絵里「かしこさが足りない」 (73)
絵里「なんでかしらね……みんながみんな、私のこと賢くなくなったって言うのよ」
真姫「ふーん」
絵里「生徒会長としてμ'sを認めない! って言ってた頃はもっと賢そうだったって」
真姫「誰が?」
絵里「希とか穂乃果とか……あとにこと凛も」
真姫「へぇ」
絵里「真姫はどう思う?」
真姫「そんな風に部室の窓からしゃぼん玉を吹いてる様子を見ると、賢そうには見えないわね」
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絵里「だって夏の風物詩じゃない」
真姫「それならもっと他にあるでしょ?」
絵里「たとえば?」
真姫「……風鈴とか」
絵里「風鈴ね……どこにつけようかしら」
真姫「首からぶらさげてたらいいんじゃないの」
絵里「えー、それだと鳴らないわよ?」
真姫「……そこなのね」
絵里「あ、見て真姫。2つくっついたしゃぼん玉ができたわ」
真姫「どこ?」
絵里「ほら、あそこに飛んでる」
真姫「あぁ、あれね」
絵里「双子みたい」
真姫「そうね」
絵里「真姫もやってみる? もう1つあるし」
真姫「もらおうかしら」
絵里「ふー」
真姫「ふー」
真姫「……じゃなかった」
絵里「え?」
真姫「絵里の賢さについて話してたでしょ?」
絵里「あれ? 夏の風物詩じゃなかったっけ?」
真姫「その前よ」
絵里「……ああ! そうだったそうだった」
真姫「記憶力低下も著しいのかしら」
絵里「ふふん、その辺はぬかりなく、小テストは全部満点です」
真姫「ふーん」
絵里「ほめて」
真姫「えらいえらい」
絵里「そうそう。勉強面以外で、何か抜けてるところが増えたって言われるのよ」
真姫「たとえば?」
絵里「お弁当箱のふたを忘れたり」
真姫「いきなり大参事じゃない……大丈夫だったの?」
絵里「うん、その日はパン買ってたからお弁当お中身入ってなかったの」
真姫「空箱を持ってきてたの?」
絵里「そういうこと。登校中に忘れたと勘違いして取りに帰ったから」
真姫「重症じゃない」
絵里「えー? 真姫もたまにあるでしょ?」
真姫「ないわよ」
真姫「それで絵里は賢さを取り戻して何かしたいわけ?」
絵里「……別に何も?」
真姫「ならそれでいいんじゃない?」
絵里「そっか」
真姫「別に賢くなくたっていいのよ」
絵里「……そうよね、賢さがなくても何か他のものがあればいいのよね」
真姫「何があるかしら」
絵里「……」
絵里「…………?」
絵里「……なにもない」
真姫「えっ」
絵里「わ、私から賢さをとったら何が残るの!?」
真姫「とりあえず慌ててるのはわかったからしゃぼん玉をこっちに飛ばすのはやめなさい」
絵里「はい」
真姫「で、どの口がそんなことを言うのかしら」
絵里「え?」
真姫「いや、賢さを取ったら何も残らないって」
絵里「そうそう、大事件じゃない」
真姫「何が」
絵里「私には何も残らないって……」
真姫「別にそんなに悲観しなくても……消滅するわけじゃないんだから」
絵里「でもー」
真姫「ほら、何だっけ? おばあさまに言われてたんでしょ?」
絵里「……ああ、あれね」
真姫「なんとかかんとかエリーチカって」
絵里「なんかそれだと呪文みたい」
真姫「それはどうでもいいの。で、何だっけ?」
絵里「聞きたい?」
真姫「早く」
絵里「はい。かしこいかわいいエリーチカです」
真姫「ああ、それそれ」
真姫「ほら、仮に『かしこい』がなくなっても『かわいい』は残るじゃない」
絵里「……ほんとだ」
真姫「でしょ?」
絵里「じゃあかしこいエリーチカはどこへ行ったの……?」
真姫「さあね。きっとしゃぼん玉と一緒に弾けて消えたのよ」
絵里「……じゃあこれを飲めば」
真姫「やめなさい」
