【咲-Saki-】京太郎「ふりーだむ」【安価】 (204)

京豚ss

このssは安価で決めたキャラのssを>>1の勝手なイメージで書いていくだけのスレです

一つのss書くのに少々時間かかります

京太郎NGの方は即バック

キャラは清澄、鶴賀、龍門渕、風越、白糸台、新道寺、千里山、阿知賀、姫松、永水、宮守、臨海、有珠山、プロ勢から

ではまず安価下3のキャラで

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405546681

男でもいいです


憧「ねぇ…ほんとに大丈夫なの……?」

京太郎「任せろ。俺がいるだろ?」

憧「そう…だけど……」


とある山奥。

穏乃と共に登山に来たのだが、その穏乃と途中ではぐれてしまい見事に遭難してしまった。

なんとか日が沈むまでには下山したかったがそれは叶わず、暗い中を歩き回るのは得策ではないと適当なところを見つけ夜を過ごすことにした。


憧「京太郎…」

京太郎「大丈夫だって。そんな富士の樹海みたいな大きい場所でもない。きっと明日には抜け出せる」

憧「うん……」


歩き回ったせいか憧の声に力はない。

いつもは頼りになるのだが、今回ばかりは不安が全身から感じ取れる。

憧はただただ昼から繋ぎっぱなしの俺の手を離すまいと何度も握り直していた。


憧「……」フア…

京太郎「眠たいのか?」

憧「ん…でも起きてるよ…」

京太郎「寝ろ。明日もたぶん相応に歩くからな」

憧「あたしが寝たら京太郎が起きてないといけないじゃん…。両方寝てるわけにはいかないんだしあたしだけ寝るっていうのも…」

京太郎「こんな時に気を使ってる場合か?俺はそんなに疲れてないから」

憧「ん……」


それでも憧は寝ようとはしなかった。

気持ち少しだけ身体を寄せると体重を肩に預けてくる。

多分、憧なりの遠慮した休憩なのだろう。

俺もこれ以上言うまいと黙ってそれを受け入れた。


憧「なんとかなるよね…」


京太郎「当たり前だろ?季節はまだ春なんだ。気温も絶望的ってわけじゃないし。これが雪山とかだったらヤバいんだろうけどな」

憧「そうだよね」


少しだけ安心したように若干の笑顔を浮かべた。

その笑顔に疲労は見えるものの、多少元気にはなったようだ。


憧「遭難したのは大変だけど、一緒に遭難したのが京太郎で良かったかも…」

京太郎「そうか?シズの方が頼りになるんじゃないか?」

憧「あいつはあいつで山に詳しいんだろうけど…なんだろうね。安心感かな。京太郎といると安心する」

京太郎「……そういうのは気軽に言わないでくれ」

憧「べっ、別に深い意味はないのよ!?ただ男子ってだけで心強いっていうか…」

京太郎「お前男子苦手だろ」

憧「あ、あんたは別なのっ」

京太郎「そりゃありがとな」


いつもの照れ隠し。

頬を赤らめながら言い訳する様はこんな時ですら可愛い。

やっぱり俺は憧が好きで、憧も俺のことをーーというのは自惚れではないことを願おう。


憧「ねぇ…やっぱり少しだけ寝てもいい?」

京太郎「だからいいって言っただろ」

憧「ありがと…。すぐ起きるから」


そう言って目を瞑る。

肩にかかる体重が心なしか増え、温もりを感じる。


京太郎「ほんと…可愛い寝顔しやがって…」


守ってやんないとなぁ…。


気持ち良さげに眠る一人の少女の寝顔を眺めながら、俺はそう思った。

まぁ結局、翌朝すぐにシズと赤土先生が探しに来てくれたけどな。

アコチャー難しい…

や某スレの影響を受けてるせいかキャラが…

次安価下2

なお同キャラありです

玄「京太郎君…?なんで昨日は電話してくれなかったの……?」


松実玄さん

麻雀部の先輩であり、先日付き合うことになった俺の彼女。

こんな俺を好きでいれくれて、とてもとても心配性な可愛い彼女だ。


京太郎「すみません。昨日は気づいたら疲れて寝てしまって」

玄「……本当?」


失敗した。いくら眠かったとはいえ1、2分でも電話すべきだった。

こんなことがあれば玄さんが心配するのは分かりきっていたというのに。


京太郎「本当ですよ。信じてください」

玄「うん…。信じたい…信じたい…けど……。あの…携帯見せてもらってもいいかな?」

京太郎「携帯ですか?いいですよ」


ポケットに突っ込んでいた携帯をさっと取り出し玄さんに差し出す。

ここで少しでも渋らないのがポイント。

疑われてしまうような真似はしない。


玄「あ、パスロック……」

京太郎「まぁ一応ですね。もしよければ当ててみてください」

玄「う~……」


ポチポチと携帯をしばらくいじるがそれから動かない玄さん。

あらかた俺の誕生日だとかを打ち込んだが開かなかったんだろう。


玄「開かないよ~…」

京太郎「仕方ないですね。じゃあ一度しか言いませんよ?0315です」

玄「0315……あっ!」


流石の玄さんも気がついたようだ。

0315

これは玄さんの誕生日。

彼氏たるものこれくらいは常識だ。

そしてーー


玄「こ、こんな写真いつ撮ったの!?」

京太郎「2週間前です。可愛かったものでつい」


ホーム画面は玄さんの寝顔。

うちに泊まりに来た時にこっそり撮ったものだ。

2ショットの写真なんかもあるが、今はこれが一番のお気に入り。


玄「こんなのダメだよ!消しちゃうからね!」

京太郎「バックアップはパソコンにあるのでどうぞ」

玄「はぅ…京太郎君のいじわる……」


褒め言葉です。

バックアップがあると聞いて消すことを諦めた玄さんは俺の携帯をチェック。

メール、電話、LINE諸々見ているようだった。


玄「………うん、ありがと京太郎君」


一通りのチェックの後携帯をこちらに返却。

他との連絡も全て取れていないことから何とか信じて貰えたらしい。


京太郎「本当にごめんなさい。次からは気をつけるので」

玄「心配したんだよ?事故に遭ってないかとか、他の女の子と遊んでないかとか…」

京太郎「事故はともかく後者はないですよ。俺には玄さんがいるんですから」

玄「でもまわりには私より可愛い子とか一杯いるし、京太郎君はモテるから……」

京太郎「それ、浮気しろって勧めてます?」

玄「ち、違うよ!」

京太郎「冗談ですよ。というか、玄さんより可愛い人なんて俺は知らないですし、玄さん以外にモテても興味ないっす」


すっと玄さんを抱き寄せて頭を撫でる。

柔らかい身体に女の子特有の甘い香り。

こんなに俺のことを気にかけてくれる可愛い子がいるのに浮気なんてするものか。


玄「わわっ、ここ学校だよ!?」

京太郎「分かってますよ。でもいいじゃないですか。昨日は放課後会ってないんですし。それとも嫌ですか?」

玄「そんなことはないけど…」

京太郎「本当に玄さんには感謝してます。朝起こしてもらうだけじゃなく、朝飯から弁当まで作ってもらって」

玄「私がしたくてやってるからいいんだよ。少しでも京太郎君のプラスになればいいなって」


皆は玄さんのことを重いとか言うけど、俺はそれが心地よい。

それだけ自分を好きでいてくれている証なのだから。

きちんと向き合って一つずつ、玄さんの気持ちに応えればいいのだから。

正直、こんなに最高の彼女はいないと思う。

まぁとどのつまり、今俺は幸せですってことなんだけどな。


京太郎「今週末どこか二人で旅行でもしますか」

玄「本当!?えっとね、この間挨拶に来てた旅館の人が………」



カンッ

んー、ヤンデレ風にしたかったんだが……

次下3


京太郎「と、いうことで今日の部活は休みます!ホントにすいません!」

哩「また居残りやか須賀……ずんだれるやね」


はぁ、とため息をつき呆れたように俺を見るのは新道寺麻雀部部長、白水哩さん。

端麗な容姿と真面目な性格、麻雀の実力から九州での人気は永水の巫女さんと二分するほどだ。


哩「入った時は真面目な奴かっち思っとったんに……おい、聞いとんか!」

京太郎「え?!あ、はい!」

哩「………本当によかと?」


部長がプンスコしてるのは簡単に説明すると俺がアホであるせいだ。

いかんせん居残り勉強の回数が多く、部活を多々休むことがある俺に哩部長も流石にご立腹のようだ。


哩「部活っち勉強ん両立、えらいばってんけど頑張れちゃ」

京太郎「???……は、はい」


何を言っているのか分からなかったがとりあえず返事。

実はこっちにきてまだまもない俺はこっちの方言を完全には覚えていない。

時々この地方の人たちがスワヒリ語でも話してんじゃねーかとすら思う。


哩「終わっちからこっち来れん?時間全然あるやろ」

京太郎「多分無理だと思います……終わるころには部活がとっくに終わってる時間帯なんで」

哩「そげんかかるんか!?」

京太郎「出来がわるいもので……」


なんか自分で言ってて悲しくなるな。

あの普段クールな部長ですら額に汗かいてるし。


哩「そいは参ったな………部活に須賀来なかっち楽しくなかね」ボソッ

京太郎「え?」

哩「な、なんもなか!そいちゃ、居残りば別に授業やなかとやろ?」

京太郎「はい、自分で解いて先生に持っていって出来たら帰れるので」

哩「……ほう」


顎に指を添え何かを考える部長。



京太郎「っといけね……時間なんで、それじゃ失礼します部長」

哩「あ、待たんね須賀!」


居残り開始時間が迫ってきたので退散することにしようと思い、踵を返す。

が、しかし部長に肩を捕まれそれは阻まれることになる。


京太郎「えっと、まだ何か?」

哩「私が教えちゃるけ、終わったら部活行くばい」

京太郎「はは。またまた御冗談を」

哩「ウソやなか、時間勿体ないけんはよせんね」


そう言い先輩は俺の手を取ると、グイと引っ張っていく。

え?これマジ?


京太郎「ええ!?い、いやいいですよ!それは流石に部長や他のみんなに迷惑です!」

哩「ばってんくさ、部活休まれる方が迷惑たい」

京太郎「そういう問題じゃないですって!」

哩「どげんゆう問題ね」

京太郎「部長は俺よりも優先させるべき人がたくさんいるでしょ!」


そこいらの県代表エースを遥かに凌ぐ実力を持つ彼女目当てに他県から新道寺の麻雀部に入る者は後を絶たない。

持ち前の面倒見の良さで一人一人丁寧に指導する彼女は当然、同級生のみならず後輩からも慕わている。

今日も部員は来るのを今か今かと待ちわびているはずだ。


哩「そげなこと気にせんでよか、お前も部員の一人たい」

京太郎「あああ、もう!」


意思は固い。

こうなればこの人に何を言ってももう通用しないだろう。

先輩の頑固さに俺は諦めつつ引きずられていった。



哩「須賀ぁ、家で勉強しとらんやろ……これまず基本的な公式からやり直さんと……」


図書室で部長と机に並んで勉強をする。

一人でやるより何倍も効率がいい。


哩「解くからよー見とき」


麻雀強いうえに頭もいいなんて完璧じゃないか。

神様は不公平だなと思いつつ部長の顔をじっくりと見つめる

肌は白いし目は大きく睫毛は長い、鼻も通っている。

こんな人と付き合えたら人生楽しいんだろうなー、俺じゃ到底無理だが。


哩「ボーっちしとるばってん話聞いとんか?」

京太郎「いや、その……」

哩「なんね?」

京太郎「部長は俺みたいなダメな奴でも付き合ってくれていい人だなって」

哩「何言うてるん?須賀だから付き合っとんばい?」

京太郎「え?」


そ、それはどういう……!

果たして期待していいのか!


哩「あんだんこつのすいとーからとよ」

京太郎「???」


ダイダイ骨?

水筒が殻?

さっぱり分からん、どういうことだ??


京太郎「部長、俺まだあんま方言分かんなくて……意味を」

哩「こん問題自力ばできよったら教えちゃる」

京太郎「げっ、関数…!」


よりにもよって俺が一番苦手な所をチョイスされた。

これじゃさっきの意味は聞けそうにないな……けどなんでだ?



