怜「……悩み相談のアルバイト?」 (77)

キレる怜っていうか何ていうか……



怜(インターハイが終わって、残りの夏休み……金がない。私だって花の女子高生や。やりたいことはたくさんある)

怜(体力を使わないかつ、自分のペースで出来るバイトを探すためにタウンワークを開いたんやけど……)

怜「なんやこれ」

怜(悩み相談のアルバイト。時給950円、冷暖房完備ドリンク食事付き)

怜(要は適当に相槌打っとったらええんやろ?)

怜「やらん手はないで」

怜「もしもし、タウンワークを見てお電話さして頂いたーー」

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怜(バイト初日。話を聞くだけやからっていきなり個室で1人待たされてる)

怜(お客さんが話やすい様とトラブル対策にマジックミラーで私の姿は見えへん)

怜(お客さんからしたら返事が返ってくる壁と話してる感覚なんやろな)

「失礼します」

怜(…………なんでや? ここは大阪やで)

菫「よろしくお願いします」

怜「……ええ。早速ですが、どうかされましたか?」

怜(何で白糸台の部長が来てんねん? 何で知ってるやつの悩み聞かなあかんねん)

怜(落ち着け私……これはアルバイトや。割り切れ)

菫「部活の大会で対戦相手に惚れてしまった人がいるんだ」

怜(インターハイで? 泉か? アイツもやるやん)

トキで短編やるってたやつかな

>>4あいそうです


菫「何とかデートに誘いたいんだが、その、口実と言うかなんと言うか……」

怜(……デート? そんなん私もしたことないから分からんわ。初日、一発目でピンチとか笑われへんで……何で会話は一巡先が見えへんねん)

怜(……ここは当たり障りのない対応で切り抜ける)

怜「後輩の育成の為に練習試合を組みませんか? とか、言えばデートではないけど、会えませんか?」

菫「私は二人でデートがいいんだ。うちの部活に茶化す奴が二人ほどいるからな」

怜「そうですか……大変ですね」

菫「ああ。それで、どうやってデートに誘えばいいのか力を貸してくれないか?」

怜「勿論です」

怜(泉やったら言うたら普通に来るんちゃうか?)

怜「なら、普通に電話すればいかがですか? 共通の話題もあることですし」

菫「いや、連絡先も知らないんだ」

怜「はい? なら、尚更試合を入れるべきかと」

菫「いや、それは私も分かってる。だが、こればかりは知られたくないんだ」

怜「私だって万能じゃないんです」

菫「そこをなんとかだな……」

怜「わ……私だって出来ることと出来へんことがあんねんボケェ! 自分の我が儘が何でも通ると思っとんちゃうぞ!」

菫「なっ……」

怜「惚れた女落としたいんやったら恥くらい捨てんかい!」

怜(…………やってもうた……クビ覚悟せな)

菫「…………そうだな。私が間違っていたよ。早速阿知賀に試合申し込んでくる。ありがとう」

怜(阿知賀かい! ……後で玄ちゃんに訊いとこ。別に興味あるとかやないで、アフターケアやアフターケア)

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怜(あれから数時間。悩みとは聞くだけでも楽になると知った)

怜(白糸台さん以降はまともな客しか入らず、その日は終わった)

怜(で、次の日や)

淡「で、どう思う? 酷くない?」

怜(どうやら弘世菫が後輩に言ったらしい。話を聞いてくれる店があると)

怜「どないもこないも……」

怜(どうやら先輩が隠していたお菓子を食べてしまったらしい)

怜「ここは悩みを吐く場所であって愚痴を言う場所じゃありません。まあ、酷いとは思いますね」

淡「でしょ? どうすればいいかな」

怜「わさびでも混ぜておけばいいんじゃないですか?」

淡「……ワルだ」

怜「これでこの話は終わりです。悩み、聞きますよ?」

淡「ん~強いて言うなら、先輩が引退したから戦力の補強をどうするかかな」

怜(見た目と口調はアホっぽいのに考えてるやん。ま、この子が悩む必要はないと思うけどな。白糸台やし)