絵里「なら1つ目の話はおしまいね」
真姫「あら、まだ続きがあるっていうの?」
絵里「そうです。部室の冷房設置についての案件です」
真姫「やっと設置されるのね」
絵里「うーんと大きいやつが」
真姫「……そこまで大きいのはいらないんじゃ」
絵里「うん。そう言ったら予算案に合わないって却下された」
真姫「あー……かしこくない」
絵里「うっ」
絵里「でもうちの部室には扇風機さんが3台も入ったわよ」
真姫「何で先に言わないのよ。あるならあるって言いなさいよね」
絵里「だってしゃぼん玉があらぬ方向へ飛んでいくから……」
真姫「エリチカ、今から言うことを聞きなさい。さもなくば部室から締め出すわ」
絵里「はい!」
真姫「大人しくしてて」
絵里「わかりました!」
真姫「で、扇風機はどこに置いたの」
絵里「……あれ?」
絵里「あったー!」
真姫「あったー、じゃないわよ。何で生徒会室に置いてるの」
絵里「重かったから1つずつ運ぼうと思って……つい」
真姫「それに1つは廊下に置きっぱなしだし」
絵里「運びかけてて忘れたのね。部室に入っていく真姫の姿が見えたから話しかけようとして」
真姫「……それで忘れてたと」
絵里「返す言葉もございません」
真姫「で? そういえばそのしゃぼん玉はどうしたの」
絵里「2日前くらいに商店街の福引で当たったのよ」
真姫「賢さは?」
絵里「きっとみんなの心の中に……」
真姫「うるさい」
真姫「はー、涼しくなったわね」
絵里「あぁぁ、しゃぼん玉がすぐに割れちゃう」
真姫「他のことすればいいじゃない」
絵里「あ、これもあるんだった」
真姫「何それ」
絵里「花火」
真姫「エリチカ。学校へ何をしに来たの?」
絵里「部活です!」
真姫「……確かに夏休みだけど、もう少し何かなかったの?」
絵里「ええっと……部員と円滑なコミュニケーションをはかるため」
真姫「花火としゃぼん玉で?」
絵里「うちわと浮き輪とシュノーケルも完備よ!」
真姫「なぜ2人分……」
絵里「福引で当たったの」
絵里「そうだ、これを付ければ南国気分になれるんじゃない?」
真姫「バカ」
絵里「ひ、ひどい! そんな直接的な言い方って……」
真姫「絵里1人ですればいいでしょ」
絵里「そんなぁ、私1人でそんなことしてたらバカみたいじゃない!」
真姫「やっぱりバカ」
絵里「うぇぇ」
真姫「他に風鈴とか入ってないの? 気分だけでも涼しく……」
絵里「あー、そういえばおもちゃの風鈴なら入ってたわ」
真姫「それを風の当たるところへつけて」
絵里「合点!」
チリリリッリリリリリリリリイリリリッリリ
真姫「うるさい!」
絵里「え」
真姫「なんで扇風機に直接つけるの」
絵里「風の当たるところに……」
真姫「もう窓でいいから。窓で」
海未「おはようございます」
絵里「おはよう」シュコー
真姫「……おはよう」
海未「2人とも……何をしてるんですか?」
絵里「気分だけでも海を満喫しようと思ってシュノーケルを」シュコー
海未「海未は私ですが?」
真姫「……」シュコー
絵里「海未には浮き輪をあげる」シュコー
海未「あ、ありがとうございます」
真姫「よいしょ……」
絵里「あー外しちゃうの?」シュコー
真姫「またあとでね。穂乃果たちは?」
海未「お昼を食べてから来るそうです……というか私が作ったんですけどね」
絵里「あれ? そうなの?」シュコー
海未「ええ。昨日は2人がうちに泊まったので」
真姫「大変だったんじゃない?」
海未「いえ、ちょっと暑かったくらいです」
絵里「一緒に寝たんだ」シュコー
海未「そういうことです」
海未「それで朝起こしてね、と言われたんですが。何せ気持ちよさそうに寝ていたので」
真姫「家の鍵は?」
海未「2人はいつだったか、毎日のように遊びに来るので母がカギを渡していました」