普段しかめっ面の部長の横顔は、笑っているように見えた。

姫子どこで絡ませようか悩んだけどでてたら哩姫になっちゃうからネ…




お題とキャラ下3で



京太郎「校内ランキング60位、かぁ……」


屋上で寝転がりながら穴が開くんじゃないかってぐらい自分の成績通知を見る。

前回の63位よりあがったものの喜ぶ気にはならないほど些細な成長だ。

風越でレギュラーになるには5位以内に入ることが絶対条件だし、先は長すぎるぜ……。


京太郎「……お」


階段の方からカンカンと屋上へ誰かがあがってくる音がする。

まぁ、誰かは大概察しがつくのだけど。


美穂子「はぁ……はぁ……京太郎、どうだった?」

京太郎「そんな急いで来なくてもいいだろ」

美穂子「ううん、やっぱり気になるから……」


階段を駆け上がってきて息を切らすのは校内ランキング1位で風越の部長、福路美穂子。

俺の幼馴染でもあり近所に住む2つ年上のお姉さん。

美人でスタイル抜群だがそれ故、嫉妬の対象とされ嫌がらせされることも多々あった。


京太郎「60位だってさ、俺」

美穂子「まぁ、前回より3つもあがったじゃない!」

京太郎「………」

美穂子「今日はお祝いに何か好きなもの買ってあげるからね」


天然なのか俺を気遣ってるのか………いや、間違いなく前者だった。

美穂子は昔から他人のことを自分のように喜ぶし、他人が泣けば自分も泣く。

特に幼馴染で昔からいつも一緒にいる俺に対してはそれが顕著に表れる。

「天然ぶってんじゃねーよ!」と一部口の悪い女子からウザがられているが美穂子は真の天然だ。


京太郎「ありがとな美穂子。じゃあ、ジュース一本でも奢ってもらおうかな」

美穂子「そんなのでいいの?もっと、高いものでもいいのよ?」

京太郎「充分だよそれで」

美穂子「京太郎がそう言うなら……分かった、じゃあ買ってくるから待ってて!」

京太郎「お、おい!それぐらい自分で……」


言うより早く美穂子は屋上から去って行く。

京太郎「…………」


そろそろいい加減に親離れならぬ幼馴染離れしろ、と何度も言いそうになった。

毎日毎日夜12時になると寝るようにメールを送ってくるし朝7時には必ずモーニングコールが来る。

終いにはメールで「明日京太郎が持っていくもの一覧」なんてものを送ってくるし。


京太郎「やりすぎだよなぁ……でも俺の為してくれてることだし」



しばらくすると再び階段をカンカンとあがってくる音が聞こえた。

音が近くなり、屋上の扉が開け放たれると汗だくの美穂子が右手にペットボトルジュースを持ち帰ってきた。


美穂子「はい、京太郎!」


受け取ったペットボトルは美穂子の手汗が大量に付着していた。

これを見るとどれだけ急いで戻ってきたかが分かる。


京太郎「あ、ああ、サンキュー。そんなに走らなくてもよかったのに」

美穂子「だって、京太郎待たせたら悪いと思ったもの」


そんな子どもじゃあるまいし……

と言う台詞を心に仕舞いつつペットボトルの蓋を開け中身を飲む。

横目で見ると美穂子が俺がジュースを飲む姿をじっと見つめている。


美穂子「美味しい?」

京太郎「うん」

美穂子「よかった!」


それから昼休みが終わるまでずっと美穂子と話していた。

昼休みに美穂子と屋上で話すのは最早日々の日課といってもいい。

内容は他愛無い世間話や近所付き合いのことなどだが、実際俺は美穂子の笑顔の方に目が行っていた。

普段優等生として振舞う時の笑顔とは違う本当の笑顔。

この笑顔を見た事があるのは自慢じゃないが俺だけだと思う。


美穂子「それでね、京太郎!」

京太郎「分かったから落ち着け落ち着け!」

美穂子「あっ……ご、ごめんなさい!つい我を忘れて……」

京太郎「俺はどこにも行かないから、安心してゆっくり話せ」

美穂子「……頼もしくなったわね。やっぱり京太郎と話すと、すっごく楽しい」

京太郎「そりゃ幼馴染だからな……遠慮なく話せるだろ?」

美穂子「うん!」


だから俺はそんな美穂子のことを決して無下にはできない。

例え美穂子に頼りすぎてダメ人間になってしまおうが、美穂子が俺から離れなかろうがこの日々は毎日続くだろう。

美穂子の心の拠り所である限りは。

キャップは天使だし!でもメンドクさそうだし!




お題キャラ下3

竜華「これで全部言うたかな……よし、今日の練習はこれで終わりや!」


ミーティングが終わり、部長のその一言で全員が立ち上がる。

ありがとうございましたー、という号令と共に帰るのは一軍方々。

そして二軍、三軍の俺達は部屋の掃除やら牌拭きなどで居残りだ。


「掃除だるいな……早く一軍にあがりてー」

「一軍なんて夢のまた夢だけどなー、ははっ」


掃除をしてると不意に他の部員の声が耳に入る。


京太郎「夢のまた夢………ね」


そりゃそうだ、この千里山は全国屈指の名門。

半端者は不必要とされ生半可な腕前じゃ二軍にすら入ることができない。


泉「おっす、京太郎!今日もお疲れ」

京太郎「……泉?今日は先輩たちと帰らないのか?」

泉「まぁな。今日は京太郎と帰ろうと思って……あ、シャレやないで?」


俺に話しかけてくるこの女子。

名門千里山最上位クラスの一軍の中でも、更に選ばれた5人しかなれないレギュラー……。

その一人がこのアホ面、二条泉である。


泉「今失礼なこと考えたろ!?」

京太郎「とりあえず、そこのいてくれ。掃除ができない」

泉「あ、私も掃除手伝うで」

京太郎「え?いいって別に」

泉「そんな遠慮する仲やないやろ?ええから貸し」


そう言い俺の手から無理やり箒を奪う泉。

鼻歌を歌いながら周りをパッパッと掃いていく。


泉「掃除も案外たのしーな、な?京太郎」

京太郎「ん?お、おう、そうだな」


しかし一つコイツには疑問な点がある……。

どうして一軍、それもレギュラーである泉は三軍の俺に絡んでくるんだろうか。

同じ1年だから?いや、1年は他にも沢山いるし………うーん、分からん……それとなく聞いてみるか。

京太郎「なぁ、泉?」

泉「なんやー?」

京太郎「お前ってさ、その……何で俺なんかに構ってくるんだ?」

泉「え?」

京太郎「いや、ほら!俺達って接点なかっただろ?特に趣味が合うわけでもクラス一緒でもないし」

泉「ひょっとして……め、迷惑やったんか?」


鼻歌混じりで歌っていた泉の笑顔が一変。

突然不安そうな顔になり眼には滴が貯まりつつある。


京太郎「あっ、違う!そういうことじゃねぇ!!」

泉「じゃあどういうことなん?」

京太郎「自分は3軍で多数いる部員の一人なのにレギュラーがいつも話しかけてきたら……どうしてか気にならないか?」

泉「………」

京太郎「しかも特にクラスで話してるとかじゃなくてだぞ?」

泉「……それは、なるなぁ」

京太郎「それと俺の気持ちと一緒だ」


なんとかフォローはできたみたいだ。

よかったよかった、こんな部室のど真ん中で女の子を泣かせようものなら……

清水谷部長、もしくは江口先輩の鉄拳制裁の刑は不可避だっただろう。


泉「そういうことなら言うけど……これ、誰にも言わんでな?」

京太郎「おう、どんとこい」


告白だろうが実は俺の妹でした、とか来ても驚かないように息を整える。

よし、準備万端……矢でも鉄砲でも持ってこい。


泉「お前とおったら千里山で一番安心できるんや」

京太郎「……安心?それは俺のガタイがいいからか?」

泉「ちゃうわボケ!心の問題や」

京太郎「いや心の問題って何だ?ますます意味が分からん」

泉「千里山は名門や」

京太郎「知ってる」

泉「一軍は毎日レギュラー争い繰り広げ取るし二軍、三軍もいつ下剋上してくるか分からへん」

京太郎「あれ毎日やってんのか!?」

泉「せや。それに私と一軍でいっとき仲良くしとった子も、私を蹴落とすための演技やったり」

京太郎「一軍怖いな……本当に麻雀部かよ」

泉「先輩たちに支えてもらったからここまで来れたけど、周り敵だらけで安心できへんやったんや」

京太郎「……」


しみじみと話す泉には悪いが俺は麻雀部が戦国状態とはいうのは薄々知っていた

俺はそれに気づき、巻き込まれるのが嫌で好きなように打つようにしたんだ。

その結果が三軍ってわけだが。

泉「そんな時に出てきたんが京太郎や」

京太郎「え?俺?」

泉「私が誰も信用できへんときに、コイツなら信じられる思うたのが京太郎やった」

京太郎「……?」

泉「覚えてへんかもしれんけど、入部した最初のころ一回京太郎と麻雀打ったんや」

京太郎「打ったのは覚えてないが最下位だったことは確かだな」

泉「ホンマやで?こいつ激弱や!ってみんな思うたわ」


そこまで言うと泉は表情を変える。

さっきまでちょっと小馬鹿にするような顔だったのが満面の笑顔に変わった。


泉「けどな……私含めて周りが本気で勝ちにきてる中で、唯一心から楽しんでそうな奴だったわ」

京太郎「まぁ、入部したての頃は一番楽しかったな」

泉「ちょい気になって話しかけてみたら、この千里山で野心の欠片もない奴やで?そら驚くわ!」

京太郎「買い被りすぎだろ」

泉「ええんや、それでも。そっから唯一信用できる奴になったことには変わりないし」


何を言ったかは覚えてないが泉にとって俺はかなり美化されて記憶されているようだ。

実は入部したての時で、そんな激戦部だなんて知らなかったし。

自分の実力の限界を知るのが怖くて本気で打つのをやめていただけだ


京太郎「じゃあ俺がレギュラーを本気で目指して、泉を蹴落としてレギュラーになったらどうすんだ?」

泉「ええで?てか京太郎は逆にそんぐらいの勢い持つべきなんや」

京太郎「はっ?!待て待て、お前はレギュラー落ちしたくないからって……!」

泉「京太郎は逆に優しすぎなんよ」

京太郎「え?俺が……?」


……まぁ、確かに他の連中と比べると必死さが足りないかもしれない。

俺はみんなが心から楽しめない、学校のカースト制度に縛られた麻雀は少し嫌いだった。

けど、その嫌いな制度が千里山を強豪たらしめる由縁であって……俺の我儘で変えれるような軽いものなワケが無い。

つまるところ嫌なら最初から入るって話だ。

京太郎「確かに俺は麻雀強くないうえにずっと逃げてた」

泉「何言うてんねん、逃げてたわけやないやろ!」

京太郎「いや、逃げてたよ……今日までは」


この麻雀部のシステムが嫌だったから今日まで逃げてきた。

本当に嫌なら泉を置いてでも麻雀部を辞めればいい話だった……けど。

今日泉と話して俺は心で思うのすら愚かと思っていた事を今から泉に伝える決心がついてしまった。


京太郎「泉、俺にも目標ができたよ」

泉「え?」

京太郎「レギュラーになって、お前と肩を並べる……それが目標だ」


俺のその言葉で泉はしんみりとした顔から普段の勝気な顔へと戻る。

その顔を見据えて俺はハッキリと彼女に伝える。


京太郎「ホントいつになるかわかんねーけどさ……それまで待っててくれるか?

泉「ええで………それがいつになるか分からんけど、言ったからには約束やで!京太郎!」


三軍の末端と一軍の最先端に居るレギュラーの壁は大きい。

けど、本当に夢が叶うその日までは

俺も今日から勝ちに行く麻雀をすると心に決めた。

今日はここまでにします
ありがとうございました



下3のお題とキャラ、下6のお題とキャラで明日にやります


和「うっ……ううっ……」

咲「ま、また新しいエトペン買おうよ!ねっ?!私たちも一緒に行くから!」


この日の部活の雰囲気は最悪だった。

理由はただ一つ。

和がエトペンを鞄から取り出すと、胴体の腹綿がブチ撒けられてエトペンが千切れていたのだ。


咲「この千切れた部分、なんとか縫えませんかね?」

まこ「いや……これは買いなおした方が早いじゃろうて」


見ると確かによほど何でもこなせる万能な人でもない限り修復はできなさそうなぐらい酷い。

見た和本人は原因不明の現象にどうしてー、と仰天していたが、俺はいつかこんな日がくるんじゃないかと思っていた。

エトペンさん……結構色んな方々から散々な扱いされていたし。


和「ひっぐ……昨日までは…っ……まだ破れてなかったのに」

久「よしよし、ほら、もう泣かないの」

優希「タコス食べて元気出すじぇのどちゃん!」

和「いりません!」


当の和は子どものように泣きじゃくっている。

そしてそんな和を周りは親のようにあやしている。

普段キリッとした和がこんな風にまでなるなんてな、なんていうか貴重だ。


まこ「こりゃあ部活どころじゃないのう……」

久「そうね……今日は終わりにしようかしら」

京太郎「確かに和がこんな様子じゃ部活になりませんね」

咲「それなら和ちゃん、今からファンシーショップ行こうよ!」

優希「うん!もっといいのが見つかるかもしれないじぇ!」


何とか和を立たせた咲と優希は慰めつつ部室から出る。

俺も部長と染谷先輩に一礼をして部室を出たが、三人とは違う道で帰ることにした。

俺がいたところで何もできないし。


とは言ったものの、このまま家に帰るのも落ち着かないので俺は商店街へとやってきた。

このモヤモヤは家に居たら更に大きくなってしまうに違いない。

新作入ってるって聞いたし、モヤモヤを吹っ飛ばすためにもゲーセンでちょっとだけやって帰ろう。


京太郎「?」


しかしそのゲーセンへ向かう途中

"裁縫フェアやってます!彼氏彼女へのプレゼントへどうですか?"

という張り紙をホームショップの前で見つけ俺の脚は立ち止まる。

立ち止まった理由は自分でも分からない……裁縫なんかに興味は無かったはずなのに。

京太郎「………裁縫か」


なぜか頭で考えたわけじゃない。

行動に移そうとしたわけでもなかった。

けれどどうしてか、俺の体はゲーセンよりもホームショップの方へと向かっていた。



そして自宅に戻った俺は購入したぬいぐるみ作成キット一式を見て頭を抱えて激しく自責の念に駆られる。


京太郎「あーあ……買ってしまった」


なんで俺はこんなものを買ったんだ?まさか和にエトペンを手作りでしようなどと思ってるのか?

