貴音「王女の悋気」 (45)

貴音(私は961プロ所属アイドルぐるぅぷ、フェアリーの四条貴音)

貴音(近頃、同じフェアリーの仲間であり、私の数少ない友である我那覇響の様子がおかしい)

響「ふんふーん♪」

貴音「響、最近上機嫌ですね。何かあったのですか?」

響「ん? あれ、そんなに楽しそうだった?」

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貴音「ええ。黒井殿に見つかったら、怒られそうな程には……」

響「げげー、それはまずいなぁ……」

貴音(なぜでしょう……友の吉事なら私も喜んで然るべきだというのに)

貴音(響のこの笑顔が、どうしても気にかかってしまう……)

響「実はね、今度765プロの春香って子と一緒に、お菓子作りをする事になってんだー。自分、サーターアンダギーとかなら作れるけど、普通のお菓子はあんま作ったことないから楽しみなんだ! できたら貴音にもあげるから楽しみにしててね!」

貴音「おや、それは真楽しみですね……」チクリ

貴音(またです。響のあの愛らしい口からその名が……)

貴音(765ぷろの『天海春香』の名が出るたび、私の胸が痛むのです……)

貴音(……理由など、とうに分かってはいるのです。ただ、自らそれを認めることができないだけ)

貴音(私は、『天海春香』に嫉妬している)

……

響「でなー、その時黒井社長がさ……」

春香「あははは、あの黒井社長にそんな所があるなんて意外だなぁ」

響「でしょ! 自分、悪いとは思ったけど大笑いしちゃったさー!」

黒井「響ちゃん!」

響「!?」

黒井「こんな所でそんなへっぽこプロダクションの三流アイドルと何をやっているのかな?」

響「は、春香は三流なんかじゃ……」

黒井「シャラップ! 君に課せられたキャラクターというものを理解しているかね?」

響「うっ……」

黒井「君は世間にはクールキャラで売っているのだ。そんな風に明るく談笑する姿をもし見られでもしたらどうなるか、解っているのか?」

響「ご、ごめんなさい……悪いけど、今日はもう帰るよ春香」

春香「う、うん。なんだかごめんね」

響「自分こそ……じゃ、また」タッタッタッタッ


黒井「…………これで良かったのかね、貴音ちゃん」

貴音「ええ、ありがとうございます。黒井殿」

黒井「意外だったよ。君は765プロとの対立について否定的な立場だと思っていたからね」

貴音「そんなことはございません。私も961プロの一員なれば、社長の意向に従うのは当然というものです」

黒井「……ま、そういうことにしておこうか」

黒井「アデュー、貴音ちゃん。君も、キャラクターを崩すような真似は控えることだ」

貴音「……」

……

貴音「響、最近調子はいかがですか?」

響「ん? まぁまぁってとこかなぁ……」

貴音「しかし、少々元気がないように見受けられますが……」

響「うーん、最近春香とあんまし会えないからななぁ」

貴音「……また天海春香ですか」ボソッ

響「ん?」

貴音「いえ、何でも……どうでしょう、これから共に月でも見に行きませんか? 気分転換になりますよ」

響「んー、そうだな。よしっ、行こっか!」ニッ

貴音(ああ、響。響が私の提案に微笑んでくれている……響と共にあるだけで心が温かくなる。響、やはり貴女は私の太陽です)

ヴー、ヴー……

響「っ! 春香からメールだ!」パァァ

貴音「っ!」ズキンッ

貴音(どうして私の時よりも明るい笑顔を見せるのでしょうかどうしてめぇるの一通如きが私の誘いよりも上なのでしょうかどうして私では駄目なのでしょうか月を見に行くなど退屈だったのでしょうかどうすれば響は私のみを見てくれるのでしょうかどうしてどうしてどうしてどうして……)



