八幡「お前の21歳の誕生日、祝ってやるよ」雪乃「……ありがとう」 (1000)

八幡「ぼっち11年目、か……」

八幡「(俺のぼっちデビューは、小5の初冬ごろだしな)」

八幡「(8月で21歳になった俺、ぼっち歴が人生の半分を占めていることになる)」

八幡「(……何がどうして俺はこんな計算を解いてしまったんだ、余計虚しくなってきた)」

八幡「(恐らく、この寒さが思考回路に不具合を生じさせ

ピュゥゥゥー

八幡「うぅぅ……さぶっ」

八幡「(季節は秋から冬へ移る頃。落ち葉が街の道路を覆い尽くす)」

八幡「(喉を渇かせるカラッカラの外気と、冷たさで身体を縮こませるような北風がダブルで俺をいじめてきやがる……」

八幡「冬うぜぇ……」ボソリ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399037593



八幡「(こういう身も心も乾いた状態には、あったか~いMAXコーヒーが必要だ)」

八幡「(あまーい香りとテイストが心と喉を潤し、食道を伝って全身を温める)」

八幡「……買うか」

八幡「(そうと決まれば、コカ・コーラの自販機~っと……)」キョロキョロ

八幡「(!! あの赤い筐体、間違いない!)」スタコラサッサ

八幡「ん?」


「……………………」ボーッ


八幡「(なんだよ、先に買う奴いるのかよ……早くしてくれ」

「えっ……………」




「あ……すみません」チラリ


八幡「」

八幡「(声出しちまったあああああああああ悪いのはどの口だ!!)」

八幡「あ、だいじょぶ、すよ。ゆっくり選んでください……」

「ごめんなさい、すぐに買いますから」

八幡「はい……」

「…………………」ボーッ

八幡「…………………」

「…………………」キョロキョロ

八幡「っ………………」

「…………………」ボーッ


八幡「前言撤回」


「え?」チラリ



八幡「急いで買ってくれませんか! 俺も寒いもんで、早く温かいコーヒーが飲みたいんだよ!」

「あ、えっと、」クルッ

「本当にごめんなさい……」ペコリ

八幡「いや、謝罪とかいいんで。早く買って(去って)くれれば」

「わかりまし……」ジッ

「……あら?」

八幡「?」


「あなた………比企谷、くん?」


八幡「は? ……なんで俺の名前を……」

「あ、メガネ取って、髪下ろせば分かるかしら」スチャ スル

八幡「!?」

「……思い出してくれた、かしら?」


八幡「……雪ノ、下……?」




・・・・・・・・

ピッ ガコン


八幡「……ほれ」スッ

雪乃「ありがとう……」

八幡「自販機での買い方知らないとか、現代人失格だろ」

雪乃「あなた、それを大昔の天皇陛下に言ってみなさい。即死よ」

八幡「お前天皇陛下じゃねぇしな」

雪乃「っ………」

雪乃「でも、助かったわ。私も寒かったから温かいものを飲みたかったのよ」

八幡「あのままだと永遠に買えず、凍死してたろうな」

雪乃「そしたら、そうなる前に諦めてコンビニで買うわよ。本気でそんなこと考えてるの?」

八幡「お前さ、ジョークって知ってる?」



雪乃「んくっ………」ゴク

八幡「おいユキペディア、俺が反論した途端に飲んでスルーするの止めてくれ」

雪乃「ふふっ……少し噴き出しそうだったじゃない」

八幡「こんなこと言わせるからだろうが」

八幡「(うっわ懐かしいな、こんなやりとり)」

雪乃「あ、言い忘れてたけれど、お久しぶりね」

八幡「おう、今さらだな」

雪乃「高校卒業以来……よね?」

八幡「そうだな、2年半前か」

雪乃「もうそんなに経つのね……」

八幡「歳を取るごとに、時間の経過が早く感じていく一方だな」



雪乃「言うことがおじさんみたいよ。老けたのね」

八幡「うっせ、思ったこと呟いただけだろ」

雪乃「ふふ、でも性格や口調はあの頃から変わらず、ね」

雪乃「あと、その腐った目。あの頃より腐敗が進行したかしら?」

八幡「腐ってねぇし、約三年間じゃそんなに変わらないだろ……」

雪乃「……そうね」

八幡「(……さて、どうしたものか)」

八幡「あー、ところでさ」

雪乃「?」

八幡「せっかく、二十歳を超えて偶然再会したんだ」


八幡「……呑み、行かないか?」


雪乃「ナンパはお断り」

八幡「ナンパじゃねぇって……。プチ同窓会、って感じで」

雪乃「……しょうがないわね、いいわよ」フフッ



・・・・・・・・・
居酒屋

ワイワイ ガヤガヤ サケガノメルゾ
ハナキンバンザイ アサマデコース


八幡「んぐっ、ぷはぁぁぁぁぁーー、染みるなああぁぁぁぁ」

雪乃「ちょっと、うるさいわね」

八幡「ビールはな、年がら年中旨く飲める炭酸飲料なんだよ」

雪乃「そんなに美味しいかしら?」

八幡「飲んだことないのか?」

雪乃「一度、挑戦してみたけれど……ただの苦いスパークリング酒ね」

八幡「馬鹿だな、この苦味が良いんだよ。あとこののど越し」

雪乃「将来、酒に溺れなきゃいいけど。あ、もう既に溺れてるのかしら」

八幡「ビール一杯ごときでこの言われようか」

雪乃「ふふ……」クスッ



八幡「お前、普段は酒飲まないの?」

雪乃「極たまに……ね」

八幡「なら頼めばいいだろ。なに可愛こぶってカルピスなんか飲んでんだよ」

雪乃「どこが可愛こぶってるように見えるかしら?」

八幡「特にあれだ、ストロー使ってるあたりな! こんな細いグラス、直接飲めや」

雪乃「……何よ、ならどうしろというのよ」ムッ

八幡「すいませーん」

店員「はいはい!なにしやしょう!」

八幡「カルピスサワーひとつ」

店員「がってん承知!」

雪乃「ち、ちょっと」


八幡「……つまりな、お前も酒を飲めってことだ」




・・・・・・・・


店員「お待たせしましたぁ!カルピスサワーでっす!」ゴトッ

雪乃「っ………………」ジトー

八幡「そ、そう睨むなよ……」

八幡「(久々にこいつの鋭い視線浴びると、心折れちゃいそう)」

雪乃「はぁ……わかったわ、飲めばいいんでしょ?」

八幡「お? 高校時代に比べてノリ良くなったな」

雪乃「いいえ、単純に売られた喧嘩を買っただけ」ギロッ

八幡「すいませんでした」

雪乃「……ほら」スッ

八幡「ん?」

雪乃「だから……その、グラスとグラスを交わすでしょう?」

八幡「……あぁ、カンパイ」

雪乃「……乾杯」

カキン



八幡「んぐ…………」グービ グービ

雪乃「んっ………」ゴキュ

八幡「てゃーーーーー!!ええなぁ!」

雪乃「あなた、酒を飲むとまるでテンションが違うのね」

八幡「ああ、なんかビールを飲むときだけこんな感じなんだよ」

八幡「(絶対、親父の遺伝だよな)」

雪乃「……なんだかコレ、普通のカルピスと違うわね」カラン

八幡「そりゃな、酒を混ぜてるわけだし」

雪乃「意外と、」

八幡「ん?」

雪乃「……美味しいじゃない」ニコッ

八幡「…………」

八幡「あ、よっ、よかったな」

八幡「(あぶねぇ……いまの笑顔に見惚れてた……)」




八幡「と、ところで、どうだ大学は」

雪乃「どうって?」

八幡「いや、なんだ。楽しいとか、友達できたとか」

雪乃「また喧嘩売ってるの?」ニッコリ

八幡「ちげぇよ! 今のは例えとして挙げただけだろうが」

雪乃「クスッ……そうね、興味のある講義を選んで受講が出来るから、その点では楽しい、かしら?」

八幡「そか、良かったな」

雪乃「そうね……でも」

八幡「でも?」

雪乃「総合的に言えば、高校時代の方が……」

八幡「……実は俺も、」

雪乃「疲れやすかったわ」

八幡「楽しかっ……は!?」




雪乃「何かおかしなこと口走ったかしら?」

八幡「いやお前、脈絡的にそこは『高校時代が楽しかった』って繋がるだろ」

雪乃「決めつけはよくないわ。中学時代の失敗を教訓に、その癖直したんじゃないの?」

八幡「お前、思い出したくのない過去を……!」

雪乃「冗談よ」

八幡「あ?」

雪乃「……正直に言うと、楽しかったわ」


雪乃「特に……あなたが奉仕部に入ってきた辺りから」


八幡「っ………………」



雪乃「直後に由比ヶ浜さんも入部し、私たち三人で依頼を解決させるためにお互いが手助けしあった」

雪乃「私、それまで他人とまともに協力し合うなんてこと、した試しが無かったから……」

雪乃「奉仕部で過ごした日々は、今となっては貴重な経験ばかりね」

八幡「……俺も、そんな感じだな」

雪乃「そう。卒業してから気づくのよね」

八幡「確かに」グービ

雪乃「ふふ、久々に会ったら、珍しく考えが一致したわね」

八幡「そうだな。あの頃は『青春なんて欺瞞だ』なんてほざいてたけど」

八幡「……充分、青春とやらを謳歌してたんだよな」

八幡「俺も、お前も」

雪乃「……そうね」



八幡「……そういや、由比ヶ浜とは今でも会うのか?」グービ

雪乃「連絡は来るけれど、大学が忙しくて会えてないの」

八幡「そうなんか……」

八幡「(俺なんて、卒業式の日に由比ヶ浜から告白され、フッて以来会ってないな……)」

八幡「(……元気かな、あいつ)」

八幡「……会いたいか? 由比ヶ浜に」

雪乃「……ええ」

八幡「ふっ」

雪乃「なによ」

八幡「いや……お前、丸くなったなぁと思ってな」

雪乃「そ、そうかしら?」ペタペタ

八幡「顔じゃねぇよ、性格面の方」

雪乃「……そ」ホッ




八幡「ああ。あの頃のお前は、ここまで素直な気持ちを表に出さなかった」

雪乃「……実感は無いわね」

八幡「まあ自分の変化は主観的じゃそうそう気づかないからな」グービ

雪乃「……比企谷くんは、素直な女の子は好き、かしら?」

八幡「ぶふぉっ!」

雪乃「ひゃっ! ちょっと、汚いわよ……」

八幡「お前が突然そんなこと訊いたりするからだろ!」

雪乃「い、いいから答えてちょうだい」

八幡「……嫌いじゃねぇよ」

雪乃「そう……嫌いじゃない、のね」




雪乃「んくっ……」ゴキュッ

八幡「おかわりするか?」

雪乃「あなた視力低下したの? まだ半分くらい残ってるのだけれど」

八幡「俺がもう空っぽなんだよ」

雪乃「酒豪アピールかしら」

八幡「そんなんじゃない。注文はまとめてする方が効率的だろ? 客にとっても店側にとっても」

雪乃「あら、更生して良い消費客になったのね」

八幡「元が迷惑な客みたいな言い方じゃねぇか」

雪乃「そうだったでしょう? ほら奉仕部の活動で、確か……そう、あの時よ」

八幡「いつのことだよ」






1時間後

・・・・・・・・・・


雪乃「んくっ、んむっ……」グービ グービ

八幡「あらららららま」

雪乃「ぷはぁ、ヒック……」

八幡「おいおい、俺より飲みっぷり良いじゃねぇか」

雪乃「あらぁ、あなたが大したことないだけでしょう?」

八幡「くっ、こいつ……」

雪乃「ちょっと比企なんとかくん、あなたビール飲むわよね?」

八幡「は!? 俺まだ半分くらい残ってんですけど」

雪乃「まとめて頼んだ方が効率的だって、さっき言ってたじゃないのよぉ」

八幡「いや、お前のほっそいグラスと中ジョッキじゃ、あからさまに量ちがうだろうが!」




雪乃「問答無用。すみませーん」

八幡「お前、ちょっと酔っぱらってるだろ?」

雪乃「そんなわけないでしょう? たかがカルピスサワー2杯ごときでー」

八幡「いや、俺お前の酒の強さ知らんから、2杯がたかがなのか計り知れないんだが」

雪乃「うるさいわね、男のくせに。そっちから誘っておいて」

八幡「あのさぁ、俺はお前を心配して

店員「はい!なにしやしょう!」

雪乃「カルピスサワーと生中、あーとーはー枝豆!」

店員「がってん承知!」

八幡「(なんか今のこいつを見ると、平塚先生を思い出すんですがこれは……)」

八幡「(なんか波乱の予感……いや、悪寒が……)」ブルルッ



2時間後

・・・・・・・・


雪乃「で、くっさい香水を付けた先輩が言ってきたの」

雪乃「『あんた、モテてるからって調子のってんじゃないわよ』って」

雪乃「だから私は言い返してやったわ」

雪乃『そんな化粧ベタ塗りに悪臭ともいえる香水を多量にまとってたら、そりゃあ男も寄らないわよ』

雪乃『モテようと、おめかしの一つもしない私に負けるなんて、情けないわねあなた』

八幡「お、おう……」グビ

雪乃「そしたらその女、突然泣き出したかと思ったら逃げちゃって。もう心の中で嘲笑ってやったわ!」

雪乃「それでその先輩、翌日になったら化粧薄くして登校してきたの(笑) 真に受けてるこの女、と思ったわね(笑)」クスクス

八幡「(こいつ、酔っぱらうとこんな喋るのか……こえぇ……)」



3時間後

・・・・・・・・・


雪乃「ヒックー……ねぇ、ヒック谷くんっ」

八幡「なんかリズミカルな呼び方だな、なんだよ」

雪乃「あなた、今夜は何時までいられるのかひら?」

八幡「あ? まぁ、まだ21時廻ったとこだし、終電までいることはできるが」

雪乃「そう、そしたら他の店行きましょっ」

八幡「ファッ!? んな酔っぱらってんのに、はしごする気かよ!」

雪乃「だって……せっかく、久々に会えたのよ?」

八幡「あ、会えた……?」

雪乃「なに困惑してんのよ、気持ち悪い」

八幡「(だめだ、酔っぱらってるときのコイツ絡みづれええぇぇ!!)」




・・・・・・・・・・

カラオケボックス


雪乃『見つめるたび ドキドキしてる!

君にもっと近づきたいよ!

甘い予感 とけちゃう前に気づいてね

甘い予感~♪』

八幡「(コイツがカラオケ行こうだなんて言うとは思わなんだ……)」ガクッ

八幡「しかも唄うめぇし……」ボソッ

雪乃『なにか言ったかしら?』グワーン

八幡「ハウリングうっさ! マイクで訊いてくんなよ!」

雪乃「ふふっ。ほら、あなたも次の曲入れなさい!」

八幡「あーへいへい、入れとくから……」

八幡「(こんなノリノリな雪ノ下、見たことねぇや……違和感ハンパなっ)」


雪乃『読みかけのストーリー 続きは後にして~♪』



・・・・・・・・・


八幡『せーかいーにひーとーつだーけーのはーなー』

雪乃『ちょっと、本気出して唄ってほしいのだけれど』グワーン

八幡『だああ!ハウリングうっせぇんだって! しょうがないだろ、酒回ってんだから』

雪乃『それにしても、歌詞をスティックリーディングしすぎよ』

八幡『スティ……ああ、棒読みか。ルー語とか古すぎんよ』

雪乃『あなたの唄っているその歌こそもっと古いじゃないの。2003年よ?』

八幡『んなこた言ったって、知っている曲はこんな感じの有名なやつとアニソンくらいなんだよ』

雪乃『あ、ほら二番始まるわよっ』

八幡『あっ!? こ、こまったーよおーにわらーいながーらー』




2時間後

・・・・・・・・・


カラオケ店員「アランドロン オダイバキター」

八幡「もうくったくただわ……」

雪乃「ふふっ、楽しかったわ、ありがと」

八幡「お前、居酒屋であんだけ呑んだのに、よくカラオケでも更に呑めたな……」

雪乃「勢いづいちゃったのよ、しょうがないでしょ?」

八幡「やれやれ……お前の方がとんだ酒豪だわ」

雪乃「あ……なんだか、足がおぼついて……」ヨロヨロ

八幡「あーあ、お前やっぱり飲み過ぎなんだよ……」

雪乃「うう……」




八幡「……お前、家は高校時代のマンションのまんまか?」

雪乃「えぇ、そうよ……」

八幡「(こっからそう遠くないな……しょうがない)」

雪乃「比企谷くん、もう一軒!」ピシッ

八幡「いたっ、行くわけねぇだろうが」

雪乃「ええー……」

八幡「お前はもう帰って寝た方が良い。ただ、いまのお前は一人で帰れそうにないくらい泥酔している」

雪乃「そ、しょんなことないわよ」

八幡「呂律も回ってねぇじゃないのさ……」

八幡「(こんなに可愛かったっけ、コイツ?)」




八幡「(…………………よし、)」

八幡「ほら」スッ

雪乃「??」

八幡「……こっからそんな距離もないし、おぶってってやるから」

雪乃「……下心あるでしょう?」

八幡「なに急に酔い覚めたような口調になんだよ。ビックリした」

雪乃「気になったのよ」

八幡「ねぇって! ただおぶって送ったら真っ直ぐ帰るだけだ」

雪乃「本当にそうかしら。ま、いっか」

ギュッ

八幡「!!」ドキッ

雪乃「……家まで、お願いしゅるわ……」ムワッ


八幡「(あ、だめだ、一瞬ドキッとしたけど酒臭さに揉み消されたわ)」




八幡「じゃ、行くぞ?」

雪乃「ええ……」ギュッ

八幡「……………………」ノッシ ノッシ

雪乃「もしエッチなことしたら、大声あげるわよ?」

八幡「だから、するかっつーの! こんな寒空の下!」

雪乃「なによ、あなたが大声出さなくたっていいでしょう」

八幡「そんなこと訊いてくるからだろ……。あのな、絶対にスケベなことはしないから、絶対にだ!」

雪乃「……それだとまるで遠回しに、私は女としての魅力が無いみたいな言い方よね」シュン

八幡「じゃ、どうしたらいいんだよ!?」




八幡「……別に、お前に魅力を感じないとは言ってないだろ」

雪乃「っ……………」

八幡「その……だな、久々にお前と会ってみたら、少し色っぽくなったなぁと思った」

八幡「艶めきが上がったというか……更に女性っぽさが露になってたように見えたな」

雪乃「…………………」

八幡「ま、もともと校内で一番の美少女だったしな。容姿は」

八幡「……だから、なんつーか」


八幡「お前はあの頃よりも、魅力が増してる。」


雪乃「……すぅ……すぅ…………」

八幡「(そりゃねーぜーー!!【江頭風に】)」




・・・・・・・・

県内某高層ビル


八幡「(てか、雪ノ下の住むマンションだけど……)」

雪乃「すぅ……すぅ……」

八幡「おーい起きろー」ユスユス

雪乃「んんぅ……ほえ、な、何かしら……?」

八幡「ほえ?じゃねぇよ。正面玄関はどうやって開けるんだよ」

雪乃「あ、そこのテンキーに暗証番号を入力するのよ」

八幡「番号はよ」

雪乃「えっと……確か、4649……」

八幡「4649な?」ポチポチ…


ブブーー


雪乃「というのは冗談よっ」

八幡「そりゃそうだろうな!」

八幡「(あからさまに嘘っぱちな番号、夜露死苦!!)」




雪乃「ふふ、8782よ」

八幡「8782な?」ポチポチ…





八幡「お、開いたな」

雪乃「『ヤなやつ』って覚えるといいわよ」

八幡「欲してもいない豆知識、どうもありがとう」

八幡「(くそっ、完璧に覚えちまった。使い道ねぇよ……)」

八幡「(……本当に、無いんだよな?)」

雪乃「ほら、閉まっちゃうわよ」

八幡「あっ、おとと……」ノシノシ


ウィーーン


八幡「で、何階だっけ?」

雪乃「それくらい自分で思い出してちょうだい」

八幡「は!? 覚えてねぇよ!」




・・・・・・・・


ガチャ

八幡「はいはい、お邪魔しますよー」

雪乃「ただいま」

八幡「電気……おい、照明のスイッチどこだ」

雪乃「酔っぱらってる私が確実な答えを言うとでも?」

八幡「なに開き直ってんだこの野郎……! あーあったあった」パチッ

雪乃「うっ、まぶし……」

八幡「どうせすぐ暗い寝室に着くんだから、我慢しろ」

雪乃「んん……」




八幡「………………」ノッシ ノッシ


八幡「(今さらだけど俺、すごい偉業に取りかかってんのな)」

八幡「(自販機の前でばったり、高校卒業から2年半後に雪ノ下と再会して)」

八幡「(そのあと居酒屋で酒を酌み交わ……してはないが、でも、一緒に呑んで)」

八幡「(酔っぱらった雪ノ下を、こうして家までおぶって送ってきてしまった……)」

八幡「(なんだよ、この10年以上前の月9ドラマ的展開は)」

八幡「(まさかこいつを、寝室まで運ぶなんてな……)」


八幡「(……てことはやはり、このあと俺はコイツと……)」


ゴンッ

八幡「いだっ!!」




雪乃「馬鹿ね、なにドアも開けないでリビングに入ろうとしてるのよ……」クスッ

八幡「いつつ……てか、お前をおぶってるから開けらんねぇんだよ」

雪乃「わかった開けるわ、ほら」ガチャ

八幡「えーと、お前の寝室はどこだ」

雪乃「入ってすぐ左の引き戸のところよ」

八幡「ん?ああこれか。開けてくれ」

雪乃「……入るの?」

八幡「しょうがないだろ、ベッドまで運び終わったらそこで初めて任務が完了するんだ」

雪乃「…………そう」

雪乃「それならほら、入って」ガラッ




八幡「う……」ドキッ

八幡「(……やばい、雪ノ下の匂いでいっぱいだわこの部屋)」

八幡「(ついに、入っちゃうんだな……こいつの寝室に)」

ヨテヨテ……

八幡「どれだよベッドは……」

雪乃「右向け右」

八幡「あ? あ、あのデカいはんぺんみたいなやつか」

雪乃「その例えを用いた意味がわからないから、スルーするわ」

八幡「ありがとさん……ほれ、降りろ」

雪乃「ええ、ありがと……」スッ


八幡「(さて……どうするか……)」


八幡「(ここで俺が理性をぶち壊してコイツを押し倒し、一夜を過ごしたらどうなるだろう)」




八幡「(俺の気持ちはどうなのかって?」


八幡「(……そりゃ当然、一緒に寝たいさ)」


八幡「(俺が卒業式の日に由比ヶ浜からの告白を断った理由は、当時から雪ノ下のことが意中にあったからだ)」

八幡「(いまでもその気持ちは残っている。なんなら、あの頃から未だに薄れてすらいない)

八幡「(だから勇気を振り絞って、呑みに誘った。あのまま別れたくないと、素直にそう思ったから)」


八幡「(結果的にとんとん拍子のごとく、ここまで来たが……)」

八幡「(……ここで俺は、雪ノ下のことを抱いてしまってもい


ギュウゥ……


八幡「!!」

雪乃「………………」ギュウゥ


ドクンドクンドクンドクンドクン……




八幡「……おい、雪ノ下」

雪乃「……何、かしら……」ギュ…

八幡「どうしたんだ、急に」

雪乃「……私、酔っぱらっちゃってるのよ……」

八幡「ほう……酔っぱらってる、ねぇ……」


八幡「(俺がさっき、雪ノ下が泥酔していると知りながら押し倒さなかったのには、もちろん理由がある)」


雪乃「……比企谷くん……、帰らないで……」

八幡「どうして、そんなことを」

雪乃「……いまの私は、酔いでどうにかしちゃっ




八幡「お前、酔い覚めてるだろ?」



雪乃「!!」


一旦ここまで

続きは、いま書いてる猫カフェの話が完結してからのつもり

雪乃「比企谷くんと猫カフェへ行ってきたの」
雪乃「比企谷くんと猫カフェへ行ってきたの」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1397408966/)


ついでにこんなスレも立ててるので、よかったら
八幡「奉仕部がパワフル高校へ出張?」【俺ガイル×パワプロ】
八幡「奉仕部がパワフル高校へ出張?」【俺ガイル×パワプロ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1397937926/)

おい!!!!

