男「僕の仕事はツイッター」 (75)


女「おっしゃってる意味がよくわかりません」

男「だからそのまんまの意味だよ」

女「つぶやくことがお仕事って、ちょっと理解できないです」

男「ていうかキミ、大学生だよね? 僕のこと知らないの?」

女「そうですね。はい、知らないです」

男「極めて特殊なタイプだね、キミ」

女「はい?」

男「いまどきの若い子で僕のこと知らないって、かなりめずらしいよ」


男「ツイッターはやってないの?」

女「登録はしましたよ。友達にすすめられて。でもすぐやめちゃいました」

男「僕は有名なツイッタラーでね」

男「商品レビューや時事ネタ、様々なことをつぶやいてお金をもらってるんだよ」

女「ついったらあ?」

男「ツイッターをやってる人のこと。ホントに知らないんだね」

女「ええ。ていうか、ツイッターで収入っていうのが意味わかりません」

男「そこらへんはググれば、すぐわかるよ」

女「はぁ」


女「その有名な『ついったらあ』さんが、休日の大学になにしに来たんですか?」

男「写真といっしょに学食のことをつぶやいたらウケがよかったんだ」

男「学食は安いし、誰でも食べられるしね」

女「じゃあ今日は学食の紹介に?」

男「そういうこと」

女「では、どうして私に話しかけたんですか?」

男「ごはん撮るときに、僕もいっしょに写してほしいんだ」

女「私に写真を撮れってことですか?」

男「もちろん、つきあってもらうんだ。奢らせてもらうよ?」


女「べつにいいですけど」

男「なんか反応が微妙だね」

女「まあ、お笑いにあんまり興味ないんで」

男「……キミ、ぼくをつぶやきシローかなにかと勘違いしてない?」

女「ちがうんですか?」

男「……これが僕のアカウント画面。フォロワー数見てよ」

女「250万人。これ、多いんですか?」

男「日本では有吉さんに次いで、二位だ」

男「さらに言うと、孫正義をおさえて二位だ。すごいでしょ?」

女「たしかにそう聞くと、すごいって思います」


男「さあ、僕のすごさがわかったところで学食に行こっか」

女「ひとつ聞いてもいいですか?」

男「なに? できるかぎり質問には答えるよ」

女「なにをつぶやくんですか? 『学食なう』とか?」

男「調子こいた大学生じゃあるまいし、『なう』とか使わないし」

男「僕は超有名なツイッタラーだよ?」

女「そうは言っても、ただつぶやくだけでしょ?」

男「本気で言ってるのかい?」

女「わりと真剣に。だいたいツイッターって、たんなるSNSですよね?」

男「近いちうちにツイッターは教材として、導入されるはずだよ」

女「え? どういうことですか?」


男「ツイッターのつぶやきって140文字で限定されてるよね」

女「あ、そうなんですか」

男「そーなの!