怜「まあ、それはどこもそうじゃないですか?」

淡「そうだけど、先輩の穴は私が埋めるとして、私の穴を誰が埋めるの?」

怜(知らんわ。そんなもん監督に任せろや)

怜「後輩を育成するしかないですよ」

淡「えー、面倒じゃん。何で私がしないといけないの?」

怜「あ? ……貴女の高校の未来の為に我慢しましょうよ」

怜(…………弘世といい、大星といい……白糸台は何でこうも……)

淡「やだよ。私はやりたいようにやるの」

怜(……もうええわ)

怜「小娘が調子に乗っとんちゃうぞ……戦力は増強したい、けど私は好きにしたい? んなもんまかり通るかボケェ!」

淡「何? 説教?」

怜「お前が何してきたかは知らんけどな、先輩を見てきたんやろ? お前は先輩のやったことを否定するつもりか?」

淡「そんな……つもり、じゃない」

怜「泣いたら済むと思うなよ? お前がやりたいように出来たのは誰のお陰や? なら、お前が次の後輩をサポートしたれや!」

淡「……はい」

怜「約束やで。応援してるからな。ほな、終わりや」

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(あれから数日後、大星から手紙が来た。何でも同級生に教えてあげる姿を見た先輩が褒めてくれたらしい)

「失礼します」

怜「はい。よろしくお願いします」

怜(そら、来るやろうなぁ……)

照「よろしく」

怜(チャンピオン。ま、する事は変わりないわ)

怜「どんな、お悩みが?」

照「実は……腕が逆回転しかしなくなったんです」

怜「……はい?」

怜(回転言うたら、あれか? あのツモか?)

怜「逆回転で何か不自由でも?」

照「実は麻雀の時に使う技何ですけど、牌を吸い付けるんですよ」

怜(……わけわからん)

照「それが、逆回転ですから私が吸い付けられるんです」

怜「それはお気の毒に」

照「髪の長い後輩の髪も吸い込んでしまったり大変なんです。どうすればいいですか?」

怜「使わなかったらいいじゃないですか」

照「しかし、あれが魅せ技と言うか……」

怜「……魅せ技ですか」

照「はい。あれがないと私は……」

怜「麻雀が弱くなったりですか?」

照「いえ。でも、現状は牌が吹き飛ばされてチョンボになります」

怜(逆回転なだけで、そんなこと可能なんか?)

怜「原因とか分かりますか?」

照「わさび入りのケーキを食べたことですかね」

怜(ごめん! ごめんチャンピオン……それ、私が大星に言ったことや)

怜「……何でもありですね」

照「どうしよう。明日さ……妹と麻雀する約束しているのに」

怜「早急に解決策を考えましょう」

照「解決策は分かってます。体内のわさび分が抜ければ戻ります」

怜「それなら、延期してもらえばいいんじゃないですか?」

照「いや、妹に迷惑かけさせたくないんです」

怜「いや、チョンボ連発する方が迷惑でしょう」

照「どうにかして体内からわさびを取り除く方法はないですか?」

怜「いや、ちょっと……」

怜(荒川辺りなら出来そうやな)

照「何とかならないですか?」

怜「ならないです」

照「……妹に迷惑を「ストップ」

怜「……お前もか? お前も何も妥協したくないんか?」

照「いや、だから「喋るなや」

怜「ええから聞けや。家族なんやったら迷惑かけろや! 何で、そんなんも分からんのや? 姉が妹に気を使うように、妹も姉を気遣うんや。そんなんも分からんのか!?」

怜(私に姉妹はいないけど)

照「そんなことない。分かっています」

怜「なら、話して待ってもらえや! ほんで、お詫びにケーキの1つでも買ったれボケナス!」

照「……分かりました」

怜「頑張りや、お姉ちゃん」

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何がしたかったのだろう……

怜(何でも、たまに私が怒鳴ることをバイト仲間は知っているらしい)

怜(それを園城寺節なんて呼んでいることも聞いた)

怜(……私は感情の赴くままに話してるんやけどな)

健夜「あのですね」

怜(何でグランドマスターが来てんねん……おかしいやろ)