再開はいつ頃ですか

>>50
今月中にはつづきを書けると思う
それまで気長に待っててちょうだいな

本当は猫カフェSSが完結したあとに、こっちの書き込みに専念しようと思ったんだけど……

実は、今からでも続きを……書きたいですっ……

おお、もしやと思って覗いたらこっちに立ててたのか
vipでこの画像貼った者です
http://f.xup.cc/xup1xkvjscy.jpg

そんじゃ>>1期待してるぞ

待っていただいてる方もいるので、今夜少しだけ続きを投下します!


>>98
ここではあんましエロ画像貼らなくてもええんやで?

お待たせしやした
ちまちま書いていきます



八幡「お前、酔い覚めてるだろ?」


雪乃「!!」


八幡「(刹那、俺の背中を抱き締める雪ノ下の肩が跳ねたように感じた)」

八幡「(突然の言葉に驚いたか、抱き締めていた腕の力が弱まり、少しばかり窮屈で無くなった)」

雪乃「……何を、突然言い出すかと思えば」

八幡「図星だろ?」

雪乃「………………」

八幡「(互いの呼吸音だけが微かに部屋中で響くだけの、暗黙な虚無のひと時)」

八幡「(そんな沈黙を破り裂いたのは、彼女が口で素早く空気を肺に取り込んだ直後のことだ)」




雪乃「……自分でも解せないの」

八幡「?」

雪乃「私が泥酔しているから、あなたに突然抱きついてしまったのか」

雪乃「……それとも、あなたを求めているからなのか」

雪乃「…………私が」

八幡「その真意は、お前自身にしか解らないことだ」

雪乃「そうね……」


八幡「(そう言うと、雪ノ下の腕は俺から剥がれていった)」

八幡「(だが直後、今度は俺の背中の裾をそっと摘ままれた)」




雪乃「……もう一点、解らないことがあるの」

八幡「なんだ?」

八幡「(俺は振り返らず、簡潔に問いただした)」

雪乃「なんて云うのかしら……」

雪乃「……身体が、ぽわぽわするの」

八幡「(今度は問うこともせず、黙って言葉の続きを促した)」

雪乃「……おそらくこの症状は、酔いからきたものかもしれない」

雪乃「初めてお酒を飲んだときも、こんな感じになったから」




雪乃「……でも、きっと。あくまでも推測でしかないのだけれど、」


雪乃「これは、お酒を飲んだことによって感じる虚ろな気分とは……」

雪乃「似て非なるもの……かもしれない、と」

八幡「(俺はそれを聞き、つい反射的に後ろをチラと向いた)」

八幡「(明かりの無い空間に長いこといるため、暗くても彼女の顔色を窺えた)」

八幡「(俯き、振り返った俺には気づいていない)」

八幡「(目は閉じられ、唇をきゅっと噛みしめていて、漏れ聞こえる呼吸は、少しばかり早く感じられた)」




雪乃「……どうしてあなたは、私の酔いが覚めていると思ったの?」

八幡「そんなの、お前の言動を確認すれば分かる」

八幡「(あんなに多く酒を呑んだのは初めてなのか、居酒屋やカラオケでは、呂律が回っていなかった)」

八幡「(尚且つ、俺のよく知る雪ノ下とは甚だ別人とも云える、明るくて……やや活発めな女の子、という感じの口調であった)」

八幡「(正しく、酒を呑むと人が変わるってやつだよな)」




八幡「(けれど、コイツの家に到着した辺りからだろうか)」

八幡「(おぶっていると後ろから聞こえたのは、俺が思うこれぞ雪ノ下雪乃という、無愛想で冷静な口調だった)」

八幡「(……ただ一つ違ったことは、声に柔らかさと優しさを含んでいたことであった)」

八幡「(ただ、それをコイツに説明するとなると長ったらしくなってしまう)」

八幡「(だから俺は、偽りの無い素直な理由を、簡潔にして伝えた)」




八幡「……きょう一日、お前のことだけをずっと見続けてきたからな」


雪乃「!!」


八幡「……それが理由だ」

雪乃「………………//」キュウゥ

八幡「(雪ノ下はさっきよりも強く、背中の裾を握ってきた)」

八幡「(こんなことを言われて、恥ずかしさを堪えるためなのだろうか)」

八幡「(俺だって、今どき月9でも出ないようなこんなクッサい台詞を吐いたおかげで、なんだろちょっと死にたくなってきたかも)」




雪乃「よく平気で、そんな恥ずかしいこと言えたわね」

八幡「暗いし、お前の顔が見えないから、辛うじてな」

雪乃「……そ」トン

八幡「(コイツも吹っ切れたのか、背中に顔を預けてきた)」

八幡「(頭だというのに、背中に伝わる感触は柔らかく感じた)」


八幡「(それと同時に、俺の抑えていた理性も限界寸前まで来ていた)」



八幡「(……猛烈に、雪ノ下のことを抱きしめたいと思ってしまった)」





雪乃「……3年ぶりに偶然ふと再会して、たった一夜でこんなに密接するとはね」

八幡「意外だな」

雪乃「……悪い気はしない、かも……」ボソッ

八幡「なんつった?」

雪乃「……ふふ、なんでもないわ」

八幡「……なあ」

雪乃「なに?」

八幡「…………そろそろ、お前と向き合いたい」

雪乃「……私も」


八幡「(雪ノ下の言葉を合図に俺は身体ごと振り返り、正面から彼女の顔と向き合った)」

八幡「(彼女の濡れた瞳を見るのは、随分と久しぶりに感じる)」

八幡「(ここに到着してから、時間の流れが止まったように長く感じていたから)」




雪乃「っ………………」

八幡「(こうして見つめ合うのは、初めてかもしれない)」

八幡「(コイツも緊張してるのか、二人して口ごもってしまう)」

八幡「(これはあれだな、あの曲の歌詞にもあったように『見つめ合うと素直におしゃべりできない』ってやつそのものだな)」

八幡「(……まあ今の俺にとっては、おしゃべりよりも、彼女のトロンとした瞳をただ見ていたかった)」

八幡「(……綺麗な目してるよな、コイツ)」

八幡「(対して彼女は俺の目を見て『腐葉土よりも腐った厭らしい目ね』とか思ってるんだろうか。思ってるんだろうな)」




八幡「(暗闇でも輝いて見える雪ノ下の瞳を堪能して、俺は彼女をそっときゅっと抱き寄せた)」

八幡「(それに応じるよう、雪ノ下も優しく抱き返してくれた。それが何よりも堪らなく嬉しい)」

八幡「(気づけば俺の抱きしめる力は益々強くなり、そっときゅっと、ではなくもはや『がっとぐいっと』という表現が相応しい)」

雪乃「ち、ちょっと……少し、苦しい……」

八幡「あ、わ、わりい……」

八幡「(ですよねー)」

八幡「(つい、抱き寄せていた彼女をすかさず離してしまった)」



八幡「(……やばい、物足りない)」




八幡「(もう一度抱きしめたい! という欲にまみれていたが、そんなにがっつくと流石に気持ち悪がられるだろうと思い、躊躇ってしまう)」

八幡「(それに、さっきは締め技ばかりに強く抱いてしまったせいで、雪ノ下に苦しい思いをさせてしまった)」

八幡「(いつものように――つっても三年前の高校時代だけど――俺のことをジトっと睨んでいるんだろうな……)」

八幡「(そう思い、彼女の目を確認してみた)」




八幡「――すると、」


雪乃「……比企谷くん、」

八幡「はい……」


雪乃「…………もう、おしまいなの?」


八幡「はい…………はっ?」

八幡「(返ってきたのは意外な言葉だった)」

八幡「(その返事の真意を確認するついでに、彼女の目を見返す)」


八幡「(……寂しそうに潤んだ瞳が、上目遣いで俺に向けられていた)」


雪乃「…………比企谷くん?」

八幡「(――――もう無理だ)」




八幡「(やはり俺の理性をここまで抑えるのは間違っている)」




八幡「なあ、雪ノ下」

雪乃「……?」


八幡「…………つまりは、そういうことだよな?」


雪乃「……何を言いたいの? はっきり明確にしてほしいわね」

八幡「だから、その……」


八幡「……今から、ヤる……んだよな?」


雪乃「……ヤるなんて表現、好きじゃないわ」

八幡「じゃあなんだよ、え……エッチする、の方がいいか?」

雪乃「ド直球じゃない……もう少しオブラートに包めた表現は出来ないのかしら?」

八幡「はっきり明確にしろと指図したのはお前だろうが……」

八幡「(言った俺としては、くっそ恥ずかしいねんぞ……)」




雪乃「……いいわ、私から言うわね」

八幡「?」

雪乃「その…………」



雪乃「……今夜は……甘えても、良い、かしら…………?//」



八幡「…………ああ」


八幡「(顔が熱い、全身から汗が止まらない……ついでにロマンティックも止まらない)」

八幡「(こんなに照れたのはかつて経験したことがない。ついキョドってしまう」

八幡「(雪ノ下の顔色も、暗闇だからはっきりとは見えないが、おそらく真っ赤だろう)」スッ


雪乃「っ!」

八幡「(気になったので、彼女の頬に右手を添え、指で温度を感じ取ってみた)」




雪乃「あ…………」

八幡「(柔らかく、絹のようにすべすべとした感触が気持ち良く心地よい)」

八幡「(思った通り、彼女の顔は上気していて熱かった)」

八幡「(蛇足且つ当たり前のことだが俺の股間も熱くなってたりするヨ……まあ、この後の展開で主役級の扱いになることだしいっか)」

八幡「(顔に添えた手を、そのまま彼女の頭へ移動させ、軽く撫でる)」

雪乃「ん………」

八幡「(気持ち良さそうに目を瞑り、撫でやすくするためか、少し俯いて頭を俺に向けた)」




八幡「(彼女の髪の毛に触れたのは初めてで、とにかくゾクゾクしてしまった変態こそが俺です)」

八幡「(いまや俺は、彼女のどこに触れても、心が満たされ鼓動が速くなる)」
八幡「(そして、両手を彼女の肩に乗せた)」

八幡「(いよいよキスをしようと思い、ゆっくりと顔を近づけたその時」


雪乃「待って」


八幡「(焦らされた。気分はご馳走を目の前にした犬のようだワン)」




八幡「なんだ、どうした?」

雪乃「お願い、というと少し変かもしれないけれど……」

八幡「?」


雪乃「その…………優しく、してね?」


八幡「(……心が締め付けられた)」

八幡「(雪ノ下の、あまりに無垢な可愛さのせいだ)」


八幡「同じくそれは、俺からも頼む」

雪乃「……ふふ、どうかしら」

八幡「おい」

八幡「(ったく生意気な奴)」

八幡「(そして俺は、無礼な彼女の口を唇で塞いだ)」


八幡「(……つまり、不意にキスをした)」




雪乃「!!」

八幡「(………この背徳心たるや、とても興奮してしまう)」

雪乃「んむっ…………」

八幡「………ぷは」

雪乃「……ひどいわ、いきなり……キス、してくるなんて」

八幡「お前がいらぬこと言うから、塞いでやった」

雪乃「もう……」

八幡「…………雪ノ下」

雪乃「?」

八幡「……もう一度、してもいいか?」

雪乃「…………ええ」

八幡「んっ……」

雪乃「んむ……ちゅぱ、れろ………ん……」


八幡「(俺は雪ノ下の舌を貪り、言葉の糸を絡ませた)」

八幡「(互いの濡れた唇から吐き出される煙は、夜闇の部屋に消えていった――)」



そして、彼女に酔いしれた俺は深く溺れていった。


















雪乃『あなたが、悪いんだから――――』

















ガッツリ書いてしまった
続きは後日投下します

ちなみにここから先は、なかなかドロドロとしたシリアスな展開となるのでご注意しつつも、楽しみにしていてください


おやすみなせう

お久しぶりです

寝落ち覚悟でちまちま書いていこうかと思います……
書き溜めは無しよ

言い忘れてた
ここからスタイルが変わります

地の文加わったり各章が設けられたりしますのでお願いしまー




①ここで比企谷八幡は想いを馳せる。



―――――――――



「………………ん?」

俺は気を取り戻して、その刹那に両面をそっと開いた。

先ほどまで視界に映っていたはずの明るさとは違い、いつの間にやら外の日光が部屋中を照らしていた。

朝か?
……うん、朝だろ。え、朝なの? 朝でしかないよねこれ? ほんとに朝!?

まさしく半信半疑。

しかし、窓辺から聞こえる小鳥のさえずりがその半疑を半信へと代えさせた。

全信。
………ん、ゼンシン?


……そういや何だか、全身が肌寒い。それにかけ布団が地肌に触れているような、そんな感覚までする。

え、うそ。えっ?

仰向け姿のまま、かけ布団を少し持ち上げて中を確認してみる。

オー!ヒッキー…………



俺の息子が今にも風邪引きそうに露になり、縮こまってる姿を確認しました。





「……なん……だとっ……」

それはもうえのき茸のような、いや……ここは見栄を張ってエリンギとでも……ええい、そんなのどうでもいい! いや本当はどうでもよくさせたくないところだけども!

ひとつ、気になったことがありまして。


俺のエリンギくんの姿を確認したとき、右隣に別の白く輝くナニかが見えた。

そうさな、例えるならば、太ももだな。たぶん左足の方。

だ、だれ!? 泥棒!? そんな悪人と一夜ともにしてしまったのか!? アッー!なんてこった……



……なんて、現実逃避が通用するのは中二病患者かラノベ主人公だけだ。

こんなの、解らないフリしたくたって、嫌でも意識が回ってしまう。



俺の隣に寝ているのは、あいつ以外あり得ない。

雪ノ下雪乃、である。





「……ん、んぅ…………」


ド、ドキッ!

いや今のは素でビックリした。

ある人物のことを考えていて、急に当の本人がリアクションをしてくると、あまりの突然の出来事に左胸だけなかやまきんに君状態になる。
驚いて心臓がバクバクするんですねー。ボケ解説する時ほど屈辱なものは無いわ。


「ん…………すぅ……すぅ……」


また寝た。
よほど疲れが貯まってて眠いのか、まぶたをいかなる方法で抉じ開けようとも失敗に終わりそうだ。

しばらくそっと寝かし続けた方が良いだろう。


俺もなんだか身体がダル重だし、肌に水気が感じられない。
いや、今回の場合は汁気でしょうか……? 又は液気……?

出し尽くしてしまったせいで、掌に力が思うように入らず、開きが鈍い。

これが朝チュンの効力か……なかなかに不便だ。





すでに答えを9割5分3厘まで発表してしまったが、結論を言おう。



俺は、雪ノ下とセックスした。



え、復唱してほしい? 絶対に嫌だ本気で恥ずかしいから。

これ大問題だよな? 俺史における現在トップの事件だよね?

いまの正直な感想、ぶっちゃけ実感がない。

そ、その、なんてゆうんですか?
ゆ、雪ノ下さんの……ま、まん……ちょっ、別の表現使えよ俺!

ちっ、ちちち膣ってところに、お、おれのですね、ご立派な姿に豹変した、息子の九幡が、なんっ何度も出入りしたと……?

で、その雪ノ下さんの膣内が九幡をキューキューに締め付けてきて、その状態でプリプリのヒダヒダが一定間隔に吸い付いてきて……。


何回したっけな……。

もしかしたら、3回ぐらいぶっ続けにシてしまったっけな……。


2回目をし始めた辺りからの記憶が全くない。

ただ、彼女の膣内を、彼女の思考回路をメチャクチャにしてやろうと思って、ひたすら腰を振り続けた覚えはある。




これ、聞こえはただの『八幡は強姦を犯した』でしかねぇぞ。もちのろん九幡も同罪ですよ?


雪ノ下、どんな表情してたっけな……俺が獣になってた時。

うっとり? いやいや、そんなの雪ノ下が恍惚な表情を浮かべる姿はどうも想像できん。

アへ顔? まあ、品行方正で純粋無垢な女性が性交による快楽に堕ちていき、よだれを垂らしながらきったない笑顔浮かべてる姿は、なかなかクルものが、あるよね。ただその選択肢は無かったはずだ。

睨め付け? 可能性としてはあるな。ただ、俺をにらみ続けていたというのに、3回もの性交を許すのか? それはきっと無い。


そもそも、1回目の時点で控えめな「あっ……んんっ……」という甲高い声が漏れ聞こえてきていた。俺から腰を振っておいて喘ぐはずもない。TDNじゃあるまいし。TDNも違うか、あのさぁ……。





……まぁ、雪ノ下は己の恥ずかしい姿を相手に見せることは、そもそも彼女のプライドが許さないだろう。

しかし、それを抑えきれず吐息混じりに艶やかな肉声を喉から口へ通してしまった。


きっと、彼女も感じてしまったのだろう。

まだ何も知らない秘密要塞に、大砲付き戦車が中へ強行突破してきたらそりゃ中で混乱を招くに決まってるよね。なぜに軍事的比喩を用いたよ俺。

きっと、彼女なりに我慢したはずなんだ。
姉に倣い、完璧を追求してきたのだから、ここでボロを出すわけに行かなかったのだろう。

たかが八幡の九幡ごときでっ……か、感じるはず、ないじゃな、ひゃっ! 的な。やべ大砲打ち上げ準備進行しちゃってる!

つい反射的にとなりで眠る雪ノ下を確認してしまう。
すると、

「すぅ……すぅ……ぅん……」


彼女の身体は左に捻られた。
よって、つい数秒前まで横顔を見ていたはずが、今では面と向かい合った状態になっている。しかもほぼゼロ距離。




正面から眺める彼女の顔は、肌にひとつも不要物が見当たらず、高校時代と昨夜に見たそれと変わらなくて、相変わらず可愛い。

強いて言うならそうだな……凛々しさが増した、というか。艶っぽくなった気がする。

いつだったか奉仕部の部室で、彼女の寝顔を見かけたことがあった。
あの頃には、あの時は気づかなかったが、今思えば微々たる幼さが残っていたかもしれない。


だがこの瞬間、隣で眠る二十歳になった彼女はと言うと……あれ、よく見てみるとやっぱり幼さがあるかな?

意識して確認すると、高校時代と変わっていないかもしれないという、曖昧さ全開の感想が出る。

ま、まぁ老けてないようだしいいんじゃないカナ?