絵里「家族ね」シュコー
真姫「そうね」
海未「そうですね」
海未「それにしても絵里、そのシュノーケル似合いますね」
絵里「ほんと!?」シュコー
真姫「海未、あまりほめないであげて」
海未「え? なぜですか?」
真姫「明日から毎日つけて来るとか言い出すから」
絵里「……」シュコー
海未「は、反論がない……」
絵里「いいもん。もう外しちゃいます」
真姫「ほら、髪の毛崩れるわよ」
絵里「はずしてください」
真姫「はいはい。じっとしてなさい」
海未「フフ……」
絵里「どうしたの海未。真姫の背中はそんなに面白かった?」
真姫「なんでよ」
海未「いえ、違います。2人が姉妹のようで」
このエリチカ賢いからシュノーケルでシャボン玉作りそう
絵里「もちろん私が妹よね」
海未「ええ」
真姫「あら。わかってるじゃない」
絵里「もちろんよ! 妹と言えば頼れるはずだもの」
真姫「海未、縛り上げるから手伝って」
海未「えぇっ!?」
絵里「な、何が始まるの……?」
真姫「とっても楽しいことよ。なるべく痛くないようにするわ」
絵里「痛くて楽しいことって何!?」
海未「まあまあ、2人とも落ち着いてください」
絵里「大丈夫。私は冷静さに定評があります」
真姫「ないわよ」
海未「フフ」
絵里「……海未、なんだかおしとやか過ぎない?」
海未「そうでしょうか」
真姫「まあいつもよりは大人びて見えるわ」
海未「へぇ。あなた方にはそう見える、と」
絵里「……海未?」
海未「フフフ……やはりまだまだ私は若いということ」
絵里「え? 海未?」
海未「……いえ、じきにわかりますよ」
海未「ほら、そろそろです」
真姫「いったい何を言って――――――――
海未「離れてください! その人は偽物です!」
真姫「!?」
絵里「う、海未が増えた!?」
海未「はぁ……はぁ……制服を返してください」
海未?「この夏日にここまで走って来るとは頑張りましたね」
海未「ええ、あなたのおかげで上下ジャージですよ。暑いことこの上ありません」
海未?「そうでしたか……フフフ」
絵里「ど、どうなってるの?」
真姫「わからないわ……」
海未「そろそろいたずらはよしてください……お姉さま」
海未姉「バレてしまいましたか」
真姫「お姉さま!?」
絵里「ええっ!?」
海未「帰ってきたなら来たと連絡をくれればいいものを……わざわざ私たちが寝静まった後を狙うなんて……」
海未姉「フッフッフ、まだまだ甘いですね妹よ。あ、いつも妹がお世話になっております」
絵里「い、いえこちらこそ」
真姫「……なにこれ」
海未姉「これでも忙しい身なの。それでは……とうっ!」
真姫「わ! 制服を脱いだ!?」
絵里「窓から飛び降りたわよ!」
海未「あ、あれ……いない」
海未「……逃げられてしまいましたか……」
絵里「……なんだったの今の」
海未「気にしないでください」
真姫「そういえば姉がいるって……でも結婚したって……」
海未「忘れてください」
真姫「……そうね」
絵里「そうしましょう……」
海未「もう、人に心配ばっかりかけて……」
絵里「……ほら真姫、妹の方がしっかりしてるように見える」
真姫「わかったから」
ことり「海未ちゃん待って!」
穂乃果「ダメだよそんな恰好のままじゃ!」
絵里「あ、2人が来た」
真姫「……って、あのカバンは何?」
海未「あ、すみません2人とも。起こしてしまいましたか」
穂乃果「急に海未ちゃんの匂いが遠ざかるんだもん、起きちゃうよー」
ことり「それより早く身だしなみを……」
海未「え? あ、そうですね」
穂乃果「はーい、じっとしててねー」
ことり「寝ぐせのままで行っちゃったらせっかくの美貌が台無しになっちゃうよぉ」
海未「そ、そんな……美貌だなんて」
絵里「なんかドライヤーとかブラシとか手鏡と出てきたわよ」
