春香「少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ」 (44)


このSSは相田裕の漫画「GUNSLINGER GIRL」の登場人物をTHE IDOLM@STERの登場人物に置き換えたものです。

アイドルごとに担当プロデューサーがいます。

アイドルが凄惨な過去を持っていたり、怪我をしたり、人を殺したりします。

複数のプロデューサーが登場する場面では○○P表記ですが、アイドルと担当プロデューサーが一組しか登場しない場面ではP表記になります。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403722209


「このままイタリア中の国立病院を回るつもりか」

「ああ……いや」

「俺はもう決めてきたぞ。家族に見捨てられたCFS症候群の全身マヒ患者だ」

「兄さん……本当に子供じゃなきゃいけないのか?」

「『765』の技術者はそう言っている……体の改造も薬による洗脳もなるべく若い方がいいらしい」


「……ええと、765プロさんでしたっけ? 国も素晴らしい組織を作りましたね。身障者支援を積極的に打ち出すとは」

「それで先生、この病院に重傷の少女が居ると聞いてやって来たのですが」

「ええ、まさしくあなたたちの助けを必要としています。ご存じですか? 先週あった一家殺害事件の生き残りですよ」

「彼女は家族の死体の隣で一晩中暴行を受けていました。本人は、自殺を望んでいます」


第一話 天体観測



五共和国派アジト――


銃剣付きのウィンチェスター M1897を持った千早が死体を見下ろしている。その近くでピーコートの男が携帯電話で連絡を取っていた。

千早P「やよいPさん、カラーブリアの千早Pです。五共和国派のアジトを制圧しましたがアルバニア人の姿はありません」

千早P「おそらく既にナポリまで移送されたのでしょう……ええ、まだ息のある人間から何か聞いてみます……」


ビル屋上――


USSR ドラグノフを構えた少女と単眼鏡で対面する建物を見下ろす男が居た。男はヘッドセットを通じて指示を出す。

やよいP「春香P、奴らと接触する準備をしろ。千早組から連絡があった。どうやらこっちが本命らしい」

春香P「了解」


数年前、僕と兄が転職した組織は、名を公益法人765プロダクションという。

表向きは首相政府主催の身障者支援事業だが、その実体は国中から集めた障害者に試験的に機械の体を与え

「条件付け」と呼ばれる洗脳を施すことで、政府の為の汚れた仕事を請け負う特殊な諜報機関だった。


ビルの下でスーツ姿の男がヴァイオリンケースを持った少女に話しかける。

春香P「行こう、春香」

春香「はいっ」

春香P「アルバニア人を確認するまで動くなよ」


屋上ではヘッドセットの男が狙撃銃のスコープを覗く少女に指示を出していた。

やよいP「やよい、ブラインドの影に集中しろ」

やよい「はい」


ビルの一室――


「カラーブリアが襲われたらしい」

「なんですって!?」

「何者かがアルバニア人を追ってきている」

「それじゃあここにも……」

「やって来るかもな」

「カラーブリアに現れたのは子供連れらしいが……」

「そう言えばこんな噂を聞いたことがあるな。最近子供の殺し屋を使う政府組織があると……」

コンコン

「!!」

突然のノックに驚くテロリスト達。一人の男がドアスコープを覗きに行く。

「何か見えるか!?」

「ええと……背広の男と女の子です」

「女の子……? 開けろ」


春香P「こんにちは」

「何の用だ」

春香P「私はリベロ=イターリア誌の記者をしている者です」

「記者が何の用だ?」

春香P「こちらにコステロ社のスカロ氏がいらっしゃると聞いてぜひ取材を……」

「そんな奴ここにはいない。ちゃんと住所調べたのかよ」

春香P「ええと確かにこの建物だと聞いて……」

「おい……知らないって言ってるだろうが……」

そう言うと男は春香Pのネクタイを掴んだ。
その様子を見た春香の手に力がこもる。

春香P「しかし……」

「いい加減にしねえと痛い目に……」

次の瞬間、春香はヴァイオリンケースでプロデューサーのネクタイを掴んでいた男を殴り飛ばした。

春香はその勢いのままヴァイオリンケースを開き、中の物を取り出す。

ヴァイオリンケースにしまわれていたのは楽器ではなくFN P90だった。

騒ぎを聞いて駆けつけたテロリスト達を次々に撃ちながら室内へと進む春香。しかし腕から血を流している。被弾したようだ。


やよいP「今だ、撃て」

ビッ

ビシッ

やよいによる狙撃でソファを盾にしていたテロリスト二名が射殺され、制圧は完了した。


春香P「やってくれたな……」

春香「あ……あの……」

春香Pは無線で仲間と連絡を取った。

春香P「フェッロ、失敗した。何人か連れて応援に来てくれ」

フェッロ『分かりました』

春香P「春香、どうして暴れた?」

春香「あの……プロデューサーさんに乱暴する人は許せなくて……」

春香P「さっき言った事を忘れたのかい?」

春香「いえ」

春香P「腕を撃たれたな……大丈夫か?」

春香「平気です」


春香Pのジャケットを掛けられ車に乗り込む春香。

春香「プロデューサーさん……」

春香の目尻には涙が浮かんでいた。

P「ん? 傷が痛みだしたか?」

春香「私は……プロデューサーさんのお役に立ちたかったんです……」

P「……」

P「……帰ったらすぐに先生に傷をみてもらいなさい」


765プロ――


春香P「先生、春香の具合はどうですか?」

医者「ライフル弾が皮膚と人工筋を削っただけだ。腕ごと交換する必要もないだろう。これなら彼女に使う『薬』も少量で済むぞ」

春香P「それは助かります」

医者「勘違いするなよ? それでも負傷の度に『薬』が必要なのに変わりはない」

医者「ここの子供たちはただでさえ洗脳に大量の『薬』を使っている。加えて修理のたびに鎮静剤として使っていれば……いずれは依存症や記憶障害を起こすだろう」

春香P「そうですか……」

医者「義体(アイドル)はいくらでも直せるが、その分脳や生身の部分への負担が大きいからな……それで今日はいったいどうしたんだ? 命令無視して暴れたっていうじゃないか」