裁縫はそんなに甘いものじゃないってことは俺でも分かる。

ド素人の俺じゃそんなこと到底無理だってことぐらい。


京太郎「やってみなきゃ分かんねーだろ!!」


誰に言うでもなく俺は作成キットと同時購入した裁縫の心構え本をよく読む。

それと同時にネットでエトペンのことをすみからすみまで調べ倒す。

その日の夕方から俺は晩飯を食べるのも忘れ、何かに憑りつかれた用に裁縫に没頭していた。



次の日の朝。

眠い目を擦りつついつもより1時間早く学校に登校し、俺は麻雀部の部室に入る。

部室には予想通り既に和が居て俺に気づくとぺこりと挨拶をしてきた。


和「おはようございます須賀君。朝に来るのは珍しいですね」

京太郎「おはよう和。今日も早いんだな」

和「何をするのも、朝の方が効率が良いって科学的にも証明されてますからね」

京太郎「そうか?夜になればなるほど麻雀が強くなる奴もいるみたいだぞ?」

和「そんなオカルトありえません」


昨日と違い、今日の和はいつも通り平常運転。

……のように、見えるがよく見ると眼が真っ赤だ。

あの後一日中泣いていたのだろうか。


和「昨日はご迷惑をおかけして、本当にすいませんでした」

京太郎「いや、全然いいって!仕方なかっただろアレは?」


申し訳なさそうに深々と頭を下げてくる和。

何とかフォローを入れるも和の顔は晴れずに曇っている。

しかもここには俺と和以外誰もいないから、気まずいことこの上ない。


このままだとタイミング逃してしまいそうだし、ここで渡すべきだな。


京太郎「和」

和「……はい?」

京太郎「これ、お前にやるよ」

和「………っ!」


俺は鞄から徹夜で作ったエトペンを取り出し、和に差し出す。

正直とてもじゃないが和が前に持っていた物とは比べ物にならない出来だが。


和「こ、これどうしたんですか!?」

京太郎「すまんけど俺ができる精一杯がそれなんだ」

和「そうじゃなくて!このエトペン……もしかして私の為に作ってきてくれたんですか?」

京太郎「ああ、そうだよ」

和「――――!!」


俺の作ってきたエトペン2世と俺の顔を交互にみる和。

なにか言いたそうな顔してるが、言いたいことがありするのか口があぐあぐしている。

あの冷静な和が昨日今日とで可愛くあたふたしている様を見ることができるとは思わなかった。


京太郎「それじゃ、また放課後に」

和「待ってください!」


とりあえず目的は済ませたので変な考えが出る前に俺は退散しようとすると和に腕を掴まれる。

和に掴まれるのなんて初めてのことだったが、彼女の細い指が震えているのを俺は肌で感じた。


京太郎「和?」

和「あ、あの……!あの、ええと……!」

京太郎「お世辞にも出来た作りとは言えないけどさ、本物のエトペンが来るまでそれで勘弁してくれないか?」

和「いえ……」



和「私、ずっと……!ずっとこのエトペン大切にします!」

京太郎「お!?お、おう!」


和の手で俺の掌を包まれた上、涙を浮かべた彼女の笑顔に思わずドキッとしてしまう。

顔に体温が集中し俺は気恥ずかしくなり、和の腕を優しく振り切りダッシュで部室を後にする。


和「あっ、須賀くん!」


やばいやばいやばい、俺って今更だけど結構キザったらしいことしちまった。

これじゃ放課後和に会う時会いづらい、すごく会いづらい。



けど……

俺は今までよりも、自分をちょっとだけ誇らしく思った。

私服和もうちょいしてやりまするー


京太郎「…………」

和「この牌を切る時は、河をよく注意して見てくださいね?」

京太郎「…………」

和「京太郎さん?」


休日、俺は和の家にてマンツーマンで麻雀講座をしてもらっていた。

それは麻雀初心者の俺にとって全中覇者の和から教えてもらうのは願ってもないことだ。

しかし、現在俺はとある理由のせいで全く肝心の麻雀講座には集中できていなかった。


和「京太郎さん!」

京太郎「うぉ!」

和「もう、ボーっとしないでください!」

京太郎「あ、ああ……ごめん」

和「疲れてるのなら少し休憩しますか?」


いや、俺が集中できていなかったのは疲れているからではない。

俺が集中できなかったのは


京太郎「なぁ、和」

和「なんですか京太郎さん?」

京太郎「お前さ………その服装どうにかしてくれ」


そう、和のそれはもう際どい際どい服装のせいで麻雀どころじゃないのだ。

色々とチラリズムを超越した服装に俺はもう辛抱たまらない。


和「え?私の服、何かおかしいところありますか?」

京太郎「おかしいだろ!」


本気でその服装が不通と思っているらしい。

本人は顔に?マークを浮かべている。

和は自分がやばい服を着ているという自覚が無いのだろうか。


京太郎「他に何か服ないのか?」

和「ありますけど、全部似たようなものばかりですよ?」

京太郎「……ちょっと見せてもらってもいいか?

和「はい、構いませんよ」


嫌な予感がしたから他の服もみせてもらうと案の定。

なんとまぁ、龍門渕の中堅さんが来てそうな服ばかりだ。

これはちょっと矯正する必要アリと見た。


京太郎「和……服、買いに行こうか」

和「洋服ならたくさんあるじゃないですか?今京太郎さんも見ましたよね?」

京太郎「ああ、じゃあ言い直そう。"普通"の服を買いに行こう」


和「そ、そんなに私の服は普通じゃないんですか?!」

京太郎「普通じゃない普通じゃない」


「普通」を強調して強めに言う。

和は麻雀講座の途中だからと渋ったがここは俺も譲れない。

普段見せない俺の頑固さにちょっと驚いたのか、最終的に和は服を買いに行ってくれることになった。


服屋に着くと、早速「普通」の女性服コーナーへと向かう。

そして店員さんには「彼女に似合う"露出の少ない"服を見立ててください」とオーダーする。

これでよっぽどじゃない限り和がクレイジースタイルで出てくることは無いだろう。


和「お、おまたせしました……」


試着室から出てきたみたいだな。

さて、どんな感じになったのかな。


京太郎「おっ」

和「どうでしょうか?」


今の和の格好は確かに雑誌でよく見るヤツだ。

アラレちゃんメガネに派手な柄物ストッキング……そしてブーツにショートパンツ。

和は顔立ちがいいので非常に良く似合っている。


京太郎「いいんじゃないか?原宿にいそうな感じ」

和「…………」


あれ?何か反応がイマイチだな。

俺はいいと思ったんだけど。



そして和のお着替え2回目。

新たに店員に用意された服を和は試着室で来ている最中だ。

今度は自分でも気に入ってくれるといいんだけどな。


和「京太郎さん、お待たせしました!」

京太郎「ん?やけに上機嫌………いっ!?」


俺は和の姿を見て言いかけた言葉がひっこむほど驚いた。

黒のニット帽を被り両肩が大きく露出した服

服の丈に隠れて履いてるか履いてないか分からんほど短いショートパンツ

なんというか、アメリカの女性ヤンキーが来てそうな服を着こなす和がそこにはいた。


和「この服装、とっても動きやすいですね……これに決めました!」

京太郎「ちょっと待て和!似合ってるのは認めるがそれはやめとけ!」

和「え?どうしてですか?」

京太郎「どうしてって……お前そんな服着るキャラじゃないだろ」

和「服にキャラが関係あるんですか?私はそんなことより利便性を考慮した方がいいと思いますが」

京太郎「だ、だけど」

和「それにこの服だと、今私がもっている服よりかは露出が少ないでしょう?」


ああ、ダメだ。

こうなったら和は譲らない。


和「同じような服、何着か持ってきてください」

店員「かしこまりました」


結局似たような服を数着お買い上げした和は買った服を着たまま上機嫌で帰宅の途についた。

なんというか、最初の目論見とは大分乖離した結果になってしまった。

まぁ、でもあの服よりかは全然マシだしいいんだよな……?



和「ただいま帰りました」

京太郎「お邪魔します」

恵「和か……おかえ」


和の家に戻ってきたところ、丁度ばったり和の親父さんと出くわす。

親父さんは俺と和を代わる代わる見て、最後に俺に焦点を合わせた。


恵「…………」


その眼光は明らかに歓迎する眼でないことを俺はひしひしと感じ取った。

とても嫌な予感がするので今日はここで帰るとしよう。


京太郎「あ、じゃあ和さん送り届けたので、俺はこれにてしつれ」


言い終えるより早くミシっと音がしそうなぐらい強い力で肩を捕まれ引き止められる。

振り向くと、そこには笑顔な和の父さんの顔があった。


恵「お茶でも飲んでいくといい、さぁ、上がりたまえ?」

和「そうですよ京太郎くん、まだ麻雀講座も終わっていませんよ?」

恵「京太郎?」


下の名前で呼んだことに和の親父さんが反応する。やばいやばい何か何か言わねーと……。


京太郎「いや、その………えと」


京太郎「娘さんをボクにください」


カンッ

パありがとうございました



下3 下6 のお題とキャラ明日やろうと思います

京太郎の許嫁の小蒔
(京太郎は須賀神社の跡取り息子設定)


あとここってキャラの年齢変更ってある?
霞をお母さんにしたり京太郎を先生にしたり……


男子高校生という生き物はなんと燃費の悪い生物なのか。

昼にパンを五つも食ったはずなのに夕方になるともう腹が減っていた。

燃費のクソ悪い外車でも一日二日は持つというのに。


京太郎「……腹減った」


通行人は俺の咆哮のような腹の音が鳴る度に振り返る。

しかし恥ずかしいとかそういうレベルはとうに超越しているほど腹が減ってやばい。

なるべく出費は抑えたいけどこりゃ家に着くまで持ちそうにないし。


何か屋台は出てないかと辺りを散策すると、すぐに"たこ焼き"と書かれたのれんが掛かった屋台を見つける。

鼻をくすぐる香ばしい匂いに俺は獲物を見つけたかの如く屋台の方へダッシュ。

腹が減ってしょうがなかったすぐさま俺はたこ焼きを三ダースほど購入。

これで明日はパン三つで午後を過ごさねばならないが明日の幸せより今の幸せを取ることにするよ。


ベンチに座り袋から買ったたこ焼きを取り出す。

そして子どものように慌ただしく蓋を開封し箸を二つに割る。

もう既に俺の食欲は限界を超えている。

それでは、この熱々なたこ焼きをさっそく


京太郎「いただきまーす!」

洋榎「いただきまーす!」

京太郎「…………ん?」


鈴のように高い声が俺の低い声に被った。

今、確かに横で俺と同じセリフを言った奴がいた。

気づかれない程度にチラッとベンチの横を見る。


洋榎「んまいわー!やっぱ部活終わった後のたこ焼きは最高やで!」


膝上にたこ焼きを何十パックと重ねた女子校生がそこには居た。

あれだけ勢いよく食おうとしていた俺の手は箸を持ったまま空中で静止し口はぼかんと開く。


洋榎「はふっ……!はふっ!はふっ!」


熱い、でも手が止まらない!

そんな感じで頬をモゴモゴとさせながらたこ焼きを頬張る女子校生さん。

ちゃんこ鍋を食らうお相撲さんの如くたこ焼きを食べるその姿に俺はしばらく目を奪われていた。


洋榎「ごちそーさん……ところで、なんや自分?」

京太郎「……はっ!」


しまった、チラ見程度だったつもりがガン見していたのか。

女子校生は口元に青海苔をつけながらジト目で俺の方を凝視している。


洋榎「さっきからジロジロ見とるようやけど、そんなにうちが珍しいんか?」

京太郎「い、いや……その、ええと」


やばい良い言葉が出てこない。

何て言えばいいんだ?あなたの食べっぷりが凄かったんで見てましたってか?

いや流石にそんなことを初対面の人に言えるほど俺に社交性はない。


洋榎「はっはーん?さてはうちが可愛すぎて見とれてたんやな」

京太郎「…………えっ」

洋榎「ええんやえんや、分かるで兄ちゃんの気持ちは?」

京太郎「…………」

洋榎「誰が隠そう、大阪で一番の人気女子校生愛宕洋榎っちゅーのはうちのことや!」


俺が言葉を返す前に先に女子校生さんからドヤ顔200%と言った顔でマシンガントークを放たれる。

あまりにも流暢な言葉の羅列に俺はまたもや口がぽかーんと開く。


京太郎「…………」

洋榎「…………」

京太郎「え?」

洋榎「え?、やない!なんかツッコまんかい!」

京太郎「ツッコミ待ちだったのかよ!」

洋榎「当たり前やないか!絹ならともかくうちは自分が可愛いなんて思っとらんわ」


そうなのか?