真姫「すごい……」
海未「お騒がせしました」
絵里「いえいえ、とんでもない」
真姫「穂乃果とことりはいつもこんな風に?」
穂乃果「もうやり始めて10年になるかな?」
ことり「自分のよりうまくできる自信あるよ!」
絵里「それはすごいわね」
海未「私は自分でできると言っているんですが……」
穂乃果「ダメダメ。いつもお世話になっているんだから」
ことり「そうだよぉ」
真姫「幼馴染ってすごいのね……凛や花陽もやってるのかしら」
海未「私たちが異質なだけですよ」
海未「あ、それより2人とも、お昼は食べてきたんですか?」
穂乃果「海未ちゃんが笑顔を見せてくれればそれでお腹がいっぱいになるね!」
ことり「そうだよっ」
海未「食べてないんですね……すみません絵里、真姫。私たちは一旦戻ります」
絵里「うん、ゆっくりしてていいから」
真姫「まだ練習始めるまで時間あるし」
海未「ありがとうございます。では穂乃果、ことり。帰りますよ」
ことり「お腹いっぱいになるのは本当なんだけどなぁ」
穂乃果「うん」
絵里「また2人きりね」
真姫「不本意ながら」
絵里「えー」
真姫「りー」
絵里「……?」
真姫「なんでもない。忘れて」
絵里「真姫はお弁当持ってきたの?」
真姫「ええ」
絵里「スイカ?」
真姫「なんで」
絵里「夏だから」
真姫「……あのねぇ。夏だからってスイカを持ってくるわけが……」
ドスン
絵里「……冷えてます」
真姫「絵里、賢さは大事よ。命の次くらいにね」
絵里「おいしいスイカです」
真姫「冷蔵庫にでも入れてなさい」
絵里「ちゃんとお弁当もあるのよ?」
真姫「なら何でスイカなんか……クーラーボックスに入れてまで持ってきたのよ」
絵里「近所で売ってたの。絵里ちゃんは美人だからお安くしとくよ! っておばさんが言ってくれて」
真姫「ちょろい!」
絵里「ひどい!」
真姫「絵里ちゃんは美人だから賢くなれるわよ」
絵里「やった!」
真姫「……はぁ」
絵里「なんで今私の頭をピンポイントで見たの!?」
凛「スイカと聞いて駆け付けたにゃー!」
花陽「凛ちゃん速いよぉ……」
絵里「あら、おはようみんな」
真姫「スイカ仲間の登場?」
凛「凛はスイカよりラーメンかなー」
絵里「ラーメン割りはないわよ?」
花陽「そ、そんな話はしてない気が……」
真姫「花陽たちもこっちでお昼食べるの?」
花陽「うん。きっと絵里ちゃんと真姫ちゃんがいるかなぁと思って」
真姫「どうしてそう思ったの?」
凛「だって最近、絶対に2人が先にいるもん」
絵里「そうね! なんてったって生徒会長だから素早さが大事よ!」
真姫「賢さにもすこしそれを分けてあげて」
花陽「真姫ちゃんはどうして?」
真姫「え? それは……絵里が1人だと何をしでかすかわからないからよ。今朝だってしゃぼん玉吹いてたし」
凛「絵里ちゃんかわいいー」
絵里「ありがと」
真姫「まだお昼まで時間あるし、飲み物でも買いに行く?」
花陽「そうしよっか」
凛「凛はオレンジジュース!」
絵里「私は何でもいいわ。真姫は?」
真姫「トマトジュース」
花陽「真姫ちゃんトマト好きだねぇ」
にこ「にっこにっこにー! スーパーアイドルの矢澤にこ様が来たわよっ!」
にこ「……あれ。誰もいない」
にこ「…………浮き輪にシュノーケル? なぜ……?」
にこ「……クーラーボックス」
にこ「冷蔵庫には……スイカ1玉」
にこ「こ、ここでいったい何が……」
にこ「せっかくアイス買ってきたのに……まあいいわ、入れときましょ」
にこ「……」
にこ「にっこにっこにー」
にこ「……ひまね」
にこ「いや、今こそ新しいにこにーポーズを……」
希「にっこにっこにー」
にこ「うわぁ!?」
希「ふふふ、びっくりした?」
