梅木音葉「貴方と奏でる素敵なメロディ」 (77)

・モバマス
・誕生日SS
・キャラ崩壊とかはあると思います
・文章力とか酷いです

それでは書いていきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403260628


モバP(以下P)「ただいま戻りました~」

普段の営業を終え、事務所に戻る。
時計を見ると22時。
なんとか日付が変わらない内に戻る事が出来た。

ちひろ「おかえりなさい、Pさん。今日もお疲れ様です」

P「ありがとうございます、ちひろさん」

そういって自分のデスクへと向かう。

P「おや……」

しかし、そこには既に先客がいた。


音葉「すぅ……すぅ……」

P「困ったなぁ……」

そこには気持ち良さそうに眠る音葉の姿があった。

P「起こすのも気が引けるけど今風邪とか引かれたりしたら……」

P「それにこのままだと仕事も出来ないし……」

立ち往生しているとちひろさんが様子を見に来る。


ちひろ「困った顔してどうしたんですか? って、音葉さん寝ちゃったんですね」

P「それで困ってまして……」

ちひろ「起こしたらいいじゃないですか。それに女の子の無防備な寝顔をずっと見ていてはダメですよ」

P「ず、ずっとは見ていませんよ!」

ちひろ「しーっ! というより見たことは認めるんですね」

しまったと思ったが時既に遅し。
にやにやと笑うちひろさんがいた。


ちひろ「そういえば前から聞きたいことがあったんですよ」

そういいながらちひろさんは音葉に毛布を掛ける。

P「何ですか? というより音葉を起こさないんですか?」

ちひろ「寝顔を見たいPさんの為です」

P「な、何を言って……!」

ちひろ「まぁまぁ落ち着いて。さ、こちらに座ってください」

P「あ、ちょ、ちょっと」

半ば強引に事務所のソファに座らせられる。


P「それで聞きたいことって何ですか?」

ちひろ「音葉ちゃんってどうやってスカウトしたんです?」

P「音葉ですか?」

ちひろ「音葉ちゃんの家って音楽一家じゃないですか。あ、コーヒー要ります?」

P「えぇ、そうですね。あ、コーヒーはブラックでお願いします」

ちひろ「はい、わかりました」


ちひろ「はい、コーヒーです」

P「ありがとうございます」

ちひろ「それでどうやってスカウトしたんです? 反対とかされたんじゃ……」

そう言われてあの時の事を思い出す。

P「そうですね……。音葉をスカウトした時は……」


音葉と出会ったのは数ヵ月前。
スカウトをしに各地を訪れていた時だった。

P「この時期にこれは暑いな……」

まだ冬が開けたばかりだというのにその日は夏のような暑さだった。
暑さにやられのんびりと歩いていると人だかりを見つける。

P「何だろうか?」

興味を惹かれ人だかりに向かう。


?「~♪」

人だかりに近づいていくとだんだんと歌が聞こえてくる。

P「(とてもキレイな声だ)」

素直に思った。
ただ、その歌声はどこか寂しそうに感じた。


やがて歌が終わり拍手が沸き起こる。

?「……ふぅ」

人だかりの中心には女性がいた。
歳は20歳ぐらいだろうか。
何処か幻想的な雰囲気を持った女性だった。
女性は周りに一礼して何処かに行ってしまった。
観ていた人たちもぞろぞろと離れていく。

