………」


 ——箒の部屋——



     コン コン

一夏「箒、居るか? 俺だ、一夏だ」

     ガチャ…

箒「……何の用だ」

一夏「わだかまりはあるだろうけど……話を聞いてくれ、箒」

セシリア「お願いします、箒さん……」

箒「…………」

箒「わかった。 入ってくれ」

一夏「すまない」


箒「で? 重ねて聞くが、いったい何の用だ?」

一夏「少し長くなるが、今、説明する」


———————————


一夏「……という訳だ」

箒「」

一夏「俺も信じられなかったが、も○もボックスの残骸も確認した」

一夏「そして、このセシリアが、こんな嘘をついても何の得にもならない」

箒「…………」

一夏「……もう、分かっているかもしれないが、こんなまねが出来るのは束さんしか考えられない」

一夏「頼む、箒。 束さんに連絡を取ってくれ」

箒「…………」


箒「……狐につままれた気分だが」

箒「言いたい事は、わかった」

一夏「じゃあ……!」

箒「だが、断る」

一夏・セシリア「!?」

箒「はっきり言うが、私はもう、あの人に会いたくない」

一夏「……箒と束さんの確執は知っている。 けど」

箒「それに」

箒「仮にその望みを叶えたとして……私にどんなメリットがある?」

セシリア「箒……さん?」


箒「きっと、あの人は私の言う事なら聞いてくれるだろう」

箒「だけど必ず何か要求する」

箒「一日中そばに居ろ、とか何とかな……」

一夏「…………」

箒「お前はいい事づくめだな」

箒「も○もボックスを復元してもらって、本物のオルコットと会えるわけだし」

セシリア「…………」

箒「しかし、私には何の得にもならない話だ」

一夏「……箒」

一夏「何が欲しいんだ?」

セシリア「お金でしたら、わたくしが……」


箒「……私の欲しいモノは、金では買えないし」

箒「断る理由の意味と同義にもなる」

一夏「…………」

セシリア(……そ、そんな)

一夏「……見損なったぜ、箒」

一夏「お前が……こんな姑息な真似をする奴だったとはな」

箒「…………」

箒「誰のせいだと思っているんだ!」

箒「私は……! 幼い頃から、ずっと一夏の事を……!」

一夏「だけど俺の心はもう変わらない」

一夏「俺は、セシリアと一緒がいいんだ」


箒「…………」

一夏「…………」

セシリア「…………」


一夏「……どうしても嫌か?」

箒「一夏の心と同様にな」

一夏「……そうかよ」

一夏「行こう、セシリア。 無駄足だった、諦めよう」

セシリア「え!? あ、あの……」

一夏「いいから。 行くぞ」

セシリア「は、はい……」


     テク テク テク…

セシリア「い、一夏さん……待ってください」

セシリア「あの……い、いいんですか? 箒さん……」

一夏「うるせえっ!」

一夏「だいたい、お前があの道具を壊さなきゃ、こんな事にはならなかったんだよ!」

セシリア「ひっ……」

一夏「…………」

一夏「……ちっ」

セシリア「…………」

一夏「今日はもう、この辺にしておこう……」

一夏「とりあえず、今晩何か考えてみる」

一夏「じゃあな……」

セシリア「あ……」

セシリア「…………」


 ——数日後の放課後——

 ——IS学園裏の雑木林——



     テク テク テク…

セシリア「…………」

セシリア(あれから……)

セシリア(一夏さんは……いえ、こちらの一夏さんは……)

セシリア(ずっと塞ぎ込んだまま……)

セシリア(わたくしと話をする事はおろか、挨拶すら躊躇するほどに……)

セシリア(…………)


セシリア(…………)

セシリア(……また、ここに来てしまいました)

セシリア(…………)

セシリア(どうにかなるわけでも無い、と、いうのに……)

セシリア(…………)

セシリア(……いったい、どうしたら)

セシリア(わたくし自身も箒さんに頼んでみましたが……結果は同じ……)

セシリア(こちらの一夏さんも、織斑先生に頼んだみたいですが)

セシリア(芳しくない様ですわ……)

セシリア(…………)

セシリア(万策……尽きました)


セシリア(…………)


     わたくしは……残骸の中にある、受話器の一部を手に取りました。


セシリア「…………」

セシリア「お願いします」

セシリア「元に……元の世界に、戻って……!」

セシリア「どうか……どうか……!」

セシリア「元に戻ってください……」

セシリア「お願いします……お願い……ぐすっ……」 ポロッ

セシリア「うっうっ……ひっく……うあっ……」 ポロポロ…

セシリア「お、ねが、い……ひぐっ……」 ポロポロ…




     帰りたい

     わたくしの知る、わたくしの世界に



     鈴さんが居て、シャルロットさんが居て、ラウラさんが居て……

     不器用だけど、道理のわかる箒さんが居て

     鈍感で、女心がわかっていなくて、誰にでも優しい

     大好きな一夏さんが居る



     元の世界へ……


     