にこ「びっくりしたわよー。まさか机の下から出てくるなんて」
希「わざわざ開いてるドアからこっそり忍び込んだ甲斐あったなぁ」
にこ「そんなことしてないでもう少しあったでしょ」
希「うん、でもな、机の下に入ってたら……」
にこ「入ってたら?」
希「にこっちが足振ってるのが見えてかわいくて」
にこ「ちっちゃくて悪かったわね!」
希「いいやん、かわいいよ?」
にこ「うるさい」
希「ウチはそういうのできんからなぁ」
にこ「くっ……胸にスイカつけてるからよ!」
希「スイカって……そんなに大きないよ?」
にこ「比喩よ比喩! ……って希、あんた痩せた?」
希「え? いつもと変わってないよ?」
にこ「体重測った?」
希「測ってはないけど……」
にこ「だってほら、腕周りが細くなってる」
希「ほんと?」
にこ「ええ。夏バテ?」
希「そうなんやろか……」
希「そういえば心なしかご飯を作る量が減ってる気が……」
にこ「そんなんじゃダメよ。もっとしっかり栄養とらないと倒れるわ! ちょっと購買寄るわよ!」
希「え、にこっち、そんな小さい体のどこにそんなパワーがぁぁ……」
絵里「ただいまー」
チリーン
絵里「き、聞いた!? 今風鈴が返事した!」
真姫「はいはいおかえり」
絵里「もー、冷たいんだから」
真姫「夏にぴったりね」
絵里「……」
真姫「……?」
絵里「……触ってもいい?」
真姫「冷たいってそういう意味じゃないから」
絵里「違う違う。なんとなく私って真姫とのスキンシップが少ない気がして」
真姫「……そう?」
絵里「穂乃果やことりは普通にスキンシップ多いでしょ? それに希やにこも気軽に触れて来るし」
真姫「まあそうね」
絵里「凛も結構抱き着いて来たりしてくれるし、意外と海未や花陽も積極的なのよ」
真姫「ふーん」
絵里「……カモーン」
真姫「え、こっちから?」
絵里「さあ、私はいつでも準備OKよ」
真姫「いやいや、私からの理由はないでしょ」
絵里「あるわ」
真姫「理由は?」
絵里「いつもそっけない真姫が、ちょっとだけ素直になってくるってところが重要なの」
真姫「……これ以上の言葉は無駄みたいね」
絵里「えっ、何その構え」
真姫「しっかり受け止めなさいよ」
絵里「それタックルでしょ!?」
真姫「なんてね」
絵里「なんだ、びっくりした――――――――
真姫「これでいいんでしょ?」
絵里「……ずるい」
真姫「先手必勝よ」
真姫「抱きしめる、って案外難しいのね」
絵里「その割には上手よ?」
真姫「……ぐぐぐ」
絵里「いたいいたい愛が痛い」
真姫「ふん」
絵里「素直じゃなーい」
真姫「……」
絵里「……」
真姫「……ねぇ、暑いんだけど」
絵里「待って。こんな機会滅多にないからもうちょっとだけ」
凛「2人とも何してるのー?」
真姫「」
希「まさか凛ちゃんたちももう来てるとはなぁ……ってあれ? どうしたん?」
絵里「ええっとこれは……」
真姫「……」
花陽「まさか真姫ちゃん貧血?」
絵里「!」
真姫「そうよ、それ。倒れそうになって支えてもらったの」
絵里「そういうこと!」
にこ「へー。確かに真姫ちゃん顔真っ赤だわ」
真姫「……そういうこと」
花陽「ええっと、まずはこういう時には……」
凛「輸血にゃ!」
絵里「輸血!?」
真姫「ちょ、違うでしょ」
希「あ、トマトジュースがあるからこれでいいんと違う?」
にこ「そうね。絵里、飲ませてあげて」
絵里「……行くわよ」
真姫「なんでそこだけノリノリなのよ」
海未「もうみんな揃ってましたか」
穂乃果「ごめーん、遅れちゃった」
ことり「ごめんね。海未ちゃんがかわいくて」
にこ「理由になってないわよ」
真姫「自分で飲めるから」
絵里「ほらここにシュノーケルが」
真姫「それはストローじゃないから」
希「口移しや!」
絵里「合点!」