P「気になるな……」


先程の女性の情報を知るため近くにあった喫茶店に入る。

店員「ご注文はお決まりでしょうか?」

P「コーヒーをブラックでお願いします。砂糖とかは結構です」

店員「畏まりました。暫くお待ちください」


P「あ、あの、すみません」

店員「……? 何でしょうか?」

呼び止められ困った顔をする店員。

P「その、先程の歌を歌っていた女性は誰なんですか?」

店員はその質問を聞き納得したような顔をする。

店員「こちらを訪れるのは初めてですか?」

P「えぇ、初めてです」


店員「彼女は梅木音葉さん。両親が音楽家をやってるそうです」

P「音楽一家ですか」

店員「そうですね。彼女の演奏も聴きましたが凄かったですよ」

P「演奏家なんですか?」

店員「すみません。詳しい話は私も……」

店員「ただ、たまに町の子供たちに歌を歌ってあげたりしてますね」

P「先程の人だかりは……?」

店員「彼女の歌は心が安らぐというかなんというか引き込まれてしまうので……」

店員「町の人たちもつい聞き入ってしまうんですよ」

そういって店員さんは笑う。

P「そうだったんですか」


店員「あ、注文受けたままでしたね。すみません」

P「いえ、こちらこそすみません」

…………
……


店員「ありがとうございましたー」

そうして喫茶店を後にする。


P「さて、これからどうするか……」

頭の中に浮かぶのは先程の女性。
梅木音葉の事が浮かぶ。

P「(きっとアイドルになれば彼女は輝く……)」

何故かは分からないがそんな思いが浮かぶ。


P「何処だ……ここ」

ぶらぶらと町を散策していると気付けば森の中にいた。
いわゆる迷子の状況であった。

P「動かないべきだろうけれど誰かが来る見込みもないしな……」

そういって散策を続ける。


暫く散策を続けていると何処からか歌声が聞こえてくる。

P「(この歌はさっきの……)」

そうして一歩踏み出す。
だが、歌に意識をとられていたせいか木の根に足をとられ前のめりに転んでしまう。

P「うおっ……!?」

?「誰っ……!?」


そして聴こえていた歌は止まり鳥が飛び立つ音が響く。

P「いてて……あ、どうも」

それが梅木音葉との出会いだった。


P「まぁ、そんな感じで逢いまして……」

ちひろ「Pさん明らかに変な人じゃないですか……」

ちひろ「よくスカウト出来ましたね」

P「色々とありまして……」

ちひろ「それでそのあとは?」

P「まだ聞くんですか? そのあとはですね……」


?「貴方……誰なの?」

警戒した様子でこちらを見る女性。

P「(それも当然か。いきなり話しかけられるようなものだし……)」

急いでスーツに付いた土などを払い立ち上がる。

P「え、えっと驚かしてごめん。道に迷っちゃって……」

?「そう……」

相変わらず女性は警戒した様子である。

P「(どうしよう……会話する雰囲気じゃないよな……)」

しかし、意外にも向こうから話しかけてくる。


?「貴方は不思議な人ね……。貴方みたいな音は初めて見る……」

P「……どういう意味です?」

?「私は……音の流れが見えるの。いいえ、目に見えるよりも確かに、強く感じられる……」

P「音の流れ、ですか……?」

?「これも絶対音感、とでも言うのかしらね……」

P「すごいですね! 見れるなら見てみたいですよ」

すると女性が驚いた顔でこちらを見る。


?「……笑わないのね、貴方」

P「どうして笑う必要があるんですか?」

?「今までいろんな人に音が見えると言ったわ……。でも、ほとんどが信じてないように笑ったわ」

P「笑ったりなんかしませんよ」

そうしていると肩に先ほど飛び立った小鳥が止まる。

P「お……」

?「貴方の肩にも鳥が……優しい声音に惹かれたようね」

?「そういえば自己紹介がまだでしたね……。私は梅木音葉……」

P「初めまして。私はPと申します」


音葉「Pさん……ですか」

P「さっきは驚かしてすみません。それにしても音葉さんは歌が上手ですね」

音葉「音葉でいい…わ。口調も……崩していいわ。それにしても聞いていたのね……」

P「それじゃあ、思わず聞き入ってしまったよ。歌手をやっているのかい?」

音葉「いえ、残念ながらやっていないの……」

P「そうなのかい? そんなに上手いのに……」

音葉「父も母もクラシックの奏者だから……いわゆるエリートなの。貴方は何をしているの?」

