ツバサ「敵味方なしに会えば、意外に気が合うかもしれないね  私たちは」 (145)







ツバサ「前回のラブライブ!」デデデデェ――ン!





ツバサ「と、このように私は自らの意志でUTXの門をたたいた」デ、デ、デ、デ↓ェ―――ン!















綺羅 ツバサ  当時15歳の春――






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398452663




―――第1羽   ひと目で 尋常でない ピュアピュアだと見抜いたよ







※この物語はフィクションであり、登場する人物・設定等は実在のものといっさい関係ありません





※この作品は、ラブライブの人物・書籍についての妄想を基に、全部脚色して構成したものです





※あと、UTXについては穂乃果DiaryとにこDiaryを参考にしましたが、基本はアニメ設定です





※具体的に言うと、穂乃果SIDで“ラブライブ連覇”となってるのは無視です






※このSS内での A-RISE各人の役割分担




あんじゅ:作曲、 衣装(分業)、 || ( 作詞 )、 ( 振付 )



ツバサ:振付、 作詞、 衣装(分業)



英玲奈:作詞、 振付、 衣装(雑用)








――これは   UTXの威信をかけて戦う   熱き少女たちの物語である――








ツバサ「―――ほんの、戯れのつもりだった」






ツバサ「例えるなら、それは  山を登り切った登山者が――」






ツバサ「―――飛び立てもしない空ばかり見ていても  仕方ないと悟り」






ツバサ「今度は下を見てみた」






ツバサ「きっかけは ただ……それだけの事」







ツバサ「――3年になる頃には、日々のあれこれもルーチンワークと化していて」






ツバサ「・・・・・・これ言うと怒られちゃうと思うけど――――正直、退屈してたの」






ツバサ「―――だからかも、ね。  一年の始まりという事もあって、多分どこか期待もあったと思う」






ツバサ「お決まりのあのモニターでのライブも、久々に張り切ってみたりしちゃったりして」クスッ…






ツバサ「まぁそれはどうでもいいんだけれど、それから程なくして  いつもと同じように――」






ツバサ「――いつもよりちょっと張り切って、新生スクールアイドルの誕生の様子を眺めてた時の 事」






ツバサ「―――私の目は、多分その時だけおかしかったんでしょうね」






ツバサ「哀しみを堪えた、無理矢理な笑顔のあの子を見て――」






ツバサ「―――踊るのが楽しくてたまらなかった頃の私を、思い出すなんて」クスッ…



英玲奈:衣装(雑用)

草不可避




―――第2羽   ~UTX入門編~  夢は新世界の神!






ツバサ「―――私がUTXに入学したのが、今から2年前。  当時の私は」










ツバサ「ただのバカでした」










ツバサ「…………」







ツバサ「……えーっとどういう事かというとね?  何か色々と偉そうな事言っちゃってるけど実は私」






ツバサ「アイドルの存在を知ったのが小学校卒業するくらいの頃で」



ツバサ「つまりUTXができた事がきっかけで」



ツバサ「他にもオーディションとか劇団とかがあるとか全然知らなかったし」



ツバサ「そこから知ろうともしなかったし」



ツバサ「というかそういう方面にまで頭が回らなかったんだよね」



ツバサ「馬鹿だから」



ツバサ「 ・ ・ ・ 」







ツバサ「……いやさ、考えてもみてよ。  アイドル志望の人が、そういう事やらないわけがないし」





ツバサ「それで鳴かず飛ばずだったから、最後は金にものを言わせてUTXに入学して」





ツバサ『私たちは負けません』キリッ





ツバサ「ふざけてんの?」



ツバサ「そもそも“スクール”アイドルでえばってて恥ずかしくないの?」



ツバサ「私だったら殴りに行ってるね」q



ツバサ「というだけの話」






ツバサ「―――でも、本気でアイドルになってやる って決心は本物よ?」






ツバサ「信じてもらえないかもしれないけど」クスッ…







ツバサ「というわけで、当時バカ野郎だった――・・・“野郎”の女の子風の言い方って無いのかしら」






ツバサ「・・・えー…とにかく! 空っぽの頭には夢しか詰まっていなかったような私は――」






ツバサ「―――UTXという分かりやすいエサに、まんまと引っかかってしまったの」クスッ…






ツバサ「でも先にUTXの名誉のために言っておくと、ここの理事も結構話の分かる人なのよ?」




ツバサ「この前の屋上提供も、最終的には許可してくれたし」フフフフ!




ツバサ「交渉、頑張ったんだからね?」テヘペロ☆







ツバサ「・・・・・・それにしても。  μ'sの皆さんは、こういった事に考えが至らないのかしら?」






ツバサ「揃いも揃って、直接見聞きしたものでしか判断の出来ない――おバカさんたち」クスクス―






ツバサ「――でも、そういった素直さこそが」






ツバサ「私がこの先、一生取り戻すことができないもの」






ツバサ「頭の足りない子には、分かりやすい道を示してあげればいいのは――」






ツバサ「―――私で既に、証明済みだから」クスクス―







ツバサ「そういう事で、私がUTXに入って覚えたことは――」






ツバサ「パワハラ」






ツバサ「いや、上手なハッタリの利かせ方――と言った方が、いいのかしら?」クスクスクス―!






ツバサ「一方、UTXに入学した私を待っていたものは――」






ツバサ「―――芸能科の全生徒を巻き込んだ、バトルロイヤルだったの」






―――第3羽   それは  いわゆる  中2病






ツバサ「少し、当時の状況を再確認すると」



ツバサ「私が小学校を卒業するころに、UTXが設立」



ツバサ「そして私が中3になる頃には、UTXの誇る日本ナンバーワンスクールアイドル――」



ツバサ「A-RISEが、もうだいぶ評判になっていた」




ツバサ「・・・・・・何かおかしくないかって?   つまりね―――」クスッ―



ツバサ「私たち。  実は2代目なの」フフフッ!







ツバサ「2世アイドルですよ?  2世アイドル」クスッ―



ツバサ「って――これ、使い方合ってるのかしら?」ウーン…




ツバサ「・・・」ポチ ポチ




ツバサ「【2世タレント、芸能人:「親の七光り」と言われ世間の目が厳しい――】」



ツバサ「あらま」







ツバサ「―――スクールアイドルの先駆けは、UTXが仕掛けたセミプロアイドルグループ」



ツバサ「つまり、初代A-RISEこそが――正真正銘の元祖・スクールアイドル」



ツバサ「アイドルの新境地を切り開き―――新時代を開拓した者たち」



ツバサ「まさに、原点にして頂点」フフッ―




ツバサ「まぁ私は2代目なんだけど」フフフッ!





ツバサ「―――とにかくね?  私が入学する時と――A-RISEメンバーの卒業時期が重なってたから」



ツバサ「芸能科では、その後継者選びにてんやわんやの状態で――」



ツバサ「――入学したての一年生にも、白羽の矢が立ったの」



ツバサ「もうとにかく驚いちゃった。 入って早々何でそんな事に――って」







ツバサ「でも、ちょっとおかしいわよね?」



ツバサ「そんな事は予測できるだろうから、メンバー卒業の前に後継者を決めておくべきじゃない?」




ツバサ「―――まぁそこには、UTXの“戦略”があったんだけど」クスッ―



ツバサ「そんな事に頭が回りもしなかった当時の私は、とにかく驚くばかりで――」



ツバサ「本当に―――ただ驚いてただけだったの」




ツバサ『私が、あの憧れのA-RISEに?!』



ツバサ「って」クスッ―







ツバサ「そしてここから、オーディションに向けた猛特訓の日々が始まったんだけど」



ツバサ「とにかくA-RISEの評判は凄い事になっていたから、活動再開を急がないといけなくて――」



ツバサ「―――結果、オーディションまでに与えられた時間はごくわずか」




ツバサ「ひどい話だと思わない?   選定から初公演までの時間も同じで殆ど無かったし」



ツバサ「本当に上手くいくと思ってたのか―――って、当時の経営陣に聞いてみたいわね」フフッ―







ツバサ「そんなこんなで―――候補生になった私の、逆境からのスタート」



ツバサ「始まるのは  わずかな時間の中での、切磋琢磨の日々」



ツバサ「待ち受けるのは、新入生 在校生入り乱れての  メンバーの座をかけた争い」



ツバサ「ここから一体、どうなってしまうのかしら?」クスッ―










ツバサ「突き詰めれば、『2年後、そこには元気に走り回るツバサの姿が!』で終わる話なんだけどね」



ツバサ「あー……今すぐにでもμ'sの皆と友達になりたい…」






―――羽休め:その1   (アニメ4話裏での)祝勝会






ツバサ「―――という事で」



英玲奈「――あぁ」


あんじゅ「――えぇ」




ツバサ「――――μ's、予選突破おめでとーー!!!」パチパチパチパチ!!



英玲奈「さて、ここからだな」パチパチ


あんじゅ「どうなるか楽しみね」パチパチパチ



ツバサ「では早速、Midnight catsについての分析会ね」


えれあん「あれ!?  もう終わり?!」





ツバサ「元々祝う必要もないとは思ってたの。  私は、絶対突破してくると思っていたし」



ツバサ「だって、今の私を前にして―――逃げ出すでも、睨みつけてくるでもなく」



ツバサ「まっすぐ見つめ返してきたのは、あの子が初めてだったんだもの」クスッ―




あんじゅ「・・・」


英玲奈(“今の”・・・か)



ツバサ「―――でもね。  あの子の良さって、分かる人にしか分からないようなところがあるから…」





ツバサ「やっぱり不安だったのよ?  いくら私が信じてても、他人はそうだとは限らない」


ツバサ「見る目が無い人には、他の元気っ娘と特に変わらないように映るでしょうし」


ツバサ「頭の固い人は、ただバカな人だと評価するかもしれない」


ツバサ「それどころか、あの子に“常識”なんていう下らないものを押し付けようとするかもしれない」



ツバサ「そんなのは認めない」


ツバサ「あの子は自然体でいいの。 とやかく言う必要は無いの。 自由にさせてあげるのが一番なの」


ツバサ「もし、周囲があの子に“普通”を強要するようなら――」



ツバサ「―――私があの子を引き取って、保護してあげないと」


ツバサ「普通じゃないのは――出る杭を叩かずにはいられない、この世界の方なんだから」



あんじゅ(うわぁ・・・)


英玲奈(そこまで言うか・・・)



ツバサ(まぁ尤も―――高坂さんは、そんなおかしな関係はのぞまないでしょうけど)…クスッ





ツバサ「――という事で、『歌い手系の罵倒は一通り受けたけど質問ある?』のコーナー行っちゃう?」



英玲奈「やめろツバサ。 それ以上いけない」


あんじゅ「自ら傷口を抉りにいく事は無いと思うの」


ツバサ「それもそうね」


ツバサ「では今までA-RISEに寄せられたバッシングからいくつかピックアップしてご紹介~」パチパチパチ



英玲奈(・・・・・・・・・止めても無駄・・・か)


あんじゅ(いつもこれ・・・)



ツバサ「じゃあまず最初の意見」





【A-RISEとか調子乗ってますけどあれ全然可愛くないですよね】



きらえれあん『聞き飽きた』



あんじゅ(・・・・・・あっ)


ツバサ「・・・」ニヤリ


英玲奈(しまった・・・・・・つい・・・)




ツバサ「―――まぁまぁ。   ね?   そういう事なのよ」


ツバサ「でしょ?」



英玲奈「・・・分かった。 私の負けだ。 ツバサには敵わん」


あんじゅ「・・・相変わらず、人の本心を引き出すのが上手いのね」


ツバサ「自分の心に正直なだけよ。 そう難しい事じゃないわ」



英玲奈「簡単に言ってくれる・・・」


ツバサ「人に嘘つくのは分かるけど、自分に嘘ついたってしょうがないじゃない?」


ツバサ「それに、一番自分の思い通りになってくれるのが“自分”だし」



あんじゅ「・・・もう反論しないから、次に進めてくれる?」


ツバサ「――その前に  このバッシングに対しての、2人の“正直な”意見が聞きたいのだけれど」



えれあん「 ・ ・ ・ 」


ツバサ「~♪」フフフ…





あんじゅ「そうね・・・・・・まぁ、アンチがいたところで」



英玲奈「・・・ファンが減るわけでもなし」



ツバサ「そう。  結局、なーんにも変わらないのよねー」




あんじゅ「“何にも”は言い過ぎじゃない?」



ツバサ「そういう後ろ向きな考え方はよくないよ、あんじゅ」



英玲奈「その言葉、そっくりそのままお前に返すぞ」



ツバサ「そうこなくっちゃ。  気軽に毒吐き合えるのが私たちだし」フフッ!