……はぁ、俺はといえば、未だ思うことが素直じゃないというか、意地になって認めることをしない。

それが、俺の良さでもあるのだろうか。





「すぅ……すぅ……」


俺がそんなことを考えている間も、雪ノ下は気持ち良さそうに眠りに就いていた。

彼女の寝息がひと呼吸ひと呼吸、俺の口元へ押し寄せてくる。

な、生温かくて、しかもちょっと良い匂いがする……。

こいつ酒呑んでしかも歯も磨かずに寝たというのに、なんでそんなオイニー出さへんの? 肝臓と胃袋に置き型ファブリーズでもセットしてんの?


や、やばいなこれ。

一方、いつの間にか九幡は砲台セット完了してるし、ましてや横には同じく裸の雪ノ下。

吐息が俺の顔にかかるし、眠っているが故に表情が無垢なため、どうもブレーキを緩めかけてしまっている。

このままアクセルを踏み込んでしまってもいいだろうか? 昨日の今日で、なんとかなりそうな気がする。てかその気しかしない。


……キスして、いいですか?




「……だめ…………」

「!?」

うおおぉぉなんだああぁぁっっ!!??


「…………すぅ……すぅ……」



寝言かよ(白目)

またしても驚いた……ついつい勢いでキスしかけたわあぶねぇ……

あーあー、ビックリしたもんだから九幡拗ねちゃって元の姿のえのき茸に戻っちゃったよー。


……俺も寝るか。
いま起きたところですることもないし、ベッドから起き上がる時に雪ノ下が目を覚ましてしまうかもしれない。

こういうときは寝るのが一番だよな。俺も少し眠いし。

「はぁー…………」


彼女が起きた瞬間、俺たちってどうなるんだろうな。

そんな一抹の不安に結論を出さぬまま、徐々にまぶたが重くなるのを感じた。

記憶はそこまでしか残っていない.........。




1時間半書き続けたのにこんだけしか進んでない……

続きは明日書ければ良い方です。

お待たせしました
つづき書きます!




「ゃ……ん……やくん、比企谷くん!」

横からの俺を呼ぶ声に眠りから覚めた。

「んんっ…………ん?」

まぶたがぴったりとくっ付き、思うように目が開かぬまま声の方向を見やってみる。


俺はぎょっとした。

「ぎょぎょっ!?」

声にも出た。


雪ノ下が頬を朱に染めながら、ベッドに座を着いた状態でこちらをやんわりと睨めつけている。

彼女の姿を早急に確認してみると、真っ白のシーツで身体を隠していながらも、美しい白さを帯びて艶めいたうなじと肩が露になっている。

見ていてとても興奮する。あまりにも綺麗な身体をしているもんだから。


そんな俺の思いを見透かしたのか、一層ジトっと睨んできた。

「……あまり、ジロジロ見ないでほしいのだけれど……」

「あ、えっと、すんません……」

言われてすぐに目を背けたが、どうしても訊きたいことがありすぐに視線を雪ノ下へ戻した。





いきなりこんなこと訊いてしまっていいのか? ワンクッション、関係のない話を切り出してからの方が良いんじゃないか?


…………だか思い付かない。

こんな状況で沈黙が続くのも居たたまれないので、当たり障りのないことを訊いてみる。


「……いま、何時だ?」

「……10時32分」


ほう、若大将のゆうゆう散歩が始まったあたりか。一度も観たことないけど。


「……………………」

「……………………」



うん、当たり障りなさすぎてミクロも会話が膨らまなかったね♪

しゃべりの上手いやつは現在の時刻だけで容易く話を紡ぐことができるんだろうな。

この瞬間だけでいいから俺にもそんなスキルが欲しかった……。ラジオDJの精霊よ俺に憑依しろください。




「ねぇ、比企谷くん」

「あっ、ふぁ!?」


話しかけられるとは思わなくて、おもっきしアホな声出たわ。


「な、なんだよ」

「……私たち、本当に一夜を共にしたのかしら」


雪ノ下からの質問は、まさしく俺が彼女に問いたかったことそのものだ。


彼女を抱き締め、彼女と舌を絡め合い、彼女そのものを全身に感じた。

断片的ではあるが、その記憶は残っている。

彼女と堕ちたのは、揺るぎもない事実だ。


しかし、どうしてもお互いで整理しておきたかった。


この俺と、あの雪ノ下が、偶然にも再開したその日の夜、男女の関係となる。


俺はどうしても未だに信じられない。彼女もきっとそうだ。




決して、否定したいわけではないのだ。
彼女との関係を割り切りとして処理したいということでもない。



全くの真逆だ。

回りくどい言い方なんてする必要ないから、単純な言葉に代えるとしよう。



すごく、とてつもなく嬉しい。


だからこそ、俺は現在を素直に受け止められないのだ。


俺の望んでいたことだから。

俺は、雪ノ下とこういった関係になることに憧れていたから。


そして、その想いは一夜を通して再燃した。





俺は完全に、雪ノ下雪乃に恋い焦がれている。





うわぁ……俺氏キモッ

よくこんな寒いこと考えられるよな……。


一番の驚きは、その気持ちが本心からのものであるということだ。

でないとこんなこと思わないよな、普通。


おっと、返事が遅れた。
本当に一夜を共に過ごしたのかという問いだったか。

俺が黙るもんだから、雪ノ下がこっちを凝視している。やめろ見つめるな可愛いな。


「……ああ、俺はそのつもりだ」


ここで否定をしようものなら、俺たちの関係はここで終止符を打つことになり、記憶から追放せざるを得なくなる。


そんなこと、俺が望むわけがない。


「……お前と、夜を共にした」

「……そう、よね」


雪ノ下は俯きがちにそう返答した。

恥ずかしいのか、シーツの端をきゅっと握りしめる。




「……まさか、私が受け入れるなんてね。あなたを……」

「……お前が『帰らないで』って言ってきたんだしな」

「気が狂っていたのかしら……」

雪ノ下は額に手を当て、いかにも悩ましい表情をしている。

やめろ傷つくだろ。お前のこと傷物にしといてアレだけど。


「まああれだな、どっちも正気じゃなかったのは確かだろうな」


酒を交わし、彼女をおぶって家まで送る。
その後、暗闇で二人きり。
俺らにとってはそれだけでネジが大量に緩んでしまう。ついでに貞操観念もな。うわぁ聞こえ悪っ


「比企谷くん相手に……その……甘えてしまう、だなんて……」

あーあー顔が真っ赤に近いよ。そんなに屈辱ですか……。





「なんだよ……嫌、だったか?」

こんな問いかけしたところで何も益はない。ただ、何を話せばいいのかちっとも思いつかないので、埋め合わせに。


しかし、彼女は苦虫を噛んだような表情で俯いたまま黙りこくっていた。

やはり地雷踏んじまったか……っ!


さすがに朝チュン直後でこんな話題を振るなんて、デリカシー無さすぎだよな。

いかん、俺まで苦々しさ全開の顔になっちまってる。表情筋の動きで分かってしまいました。


「…………ぇ……」

「?」


気を沈ませていると隣からか細い声がした。

ちらと目で横を覗くと、雪ノ下が何かを言いたげそうに口を少し開いている。






「……いいえ」


そう口にしながら、首を小刻みに横へ振る。

彼女はシーツを小さくもじもじと握りしわ寄せながら、そう否定をした。


「……嫌、とか……そうは感じてないの」

ひと呼吸置き、言葉を続ける。


「ただ……まごついてしまって」


まごつき、か。
詰まるところ困惑してるってことだ。

俺だって同じ気持ちなのだから、雪ノ下もそう感じるのも当然だろう。


「……あなたと、こういう関係になるとは、ね」

「……そうだな」


こういう関係……。

ベッドで二人、俺たち以外に誰も介入することない部屋で互いを激しく求めあった。

俺なんてスイッチ入っちまったのか、無我夢中に腰を振ってるときに「雪乃!」と呼んでしまった。

ああ……思い出すだけで舌咬みきって死にたくなる。賢者モード長すぎでしょ。





ここまで気持ちを晒してしまうと、この際どうでも良くなるもんだな。

彼女も依然として心奥からの拒否反応を見せない。


ということは…………なのか?




きゅっ


「ひゃっ」

突然のことに驚いてしまったようで、全身をビクつかせた。


彼女の遊ばせていた左手を、そっと握ったからだ。

しかし彼女は手を引き抜こうとせず、ジッと10本の指が重なっているのを見つめていた。


「……どう、したの?」

数秒間、沈黙が流れた後に彼女は訊いてくる。






「…………いや、別にどうもしてないが」


白くすらりとした彼女の少し冷たい腕は微動だにせず、ただただ俺の黄色い腕にそっと覆われている。

この光景をずっと眺めていたい、そうさえ思えた。


「何よ、どうもしていないって……」

微苦笑する雪ノ下を横目に、俺もそっと破顔一笑する。

なんだろう、こんな優しい気持ちで微笑むのってずいぶんと久々な気がするなぁ。


……俺にとっての特別な人が、隣に寄り添うだけでこうも変わるのか。



「ところで比企谷くん」

「んぁ?」


感慨に耽ってたもんだから間抜けな声が出た。さっきも無かったか?


「そろそろ、服を着てもいいかしら?」


そうか、雪ノ下はいまこの時も…………全裸、か。






そう考えただけでムラッとくる俺はまるで童貞のようだな。数時間前にその汚名はめでたく破棄したけど。


本音を言えば、もう少しこのままの姿で密接していたいが、この部屋少し寒いもんな。

そんな理由で彼女に風邪を引いてもらいたくない。

…………彼女だから。


「そうだな、着るか」


あれ、でもどこで脱いだんだっけな。ティッシュならすぐに見つかったが。


「何を鳩のようにあちらこちら見てるの」

「いや、俺の服がどこに行ったのか分かんなくてよ」


脱いだ服の存在を忘れるほど本気でセックスしたのだろうか。がっつきすぎだろうよ八幡!






「……もしかして、さっきから感じる布擦れって」


雪ノ下が訝しい顔で身体を少しくねらす。

すると長座体前屈のように膝元へ腕を伸ばし、ベッドの中を探り出した。

そしてそこから出てくる見知った洋服ども。


……はい、俺の脱いだ服でした。

それを俺の元に放り出す。


「……ずっとこれのせいで、お尻の辺りに異物感を覚えていたのだけれど」


え、えぇ~~、ぼくのせいですか?

触ってみると、確かに…………ぬくい。


これが今しがたまで、雪ノ尻の下敷きになってたのか…………ぅあ、いかん生唾溢れてきただから童貞か俺は!!




「……温度を楽しまないでもらえるかしら」

弓矢のごとく鋭い眼光が飛んできましたけど、勘違いされては困るな。別に楽しんでいるわけではない。

単に両手で味わってるだけなんだが?(白目)


本当はクンカクンカスーハーしたいけど雪ノ下さんが隣にいて出来るはずもないので残念した。間違えた、断念した。


本格的に視線が恐いのでそろそろ着ますか。ついでに胴体で温もりを味わえますしねハッハッハ。早く着ましょう。


「あれ、てかお前の服はどうしたよ」

すでにあったか~いヒートテックを着ようとした時に、ふと疑問。

「……あそこに」

あごでクイッと指した方向を見やると、斜向かいの木製チェアーに丁寧にたたまれて置いてあった。

よく性交前にああ綺麗にまとめられるな……。エッチな気分になってなかったのん?





「取りに行くから、私の裸は見ないでちょうだいね、下卑谷くん」

まだ、見るって言ってないのに下卑扱いされた……。

まあもちろん、見るつもりでしか無いんだけどさ。なんなら今夜のおかずのために瞬間記憶してやろうかと意気込むまである下卑っぷりね。


「……言っておくけれど、女は視線で分かるのよ」


一瞬で目、伏せるよね。

だって! だって声に一切の冗談ぽさが混じってなかったから! だから!


まぁいいや、これから見ようと思えばいつでも…………うわぁ見れそうにないわ。
普段の夜はガード堅いだろうな……。





え、じゃあやっぱりいま見といたほうがええやん!!

夜は暗くて雪ノ下の裸なんて見えなかったですしねぇ?


ギイッ ペタペタ


そう考えていた刹那に聞こえてきたのは、ベッドのきしむ音と微かな足音。


今ならココから見ても気づかれまい。

大体、視線で分かるだなんてそんなのただの脅しだろうよ。

求めてもいない女のあれこれ情報を勝手にお伝えする小町からさえも、そんな話は聞いたことがない。


さてさて、すっと視線を上げまして……!



ん?





視界の中心では、下着に手をかけている雪ノ下の後ろ姿が映っていた。

彼女のシンボルである艶やかな長髪は少し乱れ、覆い隠されながらも隙間から白くちらついて見える背中が女性ならではの魅力をいっそう感じさせた。

そこからスタイルの良い細くすらっとしたくびれ、腰まわり、ヒップと素晴らしく完成されている背面体を俺は瞬時に眺めまわす。
何度でも何度でも何度でも勃ち上がり呼ぶよ、九幡が。少し黙ってろ……


しかし、彼女が下着を履こうと軽くしゃがみ、片足を浮かせたときだった。

左腕が内側に曲げられ、肘部分がこちらを向いている。

その肘が遠目で見ても分かるほど、白々とした身体に異彩を放っていた。


皮膚が少しばかり茶色く変色され、それはまるで擦り傷跡のようだ。

俺の覚えてる限り、高校時代にそのような違和感を抱いたことはない。卒業後に怪我でも負ったのだろうか。

階段からすっ転んだとか? 雪ノ下がそんなおドジなことしますかねぇ?

もしそうならば、とんでもなくギャップ萌えですよコレ。あぁ~^めちゃシコ。




「…………ねえ?」

「んぁ? …………んあっ!?」


な、なんだ!? まさか覗き見ていたことを本当に気づいてらっしゃった!?

突然の問いかけにまたしても間抜けな声を出す俺。雪ノ下さんにビビりまくってます……


「……どうした、んですか?」

なにを通告されるのか、いやどんな制裁を受けるのかと内心ビクビクしながら、至って自然な口調を装い聞き返す。

すると、


「……あなた、きょう大学は?」


「………………あっ」


目覚めてから一度も気にしたことのないその事項。

あれ、ちょっと待って。今日何曜日? いま何時何分何十秒? 地球が何回まわったとき!?




さっき見たかもしれない時計を凝視する。10時34分……前見たときより数分経過してる。


しかし肝心なのは曜日ですよ!

昨日は水曜だったはずだ。なぜならキュアでハピネスなハートキャッチしてから3日経った気がしたもんでして!
スマホの待ち受けを確認せねば!



2014/11/19(水) 10:34



トゥデイが水曜じゃねぇかボケェェェェェェェ!!!!!


「やっべ、きょう2限から! てかもうあと数分で始まっちまうし!」


しかも英語じゃんか!

サボりまくりんぐだったから、次の授業からは毎回出席しようと思ってたのに!

このままじゃ単位落としてしまう……自業自得なんて正当化してる場合じゃねぇっ!


「はぁ、気づくのが遅いでしょう……。そういうことは起きて真っ先に考え…………比企谷くん?」

「あ、あっ?」


下半期イチで焦っている俺に振り返る彼女。ありゃま? なぜ顔赤いのですか?




俺が焦燥感と疑問符を浮かべていると、内は恥ずかしそうに、外は汚いものを見るかのように睨み付けてきた。えっ?


「……あなた、着替えているときは私を見ないでと、言ったわよね?」

あら、懐かしの鬼気迫るかのようなオーラが見えるわ……。背後にキングデビルが憑いてるわね。去れぇぇっ!

こんなときに美輪さんマネてる場合じゃねぇよ! 黙れ小僧!


「いやっ、ちげっ! そのー……そう! 時計確認しようと思って部屋中眺めていただけであってだな、決してお前の芸術的なヌードなんか目も暮れてねぇっつの!」

完璧な言い訳だ。
すんなりとそれっぽい理由も出てきたし、無罪放免確定コースだろ。




ほっと安堵していると束の間、彼女の立つ場所から届く眼光が次第に弱まっていくのを感じた。

え?どこいった? まさか、俺の背後? 殺されんの嘘やろ!?

そう思いすぐさま顔を上げる。


すると見えたのは、元からいる位置から一歩たりとも動いておらず、胸元と下腹部を両手で隠している雪ノ下の姿だった。

だが代わりに数秒前見たときとはちがい、彼女はそっと俯いているような姿勢で佇んでいた。

表情を覗こうにも、彼女の黒髪の影に隠されて確認ができない。


なにか傷つけるような発言をしてしまったのだろうか。まぁ高校時代はコイツの言動にほぼ毎日傷つけられたんですがね……

少し不安になり、訊いてみることに。


「……なあ、なに急に押し黙ってんだよ。その格好で」

目のやり場に困るんですよね……フルヌードと違って、手ブラしているのを見ると余計セクシーに思えてしまう。





「……おい、雪ノ下?」

問いかけても返事がない。まるで屍のようだ、直立してるけど。


「……そんなに、魅力を感じないかしら」


細々と出された声。ギリギリで聞き取ることができた。

魅力を感じないって言ったか? 一体なにを指しているのか?


「…………私の裸は、つまらない?」


……え゙っ?

「は、はだか?」

いやそりゃ聞き返しますよね! 突拍子もなくそんな質問されても……。


依然として立ち尽くす彼女。依然として勃ち尽くす九幡。

俺はいったいどうしたらいいのか、困ったことに考え付かない。至極当たり前なのだが……。





とりあえず……、目の前のことから解決させる方が良さそうだよな。

彼女が問いかけてきたのならば、俺はそれに答えを返さねばならない。

お互いを認め合い、求め合う関係であるからには、そんなことくらい当然だよな。


返事は決まっている。



「いや、魅力的っつうか、俺のよく知る雪ノ下はこういう姿でなければ、ちがうと思うけどな」


あ、あれ?
思ってたよりも、素直な気持ち伝えれてない?

俺にとって最大級の褒め言葉……、いや。


むしろ、最上級の愛情表現…………のつもりだ。





一応、伝わった……のか?

偽りの無い、俺の気持ちは。



「……悦んで、いいのよね?」

ふっと顔を上げ、俺に視線を向ける。

「雪ノ下雪乃はそういう身体だろ。誇りを持てよ」


ふっと微笑み、彼女に視線を向ける。



……しかし、やはり恥ずかしさが生まれてしまった。

気持ちは確かなものだ。飾りを使わず、本当に思っていたことを口に出した。



ただ、素直に正直に、最も伝えるべき純度100%の想いは言えなかった。

肯定するだけで、彼女がきっと悦んでくれたであろうものを俺は、どうしてこうも廻りくどい言い方になるのだろう……。




『愛しているから、魅力的に想える』


これで良かったんじゃないのか……?





そう考えるものの、微笑みは崩さない。

内にはじわじわと後悔の気が表れはじめているのに、顔には顕せず止めている。

ほら、本来ならば生じなかったのに、こうして自分の気持ちに嘘をついてしまった。


そんなミスを犯してしまったというのに、彼女をちゃんと愛することができるのだろうか。


気づけば、今度は俺の顔が俯かれた状態になってしまっている。

九幡なんか他人のフリをするかのごとく、いつの間に萎縮していた。情けねぇ……


「……ふふ」


ん? 笑い声? 雪ノ下……しかいないよな。





起きてから何度目だか分からない、彼女の顔に視線を向ける。


そこには、高校時代に数回見覚えのある表情。

まるで、ちびっ子が楽しげに遊んでいる様を眺めるときに浮かべるような、柔らかな笑顔。


必然的に、俺たちは見つめ合っていた。


俺はベッドの上に腰掛け、顔の角度をやや上げた状態で彼女を見やる。

片や彼女は佇みながら、顔の角度をやや下げた状態で俺を見やる。

控えめに主張した胸を片腕で覆い隠しているもんだから、まるで腕を組みながら仁王立ちしているようにも見えた。

しかしそれがまた、彼女だからこそ嵌まるのだ。





そこからはまるで傀儡にされたかのように、俺はすっとベッドから起き上がり、雪ノ下の元へ歩み寄る。


いまは11月の朝。フルチンの俺にとっちゃ寒さに震えるところだ。

しかし、心は温かった。


「ひゃっ」


そうして直後、全身が温かさに包み込まれる。



彼女を目一杯に抱きしめたことにより、胸の鼓動が一定間隔で届く。

あばらの辺りだろうか、柔らかな双丘が弱気に反発してくる。当の彼女は強気な心をお持ちだけど。


なんか……昨日までの俺だったら、こんな風にいきなり抱きしめる行動を起こすなんてあり得なかったよな。

でもあんな可愛らしい顔で見られたら、本能が勝るわ。





こんなことが出来るのなら、どうして素直な想いを伝えることに躊躇してしまうのか……。


しかし、ここで今さらそれを言おうにもタイミングが悪い。いや、ムードは最高なんだけどさ。

でもそれ以上に、確かめたいことがあったもんで。


「……なあ、雪ノ下」

「………………?」




「……今夜も、ここに寄ってもいいか?」




彼女は胸の中で、小さくゆっくりと頷いた。



その日から、俺は雪ノ下の部屋を訪れるようになった。―――――
















雪乃『あなたのことなんか、もう――――――』
















①終わりー

下手すればこのスレだけじゃ完結しないから、次スレまで延びるかも……


土曜日辺りに更新できるかな?