P「そうなのか。あ、一応CGプロってところでプロデューサーをしているんだ」

そういって名刺を渡す。


音葉「CGプロの……プロデューサー……」

P「実はスカウト中でね……」

音葉「そうだった……のね」

P「音葉さん……いえ、音葉はアイドルに興味とかはないかな?」

音葉「今は……ないわ」

P「そっか……。そうだ、歌を歌ってくれないかな」

音葉「歌を……?」

P「折角だから近くで聞いてみたいんだ。ダメかな?」

音葉「……わかったわ」

そういって音葉を歌い始める。
その綺麗な歌声に耳を澄ませる。


音葉「~♪」

P「(やはり綺麗な歌声だ……)」

P「(ただ、ただ……どこか悲しさを感じてしまう……)」

音葉「……ふぅ。どうでしたか?」

P「ずっと聞いていたいくらいだった」

P「ただ……」

音葉「ただ……?」

P「……何か悩みでもあるのかい? 何処か悲しく感じたかな」

音葉「……っ!」

それを聞いて音葉は驚いた顔をする。


音葉「……貴方はやはり不思議な人ね。今までそんなことを言われたことなんかなかったわ……」

音葉「……そうね。貴方は……音楽を楽しいと感じるかしら?」

P「それはもちろん。プロデューサーという仕事だしね」

音葉「羨ましいわね……。私は……今は心から楽しめない、わ……ね」

音葉は少し悲しそうな顔をする。
そんな音葉を見ているとどうにかしたいという気持ちが強くなる。

P「(……。そういえば今度ライブが……)」

P「なぁ、音葉。もし、明後日時間があるなら見に来てくれないか?」

そういって音葉に一枚の紙を渡す。


音葉「これは……ライブのチケット?」

P「今度うちのアイドル達でライブをやるんだ。良かったら見に来てくれないかな?」

音葉「……わかったわ。それじゃあ、私は帰るわ」

P「あぁ、今日はありがとう。楽しかったよ」

音葉「私も楽しかった……わ。また、会いましょう……」

そういって音葉は立ち去って行った。



P「……なんとかスカウト出来ないものだろうか」

そんな思いが強くなっていくのを感じた。


ライブ当日


音葉「……すごい熱気。それに音も興奮しているようね」

そしてライブが始まりアイドルたちが登場し、会場の熱気も一気に最高潮になる。

卯月「今日は私達のライブに来てくれてありがとうございまーす♪」

未央「テンション上がってきたー! みんなは上がってるかーい!」

観客「「ワー! ワー! ワー!」」

凛「それじゃあいくよ!」


それは、ただすごいの一言だった。

音葉「(私よりも若い子が……あんなに楽しそうに歌ってる)」

音葉「(あんなに輝いている……。周りの人もみんな楽しそうに……)」

眩しくて、私はその光景に釘付けだった。

音葉「(これが……アイドル。こんな音もあるのね……)」

音葉「(私は……あんな風に音楽を楽しんでいたかしら……)」

音葉「(いつから音楽を楽しまなくなったのかしら……)」


気づけばライブは終わり、私は会場の外にいた。
まだ、胸の高鳴りは収まっていなかった。

P「あ、おーい音葉ー!」

暫く空を見上げていると声をかけられる。

音葉「あ、Pさん……」

P「来てくれたんだな」

音葉「えぇ、折角なので……見てみようと思って……」

P「どうだった?」


音葉「凄かったです。歓声が……空気を揺らし……そして風となってステージを包んでいました……」

未央「プロデューサー! なーにしてんの! ……って、およ?」

Pさんの背中に女の子が乗りかかる。とても元気そうな子だ。

凛「ちょっと、未央。はしたないよ……って、プロデューサー。その人は?」

卯月「未央ちゃん、凛ちゃん! 何してるんですか? ……って、わぁ! 綺麗な人ですね♪」

P「お、おい……」

その女の子達に私は驚きの声を上げるしかなかった。

音葉「彼女達は……まさか……」


そういってPさんは私に紹介してくれる。
先ほどまでステージで歌っていた彼女たちを──

P「あぁ、うちのアイドル達。ニュージェネレーションの島村卯月、渋谷凛、本田未央さ」

未央「本田未央15歳。高校一年生ですっ!」

凛「えっと……渋谷凛です。よろしくお願いします」

卯月「島村卯月です! よろしくお願いします♪」

音葉「えと……、梅木音葉です。よろしくお願いします……」

未央「それにしても音葉さん綺麗だよねー!」