男「まとまった文章を書く練習に、ツイッターは適してるんだよ」

女「それ、べつにツイッターじゃなくてもいいんじゃあ……」

男「それだけじゃない。ツイッターには目をみはるようなツイートがあったりするしね」

女「ついーと?」

男「つぶやきのこと。まあ、とにかくそういうことだから」

男「文章のお勉強に使えるって、改めて注目されてるんだよ」

女「はぁ」


男「しかし休日でも、大学の食堂には人がけっこういるんだね」

女「自炊するのが面倒な人は、わざわざ学食で食べるそうですよ」

男「へえ。まあたしかに破格の値段だもんね」


 「え? ちょっとツイッタラーの『パツキン』じゃねあれ!?」

 「ウソウソっ! え? マジじゃんすげー」

 「あたしフォローしてるよ!」

 「パツキンのお兄さんも、かなり有名なツイッタラーなんでしょ?」


男「ね? けっこう有名でしょ、ぼく」

女「わかりましたから、早く注文しましょうよ『パツキン』さん」


男「この学校の竜田揚げ定食が、320円で大好評らしいね」

女「そうらしいですね。わたしは知りませんけど」

男「学食利用してないの?」

女「お弁当、もたせてもらってるんで」

男「ふーん……っと、席はここでいっか」

女「そういえば。お兄さんもツイッターしてるんですか?」

男「そだよ。アニキは『SHIKKIN』って名前でやってる」

女「しっきん?」

男「うん。僕ほどじゃないけど、まあまあ人気のあるツイッタラーなんだ」


男「ツイッタラーって単語は最近だと、
  ツイッターで生計を立ててる人のことを指す場合がおおいんだよ」

女「そんな人があなた以外にもいるんですか?」

男「本当にごくわずかな人数だけどね」

男「さっきも言ったとおり、僕のアニキもそうだし」

男「ほかにも……そうだな。
  この人なんかは、最近人気出てきてるツイッタラーだな」

女「わわっ。なんですかこのいやらしい画像は」

男「言っとくけど、これは僕のツイートじゃないからね」

男「これはある女性ツイッタラーのつぶやきなんだ」

女「つぶやきって、画像じゃないですか」


男「いろんなツイートをするって、さっき説明したでしょ」

男「最近注目が集まってるホンビノス貝について、つぶやいんだよ」

女「ほんび……なんですかそれ?」

男「安くておいしい貝。あとは説明が面倒だから自分で調べて。」

女「はぁ。それで、その貝がどのようにそのエッチな画像と結びつくんでしょうか?」

男「その画像を僕にツイートしてきた人は」

男「ツイッター界の『檀蜜』って呼ばれてる人なんだよ」


mitsudan 私はホッキ貝が好きです
約9間前 1919人がリツイート
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mitsudan ホッキ貝って響きってオトコの人のアレのぼ●きと似てますよね
約9間前 4545人がリツイート
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mitsudan え?アワビがどうかしましたか?
約8間前 801人がリツイート
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mitsudan pic.twitter.com/eroShizuKa
約8間前 4545人がリツイート
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mitsudan pic.twitter.com/eroGiAnt
約8間前 4545人がリツイート
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女「後半からはエッチな画像貼ってるだけで、つぶやいてすらいないですね」

男「この僕をやりこめるなんてたいしたもんだよ」

男「見事に彼女のペースにもってかれた。完敗だった」

女「私にはちょっと理解できないです」

女「それにしても」

女「パツキンさんってけっこう反感買いそうなこと、つぶやいてますね」

男「どれのこと?」

女「この生活保護のこととか。税金問題のこととか」

女「『ニートに物申す』みたいなのとか」

女「お前が言うなって言われませんでした?」

男「……それはどういう意味かな?」


男「こういうイチブの人間の反感を買うようなツイートはね」

男「わざとつぶやいてるんだよ」

女「なんでですか?」

男「頼まれてんだよ、おエライ人たちに」

女「頼まれてる? おエライ人?」

男「まあ細かいことはいいんだよ」

男「どうしてこの手のつぶやきをするかっていうと」

男「こうやって叩かれるツイートをすることで」

男「当然僕を叩く人がいっぱい出てくるでしょ?」


男「日々の生活でフラストレーションをためた人間のために」

男「僕が捌け口になってあげてるってわけ」

女「ああ、あなたを叩くことでストレス解消になるってことですね」

男「それに僕のツイートに対して、リプライを送れば注目されるしね」

男「自分の意見をみんなに伝えることができる」

女「なんだかコワイですね、ツイッターって」

男「そう? 批判だけで満足して終わってくれるって、よくない?」

女「と、言いますと?」

男「本当にコワイ存在っていうのは、批判から次のステップに移れる人間だよ」

男「批判することで、それに満足して終わる人間なんかは全然コワくないね」


女「まあツイッターでつぶやくだけなら」

女「なにもしないのと変わらないってことですね」

男「そうだよ。批判しただけじゃ、なにも変わらない」

男「それがわからない連中のストレス解消の道具になってあげる」

男「それも一流ツイッタラーの仕事だよ」

女「ドヤ顔してますけど、あなたもつぶやいてるだけですよね」

男「失礼なことを言うな」

男「僕のつぶやきは、経済にさえ影響を与えるんだぞ」

女「はいはい、そうですか」


女「でもいつか、背後から誰かに刺されたりするかもしれませんよ?」

男「僕は一流のツイッタラーだよ?」

男「すでに辞世の句は、考えつつあるよ」

女「まだ完成はしてないんですか」

男「うん。140文字に収まらないんだよね、むずかしい」

女「それ辞世の句じゃないですよ、絶対」

男「……僕には将来、ひとつ夢があってね」

女「夢?」


男「そう。辞世の句をツイートして、それから死ぬっていう夢だよ」

女(くっだらねえ)

