ようこそ たのしい 動物王国!! (オリジナル)(26)

トニーくんは強そうなライオンボーイ!!

ラリーくんは皆を嗤わせてくれるカバのお調子もの!

ジキルくんは優しくて素敵な牛さん。

ハイドくんはずる賢い要領よしなお馬さん。

ロビーくんは皆に愛されるウサギくん!!

先生は皆のまとめ役。心やさしいクマさんです!!


今日も素敵な動物王国を覗いてみましょうね!!


トニーくん「やあ!!みんなおはよう!!」

ラリーくん「おなよう!!トニー!!」

ジキルくん「おはよー。」

ハイドくん「ういーっす。」

ロビーくん「・・・・・」


先生「みなさん!おはようございます!今日もいい天気ですね!!」

先生「さあ、みなさん。今日の授業は皆で楽しい鬼ごっこをしましょう!
   私が10をかぞえるあいだに皆は逃げるのですよ。
   一番最初はわたしがおにをやりますから、一生懸命ににげるのですよ。」

トニーくん「よっしゃー!おべんきょうはしなくていいからラッキーだよ!」

ジキルくん「たのしそうだね!」

ロビーくん「・・・・・」

ラリーくん「ロビーくんどうしたの?なんだか元気がないよ?」

ロビーくん「・・・・・」

ハイドくん「腹でもこわしたんじゃねえの?ほうっておけばそのうち元気になるさ。」

先生「それでははじめますよー。いちー、にー、さん、しー、ごー…」

トニーくん「おっとやばい!はやく隠れなきゃ!」

ジキルくん「うん!わかった!」

ラリーくん「…ロビーくん、ほら、行かなきゃ。」

ロビーくん「・・・・・」

ラリーくん「ねえったら!ロビー・・・」


(ザクッ)

ラリーくん「え?」

ラリーくん「っ    ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」

トニーくん「うわあああ!!ロビーくんが!!ロビーくんが!!」

ジキル「ひっ・・・」

先生「な、なにをしてるの!?いけない!早く止血を!!」

ロビーくん「・・・・・」

ラリーくん「うぎいいいい!!ぐううう!!!」

先生「み、皆!!見てはいけません!!全員教室に戻りなさい!ロビーくんは私とここに残って!!」

ああ!なんてことでしょう!!ロビーくんがラリーくんを包丁で目に向かって刺してしまいました!!

可愛い刺繍の生地が台無しです!!真っ赤な血が飛び散って、さあ大変!!

ラリーくん「眼ェ・・!!!めえええがああ!!」

先生「ラリーくん、落ち着いて、今皆を呼んでるの!……ウッ!!」

先生が顔を上げて、ロビーくんを見ると虚ろでぽっかり黒々とした瞳が感情の無い視線をこちらに投げかけていました。
これは本当に気味が悪い!!