本人は可愛くないって言ってるが、最初見たとき顔立ちは整ってるなと思ったんだけど。

俺はな、俺は。


洋榎「ん?なんや、また人の顔ジロジロ見て?」

京太郎「その絹っていうのが誰かは分からないが……愛宕洋榎さんって言ったっけ?」

洋榎「せや」

京太郎「うーん………愛宕さん可愛いと思うけどなぁ、俺は」

洋榎「はっ?なんやて?」

京太郎「だから、愛宕さん普通に俺は可愛いと思うぞ」


俺がそういうと彼女は口をを△の形にする。

と思ったら、なぜだが今度は急に愛宕さんは顔が真っ赤になっていた。


洋榎「コ、コラァ!!しょうもないこと言うとったらしばきあげるで!?」


飛んでくる唾を避けながらよーく愛宕さんの顔を見る。

美人って感じの顔じゃないにしても

可愛いってカテゴリには充分入るんじゃないだろうか。


京太郎「うん、やっぱり可愛いだろ」

洋榎「せ、せやからやめろ言うとるやん!新手のナンパかいな!?」

京太郎「違う違う。正直に思ったことを言っただけだって!」

洋榎「な……なっ、なっ…ななな……!」

京太郎「目クリッとしてるし俺の結構タイ」


言い切る前に俺の顔に愛宕さんの持っていた鞄がクリーンヒットする。

予期せぬその衝撃に俺は思わず尻もちをついた。


洋榎「か、帰る!!うち帰る!!」

京太郎「いって………あっ、鞄!鞄置いてってるぞ!」

洋榎「知るかボケ!」


俺の呼び止める声を聴かず愛宕さんはさっさと去っていく。

ちょっとやりすぎたかなと思いつつ俺も自分の鞄と買ったたこ焼きを持ち愛宕さんを追いかける。

追いかける途中にまだ手を付けていなかった、たこ焼きを爪楊枝で刺して口に運ぶ。

あれだけ熱かったたこ焼きはすっかり冷めていた。


洋榎「………えへへ。うち、可愛いって言われたん初めてや」

京太郎「おーい!」

洋榎「っ!ついてくんな!」

京太郎「んなこと言ったって鞄!鞄忘れてんぞ!」


俺としては早くたこ焼きを食べたいのでとっとと鞄を渡したいんだが。

なぜか愛宕さんは鞄を受け取ろうとせず足早に逃げていく。


京太郎「俺……なんか悪いことでもしたのか?」





カンッ

>>67
ありですね


もうちょとしたらワハハします


布団の温もりって、あれなんであんなに気持ちいんだろうな。

一度入ったら最後。惰眠を貪るまで永遠にこの呪いから抜け出すことはできないのだ。


京太郎「ってことであと五分……あと五分したら起きるから」

智美「ワハハー、ご飯冷めるからダメだなー」

京太郎「じゃあせめてあと三分……」

智美「残念だがウチで延滞は禁止だぞ」


そんな懇願も空しく、俺は智美に容赦無く布団を引きはがされ地面に落とされる。

その衝撃で目は覚めたものの朝特有の気だるさが突然やってくる。

地面に大の字で横たわったまま、まるで身体が貼り付けにされたように動けない。


智美「ほら、早く起きないと遅刻するぞー」

京太郎「起こしてくれ智美。俺はもう駄目だ」

智美「無理だな。京太郎は重いし」

京太郎「そんなこと言わずに頼みますよ、かみさん」

智美「……しかたないなー」


智美が俺の両脇に手を入れると、そのままズルズルと引きずっていく。

結婚した最初の内は俺も申し訳なく思ってたんだが慣れいうのは怖く、このやり取りは恒例になっていた。


智美「今日の朝ごはんは肉じゃがだぞ」

京太郎「おお!朝から豪勢だな!」

智美「京太郎には一日頑張ってもらってるからなー、体力付けてもらわないと」

京太郎「それじゃあ……んー」

智美「ワハハ、大口開けてなにやってるんだ京太郎?」

京太郎「あーんだよ!あーん!」

智美「分かってるさ、少しからかっただけだー」


智美に朝飯をを口へと運んでもらう。

このあーんをもらうだけで一日のモチベーションが段違いなんだ。

これがあるから今日も智美の為に頑張ろうって気になれる。


京太郎「あ、ジャージは?」

智美「心配しなくてもそこに干してるぞ」

京太郎「今日はどこのコース走るんだ?」

智美「そうだなー、久々に鶴賀の所でも走るか」


朝飯を食って力を付けた後は早朝ランニングだ。

毎朝俺達は色んなコースを肩を並べて一緒に走っている。

俺が病気しないように智美が提案してくれたのだ。


庭に出て準備運動を終え、早速走る。

朝の風と小鳥のさえずりが朝の始まりを感じさせ、気持ちを穏やかにさせてくれる。


京太郎「ふぃー、いい汗かいたかいた」

智美「ワハハ、スッキリしたぞ」


一時間ほど山道を走り、程よく汗をかいた俺達は帰宅する。

もう朝の気だるさはすっかり吹き飛んでいた。


京太郎「ちょっと風呂入って汗流してくるな」

智美「分かった。スーツ用意しとくからなー」


ジャージをハンガーにかけて浴槽へ向かう。

風呂に入ったら体の汗を丁寧に流し、頭もすみずみまで洗う。

フケや髪の毛を家にばら撒くと智美に嫌な思いさせてしまうからな。

俺が会社に行ってる間に少しでも家事は減らしてあげたいってもんだ。



智美「全部用意はできてるぞ」

京太郎「おう」


風呂から上がると智美がスーツと冷たいコーヒーを用意してくれていた。

俺はシャツを着た後、智美にネクタイをむすんでもらいながら入れてもらったコーヒーを味う。

ランニングと風呂で火照った体に冷たいコーヒーは格別に美味しかった。


京太郎「ぷはー!これぞ生きてるって感じがするぜ!」

智美「大袈裟だなー」



出勤前、鏡を見てスーツのチェックは怠らない。

智美の夫として恥ずかしくないような格好をしないといけないしな。

玄関まで智美に鞄を持ってもらい、俺は家を出る準備をする。


京太郎「んじゃ……いつもの頼むな!」

智美「ワハハー、眼を瞑れー」


夫婦の証であるキスを交わす。

それが数回終わると俺は智美から鞄を受け取る。


京太郎「じゃあ、行ってきます!」

智美「行ってらっしゃい、京太郎」


午前7時、俺は今日もいつもと同じ時間に家を出た。



カンッ

ワハハと結婚したら離婚は100%ない



明日下3 下6のお題&キャラやります
ありがとうございましたー


淡「ねーキョータロー、ごはんまだぁー?」

京太郎「あとちょっとだ」


もう待てないー、と叫びながらテーブルを箸でカンカン叩くこの女性。

何を隠そうこの俺、須賀京太郎の伴侶である須賀淡だ。


京太郎「こらこら、行儀悪いぞ?」

淡「いいからはーやーくー!」

京太郎「はいはい、すぐにお持ちしますよお嬢様」

淡「よきにはからえー!」


もうアラサーになるというのに外見と行動はまるっきり子どもだ。

実際俺と結婚した時は敬語すらまともな使えなかったしな。

結婚式のスピーチで年上の方々にバリバリのタメ口だったのは流石に肝が冷えたぜ。


京太郎「ほら、できたぞ」

淡「ホント!?はやくはやく!」

京太郎「今日はパエリアを作ってみたんだ。食ったら感想きかせてくれ」

淡「ぱえ……?」

京太郎「パエリアだパエリア。スペインの……」

淡「あーもー!そんなことはいいから早く食べさせてよ!」


お姫様は爆発寸前の模様。

確かにこれ以上焦らして宇宙でも出されたらたまったもんじゃない。

背景になんかオーラがでかかってる淡を鎮める為に俺は飯を彼女に奉納する。


京太郎「ほら、ちゃんとふーふーして食べろよ」

淡「えへへ……もう食べちゃっていいよね!?」

京太郎「ちゃんと"いただきます"してか」

淡「いただきます!!」


今時の小学生でもしない粗末な"いただきます"でパエリアに襲い掛かる淡。

面倒くさがりな割にこういう時だけ行動早いんだよな昔から。


淡「んー、おいしっ!流石は専業主婦だね!」

京太郎「専業主夫な」

淡「え?だからそう言ったじゃん」

京太郎「お前別の字で想像してるだろ、どうせ」


それは置いといて淡が言った通り、俺は専業主夫をやっている。

仕事内容は料理、洗濯、掃除……まぁ主婦が大抵こなしているものだ。

じゃあ淡は何をやっているかというと。


淡「ねぇねぇ聞いてキョータロー!今日始めてテルーに跳満くらわしたんだよ!」

京太郎「ほぉー……あの宮永プロの姉の方にか?そいつは凄いな」


プロ雀士。

それが淡の仕事であり須賀家の収入源であるのだ。

と、いうよりそれ以外に淡ができそうな仕事が他に思いつかない。

なんだかんだで結構な金額稼いでくるから俺じゃ何も言えないけど。

たまにスゲー桁ポンッと持って帰ってくるし。


淡「私がすこやんプロを倒す日もそう遠くないかもね」


ふふん、淡はとドヤ顔で鼻を鳴らす。

しかし小鍛治プロの名前は麻雀から離れた俺ですら知っている。

史上最年少八冠保持者で永世称号七冠を与えられた最強の雀士。

淡との関係上の付き合いで俺も会うことは何度かあった。


京太郎「あ、そういやあの人結婚できたのか?」

淡「ううん。まだ独身みたいだよ?もう50近いのに大変だねー」

京太郎「そっか……もうそろそろ厳しいかもな」

淡「そうだね……すこやんプロの前で"結婚"は禁句だもん」

京太郎「…………」

淡「…………」


ここら辺でやめよう。

結婚生活10年目の俺らが言うと嫌味以外の何物でもない。

その内いい人見つかるといいですね、小鍛治プロ。


淡「でもさー、私も京太郎と会ってなかったらずっと独身だったかもね」

京太郎「そりゃ否定できねーな」

淡「むぅ…そこは嘘でも違うっていう所なんだけど」


10年前の淡は「外見は可愛いが性格に難あり」を見事に体現した存在だったからな

今でもじゃじゃ馬なことには変わりないっちゃ変わりないんだが。


京太郎「でも俺はそんな淡が好きだから結婚したんだぞ?」

淡「そ、そう?」

京太郎「まだまだ10年目だけど、これから先末永くよろしく頼む」


結婚10年目ということで改めて淡と向き合う。

言葉にしてみればたった二文字だが随分と色々あった。

二人で日本の名所回ったり、海外の世界遺産巡りとか

ああ、道中ヤクザの麻雀に巻き込まれた時はもう駄目かと思ったっけ。

でもそんな思い出も俺と淡の中にはしっかりと夫婦の歴史として刻まれている。


淡「……キョータロー!」

京太郎「ん?」

淡「私も大好き!この先もずーっと、100年先まで一緒だからね!」


両手の指で100の数字を作りにぱーっと笑う淡。

対局相手に見せる様な冷徹な笑みじゃない、俺だけに向ける春の陽気のような笑顔。

この笑顔が見れるから俺は頑張ることができるんだ。


京太郎「ああ、そうだな」


俺は返事を返すと淡をそっと後ろから抱きしめた。

食事中ー!と淡は返すが関係ない。

しばらくはこの甘美でいい匂いに浸っていたいのだ。


京太郎「さて、娘たちが帰ってくる前に始めますか」

淡「ちょ、ちょっと待って!流石にここで!?しかもまだ食べてるし!」

京太郎「ダメか?」

淡「………イヤじゃないけど」



カンッ

病的な菫さん~^はこの後にやります


彼女に関して「作る」と「できない」では大きな違いがある。

前者は強者の余裕という奴で、後者は言わずもがなだ。

そして勿論、悲しいことに俺は前者に分類される。

作りたくても作ることができないのだ。


理由はモテないからとか、そんなんじゃない。


京太郎「…………」

菫「……ふふ」


とてつもなく視線を感じる。

自意識過剰ではない。

この射殺すような突き刺す視線は決して間違いなんかじゃない。


京太郎「………はぁ」


牌譜を整理しながら本日何回目かのため息をつく。

気にしたってしょうがないが、それでも心の中は落ち着かない。

しかし振り返ってはダメだ、それだけはダメだ。


照「京ちゃん?」

京太郎「……あっ、照さん。こんにちは」


話しかけてきたのは高校生チャンピオン、宮永照。

俺が"弘世菫の弟"ということもあってか何かと世話を焼いてくれるいい人だ。

……部長である菫ねえとの関係はとてつもなく悪いが。


照「何か悩んでるみたいだけど……大丈夫?」

京太郎「いやいや!ホントに大丈夫ですんで!」

照「熱があるかもしれない。ちょっと見せて」


そっと俺のでこに手を添えようとした瞬間―――


照「………!」

京太郎「………え」


照さんの頬をかすめて一文の矢が後ろの壁に突き刺さる。

彼女が頬をかすった箇所からは赤い血が滴り落ち、床に赤い染みができていく。

俺はその異様な光景に絶句するしかなかった。


一連の出来事に部室は世界の終わりのように静まり返る。

しかし悲鳴をあげる者はいない。

騒げばどうなるか部員全員が知っているからだ。


菫「京太郎に近づくな、と頭の悪いお前の為に私自ら言ったはずだが?」

京太郎「………あ」


俺がこの世で最も畏怖する声によって意識は再び覚醒する。

見えるのはシャレにならないホンモノの弓を構えた自分の実の姉の姿。

その人の姿を目に収めてしまった瞬間に全身の防衛本能が働く。


照「……菫、どういうつもり?」