卯月「憧れちゃいます♪」

音葉「あ、えと……」

P「ほら、音葉が困ってるから……」


凛「名前で呼び合う関係なんだね」

未央「なになにー! Pさんの彼女とかー?」

音葉「い、いえ……違い……ます」

元気のある声におもわずたじろいでしまう。

P「違うからな。スカウトの途中なんだよ」

卯月「そうなんですか! これからよろしくお願いします♪」

凛「卯月……。まだ入るって決まったわけじゃないよ」

卯月「え、あ、そうだったんですか! す、すみません」

頭を深く下げる卯月ちゃん。

音葉「いえ、気にしないで……ね」

P「ほら、そろそろ戻らないとちひろさんが心配するぞ」

未央「はーい。音葉さーん! また会おうねー!」

そういって彼女たちは去っていく。
私はあの子達が去った後も目が離せなかった。


P「いきなり変な事を聞いたりして悪かった……。あとで未央に言っておくよ」

きっと変な事とは彼女が云々の話だろう。

音葉「いえ、気にしてないので……。それにしても凄いですね……」

P「まぁ、元気がありすぎてよく振り回されるというか……」

音葉「いえ、未央ちゃんだけじゃなく……凛ちゃんも卯月ちゃんもです……」

P「……?」

Pさんは不思議そうな顔をする。

音葉「あの子達は楽しそうでした……。あんなに楽しそうな音を奏でる人は初めて見ました」

音葉「羨ましかったです……。私はあんな風に歌を……音楽を楽しめてないから……」

P「音葉……」

重い空気が漂う。
だから私はそれを払拭する様に出来る限り明るく言う。


音葉「だから今日はありがとうございました……。アイドルにも興味が持てた……と思います……」

P「本当かい!」

音葉「っ……!?」

Pさんに手を握られ私は驚いてしまう。
対するPさんは申し訳なさそうな顔をして謝る。

P「その、驚かせてごめん……」

音葉「い、いえ……」


音葉「あの、Pさん……。私はまた音楽を楽しめるでしょうか……」

P「……それはわからない。でも、きっと音葉なら出来ると思うよ」

そういってPさんは私に笑いかける。
その笑みを見ていると不思議と自信が湧いてくる。

音葉「そう……ですか」

P「変わろうと思えば誰だって変われる。未央達だって変われたんだ」

音葉「あの子達もですか……?」

私はそれを聞いて驚いた。
あんなに輝いていたあの子達ですら私のようだったのだろうか。


P「そう。だから、音葉にだって出来るさ」

音葉「(……私でも。あの人達は許すだろうか……)」

音葉「(……ううん。きっと……大丈夫)」

音葉「あの、明日……来てくれますか。変わるところを見てほしいんです……」

P「……わかった」


そうして数日後、私はアイドルの梅木音葉になった。


音葉「ん……、懐かしい……夢、ね……」

まどろみから覚めた私。
どうやら眠ってしまっていたようだ。
毛布を掛けてくれたのはちひろさんだろうか……Pさんはもう帰ってきているだろうか……。
眠い目を擦りながら私はコーヒーを入れに行く。
すると、ちひろさんに話しかけられる。

ちひろ「あ、音葉ちゃん起きたんですね。Pさん戻ってきてますよ」

音葉「そう……ですか」

P「や、やっと……解放された……」

ソファのほうへ行くと何故か疲れ切った顔をしたPさんがいた。


P「お、音葉か……。起きたんだな……おはよう……」

音葉「どうしたんですか……?」

P「ちょっとちひろさんと話してたんだ……」

ちひろ「あー! そうですよ。一番いい所を聞いてませんよ!」

音葉「……? 何の話をしてたんですか?」

音葉は何の事かわからないのか首を傾げる。

ちひろ「Pさんに音葉ちゃんをどうやってスカウトしたのか聞いてたの」

音葉「私のですか……?」

ちひろ「それで、どうやって親御さんの許可を得たんです?」

P「そ、それに関しては思い出したくないというか……ノーコメントで……」

ちひろ「えー、教えてくださいよ! 一番面白そうなところじゃないですか!」

P「嫌です! 絶対言いふらしますよね!」

ちひろ「そ、そんなことは……」

P「ほら、やっぱり! それじゃあ音葉を寮まで送ってきますね! さ、音葉」

音葉「は、はい……」

まだ途中ですが残りの書き溜めが大半消えてしまったので今日はここまでです。
今日中に終わることは出来ませんが書き溜めてきます。



とりあえず音葉さん誕生日おめでとう!