今夜更新しますよー
1時間くらい待っててくださいな

文章が読みにくかったらごめんなさい
引き続きお付き合いください





②煌めく降雪に雪ノ下雪乃は内でハシャぐ。




―――――――――




大学の帰り道。
俺は電車内の手すりに寄りかかり、無意識で窓から景色を覗いていた。

日暮れが刻々と早くなっていくのを感じる。
先週のこの時間は、沈みゆく夕陽がまだ半分くらい見えていたはずなのに。

いまや陽はとっぷり沈み、どこまでも続く地平線は淡い紅色をした夕焼けに染まっていた。

たまに見る分には、いつまで観賞していても飽きないもんだな。


そんな思いに耽つつ、昨日今日の出来事を観照してみる。

まず、俺はいまどこへ向かっているのか。


雪ノ下の部屋である。


彼女をそっと抱き寄せ「今夜も寄って良いか?」と問うとお許しをくだすったのでね。






普段、自宅から大学までの通学には総武線一本乗るだけで済むのよ。

しかし今日に関しては、西船橋駅で京葉線に乗り換える手間をかけている。


彼女は高校時代から変わらず、海浜幕張にある高層マンションの一室に住まいを設けているからだ。


ぶっちゃけ家賃っていくらくらいなんだ……?

もしかして賃貸じゃなくてあれか、買ったのか?
あいつの家柄、有り得なくもないよな……おそろしや。


実は、俺も二十歳を迎えた昨年夏に一人暮らしを始めたのだ。

おい誰だいま『独り暮らしの間違いだろ』って唱えたの! 怒らないから正直に挙手しなさい!


まぁ実家からはそう離れてないんだがな、小さなアパートを借りて暮らしている。

借り暮らしのハチエッティてか!
全然上手くないな、寒いわな、むしろ。


なぜそうなったか。

両親に「アンタも子供じゃなくなったんだから大学卒業するまでは家事全般を一人でこなしな」と言われ、半ば強制的に追い出されたわけなんだな。

てか、普段からも俺と小町だけで家事をこなしてたんですがそれは……






ただ、何だかんだで小町は週2ペースで遊びに来るし、俺もちょくちょく実家に帰っては飯をご馳走になるので劇的に生活が変わったわけではない。


てか、小町さん遊びに来すぎじゃない?
家からほど近いからって、週2で訪れるもんかね?

どんだけ俺のことが恋しいんだよああもう世界一可愛い妹だわ抱いたろか。


「間もなくゥーー、海浜幕張ィー、海浜幕張ィー」


んな不埒なこと考えてたら、雪ノ部屋の最寄り駅に到着するとかなんとか。

そうですよね、雪ノ下さんがいながらそんなこと考える必要ないものね。


視界に駅のホームが映ると同時に、気づけば空は藍色に広がっていた。

電車に乗る前よりも更に冷え込んでいることだろう。

なにか温かい飲み物を買っていこうか。


もちろん、2人分を。






・・・・・・・・・



そういや、駅からどうやって歩けばいいんだっけ……?

ホットコーヒー2本と八幡's セレクションのコンビニおでんが入った袋を抱えながら、一抹の不安も同時に抱え込む。もう持てへん……


とりあえず、あの永沢くんの頭みたいにピョロッと飛び出たマンション目掛けて進めばいいかな。

海浜幕張駅界隈で最も高層なタワーだからよく目に付く。

改めて思うとすごいな、あんなマンションに高校生の頃から住んでるなんて……。


今さら思ったが、高級マンションなのだから空調設備はしっかりしているんじゃないか?

わざわざ温かいものを買わんでも、既に部屋は暖かろうよ……。



まぁせっかく買ったのだし、仲良くおでんを突っつき合いますかね。

そうすれば俺の心まで温くなることだろう。




悲しいかな、仲良く食えると決まってはいないんだがな。






「迷わずに来れた……」


駅から歩くこと数分。

アイツは何から食うだろうか? シンプルに大根か?
可愛らしく白滝? 意表を突いてちくわぶ?


こんなことを考えて、結論の出る前にたどり着いてしまった。

そもそも白滝から食うって可愛らしいのか?


やはりでかいマンションタワーなだけあって、目印になったわ。

寒さから逃げるため、小走りでエントランスに駆け込む。

そして押し心地のよい呼び出しボタンで部屋番号を入力し、彼女からの応答を待つ。


プツッ、というノイズが聞こえたと思ったら


『どちらさま?』


こいつ……。

「……俺だよ、俺俺」

『あら、一昔前に流行った手法の詐欺?』

「はぁ~……」


まさかインターホンに向かってこんなやり取りするハメになるとは……






『ふふ、からかってごめんなさい。入って』


すると幾多もの部屋へと通ずるエントランスの自動ドアが開かれた。

……まぁ、普通に開けてもらうよりかは楽しかったけどよ。

変にフワフワとした気持ちを抱きつつ、奥へ進むことに。


そのとき、声も音もしないのに左手側から気配を感じた。

焦って振り向いてみると、視線の先に鎮座している赤々としたものが見える。


……ソファだ。


文化祭実行委員を務めたとき、雪ノ下が倒れてしまって見舞いに訪れた際に、ここに座って待ってたっけ。


――――由比ヶ浜と、一緒に。





『……あたし、さ。』


『その……ヒッキーの、こと……』


『えと、えっと……』


『……あー! 回りくどいことはなし! 正直に伝える!』


『すすっ、好きですっ』


『……ヒッキーのことが、あたし、好き……なの。』

『好きっていうか、大好き……といいますか』


『……返事、聞きたいな。』






「……懐かしいな、このソファ」


隣同士に座ったのだが、特に会話をしたわけでもない。

俺はボーッとして、由比ヶ浜はスマホをクパクパ動かして。



……今ごろどうしてるんかな、アイツ。



ウィーーーン


「んぁっ!?」


ぎゃーす!

今度はソファ見てボーッとしてたら、時間切れでドア閉まりやがったクソウ!


ま、まじすか……、また呼び出さな……。

部屋番号を再度入力して、彼女を呼び出す。


大体、雪ノ下の部屋に来て、他の女を想うこと自体が間違っているんだよな。

由比ヶ浜結衣には恋愛感情を抱いていない。

俺は雪ノ下雪乃を愛しているんだ。

だったら、意中にない人物のことを考えてはならない。ご法度だ。


そうケジメを付けたところで、プツッ音が。


『どちらさま?』



あ、さっきよりも冷たい声音ですね。

八幡分かります! ここ進研ゼミで解いてないけど。






・・・・・・・・・・


「どうして解錠したのに、もう一度開けさせたのかしら?」


彼女が住む部屋のドア前に立たされ、詰問を喰らう。


由比ヶ浜のこと考えてました……

なんて言えるはずもなく、ただただ口からのおまかせの出任せで誤魔化せする。

「エ、エントランスを眺めてたんだ。艶と光沢があって綺麗だなぁ、と釘付けに」

「変態ね……」


変態は死ぬべしといった表情で俺を睨み付けた。

だいたい、二回呼び出しただけなのに説教受けるってどゆこと?

あー寒い……。
せめて中で叱られた方が、身だけでも温かく…………あ。


「まぁあれだ、せっかくあったかいおでんとか買ってきたから、冷める前に食べようぜ?」

だから部屋に入れてください……、そう目で問いかけると

「はぁ……。ほら、上がりなさい」

「サンキュ」


おでん買っといてよかった……。







昨夜とは違い、部屋中の照明が灯されている。
この光景もまた新鮮だ。

玄関からリビングまでは、暖かみのある電球色の蛍光灯が使われている。

その効果なのか、雪ノ下が放つオーラがいつもと違った雰囲気に感じ取れる。


まるで、冷気を帯びた傲慢さがセーブされたように思えた。

言い換えると、温もりを抱えた柔らかな意地っ張り、みたいな。

俺の勝手な解釈かもしれないが、照明の色でこんなにも彼女への印象が変わるんだな。


見えたものすべてがオレンジっぽく照らされることで、落ち着きに浸れる。

この空間で彼女を窺うと心が安らぐ。

どうしてジッと見つめないか、そんなの単純。



「……視線を感じて、どうも気持ち悪いのだけれど」


彼女の後ろに付き、リビングへ進みながら視線を向けているとそう咎められた。


な? 背後を見つめてただけでこれだぜ?

ゴルゴかなんかかお前は。







「じゃあ適当なところに座っててもらえるかしら。おでんを皿に移してくるわ」

「おう、頼んだ」

片手に持っていたおでんの入った袋を渡す。

しかし、それを受け取っても台所へ移動しない。


「……なんだよ、こっち見て」

俺の目を見つめたまま、頑なに動こうとしない雪ノ下。

なんだどうしたよ、俺なにかいま減点対象の行動しましたかね?

こんな時間からさっそく「スケベしようや」って目で見てるわけでもなし、特に思い当たる点は……


「……脱いで」

「…………は?」


おいおいおいちょっと待てよ?

彼女は今なんておっしゃいまs


「だから、早く脱いでちょうだい」


脱げ……だとっ……!?

まじすか雪ノ下さん……。
こんなムードのかけらも無い雰囲気で、おっ始めようってか?

「……ぬ、脱ぐん……ですか? もう?」


ついつい、もう?って訊いちまったよ。俺ももともとヤル気満々でした宣言しちまったよ……。






カチンコチンの状態で返答を待っていると、表情をいっさい変えずに俺を見つめたまま口を開く。


「当たり前でしょう? ねえ、はやく…………」


……ううむ、こういう時は演技でもいいから、頬を朱に染めて俯きながら言って欲しかった……

こんな真っ直ぐ睨めつけながら催促されても、なんかちょっと、ねぇ……?

とか思いつつも、無変形状態にあった残りひと部分も気付けばカチンコチンコになってたので俺は日々変態を極めてきているなと痛く実感しました。本当にありがとうございました。


「……分かったよ、ったく。……脱ぐぞ?」

なんだこのシチュエーション。
恥ずかしさ満載だが……アリ、かも……//

堂々と告知してからベルトに手をかける。

手が焦って、外すのに一苦労していると、向かいから「ちょっ」の一声。







空耳か?
はたまた、その言葉は雪ノ下が漏らしたのか?

瞬く間に考えを廻らせ、顔だけ正面を向いてみる。

数秒前まで視界に映っていた彼女の顔つきが一転、我が儘を言うとしたら今すぐ死んでほしい。といった表情に早変わりしていた。


チャックを下ろしながら、絶句してしまう俺。

空気の読めない九幡は、社会の窓からひょっこりひょうたん島していた。


おい、客観的に見たら酷いぞこの画。


「…………フケ谷くん、誰が下半身を露出しろと?」

黒々しいオーラを纏いながら、冷静に訊いてきた。

「いや、早く脱げって指示されたから、まずは肝心なアンダーな方…………ん?」

いまの俺の格好って、寒さが漂う外から戻ってきたばかりだから、脱衣を一切していない状態だよな……?


…………そういや、ダッフルコート着たままだった。





「……あなた、一応有名私立大学に通ってるのよね?」

九幡がそそくさとアジトへ戻ってゆくのを感じながら、耳を傾ける。


「……馬鹿野郎なの?」

「………………うぁ」


いっそ罵詈雑言を吐いて俺を貶し殺してくれええぇぇぇ!!

ここで死んだら無念と苦悩にまみれたままあの世行きだけどな……。


「はぁ……固まってないで、いいから早くコートを脱いで渡してちょうだい」

「は、はい、サーセン……」

手腕が思うように機能せず、ボタンを外すのに苦戦してしまう。


雪ノ下はこの瞬間も、さっきまでと同じような表情でいるのだろうか。

そして俺はいま、どの方向へ視線を向けているのだろうか。

捻くれ者としてではなく、絶望の淵に立たされた人間が浮かべるような、そんな腐った目をしていることだろう。

半分死んでるわこれ。






「…………遅い」

雪ノ下は突如として、俺の前へ歩み寄ってきた。

「エッ?」

気を取り直して、血が巡ってなかった瞳に力を入れ焦点を合わす。

彼女の顔を覗くとやはり未だに、ゴキブリを見ているかのような目を俺に向けていた。

「……そんなに沈滞していたら、いつまて経っても回収できないじゃない」


その刹那、差し伸べられる白く美しい両手。

指先の向かった行先は、俺がいま着ているコート。


すると引っ掛けられたボタンを一つ、また一つ……と手際よく外していく。

ボタンをじっくり確認しているのか、それともただの恥ずかしさ故か、雪ノ下の顔は俯きがちになっていた。

突然の出来事と、彼女の意外な行動に俺も照れてしまい、つい仰向いてしまう。


なんだよ、この新婚気分は……



…………良いな。





「ほら、袖」

「んぁ? あ、あんがと」

留め具が外れたコートの袖から腕を抜き、身体から剥がして二つ折る。


「そうね……。悪いけれど、私の部屋のポールハンガーに自分で掛けておいてもらっていいかしら」

「お、おう」

ポールハンガーなんぞものがあるのか。シャレオツだな。


そして雪ノ下はようやく台所へ向かう。

俺のせいでおでん冷ましちゃったよな……。自分の棒つくねが勝手に熱くなったおかげで。


にしても、自分で掛けといてって言われて彼女の自室へ案内されるとは。

それだけ俺に心を開いてくれたってことなのだろうか?


……だとすれば、嬉しい。




ふと、台所の方を見やる。

彼女はおでんを鍋に移していた。火にかけて温め直すのだろう。

しかしよく見てみると、さっきまで着ていた服装とどこか違う。


あれは……なんだ、黒いエプロン……?


………………あっ。

もしかして、一緒にららぽーとへ出かけたときに買ったものか?


由比ヶ浜の誕生日プレゼントを選ぶってことになり、二人でエプロンを物色したときだ。

猫の絵柄がプリントされた黒のかわいいそれを雪ノ下が見つけて、自分が気に入ったために試着してたな。

「に、似合うかしら?」なんて気恥ずかしげに訊いてきてな。可愛かったなぁ。


……あれ、俺ってあの時なんて言ったっけ?




高2のときは変に尖ってたからな……俺とアイツ。

そんな頃であっても、俺は素直な感想を伝えたんだっけ?


いまこの瞬間に映る光景。


てきぱきとおでんを調理する姿。

食器棚から2つの皿を取り出す姿。

俺を気に掛けてくれたのか、七味唐辛子を探している姿。

それを見つけてちょっぴり微笑む姿。

そんな、思い出のエプロンを身に纏った姿の彼女。




あぁ^~、とてつもなくムラムラしてきたんじゃ~


言わずもがな、エプロンを着ていることでこうなんだ、魅力が十二分に引き立ってまあその……


ああもう、めちゃくちゃ可愛いんだよ!!





どうしてこんなにも似合うのかね。


もしこれが裸エプロンの状態であったならば、今夜は寝かせない自信しかない。

今度ベロベロに酔わせたあとに頼んでみるか、服を脱いでエプロン着ろくださいって。


「ちょっと?」

「うぉ、なんだよ」


ったく、人が裸エプロンの雪ノ下にスケベなイタズラ繰り広げているのを想像していたってのに。


「……そんなところで鼻の下を伸ばしながら棒立ちしてたら気味が悪いし、声をかけるに決まっているでしょう」

「え、伸びてた? 鼻の下」

「ええ、チンパンジー以上にね」


中学生か、俺は……




「ほら、早くそのコートを掛けてきてちょうだい。そろそろお皿によそるから」

「へい……」


いい加減そろそろ俺がドスケベだってことに感付かれそうなので、任務を遂行すべく雪ノ下さんのお部屋へ。


「スイッチどこだスイッチ……これか?」

パチッと照明を点けて、辺りを見回す。

綺麗に片付いているため、ポールハンガーはすぐに見つかった。


適当に上段に引っ掛け、ふと部屋中を眺める。


最初に目が付いたのは、すぐそばに置かれた白いシーツのダブルベッド。

十数時間前に、彼女と初めて繋がった場所。

……色っぽかったなぁ。

結わえていた紐をほどいて、髪の毛をくしゃくしゃにさせてもうこれ以上はホントに我慢できなくなるから考えるのはよすんだ八幡!




ベッドから目を離すと、その上にある窓のカーテンが開いた状態なことに気がつく。

普段から開けっぱなしなのか?
んなわけないよな、カーテン取り付けてるんなら。


てなわけで俺の独断と優しさで、閉めてあげることにした。


そして近づくと、窓台になにか置かれているのを発見。


「……写真立てか?」

しかし、中には一枚も写真が入ってない。

ただのインテリアなのだろうか。意味のない装飾ですこと。

あまり気に留めず、俺はシャッとカーテンを引いた。

「比企谷くん、できたわよ」

リビングから聞こえる馴染みの声。

腹も減ったし、突っつくとしますか。






・・・・・・・・・・


「いただきます」

「どうぞ」


あ、いまどうぞって言ったの俺やで。買ってきたの俺だし。


さあ雪ノ下さんよぉ……あんたはどれから食うんだい?

2つ入った巾着から食べ始めたとしたら、なんだか今日イケそうな気がする。あると思います。

まぁ俺の予想はそうだな、シンプルに大根あたりじゃないかと予想。

よくフゥーフゥーしてから食べてくれると、八幡的にポイントくっそ高い。


そんなこと考えていたら、いつの間に箸が伸びていた。

彼女が捕らえたもの……それは……



「玉子……だとっ……!?」

「え?」





半分にほぐされ、つゆの染みた玉子を挟んでいた。


「ふぅー、ふぅー……はむ」

お、おぉぉぉ!?

い、いまの見た!?

2回ふーふーしてから口に入れたの見た!?

俺は一部始終を余すことなく見てやったぞ……羨ましいだろ。

「くぅ~~~wwww」

「ねぇ?」

「あっはい」

「色々とうるさいわよ」

「さーせん……」


『色々と』ってのは、声とか目とか顔のことを言ってるんだろうな。やかましいわ。


「せっかく温めたんだから、比企谷くんも食べて?」

「……そうだな、いただきます」

「どうぞ」


逆転したよね、いま。





俺は大根や玉子などの主力メンバーは後にまわすタイプだ。

ぼっちは同胞に対して親近感を覚えてしまうもんだ。
そのため、おでん界におけるぼっちと云える具材を優先して食べるという、そんな粋な行いをたまにする。


まぁそうだな、5回に1回くらいか?

そりゃあだって、大根から食いたいときだってあるしさ。


今回は、がんもどきから頂くことにする。

こいつ、子どもからの人気は低いよな。俺とちがって。

まぁ名前も可愛くないし、見た目もキャンタマ袋みたいだから致し方ないよな。

ただ、がんもどきは汁をよく吸ってくれるから好きだ。

悲しいかな、逆に言えばこいつの利点ってそれしか無いよね。



がんもどきを箸で捕らえ、冷ましもせずにすぐさま口の中へ。

あっつっっっ!!

だが、これがいいのよ……。

ひと口噛み締めるごとに、昆布ベースの汁が溢れ出す。たまらんのぅ。


「……ふふ、美味しそうに食べるわね」

「えっ、ほうは?(そうか?)」

「ええ。見ていて、楽しいわ」


それ、滑稽に思われてるってわけじゃないよね?

良い意味として捉えていいんですよね、これ?


てか、どうして俺はおでんを食うだけで、こんなにも思考を働かせなきゃならないんだ。

もう、おでん界のぼっちだとかそんなのめんどくさいから、やっぱり普通に大根食うわ。うまうま。




大根に舌鼓を打っている俺の隣で、残り半分の玉子をふーふーする雪ノ下。

たった24時間前に、自販機で再会した俺たち。


まさかこうして、彼女の家で別々のおでんを突っつく時が来るとは……。

人生、なにがあるか分からんね。


「……不思議よね」

「ん?」

玉子を一旦置き、唐突に話しかけてきた。


「……卒業してからずっと会っていなかったのに、まさかあんな所で偶然……」

「!」

これもまた偶然なのか、俺と全く同じことを考えていたようだ。


「……そのあと、ここで一夜を共にして、いまに至る」

一夜って言うのやめてくれ……思い出してムラッとしちゃうから。





「フィクション物語のような展開なのに、現実で実際に起こるなんてね」

「……そうだな」


手遊び感覚で、つい大根をほぐしつづけてしまう。

楕円形だったのが、少しずつ小さな一口サイズにカットされていく。


「……嬉しかったの」


彼女がそう口にすると、俺の手がピタッと止まる。


「あの時に思った、率直な感想」

「………………」

横目で彼女を覗くと、部屋の照明がオレンジがかっているせいか、頬が朱に染まっているように見えた。

……いや、違う。


「そして……」


見えた、じゃない。


「……その気持ちは、こうして過ごすいまも、変わらない……」


事実、映っていた。





あぁ、もしかしてあれかな。

あっつあつおでんを食ったことによって、顔が上気しちゃったのかな?

