貴音「恥ずべきことなどありません」 (69)

貴音「こまつな」

響「ななくさ」

貴音「さざえ」

響「……えいがかん?」

貴音「ふふっ、響の負由」






響「ほら、映画館」ギュ

貴音「にゃんと」

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貴音「せっかくですから、なにか観ていきましょう」

響「今はなにやってるのかな」

貴音「ええとですね、『劇場版まっぴぃ』」

響「はい」

貴音「……はい」






響「えっ」

貴音「えっ」

響「他は?」

貴音「えぇ、はい」

響「他に」

貴音「映画館、ですか」

響「た、貴音?」

貴音「せっかくですから、なにか観ていきましょう」

響「えっ、あの」

貴音「ほぅ、『劇場版まっぴぃ』、ですか」






貴音「響、『劇場版まっぴぃ』ですか」

響「」

響「観たいの?」

貴音「はい?」

響「えっ」

貴音「どれにいたしましょうか」

響「じゃあこの神田桃主演の」

貴音「『劇場版まっぴぃ』、そうですか」






響「……」

貴音「……」

貴音「響は『まっぴぃ』じゃないと沖縄に帰る?」

貴音「だぞさー!!」

貴音「……本当に仕方のない子ですね、良いでしょう」ハァ






響「面妖な」ムギュ

貴音「いひゃああああ」

貴音「わたくし、『まっぴぃ』が観たいです」

響「はい」

貴音「観ましょう」






響「んふっ」

貴音「」

響「『マッピー』って……、んふふ」

貴音「ひ、響!!」

響「いやいや、『マッピー』だよね、うん」






響「くふっ」

貴音「」

響「だってこれ……、お子様向け……」

貴音「響」

響「はい」

貴音「わたくし達は……、あいどるです」

響「うん」






貴音「では行きましょう」

響「えっ」

貴音「早くしないとぽっぷこぉんが逃げてしまいますよ」

響「映画館のさ」

貴音「はい」

響「ポップコーンて美味しいよね」

貴音「えぇ、真に」

響「家で食べるとそうでもなかったりするのに」

貴音「映画館という場所がそうさせるのですよ」

響「美味しく?」

貴音「はい」

響「映画館ずるい」

貴音「いけずですね」

貴音「結構人がいますね」

響「小さい子がたくさんいるぞ」

貴音「おや、こんなところにも幼子が」ナデナデ

響「」






響「貴音、チケット」

貴音「えっ」

響「買ってきて」

貴音「わたくしが?」

響「うん」

貴音「一人で?」

響「うん」






貴音「四条貴音が?」

響「我那覇響はここで待ってるから」

貴音「どうして一緒では」

響「時にアイドルは孤独な旅路を」

貴音「そういうのいいですから」

響「……」

貴音「……」



響「怖いの?」

貴音「えっ」

響「そっかー、貴音は一人で買いに行くの怖いんだなー」






貴音「いや、意味が分かりません」

響「自分も」

響「とにかく、ほら席なくなっちゃうから」グイグイ

貴音「わ、わかりました」

響「自分ここで予告見てるから」






貴音「まったく」

貴音「おや、時間もちょうど良いのがありました」ジーッ

貴音「ふふふ」ニヤ

貴音「おほん」

貴音「本日はお日柄も大変よく」

貴音「し、失礼しました」

貴音「『劇場版まっぴぃ~にゃあむこの逆襲~』を二枚お願いします」

貴音「いえ、高校生と大人で」

貴音「……学生証?」






貴音「響、こちらに!!」

響「なにー?」

響「あぁ、そっか」サッ

貴音「はい、こちらで」

響「ねぇ、貴音」

貴音「はて」

響「結局どれ観るの?」






貴音「えっ」

響「自分映画なんて久々だからなー」

貴音「どれって、先ほど『まっぴぃ』と決め」

響「えー、うそー」

貴音「はい?」

響「貴音は『マッピー』が観たいのかー」

貴音「ですから先ほど」

響「貴音は仕方のないやつだなー」

貴音「……響?」

響「貴音はやっぱりお子様さー」






貴音「っ!?」

響「……ふふ」ニヤリ

貴音「ひ、響!!」