先生「ろ、ロビーくん。一体・・・・」

ロビーくん「・・・・・」

さあさあ、場所はかわりましてここは教室ですね。

かわいそうに。おともだちのラリーくんは目玉を真っ赤にえぐられてしまいました。

普段は強そうトニーくんも怖くてたまりません。他の生徒たちも動揺しています。

トニーくん「い、いったいどうなってるんだ・・・あんなこと夢だよね?起こるはずがない・・」

ジキル「と、トニーくん。しっかりしてよ。」

他の生徒たち「最近ロビーくん暗かったもんね。」

他の生徒たち「なにかあったのかな。」

他の生徒たち「そういえば僕聞いたことあるんだけど。」

他の生徒たち「なに?」

他の生徒たち「ロビーくんのお姉さん、最近殺されたらしいんだよね。」

他の生徒たち「うそ・・・」

他の生徒たち「本当だよ。大人たちがみんなして真剣なかおで話してたんだ・・・僕きいちゃったんだ。」

他の生徒たち「そういえば、最近変な本を読んでたり、独りごとを言いながら歩いてたって噂を聞いたことがある。」

他の生徒たち「僕も知ってる。犯人はロビーくんのお姉さんをはずかしめたーって、大人たちが言ってるのを聞いたよ。」

他の生徒たち「はずかしめたーって・・・なに?」

他の生徒たち「なんでもお姉さんははだかにされて殺されてたらしいんだ。」

他の生徒たち「なんなの?それってはずかしいことなの?」

他の生徒たち「すごくいけないことだって、大人たちが言ってた。「きんき」とか、「きょうきのさた」だ。とか、いってたね。」

ジキル&ハイド「・・・・・」

他の生徒たち「少なくとも、犯人は複数で殺したらしいよ。ケーサツも捜査中だとか。」

他の生徒たち「どっちにしろ、怖いよ。」

ああ、なんということでしょう。ウワサばなしは尾ひれがつくと厄介です。

そんな話はもう、キキタクナイ。っていう人もいるかもしれないのに。

子供は純粋で愚かで可哀想です。どうしましょう。どうしましょう。

こんな話をもうききたくない二人は教室を出てナニヤラヒソヒソと話はじめました。

ここは、教室からでた廊下の隅っこ。

だあれも来やしません。

ジキル「ねえ、ハイドくん。やっぱりロビーくんは知ってて・・・」

ハイド「バカ!それ以上しゃべるんじゃねえよ!!」

ジキル「でも・・・でも・・・絶対わかってるんだよ。きっとお姉さんを殺したのは僕らだって知ってるんだ!」

ハイド「たとえわかってようが、動物学校で問題起こしたんだ。もう何をいっても信用されないよ。
    だから放っておけばいいんだ。何もしないほうが得なんだよ。」

ジキル「僕は・・・僕はコロス気なんてなかったんだ。ほんのちょっと強く首を絞めただけなのに・・・
    やろうって言い出したのはハイドくんの方だよ。僕はわるくないよ。」

ハイド「おい!おまえ!まさか、ケーサツにいう気じゃないだろうな。」

ジキル「そ、そんなことないよ。」

ハイド「なあに。おまえのせいかくはよく知ってる。だからな。こういうときはどうせ逃げるって、
    相場が決まってるんだ。・・・・聞けよ。俺にいい考えがあるんだ・・・」


ああ、なんてずる賢いんでしょう。
ハイドくんは、このチャンスを機に、逆にロビーくんがお姉さんを殺したことにして、
動物王国の全員のこのことを言いふらそうと決めてしまったのです!!

かわいそうに。
そんなことをしても意味なんてないのに。

優しくて気の弱いジキルくんは、おずおずとハイドくんの言うことに従ってしまいました。
どうせながされるのが彼の生き方です。

王国の皆もなあんにも知らないので、簡単にハイドくんの口車に乗りました。
ああ、なんて愚かなんだろう!!動物どもは!!

動物王国の皆は、ケーサツや多くのやじうまを引き連れてロビーくんの家の前にやってきました。

皆でやってきました。どうせ誰も知りません。だから仕方ないのです。

ロビーくん「ああ、皆来てくれたんだね。」

一同「!?」

なんと、ロビーくんはいつもの愛くるしい笑顔で家から出てきました。

片手にはナニヤラ大きな分厚い本をもっています。

ケーサツ「ロビーくん、きみにはある非常に恐ろしい事件のようぎがかかっているんだ。
     おとなしく私たちのいうことにしたがいなさい。」

他の愚図ども「そうだ!!そうだ!!逆らうとひどいぞ!!」

ロビーくん「僕は逆らいませんよ。ああ、皆さんに今回この晩見せたいものがあったんですよ。」

ロビーくんの眼はうわついていて、なんだか現実感がありません。

まるでなにかに酔っているようです。

ロビーくん「きっと、みなさんにならよろこんでいただけます。
      僕はね。聞いてください皆さん。神様と会うことができたんです。」

かわいそうに。ここまできて一同は、きっとロビーくんはおかしくなっているのだ・・・
と、思いました。

でもでも、ジキルくんとハイドくんは、ナニヤラとても怯えています。

なぜなら二人には、そうです。神様が見えていたのです。

ロビーくんのちょうどうしろ。

家の窓の隙間から、何かが蠢いているのがみえたのです。

ロビーくん「見てください。僕の神様。みなさんが集まって、あなたの力を見に来られました。
      さあ、どうかこの人々に救いを与えてください神様。
      イア!! イア!! クトゥルフ・フタグン!!
      フングルイ・ムグルナフー・クトゥルフ・ル・イエー!!
      ウガ・ナグル・フタグン・!!」

ボコりと、ロビーくんの家の中から姿を現したソレは、
どす黒い水泡を掻き集め沸騰させた塊が風船のように膨れ上がり、
天辺の球体に大きな眼球を葡萄の房の様にギョロギョロと携えながら、
伸縮する醜怪な肉塊を形容する姿を大きく見せ始めた。

黒い揮発性の粘液を振り落としながら、奇怪なうめき声とも叫び声とも
つかぬ声で、鳴き始めた。

ああ、怪物があらわれた!!

なんということでしょう!!怪物は奇妙な「テケリ・リ!!」という鳴き声とともに、
巨大な触手を振るい、その場にいた動物たち全員を、
逃げる間もなく、醜悪な肉体に取り込み、

強力な酸を吹きかけながら、悶え苦しむ地獄を与えながら食べてしまいました!!

ああ、動物王国はおしまいです。

こんなに恐ろしい動物王国はきっと覗く価値もなかったでしょう!!

きっと作者は白痴の大蛆だったのですね!