ったく、もっと冷ましてから食えばいいものを―――




21歳になった現在。

そのように逃避することが許されないのは解っていた。


雪ノ下雪乃は、俺のたいせつな存在だ。

そんなの改めて考えるまでもない。


きっと、彼女も俺に対して同じような感情を抱いてくれていることだろう。

彼女の想いは、ちゃんと俺に届いているから。


誰が恋心を持っているか。

そんなこと、高校時代から判別ができたのに。


かつて、気づかぬフリを続けたせいで、一人の女子を傷つけてしまった。

こんなにも最低な二の舞を演じたいと、思えるわけがない。



……もう、鈍感な人間を演じることは、止めたのだから。





「だから……、その……」


スッ―――

「!?」


俺の透いている左手にハンカチを被せるかのように、彼女は右手を重ねてきた。


瞬間に伝わってきた体温。



……それは明らかに、冷めていた。



「私は……」

俺の左手が、冷えた右手に包まれる。

なぜだろう、感じた温度のことが頭から離れない。


冷たい、冷たい冷たい冷たい冷た――



「――私は、あなたに、癒されたい……」





そう言い放って五本の指に絡めてくる、もう一方の華奢な五本の指。


雪ノ下から告げられたそんなコトバに、俺はなにも返せずにいる。

気づけば俺は、あぐらをかく自分の足元に視線が向いていた。


そんなことより、今さっき聴いた彼女からの想いよりも前から、真っ先に抱いた感想がある。


左手に継続して伝わる、哀しげな冷たさ。

“温もり”とは決して表現のできない、零度に満たない雪が覆っているかのような。


だからか、俺はこんなことを思っていた。

いや違う、想っていた、の方が正しい変換か。



彼女の両手を、俺の力で温かくさせたい。


血が通っているということを、しっかりと感じ取れるようにしたい。





スッ――


「!」


自分の操作なのか、それとも勝手な行動か。

重ねてきている右手に、箸を持っていたはずの右手を乗せた。


両手で彼女の指先を包み込んだとき、ここまでしたらもう言うしかないなと、そこで腹を括った。


「……俺のキャラにまったく合わないこと言うぞ」

「え?」


この段階ですでに恥ずかしい……。


「その、あれだわ。お前が過去になにがあったのか分かんないけどさ……」


一呼吸置いて、雪ノ下に顔を向ける。

そうする前から彼女は俺を見つめていたようだ。


「ぁ……」


そんなことでいとも簡単に動揺し、言葉に詰まる俺氏。




「っぐ…………あ、あのな」


右手に力が入りかけたが、雪ノ下の手を上から握っているため、焦ってこらえる。

笑ってこらえられる状況ではない。


目が合ったことでつまずいてしまい、言い出すタイミングを見失ってしまった。


「パク……パクパク…………」


口は動くのに、肝心な声が出せない……。
いや、出てこないのだ。


おい、こんな時にコミュ症まがいなもん発動してんじゃねぇよ!!

俺の(暫定的に)一世一代の大勝負という場面だっつーのに!!


……まあ、だからこそ荷が重く感じて言い出せないんだろうけど。


「…………ふふ」


目が泳ぎっぱなしの焦心状態でいると聞こえた、微笑みの声。

可愛らしい苦笑、といった感じか。

短い吹き出し声を漏らした正体に目を向けてみると、俺を見てこう言う。



「ふふっ……あなた、まるで阿呆な顔した鯉みたいね」


発言内容は可愛げゼロだった。




「んだよそれ……はぁ」


どうせあれだろ、この流れで俺のこと「にしき谷くん」とか呼ぶんだろ?
鯉だけにさ。

こちとら、大学入試以上に緊張を感じまくって、真剣に臨んだというのにね。
空回りだな。


……ただ、彼女の笑った顔が見られたから、これはこれで良かったかもしれない。


高校時代の雪ノ下雪乃といえば、スマイルをまったく見せない女子であった。

少し笑ったと思っても、無愛想さが残っていたりと、完全に破顔するなんてことは無かったはず。


しかし、高校卒業から二年以上が過ぎ、かつての部員同士という関係から大きく前進し、親密な間柄……。


……そうなれたのは、厳密に言えば今日からかもしれない。



でもどうなんだ?

いまそう言い切ってしまうと、もしかすると俺の思い込みだったりする可能性も微レ存だよな……。





でも、彼女がくすくす笑っているこの瞬間も


……俺たちの手は、指が絡まり重なったままだ。




昨日から色々とおかしいんだよな、コイツ……。

いまこうして笑顔を見せるわ、
いまも継続して手をほどかないわ、
そもそも二人っきりの空間を受け入れるわ、
俺のために素直におでんを温めてくれたわ、
俺といれて嬉しいって言うわ…………



これ、さ。



『雪ノ下は、本当に俺のことを好きでいてくれている』ってことで確定していいよね?

とっとと、確定させたいんだ。




俺も、心から愛しているから。



カバッ――


「ひゃっ!」







床に箸が二本落ちたのと、俺が彼女を押し倒したのはほぼ同時だ。


互いの顔は、わずかに10センチも満たない近さにある。


突然の出来事に驚き、目を丸くする雪ノ下。

突然の出来事を起こし、ジッと見つめる俺。



少し、大胆すぎたかもしれない。

後悔? そんなこと微塵も感じていない。


これでも足りないくらい、雪乃のことを求めている。


この性欲どうにかなんねえかな。

ま、相手が相手だししょうがないか。


押し倒すためにほどいた彼女の手を、あらためて握りなおす。

……あれ、最初に触れたときより温かいな。


そうか、さっきまで重ねていたんだし、俺の手の熱が残ってたんだろうな。


たださすがに、それだけが理由じゃないはず。



彼女の整った顔も、ピンク色に変わって熱を帯びていた。





「……こんな荒業、レイプと同等じゃないの」


雪ノ下が唇を尖らせて非難する。

しかし視線はまったく関係ない方面に向いていた。

恥ずかしがってる……。


「いや、和姦だろ?」

「なに言ってるのよ……エッチ」


チワワのような潤んだ瞳で、軽くキッと俺を睨んだが……

恥ずかしさですぐに眉が下がり、表情が照れたものに変わっていった。


襲いたくなるに決まってるよね、こんなに可愛い恋人。


キスをしたのはその刹那だった。

一夜ぶりに感じる、彼女の小さく柔らかな唇。

俺が必死に貪っていると、競うかのように雪ノ下も顔をうずめてくる。


互いの唇をクッションに、目を閉じて顔を寄せ合う俺たち。

まさに若気の至りのようだ。


先に舌を入れたのは、雪ノ下だった。

俺の口内に構いもなく侵入してくる雪ノ舌は絶品だった。

こんなときに思い付く寒いギャグといい、比喩にもならない表現といい、最低だ……俺って。





「ん、んむっ…………はぁっ……」


彼女から漏れ出る声に正気を失いかける。

キスだけで1時間余裕で過ごせそう、だとかアホな考えが沸く。

しかしディープキスを長く続けていると、呼吸が難しくなってきてしまった。

いったん小休憩をと思い、唇から顔を離そうしたそのとき。


「んんっ……!」

「んむ゙っ!?」


彼女に頭を抑えられ、唇から離れなくなった。

雪ノ下さん、盛るのは良いんですけど、その……大胆すぎませんかね?

てか最悪死ぬし。酸素くれし。

贅沢な悩みだ、とか思いながらも彼女の舌の相手をつづける。


昨夜は暗闇の中で口づけを交わしたが、いまは彼女の顔がくっきりと明かりに照らされているので、実感がよく湧く。

ごめん、俺いますっげぇ幸せだわ。





さすがに彼女もキス疲れしたのか、俺の頭を抱えている両腕を離した。

ようやく雪ノ下の唇から距離を取るも、感情を繋いだ透明な糸が、互いの舌先から編まれていた。


「はあっ……はぁ…………」

息が切れぎみながらも、恍惚な表情で俺から目を離さない。

高校時代からこんな顔を見せてくれるようだったら、部室で二人っきりのときに迷わず食ったのに。

女って、ハタチを超えたら変わるもんなんかな。


「……激しい、のよ」

「ばっか、それお前だからな!」


今度は、やれやれといった顔してきやがる。
ウザ可愛ぇ……くそぅ……

そんなことを考えてると突然、テーブルに置いてあった俺のスマホが鳴り出す。


「んぁ!?」


そら、いきなり鳴ったら驚くわ。心臓止まりかけた…………いやなぜだ八幡。



すみません寝ます……


最近、更新頻度低くて申し訳ない
更新しても投下数少ないわ、遅筆だわでどーしょーもない

気長にお待ちください……

後日

雪乃「妊娠した」

八幡「・・・は?」

てす

八幡「言ってることがよくわからないんだが……?」

雪乃「だから、妊娠したのよ」

八幡「誰が?」

雪乃「決まってるじゃない」

雪乃「私よ」

八幡「」

八幡「おいおい、冗談にしてはきついぞ?」

雪乃「こんな事、冗談で言うわけないじゃない」

八幡「冗談じゃないってことは、……本当にデキたのか?」

雪乃「ええ。ここに母子手帳もあるわ」

八幡「マジか……」

いちからここはリレーssスレになったんだよ。
乗っ取りはタブーだぞ

八幡「産む気、……なんだな?」

雪乃「ええ。当たり前よ。仮に貴方がダメだと言っても、堕ろす気は無いわ」

八幡「そうか……」

雪乃「……ええ」

八幡「雪乃、結婚しよう」

雪乃「……本気、なの?」

八幡「ああ。本気だ」

抱き合う二人。
幸せなキスをして終了。

くぅ?疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、八幡達のみんなへのメッセジをどぞ

戸塚「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

由比ヶ浜「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

雪乃「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

川なんとかさん「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

八幡「・・・ありがとよ」ファサ

では、

戸塚、由比ヶ浜、川なんとかさん、八幡、雪乃、俺「皆さんありがとうございました!」



戸塚、由比ヶ浜、川なんとかさん、八幡、雪乃「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

おひさしぶりです生きてます
しばらく執筆進められてませんでして……

完結させる気はあるのでお待ちくださいな

八幡「うひょおおおおおお」

雪乃「あへええええええええ」

小町「」

八幡「はちまんこいくぅうううううう」

雪乃「」

大変長らくお待たせしました
つづき書いていきます



さすがに彼女もキス疲れしたのか、俺の頭を抱えている両腕を離した。

ようやく雪ノ下の唇から距離を取るも、感情を繋いだ透明な糸が、互いの舌先から編まれていた。


「はあっ……はぁ…………」

息が切れぎみながらも、恍惚な表情で俺から目を離さない。

高校時代からこんな顔を見せてくれるようだったら、部室で二人っきりのときに迷わず食ったのに。

女って、ハタチを超えたら変わるもんなんかな。


「……激しい、のよ」

「ばっか、それお前だからな!」


今度は、やれやれといった顔してきやがる。
ウザ可愛ぇ……くそぅ……

そんなことを考えてると突然、テーブルに置いてあった俺のスマホが鳴り出す。


「んぁ!?」


そら、いきなり鳴ったら驚くわ。心臓止まりかけた…………いやなぜだ八幡。



脅かしたことなどお構いなしに、着メロとバイブレーションはひたすら部屋に響きつづける。

な、なんだよこんな時に……。

焦燥と悶々とした気持ちで身体を起こしスマホを取ろうとする。


すると急に、袖が引っ張られる感覚が伝わった。

「うぉっ」


腕のほうへ目を向けると、そこには彼女の手の先が見える。

指で袖先を摘まみ、俺の動きを制止させていた。


なんだ、どうした?

そう問いかけようと視線を彼女の顔に移すと……



そこはかとなく寂しげで、どこか憂いな色を混ぜたような……

僅かながら見て取れるほどの、そんな目を浮かべて俺を見つめている。





彼女を見たとき、ふと幼かった頃の妹を思い出してしまった。


臆病になり、いまにも泣くのを我慢している……

そんないつかあった出来事。


それを彷彿とさせてしまう雪ノ下の表情。


なぜだ?


きっと彼女は、このムードを壊さないためにも第三者に構ってほしくないという思いがあるのかもしれない。

だからこそ、電話を取ろうとする俺を黙って引き止めたのだろう。


しかしそうであれば、いつものように無愛想な形相で止めるほうが雪ノ下らしい。

どうして今まで見せたこともない、そんな面持ちを浮かべる必要があるのかがよく解らない。




そう脳裏で考え込むうちに着信音はいつの間にか止んでいた。


「…………あっ」

彼女はハッと驚いたような表情ですぐさま袖先から手を離した。

ほんのり朱に染まった顔で目を逸らされる。

そんな仕草が可愛くて、ほんのり胸が締め付けられてしまう。


「っ………………」

「………………」



そうして訪れた沈黙。

体勢もお互いそのままで、どちらからとも声を発することがない。


この状況でどうしたらいいのか考えつかないまま、俺はただ俯くしかなかった。

無遠慮にただ刻々と時は経てゆくが、壁に掛かった時計の秒針がとてもゆっくり進んでいるように聞こえる。




思い出すなぁ。

それはまるで次の授業までの埋め合わせのために、休み時間に昼寝のフリを徹している時と同じくらいの遅さだ。

あれホントなかなか時間経たないんだよ……。


ちっとも眠くなくて、目を閉じてたらまぶたが疲れるほどパッチリお目覚め状態の時なんか特にな。


……なんて余計なことを考えることで気を紛らわせ、ようやく変な緊張感を取っ払った。


彼女に訊いておきたいことが出来たから。


そして一呼吸を起き、


「っ…………」


勢いよく、彼女に目を向け……




いや、目が合った。



「なあ、雪ノ――」
「ねえ、比企――」



ヴゥーーーーーーン


「!」


するとまたもや直ぐに、俺のスマホが着信音を立てながら振動しはじめた。




彼女と見つめあった状態がつづく。

ったく、なんでまたこんなタイミングで……。


さっきのこともあるので、音が止むのをただ待つことにした。



「…………出て」

「え?」

突然口を開いたのは雪ノ下だった。


「二度目の着信よ? 緊急な連絡かもしれないわ」


彼女の言うことは至極正論だった。

俺も実はさっきから着信が気になりまくって仕方がなかったのだ。


それに無視して何度も連絡が来るくらいなら、とっとと電話を取って用件を片しておきたい。


「……すまん、出るわ」


八幡「やはり俺の青春物語は間違っている」

雪乃「?」



詫びを入れてから体勢を整え、スマホに手を伸ばす。


が、居たたまれぬ空気に動揺しちまったのか、距離感を間違えモノに届かない。

しゃーないので、あぐらをかいたままケツを浮かしつつ前進してみて再チャレンジ。

なんとかスマホに手が届いた。


こういう場面でスッと取ることができたらなぁ……。

ダサさをアピールしてしまった。


加えてさらに落胆した気持ちで画面を覗くと、チクショウやっぱりコイツか……。

こんな状況で、予想通りの発信者である。


「……も、もしもし」

『あっ、ちょっともしもしー?』


いつも顔を合わす人物と、いつもの口調を装っての通話に挑まねば……。



電話の主は、妹・小町からだった。




だいたいこんな夕飯時でも普通に電話してくる時点で、人物候補は一人しかいない。


ぼっちであるがゆえに着信なんてもっぱら肉親からのみで、たまにかかってくるのは金の貸付を求めた若者からの間違い電話くらいだ。


どうやらどこぞの公衆電話に貼られたサラ金チラシに掲載されている番号と一桁違いらしい。


ある日知らない番号から突然かかってきて、

「え、ちょ、いつ新しく番号交換したっけ? 誰とだったけ!?」

とマジで考え込みつつ出てみたら全然知らない声で


「い、いくらまでならOKですか!?」


もうホント疲れるんすよ毎回。

いくらもタラちゃんもOKもクソもねえっつの!


ちゃんと番号確認しやがれください。

そして一時の胸の高鳴りを返せ……。




だからといって、最愛の妹からの着信であれば逆に嬉しさとかそういう感情は現れるわけでもない。

むしろ、無心で電話を取り無心で会話するのが現実だ。

まぁただ、落ち着いて話せるってのもあるかもしれない。


だがそんな定番も、今この状況では変則だ。

普段から耳に入るその声が、いまじゃ警報のようなまったく聞きたくもない音声に感じてしまう。


そう思いながら、心からの質問。



「……なんの用だ」


これ。ほんとこれ。

何なん、マジKYだわーないわー。

っべー、小町さんっべー(重低音)





小町『なんの用って、お兄ちゃん……』


うわ、いまハッキリと呆れた口調へと変わったぞ。

大抵この次にくる言葉は俺を罵倒するものである。


小町『お兄ちゃんはスケジュール管理もできないの?』

ああこの流れはお説教ですね分かります……。

俺だって、「電話するタイミングをよぉぉぉぉぉ!」って叱りつけたいのだというのに。


にしてもなんだ、スケジュール管理?


「なんだ、どゆことだ?」

小町『ホントに忘れてるの!?』


忘れ? 友だちの作り方か?

そんなの覚えたこともありませーん……





「すまん、なにがなんだか」

小町『もう情けないなぁ……。今夜はウチで集まってディナーって予定組んだじゃん!』


一秒考えて、俺は固まった。


「……あっ」



くっそめっさ超絶くそみそ忘れてたあぁぁぁ!!!


おとといだかさらに前の日だかに約束してたんだったよ。

数週間ぶりに実家で家族とテーブルを囲んで、今秋初の鍋をつつくというぼのぼのした予定を。


その直後に雪ノ下と再会してあーだこーだという非常に濃ゆい出来事が起こったおかげで、すっかり記憶の外へと放浪させてたわ。


「すまん、素で忘れてた……」

『ぐへぇー』


電話越しから小町の間抜けなボイス(可愛い)

でもこれは本当に俺だけが悪かったです、さーせん!





『せっかくパパママが早く帰ってこれたんだし、今から来てね!』

「えっ」


ちょ、い、今からっすか?

冗談よし子ちゃんなんですけど、本当に。


「いや、でもな、俺にも俺なりに予定が食い込んじゃってましてですね」

『問答無用! お兄ちゃんがそんなすぐに予定組めるはずないでしょ?』

よく分かってるね、さすが妹だわクソゥ……。


『約束したからには来るのが長男の務めだよ! じゃあねー』プツッ

「おいちょっ、もしもし? もしもーし!」


一昔前のドラマでしか観られないような、切ったあとの電話に問いかけてしまった……。




いや、この状況で実家には帰れない。



正直、帰りたくない。



なにより俺はどうしても、雪ノ下に訊いておきたいことがある。


彼女にとっては何でもないかもしれないあの仕草が、俺の心にはどうも引っ掛かって仕方がないのだ。


ただの思い過ごしかもしれないが、それでも気になってしまう。



それにこんな考え張り巡らせているときに鍋食おうにも、箸進まないわ喉通らんわ味わからんわのポンコツ三昧だぞ。


しかしあの小町さんはあれだ。

もし行かないでバックレようもんなら、しばらく口を利いてくれなくなるなコリャ……。

あーもう、やっぱり電話出なきゃ良かったかしら(白目)




…………仕方ない、小町の機嫌取りを選ぼう。

雪ノ下とはまた明日にも会えるはずだから。


選択の決意をし、身体ごと振り返る。





目を疑った。




俺の視界に映った彼女の顔に、なにやら縦すじの光のようなものが輝いていた。


彼女は深く俯いているのでよく確かめられないが、それが事実ならば――






彼女は、涙を流していたというのか……?





突然の光景に呆然となった俺は、すぐに声をかけることができずにいた。

でも、踏み込まねば先へは進めない。


「雪ノ下……?」

俺の問いかけに彼女は肩を震わせ、すぐさま一滴の光を指で取り払った。



「どうしたの?」


すると雪ノ下は何でもなかったかのように、疑問符を浮かべこちらを見つめる。


あまりにも自然な表情なので、演技なのか素行なのかわからなくなってしまう。

実際、奉仕部にいた頃にもこのような場面がちょいちょいあった。


俯きながらなにか俺たちに見せたことのない表情をしているかと思いきや、正面を向けばいつもの無愛想な素顔でこちらを見返してくるのだ。



……どういうことなのだろう。





「電話、小町さんから?」

しれっと彼女は尋ねてきた。


「あ、あぁ。……なんでわかったんだ?」

「電話越しの声が聞こえてきたから……」


あー、小町の声ってよく響くからなぁ。

地下鉄の車内でもすらすら聞き取れるだけあって、声量と高さが他よりも多いんだろう。


逆に俺の場合はなに喋っても「え?」「なんだって?」と聞き返されるばかりなので極力声を出さないように努めている。

ほら、普段から会話数が少ないとハキハキ言葉が出なくなるから……。


だが逆説的に『地下鉄=会話に適していない空間』ということなので、そもそもくっちゃべってる奴らが悪なのだ。

外にいるときより声でかいし、調節間違えてかなりうるさい馬鹿もいるし。鬱陶しいし!