 ——さらに数日後の放課後——

 ——1組教室——



一夏「…………」

箒「…………」

セシリア「…………」

セシリア「……それでは、失礼します」 ペコ

一夏「ああ……」

     テク テク テク…

一夏「…………」

箒「…………」


箒「……私から見ると」

一夏「……?」

箒「オルコットに違いは、ほとんど無い様に見えるが」

一夏「…………」

箒「仕草、言葉使い、声にプロポーション……」

箒「どれをとっても、オルコットだ」

一夏「……何が言いたい?」

箒「一夏の言う『本物のオルコット』でないといけない理由は何だ?」

一夏「好きになった人だからだ」

箒「……!」

一夏「……いや、本物じゃない、と知ったから……かもな」


箒「…………」

一夏「それを知る前日、デートしてたし」

一夏「知らなかったら……それで、そのままだったかも知れない」

箒「…………」

一夏「でも、もう『違う』と、俺の心は認識してしまった」

一夏「だから……あのセシリアは、俺にとって」

一夏「極めて良く似ている、別人でしかない」

箒「…………」

箒「そうか……」

一夏「…………」


一夏「箒」

箒「……なんだ?」

一夏「束さn」

箒「断る」

一夏「…………」

箒「…………」

     スタ スタ スタ…

箒「…………」

箒(……私だって)

箒(一夏の力になりたいんだ!)

箒(…………)

箒(でも……それを叶えてしまったら)

箒(また……オルコットと一夏の仲睦まじい姿を見る事に……!)


箒(…………)

箒(もう嫌だ……あれを見るのは)

箒(私だって、一夏がオルコットを想うのと同じくらい)

箒(いや、それ以上に、どうしようも無いくらい)

箒(一夏の事が……好きなんだ!)

箒(…………)

箒(だから……今のままでいい)

箒(今は、一夏と話せる)

箒(今は、私を見ている)

箒(今は、私だけを頼っている……!)

箒(ふ、ふふ、ふふふ……)

箒(ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……)


 ——IS学園裏の雑木林——



セシリア(……また)

セシリア(ここに来てしまいました……)

セシリア(…………)

セシリア(わたくしの、他愛もないわがままな願いで)

セシリア(こんな事になるなんて……)

セシリア(…………)

セシリア(一夏さん……元気にしておられるでしょうか)

セシリア(他の皆さんも……)

セシリア(…………)


セシリア(何もかも……建物も、湖も)

セシリア(世界情勢も歴史も、国の数も)

セシリア(わたくしの世界と瓜二つなのに……)

セシリア(どうして……)

セシリア(こんなにも違うと感じてしまうのでしょうか?)

セシリア(…………)

セシリア(…………)

セシリア「……もう、元の世界には」

セシリア「戻れないのでしょうか……」 ボソッ




???「……元の世界、だって?」



セシリア「!?」 ビクッ

セシリア「だ、誰ですの!?」


???「ああ……ごめんごめん。 脅かしちゃって」

???「今、姿を見せるね?」 スウゥゥ…(石こ○帽子、脱衣)


セシリア「!!?」

セシリア(な……何ですの!?)

セシリア(こんなに高度、かつ、完璧に気配を消せる、ステルス技術が存在するなんて……!)

セシリア(それも、こんな子供が……!?)


???「ぼく、野比のび太! ”のび太”でいいよ!」


セシリア「……!?」

のび太「それで? お姉さんは?」

セシリア「わ、わたくしは……セシリア・オルコット」

セシリア「イギリスの代表候補生ですわ」

のび太「ああ……あの青いISに乗ってる人か」

セシリア「……ブルーティアーズの事をご存知ですの?」

のび太「うん、そうだよ?」

のび太「いつもは、遠くから覗……観察するだけだったから、良くわからなかったけど」

のび太「こんなに綺麗なお姉さんが操縦していたんだね」

セシリア「はあ……」


セシリア「ところで……のび太さんは、何をされていたのですか?」

のび太「いやぁ、大した事じゃないんだけどね〜」

のび太「も○もボックスを使って、いろんな科学進歩を観察してたんだ!」

セシリア「はあ……」

のび太「特にこのISっていうのは素晴らしいと思うよ!」

のび太「かっこいいし、女の子しか使えないっていうのも面白いし……グフフ」

セシリア(……子供とは思えない、いやらしいお顔)

