女「閉鎖都市の奴隷に堕とされたって絶対に負けたりしないんだから!」キッ (130)

ギィ… ギィ…

女「…ん……んう…」

女「んんっ……あれ…? なに…どこ、ここ…」

ギッ
女「……なんで私、縛られてるの」

女「真っ白で、何もない部屋…。広くはないけど物がないから狭くもない…」

女「ベッドと縄と私」

女「アハッ。うん。うんうんっ」

女「犯罪の匂いがするね」





※以前建てた、女「ある閉鎖居住区を安価で探訪」の焼き直し

設定やキャラに多少の変更あり
安価SSを普通のSSで書き直したものなので、途中ちょっと不自然な展開あるかもです

わりとバンバン死にます
あまりグロくはしないですが抵抗ある人は注意で

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398583723

ガチャッ

ピエロ「ワオッ、目が覚めたー? いいネッいいネッ。グッドタイミングねーッ」

女「誰よ、アンタ」

ピエロ「噛みつく元気あっていいネーッ。ンー、それ大事ヨー? 元気がイチバンッ!」

ピエロ「活きがいいのほど売れ行きもいいネッ」

女「ここはどこ? この状況なに? なんで私が縛られてるのよ。差し支えなければコレほどいてくれない?」

ピエロ「オーケーオーケー! ンー、いくヨ? 出番だヨ!」パンパン!

女「聞けよ赤っ鼻」

ピエロ「野郎ども! 商品を運びな!」

ウィースッ ゾロゾロ… ヨイショーッ エッホエッホ

女「ゴツいのいっぱいきた!? ちょっ…なに!? 触んな持ち上げんな! キモいキモい!」

-ショーステージ-

ザワザワ…ザワザワ…

ピエロ「レディーーースッ! エーンド、ジェントルメーン!」

ピエロ「大変長らくお待たせしましたーッ! てめえらクソどものために上物仕入れてきたぜ! ケツ振って喜べオラァッ!」

ピエロ「全財産下ろしてきたか!? お家を担保に入れる心の準備はオーケー!?」

ピエロ「破産上等! 欲しいもんは欲しい! 後先考えず吊り上げな!」

ピエロ「アッそうそうッ…急なご融資が入用なら当イベント主催のニコニコ金融をご贔屓にネッ!」ドッ HAHAHA!

ピエロ「そ・れ・で・はーッ、本日のメーーンイベント!」



ピエロ「奴隷競売のお時間だーーーッ!!」

ワアアアァァーーーー!!!!

女「……奴隷って」キョロキョロ

ポツーン

女「……私?」

スポットライト パッ
女「眩しッ!」


ピエロ「本日の奴隷はこのコ! ンー、とびっきりの美少女だネーッ」

ホウ… カワイイ チョーイケテンジャン フンフム ドヨドヨ…

ピエロ「このカワイコちゃんを落とすのは会場のどなたかなッ!? さあーッ泣いても笑っても一度きり! 競売…開始ぃッ!」


令嬢「……」スッ

ピエロ「おおーっと! いきなり大台! 令嬢氏、100万から!」

撫子「……」スッ

ピエロ「負けじと撫子氏! 倍UPだァーッ!」

ゆるふわ「……」スッ

ピエロ「さらにドンッ! ゆるふわ氏が割って入る! これは混戦になってきたネー!」

縦ロール「………」スッ

女医「………」スッ

派手スーツ「………」スッ

ピエロ「主役はバベルだけじゃねえッ! ここで一気に参加者乱入ゥーッ!」

令嬢「……」スッ

撫子「……」スッ

縦ロール「……くっ」スッ

令嬢「……」チラ… スッ

ピエロ「令嬢氏、ここでなんと倍! 悠々と桁を超えたーーッ!」

縦ロール「うっ…くうぅッ……」ガクッ

女医「……相変わらず高いな」ハァ

クッソ マタカヨ ヤッテランネー メゲルワ…


令嬢「……」フフッ

撫子「……」スッ

ピエロ「撫子氏が喰らいつく! 余裕の顔であっさり二本上げ! てめーには渡さねえ! 対抗意識バリバリーッ」

令嬢「……」ムッ スッ

撫子「……」スッ

ゆるふわ「……」スッ

ピエロ「やっぱ金持ちには勝てねえやッ! 競り合いはバベル勢に絞られてきた! ヒャッハーッ貧乏人は引っ込んでなァ!」

撫子「………」ンー スッ

令嬢「……」スッ

ピエロ「令嬢氏、迷いなし! プールは底無しかーッ!」


女「……当事者置いてきぼりなんだけど。なんなの。マジで説明欲しい」

女「なんか、この競りって私のことが懸けられてるっぽいけど…」

女「奴隷とか言ってたし。ガチでヤバイのかも」

女「でも手足縛られてて逃げられないからなぁ…どうしよ…」ウーン


カーーンッ

ピエロ「終ーーー了ーーーッ! 入札けってーーい!」

女「えっ、ヤバッ……全然聞いてなかった!」

ピエロ「栄えあるご主人様になったのは……この方だーーッ!」

撫子「うふふ……やった! やりました!」ピョンピョン

女(よかった…。なんとなくいいひとそうな女の子で)

撫子「~~♪」ゴキゲン

女(…綺麗な人。ストレートの黒髪に高そうな着物……お金持ちの雰囲気が出てる)ホレボレ

撫子「…あら。女さん、こんな手荒に縛られて……可哀想」

撫子「すぐに、ほどいて差し上げて」

ウィースッ ホドキホドキ…

女(やっぱりいいひと。よし、とにかくいろいろ教えてもらわなきゃ!)