地下鉄では車輪の回る音、車両のモーター音、車内アナウンスのお姉さんの声だけ響かせとけ。あとはいらん。

全員ぼっちを装ってください。





なんでこんな場面でこんなクソ食らえな独白をせにゃならんのだ。


なにしろ元凶は小町なのだが……。

いや、俺がすっぽかさなければこんなことにならなかったんですよねハイ……。


「……それで、小町さんと約束があったんでしょう?」


疑問符を浮かべ俺を見つめる素顔の雪ノ下。

さっきまで涙を流していたような気配は一切感じられない。


「約束組んでたのをすっかり忘れててな……。だからそっちに行かなきゃならなくなった」


俺はバツが悪そうな顔のまま、彼女から顔を逸らしてしまった。

ただ俺がカッチョ悪いというだけの結果なので、恥ずかしくて目を合わせられないからだ。


「そう……」

別段感情を変えた様子もなく、短い応答をしてきた。




「でも……勿体ないわね。せっかく買ってもらったおでん……」

「ああ……」


さっき彼女が温め直してくれたコンビニおでん。

本当は二人っきりでじっくり味わうつもりだった品物。


上流階級である雪ノ下に気に入ってもらえるか不安だったが、俺の食べたいものを二人で共有したくて。


……こんな後味寂しいものになるなら、買わなきゃよかっただろうか。



ふとテーブルを見やると、すでに冷めた細かい大根と、彼女の食べかけの玉子が静かに汁に浸かっている。

そして俺たちのいる空間も、沈黙に浸かってしまった。


彼女はいま、なにを考えているんだろう。

なにを思っているんだろう。

そこで俺は、なんと口を開けば良いのだろう……。






「…………比企谷くん」






沈黙から引き揚げたのは雪ノ下だった。


俺の名前を呼び、ひと呼吸置く。



「……とっておくわ、おでん」



言葉の真意を理解するのに時間はかからなかった。


そうだ、今日がダメなら明日がある。

明日になっても、変わらず雪ノ下はこの部屋で待っていてくれる。


焦らなくても良い。

ゆっくりでも、彼女をさらに深く知っていけるのだから。


すると俺も、言葉がすぐに思い付くと口が開いた。



「……明日、食べような」

「ええ……」


柔らかで嬉しそうな表情を向けられる。

ほんの小さなものであったが、笑顔を頂くことができた。




これで、今夜思い残すことはない。

はやく約束を果たしに行かないと小町に目で殺される。



玄関まで向かうと、雪ノ下が付いてきてくれた。

靴を履き、紐を結び、立ち上がり、身体を反らす。


「じゃあな」

「さよなら、気を付けてね」


軽く右手を挙げ、そっと扉を閉めた。


エレベーターに乗り込み、一階を目指す。

下降を感じ佇みながら、スッキリした気持ちとモヤモヤした想いが二律背反で対立する。


最後に笑顔が見られて良かった、という気持ち。



……本当は、もう少し一緒にいたかった、という想い。


やだ、なによこの乙女!

どんだけ好きなのよ、アイツのこと……。


目的階に到着して降りると、そこで違和感。




あれ、来たときより身の回りが軽いぞ?

そこで気付いた失態。


コート忘れてきてもうたああああああああああ!!!!


エントランスで独りがっくり項垂れる俺氏。


それなら取りに戻ればいい話なんだが……。

そうするといよいよ、俺が我慢ならずに約束を放棄しかねない……。


仕方ない。寒いなか鼻水垂らして「凍っちゃう凍っちゃう凍っちゃう」って言いながら街を歩くか?

どうする、俺?どうすんのよ!?




「……比企谷くん!」


「うわゎっ!」



声の方へ振り向くとそこには、たった1分前まで共に過ごしていた、雪の女王の姿が。




「ゆ、雪ノ下……」

「外に出るというのに、薄い格好だと思ったら……」


彼女の右腕に掛かっている、求めていた羽織り物。


「……忘れものよ」

「…………サンキュ」


マジでけっこう感激してるんです俺。

物を受けとり、すぐさまコートに袖を通す。

あーこれだよ、求めていたのさこの厚着を!



「くしゅっ」


ん?いまのくしゃみ……

って、コイツしかいないよな。


「……なんだよ、もう寒いのか?」

「部屋の室温がずっと高かったから……」

「冷え性過ぎるだろお前……」


そんなエントランスと部屋の温度差あったか?

萌え豚ハフハフ男とキリスト女大生の合コンじゃないんだからさ……。



ちくしょう、せっかく出るときまで我慢してたんだが……

まあ本人がいる前で、ずっと意地張ってても仕方ないから。




「あっ…………」



思うが早いか、その時には彼女を抱き寄せていた。


ちょっぴり冷えた彼女の身体がみるみるうちに温くなる。


「……明日せっかく来ても、もし風邪の看病することになったらイヤだしな」


なんて、猿でもわかるクッサイこじつけ。

いっそ、何も言わずにすればキマってたろうか。


「…………ふふ、バカね……」


愛情の裏返しだったのか、そう言うと俺の胸元に顔を預けてくる。


雪ノ下なんでこんないい匂いすんだよ、生活に欠かせなくなっちゃうだろ。


ああもうダメだ、止めどきが見当たらない。

なんか、もうずっとこのままでいい気が…………




「もう、おしまい」



気づけば雪ノ下は俺から一歩距離を置いていた。


「ファッ!?」


な、なんか嫌がられるようなことしたか?

そりゃかなり強く抱きしめちまったが、それは隠蔽ゼロの愛情表現であるからにしてだな!


俺がどぎまぎしてる目の前で、なぜだか変な方向を向いている雪ノ下。

そして唇を湿らせ、視線だけで俺を見つめて口を開く。



「……これじゃいつまで経っても、拒絶する気になれないから…………」



……え?


「……また、明日」



いつだか見た、校舎で別れたときの雪ノ下。


初めて俺にさよならの挨拶を告げてくれた、あの時と同じような去り方。



俺は彼女がエレベーターに戻る姿を、ただ呆然と見つめるしかできなかった。


エロ同人的に、頭が真っ白だよぉ……状態であった。


サボりまくってたせいでたいして話が進まぬまま気づけば、今週土曜日がゆきのんの誕生日とは……

いままでの分を取り戻す勢いで鋭意執筆してるのでお待ちください。


今日中にもう一回更新します!



・・・・・・・・・


タワーマンションを出て、海浜幕張駅からバスで実家最寄りへ。

同じ幕張なので、なんなら歩いて移動できる距離まである。


普通こういう暇なときには、スマホでひたすらツムツムしてるところなんだが……。

なんだ、このやるせない虚無感は……。


いままで体感したことのない、一抹の寂しさが全関節に詰まっているような、この身動きの取れなさ。


最後にアイツが言い放ったあの言葉……

「いつまで経っても、拒絶する気になれない……」


彼女の思うことはつまるところ、


『もっとも~っと抱きしめてほしい』


……ということですよね?




や、やだっ、顔赤くなってきちゃった……!!

こ、ここここれが俗にいう恋なのっ……!?



え、折本?

なにそれ横浜にある小学校でしょ?



にしても、雪ノ下は本当に素直じゃない。


あんな遠回しな表現をするもんだから、どういった反応が正しいのか考えてるうちにアイツいなくなるし。

高校時代はアイツのそーいうところが可愛くねえと思ってたが……



変わっちまうもんだな、感受ってものは。


チンポーン 次、止マリマス


ん? 次なんてバス停だ?
うわあっぶな、ちょうど降りる停車場じゃんかよ。


そんじゃ到着する前にボタンの感触でも愉しみますか。

ポチポチポチポチ


うむ、この押し心地エクセレント。


俺たぶん雪ノ下と付き合ってから、いろいろぶっ飛びはじめてると思う。




・・・・・・・・・・


バス停から歩いて5分とかからないうちに、実家に着いた。

これと言って感動もなく、先週帰ったときよりも枯れ葉が散ってるなと思いましたまる


玄関の扉を開けると、家族の笑い声がリビングから漏れ聞こえてくる。


「ただいまーっと」


いつもの声音で帰宅を告げる。


『あ、やっと帰ってきたっぽい!』


とっさに気付いたのは妹のようだ。

なんだよ帰ってきた“っぽい”って。

確信を持って出迎えしていただきたいものだよ。




そしてこっちへ寄ってくる妹・小町。


小町「よかったー、思ったよりもとっとと早く来てくれて」

「そらな、愛スル妹ノタメナラバ何処カラデモ翌来ルワヨ」

小町「なんでロボットみたいにカタコトなの? ペイマックスですらもっと流暢だよ?」


ああいかん、約束をすっぽかしかけた俺はしぶしぶ帰宅を決意しました。って気持ちが出ちゃうところだった。


しかし流石やはり俺の妹だ。

成長するたびに段々魅力がかかってきてるな。


髪型はそう変わらんでも、身長は中学の頃よりまた伸びて雑誌モデルになってもおかしくないから、そろそろSEVENTEENの表紙飾ると思うわ。


胸も……まぁそうさね、並ぐらい……


小町「どこ凝視してますかアナタは」

「アォチッ!」




俺の向けてた視線の先に当の本人の顔がフレームインしてきた。

しかもものっそいジト目。

「はぁ~、ダメだよ? 実の妹にそんなムッシュムラムラしちゃ」

「大丈夫だ、問題ない。そんな古いギャグかます時点でその線はもう消えた」

「ぐへぇー」


上半身だけでずっこけた感じを表現したっぽい。なにそれ流行ってんの地味にウザかわ。


…………うむ、雪ノ下で想像してみたらあれだな、捗るな。


「ほら早く靴脱いで。鍋のお肉ちゃんとお兄ちゃんの分のこしてあるから」

「おお、気が利く」


頼むぞ小町、俺に余計な質問だけはするなよ……。

雪ノ下とのことはまだまだお前にゃ刺激が強いからな……。




・・・・・・・・・・


食事も片付き、両親は明日も早くから仕事のためすぐに就寝。

俺は小町と一緒にリビングで食後のコーヒーを飲みながらゆっくりしていた。


実家だからこそホッとする、なんとも平穏な過ごし方だ。


つい2時間前にアイツと舌を絡ませていたのがまるで幻想のようだ。

よくそんな直後に実家へ帰ったもんだよ。


「お兄ちゃん、ボーッとしてどうしたの?」

「……いや、俺もいっちょまえな男になったなぁって思いに耽ってたんだ」


「どしたの急に? 彼女でもできたとかー?」


ファッ!?




あははーと笑いコーヒーをひと啜りする小町。

そして、なにも返事ができずに目が泳ぎっぱなしな俺。


そんな兄貴を見かねた妹が瞬時に顔を硬直させる。



「え……?」

ヤバイ、感付かれたか?



「えぇーーーっ!?」


アカン、感付かれたわ(白目)


「ちょっ、嘘でしょお兄ちゃん!!あちゃっ!」

あまりの驚きで履いてたジャージにコーヒーをこぼす始末。アホや。


いや、即座に否定しなかったよ俺もアホなんだけどさっ!!☆


なぜ言葉が出なかったんだ……。

最愛な妹に対して嘘はつけないという善良な心が、俺に静止をかけたんだろうなチクショウ。




「ほ、ほほホント? ついに春がやってきたの?出来たの彼女ケホゴッホゲホッ!」

あまりの衝撃でむせぶ妹にどう声をかけたら良いんだ。


まぁ事実なことにはまちがいないし、そろそろ小町を安心させた方がいいだろうな……。


「……まぁ、本当、です」

「ケホッ、すごい!やったじゃん、お兄ゴッホ」


画家の兄貴みたいな呼び方をするほど、小町にとっても喜ばしいことだったんだろうか。

もちろん嬉しいけど、なんか今まで心配かけてすまなかったという気持ちの方がでかいわ……。


「で、相手って誰!小町の知ってる人なんでしょうか??」

目をキラキラ輝かせながら、拳をマイクに見立てて俺の口元へ突き当ててきた。


やっぱ訊くよなぁ……、どうしようか。




こうなったら包み隠さずおっぴろげちゃえば、後々気が楽なんだろうけども……。

一応、曖昧な言い方で誤魔化しとこう。


「ええと……ご想像にお任せします」



「お、いまのは肯定と捉えてよろしいということですね!?」


え、ちょっと待って。

ちっとも濁せやしなかったんだけど!?

なんなら綾鷹の方がもっとドロドロ濁ってるレベル。


もはや隠すという選択肢は残されてないんじゃないですかね?


にしても小町の食いつきっぷりがとんでもなくてすごい圧倒されちゃうんですけど助けろ(涙)



「もしかして雪乃さんだったりしてー?」


「はいっ!?」




素で驚いちゃった時点でもうこれ挽回の余地なんて無いですよね?

なんか顔が湿っぽいんだけどなにこれ緊張の賜物?(脂汗)


「……え、もしかして当たり?」


たぶん俺の心拍数はこれ以上あがったらハートが飛び出てしまう。

もういいや、バラしてまえ!!



「……あんま広めんじゃねぇぞ」


目を逸らしながらそう告げたと同時にみるみる顔が熱くなってきてしまった。顔アツッ!

素直じゃないがしっかり認めたことになる。


にしても、好きな人をカミングアウトするのって思ってた以上に羞恥プレイなんだな……。


学校で教えてくれなかったことをいま初めて学べた気がした。学びたくなかった。




すると、近くから何やらすすり泣くような声が聞こえ……

は!?なんでどうした!?


「お、おい小町!お前なに急に泣きだして……」

「うぅぅ……おにいちゃぁん……」


下を見つめながら涙を拭う妹の姿を見るのは久々だった。

なんだよ、雪ノ下にいじめられた過去でもあったのか?



「……よかった……お兄ちゃん良かったねぇっ……ヒクッ」


「小町……?」


そりゃあ俺にとって初めて彼女が出来たわけだし、祝福してもらえるのはとても嬉しい。


でも、なぜそんなに涙が溢れてしまうんだ?



「うぅっ……雪乃さん、気づいてくれたん、だよね……?」


「え?」




目元を擦りながら、嗚咽混じりに言葉を続ける。


「お兄ちゃんってこう見えて、優しくてっ……変に人想いで……」


顔を上げ、俺と目が合うとまた口を開く。


「……それで実は、けっこう、イイ男なんだよ、ってこと…………」


赤くなった目ではにかみながら微笑んできた。


「……お兄ちゃんに、しっかり隣に寄り添ってくれる人が……できてくれて、良かった……」


「小町……」


こんなに俺のことを想い、涙を流すほどに交際を祝してくれるなんて思いもよらなかった。


……小町のおかげで、俺まで視界がぼやけてきた。




「えへへ……なんでこんなに泣いちゃってんだろ、小町」

「本当だ、ビックリしたわ……」


平常心を装っていつものように突っ込むのが精一杯だった。



「……でも、やっぱり嬉しいからさ。お兄ちゃんを愛してくれる人が、ちゃんと他にもいたっていう事実が」



「…………ぷふっ」


いまの小町の言葉で、つい照れ笑いしてしまった。

よくそんなこと云ってくれるな……。


「……あっ、いや!えっと……」


当の本人もようやく気づいたか、眼よりも赤くなった顔で言い訳を考えている。


でもきっと、こう言うはずだ。



「い、いまの、お兄ちゃん的にポイント高い、でしょ……?」





……そうだな、今までで一番高いぞ。



「ありがとな、小町」


すると俺の腕が自然と小町の方へ運ばれる。


「あっ……」


久しくやってあげてない、小町の頭をなでなで。

良いことすると、よく求めに来たものだ。


飼い慣らされた猫のように、気持ち良さそうに顔をほころばす。


「ねぇお兄ちゃん……」

「ん?」



「これ、小町的にものすごくポイント高いよ……?」



そりゃどうも。

こんな大盤振る舞い、貴重だからな。


家族の良さを、小町の愛を、改めて実感できたひとときであった。





・・・・・・・・・・



また新しい朝を迎えた。



昨日よりも冷え込んでいるというのに、日差しの射す外では小鳥が各々互いに歌いあい、ぼっちという概念が存在しない世界を形成していた。


両親はとっくに出勤しており、いままで当たり前だった小町と二人きりの朝食タイム。


俺が単身になってからは毎朝一人ぼっちらしく、そのため作った朝飯もレベルが上がっている。

まさしく朝飯前といった感じだろう。ハハハ!つまんね。


今朝の品目はスクランブルエッグとピザトースト。




そして眠気覚ましに甘甘コーヒー。

これを飲まねば俺の朝は始まらない。


馥郁たる香りを楽しみ、一口含む。

うーむ、この脳へと届き渡る甘ったるさが素晴らしい。


優雅に味わいながら向かいに腰かける小町を見ると、雑誌のようなものを広げながらトーストを頬張っている。

「なに読んでんだ」

「んー、参考書」


俺が訊くと顔を上げずに答えてきた。

現・総武高3年生である小町は年明けにセンター試験を控えるため、日夜勉強をしてるとかしてないとか。

高校でも生徒会の書記を務めたため、校内ではそれなりに好評価らしい。




「食うときぐらいはしまったらどうだ。どうせ食いながらじゃ頭に入らないんだし」


「わかってないなぁ、こういう場面でも地道に努力を積むことで結果が報われるのですよ。きっと」


お、おう……。

まあいいか、そう言うならやらせておくかね。


ただ……


「まあでも雪ノ下だったら『閉じなさい、無駄よ』って注意して切り捨てるんだろうな」


「!」



パタッ


「え?」

いまの蛇足っぽい言葉でさっさと参考書しまったぞコイツ。




「そうだよね……。雪乃さんの言うことはしっかり聞かないと!」


なぜ雪ノ下の名前を出すと急に利口になりやがった?


そして小町は突然堂々と腕を組み、不敵な笑みを浮かべた。


「なにせ将来、小町のお義姉さんになりうる人だもんね。しっかり気に入られないと!」


コイツあざてぇ……。



え、てかなに言ってんの?

お義姉さんになりうるって、つまり俺と雪ノ下が結婚すること視野に入れてるってこと?


や、やややめろよ!けっこう本気で意識しちゃうだろ!!


……まぁ年齢的にお互い親権者の同意無しでも、婚姻届を出すことは出来るわけですが……。




「なにお兄ちゃん、雪乃さんとの結婚生活想像しちゃった?」

「バ、ババババカジャネーノ!?」

想像自体はしてねぇっつの!まだ!!


「せめて否定するならもっとしっかり演じようよ。顔赤くなってるよー?」


これはあれだ、おとといアイツと呑んだ酒がようやく回りだしただけだす。


「お兄ちゃんってけっこうウブだよねぇ……」


エニュエニュウォーニュエーニュエニュウォーニュゲーニュエニュウーヌュ デュンデュデュデュデュデュデュデュン♪

『おはよーございまーす、ヌッキリでーす』


「おい、時間まずいぞ」

「あっやば遅刻する!! 8時だよ!全員登校!」

「よくそんなギャグ挟む余裕あるな」




小町は慌てて参考書をリュックにしまい、残っていたトーストたちをマッハで口に運んだ。


「お兄ちゃん、もう小町出るから戸締まりよろしくね!」

「おう、行ってら」


リビングを小急ぎに出ようとしたが「あっ!」と叫んで止まる。


「ねぇお兄ちゃん!」

「ん?」



「彼女さんに『小町はいつでも迎え入れます』って伝えといてね♪」



言えるかバカモン。


「……おう、わかったからはよ行け」


わざわざ彼女さんって言い換えるなよ、恥ずかしいだろ……。



それから1時間して俺は大学へと向かい、とにかくさっさと夕方になれと願いながら講義を受けつづけた。


そのなんだ……、彼女さんへ会いに行くために。




・・・・・・・・・・


夕方、海浜幕張。


駅前の複合モールで、きょう解禁されたばかりのボジョレー・ヌーボーを買ってみた。

飲んだことは一度としてないが、ものは試しに。


俺的には、雪ノ下=ワインというイメージなのだ。

たとえ彼女が飲めなくても、ワイングラスを片手に転がす姿を見てみたいものだ。


で、もし気前良く呑んでいただければアルコールが回ったところでベッドへ(自主規制)


完璧にもほどがあるだろこのプラン!


そんなことを考えているうちに彼女の住むタワーマンションに着いた。

むしろ俺が住みたい。




・・・・・・・・・・


エントランスで入り口を開けてもらうと、目的階へ昇り彼女の部屋へ。

インターホンを鳴らし、暫し待機。


慣れたように説明してるが、けっこう緊張で背筋張ってたりするんだからな?


ゆっくり扉が開けられると、彼女さんがひょっこり顔を出してきた。


「いらっしゃい、待ってたわ」


微笑みながら迎え入れてくれたのが、何だかやっぱりこそばゆい。

今までが雑な扱われようだった分、相好を崩して「待ってたわ」と言われたらそれはもう嬉しいに決まってる。


「寒いでしょ? 入って」

「サンクス」




玄関に上がると、靴を脱ぐためにボジョレーの入った紙袋をそっと床に置く。

すると、雪ノ下がブツに興味を持ったようでチラと覗いてきた。


「ワイン?」

「ああ、きょうが解禁日だからな」


いざ買おうにも種類の違いがちっとも分からず、とりあえず店にあった三番目に高いやつにしたけど地雷踏んでないか心配でしゃあない。


「あら、ボジョレーなんて飲むの?」

「いや、飲んだことはないが……たまには背伸びしてみたいときだってある」


実際どんなもんだか気にはなってたし。

ニュースによれば、今年はとてもバランスが良いってキャッチコピーらしい。




でも、いつも10年に一度の出来栄えだとか謳ってるんだからたまには、

『昨年よりクソまず。もはやゲロ』

なんて評価付けたほうが注目されるだろ。

逆に気になって購買意欲上がるぞマジで。


「リビングで待ってて、グラスとコルク抜き持ってくるわね」

「おう」


廊下を歩くと、おでんの良い香りがしてきた。

すでに温めてくれたみたいで、その優しさに食べる前から心がホッコリしていい気分だ。


リビングに入ると、キッチンで雪ノ下がさっき言ってた探し物をしている。


「俺も探すの手伝おうか?」

一人でくつろぐのも悪いからな。




「ううん、場所は把握してあるの。そしたら、棚の真ん中の引き出しからコルク抜きがあるから……」

「すげえな、何がどこにあるのかちゃんと分かるのか」

「私の家だもの。当たり前でしょう?」


え、あなたは違うの? って問いを含んだ聞き方だったよないま。

普段使わないやつは毎度こちとら探してばっかりですわ。


「まぁ、お前が超特殊なだけだ……お、あった」


おお、立派そうなやつじゃないか。

100均で売ってるのと抜きやすさが段違いなんだろうな。


てか単純な疑問、なんで酒も飲まない一人暮らしでコルク抜きが置いてあるんだよ?