男「とりあえず定食といっしょに写真撮ってくれる?」

女「わかりました。……これでいいですか?」

男「どれどれ。んー、ちょっと撮りなおそうか」

女「なんでですか?」

男「だって僕の顔がなんか変だもん」

女「もとからでしょ」

男「え?」

女「いえ、なんにもです。じゃあもう一度撮ります」


女「で、結局一枚撮るのに二十分かかったんですけど」

男「いやあ。キミが写真撮るの下手だからさあ」

女「ていうか、学食の紹介ならあなたが写る必要なくないですか?」

男「それじゃあダメだろ」

男「僕と写ることによって、この定食に新たな価値が生まれるの」

女「わかりましたから、早く食べてくださいよ」

男「いや、これからツイートの文章を練らなきゃならない」

女「いちいち面倒なんですね」

男「当然。このつぶやきに日々の生活がかかってるからね」


男「キミ、このあと暇?」

女「仮に暇だったとしたら?」

男「ちょっとつきあってくれない?」

女「なににですか?」

男「決まってるでしょ。僕の仕事に、だよ」

女「仕事? なんで私が?」

男「キミはどうも僕のことを誤解してるみたいだからね」

男「おおかた、僕をつぶやくことしか能がないクズだと思ってるだろ?」

女「まあそれに近いことは、思ってますね」


男「ツイッタラーという仕事が、いかにやりがいがあるか」

男「それをキミに教えてあげよう」

女「今、青天のイナズマのように用事が現れました」

男「よく意味がわからないけど、もう決定だから」

女「えー」

男「とりあえず僕が定食食べて、つぶやいたら行こうか」

女「どこへ?」

男「病院」


女「わざわざタクシーで送ってくださるのは、ありがたいんですが」

女「本当に病院に向かってるんですか?」

男「そうだよ」

女「『手術なう』みたいなつぶやきをしに?」

男「ちがうわ。お見舞いだよ、お見舞い」

男「僕のファンの小学生がね、明日手術なんだって」

女「はぁ」

男「だから、その子を勇気づけに行くんだよ」

眠る


女「よくわかりませんけど、ついていけばいいんですね?」

男「そういうこと」

女「ところで、実はもうひとつ気になることがあります」

男「なに?」

女「ご両親には、あなたはツイッタラーだって言ってあるんですか?」

男「そりゃあね。これだけ有名だと隠せないしね」

女「反対されなかったんですか?」

男「最初はそりゃあ、めちゃくちゃ言われたよ」


女「そうですよねえ。なんか安心しました」

男「なんで?」

女「だって私もあなたのご両親の立場だったら、反対しますもん」

男「なんでさ?」

女「わざわざ説明しなくてもわかるでしょう」

男「いつの時代も理解されないよね。新しいことへの挑戦って」

女「そういう問題じゃないと思うんですけど」

女「だいたいどうして、ツイッタラーなんて仕事を選んだんです?」

男「人の下で働きたくなかったから」


女「それだけ?」

男「十分だろ。僕の先輩も同じ理由で起業したぞ」

男「おっと、ついたね。ここが例の患者さんがいる部屋だ」

女「お見舞いって、本当にお見舞いなんですよね?」

男「当たり前だよ。ほかになにするの?」

女「……そうですよね。私の考えすぎですよね」

女「そのお見舞いには、私もたちあっていいんですか?」

男「いいけど。ちょっとまって」

女「……なんでここにきて、スマホをいじりだすんですか?」


女「あの、もう十分たったんですけど」

男「……」

女「すみませーん。聞いてますかー」

男「うん、大丈夫。それじゃあ病室に入ろっか」



女「失礼しまーす」

小学生「……ぐすっ……うぅ……」

女「あ、あれ? 女の子、泣いてますよ」


小学生「パツキンさん」

男「うん」

小学生「パツキンさんのおかげで、手術受けること、決めました」

男「そうか。それはよかったよ」

小学生「本当にありがとうございます」

女「え? え?」

小学生「パツキンさんの私へのツイートに、勇気もらいました」

男「僕のつぶやきがキミに届いたんだね」

女「あの、なにが起きてるのか教えてもらっていいですか?」


男「この病室に入る前に、ツイッターで必死にこの子を説得してたんだよ」

男「手術は成功する。だから受けるんだって」

女「ツイッターで?」

男「うん」

女「部屋に入る前の十分の間のことですか?」

男「そうだよ」

女「なんで直接説得しないんですか?」

男「だって僕、ツイッタラーだもん」

男「つぶやかなきゃダメでしょ」

女「……」


小学生「あの、よかったツーショットおねがいします!」

男「それぐらいお安いごようだよ。さっ、撮って」

女「私が撮るんですか?」

男「ほかに誰がいるんだよ」

女「……わかりましたよ。はい、じゃあ撮りますよ」


女(そして写真を撮って、私たちは病室をあとにした)