なかなか更新できずすみません
やっと時間確保できました

それでは書いていきます


P「音葉は寒くないか……?」

音葉「……はい。大丈夫です」

P「そうか。それはよかった」

音葉「……なんだか夢みたいです」

P「どうしたんだ音葉?」

音葉「まだアイドルになったばかりなのに……ライブに出ることになるだなんて……」

P「それだけ音葉が頑張ったんだよ」


気づけば寮の前に着いていた。

音葉「……もう、着いちゃいましたね」

音葉がポツリと呟く。
そうして音葉はこちらを向く。
街灯に照らされた音葉の顔には不安の表情が浮かんでいた。

音葉「あの……Pさん……お願いがあるんです」

P「どうしたんだ……?」


音葉「明後日一緒にお出かけ……しま……せんか?」

P「明後日か……?」

音葉「その……ライブが不安で……」

音葉「ダメ……ですか……?」

不安そうな表情を浮かべる音葉。

P「い、いや、大丈夫。大丈夫だ」

音葉「そ、そう……良かった……」

音葉は胸を撫で下ろす。


音葉「そ、それじゃあPさん……。おやすみ……なさい」

P「あぁ、おやすみ」

そういって音葉は寮に入っていく。
それを見届けてから事務所に戻る。


事務所に戻るとちひろさんが迎えてくれる。
どうやらまだ帰ってなかったようだ。

ちひろ「あ、ちゃんと送ったようですね」

P「ちゃんと送ったってなんですか。何もしませんよ」

P「あ、それと明後日出掛けることになったので事務所はお願いしますね」

ちひろ「はぁ、わかりました。でも急にどうしたんです?」


P「音葉にお願いされたんですよ。ライブが不安だからと」

ちひろ「あー、そうですか。分かりました」

ちひろ「それよりPさん。さっきのスカウトの話を――」

P「あ、もうこんな時間だ帰らなきゃー」

ちひろ「棒読みじゃないですかー! ちょっとー!」

そうしてその日は終わった。


お出かけ当日。
電車に揺られ○○方面へ向かっていた。
隣に座る音葉は外の景色を眺めている。

今日の音葉の服装は白をベースとしたおとなしめな感じで良く似合っていた。
対して此方の服装はいつものスーツ。
ひろさんに何かあると面倒という事でこの服装になった。

P「(やっぱりキレイだよな……)」

さすがはアイドルと言うべきか。
音葉を見てやはり思う。

P「(それにしてもあのバスケットは何なのだろう……)」

そして音葉の膝の上に置いてあるバスケットに視線を向ける。

「まもなく○○、○○。お忘れもののないよう――」

車内アナウンスが流れる。
もうすぐ到着するようだ。


電車から降り、音葉と向かった場所は初めて会ったあの森だった。

P「なぁ、音葉。別に他の場所でも良かったんじゃないか……?」

音葉「ここが……いいの。ここが……私の、今の私の原点だから……」

音葉「で、でも……貴方が嫌なら他の場所でも……」

P「いや、ここでいいよ。むしろここじゃないと嫌かな」


P「たまには静かな場所っていうのもいいな……」

音葉「ゆらめく光も、ざわめく木々も、まるで話しかけてくるよう……」

音葉「これが自然の交響曲……。大自然のハーモニーですね……」

P「そうだな。お、ここは……」

回りを見渡してみるとあることに気付く。


P「そういえばここで音葉と会ったんだよな……」

音葉「そう……ね。あの時の事は鮮明に覚えているわ……」

音葉「それは今までのどの――」

そんな時、音葉のお腹から可愛らしい音が聞こえる。
音葉は恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。