ツバサ「じゃあ次」


えれあん(ちょっと待って。 同意くらいはさせて)





【A-RISEと○○ではどちらが好きですか?  どちらの歌が好きですか?】



ツバサ「どっちも好き、じゃダメなんですか?」


あんじゅ「この手の意見、ラブライブ開催が決まってから一層多くなったわよね」


英玲奈「全く、余計な事をしてくれたものだ」



ツバサ「【好きなものランキング第一位:ランキング】な日本人の悪癖ここに極まれり、ね」


英玲奈「上か下かでしか物事を判断できないのだろうか」


あんじゅ「ある意味、可哀想な人たちよね」



ツバサ「何ていうか―――順位付けが始まった時点で、言い逃れがきかなくなっちゃったのよね」


英玲奈「ああ。  学校の後ろ盾がある事への不平は、前々からあったからな」


あんじゅ「それに関しては否定できないのが・・・ね」





【親の金で行く専門紛いの高校生活は楽しいか?】



きらえれあん「」ブチッ




あんじゅ「・・・・・・あらあら、これは・・・」イラッ



英玲奈「・・・・・・好き勝手に言ってくれるものだ」イライラ



ツバサ「・・・ムカついた。  絶対負けない」





【A-RISEばかり注目されるせいで、他のスクールアイドルが目立たない】



きらえれあん「 ・ ・ ・ 」



ツバサ「これは……ちょっと…」


英玲奈「あぁ……」


あんじゅ「心当たりが……ね」



ツバサ「………音ノ木の例を知っちゃった今となっては…」


英玲奈「前は、聞き流す事もできたのだがな……」


あんじゅ「どうすればいいのかしら……」



ツバサ「………………ラブライブ・・・・・・出なくてもいいんじゃないかな?」


英玲奈「………それは、許されないだろう」


あんじゅ「……そうね。  中途半端は、絶対にダメ…」





【キミのしあわせって  どんなこと?    キミの幸せは他の人も幸せなのかな?】


【正しいことって  どんなこと?    正しい事すると本当にみんな喜ぶのかな?】



ツバサ「耳が痛い」



英玲奈「私達の頑張りは……他所への不幸へ繋がっているというのだろうか…」



あんじゅ「………こんなの、どうしようもないじゃない」



ツバサ「本当。  私たち、何をやってるんだろうね」





【A-RISEの皆さん!   いつも応援してます!!   by矢澤 にこ】



英玲奈「・・・・・・バッシング意見の紹介ではなかったのか?」


ツバサ「ほらほら、そういう突っ込みはしちゃダメ。   ちょっとした手違いがあっただけよ」



あんじゅ「・・・・・・タイミングがうますぎると思うのだけれど」


ツバサ「ほらほら、そういう邪推はよくないよ。   何しろこの手の意見が多すぎるものだから」



ツバサ「一通くらい紛れ込んじゃっても、おかしくはないと思わない?」クスッ―



あんじゅ「・・・答えにはなってないけど、そういう事にしておいてあげる」ハァ…



英玲奈「・・・やはり最後は、これに尽きる――か」





【どうせアレだろ?   A-RISEの曲なんて全部学校側が用意してるんだろ?】



ツバサ「これ、面白い意見だと思わない?」


英玲奈「ああ、確かに。  的外れもいいところだ」


あんじゅ「これは痛くもかゆくもないわね」



英玲奈「全て自前で用意しているグループがいる中、提供曲でラブライブ優勝――か」


あんじゅ「もしそんな事になったら、一体どうなってしまうのか分からないのかしら?」


ツバサ「それに第一  私たちのプライドが、そんな形での勝利を許さない」



あんじゅ「UTXの自作自演に付き合ってあげるほど、私たちはお人好しじゃないもの」ウフフ―


ツバサ「でも  負けたら負けたで、後ろ指を指されるのは目に見えてるけれどね」クスッ―


英玲奈「――とりあえず本題に入ってくれ。  本当に面白いのはここからなのだろう?」





ツバサ「――あら。 気づかれちゃった?」


英玲奈「早くしてくれ。  ・・・お前の話は長過ぎる」


ツバサ「トークスキルがある――と、言って欲しいわね」フフフッ!


あんじゅ「仕方ないわ。  英玲奈は感性がお子様だもの」フフフ―



英玲奈「 ・ ・ ・ 」ム…


あんじゅ「女の長話に付き合えないようだと、女性ファンの相手は苦労するんじゃないかしら?」クスクス―



ツバサ「ハイそこ喧嘩しない。  そしてここで、最初のMidnight catsの分析の話に戻るのだけれど」


あんじゅ(そこまで戻るの?!)


英玲奈(今までの時間は一体・・・)





ツバサ「とりあえず―――どうして私がこの子たちに注目したか、分かる?」



英玲奈「―――このユニットは、2人組。  つまり、曲等々を  2人で全て用意している事になる」


あんじゅ「衣装は制服の流用だけど――それでも、作詞、作曲、振付を2人で――というのは、驚きね」


ツバサ「むしろ、衣装で目を引けない分  純粋な歌唱力、ダンス力が高いとも考えられるわ」


ツバサ「ここで仮に、私たちが制服でライブをしてみた場合―――どうなると思う?」



英玲奈「・・・・・・なるほど」


あんじゅ「・・・確かに、要注意  ね」


ツバサ「でしょ?   でもね、それより面白いと思ったのが――」



ツバサ「このユニット―――“センター”がいないのよ」


えれあん「!」





ツバサ「だからどうという事でもないんだけど――気づいた時は、結構新鮮な驚きがあったわ」


ツバサ「2人で、横並びのライブの形もあるんだ――って」


ツバサ「恐らくだけど―――この子たちは、常に同じ景色を見てるんじゃないかしら」



英玲奈「・・・羨ましいのか?」


ツバサ「うーん・・・・・・興味がある、と言えば・・・あるけど」


ツバサ「ステージのド真ん中に立てるのがセンターだし・・・うーん・・・」


ツバサ「右か左かでもちょっと悩みそうだし・・・・・・うーーん・・・」



あんじゅ「・・・とりあえず、一度はやってみたい――というのは、分かったわ」


ツバサ「あっ・・・!   うん!そうそう!   そんな感じ!!」


ツバサ「一度はそんなライブもしてみたいな~ って!!」


えれあん「・・・」





ツバサ「でも、パートナーがいない――か」ハァ…



英玲奈「(・・・ツバサが自分の本心に気付いてないのは珍しいな)」


あんじゅ「(8―――いえ、全員を何とか説得できないかしら?)」


英玲奈「(ステージ、観客、諸々の説明はどうする?   興味本位、で周囲が納得するとは・・・)」


あんじゅ「(・・・本当に、ね。   ただライブを楽しみたい、だけじゃダメなのかしら・・・)」



ツバサ「――――あっ!閃いた!!   英玲奈とあんじゅでやってみて感想教えてよ!!」


えれあん「えっ?!」





閑羽休題―――





―――第4羽   ~修行編~  その1:K-DAY到来






ツバサ「UTXに入学してからの話の前に―――私の中学時代の事について、話しておこうかしら」


ツバサ「この頃って、一番パワーに満ち溢れている時期だと思うの。  成長期真っ只中というか」


ツバサ「連徹も余裕だったりして」クスッ―


ツバサ「精神的な面でも、謎の万能感があったり――ね」



ツバサ「そして私もその例に漏れず、エネルギーを有り余らせていて」


ツバサ「特に、私は単純だったから―――この傾向がとても強くて」


ツバサ「丁度、そんな時だったのよ?   UTXが、幅を利かせ始めていた時期って」


ツバサ「中々上手いタイミングだと思わない?」フフッ―





ツバサ「――とは言っても、中1の時にはまだ  初代A-RISEの影響力はそれほどでもなくて」


ツバサ「UTXについても、『新しいビルが建ったなー』くらいの認識しかなかったの」



ツバサ「でも、そうね―――夏休みに差し掛かった頃かしら」


ツバサ「私が、長期の休みで暇を持て余していた時――」


ツバサ「―――A-RISEが、一気に知名度を上げてきたの」



ツバサ「まぁ、考えてみれば当然なんだけれどね。  この時期、一斉に学校が休みになるわけだから」


ツバサ「A-RISEは、練習に専念できるようになって―――実力を伸ばすことができた」


ツバサ「そして、中高生――あとは、小学生も休みの時期だから」


ツバサ「観客にも事欠かなかった、ってワケ」クスッ―





ツバサ「―――初めてA-RISEのライブを見た時は、普通のアイドルなのかと思ったわ」


ツバサ「あの頃はまだ、“スクールアイドル”の概念が曖昧だったから、勘違いしてたの」


ツバサ「あ。  見たのは、もちろん例のあのモニターで――ね?」クスッ―



ツバサ「でも――街を歩いていて、ふと目に入った瞬間に」


ツバサ「その一瞬で、私の歩みを止めて、見入らせて」


ツバサ「『私もこんな風になりたい!』とまで思わされてしまう」


ツバサ「そんな――不思議な力を持っていたライブだった事は、確かだったの」





ツバサ「―――これが、私がアイドルになろうと思ったきっかけ」


ツバサ「中学生に特有の、“アレ”をこじらせてしまっただけとも……言えるけど…」


ツバサ「・・・・・・とにかく」



ツバサ「歌って」    「踊って」



ツバサ「全身で、全力で」



ツバサ「表現する」



ツバサ「―――そんな、アイドルのライブというものが」


ツバサ「やる気ばかりを持て余していた頃の私には、これ以上なく魅力的だったの」


ツバサ「――もちろん、今でもそうよ?」クスッ―





ツバサ「そしてしばらくして―――私は、A-RISEが“スクールアイドル”である事を知ることになる」


ツバサ「メンバーは普通の学生だった――とか、本職のアイドルじゃなかったんだ――とか」


ツバサ「色々と、驚きはしたけれど・・・」



ツバサ「正直、私には  違いが分からなかった」


ツバサ「だって―――本物のアイドルと見間違うくらい、素敵なライブだったんだもの」


ツバサ「むしろ、プロ顔負けのアマチュアという事で  ますます凄いと思ったわ」




ツバサ「―――ちなみにこれは、入ってから知った事なんだけれど」



ツバサ「A-RISEはアマチュアじゃなくて、厳密には“セミプロ”で―――」



ツバサ「だから。 実は、お金――ちょびっと貰っちゃってるんだよね」テヘヘ





ツバサ「と、いうのは置いておいて」



ツバサ「アイドルになる、と決めた後に―――スクールアイドルの事を知った私なのだけれど」


ツバサ「この“スクールアイドル”というのが、中々奥が深いもので」


ツバサ「単なる劣化アイドル、とは言い切れないものなの」


ツバサ「作詞、作曲、振付、衣装の自作という点は“置いた上で”、ね」



ツバサ「もちろん、スクールアイドルで満足しておしまい――という事には、やっぱりならないし」


ツバサ「プロまでの繋ぎ/通過点といった側面も、あるとは思う」


ツバサ「けれど――そういった言葉で片付けられないのが、このスクールアイドルなの」



ツバサ「次は少し―――ここのあたりを掘り下げて、話していこうかしら」





―――第5羽   ~修行編~  その2:初代A-RISE(カテゴリー:スクールアイドル)







ツバサ「初めて「スクールアイドル」っていう言葉を目にした時―――」


ツバサ「正直、よく分からなかったわね」


ツバサ「普通のアイドルと、何か違うのかな?  って」



ツバサ「だって、知らずに見て  プロにしか見えなかったし」


ツバサ「というか今見ても  やっぱり、プロにしか見えないし」


ツバサ「それに、いつ見ても―――私の憧れなのは、変わらないし」クスッ―



ツバサ「とは言っても、私自身のアイドルへの認識は」


「テレビの中の人」


ツバサ「くらいのものだったのよね」



ツバサ「歌ったり、踊ったり、バラエティやってたり、たまにドラマに出てたり」


ツバサ「とにかく、何か色々やってる人たちだな~   とは、思っていたけれど…」




ツバサ「・・・改めて考えてみると、アイドルって割と万能ジョブね」


ツバサ「今から楽しみだわ」フフッ!





ツバサ「とにかく、初代A-RISEは――まさに正統派の、王道アイドルって感じで」


ツバサ「私も、ひと目で心を奪われちゃったの」


ツバサ「そして、そのA-RISEが提唱する新しいアイドルの形、“スクールアイドル”」


ツバサ「実際に提唱していたのは学校側だけど」


ツバサ「まぁ、違いの分からない私にはそんなのは関係の無い話―――というわけでもなく」



ツバサ「何が違うんだろう?って、すごく興味が湧いたのよ」


ツバサ「それまでテレビで見ていたアイドルには、特に何の関心も無かった私が」


ツバサ「どうして―――A-RISEには惹かれるものがあったのか」



ツバサ「なんて、小難しい事を考えられるほど頭は良くなかったから」


ツバサ「単純に、好きなものの事は何だって知りたいっていう一心だったわね」クスッ―





ツバサ「スクールアイドルっていうのは、簡単に言っちゃうと」


ツバサ「―――勝手にアイドル宣言?」


ツバサ「っていう感じかな!」



ツバサ「ほら、今までアイドルっていったら、いつだってテレビやメディアの向こう側にいて」


ツバサ「何万人っていう女の子の中から選び抜かれたすっごいかわいい子とか」

ツバサ「あとはダンス大会で優勝、とか」

ツバサ「読者モデルからデビューとか」


ツバサ「最初からみんなにちゃんと見てもらえるだけの理由のある、もう本当に特別な子だけがなるものだって」


ツバサ「言い訳してる人は置いておいて」


ツバサ「じゃなくて」



ツバサ「本当のアイドルを目指すのは、ちょっと敷居が高すぎるって思う女の子たちでも」


ツバサ「今だったら、ネットとかを使って素人アイドルになれるんじゃないかって」


ツバサ「そんな思いで、いつでもどこでも始められる、アイドル活動」





ツバサ「――うん、コレって」



ツバサ「いちばん最初に思いついた人って絶対すごい天才だよね!」


ツバサ「私も絶対そう思うもの!」



ツバサ「オーディションとか、売れ行きとか、細かい事は気にせずに」


ツバサ「誰でもその気になるだけで、自由にステージに立てて」


ツバサ「みんなそれぞれオンリーワンな、自由気ままなライブができちゃうんだって」


ツバサ「そして、そんな素敵な発想を世の中に広げたUTXって、すごいなー  って!」



ツバサ「だから――アイドルを目指すなら、絶対UTXに行こうって思ったの」


ツバサ「設備以上に、発想が最先端じゃない?」フフッ!