……

春香「貴音さんがおかしい?」

響「うん。なんだか最近いつもうわの空で、たまにシャキッとしてると思ったらじっと自分の事見ながら何か呟いてるし……」

響「後、自分がどこかに出かけようとするたびに、『誰のところですか?』って怒鳴るんだ……自分、それがちょっと怖くて。元の優しい貴音に戻って欲しいんだ」

春香「うーん、こないだ黒井社長も言ってたけど、貴音さんも響ちゃんのキャラが崩れることを心配してるんじゃないかなぁ。何たって同じユニットのメンバーだし」

響「うーん、何となくそんな感じじゃないんだけど……そうだ、今から二人で貴音を調べてみようよ!」

春香「え、ええ!? そんなことしていいのかなぁ……」

響「だって心配なんだもん。貴音はこっちでできた初めての友だちだし……」

春香「でも、勝手に調べるのはなぁ」

響「お願い! こんなこと、春香以外には頼れないんだ!」ウルウル

春香「うーん、ちょっとだけなら……」

響「ホントか! よーし、そうと決まれば早速出発だー!」

……

春香「ここは?」

響「961プロにある貴音の個室だぞ」

春香「そ、そんなのあるんだ……流石961プロ」

響「貴音んちはトップシークレットだからな。仕方ないからここを調べるぞ!」

響「ちゃんと受付で鍵も借りてきたしな。昔は貴音の部屋でよくおしゃべりしてたから、受付の人も普通に貸してくれたさー」ガチャッ

響「そういえば最近は貴音の部屋に入ってないな……なっ!?」

春香「これって……響ちゃん?」

春香(壁にも、天井にも……響ちゃんの写真がいっぱい。それに、極めつけは……)

春香「ねぇ、その黒いのって」

響「……うん。多分、自分の髪の毛だと思う」

春香(机に大事そうに置かれた黒い束。それはどう見ても、人間の髪の毛)

春香「ん? これ、日記?」

響「それを読めば、貴音がヘンになっちゃった理由が解るかも!」ペラ

春香「ちょ、響ちゃん!? 勝手に読むのはまずいよぉ」

○月○日
 本日の響、いぬ美殿と出社。私が挨拶をすると、はいさいと返してくれる。その後、本日の予定を共に確認。渡したお菓子を美味しそうに食べる響のなんと愛くるしいこと。私の血肉が響と一体になっていく様に、密かに絶頂を迎える。

春香「これって……お菓子に何か……」

響「」サァ……

響「こ、これよりもっと昔を読もう! 貴音がこうなっちゃった原因が解れば……」ペラ ペラ

×月△日
 今日は響が随分と嬉しそうに仕事から戻ってきた。話を聞くと、765プロの天海春香というアイドルと友人になったらしい。彼女との時が大変楽しかったらしく、帰ってきてから天海春香の話ばかり。友の喜びは我が喜びですが、少々妬けてしまいそうです。

響「懐かしいなぁ……これ、765プロのアイドルへの誤解が解けて、春香と友だちになった日だぞ」

春香「この時はまだ普通みたいだね。もうちょっと先を読んでみようか」ペラ

×月○日
 響は今日も戻るのが遅いと思っていたら、どうやら直帰らしい。なんでも、仕事終わりに件の天海春香と食事に行ったとのこと。仕事帰りに響と食事に行くのは、私と響の大切な時間の筈。最近、響の事を想うと胸が苦しくなる。一体私はどうしたのでしょうか?

春香「……これって、もしかして」ペラ

×月×日
 本日、響から天海春香と共に行ったという喫茶店の写真を見せられました。写真には、時限式で撮影したらしく、響と天海春香が肩を組み、仲むつまじげに写っておりました。それを見て、私は近頃のこの胸の痛みの正体に気づいたのです。これは……悋気だと。

春香「……」ペラ

×月・日
 天海春香が憎い。あの女さえ現れなければ、今でも響は私だけの響だったというのに。天海春香が憎い。彼女は日々転ぶという。そのまま頭を割って死んでしまえば良い。天海春香が憎い憎い憎い憎い憎い憎い……

春香「」サァ……

響「これってつまり、貴音が春香に嫉妬してるって事……なのかな」

春香「もうそんなレベルじゃないみたい。これ、貴音さん私のことが本気で邪魔みたいだし、もしかしたら……」

響「た、貴音はそんな酷いことできる奴じゃないぞ! 自分、貴音を説得してくる!」ダッ

春香「ちょっと、響ちゃっ!! って、行っちゃった……」

春香「響ちゃんはああ言ってたけど、この日記……貴音さん、私のこと相当恨んd」ガンッ

バタッ





……

春香「うぅん……はっ! 私」

春香(ここは……961プロの玄関? 私、貴音さんの部屋にいたはずじゃ。それに、この頭の痛みは)ズキズキ

ヴーッ ヴーッ

春香「っ!? な、なんだ。携帯か」

ピッ

春香「!! 響ちゃんからだ!」

『春香へ。心配かけてごめん。あれから貴音と話し合って、やはりアイドルを生業とする者として、他事務所の子と馴れ合うのは良くないって話になりました。今まで仲良くしてくれてありがとう。これからは仕事だけのつきあいでお願いします』