音葉「あ、えっと……」

P「少し早いけどお昼にするか。それじゃあ――」

しかし、町の方へ向かおうとすると音葉に止められる。

音葉「ま、待って……。こ、こっちに……」

P「お、おい音葉……」


そのまま音葉に手を引かれ歩く。
暫くするとちょうど二人で座れる場所があった。

音葉「あの、作ってきたの……」

そういって音葉はブランケットを開ける。
中に入っていたのはサンドウィッチだった。

P「食べていいのかい……?」

音葉「あっ……サンドウィッチ、片寄ってしまったようです……ごめんなさい」

P「いや、大丈夫だよ。いただきます」


サンドウィッチを口に運ぶ。
ベーコンとレタスとトマトの絶妙なバランス。
それは素直に美味しいと思えるものだった。

P「うん、とっても美味しいよ」

それを聞いて音葉は安堵する。

音葉「そ、そう……。良かった……」

音葉「不器用だから……家事とか苦手で……」

音葉「でも、サンドウィッチなら良く作るから……」

P「また食べたいくらいだよ」

音葉「そ、そう……ありがとう」

そういって音葉は嬉しそうに笑う。


その笑顔に思わず見とれてしまう。

P「っ……!」

はっと我に帰り首を振る。その様子を見ていた音葉が不安そうな表情を浮かべる。

音葉「やっぱり口に合いませんでしたか……?」

P「そんなことはない! とっても美味しかったよ」

音葉「そう……。なら、いいけど……」

そうして時間は流れていった。


P「そろそろ帰るか」

時刻は17時頃。
日も傾き帰るにはちょうどいい頃合いだ。

音葉「そうですね……」

P「明日は大丈夫そうか?」

音葉「どうでしょうね……」

P「おいおい……」


音葉「でも……貴方がいるならきっと私はできると思います……」

音葉「だから頑張ります」

そういって音葉は笑う。

P「あぁ、期待してるよ」

そうして帰路につくのだった。


音葉を寮に送り事務所に戻る。
事務所に戻るといつも通りちひろさんがいた。

ちひろ「あ、おかえりなさーい。どうでしたか?」

P「えぇ、まぁ、楽しかったですよ」

ちひろ「……それだけです?」

P「えぇ、そうですが……」

ちひろ「……やっぱりあれをするしかなさそうですかね」

P「あれって何です……?」

ちひろ「いいえ、何でもないですよ」

P「……?」


そしてライブ当日を迎えた。

音葉「凄い数……ですね。さすがに緊張します……」

ライブ会場に集まった観客を見て音葉は感嘆の声をあげる。

P「大丈夫。音葉ならちゃんと出来るさ」

音葉「Pさん……。そうね……」

音葉「見ていて……。私……全力で歌います……」

P「あぁ、見てるよ」


ついにライブが始まり観客の歓声も大きくなる。

そうして音葉も他の子と同様にステージに向かう。

音葉「その、Pさん……。いってきます」

P「あぁ、頑張れ!」


ライブは問題なく進んでいく。
卯月達も相変わらず凄かったが音葉も凄かった。
初めてのライブだというあっという間に観客の心を掴んだのだ。

P「……本当に凄いな」

その呟きすら掻き消されるくらいに会場は盛り上がっていた。


音葉「(今、私は……ステージの上にいる)」

音葉「(夢のように思えたあのステージに……)」

音葉「(以前は音楽を……楽しめなかったけれど、今は……違う)」

音葉「(今は……楽しい。歌うことが……観客を歓ばせることが!)」


いつからだろうか。


音葉「――ッ♪」

その歌う姿に、奏でるメロディに――


――――心を奪われたのは。


思えばそれは初めて逢った時からなのかもしれない。でも、この気持ちは抑えなければならない。
音葉はこれから輝くアイドルなのだから……。


そしてライブは終わった。
だが、ライブは終わったというのに会場はまだ熱気に包まれていた。
やがて音葉たちがこちらにやってくる。

音葉「Pさん、どうでしたか……?」

P「お疲れ様。とても良かったよ」

音葉「ありがとう……ございます」

?「プロデューサー、あたしはどうだったー!」

そんな時背後から声をかけられる。
そしてそのすぐ後に衝撃を感じる。


飛び付いてきたのは未央だった。