ツバサ「―――私たち3人の間でこの考え方にズレがあって、後々大変なことになるのはまた後の話」





ツバサ「それはそうと、初代A-RISEは本当に凄かったのよ?  何が凄かったかっていうと」



ツバサ「まず、作詞作曲振付衣装、全部自分たちでやっちゃってる事」


ツバサ「この時点で、何かもう凄いことやってるって思ったわ」


ツバサ「でもそれだけじゃないの」



ツバサ「次に、そういう自作曲だけじゃなくて、時には既存の曲のコピーもやっていた事」


ツバサ「やっぱり、誰でもアイドルになれますよ~  と言った矢先に」


ツバサ「※活動に必要なものは自作しましょう――だと、どうしようもないじゃない?」


ツバサ「結局才能ですか・・・、と」



ツバサ「せっかく取り払った敷居を、作り直しちゃったら意味ないし」


ツバサ「後にふるい掛けしやがったけど」


ツバサ「おかげでようやく、UTXの本意っていうものに思い至る事ができたのよね」


ツバサ「まぁそれは置いておいて」



ツバサ「職業とかじゃなく、言葉で言うところの「アイドル」は、特別なものじゃないんだって」


ツバサ「真似事でも何でもいいから、ステージに立っちゃいなよ、って」


ツバサ「そしたら、誰だって輝けるんだ、って―――」



ツバサ「それを広めるために、UTXも随分無茶したわよね」


ツバサ「パクリ容認って、権利問題とかが起こりそうなのだけれど・・・」


ツバサ「………あ!  だから今大会でそういうのがハジかれたのかしら?」





ツバサ「まぁ―――そういうのもひっくるめて、やっぱり一番すごいと思うのは」



ツバサ「たった3年足らずで、ここまでの一大ムーブメントを引き起こしちゃった事」



ツバサ「学校側がどれくらいの期間で展開を考えていたのかは分からないけれど」


ツバサ「少なくとも、“予定より遅過ぎる”という事は有り得ないと思うわ」



ツバサ「UTXはアイドル養成校とはいえ、どこかの芸能プロダクションってわけじゃないし」


ツバサ「……ブラックなところが無いとは言い切れないけれど」


ツバサ「とにかく、あくまで学校な以上、メディアへの働きかけにも限界はあるに決まってて」


ツバサ「そんな中でスクールアイドルという概念を広める事ができたのは、本人たちの実力だと思うの」



ツバサ「アイドル新時代の切り込み隊長にして―――立役者」


ツバサ「武将で例えるなら、織田信長ってところかしら?」





ツバサ「あと、セミプロがこの概念を広められたっていうのは、やっぱり相当すごい事だと思うのよ」


ツバサ「誰だってアイドルになれます!みたいな事を、芸能科通いの人たちに主張されても……ねぇ?」


ツバサ「学校お抱えのスクールアイドル――って、胡散臭く思われる事もあったでしょうし」



ツバサ「実際、UTXの経営戦略やらプロモーションやら、色々な裏事情は絡んでいたのだけれど」


ツバサ「それでも、最初のA-RISEは・ ・ ・」


ツバサ「何ていうか・ ・ ・ ・ ・ ・自由だったのよ」



ツバサ「言葉とかじゃなくて―――A-RISEが、本当に楽しそうにライブをしている姿を見て」


ツバサ「周りが、自然に触発されていったように感じたの」


ツバサ「打算だとか―――嫌々やらされているとか―――営業スマイルだとか―――」


ツバサ「そんな………キャラを作っているような感じは、全然無かったの」




ツバサ「……少なくとも、私の目にはそう映った」


ツバサ「今でも、ね」



ツバサ「―――意外と、人の“本気”っていうのは伝わってくるものなのよ?」


ツバサ「良い意味でも、悪い意味でも」クスッ…





ツバサ「でも………始まりは、やっぱりそういう事だったんじゃないかな、って」


ツバサ「色々な大人の事情は、あったと思うけど…」


ツバサ「最初は、ただみんなに楽しんでもらいたかっただけなんじゃないかって」



ツバサ「アイドルって、テレビや雑誌に載ることだけがアイドルなんじゃないんだって――」


ツバサ「なんて、トップに居座ってる私が言うのはちょっとおかしいかもしれないけど…」


ツバサ「アイドルになりたいっていう気持ちが」

ツバサ「自分もあんなステキなアイドルになってキラキラ輝きたいっていう気持ちが――」

ツバサ「女の子をアイドルにさせるんだって」


ツバサ「そんな事を伝えたくて……スクールアイドルを広めようとしたんじゃないかな?」


ツバサ「そうじゃなかったら、ここまで人の心を掴めなかったんじゃないかな……って思う」


ツバサ「……私は、そう思いたい」



ツバサ「………私、変な事言ってるのかな…」


ツバサ「英玲奈も、あんじゅも………ちょっと冷めたところがあるから…」


ツバサ「首を縦に振ってくれなかった……んだよね…」





ツバサ「まぁ先に言っちゃうと」


ツバサ「第2回ラブライブの出場条件が、当初のUTXの理念とかけ離れているんじゃないかと思った私は理事を問い詰めた結果」


ツバサ「期待通りの答えをいただいたの」ニコッ


ツバサ「それで、3人揃って『Private Wars』でやさぐれてた所にShockingな知らせでParty状態になって」


ツバサ「まぁそういう事」



ツバサ「実際は、私の憶測が偶然当たっていただけの話なんだけど」


ツバサ「やっぱり……嬉しくなっちゃってね」


ツバサ「今なら空だって飛べそうなくらい♪」フフッ!





ツバサ「ただ……ちょっと遅かったかもしれないとは、思う」



ツバサ「私たちは、何だか高飛車なクール系のグループになっちゃってて」


ツバサ「すごいと思ってもらえるところまでは良いけれど……」


ツバサ「これで委縮されたり、スクールアイドルが何か特別なものだと思われちゃったら困るのよね…」


ツバサ「こういうのが上にいると……なにか勘違いされちゃいそうなのが心配で」



ツバサ「アイドルの、アの字も知らないような子が、自分もやってみたいって思えるような――」


ツバサ「できれば、となりの同級生アイドル  ぐらいの感じを出せればよかったんだけどね」



ツバサ「こうなっちゃったのは、あんじゅの作曲能力と英玲奈の作詞能力に難があるからなんだけど」


ツバサ「変にアイドル選民思想みたいなのがあって、そういう系のしか作りたくないというか」


ツバサ「作れなくなっちゃったみたい………というか…」


ツバサ「………こういう価値観の違いは、家庭環境の影響が大きいから何とも言えなくて…」


ツバサ「2人はいいトコの出で、私は一般家庭の出だし…」



ツバサ「でも、次々とスクールアイドルは誕生しているから―――多分、心配はいらないのかしら?」


ツバサ「スクールアイドルの概念は十分に広まったから、もう  自由にやっていい、って」


ツバサ「そう、思っていいのかしら?」



ツバサ「私個人としては、ライブできれば何だっていいの」


ツバサ「それに、UTX的にどうなのかが気になってるだけで――」


ツバサ「2人の作る曲は、とても好きなのよ」クスッ―





―――羽休め:その2   UTX第4期2代目ナンバー1  綺羅のツバサ







ツバサ「(※6話参照)という事で、今度のハロウィンの衣装案を持ってきたわ」


ツバサ「説明するより見てもらった方が早いと思ってね、写真を―――」ゴソゴソ―





ツバサ「はい、コレ」



http://mup.vip2ch.com/up/vipper43300.jpg



ツバサ「どうかしら?」



英玲奈「却下」    あんじゅ「いいんじゃない?」






ツバサ「もちろん冗談だけど、こういうフリには一応ノっておくものよ?  英玲奈」


英玲奈「出だしから全力でボケに走るのはやめてくれ」


あんじゅ「私としては、ネタ案の方がアイデアのヒントになるのだけれど――」



あんじゅ「何しろ誰かさんの案はどうもありきたりで、私でも思いつくようなものばかりだし」クスクス…


英玲奈「………」ム…



ツバサ「最終的には無難にまとめないといけないから、必要悪ではあるけど」


英玲奈「!?  私は悪なのか?!」



ツバサ「ええ。  冗談抜きで、面白味のない真面目って色んな意味で笑えない」


あんじゅ「仕事は出来ても打ち上げには呼ばれない、使い潰されるタイプよね」


英玲奈「」





ツバサ「まぁそれは置いておいて、それなりに真面目な方の案に入るけど」



ツバサ「――高坂さんをUTXに連れ込んだ時の、私達の立ち姿」




http://mup.vip2ch.com/up/vipper43274.jpg



ツバサ「これ、後から思い返してみたら」




http://mup.vip2ch.com/up/vipper43285.jpg



ツバサ「まんまコレだったのよね」


あんじゅ「!!!」



英玲奈(……マズい)






ツバサ「―――どう?」ニヤリ



あんじゅ「………………………ぃぃ」




あんじゅ「すごく良い…!!」キラキラキラ!


ツバサ「でしょう?」フフッ!



英玲奈(分が悪すぎる、早く逃げなければ)ソローッ…



ツバサ「しかしまわりこまれてしまった」


あんじゅ「え~れ~な?」ガシッ



英玲奈「罠だ!これは罠だ!!  綺羅が私を陥れる為に仕組んだ罠だ!!」


英玲奈「バトマスだけわざわざ反転させているというのはおかしいじゃないか…!」


英玲奈「それが罠だという証拠!!!」



あんじゅ「じゃあ、職業ネタと」


ツバサ「ついでに装備ネタでイジってあげましょうか」


英玲奈(衣装がついでなのか…!?)



――

――――

――――――




―――全く関係の無い一幕




あんじゅ「私たちって、せいじゃ世代よね?」


英玲奈「いや、聖印世代だろう」


ツバサ「正確には、Ver1.1中にシャドーノーブルに出逢えずにいたら急にレア泥に変更かけらちゃった世代ね」



英玲奈「ダークナイト同格世代でもあるな」


あんじゅ「リアルラックが良いのか悪いのか…」


ツバサ「まぁ、何だかんだでモチベ向上にはつながってるから良いじゃない」




ツバサ(そう―――ごく一部での密かな盛り上がりじゃなくて、多くの人に評価してもらえる場ができたのは、とても素晴らしい事)


ツバサ(でも……まぁ………絶対無いとは思っているけど…………)



ツバサ(ラブライブ優勝のため“だけ”に頑張ってるわけじゃ、ないわよね…?)


ツバサ(本戦に出場できなかったからって………折れたりしないわよね?)



ツバサ(………素直に人を信じられないってつらいわ)ハァ…




あんじゅ「(……また何か悩んでる)」


英玲奈「(お前のように単純な奴ではないからな)」



あんじゅ「(………“私達”、の間違いじゃなくて?)」


英玲奈「(そうだな。  だからこそ、ツバサがリーダーなんだ)」



あんじゅ(…………)



英玲奈(………肩入れしすぎるな、とは……言えないな)…フッ





ツバサ「まずはバカマスことバトルマスターの統堂 英玲奈さんから」



英玲奈「早速バカにされている気がするのだが」


あんじゅ「そうよ?」


英玲奈「黙れ」




ツバサ「“圧倒的な攻撃翌力”の看板に偽り無し。  火力は文句なしに全職トップ」


あんじゅ「同時に耐久は全職ワーストの紙装甲」



ツバサ「特筆すべきは、唯一両手に武器を装備できる仕様“2刀流”。  さすが“戦闘のエキスパート”というだけあるわ」


あんじゅ「代わりに、盾の類はほぼ一切装備できず。  ――まぁ、それは武闘家も同じだけれど」



ツバサ「これまでの追加職がほぼパッシブ要員だった反省からか、ステータスの伸び自体が極端になっているのよね」


あんじゅ「つまり単にレベルを上げるだけで強くなるから、それだけ単純な人も多い印象があるわ」



ツバサ「でも、強いからAポチでも許されちゃう職」


あんじゅ「いわゆる迷宮バトね。  大体が隼2刀か大剣ぶんまわしのどちらか、っていう」



ツバサ「自己バフ特技(高速低燃費)持ちの前衛がいかに強力かという事ね。  それで、英玲奈はどれにあてはまると思う?」


あんじゅ「無双バト」


ツバサ「両手剣なのに片手で高速剣してちゃだめでしょ」pgr





あんじゅ「まず、ハンマーは絶対無いでしょう?   武器スキルが補助系ばかりだし」


ツバサ「確かに。  キャンショやウエイトブレイクを巧みに使いこなす姿は、あまり想像できないわ」



あんじゅ「前衛なんて、大半が「補助なんて知らん、とにかく攻撃させろ」っていう思考だもの」


ツバサ「ハンマーは、その肝心の攻撃スキルも軒並み微妙なのよね」



あんじゅ「そうなると、低燃費2刀でドヤ顔してるか、渾身切りで最大ダメ叩き出してドヤ顔してるか――」


ツバサ「天下無双して はしゃいでいるか」



あんじゅ「ええ。  あの燃費の悪さは、本当にドヤ顔するためだけに取るスキルとしか思えないのだけれど」


ツバサ「楽しそうで何よりじゃない」



あんじゅ「旧強ツアーで波動のたびに防御1段階↓って何の冗談よ。  スクルトでフォローする方の身にもなって欲しいわ」


ツバサ「だそうよ?」チラッ



英玲奈「いや、知らないが」





ツバサ「じゃあ、衣装についてはどう?   まぁ英玲奈なら、何が来ても全部着こなしてしまうとは思うけど」


英玲奈「……」ムゥ…



あんじゅ「そうねぇ ・ ・ ・ 。   何を着ても似合う…っていうのも、それはそれで選び甲斐が無いのよねぇ……」


英玲奈「……」…ウン?