響「でも自分偉いから付き合ってあげるさー」

貴音「なんと!?」

響「貴音は大人料金なのに『まっぴぃ』が観たいんだもんなー」

貴音「」






貴音「ち、違うのです!! このごぉや娘の言うことは全てでたらめなのです!!」

響「違くないさー」

貴音「響は向こうで待っていなさい!!」

響「自分はやっぱりカンペキさー」スタスタ

貴音「見苦しいところをお見せしてしまいました」

貴音「座席の位置? あぁ、えぇと……」

貴音「はい、では四千円から……」






貴音「はやあああああ!!!!」ギュウゥ

響「うぎゃああああ!!!!」

貴音「なんですか、先ほどの茶番は!!」ギュ

響「いひゃいいひゃい!!」ジタバタ

貴音「受付嬢に笑われてしまったではありませんか!!」

響「ま、まってたかねぇ!!」

貴音「はい」

響「ちょっと本気すぎるかなーって」






貴音「千切ってしまってもかまいませんか?」ギュムム

響「うぎゃああああ!!!!」

貴音「はあっ、はあっ」

響「自分のことハムスターかなんかと勘違いしてない……?」

貴音「……二人とも『まっぴぃ』を観たかった、これで良いのです」

響「」



貴音「響、飲み物を」

響「えっ」

貴音「拒否権はありません、いいですね」

響「はい」

響「えっと……」

響「ポップコーン二つと」

響「あ、じゃあ両方キャラメルで」

響「あとメロンソーダと……、あっ」






響「貴音ー」チョイチョイ

貴音「はい」

貴音「あぁ、飲み物ですか」

響「どれ?」

貴音「ちなみに響は」

響「メロンソーダ」

貴音「ほぅ」






貴音「んふっ」

響「っ!?」

貴音「ふふっ、めろんそぉだ……、ふふふ」

響「」

貴音「響はお子様ですねぇ」

貴音「高校生にもなってめろんそぉだとは」

貴音「あぁ、幼由実幼由実」クスクス






響「……それとコーヒー、ブラックで」

貴音「」

響「結局貴音もメロンソーダじゃん」

貴音「映画館ですから」チュー

響「なんと」

貴音「えぇ、面妖です」







響「アナウンスもされたし入ろっか」

貴音「胸が高鳴ります」

響「あっ」

貴音「なにか?」

響「いや、席座ってからでいいや」

貴音「そうですか」






響「でもホントに親子連れがたくさん」

貴音「安心してください、わたくし達もそう見られております故」チラ

響「」



響「白髪のおばあちゃんと孫じゃない?」チラ

貴音「」

響「なんかみんな貰ってる」

貴音「わたくし達も貰えるのでしょうか」

響「全員じゃない?」



響「ありがとうございまーす」

貴音「えぇ、よしなに」






響「ストラップだってさ」

貴音「これは観終わってからのお楽しみですね」

貴音「えいち、あい、じぇい、けい、……ここですね」

響「端っこだね」

貴音「空席が少なかったもので」

響「それだけ人気ってことだぞ、よいしょ」ポスン

貴音「やはりいつみても画面が大きいですね……」ストン

響「貴音ー」

貴音「はい?」






響「やめろォ!!」ギュム

貴音「いひゃああああ」

響「ほら、さっきは手が塞がってたから」

貴音「なんという時間差……」

響「暗くなってきたぞ」






貴音「予告もまた面妖な魅力があると思うのです」

響「分かる分かる、すっごいワクワクするよね」

貴音「それも含め楽しみましょう」

『オレハシンノ♪ ツヨイオトコ♪』

『あの男が帰ってきた!!』

『オワッ!?』

『七転び八起きの爽快×2速アクション!!』

『メトロクロス・リターンズ』



『ー残酷な戦争が引き裂いたー』

『アハハハ アハハハ』

『ーとある一家の物語ー』

『キャアアアアア!!!!』

『Hello,Pacman. Goodnight,Pacman.』

響「……うぅ」グス

貴音「まだ始まってはいませんよ」ボソ

響「むしろ『マッピー』じゃ泣かないぞ……」

貴音「ぐぬぬ」



響「伸びたね」

貴音「いよいよですね……!!」






『劇場版マッピー~ニャームコの逆襲~』ジャーン!!