春香P「彼女は僕の為に作った死体の数を数えています……」

医者「……救われない話だ」

医者「なあ……お前がこの子を可愛がるのはわかるが、もっと条件付けを徹底すべきなんじゃないか? 殺しの為の義体を普通の女の子として扱っても不幸なだけだ」


社長室――


やよいP「春香に条件付けを徹底すべきだ。猟犬には首輪をつける必要がある」

春香P「それには反対だ兄さん。薬の多用は寿命を縮める」

やよいP「使えなくなったら新しい患者を用意すればいい。お前は道具に愛着を持ちすぎだ」

高木「まあ待て、少々問題はあるが天海君は優秀だ。簡単に使いつぶすのも惜しい。とにかく今回は無事アルバニア人の身柄は押さえたのだ。今回は大目に見よう」

やよいP「……はい」

高木「個々のアイドルの扱いは担当プロデューサーに一任している。天海君が最低限の投薬で使えるというなら試してみたまえ」

高木「ただし、大きなミスは許されない」

高木「今回のことはきつくしかっておくんだな」

春香P「はい……」


765プロへ連れて来たばかりの春香は無口な子だった。

元々、連続殺人事件の被害者だったのだから無理もない。一家六人が惨殺され、彼女一人が生き残った。

国立病院で会った彼女は身も心もぼろぼろで、

僕はこの子をパートナーに選んだ。


善行を積みたかったのか同情したのか

とにかく彼女を救いたかった


P「いいかい? 仕事をするにはたくさんの事を覚えなくてはいけない」

765プロに連れて来られた子供は体を改造されると同時に“条件付け”をほどこされる

彼女にとって幸いだったのはたいてい条件付けの結果“以前“の記憶が消されることだ

P「良い仕事は全て単純な作業の堅実な積み重ねだ。メモを作るから毎日勉強するように」


P「狙撃は600mまでなら頭、それ以上は体の中心線を狙う……」

春香「……」

P「……」

そして僕は彼女と会話する努力を始めた。

P「上を見てごらん」

春香「え?」

P「あの雲の隣、ぼんやりと光る点が見えるかい?」

春香「……何ですか?」

P「空に光るものがあるとすれば何だろう? ひょっとして妖精かもしれないな」

春香「……飛行機ですか?」

P「いい答えだね。昔、戦争中に飛行機と見間違えてびっくりした人もいる。だがもし今が夜だとしたらどう考えるだろう」

春香「……星……?」

ライフルからスコープを外し、春香の目にあてがってやる。

P「そう、地球の内側を回る金星なんだ。ああ、太陽は見ないように……」

P「さすがにこのライフルじゃ金星人の頭を狙うのは無理だろうな」

春香「プロデューサーさんって何でも知っているんですね……」


765プロ女子寮、春香の部屋――


P「春香いるかい?」

春香「はいっ、ど、どうぞ」

P「腕の調子はどうだ?」

春香「はい……まだ少し重い気がしますけど」

P「じゃあこれから本館の屋上に来てくれないか」

春香「分かりました」

P「寒いからこれを着てくるといい」

春香「これを……頂いていいんですか?」

P「上で待ってるよ」ガチャ

春香は紙袋からコートを出すと、一度抱きしめてからそれを着た。


屋上――


P「いらっしゃい、早くおいで」

春香「天体望遠鏡(テレスコープ)ですか……」

P「すごいだろ。いつかライフルスコープなんかじゃなく星を観せたかったんだ」

春香「私、星を観るの初めてです。突然どうしちゃったんですか?」

春香は無邪気に笑いながらそう言った。

P「あ……」

P「……ああ」

プロデューサーは努めて平静を装いながら言った。

P「うん……こんな夜空だ。星を観るのもいいだろう? 今日の仕事のごほうびさ」

春香「きょ……今日のこと……怒らないんですか?」

P「怒ってほしいのかい?」

P「おいで、オリオンがきれいだ」


P「猟師オリオンは恋人アルテミスに誤って射ころされてしまう。哀しみにくれた女神アルテミスは自分が夜空を駆ける時いつでも彼に会えるようにとオリオンを星座に加えてもらったんだ」

P「哀しい話だ」


春香「プロデューサーさん……」

P「ん?」

春香「プロデューサーさんて何でも知っているんですね」

P「そうとも」


第一話 天体観測 完

おつ
オリジナルは入るのかな?

>>24
ありがとう!!

オリジナルはほぼ無いと思う 台詞の口調をアイマスキャラに合わせるぐらい
ガンスリの布教とガンスリ×アイマスの二次創作が増えて欲しいという願いを込めたSSです

多分トリエラ=千早メインの話かクラエス=律子メインの話を投稿してHTML化依頼出す感じになる

リコ達がアイドルする短編を作者が書いてたなw

このスレ覗いてくれたのはほぼ原作既読済みの人かな
やっぱオリジナルを入れないとダメですね

>>36
ガンスリ関連のスレ立てはこれが初めてなので自分では無いと思われ
スレタイとか教えてもらえると嬉しい

HTML化依頼してきます

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