健夜「友達からアラフォーアラフォー言われるんですよ」

怜「アラフォーなんでしたらしょうがないかと」

健夜「サラサーです。そんなに老けて見えるかなぁ」

怜「そんなことないですよ」

健夜「そっか。ありがとうございます」

×サラサー
○アラサー

怜(なんやこの人。まともに仕事できるやん。白糸台の連中よりよっぽどやりやすいで)

怜「いえいえ」

健夜「けど、婚期はまずいですよね」

怜「魅力的な人が必ず見つかりますよ」

健夜「そうかな。自信もっていいかな?」

怜「ええ。まだお若いのですから」

怜(まぁ、私の方が若いんやけど)

健夜「若いだなんて……けど、何でアラフォー言うのかな」

怜(そこに戻るんかい!)

怜「弄ってるだけでしょう」

健夜「分かってるけど、何て言うか、ね?」

怜「ね? じゃ分からないですよ。具体的に言っていただかないと」

健夜「少し傷付くんですよね。老けて見られてると思って。冗談なのは分かってるんですけど」

怜「止めてと言ったらいいじゃないですか」

健夜「……出来たら苦労しないよ」

怜「……」

健夜「あーどうしよう」

怜「……知らんが…………それは自分でお考えください」

怜(間違えているお客さんが多いけど、私の仕事は話を聞くことや。アドバイスすることやない)

健夜「自分で考えても分からないから聞いてるんですよ」

怜「先に言っておきます。すんません」

健夜「……はい?」

怜「やかましいねんアラサー! アンタをおだてるのが私の仕事やないで。大体、ホンマにアラフォーに見えるんやったらそんな弄り方せんわダボ」

健夜「ちょっ……」

怜「婚期? 知らんわ。どうせあれやろ? 待ってるだけで自分から探そうともしてへんのやろ!? んなもん一生かかっても結婚できへんわ!」

健夜「……そうだよね。うん」

怜「何凹んどるんや!? 自分を磨けって言ってんねん! んなことも分からんのか!?」

健夜「自分を磨く?」

怜「せや。自分から魅力的になろうと努力せえ。少しは世界が変わって見えるやろ」

健夜「……私が間違ってました」

怜「アラフォーになるときは世界一幸せなアラフォーになるんやで? 結婚式は呼んでや」

怜(あかん……フォローはしたけど、日本最強に説教してもうた……消されるんちゃうか?)

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怜(……特に何もなかった)

優希「最近少し太ってきたけど食べる量が減らせないじぇ」

怜「……一応聞きますけど、努力はしましたか?」

優希「当然だじぇ」

怜「なら、運動は?」

優希「全くだじぇ」

怜「それが原因ですよね」

優希「文化部の辛いところだじぇ」

怜「そうですね。でも、頑張りましょう」

優希「うーん……頑張らなくても痩せる方法はないのか……タコス我慢するのは無理だじょ」

怜「確かに食べないというのは体にも心にも良くありませんからね。ちなみにどれくらい食べはるんですか?」

優希「朝、タコスタコス、昼、タコスタコス、夜、タコスタコスタコスだじぇ」

怜(どんなけタコスまみれやねん……)

怜「それだけ食べるのでしたら、タコスを抑えましょうよ」

優希「それは出来ないじぇ」

怜(きっぱりと言い切るんか。何かタコスに思い入れでもあるんか?)

優希「タコスが切れると私自信がタコスになる!」

怜「…………心配した私が損やったわ。アホちゃう自分」

優希「お姉、さん?」

怜「聞いとったらタコスタコスタコスって……小便までタコス臭いんちゃうかタコス女! 大体、言わせてもらうけど、何やねん自分かタコスになるって!」

優希「いや、それは……」

怜「お前あれやろ? 中二病抜けきってないやろ? だじぇとかわけわかん語尾付けてキャラ作りか!? 寒いねん!」

怜「痩せたいんやったらタコス我慢せぇクソチビ!」

怜(私も病弱美少女キャラあるんやけど……棚に上げとこ。どうせ向こうから見えへんのやし)

怜「仕舞いにはタコスになる? んな寒いボケに誰が突っ込むねん!? タコス抑えろ! 嫌なら勝手に太っていけや!」

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怜(少し気が付いたことがある。ここに来る雀士はおかしい人間しかいない。何かを対価に力を手に入れたとしか思われへん壊れっぷり)

怜(大体、大阪やのに各地から何で来るんや? 有名なんか?)

