苗木「今日はエイプリルフール」

苗木「そう」

苗木「今日はエイプリルフールなんだ」

苗木「ああ、びっくりした」

苗木「今日の午前は嘘をついていいんだったね」

苗木「ああ、本当に、びっくりした」

苗木「ははは」

苗木「酷いなあ、舞園さん」

苗木「死んだふりを、するなんて」

苗木「けど許すよ」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

苗木「今日はエイプリルフール」

苗木「そう来ると思ったよ」

苗木「だって、江ノ島さんって」

苗木「こういうイベント好きそうだもの」

苗木「驚いたなあ」

苗木「まるで、そう、手品みたい」

苗木「まるで、槍が、刺さってるみたい」

苗木「けどこれは嘘」

苗木「嘘なんだ」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

苗木「今日はエイプリルフール」

苗木「じゃなきゃこんなの、おかしいよ」

苗木「舞園さんが」

苗木「あの、舞園さんが」

苗木「まさか僕を陥れようと、するなんて」

苗木「けどそんなのは嘘」

苗木「嘘なんだよ」

苗木「だって、本当は、桑田くんなんだから」

苗木「でもそれも許すよ」

苗木「そんなの嘘嘘」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

苗木「今日はエイプリルフール」

苗木「だけど、あれ？」

苗木「あれ？ あれ？ あれ？」

苗木「エイプリルフールって、午前だけじゃなかったっけ？」

苗木「今日はもう、夜になっちゃう」

苗木「じゃあきっと、それも嘘なんだ」

苗木「今日はエイプリルフール」

苗木「明日もエイプリルフール」

苗木「そのまた明日も、きっとエイプリルフール」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

江ノ島「……」

江ノ島「まっ、どうでもいいけど」

江ノ島「けど、どうせなら」

江ノ島「もっとわめいて、欲しかったなあ」

苗木「ああ、またエイプリルフールか」

苗木「嘘だ、嘘だ」

苗木「不二咲さんが、殺されるわけないじゃないか」

苗木「これはきっと、嘘なんだ」

苗木「だから、今日もエイプリルフール」

苗木「大和田くんが犯人なのも」

苗木「腐川さんが殺人鬼なのも」

苗木「十神くんが酷いのも」

苗木「みんな、嘘をついてるんだ」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

苗木「あれれ今度は石丸くん？」

苗木「それともこれは、石田くん？」

苗木「おまけにあれは、山田くん？」

苗木「もう、本当に、人が悪い」

苗木「びっくりした」

苗木「ああ、葉隠くんは、違うのか」

苗木「安心したような、びっくりしたような」

苗木「酷くなんてないよ」

苗木「酷いのは、嘘をついた、セレスさん」

苗木「けど許す」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

苗木「そしてまたエイプリルフール」

苗木「エイプリルフール、エイプリルフール」

苗木「ああ、どうして今日はエイプリルフールなの」

苗木「それはきっと、今日がエイプリルフールだから」

苗木「だって、大神さんが」

苗木「大神さんが、殺されるなんて、嘘だろう？」

苗木「嘘じゃなきゃ、大神さんは死なないよ」

苗木「だから安心して朝日奈さん」

苗木「これはみんな、嘘なんだ」

苗木「みんなで嘘を、ついてるんだ」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

苗木「今日も今日とてエイプリルフール」

苗木「エイプリルフールなのに、風邪ひいた」

苗木「きっとこれも嘘なんだ」

苗木「ついに僕は、僕からも、嘘をつかれたのか」

苗木「だから僕が犯人だなんて、嘘なんだ」

苗木「だって僕は、嘘をついているんだから？」

苗木「あれ？ あれ？ あれ？」

苗木「僕が、嘘をついたなら」

苗木「やっぱり、僕が犯人かな？」

苗木「だけど、許してよ」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

苗木「今日はエイプリルフール」

苗木「じゃなきゃ、江ノ島さんのせいだなんて、あるわけない」

苗木「世界が、終わってる、わけがない」

苗木「絶望なんて、あるわけない」

苗木「みんなそろそろ出てきなよ」

苗木「本当は、死んでなんていないんでしょう？」

苗木「これは嘘」

苗木「あれも嘘」

苗木「ぜんぶ嘘」

苗木「嘘嘘嘘、嘘ばっかり」

苗木「だって今日は、エイプリルフール」

苗木「ああ、けど、そういえば」

苗木「江ノ島さんは、きっと嘘じゃない」

苗木「うん」

苗木「これはきっと、江ノ島さんのせい」

苗木「今日はエイプリルフールだけど、悪いのは江ノ島さん」

苗木「それくらいわかるよ」

苗木「どれだけ一緒に、いたと思ってるのさ」

苗木「それに、そう」

苗木「だって」

苗木「だって今日は、エイプリルフールなんだから」

――――――――

――――

――


苗木「う……ん……」

江ノ島「ふぅー、終わった終わった！」

苗木「江ノ島さん……」

江ノ島「ねえねえ苗木！ どうだった！」

苗木「趣味悪すぎ……ていうかいつの間に……」

江ノ島「鍵勝手に開けちゃったっ！」ﾃﾍｯ

苗木「もう……これちゃんと片づけてよ？」

江ノ島「はーい」

苗木「まったく、不二咲さんの『新世界プログラム』をこんなことに使うなんて……」

江ノ島「こんなことー！？ エイプリルフールの大切さがわかってないの！？」

苗木「いやあんなに凄惨にする必要ないよね！？」

江ノ島「えっ？ エイプリルフールってどれだけすごい嘘をつけるかっていう日でしょ？」

苗木「違うと思うよ……」

江ノ島「まあまあ、そんなことよりもっと感想ちょうだい！」

苗木「ええー……何あのコロシアイ……」

江ノ島「なんか面白いかなーって少し前に計画してたやつ」

苗木「うわあ……」

江ノ島「今は更生してるからいいじゃーん」

苗木「そういう問題じゃないと思うけど」

江ノ島「でも苗木、頑なにエイプリルフールの嘘だって自分に言い聞かせてたよね？」

苗木「え？ ああ……」

江ノ島「苗木って辛い現実からは逃げちゃうタイプ？」

苗木「いや、実は……」

江ノ島「ん？」

苗木「エイプリルフールってことで江ノ島さんが何かしてくると思ってたから、嘘をつかれても驚かないよう、寝る前に全力で自己暗示を……」

江ノ島「はあ！？ それちょっと失礼じゃない！？」

苗木「はは、ごめんごめん」

江ノ島「頭おかしくなったかと思って結構心配したんだからね！！」

苗木「ごめんってば……って、そもそもこんなことした江ノ島さんのせいだよね！？」

江ノ島「……てへっ？」

苗木「もう……」

江ノ島「あーあ、もう少しパニックになってくれると面白かったのに」

苗木「嫌だよ……」

江ノ島「そして目を覚ました苗木は、あれが電脳世界だったことに安心して江ノ島盾子ちゃんに抱きつくのです」

苗木「……」

江ノ島「そしてなんやかんやあって2人は結ばれましたとさ、ちゃんちゃん」

苗木「残念だったね、そうならなくて」

江ノ島「うぅ……」

苗木「けど、江ノ島さんのそういうとこ、好きだよ」

江ノ島「……へっ！？」///

苗木「なーんてね。今日が何月何日か忘れたの？」ｸｽｸｽ

江ノ島「……」

苗木「……」

江ノ島「……」

苗木「あの……」

江ノ島「……」

苗木「江ノ島さん……？」

江ノ島「さいってー！！ 乙女の純情弄んだの！！？」

苗木「ええええ……」


【13:10】