『テッテッテッテッテーッテー♪ テッテッテテテテー♪』

貴音(なんと楽しげな)

響「……」チュー



『ハーイ、ボクマッピー!! ハハッ!!』

貴音(四条貴音と申します、今後お見知りおきを)

響「……あむ」パクパク



『エッ、マタドロボウ!? サテハニャームコノシワザダナ!?』ダダダ

貴音「それは許し難」ガタッ

響「こら」ペチ

『フハハハ、ヨクキタナマッピー!!』

貴音(小憎たらしい顔を……)フルフル

響(悪そうな顔だな……)



『コレデモクラエッ!!』

貴音「……っ!!」

響(……危ない)



『アァ、モウダメカモ……』

貴音(諦めてはなりません!!)

響(諦めたらだめだぞ!!)

『ゴ、ゴセンゾサマァ!?』

貴音(まっぴぃ殿、全ては心です!!)

響(マッピー、全ては心だぞ!!)



『パワードア!!』

『ナ、ナニィ!?』

貴音(いけます!!)

響(いけぇ!!)



『ヤ、ヤラレタァ……』キラーン

貴音(やりました!!)グッ

響(やった!!)グッ

『コンカイモカイケツ、ヤッタネ!!』

『ドンナトキデモアキラメナイココロガアレバ……』

『マピコ、タダイマ!!』



『おしまい』






貴音「ぅゎぁn、ぁぅぁぅぁぅ」

響「……出よっか」グスッ

貴音「うわあん、あうあうあう!!!!」ポロポロ

響「ぐすっ、ひっぐ」グシグシ

貴音「なんと素晴らしい……、うぅ」

響「……くすん」






貴音「あぁ……」

響「んー」チーン

貴音「わ、わたくし、少しお花摘みへ」

響「顔ちゃんとハンカチで拭いてね、跡がすごいぞ」

貴音「えぇ」グスッ






響「……」スタスタ

響「えっと、これを……」

貴音「お待たせしました」

響「うん」

貴音「なんだか少し疲れてしまいました……」

響「あれだけ泣けば、そりゃあね」

貴音「心なしか視線を感じます」

響「これからどうしよっか」

貴音「本当はどこかで夕食をと思いましたが……」

響「……のんびりしたいね」

貴音「えぇ、ですからわたくしの家でなにか作りましょう」

響「ご飯食べに行くのは明日だなー」

貴音「そうしましょう」

貴音「本日のでざぁとはちぃずけぇきです」

響「チーズって」クス

貴音「あのように美味しく食べるシーンを見せられては」

響「でもあんな穴空いてるチーズ見たことないぞ」パク

貴音「本場はそうなのですよ」アーン

響「通ですな、お嬢」

貴音「わたくし、四条貴音ですから」キリッ

~♪

貴音「響、お先にお風呂を」

響「んー、自分はもう少し後でいいや、お先にどうぞ」

貴音「ではお言葉に甘えましょう」






<ウワサノマッピィ♪

響「……よし」ガサゴソ

貴音「にゃあにゃあにゃあむこやっつけろ♪」ホカホカ

貴音「真、良い湯加減でした」

響「それはそれは」ペラ

貴音「おや、なにを読んでいるのですか?」

響「んー?」ペラ

貴音「あっ!!」






貴音「『まっぴぃ』ではありませんか!!」

響「うん」ペラ

貴音「っ!!」

響「へぇ」ペラ

貴音「分かりましたよ、響」

響「どうした?」ペラ

貴音「そのぱんふれっとはわたくしへのぷれぜんとですね?」

響「……はい?」

貴音「ぷれぜんとを先に読んでしまうとは、響も困った子ですね」

響「違うぞ?」






貴音「えっ」

響「えっ」

貴音「わたくしのですよ?」

響「自分のだけど」

貴音「はて」

響「自分の」

貴音「どうして」

響「……欲しかったから」






貴音「えっ」

響「えっ」

貴音「あれだけお子様お子様だと」

響「……言ってないぞ」

貴音「」



貴音「……」ジト

響「じ、自分今集中してるんだから声かけないで!!」ペラ






貴音「没収です!!」バッ