ツバサ「どんな服でも大丈夫ってモデル業向きよね。   とりあえず、無難なところで無法装備が妥当かしら」


あんじゅ「似合いすぎててつまらないわ。   英玲奈でも笑いを取れるようにしてあげるには、やっぱり鎧とかじゃないと」


英玲奈「……おい」




ツバサ「そうね。  辟易するくらいにお堅くてしっかり者の英玲奈は、無法者とは真逆ね」


あんじゅ「“乱暴者”なのは合ってると思うわ。  語彙に乏しくて言葉での表現が上手くいかないせいで、肉体言語に頼りがちみたいだし」




英玲奈「………そんなに自分の扱いが不満か?   なら、今すぐにでもその理由を突きつけてやってもいいのだが」



あんじゅ「―――ほら。   口で勝てないからって、実力行使に出るのはどうかと思うの」クスッ…



英玲奈「……」グヌ…


あんじゅ「……」フフ…




ツバサ(そしてそれで全敗している、っていうのがね…)



ツバサ(あんじゅが)




あんじゅ(………)ウフフ…





ツバサ「まぁ、詰まる所。  英玲奈も“特化型”って感じなのよね。  バトマスみたいに」


あんじゅ「アイドルのスキルは高いかもしれないけれど、それ以外の事がからっきしなところがそっくり♪」ウフフ…



英玲奈「……私を何だと思っているんだ」




ツバサ「ん?   脳筋ナンバー2」


英玲奈「」グサッ




あんじゅ「…パワータイプの知将かと思ったら、実際はレベルを上げて物理で殴るしか能のない人だったのよね」クスッ…


英玲奈「」イラッ





ツバサ「と、冗談めかして話してたけれど―――英玲奈はちょっと頭が足りないところがあるのを直した方がいいわ。  大、至、急」


英玲奈「……そろそろ具体的に言ってくれ」




ツバサ「具体的に、って……つい最近の事よ?   ほら、この前μ'sの皆さんをUTXにお招きした時」


英玲奈「本当に最近だな!?」



あんじゅ「“最近”なのが問題だって事に気づきなさいよ」


英玲奈「もう 黙れ。  お前の声は耳に障る」


あんじゅ「」イラッ




ツバサ「ほら、そういうところも直しなさい。  誰のどんな意見でも、糧にしていくぐらいじゃないと」


英玲奈「………」ムゥ…


あんじゅ「~♪」フフーン



英玲奈「……」…チッ


あんじゅ「……」…フフ



ツバサ(ダメだこりゃ)





ツバサ「―――とにかく聞いて。  冗談で済ませられる内に」


英玲奈「聞こう」ピシッ

あんじゅ「・・・」



ツバサ「いい返事ね。 じゃあとりあえず英玲奈」



ツバサ「何が悪かったか分かってる?  言ってみて」


英玲奈「」ピタッ




ツバサ「………」


英玲奈「………」




ツバサ「 ・ ・ ・ 」


英玲奈「…………」ダラダラダラ…


あんじゅ「………」…ハァ





ツバサ「…はいよく分かったわ」





ツバサ「―――あんじゅ。  この分からず屋さんに正解を教えてあげて」


英玲奈「なっ…!?」


あんじゅ「はぁ~い」クスクス…




英玲奈「ま……待ってくれ!」



ツバサ「あなた達、ずっと張り合ってるでしょう?   だからあんじゅの方が、私よりず~~っと、英玲奈の粗を知ってると思って」


英玲奈「!!?」


あんじゅ「ふふ…残念だったわね」クスクスクス…




あんじゅ「……あなたっていつもそう。  自尊心が高くて、人を見下して。  頭を下げるのは自分が“認めた”人「ストップ、遡り過ぎ」



あんじゅ「――とりあえず、ロシアは無いと思うの」





英玲奈「…………」





英玲奈「…?   どういう ・ ・ ・ 事だ?」




あんじゅ「 ・ ・ ・ だーかーらー。   いくらなんでも、あの場でロシア発言はマズいでしょう、って言ってるの」



ツバサ「――要するに。  外国在住なんて、普通なら手に入らないような情報をドヤ顔で語ってるんじゃないわよ――って事」



ツバサ「あなただって、オンゲで知らない間にログ漁られて行動完全に把握されてたりしたら、嫌でしょう?」



英玲奈「…………」





英玲奈「……なるほど。  確かに、最悪の気分だな」




あんじゅ「………ようやく理解したの?   全く…お馬鹿さんの相手は疲れるわ」ハァ…



英玲奈「……お前の説明力が足りないだけだろう。   ツバサが居てくれてよかったな」フン


あんじゅ「……あなたの理解力が足りないだけよ。   ツバサちゃんが居てくれてよかったわね」…フン


ツバサ(子供か)





ツバサ(――しかしまぁ、あんじゅもよくやるわね)



英玲奈「…大体何だ?  さっきからお前はツバサに便乗しているだけではないか」


あんじゅ「…あら、そういうところには気づくのね」


ツバサ(私の見立てではあの子―――自分の評価を無駄に落とすのを嫌う慎重派のハズだったのだけれど)



英玲奈「関係の無いお前にとやかく言われる筋合いはないな」


あんじゅ「残念ながら大アリ。   今回の事で、私の心象まで悪くなったかもしれないのよ?」


英玲奈「…!!」


ツバサ(――どうやらもう、玉砕してでも英玲奈を落としたいようね)ソシテ、“ワタシ”ナノネ



あんじゅ「・・・ねぇ?    やっぱり、メンバーの中で、あなたが一番の常識無しよね」クスクス…


英玲奈「………」


ツバサ(リスクを冒してまで英玲奈の弱みを握りたいなんて、ある意味すごいわ)ソシテ、ココデヒキアイニダシテクルカ




あんじゅ「何か、釈明したい事はあるかしら?」フフフ…



英玲奈「…………悪かった」



あんじゅ「・・・・・・ぇ?」


ツバサ(これってついに優先度が[周囲<自分<英玲奈]に・・・・・・ってあら?)




英玲奈「………私の軽率な行動で……迷惑をかけた…」



英玲奈「……………済まない」


あんじゅ「ぇっ……?   ぁ………」


ツバサ(あらあら)ウフフ―



ツバサ(そうなのよねぇ・・・。   こういうところが、この子の良いところ)


ツバサ(英玲奈は、自分が悪かったときには、素直に頭が下げられる子だから)


ツバサ(ごめんなさい、って)クスッ―


済まない、本当に済まない
本編で決着がつく前に何とか終わらせたかったんだが
次で勝ち負け決まっちゃうっぽいからオチを先に


―――A-RISEのイメージ作りに参考にした曲


// PrivateWars
https://www.youtube.com/watch?v=9D3DVhKj0W8
// からの
https://www.youtube.com/watch?v=UWzer1Rgtjs
https://www.youtube.com/watch?v=A-NLwd33Gjo
// ツバサソロ
https://www.youtube.com/watch?v=F1gXRgcgHQQ
https://www.youtube.com/watch?v=lPcgQwiJ1mc
https://www.youtube.com/watch?v=HQycEhfmhfM
// +α
https://www.youtube.com/watch?v=LeJ4vOX5iSk



>>77続き



ツバサ(バカみたいに真面目で、曲がった事は大嫌い。だからこそ、どうしてもそれを許す事ができない。  他人に対しても、“自分”に対しても)


ツバサ(――まぁ、難儀な生き方よね。   私は素敵だと思うけど)



あんじゅ「ぅ………それくらいで済むと思ってるの!?」


ツバサ(で、一方のあんじゅはコレ……。   この子もこの子で不器用な性格してるのがまた)…クス



英玲奈「……っ   そう…だな……」


あんじゅ「誰も経歴まで調べて来いなんて言ってないわよ!!   馬鹿なの!?」


ツバサ「これには私も苦笑い」シレッ



英玲奈「行き過ぎた事を……したと思っている…」


あんじゅ「いいえ分かってないわ!!   大体何よあなたのその口調!   キャラならまだしも素でそれはおかしいんじゃないの?!」


ツバサ(あ、それは私も気になってた。   どこぞの女騎士か何かですか?と)




英玲奈「・・・」…ン?



ツバサ(でも今言う事ではないわよね)





あんじゅ「本っ当に…!  口を開けば迷言とでも言うの?   ロクな発言しないんだから…」ハァァー…


英玲奈「……お前も大概だと思うがな」…ボソッ


ツバサ(まぁ確かに、あんじゅも 黙ってれば○○ の部類ね)



あんじゅ「あなたはその“程度”が問題なんでしょう!?   人様の過去なんて物を調べてきた時点で、もう駄目だと思っていたわ!」


英玲奈(………ん?)


ツバサ(口は相当巧い方だけど、根っこの方は英玲奈と大差ないから)



あんじゅ「いくらツバサちゃんの頼みとはいえ、家の力を使ってまで――!「・・・待て」



英玲奈「待て。  ……考えてみれば、何故、情報を持ってきた時に私を止めなかった?」


あんじゅ「…!」ギクッ



ツバサ(―――ほら、自爆した)





英玲奈「…そうだ。 そもそも何故、今になってこの話を持ち出す…?   これは……あの日の時点で指摘されるべき事だったのではないか?」


あんじゅ「あ………え……ぇと…」



ツバサ「――まぁ、確かにそうよね。   とてもじゃないけど、言い逃れの出来ない事をやらかしてしまった事だし」フフッ―




英玲奈「………笑い事ではないだろう。  何故、あの場で言及しなかった。  いや……お前なら、それこそ私が情報を持ってきた段階で


ツバサ「気づいていたわよ?   でも、あえて黙っていたの」



ツバサ「私に言われなくても、自分で分かってくれるでしょう――ってね」



あんじゅ「………」


英玲奈「……だが」



ツバサ「・・・そうね。  私は、あなたを止めなければいけない立場にいる。  万が一を起こさないためにも」


ツバサ「でも、同じくらいに―――リーダーとして、あなたの事を信じてみたかった」



ツバサ「っていうのはどうかしら?」



あんじゅ「…!」


英玲奈「………」





ツバサ「結果は、まぁ・・・残念な事になってしまったけれど」


ツバサ「でもこれで、大分反省できたでしょう?」



英玲奈「………荒療治にも程があるぞ」



ツバサ「まぁね、卒業までもう時間が無いもの。   どっちに転んでも、痛手にはなりそうにないと思っての判断よ」クスッ―


えれあん『…!!』



ツバサ「――ソロデビューは確定なんだから、今のうちに自立しておいてもらわなきゃ」


ツバサ「だから今回はガンガンいくわよ。  覚悟はいい?」



英玲奈「……分かった。  頼む」



ツバサ「お説教はするのもされるのも嫌いだから、これっきりにさせて頂戴ね?」フフッ―


英玲奈「…努力する」


あんじゅ「……」




ツバサ(―――ごめんね。   あなたのこと、少し利用させてもらったわ)チラッ



あんじゅ(……とでも言いたいの?)ムスッ…





ツバサ「まず。  今は結構マシになったけれど、英玲奈って実力主義なところがあるじゃない?」



ツバサ「心当たり」ピッ


英玲奈「…ある」



ツバサ「そう、一時期本当にひどかったものね。  ステータスが全てだと言わんばかりに、1人黙々とレベル上げの日々」


ツバサ「そしてカンストしてみたはいいものの、気がついたら周りには誰も居ませんでした――ってね」


英玲奈「………」



ツバサ「その全てを否定したいわけじゃないの。  むしろ、それだけの努力は賞賛されるべき事。  でも――」



ツバサ「―――殆どの場合、そういう道の先には、大体その手の方々しかいないと思うから」



ツバサ「そうね、言うなれば。  スキルだとか、装備だとか、数値で人を判断してしまうような――」


ツバサ「生まれだとか、家柄だとか、才能で全てが決まってしまうような――」



ツバサ「つまらない世界だと思わない?」



英玲奈「…………」





ツバサ「極端な話―――絵が上手いけど内容が無いような漫画と、絵は下手でも面白い漫画」


ツバサ「どっちが読みたい?」



英玲奈「………後者…だな」



ツバサ「そ。  多分重要なのは、そういう事」



ツバサ「私たちは―――まぁ一応、長い間積み重ねてきたものがあるけれど」


ツバサ「練習量の差があるからといって、追い抜かれない保証はないのよ」



英玲奈「!」



ツバサ「もちろん、どっちも兼ね備えているのが理想だから――そこは今まで通りで問題ないけど」クスッ―



英玲奈「……」





ツバサ「そしてもう一つ。   経歴は判断材料にはなり得るだろうけど、それが全てじゃないでしょう?」


英玲奈「…!」



ツバサ「これも一種のステータス思考よね。   ………やっぱり、英玲奈は頭が堅いのよ」



ツバサ「・・・ねぇ。  そこまでしないと、人を分かる事はできない?」


英玲奈「………」



ツバサ「――まぁ。  情報を集めただけ、分析をより正確なものに出来ることも確かだし」


ツバサ「やるんなら徹底的に――っていう姿勢は、良いと思ってるけど」



ツバサ「あなた自身の瞳力だって、大したものじゃないかしら?」



英玲奈「…………買い被り過ぎだ。   私は、ただ………常日頃意識を向けていたからこそ、分かっただけだ」



ツバサ「なら、私と同じね」フフッ―


英玲奈「…?」



ツバサ「私もね?  洞察力というよりは、自分に似た物を持ってる人とか、自分に無い物を持ってる人が、一際目に映ってるだけなのよ」



英玲奈「………」





ツバサ「嫉妬心は、時に恐ろしく正確な評価をもたらすわ。   そして――」



ツバサ「そこからどうするかは、自分次第」


ツバサ「でしょう?」



英玲奈「……」




ツバサ「――まぁ何が言いたいかというと。  そういう所を直せば、あなたはセンター狙えるハズなのよ」


あんじゅ(!)