コイツの場合はなんだ、シャンメリーとか飲むときに使うんだろうか。

雪ノ下がアップル味のシャンメリーを飲む姿……。


『ふふ、おいしい』(見たこともない女神のような笑顔)


チクショウかわいいってか美しいじゃねぇか!!今度買うわ!!


「はぁ……」

そんな雪ノ下から、何やらため息が聞こえたので見てみる。

なぜかなかなかグラスを取ろうとせず、うすら困った表情で棚を見上げていた。


「どしたよ」

「!」


声をかけると、彼女は驚いたように身体をびくつかせた。




「……なんでもないわ。コルク抜き見つかったら、あっちでくつろいでて?」

「いや、なんか困ってそうだったからよ……」

「そんなわけないでしょう」


ムッとした顔で睨み返してきた。

あ、これたぶんなにか隠してるわ。


「まったく、なぜ私が自宅の棚を見つめて困らないといけないの」


あぁ、やっぱり棚関連で困りごとがあるんですね。

原因を探るために、さっき雪ノ下が見ていた方へ視線を向けてみる。


「…………あっ」


「なによ、どうしたのっ」


あーなるほどな。

これは確かに困るし、俺にバレたら恥ずかしいだろうよ。




ここは彼女の自尊心を傷付けないためにも、なにも言わず行動しよう。


「よっと」


棚を開けて両足を浮かせながら、高いところに並べられた綺麗なワイングラスをふたつ取る。


「あ……」

ヤツがなにか声を漏らしたがなーんにも聞こえません。え、何だって?


棚を閉めてチラッと雪ノ下を見やると、桜色した顔でなにか言いたげな様子をしていたが、


「よし、飲もうぜ」


俺はそのままキッチンを離れ、近くのソファに腰かけた。


そして困っているのを隠し通そうとしてたゆきのんが可愛い過ぎて、思い出したらニヤニヤが止まらないまま2分経ってた。


由比ヶ浜「ぼ、ボックスのポケモンが全部ヤナップになってる・・・」

由比ヶ浜「いたずらしたの誰っ!?」

雪ノ下「・・・」ドキドキ

八幡「ば、バグだろ」ドキドキ

由比ヶ浜「そっかー!バグかー!」

雪ノ下「ほっ・・・」

八幡「ほっ・・・」

由比ヶ浜「ってンなワケねぇぇだろオオオオオオオオ!!!」ガシャーン






由比ヶ浜「バグで全部ヤナップになるワケねぇぇだろオオオオオオオオ!!!」

八幡「由比ヶ浜!落ち着け!」

雪ノ下「ゲーフリも予想外のバグが起きたのよ!」

由比ヶ浜「消えるならともかく全部ヤナップ化とかバグ通り越えてんだろオオオオオオオオ!!!」

八幡「そ、それを言われると・・・」

雪ノ下「・・・」チラ


でんせつボックス
ヤナップ×30

八幡「・・・」プルプル

雪ノ下「・・・ぷ」プルプル

由比ヶ浜「何笑ってんだコラアアアアアアアア!!!」



・・・・・・・・・・


昨日同様に温められたおでんがテーブルに並べられ、なんとも家庭的な雰囲気だ。

しかしそこにワイングラスやボジョレーが合わさるとおでんが和風ポトフにも見えて、まるでフランスのちょいリッチな夕食って感じ。


コルクを抜くと、香り高いぶどう果実の匂いが漂ってきた。


別段、ワインを飲み慣れてるわけじゃないから「良いぶどう使ってる」とかそんなん分からん知らん。


それぞれのグラスに三分の一くらいまで注ぎ、そっとボトルを置く。




「ちゃんと注げるのね。マナーもなにも知らないのだと思ったわ」


俺を見つめくすっと笑う雪ノ下。


「失礼な、俺だって一応は常識人なんだぞ……」


少しムッとしたので、眉をひそめながら籠った声で返答する。


「なにを言っているの」みたいな反応を示すんだろうと、細目で彼女に視線を戻してみたら、違った。


「……怒った、かしら?」


彼女はさらに前傾になり、少し不安そうに俺を覗いていた。


あれっ?

俺そんなに不機嫌そうにしてたか?


「い、いや。そんなことねえって……」


ここで「別に」って返すとエリカ様みたいになってしまうので、言葉を選んで答えた。




まるで安堵の胸を撫で下ろすかのように、心配そうな表情が取り除かれた。


そんな気掛かりになることか?

高校時代のコイツと明らかに示す反応が違ったから、俺まで変に焦っちまったよ。



……まぁ、成人を迎えて刺々しさが丸くなったのだろう。

そんな無難な解釈をし、これ以上考えるのを放棄した。


「まぁ、なんだ、飲むか」

「そうね」


これまでの不穏めいた空気を払拭するために、俺の注いだワインに手を伸ばす。




グラスの足をそれっぽく持ち上げ、鼻に近づけ香りを確かめてみる。


といった形式的なことをしてみるも、匂いなんて俺がたまに飲むそこらのやつと大して変わらん気がして、差違がちっとも判断つかん。
なんだこれ。


「ふふ、お楽しみのところ悪いけれど」


ソムリエ気分になり損ねたところで声をかけられ、視線を向ける。


すると、グラスを小さく掲げながらこちらを見つめる彼女の姿。



「まずは……二人で乾杯から、でしょう?」


そう言葉を口にすると同時に首を傾げて微笑まれた。


こういう仕草されたらもう可愛いとしか思えないじゃねぇすか……。





「そ、そうだよな。いや、もちろんこれからやるつもりでいたわけで」


てかなに、乾杯が先でよかったんすか?(白目)


テイスティングみたいなことをしてからガッツリ頂くのかと思ったけど、そうかそれってフォーマルなレストランとかの場合でしたかそうですか。

こりゃどうも主観的に見ても、格好つけたただのバカにしか思えんミスだす……。


とりあえず雪ノ下さんのおっしゃった通りに、互いのグラスを交わしましょうね。


視線を改めて雪ノ下へ向けると、背筋を伸ばし胸元にグラスを構える姿はとても様になっていた。


紫に色づいた果実酒がより一層、彼女の身に付いた気品さを際立たせているのか。





まるでメルシャンの資格でも持ってんじゃねえのかって雰囲気が放たれマックス。

そもそもメルシャンってなんだっけ。あれメーカーじゃなかったかしら?


「どうしたの、こっちばかり見て……」


雪ノ下が怪訝そうにジト目を使って睨んでさあ大変!

彼女を見ながら長いこと物思いに耽ていたので、そら不思議に思われますわな。

もし俺がされる立場になったら、恥ずかしくてなにも言えないだろうよ。

いや、なにか言おうとして不自然にドモる気がする……。


八幡ってばシャイなんだからもう!
キモ可愛いだろ?




「すまん、特に意味もなく考え事してた」

「私を見て?とんだ妄想癖ね……」


なんだよ、妄想いいじゃないの。

金をかけず、好き勝手に頭のなかでやりたい放題出来るなんて、こんなに優れた趣味ほかに無いぞマジで。


なんなら全ぼっち生徒が共通して休み時間に行える唯一の嗜みだからな。

それを否定されたらいよいよ寝たフリしかできそうにないやんけ!


てか授業中は本当に眠いときがあっても、いざ休み時間になったらギンギンに目が冴えるのあれどういうことなの?ナメてるの?


大学に入ってからはクラスメイトという合同集団が形成されなくなったから、そんな小技もいまや過去の栄光に過ぎないが。


なお大半のぼっち野郎は黒歴史と評する模様。

ったく、金玉のちっちゃい奴らよのう……。




「まったく、不埒なこと考えてなければいいけど……」


おいおい、雪ノ下さんが失礼なことおっしゃったぞ。


口元に手をかけながら笑みを浮かべる姿に惑わされちゃいけない。可愛いけど。

その十二分にある可愛さ俺に分けろし。


「こら、俺をそこらの中坊と一緒にすんな」


やんわりと叱りつけといた。

さっきのこともあったし、全然怒ってないことをわかりやすく伝えるように。


でもあいつらどんなブス相手でもエロへ持っていく想像力備わってるから馬鹿にできないっすわ……。





「じゃあ、遅くなったが……」

グラスを掲げて体勢を整える。


「き、きょうの良き日に、カンパイ」


俺が音頭を取ると、グラスを交わす音が部屋に響き渡る。



「……良くないわ、アウトよ」


「えっ」


すると突如として雪ノ下がそう口にしてきた。


「な、なんだよ急に」


こんな脈絡もなく審判を下されちゃ、そりゃ驚くっての。

で、何がアウト?セーフ?よよいのよい?




目で訴えかけると、彼女はムスッとした顔でグラスを指差す。


「普通ワイングラスは、乾杯の時にグラスを当てて合わさないのよ」


え、そ、そーなん?

これって常識……なんだろうな、きっと。


うわぁ、なんともかっちょ悪いぞ俺……。


「それがマナーなの。あなたなら知ってるとばかり思ってたわ……」

「う、すまん……」


見事に失望したかのような口調でそう告げられ、硝子の少年である俺に破片が胸へと突き刺さった。


歩道の空き缶蹴飛ばそうかとワケもわからず考えて、ついガックリ項垂れる。





はぁ、ついさっき「お、俺だって常識人なんだからねっ//」って言ったあとにこれはなぁ……。


恥ずかしいというよりも悔しい。



これじゃまるで俺は雪ノ下に相応しくないような、そんな風にも思えてしまう。


ただの被害妄想かもしれないが、そう考えてしまうほどに情けなく感じたのだ。


すると突然、ただ触れる程度に優しく右肩を二度叩かれた。


顔を上げてみると、たった3分前に見た彼女の寂しげな表情が映っていた。



「……ごめんなさい、また言い過ぎちゃって……」


そんなに申し訳なさそうに謝らなくてもいいのに。

なんなら謝らずに、自我の思いの丈を伝えきる方が彼女らしいというのに。


どうしても違和感を拭えない。


>>819訂正

・・・・・・・・・・


「そう……、なら良かった」


まるで安堵の胸を撫で下ろすかのように、彼女から心配そうな表情が取り除かれた。


そんな気掛かりになることか?

高校時代のコイツと明らかに示す反応が違ったから、俺まで変に焦っちまったよ。



……まぁ、成人を迎えて刺々しさが丸くなったのだろう。

そんな無難な解釈をし、これ以上考えるのを放棄した。


「まぁ、なんだ、飲むか」

「そうね」


これまでの不穏めいた空気を払拭するために、俺の注いだワインに手を伸ばす。



俺の調べた限りでは

・雪乃「今日から比企谷くんには優しく接するわ」八幡「疲れてるのか?」
・雪ノ下「もう恋なんてしないなんて言わないわ……絶対。」
のふたつ

あとはパワプロSS



「いや……そんな、いいって」


戸惑いながらも彼女を宥めてはみるが、哀しそうな表情は変わらない。


「俺が知らなかったのが悪いんだしさ、お前は気落とすなって」

せっかくの楽しい場なんだからさ、つっても二人でワイン開けただけだけど。


「大体、あんなので言い過ぎとか、高校時代の俺が聞いたらハテナ浮かべるぜ?」

八幡(17)『え、あの、ちょっすんません、どこに言い過ぎた部分あったっけな??』ってな。



「……………………」


冗談めかしく言ってはみたが、雪ノ下の表情は感傷に浸食され翳りつづけたままだ。





これほど物憂げな気持ちでいる彼女を見たことがない。


そんな姿を目にして、次第に俺までついには絶句してしまった。

コミュ症だからどうとかではない。


もう、なんと声をかけたらいいのかわからなくなった。



喩えるなら氷像。


いくら声をかけようとも返事が来ることのない、冷え冷えとした飾りだ。


そうして氷像の冷気が空間中を支配したかのように、俺らのいる場も凍てついてしまった。




そう解った瞬間、とっくに俺の心の内は寒くなっていた。




しかし俺がこんな気持ちでいるというならば、一方の彼女の心は過冷霧に覆われていることだろう。


まるで、ひと度触れば低温火傷を負ってしまいそうな。



たった二言三言の放言をしてしまったことを後になり過敏に気付いては省み、そして憾む。


どうしてそんな……。




「…………でも」


しばらくして最初に沈黙を破ったのは雪ノ下だった。


口を開いてくれてよかった。





しかし、その助詞だけで俺を苛立たせるのには十分だった。





「でも……あなたに、ショック与えてしまって……」


「でもじゃねぇよっ!!」



俺の喚き声が響くと、彼女は肩をブルッと震わせてこっちを見つめてくる。


雪ノ下がなおも否定的なことを言いかけたところで、痺れを切らした俺はそれに反発した。


そっと口にしたつもりだったのに、どうも抑えが効かず声を荒げてしまった。



「でも、じゃ……ねぇんだって……」

それでも腹の虫が治まらず、喉元から掠れるような声で同じ言葉を反覆してしまう。




だって、俺はコイツとこんな諍いを繰り広げたくてワインを買ったんじゃない。




和気あいあいとまでは言わないが、平穏な心地の良い雰囲気のなかで共にグラスを傾ける。


それで飲みながら昔のような突っ付きあいをしつつも、いまの親い関係だからこそできる睦み合いをちょこっと挟みたいな、って……。



欲張ってなく、むしろ謙虚だと思う。

肩の力を抜いて休息を摂るように、ただ彼女と寄り添ってさえいれれば良い。


2年前の高3、奉仕部の終焉を間近に迫った短い期間。


俺にとって唯一、あの部室が居心地の良い空間だと思えた瞬間。


何度繰り返したか分からない、しつこくて愛しい掛け合い。

それが安らぎとなって俺に与えてくれたあの時のように。



……そんな彼女は、なぜかこうも変わっていた。




「…………直したつもりでいたのに、なのに私……っ!」


訥々と言い淀み、あたかも己を責めては忌み嫌う。


彼女のグラスを持つ手は震えていた。

足の部分を力任せに握りしめるからだ。


彼女の拳をそう働かせているのは、どの感情か。


怒り?悲しみ?恐れ?

自己犠牲、憐れみ?


俺にとっちゃどれであろうと思うところは一緒だ。




…………やめろよ。


軽々と自分の首絞めにかかるなんて、そんなのお前らしくねぇじゃんかよ。


俺が求めていたのは、こんな展開じゃなくて…………。




そして、ようやく考えがまとまった。

加えて、同時に思い付いた。


正解なのか分からないが、ある一つの手段を。



「……雪ノ下」


さらに口を固く結び、なにかに堪えているかのようだ。

名前を呼ぶも、彼女はいまだ視線を落としたまま。


そして一呼吸置いてから、そっとこう告げる。



「……外、出るぞ」





途端、驚いたように顔を上げこちらを見つめてくる。

「……え?」

俺の言ったことを再確認したいのか、不安げな表情で短く問うてきた。


しかし俺はそれに構わず唐突に立ち上がっては、彼女の部屋に掛けておいた自分のダッフルコートを手早く取りに向かう。

行くと決めたからにはとっとと向かいたい。


コートを右腕に抱えてリビングへ戻れば、雪ノ下は変わらずきょとんとした表情でいた。


そらそうだ、せいぜい5秒くらいしか経ってないんだし。

彼女にしてみれば予期せぬこと告げられたのだから、そう容易く状況は飲み込めないだろう。




ソファに放られているスマホや財布など、最低限必要なものをポケットに突っ込むと準備は万端。いつだって出れる。


「……ちょっと、比企谷くんっ!」


困惑とした状態で呼び掛けてくる雪ノ下を背にただ佇んで、言葉の続きを待つ。

すぅっと、彼女の微かな一呼吸が空間に響き渡った。


「……どこへ、行くの」



まるで俺が“一人で”どこかへ向かおうとすることに拒絶の意を籠めて訊ねるかのようだ。


遠慮しがちな細々とした声ではあるのに、敢然とした態度で俺の考えを窺ってくる。




「……行きたいところがあるんだよ、お前と」


答えになってない回答をする。

だが、いまここで伝えられるのはそれだけなんだ。


「……どこへ、とは教えてくれないの?」

「ああ」


もし駄々をこねられたら、俺は無理を押し通す。


そんな毅然とした決意と意思もあって、目的地を教えるわけにはいかない。



でなければ、今から起こす大きな賭けがこの時点で失敗する可能性もあるし、なにしろ決まりが悪い。



お待たせしてすみません
本当は黙ってしれっと更新したかったんですけど、スレ落ちの可能性があるので生存報告だけでも

次の土曜日に頑張って更新します!



「来て、くれるか?」


俺が訊ねると、雪ノ下はひっそりと眉をひそめながら目線を横に逸らした。

いま、何を考えているのか。


って、俺がそう思えた立場じゃないわな。

彼女の方こそ、俺の提案にただただ疑問符を浮かべていることだろう。


何度訪れたか、再びしばしの沈黙。

それが殊更、俺を焦らせた。


本当はすぐにでも連れていきたい。

しかし、彼女にもしその気がないのなら、さすがに気持ちを汲んであげねばならない。





でもそうなると、俺と雪ノ下の築いた関係を再び繋ぎ合わせることが難しくなる。


それはもちろん、奉仕部で過ごした3年間の出来事も思い出すのが辛くなってしまいかねない、ということだ。


そんなこと、俺は1ミリも望まない。

過去に望んだことだって当然ない。


雪ノ下もきっと、そう想っている……たぶん。




ちょうど4年くらい前のことだろうか。


俺は奉仕部のやつらに、つい思いの丈を涙と一緒にこぼしてしまった。


そこで放った言葉をいまも忘れることができないでいる。






「……俺は、本物が欲しい」



ふと口にすると、彼女の目の色は明らかに変わっていった。

あの時と……、そして、現在も。

形は違えど。


「…………変わ、るの?」


彼女の潤んだ瞳から、一光の煌めきが滴っている。

隠そうとせず、俺に見せつけるかのような。


見たことのないその姿に、さすがに平常心を保つことは無謀である。


だが同時に、彼女の泣き顔は綺麗だとも思った。


「……本物に、変わるの……?」


言うと瞬きをして、今度は頬を伝うことなく、瞳から離れるように床へこぼれ落ちていった。



やはりそんな彼女は綺麗で、とても醜かった。





彼女の流す涙は、嬉しさや怒り、悲しさから来るものではないのだ。


ただ不安で不安で仕方ない、極限の状態だからこそ溢れてしまった。


そんな涙を見て、俺は解れた頭のなかをひたすらかき回し、言葉を紡ぎ出す。



「変える……」

いや、違う。



「手に入れるよ、絶対に」


これで俺の腹は括られた。

勝ち逃げしてやる、2人で。


ようやく邪魔な水滴が拭われると、彼女は軽く微笑んだ。


「……行きましょ」





・・・・・・・・・・


雪ノ下はすぐさま部屋からブラウンのロングコートを取り、上目遣いに俺を見ながら袖を通す。

ジッとこんなに目を合わせるのは随分と久しぶりな気分だ。


財布とスマホをポケットにしまい、くるっとマフラーを巻くと準備が整ったようで一度頷いてきた。


玄関でそれぞれの靴を履き、戸締まりを行うのを半歩後ろで見て待つ。


下りのエレベーターに乗っている間は会話もなく、ドアを見つめているだけの空虚な一時だった。

見かけはそんなんでも、俺たちの気持ちは常にお互いを意識していて、なんともこそばゆいものである。





エントランスを出ると彼女は一旦足を止めた。

俺の行く方向を窺うつもりだろう。


ここへ向かうときに通った道々を進もうと、右へ曲がる。


少し早歩きで俺に追い付くと、肩を並べて同じ歩調で歩き続けた。

彼女のちょうど良い歩幅に合わせるため、いつもよりゆっくりめに進む。


手がほんのりかじかんだので、ズボンのポケットに手を突っ込む。


ふと見上げると夕闇はすっかり落ち、周りにそびえ立つビルやマンションの明かりをよそに、月が一際目映く光っている。





俺を真似たのか、雪ノ下も空を仰いでそっと呟いた。

「月がきれい……」


そんな一言を聞いて、つい顔が綻んじまう。


「そうだな」


人と月を眺めるのはいつ振りだろうか。


……一人で見るよりも、美しく思えた。

隣で寄り添い歩いているのがコイツだからかもしれないけどな。




5分ほど歩くと着いたのは、海浜幕張駅だ。


改札の方へ向かうと、彼女は手早くICカードを手に取り、少し遅れてゲートを潜った。





ホームへ上るエスカレーターを見て、ふと彼女に問う。


「トイレ、平気か?」


急かすように外出の準備をさせてしまったので、もしかすると……と思ったからだ。


「ええ、大丈夫」


口の端を上げそう答えるので、俺は頷きをもって返事と代えた。


乗り場へ向かうと、あと2分ほどで電車が来るらしい。

帰宅ラッシュということもあって、下り方面から来る電車からはわらわらと人が降りていく。


俺らは上りの東京方面へ向かうホームにいた。





「まさか、電車に乗って向かうとはね」


二列に並ぶ乗車位置の隣に立つ雪ノ下がそう言う。


「すまんな、歩いて行ける距離じゃなくてな」


さすがに電車移動ということくらいは言っといた方が良かったか。

そう思ったところに彼女が口を開いた。


「いいわよ」


俺の立つ向きとは逆に、電車がやって来る方向を見つめながら一呼吸置いた。



「……すこし、デートみたいであるしね」



直後、電車が到着するアナウンスが真上のスピーカーからうるさく響いた。


恥ずかしいことを言われてなにか返そうと思ったのに、完全にタイミング失っちまった……。

まさかそれを狙って言ったんじゃないんですかね……?