響「」

貴音「嘘つきは『にゃぁむこ』の始まりです」

響「人の物とる貴音の方が『ニャームコ』だぞ!!」ピョンピョン

貴音「わたくしとしたことが、ぱんふれっとの存在を忘れていました……」ワナワナ

響「返して!!」

貴音「響の為を思って、わたくしは心を痛ませながらも没収という手段を」

響「泥棒猫なの!!」ペチン

貴音「」






貴音「はやああああ!!」ギュム

響「うがああああ!!」ギュム

貴音「とまと」

響「とうふ」

貴音「ふかひれ」

響「……れすとらん?」

貴音「ふふっ、響の負由」






響「ほら、れすとらん」ギュ

貴音「にゃんと」

響「『キッチン りせぷしょんずこまち』だって」

貴音「さんぷるを見る限り、洋食のお店ですね」

響「せっかくだからここにしない?」

貴音「えぇ、構いませんよ」

響「どれにしようかなー」

貴音「悩ましい限りですね、……おや?」

響「貴音?」






貴音「……『お子様らんち』?」

貴音「そういえば」

響「ん?」

貴音「映画のすとらっぷをまだ開けていません」

響「あ、ホントだ」ガサ

貴音「全五種、ですか」

響「まぁ、カンペキな我那覇さんは『マッピー』を引くよね」ベリッ

貴音「ほぅ」






響「」

貴音「んふふ、『まっぴぃ』殿は猫ではありませんよ?」

響「ぐぬぬ、『ニャームコ』……」

貴音「なにが完璧ですか」クスクス

響「ちょ、ちょっと調子悪かっただけだぞ」

貴音「完璧とはわたくしのことを言うのです」

響「けっ」

貴音「いざ『まっぴぃ』!!」ベリッ






貴音「」

響「自分とお揃いだな、んふっ」

律子「あら、このストラップかわいいじゃない」

やよい「ふふっ、マッピーですよ」

律子「あぁ、今映画やってるやつ?」

やよい「この前家族で観に行った時に貰ったんです!!」

律子「むぅ、うらやましいわね」






貴音「ほぅ」

響「ふーん」

貴音「やよい」

やよい「はい?」

貴音「風水的な観点によると、やよいとねずみは最悪の相性云々」

やよい「えっ」

貴音「その奇妙なすとらっぷを今すぐに捨てるのです!!」

やよい「た、貴音さん?」

貴音「仕方ありません、ではこの可愛らしい猫のストラップと交換してあげましょう」

やよい「」






響「やよい、あんな悪人に騙されちゃだめだぞ」

やよい「は、はい」

貴音「」

響「……でもね、ネズミってすっごく汚いんだよね」

やよい「ひ、響さん?」

響「ペストとかの病気を持ってることが云々」

やよい「でもこれストラッ」

響「その点、猫ならなんにも問題ないんだぞ!!」

やよい「でも、これ」

響「仕方ないなぁ、じゃあこの綺麗で安全な猫のストラップと交換してあげるぞ!!」






貴音「響!! 醜い真似は今すぐにやめるのです!!」

響「なっ!? 貴音こそ!!」

やよい「」

貴音「だいたいいつも響は!!」

響「それは貴音が!!」

律子「こら、ケンカしないの!!」

やよい「……」






やよい『ねぇ、長介はネズミ嫌いだよね?』

長介『えっ』

やよい『ネコが好きなんだよね、お姉ちゃんには分かるからね』

長介『べつにそんなことは』

やよい『だからそんな顔しないで!! お姉ちゃんのネコちゃんと交換してあげるから!!』

長介『い、いや』

やよい『お姉ちゃんいつも頑張ってるよね!? ね!?』ゴゴゴ

長介『』






やよい「……絶対に言えないかなーって」

律子「いいかげんにしなさい」ギュム ギュム

貴音「いひゃああああ」

響「うぎゃああああ」

こんどこそ終

ありがとう、マッピー
そしてごめんなさい、はらみー

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