女「あのっ、ちょっとアンタに訊きたいんだけど!」

撫子「あら? んー。うふふ。いけませんわ、そんな口の利き方」

女「…え?」

撫子「お聞かせ願えますか、ご主人様……でしょう?」

女「ご主人様…って」

撫子「私が女さんを買い上げたのです。だから私が、女さんのご主人様。おわかり?」

女「いや、だから。そもそも私を買うってなに?」

撫子「それが奴隷競売のルールですから」

女「人権どこいったの? 私の意思は?」

撫子「あら。女さんに意思なんてあるのですか?」

女「なに言ってんの…。あるに決まって…」

女「……あれ?」

女「うそ……わかんない」

女「なんで…こんなことって…」

女「…ねえ。アンタ」ジロッ

女「ここは、どこなの?」

女「あと何より気になるのが。……私、自分が誰なのか全くわからない」

女「思い出せない。全然。あの部屋で目が覚める前のことが、ひとつも思い浮かばない」

女「記憶喪失――って言うのかな」

撫子「そうですね。女さんは記憶喪失です」

撫子「あまり気に病まないでくださいね。それが自然なのです」

女「自然って…」

撫子「まあまあ、いいじゃないですか。それよりもっと喜んでください。私に買われたことを」ニコッ

撫子「では失礼して」ガッチャンッ

女「……あのさ。なんで首輪かけるわけ?」

撫子「私のモノですから」

撫子「では参りましょう。私たちの愛の巣に」ニコニコ

-居住区-

ブロロロロ…

撫子「車の乗り心地はどうですか? うふ、実は自慢の逸品でして。ここでは自家用車を持てる人は一握りなんですよ」

女「…空が無い」ジーッ

女「さっき、ゲートをくぐってきたトコも同じだったけど。ここって全部、天井がドームで覆われてるの?」

撫子「はい。この居住区を含め、街1つがまるごとドームに収まっています」

撫子「先ほど南ゲートをくぐってきたのが遊戯区。様々な催しが行われる場所ですわ」

撫子「ここは娯楽に乏しいですから。多少の刺激もなければ、みんな退屈で参ってしまいます」ウフフ

女「…人身売買も娯楽だってこと?」

撫子「遊戯区では、ちょっとだけ背徳にも目をつぶるのです」

撫子「…さあ、見えてきましたよ。あの高層建築が『バベル』……私の家で、今日から女さんの住処になります」

-バベル-

女「でか! メチャクチャ高い! え、何階あんの…? これが撫子の家って、どんだけの大富豪よ?」

撫子「あら…ごめんなさい。誤解させてしまいましたね。私を含め、ドームの住民の限られた人間が、ここを住居としていまして」

撫子「ほかにも行政の会議場や、庁舎としての機能も備えていますが」

撫子「まあいずれにせよここの中心地は、このバベルだということです」

女「…つまり、金持ちだけが入れる高級住宅地ってこと?」

撫子「そうとも言えますね」ニコ

女「あからさまな選民意識…」

撫子「ああ、それと。先ほどの競売で争った何人かは、同じバベルの住人ですので」

撫子「声かけられても、ついてっちゃダメですよ?」

女「…それってご主人様の命令?」

撫子「いいえ。ただの独占欲です」ニコリ

-撫子の家-

撫子「こちらが私の家です。自由にくつろいでくださいね」

女「…でかい。広い。豪華」

女「掃除するだけで骨が折れそう…。で、私は何すればいいの? 家事全般? それとも別に仕事があるの?」

撫子「特には。家事は家政ロボットがやりますので……女さんは、そうですね。好きに寝起きして、好きな時に好きなことをしててください」

女「……奴隷なんでしょ?」

撫子「はい。女さんに自由はありませんっ」ウフフ

女「とても自由に思えるんだけど…」

撫子「女さんが、私のそばにいてくださればいいんです」

撫子「鬱屈する日々の癒し…そんなところですね」ニコ

女「んー。じゃあ…」

女「やっぱり何もしないってわけにいかないしさ。何かないかな、やること」

撫子「やること…」ウーン

女「やってほしいこととか…」

撫子「女さんにやってほしいこと…そうですねぇ」

撫子「……耳掻き、とか」テレ

女「耳掻き?」

撫子「い、嫌ならいいですよ? 我がまま言ってごめんなさいっ」アタフタ

女「だから奴隷の待遇じゃないって…」

女「…ん。いいよ、そのくらい。お安い御用」ポンポン

撫子「い、いいんですか? しかも膝枕で…?」

女「うん。ほら、おいで」

撫子「……で、では失礼して」ゴロン

女「~~♪」カキカキ

撫子「あっ…スゴ…気持ちいいです…」

撫子「……嬉しい。女さん…」

撫子「女さん。これから二人で暮らすにあたって、いくつか守っていただきたいルールがあります」

女「ルール?」

撫子「はい。主なルールは3つ」

撫子「1つ。夜間は、ゲートをくぐって居住区以外に行かないこと」

撫子「2つ。ドームの『外』へ興味を持たないこと」

撫子「3つ。資格の無い者は、バベルに立ち入らぬこと」

撫子「…女さんは私の奴隷ですから、3つ目のルールは適用外です」

撫子「ただし。資格の無い者をバベルに入れる手引きをした場合、同罪となります」

撫子「細かくは他にもありますが、重要なのはこの三原則です」

撫子「守ってくださいね?」ニコ

女「………」

女「……わかったよ。三原則のルールを守ればいいんでしょ?」

撫子「はいっ。さすが女さんです、賢いっ」

女「なんかバカにされてない? いいけど…」

撫子「そろそろお食事にしましょうか。あまり大したものはお出しできませんが」

撫子「そちらの食卓に座ってお待ちください。今、調理させますので」ピッ ピッ

女「食事も家政ロボットがやるんだっけ? ハイテクだなぁ…」

ウィーーン カチャカチャ ホカホカ…

女「…テーブルの真ん中から自動で食べ物が出てきた」

女「しかもフレンチのフルコース…」ゴクリ

撫子「女さん、ワインは何がよろしいですか?」イソイソ

-翌日-

女「…ん。朝…だよね。日光とかないからよくわかんないけど…」

女「てか、窓もないんだよね、ここ…。ドームのせいで陽射しシャットアウトだから、そういう構造なのかな」

女「撫子は……いない」

カサ…
女「書き置き…?」


『女さんへ。小用のため外出してきます』

『女さんを一人にするのは心残りですが、これもバベルの務めですので仕方ありません』

『午後までは好きになさって構いません。夕方には帰ります』

『あなたのご主人様より』


女「仕事なのかな。見た感じ、私と歳の差なさそうだし、学生なのかと思ってたけど」

女「…私も外出していいってことだよね」

-居住区 市街-

ワイワイ ガヤガヤ…

女「おお…けっこう人いるんだ」

女「この居住区ってかなり広いみたい。端から端までが目視できないし…街1個ってのは大袈裟じゃなさそう」

女「中央の大通りに商店や屋台が立ち並んでて」

女「側道には人家や集合住宅がいっぱい」

女「大きい建物は、病院や学校、駅、森林公園もある」

女「駅は…路面電車だ。車両は一両編成。けっこう乗ってるな……これがドームの人たちの足っぽい」

女「上空には高架水道と、街灯もたくさん。電気があってインフラはしっかりしてる」

女「……こうして見ると本当にバベルは特別扱いなんだ」

女「パッと見は柵も塀もないのに、強力な電磁波のバリアみたいのが周りを囲ってる。……これ、触ったら痛いじゃすまないよ」ゾッ

女「さて、どこに行こっか…」



?「あっれー! 女じゃん!」

女「ん?」クルッ

ビッチ「うわー! チョー久しぶりー! やだメッチャ嬉しーんだけど!」

女(うわ…すごいカッコ。超ギリのミニスカ、ブラチラのキャミ……絶対はしたないコだ、このコ)ヒキ…

ビッチ「やーんもー嬉しいー! 嬉しいよー! 抱いて!」ダキッ

女「いやいや、そっちが抱きついてきてるからっ」アセ

女「てか離して…まず、誰なのアンタ? 私を知ってる…?」

ビッチ「ほえ? あっ、そっか…そっかそっかー。だよね。ねー…」

ビッチ「……あたしのこと、憶えてないよね」

女「…ごめん。私、なんか記憶喪失みたいでさ。自分のことも忘れてるくらいで」

ビッチ「……ん」シュン

女「あ、あの…ホント、ごめんね? もしかして…私とあなた、友達とかだった?」


ビッチ「セフレ」


女「え゛……」

ビッチ「…アハッ! ジョーダンだってー! トモダチ、トモダチ! も、ガチでバリ仲良かったし!」

ビッチ「つーかダチのこと忘れるとかないわー。まじ引くし!」

女「ご、ゴメン?」

ビッチ「まっ、いーよね! 忘れたってまた仲良しになればいーよ!」

ビッチ「あたし、ビッチっての。よろしくねー女!」

-居住区 カフェ-

ビッチ「へー。撫子んトコにいんだ? じゃーバベルかー……勝ち組じゃん。上手くやったな、このーっ」ウリウリ

女「私の意思じゃないって…競売で買われたの」ハァ

ビッチ「女は人気あったもんねー。あいつら盛りまくって張り合ったんだろーね!」キャハハッ

女(…誰のこと言ってんのか大体わかっちゃうな)

ビッチ「で、女はここで何してんのー?」

女「せっかくだから居住区を見物にね。撫子の家にいても暇だし…」

女「…そうだ。ちょっと訊きたいんだけど」

女「三原則のことで、教えてほしいことがあって」

ビッチ「あ、それ訊いちゃう? 訊いちゃう系?」

女「一応、撫子から三原則のルールは聞いたけど。なんか、それ以上踏み込めなくって」アハハ

女「…三原則を破ったら、どうなるの?」

ビッチ「うーんとね」

ビッチ「死ぬかも?」テヘッ

女「……死ぬって。ちょっと」タラリ

ビッチ「フツーはどれに抵触してもアウトだけどー。女だったら、2つ目と3つ目はギリセーフかもね」

女「2つ目と3つ目って…」

ビッチ「ドームの『外』に興味持つなってのと、バベルに入るなってヤツ」

女「ああ。バベルの方は、私は免除だって言われた」

ビッチ「…正確には女でもバベルで触れちゃダメなトコあんだけどー」

ビッチ「とにかく。1つ目はガチだから」

女「夜間はゲートを出るな、ってルール?」

ビッチ「そーそー。それ破ったらね…」



ビッチ「食べられちゃうよ――『怪物』に」

女「バベルに住んでる人って、いわゆる特権階級でしょ?」

ビッチ「んーそだねー。でも単なる金持ちってわけじゃないよ」

女「…なにか特別扱いされる理由があるの?」

ビッチ「女は憶えてないもんね。ま、特別視されるにはされるだけのワケもあんの」

ビッチ「金持ちってのは、むしろ副産物で。逆なんだよ。金持ちだから特別なんじゃなくて、特別だから金持ちなの」

女「それって…」


ビッチ「あっ、ヤバッ…そろそろあたし行かなきゃ!」

女「あ…なんか用事あった?」

ビッチ「ゴメンねーちょっと人と会う約束あってさー……ていうか」

ビッチ「そーだ! 女もくる?」

女(ん…どうしよ。もう夕方になるし、撫子が帰ってくるよね)