英玲奈「………」




ツバサ「欠点があるっていうのは、何も悲観する事でも無くて―――つまりはそこを改善すれば確実に今以上の自分になれるって事で」



ツバサ「色々とネガティブな言い方しちゃったけど、あなたのそのストイックさは私には真似できそうにないし」


ツバサ「ガッチガチのデータ人間なのも、見方を変えれば事務処理系に強いって事で」


ツバサ「常識力の欠如については擁護のしようが無いけれど」



ツバサ「私より英玲奈が上のところはいくらでもあるんだから、あともう一声だと思うわ」



英玲奈「………本気で、そう思っているのか?」



ツバサ「背丈は完全に上回ってるじゃない」プクク…!



英玲奈「・・・」ム…





ツバサ「あなたとは訓練生時代からの付き合いだもの。  人一倍頑張ってきた事は、知ってるから」


ツバサ「出会った時と比べたら、すっかり丸くなったって事も」クスッ―


英玲奈「………」



ツバサ「ちゃんと変わっていってるのよね。  だから、あともう一歩」


ツバサ「ずっと真面目にやってきた貴女なんだから、小細工無しでも通用する実力はもう持ってるわ。  十分すぎるほどに」


ツバサ「単純な技術面なら多分私よりも英玲奈の方が上なんだから、自信持ちなさい」



英玲奈「……そうか。  褒め言葉として受け取っておく」



ツバサ「3年近くの腐れ縁だからね。  限度を間違えなければ大丈夫よ、何事も」フフッ―



あんじゅ「……」ムー…





ツバサ「・・・あ。  そうそう、限度と言えば最後に一つ」




ツバサ「自分の信条を曲げてまで、家の力を借りに行くのは、ちょっと……」



ツバサ「何ていうか………そこまでしてくれたのは嬉しいけれど……そこまでされるとは思わなかったというか…」



ツバサ「そこまでさせたかったわけじゃないっていうか……」




ツバサ「………とにかく、もう2度としないでね!?   すごく申し訳なくなるから!!」



英玲奈「・・・なるほど。  分かった」




あんじゅ「――あなたって、さじ加減がどこかおかしいのよね」


英玲奈「……の、ようだな」



ツバサ「・・・英玲奈は頭は良いし理解力もあるのよ。  ただ、ちょっと何かがズレちゃってるだけで」


ツバサ「言われれば分かる子だし、とりあえず人並みの感性はあるんだけれど……」ウーン…


あんじゅ「どうしてこうなっちゃうのかしらねぇ…」ハァ…



英玲奈「・・・」





―――スレンダーモデル英玲奈編  終了




ツバサ「――ねぇ、英玲奈。  ちょっと、『くっ…殺せ!』って「断る」


ツバサ「やってよ「嫌だ!!」



ツバサ(あ、今のちょっと可愛かったかも)プクク…


あんじゅ(あら、残念……)




敗因:自信過剰



ツバサ「でも、英玲奈って武人気質っていうの?   相手を認める潔さがあるというか」


あんじゅ「散り際に、『見事だ』とか言いそうよね。   負けが映えるようだと、覇権は取れないと思うけれど」クス…


英玲奈「オイ」



ツバサ「確かに、“勝利!”よりは“惨敗!!”のイメージね(次、あんじゅボコるわよ)」チラッ


英玲奈「いいかげんにしてくれ(よしきた)」チラリ


あんじゅ(あれっ…?)ゾワッ…





ツバサ「じゃあ次、僧侶のあんじゅ」



英玲奈「基本的には攻撃に参加しないやつか」


あんじゅ「何よその評価」




ツバサ「この職業だけは本当に何も変わらないわよね。   もちろん良い意味で」


英玲奈「悪い意味でもな」



ツバサ「ザオ,ホイミの蘇生回復に始まり、ズッシ,スクルト,フバーハ等の補助。更にはキアリー,マホリー,マヌーハ等々補助回復まで何でもござれ。   さしずめ、後衛側のエキスパートといったところね」


英玲奈「流石にバイキルトまでは「使えてたまるか。曲芸にあと10pt振ってきなさい」


あんじゅ(あらあら、駄目出しね)フフフ…



ツバサ「――と、基本職の頃からぶっちぎりの後衛トップ。   全コンテンツでお呼びがかかるのはこの職だけよ」


英玲奈「…他にヒーラーが務まる職が存在しないのだから当然だ。   代わりがいないというだけだろう」



ツバサ「ま、多少はね?  スペックにちょ~っと難があったとしても、目をつぶってもらえるし」プククク…


英玲奈「需要が確定してる以上、組めない事は無いからな。   希少な分、持て囃されもするのだろうな」


あんじゅ「……」ムッ…



ツバサ「そう言わないの。  初期は本当に唯一無二の「今もだろう」うん、いくらなんでもそろそろ対抗馬を用意すべきよね」


あんじゅ「!?」



ツバサ「でもまぁ、役割的にパーティー組むのが前提の職だから。   最初からこれを選ぶのは結構勇気がいると思うわ」


英玲奈「意外と戦える事が発覚してからは僧侶最強説が浮上したが。   それは置いても、ソロ性能最強なのは確かだろう」



ツバサ「実際あんじゅは超有能だものねぇ・・・。   呪文よこせって賢者が泣いてるわよ?」チラ


あんじゅ「そう言われても…」





ツバサ「バトマス追加で前衛の爪一強時代が変わったから、同期の賢者にも勝手に期待してたのだけど」


英玲奈「結局第2の後衛にはなれなかったな。   自身を蘇生できないようでは、メイン回復役としては失格というわけだ」



ツバサ「回魔とか装備とか他にも要因はあるけど、そうね・・・」



ツバサ「やっぱり“天使の守り”ってズルいわ。   何よアレ、MP尽きない限り不死身じゃない」


英玲奈「自分自身に“のみ”かけられるリレイズとは恐れ入る。   ………世界樹の葉の仕様にも問題はあるが」



ツバサ「希少な上に取引不可なのよね。   まぁでも、聖女は他人にもかけられるじゃない?  1ミスOKって随分気が楽になるのに」


英玲奈「確かにそうだな。  専用スキルの専用特技の、そのまたさらに自分専用の死亡保険だ」



ツバサ「全滅すると責任なすりつけられる立場だからそこはいいけど。  他の後衛にも同じ特技持たせるとか、ねぇ?」


英玲奈「流石に強力だという事で発生を鈍化されたが、神秘は始めから遅かったな」



ツバサ「噂によると高速化したみたい。  まぁ僧侶に責は無いわよ」


英玲奈「確実に席はあるがな。  あとハッスルダンスもかなり強化されたらしい」



ツバサ「ね。  でも、あの翼がフワ――ッってなるのはまさに天使というか僧侶専用っぽいというか」



あんじゅ→アンジュ→ANGE→Angel→まじえんじぇー



ツバサ「納得だわ」


英玲奈「悪魔の間違いだろう」



ツバサ「だって?」チラッ


あんじゅ「知らないわよ」





ツバサ「あーそうそう。  僧侶といえば“アレ”があったわね」


英玲奈「ザキか」



ツバサ「ザキね。   弱体化でクリフトごっこができるようになりました、以上」


英玲奈「正直、使える時期があっただけでも驚きだ」



ツバサ「そうね。  この手の呪文は敵からだと恐ろしいのに、味方のは使いものにならないんだもの」


英玲奈「竜騎士の裏切り強化補正か「逆、逆」。  聖職者が即死呪文を唱えるというのは、どうなのだろうな」



ツバサ「遊び人→賢者みたいなものでしょう。  そして使えないといえば、僧侶の“ひっさつ”も微妙性能よね」


英玲奈「ベホマラーに状態異常回復とザオラルの効果が上乗せされたような特技か」



ツバサ「“全体蘇生”って書くと、とても強力な必殺技のように思えるんだけどねー」


英玲奈「実際には、発動までが長過ぎて普通に回復した方が早いという」



ツバサ「本当にそれ。  あと、一番全体ザオラルが欲しくなる状況って、ボス戦とかで僧侶以外全滅の大ピンチ状態とかでしょう?」


英玲奈「必然的に僧侶1人にボスのヘイトが集中する事になり、発動前に死亡 と。  全く使いものにならないな」



ツバサ「そこを一発逆転できたら神僧侶よね。  基本はチャージが来ても使えない、使ってはいけない技だけど」


英玲奈「発動中に誰か死ぬからな」


ツバサ「まさに必殺(笑)」



あんじゅ「・・・」ムッスー…





ツバサ「じゃあ衣装についてだけど、もう水の羽衣で決まりね」


あんじゅ「…ちょっと雑じゃないかしら?」



ツバサ「さっきも言ったでしょう?  単純なステータス自慢はあまり意味が無いって」


英玲奈「…より上位の装備が出るたびに買い換えられていくだけだからな」


ツバサ「耐性無いと戦えない地雷と言われるかもしれないけれど、こういうのは倒れない事の方が重要だもの」


英玲奈「万が一が起こってしまってからでは、手遅れになるからな」


ツバサ「っていうか本当に強い人って素っ裸で全部倒しますしおすし」


英玲奈「それは極端な例だが・・・確かに、そういう事か」


あんじゅ「………」



ツバサ「それは置いといて。 こういうところで選ばれるのは大体、多職で着回せて潰しがきくやつか、一点物の性能を持ってるやつになってくるのよね」


英玲奈「その点羽衣は優秀だな。  炎ダメージを大幅に軽減できる事に加え、魔法使いでも装備する事ができる破格の性能だ」


ツバサ「ええ。 そして 何 故 か 賢者には着回し不可なんだけど」


英玲奈「こういったものは往々にして下方でバランスを取りたがるからな。  致し方無い」



ツバサ「まぁ・・・羽衣自体に修正入ってないのが奇跡よね。  だけど、賢者に羽衣を与えなかった事で何か好転したのかと考えてしまうわ」


英玲奈「炎60%カットの壊れ性能とはいえ、僧侶が羽衣を使える以上、その差は開いていく一方だったな」



ツバサ「そうねー。 Ⅸでは2択が可能だったっていうのに。   前はできてた事ができなくなるってどういう事なのかしら」


英玲奈「戦闘の仕様上の問題というものもあるだろう。  今回は完全ターン性では無いからな」


ツバサ「それはそうだけど・・・基幹システムそのものが変わりまくりのFFに対して、DQって割と一貫してるじゃない?」


英玲奈「だから、それなりに上手く調整出来る可能性は十分にあった――と?」



ツバサ「ええ。  前作までの進歩をしっかり積み重ねていけば、少なくとも前より悪くなる事だけはないのに・・・」



ツバサ「あ、今の私たちの活動方針に追加しましょう。  良いところは残して変えられるところは変える って感じに」


えれあん(何かさらっと重要な事を決められた気がする)




それっぽいキャラを拝借(羽衣僧侶)


http://mup.vip2ch.com/up/vipper43271.jpg




ツバサ「水とか壊れとか変化で思い出したけど、今回ので海王が環境を破壊するんじゃないかしら」


英玲奈「それ以上いけない」


あんじゅ「…使う側に回ればいいのよ」


ツバサ「それもそうね」プクク…!






ツバサ「まとめると、あんじゅはパーティーに無くてはならない役どころ、といったところね」


英玲奈「ヒーラーのような包容力があるかどうかは疑問だがな」


あんじゅ「」ビキッ…



ツバサ「そう言わないの(反応したら思う壺よ?)」チラリ


あんじゅ「」ピタッ



ツバサ(面白っ……)プククク…!