そうしてやって来た電車は当駅始発らしく、難なく座ることができた。


一応、紳士の振る舞いをすべく、雪ノ下に座席の端っこを譲った。

世のカップルってこういうことで揉めたりしてしまうんだろうか。


……まあ、俺たちには関係ないことだな、きっと。


「寝過ごさないようにしてよ?」


少し顔を近づけ、小声で囁いてきた。


「当たり前だろーに。計画おじゃんになっちまうだろ……」





そう告げてから15分ほど経ったあたりで、隣の雪ノ下が妙にソワソワしているように窺えた。

平静でいるときよりも顔が色んな方向に動いているのだ。


新浦安駅を発車すると、車内アナウンスが再生された。


『次は、舞浜ァ 舞浜ァ お出口は、右側です』


そうなると次は、向かいのの車窓を見つめながら目を頻繁に瞬かせていた。


あぁ……コイツ、次がディスティニーリゾートの最寄りだからって、すげぇ期待してるよ……。

顔は冷静を装ってるのに、すげぇワクワクしてやがる。





そして舞浜駅に到着し、ドアが開く。

雪ノ下が俺を睨むように見てくる視線がビンビンに伝わってくるが、寝たフリを貫き通しなんとか切り抜いた。


横目でチラッと彼女を眺めると、切なげな面持ちで次第に離れてゆく夢の国を目で追いかけていた。



…………まあ、考えとくよ。



ディスティニーの名残を残さず、電車は江戸川区に突入したのでもうそろそろだな。


心なしか俯いていた雪ノ下に顔を寄せると、驚いたかのように目を開き見返してきた。


「次、降りるぞ」


「え、次……?」


『次は、葛西臨海公園 葛西臨海公園……』


まさしくそこが、俺が彼女を連れて来たかった場所である。





意外と降りる人が多いようで、停車寸前になると多数のカップルらが立ち上がった。

そうしてドアが開き、ぞろぞろと降車する乗客たち。

ホームに降り立ち、振り返ると雪ノ下が困惑とした表情をチラつかせながら周りを見渡している。

……これはしっかりと先導しなきゃな。


意を決して、スッと彼女の右手を掴んだ。


「あっ……」


雪ノ下が漏らしたその声を聞くと、次第に俺の胸が高速で鼓動を打っていることに気づいた。




たったこんなことで、互いが恋愛ベタ全開な反応を示すなんて参ったもんだわ……。

俺もまだまだだな。


封印していたラブプラスとかをこっそりやりこんで、シチュエーションの復習くらいしとくべきだった。


「……こっちだ。行くぞ」


彼女の掌を引き、下りのエスカレーターに向かう。


俗に言う恋人つなぎではなく、指先まで触れるように繋いではいない。


今まで何度か指を絡め合うことはあったが、いざ公衆の面前でとなるとどうにも踏み出せないでしまう。





改札口でそれぞれICカードを出す必要があるのだが、どちらとも手を離そうとせず、空いた片方の手で取り出してはそのまま駅前ロータリーに出た。

……え、これって間違ってるの?


一人で考えては苦笑を浮かべる始末。なかなかにきめぇ。


そうすると、繋がれた手が二度軽く引っ張られた。


横の雪ノ下を見ると、驚きも疑問も浮かべない、いつもの無表情のような面持ちで遠くを見つめている。


「……ねぇ、ここって?」


問うと、俺に顔を向けた。


駅舎のオレンジ色の灯りが彼女を照らし、忠実にそして上品に描かれた肖像画を見ているような気分だ。


こういう形の灯火が、雪ノ下の顔立ちの良さをさらに引き立たせるのだろう。





「こっからまた少し歩けば、ようやく着く」

「かなり、移動するのね」


そう言うと、さっきよりも強く俺の掌を握ってきた。


「……はぐれるのは、嫌だから」


彼女は俺から視線を外し、下を向きながら呟くように言う。


それを見て堪らず俺もぎゅっと固く握り返してしまった。


そんな仕草見せられたら、もう無理だっつうの……。



「……離すなよ」


そう告げると、共に並んで歩き出す。





公園からすぐの場所に海があるため、こんなところからでもほんのり磯の香りを感じる。


腕時計を確認すると、あと10分といったところか。

事前に見たサイトによると、駅から歩いて7分くらいらしいから丁度いいな。


日を経るごとに寒さは増していき、いまも冷たい風が吹いている。


でも、右手はしっかり温かい。



舗装された道を歩きながら横目で彼女を見ていると、つい目があってしまった。


ドキッとした気持ちと、ビビってしまった驚きがダブルでパンチしてきた。




一瞬逸らしてしまったが、視線を戻してみると雪ノ下は変わらず俺を見つめ続けている。

こういうの、苦手意識ないんかなコイツ。


等間隔に立ち並ぶ街灯によって、はっきりだったり暗くぼんやりだったりを繰り返しながら、彼女の瞳を確認できる。


おう、何やってんだ俺たち。

そう思うとつい気恥ずかしくなり、また再度目を逸らす。


「ふふっ」


すると、隣からくすくすと笑う声が聞こえた。


「な、なんだよ」


気になって彼女に改めて顔を戻してみると、誇らしげに微笑んでいた。



「あなたが先に逸らしたから、私の勝ちね」





「………………っ!」


あぁ、そ、そういうことすか……。

本当さ、頼みますから、そんなに可愛さ出さないでくれないか?

もう限界に近いんでお願いしますってマジで!


「……お、俺の負けだな、そうだな」


負けたら罰ゲームがあるようで、なんだか俺の心臓部が苦しくなってきた。


くそう、辛いはずなのにすっげぇ満たされてる気分だぜ!



そうしているうちに、目的の場所が見えてきた。


「ここ……だな」


辺りは薄暗く、緩やかな波の音が響き渡る。


俺たちのいる海沿いの歩道から、目の前には真っ暗闇に広がった東京湾が映っている。





「どうして、こんなところに?」

雪ノ下が当然訊ねてくる。


現時刻は18時59分。


もうすぐに分かることだから、あえて返事をせずに黙ってその時を待っていた。


すると、海の向こう側。

俺たちがさっき通ったあの場所で、多色多彩の明かりが点された。


幻想的なBGMが歪んだような、分散された欠片となったパレード音がこちらまで届いてくる。


「あれって……」


歩道の柵に手をかけ、その様子を眺めていた。




その時。





その時。


突然目の前の海が、煌々と輝き出した。


こちらへ寄せられる波の一つ一つが飾りとなって、水面の明かりを芸術品のように表す。


雪ノ下は驚きを隠せず、見開かれた目は何度も瞬きをしている。

まだ、気づかないか。


「後ろ、見てみ」


俺が言うと、海辺の方向からそっと振り返る。

「!」



そこには、無数の光が視界いっぱいに映し出された。



木々に編まれた電飾。


広場に咲き誇る色とりどりの明かりの束。


そして、一段ずつ綺麗に煌めく階段を経て辿り着く、まるでお城のように橙色や蛍光色などの輝きを放つ眺望台。


これは思っていたよりもだいぶ豪勢なイルミネーションの数々だ。





「すごい……」


無意識なのか、声に出さずしていられなかったのか、彼女がそう口にした。


「こんなに、光るもんなんだな」


俺の率直な感想がそれだった。

いや、画像で見たときよりも強烈な発光具合なんだよこれ。


「……すごく、綺麗」

「そうだな」


寄り添った状態でそのイルミネーションを眺めながら、思い思いに呟く。


さっき駅前で見たときよりも、彼女の姿はとても映えていた。


綺麗な飾りに照らされた雪ノ下雪乃は、美しい。


その一言でまとめるのが精一杯なほどだ。



……そろそろ、言うべきだな。



このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月06日 (火) 21:30:56   ID: l4nYHKO5

続きはよ

2 :  SS好きの774さん   2014年05月08日 (木) 00:38:04   ID: NKITcnDs

おもしろい、続き頼む

3 :  SS好きの774さん   2014年05月17日 (土) 10:03:55   ID: PzV0GTqd

良作の予感

4 :  SS好きの774さん   2014年05月18日 (日) 12:06:04   ID: UbeHFB-q

書いてもええんやで?

5 :  SS好きの774さん   2014年05月18日 (日) 20:07:22   ID: zAbohRtQ

同じく書いてもええんやですよ?

6 :  SS好きの774さん   2014年05月20日 (火) 19:41:25   ID: 3ugnQ-e_

期待

7 :  SS好きの774さん   2014年05月20日 (火) 21:40:19   ID: R9ho8b_t

ドロドロシリアスとか俺得すぎて楽しみ

8 :  SS好きの774さん   2014年05月26日 (月) 22:19:57   ID: UkknLOLz

最後はゆきのんトゥルーエンドでオナシャス

9 :  SS好きの774さん   2014年06月15日 (日) 00:34:02   ID: NgrlVdi_

いいぞぉ

10 :  SS好きの774さん   2014年07月02日 (水) 15:31:59   ID: dXMb7voc

胃が痛くなりそうな予感がする…

11 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 09:51:28   ID: PyxdPLpE

今グダグダドロドロ書いてるから参考にしたい。はよはよ

12 :  SS好きの774さん   2014年07月27日 (日) 02:36:05   ID: HJV1Vo8D

このゆきのん既に葉山あたりに抱かれてるきがする

13 :  SS好きの774さん   2014年08月06日 (水) 04:02:02   ID: qwE41bob

写真の入ってない写真立て…

14 :  SS好きの774さん   2014年08月24日 (日) 23:19:48   ID: ocU2_t3U

パンツ洗濯機いれたからはよ

15 :  SS好きの774さん   2014年09月12日 (金) 01:25:06   ID: QaHhz8kv

温かくさせたい…で笑った
すごく拙い文章だな笑笑

16 :  SS好きの774さん   2014年09月15日 (月) 00:23:06   ID: x_BLZsG5

↑お前よりはマシだと思われ

17 :  SS好きの774さん   2014年09月18日 (木) 16:59:00   ID: QMOPdFQ2

感動した

18 :  SS好きの774さん   2014年09月21日 (日) 03:28:37   ID: abK9ZdWl

おいプロローグが終わったぞ
第一章はよ

19 :  SS好きの774さん   2014年10月09日 (木) 16:39:07   ID: YN6zazQr

玉子だ、、と!?
いきなり最終兵器をチョイス
茶色に変色した肌のオチはなんぞ?

20 :  SS好きの774さん   2014年10月20日 (月) 23:35:21   ID: KK3XeO_p

NTRだけは辞めて

21 :  SS好きの774さん   2014年10月30日 (木) 18:33:38   ID: bFjsGcBW

ハッピーエンドなんだろうな

22 :  SS好きの774さん   2014年10月30日 (木) 18:34:53   ID: bFjsGcBW

ハッピーエンドなんでしょうね?

23 :  SS好きの774さん   2014年12月05日 (金) 14:21:30   ID: IZbzo3E0

>>1以外の乗っ取りをまとめるのはやめてほしい

24 :  SS好きの774さん   2014年12月07日 (日) 01:26:20   ID: dP--LV-s

細かいようだけど小4の時にはもうぼっちだったはず

25 :  SS好きの774さん   2014年12月08日 (月) 19:55:12   ID: hFoAlozj

外野がうるさい

26 :  SS好きの774さん   2014年12月11日 (木) 01:26:31   ID: ji2fKPfv

つづききたーーーー!!!!

27 :  SS好きの774さん   2014年12月12日 (金) 12:42:09   ID: bKD8rRFs

パンツにアイロンかけた、はよ

28 :  SS好きの774さん   2014年12月21日 (日) 00:48:42   ID: _R2qXdne

続き。描いてくれ。
サファリにこのページ残してんだよ

ずっとな

29 :  SS好きの774さん   2014年12月28日 (日) 22:16:03   ID: vuIsV4NW

続き、書いてくれ
パンツ脱いでんだよ

ずっとな。

30 :  SS好きの774さん   2015年01月01日 (木) 01:27:27   ID: 03qzm5PP

続きが気になって仕方ない
あさってを楽しみにしてます

31 :  SS好きの774さん   2015年01月04日 (日) 00:02:09   ID: WiMoZ20N

遅れたけどゆきのん誕生日おめでとう!!!

32 :  SS好きの774さん   2015年01月07日 (水) 15:42:53   ID: GR1Dp-x0

八幡と雪のんが幸せになってくれればそれだけでいいんだ…
たのむ

33 :  SS好きの774さん   2015年01月08日 (木) 00:36:15   ID: eJA_h70U

出来れば由比ヶ浜との再会感動ルートも…

34 :  SS好きの774さん   2015年01月08日 (木) 20:19:59   ID: Rn9xLqpE

ゆきのんが可愛すぎて悶絶…!!

35 :  SS好きの774さん   2015年01月09日 (金) 09:59:55   ID: -kjyru1Y

余計な書き込みはまとめないでいただきたい
せっかく読み耽っているのに

36 :  SS好きの774さん   2015年01月09日 (金) 10:38:57   ID: wY1jJsNa

米35
ごもっとも

37 :  SS好きの774さん   2015年01月09日 (金) 13:30:44   ID: ZVHbG-IC

肘の件が気になって仕方ない

38 :  SS好きの774さん   2015年01月17日 (土) 00:58:19   ID: K8_42Zwt

つづきはよ

39 :  SS好きの774さん   2015年01月19日 (月) 00:26:19   ID: pHDqpd63

地の文の八幡模倣クオリティ高いと思う

40 :  SS好きの774さん   2015年01月19日 (月) 18:25:21   ID: y_kP72eQ

つづきみたいっす

41 :  SS好きの774さん   2015年01月19日 (月) 20:04:12   ID: ayBOYc9k

つづきはよ

42 :  SS好きの774さん   2015年01月22日 (木) 10:53:08   ID: Kk5A4SQ5

女「俺くんの口臭がキツすぎる」俺「ため息しかでない……」ブハァー
と同じ作者が書いたと思えない作風だなwww

つづきまってます!

43 :  SS好きの774さん   2015年01月30日 (金) 16:52:10   ID: ea1HnXPe

ゆきのんを幸せにしてやってくれさい

44 :  SS好きの774さん   2015年01月31日 (土) 00:44:14   ID: EGo2vzwO

肘、気になるなぁ

45 :  SS好きの774さん   2015年02月01日 (日) 16:23:10   ID: pZVhjeK-

つづき期待してます

46 :  SS好きの774さん   2015年02月04日 (水) 15:11:03   ID: -C2GNoRg

シリアスきたーー!

47 :  SS好きの774さん   2015年02月08日 (日) 13:28:01   ID: 8iiDhbQm

まだ終わってねーのかよ!!!

48 :  SS好きの774さん   2015年02月09日 (月) 12:50:09   ID: WVXencfK

期待してるからはよ

49 :  SS好きの774さん   2015年02月10日 (火) 10:52:44   ID: QAGnHW_v

タグめちゃくそ付いとるやんwwwwww

50 :  SS好きの774さん   2015年02月26日 (木) 21:09:33   ID: VRu6sTXX

つづきはよ!!!!!!!!

51 :  SS好きの774さん   2015年02月28日 (土) 20:16:21   ID: _XBsX89T

次はやく

52 :  SS好きの774さん   2015年03月09日 (月) 02:04:10   ID: z0h-n7VF

まだ〜?

53 :  SS好きの774さん   2015年03月10日 (火) 09:53:31   ID: f-ERn9Wb

靜ちゃんとこ行って交際宣言に500ペリカ

54 :  SS好きの774さん   2015年03月29日 (日) 23:48:13   ID: QjfviQwe

続きはよ

55 :  SS好きの774さん   2015年04月01日 (水) 17:04:21   ID: 3qZuc3Zu

は〜や〜く〜

56 :  SS好きの774さん   2015年04月02日 (木) 22:21:24   ID: gvC6A-8Y

更新宣言きたーー!!
早く土曜になれぇぇぇぇ((((;゚Д゚)))))))

57 :  SS好きの774さん   2015年04月08日 (水) 10:04:34   ID: uMzNCmh7

ここで止めるとは

58 :  SS好きの774さん   2015年04月09日 (木) 00:02:25   ID: T7IwRm-s

頼む、早く。

59 :  SS好きの774さん   2015年04月10日 (金) 23:01:54   ID: P4F5cC1Y

焦らさずにはよ

60 :  SS好きの774さん   2015年04月12日 (日) 16:41:07   ID: hPc7adCC

頼む・・・・続きを!!!!(願い)

61 :  SS好きの774さん   2015年04月24日 (金) 03:45:32   ID: ikONe9AD

どこぞの馬鹿が荒らして1000埋めやがった
最低だわ

62 :  SS好きの774さん   2015年04月27日 (月) 01:08:12   ID: 4h2qGw1s

これってどうなるんだよ
続き出るのかね

63 :  SS好きの774さん   2015年04月27日 (月) 14:39:33   ID: r9M2enc3

もしかすると>>1自身が荒らされて落とされたことをまだ知らないんじゃないか……?

64 :  SS好きの774さん   2015年05月06日 (水) 12:39:56   ID: 4De-w7nW

つづきはどうなるんだよおおおおおおおおおおおお

65 :  SS好きの774さん   2015年05月12日 (火) 03:59:12   ID: VTxqvSqn

こんな後もう少しでってところでえええ

66 :  SS好きの774さん   2015年06月16日 (火) 22:32:00   ID: 6wxqZW1W

微エロ容認の人にとってはこれ以上ない名作。ちょっと大人になった二人の雰囲気大好きです。遅まきながら見れてよかったが、完結してないのが非常に残念。

67 :  SS好きの774さん   2015年07月15日 (水) 03:16:08   ID: U-0bPXac

続きはもうないのかしら……

68 :  SS好きの774さん   2015年08月09日 (日) 15:30:04   ID: cMhRJXz_

続き、待ってます

69 :  SS好きの774さん   2015年11月12日 (木) 15:05:42   ID: Uyz7diiY

続きはどうなってるの?
どっかで書き進められてるの?

70 :  SS好きの774さん   2016年01月20日 (水) 05:18:25   ID: uu1PJ7I_

続きが読みたいよう、、、、

71 :  SS好きの774さん   2016年02月19日 (金) 21:57:11   ID: t_DH2fc7

頼む…続きを…

72 :  SS好きの774さん   2016年04月16日 (土) 23:52:59   ID: RoOAVJMd

書いてくれぇぇえ!

73 :  SS好きの774さん   2016年05月09日 (月) 02:39:42   ID: L1Xn4G9X

はよ!!つづきはよ!!!

74 :  SS好きの774さん   2016年06月12日 (日) 07:58:57   ID: QtjqyvKC

いまかきはじめています

75 :  SS好きの774さん   2016年07月13日 (水) 18:16:34   ID: azK7JZIZ

続きは読者の考えそれぞれで
完なのか(>_<)

76 :  SS好きの774さん   2016年12月12日 (月) 16:26:58   ID: l5EGvqfW

つづきはよ

77 :  SS好きの774さん   2017年02月24日 (金) 17:16:01   ID: DwA1FTOS

もう2年も経ってたら無理だろ

78 :  SS好きの774さん   2017年10月17日 (火) 17:07:53   ID: t8bKUtHj

待ち焦がれた俺らに救いはないの?

79 :  SS好きの774さん   2018年01月02日 (火) 01:38:48   ID: 1ipIlrDY

おもしろいのに完結してないのもったいない

80 :  SS好きの774さん   2018年05月01日 (火) 20:21:03   ID: S8JR4yg_

続きはよおおおおおおおおおおおお

81 :  管理人さんへ。   2018年10月21日 (日) 17:32:52   ID: setdAYIE

立て逃げ多いですね。

82 :  SS好きの774さん   2019年05月24日 (金) 19:49:50   ID: Fmbd7zB5

どんなオチのつもりだったのか

83 :  SS好きの774さん   2019年08月05日 (月) 01:21:46   ID: OB4GjM_t

いいぞぉーこれ

84 :  SS好きの774さん   2019年08月30日 (金) 01:57:07   ID: IrJwbAjT

こりゃ続きはないな。

85 :  SS好きの774さん   2019年11月21日 (木) 00:58:09   ID: _0ikAaQY

これどいつもこいつもマジで言ってんのか?思いっきりスレタイに繋がってるだろ雪ノ下の誕生日1/3だぞ

86 :  SS好きの774さん   2023年01月18日 (水) 07:11:32   ID: S:SN6WA2

気づかなかった間抜けだけど今さらオチを知れて嬉しいわありがとう

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