菫「うん?分からないのか?」

照「分からないな」

菫「なら次は当ててやろうか?わざと外してやったことぐらいお前でも」

京太郎「待てよ菫ねえ!」


勇気を振り絞って止めに入る。

怖い、怖い、今すぐにでも逃げ出したい。

俺のせいで照さんを巻き込むわけにはいかないじゃないか。


京太郎「照さんは俺を心配してくれて……!」

菫「京太郎!」


振り絞った勇気は空撃ちに終わる。

菫ねえに両の肩を捕まれ、恐怖でに言わないといけないことが喉の奥に引っ込む。


菫「顔色悪いぞ?何かあったんじゃないか?」

京太郎「そ、それは……」


アンタのせいだよ

とは口が裂けても言えないが。


菫「言いたくないなら無理に言わなくてもいいぞ。今日はもう帰ろう?ほら、支度して」

京太郎「はぁ!?何でだよ!」

菫「家に帰ったら何か温かいもの作ってやるからな」

京太郎「待て!待ってくれ菫ねえ!俺の話を…」

菫「お前には雑用をさせすぎたのかもな……駄目なお姉ちゃんを許してくれ」


猫なで声で俺に語り掛ける菫ねえ。

照さんに向けたドスの利いた低い声質との違いに俺は鳥肌が立つ。


菫「手を繋いで帰るぞ。はぐれたりしないように」

淡「………異常だよ菫先輩!」


手を強制的に繋がれ今にも部室を出ようとしたその時、一人の女生徒の声が響いた。

広い部室に響きわたった大きな声に菫ねえも一度足を止める。


菫「……なんだって?」

淡「異常すぎるよ、こんなの……その人が可哀想」

菫「何が異常なんだ淡?言ってみろ」


弟である俺でさえ畏怖するほどの眼光で女生徒を睨む菫ねえ。

睨まれた女生徒はやや目に涙を浮かべスカートの裾を持って小鹿のように震えていた。


淡「弟にそこまでベッタリなのは病気だよビョーキ!!」


白糸台麻雀部の誰もが思っていたことをついにそいつは口にした。

その瞬間、照さんを除く周りの奴らは避難訓練のようにに部室の隅へと一斉に非難する。

俺も手さえ繋がれてなければ逃げたい、一刻も早くこの手を振り切り避難したい。


菫「それはいけないことなのか?」


意外にも菫ねえは穏やかな口調で女生徒に返答する。


菫「たった一人の弟を愛することはいけないことなのか?」

淡「そんなの……弟いないし分かんないよ。でも、菫先輩はやりすぎだってことぐらい分かる!」

菫「……そうかそうか、なるほどな。分かったよ」


その返答に彼女は"くっくっ"と嗤って整った顔を歪める。


菫「お前は人を愛したことがないだろ?」

淡「っ……だからなに!?」

菫「愛を知らぬ者に愛を語る資格なんてないんだよ、淡」

淡「…………」


それ以上女生徒は何も言い返さなくなった。

ただ一つ気になったことはなぜか俺を暗い瞳で見据えていたことだ。

菫ねえは黙らせて満足したのか俺の手を再び握りしめ、引っ張っていく。



菫「京太郎、愛してるぞ」


帰り道、肩に頭を擦り付けられながら告げられる。


京太郎「ああ、俺もだよ菫ねえ」


それに対し、俺はなるべく心をこめないように返事をかえすのだった。



カンッ

SSS(物理)はお姉ちゃんの鏡、はっきりわかんだね



下3 下5 下7のお題&キャラで明日やりたいと思います
お付き合いありがとうございました


「なぁ、須賀。これ白水先輩に渡しといてくれよ」

京太郎「……なんで俺が?」

「いいだろそんくらい。白水先輩と一番親しいのお前ぐらいなんだから」


放課後、同級生から手渡された一通の手紙。

世間でいうラブレターというやつだ。

今時こんなものを送る奴がいるのかと思っていたが案外いるもんなんだな。


京太郎「別にいいけどよ」

「サンキュ!もし成功したらハンバーガー奢るわ!」


特に断る理由もないので承諾する。

その手紙は曲げないようにポケットへとしまい込む。

後ろで大はしゃぎする男子生徒を尻目に俺は教室を後にし、部室へと向かうことにした。




京太郎「ちわーっす」

哩「来たね、京太郎」

京太郎「……あれ?哩一人か?」

哩「こら、学校では部長っち言え」

京太郎「そんな今更かよ」

哩「京太郎だけ呼び捨てやと、他の一年二年のモンに示しつかんやろ?」


部室に入るなりお説教を食らう。

説教をするのは俺の幼馴染であり麻雀部の先輩、白水哩。

昔っから融通の利かない性格で礼儀どうこうと親よりも怒られてきた気がする。

そんな短いスカートしてるクセしてそういうとこは真面目なんだコイツは。


哩「姫子たちまだきとらんけ、久々に二人で打つか」

京太郎「打たねーよ!お前に勝てるわけないだろ!」

哩「安心せんね。本気で打つわけなかと」


心配せんでよかよか、と笑う哩。

そりゃそうだろ。

縛り無し状態の哩が本気なんかだしたら俺なんて東一局で飛ぶだろうが。


哩の強さは佐賀に居た頃から俺が一番知っている。

インターミドルじゃ鶴田先輩と組んで全国に一躍し

インターハイではあの全国の頂点、白糸台を一方的に叩きのめした。

昔は俺と一緒ぐらいの強さだったのにどこでここまで差がついたんだ。


哩「京太郎お前、国士狙っとるのバレバレばい」

京太郎「なんで分かった!?」

哩「お前の河にヤオチュウ牌一個も出とらんし字牌もなかとね」

京太郎「くっそ、こうなったら作戦変更」

哩「もう遅か、それロンばい」

京太郎「げっ!」

哩「昔から成長しとらんな。デカイん狙い行く癖はまだ治っちなかね」


性格はちょっとキツいが真面目で美人。

後輩からも慕われる完璧超人。

そんな哩を放っておく男子生徒は少なく告白されていたのを多々見かけた。


京太郎「あのさ、哩」

哩「やから部長ばい」

京太郎「これ」

哩「………なんねこれ?」


ポケットから渡されるように頼まれた物を哩に手渡す。

受け取った哩は変なものでも見るように手紙を見る。


京太郎「ウチのクラスの奴、お前に読んでほしいんだってよ」

哩「私に?誰なんそいつは?」

京太郎「哩の知らない奴って言ったら大体察しはつくだろ?」

哩「……ああ、そーいうこつね」


はぁ、とため息をつく哩。

受け取ったんだから当然読むかと思ったが、何故かそのまま手紙の中央を両手で持ちだす。


京太郎「おい、まさか………」

哩「気持ちは嬉しか。ばってん断っといてくれん」


そのまま勢いよく真っ二つに破り捨てる。

恐らく時間をかけてかいたであろうその恋文。

それは哩に読まれること無くピンクの便箋と共に無残にも地へ舞い落ちていった。


哩「時間の無駄たい」

京太郎「やりやがった……流石に読んでやれよ、可哀想だろ」

哩「なん言っとーと京太郎?"彼氏"が言う台詞ねそれが」

京太郎「しーっ!声がデカいって!」

哩「大体なん普通にもっときとん?そん場で断るのが彼氏とよ」

京太郎「いや、やっぱさ……男には男の気持ちが分かるから断れないんだよ」


学校では仲のいい幼馴染として知られる俺達。

しかしそれは仮の姿。

本当は幼馴染であり俺達は"恋人"なのだ。


哩「やっぱ私たち恋仲んこと皆に言った方がよか。しゃーしくなってきたばい」

京太郎「それはダメだ!俺が殺される!」

哩「誰にね?」

京太郎「この学校中のありとあらゆる魑魅魍魎達に」

哩「なんね、そげなことか」

京太郎「そげんことでも俺には一大事なんだよ」


もし哩に彼氏が居て、それが俺だということが知られたちでもしたら殺される。

男子生徒も勿論だがそれ以上に姫子さんのことを考えると身の毛がよだつ。

そんな俺を見て哩は眉を八の字にして「心配せんでよか」と一言笑う。


哩「京太郎のことば私が守っちゃるけ安心せんね」

京太郎「………普通、逆じゃねぇか?」





カンッ


玄「京太郎君……なんで昨日は先に帰ったの?」


不安そうな顔で俺の事を見る玄さん。

相変わらず心配性なのは変わらず、今日も俺はこうして問い詰められている。


京太郎「あれ?えっと、昨日は帰る約束してなかったですよね?

玄「約束してなくても……毎日一緒に帰るのが恋人だよ」


やってしまった。

彼女の性格を考えればそう思うのは当たり前じゃないか。

こんな素晴らしい彼女を心配させただなんて、俺は最低だ。


京太郎「すいません。そうですよね、俺が悪かったです……ごめんなさい」

玄「それで、昨日は誰と帰ったの?」

京太郎「えっ?」

玄「一人で帰ったってわけじゃないよね?」

京太郎「…………」


この台詞には流石の俺も止まる。

確かに玄さんの言うとおり一人で帰ったわけじゃない

けど、帰った相手は男じゃなくて「女の子」。

しかもそれは同じ麻雀部の。

正直に言いたいところだけど、ただでさえ心配性なそんなこと玄さんに言ったら……


京太郎「一人で帰りました」

玄「……本当に?」

京太郎「………」


俺の眼をじっと見る玄さん。

こんな純粋な人に嘘をつくのは心が張り裂けそうなほど忍びなく下衆な行為だ。

けれど言ってしまえば麻雀部で色々と問題になるのだけはみんなに迷惑がかかる。

それだけは絶対に避けたい。


京太郎「本当です」

玄「……そっか、なら信じるよ。京太郎君のこと」


どうにか信じてもらえたようでホッとする。

よかった、なんとか危機は回避できた。

こんなことが無いように今度からは毎日玄さんと帰ろう。

そう思った時―――――


穏乃「お、京太郎ー!」

京太郎「!?」

玄「穏乃ちゃん……憧ちゃん?」

憧「やっほ、玄と京太郎」


最悪のタイミングでやってきた二人組の女子。

昨日たまたま俺と一緒に帰った穏乃と憧だ。

本当に偶然、下駄箱で帰っていたところで出会い一緒に帰っただけだ。

一緒に帰ったのは事実で何を言っても始まらないけど。


憧「真っ昼間からお熱いわねー、あんた達」

穏乃「にくいねー、このこの!

玄「はぅ……」


憧と穏乃にからかわれ耳まで真っ赤になる玄さん。

モジモジと謙遜する様子はとても可愛らしい。

俺は馬鹿野郎だ、こうも可愛い彼女を放っておく奴があるか。


憧「京太郎ー?こんないい子なんだから、ちゃんと毎日一緒に帰ってあげなさいよ?」

穏乃「京太郎と帰るの久々だったから楽しかったけどねー。あ、昨日のかき氷ありがとな!」

玄「………え」


俺の脳内でポチッと自爆スイッチの音がした。

その瞬間俺の世界が止まり暗転する。


玄「ねぇ、昨日って……どういうこと……?」

憧「しず!!」

穏乃「あっ……うそ!うそうそ!今の全部うそ!」


分かっているさ、悪いのは穏乃じゃない。

憧でもなければ当然玄さんでもない。


なにもかも、全ては俺が悪いんだ。


玄「……ねぇ、京太郎くん」


玄「今日さ……君の家に泊まりに行ってもいいかな」


玄「色々とさ、お話ししたいことがあるんだ」




カンッ

( ˘⊖˘) 。o(待てよ? ねーちん化する宥姉ってお姉ちゃん化なのかド素人の方なのか?)

声優的にはそのポジは久だしとりあえず前者のお姉ちゃん化でいいんじゃないか?


京太郎「宥姉、鍋できたぞ」

宥「わぁ……いい匂い」


グツグツと煮込んだ鍋を細心の注意を払いコタツの上に置く。

するとコタツに潜っていた宥姉がぴょこっと顔を出す。


宥「ごめんね、京太郎くん……クリスマスなのに」

京太郎「いいんだよ。俺が好きでやってることだし」

宥「でも、本当はみんなと町に行きたかったんじゃ……」

京太郎「宥姉が行かないなら俺も行かない」


阿知賀麻雀部でクリスマスは町で遊ぼうということになっていた。

けれど夏でさえマフラー常備の宥姉に真冬に外に出ることは死ねと言っているようなものだ。

当然宥姉は行けなかったが、クリスマスに一人コタツで過ごさせるのは酷って話だ。


京太郎「それに宥姉、どーせコタツから出れないから困るだろ?」

宥「そ、それはそうだけど。ただでさえ京太郎くんにはお世話になってるのに」

京太郎「だからいいって気にしなくて。ほら、冷めちまうぞ?早く食べようぜ」

宥「……うん」


二人で鍋を囲い、二人だけで鍋を食べる。

これは俺と宥姉の間では昔からの習慣だった。

玄姉は阿知賀麻雀クラブに行ってること、父さんは仕事。

だから必然的に俺と宥姉の二人になることが多かった。


宥「とってもあったかくて、おいしい」

京太郎「高麗人参とか唐辛子とか温まるもの入れてるしな」

宥「え?でもそれじゃ京太郎くんは熱くないの?」

京太郎「おいおい、何年弟やってきてると思ってんだ?とっくになれたよ」


最初のころは汗で泉ができてたけど。

何年も付き合う内に俺の身体もすっかり慣れたもんだ。

今じゃ宥姉の熱い食事に舌を合わせられるのは阿知賀で俺ぐらいだ。


宥「本当に昔から京太郎くんにはお世話になってるなぁ、私」

京太郎「それはお互いさまってやつだろ」

宥「え?」

京太郎「もう覚えてねーかな?」

宥「えっと……ごめんね」

京太郎「母さんが死んだときさ……俺、ずっとふさぎ込んでたじゃん?