すみません、ミスりました
>>24の前に下の分が入ります


女「怪物……?」

ビッチ「ドームにはねー。怪物が棲んでるの」チューチュー

ビッチ「昼のあいだはお寝んねしてっけどー」プハッ

ビッチ「夜になったら、ドームの接続区画を徘徊してんの」ココア アマーイ

ビッチ「居住区のゲートの外……接続区画は全部繋がってるらしくて」

ビッチ「夜毎ぐるぐる獲物を探して、うろついてんだってー」

女(ふうん…。よくわかんないけど…まだ時間あるし)

-撫子の家-

女「…ただいまー」ソロー…

撫子「おかえりなさい。女さん」ニコ

女「う、うん。帰ってたんだね」

撫子「外出…されてたのですね」

女「ちょっと、街にね。あはは…ダメってことはないでしょ?」

撫子「ええ、構いませんよ。……私をないがしろにしなければ」

女「ないがしろって…」

撫子「街に、何をしに行かれたのですか?」

撫子「街で誰かと会いましたか?」

女「それは…その。会った、けど」

撫子「どなたと?」

女「…………」

女「……街で、ビッチってコと会ったんだ」

撫子「……」ピクッ

女「本当に偶然で。たまたま声をかけられて。それで、いろいろ教えてもらって…」

女「私……記憶喪失だから。やっぱり不安で」

女「彼女…ビッチは私の知り合いだったらしくて」

女「私がビッチのこと忘れてるって知ったら、すごく悲しそうだった…」

女「でもねっ、これからまた仲良くなればいいって言ってくれて」

女「私……嬉しかったんだ」



撫子「……女さんは……私のモノなのに」ギリッ

撫子「わかりました……もう、いいです」スクッ

女「え…?」

撫子「女さん。私、急用ができましたので」

撫子「少しだけ出掛けてきますね」

女「でも、もう夜…」

撫子「心配してくれてるんですか? ふふ…だいじょうぶですよ。ゲートの外には出ません」ニコ

撫子「本当に…すぐにすむんです」

撫子「女さんは、この部屋を『絶対』に出ないでください」

女「…絶対?」

撫子「私の奴隷なんですから。ご主人様の言いつけ……守れますよね?」クスッ



撫子「……イタズラ好きの子猫を、制裁しなくては」ボソ

バタンッ トットットッ…

女(いや…考えすぎだよ。いくらなんでも変なことにはならないでしょ…)

女(撫子の様子は、正直どこか不穏だったけど)

女(私が他人と話すことすら嫌なの…?)

女(ううん……それだったら『自由にしていい』なんてことはないはず)

女(……ビッチと接触したことが、撫子にとってはいけないことだった?)

女(…………)

女「考えててもしょうがないか。待つって決めたんだから…待とう」

女「……ビッチ。だいじょうぶだよね…」

………………

………

女「撫子……帰ってこない」

女「もう深夜なのに…」

女「やっぱり、何かあったの?」


                       カチ… カチ…

女「くそっ…こんなことならついていけばよかった」

   カチ… カチ…

女「……よし。今からでも行こう。だいじょうぶ、ゲートを出なければ…」

           カチ… カチ…

女「もうッ、なに。さっきからうるさい…」


……カチャ…


女「なんだろ…壁? 壁から音が……」


コツ…コツ…コツ…


              カタッ


女「え? あっ、撫…子…?」



                                      ジョキンッ


ゴトッ
      ジワッ…


?「……汚ったな~い」



 -DEAD END-

えっ


………………

………


ピエロ「――…ンーーー! It's Show Timeーーッ!」

ワアアアァァーーーー!!!!


女「……ッ、んんっ……あ…? ここ…は…」

女「なんで…縛られて……」

女「ッ! アタマ痛い…。ひどい頭痛…」ズキズキ


ピエロ「てめえらクズどものお楽しみはこれにて終ーーー了ーーーッ! 涙拭けよオラァッ!」

ピエロ「本日の奴隷競売は……令嬢氏が一本釣りーーーッ!!」

カンカンカンカーーン!!

ウオオォォーーー!! キャーーー! ソンナオカルトアリエマセンッ



女「……奴隷」

>>31
混乱させちゃってすみません
前に投稿した安価SSを安価無しで書き直したので、ちょっと展開が変な感じに…

死んじゃいましたけど、まだ続きます

令嬢「ふふ…ふふふっ……はじめまして。女…」クスクス

令嬢「あなたのご主人様――令嬢よ」ファサッ

女「………」ボー

令嬢「どうしたの? そんな呆けた顔をして。ふふ…我が身の運命を嘆いてるのかしら?」

女「……綺麗なひと」

令嬢「え!? ま、まあ……何を言ってるの。やだ…そんな見え透いたお世辞…」アタフタ

女「どうして? 本当に綺麗だよ」

令嬢「も、もうっ」テレテレ

令嬢「…いいわ。その従順な態度。私、とても上機嫌だわ。首輪だけで許してあげる」ガッチャンッ

女「あ、やっぱり首輪はするんですね」

-バベル 令嬢の家-

令嬢「二人だと、少し手狭に感じるわね。拡張の依頼を出しておこうかしら」

女「…でかい。広い。豪華」

令嬢「何か欲しい物はある? 大抵の品は用意してあげるわ」

女「奴隷が要求していいんだ…」

令嬢「あなたは私の奴隷なのよ。それにふさわしい待遇でなければ、ね」

女「奴隷の定義がこんがらがってきたよ」

令嬢「いいの! 女は私のモノなのよ。そう…女は私のモノ……ふふっ…えへへ」ニヤニヤ

女「ご主人様ー? おーい」

令嬢「リピート」

女「え、なにが?」

令嬢「私のこと、なんて呼んだの? もっかい言ってくださる?」

女「……ご主人様?」

令嬢「……ふふっ…くふふ……フフフフフ…」クネクネ

女「よく脱線する美人さんだな…」

令嬢「ねえ奴隷。私、ちょっと用事があるから、出てこようと思うのだけれど」

令嬢「あなたがついてきたいなら特別に一緒にいさせてやってもいいわ」

令嬢「というわけで、きなさい」

女「私の意思を確認する意味あったの、それ…」

女「で、どこに行くって?」

令嬢「会合よ」

-バベル 議場-

令嬢「――…では次。近頃、頻発する『ゲリラ新聞』の活動実態について。報告を」

お下げ「はい。調査の結果、やはり居住区に拠点がある模様です」

お下げ「拠点がどこかまでは絞りきれていませんが…」

お下げ「ただ、ゲリラ新聞のばら撒いた号外や速報記事は即時回収をすませています」

お下げ「現在は新聞の撒かれた各地点から、拠点の割り出しを照合している最中です…」


女(…会合って、つまりバベル住人での会議みたい)

女(令嬢は議長の立場なのかな。ほぼ会議を仕切ってる)

女(あとは…)チラ…


撫子「…………」

ゆるふわ「…………」ウトウト

縦ロール「…………」


女(なんか見たことある人たちもいるね)タハハ

撫子「………」ジーッ

女(う…なんかガン見されてる)

撫子「………」ニコッ

女(笑いかけられた……なんで? 会釈くらいした方がいいかな)ギコチナイエミ

撫子「……!」フリフリッ アシパタパタ

女「す、凄い反応されちゃった…!」



令嬢「奴隷」

女「う。はい…」

令嬢「随分楽しそうね。ご主人様を差し置いて」

令嬢「…撫子。あなたもよ。女は、私の奴隷なの。馴れ馴れしくするのは協定違反だわ」

撫子「はい。ごめんなさいね、令嬢さん」ニコ

令嬢「……では、本日の会合はこれにて終わります。皆さん、くれぐれも三原則とドームの平穏を守って」

撫子「バベルに誓って」

縦ロール「バベルに誓って、ですわ」

ゆるふわ「……ふわぁ…あや? お話、終わったー?」ネムネム

撫子「おはようございます、ゆるふわさん。さあ、いつものお時間ですよ」クスッ

ゆるふわ「はーい…バベルに誓ってー…」アフ…

お下げ「…皆様お疲れ様でした。本日の決定どおり、私どもで処理いたします」ペコリ

ワイワイ ガヤガヤ… ツカレター スタドリイリマス?