あんじゅ「・・・」ジトッ…


英玲奈(・・・)ジトッ…





ツバサ「ふぅ……  まぁでも、あなたの立ち位置は本当にそれっぽいのよね。  A-RISE加入の経緯が私たちと完全に別物だし」


あんじゅ「!  それは…!」


英玲奈「・・・どうした?  特に気にする事でもないだろう」


あんじゅ「」ウッ…



ツバサ「そうね。  あんじゅの場合は、ちょっと私たちと事情が違ったのよね」


英玲奈「例えるなら、僧侶枠での加入か」


ツバサ「具体的に言えば、“作曲ができる人”枠での加入ね」クスッ―





英玲奈「――A-RISEのメンバーは、芸能科の中から実力順で上から3名   と・・・されているが、これには少し語弊がある」


ツバサ「そうね。  正確には、オーディションを勝ち抜いた上位“2名”に加え、それとは別にもう1人」



英玲奈「A-RISEの3人目はその実力に関わらず、ある一点の能力に秀でた生徒が選ばれる」


ツバサ「それが、作曲能力」



英玲奈「作詞までならば、何とかできない事も無いが………これは才能の領域であると、認めざるを得ないな」


ツバサ「そして実際のところは、私たちも実力順で1,2フィニッシュってわけじゃないんだけれどね」フフフ―



英玲奈「………そうだな。  でなければ、1年の時からA-RISEとして活動する事が出来るはずも無い」


ツバサ「素直さ従順さ伸びしろ等々を加味された結果よね。  まぁこれは置いておきましょう」





ツバサ「というわけで、1名はサウンド部門からの参戦、と。  作曲のスキルは、それだけの強みになるって事ね」


英玲奈「ノウハウだけでどうにかなるようなものでもないからな。  謂わば、本人専用の特殊スキルか」



ツバサ「しかもこの子に至ってはデザインまで出来ちゃうでしょう?   芸能科を通り越してもう芸術家よ」


英玲奈「その上で踊れもするとは。  ……ソロ性能最強というのも、納得せざるを得ない」



ツバサ「そうね。  本気出すとあんじゅ僧侶は棍持って乱撃し始めるから」


あんじゅ「えっ?」



ツバサ「いくら席が確保されてるとはいっても、その分野同士での枠の奪い合いはもちろんあるわけだし――」



ツバサ「そうやって全員黙らせて来たんでしょ?」


あんじゅ「人聞きの悪い事言わないでくれる?」





ツバサ「で、何人なぎはらって来たの?」


あんじゅ「知らないわ」



ツバサ「何人黄泉送りしてきたの?」


あんじゅ「知らないわ」



ツバサ「じゃあ足払い?」


あんじゅ「してないわ」キッパリ



ツバサ「そうよね。  あなたも、正面から叩くタイプだもの」クスッ―


英玲奈「こいつの場合、普通に戦って強い上に、さらにそういったスキルがあると考えた方がいいな」


あんじゅ「ちょっと待ちなさいこいつって何よ“こいつ”って」





ツバサ「ええ、本当に万能性能だわ。  作曲は言わずもがな、衣装もあんじゅメインだし、流れで一部作詞しちゃったりその上ダンスまで――」


英玲奈「振付はツバサの担当だろう?」


あんじゅ「ねぇ何スルーしてんのよ英玲奈ねぇ」



ツバサ「あぁ、それは作曲中のあんじゅのイケイケっぷりをそのままダンスにしてるから


あんじゅ「あぁっ!?  何でそれ言っちゃうの!!?」



ツバサ「今回の『Shocking Party』の前奏部分とかがまさにそれ。  中々にアグレッシブな作曲風景よ」


英玲奈「納得した。  あんな品の無いダンスをツバサが考案するハズも無いと思っていたんだ」


あんじゅ「あ"ぁ"っ?!  あなたいいかげんにしなさいよ?!!」





英玲奈「前回の『Private Wars』でも相当エキサイトしていたようだな」


ツバサ「そうね。  曲の方でも「ッアウッ!」とかやり出しちゃった時には真面目に振付にムーンウォークの導入を検討したわ」


あんじゅ「あのホントにもう勘弁して、なにこの公開処刑」



英玲奈「曲作りの時、『気が散る』といつも追い出されるのはそういう事か」


ツバサ「そうね。  腰くねらせながらノリノリで作曲してるところなんて人に見られたくはないだろうし」



英玲奈「………何故ツバサはOKなんだ?」


ツバサ「さぁ?  おかげで1から考えなきゃいけないのはポジション変えとかそこら辺くらいになるから助かってるけど」


あんじゅ「………」ウゥゥ…





ツバサ「作詞担当より振付担当の方が作曲担当と居る時間が長いって、珍しい方よね」


英玲奈「確かに、一般には逆かもしれないな。 ふむ…」チラッ


あんじゅ「…………なによ」




英玲奈「・・・」…フッ



あんじゅ「なにか言いなさいよ腹立つわね!!」


ツバサ「そうよ、あなたも笑ってる場合じゃないのよ?   横文字だらけの難解な歌詞職人さん?」



英玲奈「」


あんじゅ(…よしっ!)グッ…!




ツバサ「あんじゅの曲はクセのある方かもだけど、聞いてて自然に体が動き出すようなダンサブルさがあるわ。  つまり、ライブ曲として成功してるの」


ツバサ「それに引き替えあなたはPeristerium朱雀にルシクンニしちゃってるじゃない。  ただ英語を多用してるだけで歌いにくいのなんの・・・」


英玲奈「……」ウッ…


あんじゅ「私たちだから解読できるようなものよね」ボソッ…



ツバサ「本当にそれ。  このまま調子に乗ってバシシのゼクがファラウェイにアモルファスを要請し出さないか不安だわ」


あんじゅ「ええ。  シ骸がエズしないように気をつけないと」



英玲奈「…日本語で」


きらあん『アンタがね』


英玲奈「・・・」シュン…



ツバサ(まぁでも、漢字カッコイイ病よりは幾分かマシと考えるしか・・・)

      ディアボリックデスバースト
あんじゅ(死 魔 殺 炎 烈 光の方面に逝ってたら絶交してたわね)



ツバサ「………かと言って、日本語でやらせた場合はもっと酷くなるという」


あんじゅ「前回は「大会で披露する曲なんだからちゃんとやって」って事になったのよね」


ツバサ「そう、そしてその結果が」


きらあん『“群れるのキラいよ”』



あんじゅ「・・・なんというか、残念ね」


ツバサ「ええ、もう色々と残念だわ」


あんじゅ「どうあがいても残念ね」


ツバサ「本当に、どうしようもない残念だわ」


英玲奈「コロセ… イッソコロシテクレ…」クッ…



ツバサ「しかしまぁ・・・ウンザリするくらい横文字たっぷりの英玲奈(の作詞)だけど、あんじゅ(の曲)とは相性抜群なのよね」


あんじゅ「なっ…!」


英玲奈「気色の悪い事を言うな」ゾッ…

あんじゅ「復活早いわね?!!」



ツバサ「曲とダンスの一体感は私があんじゅに付きっきりだから当然だけど、あなた達は少しの打ち合わせで仕上げて来ちゃうんだもの」


英玲奈「そうだ、お前があんじゅの方にばかり行くから歌詞合わせに苦労するんだ」


ツバサ「あはは、ゴメンゴメン。 でも私ができる事って、元のを所々和訳したり適当に言いたいフレーズ入れたりの魔改造くらいでしょう?」


英玲奈「それでもだ」


ツバサ「大衆向けとかそういうの抜きにすれば、別に英語だらけでも全然。  私はイケてると思うけど?」


英玲奈「……」フン…


あんじゅ(………あなた達が上手くいってるのも不思議よ)



ツバサ「それはそうとして、今回の曲の中盤の部分。 『GoGo We are “leader”』なのか『We are “freedom”』なのかハッキリしないんだけど」


ツバサ「これ私の耳がおかしいの? 英玲奈の歌詞が間違ってるの? それともあんじゅの発音が悪いの?  どれ?」



あんじゅ「待って待ってツバサちゃん歌詞知ってるでしょう?  疑問に思うところじゃないでしょう?」


英玲奈「つまりあんじゅの発音に問題があるのか」


あんじゅ「英玲奈の分かりにくい歌詞に問題があるのよ!!」


ツバサ「っていうかこの部分絶対あなた達2人で打ち合わせしたでしょ。 そうとしか思えないんだけど。 どうなの?」


英玲奈「……」ウ…

あんじゅ「……」ッ…



ツバサ「沈黙は肯定で流すとして・・・あんじゅはあんじゅで衣装の方ではっちゃけてるから、そろそろお仕置きタイムね」


あんじゅ「えっ」


英玲奈(残念だったな)フフ…



ツバサ「……という事で」


あんじゅ「」ビクッ!


ツバサ「そんなに身構えなくてもいいじゃない。 大丈夫よ」クスッ―



ツバサ「英玲奈と違ってあんじゅは問題なんて起こさないし、別に私としては気にする事でもないと思っているの」


ツバサ「でも……そうね…」


ツバサ「―――英玲奈。  何かある?」


あんじゅ「!?」



英玲奈「………ああ。  あるな」


あんじゅ「!!?」



あんじゅ「ま……待って!!」


ツバサ「駄目よ。  “リーダー”として、メンバーからの意見や不満はしっかり聞いておかないと」


ツバサ「それに逆パターンが来ることぐらい、予想はできたでしょう?」


あんじゅ「・・・」ウッ…



ツバサ「じゃあ英玲奈、どうぞ」


英玲奈「………よく聞け。  最初の顔合わせの時から、お前は自惚れの塊だと「ストップ。 それただの悪口」



英玲奈「――新衣装。  お前のスカートのフリルだけ、やけに大きいな?」


あんじゅ「!!!」ギックゥ!


ツバサ(まぁこれも単なる難癖の部類よね)プクク…



あんじゅ「………ま、待って。  何で今頃になって「早速逃げようとしないでよ、あんじゅ」


ツバサ「ね?」


あんじゅ「……」ゥ…



英玲奈「――それでいて私達のスカート丈はとことん詰めたものにするとはな。  こいつの性根がいかに捻じ曲がっているかがよく分かる」


ツバサ「あらら、散々な言われようね?」チラ


あんじゅ「ぐっ……」



英玲奈「自分の身の安全は確保した上での高みの見物、か。  ・・・どこまでも周到な奴だ」


ツバサ「いえ、こんなのはただの自己保身よ」


あんじゅ「…!?」

英玲奈「・・・ほう?」


ツバサ「つまるところ、「パンチラ上等!」みたいな覚悟がこの子には無いの。  カマトトぶってるんだか何だか知らないけれど」

あんじゅ「…っ」



ツバサ「これだからあんじゅはナンバー3止まりなのよ」


あんじゅ「」グサァッ



ツバサ「そんなだから英玲奈にまで負ける事になるのよ」


あんじゅ「」グッサァァ



英玲奈(………なるほど。  どうやってもあんじゅがツバサに勝てないわけだ)…フン



ツバサ「まぁ――さっきも言った通り、私としては別にこれはそこまで気にする事でもないと思うの」


ツバサ「というのも、あんじゅは後衛タイプだから。  その方向でもいけると思うから」


ツバサ「別に前に出る事だけが全てでもないでしょうし、ね。  英玲奈はどう思う?」



英玲奈「さぁな。  それは本人が決める事だろう」


あんじゅ「………」



ツバサ「ごもっとも。  でもそうなると、いざって時には頼りにならなさそうなのよねぇ・・・この子」


あんじゅ「…!」



ツバサ「英玲奈の方が――」


ツバサ「頼りには、なる」ポンッ


英玲奈「…」



ツバサ「ものすごく怖いけどね?  こっちは何やらかすか分かったものじゃないし」クス―


英玲奈「……」

あんじゅ「……」



ツバサ「あと、あんじゅは問題を起こさない  とも言ったけど」


ツバサ「問題を起こさな過ぎる、というか。  問題を起こすまいとして、慎重になり過ぎるのが問題というか」


ツバサ「言うなれば、八方美人的。  そして、ここ一番では守りに入るようなタイプなのよね」


あんじゅ「………」



ツバサ「……………………極端な話」



ツバサ「問題を起こす英玲奈の方が  まだ成長はしてるし、マシだとさえ思うわ」


英玲奈「………」ム…



ツバサ「…やっぱりね。  肝心要のライブでこれは、結構痛いと思うわよ?」


ツバサ「少なくとも、英玲奈はライブで問題は起こさないし」


ツバサ「まぁこっちは場外でスキャンダルやらかす可能性があるんだけど」


英玲奈「」グッ…



ツバサ「そんなわけだから、どうせなら当たって砕けてみなさい」


ツバサ「・・・っていうか、繕ってるつもりが結局ボロを出しちゃってるのってバカみたいじゃない?」


あんじゅ「」ウッ…


ツバサ「前のように3つとも大差無い感じで作ればいいのに、欲張るからこうなるのよ」フフ…



ツバサ「―――私たちにきわどい衣装を着せてみたい。   でも、自分へのリスクは回避したい」

ツバサ「まぁこの時点であなた糞なんだけどね?  自分で着たくないような衣装を人様に着せてんじゃないわよ、と」

あんじゅ「」グサッ


ツバサ「で も?   私たちは平気だし?   パンチラなんて気にしないし?   パンモロだろうと余裕だし?」

英玲奈「待てツバサ。  さすがにモロは・・・」


ツバサ「そうね。 でも、英玲奈は本当に堂々としてるわよね。 ギリギリな衣装にも物怖じしない度胸があるわ」

英玲奈「……」


ツバサ「偉いものよ、どんな衣装でも文句の一つも言わずに着こなしちゃうんだから。 これが覚悟の差ね」

英玲奈「………」


ツバサ「それに引き替えあんじゅは・・・。  俯瞰できる立ち位置から、私たちを良いように動かしたいのかもしれないけれど――」


ツバサ「残念ながら私にそういうのは通用しないの。 今となってはね」フフッ―

あんじゅ「……」



ツバサ「こっちの裏をかくか、自己の保身か。  どちらか一方にしておけば、まだ私にバレない可能性もあったのだけどね・・・」

ツバサ「まとめてやっちゃうから落差が大きくなってボロが出たのよ。  こんな簡単な事にも気づけなかったのかしら?」クスクス―

あんじゅ「」ウググ…


ツバサ「そしてそもそも裏をかけてもいない、っていう。  私たちミニスカOKだし。作成は私と分業だし。裁縫スキル()の英玲奈は毎度買い出し要員だけど」

英玲奈「………」ムゥ…


ツバサ「というか何でバレないと思ってたの?  メイン担当はあなたでも、作成作業の時は私もいるのに」

あんじゅ「」ウグググ…


ツバサ「色々とうっかりしてたわねぇ? あんじゅらしくもない。   やっぱり、あなたも今回の事で浮かれてたの?」


ツバサ「――斜に構えてるように見えて、かわいいところもあるじゃない」プークスクス!


あんじゅ「」ウググググ…!



ツバサ「というわけで、アイドルというか女としてアウト気味の私たちに、羞恥心煽りは通用しませんでしたとさ」ザンネンデシターw

ツバサ「――で、英玲奈の時と同じように気づいていたけど。  そしてあえて黙っていたけれど」

ツバサ「何故だか分かる?」


あんじゅ「………どうせ、下らない事やってる とでも思ってるんでしょう」


ツバサ「まぁ正直いい趣味してるとは思えないわね」

ツバサ「でも  前回まで無難に抑えてきたあんじゅが、ここにきて自分の趣味を丸出しにしてきたから・・・」


ツバサ「ついスルーしちゃった☆」テヘペロ


あんじゅ「…!?」

英玲奈(…!)



ツバサ「やっぱり、衣装は視覚的なものだから、曲と違って大人し目になっちゃってたのかしら?」

ツバサ「あなたはこれまで当たり障りのないようにやり過ごしてきてた気がしたから、良い傾向だと思ったの」

ツバサ「だから、止めないでおこうかなー って」


ツバサ「まぁそんな感じだったんだけど、どうかしら?」フフッ―


あんじゅ「…………ほんと、いやらしいわね」…フン


ツバサ「心配しないで。 自覚はある」フフッ!