春香「そんな……」

春香「こんなの……こんなのおかしいよ!」ピッ ピッ

春香「お願い響ちゃん、出て!」プルルルル

ガチャッ

春香「っ! 響ちゃん、わt」

『天海春香、貴女も物わかりの悪い方ですね』

春香「!? た、貴音……さん?」

貴音『響は私と歩んでいくと決めてくれたのです。未練がましいのはみっともないですよ』

春香「だ、だっておかしいじゃないですか! 響ちゃんはさっきまで、あなたを説得しようとしてたんですよ!」

貴音『ですから、それが間違いであったと気付いてくれたのですよ。流石は私の響です』

春香「お願いです、響ちゃんと話させてください!」

貴音『生憎ですが、それはなりません。響は今会話のできる状態ではありません。もう数日で、全て終わります故、それまでお待ち下さい』

春香「響ちゃんに何をする気なんですか! 響ちゃん! 近くにいるんでしょ!? 返事して響ちゃ」ガチャン

ツー ツー ツー

春香「……どうすればいいんだろう」



……

春香(あれから一週間。警察に電話しても、あのフェアリーの四条貴音が我那覇響を誘拐監禁しているなんて信じてもらえず)

春香(961プロや、黒井社長自身の所に押しかけても、知らないの一言。というより、本当に貴音さんと響ちゃんがどうしているか知らない様子だ)

春香(そんな状態で迎えた今日の仕事。共演者は、961プロのフェアリー……)

春香(お願い。響ちゃん、無事でいて)ガチャッ

??「ん? ああ、765プロの」

春香「その声、響ちゃん!」

響「何? その馴れ馴れしい態度。自分とそっちのランク差解ってんの?」

春香「ひ、響ちゃん?」

貴音「響、何をしているのですか?」

春香「ッ!!」ビクン

響「あ、貴音ぇ。こいつがなんか馴れ馴れしくってさ」ダキッ

貴音「私共も近頃は売れて参りましたからね。妙な輩も増えるのでしょう」ナデナデ

春香(響ちゃん、貴音さんにベッタリだ……絶対何かあったんだ!)

響「なるほどなー。765プロの! 自分はそんな手には引っかからないぞ。あっち行っちゃえ!」

春香「ひ、響ちゃん!? 私が分からないの? 天海春香だよ!」

響「何なのこいつ? ははーん、さては自分のファンだな。サインしたげよっか?」

春香「響ちゃん!! 私だよ、春香。天海春香!」ガッ

響「うるさいなぁ……知ってるよ、天海春香だろ。お菓子作りが得意で仲間想いで……あれ?」

貴音「響、どうしました?」

響「おかしいな……自分、何か忘れてるような」

貴音「響、日頃の疲れが出ているのでしょう。彼方で少し休んできなさい」

響「う、うん。そうするよ」

春香「響ちゃん! 待っ」

貴音「響は今体調が優れぬのです。お引き取り下さい」

春香「四条さん。あなた、響ちゃんに一体何を……」

貴音「さぁ、何の事やら。しかしこれだけは申し上げておきます」

貴音「響はもはや私だけの物です。貴女の入る余地などありません。これ以上要らぬ干渉をするのなら……」

貴音「今度は本当に、命まで頂戴いたしますよ」




……

春香「それからの話を、少しだけ語ろうと思う」

春香「響ちゃんは、結局私のことを思い出すことはなかった。そしてそのまま私達との勝負に敗れ、フェアリーは解散。フェアリーの我那覇響と四条貴音は、芸能界からも世間からも消えてしまった」

春香「私の手元に残ったのは、響ちゃんの連絡先だけ……」

春香「もうつながらないだろうけど、かけてみようかな……」ピッ

トゥルルルルル……

春香「出るわけ、ないか」

ガチャッ

春香「!!? もしもし、響ちゃ」

貴音「忠告を、破りましたね。さようなら天海春香、今度は永遠に」




おわり

以上です

だいぶ昔に書いてそのままにしてたのを投下させて貰いました。駄作の供養とお考え下さい


以下の作品も、併せて読んで頂ければ幸いです

亜美「765プロ!」真美「七不思議!」&響「貴音に面妖なと言わせとけばいいという風潮?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1392766800

春香「ゲッターロボですよ、ゲッターロボ!」
春香「ゲッターロボですよ、ゲッターロボ!」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1394527173/)

貴音「響、こんなところにいたのですか」
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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1397488629/)

亜美「あなたは、好きですか?」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52079915.html

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愛「ゲッター!!」絵理「ロボ?」涼「ぎゃおおおおおおぉぉん!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400579061/)

亜美「誕生日ねぇ……」
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