のび太「まあ、そんな訳で、しばらくこの世界に居たってわけなんだ」

セシリア「…………」

セシリア「ごめんなさい……のび太さん」

のび太「ん?」


セシリア「わたくしは、も○もボックスを破壊して……」

のび太「ああ、それなら大丈夫だよ」 ゴソゴソ…


のび太「タ○ム風呂敷ー!」


のび太「この残骸にかけて……と」

のび太「はい! 元通り!」 パッ

セシリア「」

セシリア「ええ!?」

のび太「さあ、これで元の世界に帰れるよ! お姉さん!」

セシリア「い、今ひとつ釈然としませんが……」

セシリア「ありがとうございます! のび太さん!」


のび太「いやいや、これくらいどうって事は……」

セシリア「それにしても……」

セシリア「あなたは、アニメのキャラクターなのでは?」

のび太「うん」

セシリア「……あっさり認められるのも、どうかと思いますが」

のび太「だってそうなんだもん」

のび太「僕はアニメのキャラだけど、アニメと現実を入れ替える機械があってね」

のび太「似た様なのに、気ま○に夢見る機、っていうのがあるんだけど……」

のび太「まあ、細かい事はいいじゃない!」

セシリア(細かい事なのでしょうか……?)


のび太「……あ」

セシリア「? どうなさいましたの?」

のび太「い、いやぁ」 ///

のび太「よ、良かったら……その……」 ///

のび太「お姉さんがISを展開した姿を間近で見たいな、なんて……」 デヘヘ///

セシリア「…………」

セシリア「まあ……ご覧になるだけなら……」

セシリア「ブルーティアーズ!」 スウウウウウンッ!

のび太「おおー!」

のび太「凄い! 凄いや!」


のび太(特に強調されるボディライン……) ///

のび太(プルンプルンと揺れる迫力のオッパイ……) ///

のび太(もともとエロいISスーツをさらにエロくさせる、食い込み……) ///

のび太(完璧だ……!) グヘヘヘヘ///

セシリア(……ただのエロガキですわ)


セシリア「もう、よろしいですか?」

のび太「あ、うん! ありがとう、お姉さん!」

セシリア「ブルーティアーズ、待機へ……」 スウウウウウン…

のび太「やっぱりかっこいいなぁ」

セシリア「…………」

セシリア「えと……それでは、帰ってもよろしいですか?」

のび太「うん! 引き止めちゃってごめんね!」


     ガチャ…

セシリア「…………」

セシリア「これで……やっと帰れますわ」

セシリア「…………」

セシリア「元の世界に、戻ってください!!」


     ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!


セシリア「…………」

     ガチャ…

セシリア「……これで、戻ったのでしょうか?」

のび太「うん、完璧にね」

のび太「学校に行ってみれば、嫌でもわかると思うから」 クス


セシリア「それでは、失礼します……」

     タッ タッ タッ…

のび太「気をつけてね〜」


———————————


セシリア「はあ、はあ、はあ……」

セシリア(一夏さん……箒さん……)

セシリア(鈴さん……シャルロットさん……ラウラさん……)

     テク テク テク…

鈴「あれ? セシリア?」

セシリア「!!」


セシリア「り、鈴さん!!」

鈴「……どうしたの?」

セシリア「い、生きておられますわよね!?」

セシリア「死んでなんか、いませんわよね!?」

鈴「いきなり何!? 縁起でもない事、言わないでよ!」

セシリア「…………」

鈴「……セシリア?」

セシリア「う……」

鈴「う?」

セシリア「うわああああああああああああああああああああああんっ……!」 ボロボロ…

セシリア「帰って……帰ってこれましたあああああああああああああっ……!」 ボロボロ…

鈴「」




     ……こうして、わたくしの不思議な出来事は、幕を下ろしました。

     終わってしまえば、本当に夢だったのではないかと思えるほど……。

     ですが何故か、あの世界で購入した衣服が残っており

     あの出来事が夢ではなかったと、わたくしに伝えております。



     あの世界の一夏さんや 箒さんが どうなったのか……

     もし○ボックスと共に のび太さんが居なくなってしまい

     もう知る手立てはありませんが……

     願わくば、幸せになれる事を心から望みます。


     