怜(ま、ええわ。お客さんの相手せな)

久「付き合ってもないのに束縛とかもう嫌になるわ」

怜(何でも付きまとわれるらしい)

怜「私より警察に相談するべきかと」

久「無理よ。個人的にも部活的にも付き合いがあるから」

怜「しかし、実際迷惑はしてるのですよね?」

久「そうよ。口説いてる最中に割って入られるのは困るわ」

怜「……難儀ですね」

怜(何でや? 何で私の客だけこんなんばっかやねん)

久「悪い子ではないのだけど」

怜「なら、その子一本でいいじゃないですか」

久「嫌よ。私はまだ遊びたいの」

怜「はぁ……」

久「あっそうそう、この前北海道いったんだけどねーー」

怜(聞けば北海道、岩手、東京、長野と女を抱きながら往復しらたらしい)

怜(末恐ろしい女やで)

久「ま、今度は鹿児島辺りからスタートしようかしら」

怜「いつか刺されますよ」

久「その時はその時よ」

怜「なら、私は何も言いませんし、言えません」

久「あら、意外と無難な人なのね」

怜「まぁ……」

久「どう? 今度遊ばない?」

怜「仕事上、姿を知られるわけにはいけませんので」

怜(この女に引っ掛かったら私の人生は狂うわ)

久「固いわね。特例くらい認めてよ」

怜「はぁ? お客さん、要件はそれだけならお帰り下さい」

久「今、悩みが出来たわ。貴女をどうやったら連れ出せるか」

怜(何なんや……)

久「ね、いいでしょ? 奢るわ」

怜「魅力的ですが遠慮しておきます」

久「連れないわねぇ……ケチ」

怜(ふてくされんやな)

怜「諦めて下さい。私も刺されたくないので」

久「そう。残念。また来るわありがとう」

怜「まいど」

怜(……勝てる気せんわ)

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咲「……」

怜(参った。非常にまずい)

咲「それで、怒鳴って気がすんだの?」

怜(いつの間にか立場が逆転してもうてた)

怜「……すんません」

咲「誠意を見せてよ」

怜「どないすればええですか?」

咲「お尻の穴に麻雀牌突っ込むくらいしてくれないと」

怜「……は? 無理です」

咲「いやいや出来るよ! 私の友達だって私の為なら喜んで! とか言ってやってくれたし」

怜「私は貴女のお友達やありません」

咲「うん。知ってるよ。私が言いたいのは店員としての誠意を見せてほしいなって」

怜「申し訳ありませんでした。これで満足ですか?」

咲「何でそんな喧嘩腰なの?」

怜「あ? やかましいわ」

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怜(騒ぎを聞きつけた同僚が追い出した)

怜(まぁ、あれ以上やったらきりがないから正解やろ)

怜(つうか、清澄の連中には常識が欠落してるんか?)

怜(……まぁ、ええわ。考えるのは後や)

煌「お願いいたします」

怜(……悩みの反対側の立ち位置やろ自分……)

怜「本日はどのようなお悩みで?」

煌「実はお恥ずかしい話ですが、少しやる気が空回ってしまっているみたいで」

怜「と言いますと?」

煌「朝練の前に部室へ行って掃除をしたのですよ。ですが、私はその日の掃除当番ではなかったのです。来た皆さんは何とも言えない表情をしておりました」

怜「いや、それってーー「それとですね」

怜(話を遮るなや)

煌「それとですね、部活の途中、皆さんに休憩してもらおうと紅茶を簡単なお菓子を出したんですけど、それも何とも言えない表情でした」

怜「はぁ……別に気にしなくてもいいんじゃないですか?」

煌「いえ。それはいけませんよ。あれは私のミスです。皆さんの好きな味を把握していれば、あんなことにはならなかったはずです」

怜(どない言えばええんや? 花田が働きすぎるから気を使うって……)