真姫「やめなさい」
絵里「はい」
希「やっぱり権力は真姫ちゃんの方が上かぁ」
花陽「ん? っていうことは……」
凛「生徒会長より上の真姫ちゃんが学院最強に……」
理事長「学院最強はこの私です!」
海未「り、理事長!?」
穂乃果「おはよ……こんにちはかな?」
理事長「時間帯ではもうこんにちはですね」
ことり「お母さんどうしたの?」
理事長「いやぁ、ここから楽しそうな声が聞こえたので来てみたんですよ」
絵里「あ、うるさくしてすみません」
理事長「いいんですよ。こんなに暑いと運動部もなかなか練習ができませんからね。グラウンド見てても退屈なんですよぉ」
絵里「あ、そうだ。ちょうどスイカがあるからみんなで切って食べましょう」
穂乃果「えぇっ、どうせだから割らない?」
真姫「でも割るものなんて……」
希「ウチらにはこの拳があるやん?」
にこ「そんなバトル漫画みたいなこと言われても割れないわよ」
理事長「今ちょうど家庭科室が開いていますから、使ってはどうですか?」
凛「やったー!」
花陽「ありがとうございます」
理事長「いえいえ」
理事長「では私はこれで……」
理事長「……」
理事長「…………」
にこ「誰か引き止めてあげなさいよ」
花陽「えっ?」
絵里「理事長待ってるわよ。真姫頑張って」
真姫「私が? ……はぁ、わかったわよ」
真姫「……理事長もスイカ……」
理事長「いいんですか!? ではお言葉に甘えていただきます♪」
海未「相変わらずわかりやすい人ですね」
ことり「えへへ、ごめんね」
穂乃果「ううん、大勢の方が楽しいよ」
希「じゃあとりあえずこの海セットは片付けて、と」
海未「?」
花陽「海未ちゃんのことじゃないよ」
海未「そうでしたか」
絵里「ねぇ真姫、スイカ10等分ってどうやるの」
真姫「1つ36度で切るのよ。理論値だけど」
にこ「あ、そうだった。アイスもあるわよ」
希「おぉ、にこっち気が利く!」
にこ「全部スイカ味だけど」
凛「……にこちゃん。気持ちだけはもらっておくにゃ」
にこ「中身も食べなさいよ」
絵里「あ、しゃぼん玉が飛んでる」
希「本当やね」
にこ「誰が飛ばしたの?」
真姫「さっき絵里が飛ばしてたやつがまだ割れてなかったんでしょ」
絵里「なるほど」
真姫「絵里の賢さのしゃぼん玉かもね」
絵里「わ、割れないで! 私が取りに行くまで!」
穂乃果「あ、割れた」
絵里「か、かしこさが……」
ことり「かしこさ?」
真姫「まあいいんじゃない?」
絵里「よくないー」
真姫「ただのエリーチカでもかわいいわよ」
絵里「……そっか。ん? これって振出しに戻ってきたような……」
真姫「気のせいよ」
絵里「?」
おわり
おまけ
「かしこいかしこいかわいいエリーチカ」
絵里「ねぇ真姫、私は肌の触れ合いって大切だと思うのよ」
真姫「それで?」
絵里「だからね、メンバーとのスキンシップを大切にしていきたいと思ってるわ」
真姫「ふーん」
絵里「というわけで真姫。ちょっと目を閉じててもらえる?」
真姫「……いいけど」
絵里「ありがとう」
絵里「……ん」
真姫「…………今何したの?」
絵里「ご想像にお任せするわ」
真姫「唇に何か当たったんだけど」
絵里「さて、何かしらね」
真姫「……どうせ指とかなんでしょ」
絵里「ええ。そうよ」
真姫「……やっぱり」
絵里「もしかして真姫は他のものがよかったのかしら?」
真姫「べつに」
絵里「うふふ。意地っ張りなんだから」
絵里「また後で、ね?」
真姫「……わかった」
おまけおわり
おつです
海未姉は何者なんだ…
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春・夏・秋・冬☆
↑僕も見たいです
こういう平たい文章で書かれたラブラブ大好き