澪「勉強の成果」 (16)
――高3のある日――
澪「律に勉強させたいので一計を案じたい。かくかくしかじか」
和「唯にも効果あるかもしれないし乗ったわ」
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~
律「お、お二人さん、仲のよろしいことで」
唯「何話してるのー?」
澪「さっそく 当事者 が あらわれた」
律「へ?」
和「いえ、今澪と話をしていてね。貴女達が、受験生だというのにあまり勉強してないように見えるから」
澪「そんなことでは狭間研三郎の小説『雀の流星』の主人公のように留年するぞ、と言いたかったんだ」
律「……? ??」
和「あら、知らない? 狭間研三郎」
律「し、知らん」
澪「それは勿体無いな。『雀の流星』は私の人生のバイブルなのに」
和「私は『夜雀の剣戟』のほうが好きだけれどね」
澪「でもラノベにまで手を出して『子雀の酒場は舌斬り禁止と聞いて困る俺と彼女』とかいうタイトルつけたのはさすがにどうかと思う」
唯「その人、スズメのファンか何かなの…?」
和「ファンというよりは、よくあるデクリーミング効果を読者に与えるための手法ね」
唯「で、デ? 栗?」
澪「デクリーミングと一括りにするのはよくないよ。彼の作風はどちらかといえばトール・ロゴネフが提唱したセカンドスペクトラム手法を真似ているような気がする」
和「そうかしら。私が『夜雀の剣戟』を好きなのも、デクリーミング狙いなのがあまり見えない異端な作風だからなのだけど」
澪「まあ、あの作品は読者の評価も真っ二つだからなんとも言えないけどさ」
和「そうね」
澪「でも『雀の流星』の一節、「ぼくは羽を刃にする白羽鳥だ」なんていうのはどう見てもセカンドスペクタロムだろ!」
律「スペクタロム?」
澪「ごめん噛んだ」
和「言葉遊びとして見れば好きなんだけどね」
唯「澪ちゃんの歌詞にもそういうの取り入れていくの?」
澪「……いかないけど」
唯「なぁんだ」
和「小説と歌詞ではまた違うからね。私は作詞家としては八綴美七子を尊敬しているわ」
律「また知らない名前が……」
澪「勉強不足だぞ」
律「ぐはっ」グサッ
澪「八綴美七子かあ。『冬秋謳歌』とか趣があっていい歌詞だよな」
和「ええ、私もあれは大好きよ」
唯「意見が合ったね!」
和「唯も知ってるの?」
唯「……知らないけど……」
和「勉強不足ね」
唯「ぐさっ」グハッ
~
澪「~だから、数学的虚幻数証明の面から見てもアラストル定理は非常に優秀で~」
和「~科学的ディストーションに基づいたイシュタルテーの法則もなかなか~」
律「くっ、まるで何言ってるかわからないけど二人ともかっこいいじゃないか…!」
唯「これが頭のいい子の会話なんだね、りっちゃん…!」
律「くそっ、唯!私達も勉強するぞ!」
唯「やるよ、りっちゃん!」
律「うおおおおおおおお」
唯「うおおおおおおおお」
和「…うまくいったようね」
澪「ああ」
紬「なるほど、そういうことだったのね」
和「あらムギ」
澪「ムギ、見てたの?」
紬「ええ。意図がわからなかったものだから、とりあえずは」
和「いい判断ね、助かったわ」
澪「ありがとう」
紬「ううん。これ澪ちゃんの作戦?」
和「そうよ」
澪「フフン」
紬「すごい! 実を言うとね、てっきり『おれの考えた最強にかっこいい名称』を言い合う厨二病ごっこかと思って途中で何度も混ざりたくなってたから、邪魔しなくてよかった!」
澪「」
和「ムギがおれって言うの、なんかテンションあがるわね」
さわ子「わかるわ」
終
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