煌「朝練の時も私が掃除当番の順番を滅茶苦茶にしたのがいけなかったのでしょう」

怜「少し休まれてはいかがでしょう?」

煌「それはすばらではないです」

怜「は?」

煌「ただでさえ大会では足を引っ張りがちなのですから、せめて部活では皆さんに貢献したいんです」

怜(いや、だからそれが間違ってるんや)

煌「そうですね……皆さんの好きなお菓子を調べて作れるようにするのはいかがでしょう? 手作りなら買うよりも安いですし」

怜「うん? いやいや、それはいけませんよ」

煌「え? なぜでしょう?」

怜「寧ろ、貴女が働きすぎるから気を使っているんですよ」

怜(私にもこんな後輩がいたらなぁ……いや、皆ええ子やねんで?)

煌「なるほど。店員様はお優しいですね。私のことなど気にしないで下さい」

怜(どないせえ言うねん……)

怜「いや、だから気にするとかやなくてですね……」

煌「いえいえ。いいんですよ。私など立てなくても」

怜(何でやろ? 花田た話とったら私が悪人に思えてきたわ。病弱なんて椅子に胡座かいて皆に仕事押し付けてたからやろうか……)

怜「もう少怠けましょうよ。本当に」

煌「怠けるなど私の辞書には存在しません。私はいつも全力です」

怜(何でどや顔やねん……もうええわ。最終手段や)

怜「分かった。後悔せえへんな?」

煌「すばらです。後悔なんてしたことありません」

怜(悪人は悪人らしくいこか)

怜「アンタどんなけ聖人やねん!? アホちゃうか? お前が雑用全部やるから気ぃ使うのやろ!」

煌「……続けてください」

怜「私なんてなぁ何もせぇへんで? 周りに押し付けんで? お前もそれぐらいしろやボケェ! んなことも分からんのか!?」

怜「それでまた問題が出てくるんやったら私が責任とったる。やから、少しは周りを頼れや!」

怜「……以上です」

煌「……やっと遠慮なく話してくれましたね」

怜(なん、やと?)

煌「そうですね。貴女の心からの叫び、しかと受け止めました」

怜「いや、そんなもんやないですよ」

煌「今更敬語など必要ありませんよ」

怜「そうか」

煌「今回は貴女に負けました。確かに私は雑用は周りに頼りません……なるほど。店員様、すばらです」

怜「あーはいはい。すばらすばら。分かったから、はよ行けや」

怜(せやないと私の精神がもたん)

煌「はい。では、ありがとうございました。お礼の方は後程さしていただきます」

怜「は?お礼? いや、いらんで……って行ってもうたか」

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怜(あの後、花田からごっつい高そうなお菓子の詰め合わせと茶葉をいただいた)

怜(紅茶だけ飲んだけど、もう市販のは飲まれへんな)

爽「いやー大阪って暑いねぇ」

怜(今度は北海道……旅の扉で繋がってるんちゃうか?)

爽「悩み聞いてくれるんだよね?」

怜「ええ。よろしければお聞かせください」

爽「いや、悩みじゃなくて……」

怜「なら、何しに来たんですか?」

爽「いや、ただ 高校生雀士の間で噂になっててね」

怜「噂ですか?」

爽「何でも悩み言いに行ったら怒鳴る店員がいるって」

怜(……私のことやろうけど、何で噂になんねん)

怜「何ですかそれ」

怜(知らんふりや知らんふり。これ以上噂を広めてたまるか)

爽「失礼。内輪で広まった物だから知らないのも当然だよね」

怜(園城寺節と呼ばれてます)

怜「ええ。そろそろ、お客さんの悩みいいですか?」

爽「いや、私は珍しいもの見たさで来たからこれといった悩みは無いんだよ」

怜「お帰り下さい」

爽「連れないこと言うなよ。お金は払ってるからさ」

怜「私が困るんですよ。何話していいか分からないですから」

爽「じゃあちょっと待って。今、悩み考える」

怜「帰れや!」

爽「おーいいね。北海道じゃ誰も激しくツッコんでくれないからな。けど、私じゃなければまずかったんじゃない?」

怜「……失礼しました」

爽「お詫びに名前を教えてもらおうか」

怜(……何が目的なんや?)