女(……令嬢はまだ忙しそう。お下げの人と何か話し合ってる)

女(せっかくだから誰かに話しかけようかな?)

女「あの。ちょっといいですか?」

縦ロール「…まあ。わたくしですの?」

女「うん、そう。髪型の特徴的なあなたです」

縦ロール「バカにしてますの!?」

女「してないって。えっとね、あなたと少しお話したくて」

女「時間あるかな?」

縦ロール「…いいですけれど。あまり話すと角が立ちますわよ」チラ…

女(令嬢って、やっぱり怖いコなのかな…)タラリ

縦ロール「まあ、わたくしからもお話したいことがありましたし。ちょうどいいですわね」

縦ロール「女さん。あなた、『ドーム放送局』はご覧になりまして?」

女「……『ドーム放送局』?」

縦ロール「存じ上げないご様子。ぜひご覧になってくださいませ」

縦ロール「バベル内なら、談話室にモニターが設置されていますから。ぜひ」

女「見るのはいいけど…なんでそんなにこだわるの?」

縦ロール「天使に会えるからです」

女「…て、天使?」

縦ロール「天使……それは数々の冠番組を持つ、ドーム放送局の看板…」

縦ロール「アイドル様ですわ!」クワッ

-談話室-

縦ロール「この穢れきったドームで天上天下唯一無二の穢れなき神聖絶対乙女! ラブリーマイエンジェル・アイドルたん!! アイドル様こそ正義!!!」
縦ロール「わたくし真実の愛を見つけましたの! 七生報儲!! アイドル様こそ正義!!!」
縦ロール「全財産つぎ込んでも本望ですわ! わたくしの屍を越えていけ! でも越える前に踏んで! もっと踏んで!! アイドル様こそ正義!!!」



女「……あまりの剣幕に、見ます!絶対見ます!って約束しちゃった。だって怖かったんだもん…」ガクブル

女「とにかく見よう。もし見なかったら縦ロールさんに何をされるか…」ピッ


………
<アイドル 24時>

ドワナコーザアーイ~~♪(アルマゲドンノテーマ)

アイドル『きゃっほー☆ 金づるのみんなーっ! アイドルだよー!』ルンルン

アイドル『いつも私の私生活を覗いてくれてありがとーっ! 愛してるぜー!』イェー!

アイドル『今日はなんと! 3時間特番の生放送!』

アイドル『普段の私に興味津々なキミ! ちゃーんとっ、見といてよねっ』

アイドル『カメラはこの部屋中にたっくさんあるよ! お手元のリモコンでアングルを変えてね!』キャッ

アイドル『もしかしたら…イケないショットも見えちゃうかもー!』ポッ

アイドル『あ、じゃ私これからお風呂だから。しばらく誰も映んなくなるけどチャンネルそのまま!』

ガチャッ スタスタ

  ……エ? サスガニマズイ? ナンデー ウチアワセデハ…

  ……ハイハイ ワカッタッテバ マッテテ


コトン…(部屋の中心にダルマが置かれた音)



3時間後 番組終了

………



女「これはひどい」

女「3時間がほぼサイレント映画……ダルマが主演で。ねーよ」

女「どのアングルに変えても動きゼロじゃん。返せよ…ホントまじで3時間返せよ」ウツムキ


女医「まさかアイドルの番組を全部視聴する奴が縦ロール以外にもいるとは…。物好きな」ヤレヤレ

看護婦「先生、ダメですよ。そんなふうに言っちゃ」

女「……誰?」

女医「この白衣を見てわからないか。医者だよ、医者。バベルお墨付きの」

女医「出入りが許されてるだけで、バベルの住人じゃないがね」

女医「こっちは私の助手。看護婦さんだ。なかなか腕はいい」

看護婦「こんにちは、女さん」ペコ

看護婦「……女さん?」ズイッ

女「えっ…な、なに。てか近い近い…」アセ

看護婦「………」ジーッ

看護婦「……だめみたいですね」フゥ

女「勝手に納得しないで。なんなの。わかるように説明して」

看護婦「…記憶を失ったまま、という意味です」

女「…看護婦さんも私の過去を知ってる人ってわけ?」

看護婦「そう…そうですね。そうですよ」

看護婦「私が一番あなたをよく知ってるんです」

看護婦「私たち、幼馴染ですから」

女「幼馴染…?」

看護婦「ええ。ずうっと一緒だったんですよ」

看護婦「ねえ。本当に思い出せませんか?」ズイッ

女「ちょっ…密着しないで! 胸あたってますけど!」

看護婦「当ててるんです」フフ…

女医「あーー、はいはいストップストップ! 協定違反だよ看護婦さん」ベリッ

看護婦「あんっ…」

女「……」ホッ

女医「あんまオイタやると目をつけられるよ? 特に令嬢さんは怖いんだから……自重しな」

女医「アンタだって首吊られたくないだろ?」

看護婦「…そうですね。ええ、そうですよ」

看護婦「ただ。これだけは忘れないでください」

看護婦「私たちは昔、愛し合ったということを」ギュッ

看護婦「今は忘れていても。必ず思い出します。必ず…」

女「……どういうこと?」ズキッ

女(いたッ……頭痛が…)ズキ…

看護婦「それでは私たちはこれで。また会いましょう、女さん」

女医「あーー、じゃあな。顔色よくないし、あんま無理すんなよー」

スタスタ…


女「……頭痛は治まった」ハァ

女「過去を思い出そうとするとズキってくるのかな……」

女「でも、やっぱり思い出したい」

女「奴隷暮らしは……思ったより快適なんだけど」

女「ま、とにかく談話室にいてもしょうがないし。どっか別のトコ行こ…」

-バベル 空中庭園-

女「わあ…すごーい。こんな塔の中に植物だらけの庭園がある……」

女「居住区にも森林公園があったけど……やっぱりドームの『外』に出られないから、緑が恋しいってことかな」

女「バベル自体もでかいけど…。内部の設備も人間が生活するのに必要最低限は揃ってる」

女「住居に巨大な農場、貯水施設、内部電源、循環系。空調設備もあるみたい。ロボットが動かしてる全自動の工場も…」

女「それに、どこも窓がなくて、防衛システムがバベル全体に張り巡らされてる」

女「……まるで要塞ね」

    バサッ… バサッ…

女「? なんの音…」

                      ジョキンッ

女「……ッ!」ズキッ

女「またっ……頭痛が…!」



?「あれあれ~? 女ちゃんじゃないですか~」

女「…あなたは?」

お花畑「私は空中庭園の管理者で~。花壇や植物たちのお世話してます~お花畑で~す」ニコー

お花畑「こっちは愛用の鋏で~…ジョーズきゅん♪」ジョキッ

お花畑「ちょうどジョーズきゅんと一緒に枝葉のお手入れをしてて~」

お花畑「と~っても切れ味がいいんですよ~」

女「ッ……」

女(なんだろ…あの鋏。嫌だな……すごく…嫌だ)ゾク…

女(それに。このひとも)

女(なんとなく見覚えが……)

女「あの、ゴメンね。私、用事があるから…」ササッ

お花畑「………」

お花畑「女ちゃん。女ちゃんさ~」ジョキン

お花畑「もしかしてだけど~。私のこと、避けてな~い?」ジョキッ…

お花畑「オカシイよね? はじめて会ったよね。私たち」ジョキッ…

女「ちょっと……それ、やめて」

お花畑「嫌われるの、やだな~」ジョキッ ジョキッ

女「鋏。鳴らすのやめてよ」ズキッ…

お花畑「えぇ~…どおしてぇ~?」

ジョキン ジョキン ジョキン…


お花畑「聞かせてほしいなっ。女ちゃんの気持ち!」

女「ッ!」ダダッ

女(ヤバイ……なんだかわかんないけどッ、あのコは絶対危ない!)