・・・・・・・・・ミスカトニック大学 図書館・・・・・・・・・・・

ジョン「な、なんなんだこの本は…。絵本かと思って取り出したが…。この神を呪うかのような禍々しい内容は一体…」

???「おや、その本が気に入りましたか。」

ジョン「だ、誰だアンタは。」

???「なあに、単に文学を専攻しているしがない大学生です。名乗るものでもないが、
     実は、私もその本を借りようと思ってたのですよ。」

ジョン「(知的そうな男だ。同じ年齢なのに、年相応とは言い難い雰囲気を感じるな…)」

???「ところでジョンさん。その本は貴方が借りるんですか?」

ジョン「な、なぜ私の名前を」

???「おや、何を言うんです。この前学会であなたの発表を聞いていたんですよ。
     不思議に思うことでもないでしょう。」

ジョン「ああ、たしかに発表はしたか…。(もう一年前の話だが、態々そんなことを覚えている人だったのか…。)」

???「もし借りないのであれば、その本、私に譲ってくれませんかね。
     冒涜的な内容ではあるが、文学としては一考の価値がある。」

ジョン「なるほど。貴方も研究論文目当てで資料探しですか。」

???「いえいえ、私の場合、上司がその本を回収してこいと五月蝿いんですよ。
     私の専攻の顧問なんですが、とんでもなく人使いが荒いヤツでね。
     世界の端に散らばっているような文書を蒐めてこいなどと、無計画極まりないことを言うんです。
     半分冗談ですよ。今のはね。
     本当はある特定の著者の本を集めるのが仕事です。
     それで、例えばその本の作者、ロベルト・マシューの本を集めたりしているワケです。」

ジョン「はあ…ああ、そうか。この本の巻末にあるイニシャル「R・M」というのは、その名前の略称か…
    …しかし、見れば見るほど不気味な装丁だ。」

???「彼だけではないんです。その手の不気味な何者かを崇拝した形跡のある本というのは、
     この国に限らず世界中に散らばりを見せています。
     その中でも選りすぐりの本を探し見つけ出すこと。途方もなく当て所ない旅に等しい研究です。
     私も必死なものでねえ。」

ジョン「わかった。いや、そもそも私は神学やら文学には疎いんだ。
    どちらかといえば、哲学の方の研究を主にしているんでね。
    君にこの本を譲っても何も痛む腹はない。」

???「話が分かるね、ジョン。物分りの良い人は長生きをする。
     君は実に賢明な判断をしたね。私とは、多少残念ではありますがね。」

ジョン「なにを言っている?賢明な判断だと?」

???「覚えていようがいまいが、結構なことで、私には度し難いまでに無関心な話だがね。
     一つだけ君に言うことがあるんだ。
     君の息子のマイクとは、アメリカのバージニアというところで出会う予定だ。
     残念ながら、人生で路頭に迷っている彼に一つ刺激的で娯楽に富んだ仕事を一つ提案する
     役割を授かっている。
     ジョン。君とはもう二度と会えないかもしれないが、もしかしたら死ぬ間際かもしれないし、
     十一年後のミスカトニック大学のこの図書館かもしれない。健闘を祈っているよ。
     人生をせいぜい楽しんでくれたまえ。」

ジョン「は? 君は一体なにをいってるんだ?(息子?十一年後?コイツは何を言っているんだ?)」

???「なあにすぐさ。すぐにその時はやってくるとも。君は実に賢明だ。
     予想通りならば、十一年後にまた会おう。
     さて、余り長話をしていると忌々しい出不精の大馬鹿にどんな悪辣な趣向をこらされ、
     君の身に危険が及ぶかもわからんね。これ以上は無駄な会話だ。
     さよなら、ジョン。」

ジョン「ま、待ってくれ!君の名は!?」

ニア「名乗る程のものじゃないよ、ジョン。なあに、精々名乗るとすれば、
     ニアという名前があるとだけ言っておこう。君にはそう言っておくのが相応しいかもしれん。」

ジョン「ニア!十一年後とは!?君の話しているのは気狂いの戯言なのか?」

ニア「さあてね。無用な詮索は不要だよ。では、君にも我が敬愛する愚鈍な肉塊の加護があらんことを。
   まあ、祈っているよ。ああ、それとタバコはやめておきたまえ。」

ジョン「君は…」

ニア「私は神出鬼没の無貌の男。常に君の動向を見ているよ」




ジョン・カルヴァンは十二年後、肺がんを患い命を落とすことになった。
妻のエリーは、かねてより夫が口にしていたマイクという名を名付けることにした。
ところが、更に十年後、成人したマイクは突如として行方不明となってしまった…

エリーの家にはマイクが書いたと思しき手紙が投函されていたが、
警察は記入されていた言葉の意味がわからず、事件は迷宮入りとなった。

なぜなら、内容が意味不明な呪文の羅列によって覆われていたからだ。

end?

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