怜「申し訳ありませんが、お伝えすることはできません」

爽「んー固いなぁ。なら、今度北海道に遊びにおいでよ。多分だけど年近いでしょ?」

怜(近いっていうか、同じやねんけど)

怜「間違っていません。ですが、私、病弱なもので」

爽「ふうん。なら、尚更空気の綺麗な北海道はおすすめだ」

怜(ま、東京行けるんやったら北海道も何とかなるやろ)

怜「前向きに検討させて頂きます」

爽「やったね。友達増えた」

怜「……名前」

爽「ん? 私の? 獅子原爽。相談役さんは今度でいいよ。決まりだもんね」

怜「獅子原爽……獅子原様ですね」

爽「名前でいいって」

怜(何ていうか、人が作った壁の間をするりと通り抜けてくる人やな)

怜(面白い)

怜「爽様」

爽「様?」

怜「……爽さんは本当に悩みは無いのですか?」

爽「ん? んん? 真面目なノリ?」

怜「真面目なノリです」

爽「……いや、無いな。悩みは友達にしか言えないわ」

怜(……友達増えたとかさっき言ってたやん)

爽「だから」

爽「また会ったら話す。それでいいか?」

怜「かしこまりました。楽しみにしております」

爽「いいね。それじゃあ箱の裏、貼り付けておくから。またね」

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怜(後日、白い恋人が爽から送られてきた。箱の裏に連絡先が書かれた紙も丁寧に貼り付けてあるし)

怜(で、とうとう大阪の人間が来てしまった)

洋榎「せやから」

怜「何がせやから。ですか」

洋榎「いや、ただな、ウチってその業界じゃ有名人やねん」

怜(知ってるわ。私だって有名人や。怒鳴る店員って不名誉な)

洋榎「それで、妹もおるねん。おっぱいでかい」

怜「はぁ」

洋榎「一緒にインタビュー受けて写真とかよう撮るんやけどな、世間でしたたかに囁かれんねん。妹と姉、ホンマに血が繋がってんのかって」

怜(……しょうもな。けど、本人は悩んでるわけやし聞いたらんとなぁ)

怜「言いたい輩には言わせとけばいいんですよ」

洋榎「せやかて、絹……妹の友達に言われたときのウチの気持ちを考えてや」

怜「……すいません」

洋榎「やろ? ま、後輩やから家呼んで徹マン付き合わせたけどな」

怜(前言撤回や)

怜「それで、お客さんの悩みはおっぱい大きくしたいでよろしいですか?」

洋榎「まぁ、それもあんねんけど、やっぱり周りの目がなぁ」

怜(お姉ちゃんはいつもそうや。アホみたいに騒ぐくせに周りの目に人一倍敏感や)

怜(悪いことやないんやろうけど、今回は悪い方に転んだというか、何というか)

怜「有名税みたいなものじゃないですか」

洋榎「何でウチは大きくないんやろうな」

怜「知りませんよ」

怜(雀力に吸いとられてるんやろ)

洋榎「つれへんなぁ。話が脱線したな。それで、何の話やった?」

怜「姉妹なのか疑問に思われる」

洋榎「せやせや。さすがやで!」

怜「……どうも。それで、お客さんはどうしたいんですか? 黙らせたいんか、気にしたくないのか」

洋榎「出来るなら黙らしたいけど、無理やな」

怜「大きくしないとなりませんからね。それなら、気にしないの方がよほど簡単ですね」

洋榎「ま、昔からそれは分かってんねん。けど、やっぱり気にしてしまうねん」

怜(元からコンプレックスと妹ちゃんと比べられて劣等感があったんやろうな)

怜(客が客やから仕事にならへん思うてたけど、一番仕事らしいことしてるやん)

怜「意識改善……一朝一夕で出来ることじゃないですが、これが一番手っ取り早いのじゃないですか?」

洋榎「詳しくええ?」

怜「そんなことが聞こえてきてもほっとけばええって自分に言い聞かせたらいいんですよ」

怜「そのうち気にならなくなります」

洋榎「間違ってないで? せやけど、こう、何ていうか、な?」

怜(何が言いたいんや?)