女(お花畑は――怖い)

女(ああッ、もう…また頭痛…!)ズキッ

ダッダッダッ…



………………

………


-???-

女「……はあッ、はあッ」ヨロ…

女「どこだ……ここ」キョロキョロ

ズキッ… ズキッ ズキ…

女「いった……ダメ。頭痛とまんない……気持ち悪い…」

女「もう目も開けてられないや……。少しだけ、休もう」ペタン

ズキッ… ズキッ…

女「いろんなことがありすぎて…頭、整理しないと」ハァ…ハァ…

女「てか昔の私、顔広すぎでしょ……何人知り合いいんのよ。しかも極端なコばっかり…」

女「看護婦さん、幼馴染って言ってたけど。本当なのかな」

女「私のことを一番よく知ってるとか、愛し合ってたとか……アハッ、ビッチじゃあるまいし」

女「……あ、れ?」

                                             ザリッ…

女「ビッチって……誰だっけ?」

                                           ザリザリザリ

女「ビッチ…? そうだ……私、居住区の街で」               ザリザリザリザリザリザリ

女「違う! 街になんか行ったことない…!」          ザリザリザリザリザリザリザリザリザリ

女「なのに。鮮明にビッチの顔が浮かんで……」   ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ

女「会ったこともないコが……悲しそうに。私■励ま■て」ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ


女「ッ……またッ……頭痛が■ひど■■っ…!■リザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ


女「やっ……消■ちゃ■■…■憶が■れて■■■」ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ



女■やだ■■■嬢…■た■けて■ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ




…ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ
ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザ
ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザ
ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザ
ザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリザリ…





                   ――――ブツンッ――



 -BAD END-

一応、ここまでが前回投稿の流用です
ここから投下スピード落ちます

………………

………

ウーーーッ! ウーーーッ!

サガセーーッ! ドコイキヤガッタ! ニガスナッ! フサグカ…

タッタッタッ パシャパシャ…

女「はっ……はっ……」

女「くそッ…。また行き止まり…!」ダンッ

女「あのピエロんトコから逃げ出しても、どこに行っていいかわかんない…」

女「ていうかこのドームなんなのよ……こんだけ走り回っても出口ひとつ見つからない」

女「ゲートはどうにか越えたけど…。街中、複雑で行き止まり多すぎ。失敗したかな…」

アッチダ! ロジウラニハイッタゾ! ツカマエロー!

女「ッ……」ビクッ

女「ど、どっか隠れなきゃ……って、わわっ!」グイッ

ドサッ

女「いった……だ、誰?」

セーラー服「シッ……静かにして」

セーラー服「助けてほしいんでしょ?」

ムコウダ! オッカケルケドー ドタドタドタッ…

セーラー服「…行ったみたいね」

女「あの……ありがとう。助かった。えっと、あなたは…」

セーラー服「見てのとおり、学生よ。名前はセーラー服。何の変哲もない女の子でしょ?」クスッ

女「…何の変哲もないってわりには場慣れしてたけど」

セーラー服「女学生の方がトラブルに慣れてるわよ。痴漢も暴漢も、自力で撃退するんだもの」

女「勇ましいね…」ハハ

女「その、セーラー服さんは…」

セーラー服「呼び捨てでいいわ。あなたの方が年上だし」

女「…そうなの?」

セーラー服「さて、ここも安全じゃないし。ついてきて」ザッ

女「あ、ちょっと……待ってってば!」

シャアァァーー…

女「…ふう」

女「シャワー借りれたのはありがたいけど…」パシャパシャ

女「………」

女(やっぱりこうして鏡で見ると、私って15歳か16歳ってトコだよね)モミモミ

女(あのセーラー服ってコとそんなに歳の差があるふうには見えない)

女「でも、あのコ……私が年上だって断言してた」

女「…私のこと、まるで以前から知ってるみたいに」

セーラー服「もう上がったの? 早いわね。もっとゆっくり湯船に浸かっていいのに」

女「いいお湯だったよ。ありがと」ホカホカ

女「…それでさ。聞きたいことがあるんだけど、いい?」

セーラー服「いいわよ。私の素性? それとも、助けた理由?」

女「それも聞きたいね。……でも、まずは私たちが知り合いなのかってトコから、かな」

女「私、どうしてか記憶喪失みたいで」

セーラー服「私のことも覚えてないわけね。いいわ、知ってたから」

女「……やっぱ知り合いかぁ」ハァ

女「で、その。どんな関係…?」ミガマエ

セーラー服「そうね。あまり深い付き合いじゃないけれど」

セーラー服「私はあなたの、後輩だったのよ」

セーラー服「あなたはいい先輩だった。何度もお世話になったし、何度も助けられたわ」

セーラー服「だから今度は、私が助ける番」

女「えっ……そ、それだけ?」

セーラー服「なぜ驚くの」

女「…なんでだろ。なんか今まで、初対面ですごいカミングアウトばっかされてた気が…」ンー?

セーラー服「それで、先輩。…前からそう呼んでたし、先輩って呼ばせてもらうわ」

女「あ、はい。どうぞ」

セーラー服「私のことも、気軽に後輩って言ってくれればいい。そう呼ばれてたから」

セーラー服「……私に先輩って呼ばれて、違和感はない?」

女「違和感? うん…ないけど。何かまずかったりする?」

セーラー服「ううん、いいの。無いなら、いい」



セーラー服「…残留物はないみたいね」ボソッ

セーラー服「ところで、先輩。あなたは今、追われる身なわけよ」

セーラー服「先輩は人身売買の競りにかけられる寸前だった商品。ピエロの奴ら、それはもう血眼よ」

女「すごい理不尽だと思うけど、そうみたいね」

セーラー服「それで、これは提案なのだけれど」


セーラー服「先輩。私の奴隷にならない?」


女「……は? 奴隷?」

セーラー服「生憎、このドームじゃ先輩が奴隷にならずにすむ方法はないの」

セーラー服「先輩を飼うのを生き甲斐にしてる人たちもいるくらいなんだから」

セーラー服「それを回避する方法は1つだけ。協定を利用することよ」

セーラー服「先輩が奴隷として主人に飼われたら、以降、あなたにちょっかいを出しちゃいけないっていう協定」

セーラー服「だから、私の奴隷になれば、もうピエロに売り飛ばされることもないわ」

女「それって同じことでしょ!」

セーラー服「そしたら競売にかけられることはなくなるけど?」

セーラー服「少なくとも頭のおかしな連中に売られることはないでしょ」

セーラー服「先輩はわかってないと思うけど。あなたに邪な思いを抱いてる人って、わんさかいるんだよ?」

女「ッ……」ゾッ

女(仕方ない、か…)