ライブだったというのにまだまだ元気一杯のようだ。

P「……未央、倒れたらどうするんだっていつもいってるだろ?」

未央「プロデューサーなら大丈夫大丈夫! それで今日のあたしどうだった?」

P「良かったよ。だからそろそろ降りてくれ。ちひろさんに怒られちゃうぞ?」

未央「はーい」

P「さ、事務所に帰るぞ」

未央「それじゃあ競争しよ! いっち番乗りー!」

そういって未央は駆け出していく。

P「転ばないよう気を付けろよー!」

P「さ、音葉も行こう」

音葉「は、はい……」


事務所に戻り一人屋上で空を見上げる。
事務所内では今頃みんな打ち上げで騒いでいるのだろう。
時々笑い声などが聞こえてくる。

P「どうすればいいんだ……」

重い溜め息を吐く。
さっきから音葉の事が浮かんでは消えていく。

P「担当アイドルに恋をするなんてプロデューサー失格だな……」

そんな時、屋上の扉が開かれる。


やって来たのは音葉だった。

P「音葉……。どうしたんだ……?」

音葉「貴方の音が……見えたから……」

P「そう……か」

心臓の鼓動が早くなる。
口の中も緊張のせいか乾いてくる。
やがて二人の間に沈黙が訪れる。
それは一瞬だったのかもしれないが数十分、数時間のようにも感じられた。


そんな沈黙を破ったのは音葉だった。

音葉「……あの、Pさん。……ありがとう」

P「どうしたんだ急に……?」

音葉「貴方のおかげで……私はまた音楽を楽しめるようになった……」

音葉「私は……心から楽しむ……。一番大切なことを忘れてしまってました……」

音葉「だから、ありがとう……」

そう言って音葉は笑う。
その笑顔を見るだけで胸が苦しくなる。


しかし、音葉の話は続く。

音葉「Pさん。私は……貴方に伝えたい事があります……」

ダメだ。聞いてはいけない。
脳裏で誰かが訴えかける。
でも、それは出来なかった。

音葉「……私は貴方に伝えたい。貴方が好きだというこの気持ちを……」

音葉「だから……聞かせて。貴方の……本当の気持ちを……」

P「っ……!」


断らなければ。
音葉はこれから輝くアイドルなのだから。

P「…………」

P「……ありがとう。嬉しいよ」

P「でも、それはダメだ」

音葉「っ……!」


P「……って言わなきゃいけないのにな」

頭の中ではそう考えていたのに。
断らなければならなかったのに……

P「……好きだよ、音葉」

それは出来なかった。


音葉「え……? あ、え……?」

音葉はというとまだ状況が分からないのか困惑している。
そんな音葉を優しく抱きしめる。

P「プロデューサー失格だな……。アイドルに恋をするなんてな……」

P「でも、もう無理だ。気持ちを抑えられない……音葉が好きだ。大好きだ」

音葉「Pさん……。私、嬉しい……とっても嬉しいです」

そういって音葉の方からも抱きしめてくる。


どれくらいそうしていたのだろうか。
ほんの数秒かもしれないし数分かもしれない。
音葉を離し口を開く。

P「……音葉、これからうちのプロダクションはもっと大きくなっていくと思う」

P「いや、もっと大きくさせていく。だから、音葉との時間も少なくなると思う」

P「大変な事もあるかもしれない……」

音葉「……はい」

P「そうなったとしても一緒に、ずっと頑張っていってくれるかい?」

音葉「……はい!」

音葉は力強く頷く。

音葉「これは貴方と私の奏でるウヴェルチュール……」

そうして一歩踏み出し音葉は振り向く。
そして今までで最高の笑顔でいった。

音葉「そして、最高の歌を……メロディを二人で奏でましょう!」

以上で終わりです。

口調の統一とか出来てなかったりと酷いですね…
なにはともあれ音葉さん誕生日おめでとう。当日に終わらせたかった…

修正ですが>>4

ちひろ「困った顔してどうしたんですか? って、音葉さん寝ちゃったんですね」

ちひろ「困った顔してどうしたんですか? って、音葉ちゃん寝ちゃったんですね」

あ、依頼出してきます

ありがとうございました

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