洋榎「ウチもごっつい辛いねん。何か他にないん?」

怜(天下の愛宕洋榎が何でこんな弱気やねん……)

怜「そんなこと言われてもですね……」

洋榎「頼んます。一緒に考えて下さい」

怜(……荒療治やるか)

怜「考える? んなもんするかアホ! さっきから何弱気やねん! 有名人なんやろ? せやったら胸張れや!」

怜「胸の大きさが違う? んなちっさいことに気ぃとられて何がしたいんや? んな、ちんけな重さよりも姉妹として妹と重ねてきた時間どっちが重いんや!? 言ってみろや!」

洋榎「……ウ、チが間違ってた……絹との時間は嘘やない」

怜「せやろ? なら、それでええやん。もう大丈夫か?」

洋榎「ありがとな。大事なことを思い出させてくれて」

怜「まいど。もう、来んとってや」

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怜(どうやら、私の園城寺節と呼ばれるものは一つの手段なっていた)

怜(最初は感情の爆発やったんやけど、成長って怖いな)

怜(やけど、爽同様、珍しいもの見たさに来る客も増えた)

怜(店長は売り上げが伸びるからって喜んでたけど)

美穂子「奥さんの浮気癖を直したいです」

怜(ヘビーやなぁ)

怜「浮気癖ですか? 別れたらええやないですか」

美穂子「それは嫌です。私は彼女を愛してますから」

怜「なら、証拠を撮って見せれば一発だと思います」

美穂子「難しいですね」

怜「何でですか? 少しの間、家空ける言ってカメラ回しておけば大丈夫だと思いますが」

美穂子「いえ。同棲していません」

怜「喧嘩して別居中ですか?」

美穂子「いえ。喧嘩もしていません」

怜(待てや。何かいろいろおかしい……通い妻なんか?)

怜(まず、結婚してるには若すぎる)

怜(これヤバいパターンちゃうか?)

美穂子「けど、いいんです。上埜さんは必ず私の元に戻ってきますから」

怜「そうですか」

怜(どないしよ。目がイッてるで)

怜「なら、問題ないんじゃないですか? これで終わりでよろしいですか?」

美穂子「いえ、私の元に帰ってくると言っても寂しいんです……邪魔者を排除するにはどうすればいいでしょう?」

怜(アカン……ホンマにアカンで)

美穂子「悪いのは上埜さんですよ。上埜さんがどこかに行くから」

怜(上埜さん、どうにかしてや。助けてや)

美穂子「うふふ。上埜さんの足を落としてどこにも行けないようにすれば……上埜さんの手を潰せば誰も抱けないーー」

怜「アカン! 警備員さん! 大至急来てぇ!」

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ーーーーーー

怜(ホラー映画は苦手やない。所詮作り物やから)

怜(けど、リアルで人が壊れているのを見るのはホンマに怖かった)

怜(警備員に連れていかれたけど、仕返し……ないよな?)

竜華「困ってるんですよ」

怜(私が一番困ってるわ。何で竜華やねん)

怜(絶対気付かれたらアカン……声も変えてやりすごさな)

怜「と言いますと?」

竜華「実は、病弱の友人がアルバイト始めたみたいで」

怜「見守ってあげましょうよ」

竜華「それは分かってます。けど、何のバイトかも教えてくれないんですよ」

怜(園城寺節なんて知られたくないわ)

怜「友人を信じてあげましょう」

竜華「でも、心配なんですよ。ここんところ毎日バイトらしいですから、体壊さんのかって」

怜(冷暖房完備やし、基本座って話すだけやから大丈夫やねんなぁ。調子もええみたいやし)

怜「そうなったら貴女の出番ですよ」

竜華「はい……ああ、心配やわぁ」

怜(ごめんなぁ)

竜華「何とかして知ることって出来ないですかね?」

怜(今目の前におるわ。向こうからは見えへんけど)

怜(にしても、どうやったら諦めてくれるやろか)

怜「難しいですね。それこそ、何か言いたくない……後ろめたいことがあるんじゃないですか? 悪さはしてなくてもです」

竜華「あっ、分かった。あの子、面倒臭がりやから、ウチらが遊びに行って仕事が増えるのが嫌なんや!」

怜「やかましいわ!」

竜華「え?」

怜「……ツッコミです」

竜華「そうですか。驚いた。ウチの友達のタイミングとぴったりでしたよ」

怜(アカン……つい言い返してもうた)

怜「あはは。納得したところで、お開きでよろしいですか?」

怜(これ以上竜華と話してたら絶対にボロが出る。園城寺節なんて不名誉なもんは何がなんでも外にだせへんで)

竜華「いやいや、もう少し中におらせて下さいよ。外めっちゃ暑いんで」

怜(帰れや! 何で居座る気満々やねん!?)