英玲奈(……参考にはできそうにないな)



ツバサ「ただ・・・これはあんじゅ自身が意図した事じゃなくて、つい地が出ちゃっただけ  っていうのはいただけないわね」

あんじゅ「…!?」ウッ…


ツバサ「今まで隠してきたのが、勝手に爆発しちゃった感じ。  言ってしまえばただの暴走」

ツバサ「―――考えてみれば、最初からその兆候はあったのよね。  例えば座ってる時、英玲奈と比べるとちょっと行儀が悪かったりして」

あんじゅ「なっ…!」

英玲奈「……」…フム


ツバサ「割とそんなところに人の性格って出るのよ?  英玲奈は所作の端々にちょっとした女子力が現れてるけれど、あんじゅは本性が滲み出てる感じ」

ツバサ「ニュアンス的には“真面目系クズ”が分かりやすいかしら?  もちろん色々と違うけどね」

ツバサ「まぁつまり、意識して繕ってるからどこかでカバーし切れなくなるのよ。  それこそ日常的な何気ない動作とかで」

ツバサ「常に気を張っていられる人なんてそうそういないもの。  と、そう考えてみると……」


ツバサ「ごめんなさい。  さっきのは、“仕事とプライベートは別”タイプ みたいなのが丁度良い表現だったわ」

あんじゅ「……」ムム…



英玲奈(………何回上げ下げを繰り返すというんだ?)フーム…


ツバサ(このタイプには1回じゃ足りないから)チラリ


英玲奈(目で心を読むな伝えるな)ジト…



ツバサ「そしてこれ比較対象も良くなかったわ。  あんじゅは慇懃無礼なわけではないし、むしろ礼儀はすごい良い子ではあるのよ」

ツバサ「ただね、英玲奈がね、飛び抜けちゃってるのよね。  やっぱりそこらへん企業令嬢なだけあって、作法が細かいとこまで相当キッチリ教育されてるから――」

ツバサ「2人並んだ時にどうしても落差が生じてしまうという、何とも言い難いような状況に」


あんじゅ「・・・」ジローッ…

英玲奈「睨まれてもどうにもできないぞ」


ツバサ「もちろん優木家の仕付けがなってないとかじゃなく、ご両親ともに芸術家で 細けぇこたぁいいんだよ 的なノリだから割と奔放に育ったというか何というか」

英玲奈「掻い摘んで言えば、『もっとこだわるところ(=自作品)は他にある』という事だったな」

ツバサ「そうそう。  多分こう・・・そういう感性諸々を抑えないからこそ、創作のスキルを発揮できるんじゃないかしら」


あんじゅ「・・・」ジローーッ…

英玲奈「・・・」



ツバサ「それに2人とも生まれや育ちで人を判断するような事はしないもの。  むしろ大っ嫌いでしょそういうの?」


英玲奈「・・・当然だ。  家の力,学校の力,そういったものは自らの努力に因るものではないからな」

ツバサ「…だから英玲奈が家を頼るとは思いもしなかったのよね。  まぁそれはまた後にするとして」


ツバサ「そういう風に個人単位で物事を見て,考えてるから、責任転嫁みたいな事は絶対にしないのよね。  自分に厳しく、そして、他人にも“甘くは”無い」


ツバサ「ともすれば性格キツいとも思われがちだけど、そういう厳しさもまず自分の側に向いてる感じ。  育ちが良いって、こういう事を言うんでしょうね」


あんじゅ「・・・」ジローーーッ…



英玲奈「―――さて、現在進行形で尚も私に恨みがましい視線を送り続けている奴がいるのだが」

ツバサ「あぁ、それは別に英玲奈のせいにしたいわけじゃなくて、ただの八つ当たりよ」


英玲奈「……?  違いが…よく分からないが」

ツバサ「あんじゅ本人も、あなたのせいじゃない――というより、誰のせいでも無い事は理解してるの。  ただ、だからといってそのモヤモヤを抱え続けていられるわけでも無くて・・・」


ツバサ「とにかく、誰かにぶつけずにはいられないのよ。  愚痴と一緒で吐き出してスッキリしたいだけ。  聞いてもらうのも重要だから『壁にでも話してろ』は無効」

ツバサ「英玲奈が近くにいる事であんじゅの地が浮き彫りにされていってるようなものだから、この場合のイライラの発散先としては英玲奈しかいないって事」

ツバサ「と、そんな感じね。  まぁ煩わしいとは思うだろうけれど、向こうの気が収まるまで好きにさせておいてあげなさい」


英玲奈「………分からないな。  第一、それでは根本的の解決にはならないだろう」

ツバサ「別に解決策が欲しいっていうわけじゃないのよ。  ただ、そうしてる内に自分の中でだんだん割り切れるようになっていくものなの」


英玲奈「……つまりは自己解決か?  自分で納得できるのなら、一人で勝手にやっていて欲しいのだが」

ツバサ「そうもいかないの、面倒な事に。  第一、それだと自己完結じゃない」


英玲奈「…自身のストレスの解消のためだけに、他人を巻き込むのか」

ツバサ「言い方は悪いけど、まぁそういう事ね。  こういうのは、誰かに受け止めてもらいたいだけなの」


英玲奈「………つきあい切れないな」

ツバサ「面倒臭いでしょう?  でもね、そういうものなのよ」フフッ―



ツバサ「で、そうこうしている内に当のあんじゅさんは――」


あんじゅ「・・・」ギロッ…!


英玲奈「(……あれ、本気で怒ってないか?)」

ツバサ「当然。 本人を目の前に知ったフウな事をあれこれと喋られて、穏やかでいられる人なんてまずいないもの」


英玲奈「・・・・・・・・・・お前の考えが、時々どうしても理解できないのだが」

ツバサ「少しでも理解できるだけ上々よ。  まー極端なやり方だとは分かってはいるけれど、裏でこそこそ話されるよりはずっとマシだと思ってね」

英玲奈「!」


ツバサ「とりあえずあんじゅって、私たちの中では女々しいというか女というか、一番普通なのよ」

英玲奈「……普通?   作曲と服飾という、天から2つもの才を与えられたような奴が……普通だと?」

あんじゅ「………」ピクッ


ツバサ「ええ、普通よ普通。  どんなにすごい能力を持っている人でも、同じ人間だもの」

ツバサ「普通に怒って、悲しんで、喜んで、笑って」

ツバサ「―――ほら、何も変わらない。  みんな、心の奥で感じてるような事は同じなのよ」


ツバサ「働きたくないって」

英玲奈「オイ最後」



ツバサ「いやいや、別に冗談でもないのよ?  一生働かないで生きる事ができるんだったら、殆どの人がそうしたいでしょう」

ツバサ「私も普段はぐーたらな方だから、そういう時も規則正しかったり真面目な人って、本当にすごいと思うのよ」

英玲奈「………」


ツバサ「まぁでも私たちって、与えられるだけの受け身な人生はまっぴら御免、みたいな人種じゃない?」

ツバサ「仮に、一生遊んで暮らせるような事になっても―――」

ツバサ「見てるだけ、とか。  新しいものを待ってるだけ、とか。  そういう生き方はできそうにないじゃない?」


ツバサ「多分、ROM専は性に合わないのよ。  私も、向こう側へ っていう気持ちが、どうやったって消せないし、抑えられない」

ツバサ「これから先、自分がどうなったとしても、『見てるだけで満足です』な事には絶対にならないと思うわ」

ツバサ「そしてそれはあなた達も同じでしょう?」


英玲奈「・・・当然だ」フッ―

あんじゅ「…………」



ツバサ「ね。  これってもう体質みたいなものだし、あなた達はアイドルやるやらない、できるできないは最初からクリア済みなのよね」

ツバサ「その上 有智高才 品行方正 才色兼備とくれば、あとはもう細かいところを指摘するぐらいしかできる事ってないのよ」

ツバサ「その結果、まるで粗を探してはダメ出しするような陰湿女っぽくなっちゃってるんだけど」フフ…


英玲奈「―――まさか。 そういうのはああいう奴の事を言うんだ。  自身の才に驕り、私達をバックダンサー扱いした事を私は

あんじゅ「忘れてよ!!!」


ツバサ「(おー、うちのお嬢様がようやく復活だ)当の英玲奈さんはその時私をボロクソに叩いてたのを忘れてるんじゃないですかねー」プクク!

英玲奈「!!」ウグッ…!


ツバサ「『素人は帰れ』『センターとは認めない』って、ユニット組む前から組んだ後も散々だったわよねぇ?」ニヤニヤ

英玲奈「そ………それ…は……」


ツバサ「あの時は本当に素人だったからそれはいいの。  それより、『認められないな』の英玲奈があんじゅを認めるようになったのが私としては嬉しいわ」

あんじゅ「…!?」

英玲奈「なっ…!」



ツバサ「さっき言ってたじゃない、天が二物を与えたようなあんじゅは普通じゃないって。  それに、あんじゅは才能頼りじゃないっていうのはもう分かってるでしょう」

英玲奈「ぅっ……  だ…だが……」


ツバサ「そもそも最初ナンバー3って事で見向きすらしなかったのが今じゃ喧嘩ばかりって相当進展してるじゃない。  もう認めなさい。  認めてるって認めなさい。  楽になるから」

英玲奈「な……何が楽になるというんだ…?」


ツバサ「私が。  あんたらの制御と仲裁でリーダー業務の大半が持ってかれてる私が、楽になるの。  ね?」


英玲奈「………」

あんじゅ「………」


ツバサ「まぁそれ以外に何があるかといえば大した事はやってないんだけど。  基本自分の事は自分で決めろで放任してるし」

ツバサ「だから、チームとしての根本の方向性を合わせておくぐらいよね。  あとはそっちの自由にやらせた方が良いものを仕上げてくれるし」

ツバサ「私はとても満足よ?  最高の仕事をしてくれる上にツッコミどころまで用意してくれるなんて」クスッ―


ツバサ「あとはそれをネタにあなた達をイジるだけの簡単なお仕事です」プークスクス

あんじゅ「・・・」ヒク…ッ

英玲奈「・・・」…フム



ツバサ「しっかし英玲奈もあんじゅも面白いくらいに自爆していくわね。  中々愉快だわ」

ツバサ「まさかここにきて2人揃ってやらかされるとは。  しかもどっちも無自覚でやっちゃった感じだし」

ツバサ「どっちもすごいんだけど、なーんか抜けてるのよね。  結構気が合ってるんじゃないかしら?」プクククク!


あんじゅ(………最悪)

英玲奈(……)



ツバサ「けど実際、本当に仲が悪いのなら―――言い争いばかりの日常なんて、ストレス過多で倒れてるわよ」

ツバサ「そもそも曲を仕上げる事が出来てる時点で」フフ―

ツバサ「まぁ、他を蹴落とし踏み台にする事しか考えてなかったセンター争いの日々を思えば、そう簡単に納得できないのも無理はないけれど」フッ…

あんじゅ「…!」

英玲奈「………」


ツバサ「とはいえ、この手のいざこざは1集団として行動する際には付き物なんでしょう、多分。  ユニット,グループ,チームetc...」

ツバサ「誰がどのポジションに就くのか、実権は誰が握るのか。  リーダー≒センターみたいな流れがあるアイドルとしてこれは死活問題だろうし」

ツバサ「ましてや芸能科目当ての人達は、好き好んでこういう所にやって来てる人種だもの。  どいつもこいつも曲者ばかり、我が強くて当たり前」

ツバサ「さらに私たちは全くの他人同士。  最初から仲良しこよしといかないのは、普通の事じゃない?」

あんじゅ「……」

英玲奈「………普通、か」


ツバサ「そう、普通。  でも―――あなた達が私情を活動に持ち込んで来るような人間じゃなかった事は、普通ではないのかも」クスッ―

英玲奈「……」…フン

あんじゅ「………」



ツバサ「それでもあの頃は殺伐としてたわよね。  好感度0どころか、どマイナスからのスタートだったもの」フフッ…

ツバサ「………だから別に、あなた達の悪い面が見えたからって、もう気にはならないっていうか」

ツバサ「あんじゅの変態性癖が暴露されたところで、特に何も、っていうか・・・」

あんじゅ「は…!?」


ツバサ「そこらへん、英玲奈はどう?」

あんじゅ「ちょっ……待

英玲奈「今さらだな。  最初からこういう奴だとは思っていた」

あんじゅ「嘘つきなさいよ!!」


ツバサ「ほらね?  出会いが最悪だったから、今後も何をしたからってそうそう失望のされようも無いって事。  よかったじゃない」ニヤニヤ

ツバサ「ちなみに私なら、どんなスケベ嗜好でも前向きに受け入れてあげるわよ?」プククク!

あんじゅ「全っっ然良くない!!  人を変人みたいに言わないで!!!」


ツバサ「あんなタイトスカート穿かせ「なら、頼んだわけでもないのに衣装が一貫してノースリーブ仕様なのはどういう事だ?」

あんじゅ「!!?」ギックゥ!?