宥「……うん」

京太郎「でも、玄姉の明るさ。そして宥姉のあったかさに俺は救われたんだよ」

宥「ええ?わ、私は何もしてないよ?」


謙遜しているが宥姉からはもう十分すぎるほどの温もりを貰った。

自分だって辛かったはずなのに「お姉ちゃんだから」と言って。

あの時どれだけ宥姉の体温が身に染みたことか。

だから今度は俺がお返しをする番なんだ。


宥「……でもそれなら私だって、たくさん京太郎くんから貰ったよ」

京太郎「そうか?俺は寒くて動けない宥姉に飯作るぐらいしかできなかったけど」

宥「それもだけど、もっと大事な物を」


大事な物か。

俺の宝物は宥姉にあげた覚えはないんだけどな。

あんな物見せたら絶対「あったかくない……」って言われるし。


京太郎「何をやったんだ俺は?」

宥「ふふ、それは秘密だよ」

京太郎「うおい!それは教えるところだろ!」

宥「ご、ごめんね。だけど"まだ"教えることはできないよ」

京太郎「まだ?」

宥「うん……気持ちの整理がついた時、ちゃんと伝えるから」


そういう宥姉の顔は笑っていた。

普段ちょっと押したら折れるような宥姉がかたくなになるのは珍しい。


宥「言っちゃったら京太郎くんが私の事、嫌いになっちゃうかもしれないけど」

京太郎「………」

宥「だから、ね?もう少し時間が欲しいの」

京太郎「んー、俺には宥姉が何を伝えたいのかは分かんないけどさ」

宥「……あう」

京太郎「俺は宥姉が世界で一番好きだよ」

宥「へっ!?」


今の俺に伝えれる宥姉への気持ちはこれだけだ。

ストレートに伝えたのが効いたのか宥姉は目を丸くして顔を赤くする。


宥「そ、その……それは……お姉ちゃんとしてって意味だよね?」

京太郎「それもある。けど、女性としても好きだ」

宥「ふぇ!?」


俺はできる限り宥姉がどれだけ好きだったかを伝える。

シスコンって思われてもいい。それでも俺は宥姉が大好きなんだ。


宥「……ずるいよ京太郎くん……私の方が好きなのに」




カンッ

ムーミン部長もう許さねぇからな



ありがとうございました
下3 5 7で明日やりたいと思います

顧問の須賀先生とゆみ

>>118はゆみ→京太郎先生に好意がある感じで
ゆみちんは真面目だから「相手は先生だぞ…それなのに好きなっていいわけが…」みたいに悩みそう

ねーちんは佐々井夕奈の事だったのに…
っていうかド素人ってだれさ

>>125
神裂火織

>>1が2000年のゲームを知っているかは謎


鶴賀学園麻雀部。

創設二年目にして無名校。

去年と一昨年は部員不足で出場すらできず……。

名門風越や去年全国で大暴れした龍門渕にとっては歯牙にもかけない存在だろう。


京太郎「よくやった、みんな。お前達の努力が報われて俺も誇らしい」

ゆみ「いや……ここまでこれたのも須賀教諭のおかげだな」

京太郎「おいおい何言ってんだ。俺は何も」

ゆみ「あなたが顧問になってくれなければ私たちはここまで来られなかった」

睦月「うむ」

桃子「そうっすよ!京ちゃん先生の指導で全国っすよ!」


そんな無名校が全国への扉を開いたのだ。

大会当初は完全にノーマークだった俺達が。

名門風越、化物集団の龍門渕、ダークホース清澄を下して。


ゆみ「実績が無かった私たちに見切りをつけずここまで引っ張ってくれたこと……心から感謝します」

智美「ワハハ、ありがとなー」

佳織「あ、ありがとうございますっ!」

桃子「京ちゃん先生ありがとっす!」

睦月「……ど、どうも」

京太郎「おいおい、やめろって!ムズムズすんだろ!」


突然部員に頭を下げられむず痒くなる。

学生時代全国どころか県予選さえ敗退レベルだった俺を信じてここまでついてきてくれた五人の部員。

ゆみ、桃子、智美、佳織、睦月………俺はお前たちがとても誇らしい。


ゆみ「全国でもあなたの期待を裏切らない。約束する」


そして中でも俺が注目を置いているのがこの少女、加治木ゆみだ。

麻雀を初めてまだ二年というのに実力をメキメキ伸ばし長野でも頭角を現し出した。

コイツなら、俺が叶えられなかった夢を叶えてくれるかもしれない………

勝手な願望だったがゆみは全国への切符を持ち帰り俺の期待に応えてくれた。


京太郎「いや、ゆみ。今度は俺の番だ」

ゆみ「ん?」

京太郎「今度が俺がお前たちの期待に応える番だ。必ず全国大会、優勝させてやる」

ゆみ「……そうか。ならば、あなたのその言葉を"もう一度"信じさせてもらうとしよう」


そう言いゆみは軽く笑う。

その眼は真っ直ぐで、俺に絶対の信頼を置いてくれている証だ。


桃子「ちょーっと近すぎやしないっすかねぇ……あなた達?」

京太郎「おわっ!」


気づくと俺とゆみの間には青筋を立てた桃子が立っていた。

コイツのステルスには大分慣れたものの未だにゆみ以外は完全に捕えられない。

そう言えば桃子の存在を視認するのは最初ホントに苦労したな……。


桃子「そうっすよ!だって!」

智美「……!」

睦月「……!」

佳織「……!」


突然ゆみと桃子以外の部員が何かを察したような顔をした。

と思ったら今度は何故か四人がかりで桃子を引きずり部屋を出ていく。


智美「ワハハー、邪魔者は退散退散だ」

睦月「うむ」

佳織「加治木先輩!がんばってください!」

桃子「ちょ、ダメっすよ!二人きりなんかにさせちゃ!あああああ、せんぱーい!」

ゆみ「お、おい!お前たち!」

智美「ゆみちんファイトだー」


絶叫だけを残して桃子を連れ去って行った四人。

残された俺達二人はさっきまでの騒がしさが嘘のように静寂としていた。


ゆみ「まったく………あいつら、余計な気を」

京太郎「なんだったんだ?新しいコントか?」

ゆみ「あっ、い、いや!?そっ…その!」


そんな大層なことを言った覚えはないのに急に顔を赤らめあたふたしだすゆみ。

先ほどまでいつものように鉄仮面の如く冷静だった彼女の変わりように俺は驚きを隠せない。


京太郎「ど、どうしたいんだ?いきなりそんな慌てて……」

ゆみ「コホン……!何でもない、心配には及ばない」

京太郎「何でもないってことは」

ゆみ「何でもないんだ」


「それ以上は聞くな」とゆみの眼は訴えかけ普段通りキリッと顔を引き締める。

その威圧感に俺は思わず何も聞けなくなってしまう。

しかしあの慌てようは一体なんだったんだ?


京太郎「そうか。それならいいんだけどさ」

ゆみ「ただ、一つ質問してもいいだろうか?」

京太郎「いいぞ?俺の答えれる範囲ならな」

ゆみ「……須賀教諭は教師と生徒の恋愛についてどう思う?」

京太郎「……」


真顔でとんでもないことを質問する教え子。

普段のゆみからは想像もつかない質問に眼が点になる。

そりゃ、驚くさ。

あの恋愛なんぞに全く興味なさそうなゆみが恋愛について質問しているのだから。


京太郎「ええと、俺なんかの回答じゃタメにならないと思うけど」

ゆみ「それでも構わない。聞かせてくれ?」

ゆみ「?」

京太郎「お互いがお互い好きなら、いいんじゃないか?」

ゆみ「そうか……お互いが好きなら、か」


顔に手を当て真剣に考え込むゆみ。

どういう意図でこんな質問をしてきたのかは分からない。

けれどあのゆみが聞いてまで知ろうとするなんてよっぽどなんだろう。


ゆみ「まだまだ先は長そうだな」

京太郎「先?」

ゆみ「いえ、何も。ご協力、ありがとうございました」

京太郎「何もしてないけどな」

ゆみ「してもらいましたよ……十分すぎるほどな」


それだけ言うとゆみはくすっと笑みを浮かべる。

俺は何もしていないけれど、既に自分の中で解決してしまったようだ。


ゆみ「須賀教諭」

京太郎「ん?」

ゆみ「駆け上がろう、全国の頂点まで」

京太郎「……もちろんだ!」


スッと差し出された拳。

俺もそれに答え拳を合わせる。


加治木ゆみ。

俺はこれからもミステリアスな所が多い部員だが俺はこれからも彼女と付き合っていく。

鶴賀学園が全国の頂点に立つその日までは。




智美「ワハハー、ゆみちんヘタレだなー」

ゆみ「す、すまない……みんな」

智美「ワハハー、ゆみちんヘタレだなー」

睦月「麻雀では対応できるのにこういうのには対応できないんですね……」

佳織「次がありますよ!まだまだこれからです!」

桃子「よっし!まだまだこれからっすよ!」





カンッ


父「京太郎、お前にお客様だ」


日曜の昼。

恐らく日本の大半の人がゴロゴロしている至福の時間。

その時間を壊したのは父からの来客を知らせだった。


京太郎「ったく、日曜ぐらいゆっくりさせてくれよ。咲?優希?」

父「お座敷にいらっしゃる。くれぐれも粗相のないようにな」

京太郎「だから誰なんだよ?」

父「………」


親父は何も言わずに俺の部屋を出て行った。

でも座敷に通したってことはそれなりの客人ってことか。

ってことは最低限度の身なりぐらいは整えた方がよさそうだな。


京太郎「こんなモンか」


ある程度の身なりを整え座敷へと向かう。

誰がいるのか緊張しながら襖に手をかけて開く。


透華「お待ちしておりましたわ、京太郎さん」


そこに居た意外すぎる人物に俺は脚が硬直する。

SPと思われる黒服二人組を両サイドにおいているこの人物。


京太郎「龍門渕……透華さん?」

透華「他に誰だとおっしゃるのかしら。この顔をお忘れになって」


気品溢れる服装。

靡くようなウェーブのかかった髪の毛。

確かに間違いない、長野予選の時モニターの前で見たお嬢様だ。


京太郎「そ、その……なぜ貴女が俺の家に?」

透華「あら?何を仰っているのかしら」

京太郎「……へっ?」

透華「決まっているでしょう?わたくし達の来月の結婚の話ですわ」


け……っこん?

けっ…こん

血痕?


京太郎「すいません俺じゃ無く血液鑑定士の方でお願いします」

透華「何を仰っているのか分かりませんが……式の段取りなどの話をさせてもらっても?」

京太郎「………」

透華「京太郎さん?」

京太郎「結婚って……え?え?は?」

ほぼイメージ通り。自分的には卒業式のイメージだったわ
あと安価は二回とっちゃだめだよね?二回目は安価下になるよね?


あまりに普通に告げられた言葉に声が裏返る。

いや、急にも急すぎるだろ。

なんだよ「結婚」って。


透華「あら?ひょっとして初耳でしたのかしら」

京太郎「ちょっと待ってください!いきなり過ぎて何がなんやら……」

透華「困りましたわね。それでは話が先に進みませんわ」

京太郎「ていうかどうして俺が貴方と結婚するんです!?龍門渕さんは大富豪のお嬢様じゃないですか!」


それに引き換え俺の家は一般家庭。

超金持ちの龍門渕さんと結婚してもそちらにいいことなんて無いだろう。


透華「京太郎さん、あなたもしかして自分の家のことをご存じないのですか?」

京太郎「普通のどこにでもある家庭ってことぐらいしか」

透華「いいえ。あなたの家庭は普通の家庭なんかではございませんわ」

京太郎「………え」

透華「須賀家は昔から続く由緒正しき名家。恐らく"こちら側"で知らない者は居ませんわ」

京太郎「………」

透華「最も現在は没落していますけれど、ね」


いくらなんでもまさか、と思い辺りを見渡す。


透華「カメラなんてどこにもありませんわよ」


ぐっ!

あんまりにも現実味が無さ過ぎるからドッキリと思ったけれど、違うのかよ。


京太郎「仮に俺の家が本当に名家だったとして……龍門渕さんと結婚するとしましょう」

透華「ええ」

京太郎「それって……どどのつまり」

透華「政略結婚、とでも言うのでしょうか」


政略結婚。

ドラマや漫画の世界でしか聞くこと無かっただろう言葉。

それが今、俺の目の前に突き付けられている。

いやいや……どこのオーストリアだよ。

今の日本には貴族がなければ戦乱の世でもないんだぞ。


京太郎「アンタは……それでいいのか?」

透華「はい?」

京太郎「政略結婚だがなんだが知らないけど、アンタは好きでもない男と結婚できるのかよ!」

透華「……好きでもない?ふふ、あなたは何か勘違いしている様で」


一瞬だが彼女が下が唇を舐めたように見えた。


透華「予選会場からずっと目をつけていましたわ……あなたのこと」

京太郎「………へ」

透華「わたくし、ほしいと思ったものは何が何でも手に入れる主義ですの」


ああ、そうだった。

この人の性格は親しくなくても分かるじゃないか。

現在の龍門渕麻雀部が発足した理由は何だ?

この人がそれまで活動していた既存の龍門渕麻雀部を廃部に追いやった理由は?

全てはたった一人の少女のために何もかも壊し新しい世界を創ったからだった。

龍門渕透華という人間はそういう女性だったってこと俺はすっかり忘れてしまっていた。





一「おめでとう、透華!」

純「幸せになれよ!」

衣「京太郎、トーカを泣かせたら衣が許さないぞ!」


祝福の声。

そしてカンパネルラの音。


京太郎「………」

透華「皆さん、ありがとう!ありがとうございますわ!」


誰もが俺達を見てこれから幸せな家庭を気づく夫婦と見えるだろう。

間違いない、しかしそれに俺をは含まれない。

俺は龍門渕透華の夫として生き続ければならないのだ。

この先の人生、ずっと。

ならば……


京太郎「なぁ、透華」

透華「はい。なんでしょうアナタ」

京太郎「俺さ、お前のこと好きになれるように頑張るよ」


与えられたカードで俺は戦うしかない。

いつか自由を手に入れる為に。


カンッ

>>133
アリですね
お題が分かりやすいならなんでもアリです


池田「さ、あがれよ須賀」

京太郎「お邪魔します」

池田「飲み物は麦茶でいいか?ていうか麦茶しかないけどな!」


なぜか池田先輩と一緒に帰ることになった俺。

そして帰り途中、俺がおだてて気分を良くした池田先輩に「ウチ来いよー」と誘われた。

断った方がめんどくさそうなのでお邪魔し今に至る。


京太郎「おかまいなく」

池田「んじゃそこに座ってろだし、すぐに持ってく」


軽く会釈し居間に行くと、近くに置いてあった座布団に座る。

そわそわしつつ辺りを見渡すと木の丸テーブルやチクタク時計が眼に入ってきた。

下にひいてある畳の匂いもあるが、一昔前の落ち着くような雰囲気を思わせる。


京太郎「結構レトロな感じの家なんだな」

緋奈「………」

奈沙「………」

城奈「………」

京太郎「………」


えーと。

ひぃー、ふー、みー、


京太郎「池田先輩が三人!?」

緋奈「違うし!」


い、いや何言ってんだ俺は。

よく見れば池田先輩より全然小さいじゃないか……。

この子たちは池田先輩の妹さん達かな?