男「どうだい? ツイッタラーの仕事もバカにできないでしょ?」

女「あの、さっきの子はなんの手術なんですか?」

男「痔」

女「痔って……肛門の?」


女「痔の手術って、予想外にあっさり終わりますよ」

男「そうなの?」

女「ええ」

男「いや、でもそういう問題じゃないじゃん」

男「彼女、小学生なんだよ? 簡単な手術でもコワイに決まってるでしょ」

女「まあそうかもしれませんけど」

男「ていうか痔の手術、受けたことあるの?」

女「……女の子のお尻はデリケートなんです」

男「めっちゃ聞きたいその話。ていうかツイートしたい!」

女「ふざけんな」


女「これで今日のお仕事は終わりですか?」

男「いや、これから東急ハンズとか、スーパーとかに行く予定だよ」

女「そんなとこで、なにするんですか?」

男「ツイッターにつぶやくネタを探しに行くんだよ」

男「商品レビューとかもそうだし、旬のネタとかも知らないとね」

女「いろいろとしてるんですね」

男「僕の支持者は八割が十代なんだけどね

男「主婦の人で僕を応援してくれてる人とかもいる」

男「そういう人には鮮魚ネタは重宝されるんだよ」

女「ああ、さっき言ってたホンビノス貝とかの話ですね」


男「ツイッタラーは、ネタを見つけるのが一番大変だからね」

男「ネタを見つけたら見つけたで、140文字という縛りが待ってるし」



中年男性「あっ。パツキンさんじゃないですか」

男「マモルさん! なんであなたが病院に?」

中年「花粉症で鼻を噛みまくってたたら、中耳炎になっちゃって」

男「ああ、じゃあこれから耳鼻科ですか」

中年「いやあ、お恥ずかしい。あ、そういえば新作できましたよ」

中年「今回のポエムはなかなかいいデキですよ」

男「ちょっと! こんなところでやめてくださいよ」

女「?」


男「とりあえずポエムについては、ラインで送ってください」

中年「わかりました。ちなみにそちらの方は?」

女「あ、どうも」

男「彼女は僕について知りたいって、ついてきた女子大生です」

中年「さすが人気者。女子大生を磁石のように引き寄せるなんてね」

女(この人、さらっと嘘つくなあ)

男「じゃあ僕らはこれで失礼します」

中年「はい。さようなら」


女「さっきのサングラスでロン毛のおじさんは誰ですか?」

男「その前に」

女「なんです?」

男「さっきの僕とマモルさんの会話聞いてた?」

女「ああ、ポエムがどうとかってヤツですか」

男「やっぱり聞いてたか」

男「彼はライターをやってるんだ」

男「ちょっと前の話なんだけど、つぶやくネタに困ってた時期が僕にもあってね」

男「そんな僕に、自分のポエムを使ってくれって言ってきたのが彼だ」

女「それってつまり……」


男「まあ僕のゴーストライターにあたるのかな、あはは」

女「つぶやくのにゴーストライター使ってるんですか?」

男「うん」

女「おかしいでしょ」

男「なにがおかしいんだよ! 僕はツイッタラーだぞ!」

男「つぶやきは、僕のふところに入るお金に変わるんだよっ!」

女「……マモルさんにはお金、あげてるんですか?」

男「もちろん。マモルさんだってがんばってポエム作ってるからね」

男「中耳炎の痛みとたたかいながら」

女「くるってるよ、絶対」


男「ふーむ。どうもキミは、なかなかの変人らしいな」

女「いえ、あなたには絶対負けると思います」

男「まあ僕もツイッター界のカリスマとは呼ばれてるけど。
  リアル世界じゃ、まだまだ未熟者ってことか」

男「……わかった。今日はここで解散しよう」

女「もういいんですか」

男「ああ。今日はつきあわせて悪かったね」

女「ある意味いい経験ができました」

男「ただ、ひとつおねがいがあるんだ」

女「おねがい?」


女(頼まれごとの内容を聞いた私は、彼とわかれて帰宅した)

女(で、現在就寝前。パソコンでツイッターをいじっていた)

女(なんか知らないけど、パツキンさんにツイッター登録しろって言われて)

女(現在やってる。めんどくさ)


女「っと、これでいいのかな。IDは『matsumoto  inaba』でいっか」

女(で、パツキンさんにアカウントのことをツイッターで伝える、と)

女「うわっ、もう返事がかえってきた」


Matumoto inaba ツイッター登録しましたけど
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PATUKIN もうめっちゃ待ってたよ!
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Matumoto inaba それでいったいなんの用なんでしょうか?
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PATUKIN どうしてもキミに伝えたいことがあったんだよ!!
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女「これツイッターってことは、みんなに見られてるんじゃあ……」