ツバサ(・・・あ、そこは気付いちゃうの?)エレナェ…



英玲奈「長らく疑問に思っていたのだが、私用の衣装がずっとこうなのには、何か意味があるのか?」

あんじゅ「い……意味…って…」

ツバサ(確かに。  英玲奈の衣装がああいう風なのは、一番最初からだったわ)


英玲奈「………思い返してみれば、これがお前との因縁の始まりだったな?」ビキッ…

あんじゅ「…!」チッ…

ツバサ(そうそう。  お互い穏やかじゃなかったけど、最初のうちは練習が忙しくて喧嘩してる暇も無かったのよね)クスッ―


ツバサ(だから、そう―――会話をする余裕が出てきたのは、新生A-RISEが軌道に乗ったぐらいから)

ツバサ(先代のコピー曲でのライブ活動から、『そろそろ自力での活動をしていきなさい』ってなって、私たちの親交(という名の打ち合わせ)が始まったんだったかしら)


英玲奈「まさか衣装に細工をしてくるとは思わなかったが・・・その程度で私を出し抜けるとでも?」

あんじゅ「……」ガッ…

ツバサ(ただ・・・結成から交流までと、対立から和解までのタイムラグが、ちょっと腑に落ちないのよね)

ツバサ(“練習だけで手一杯”って状況が、上手い具合に2人のプライドを弱らせていってくれてたのは分かるんだけど)

ツバサ(2人から殺気が消えたのは、1stライブの直後。  それも急に突然)

ツバサ(私が何をしたわけでもなく、自分の事で必死な間に……いつの間にか)


英玲奈「そもそも、1人だけ衣装がノースリーブ というのも、地味な嫌がらせだな」

あんじゅ「」ウッ…


ツバサ「―――それは、英玲奈にガン無視されるのが癪だったから、どうにかして気を引きたかったのよ」

あんじゅ「ちょっ…!」

英玲奈「……何?」


ツバサ(理由が分からないのが………何か、モヤモヤする)ムー…



ツバサ「自分の事を見て欲しくて、つい意地悪しちゃう。  よくある事じゃない?」

ツバサ(……大体の事は指摘しなくても自分で察して直してるし。  問題児ではあるけれど、本当の意味で手は掛からないというか………私には勿体無いくらい、物分かりの良い子たちだわ)


英玲奈「・・・またわけの分からない事を」

ツバサ「(前言撤回)そう言わないの。  冷淡にあしらわれるよりは、怒らせて反応してもらえた方が取っ掛りにはなるっていう事よ」

ツバサ(だから私は煽りスキルに極振り。不本意ながら)

ツバサ(おかげで脳筋をカモれるようにはなったけど)プクク…


英玲奈「今度もそういった類の話か」ハァ…

ツバサ「好きの反対は無関心ですから。  その人の事しか考えられない―――という意味では、愛も憎しみもそう変わりは無いのよ」クス―

英玲奈「全く以て意味が分からない。  受ける側としては、ただただ災難でしかないな」


ツバサ「・・・ねぇ。 あなた、女よね?」

英玲奈「?  当然だろう。何を言っている?」

ツバサ「あぁ、うん……  分かった、もういいわ…」ハァ…

英玲奈「…?  おかしな奴だ」


ツバサ(・・・・・・駄目だコレ)


ツバサ(甲斐性無さ過ぎとか“私も”災難だったんだよとかそれ以前に、女心ってもんを理解してないよこの人)

ツバサ(さっきもそうだったけどあれだ。  思考回路がもうアレだ。  ファンは釣れるけど餌は与えられないタイプだ)

ツバサ(……同性の事が分からないって、アンタの方がよっぽどややこしいんだけど)ハァァ…

英玲奈「?」


ツバサ(まぁ・・・全体的には分かりやすいというか、扱いやすい性格なのは有り難いわ)

ツバサ(何より  割と面倒なタイプのあんじゅのプライドを、見事にヘシ折ってくれてるのが)フフ…



ツバサ(・・・あんじゅの行動原理って、いわゆる“悪女”のソレだからあまりよろしくないのよね)

ツバサ(“小学生男子と同レベルの発想”と考えてみると、いくらか可愛い感じに………と、見せかけて。 なら ない)

ツバサ(子供ならともかく、ある程度力のある人にこれやられるとたまったもんじゃないのよ)フゥ…


ツバサ(それに加えて。  色々言ってはみたけれど、実際問題あんじゅのガードの固さはかなりのものだわ)

ツバサ(“ここにきて”やらかしたって事は、逆に言えば3年近く尻尾を出さなかったって事だし)

ツバサ(とにかく、猫を被るのが相当上手い。  その上、かなり計算高くもあるから 外部からは完全に掴みどころがないキャラに見えてるんじゃないかしら)

ツバサ(内部の私ですら、強行突破で化けの皮を無理矢理剥がしているようなものだもの。  まさに鉄壁と言うほかないわ)

ツバサ(・・・まぁ “完璧過ぎる”っていうのも、鼻に付いて逆に気づかれかねない事もないとは思うけど)フフ…


ツバサ(とはいえ、別に素が弱いってわけじゃないのもまた厄介なのよね。  というかスペックはかなり高いし)

ツバサ(中々付け入る隙は見せない上に、向こうから突っ込んで来る事はまず無いから 強引に踏み込んで行くしかないわけだけど)

ツバサ(気を抜くとこっちが喰らい尽くされる可能性があるから油断ならないのよこの子。  手を出すにしろ、出さないにしろ・・・ね)



ツバサ(今回の私の衣装にしても―――


http://mup.vip2ch.com/up/vipper43734.jpg


ツバサ(長袖ミニスカで横長になるDコーデは悪手かと思いきや  客席からはまず見えない事と、カメラが大体上半身を映す事を考慮してのこの組み合わせ・・・)

ツバサ(普段もだけど、こういうところではさらに恐ろしいくらいに頭が回るのよね。  ・・・気がついたら手玉に取られてた、なんて事にもなりかねないわ)


ツバサ(まぁ、でも―――そんなあんじゅにも、英玲奈という天敵が存在したようで)

ツバサ(何せ、どんな搦め手も全部“下らない”の一言で切り捨てられちゃうんだもの。  朴念仁がこんなところで役に立つなんてね)ククク…




ツバサ(そして、そのあんじゅが今になって  自分っていうものを出してきた)


ツバサ(“ようやく”・・・と、言うべきかしら?  お互いの“負の面”みたいなのはよく知ってるから、もう開き直って毒吐きあう事もできるわけだけど)

ツバサ(こういう、個人の趣味趣向みたいなものも  あんじゅはひた隠しにしてきてたみたいだったから)

ツバサ(確かに、ニッチというかマニアックというか  人を選ぶようなものではあるけれど、私たちなら問題ないというか)

ツバサ(私はノリノリでイジってあげられるし、英玲奈は何だかんだで満更でもなさそうだし)

ツバサ(だから、もっとはっちゃけちゃってもいいのにね)フフ―


ツバサ(そもそも、自制してる分偉いものよ。  “隠す”って事は、自分でも ちょっと変なんじゃないかって自覚があるんでしょう)

ツバサ(だからって、躍起になって抑えつける事はないと思うのよ。  いつかプッツンしちゃうというか現にしちゃってるし)

ツバサ(全部を否定するんじゃなくて、適度にコントロールして出していけるように――)

ツバサ(その為には、まずは自分で自分を受け入れるのと、身一つで当たって砕けられるようにならないと)クス―


ツバサ(―――さて。  では肝心の本人は・・・)



あんじゅ「・・・」ギギギギギ…


ツバサ(だいぶダメージが蓄積してるようね。  そろそろ終わりにしましょうか)



わがままアーティストあんじゅ編  終了



ツバサ「ねぇ、あんじゅ。  ちょっと…」ゴニョゴニョ

あんじゅ「……はぁっ!?  そんなのやるわけ――!」


ツバサ「“ちゃん”付け呼びやめるのとどっちがいい?」

あんじゅ「!!」ウッ…!

英玲奈(・・・意外だな。 まさか、根に持っていたのか?)


ツバサ「やらない んじゃなくて、で き な いんじゃないの?」ニタニタ

あんじゅ「ぐっ…!」

英玲奈(・・・いや、あれは完全に楽しんでいるだけだな)



敗因:美意識過剰


あんじゅ「つ……ツバ…  ツ…バ……」

ツバサ「(あーなるほど、確かにこれはこそばゆい)あと少しよー。  あともう一文字よ~」

あんじゅ「ツバ………  バ……………バカ英玲奈!!」

英玲奈「…!?」

ツバサ(あら、失敗)


あんじゅ「あなたの衣装センスはこの私がおぎなってあげてるんだから、感謝しなさいよね?!!」

英玲奈「何………だと……?」ビキッ

ツバサ(もし言えたら『やっぱしっくりこない』で戻すつもりだったのに、喧嘩する方を選ぶなんて)


ツバサ(色々と、慣れって怖いわね)フフ―



―――その芸術観は、ロボには理解不能の模様



次行く前に 改めて魔法戦士&レンジャー+盗賊の立ち姿

http://mup.vip2ch.com/up/vipper43683.jpg


ツバサ「DQⅩって、オンラインゲームとしては結構すごい事をやってると思うのよ」

英玲奈「亜人からのスタートと、人間への再転生か」

ツバサ「そ。  キャラメイクの時、普通は【“人間”,亜人A,亜人B,…】みたいに種族の選択肢を用意するものじゃない?」

あんじゅ「ええ。  それがまさか中盤からは、人間の姿と亜人の姿を自由に入れ替えられるようになるなんて」

ツバサ「1つのアバターで2つの姿になれるって、MMOとしてはかなり異色よね。  そういうのが許される世界観なのが大きいけれど」

英玲奈「教会で祈れば一発だからな。  向こうよりよっぽどファンタジーしている気がしないでもない」

ツバサ「それは放っとくとして。  そうやって姿を自由に変えられるってなった時、たまに“頑なに人間に戻ろうとしない人”や“頑なに人間から戻ろうとしない人”がいたりするのよ」

あんじゅ「…!」

英玲奈「……」フム…


ツバサ「まぁ、価値観は色々だから、変にとやかく言うような事じゃないけどね」

あんじゅ「………」

英玲奈「・・・では、そういった類の事は気にしないようなお前なら、どの種族を選ぶ?」


ツバサ「多分プクリポ。  人間との使い分けがすごく楽しそうじゃない」プクク!

あんじゅ(あぁ……納得……)ハァ…

英玲奈(………これは一生弄り倒されるかもしれないな)…フフ




ツバサ「さて最後。  私は魔法戦士か」

ツバサ「で、左右反転でレンジャー。  行儀悪い感じにすれば盗賊、と」


ツバサ「あー……やっと思いっきりふざけられるわ。  私説教の時のあの空気苦手なのよね」

ツバサ「叱るのは真面目にやんなきゃいけないし、かといって重い感じにはしたくないし按排が難しいのなんの」

英玲奈「それは分かったが、何故お前だけ3職なんだ?」

ツバサ「そりゃもちろんリーダー補正とセンター特典よ。  リーダーってのはチームのあれこれを全部把握しておかないといけないの。  だから、色々できないと」

あんじゅ「・・・さすがに少しオーバーじゃない?」


ツバサ「って言ってもねー…。  例えば進捗状況から見て曲が期日までに仕上がりそうにないとかなった時に、そこを何とか間に合わせるのがリーダーの仕事だし」

ツバサ「ペースが遅いなら発破かける、トラブルなら解決する、メンバーが失踪したら代替案の模索。どうしても無理と判断したら速攻土下座で期日延長の頼み込み……」

ツバサ「幸いあんじゅがパーフェクトなおかげでこんな事にはならないんだけど、順調なら順調で『このままなら間に合いそうです』って状況報告はしなきゃならないし」

ツバサ「場合によっては『問題ないならペースアップしろ』とか上に言われるし。  向こうには向こうでやる事があるから、早めに貰っておきたいっていうのは分かるけどさぁ…」


ツバサ「まぁそんな感じで。  仕事割り振ったらそれで終わり!とはいかないっていうのは、企業出身の英玲奈なら分かってくれると思うんだけど?」チラッ

英玲奈「……そうだな。  そして、実際の現場は…さらに過酷だ」

ツバサ「ね。  そう考えると全然お気楽なものよ」フフッ!

あんじゅ「・・・」



ツバサ「“リーダー”って言葉の響きは華々しいけど、ぶっちゃけ(中間)管理職なのが大半だもの。  その意味では魔法戦士も似たようなものね」


理想:
弓剣を持ってフォースを華麗に操る戦士

ツバサ「だと思っていたら」


現実:
杖ペチしてパサーのMPタンク

ツバサ「だからねー」


英玲奈「単語から連想されるイメージと実際の役回りが、随分とかけ離れていたな」

ツバサ「そうそう。  魔法“戦士”というからには前衛職だと思うじゃない?  それがまさかの中衛職の(補助)魔法戦士よ」

ツバサ「戦闘が始まったら前衛[1]にバイキルトでしょ? 前衛[2]にバイキルトでしょ? ピオリムを2段階でしょ?  これでもう4ターン」

ツバサ「で、もたもたしてるとここらで最初のバイキルトが切れそうになったりするから、呪文かけ直して効果時間延長して・・・」

ツバサ「大体これのローテーションよ。  バフ更新ばっかりで、ほとんど攻撃に参加できないのよね」


英玲奈「ⅩはFFのようにアクティブタイムバトルだからな。  うかつにコマンドを消費してもいられない」

ツバサ「というかそれ以上に色々と特殊すぎるでしょアレ。  攻撃を回避できたり敵を押して行動妨害できたりとかビックリだわ」

あんじゅ「ターン制のように熟考できる時間は無いから、回復に補助にと大忙しよ」

ツバサ「その分やり甲斐はあるけどね。  補助メインっていうのもやってみたら意外と楽しかったり」フッフッフ―



ツバサ「……でも目玉のハズの“フォース”は自分専用なのよね、バフ特技なのに。  全体化するする言いつつ中々そうならないし、魔戦の微妙ステじゃ効果が実感できないのなんの」

英玲奈「110スキルで範囲化してからは、それなりに活躍しているそうだ」

ツバサ「そっかそっか」フフ…

すいません 駄目になりました 投げます
根本の人格が駄目だと何やっても上手くいかないと思い知らされました
何でいつもこうなるんだろ…



~~このSSは、ゴラン・ノスポンサーの妄想で  お送りしました~~




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