女「いいよ。助けてくれたし、あなたのことは信用できると思うから」

女「あなたの奴隷になる」

セーラー服「………」

セーラー服「これは、確かにちょっとくるかも…」ゴクッ

女「……」ササッ

セーラー服「警戒しないで。何もしないってば」

セーラー服「私はヘンタイじゃないし」

セーラー服「…明日、バベルに通達しに行くわ。今日はもう寝ましょう」

女「あ、うん…」

セーラー服「じゃ、電気消すから。お布団入ってて」

女「はーい」モゾモゾ

パチン ギシッ ゴソゴソ…

女「…あの、なんでベッドに入ってくるの?」

セーラー服「いけない? 私のベッドなのだけれど」

セーラー服「それに、ベッドもお布団も一組しかないの。添え寝くらい我慢して」

女「…じゃ、なんで背中まで手を回して、ぎゅってしてくるの?」

セーラー服「バベルの部屋じゃないんだから、ベッドも狭いのよ。仕方ないじゃない」ギュー

女「それは、まあそうだけど…」

セーラー服「別にそれ以上のことなんてしないってば。まさか、されたいわけじゃないでしょ?」

女「そ、そうだよね。…うん。なんかごめんね、過剰反応しちゃって」

セーラー服「別に。ねえ、もう眠いわ」

女「うん…おやすみなさい」ニコ



セーラー服「……先輩…」

-バベル-

撫子「………」

ゆるふわ「………」ムー

縦ロール「…まあ」

お下げ「………」

令嬢「……どういうことかしら?」


セーラー服「いま言ったとおりです。彼女はもう、私の奴隷ですから」

セーラー服「協約に則り、女さんが売却、もしくは女さんの意思で主人を決めた場合、過度の干渉を禁ずる。よろしいですね?」

セーラー服「先輩。皆さんに、ご挨拶を」

女「ど、どーもー…」

女「今日から後輩の奴隷はじめます、女です。よろしく…でいいのかな」アハハ

令嬢「女……」ギリッ

撫子「女さん、どうしてその方と…」

ゆるふわ「もー。今度こそって思ってたのにー」プクー

セーラー服「あとはこちらを。書類はすべて揃っていますので」

セーラー服「では、失礼します」クルッ スタスタ

女「ちょっと、置いてかないでよっ」パタパタ


看護婦「………」ジー

女医「意外な伏兵、ってトコかね…」

-物流区-

女「あー、なんか緊張しちゃった」

女「バベルの人たちってガチでお金持ち揃いなんだね。待合室だけで、後輩の家の倍は広かったよ」

セーラー服「バベルは特権階級だから、比べられたら困るけれど」

セーラー服「…ふふ。それにしても爽快だったわ」

女「爽快って、なにが?」

セーラー服「彼女たちの物欲しそうな目。すべての富みを得る連中が、その財を投げ打ってでも欲しいものを独占するって、快感じゃない」

女「…それって私のこと?」

セーラー服「……」クスクス

女「ま、まあいいけど……それより、ここには何の用事できたの?」

セーラー服「物流区にくる用事って言ったら、市街地じゃ手に入らない物が目当てに決まってるわ」

セーラー服「居住区の市街にもお店はたくさんあるけど、並ぶ品が制限されるの。一部…たとえばバベルとか、病院にしか卸さない品とかね」

セーラー服「そういうのが欲しければ、ここでバイヤーを探し出して、買うのよ。値は張るけれど」

女「…牧場に、農場に、養殖場? 工場と、スクラップ置き場みたいのもそこらじゅうにあるね。ごちゃ混ぜな感じ」

セーラー服「物流区は、生産と加工も担っているのよ。単純な面積なら外郭部でも一番広いわ」

セーラー服「……施設の中には、移転されたものも多いし」

セーラー服「いい機会だから、説明しときましょうか」

セーラー服「居住区を囲む外郭部の、4つの区画について」

セーラー服「西の物流区は比較的安全。居住区から出入りする人も多いし、変な奴に騙されなければね」

セーラー服「南が遊戯区。先輩が競売にかけられそうになった場所。ここは、人身売買ショーやカジノ、色んなイベントが開催される」

セーラー服「この西と南のエリアなら、出入りしてもだいじょうぶ」

女「……危ないエリアがあるの?」

セーラー服「北ゲートの先、『廃墟区』は行っちゃだめ」

セーラー服「スラム同然の場所よ。ここでは奴隷協約も、守られないと思ったほうがいいわ」

女「それって…」

セーラー服「わかりやすく言うと、無理やり手篭めにされるってこと」

セーラー服「拉致監禁、欲求解消のお相手、挙句、奴隷としてバベルに横流しのフルコースよ」

女「怖い」ブルブル

女「そこまで脅されたら、廃墟区には近寄らないようにするけど」

女「もう1つあるんでしょ? 東のエリア…」

セーラー服「ああ…」

セーラー服「――『封鎖区』よ」

セーラー服「東ゲートはそもそも通れない。完全に、閉鎖されてるの」

セーラー服「尤も、物流区も遊戯区も、安全なのは昼間だけだから」

女「夜は『怪物』が出る……だっけ」

セーラー服「うん。それ、本当よ」

セーラー服「出歩かないことね。首、ジョキンってされたくなければ」


………………

………


ラッシャイマセー イイモノシイレタヨー キュウレンガチャイカガデスー?

セーラー服「…これ、ちょうだい」

オメガタカイネー マイドー

女「なに買ったの?」

セーラー服「はい。先輩にプレゼントよ」

女「えー、なんだろー」ウキウキ

女「……首輪じゃん」ジトー

セーラー服「先輩が、すでに売却済みってマークなのよ。あったほうが絡まれずにすむわ」

セーラー服「じゃ、失礼して」ガッチャンッ

女「こうなる運命なのかな…」

セーラー服「……いた」

派手スーツ「ん? おう、アンタか…」

セーラー服「先輩、少し待っててくれる?」

女「いいけど、どしたの?」

セーラー服「ちょっとね…」サッ


レイノモノヲ… コイツダ ヒソヒソ…

セーラー服「…悪くないわね」

派手スーツ「ったく、毎度毎度、危ねえ橋を渡らせやがって…」

セーラー服「情報のほうは?」

派手スーツ「ほらよ、この端末の中に入ってる」

セーラー服「どうも。代金は、これで。それじゃ…」



セーラー服「お待たせ。行きましょう、先輩」

女「…ねえ。さっきの人は、なんなの」

セーラー服「ただの物流業者よ。気にしないで」

女「……そう」

すみません、ちょっとご飯食べてくるので中断します

-居住区 市街-

セーラー服「もう夕方ね。そろそろ帰りましょう」

女「うん。じゃあ、お弁当買ってこうか」

セーラー服「ああ…そうね。冷蔵庫の中身も空っぽだし。適当に選んでくるわ」ササッ

女「うん…って、早い。もう行っちゃった」

女「…お店の外で待ってよ」ウィーン

女(店の前には駅…路面電車の停留所。何号も線がある。みんなこれに乗って、このドームの中で生活してるんだな)

女「…このドームは、結局なんなのかな」

女「どうして……外に出ちゃいけないんだろう」


看護婦「連れて行ってあげましょうか?」


女「えっ…」グイッ

看護婦「外に行きたいんでしょう?」

女「か、看護婦さん…? なんで…」

看護婦「女さんのことをずっと見てましたから。ふふ…ずっと」

看護婦「さあ。行きましょう」グイグイッ

女「ちょっ……引っ張らないで! わわっ!」

プシューッ…バタンッ

19ゴウセン ハッシャシマース

女「19号線って……。こ、これ、廃墟区に行くやつじゃ…」

女「ヤバ…! 運転手さん、停めて! 降ろして降ろして!」

女「って、自動操縦じゃないの…!」

看護婦「廃墟区に行きたがる人なんてほとんどいませんから。乗客も運転手も含め、無人走行が常なんですよ」フフ

女「廃墟区は危険なんでしょ!? 看護婦さんも危ない目に…」

看護婦「女さんのためなら私は構いませんよ?」

女「はい…? いや、あの…」

看護婦「ふふ…」

看護婦「……二人っきりですね。女さん」ギュッ


-廃墟区-

プッシューッ…

ヒュウウゥゥーーー…

女「電飾の消えた町並み…割れたガラス…スクラップの山…」

女「ゲート越えただけでこんなに荒むの…?」

看護婦「至福の時間でした…」コウコツ

女「いいかげん離して…。路面電車も動かないし。このまま乗ってれば帰れると思ったのに…」ハア

看護婦「あれが今日の最終便でしたから。明日まではこの路面電車も、ここで停車したままですよ」

女「じゃあ、徒歩でゲート越えて帰るってわけ? めんどいなあ…」トボトボ

看護婦「…それはやめたほうがいいですね」

看護婦「女さんみたいな美少女がこんなところをほっつき歩いていたら、あっという間に悪い人に浚われますから」

女「…あなたのせいでしょ」ジトー

女「ていうか、ほぼ看護婦さんに浚われたみたいなもんだけど」

看護婦「女さんを浚う…拉致…監禁……んっ///」

女「やばい人と一緒に来ちゃったな…」ヒキッ

女「でも、徒歩もダメならどうす…」


?「おい」


女「ッ……」ビクッ

猫目「誰だ、てめぇら。これから夜だってのに、わざわざスラムにくるとか、頭イカレてんの?」

女「び、びっくりした…。物陰からいきなり声かけられると心臓に悪いよ。こんな、ちっちゃい女の子でも…」

猫目「……あ?」

猫目「てめぇ。舐めてんのか……って、あぁ?」

猫目「その顔……。てめぇ、まさか…」

女「えっ……もしかして、またお知り合いの方…?」

女「ご、ごめんなさい。私、ちょっと記憶のほうが…」アセ

猫目「………」

猫目「ちっ…知り合いじゃねえよ、てめぇなんざ」

猫目「どうせ、また洗いざらい記憶喪失だとかぬかすんだろ? 気色わりぃ」

女(うわ…見た感じ12歳くらいなのに、迫力あるな、このコ…)