緋奈「男だ!」

奈沙「金髪だ」

城奈「……でっかい」

京太郎「こ、こんにちはー」


三つ子は俺を見て三者三様の台詞を吐く。

俺はなるべく警戒されないよう優しく声をかける。


緋奈「なんかそこはかとなくヘタレそうな顔してるねこの人!」

奈沙「おねーちゃん男見る目ないな。これじゃ置物の方がマシだし」

城奈「そうかなー?」


どこで覚えてきたんだそんな言葉……。

けど、まぁ、そこまで言われて引き下がるわけにはいかないな。


京太郎「お兄ちゃんこう見えても結構力あるんだぞ?」

緋奈「ほんとかいな!?」

京太郎「ホントホント、なんならぶら下がってみてもいいぞ」

奈沙「よーし、一番手はお姉さんの私からだし」

緋奈「あ、ずるいし!私も!」

京太郎「一人ずつ一人ずつ……って聞いてねぇし!」


そういうと二人同時に俺の手に飛び乗るシスターズ。

力に自信があると言っても流石に二人同時はキツい。


奈沙「きゃはは!」

緋奈「いくぞー!らいだーきっく!」

京太郎「ちょ、タンマ!タンマ!」


制止の声も空しく池田姉妹(仮)の声がデカい方のキックが顔面に直撃。

あまり痛くは無かったが二人抱えた状態では耐え切れず思わず倒れる。


緋奈「せいぎは勝つのだ!」

城奈「あ、あぶないよー!」

京太郎「いって……!こらこら、キックは危ないからダメだぞ!」

奈沙「子どもだなー緋奈は」

緋奈「奈沙が言うなし!」

奈沙「なにをー!お姉ちゃんだぞ私は!」


今度は俺の上でぴょんぴょん飛び跳ねながらプロレスをする二人。

流石は池田先輩の妹たちだ………なんて賑やかな。

そんなことを倒れながら思っていると次は池田先輩本人がお盆に麦茶を入れてやってきた。


池田「須賀ー、おまたせだし……ってこら!お前たちなにしてんだ!」

緋奈「金髪とプロレス!」

奈沙「プロレス」

池田「まったく、あれほどHHHの真似はするなって言ってるだろ!」

京太郎「池田先輩……!」


HHHはおいといて、あのいつも怒られてる先輩が俺の為に怒っている。

その光景になぜだか分からんが俺は感動してしまう。

池田先輩、俺一生アンタについていくよ!


池田「華菜ちゃんも混ぜろよ!」

京太郎「池田ァ!!」

池田「うわ、須賀が怒ったし!総員退避!」




カンッ

ありがとうございましただし!


明日下3 下6で
連投じゃなければ二回とってもアリですよー

なんか重そうな設定背負ってそうなネリー

園城寺怜の可変乳疑惑について全力で調査した

京太郎の義母の霞さん(年齢捏造。再婚)

今日は早めなのに人大杉ィ!
いつ終わるかわからんのに……


憧「おはよ、京太郎」

京太郎「………」


午前六時。

憧との約束までは後三十分はあったはずだ。

なのに憧は俺が来るより早く、既に閑散とした駅のホームの前にいた。


京太郎「お前……何時から来てたんだ?」

憧「んー、ここに来たのが一時間ぐらい前だから……五時ぐらいかな」

京太郎「五時!?ゴメンな、寒かっただろ?」

憧「平気。それに私が勝手に早く来ただけだから謝らないでよ」

京太郎「いや、それでも……」

憧「はいはい!この話はやめ!それより、早くホームに入ろうよ」


確かに約束の時間はまだまだ後だ。

俺は憧を待たせないように余裕を持って家を出たが、だけど結局は結果論。

こんなクソ寒い中、朝から女の子を一時間を待たことを俺は死ぬほど後悔した。




人っ子一人居ないホームに入り、ベンチに座り電車を待つ。

横で座る憧と余程眠いのか眼はうつらうつらとしており頭はガクンとふらついている。


京太郎「今日何時に起きたんだ?」

憧「えっと、四時にはもう起きてたかな」

京太郎「はは。遠足を待ちきれない小学生みたいだな」

憧「小学生の頃徹夜で遠足に来て、終始爆睡してたあんたに言われるとは思わなかった」

京太郎「よ、よく覚えてるなそんなこと?俺でも忘れてたぞ?」

憧「……あっ、電車来た」


話に華を咲かせていたら、意外に時間がたったのかホーム内に電車がやってくる。

それが完全に停車したら俺たちはベンチから立ち上がり電車へと乗り込む。

俺達以外誰も乗ることの無いから順番待ちの必要はない。


電車に乗った俺達は向かい合わせの席に座った。

それから数十分は朝日が出ゆる外の景色を見ながら来年の麻雀部の活動、大会の事などを話し合う。

部活関連のことを一通り話終えると次は旅行の話へと移行。


憧「旅行ってさ、旅行先につくまでのプロセスも重要な醍醐味なんだって」

京太郎「ごめん憧。何を言ってるのか全然分からない」

憧「簡単に言うと目的地に着くまでの過程も大事にしなさいってことよ」


過程ね。

小さい頃と家族で行った旅行は目的地に着くまで寝てた覚えしかない。

起きたらもう既についている、そんな感じだったから旅行に行く途中でこんなに話すのは初めてだ。


京太郎「ぬおおおー!ついたぁぁぁー!!」


目的地に着き電車から降りると背伸びをする。

長時間座っていた為か筋肉と骨がつられてボキベキと音を立てた。


憧「えーと、この駅から旅館まではあっちのバスターミナルから行けるみたいね」

京太郎「このまま観光しないのか?」

憧「荷物抱えたままじゃできないでしょ?」


辺りを携帯で調べていた憧に先導されバスセンターのある方へ向かう。


京太郎「ちゃんと人間が泊まれる所だろうな?」

憧「当たり前でしょ。しずがちょっと特殊だっただけよ」


実はこの旅行、俺は何のプランも聞かされいなかったりする。

さしあたって憧から準備するように言われたのは「二泊三日の着替え、あと多めのお金」。

他はしっかり者の憧が切符の手配やら旅館の予約やら全てやってくれたからな。



そしてバスに揺られること数分、目的の旅館へと到着。

チェックインを済ませて旅館内に入ると旅館独特の香りがし卓球台や豪華な庭園が目に入る。

……流石に十円ゲームボックスは無いか、時代が時代だし。


憧「あ、あのさ……部屋は同室だけどいいよね?」

京太郎「憧に任せるよ」

憧「そっか、よかった。じゃあ行こっか」

京太郎「おう。…………ちょっと待て」

憧「なに?」


スタスタ行こうとする憧の肩を掴み止める。

もう一度スローで言っていただこう。


京太郎「さっき何て言った?」

憧「え?同室でもいいかって言ったんだけど」

京太郎「待て!マズいだろそれは!」

憧「何が?」

京太郎「俺達は高校生だぞ?もし万が一間違いでも起きたら……」

憧「へぇ、間違い起こす気なんだ」

京太郎「…………」


憧は黒い笑みと凍える様なクールな眼で俺を見る。

しまった、余計なこと言って墓穴を掘ってしまった。


憧「ま、別にいいけどね。どうしても嫌なら変えてもらえると思うから」

京太郎「そこまで嫌ってわけじゃないけどさ……憧、お前男子苦手なんだろ?」

憧「あんた以外はね。そもそも京太郎と二人で旅行に来てる時点で分かるじゃん」


信頼されてるのは嬉しいがあんまり信用されるのもな。

俺とて男だ、ひょっとしたらひょっとするかもしれない。


憧「それにさ……京太郎なら大丈夫って信じてるから」

京太郎「…………」

憧「それじゃ、早く荷物置きに行こ。早く観光したいんでしょ?」

京太郎「あ、ああ」


「それはどっちの意味で大丈夫なんだ」

その言葉は喉物から出てくることなく飲み込まれる。

そんな俺を知らずにたったっと廊下の奥へと進む憧を見て思う。

これから三日間、俺は果たして憧の望む俺でいられるだろうかと。


憧「京太郎?早くしないとおいてくわよ!」

京太郎「おう、今行くよ」






カンッ


「ヨハネの目次録には災害が記されており、えーこれは非常に神を冒涜……」

京太郎「…………」


何言ってるか分からない教師の声を左から右へ受け流し窓の外を眺める。

今日も空は快晴、雲一つない。

ただ一つ曇っているのは俺の心だ。


京太郎「はぁ……もったいなかったかもなー」


昨日、俺はタコスが好きでたまらないという子から告白された。

外見は可愛い上に明るく話しやすい為、彼女としてはとても優良物件だと思う。

しかし俺は告白を断った。それはなぜか


唯一にして最大の欠点……おもちがなかったからだ。

かと言っておもちがあって優良物件なんて都合ホイホイいるワケないんだけどな。


京太郎「どっかにナイスなバディでおもちをお持ちの子いねぇかな………ん?」


そんな想像にふけ窓の外を眺めていると校舎裏で一人の少女が目に入る。

その少女は自分の上身長以上の紙束を腕一杯に抱えており前が見えていないのか足元がフラついている。

誰がどう見たって明らかにキャパオーバーだ。

あのままだと多分どっかで盛大にばら撒くんじゃないだろうか。


京太郎「先生!ちょっと腹いたいんでトイレ行ってきます」


正直見ていられない。

俺は教師の返答を聞くまでも無く教室を出る。

ダッシュで階段を駆け下り校舎裏へ行くと、少女が丁度こけかかっている場面に遭遇した。


京太郎「っと!!」

由暉子「……!」


中学時代にハンドボールで鍛えた自慢の足腰でなんとか少女と紙束を救うことに成功。

その時たまたま腕が少女の胸部に当たったのだが。

こ、この感触はまさか……。


京太郎「大丈夫か?」

由暉子「あっ……はい。危ないところをありがとうございました」

京太郎「おおう、これは、なるほどなるほど、なるほどー」

由暉子「え?」

京太郎「ああ、いや。何でもないんだ、それより怪我とか無い?