女「まあ私は個人情報出てないからいいけど」

女「……ん?」





PATUKIN 今度の休日僕とデートしようぜ(わあおっ!Twitterで言っちゃったー!!)
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Matumoto inaba 遠慮しておきます
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PATUKIN またまたぁ!遠慮しなくていいよ!)
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Matumoto inaba いえ、気持ちだけ受け取っておきます。私、明日も一限からなんで寝ます。おやすみなさい。
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PATUKIN いやいやwwwwwwwそういうのいいからwwwwwwww
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女(私はパソコンを閉じて寝た)


女(そして次の日。学校に行くさいちゅうの電車で)

女(Yahoo!ニュースのトップにこんな記事が出ていた)

女(『人気ツイッタラー、ツイッターでデートに誘うもフラれる』)

女「なんかすごいなあ」



女(そして一限を終えて、ひとりで食堂でごはんを食べていると)

男「ちょっと!」

女「うわあぁっ!?」


女「なんであなたがここに?」

男「こまかいことはいいんだよ」

女「けっこう重要なことだと思いますけど」

男「それよりも! なんで僕の誘いを断ったんだよ!?」

女「……」

男「な、なんだその目は……」

女「べつに。いろいろ言いたいことがあります。言いませんけど」

女「どうしてツイッターで誘ったんですか?」

男「だって僕、人気のツイッタラーだもん」

女「……」


男「ツイッターでこそ、僕の魅力ははっきされるんだよ」

女「……」

男「あっ。もしかして昨日の、マモルさんがツイートしたと思ってる?」

男「あのつぶやきは僕の言葉だよ!」

女「知ってますし、あんな内容にゴーストいらないでしょ」

男「じゃあどうして!」

女「いろいろ言いたいことありますけど」

女「とりあえず初デートのお誘いに、ツイッター使うってどうなんですか?」


男「今どき普通だよ。SNS経由のお誘いって」

女「あっ、そうなんですか」

男「そうだよ。常識だよ、常識」

女「……って、そういう問題じゃありません」

女「やっぱりそういう大切なことは。
  直接その人にあって、言うべきですよ」

男「キミ、考え方が古風なんだね」

女「そんなことありません」

女「言いたいことなら、つぶやいてないで声を大にして言えばいいじゃないですか」


男「お、おう」

女「万単位でつぶやく言葉があるなら、誰かに言えばいいのに」

男「ツイッターで誘ったのをそんなに怒ってるの?」

女「いえ、まちがいなく怒ってはいないです」

女「ただ呆れてるだけです」

男「で、でも僕、けっこう金持ちだし玉の輿に乗るチャンスだよ?」

女「あなたとおつきあいするのは、まちがいなく無理です」

男「なぜ!」

女「ツイッター仕事にしてる人とつきあうなんて、両親が許してくれません」


女「じゃあ、そういうことなんで」

男「待ってくれ!」

男「もうデートしてくれとは言わない! だけど教えてほしい」

男「こんな僕がキミとデートをするとしたら、いったいどうすればいい?」

女「うーん。そうですね」

女「全部自分がやったんだよと叫べるお仕事をしてくれる、ってことですかね」

男「全部自分がやったんだよとさけべるお仕事、か」

女(ノリで曲の歌詞を言っちゃった……)

女「えっと、ゴーストライターを使うなんて論外ですからね」


男「それを言われるとかなわないな」

女「……」

女「ああー、ひとつだけ。あなたにお礼したいがあります」

男「僕にお礼?」

女「あなたのおかげで仕事について、考えてみようと思いました」

男「ほほう」

女「じゃあ、さようなら」


女(これいこう、私と彼が会うことはありませんでした)

女(しかし、二年後。私は彼をテレビで見つけることになります)


母「あら。この人って有名な人なんだっけ?」

女「んー?」


男『今回の選挙に立候補しましたパツキンこと山田次郎です!』


女「……え?」


男『ある女子大生の言葉で僕は目覚めました!』

男『ツイッターをやってるだけじゃダメなんだって!」

男『ツイッタラー代表として、今ツイッターから飛び出します!』


女「……」


母「ツイッターでつぶやくのが仕事の人が立候補なんて、すごいねえ」

女「……そうだね」

母「どうしたの? 顔がひきつってるけど」

女「いやあ、世の中ってよくわかんないなあって思ってね……」

母「はい?」

女「ううん、こっちの話」



 あらためて私はお仕事というものについて、考えさせられましたとさ。
  


 おしまい


ここまで読んでくれた人ありがとうございました
みんなもツイッターのやりすぎには注意

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