 ——数日後——

 ——IS学園・中庭付近——



セシリア「♪〜」

箒「セシリア?」

セシリア「あら、箒さん」

箒「随分機嫌が良い様だが、どうしたのだ?」

セシリア「いえ……大した事では、ありませんわ」

セシリア「先日、注文したお花が届いたので……」

箒「その鉢植えがそうか」

セシリア「はい」


シャル「どうしたの? こんな所で?」

ラウラ「その鉢植えがどうかしたのか?」

鈴「綺麗なお花ね」


セシリア「皆さんも……」

セシリア「…………」

セシリア「実は、わたくし、ある人から」

セシリア「この花の様だ、と言われまして」 ウフフ♪

箒「……そうなのか?」

シャル「どうかしたの? 箒?」

箒「その花は、芍薬(しゃくやく)と言ってな」

箒「日本では美人を表す花の一つだ」

シャル「へえ〜」


セシリア「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はユリの花……ですわ」

箒「そう、それだ」

ラウラ「ふむ……そんな言葉、誰に教えてもらった?」

鈴「…………」

鈴「……まさか」

セシリア「ふふふ、秘密です♪」

シャル(き、気になるなぁ……)

一夏「よう。 どうしたんだ、みんな? こんな所で?」

箒「! 一夏……」

ラウラ「嫁……」


一夏「お? セシリア、綺麗な花の鉢植えだな」

一夏「自分の部屋に飾るのか?」

セシリア「ええ、そうですわ」

一夏「そっか。 セシリアみたいでいいな、その花」

一夏「合ってると思うぜ」 ニコ

箒「」

シャル「」

ラウラ「」

鈴「」

セシリア「一夏さん……ありがとうございます」 ///


箒「一夏……」

一夏「へ?」

シャル「知っててそういう事、言ったの?」

一夏「何の事だよ?」

ラウラ「知らばっくれても、後でバレるぞ?」

一夏「だから何も知らないって」

鈴「…………」

鈴(本当に知らないみたいね)

セシリア「そうなのですか……」

セシリア「実はですね、わたくし、ある人から」

セシリア「この花の様だ、と言われまして……」


一夏「ふうん?」

箒「本当に知らないみたいだな……」

箒「聞いた事くらいはないか? 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はユリの花」

一夏「ああ、何となくあるな」

シャル「日本で、美人を花に例えた言葉らしいよ?」

一夏「そういやそうだった」

一夏「美人か……誰だか知らないけど、俺もそう思うな」

一夏「確かにセシリアは美人だし」


箒・シャル・ラウラ・鈴「」

セシリア「あ、ありがとうございます、一夏さん」 ///


箒「一夏……」 ゴゴゴ…

鈴「今度は言い逃れできないわよ……」 ゴゴゴ…

シャル「うん……ボクもはっきり聞いた……」 ゴゴゴ…

ラウラ「嫁ぇ……」 ゴゴゴ…


一夏「え? ちょ、ちょっと待て!」

一夏「何でみんな怒るんだよ!?」

箒「言わないとわからないのか?」 ゴゴゴ…

シャル「まったく……」 ゴゴゴ…

鈴「今日という今日は……」 ゴゴゴ…

ラウラ「体に教え込んでやる……」 ゴゴゴ…


一夏「ひええええええええええっ!!」 ダッ!

箒「待てー!」 ダッ!

シャル「もう許さないんだから!」 ダッ!

鈴「覚悟しなさぁーい!」 ダッ!

ラウラ「夫の前で堂々と他の女を褒めるなぁ!」 ダッ!

     ドドドドドドドド……


セシリア「…………」

セシリア(ふふ、そうですわ、この喧騒……)

セシリア(これがあってこその、わたくしの世界……)

セシリア(…………)

セシリア(でも……)


セシリア(いつか……わたくしのお慕いする一夏さんと)

セシリア(あの様なキスを……) ///

セシリア(〜〜〜〜〜!!) モジモジッ///

セシリア(…………)

セシリア(ふふ、ライバルは多いですけど)

セシリア(わたくし、負けませんわ!) グッ!



     芍薬:花言葉

     「恥じらい」「はにかみ」「内気」「清浄」



     おしまい

みなさん、お疲れ様でした。
セシリア編、終了です。
そして、もしもシリーズもやっと終わりました。
待っていた方、本当にお待たせして、すみませんでした。

セシリア編、最初からボックスの破壊と、のび太の登場は予定してたんですけど
のび太をどう絡ませるのか?が難しくて、あれこれ考えては消し、考えては消し
の、くり返しでした……。結局、無難な感じで終わった気も……。
ともかく、読んでくれた方、ありがとうございました!

HTML化も忘れずにしておきますので。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年09月27日 (日) 20:42:44   ID: OHCMhmNq

なんか泣ける

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