由暉子「おかげさまで何ともないみたいです」


俺の歴史上、類を見ないおもちをおもちの美少女がここにいた。

神だのキリストだのばっか習うこの有珠山が嫌いだったけど初めて俺はこの学校を好きになれた気がしたよ

神様ありがとう。メシア万歳。


由暉子「あの、どうかしましたか?」

京太郎「その紙束一人で持つには厳しいだろ?手伝うよ」

由暉子「いえ、助けてもらったうえにそこまでしていただくわけにはいきません」

京太郎「また転びそうになってる方を見る方が心臓に悪いんだよ」

由暉子「う………」

京太郎「これ、どこに持っていけばいい?」

由暉子「……じゃあ、ゴミ捨て場までお願いしてもいいでしょうか」


きっかけは何でもいい。

とにかくこの子とお近づきにならなくては。

いきなりがっつきすぎてもアレだし、まずはささいな所からだ。


ゴミ捨て場へ向かう道中に話して幾つかこの子について分かった。

名前は「真屋由暉子」、麻雀部所属で俺と同じ一年生。

有珠山に入ったキッカケはその麻雀部の先輩だとか。


京太郎「……そういやさ、授業中にも関わらず校舎裏であんなに紙束を抱えてたんだ?」

由暉子「クラスの皆さんに頼まれたからです」

京太郎「頼まれて?それまさか引き受けたのか、あの量を?」

由暉子「はい」

京太郎「いや押し付けすぎだろ……」

由暉子「押し付け?」

京太郎「どう考えても押し付けだろ」

由暉子「そうなんですか?てっきり私はこれが本日の自分のすべき仕事だと考えていましたけど」

京太郎「……………」


真屋さんは「それが普通」とでもいうように無表情で言う。

どうやら彼女は外見からは想像もつかない領域で生きてるようで……


由暉子「つきましたね」

京太郎「ああ……」


とかなんとか話している内にゴミ捨て場に到着してしまった。


由暉子「本当にありがとうございました。よろしければ授業後に何か御礼がしたいのですが」

京太郎「いや、いいよ。俺が自分でやったことだからさ」

由暉子「でも……」


普段の俺ならここで「よろこんで御礼ください!」と言うはずなんだけど。

今回は気持ちをストレートに言うのは何か違った。

そう思ったら俺が普段言わないようなことが口からペラペラと出てくる。


京太郎「んー、じゃあさ、一つ約束してくれ」

由暉子「約束……ですか?」

京太郎「ああ。もし自分でどうにもなんないことがあったら、絶対誰かに頼ってくれ」

由暉子「………」

京太郎「それは約束だ?いいか?」

由暉子「………はい、約束します」

京太郎「俺は一年B組にいつでもいるからさ。どうせいつも暇してるしこき使ってくれていいぞ」

由暉子「一年B組、隣のクラスですね」

京太郎「ならすぐに会えるな。じゃ、あんま授業開けてもヤバいし、俺はこれで」


言いたいこと言いまくって踵を返す。

……我ながら後から思いだしたら悶絶しそうな台詞ばかりだな。

かっこつけてねないで俺らしくここは素直に好意に甘えるべきだったんだ。

あんだけ気取ったこと言った後となってはもう遅いけどさ。


由暉子「あ、あの……お名前を……」


絶対気持ち悪いとか思われてそうだし。

なんていうか、結局距離を縮める所か逆に開いてしまった感じがする

そんな後悔の念を残しつつ俺は教室に戻った。



由暉子「…………お名前……聞きそびれた」





カンッ

次にユキちゃん見れるのは9月という事実


遅くなりましたがありがとうございました
下3 5で明日したいと思います


智葉「そんなにコソコソしてどこへ行くんだ京太郎?」

京太郎「げっ!………ね、姉さん」


休日のある日。

町で買いたいものがあるので外に遊びに行こうとしたところを姉さんに見つかった。

この人に見つかると面倒くさいのでばれない様に隠密行動していたつもりだったのに。


京太郎「町に、遊びに行ってきます……」

智葉「遊びに行く?おい京太郎、いつも言っているだろう」

京太郎「………」

智葉「遊びに行くときは私に"何時に帰るか"どこに行くか"誰と遊ぶか"お金を幾ら持ったか"を言えと」


今時小学生でも親にそんなこと言わねーよ。

姉さんは昔っから心配性で俺が外に出たら何をしてるか分からないと気が済まないらしい。

この家では姉さんが絶対権力の持ち主だから死んでも言えないけど。


京太郎「……そうだったな、ごめん姉さん」

智葉「分かればいいんだ。じゃあ、聞こうか」

京太郎「ちょっと町に遊びに行ってくる。多分五時には帰ると思うし、金は一万ぐらいあるから」

智葉「そうか。で、誰と行くんだ?」

京太郎「一人だけど………あっ」


言った後にやらかしてしまったと気付く。

一人で出かけるなどとを言おうものならこの人は間違いなくついてくるだろう。

智葉がついてこようものならもう買い物どころでは無くなってしまうというのに。


智葉「ほう?一人でか?ならば」

京太郎「あーそうだったそうだった!町でネリーと合流する予定だったんだ!」


姉さんが言う前に俺は大声でそれを遮る。こうなれば嘘も方便だ。

それとすまんネリー、今度ファミレスで一番高いパフェ奢るから名前借りるぞ。


智葉「ネリーと?」

京太郎「そうそう!実はあいつと町でさぁ…」

智葉「ネリーはサカルトヴェロに帰っているはずなんだが?」

京太郎「………えっ」

智葉「何だ?知らなかったのか?」

京太郎「……い、いやぁ、その」。


嫌な汗が全身から噴き出て背中を濡らす。

なんだよそれ、ネリーがグルジアに帰ってるだなんて知らなかったぞ。

くっそ、この前奢らされた三百円返せアイツ。


智葉「と、言うのは嘘だ」

京太郎「……はい?」

智葉「ネリーが故郷に帰ってるというのは嘘だ」

京太郎「え………え?」

智葉「しかしその反応からして、京太郎……お前も嘘をついていたようだが?」


背中から噴き出ていた嫌な汗が今度は急速に冷えていく。

その勢いで先ほどの心の乱れが引いていき俺の頭も冷静になる。

ああ、本当に観念した時は涅槃寂静の境地に達するってマジだったんだな。


智葉「で、京太郎?本当は一人で行くんだろう?」

京太郎「はい」

智葉「そうか。じゃ、お前一人では心配だから私もついていくとしようか」

京太郎「結局こうなるのか……」

智葉「何だ?嬉しいのか?」

京太郎「ああ、とーっても嬉しいよ姉さん」

智葉「フッ……町に出たらご飯ぐらいは奢ってやるさ」


軽く笑い姉さんは眼鏡を外して髪をほどく。

嫌そうな顔をしたんだけど、どこをどう見たら嬉しそうに見えたんだ?

どっちにしろ俺が計画していた喫茶店で優雅にコーヒーを飲みつつ町を回る計画は頓挫したんだけど…。


智葉「京太郎はただでさえ目立つんだ。町で不良に絡まれることも少なくないだろう?」

京太郎「そりゃあ、多少はあるけどさ。こんな髪だし」

智葉「だろうと思ったよ。じゃあそんなことが無いように、私がしっかり守ってやらないとな」


そう言い姉さんは神棚に置いてある凶器に手を伸ばす。


京太郎「待て待て、何を持っていこうとしてるんだアンタ!?」

智葉「お前は気にしなくていい」


俺の為に気合い入れてくれるのはいいんだけどさ。

ポン刀を懐に仕込むってどうなんだよ。捕まるだろ。


京太郎「頼むからお上に御用になるような事は避けてくれよ」

智葉「弟に心配されるとはな。私もまだまだか」


そういう意味じゃないんだけどなぁ……まぁいいや、姉さんについていけば間違いは無いだろう。


多分。


智葉「時間だ。じゃあ、行こうか」

京太郎「……へーい姉御」



カンッ


良子「ベリグーです、京太郎。こんなに美味しいカレーは初めてです」

京太郎「はは。気に行ってもらえたなら良かったよ」

良子「でも本当に来てくれるとは思いませんでした。流石の私もアメイジンでしたね」


戒能家の台所に立ち皿を洗いながら良子さんと談笑する。

本日、俺は急にお隣の良子さんから「デリバリー料理希望」とのメールが来て出張料理を作ることになった。

冗談のつもりだったらしいが俺は特にやることも無かったので出張を許可、久々に良子さんの家を訪れた。


京太郎「棚見せてもらったけど、ここ最近ロクなもん食べてないだろ?」

良子「そうですね、ここ一、二週間はジャンクフードばかりでした」

京太郎「そんなんじゃダメだ。しっかり栄養のあるもの食べないと」

良子「自分でも分かってるつもりなんですが……作る時間がノットでして」

京太郎「あー、言われてみればそりゃそうか」


なんたってトッププロだし自炊する時間なんてほとんど無いだろう。

俺が小学生の頃はいつも良子さんに飯を作ってもらってたんだけど、今やそれが逆の立場になったのか。


良子「でも、京太郎がいればノープロブレム。毎日来てほしいレヴェルです」

京太郎「家事だけでいいならな。俺はこんなことぐらいしかできないし」


しかし年は俺と四つしか変わらないのに日本中を飛び回ってるって、良く考えるとなんか凄いな。

ちょっと前までは英語交じりの日本語を話す変な女子校生だったというのに。

年下の俺が言うのもなんだけど成長したモンだ、ホント。


良子「ごちそうさまです……非の打ち所がないほどグーでした」

京太郎「ありがとな。皿はそこに置いといてくれ」

良子「ノーウェイノーウェイ……自分で食べたお皿ぐらいは、自分で洗わないと」

京太郎「今日も仕事で疲れてんだろ?いいぞ、後の片づけやっとくから」


彼女の眼は疲労からか瞬きの回数が増えており疲れは目に見えるほどだ。

今日も東京往復してきたっていうし、本当にご苦労様と言いたくなる。


良子「そういうわけには……それに、カレーを作ってくれた………マネーも払わなく……ては」

京太郎「金なんてとる関係じゃないだろ?いいから休んでろって」

良子「…………」

京太郎「良子さん?……って、うおぅ!?」


振り返ると起用にも良子さんは立ったまま眼を半分閉じかけ皿を持っていた。

俺は慌てて皿を奪い、居間のソファーへと連れていき横にさせる。

すると腹一杯になった幸福感と仕事の疲れがどっときたのか、十秒も経たずにスヤスヤと寝息を立て始めた。

とりあえず暑苦しいだろうと思い良子さんのスーツの上着とネクタイだけを外す。


京太郎「おおう……成長したのはおもちもだったか」


スーツに包まれていた時は見えなかった。

しかしそのスーツを取ると思わず「おもち~」と言いたくなるおもちの形が露わになった。

昔いつも遊んでいた時は所詮子どもと思い全く気にしなかったが……これは。


京太郎「しかし良子さんだぞ?小さい頃からよく知ってる人だし、あんまりこういうのはよくない」


正気に戻り目を背ける。

が、しかし吸引機のように俺の眼はおもちへと吸い寄せられる。

結局それから三時間の間、良子さんが起きるまで俺は煩悩に悩まされ続けた。



良子「寝てしまうとは……シット、大変失礼を」

京太郎「疲れてたんだししょうがないだろー、ははは」

良子「私の心配はノーセンキュー。京太郎のがよほど疲れた顔してます」

京太郎「それはまぁ、色々あったから……」

良子「……?ともかく、今日はサンキューベリーマチです」

京太郎「礼なんかいいって。大したことしてないし」


飯作って、おもち見てただけだしな。

後者で十分その報酬は得たと言ってもいいだろう。

本日はそれで満足だ。帰って明日のモチベーションにつなげよう。


京太郎「それじゃ帰るよ。また近いうちに会えるといいな」

良子「………」

京太郎「良子さん?」

良子「……トゥモロー」

京太郎「?」

良子「明日……また来てくれますか?」


オー、ビューティフルスマイル!

おいおい参ったな。

そんなベリグーな顔で頼まれたら頷くしかないだろ。


京太郎「いいですよ。俺でよければ喜んで」

良子「……ありがとう、京太郎。私とてもベリーハピーです」



良子「早い話、京太郎が私のハズバンになってくれれば早いんですけどね」




カンッ

>>146
許してください!ネリーがなんでもしますから!


ありがとうございました
明日に下3 5のお題とキャラでやります

>>145でしたね
間違えてしまった守銭奴さんも近いうちにやります

毎日一日二投目指してましたが、今週は少しだけペースが送れそうです、すいません


豊音「ねー京太郎くん、このあと時間あるかなー?」

京太郎「へっ?」

豊音「このまま家に帰るのもなんだしさ、どこかに寄ってから帰らないかなー……なんて」


夏休み、登校日の学校帰り。

普段寄り道などしないはずの真面目な豊音が珍しく俺を遊びに誘った。

しかも何故か塞やシロたちと別れて俺と二人きりになった時に。


豊音「……だめかなー?」

京太郎「いいぞ。どうせ帰ったって暇だしな」

豊音「本当?私も帰ってすることなかったから、ちょーうれしいよー」

京太郎「でも遊び行くってどこに?」


辺り一面を見渡す。

見えるのは電車が通らなくなった線路。ポスト。トレーラーを扱い田んぼを耕しているおっちゃん。

高校生が遊べそうなとこなどどこにも無い。因みにここから町まで一時間はかかる。


豊音「山……とかー?」

京太郎「ロクに準備しないで行ったら熱中症で死ぬぞ」

豊音「……川は?」

京太郎「豊音が帰りに素足で熱いコンクリの上を歩けるならいいけど」

豊音「それはいやだよー。えーと……えーと……じゃあ、駄菓子屋とかどうかなー?」

京太郎「駄菓子屋!?」

豊音「わわっ、やっぱりだめだよねー?」

京太郎「いいぞ」

豊音「いいんだ……半分冗談のつもりだったんだけど」


いいじゃないか駄菓子屋。

この季節ならかき氷も出てるはずだし、涼むには丁度いい。


豊音「突然でごめんねー。お金とか大丈夫かな?もし無くても私が……」

京太郎「安心しろって、ここで金を使う機会なんて学校でジュース買うぐらいしかないからな」


漫画とか買いたくても町まで汗だくになってまで買いに行きたいとは思わないし。

だけどそのおかげでお金は使わずに済むからいいんだけどな。懐は随分と潤っている。


京太郎「さっすが夏休みだ。どの局もサマースポットの特集しかやってねー」

豊音「だねー」


豊音と駄菓子屋でかき氷を食べながら中に設置されてあるテレビを見る。

しかし面白い番組は何一つ無く海にコンサートにバーベキューといった特集ばかり。

田舎暮らしでそういうのと疎遠にある身にとってはちっとも面白さが分からない。


京太郎「こんな人が多いところに行って何が楽しいのやら。あんなに密集してたら熱いだろ」

豊音「うん。私も人がたくさんいる所は好きじゃないよー」

京太郎「その点ここは涼しくていいよな、なんもないけど」

豊音「私もここの方がちょーすきだよー。みんな優しいし」


確かにここなら豊音を見ても驚く奴はいない。

それどころか殆どのじっちゃんばっちゃんは全員小さい時からの顔なじみで家族みたいな存在だ。

環境で言えば空気は綺麗だし、水も澄んでいる。その証拠に俺は毎朝美味しい水道水を飲んでいる。


豊音「でも、仮にだよー?」

京太郎「ん?」

豊音「もし都会に暮らしてたらさ、京太郎くんと海とかに行ったりできてたのかなー?」

京太郎「泳ぐならそこの川でも泳げるだろ。そこらへんの都会の海よりよっぽど綺麗な水だ」

豊音「じゃあ、バーベキューは?」

京太郎「それは俺の庭でも豊音の庭でもできる。都会のバーベキューは人ばっかりで熱いぞ?」

豊音「コンサートは?」

京太郎「それは俺が歌ってやる」

豊音「あはは、ちょー傑作だよーそれ!」


「よくこんな所で暮らせるよな」と都会の奴らがここに来たらみんな口を揃えて言う。

でも俺は「住めば都」だなんて言い返したりはしないし、理解してもらおうとも思わない。

豊音がここを好きなように、俺もこの田舎が気に入っている。


京太郎「けど、高校卒業までに一度ぐらいは都会に出てもいいかもな。一生ここで暮らすとは限らないし」

豊音「そうだねー。でも私はやっぱり、一生ここがいいなー」

京太郎「まぁ、豊音にとってみれば今更ここから離れるってのも想像つかないか」

豊音「うん。だからさ…ここで京太郎くんも一生一緒に居てくれたら、もっといいんだけどー」

京太郎「そうか。俺も豊音と………」



京太郎「え?」

豊音「よかったら、返事を聞かせてもらえるかなー?」





カンッ

野獣と化した愛宕先輩姉妹を明日、その後お題決めしたいと思います
一投でしたがありがとうございました

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