女(パーカーのフード深く被ってるせいか、目つきもすごく悪い。怖い…)

女「あの、気分を害したなら謝りま…」



看護婦「気色悪い、ですって?」

看護婦「女さんに言ったの? 気色悪いだなんて……あなたみたいな、みすぼらしいのが」

看護婦「スラムの負け犬風情が」

猫目「…あ?」

看護婦「あら、ごめんなさいね。犬じゃなくて猫だったかしら。こんな街角で立ちんぼしてるんだもの」クスッ

看護婦「金で股を開く、子猫ちゃん?」

猫目「ぶっ殺す」チャッ

女「ナイフ!? 待って、洒落にならないって!」アタフタ

猫目「どけ。悪いけど、あたしは鳴くより鳴かせるほうが得意なんだよ」

看護婦「奇遇ねえ。私も、注射打つのってホントは苦手で。いつも、つい、痛い痛いって鳴かせてしまいます」チャッ

看護婦「ああ、さっきの言葉、訂正はしなくていいわ。遺言を聴いてあげるのも、看護の仕事だもの」

女(看護婦さんの武器、注射器なのに……なんか、このひとが持つと殺人兵器に見えてくるよ…)

女「と、とにかく二人とも。争いはやめ…」

猫目「すっこんでろ」ギロ

看護婦「女さん、ちょっとだけ、我慢してくださいね? すぐ、終わりますから」ニコ

女(うそ…。ほ、ホントにケンカになっちゃう…)

女「だ、ダメって…」



                                                ジョキンッ


看護婦「…!」

猫目「ちっ…今日は早えな」

猫目「おい。死にたくなきゃついてこい」タッ

看護婦「女さん、お手を失礼しますね」グイッ タタッ

女「わわっ…」


………………

………


タッタッタッ…

猫目「…ここまでくりゃいいだろ」

女「い、いったいなんなの…?」ゼーゼー

猫目「ちっ…居住区の平和ボケが。考えりゃわかんだろ」

看護婦「女さん。もう、夜になってしまったんです」

女「夜……」

女「って、まさか、三原則の…」


猫目「ああ。『怪物』だよ」

-雑居ビル 散らかった部屋-

ガサゴソ ガサゴソ

女「あのー、猫目ちゃん? なにしてるの?」

猫目「てめぇらに関わったせいで、あたしは今日の分、喰いっぱぐれたんだよ」

猫目「あと、ちゃん付けすんな。殺すぞ」

猫目「……チッ。ねえな…」ガサガサ

女「これって普通に不法侵入じゃ…」

看護婦「浅ましいですね」

猫目「黙れ。いんだよ、スラムに法なんかねえから」ポイ ポイ

猫目「つーかてめぇら、いつまでくっついてきてんの。邪魔」

女「えーと…お腹がすいてるなら、お店で買ったお菓子あるけど。食べる?」

猫目「てめぇそれ先に言えよな!」シュバッ

ガツガツガツ!

猫目「チョコレート、甘え!」ウヒョー

猫目「やきそばパン、うめえ!」ムヒョー

猫目「メロンパン、最高!」キラキラキラ


女「猫目ちゃん、飢えてたんだね」

猫目「菓子パンって考えたやつ天才だろ。あと、ちゃん付けすんな。殺すぞ」

看護婦「空腹のあまり気が立ってた、と。野良猫ね」

猫目「殺すぞ」

女「……怪物って、ホントにいたんだね」

猫目「はあ? なに言ってんの今更……って、あー。記憶ソーシツだっけ。めんどくせ…」ポリポリ

女「猫目ちゃんはさ。怪物、見たことあるの…?」

猫目「……ある」

女「どんなだった?」

猫目「どうでもいいだろ」

女「知りたいんだ。お願い」

猫目「………」

猫目「怪物は……」

看護婦「女さん」

女「ん、なに? 看護婦さん」

看護婦「女さんの興味は、外へ出ること、でしょう?」

看護婦「怪物なんて……気にしなくっていいんです」ニコ

猫目「外へ出る…?」

猫目「ドームの外へ? 正気か?」

女「そりゃ、三原則に触れるのはわかってるけど…」

猫目「てめぇじゃねえよ」

猫目「看護婦。てめぇ、なんで止めない?」

看護婦「………」

猫目「てめぇは、知ってんだろ。まさか本気で、この平和ボケをお外へ案内する気かよ」

看護婦「…それが女さんの望みならば」

猫目「ハッ、心中でもしたいわけ? 気持ちわりぃ……」

女「えっと…どういうこと?」

看護婦「………」

猫目「……チッ」

女「そうだ。もともと、看護婦さんは『外へ連れていく』ために、廃墟区の路面電車に乗せたんだよね」

女「じゃあ、ここにドームの外へ出る道があるってこと?」

看護婦「……そうですね。そうですよ」

看護婦「行きましょう、女さん。私がついてますから」

看護婦「外へ。二人で」

女「外……」

看護婦「はい。私たちは、ずうっと一緒ですよ…」

猫目「……おい、女」

猫目「信じるな。そいつは嘘つきだ」

猫目「廃墟区に、外への出口なんかねえよ」

女「えっ…」

猫目「大方、バベルの目が届かないところに女を連れ込んで、服従させたかったんだろ」

猫目「そいつイカレてるから。まだ、アンタが自分のものだと思い込んでんだよ」

看護婦「……幼馴染がそばにいるのは、自然なことですよ」

看護婦「邪魔しないで?」ニィ

猫目「…女。白けたから、あたしは抜けさせてもらうけど」

猫目「食い物の礼だ、あと一個だけ教えてやる」

猫目「アンタの本当の味方が欲しいなら、『放送局』に行け」

女「放送局…? ドーム放送局のこと?」


猫目「そう。そこで、『アイドル』のやつに会え」

今日はここまでです
読んでくれた方、ありがとうございました

続きは火曜日にやる予定です

乙ん

スレタイ忘れたが、島のやつって完結したの?

>>86
島のやつっていうのは心当たりないですね…
たぶん別の方かと

看護婦「女さん。こんな野良猫の言うことを信じるんですか?」

看護婦「私を信じてくれますよね?」ニコ

女「………」

看護婦「…そう。そうですか。信じられないんですね」

看護婦「わからせないといけませんね」

看護婦「女さんに必要なのは、私だということを」チャッ

女「……看護婦さん」

女「仕舞って。その注射器」

看護婦「嫌です。これは、必要なことなんです」

女「何をする気か知らないけど……私だって、危険な目に遭えば、抵抗するから」

看護婦「抵抗? ふふっ…」

看護婦「何を言ってるんですか。女さんったら、おかしい」

看護婦「これは治療です」ユラリ

看護婦「患者さんは、ナースの言うことを聞きましょうね?」ダッ

女「…!」

ガシッ ドスッ バタンッ

女「いたッ……ちょっと! 治療とか言っといて蹴り入れるナースがいるか!」

看護婦「ふふふ…簡単にマウント取られちゃって。女さん、可愛い…」

女「どいてってば!」ジタバタッ

看護婦「…女さん」

看護婦「痛かったら――我慢ですよ?」クスッ

女(やだやだッ……ほ、本気で注射打とうとしてる!?)ゾクッ

女(あれ、中身なに入ってんだよぉ……絶対やばい系のクスリだよ!)