怜「少しだけですよ」

竜華「やった! そうそう、その友人ですけどねーー」

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ーーーーーー

怜(あれから竜華は次のお客さんが来るまで居座った)

怜(楽しそうに話してたのはいいけど、私の話題を私が聞くのは変な気分やったわ)

怜(で、本日最後を締め括るお客さんなんやけどーー)

雅枝「お願いしますわ」

怜(何で監督やねん……)

怜「ええ。それで、お客さんのお悩みは?」

雅枝「いろいろありすぎてなぁ……纏まらんわ」

怜(監督にはお世話になったし、少しくらい残業してもええか)

怜「すいません。タイムカードだけ切ってきます」

雅枝「サビ残か。ようやるわ。尊敬するで」

怜「いえ。失礼します」

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怜「お待たせいたしました。それじゃあ、話をお聞かせください」

雅枝「悪いな。ま、悩み言っても家庭と職場、それと私が顧問してる部活のことやな」

怜(ええ人やなぁ)

怜「いいですよ。一つづつお話下さい」

雅枝「せやなぁ。部活なんやけど、やっぱ主力三人が引退したからその穴埋めを誰にするかやな」

怜(セーラ以外オカルト満載やからなぁ。いや、別にオカルトを埋めんくてもエエんか。それこそ、竜華並みに実力のある奴を入れたら……って、今はおらんな)

怜「それは監督の手腕にかかってますよ。それこそ、引退した上級生以上の人材を育成されたら喜ぶんじゃないですか?」

雅枝「いや、それは分かってんねん。大体、その三人には私は大して教えてない。仲良く三人で上手くなっていたからな。ま、一人は見違えたわ」

怜(どうも。素直に嬉しいわ)

怜「けど、他の部員はそうじゃないと」

雅枝「せや。それやったら部活に力を入れたらええんやけど、そうなったら今度は家族の時間が減る。家族サービスしたいしな」

怜「お客さん、いい人ですね」

雅枝「そんなことあらへん。どないすればいいんやろな」

怜(はぁ。少し力を貸してあげよか。主に竜華とセーラが)

怜「指導を上級生に頼んだらいいんじゃないですか?」

雅枝「やってくれるやろうな。あの三人なら。つうか、今でも溜まり場になっとるわ。片割れはバイトで忙しいらしいけど」

怜「はぁ。それで、お客さんは両立したいんですよね?」

雅枝「出来ればそうしたい」

怜「なら、頑張るしかないですよ」

雅枝「えらい漠然としてるなぁ」

怜「恥ずかしい話ですが私は貴女ほど年も経験も重ねてませんから何も具体的なことは言えないです。ただ、その気持ちは部員も娘さんも分かってますよ」

雅枝「偉そうに言うようになったなぁ。園城寺」

怜「……やっぱり気付いとったんですね」

雅枝「口調と声音を変えても返事の仕方、呼吸を置くタイミングで分かるわ。何年アンタら見てきてると思ってんねん」

怜「そないですか。どうします? まだ懺悔でも悩みでも吐いていきますか?」

雅枝「いや、ええわ。ほな、監督頑張ってくるわ」

怜「応援してますよ」

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洋榎「あっ、園城寺やん」

怜「お姉ちゃんの方か」

怜「監督に迷惑かけたらアカンで。あの人も一生懸命やからな。ほな」

洋榎「…………なんやったんや一体」

カン

拝読ありがとうございました。
短編集のような全くそうでないような……

途中から何やりたいのか全くわからなくなった

ありがとうございました。おやすみなさい

次はもう出来てるから明後日辺りに投下する
怜が北海道に旅行に行く話で

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