女「やめて! お願い、打たないで!」

看護婦「うふふ…もうすぐ…もうすぐだわ…」ハアハア

猫目「……チッ」スタスタ

女「ッ……まま、待って! 猫目ちゃん、たすけて!」

猫目「…あ?」

女「てか、人が押し倒されてヤク漬けにされそーになってるのに、なんで舌打ちしてどっか行こうとしてるの!?」

女「助けてよ! 人として!」

猫目「はあ? なんであたしが…」

女「こうなったの、猫目ちゃんが看護婦さんを刺激したせいでもあるじゃん!」

猫目「あ? てめ、人が忠告してやったのに…」

女「お願いしますー! ヤク漬けやだよー!」ウワーン

女「なんでもッ…なんでもするから!」

猫目「……ふうん。なんでも、ねぇ…」

猫目「女。助けてほしいなら、条件がある」

猫目「てめぇ、あたしのモノになれ」

女「……え?」

猫目「ボケ。あたしの奴隷になれって言ってんだよ」

女「なんで!?」

猫目「あたしは自分のモノ以外に、執着しないことにしてんの」

猫目「だから、あたしに守ってもらいたきゃ、あたしのモノになんねーとムリ」ククッ

女「だ、だって……私、もう後輩の奴隷だし…」

猫目「んなもん主人を鞍替えすりゃいいだろーが」

女「や…でも、危ないひとから逃れるために危ないひとに頼るって、本末転倒っていうか…」

猫目「それでもヤク漬けよかマシだ。つか、ナチュラルに貶してんじゃねえ、てめぇ立場わかってんの?」

女「すいません口が滑りまし…」



看護婦「うふふ。仲がいいですねぇ」

看護婦「妬けてしまいそう。ねえ女さん、跨らせた相手を無視するなんて、ひどいですよ?」グググッ…

女「跨らせたって、看護婦さんが勝手に…!」

女「うわわっ! 刺さる刺さる!」ブンブンッ

女「……なるから! 猫目ちゃんの奴隷になる!」


猫目「よし。助けてやるよ……あと、ちゃん付けすんな」プシッ


看護婦「やっぱり…野良猫退治が先決かしら」ギラッ

今日はひとまず終了します

次は週末くらいを予定です

再開します
用事があるので先に少しだけ投下します

猫目「…おらッ!」ブンッ カンカンッ…

ブシューーッ モクモク…

看護婦「…!? 塩素ガス……?」

猫目「…よッ!」ドゴッ

看護婦「ッ…」

猫目「おっしゃ! 女、ついてこい!」ダダッ

女「ま、また走るの!?」バタバタ

猫目「文句言うな! あんなイカレとまともにやってられっか!」

………………

………

女「…ハアッ…ハアッ……つ、疲れた。もうダメ…」

猫目「体力ねーな。小一時間走り回っただけだろ」

女「充分きついよ…。ハーフマラソンだよ……しかも階段昇り降りしたり、ベランダ飛び移ったり…」

猫目「こんなので根を上げてちゃ、スラムで生きてけねえよ」

女「いや、私、スラムに移住する気は…」

猫目「あ? てめぇ、あたしの奴隷になっただろが。ご主人様と奴隷は、いつでも一緒だろ?」

女「あ」

女「……ゴメン、あれはなんかノリっていうか、あの場ではしょうがなかったって言うか…」

猫目「は?」

女「ホントごめんなさいっ! け、けど、私も足手まといだと思うし!」ペッコリン

女「それに、さ……やっぱりいけないよ。猫目ちゃん、まだ子供でしょ?」

女「そんな人の売り買いなんて、だめ」

女「私にできることなら……そうだ! また今度、美味しいもの持ってきてあげるから!」ネ?

猫目「……っかー、そっかそっかー。うん。なるほどなー」

猫目「舐めてんな。てめぇ」

1年か2年前に見てた安価SSと雰囲気が似てる
>>1は以前にもSS書いてた?

グイッ ドサッ

女「……ふぇ?」ボーゼン

女(え? 一瞬で押し倒されて…。あれ? なんか服、脱がされてる?)

猫目「奴隷のくせに偉そうな口ききやがって……誰に向かって言ってんだ」ギロ

女「ちょっ……ななな、なにしてんの!?」

猫目「躾けだ。言ってもわかんねーおバカは、身体に教え込むんだよ」ヌガシヌガシ

猫目「無駄な抵抗すんなよ。他人に自分のモノを触られんのはムカツクけど、あたしが壊す分には興奮するんだ」ナイフ ピタッ

女「ひゃっ…」

猫目「チッ……首輪、邪魔」プチッ

猫目「じゃ、軽く味見……」ペロッ

女「舐めた! なんで首筋を舐めるの!?」

猫目「……いい味。汗とブレンドされて、旨味が引き締まってんじゃん」ニィ

女(こ、このコ…! 年下のくせに、高度なヘンタイ…!?)

>>107
これがほぼ初SSなので、違う方だと思います

これから出掛けるので中断します
続きは夜に

おつ

この世界にワカメはいませんよね!?
ちゃんと全部書いてくれますよね!?

再開します

>>112
ワカメ? そがぁなヤツはいなぃんじゃ

女「や、やめて!」ジタジタ

猫目「暴れんな。暴れんなよ…」

猫目「つーか奴隷。てめぇ、ご主人様に尽くせよな」

女「だから! 猫目ちゃんはまだ子供なんだから! こういうの、しちゃだめってば!」

猫目「チッ……うぜぇ」

猫目「んっ…」チュッ

女「んーーっ!?」

女(き、キスされてる…? こんなちっちゃいコに無理やり…)

猫目「ふっ……ん……女……」チュル…レロ…

女「んっ……んう……」チュ…

女(逃げらんない……人を組み敷くの、慣れ過ぎだよ…)

女(なんか、ボーっとしちゃう……)

猫目「プハッ……ちっとは大人しく…」



セーラー服「離れなさい」

セーラー服「先輩から離れなさい。猫目」スチャッ

猫目「……チッ」

女「後輩ーっ! きてくれたの……え?」

女「そ、それ……拳銃?」

セーラー服「………」

女(まさか、あの時の…派手スーツから受け取ったのって、あれじゃ…)

猫目「物騒なもん出しやがって。テロ女……」

猫目「ハッ…ネタにでも詰まったか? 自作自演のビラでもばら撒く気かよ?」

セーラー服「黙りなさい」

女(テロ…? ビラって…)

猫目「ククッ…笑える。女の今のご主人様がてめぇだったとはね」

猫目「下克上はさぞかし愉快だった?」

猫目「聞かせなよ。女神みたいに崇めてた女に、首輪をかけたとき、アンタ興奮して股濡らしたんじゃねーの?」



バンッ



猫目「……おっかねー。図星突かれたからって撃つかよ、テロ女」チッ

猫目「でも、ざぁんねん。こいつ、もうあたしのモノだから」

セーラー服「…手元が狂ったわ」

セーラー服「最後の忠告よ」

セーラー服「先輩を離しなさい。次は、当てる」

猫目「女が、自分であたしのモノになるって言ったんだぜ」

セーラー服「信じられないわね。だとしても、そうせざるを得ない状況だったのでしょう。無効よ」

猫目「あのイカレにあっさり女を浚われたくせに、よく言うよ」

セーラー服「……その点は、感謝しておくわ」

猫目「チッ……」

猫目「……いーだろ。譲歩してやる」

猫目「こいつの飼い主の権利、半分よこしな」ニヤッ

-居住区 裏通り-

セーラー服「……不本意だわ」ハア

猫目「ゼータク言うな。こうして女のお守りもしてやろーってんだぞ」テクテク

女「まあまあ二人とも、ケンカしないの。これからは仲間なんだから」

セーラー服「先輩が言わないでください」ジト

猫目「ご主人様が二人に増えたってのに余裕じゃん。言っとくけど、てめぇがへばっても容赦とかしねーから」

女「へばっても…?」

猫目「寝かせないって意味」ニッ

セーラー服「…不潔ね」

猫目「あ? てめぇだってすることはすんだろーが。カマトトぶんな」

セーラー服「一緒にしないで。私はそんな、ふしだらなことしない」

猫目「あっそ。じゃー、せいぜいあたしと女のしてる横で、自分で慰めてな」

セーラー服「させない」カチャッ

女「いちいち険悪にならないで…。あっ、ほら、あそこだよね? ドーム放送局!」



カアッ…カアッ…

女「……なんか寂れてんね。放送局」

-ドーム放送局-

女「すいませーーん……誰か、いませんかー?」

シーン…

女「……受付にも人いないし、守衛とかもいない」

女「ねえ猫目ちゃん。ここ、ホントにドーム放送局なの?」

猫目「知るか。あたしだって入ったことねーよ」

女「猫目ちゃんが行けって言ったのに…」

猫目「あたしはアイドルと面識あるだけで、放送局と関係ねーもん」

猫目「ま…放送局は実質、アイドルが実権握ってんだけど」

女「そーなの? お偉いさんとか、代表取締役みたいな人っていないんだ?」

猫目「お偉いさん? プッ…ククッ……」

セーラー服「……猫目」

猫目「だってよ。あんまり哀れで、つい笑っちまうじゃねーか」ハハッ



猫目「自分の父親が、創設した企業だってのに」

今日はここまでにします
続きは明日に

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